説明

欠陥検出方法

【課題】 印刷物や食品に含まれる印刷不良や夾雑物の検査において、特定の色の印刷不良や夾雑物の検出精度を向上させることができる欠陥検出方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 被検査面をカラー画像として撮像し、この被検査面画像とマスタ画像とを比較してその濃度レベル差が予め設定された第1許容値を超えた欠陥部分の欠陥画像データを作成し、被検査面画像の色空間を他の色空間に変換した第2被検査面画像データから、単又は複数の予め設定された範囲の色要素を抽出した抽出画像データを作成し、前記欠陥画像データと前記抽出画像データとが一致するか否かを判定した抽出欠陥画像データを作成し、当該抽出欠陥画像データの欠陥領域の大きさが予め設定された許容値以上であれば欠陥箇所として検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、被検査対象物の欠陥を検出する欠陥検出方法に係わり、更に詳しくは、特に特定の色の夾雑物等を検出する欠陥検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷物の欠陥を検出するときには、ラインセンサで印刷物を撮影し、この撮影した印刷物のライン画像からエリア画像を作成し、印刷物画像のエリア画像の濃度レベルと、当該エリア画像に対応するマスタ画像のエリア画像の濃度レベルとを比較し、両画像の濃度レベルの差が許容値を超える部分があれば、当該部分を欠陥箇所として判定し、さらに当該欠陥箇所の形状及び面積を解析し、重欠陥もしくは軽欠陥であるかの最終判定をするシート状印刷物の欠陥検出方法がある(例えば、特許文献1参照。)。
この欠陥検出方法によれば、マスタ画像の濃度レベルの高い色(例えば、黒色)の不良箇所の大きさと、濃度レベルの低い色(例えば、赤色や黄色等)の不良箇所の大きさとがほぼ同じときには、マスタ画像の濃度レベルに関係なく不良箇所を特定することができるものである。
【0003】
また、印刷物の紙面状態を3種類のカラーフィルタ(R(赤)フィルタ、G(緑)フィルタ、B(青)フィルタ)を用いて画像を検出し、検出した画像データを前記カラーフィルタ別に記憶させ、この画像データをH(色相)、S(彩度)、I(明度)に変換させ、この検査対象のHSIの画像データと基準となる画像のH、S、Iデータとを減算し、その減算値が予め設定されているレベルであるか否かを判定して、H、S、Iの基準に基づいて印刷物の状態を検査する印刷物の検査装置がある(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平6−201611号公報
【特許文献2】特開平6−246906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、紙等に含まれる夾雑物や印刷の不良において、非常に小さい夾雑物や印刷不良に関しては通常は良品としている。しかし、医薬品等のパッケージ等では、非常に小さな夾雑物や印刷不良でも、血が付着していると間違えられることがあり、通常は良品とするような小さな夾雑物や印刷不良も、欠陥品として排出している。
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のシート状印刷物の欠陥検出方法では、マスタ画像と検査対象の画像の濃度レベルの差に基づいて良否を判定しているため、例えば、赤色の小さな夾雑物(印刷不良)を検出できるように精度を高めると、赤色以外の小さな夾雑物(不良印刷)も赤色の夾雑物(印刷不良)と同様に検出し、本来は良品となるものも不良品として判定していた。
【0006】
一方、特許文献2記載の印刷物の検査装置では、紙面のカラーデータをRGBデータからHSIデータに変換し、当該HSIデータと基準画像のHSIデータとを比較して良否判定を行っているが、RGBデータからHSIデータに変換することで、人間の色感覚を反映しやすい色空間を使用することができ、良否判定のレベル設定を容易に行うことができたが、上述したように赤色の小さな夾雑物(印刷不良)を検出できるように精度を高めると、赤色以外の小さな夾雑物(不良印刷)も赤色の夾雑物(印刷不良)と同様に検出し、本来は良品となるものも不良品として判定していた。
【0007】
このように、特定の色に関しては小さなものでも検出し、かつその他の色に関しては検出しないようにすることは困難であった。
