説明

歯車減速装置、電子写真画像形成装置

【課題】 画像形成装置に用いて高画質を得られる歯車製作用の基準ラックを歯形創成より検討し、基準ラックの各寸法を最適に設定し、1段減速によって減速比1/10〜1/25とする減速歯車列を構成する。
【解決手段】 二つの歯車よりなり、1段減速によって減速比1/10〜1/25とする減速歯車列を備える歯車減速装置である。歯車の歯形は、圧力角α=20°、歯の大きさは0.1〜0.5mの範囲内(m=モジュール)、歯末のたけhf1.0m以上1.25m以下の範囲の高さ、歯厚So=0.45ピッチである歯形創製ができる基準ラック20で製作した歯形の歯車を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源の回転数を駆動対象とする回転数までに減速する歯車減速装置と、これを利用した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の分野において、モータ等の駆動源より歯車減速装置を用いて構成する方式が一般的に用いられてきた。歯車減速装置に用いられるDCモータは、出力に見合った安定した一定回転性能を得るために、回転速度をあまり低く抑えないで1000rpm〜2500rpm程度に設定し駆動制御するのが一般的である。また、ステッピングモータは汎用性やコストの観点よりステップ角を特殊なものにせず、例えば1.8°程度のものを選び、汎用性と低コストの駆動回路で滑らかな回転駆動を得るには500rpm〜1500rpm程度に設定するのが一般的に知られている。
【0003】
しかし、ステッピングモータ駆動は一定の回転性能は得られるものの、低速回転数(低い駆動周波数)では、ゴツゴツあるいはカクカクとまわる「コギング現象」でモータ振動が発生し、これが画像形成装置に伝達して画質低下を招くことがある。また高回転数では「コギング現象」が軽減されるものの、高い駆動周波数を要求することになる。これらの制約の中で実現するために、ある範囲の回転数で設定されてきた。
【0004】
一方、画像形成する部分は機種によって様々な画像形成スピードがある。この速度は、例えば感光体ドラムで考えた時、感光体ドラムの直径とモータによって駆動されるドラムの毎分の回転数で決まってくる。これらのスピードはレーザプリンタで説明すると、ドットの書き込み密度(dpi)やポリゴンミラーの回転数等より画像形成のプロセススピードが決まってきて、50rpm〜200rpmの回転数でドラム径も20mm〜60mmの組み合わせで構成されている。
【0005】
以上の関連より、感光体ドラムを駆動させるために、モータより1/10〜1/25程度の減速比で歯車減速装置が組み込まれている。
【0006】
この様な減速比を構成するには、通常は2〜3段の減速歯車構成で実現してきた。モータ軸にピニオンを固定し、減速歯車の大歯車と噛合わせ数分の1の減速段を設け、減速歯車の大歯車と同軸上に構成したピニオンと感光体ドラムに構成した大歯車をかみ合わせ、数分の1の減速段を構成し、その掛け合わせた比を2段減速で得られた減速比として使ってきた。大きな減速比は、さらに1個の減速歯車を追加して噛合わせ、3段減速で必要な減速比を得てきた。
【0007】
これらの減速装置では、歯車や軸の加工、それらの組み立てで発生する様々な寸法上の誤差がある。これらの加工・組立誤差は、回転減速においては回転速度ムラとなって画像品質低下を招いている。例えば2段減速を例にとってみると、モータ軸の偏芯(フレ)やピニオンの偏芯はモータ1回転の周期で画像の送りムラとして発生し、画像の「濃度ムラ」や「バンデング」として顕在化する。噛合う各歯車についても、加工上から歯形誤差が発生し各歯が噛合う各周期(周波数)ごとに速度ムラとして画像に影響を与えている。これらの各誤差が各周期ごとに画像上に現れ「ピッチムラ」等として扱っている。
【0008】
人間の目で見る「ピッチムラ」には、感度よくピッチのムラを見ることができる帯域があり、視覚感度としてある特性を持っている。2段減速の回転ムラが発生する全ての個所(各周波数)は、視覚感度が高く僅かのピッチムラも目について画像品質が悪いと判断してしまう。
【0009】
これらの技術課題に対し、これまでに様々な改良が重ねられてきた。発生する個所を少なくするために1段減速で構成したものや、1段減速構成で駆動する歯車のモジュールを小さくして、噛合い周波数を高くし、歯車の歯形加工誤差で発生する歯1枚ごとのピッチムラを画像上で細かくすることで、視覚感度の高い帯域からシフトさせて目立たなくする手法が取られた例がある(例えば特許文献1、2参照)。
【0010】
しかしながら、最近のカラー画像を扱う画像形成装置に要求される高画像品質(速度ムラによる画質低下)という点がある。1段減速構成の画像形成装置における高画質化の技術課題は
