説明

残留した保護ガスを燃料ガスとして使用するための方法及び工業炉

【課題】燃料ガス及び保護ガスによって動作する、原材料を熱処理するための工業炉におけるエネルギー効率を上昇させる。
【解決手段】加熱のために、第1の燃焼器3.1が、第2の燃焼器3.2よりも前に優先的に動作され、第2の燃焼器3.2は、第1の燃焼器3.1の出力が工業炉1の温度−要求値に達するために必要とされる出力を下回ると、スイッチオンされると共に動作し、第2の燃焼器3.2は、温度−要求値に達すると、スイッチオフされると共に動作を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残留した保護ガスを燃料ガスとして使用するための方法及び工業炉に関し、特に、高温炉及びその上流に配置された予熱炉を含むマルチチャンバ炉またはプッシャー炉などの工業炉において使用するための方法及び工業炉に関する。本発明にかかる方法は、燃料ガス及び保護ガスを使用して原材料の熱処理を行う、あらゆる工程及び工業炉に適用可能である。
【0002】
既に当該専門分野、すなわち、例えば、DE第10 2008 020 449 A1号では、この種の工業炉は、基本的にエネルギー効率良く操業可能なように実施可能であることを前提としている。この前提には、特に、ハウジングを少なくとも部分的に包囲すると共にハウジングの壁から距離を置いて絶縁ケースを設けることが含まれる。ハウジングの壁と絶縁ケースとの間には、対流空間が形成され得る。
【0003】
しかし、より好ましくは、保護ガスなどのガスを利用する方法プロセスを、根本から改善することが重要である。
【背景技術】
【0004】
工業炉内に発生するいわゆるエンドガスは、技術機能的観点からは、発生器において発生したガス混合物であると定義される。このガスは、酸化から保護するための保護ガスとして使用され得る。
【0005】
工業炉では、あらゆるガス混合物が保護ガスとして機能する。このガス混合物は、熱処理中の部品を、望ましくない化学反応から保護するものである。従って、例えば窒素は、酸化、及び脱炭などの浸炭から保護するための保護ガスとして用いられる。
【0006】
いわゆるエンドガスは、炭素を放出するため、酸化から保護するための保護ガスとしてのみ使用可能である。すなわち、エンドガスは、部品を浸炭するように機能する炭素搬送ガスである。
【0007】
本発明の意味するところでは、発生する保護ガスは、当業分野において一般的であるように、機能を限定した表現であるエンドガスを含むものである。しかし、本発明は、発生するエンドガスだけに限定されるものではない。
【0008】
保護ガスを用いて動作する工業炉において、当業分野は既に、例えばEP第0 282 715号に記載されているように、汚染排ガス値の低減に大々的に取り組んでいる。
【0009】
さらにまた、工程において消費されなかったガスのエネルギー容量を利用することが重要である。
【0010】
これに関して、工業炉設備から排出される炉排ガスのエネルギー容量を利用するための方法が示される。この方法は、次の解決策を含む。
【0011】
DE第 34 32.652C2号によれば、炉を開く間に炉開口部の領域において、燃料ガスを燃焼させる燃焼器を、簡単かつ経済的に動作させるという課題が認識される。当該発明によれば、ここで、炉の排ガスは冷却され、圧縮され、保存されて、最終的に少なくとも部分的に、燃料ガスとして、炉開口部の領域における1つまたは複数の燃焼器に供給されることになる。このために適した装置が提案されている。
【0012】
排ガスを燃料ガスとして使用することにより、熱煙を、石油生成物とは全く無関係に形成することが可能になる。
【0013】
DE第197 20 620 A1号に記載の公知の、工業炉設備から排出された炉排ガスのエネルギー容量を利用するためのさらに改善された方法は、炉排ガスの少なくとも一部を回収し、加熱のために再び使用すること、場合によっては熱媒体をさらに加えて加熱するために、再び使用することを含む。
【0014】
従って、当該方法の有効な変形例は、炉排ガスを、少なくとも実質的な排出箇所において炉から流出させ、送風機によって、(場合によっては燃料をさらに加えて)、炉の1つまたは複数の一般的な加熱放射管に供給することから構成される。
【0015】
