説明

毛髪洗浄剤組成物

【課題】シリコーンに対する洗浄力に優れ、起泡性と泡のクリーミー性に優れ、洗髪時、すすぎ時の指通りが良く、また、べたつかずサラサラで自然なまとまりに仕上がり、さらには防腐剤等を配合せずとも防腐性に優れる毛髪洗浄剤組成物の提供。
【解決手段】下記の(a)成分〜(f)成分を含有し、(a)成分が組成物中2〜10質量%、(b)成分が組成物中5〜15質量%、(c)成分が組成物中1〜5質量%、(d)成分が組成物中0.5〜5質量%、(e)成分が組成物中1〜5質量%、(f)成分が組成物中0.1〜1質量%であることを特徴とする毛髪洗浄剤組成物。
(a)アシルβ−アラニン型界面活性剤
(b)アシルタウリン型界面活性剤
(c)アミドベタイン型界面活性剤及び/又はアルキルベタイン型界面活性剤
(d)ポリオキシエチレングリコール
(e)1,2−ペンタンジオール及び/又は1,2−ヘキサンジオール
(f)カチオン性ポリマー

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンに対する洗浄力に優れ、起泡性と泡のクリーミー性に優れ、洗髪時、すすぎ時の指通りが良く、また、べたつかずサラサラで自然なまとまりに仕上がり、さらには防腐剤等を配合せずとも防腐性に優れる毛髪洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
近年、毛髪洗浄剤に対して、洗浄性に加えて、低刺激性、優れた起泡性、クリーミーな泡質、すすぎ時の良好な感触、使用後のなめらかさ、まとまりの良さなどの仕上がり感が求められている。
【0003】
従来、毛髪洗浄剤基剤用の界面活性剤として、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフインスルホン酸塩などのアニオン性界面活性剤が広く用いられてきた。ところが、これらの界面活性剤は、洗浄力が比較的高く、近年洗髪の頻度が高まっていることと相まって、時にかさつきや乾燥を感じる場合があり、よりいっそう刺激性の低い毛髪洗浄剤が求められてきていた。また、これらは石油由来の界面活性剤であり、最近のナチュラル志向に反するものであった。
【0004】
これに対し、アルキルベタイン型やアミドベタイン型界面活性剤、β−アラニン型界面活性剤およびアシルタウリン型界面活性剤は、皮膚や眼粘膜に対する刺激性が低く、極めて温和な界面活性剤であり、注目されてきている。
【0005】
アシルタウリン型界面活性剤とβ−アラニン型界面活性剤を主成分として用いた洗浄剤組成物としては、特許文献1に開示された洗浄剤組成物が挙げられる。また、アミドベタイン型界面活性剤を主成分として用いた洗浄剤組成物としては、特許文献2に開示されたシャンプー組成物が挙げられる。しかし、これらの洗浄剤組成物は、いずれも泡立ち、泡のクリーミー性の点で充分とはいえず、特に皮脂汚れや整髪料の存在下では泡立ちや泡のクリーミー性が著しく低下し、さらには洗浄力も不充分であり、満足するものではなかった。
【0006】
また、特許文献3には、アシルアルキルタウリン型界面活性剤とカチオン性ポリマーを用いた洗浄剤組成物が提示されている。しかし、この洗浄剤組成物は、泡のクリーミー性に乏しく、洗髪時の泡の感触に問題があった。β−アラニン型界面活性剤とポリオキシエチレングリコールとを使用した頭髪用化粧料については、特許文献4に開示されている。しかし、この頭髪用化粧料では、刺激性の点で問題を生じたり、さらには洗髪時、すすぎ時における指通りが悪く、乾燥後の髪に好ましい感触が得られなかった。
【0007】
一方、使用中および使用後の感触の点では、油剤を配合した毛髪洗浄剤が開発されているのに加えて、乾燥時のしっとり感やなめらかさ、まとまり感をさらに高める目的で、油剤を配合した毛髪洗浄剤、例えば、トリートメントやヘアワックス、ヘアオイル、洗い流さないタイプのトリートメントを使用することが一般的となっている。使用される油剤としては、炭化水素、トリグセライド、ワックス、エステル等種々の油剤が挙げられるが、中でもシリコーンが感触の点で特に優れることが知られており、毛髪洗浄剤にシリコーンを配合することが公知の技術となっている。
【0008】
