説明

毛髪化粧料

【課題】すすぎ後の毛髪のきしみを抑制し、かつ、乾燥後にはふんわりしたボリューム感のある仕上がりを得る。
【解決手段】本発明の毛髪化粧料は、成分(A)第3級アミン化合物、成分(B)炭素数が12〜28であり、水酸基が1である高級アルコール、成分(C)カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース、成分(D)分岐脂肪酸又はその塩及び水を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪は、へアカラーによる化学処理や、洗髪、ドライヤーの熱による物理処理によってダメージを受ける。毛髪はダメージを受けると、パサつく、まとまり悪い、つやがなくなるといった様に美的観点においても負要素が発生することはよく知られている。そのため、毛髪を処理前の滑らかな感触に戻すため、第3級アミン化合物と高級アルコールとを組み合わせた毛髪化粧料がコンディショニング剤として、広く利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1〜3には、高級アルコールとして所定の分岐脂肪酸を用い、芳香族アルコールを併用することにより、化学処理、ドライヤー乾燥、日々のヘアケア行動による毛髪の損傷・疲労破壊を修復又は抑止し、また湿潤時から乾燥後まで良好な柔軟性及びしなやかな感触を付与できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−176923号公報
【特許文献2】特開2007−176924号公報
【特許文献3】特開2008−37829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の技術では、傷んだ毛髪には、滑らかさに効果はあるものの、すすいだ後の毛髪のきしみの点で課題があった。また、乾燥後の毛髪が頭皮にはりつくことを防止し、ふんわりとやわらかなボリュームのあるヘアスタイルを維持できる毛髪化粧料が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
次の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び水を含有する毛髪化粧料が提供される。
(A)第3級アミン化合物
(B)炭素数が12〜28であり、水酸基が1である高級アルコール
(C)カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース
(下記一般式(1)で表されるアンヒドログルコース由来の主鎖を有し、かつカチオン化エチレンオキシ基の置換度が0.01〜2.9であり、プロピレンオキシ基の置換度が0.1〜4.0)
【化1】

(式中、R、R及びRは、それぞれ独立に下記一般式(2)で表されるカチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基を有する置換基を示し、nはアンヒドログルコースの平均重合度を示し、50〜5000である。)
【0007】
【化2】

(式中、Y及びYは、一方が水素原子であり、他方が下記一般式(3)で表されるカチオン性基を示し、POはプロピレンオキシ基を示す。pは一般式(2)中に含まれるカチオン化エチレンオキシ基(−CH(Y)−CH(Y)−O−)の数を、qはプロピレンオキシ基(−PO−)の数を示し、それぞれ0又は正の整数である。p及びqがいずれも0でない場合、カチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の付加順序は問わず、さらにp及び/又はqが2以上である場合は、ブロック結合又はランダム結合のいずれであってもよい。ただし、R、R及びRのすべてにおいて、p及びqがいずれも0になる場合を除く。)
【0008】
【化3】

(式中、R、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、Xはアニオン性基を示す。)
(D)下記式(4)で表される分岐脂肪酸又はその塩
CH−CHR−(CHCOOH (4)
(式中、Rはメチル基又はエチル基を示し、rは3〜26の整数を示す。)
【0009】
この発明によれば、カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(成分(C))に、所定の分岐脂肪酸(成分(D))を用いることにより、すすぎ時には毛髪に柔軟性を付与して、すすぎ後の毛髪のきしみを抑制することができる。また、乾燥後の毛髪には、ふんわりとやわらかなボリューム感のあるヘアスタイルをつくることが可能になる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、すすぎ後の毛髪のきしみを抑制し、かつ、乾燥後にはふんわりとやわらかなボリューム感のある仕上がりを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、説明する。
【0012】
[(A)第3級アミン化合物]
(A)成分の第3級アミン化合物は、例えば、一般式(11)で表すことができる。
【0013】
【化4】

【0014】
一般式(11)中、R11は総炭素数8〜35の−OCO−若しくは−COO−で表される官能基で分断又は−OHで置換されていてもよい直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、又は脂肪族アシルオキシ(ポリエトキシ)エチル基を示し、R12は炭素数1〜22のアルキル基、若しくはヒドロキシアルキル基、又は合計付加モル数10以下のポリオキシエチレン基を示し、2個のR12は同一でも異なってもよい。
【0015】
(A)成分の第3級アミン化合物のより具体的な例としては、例えば、以下の(A1)、(A2)及び(A3)の第3級アミン化合物から選択される少なくとも1つが挙げられる。
【0016】
(A1)ヒドロキシエーテルアルキルアミン
例えば下記一般式(12)で表される化合物が挙げられる。
【0017】
【化5】

【0018】
一般式(12)中、R13は、炭素数6〜24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R14及びR15は、同一又は相異なって炭素数1〜6のアルキル基又は−(AO)H(Aは炭素数2〜4のアルキレン基、bは1〜6の数を示し、b個のAは同一でも異なってもよく、その配列は任意である)を示す。aは1〜5の数を示す。
【0019】
具体的には、(A1)の第3級アミン化合物として、ヘキサデシルオキシ(2−ヒドロキシプロピル)ジメチルアミン、オクタデシルオキシ(2−ヒドロキシプロピル)ジメチルアミンが挙げられる。
【0020】
(A2)エーテルアミン
例えば下記一般式(13)で表される化合物が挙げられる。
【0021】
【化6】

【0022】
一般式(13)中、R16は、炭素数6〜24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R17及びR18は、同一又は相異なって炭素数1〜6のアルキル基又は−(AO)H(Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、cは1〜6の数を示し、c個のAは同一でも異なってもよく、その配列は任意である)を示す。
【0023】
具体的には、(A2)の第3級アミン化合物として、N,N−ジメチル−3−ヘキサデシロキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−オクタデシロキシプロピルアミンが挙げられる。
【0024】
(A3)アルキルアミドアミン
例えば下記一般式(14)で表される化合物が挙げられる。
【0025】
【化7】

【0026】
一般式(14)中、R19は炭素数11〜23の脂肪族炭化水素基を示し、R20は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、dは2〜4の数を示す。)
【0027】
具体的には、(A3)の第3級アミン化合物として、N−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)ドコサナミド、及び、N−(3−ジメチルアミノ)プロピル)ステアラミドが挙げられる。
【0028】
(A)成分としては、塗布時やすすぎ時の滑らかさの観点から(A−2)エーテルアミン、(A−3)アルキルアミドアミンが好ましい。
【0029】
さらに、(A−2)エーテルアミンが好ましく、N,N−ジメチル−3−ヘキサデシロキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−オクタデシロキシプロピルアミンがより好ましい。
【0030】
(A)成分の第3級アミン化合物は、2種以上を併用しても良い。塗布時やすすぎ時の滑らかさ、指通りの良さ、ツヤの付与の観点から、(A)成分の含有量は、本発明の毛髪化粧料の0.1〜15質量%が好ましく、0.2〜10質量%がより好ましく、0.5〜5質量%がさらに好ましい。
【0031】
[(B)高級アルコール]
(B)成分の高級アルコールは、炭素数が12〜28であり、水酸基が1である。炭素数12〜28のアルキル基を有するものが好ましく、炭素数16〜24がより好ましく、炭素数18〜22のアルキル基を有するものがさらに好ましく、またこのアルキル基は直鎖アルキル基であるのが好ましい。具体的には、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられ、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールがさらに好ましい。(B)成分の高級アルコールは、水酸基を1つ含むものであり、水酸基を2以上含まない。
【0032】
(B)成分の高級アルコールは、2種以上を併用してもよく、またその含有量は、本発明の毛髪化粧料の0.1〜20質量%が好ましく、塗布時やすすぎ時の滑らかさ、安定性等の向上の観点から、0.5〜15質量%がより好ましく、1〜10質量%がさらに好ましい。
【0033】
[(C)カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース]
本発明の毛髪化粧料は、(C)成分として、上記一般式(1)で表されるアンヒドログルコース由来の主鎖を有し、かつカチオン化エチレンオキシ基の置換度(k)が0.01〜2.9であり、プロピレンオキシ基の置換度(m)が0.1〜4.0であるカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(以下、「C−HPC」ともいう。)を含む。
【0034】
【化8】

【0035】
一般式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に上記一般式(2)で表される置換基であり、R、R及びRは、同一であっても、異なっていてもよい。また、n個のR、n個のR、n個のRは、それぞれ同一であっても、異なってもよい。
【0036】
【化9】