【0008】
また、印刷物だけでなく食品(菓子)等においては、例えば、表面の凹凸、表面の焼き具合、正規の混入物(例えば、菓子の中のゴマ等)等の位置によって、表面の画像にバラツキが非常に大きいので、マスタ画像と比べるだけでは、特定の色の小さな夾雑物を検出することは困難であった。
【0009】
本願発明は係る問題に鑑み、印刷物や食品に含まれる印刷不良や夾雑物の検査において、特定の色の夾雑物や印刷不良の検出精度を向上させることができる欠陥検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明に係る欠陥検出方法は、被検査対象物の被検査面をカラー画像として撮像し、当該カラー画像に基づいて被検査面に存在する欠陥箇所を検出してなる被検査対象物の欠陥検出方法において、前記被検査面を撮像装置によって撮像した第1被検査面画像を記憶手段に記憶し、前記第1被検査面画像のエリア画像の濃度レベルと当該エリア画像に対応するマスタ画像のエリア画像の濃度レベルとを比較し、両画像の該当部分相互の濃度レベル差が予め設定された第1許容値を超えた欠陥部分の欠陥画像データと、前記第1被検査面画像を撮像した第1色空間から予め設定した第2色空間に色空間を変換した第2被検査面画像データから、単又は複数の予め設定された範囲の色要素を抽出した抽出画像データと、を作成し、前記欠陥画像データのエリア画像と当該エリア画像に対応する前記抽出画像データのエリア画像とが一致するか否かを判定した抽出欠陥画像データを作成し、当該抽出欠陥画像データの欠陥領域の大きさが予め設定された第2許容値以上であれば、当該欠陥領域を欠陥箇所として検出する。
したがって、マスタ画像と被検査面の画像とからマスタ画像とは異なっている欠陥画像を作成し、かつ、被検査面画像から指定した色の色要素を含む抽出画像を作成し、この欠陥画像と抽出画像とで一致する領域の大きさが、所定の大きさより大きいときには不良として判断するので、指定した色の夾雑物や印刷不良等の欠陥を検出することができるようになる。
【0011】
また、前記第1色空間は、前記撮像装置から出力される色データによって構成される色空間であり、前記第2色空間は、HSL色空間であってもよい。
【0012】
また、前記抽出画像データは、前記第2色空間における点を中心としたほぼ球状空間内に含まれる色要素を抽出した画像データであってもよい。
【0013】
また、前記撮影装置は、一方から他方へ向かって走行するシート状の印刷物を撮像するラインセンサであり、前記撮像装置から順次出力される被検査面画像のライン画像データを記憶手段に順次記憶させて当該記憶手段内部で被検査面のエリア画像を作成してもよい。
【0014】
また、前記欠陥画像データの欠落領域の大きさが予め設定された第3許容値以上であれば、当該欠陥領域を欠陥箇所として検出してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本願発明に係る欠陥検出方法は、カラー画像として撮影した被検査面画像のデータの色空間を他の色空間に変換した後に、特定の色要素の領域を抽出するので、抽出する色要素を特定しやすくなる。また、被検査画像のデータとマスタ画像から夾雑物や印刷不良等の欠陥部分を判定した欠陥画像データと、被検査面画像の中から特定の色要素を抽出した抽出画像データとを作成し、欠陥画像データの欠陥箇所と抽出画像データ抽出箇所とが一致するか否かを判定するので、マスタ画像には存在しない領域かつ特定の色要素の領域を検出することができるようになる。そして、この一致する領域の大きさによって良否を判定することで、特定の色に対して検出精度を高めることができる。
【0016】
また、第1色空間は、撮像装置から出力される色データによって構成される色空間なので、一般的な撮像装置が使用可能となり、低コストで印刷物や食品等の被検査対象物の欠陥を検出することができる。
また、第2色空間としてHSL色空間を用いるので、人間の色の認識感覚に対応した色判定を行うことができる。
【0017】
また、第2色空間においての点を中心としたほぼ球状の空間内に含まれる色要素を抽出しているので、特定の色に近い範囲の色(類似した色)を指定することができる。
【0018】
また、撮像装置としてラインセンサを用いてシート状印刷物を撮像するので、例えば、オフセット印刷機に撮像装置を搭載させて、印刷物の良否判定を行うことができる。したがって、オフセット印刷機のラインに組み込むことができ、印刷と同時にその検査を行うことができる。
