説明

気体制御式バルブシステム

【課題】部品点数および設置スペースの低減に貢献できる気体制御式バルブシステムを提供する。
【解決手段】気体制御式バルブシステムは、制御用気体に基づいて連動して開閉する連動バルブ2,3を有するバルブ組1と、各連動バルブ2,3に制御用気体を供給して連動バルブ2,3の開放動作および閉鎖動作を制御する制御用通路4と、連動バルブ2,3の開放動作の連動および/または閉鎖動作の連動について時間的な優先遅延関係を維持させる優先遅延要素5とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気圧等の気体圧に基づいてバルブを開閉させる気体制御式バルブシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的には、給電および断電により電磁バルブの開閉を制御する電動制御式のバルブシステムが提供されている。更に、空気の供給によりバルブの開閉を制御する気体制御式のバルブシステムが提供されている(特許文献1)。このものによれば、バルブの開閉を空気圧で行うため、電動制御式のバルブシステムよりも、消費電力を小さくできる利点、電気配線を減少させることができる利点、電気配線ではなく空気配管で済むため、高温雰囲気にも配管できる利点等といったが得られる。しかしながら上記した気体制御式バルブシステムでは、電気信号を送信する電気配線に相当する部分を空気配管で置き換え、更に、空気配管に空気を供給したり停止したりする切替制御を行う切替バルブを空気配管のそれぞれに接続させる必要があり、部品点数および設置スペースが増加する傾向があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−133294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、部品点数および設置スペースの低減に貢献できる気体制御式バルブシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る気体制御式バルブシステムは、(i)機器に接続され、開放動作の連動および/または閉鎖動作の連動が行われる複数の連動バルブを備えるバルブ組と、(ii)バルブ組を構成する各連動バルブに制御用気体を供給して各連動バルブの開放動作の連動および/または閉鎖動作の連動を制御する制御用通路と、(iii)制御用通路および/または連動バルブに設けられ、バルブ組を構成する各連動バルブの開放動作の連動および/または閉鎖動作の連動について、時間的な優先遅延関係を維持させる優先遅延要素とを具備することを特徴とする。
【0006】
機器は、バルブ組の開放動作により流体が供給されるものである。機器としては特に限定されず、燃料電池のスタック、コージェネ機器、ラジエータ機器、太陽電池機器、油圧機器等を例示できる。バルブ組は、開放動作および閉鎖動作が制御用気体により制御される複数の連動バルブを備えている。各連動バルブの開放動作または閉鎖動作により、機器の状態が調整される。
【0007】
制御用通路は、バルブ組を構成する各連動バルブに制御用気体を供給する。これにより各連動バルブの開放動作の連動および/または閉鎖動作の連動が制御される。優先遅延要素は、制御用通路および/または連動バルブに設けられている。優先遅延要素は、バルブ組を構成する連動バルブの開放動作の連動および/または閉鎖動作の連動について、時間的な優先遅延関係を維持させる機能を有する。従って、バルブ組が作動するときには、バルブ組を構成する各連動バルブにおいて、特定の連動バルブが他の連動バルブに対して優先的に開弁動作する。あるいは、特定の連動バルブが他の連動バルブに対して優先的に閉弁動作する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、バルブ組が作動するとき、優先遅延要素は、バルブ組を構成する連動バルブの開放動作の連動および/または閉鎖動作の連動について時間的な優先遅延関係を自動的に維持させることができる。従って、バルブ組を構成する特定の連動バルブの開放動作を他の連動バルブの開放動作よりも優先させる形態、および/または、バルブ組を構成する特定の連動バルブの閉鎖動作を他の連動バルブの閉鎖動作よりも優先させる形態が得られる。
【0009】
このような本発明によれば、優先遅延要素が設けられているため、気体を流す配管のそれぞれに切替バルブを設けずとも良く、部品点数および設置スペースの低減に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1に係り、気体制御式バルブシステムを模式的に示す配管図である。