【0037】
一般式(2)中、Y及びYは、一方が水素原子であり、他方が下記一般式(3)で表されるカチオン性基を示し、POはプロピレンオキシ基を示す。pは一般式(2)中に含まれるカチオン化エチレンオキシ基(−CH(Y)−CH(Y)−O−)の数を、qはプロピレンオキシ基(−PO−)の数を示し、それぞれ0又は正の整数である。p及びqがいずれも0でない場合、カチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の付加順序は問わず、さらにp及び/又はqが2以上である場合は、ブロック結合又はランダム結合のいずれであってもよい。ただし、R、R及びRのすべてにおいて、p及びqがいずれも0になる場合を除く。すなわち、n個のR1、n個のR2およびn個のR3のうち、少なくとも1つは、上記一般式(2)中のpが0ではなく、また、少なくとも1つは、上記一般式(2)中のqが0ではない。
【0038】
【化10】

【0039】
一般式(3)中、R、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、Xはアニオン性基を示す。
【0040】
また、本発明の毛髪化粧料によるすすぎ時、乾燥時のきしみを抑制し、乾燥後のボリューム感を付与する観点から、一般式(1)における平均重合度nは、50以上であり、100以上が好ましく、200以上がより好ましく、300以上がさらに好ましい。また、本発明の毛髪化粧料によるすすぎ時、乾燥時のきしみを抑制し、乾燥後のボリューム感、ふんわりした仕上がりを付与、及び製造の容易さの観点から、5000以下であり、3000以下が好ましく、2000以下がより好ましく、1500以下がさらに好ましい。これらの観点を総合すると、平均重合度nは、50〜5000であり、100〜3000が好ましく、200〜2000がより好ましく、300〜1500がさらに好ましい。なお、本発明において平均重合度とは、銅−アンモニア法により測定される粘度平均重合度をいう。
【0041】
一般式(2)で表される置換基は、上記一般式(2)に示すとおり、カチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基とを有する。
【0042】
上記一般式(2)において、製造の容易さの観点から、pは0又は1であることが好ましい。qは0〜4の整数であることが好ましく、0〜2の整数であることがより好ましく、0又1であることがさらに好ましい。C−HPC分子内に複数の一般式(2)で表される置換基が存在する場合、該置換基間において、p及びqの値はそれぞれ異なっていてもよい。
【0043】
pとqとの合計(p+q)は、製造の容易さの観点から、1〜5の整数であることが好ましく、1〜4の整数であることがより好ましく、1〜3の整数であることがさらに好ましく、1又は2であることが特に好ましい。p及びqがいずれも0でない場合、カチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の付加順序は問わないが、製造の容易さの観点から、一般式(2)に記載した順序であることが好ましい。また、p及びqがいずれも0でなく、かつp及び/又はqが2以上である場合は、ブロック結合又はランダム結合のいずれであってもよいが、製造の容易さの観点から、ブロック結合であることが好ましい。n個のR、n個のR、n個のRにおいて、少なくとも1つは、一般式(2)のpが0ではなく、また、少なくとも1つは、一般式(2)のqが0ではない。
【0044】
一般式(3)で表されるカチオン性基は、上記一般式(3)に示す構造を有する。一般式(3)において、R、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基であり、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。これらの中では、C−HPCの水溶性の観点から、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。一般式(3)において、Xは、アンモニウム基の対イオンであるアニオン性基を示すXはアニオン性基であれば特に限定きれない。その具体例としてはアルキル硫酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、アルキル炭酸イオン、及びハロゲン化物イオン等が挙げられる。これらの中では、製造の容易さの観点から、ハロゲン化物イオンが好ましい。ハロゲン化物イオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン及びヨウ化物イオンが挙げられるが、C−HPCの水溶性及び化学的安定性の観点から、塩化物イオン及び臭化物イオンが好ましく、塩化物イオンがより好ましい。
【0045】
一般式(1)で表されるC−HPCにおいて、本発明の毛髪化粧料による洗浄後の毛髪のきしみを低減、乾燥後の毛髪にふんわりボリューム感を付与する観点、及び、製造の容易さの観点から、カチオン化エチレンオキシ基の置換度(k)は、2.9以下であり、2.0以下が好ましく、1.0以下より好ましく、0.5以下がさらに好ましい。また本発明の毛髪化粧料による洗浄後の毛髪のきしみを低減、乾燥後の毛髪のべたつき感を抑制し、乾燥後の毛髪にふんわりボリューム感を付与する観点から、0.01以上であり、0.05以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、0.2以上がさらに好ましい。これらの観点を総合すると、0.01〜2.9であり、0.05〜2.0が好ましく、0.1〜1.0がより好ましく、0.2〜0.5がさらに好ましい。
本発明において、カチオン化エチレンオキシ基の置換度(k)とは、セルロース主鎖を構成するアンヒドログルコース単位1モルあたりのC−HPCの分子中に存在するカチオン化エチレンオキシ基の平均モル数をいう。
【0046】
本発明の毛髪化粧料による洗浄後の毛髪のきしみを低減、乾燥後の毛髪のべたつき感を抑制し、乾燥後の毛髪にふんわりボリューム感を付与する観点及び、製造の容易さの観点から、プロピレンオキシ基の置換度(m)は、4.0以下であり、2.5以下が好ましく、2.0以下がより好ましく、1.6以下がさらに好ましい。また、本発明の毛髪化粧料による洗浄後の毛髪のきしみを低減、乾燥後の毛髪のべたつき感を抑制し、乾燥後の毛髪にふんわりボリューム感を付与する観点から、mは、0.1以上であり、0.2以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.4以上がさらに好ましい。これらの観点を総合すると、mは、0.1〜4.0であり、0.2〜2.5が好ましく、0.3〜2.0がより好ましく、0.4〜1.6がさらに好ましい。
本発明においてプロピレンオキシ基の置換度(m)とは、セルロース主鎖を構成するアンヒドログルコース単位1モルあたりのC−HPC分子中に存在するプロピレンオキシ基の平均モル数をいう。
【0047】
製造の容易さの観点から、カチオン化エチレンオキシ基の置換度とプロピレンオキシ基の置換度との和(k+m)は、3.2以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましく、毛髪化粧料で処理した毛髪の乾燥後の指通り性、ふんわりボリューム感を向上きせる観点から、0.11以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましく、0.3以上であることがさらに好ましい。これらの観点を総合すると、カチオン化エチレンオキシ基の置換度とプロピレンオキシ基の置換度との和(k+m)は、0.11〜3.2が好ましく、0.2〜3.0がより好ましく、0.3〜2.0がさらに好ましい。
【0048】
C−HPCの含有量は、本発明の毛髪化粧料による洗浄、乾燥後の毛髪にふんわりした仕上がり、柔らかい印象を付与する観点から、下限は、0.01質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましく、0.1質量%以上がよりさらに好ましい。また、上限は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下がよりさらに好ましい。これらの観点を総合すると、C−HPCの含有量は、0.01〜10質量%が好ましく、0.02〜5質量%がより好ましく、0.05〜2質量%がさらに好ましく、0.1〜1質量%がよりさらに好ましい。
【0049】
(A)成分に対する(C)成分の質量比((C)/(A))は、本発明の毛髪化粧料による洗浄後の毛髪のきしみを低減、乾燥後の毛髪にハリやコシを付与し、ふんわりボリューム感を付与する観点から、下限は、0.001以上が好ましく、0.02以上がより好ましく、0.05以上がさらに好ましい。上限は、5以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下がさらに好ましい。これらの観点を総合すると(C)/(A)は、0.001〜5が好ましく、0.02〜3がより好ましく、0.05〜2がさらに好ましい。
【0050】
C−HPCは、例えば、以下の(1)〜(3)の製造方法により得ることができる。
(1)セルロースと大量の水及び大過剰のアルカリ金属水酸化物をスラリー状態で混合し、カチオン化剤及び酸化プロピレンと反応させる方法。
(2)塩化リチウムを含むジメシルアセトアミドを溶媒として用い、さらにアミン類やアルコラート触媒を添加してセルロースを溶解させ、カチオン化剤及び酸化プロピレンと反応させる方法。