【0019】
また、欠陥画像の欠陥領域の大きさが予め設定された大きさ以上であれば不良と判定するので、色以外の不良箇所の大きさにも基づいて良否判定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本願発明に係る欠陥検出方法の一実施例を図面に基づいて説明する。
なお、以下に示す実施例では、被検査対象物がシート状印刷物のときについて説明しているが、シート状印刷物以外の印刷物でもよい。さらには、被検査対象物が食品であってもよい。
【0021】
本願発明に係る欠陥検出方法は、例えば図1に示すような欠陥検出システム1と、撮像装置2、表示部12とによって構成される。
前記欠陥検出システム1は、被検査面画像記憶手段3、マスタ画像データ記憶手段4、色空間変換手段5、欠陥画像データ作成手段6、抽出色要素記憶手段7、抽出画像データ作成手段8、抽出欠陥画像データ作成手段9、欠陥領域検出手段10、表示手段11とを検査装置に備えている。
【0022】
前記撮像装置2は、ラインセンサであり、当該センサによって撮像された画像データは、欠陥検出システム1に出力される。撮像装置2としてラインセンサを用いると、オフセット印刷機にラインセンサを搭載することができ、枚葉紙等のシート状印刷物の印刷と同時に検査を行うことができる。
なお、撮像装置2としては、ラインセンサのように被検査面を分割して撮像したライン画像データを記憶手段に順次記憶させて当該記憶手段内部で被検査面のエリア画像を作成してもよい。また、デジタルカメラのように被検査面全体を一度に撮影してエリア画像を作成してもよい。
撮像装置2から出力されるから画像のデータとしては、撮像装置2のセンサがR(赤色)、G(緑色)、B(青色)の3つのによって構成されているときには、RGBの色空間によって作成された第1被検査面画像データを出力してもよい。また、前記RGBのセンサだけでなく、RGBセンサとこのセンサを補うセンサ(例えば、Y(黄色)等)のセンサとによって撮像された色空間でもよい。例えば、RGBYのセンサによって撮像されたときには、各センサから出力されたデータを記憶手段に記憶させてもよいが、RGBYのデータからRGBのデータに変換するRGB変換手段を撮像装置2に備えさせ、RGBYデータをRGBデータに変換した後に出力してもよい。
このように、撮像装置2から出力される色データがRGB色空間のデータであれば、撮像装置2を一般的な撮像装置を使用することができ、低コストで検査を行うことができるようになる。
【0023】
前記被検査面画像記憶手段3は、前記撮像装置2によって撮像された第1被検査面画像データ13(図3参照)を記憶する手段である。前記マスタ画像データ記憶手段4は、予め良否の判定基準となるマスタ画像のデータ14(図3参照)を記憶する手段である。
【0024】
前記欠陥画像データ作成手段6は、前記第1被検査面画像データ13のエリア画像の濃度レベルと、当該エリア画像に対応する前記マスタ画像データ14の濃度レベルとを比較し、この濃度レベル差が予め設定された第1許容値を超えた欠陥部分の欠陥画像データ16(図3参照)を作成する手段である。
【0025】
前記色空間変換手段5は、被検査面画像記憶手段3に記憶されているRGB色空間の第1被検査面画像データ13を、H(色相(Hue)、S(彩度(Saturation))、L(明度(Lightness))色空間の第2被検査面画像データ15(図3参照)に色空間を変換する手段である。なお、変換される第2色空間としては、HSL色空間以外にも、L***色空間、HSV色空間、マンセル色空間(マンセル表色系)やその他の色空間(表色系)でもよい。変換後の色空間としては、人間の色感覚に対応した色空間であれば、特定の色に近い色を検出しやすくなる。しかし、印刷に詳しい人が使用するときなどの特別なときには、YMCK(Y(黄色)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(黒色))の色空間に変換してもよい。
色空間の変換方法としては、公知の手段、又はそれらを組み合わせることによって変換可能であるので、本実施例では詳細な説明を省略する。
【0026】
