説明

欠陥検査装置

【課題】 固定パラメータによらないで、機器や部品の諸特性の経時的変動に追従してホワイトバランスパラメータをリアルタイムで調整する欠陥検査装置を得る。
【解決手段】 検査対象に隣接して基準板11を設け、この基準板の白領域と黒領域を検査対象の撮像と同時に撮像し、基準板の画像データをRGB毎に抽出して、基準板画像入力部12を介してホワイトバランスパラメータ算出処理部13にてホワイトバランス補正データを生成し、RGB濃度変換部にて各色信号のホワイトバランスを調整する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カラーラインセンサカメラを用いた欠陥検査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、各種部品の素材表面状況、模様や文字等の印刷状況、素材表面への焼き付けや塗装状況等の良否を検査するに当たり、検査対象の表面をカメラで撮像して、得られた画像を処理することにより光学的に欠陥を検査する装置が普及している。検査対象の良否判断は、表面の汚れ、傷、色等について行われ、通常検査対象の物品を移動させた状態で検査が行われる。特に、従来の撮像画像は白黒画像が主流であったが、カラーカメラを使用した色の検査も検査項目となってきており、更に、表面模様等の複雑化、高精度の検査仕様要求に応じた検査装置が求められている。このような要請に沿った装置として、3板型CCDラインセンサカメラを使用したシート表面の欠陥を検査する検査装置例を図3に示す。
【0003】図3に示す検査装置は、まず、検査対象として矢印31の方向へ搬送されているシート32の表面を、3板型CCDラインセンサカメラ33により撮像する。シート32の表面にはカラーで印刷された文字34とタイミングマーク35が形成されている。3板型CCDラインセンサカメラ33は、受光用レンズ36と、光軸の調整された位置に配置された分光プリズム37と、分光プリズム37によって分けられた赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の光成分を受光するR−CCD38R、G−CCD38G、B−CCD38Bを有している。分光プリズム37の各反射面はバンドパスフィルタとなっており、RGBそれぞれの色の光成分のみを反射させる。
【0004】各CCD38R、38G、38Bからの出力信号は、R画像入力部39R、G画像入力部39G、B画像入力部39Bに入力される。このR、G、B各画像入力部39R、39G、39Bには、シート32に形成されているタイミングマーク35を検出するマークセンサ40からのタイミングマーク検出信号が入力され、このタイミングマーク検出信号をトリガーとして各CCD38R、38G、38Bからの撮像信号を取り込む機能を有している。
【0005】さて、精密に色の検査を行う場合には、検査対象の実際の色を正確に取り込むことが重要であるが、各CCDの特性等により出力となる色信号にばらつきが生じることがある。この結果、検査対象の色と異なる色が出力されることになり、正しい検査結果が得られないことになる。このため、いわゆるホワイトバランス調整といわれる色補正が行われる。即ち、標準的な色を構成するRGB成分からのずれを各色の出力信号に対して補正することにより、色再現性を向上させている。図3のRGB各画像入力部39R、39G、39Bからの出力信号は、赤色を対象としたR濃度変換部41R、緑色を対象としたG濃度変換部41G、青色を対象としたB濃度変換部41Bにてホワイトバランス調整が行われる。このホワイトバランス調整は、各色成分毎に設定されている固定ホワイトバランスパラメータを用いて行われ、各色毎の固定ホワイトバランスパラメータは、ホワイトバランスパラメータ設定部42に保存されている値を用いる。
【0006】ホワイトバランスが調整された各色の信号は色変換部43に入力される。この色変換部43では、RGB信号をいわゆるHSI信号に変換する。HSI信号は、色相(H)、彩度(S)、明度(I)を表しており、以後の検査のための画像処理はこのHSI信号を用いて行われ、各HSI信号はHフレームメモリ44H、Sフレームメモリ44S、Iフレーム44Iにそれぞれ格納される。また、RGB濃度変換部41R、41G、41Bからの各色信号を利用して、撮像画像を表示装置45により観察することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の検査装置では、ホワイトバランス調整を固定ホワイトバランスパラメータに依存して行っている。このことは、カメラを最初に使用する前に、予め当該カメラ固有のホワイトバランスパラメータを求め、このパラメータを設定しておく方式である。カメラ内のCCD等の各種部品や回路がホワイトバランス変動に経時的に影響を与えないのであればこの固定方式で問題ないが、実際には種々の変動が経時的に発生する。即ち、温度等の使用環境の変化による変動、カメラ内部品等の諸特性の経時的変動等によりホワイトバランス状況は変化する。このため、固定パラメータによる調整のみでは、RGB画像入力部39R、39G、39Bからの画像のホワイトバランスが当初の値から変動していると、正しいホワイトバランス調整が行われないことになり、検査精度の悪化要因となる。