(3)前記(1)や(2)のように、過剰の水や溶媒を用いず、粉末、ペレット状又はチップ状のセルロースとカチオン化剤、及び酸化プロピレンを塩基共存下に反応させる方法。
【0051】
前記(1)〜(3)の製造方法において、カチオン化剤との反応、及び酸化プロピレンとの反応はどちらを先に行なってもよく、同時に行なってもよい。これら製造方法の中では、製造の容易さの観点から、前記(3)の製造方法が好ましい。前記(3)の製造方法は、好ましくは下記2つの工程を有する。
第1工程:パルプにカチオン化剤を添加して粉砕機処理による低結晶化を行い、その後塩基を添加して粉砕機処理による低結晶化を行いながらパルプとカチオン化剤の反応を行ってカチオン化セルロースを得る工程
第2工程:第1工程で得られたカチオン化セルロースと酸化プロピレンとを反応させてカチオン化ヒドロキシプロピルセルロースを得る工程
以下、前記(3)の製造方法について、具体的に説明する。
【0052】
C−HPCを製造するためのセルロースは一般に結晶性部位の反応性が低いため、原料セルロースとしては、結晶性を低下させた低結晶性の粉末セルロースや、結晶性の高いパルプが好適に用いられる。以下、結晶性を低下させた低結晶性の粉末セルロースを使用するC−HPCの製造例(製造方法(3)−1)、及び、結晶性の高いパルプを使用するC−HPCの製造例(製造方法(3)−2)について説明する。
【0053】
<製造方法(3)−1>
低結晶性の粉末セルロースは、汎用原料として得られるシート状やロール状のセルロース純度の高いパルプから調製することができる。低結晶性粉末セルロースの調製方法は特に限定されない。例えば、特開昭62−236801号公報、特開2003−64184号公報、特開2004−331918号公報等に記載の方法を挙げることができる。これらの中では、メカノケミカル処理して得られた低結晶性又は非結晶性粉末セルロース(以下、総称して「低結晶性粉末セルロース」ともいう)を使用することがより好ましい。
【0054】
ここで、低結晶性粉末セルロースの「低結晶性」とは、セルロースの結晶構造においてアモルファス部の割合が多い状態を意味する。具体的には下記計算式(I)による結晶化度が好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下である粉末セルロースが好ましく、特に該結晶化度がほぼ0%である完全非晶化セルロースを用いることが最も好ましい。
結晶化度(%)=[(I22.6−I18.5)/I22.6]×100(I)
(式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度を示し、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。)
【0055】
メカノケミカル処理による低結晶性粉末セルロースの製造方法としては、例えばシート状パルプを粗粉砕して得られるチップ状パルプを粉砕機で処理することによる方法が挙げられる。粉砕機による処理の前にチップ状パルプを押し出し機で処理しておくこともできる。
【0056】
この方法に用いられる押出機としては、単軸又は二軸の押出機、好ましくは二軸押出機が挙げられるが、強い圧縮せん断力を加える観点から、スクリューのいずれかの部分に、いわゆるニーディングディスク部を備えるものが好ましい。押出機を用いる処理方法としては、特に制限はないが、チップ状パルプを押出機に投入し、連続的に処理する方法が好ましい。
【0057】
この方法に用いられる粉砕機としては、高圧圧縮ロールミルや、ロール回転ミル等のロールミル、リングローラーミル、ローラーレースミル又はボールレースミル等の竪型ローラーミル、転動ボールミル、振動ボールミル、振動ロッドミル、振動チューブミル、遊星ボールミル又は遠心流動化ミル等の容器駆動媒体ミル、塔式粉砕機、攪拌槽式ミル、流通槽式ミル又はアニュラー式ミル等の媒体攪拌式ミル、高速遠心ローラーミルやオングミル等の圧密せん断ミル、乳鉢、又は石臼等が挙げられる。これらの中では、結晶化度低下の効率の観点、及び生産性の観点から、容器駆動式媒体ミル又は媒体攪拌式ミルが好ましく、容器駆動式媒体ミルがより好ましく、振動ボールミル、振動ロッドミル及び振動チューブミル等の振動ミルがさらに好ましく、振動ボールミル、振動ロッドミルが特に好ましい。
【0058】
処理方法としては、バッチ式、連続式のどちらでもよい。ボール、ロッド等の媒体の充填率は、粉砕機の機種により好適な範囲が異なるが、好ましくは10〜97%、より好ましくは15〜95%の範囲である。充填率がこの範囲内であれば、原料パルプと媒体との接触頻度が向上するとともに、媒体の動きを妨げずに、粉砕効率を向上させることができる。
ここで充填率とは、粉砕機の攪拌部の容積に対する媒体の見かけの体積をいう。ボールミルの場合、媒体として用いるボールの材質には特に制限はなく、例えば、鉄、ステンレス、アルミナ、ジルコニア等が挙げられる。ボールの外径は、効率的にセルロースを低結晶化させる観点から、好ましくは0.1〜100mm、より好ましくは1〜50mmである。
【0059】
また、セルロースの結晶化度を効率的に低下する観点から、粉砕機の処理時間は、好ましくは5分〜72時間、より好ましくは10分〜30時間である。また、粉砕機処理の際には、発生する熱による変性や劣化を最小限に抑える観点から、好ましくは250℃以下、より好ましくは5〜200℃の範囲で処理を行うことが望ましい。
【0060】
粉砕機の媒体として用いるロッドとは棒状の媒体であり、ロッドの断面が四角形、六角形等の多角形、円形、楕円形等のものを用いることができる。ロッドの外径としては、好ましくは0.5〜200mm、より好ましくは1〜100mm、さらに好ましくは5〜50mmの範囲である。ロッドの長さとしては、粉砕機の容器の長さよりも短いものであれば特に限定されない。ロッドの大きさが上記の範囲であれば、所望の粉砕力が得られ効率的にセルロースを低結晶化させることができる。ロッドを充填した振動ミルの処理時間、処理温度に特に制限はないが、前記のボールミルと同様の処理時間、処理温度で行うことができる。
【0061】
上記の方法によれば、分子量の制御も可能であり、一般には入手困難な、重合度が高く、かつ低結晶性の粉末セルロースを容易に調製することが可能である。低結晶性粉末セルロースの平均重合度は、好ましくは100〜2000であり、より好ましくは250〜1900、さらに好ましくは、350〜1800である。
【0062】
また、低結晶性粉末セルロースの平均粒径は、粉体として流動性の良い状態が保てればよく特に限定されないが、上限は、300μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましい。なお、粉末セルロースの取り扱い性向上の観点から、下限は、20μm以上が好ましく、25μm以上がより好ましい。しかしながら、凝集等による微量な粗大粒子の混入を避けるため、反応には必要に応じて300〜1000μm程度の目開きの篩を用いた篩下品を用いるのが好ましい。
【0063】
上記のようにして得られた低結晶性粉末セルロースに、塩基存在下、グリシジルトリアルキルアンモニウム塩を反応させてカチオン化し、カチオン化セルロースを製造する(第1工程)。
【0064】
カチオン化剤として用いるグリシジルトリアルキルアンモニウム塩としては、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、グリシジルトリエチルアンモニウムクロリド、グリシジルトリメチルアンモニウムブロミド、グリシジルトリエチルアンモニウムブロミド等が挙げられるが、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドが入手性の観点から好ましい。グリシジルトリアルキルアンモニウム塩の添加量は、毛髪化粧料で洗浄した毛髪の乾燥後のハリやコシを付与し、かつ、ふんわりしたボリューム感のある仕上がりを向上させ、べたつき性を抑制する観点から、セルロースのアンヒドログルコース単位1モルに対して、通常0.01〜3.0倍モルであり、0.02〜2倍モルが好ましく、0.04〜1.0倍モルがより好ましい。
【0065】
カチオン化時に存在させる塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等が挙げられるが、入手性、汎用性、経済性の観点から水酸化ナトリウム、水酸化バリウムがより好ましい。塩基の添加量は、セルロースの種類等により異なるが、セルロースのアンヒドログルコース単位1モルに対して、通常0.05〜1.0倍モルであり、0.1〜0.5倍モルが好ましい。
【0066】
反応系内の水分含有量は、原料として用いたセルロースに対し100質量%以下であることが好ましい。セルロースに対する水分含有量がこの範囲内であれば、セルロースが過度に凝集することなく、流動性のある粉末状態で反応させることができる。この観点から、80質量%以下がより好ましく、5〜50質量%がさらに好ましい。
【0067】
反応温度は、通常10〜85℃であり、好ましくは15〜80℃である。
【0068】
上記のようにして得られたカチオン化セルロースを酸化プロピレンと反応させてヒドロキシプロピル化することによりC−HPCを製造することができる(第2工程)。
【0069】
ここで、酸化プロピレンの使用量は、毛髪化粧料で洗浄した毛髪の乾燥後のハリやコシを付与し、かつ、ふんわりしたボリューム感のある仕上がりを向上させ、べたつき性を抑制する観点から、セルロース分子中のアンヒドログルコース単位1モル当たり0.01〜5.0倍モルが好ましく、0.1〜3.0倍モルがより好ましく、0.5〜2.5倍モルの範囲がさらに好ましい。