シリコーンは、毛髪に優れた感触を付与できる一方で、他の油剤と比較して通常のシャンプーで洗浄されにくく、毛髪表面、及び頭皮に残存しやすいほか、洗髪時にシャンプーの泡立ちを阻害するという問題がある。また、残存したシリコーンは毛髪表面を被膜する状態で存在すると考えられ、染毛やスタイリングの際に、薬剤や熱の作用を阻害し、問題を生じるおそれもあるため、シリコーンに対する洗浄力に優れる毛髪洗浄剤が求められている。シリコーンに対する洗浄力に優れる洗浄剤組成物については特許文献5に開示されているが、起泡性と泡のクリーミー性、洗髪時および乾燥後の感触において満足するものではなかった。
【0009】
さらには、いわゆるナチュラル志向の高まりを背景に、植物由来原料の使用、低刺激性原料の使用、防腐剤の不使用または減量に対する要望が高まっている。特許文献6においては、刺激性が高い防腐剤の配合量の低減を目的として、アルカンジオールとグレープフルーツ抽出物とを併用した防腐殺菌剤が開示されているが、これを洗浄剤組成物に用いた場合には、起泡性と泡のクリーミー性が悪化し、乾燥後にべたつきを生じるという問題があった。
【0010】
このように、シリコーンに対する洗浄力、起泡性と泡のクリーミー性、使用中および使用後の感触、低刺激性をともに満足する毛髪洗浄剤組成物はこれまで提供されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平6−33094号公報
【特許文献2】特開平8−295617号公報
【特許文献3】特開2001−64678号公報
【特許文献4】特開2002−293722号公報
【特許文献5】特開平4−296399号公報
【特許文献6】特開2008−19186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑み、シリコーンに対する洗浄力に優れ、起泡性と泡のクリーミー性に優れ、洗髪時、すすぎ時の指通りが良く、また、べたつかずサラサラで自然なまとまりに仕上がり、さらには防腐剤等を配合せずとも防腐性に優れる毛髪洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、(a)アシルβ−アラニン型界面活性剤、(b)アシルタウリン型界面活性剤、(c)アミドベタイン型界面活性剤及び/又はアルキルベタイン型界面活性剤、(d)ポリオキシエチレングリコール、(e)1,2−ペンタンジオール及び/又は1,2−ヘキサンジオール、(f)カチオン性ポリマーを特定の比率で組み合わせることで、前記の特性を全て満足する毛髪洗浄剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、下記の(a)成分〜(f)成分を含有し、(a)成分が組成物中2〜10質量%、(b)成分が組成物中5〜15質量%、(c)成分が組成物中1〜5質量%、(d)成分が組成物中0.5〜5質量%、(e)成分が組成物中1〜5質量%、(f)成分が組成物中0.1〜1質量%であることを特徴とする毛髪洗浄剤組成物である。
【0015】
(a)式(1)で表わされるアシルβ−アラニン型界面活性剤
【0016】
【化1】

【0017】
(式中、R1は炭素数7〜19のアルキル基、又はアルケニル基、R2は水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基、M1はアルカリ金属、又は有機アミンを示す)
【0018】
(b) 式(2)で表わされるアシルタウリン型界面活性剤
【0019】
【化2】

【0020】
(ここでR3は、炭素数7〜19のアルキル基、又はアルケニル基、R4は水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基、M2はアルカリ金属、又は有機アミンを示す。)
【0021】
(c) 式(3)で表されるアミドベタイン型界面活性剤及び/又は式(4)で表されるアルキルベタイン型界面活性剤
【化3】

【0022】
(R5は炭素数7〜19のアルキル基、又はアルケニル基、R6,R7はそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基、nは2〜4の整数を示す。)
【0023】
【化4】

【0024】
(R8は炭素数8〜20のアルキル基、又はアルケニル基、R9,R10はそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基を示す。)
【0025】
(d)式(5)で表されるポリオキシエチレングリコール
【0026】
【化5】