【0008】本発明は、このような従来の欠点を解決するためになされたもので、簡単な構成により経時的に変動するホワイトバランスに十分対応でき、常に正しい調整を可能としたカラーラインセンサカメラを用いた欠陥検査装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、検査対象を搬送する搬送手段と、この搬送手段に隣接して配置され、表面に白領域並びに黒領域の設けられた基準部材と、検査対象並びに基準部材を撮像し、赤、緑、青画像を撮像する3種のラインセンサを有するカメラと、基準部材の白領域並びに黒領域の各々を3種のラインセンサにて撮像して得られた各基準部材の画像データを入力し、各色毎にホワイトバランスパラメータを算出するホワイトバランスパラメータ算出処理部とを備えたことを要旨とする。
【0010】本発明においては、搬送手段が検査対象を搬送すると、3種のラインセンサを有するカメラが搬送手段に隣接して配置された基準部材と、検査対象とを撮像する。
【0011】そして、ホワイトバランスパラメータ算出処理部がカメラによって撮像されたた基準部材の白領域並びに黒領域の各々の色のホワイトバランスパラメータを算出する。
【0012】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の一実施例の主要構成を示す図であり、図3と同一な個所は同一符号を付し、かつ重複した説明は原則的に省略した。表面に文字34がカラー印刷された検査対象であるシート32は矢印の方向に搬送されるが、このカラー印刷された文字34は3板型CCDラインセンサカメラ33により検査のために撮像される。撮像された画像の各色成分信号はRGB各CCD38R、38G、38BからRGB各画像入力部39R、39G、39Bに入力され、ホワイトバランス調整を行うRGB各濃度変換部41R、41G、41Bにて補正処理が行われる。ホワイトバランス補正処理がなされた各RGB信号は、色変換部43にてH(色相)、S(彩度)、I(明度)方式に変換される。そして、以後の検査処理はこのHSI信号を使用して行われる。
【0013】次に本発明の特徴であるホワイトバランスの調整について説明する。先ず、検査対象であるシート32の搬送路の近傍であって、3板型CCDラインセンサカメラ33による撮像範囲内に基準板11を配置する。このように配置することにより、検査対象の物品が順次検査処理が行われ搬送されていく場合であっても、基準板11は、カメラによって検査範囲を撮像する場合、検査対象の画像とともに基準板11の白並びに黒領域11w、11bの画像も撮像されることになる。即ち、経時的に検査対象画像が撮像されると同時に基準板11の画像も経時的に撮像され続けることになる。
【0014】この基準板11は、中央から上下に2つの領域に区分されており、一方が白領域11wで他方が黒領域11bに形成されている。白領域11w並びに黒領域11bとも光学的に基準となる白並びに黒にされている。即ち、白領域11wは、赤(R)、緑(G)、青(B)成分はいずれも等しい有意な値になるように形成されており、黒領域11bは、RGB各色の成分はいずれもゼロになるように形成されている。
【0015】今、3板型CCDラインセンサカメラ33により検査範囲を撮像した場合、シート32の表面に印刷されたカラーの文字34を含むシート32の画像とともに基準板11の白領域11w、黒領域11bの画像も撮像される。この結果、RGBに対応するCCD38R、38G、38Bからは、文字34の画像と基準板11の画像が併せて出力されることになる。そこで、検査対象である文字34の画像信号は、RGB画像入力部39R、39G、39Bに入力される如くし、基準板11の画像信号は、基準板画像入力部12に入力される。基準板画像入力部12に入力された基準板11の白領域11w並びに黒領域11bの画像は、RGBの各CCD38R、38G、38BにてRGB成分毎に出力されたものである。
【0016】基準板画像入力部12のデータは、ホワイトバランスパラメータ算出処理部13に入力され、RGB毎に算出されたホワイトバランスパラメータはR濃度変換部41R、G濃度変換部41G、B濃度変換部41Bにそれぞれ入力して、ホワイトバランス補正が行われる。このように、検査対象を検査の目的で所定範囲撮像する際に、同時に基準板も撮像され白領域11w、黒領域11bの画像を抽出することができ、この結果を用いてホワイトバランスパラメータを作成することができることから、検査環境の変化があってもリアルタイムでそのときに最適なホワイトバランスを補正することができるようになった。
【0017】さて、基準板画像入力部12に入力された基準板11の黒領域11b並びに白領域11wから赤(R)、緑(G)、青(B)成分の色信号を抽出して、ホワイトバランスパラメータ算出処理部13にて各色成分毎のホワイトバランスパラメータが算出される。これらのホワイトバランスパラメータは、RGB各濃度変換部41R、41G、41Bに提供される。図2は、ホワイトバランスパラメータ算出動作を概略的に示したもので、いずれも赤色(R)を例に説明する。
【0018】図2(a)は、基準板11からの黒信号Rb並びに白信号Rwが、全くホワイトバランス補正の必要のない最適状態の場合を示したものである。入力信号(R
【外1】