【0070】
ヒドロキシプロピル化の触媒としては、塩基又は酸を用いることができる。塩基触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の第3級アミン類が挙げられる。酸触媒としては、ランタニドトリフラート等のルイス酸触媒等が挙げられる。これらの中では、原料セルロースの重合度の低下を抑制する観点から、塩基触媒が好ましく、アルカリ金属水酸化物がより好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムがさらに好ましい。これらの触媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。触媒の使用量は、特に制限はないが、セルロース分子中のアンヒドログルコース単位1モル当たり、通常0.05〜1.0倍モルであり、0.1〜0.8倍モルが好ましく、0.2〜0.5倍モルがより好ましい。
【0071】
酸化プロピレンの添加方法に特に制限はなく、例えば(a)カチオン化セルロースに触媒を添加した後に酸化プロピレンを滴下する方法、(b)カチオン化セルロースに酸化プロピレンを一括で添加し、その後に触媒を徐々に加えて反応させる方法が挙げられるが、(a)法がより好ましい。
【0072】
反応系内の水分含有量は、原料として用いたセルロースに対し100質量%以下であることが好ましい。セルロースに対する水分含有量がこの範囲内であれば、カチオン化セルロースが過度に凝集することなく、流動性のある粉末状態で反応させることができる。この観点から、80質量%以下が好ましく、5〜50質量%がより好ましい。
【0073】
本発明においては、カチオン化セルロース、触媒及び酸化プロピレンを流動性のある粉末状態で反応させることが好ましいが、カチオン化セルロース粉末と触媒とを予めミキサー等の混合機や振とう機、又は混合ミル等で必要に応じて均一に混合分散させた後に、酸化プロピレンを添加して反応させることも可能である。
【0074】
ヒドロキシプロピル化の反応温度は、0〜150℃が好ましいが、酸化プロピレン同士が重合するのを避け、かつ急激に反応が起こるのを避ける観点から、10〜100℃がより好ましく、20〜80℃がさらに好ましい。反応は常圧で行うことができる。また、反応中のセルロース鎖の解裂による分子量の低下を避ける観点から、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
【0075】
反応終了後は、未反応酸化プロピレンを除去した後、必要に応じて、中和処理、精製処理等を行った後、乾燥することにより、本発明のC−HPCを得ることができる。中和処理は、常法により行なうことができる。例えば触媒として塩基触媒を用いた場合は、酢酸等の酸液、酸と不活性有機溶媒との混合溶液又は酸水溶液を添加することにより行うことができる。酸の種類は特に限定されず、装置の腐食等を考慮して適宜選択すればよい。精製処理は、含水イソプロパノール、含水アセトン溶媒等の溶剤及び/又は水による洗浄又は透析膜により行うことができる。
【0076】
上記製造方法(3)−1におけるカチオン化、ヒドロキシプロピル化の反応の順序は、原料セルロースのヒドロキシプロピル化を行った後にカチオン化を行なってもよいし、同時に行なってもよいが、カチオン化エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基の置換度の制御の観点から、原料セルロースにカチオン化を行った後、ヒドロキシプロピル化を行なうことが好ましい。上記製造方法(3)−1の第1工程及び第2工程においては、主鎖となるセルロース骨格の解裂は実質上生じないため、得られるC−HPCの平均重合度は、低結晶化処理後の粉末セルロースの平均重合度で近似することができる。
【0077】
<製造方法(3)−2>
原料セルロースとして前述の低結晶性粉末セルロースを使用せずに、結晶性の高いパルプを使用する場合は、パルプの反応性を改善するため、カチオン化の際に低結晶化を行うことが好ましい。具体的には、パルプにカチオン化剤を添加して粉砕機処理による低結晶化を行い、その後塩基を添加して粉砕機処理による低結晶化を行ないながらパルプとカチオン化剤の反応を行うこと、又はパルプに塩基を添加して粉砕機処理による低結晶化を行い、その後カチオン化剤を添加して粉砕機処理による低結晶化を行いながらパルプとカチオン化剤の反応を行うことで、カチオン化セルロースを得ることができる。このカチオン化を経て得られるC−HPCの水への溶解性の観点から、セルロースのカチオン化においては、初めにパルプにカチオン化剤を添加して粉砕機処理による低結晶化を行い、その後塩基を添加して粉砕機処理による低結晶化を行ないながらパルプとカチオン化剤の反応を行うことが好ましい。
【0078】
原料セルロースとして用いるパルプの形状は、製造装置内への導入に支障が出ない限り特に限定されないが、操作上の観点からシート状パルプやシート状パルプを裁断または粗粉砕して得られるペレット状又はチップ状パルプや、微粉砕して得られる粉末状セルロースを用いることが好ましい。原料セルロースとして用いるパルプの結晶化度に限定はない。しかしながら、セルロースの結晶化度低下処理には、通常セルロース鎖の切断に伴う分子量の低下が伴うため、より高分子量のカチオン化セルロースを得るためには、分子量低下の少ない、より結晶性が高いセルロースを用いることが好ましい。また、逆に前記計算式(I)で示される結晶化度が95%を超える極めて結晶化度の高いセルロースも入手が困難である。よって、重合度及び入手性の観点から、原料セルロースの前記計算式(I)で示される結晶化度は10〜95%が好ましく、30〜90%がより好ましく、60〜80%がさらに好ましい。
【0079】
原料セルロースの平均重合度にも限定は無いが、より高分子量のカチオン化セルロースを得るためには、より重合度の大きい原料セルロースを用いることが好ましい。この観点から原料セルロースの平均重合度は、好ましくは100〜2000であり、より好ましくは300〜1500、さらに好ましくは、350〜1350である。
【0080】
カチオン化剤の種類並びに量、塩基の種類、粉砕機の種類、低結晶化の方法並びに条件等の好ましい様態は、低結晶化のための粉砕機の処理時間を除き、上記製造方法(3)−1で記載のものと同様である。低結晶化のための粉砕機の処理時間は、1分〜5時間が好ましく、2分〜3時間がより好ましく、5分〜2時間が特に好ましい。塩基の量は、原料セルロースのアンヒドログルコース単位1モルあたり0.01当量以上であれば、セルロースとカチオン化剤の反応は速やかに進行し、1当量以下であれば、セルロースとカチオン化剤の反応の収率は高い。この観点から、原料セルロースのアンヒドログルコース単位1モル当たり0.05〜0.8当量が好ましく、0.1〜0.7当量がより好ましく、0.2〜0.6当量がさらに好ましく、0.3〜0.5当量が特に好ましい。
【0081】
カチオン化剤及び塩基添加後の低結晶化の際にカチオン化は進行するが、反応が不十分である場合、好ましくは10〜100℃、より好ましくは30〜80℃で熟成を行なうことにより、反応を進行させることができる。熟成時の水分量、及びその好ましい様態は、原料として低結晶性粉末セルロースの替わりにパルプを用いている点を除き、前述の低結晶性粉末セルロースのカチオン化の場合と同様である。また、反応中のセルロース鎖の解裂による分子量の低下を避ける観点から、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい(第1工程)。
【0082】
製造方法(3)−2における第2工程で使用する酸化プロピレン量、触媒、反応条件、反応終了後の処理及びそれらの好ましい様態は、上記製造方法(3)−1における第2工程と同様である。
【0083】
本発明で用いるC−HPCの製造方法としては、本発明の毛髪化粧料で洗浄した毛髪の乾燥後のハリやコシを付与し、かつ、ふんわりしたボリューム感のある仕上がりを向上させる観点から、カチオン化の際に低結晶化を行い、得られたカチオンカセルロースに対してヒドロキシプロピル化を行なう、製造方法(3)−2が好ましい。
【0084】
[(D)分岐脂肪酸又はその塩]
(D)成分の分岐脂肪酸は、下記式(4)で表される分岐脂肪酸又はその塩である。
CH−CHR−(CHCOOH (4)
(式中、Rはメチル基又はエチル基を示し、rは3〜26の整数を示す。)
例えば、LIPIDS,vol.23,No.9,878〜881(1988)の記載に従い、毛髪等から分離、抽出することもできるが、特許文献2、WO98/30532に従って合成することもできる。分岐脂肪酸は上記一般式(4)で表されるものであり、総炭素数が7〜30が好ましく、10〜24がより好ましく、16−22がさらに好ましい。具体的には、18−メチルエイコサン酸、14−メチルペンタデカン酸、14−メチルヘキサデカン酸、16−メチルヘプタデカン酸、16−メチルオクタデカン酸、18−メチルノナデカン酸、20−メチルヘンエイコサン酸が挙げられる。また、この分岐脂肪酸の塩としては、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;トリエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、モノエタノールアミン塩等の有機アミン塩;リジン塩、アルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩が挙げられる。