(1)汎用性の高い低価格モータで構成した駆動モータから感光体ドラム駆動を1段減速するには、前述した減速比を1/10〜1/25で構成することになる。
(2)例えば4連タンデム構成のカラー画像形成装置に用いられるモータは、各色のトナーを其々のプロセスカートリッジ構成にするため、20w〜30w程度の出力のモータを用いることが一般的である。
(3)モータ軸径は6mm〜8mm程度であり、ピニオンを別体で加工し組み立てれば前述した様に誤差が重なるので、モータ軸に直接歯切りして用いることになる。
(4)その結果、ピニオンの外径はモータ軸径に支配されることになる。例えば6mm軸に0.5や0.8のモジュールで歯切りを行う技術が開発されている(例えば前記特許文献1、2参照)。ただし、0.5や0.8のモジュールで歯切りを行えば、歯数が7枚や12枚のピニオンになってしまい、標準的なホブ(歯切り用刃物工具)で加工し、創成した歯型はアンダーカットしたもので実用上、すなわち強度上の課題が残る。
(5)高減速比とピニオンの歯数が小さいために、噛み合い率が大きく確保できない。噛み合い率を確保する手段としてはすば歯車にすれば少しは向上するが、高減速比とピニオンの曲率半径が小さく、効果は小さい。
【0011】
以上のように、設計する観点からの制約に対して解決する方法の一つとして小モジュール化がある。前記特許文献にも記述されているように、実用化には限界がある。
【特許文献1】特開平10−39715号公報
【特許文献2】特開2001−109223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記特許文献1では、モジュール0.5とした例が記述されているが、本発明は、歯形創成より見直すことにより、さらに小モジュール化を図れ、噛合い周期で発生する速度ムラを高域にシフトさせて視覚感度の目立つ領域外に持っていくことができ、構成上や、加工・組立上からの制約である実用限界を小さくし、画像形成装置においては画質向上を実現できる技術を提供することを目的とする。
【0013】
ところで従来は、小モジュール化の制約は、歯の高さ(mm)が小さくなることにより、加工・組立上の誤差や温度変化での熱膨張など寸法変動によって、余裕幅がなく、通常の噛合い状態の維持ができなくなり、実用上の限界とされてきた。
【0014】
例えばモジュール0.5の場合で見てみると、ピニオンの歯と感光体ドラムの歯がピッチ円上で噛合う時の寸法は誤差0とした時、1.0mmの幅で噛合っている。モータ軸と軸受のガタ、軸のフレ、ピニオンの外形誤差、偏芯、噛合う側の感光体ドラムの歯車も同じ項目の誤差があり、これに軸間距離の加工誤差や軸の傾きなどが加わる。さらに、温度上昇により熱膨張等が加算され、その中でバックラッシ(隙間)を確保して滑らかに回転するには1.0mmの噛合い幅の何割かが無くなる状態にしなくてはならない。高精度化すれば多少は改善されるが低コストで実現するためには限界があり、これらのことをまとめて実用限界としてきたのである。
【0015】
そこで本発明は、歯形創成より検討を加えた。近年は、互換性など国際化によって「インボリュート歯車の歯型及び寸法」でJIS規格化された「基準ラック」の規格により統一化されてきたが、すべての製品に用いる歯車に適用することは困難であり、用途目的によっては、準拠するにとどまっている特殊製品分野も一部に存在することを付記する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の請求項1に係る歯車減速装置は、二つの歯車よりなり、1段減速によって減速比1/10〜1/25とする減速歯車列を備える歯車減速装置であって、前記歯車の歯形が、圧力角を20°、歯の大きさをモジュール0.1〜0.5の範囲内、歯末のたけをモジュールの1.0以上1.25以下の範囲の高さ、歯厚を0.45ピッチである歯形創製ができる基準ラックで製作した歯車歯形を用いてなることを特徴とする。
【0017】
同請求項2に係るものは、請求項1の歯車減速装置において、駆動源側の歯車には高剛性の金属材を用い、被駆動体側の歯車にはプラスチック材を用いてなることを特徴とする。
【0018】
同請求項3に係るものは、請求項2の歯車減速装置において、前記駆動源側の歯車の歯形は、正転位係数0.6迄の正転位をした歯車歯形創製を用いてなることを特徴とする。
【0019】
同請求項4に係る画像形成装置は、感光体を駆動モータから減速歯車列を介して回転駆動し、記録媒体に画像を形成する画像形成装置において、請求項1から3のいずれかに記載の歯車減速装置を用いてなることを特徴とする。
【0020】
同請求項5に係るものは、請求項4の画像形成装置において、前記感光体と同軸または一体に設けた最終段歯車を、前記駆動モータのモータ軸に設けたピニオンで直接駆動することを特徴とする。
【0021】