【図2】実施例2に係り、気体制御式バルブシステムを模式的に示す配管図である。
【図3】実施例3に係り、気体制御式バルブシステムを模式的に示す配管図である。
【図4】実施例4に係り、気体制御式バルブシステムを模式的に示す配管図である。
【図5】実施例5に係り、気体制御式バルブシステムを模式的に示す配管図である。
【図6】実施例6に係り、気体制御式バルブシステムを模式的に示す配管図である。
【図7】実施例7に係り、気体制御式バルブシステムを模式的に示す配管図である。
【図8】実施例8に係り、気体制御式バルブシステムで使用される連動バルブの一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一視点によれば、優先遅延要素は、制御用気体が流れる単位時間あたりの流量を絞ることにより、バルブ組を構成する各連動バルブの開放動作の連動および/または閉鎖動作の連動について、時間的な優先遅延関係を設定することができる。制御用気体としては空気、窒素ガス、希ガス等が挙げられる。絞りの程度は、制御用通路を流れる制御用気体が単位時間に流れる流量に影響を与えるので、連動バルブの開放動作の連動および/または閉鎖動作の連動について時間的な優先遅延関係が設定できる。ここで、時間的な優先遅延関係とは、バルブ組を構成する特定の連動バルブの動作を他の連動バルブの動作よりも優先または遅延させることを意味する。
【0012】
本発明の一視点によれば、優先遅延要素は、制御用通路の少なくとも一部の流路断面積を変化させることにより、バルブ組を構成する各連動バルブの開放動作の連動および/または閉鎖動作の連動について、時間的な優先遅延関係を設定することができる。流路断面積の変化は、制御用通路を流れる制御用気体が単位時間に流れる流量に影響を与えるので、連動バルブの開放動作の連動および/または閉鎖動作の連動について、時間的な優先遅延関係が設定できる。
【0013】
本発明の一視点によれば、優先遅延要素は、制御用通路の流路長を変化させることにより、バルブ組を構成する各連動バルブの開放動作の連動および/または閉鎖動作の連動について、時間的な優先遅延関係を設定することができる。流路長の変化は、制御用気体が連動バルブに到達する時間に影響を与えるので、連動バルブの開放動作の連動および/または閉鎖動作の連動について、時間的な優先遅延関係が設定できる。
【0014】
本発明の一視点によれば、優先遅延要素は、制御用通路および/または連動バルブに設けられたバッファ室で形成されていることができる。バッファ室の容積は、制御用通路を流れる制御用気体が連動バルブに到達するまでの時間に影響を与えるので、連動バルブの開放動作の連動および/または閉鎖動作の連動について、時間的な優先遅延関係が設定できる。
【0015】
本発明の一視点によれば、バルブ組は、開放動作により機器に流体を供給するための供給バルブと、開放動作により機器内の流体を機器外に排出させるための排出バルブとを備えている。この場合、供給バルブは、供給バルブの開放動作を実施するための開放用ポートと、供給バルブの閉鎖動作を実施するための閉鎖用ポートとを備えている。排出バルブは、排出バルブの開放動作を実施するための開放用ポートと、排出バルブの閉鎖動作を実施するための閉鎖用ポートとを備えている。
【0016】
本発明の一視点によれば、制御用通路は、供給バルブの開放用ポートおよび排出バルブの開放用ポートに連通する開放制御用通路と、供給バルブの閉鎖用ポートおよび排出バルブの閉鎖用ポートに連通する閉鎖制御用通路とを備えていることが好ましい。優先遅延要素は、供給バルブ、排出バルブ、開放制御用通路および閉鎖制御用通路のうちの少なくとも一つに設けられていることが好ましい。
【0017】
本発明の一視点によれば、次の形態が例示される。
(a)開放動作について、排出バルブが開放した後に供給バルブが開放する形態(b)開放動作について、供給バルブが開放した後に排出バルブが開放する形態
(c)閉鎖動作について、排出バルブが開放した後に供給バルブが開放する形態(d)閉鎖動作について、供給バルブが開放した後に排出バルブが開放する形態
本発明の一視点によれば、バルブシステムは燃料電池のカソードにカソードガスを供給するためのものでもよいし、あるいは、アノードにアノードガスを供給するためのものでも良い。
【実施例1】
【0018】