【0085】
抽出品としては、ラノリンからの抽出物、すなわちラノリン脂肪酸が挙げられる。ラノリン脂肪酸は、イソ脂肪酸、アンテイソ脂肪酸と呼ばれるメチル分岐長鎖脂肪酸を50質量%程度含有する。具体的には、18MEA〔クローダジャパン(株)〕、スクライロ〔クローダジャパン(株)〕、FA−NH〔日本精化(株)〕が挙げられる。
【0086】
(D)成分の分岐脂肪酸又はその塩は、2種以上を併用してもよい。また、合成品と抽出品を混合して使用してもよい。その含有量は、すすぎ時のきしみを顕著に低減できるという観点から、本発明の毛髪化粧料中に0.005〜15質量%の範囲が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.05〜5質量%がさらに好ましい。
【0087】
(D)成分に対する(C)成分の質量比((C)/(D))は、本発明の毛髪化粧料による洗浄後の毛髪のきしみを低減、乾燥後の毛髪にハリやコシを付与する観点から、下限は、0.1以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、1以上がさらに好ましく、1.5以上がよりさらに好ましい。上限は、100以下が好ましく、50以下がより好ましく、30以下がさらに好ましく、15以下がよりさらに好ましい。これらの観点を総合すると(C)/(D)は、0.1〜100が好ましく、0.5〜50がより好ましく、1〜30がさらに好ましく、1.5〜15がよりさらに好ましい。
【0088】
[(E)シリコーン類]
本発明の毛髪化粧料には、(E)シリコーン類を含んでいても良い。(E)シリコーン類として、例えば、一般式(21)で表されるジメチルポリシロキサンが挙げられる。
(CHSiO−[(CHSiO]−Si(CH (21)
〔式中、Rはメチル基又はヒドロキシル基を示し、eは10〜20000の数を示す。〕
がメチル基である場合は、aは500〜10000、特に1000〜5000が好ましい。
【0089】
(E)シリコーン類として、各種のジメチルポリシロキサンが使用できるが、市販品としては、DOW CORNING TORAY BY11−026、BY22−060(東レ・ダウコーニング製)、KF−9008、KF−9013(信越化学工業社製)等が挙げられる。具体的には、以下の式(22)で示されるものである。
(CHSiO−[(CHSiO]−Si(CH (22)
〔式中、eは100〜20000の数を示す。〕
【0090】
ジメチルポリシロキサンは、液状油(例えば、低重合ポリジメチルシロキサンオイル、環状シリコーン等の液状シリコーンオイル、またイソパラフィン等の液状炭化水素油)に溶解又は分散したものを使用することができる。
【0091】
ジメチルポリシロキサンの含有量は、乾燥後の毛髪に滑りを与える観点から、本発明の毛髪化粧料の0.01質量%以上、15質量%以下が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。中でも1〜5質量%がさらに好ましい。
【0092】
(F)界面活性剤
本発明の毛髪化粧料は、(A)成分以外の界面活性剤を含んでいてもよい。具体的にはアニオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられるが、コンディショナー、ヘアリンス、トリートメント等に用いる場合は、カチオン界面活性剤を用いることが好ましい。
【0093】
成分(A)以外のカチオン界面活性剤としては、毛髪化粧料で洗浄、乾燥後の指通り性、まとまり感を向上させる観点から以下の(F1)、(F2)、(F3)の化合物等が好ましい。
【0094】
(F1)アルキルトリメチルアンモニウム塩
例えば下記一般式(23)で表される化合物が挙げられる。
31−N(CH (23)
〔式中、R31は炭素数12〜22のアルキル基を示し、Aはハロゲン(塩素又は臭素)化物イオン又は炭素数1〜2のアルキル硫酸イオンを示す。〕
【0095】
その中でも、特に塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アラキルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムが好ましい。
【0096】
(F2)アルコキシトリメチルアンモニウム塩
例えば下記一般式(24)で表される化合物が挙げられる。
32−O−R33−N(CH (24)
〔式中、R32は炭素数12〜22のアルキル基を示し、R33はエチレン基又はプロピレン基を示し、Aは上記と同じである。〕
【0097】
(F3)ジアルキルジメチルアンモニウム塩
例えば下記一般式(25)で表される化合物が挙げられる。
(R34(CH (25)
〔式中、R34は炭素数12〜22のアルキル基を示し、Aは上記と同じである。〕
【0098】
(F)成分のカチオン界面活性剤は、2種以上を併用してもよく、また使用時に良好な柔軟性、滑り性、乾燥後のボリューム感を向上させる観点から、その含有量は、毛髪化粧料中の0.01〜5質量%が好ましく、0.05〜3質量%がより好ましく、0.1〜1質量%がさらに好ましい。
【0099】
また、本発明の毛髪化粧料は、(A)成分の中和、あるいは乾燥後の毛髪にハリ、コシを付与する効果を得るため、ヒドロキシモノカルボン酸及びジカルボン酸から選ばれる有機酸を含むこともできる。ヒドロキシモノカルボン酸の具体例としては、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、グルコン酸、パントテン酸等が挙げられる。ジカルボン酸の具体例としては、リンゴ酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸等が挙げられる。特に、乾燥後にはふんわりとやわらかなボリューム感のある仕上がりにする観点から、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸が好ましい。毛髪化粧料中の含有量は、乾燥後のハリやコシを十分に高める観点から、0.1〜5質量%が好ましく、0.2〜3質量%がより好ましく、0.5〜2質量%がさらに好ましい。
【0100】
本発明の毛髪化粧料は、乾燥後の毛髪にツヤ、ふんわりした仕上がり、ボリューム感を向上させる観点より、毛髪に適用する際のpH(水で20質量倍に希釈時、25℃)が2〜5であり、pH3〜4.5がより好ましい。
【0101】
本発明の毛髪化粧料においては、(A)〜(F)成分以外に、通常の化粧品原料として用いられる他の成分を含有することができる。このような任意成分としては、例えば、(C)成分以外のカチオン化セルロース、ヒドロキシ化セルロース、高重合ポリエチレンオキサイド等の高分子化合物;グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の保湿剤;ジンクピリチオン、塩化ベンザルコニウム等の抗フケ剤;その他キレート剤、感触向上剤、増粘剤、香料、紫外線吸収剤、可視光吸収剤、キレート剤、酸化防止剤、着色剤、防腐剤、pH調整剤、粘度調整剤、パール光沢剤、湿潤剤等が挙げられる。本発明の毛髪化粧料は、(A)〜(F)成分とこれら他の成分とを混合して水に溶解することで製造される。
水の含有量は、本発明の毛髪化粧料中50質量%以上、98質量%以下が好ましく、60質量%以上、95質量%以下がより好ましい。
【0102】
本発明の毛髪化粧料は、毛髪をシャンプーした後、毛髪に塗布して使用するタイプの剤型、例えばヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント等に好適に利用することができる。
【0103】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0104】
以下の実施例及び比較例において、特記しない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を意味する。また、各種物性の測定法は以下のとおりである。
【0105】
(1)パルプ及び粉末セルロースの水分含量の測定
パルプ、粉末セルロースの水分量は、赤外線水分計(株式会社ケット科学研究所製、「FD−610」)を用いて測定した。測定温度120℃で、30秒間の質量変化率が0.1%以下となる点を測定の終点とした。
(2)パルプ及び粉末セルロースの結晶化度の算出
株式会社リガク製「Rigaku RINT 2500VC X-RAY diffractometer」を用いて、以下の条件で測定した回折スペクトルのピーク強度から、前記計算式(I)に基づいて算出した。
X線源:Cu/Kα−radiation、管電圧:40kV、管電流:120mA
測定範囲:2θ=5〜45°
測定サンプル:面積320mm×厚さ1mmのペレットを圧縮して作成
X線のスキャンスピード:10°/分
得られた結晶化度が負の値をとった場合は、全て結晶化度0%とした。
【0106】
(3)C−HPCのカチオン化エチレンオキシ基、及びプロピレンオキシ基の置換度の算出
後述の製造例で得られたC−HPCを透析膜(分画分子量1000)により精製後、水溶液を凍結乾燥して精製C−HPCを得た。得られた精製C−HPCの塩素含有量(%)を元素分析によって測定し、C−HPC中に含まれるカチオン性基の数と対イオンである塩化物イオンの数を同数であると近似して、下記計算式(II)から、C−HPC単位質量中に含まれるカチオン化エチレンオキシ基(−CH(Y)−CH(Y)O−)の量(x(モル/g))を求めた。
x(モル/g)=元素分析から求められる塩素含有量(%)/(35.5×100) (II)