の場合が理想的な黒であることからして、適正な黒を取り込んでいることを表し
【外2】


に相当するレベルとなっており、出力信号R´としては何らホワイトバランス補正を必要としていないことを示している。なお、黒信号、白信号の平均値は、基準板の黒領域11b並びに白領域11wにおいて一定の矩形領域が設定されており、この矩形領域内の平均輝度をいうものである。
【0019】
【外3】


からずれていることになる。このため、黒信号は30ほど下げるように補正し、白信号は55ほど上げるように補正することにより、適正な色信号として取り込むことができる。ここでは、赤(R)のみを例に説明したが、同様な補正処理を他の緑(G)、青(B)についても行うことにより、各色信号が適正な信号として取り込むことができる。
【0020】以上の関係を数式で表現すると、次のようになる。ここで、Rは入力信号、
【外4】


平均レベル、Ltは目標レベル(基準板の白領域がこのラベルに変換される)である。なお、上記は赤(R)の例であるが、式中、緑はG、青はBであって、それぞれ上記の意味と同一である。
【0021】
【数1】


【数2】


【数3】


上記各数式に各色毎の数値を代入してその結果を該当する濃度変換部に設定することによって、適切なホワイトバランス調整が行われる。
【0022】
【発明の効果】本発明によれば、検査対象が搭載される位置の近傍に白領域並びに黒領域からなる基準板を設け、検査対象を撮像すると同時にこの基準板の白領域並びに黒領域を撮像し、これら基準板からの信号に基づいてホワイトバランス調整を実施することができるようになり、このためリアルタイムでホワイトバランスの調整を行うことができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の動作を説明するためのグラフである。
【図3】従来技術を示す概略構成図である。
【符号の説明】
11 基準板
11w 白領域
11b 黒領域
12 基準板画像入力部
13 ホワイトバランスパラメータ算出処理部
32 シート
33 3板型CCDラインセンサカメラ
38R R−CCD
38G G−CCD
38B B−CCD
39R R画像入力部
39G G画像入力部
39B B画像入力部
41R R濃度変換部
41G G濃度変換部
41B B濃度変換部
43 色変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 検査対象を搬送する搬送手段と、この搬送手段に隣接して配置され、表面に白領域並びに黒領域の設けられた基準部材と、前記検査対象並びに前記基準部材を撮像し、赤、緑、青画像を撮像する3種のラインセンサを有するカメラと、前記基準部材の白領域並びに黒領域の各々を前記3種のラインセンサにて撮像して得られた各基準部材の画像データを入力し、各色毎にホワイトバランスパラメータを算出するホワイトバランスパラメータ算出処理部とを具備することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】 前記ホワイトバランスパラメータ算出処理部により得られたパラメータ信号並びに前記3種のセンサからの検査対象の画像データが入力された各画像データの濃度を変換する濃度変換手段とを具備することを特徴とする請求項1記載の欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2000−214103(P2000−214103A)
【公開日】平成12年8月4日(2000.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−14772
【出願日】平成11年1月22日(1999.1.22)
【出願人】(000221018)東芝エンジニアリング株式会社 (9)
【Fターム(参考)】