前記抽出色要素記憶手段7は、抽出する色要素のデータ17(図3参照)の単又は複数を記憶する手段である。前記第2色空間がHSL色空間のときには、H、S、Lの各要素を抽出色要素データ17(図3参照)として記憶する。また、図5に示すように、HSL色空間S内の点Pの色要素と、この点Pを中心とした半径rを記憶させておき、点Pを中心とした半径rの球状空間内に含まれる色要素を前記抽出画像データ作成手段8によって抽出できるようにしてもよい。
【0027】
前記抽出画像データ作成手段8は、前記色空間変換手段5によって色空間が変換された第2被検査面画像データ15の中から、前記抽出色要素記憶手段7に記憶されている色要素を含む領域を抽出した抽出画像データ18(図3参照)を作成する手段である。
【0028】
前記抽出欠陥画像データ作成手段9は、前記欠陥画像データ16のエリア画像と前記抽出画像データ18のエリア画像とに基づいて、欠陥画像データ16の欠陥領域24,…24,25と抽出画像データの抽出領域26,27とで、一致する領域を抽出し、欠陥箇所の中から特定の色が含まれる欠陥箇所の画像を抽出した抽出欠陥画像データ19を作成する手段である。
【0029】
前記欠陥領域検出手段10は、前記抽出欠陥画像データ19のエリア画像の中の欠陥箇所の全てについて、その大きさが第2許容値より小さいか否かを判定し、第2許容値以上であれば不良箇所と判定し、それより小さければ正常箇所と判定する。そして、不良箇所が1つでもあれば、印刷物(被検査対象物)を不良品と判定する手段である。
また、欠陥領域検出手段10は、前記欠陥画像データ16における各欠陥箇所が第3許容値以上であれば不良箇所とし、第3許容値以下であれば正常箇所と判定する。そして、全ての欠陥箇所について判定したときに、1つでも不良箇所が存在した場合には、印刷物(被検査対象物)を不良品と判定する手段である。
【0030】
前記表示手段11は、前記欠陥領域検出手段10によって不良箇所が1つ以上あると判定されたときに、前記表示部12に不良箇所を含む画像を表示する手段である。
【0031】
つぎに、欠陥検出方法の処理に関して、図1〜4を用いて説明する。図2は、欠陥検出方法の処理を説明したフロー図であり、図3は、欠陥検出方法で使用するデータに関しての説明図であり、図4は、図3で示したデータをエリア画像として説明した図である。
【0032】
まず、マスタ画像データ14をマスタ画像データ記憶手段4に記憶させておく。この実施例でのマスタ画像データ14のエリア画像14aとしては、図4(a)に示す赤色の矩形20Rと緑色の矩形20Gのカラー画像とする。
【0033】
そして、被検査面を撮像装置2によって撮像し(S1)、RGB色空間の第1被検査面画像データ13を記憶手段3に記憶させる(S2)。ここで、被検査面画像のエリア画像13aとしては、図4(b)に示すような、赤色の矩形21R、緑色の矩形21G、赤色の丸形22R、青色の丸形22B,22B、黄色の丸形22Y,22Y、黒色の丸形23Kのカラー画像とする。なお、図4(a),(b)では、ハッチング等によって各色を表現している。また、マスタ画像の模様や印刷物に印刷された正常な模様を矩形20、21に、印刷物の夾雑物(印刷不良)を丸形22、23に簡略化して図示しているが、当然のことながらマスタ画像の形状や大きさ、夾雑物(印刷不良)の形状や大きさは、図示したものに限定されるものではない。
【0034】
ステップS2(S2)で、第1被検査面画像データ13が記憶されると、前記欠陥画像データ作成手段6は、前記マスタ画像データ14と第1被検査面画像データ13とから、両画像の濃度レベル差が第1許容値を超えた欠陥部分の欠陥画像データ16を作成する(S3)。欠陥画像データ16のエリア画像16aとしては、図4(c)に示すような、丸形の領域24,…,24と、これらより大きな領域の25とを含むデータが作成される。
濃度レベルの比較方法としては、マスタ画像と被検査面画像とを所定の大きさの領域に分割し、分割した分割画像の双方の濃度レベルを比較して欠陥部分を検出する方法がある。また、マスタ画像データと第1被検査面画像データとの画像の解像度が同じときには、画素毎に濃度レベルを比較して欠陥部分を検出する方法もある。さらに、その他の公知方法によって検出してもよい。
なお、前記第1許容値の許容値を小さくすると、前記2つの濃度レベル差が小さい箇所も検出され、多くの不良箇所を検出可能となる。一方、許容値を大きくすると、当該濃度レベル差が小さい箇所は検出されなくなる。
【0035】