【0027】
(ここでR11は炭素数14〜22のアルキル基、又はアルケニル基、mは40〜80、R12は炭素数10〜18のアルキル基、又はアルケニル基を示す)
【0028】
(e)1,2−ペンタンジオール及び/又は1,2−ヘキサンジオール
【0029】
(f)カチオン性ポリマー
【発明の効果】
【0030】
本発明の毛髪洗浄剤組成物によれば、シリコーンに対する洗浄力に優れ、起泡性と泡のクリーミー性に優れ、洗髪時、すすぎ時の指通りが良く、また、べたつかずサラサラで自然なまとまりに仕上がり、さらには防腐剤等を配合せずとも防腐性に優れるという効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明の毛髪洗浄剤組成物は、下記(a)成分〜(f)成分を含有する。
【0032】
〔(a)アシルβ−アラニン型界面活性剤〕
本発明に用いられる(a)成分は、前記式(1)で表わされるβ−アラニン型界面活性剤である。式(1)においてR1は炭素数7〜19のアルキル基、又はアルケニル基である。すなわち、式中のR1COはアシル基であり、炭素数8〜20の直鎖あるいは分岐の脂肪酸残基である。脂肪酸としてはカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸等の飽和脂肪酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸、およびこれらの混合物であるヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、牛脂脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸が挙げられる。これらのうち好ましくは、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、牛脂脂肪酸が挙げられる。アシル基の炭素数が8未満の場合は起泡性が悪くなり、炭素数が20を超える場合は安定性が悪くなる。
【0033】
式(1)においてR2は、水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基である。また式(1)においてM1はアルカリ金属、又は有機アミンである。アルカリ金属としては、ナトリウムやカリウムが挙げられる。有機アミンとしては、炭素数2〜3のヒドロキシアルキル基を有するアミンが挙げられ、具体的には、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが挙げられる。(a)成分として1種又は2種以上を用いることができる。
【0034】
式(1)で示されるアシルβ−アラニン型界面活性剤の具体例としては、N−ラウロイル−β−アラニン塩、N−ミリストイル−β−アラニン塩、N−ココイル−β−アラニン塩、N−ラウロイルグルタミン酸塩、N−ココイルグリシン塩、N−ラウロイル−N−メチル−β−アラニン塩、N−ミリストイル−N−メチル−β−アラニン塩などが挙げられる。
【0035】
〔(b)アシルタウリン型界面活性剤〕
本発明に用いられる(b)成分は、前記式(2)で表わされるアシルタウリン型界面活性剤である。式(2)においてR3は炭素数7〜19のアルキル基、又はアルケニル基である。すなわち、式中のR3COはアシル基であり、炭素数8〜20の直鎖あるいは分岐の脂肪酸残基である。脂肪酸としてはカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸等の飽和脂肪酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸、およびこれらの混合物であるヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、牛脂脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸が挙げられる。これらのうち好ましくは、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、牛脂脂肪酸が挙げられる。アシル基の炭素数が8未満の場合は起泡性が悪くなり、炭素数が20を超える場合は安定性が悪くなる。
【0036】
式(2)においてR4は、水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基である。式(2)においてM2はアルカリ金属、又は有機アミンである。アルカリ金属としては、ナトリウムやカリウムが挙げられる。有機アミンとしては、炭素数2〜3のヒドロキシアルキル基を有するアミンが挙げられ、具体的には、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが挙げられる。(b)成分として1種又は2種以上を用いることができる。
【0037】
式(2)で示されるアシルタウリン型界面活性剤として具体的には、N−ラウロイル−N−メチルタウリン塩、N−ココイル−N−メチルタウリン塩、N−ミリストイル−N−メチルタウリン塩、N−パルミトイル−N−メチルタウリン塩、N−オレオイル−N−メチルタウリン塩などが挙げられる。
【0038】
〔(c)アミドベタイン型界面活性剤及び/又はアルキルベタイン型界面活性剤〕
本発明に用いられる(c)成分は、アミドベタイン型界面活性剤及び/又はアルキルベタイン型界面活性剤である。