図1は実施例1を示す。本実施例に係る空気制御式(気体圧制御式)の連動バルブシステムは、開閉可能なバルブ組1と、制御用通路4と、優先遅延要素5とを有する。バルブ組1は、開放動作および閉鎖動作が制御用空気により制御される供給バルブ2と、開放動作および閉鎖動作が制御用空気(制御用気体)により制御される排出バルブ3とからなる。
【0019】
具体的には、バルブ組1は、開放動作によりスタック6の内部にカソードガス(反応流体)を供給するための供給バルブ2(連動バルブ)と、開放動作によりスタック6内のカソードオフガス(反応流体)をスタック6の外部に排出させるための排出バルブ3(連動バルブ)とを備えている。ここで、供給バルブ2および排出バルブ3は、互いに連動して動作する。すなわち、スタック6が発電するとき、供給バルブ2および排出バルブ3は共に連動して開放動作する。また、スタック6が発電停止するとき、供給バルブ2および排出バルブ3は共に連動して閉鎖動作する。
【0020】
ここで、供給バルブ2の開放または閉鎖により、カソードガス(空気)を供給するためのカソードガス流路302が開閉される。カソードガス流路302には防塵用のフィルタ83が設けられている。排出バルブ3の開放または閉鎖により、カソードオフガスを排出させるためのカソードガス流路304が開閉される。この結果、機器であるスタック6のカソードにおけるカソードガスの状態が調整される。
【0021】
本実施例によれば、図1に示すように、供給バルブ2は、空気圧(気体圧)に基づいて作動するエアオペレイト連動バルブであり、供給バルブ2の開放動作を実施するための開放用ポート21と、開放用ポート21に連通する第1室22と、供給バルブ2の閉鎖動作を実施するための閉鎖用ポート23と、閉鎖用ポート23に連通する第2室24とを備えている。排出バルブ3は、空気圧に基づいて作動するエアオペレイト連動バルブであり、排出バルブ3の開放動作を実施するための開放用ポート31と、開放用ポート21に連通する第1室32と、排出バルブ3の閉鎖動作を実施するための閉鎖用ポート33と、閉鎖用ポート33に連通する第2室34とを備えている。
【0022】
制御用通路4は、バルブ組1を構成する供給バルブ2および排出バルブ3にそれぞれ制御用空気を供給し、供給バルブ2および排出バルブ3の開放動作および閉鎖動作を制御する。具体的には、制御用通路4は、コンプレッサ82と切替連動バルブ7とを防塵フィルタ80を介して接続する元通路46と、供給バルブ2および排出バルブ3を連動させて開放動作させるための開放制御用通路40と、供給バルブ2および排出バルブ3を連動させて閉鎖動作させるための閉鎖制御用通路45とを備えている。図1に示すように、開放制御用通路40は、切替連動バルブ7の第1切替ポート71から導出された開放用主通路40mと、開放用主通路40mの分岐部40xから排出バルブ3の開放用ポート31に連通する第1開放用通路40fと、開放用主通路40mの分岐部40xから供給バルブ2の開放用ポート21に連通する第2開放用通路40sとを有する。
【0023】
図1に示すように、閉鎖制御用通路45は、切替連動バルブ7の第2切替ポート72から導出された閉鎖用主通路45mと、閉鎖用主通路45mの分岐部45xから分岐され排出バルブ3の閉鎖用ポート33に連通する第1閉鎖用通路45fと、閉鎖用主通路45mの分岐部45xから供給バルブ2の閉鎖用ポート23に連通する第2閉鎖用通路45sとを有する。
【0024】
図1に示すように、制御用通路4は切替連動バルブ7および防塵フィルタ80を介してコンプレッサ82(空気搬送源,気体搬送源,カソードガス搬送源)に接続されている。防塵フィルタ80は場合によっては廃止されていても良い。具体的には、切替連動バルブ7の第1切替ポート71は、開放制御用通路40に接続されている。切替連動バルブの第2切替ポート72は、閉鎖制御用通路45に接続されている。
【0025】
図1に示すように、開放制御用通路40は、開放制御用通路40の圧力を大気に開放できる第1逃圧連動バルブ91に接続されている。第1逃圧連動バルブ91は通常では閉鎖されているが、開放制御用通路40と第1逃圧ポート91pとが連通すると、開放制御用通路40の圧力が大気に開放される。また、閉鎖制御用通路45は、閉鎖制御用通路45の圧力を大気に開放できる第2逃圧連動バルブ92に接続されている。第2逃圧連動バルブ92は通常では閉鎖されているが、閉鎖制御用通路45と第2逃圧ポート92pとが連通すると、閉鎖制御用通路45の圧力が大気に開放される。
【0026】