分析対象がヒドロキシプロピルセルロースではなく精製C−HPCであることを除き、日本薬局方記載の「ヒドロキシプロピルセルロースの分析法」に従って、ヒドロキシプロポキシ基含有量(%)を測定した。下記計算式(III)から、ヒドロキシプロポキシ基含有量〔式量(OCOH=75.09〕(y(モル/g)を求めた。
y(モル/g)=ガスクロマトフラフィー分析から求められるヒドロキシプロポキシ基含有量(%)/(75.09×100) (III)
得られたx及びyと下記計算式(II)、(III)からカチオン化エチレンオキシ基の置換度(k)及びプロピレンオキシ基の置換度(m)を算出した。
x=k/(162+k×K+m×58) (IV)
y=m/(162+k×K+m×58) (V)
〔式中、k及びKは、それぞれ、カチオン化エチレンオキシ基の置換度、及び式量を示し、mはプロピレンオキシ基の置換度を示す。〕
【0107】
(5)平均重合度の測定(銅アンモニア法)
(5−1)パルプ及び粉末セルロースの粘度平均重合度の測定
(i)測定用溶液の調製
メスフラスコ(100mL)に塩化第一銅0.5g、25%アンモニア水20〜30mLを加え、完全に溶解した後に、水酸化第二銅1.0g、及び25%アンモニア水を加えて標線の一寸手前までの量とした。これを30〜40分撹拌して、完全に溶解した。その後、精秤したセルロースを加え、標線まで上記アンモニア水を満たした。空気の入らないように密封し、12時間、マグネチックスターラーで撹拌して溶解し、測定用溶液を調製した。添加するセルロース量を20〜500mgの範囲で変えて、異なる濃度の測定用溶液を調製した。
(ii)粘度平均重合度の測定
上記(i)で得られた測定用溶液(銅アンモニア溶液)をウベローデ粘度計に入れ、恒温槽(20±0.1℃)中で1時間静置した後、液の流下速度を測定した。種々のセルロース濃度(g/dL)の銅アンモニア溶液の流下時間(t(秒))とセルロース無添加の銅アンモニア水溶液の流下時間(t0(秒))から、下記式(VI)により相対粘度ηrを求めた。
η=t/t (VI)
次に、それぞれの濃度における還元粘度(ηsp/c)を下記式により求めた。
ηsp/c=(η−1)/c (VII)
(c:セルロース濃度(g/dL))
さらに、還元粘度をc=0に外挿して固有粘度[η](dL/g)を求め、下記式(VIII)により粘度平均重合度(DP)を求めた。
DP=2000×[η] (VIII)
【0108】
(5−2)C−HPCの粘度平均重合度の測定
(iii)測定用溶液の調製
精秤したセルロースの替わりに精秤したC−HPCを用いた点を除き、上記(i)の測定溶液の調製と同様にして測定溶液を調製した。
(iv)粘度平均重合度の測定
測定溶液の濃度としてセルロース換算濃度(g/dL)を用いた点を除き、上記(ii)の粘度平均重合度の測定と同様にして測定した。
ここで、セルロース換算濃度(ccell)とは、測定溶液1dL中に含まれるセルロース骨格部分の質量(g)をいい、下記計算式(IX)で定義する。
cell=u×162/(162+k×K+m×58) (IX)
〔式中、uは測定溶液の調製時に用いた精秤したC−HPCの質量(g)を示し、k、K、mは、それぞれ前記計算式(IV)及び(V)と同じ意味を表す。〕
【0109】
製造例1〔C−HPC(1)の製造〕
(1)チップ化工程
シート状木材パルプ〔テンベック社製Biofloc HV10、平均重合度1508、結晶化度74%、水分含量7.6%〕をシートペレタイザー(株式会社ホーライ社製、「SGG−220」)で処理して3〜5mm角のチップ状にした。
(2)カチオン化反応工程
上記工程(1)で得られたチップ状パルプ2100gに、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液(阪本薬品工業株式会社製、含水量20%、純度90%以上)(以下「GMAC」という)1170g[セルロースのアンヒドログルコース単位(以下「AGU」という)1モルあたり0.52モル相当量]をポリ袋中で混合した後、バッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製「FV−20」:容器全容積69L、ロッドとして、φ30mm、長さ600mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド114本、充填率71%)に投入した。12分間粉砕処理(振動数60Hz、振幅8mm、温度10〜40℃)を行い、セルロースとGMACの粉末状混合物を得た。
さらに振動ミル内に粒状の水酸化ナトリウム284g(AGU1モルあたり0.6モル相当量)を投入した。同様の条件で120分間粉砕処理を行い、カチオン化セルロースを得た。
(3)ヒドロキシプロピル化反応工程
上記工程(2)で得られたカチオン化セルロース170gを還流管を取り付けた1Lニーダー(株式会社入江商会製、PNV−1型)に仕込み、70℃に昇温し、酸化プロピレン51.0g(AGU1モルあたり2.0モル相当量、関東化学株式会社製、特級試薬)を撹拌しながら滴下して、酸化プロピレンが消費され還流が止むまで6時間反応を行った。
反応終了混合物をニーダーから取り出し、薄褐色の粗C−HPC粉末220gを得た。この粗C−HPC粉末10.0gを採取して乳酸で中和した。プロピレンオキシ基及びカチオン化エチレンオキシ基の置換度を求める目的で、中和物を透析膜(分画分子量1000)により精製後、水溶液の凍結乾燥を行い、精製C−HPC(1)を得た。
得られた精製C−HPC(1)の元素分析より、塩素元素含有量は3.8%であった。また、前記「ヒドロキシプロピルセルロースの分析法」によるヒドロキシプロポキシ基含有量は、36.5%であった。得られた精製C−HPC(1)の平均重合度、カチオン化エチレンオキシ基の置換度(k)及びプロピレンオキシ基の置換度(m)を表1及び2に示す。
【0110】
製造例2〔C−HPC(2)の製造〕
(1)チップ化工程
シート状木材パルプ〔テンベック社製Biofloc HV+、平均重合度1770、結晶化度74%、水分含量7.0%〕をシートペレタイザー(株式会社ホーライ社製、「SGG−220」)で処理して3〜5mm角のチップ状にした。
(2)カチオン化反応工程
上記工程(1)で得られたチップ状パルプ100gに、GMAC58.5g(AGU1モルあたり0.2モル相当量)を乳鉢で混合した後、バッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製「MB−1」:容器全容積3.5L、ロッドとして、φ30mm、長さ218mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド13本、充填率57%)に投入した。12分間粉砕処理(振動数20Hz、振幅8mm、温度30〜70℃)を行い、セルロースとGMACの粉末状混合物を得た。
得られた粉状混合物に、48%水酸化ナトリウム水溶液10.3g(AGU 1モルあたり0.23モル相当量)を乳鉢で混合した後、前記バッチ式振動ミルに投入した。同様の条件にて60分間粉砕処理を行い、カチオン化セルロースを得た。
(3)ヒドロキシプロピル化反応工程
上記工程(2)で得られたカチオン化セルロース127gを製造例1で用いた還流管を取り付けた1Lニーダーに仕込み、70℃に昇温し、酸化プロピレン27.0g(AGU 1モルあたり2.8モル相当量)を撹拌しながら滴下して、酸化プロピレンが消費され還流が止むまで6時間反応を行った。
反応終了混合物をニーダーから取り出し、薄褐色の粗C−HPC粉末181.0gを得た。
この粗C−HPC粉末を製造例1と同様に、中和、精製、凍結乾燥を行い、精製C−HPC(2)を得た。結果を表1及び2に示す。
【0111】
製造例3〔C−HPC(3)の製造〕
(1)チップ化工程
シート状木材パルプ〔テンベック社製Biofloc HV+、平均重合度1770、結晶化度74%、水分含量7.0%〕をシートペレタイザー(株式会社ホーライ社製、「SGG−220」)で処理して3〜5mm角のチップ状にした。
(2)カチオン化反応工程
上記工程(1)で得られたチップ状パルプ100gに、GMAC23.4g(AGU1モルあたり0.2モル相当量)を乳鉢で混合した後、バッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製「MB−1」:容器全容積3.5L、ロッドとして、φ30mm、長さ218mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド13本、充填率57%)に投入した。12分間粉砕処理(振動数20Hz、振幅8mm、温度30〜70℃)を行い、セルロースとGMACの粉末状混合物を得た。
得られた粉状混合物に、48%水酸化ナトリウム水溶液10.3g(AGU 1モルあたり0.23モル相当量)を乳鉢で混合した後、前記バッチ式振動ミルに投入した。同様の条件にて60分間粉砕処理を行い、カチオン化セルロースを得た。
(3)ヒドロキシプロピル化反応工程
上記工程(2)で得られたカチオン化セルロース127gを製造例1で用いた還流管を取り付けた1Lニーダーに仕込み、70℃に昇温し、酸化プロピレン53.9g(AGU 1モルあたり2.8モル相当量)を撹拌しながら滴下して、酸化プロピレンが消費され還流が止むまで6時間反応を行った。
反応終了混合物をニーダーから取り出し、薄褐色の粗C−HPC粉末181.0gを得た。
この粗C−HPC粉末を製造例1と同様に、中和、精製、凍結乾燥を行い、精製C−HPC(3)を得た。結果を表1及び2に示す。
【0112】
【表1】