(c)成分として用いられるアミドベタイン型界面活性剤は、前記式(3)で表わされ、式中のR5は炭素数7〜19のアルキル基又はアルケニル基である。すなわち、式中のR5COはアシル基であり、炭素数8〜20の直鎖あるいは分岐の脂肪酸残基である。脂肪酸としてはカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸等の飽和脂肪酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸、およびこれらの混合物であるヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、牛脂脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸が挙げられる。これらのうち好ましくは、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、牛脂脂肪酸が挙げられる。アシル基の炭素数が8未満の場合は起泡性が悪くなり、炭素数が20を超える場合は安定性が悪くなる。
【0039】
式(3)においてR6,R7は、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基である。式(3)中のnは2〜4の整数である。(c)成分としてのアミドベタイン型界面活性剤は1種又は2種以上を用いることができる。
【0040】
式(3)で示されるアミドベタイン型界面活性剤として具体的には、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
【0041】
(c)成分として用いられるアルキルベタイン型界面活性剤は、前記式(4)で表わされ、式中のR8は炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基であり、例えばオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等のアルキル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、イソオクタデセニル基、エイコセニル基等のアルケニル基およびこれらの混合物であるヤシ油アルキル基、パーム核油アルキル基、牛脂アルキル基等の混合アルキル基などが挙げられ、これらのうち好ましくは、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデセニル基、ヤシ油アルキル基、パーム核油アルキル基である。炭素数が8未満の場合は起泡性および泡質が悪くなり、20を超える場合は安定性が悪くなる。
【0042】
式(4)においてR9,R10は、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基である。(c)成分としてのアルキルベタイン型界面活性剤は1種又は2種以上を用いることができる。
【0043】
式(4)で示されるアルキルベタイン型界面活性剤として具体的には、ドデシルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
【0044】
〔(d)ポリオキシエチレングリコール〕
本発明に用いられる(d)成分は、前記式(5)で示され、式中のR11は炭素数14〜22のアルキル基またはアルケニル基であり、例えばテトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等のアルキル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、イソオクタデセニル基、エイコセニル基等のアルケニル基およびこれらの混合物であるヤシ油アルキル基、パーム核油アルキル基、牛脂アルキル基等の混合アルキル基などが挙げられる。炭素数が14未満の場合は起泡性が悪くなり、炭素数が22を超える場合は安定性が悪くなる。mは40〜80である。R12は炭素数10〜18のアルキル基又はアルケニル基であり、例えばデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基等のアルキル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、イソオクタデセニル基等のアルケニル基およびこれらの混合物であるヤシ油アルキル基、パーム核油アルキル基、牛脂アルキル基等の混合アルキル基などが挙げられる。(d)成分として1種又は2種以上を用いることができる。
【0045】
式(5)で示されるポリオキシエチレングリコールとして具体的には、ポリオキシエチレンセトステアリルヒドロキシミリスチレンエーテルが挙げられる。
【0046】
〔(e)1,2−ペンタンジオール及び/又は1,2−ヘキサンジオール〕
本発明に用いられる(e)成分は、1,2−ペンタンジオールおよび1,2−ヘキサンジオールから選ばれる一種又は二種である。上記1,2−ペンタンジオールおよび1,2−ヘキサンジオールに代えて、1,3−ブチレングリコールや1,2−プロピレングリコール等の炭素数4以下の炭素鎖のジオールを使用した場合には、シリコーンに対する洗浄力、シリコーン存在下での起泡性、泡のクリーミー性が低下する。
【0047】
〔(f)ポリオキシエチレングリコール〕
本発明に用いられる(f)成分であるカチオン性ポリマーは、カチオン性を示す第4級窒素含有基を有する高分子化合物であり、例えば、カチオン化セルロース、カチオン化グァーガム、アクリル系カチオン化ポリマー(例えば、塩化ジメチルジアリルアンモニウムアクリルアミド共重合体)等が挙げられる。これらの内、すすぎ時の指通りの点でカチオン化セルロースが好ましい。カチオン性ポリマーとして具体的には、塩化o-〔2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル〕ヒドロキシエチルセルロース、アクリルアミド・アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体、グァーガムヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル等が挙げられる。(f)成分として1種又は2種以上を用いることができる。