機器として機能するスタック6は、燃料電池のセルを複数個搭載しているものである。セルとしては、電解質膜を燃料極および酸化剤極で挟むシート状のセルでも良いし、あるいは、電解質膜を燃料極および酸化剤極で挟む筒形状のセルでも良い。電解質膜は炭化フッ素系または炭化水素系等の有機系膜でも良いし、あるいは、無機系膜でも良いし、あるいは、有機材料および無機材料が混在する膜でも良い。
【0027】
スタック6のカソードには、空気等のカソードガスが供給される。スタック6のアノードには、例えば水素ガス、水素含有ガス等のアノードガスが供給される。供給バルブ2および排出バルブ3は、カソードガスの供給および排出を実施するものである。従ってスタック6のカソードの入口には、カソードガスをスタック6に供給するための供給バルブ2が設けられている。スタック6のカソードの出口には、スタック6のカソードオフガス(発電反応を経たガス)を排出するための排出バルブ3が設けられている。
【0028】
図1に示すように、優先遅延要素5は、開放制御用通路40および閉鎖制御用通路45の双方に設けられている。優先遅延要素5は、供給バルブ2の開放動作を排出バルブ3の開放動作よりも時間的に遅延させる第1機能と、供給バルブ2の閉鎖動作を排出バルブ3の閉鎖動作よりも時間的に遅延させる第2機能とを併有する。
【0029】
具体的には、優先遅延要素5は、供給バルブ2側の第2開放用通路40sに設けられた第1絞り孔をもつ第1絞り51と、供給バルブ2側の第2閉鎖用通路45sに設けられた第2絞り孔をもつ第2絞り52とを有する。絞りとは、単位時間あたりに流れる流量を絞る機能を有するものであり、オリフィスまたはノズル等と呼ばれる。絞りは、流量絞りにより時間遅延作用を発生させ得るものの、サイズ自体が小型で済むため、簡便な構造で済む。ここで、第1絞り51,第2絞り52は固定絞りでも良いし、可変絞りでも良い。可変絞りの場合には、スタック6の使用季節、スタック6の設置地域等に応じて絞り径を適宜設定できる。
【0030】
本実施例によれば、供給バルブ2の開放用ポート21側には第1絞り51が設けられている。このため供給バルブ2の開放用ポート21に単位時間あたり供給される空気の流量が絞られて小さくされている。故に、供給バルブ2の開放用ポート21に作用する空気圧の上昇は、第1絞り51が無い場合に比較して遅延する。これに対して、排出バルブ3の開放用ポート31側は絞りが設けられていないため、動作の遅延は発生しない。この結果、供給バルブ2の開放動作は、排出バルブ3の開放動作よりも時間的にΔto(o:open)ぶん遅延する。
【0031】
同様に、供給バルブ2の閉鎖用ポート23側には第2絞り52が設けられているため、供給バルブ2の閉鎖用ポート23に単位時間あたり流れる空気の流量が絞られて小さくなる。故に、供給バルブ2の閉鎖用ポート23に作用する空気圧の上昇は、第2絞り52が無い場合に比較して遅延する。これに対して、排出バルブ3の閉鎖用ポート33側は絞りが設けられていないので、遅延が発生しない。この結果、供給バルブ2の閉鎖動作は、排出バルブ3の閉鎖動作よりも時間的にΔts(s:shut)ぶん遅延する。
【0032】
換言すると、排出バルブ3の開放用ポート31側には絞りが設けられていないため、排出バルブ3の開放動作は、供給バルブ2の開放動作よりも時間的にΔtoぶん優先する。同様に、排出バルブ3の閉鎖用ポート33側には第2絞り52が設けられていないため、排出バルブ3の閉鎖動作は、供給バルブ2の閉鎖動作よりも時間的にΔtsぶん優先する。
【0033】
なおΔtoおよびΔtsはスタックの種類、スタックの運転状態等の要因に応じて適宜選択される。ここで、Δto=Δtsでも良いし、Δto≒Δtsでも良いし、Δto<Δtsでも良いし、Δto>Δtsでも良い。Δtoは例えば0.05〜20秒の範囲内あるいは0.2〜10秒の範囲内で設定できる。Δtsは例えば0.05〜20秒の範囲内あるいは0.2〜10秒の範囲内で設定できる。なお、第1絞り51の第1絞り孔の内径をα1とし、第2絞り52の第2絞り孔の内径をα2とすると、ΔtoおよびΔtsに応じて、α1=α2としても良いし、α1≒α2としても良いし、α1<α2としても良いし、α1>α2としても良い。
【0034】