ここで、炉排ガスは、さらに加圧されて、または吸引されて、燃焼部に供給される。
【0016】
この種の、複数のチャンバまたは処理室を備える公知の工業炉設備、例えばプッシャー炉設備では、使用済みのプロセスガスに応じて、少なくとも従来技術で公知の内部方法ステップが、それぞれ、次のように行われる。
【0017】
(a)プッシャー炉においてガス及び燃焼器を始動させるステップ
割り当てられた予熱炉内の、この場合天然ガスが、いわゆる高温炉の環状路を通って供給され、まず、ガスの始動が行われる。そして、制御装置において、自動始動ルーチンが行われる。この過程において、環状路の漏れ検査が行われる。
【0018】
(b)予熱炉においてガス及び燃焼器を始動させるステップ
ステップ(a)と同様に、ここでも、制御装置において、自動始動ルーチンが行われる。ここで、いわゆるオープン燃焼器が用いられる場合には、工業炉を、まず安全な標準状態にする必要がある。このためにまず、炉のドアを閉め、関連する燃焼器の空気導管を介した例えば炉の5倍の容量の空気で、工業炉を洗浄する。その後、燃料ガス導管、例えば天然ガス導管の漏れ検査が、漏れ検査ユニットによって行われる。燃焼器の始動の前に、炉のドアは再び開かれる。そして、この燃焼器及びいわゆる点火燃焼器が始動される。例えば、燃焼器のイオン化監視装置により、安定な燃焼が報告されると、炉のドアは再び閉じられ、予熱炉は、(加熱燃焼器としての)燃焼器によって、動作温度に加熱される。ここで、点火燃焼器は、予熱炉が再びスイッチオフされるまで、燃焼し続ける。
【0019】
(c)プッシャー炉にガスを発生させるステップ
例えば、少なくとも750°Cの温度を超過すると、プッシャー炉には、保護ガスが発生する。ガス発生器の種類に応じて、いわゆるエンドガスまたは窒素/メタノールが、搬送ガスとして、設備の中に挿入される。プッシャー炉の有効なガス発生は、燃焼部の超過圧力弁によって設定された超過圧力に達すると同時に、炉内に目標のC量が生じた時に、終結する。
【0020】
実行されるこれらの方法ステップを分析すると、燃焼される炉排ガスが排出されるため、いわゆるエンドガスのような保護ガスの燃焼を、工業炉のエネルギー効率を上昇させるために利用することを改善する必要があることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】DE第197 20 620 A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の課題は、工業炉一般、及び、特にプッシャー炉設備といったマルチチャンバ炉において、保護ガス、例えばエンドガスの燃焼の効率を上昇させること、及び、例えばプッシャー炉設備を包含する高温炉及び予熱炉において、今まではエネルギー的に再利用されることなく排出されていた、発生する保護ガスを、燃料ガスとしてより効率良く使用することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上述した工業炉の作業工程についての課題は、本発明によって解決される。
本発明は、
(a)工業炉の燃焼器を作動させるステップと、
(b)工業炉に接続された予熱炉の燃焼器を作動させるステップと、
(c)工業炉へガスを供給するステップと、
(d)予熱炉の第1の燃焼器を保護ガス燃焼器として設定するステップとを含む。
【0024】
本発明によれば、その後、次のステップが行われる。
(e)第1の燃焼器を点火するステップ、
(f)第1の燃焼器を作動させるステップ、
(g)第1の燃焼器を停止させるステップ、
(h)第1の燃焼器が故障した場合に対応するステップ、及び
(i)第1の燃焼器の作動中に第1の燃焼器の上流側の圧力が不十分である場合に対応するステップ。
【0025】
上記の目的を達成するために、次のことが提案されている。
【0026】
(1)第1の燃焼器を保護ガス燃焼器として使用する。保護ガスは、天然ガスなどの発熱量がより少ない燃料ガスと共に燃焼させられる。保護ガス燃焼器である第1の燃焼器を確実に点火するために、第1の燃焼器を点火するための第3の燃焼器、及び/または第1の燃焼器の炎をモニタリングするためのUVセンサが使用される。第3の燃焼器は、天然ガス等の燃料ガスが供給され、持続的に点火している。
【0027】