【0113】
【表2】

【0114】
実施例1〜10及び比較例1〜4(毛髪化粧料の製造、評価)
表3に示す毛髪化粧料を、常法により調製し、以下の評価方法により評価した。その結果を表3に示す。なお、pHは各組成物を水で20質量倍希釈し、25℃で測定した値である。
【0115】
評価方法
ストレートパーマ1回、ブリーチ2回処理を施した日本人女性の毛髪をダメージ毛髪とし、それぞれ20g(長さ15〜20cm、平均直径80μm)の毛髪束を、パネラー5名が次の方法で処理しながら官能評価を行った。
【0116】
下記の処方の標準シャンプー2gを用いて洗浄した毛髪束に、表3に示す毛髪化粧料2gを塗布し、毛髪全体に十分に馴染ませた後、およそ30秒間約40℃の流水下で濯ぎ、ついで、タオルドライを行い、ドライヤーで十分に乾燥させた後に乾燥後の評価を行った。評価は5人で行い、その積算値を求めた。
【0117】
・標準シャンプーの処方(pH7.0)
25%ポリオキシエチレン(2.5)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム塩 62.0質量%
ラウリン酸ジエタノールアミド 2.3質量%
エデト酸二ナトリウム 0.15質量%
安息香酸ナトリウム 0.5質量%
塩化ナトリウム 0.8質量%
75%リン酸 適量
香料、メチルパラベン 適量
精製水 残量
【0118】
評価基準
(1)すすぎ時のきしみのなさ
4:きしみを感じない
3:あまりきしみを感じない
2:ややきしみを感じる
1:非常にきしみを感じる
【0119】
(2)乾燥後のきしみのなさ
4:きしみを感じない
3:あまりきしみを感じない
2:ややきしみを感じる
1:非常にきしみを感じる
【0120】
(3)さらさら感
4:非常にさらさらする
3:ややさらさらする
2:あまりさらさらしない
1:さらさらしない
【0121】
(4)ハリコシ
4:非常にハリコシがある
3:ややハリコシがある
2:あまりハリコシがない
1:ハリコシがない
【0122】
(5)ふんわり感
4:非常にふんわりする
3:ややふんわりする
2:あまりふんわりしない
1:ふんわりしない
【0123】
(6)ボリューム感
4:非常にボリュームがある
3:ややボリュームがある
2:あまりボリュームがない
1:ボリュームがない
【0124】
【表3】

【0125】
なお、表3中の各成分の原料名、及び製造元はそれぞれ下記の通りである。
・N,N−ジメチル−3−オクタデシロキシプロピルアミン
(原料名)ファーミンDM E−80 (製造元)花王株式会社
・N−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)ドコサナミド
(原料名)AMIDET APA−22 (製造元)花王スペイン
・ステアリルアルコール
(原料名)カルコール8098 (製造元)花王株式会社
・C−HPC(1)
一般式(1)で示されるC−HPCにおいて、カチオン化エキレンオキシ基の置換度(k)が0.3、プロピレンオキシ基の置換度(m)が1.3、(表2記載)
・C−HPC(2)
一般式(1)で示されるC−HPCにおいて、カチオン化エキレンオキシ基の置換度(k)が0.31、プロピレンオキシ基の置換度(m)が0.62、(表2記載)
・C−HPC(3)
一般式(1)で示されるC−HPCにおいて、カチオン化エキレンオキシ基の置換度(k)が0.11、プロピレンオキシ基の置換度(m)が1.53、(表2記載)
・18−メチルエイコサン酸
(原料名)18MEA (製造元)クローダジャパン株式会社
・ラノリン脂肪酸
(原料名)FA−NH (製造元)日本精化株式会社
・乳酸(90%溶液)
・ジプロピレングリコール
・HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)
(原料名)HPC−M (製造元)日本曹達株式会社
・C−HEC(カチオン化ヒドロキシエチルセルロース)
(原料名)ポイズ C−80M (製造元)花王株式会社
・ジメチルポリシロキサン
(原料名)BY11−039 (製造元)東レ・ダウコーニング社
【0126】
実施例11〜13
下記に示す組成の毛髪化粧料を、常法により調製し評価した。なお、pHは各組成物を水で20質量倍希釈し、25℃で測定した値である。
【0127】
実施例11 ヘアコンディショナー(pH3.0)
(質量%)
N,N−ジメチル−3−オクタデシロキシプロピルアミン 2.0
(ファーミンDM E−80、花王株式会社製)
ステアリルアルコール 5.0
(カルコール8098、花王株式会社製)
C−HPC(1)(製造例1) 0.1
ベンジルアルコール 0.5
ジプロピレングリコール 5.0
ヒドロキシステアリン酸水添ヒマシ油 0.1
(テクノール MH、横関油脂工業株式会社製)
ジメチルポリシロキサン 2.5
(BY11−039、東レ・ダウコーニング社製)
18−メチルエイコサン酸 0.3
(18MEA、クローダジャパン株式会社製)
乳酸(90%溶液) 2.0
香料 0.4
水酸化ナトリウム 適量
イオン交換水 残量
【0128】
上記コンディショナーは、すすぎ時には毛髪のきしみを抑制し、乾燥後の毛髪にハリやコシを付与し、かつ、ふんわりした仕上がり、ボリューム感のあるヘアスタイルをつくれた。
【0129】
実施例12 ヘアコンディショナー(pH3.8)
(質量%)
N,N−ジメチル−3−オクタデシロキシプロピルアミン 2.0
(ファーミンDM E−80、花王株式会社製)
ベヘニルアルコール 5.0
(カルコール220−80、花王株式会社製)
C−HPC(3)(製造例3) 0.3
ベンジルアルコール 0.3
ジプロピレングリコール 3.0
ヒマワリ油 0.5
(ハイオレイック ヒマワリ油、横関油脂工業株式会社製)
18−メチルエイコサン酸 0.3
(18MEA、クローダジャパン株式会社製)
乳酸(90%溶液) 2.0
香料 0.4
水酸化ナトリウム 適量
イオン交換水 残量
【0130】
上記コンディショナーは、すすぎ時には毛髪のきしみを抑制し、乾燥後の毛髪にハリやコシを付与し、かつ、ふんわりした仕上がり、ボリューム感のあるヘアスタイルをつくれた。
【0131】
実施例13 ヘアトリートメント(pH4.5)
(質量%)
N,N−ジメチル−3−オクタデシロキシプロピルアミン 0.5
(ファーミンDM E−80、花王株式会社製)
ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド 2.0
(NIKKOL アミドアミン MPS、日光ケミカルズ株式会社製)
ステアリルアルコール 7.0
(カルコール8098、花王株式会社製)
C−HPC(2)(製造例(2)) 0.3
ジプロピレングリコール 1.0
ベンジルアルコール 0.5
フェノキシエタノール 0.1
パルミチン酸イソプロピル 1.0
グリセリン 5.0
ジメチルポリシロキサン混合液 2.5
(シリコーン KHS−3 、信越化学工業株式会社製)
16−メチルヘプタデカン酸 0.5
乳酸(90%溶液) 2.2
香料 0.4
水酸化ナトリウム 適量
イオン交換水 残量
【0132】
上記コンディショナーは、すすぎ時には毛髪のきしみを抑制し、乾燥後の毛髪にハリやコシを付与し、かつ、ふんわりした仕上がり、ボリューム感のあるヘアスタイルをつくれた。
【0133】
本発明の他の態様について、以下に例示する。
<1>
次の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び水を含有する毛髪化粧料。
(A)第3級アミン化合物
(B)炭素数12〜28であり、水酸基が1である高級アルコール
(C)カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース
(下記一般式(1)で表されるアンヒドログルコース由来の主鎖を有し、かつカチオン化エチレンオキシ基の置換度が0.01〜2.9であり、プロピレンオキシ基の置換度が0.1〜4.0)
【0134】
【化11】