同請求項6に係るものは、請求項5の画像形成装置において、前記ピニオンに高剛性の金属材を用い、前記最終段歯車にプラスチック材を用いた減速歯車列を構成してなることを特徴とする。
【0022】
同請求項7に係るものは、前記ピニオンの歯形は、正転位係数0.6迄の正転位をした歯車歯形創製を適用したものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、画像形成装置に用いて高画質を得られるようにするための歯車駆動に用い得る基準ラックの各寸法を最適値に設定することにより、軽負荷トルク駆動(1N・m以下)、3000rpm以下の領域で一方向の回転伝達で円滑な噛合い状態を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下本発明を実施するための最良の形態を、図に示す実施例を参照して説明する。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明に係る複写機における画像形成部全体の概略構成図である。この複写機は、図示しない画像読取部から画像情報である画像データを受け取って画像形成処理を行う。この複写機には、図に示すように、イエロー(以下、「Y」と省略する。)、マゼンタ(以下、「M」と省略する。)、シアン(以下、「C」と省略する。)、ブラック(以下、「Bk」と省略する。)の各色用の4個の回転体としての潜像担持体である感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkが並設されている。これら感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkは、駆動ローラを含む回転可能な複数のローラに支持された無端ベルト状の中間転写ベルト5に接触するように、そのベルト移動方向に沿って並んで配置されている。また、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkの周りには、それぞれ、帯電器2Y、2M、2C、2Bk、各色対応の現像装置9Y、9M、9C、9Bk、クリーニング装置4Y、4M、4C、4Bk、除電ランプ3Y、3M、3C、3Bk等の電子写真プロセス用部材がプロセス順に配設されている。
【0026】
この複写機でフルカラー画像を形成する場合、まず、図に示すように、後述する感光体駆動装置により、感光体ドラム1Yを図中矢印の方向に回転駆動しながら帯電器2Yで一様帯電した後、図示しない光書込装置からの光ビームLYを照射して感光体ドラム1Y上にY静電潜像を形成する。このY静電潜像は、現像装置9Yにより、現像剤中のYトナーにより現像される。現像時には、現像ローラと感光体ドラム1Yとの間に所定の現像バイアスが印加され、現像ローラ上のYトナーは、感光体ドラム1Y上のY静電潜像部分に静電吸着する。
【0027】
このように現像されて形成されたYトナー像は、感光体ドラム1Yの回転に伴い、感光体ドラム1Yと中間転写ベルト5とが接触する1次転写位置に搬送される。この1次転写位置において、中間転写ベルト5の裏面には、1次転写ローラ6Yにより所定のバイアス電圧が印加される。そして、このバイアス印加によって発生した1次転写電界により、感光体ドラム1Y上のYトナー像を中間転写ベルト5側に引き寄せ、中間転写ベルト5上に1次転写する。以下、同様にして、Mトナー像、Cトナー像、Bkトナー像も、中間転写ベルト5上のYトナー像に順次重ね合うように1次転写される。
【0028】
このように、中間転写ベルト5上に4色重なり合ったトナー像は、中間転写ベルト5の回転に伴い、2次転写ローラ7と対向する2次転写位置に搬送される。また、この2次転写位置には、図示しないレジストローラにより所定のタイミングで転写紙が搬送される。そして、この2次転写位置において、2次転写ローラ7により転写紙の裏面に所定のバイアス電圧が印加され、そのバイアス印加により発生した2次転写電界及び2次転写位置での当接圧により、中間転写ベルト5上のトナー像が転写紙上に一括して2次転写される。その後、トナー像が2次転写された転写紙は、定着ローラ対8により定着処理がなされた後に装置外に排出される。
【0029】
図2に示すように、本発明の歯車減速装置が採用する1段減速の手段では、駆動モータ10のモータ軸11に直接歯切りしたモータ軸ピニオン12と感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkを駆動するための大歯車13を各色の感光体ドラムに構成して噛み合うように配置し、固定している。感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkの軸14は側板に軸受(これらは図示していない)を介して回転自在に固定される。駆動モータ10も側板上に、大歯車13と噛み合う位置に配置、固定する。