【0048】
〔各成分の含有率〕
本発明において、上記の(a)成分の含有量は、組成物全体の2〜10質量%、好ましくは3〜8質量%、さらに好ましくは3〜7質量%であるのが好適である。2質量%未満となると起泡性と泡のクリーミー性に乏しくなり、10質量%を超えると洗髪時とすすぎ時の指通りや、洗浄後のまとまりとさらさら感が悪くなる。
【0049】
(b)成分は組成物全体の5〜15質量%、好ましくは6〜12質量%、さらに好ましくは7〜11質量%であるのが好適である。5質量%未満となると、起泡性と泡のクリーミー性に乏しくなり、15質量%を超えると洗髪時とすすぎ時の指通りや、洗浄後のまとまりとさらさら感が悪くなる。
【0050】
(c)成分は組成物全体の1〜5質量%、好ましくは2〜4質量%、さらに好ましくは2〜3質量%であるのが好適である。1質量%未満となると、系を安定して均一に保つことができなくなり、5質量%を超えると、洗浄後のまとまりとさらさら感が悪くなる。
【0051】
(d)成分は組成物全体の0.5〜5質量%、好ましくは1〜4質量%、さらに好ましくは1〜3質量%であるのが好適である。0.5質量%未満となると、泡のクリーミー性に乏しくなり、5質量%を超えると起泡性が悪化し、さらには系の粘度が非常に高くなり、調整や使用が困難となる。
【0052】
(e)成分は組成物全体の1〜5質量%、好ましくは1〜4質量%、さらに好ましくは2〜3質量%であるのが好適である。1質量%未満となると、防腐性が低下するほか、泡のクリーミー性が悪化し、さらにはシリコーンに対する洗浄力が低下する。5質量%を超えると起泡性と、洗浄後のまとまりとさらさら感が悪化する。
【0053】
(f)成分は組成物全体の0.1〜1質量%、好ましくは0.1〜0.8質量%、さらに好ましくは0.2〜0.7質量%であるのが好適である。0.1質量%未満となると、洗髪時とすすぎ時の指通りや、洗浄後のまとまりとさらさら感が得られず、1質量%を超えると起泡性が悪くなる。
【0054】
本発明において、前述の(a)成分と(b)成分の含有量は、a/bが質量比で0.3〜1、好ましくは0.4〜0.8、さらに好ましくは0.4〜0.7であるのが洗髪時とすすぎ時の指通りや、洗浄後のまとまりとさらさら感の点で好適である。
【0055】
本発明の毛髪洗浄剤組成物は、通常の方法に従って製造することができる。本発明の毛髪洗浄剤組成物の形態は、液状、ゲル状等を適宜選択できるが、溶剤として水又は低級アルコール、特に水を用いた液状のものが好ましい。また、使用形態は限定されず、例えばヘアシャンプー、リンスインシャンプーとして用いることができ、特に、シリコーン含有毛髪化粧料を洗浄するためのシャンプー組成物として好適に用いることができる。なお、本発明の毛髪洗浄剤組成物においては、洗浄料に常用されている添加剤を本発明の性能を損なわない範囲で配合することも可能である。
【実施例】
【0056】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。表1に示す毛髪洗浄剤(以下、試料とも言う)を調製し、下記の方法によりその特性を評価した。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
(1)シリコーンに対する洗浄力
直鎖および環状のメチルポリシロキサン(KF96−1000csおよびKF995、ともに信越化学工業(株)製)を1:1の比率で混合し、その0.1gを3cm×3cm大の人工皮革(出光テクノファイン(株)製)に均一に塗付した。試料を0.1g塗付し、指で10回、円を描くように擦った後、水で洗い流した。洗浄前と洗浄後の人工皮革の表面を走査型電子顕微鏡で観察し、ケイ素存在部位をマッピング処理((株)堀場製作所製:EMAX)後その面積を算出し、次の式によりシリコーン洗浄率を求めた。
【0059】
シリコーン洗浄率=〔(A0−AS)/A0〕×100
A0:試料によって洗浄する前のケイ素存在部位の面積
AS:試料によって洗浄した後のケイ素存在部位の面積
シリコーン洗浄率30%未満:シリコーンに対する洗浄力が弱い。
シリコーン洗浄率30%以上60%未満:シリコーンに対する洗浄力が中程度。
シリコーン洗浄率60%以上80%未満:シリコーンに対する洗浄力が強い。
シリコーン洗浄率80%以上:シリコーンに対する洗浄力が非常に強い。
【0060】
(2)起泡性−1
試料濃度1質量%の水溶液を調製してロスマイルス法により、25℃で試料投入直後と5分後の泡高さを測定した。試料投入直後の泡高さが200mm以上のもので、次の式より求められる泡の持続率が90%以上のものを泡立ちの良い洗浄剤と評価した。
泡の持続率=〔(5分後の泡高さ)/(試料投入直後の泡高さ)〕×100
【0061】
(3)起泡性−2
20名の女性をパネラーとし、シリコーン含有毛髪化粧料を2mL塗付した状態で、試料(シヤンプー組成物)5mLで洗髪した時の起泡性について評価した。シリコーン含有毛髪化粧料について組成を表2に示す。起泡性がよいと感じた場合を2点、やや起泡性がよいと感じた場合を1点、起泡性がよいと感じず悪いと感じた場合を0点として、20名の合計点を求めた。合計点が30点以上であるものを起泡性が良好であると評価した。
【0062】
【表2】