(2)送風機により高温炉から保護ガスを引き出すことによって、予熱炉の第1の燃焼器(保護ガス燃焼器)への保護ガスの供給を行う。第1の燃焼器の機能を維持するために次のことを行う。
・送風機の周波数を調節することによって、第1の燃焼器への保護ガスの供給量(すなわち、炉設備からの保護ガスの吸引量)を調節する。
・過熱から保護するために、保護ガスをガス冷却器によって冷却する。
・送風機によって、保護ガスの圧力を第1の燃焼器に必要なレベルに調節する。
・高温炉から予熱炉へ保護ガスを供給するための保護ガス供給ライン内の圧力を圧力センサ等によって継続的にモニタリングし、周波数変換器で送風機を制御することによって、保護ガス供給ライン内の圧力を所定の目標値に維持する。
・圧力測定変換器によって、高温炉内の圧力を継続的にモニタリングし、調節する。
【0028】
(3)予熱炉を加熱する際は、保護ガス燃焼器である第1の燃焼器を優先的に使用する。第1の燃焼器の出力が予熱炉を所定の温度まで加熱するのに必要な出力に達しない場合は、燃料ガス燃焼器である第2の燃焼器も補助的に作動させる。また、高温炉から予熱炉へ保護ガスが供給されない場合は、予熱炉の加熱は第2の燃焼器のみによって行う。
【0029】
上述した本発明の方法の(e)〜(i)のステップについて詳しく説明する。
【0030】
(e)第1の燃焼器を始動させるステップ
保護ガス燃焼器である第1の燃焼器を作動させる前に、ガス漏れ検査器を用いてガス漏れ検査を行う。ガス漏れ検査は、Kromschroder社のTC410漏れ検査装置を使用して行うことができる。ガス漏れ検査を行うためには、保護ガス供給ラインの主弁(例えばガス電磁弁)において入口圧力が存在していなければならない。そのため、ガス漏れ検査を行う前に、送風機を作動させて、閉じられた主弁へ向けて保護ガスを送る。ガス漏れ検査の実施中は、第1の燃焼器を介して高温炉から保護ガスが排出されないので、高温炉のガス排出ラインは開かれている。ガス漏れ検査の完了後、ガス排出ラインを閉じ、第1の燃焼器を始動させる。
【0031】
(f)第1の燃焼器を作動させるステップ
保護ガス燃焼器である第1の燃焼器を、第2の燃焼器よりも優先的に作動させる。つまり、燃焼ガス(天然ガス)燃料器である第2の燃焼器は、第1の燃焼器の出力が予熱炉を所定の温度まで加熱するのに必要な出力に達しない場合にのみ使用される。第2の燃焼器の作動後、予熱炉内の温度が所定の温度に達したときは、第2の燃焼器を停止させる。また、予熱炉内の温度が所定の温度を超えた場合は、第1の燃焼器へ空気を供給するための空気供給ライン上に設けられた空気調節弁(空気絞り弁)を制御して第1の燃焼器への空気供給量を減らすことによって、第1の燃焼器の出力を減少させる。
【0032】
高温炉から予熱炉に提供される(すなわち、高温炉から引き出される)保護ガスの量が一時的に減少することにより高温炉内の圧力が上昇して所定の設定値を超えた場合は、高温炉内のガスをガス排出ラインあるいはオイルバスを介して排出することにより、高温炉内の圧力を低下させる。このとき、第1の燃焼器は停止させる。予熱炉が加熱エネルギーを再び必要とする場合、第1の燃焼器を再び始動させる。
【0033】
(g)第1の燃焼器を停止させるステップ
高温炉の作動状態が、予熱炉の第1の燃焼器への保護ガスの供給を確実に行うことができない状態にある場合、保護ガス燃焼器である第1の燃焼器を停止させ、予熱炉の加熱は燃料ガス燃焼器である第2の燃焼器のみにより行う。そのような場合としては、例えば、高温炉のドアが開いている場合がある。高温炉のドアが開いている場合、高温炉内の圧力が所定の設定値に達するまでは、第1の燃焼器は作動させない。
【0034】
(h)第1の燃焼器が故障したときに対応するステップ
保護ガス燃焼器である第1の燃焼器が、何らかの故障によって作動することができない場合、保護ガス供給ラインの主弁(例えば磁石弁)を閉じ、送風機を停止し、ガス排出ラインの遮断弁を開く。この場合、予熱炉の加熱は、燃焼ガス燃焼器である第2の燃焼器のみにより行う。
【0035】
(i)第1の燃焼器の作動時に第1の燃焼器の上流側の圧力が不十分である場合に対応するステップ。
第1の燃焼器の作動時に第1の燃焼器の上流側の圧力が不十分である場合、第1の燃焼器の上流側の入口圧力が、保護ガス用の送風機を制御するための制御変数としての役割を果たす。具体的には、周波数変換器で送風機を制御して、第1の燃焼器の上流側の入口圧力が所定の目標値(例えば約2000〜3000パスカル(20〜30ミリバール))になるように維持する。入口圧力が所定の目標値よりも低い場合は、周波数変換器によって送風機の回転速度を増加させる。