【0030】
図3は本発明の実施例を構成する高歯基準ラック20の歯と同じく従来例のラック21の歯とを比較して示す図である。高歯基準ラックの各寸法は、
(1)歯末のたけha:1.2m
(2)歯元のたけhf:1.5m
(3)全歯たけh:2.7m
(4)頂げきC:0.3m
(5)歯元形状:tan R(歯元応力の強度を確保するため、アール形状にする)
(6)圧力角α:20°
(7)歯厚So:0.45mπ(正規の中心距離で0.1mπのバックラッシを確保)
【0031】
この基準ラックにより歯切りした歯車は並歯歯車に比べ、下記の様な特徴を持っている(同じモジュールの並歯と高歯のシミュレーション結果については図4に示す表(図4A)とグラフ(図4B)を参照)。すなわち、並歯に比べ、噛合い率が大きく確保できることである。
【0032】
一般的に、一対の歯車は噛合い率が大きければ滑らかな回転伝達がなされ騒音や速度ムラが抑えられると言われている。これは噛み合っている歯の数が複数であれば歯の単一ピッチ誤差も含め負荷駆動にも滑らかな歯毎の送り伝達が次々と駆動伝達することである。但し、噛合い率は様々な誤差が交錯しており、大きいほうが(噛合う歯が多いほうが)滑らかな回転伝達ができると実用上は言われている。
【0033】
本願発明者が行ったシミュレーション結果はPOM材の歯車を用い、3Kgf・cmの負荷がかかった状態での計算値である。歯車材の剛性強度を考慮し、負荷に対し僅かな変形と噛合い率の差が速度変動に表れた。歯対剛性は、解析面では、歯部をFTM(有限要素法)モデル化し、負荷荷重に対する変形量を求め、それをもとに剛性を算出したり、歯部を梁でモデル化したLewisの式を使ったりして得られるものである。また実験面では、歯部を取り出し(歯部以外を削り取り)、負荷に対するたわみを計測することで求めることができる。
【0034】
シミュレーションの条件では、ピニオンがステンレス鋼材を想定し、5.76×10N/mとし、大歯車はPOM材として5.76×10N/mの歯対剛性で計算した。
【0035】
本願発明者等が実際に試作して確認したところ、噛み合い速度ムラの絶対値はシミュレーション結果と合ってないが、高歯歯車の方が並歯に比べ小さいことを確認した。
【0036】
実際のプリンタを想定して設計計算をしてみると、従来の並歯歯車でモジュールm=0.3で設計すると、図4の表より、減速比1/22でピニオンの歯数がz=15、大歯車の歯数がZ=330、軸間距離が53.8355mmと決まってくる。噛合い周波数は393.9Hzとなって、紙速(画像形成速度)が150mm/秒の速さであれば150/393.9=0.38mm、周期で噛合い時(1歯毎)の加工誤差成分が画像にノイズとして乗ってくることになる。また、歯車の噛合い率はネジレ角16度のハス歯歯車で計算し、5.7027を得ている。
【0037】
この一対の歯車は、それぞれのピッチ円上で噛み合った時、歯の高さより0.3+0.3=0.6mmの幅で噛合っていることになる。しかし、これは誤差の無い理想的な寸法であり、加工誤差や組立誤差、更に環境温度変化に対しPOM材の熱膨張を考慮すると、噛み合い幅の寸法は0.6mmの確保が難しい設計となる。
【0038】
ここに、さらに画質改善のために実施した事例は、高歯歯車のm=0.25で構成することである。図4の表より、同じ条件の設計と同じ大きさ寸法の歯車で、ピニオンZ=18、大歯車Z=396となる。噛合い周波数は472.7Hzとなり、20%の噛合い周波数となって、紙速(画像形成速度)が150mm/秒の速さであれば、150/472.7=0.32mm周期で噛み合い時(1歯毎)の加工誤差成分が画像にノイズとして乗ってくることになる。
【0039】
これにより、視覚感度も高い領域から鈍感な領域にシフトが出来ることになる。噛合い率では6.84872が得られ、m=0.3に比べ20%増大している。
【0040】
噛合い幅の寸法は、高歯歯車であり(m×1.2)+(m×1.2)=0.6mmと、m=0.3と同じ幅が得られるので、環境温度変化の対応や加工誤差の制約条件は同じことになる。
【0041】
この様に、他部との歯車交換を可能にする共通化、互換性を必要としない部分での性能品質向上に向けて軽負荷、小モジュール歯形、一方向の回転伝達等の制約条件において、本発明の基準ラックの寸法比で構成する高歯歯車は画質向上に優位なものと言える。
【0042】
本実施例の高減速比で1段減速を実施した事例では、モータ軸ピニオンは小径で曲率半径も小さい。それに比して大歯車は減速比の逆数の大きさになり、微視的にはラックとピニオンの噛合い状態に近いものがある。
【実施例2】
【0043】