【0063】
(4)泡のクリーミー性
20名の女性をパネラーとし、試料(シヤンプー組成物)5mLで洗髪した時のクリーミー性について評価した。泡がクリーミーであると感じた場合を2点、ややクリーミーであると感じた場合を1点、泡がクリーミーでなく粗いと感じた場合を0点として、20名の合計点を求めた。合計点が30点以上であるものを泡のクリーミー性が良好であると評価した。
【0064】
(5)洗髪時およびすすぎ時の指通り性
20名の女性をパネラーとし、試料(シヤンプー組成物)を5mLで洗髪した時の指通りを評価した。指通りがスムーズで髪がひっかからないと感じた場合を2点、髪がやや指にひっかかると感じた場合を1点、指通りが非常に悪いと感じた場合を0点として、20名の合計点を求めた。合計点が30点以上であるものを洗髪時の指通りが良好であると評価した。
【0065】
(6)洗髪後のまとまりとさらさら感
20名の女性をパネラーとし、試料(シヤンプー組成物)5mLで洗髪、乾燥したのちのまとまりとさらさら感を評価した。まとまりとさらさら感がすぐれていると感じた場合を2点、まとまりとさらさら感がやや得られると感じた場合を1点、まとまりとさらさら感が得られないと感じた場合を0点として、20名の合計点を求めた。合計点が30点以上であるものを洗髪後のまとまりとさらさら感が良好であると評価した。
【0066】
(7)防腐性
下記菌株を用いて、 微生物汚染に対する抵抗性の確認を行なった。
Escherichia coli IFO3972(大腸菌)
Staphylococcus aureus IFO13276(黄色ブドウ球菌)
Pseudomonas aeruginosa IFO13275 (緑膿菌)
Candida albicans IFO1594(カンジダ菌)
Aspergillus niger IFO9455 (黒コウジカビ)
【0067】
滅菌水に懸濁して調製した菌液300μLを試料30mLに添加しよく混合することにより接種するものとした。 それぞれの菌の各試料への接種時と接種7日後の生菌数を寒天平板混釈法で測定した。 測定培地は、細菌にはSCDLP 寒天培地を、真菌にはSabouraud LP寒天培地をそれぞれ使用した。培養条件は、細菌については35℃にて48〜72時間、真菌については28℃にて72〜120時間とした。
【0068】
接種7日後の生菌数が、細菌においては接種時の1/104未満、かつ真菌においては接種時の1/10未満に減少したものを防腐性に優れると評価し、表1中に「○」と記載した。接種7日後の生菌数が、細菌において接種時の1/104以上、または、真菌において接種時の1/10以上であるものは、防腐性が不充分と評価し、表1中に「×」と記載した。
【0069】
以上の評価結果から明らかなように、本発明に係る実施例1〜7の毛髪洗浄剤組成物は、いずれも、シリコーンに対する洗浄力が高く、起泡性および泡のクリーミー性に優れており、さらに洗髪時、すすぎ時の指通り性および洗髪後のまとまりとさらさら感にも優れ、さらには優れた防腐性を有していた。また、実施例1〜7の毛髪洗浄剤組成物は、皮膚刺激性の高い界面活性剤や防腐剤を含まず、皮膚に対する刺激性が低い(a)成分〜(c)成分の界面活性剤を含んでいるので、安全性が高い。
【0070】
これに対し、比較例1〜8では十分な性能が得られていない。すなわち、比較例1では(a)成分を含有していないため、起泡性と泡のクリーミー性が不足し、洗髪時およびすすぎ時の指通り性、さらに洗髪後のまとまりとさらさら感が不充分であった。比較例2では(b)成分の配合量が本発明規定範囲の下限値よりも少ないため、起泡性と泡のクリーミー性、洗髪時およびすすぎ時の指通り性、さらに洗髪後のまとまりとさらさら感が不充分であった。