(式中、R、R及びRは、それぞれ独立に下記一般式(2)で表されるカチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基を有する置換基を示し、nはアンヒドログルコースの平均重合度を示し、50〜5000である。)
【0135】
【化12】

(式中、Y及びYは、一方が水素原子であり、他方が下記一般式(3)で表されるカチオン性基を示し、POはプロピレンオキシ基を示す。pは一般式(2)中に含まれるカチオン化エチレンオキシ基(−CH(Y)−CH(Y)−O−)の数を、qはプロピレンオキシ基(−PO−)の数を示し、それぞれ0又は正の整数である。p及びqがいずれも0でない場合、カチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の付加順序は問わず、さらにp及び/又はqが2以上である場合は、ブロック結合又はランダム結合のいずれであってもよい。ただし、R、R及びRのすべてにおいて、p及びqがいずれも0になる場合を除く。)
【0136】
【化13】

(式中、R、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、Xはアニオン性基を示す。)
【0137】
(D)下記式(4)で表される分岐脂肪酸又はその塩
CH−CHR−(CHCOOH (4)
(式中、Rはメチル基又はエチル基を示し、rは3〜26の整数を示す。)
<2>
毛髪化粧料中の前記(C)成分の含有量が0.01〜10質量%である、前記<1>に記載の毛髪化粧料。
<3>
毛髪化粧料中の前記(A)成分に対する前記(C)成分の質量比((C)/(A))が、0.001〜5の範囲である、前記<1>又は<2>に記載の毛髪化粧料。
<4>
毛髪化粧料中の前記(D)成分に対する前記(C)成分の質量比((C)/(D))が、0.1〜100の範囲である、前記<1>乃至<3>いずれか1項に記載の毛髪化粧料。
<5>
毛髪化粧料中の前記(A)成分の含有量が0.1〜15質量%である、前記<1>乃至<4>いずれか1項に記載の毛髪化粧料。
<6>
毛髪化粧料中の前記(B)成分の含有量が0.1〜20質量%である、前記<1>乃至<5>いずれか1項に記載の毛髪化粧料。
<7>
毛髪化粧料中の前記(D)成分の含有量が0.005〜15質量%である、前記<1>乃至<6>いずれか1項に記載の毛髪化粧料。
<8>
毛髪化粧料中の前記(A)の含有量が0.2〜10質量%、前記(B)成分の含有量が0.5〜15質量%、前記(C)成分の含有量が0.05〜2質量%、前記(D)成分の含有量が0.01〜10質量%である前記<1>乃至<7>いずれか1項に記載の毛髪化粧料。
<9>
前記一般式(2)において、p及びqが0又は1である、前記<1>乃至<8>いずれか1項に記載の毛髪化粧料。
<10>
前記一般式(3)において、R、R及びR6が、それぞれ独立にメチル基又はエチル基である、前記<1>乃至<9>いずれか1項に記載の毛髪化粧料。
<11>
毛髪化粧料中の前記(A)成分が、(A−2)エーテルアミン、(A−3)アルキルアミドアミンである前記<1>乃至<10>いずれか1項に記載の毛髪化粧料。
<12>
毛髪化粧料中の前記(D)成分が、式(4)の総炭素数が7〜30である前記<1>乃至<11>いずれか1項に記載の毛髪化粧料。
<13>
下記工程(1)及び(2)により得られる前記(C)成分と、前記(A)成分、前記成分(B)、前記成分(D)、前記成分(E)及び水を含有する、前記<1>乃至<12>いずれか1項に記載の毛髪化粧料。
工程(1):パルプにカチオン化剤を添加して粉砕機処理による低結晶化を行い、その後塩基を添加して粉砕機処理による低結晶化を行ないながらパルプとカチオン化剤の反応を行ってカチオン化セルロースを得る工程
工程(2):工程(1)で得られたカチオン化セルロースと酸化プロピレンとを反応させてカチオン化ヒドロキシプロピルセルロースを得る工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び水を含有する毛髪化粧料。
(A)第3級アミン化合物
(B)炭素数12〜28であり、水酸基が1である高級アルコール
(C)カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース
(下記一般式(1)で表されるアンヒドログルコース由来の主鎖を有し、かつカチオン化エチレンオキシ基の置換度が0.01〜2.9であり、プロピレンオキシ基の置換度が0.1〜4.0)
【化1】

(式中、R、R及びRは、それぞれ独立に下記一般式(2)で表されるカチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基を有する置換基を示し、nはアンヒドログルコースの平均重合度を示し、50〜5000である。)
【化2】

(式中、Y及びYは、一方が水素原子であり、他方が下記一般式(3)で表されるカチオン性基を示し、POはプロピレンオキシ基を示す。pは一般式(2)中に含まれるカチオン化エチレンオキシ基(−CH(Y)−CH(Y)−O−)の数を、qはプロピレンオキシ基(−PO−)の数を示し、それぞれ0又は正の整数である。p及びqがいずれも0でない場合、カチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の付加順序は問わず、さらにp及び/又はqが2以上である場合は、ブロック結合又はランダム結合のいずれであってもよい。ただし、R、R及びRのすべてにおいて、p及びqがいずれも0になる場合を除く。)
【化3】

(式中、R、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、Xはアニオン性基を示す。)
(D)下記式(4)で表される分岐脂肪酸又はその塩
CH−CHR−(CHCOOH (4)
(式中、Rはメチル基又はエチル基を示し、rは3〜26の整数を示す。)
【請求項2】
毛髪化粧料中の前記(C)成分の含有量が0.01〜10質量%である、請求項1に記載の毛髪化粧料。
【請求項3】
毛髪化粧料中の前記(A)成分に対する前記(C)成分の質量比((C)/(A))が、0.001〜5の範囲である、請求項1又は2に記載の毛髪化粧料。
【請求項4】
毛髪化粧料中の前記(D)成分に対する前記(C)成分の質量比((C)/(D))が、0.1〜100の範囲である、請求項1乃至3いずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【請求項5】
毛髪化粧料中の前記(A)成分の含有量が0.1〜15質量%である、請求項1乃至4いずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【請求項6】
毛髪化粧料中の前記(B)成分の含有量が0.1〜20質量%である、請求項1乃至5いずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【請求項7】
毛髪化粧料中の前記(D)成分の含有量が0.005〜15質量%である、請求項1乃至6いずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【請求項8】
前記一般式(2)において、p及びqが0又は1である、請求項1乃至7いずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【請求項9】
前記一般式(3)において、R、R及びR6が、それぞれ独立にメチル基又はエチル基である、請求項1乃至8いずれか1項に記載の毛髪化粧料。

【公開番号】特開2012−232936(P2012−232936A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102882(P2011−102882)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】