前記欠陥画像データ16が作成されると、各欠陥部分の領域(面積)が第3許容値よりも小さいか否かを判定する。図4(c)のエリア画像16a内の欠陥領域25が第3許容値よりも大きい場合には、不良品と判定して、後述するステップ9(S9)に移行する。
一方、前記欠陥領域25の第3許容値よりも小さいときには、欠陥領域の大きさについては良品と判定し、ステップ5(S5)に移行する。
なお、他の欠陥領域24,…,24についても同様に、各欠陥部分の領域の大きさが第3許容値より小さいか否かのを判定し、良否判定をする。
また、欠陥領域の全てについて、その大きさが第3許容値よりも小さいときには良品と判定し、欠陥領域の大きさが第3許容値よりも大きい箇所が1つ以上存在するときには、不良品と判定する。
【0036】
ステップ4(S4)において、欠陥領域の大きさの良否判定がされ不良品でないとき、RGB色空間の前記第1被検査面画像データ13のエリア画像の色をHSL色空間にデータ変換し、第2被検査面画像データ15を作成する。この第2被検査面画像データ15のエリア画像は、図4(b)と同じであるが、図5で示しているH(色相)、S(彩度)、L(明度)によって構成される色空間Sのデータである。
このHSL色空間は、RGB色空間よりも人間の色感覚に近い色空間である。したがって、図5に示すように、この空間内の1点Pを中心とした半径r内の球状空間内は、人間の感覚として点Pの色に非常に近い色となるので、抽出したい色のHSL空間内の位置(点P)と、その位置を中心とした距離(半径r)を指定することで、印刷物の画像データの中から特定の色のエリア画像を抽出することができるようになる。
なお、図5では、点Pを中心とした半径rの球状を例示しているが、例えば、明度に関する抽出範囲を広くしたいときには、明度の軸方向が長軸となる楕円球状空間内に含まれる色要素を抽出するようにしてもよい。
【0037】
そして、HSL色空間にデータが変換された第2被検査面画像データ15と、前記抽出色要素データ17とから、抽出画像データ18を作成する(S6)。第2被検査面画像データ15の赤色の矩形21Rと赤色の丸形22Rとの色要素が、前記抽出色要素データ17の色要素に含まれるときには、図4(d)に示しているような、赤色の矩形21に対応する矩形の抽出領域26と、赤色の丸形22Rに対応する丸形の抽出領域27とが抽出される。
抽出画像データの作成方法としては、上述の濃度レベルの比較方法と同様に、第2被検査面画像データの画像を所定の大きさに分割し、この分割画像に指定された色要素が含まれるか否かを判定し、指定した色要素が含まれる領域検出する方法や、第2被検査面画像データの画像の画素毎に指定された色要素が含まれるか否かを判定し、指定した色要素が含まれる領域検出する方法等がある。
【0038】
そして、前記欠陥画像データ16と前記抽出画像データ18とから、欠陥画像データのエリア画像16aと、当該エリア画像16aに対応する抽出画像データのエリア画像18aとを比較して、一致する領域の抽出欠陥画像データを作成する(S7)。つまり、図4(c)のエリア画像16aと図4(d)のエリア画像18aとを比較すると、(c)の左上に位置する丸形の領域24rと(d)の丸形の抽出領域27とが一致しているが、その他の欠陥領域24,…,24,25は、抽出画像データの抽出領域26,27と一致していないので、図4(e)のようなエリア画像19aとなる。
欠陥画像データのエリア画像16aと抽出画像データのエリア画像18aとの比較方法としては、上述した濃度レベル差の比較方法と同様に、双方のエリア画像を所定の大きさに分割し、この双方の対応する分割画像を比較する方法や、双方の対応する画素毎に比較する方法等がある。
【0039】
そして、抽出欠陥画像データのエリア画像19a内の抽出欠陥領域28の大きさが、第2許容値より小さいか否かを判定する。第2許容値より小さい場合には印刷物は良品と判定し、第2許容値より大きい場合には不良品と判定する(S8)。
抽出欠陥画像データのエリア画像19a内の抽出欠陥領域28の大きさを測定するときには、図4(f)に示すように、該抽出欠陥領域28の水平方向の長さXと垂直方向Yの長さを測定し、このXとYとから大きさを求める。
なお、抽出欠陥領域が複数存在するときには、各領域毎に測定し、1つでも第2許容値より大きい領域が存在するときには、不良品と判定する。
【0040】