【0036】
本発明の方法は、高温炉と予熱炉とを含むプッシャー炉として構成された工業炉に適用することができる。保護ガス燃焼器である第1の燃焼器の出力は、高温炉から供給される保護ガスを最適に利用するために、予熱炉の作動中は常に調節される。
【0037】
高温炉から供給される保護ガスの量は、炉設備を作動させたときに、高温炉(及び使用する場合はオイルバス)からの排出量を漏出量に対して調節した後、ガス排出ラインの逆止め弁の重量負荷を用いて炉内圧力を調節することによって決定される。
【0038】
そして、この設定作業の後、高温炉に保護ガスを連続的に供給する。このことによって、保護ガス燃焼器である第1の燃焼器へ供給される保護ガスの量が決定される。したがって、従来、すなわち本発明の工程を行わない場合に、ガス排出ラインから排出される量と同じ量の保護ガスを予熱炉で燃焼させることができる。
【0039】
高温炉内の圧力は、予熱炉の第1の燃焼器を制御するための制御変数として用いられる。高温炉内の圧力が上昇した場合は、第1の燃焼器へ空気を供給するための空気供給ライン上に設けられた空気調節弁を制御して第1の燃焼器への空気供給量を増加させることによって、第1の燃焼器の出力(すなわち、保護ガスの消費量)を増加させる。
【0040】
第1の燃焼器での保護ガスの消費量が増加し、第1の燃焼器の上流側の入口圧力が低下した場合、周波数変換器で制御して送風機の回転速度を増加させることによって、高温炉から予熱炉への保護ガスの供給量を増加させる。送風機は、第1の燃焼器の上流側の入口圧力が所定の目標値(例えば2000〜3000パスカル(20〜30ミリバール))になるまで高い回転速度で作動する。
【0041】
高温炉内の圧力が低下すると、第1の燃焼器へ空気を供給するための空気供給ライン上に設けられた空気調節弁を制御して第1の燃焼器への空気供給量を減少させることによって、第1の燃焼器の出力を減少させる。
【0042】
ここに開示される発明は、請求項1〜10の特徴にかかる方法に従って特定されるものであり、該方法は、請求項11〜16にかかる特徴を含む工業炉に適用可能である。
【0043】
本発明を、工業炉及び方法を含む実施例において、概略的な図面を参照しながら、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】例えば高温炉及び予熱炉を備えるプッシャー炉において、本方法を実行するための、本発明にかかる工業炉を示す機能概略図である。
【図2】関連する本発明にかかる方法の工程を示すフローチャートである。この図では、ステップ及び条件が、このために使用可能なプログラムと共に、示されている。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1に示すように、プッシャー炉として構成された工業炉1は、高温炉2と、高温炉2の上流に設けられた予熱炉3とを含んでいる。
【0046】
高温炉2は、熱処理される部品バッチが装填される装填部2.1のドアと、熱処理された部品バッチを引き出すための取出部2.2のドアとを備えている。また、高温炉2は、ガス排出ライン2.5を備えており、ガス排出ライン2.5には、排ガス燃焼器2.4と、遮断弁2.5.1と、超過圧力フラップ弁2.8とが設けられている。
【0047】
予熱炉3は、熱処理される部品バッチが装填される装填部3.5のドアと、熱処理された部品バッチを引き出すための取出部3.6のドアとを備えている。また、予熱炉3は、第1の燃焼器3.1と、第2の燃焼器3.2と、第1の燃焼器3.1を制御するための第1の制御器3.1.1と、第2の燃焼器3.1を制御するための第2の制御器3.2.1とを備えている。また、予熱炉3は、第1の燃焼器3.1を点火するための第3の燃焼器3.3と、第1の燃焼器3.1の炎をモニタリングするためのUVセンサ3.4とをさらに備えている。第1の燃焼器3.1には保護ガスと空気が供給される。第2の燃焼器3.2及び第3の燃焼器3.1には燃料ガスと空気が供給される。
【0048】