噛み合い率を大きくする方法や手段を前述したが、別のアプローチとして歯毎に生じる噛合い伝達の衝撃を和らげる目的で歯先の修正がある。特殊な歯形ホブを用いず、正転位歯車で代用させる方法でモータピニオンの歯形を創製し、頂げきを確保する転位量を設定する。ピニオンの歯数によっては、アンダーカットを起さない歯数にも適用することである。この歯数は高歯歯車の歯末の大きさにも関連するが、0.6の正転位係数の歯車までの歯形修正を実施し、高歯歯車と組み合わせて噛合い時の速度変動を改善した。
【0044】
図5のグラフは実際に試作し確認した結果である。歯形の大きさはモジュール=0.25として、それぞれ標準(並歯)のホブカッターで製作した歯車と、今回の高歯のホブで製作した歯車である。材質はピニオンが鉄系の材質と大歯車はPOM材と同一での比較実験を行った。図5のグラフからも覗えることは、高歯歯車の噛み合い周期の速度ムラは実験値の差は別として、シミュレーション通りの結果が出ている。また、軸間距離を離して噛合い駆動をさせても高歯歯車は安定した回転伝達をしており、前述した温度による熱膨張や加工誤差による偏芯が噛合い状態をばらつかせることなく駆動できることを示している。
【0045】
本発明に係る高歯歯車を画像出力用の回転伝達機構に用いることは、視覚による画質向上を可能とし、実用化の課題である使用環境温度条件や加工誤差への許容値を軽減する要素として有意な手段である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施対象となる画像形成装置である複写機の要部を示す概念図
【図2】本発明の歯車減速装置の概念的構成を示す斜視図
【図3】本発明の実施例を構成する高歯基準ラックの歯と同じく従来例の歯とを比較して示す図
【図4】同じモジュールの並歯と高歯のシミュレーション結果についての表(A)とグラフ(B)を示す図
【図5】歯毎に生じる噛合い伝達の衝撃を和らげるための歯先の修正を実際に試作して確認した結果のグラフを示す図
【符号の説明】
【0047】
1Y、1M、1C、1Bk:感光体ドラム
5:中間転写ベルト
2Y、2M、2C、2Bk:帯電器
9Y、9M、9C、9Bk:現像装置
4Y、4M、4C、4Bk:クリーニング装置
3Y、3M、3C、3Bk:除電ランプ
7:2次転写ローラ
8:定着ローラ対
10:駆動モータ
11:モータ軸
12:モータ軸ピニオン
13:大歯車
14:感光体ドラムの軸
20:高歯基準ラック
21:従来例のラック
ha:歯末のたけ
hf:歯元のたけ
h:全歯たけ
C:頂げき
α:圧力角
So:歯厚


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの歯車よりなり、1段減速によって減速比1/10〜1/25とする減速歯車列を備える歯車減速装置であって、前記歯車の歯形が、圧力角を20°、歯の大きさをモジュール0.1〜0.5の範囲内、歯末のたけをモジュールの1.0以上1.25以下の範囲の高さ、歯厚を0.45ピッチである歯形創製ができる基準ラックで製作した歯車歯形を用いてなることを特徴とする歯車減速装置。
【請求項2】
請求項1の歯車減速装置において、駆動源側の歯車には高剛性の金属材を用い、被駆動体側の歯車にはプラスチック材を用いてなることを特徴とする歯車減速装置。
【請求項3】
請求項2の歯車減速装置において、前記駆動源側の歯車の歯形は、正転位係数0.6迄の正転位をした歯車歯形創製を用いてなることを特徴とする歯車減速装置。
【請求項4】
感光体を駆動モータから減速歯車列を介して回転駆動し、記録媒体に画像を形成する画像形成装置において、請求項1から3のいずれかに記載の歯車減速装置を用いてなることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4の画像形成装置において、前記感光体と同軸または一体に設けた最終段歯車を、前記駆動モータのモータ軸に設けたピニオンで直接駆動することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5の画像形成装置において、前記ピニオンに高剛性の金属材を用い、前記最終段歯車にプラスチック材を用いた減速歯車列を構成してなることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記ピニオンの歯形は、正転位係数0.6迄の正転位をした歯車歯形創製を適用したものであることを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−301389(P2006−301389A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−124464(P2005−124464)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】