ステップ4(S4)、ステップ8(S8)において、不良箇所が検出されたときには、当該不良箇所を含むエリア画像(エリア画像の一部)を表示部12に表示する(S9)。このように表示部12に不良箇所のエリア画像を表示させることによって、不良箇所が分かる。
【0041】
上述の実施例では、抽出色要素データ17として赤色を例に挙げて説明していたが、当然のことながら他の色であってもよく、また複数の色を抽出するようにしてもよい。
なお、被検査対象物が食品のときにも、予め基準となるマスタ画像を記憶させておき、検査対象の食品を撮像することで、食品に含まれる異物を検出することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】欠陥検出システムに関するブロック図である。
【図2】欠陥検出方法の処理を説明したフロー図である。
【図3】欠陥検出方法で使用するデータの説明図である。
【図4】欠陥検出方法での各データのエリア画像の説明図である。
【図5】HSL色空間の説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1 欠陥検出システム
2 撮像装置
3 被検査面画像記憶手段
4 マスタ画像データ記憶手段
5 色空間変換手段
6 欠陥画像データ作成手段
7 抽出色要素記憶手段
8 抽出画像データ作成手段
9 抽出欠陥画像データ作成手段
10 欠陥領域検出手段
11 表示手段
12 表示部
13 第1被検査面画像データ
14 マスタ画像データ
15 第2被検査面画像データ
16 欠陥画像データ
17 抽出色要素データ
18 抽出画像データ
19 抽出欠陥画像データ
20,21 正常な模様
22,23 不良箇所
24,25 欠陥領域
26,27 抽出領域
28 抽出欠陥領域
P 中心点
r 半径
S HSL色空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査対象物の被検査面をカラー画像として撮像し、当該カラー画像に基づいて被検査面に存在する欠陥箇所を検出してなる被検査対象物の欠陥検出方法において、
前記被検査面を撮像装置によって撮像した第1被検査面画像を記憶手段に記憶し、
前記第1被検査面画像のエリア画像の濃度レベルと当該エリア画像に対応するマスタ画像のエリア画像の濃度レベルとを比較し、両画像の該当部分相互の濃度レベル差が予め設定された第1許容値を超えた欠陥部分の欠陥画像データと、前記第1被検査面画像を撮像した第1色空間から予め設定した第2色空間に色空間を変換した第2被検査面画像データから、単又は複数の予め設定された範囲の色要素を抽出した抽出画像データと、を作成し、
前記欠陥画像データのエリア画像と当該エリア画像に対応する前記抽出画像データのエリア画像とが一致するか否かを判定した抽出欠陥画像データを作成し、
当該抽出欠陥画像データの欠陥領域の大きさが予め設定された第2許容値以上であれば、当該欠陥領域を欠陥箇所として検出してなる欠陥検出方法。
【請求項2】
前記第1色空間は、前記撮像装置から出力される色データによって構成される色空間であり、
前記第2色空間は、HSL色空間である請求項1記載の欠陥検出方法。
【請求項3】
前記抽出画像データは、前記第2色空間における点を中心としたほぼ球状空間内に含まれる色要素を抽出した画像データである請求項1又は2記載の欠陥検出方法。
【請求項4】
前記撮影装置は、一方から他方へ向かって走行するシート状の印刷物を撮像するラインセンサであり、
前記撮像装置から順次出力される被検査面画像のライン画像データを記憶手段に順次記憶させて当該記憶手段内部で被検査面のエリア画像を作成してなる請求項1〜3のいずれかに記載の欠陥検出方法。
【請求項5】
前記欠陥画像データの欠落領域の大きさが予め設定された第3許容値以上であれば、当該欠陥領域を欠陥箇所として検出してなる請求項1〜4のいずれかに記載の欠陥検出方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−10525(P2007−10525A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−192957(P2005−192957)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000109200)ダックエンジニアリング株式会社 (13)
【Fターム(参考)】