また、工業炉1は、高温炉2、第2の燃焼器3.1及び第3の燃焼器3.3へ燃料を供給するための燃料ガス供給ライン4と、高温炉2から予熱炉3へ保護ガスを供給するための保護ガス供給ライン5と、第1、第2及び第3の燃焼器3.1へ空気を供給するための空気供給ライン6とを備えている。燃料ガス供給ライン4上にはガス漏れ検査器4.1が設けられている。保護ガス供給ライン5上には主弁5.1が設けられている。空気供給ライン6上には絞り弁としての空気調節弁(フラップ弁)6.1が設けられている、保護ガス供給ライン5を通じての保護ガスの供給は、周波数変換器7.1によって制御される送風機7によって行うことができる。保護ガスの供給は第3の制御器2.7によって制御される。
【0049】
残留保護ガスを燃料ガスとして使用する本発明による作業工程(詳細については後述する)を制御するための制御部8が、第1の制御器3.1.1、第2の制御器3.2.1及び第3の制御器2.7に接続されている。
【0050】
図2は、残留保護ガスを燃料ガスとして使用する本発明の作業工程を説明するためのフローチャートである。本発明による作業工程は、プログラムアルゴリズムとして制御部8に格納されている。
【0051】
本発明による作業工程では、予熱炉3を加熱するのに、第1の燃焼器3.1が第2の燃焼器よりも優先的に使用される。すなわち、第2の燃焼器1.2は第1の燃焼器3.1に対して補助的に使用される。第2の燃焼器3.2は、第1の燃焼器3.1の出力が予熱炉3内の温度を所定の設定温度まで加熱するのに必要な出力に達しない場合に作動し、作動後、予熱炉3内の温度が所定の設定温度に達したときに停止する。
【0052】
予熱炉3内の温度が上昇して所定の設定温度を超えた場合、空気調節弁6.1を制御して第1の燃焼器3.1への空気供給量を減少させることにより第1の燃焼器3.1の出力を減少させる。また、高温炉2内の圧力が上昇して所定の設定値を超えた場合、ガス排出ライン2.5を開き、高温炉2内のガスをガス排出ライン2.5から排出することによって高温炉2内の圧力を低下させる。このとき、第1の燃焼器3.1は停止させる。第1の燃焼器3.1は、予熱炉3の出力が再び求められたときに、再び作動させる。
【0053】
図2に示した工程は、次のうちの少なくとも1つのステップを実施する。
(a)高温炉2の燃焼器を作動させるステップ、
(b)予熱炉3の燃焼器を作動させるステップ、
(c)高温炉へガスを供給するステップ、
(d)第1の燃焼器3.1を、予熱炉3の保護ガス燃焼器として設定するステップ、
(e)第1の燃焼器3.1を点火するステップ、
(f)第1の燃焼器3.1を作動させるステップ、
(g)第1の燃焼器3.1を停止させるステップ、
(h)第1の燃焼器3.1が故障した場合に対応するステップ、及び
(i)第1の燃焼器3.1の作動中に第1の燃焼器の上流側の入口圧力が所定の設定値を下回った場合に対応するステップ。
【0054】
図1を参照して説明した機能を有し、制御部8により自動的に実行することによって本発明による工程を実施することができるプログラムが提示されている。このプログラムは、以下の(a)〜(d)を可能にする。
【0055】
(a)燃料ガス供給ライン4を介して燃料ガスを提供するための第3の制御器2.7によって、高温炉2におけるガスの点火及び燃焼器の始動を確実に行う。前記ガスの点火は、ガス流入部の第1の制御器3.1.1によってトリガーされる。その後、第2の制御器3.2.1による制御によって、燃料ガス供給ライン4のガス漏れ検査の自動開始ルーチンを実行する。ガス漏れ検査の終了後、燃料ガスの供給が可能となり、第2の燃焼器3.2及び第3の燃焼器3.3が準備される。
【0056】
(b)予熱炉3において、第2の制御器3.2.1による制御によって、ガスの点火及び燃焼器の始動を行う場合は、まず、ドア2.1、2.2、3.5及び3.6を閉じ、燃焼器3.1、3.2、3.3への空気供給ライン6を介して予熱炉の容量の数倍の容量の空気を供給し、予熱炉3内をパージする。次に、ガス漏れ検査器4.1によって、燃料ガス供給ライン4のガス漏れ検査を実行する。そして、ドア2.1、2.2、3.5及び3.6を開き、第2の燃焼器3.2及び第3の燃焼器3.3を作動させる。第2の燃焼器3.2の点火を確認した後、ドア2.1、2.2、3.5、及び3.6を閉じ、第2の燃焼器3.2で予熱炉3を作動温度まで加熱する。第3の燃焼器3.3は、予熱炉3が停止するまで、点火させておく。