【0071】
比較例3では(c)成分が本発明規定範囲の上限値を超えて配合されており、洗髪後のまとまりとさらさら感が充分ではなく、また防腐性が不充分であった。比較例4では、(d)成分に代えてジステアリン酸ポリエチレングリコールが配合されていることより、泡の持続性およびクリーミー性が不充分であった。比較例5では、(e)成分に代えて、1,3−ブチレングリコールが含有されていることから、シリコーンに対する洗浄力と泡のクリーミー性、さらには防腐性が不充分であった。また、シリコーンに対する洗浄力が不充分であり、さらにはシリコーン存在下での起泡性、泡のクリーミー性も充分なものではなかった。
【0072】
比較例6では(e)成分が本発明規定範囲の上限値を超えて配合されており、起泡性および洗髪後のまとまりとさらさら感が不充分であった。比較例7では(f)成分が本発明規定範囲の上限値を超えて配合されており、起泡性において充分なものではなく、また防腐性が不充分であった。比較例8においては(f)成分が含有されておらず、泡のクリーミー性および洗髪時とすすぎ時の指通り性が不充分であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(a)成分〜(f)成分を含有し、(a)成分が組成物中2〜10質量%、(b)成分が組成物中5〜15質量%、(c)成分が組成物中1〜5質量%、(d)成分が組成物中0.5〜5質量%、(e)成分が組成物中1〜5質量%、(f)成分が組成物中0.1〜1質量%であることを特徴とする毛髪洗浄剤組成物。
(a)式(1)で表わされるアシルβ−アラニン型界面活性剤

(式中、R1は炭素数7〜19のアルキル基、又はアルケニル基、R2は水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基、M1はアルカリ金属、又は有機アミンを示す)
(b) 式(2)で表わされるアシルタウリン型界面活性剤

(ここでR3は、炭素数7〜19のアルキル基、又はアルケニル基、R4は水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基、M2はアルカリ金属、又は有機アミンを示す。)
(c) 式(3)で表されるアミドベタイン型界面活性剤及び/又は式(4)で表されるアルキルベタイン型界面活性剤

(R5は炭素数7〜19のアルキル基、又はアルケニル基、R6,R7はそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基、nは2〜4の整数を示す。)

(R8は炭素数8〜20のアルキル基、又はアルケニル基、R9,R10はそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基を示す。)
(d)式(5)で表されるポリオキシエチレングリコール

(ここでR11は炭素数14〜22のアルキル基、又はアルケニル基、mは40〜80、R12は炭素数10〜18のアルキル基、又はアルケニル基を示す)
(e)1,2−ペンタンジオール及び/又は1,2−ヘキサンジオール
(f)カチオン性ポリマー

【公開番号】特開2012−102050(P2012−102050A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252203(P2010−252203)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】