【0057】
(c)第3の制御器2.7で制御することによって、750°C以上の温度に加熱された高温炉2内に保護ガスを供給する。このとき、第1の燃焼器3.1への保護ガス供給ライン5の主弁5.1は閉じられ、ガス排出ライン2.5の遮断弁2.5.1は開かれる。ガス排出ライン2.5の排ガス燃焼器2.4は、ガス供給の開始前に既に点火されており、工業炉1へのガスの供給は、ガス排出ライン2.5の超過圧力フラップ弁2.8によって設定された超過圧力に達するか、あるいは、高温炉内の目標C量が達成されると遮断される。その後、保護ガスは、第1の燃焼器3.1を作動させるために使用される。
【0058】
(d)第1の燃焼器3.1を予熱炉3用の保護ガス燃焼器として設定する。第1の燃焼器3.1へ供給される保護ガスの量は、工業炉1の作動時に、ガス排出ライン2.5における燃焼量及び保護ガスの漏れ量を測定した後に、ガス排出ライン2.5の逆止め弁または超過圧力フラップ弁2.8の重量負荷によって高温炉内の圧力を調節することによって設定される。これらの調節後、及び、工業炉1に保護ガスを連続的に供給した後、第1の燃焼器3.1には所定の体積流量の可燃性保護ガスが供給され、これによって、従来はガス排出ラインから排出されていた量と同じ量の保護ガスを予熱炉内で燃焼させることができる。第1の燃焼器のための制御変数としては、高温炉2内の圧力が用いられる。
【0059】
さらに、本発明によれば、ガス漏れ検査を行うことができるように、送風機7によって閉鎖された主弁5.1へ向けて送風することによって、保護ガス供給ライン5の主弁5.1の上流側に入口圧力を形成することができる。ガス漏れ検査の間は、ガス排出ライン2.5は開かれており、第1の燃焼器3.1には、まだ保護ガスは供給されない。
【0060】
さらに、本発明によれば、次のことが実現される。
【0061】
(a)第1の燃焼器3.1への保護ガスの供給が保障されない場合(主にドア2.1が開いている場合)に、第1の燃焼器3.1を停止させる。この場合、予熱炉3は、第2の燃焼器3.2によって加熱される。ドア2.1、2.2、3.5、3.6が開かれている場合は、高温炉内の圧力が所定の設定値を超えた場合にのみ、第1の燃焼器3.1を作動させる。
(b)第1の燃焼器3.1が故障した場合、主弁5.1を閉じ、送風機7を停止し、遮断弁2.5.1を開き、第2の燃焼器3.2により予熱炉3が加熱される。
(c)第1の燃焼器3.1の作動時に第1の燃焼器3.1の上流側の入口圧力が所定の設定値を下回った場合、周波数変換器7.1で制御して送風機7の回転速度を増加させる。このとき、第1の燃焼器3.1の上流側の入口圧力が、周波数変換器7.1の制御変数として用いられる。入口圧力の目標値は、一般的に、2000〜3000パスカル(20〜30ミリバール)である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、工業炉において発生する、従来は再利用されることなく排出されていた保護ガスは、燃料ガスとして使用される。このため、工業炉の利用価値を向上させ、実用的産業における工業炉の利用を効率良くかつ環境にやさしいように、著しく向上させる。
【符号の説明】
【0063】
1 工業炉
2 高温炉
2.1 装填部へのドア
2.2 取出部へのドア
2.4 排ガス燃焼器
2.5 ガス排出ライン
2.5.1 遮断弁
2.6 ガス冷却器
2.7 第3の制御器
2.8 超過圧力フラップ弁
3 予熱炉
3.1 第1の燃焼器
3.1.1 第1の制御器
3.2 第2の燃焼器
3.2.1 第2の制御器
3.3 第3の燃焼器
3.4 UVセンサ
3.5 装填部へのドア
3.6 取出部へのドア
4 燃料ガス供給ライン
4.1 ガス漏れ検査器
5 保護ガス供給ライン
5.1 主弁
6 空気供給ライン
6.1 空気調節弁
7 送風機
7.1 周波数変換器
8 制御部
図2(a)〜(i)
(a)ガス及び燃焼器を始動させる
(b)予熱炉3において、ガス及び燃焼器を始動させる
(c)工業炉にガスを発生させる
(d)第1の燃焼器3.1を、予熱炉3用の保護ガス燃焼器として設定する
(e)第1の燃焼器3.1を始動させる
(f)第1の燃焼器3.1を動作させる
(g)第1の燃焼器3.1をスイッチオフすること
(h)第1の燃焼器3.1が機能停止すること
(i)第1の燃焼器3.1の動作中に、第1の燃焼器3.1の前にわずかに圧力を加えること

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガス及び可燃性保護ガスを用いて熱処理を行う工業炉において熱処理後に工業炉内に残留した可燃性保護ガスを、別の熱処理のための燃料ガスとして使用するための方法であって、
前記工業炉が、前記工業炉内に残留した可燃性保護ガスが供給されそれを燃焼させる第1の燃焼器及び燃料ガスが供給されそれを燃焼させる第2の燃焼器を備えており、
前記可燃性保護ガスを燃焼させるべく前記第1の燃焼器を作動させるステップと、
前記第1の燃焼器の出力が前記工業炉を所定の温度まで加熱するのに必要な出力に達しない場合に前記第2の燃焼器を作動させるステップと、
前記第2の燃焼器の作動後、前記工業炉内の温度が前記所定の温度に達したときに前記第2の燃焼器を停止させるステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記工業炉が、前記第1の燃焼器を点火するための第3の燃焼器をさらに備えており、
前記第3の燃焼器で前記第1の燃焼器を点火するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、
前記工業炉が、前記第1の燃焼器の炎をモニタリングするためのUVセンサをさらに備えており、
前記UVセンサで前記第1の燃焼器の点火を確認するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法であって、
前記工業炉が、前記第1の燃焼器へ空気を供給するための空気供給ライン上に設けられた、前記第1の燃焼器への空気供給量を調節するための空気調節弁をさらに備えており、
前記工業炉内の温度が所定の設定温度を超えた場合、前記空気調節弁を制御して前記第1の燃焼器への空気供給量を減らすことにより、前記第1の燃焼器の出力を減少させるようにしたことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法であって、
前記工業炉が、前記工業炉内のガスを外部へ排出するための少なくとも1つのガス排出ラインをさらに備えており、
前記工業炉内の圧力が所定の設定値を超えた場合、前記第1の燃焼器を停止させた後に前記ガス排出ラインを開き、前記工業炉内のガスを外部へ排出するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法であって、
前記工業炉が、高温炉及び予熱炉を含むプッシャー炉として構成されており、
(a)前記高温炉の燃焼器を作動させるステップと、
(b)前記予熱炉の燃焼器を作動させるステップと、
(c)加熱された高温炉内に可燃性保護ガスを供給するステップと、
(d)前記予熱炉の前記第1の燃焼器を保護ガス燃焼器として設定するステップとを含む方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法であって、
前記工業炉が、前記高温炉内に残留した前記可燃性保護ガスを前記予熱炉へを供給するための保護ガス供給ラインと、前記保護ガス供給ライン上に設けられた周波数制御式の送風機をさらに備えており、
前記予熱炉の前記第1の燃焼器への前記可燃性保護ガスの供給を前記周波数制御式の送風機によって行うようにしたことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法であって、
前記燃料ガス供給ラインのガス漏れ検査を行うことができるように、前記保護ガス供給ライン上に設けられた主弁の上流側に入口圧力を形成するために、前記送風機によって、閉じられた前記主弁へ向けて送風するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法であって、
(1)前記第1の燃焼器への前記保護ガスの供給が保障されない場合、前記第1の燃焼器を停止し、前記第2の燃焼器で前記予熱炉を加熱するステップ、
(2)前記第1の燃焼器が故障した場合、前記保護ガス供給ラインの主弁を閉じ、前記送風機を停止し、前記ガス排出ライン上に設けられた遮断弁を開き、前記第2の燃焼器で予熱炉を加熱するステップ、及び
(3)前記第1の燃焼器の作動時に前記第1の燃焼器の上流側の入口圧力が所定の設定値を下回った場合、前記送風機の回転速度を制御して、前記第1の燃焼器の上流側の入口圧力を2000〜3000パスカル(2000〜3000パスカル(20〜30ミリバール))に維持するステップ
の少なくとも1つのステップを行うことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法であって、
(a)前記高温炉の燃焼器を作動させるステップ、
(b)前記予熱炉の燃焼器を作動させるステップ、
(c)前記高温炉へガスを供給するステップ、
(d)前記予熱炉の前記第1の燃焼器を保護ガス燃焼器として設定するステップ、
(e)前記第1の燃焼器を点火するステップ、
(f)前記第1の燃焼器を作動させるステップ、
(g)前記第1の燃焼器を停止させるステップ、
(h)前記第1の燃焼器が故障したときに対応するステップ、及び
(i)前記第1の燃焼器の作動中に前記第1の燃焼器の上流側の入口圧力が所定の設定値を下回ったときに対応するステップ
の少なくとも1つのステップを行うことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法を実施するための工業炉であって、
可燃性保護ガスが提供されそれを燃焼させる第1の燃焼器と、
燃料ガスが提供されそれを燃焼させる第2の燃焼器とを備えており、
前記第1の燃焼炉は前記第2の燃焼炉よりも優先的に使用され、
前記第2の燃焼炉は、前記第1の燃焼器の出力が前記工業炉を所定の温度まで加熱するのに必要な出力に達しない場合に作動させ、作動後、前記工業炉内の温度が前記所定の温度に達したときに停止させるようにしたことを特徴とする工業炉。
【請求項12】
請求項11に記載の工業炉であって、
前記第1の燃焼器を点火するための第3の燃焼器と、
前記第1の燃焼器の炎をモニタリングするためのUVセンサと、
前記第1の燃焼器へ空気を供給するための空気供給ライン上に設けられた、前記第1の燃焼器への空気供給量を調節するための空気調節弁と、
前記工業炉内のガスを外部へ排出するための少なくとも1つのガス排出ラインと
をさらに備えていることを特徴とする工業炉。
【請求項13】
請求項11または12に記載の工業炉であって、
前記工業炉が、高温炉及び予熱炉を含むプッシャー炉として構成されており、
前記予熱炉/予備酸化炉の前記第1の燃焼器の作動を制御するための第1の制御器と、前記予熱炉/予備酸化炉の前記第2の燃焼器の作動を制御するための第2の制御器とを含む制御部をさらに備えていることを特徴とする工業炉。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか1項に記載の工業炉であって、
前記高温炉内に残留した前記可燃性保護ガスを前記予熱炉へを供給するための保護ガス供給ラインと、
前記保護ガス供給ライン上に設けられた周波数制御式の送風機とをさらに備えることを特徴とする工業炉。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれか1項に記載の工業炉であって、
前記燃料ガス供給ラインのガス漏れ検査を行うためのガス漏れ検査器と、
前記保護ガス供給ライン上に設けられた主弁と、
前記ガス排出ライン上に設けられた遮断弁とをさらに備えることを特徴とする特徴とする工業炉。
【請求項16】
請求項11〜15のいずれか1項に記載の工業炉であって、
前記保護ガスを過熱から保護するために前記保護ガスを冷却するためのガス冷却器をさらに備えることを特徴とする工業炉。
【請求項17】
請求項14に記載の工業炉であって、
前記制御部が、前記高温炉から前記予熱炉への保護ガスの供給を制御するための第3の制御器をさらに含むことを特徴とする工業炉。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−220185(P2012−220185A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−86373(P2012−86373)
【出願日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【出願人】(501128737)イプセン インターナショナル ゲーエムベーハー (6)
【氏名又は名称原語表記】Ipsen International GmbH
【Fターム(参考)】