本実施例によれば、使用時には、コンプレッサ52が駆動している。発電時にはスタック6のカソードにはカソードガスが供給され、アノードにはアノードガスが供給され、スタック6が発電反応により発電する。スタック6のカソードにカソードガスの供給を開始するにあたり、図略の制御装置により切替連動バルブ7が切り替えられ、図1に示すように、切替連動バルブ7の第1切替ポート71と開放制御用通路40とコンプレッサ82とが連通される。すると、排出バルブ3の開放用ポート31および供給バルブ2の開放用ポート21に制御用空気がそれぞれ供給される。このとき、供給バルブ2の開放用ポート21側には第1絞り51が設けられているため、供給バルブ2の開放用ポート21に供給される制御用空気の単位時間あたりの流量が絞られて制限される。この結果、供給バルブ2の開放動作は、排出バルブ3の開放動作よりも時間的にΔtoぶん遅延する。従って、排出バルブ3が開放動作したΔto後に、供給バルブ2が連動して開放動作する。
【0035】
換言すると、排出バルブ3の開放動作が実施されて、スタック6に封入されているカソードガスが排出バルブ3から排出可能な状態にされた後、供給バルブ2の開放動作が実施されて供給バルブ2からカソードガスがスタック6の内部に供給される。このためスタックの内部にカソードガスを迅速に効果的に導入させるのに有利となる。なお、スタックの発電中においては、供給バルブ2および排出バルブ3の双方は開放されており、カソードガスがスタック6の内部に連続して供給される。
【0036】
次に、スタック6での発電を停止させる場合について説明する。この場合には、図略の制御装置により切替連動バルブ7が切り替えられ、切替連動バルブ7の第2切替ポート72と閉鎖制御用通路45とコンプレッサ82とが連通される。すると、排出バルブ3の閉鎖用ポート33および供給バルブ2の閉鎖用ポート23に制御用空気がそれぞれ供給される。このとき、供給バルブ2の閉鎖用ポート23側には第2絞り52が設けられているため、供給バルブ2の閉鎖用ポート23に供給される制御用空気の単位時間あたりの流量が絞られて制限される。この結果、供給バルブ2の閉鎖動作は、排出バルブ3の閉鎖動作よりも時間的にΔtsぶん遅延する。従って、排出バルブ3が閉鎖動作したΔts後に、供給バルブ2が連動して閉鎖動作する。
【0037】
換言すると、排出バルブ3の閉鎖動作が実施され、スタック6に供給されているカソードガスが排出バルブ3から排出できない状態にされた後、供給バルブ2の閉鎖動作が実施され、供給バルブ2からスタック6の内部へのカソードガスの供給が停止される。このためスタック6の内部に所定流量のカソードガスを封入させるのに有利となる。なおスタック6の発電が停止されているときにおいて、供給バルブ2および排出バルブ3の双方は閉鎖されており、カソードガスがスタック6の内部に封入された状態に維持されるとともに、外気の塵埃等がスタック6の内部に進入できないようにされる。
【0038】
なお、上記した第1絞り51および第2絞り52は固定絞りでも良いし、可変絞りでも良い。可変絞りであれば、スタック6の発電状態に応じて遅延時間Δto,Δtsのうちの一方または双方を調整することができる。
【0039】
以上説明したように本実施例によれば、優先遅延要素5は、供給バルブ2の開放動作を排出バルブ3の開放動作よりも時間的に遅延させる第1機能と、供給バルブ2の閉鎖動作を排出バルブ3の閉鎖動作よりも時間的に遅延させる第2機能とを併有するが、これに限らず、場合によっては、第1機能および第2機能のうちの一方のみでも良い。
【0040】
すなわち、優先遅延要素5は、供給バルブ2側の第2開放用通路40sに設けられた第1絞り51を採用する第1方策と、供給バルブ2側の第2閉鎖用通路45sに設けられた第2絞り52を採用する第2方策とを有する。しかしこれに限らず、場合によっては、第1方策および第2方策のうちのいずれか一方のみとしても良い。
【0041】
また上記したコンプレッサ82はスタック6のカソードにカソードガスを供給する搬送源としても機能するが、これに限らず、コンプレッサ82はバルブシステムの開閉動作を実施するためだけに使用されるものでも良い。この場合には、スタック6のカソードに空気をカソードガスとして供給する搬送源を別途設けることが好ましい。なお、上記した供給バルブ2および排出バルブ3は、カソードガスの供給および排出を実施するものであるが、これに限らず、アノードガスの供給および排出を実施するものでも良い。
【実施例2】
【0042】
図2は実施例2を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成および作用効果を有する。具体的には、優先遅延要素5Bは、開放制御用通路40の第2開放用通路40sに設けられた第1抵抗体51bと、閉鎖制御用通路45の第2閉鎖用通路45sに設けられた第2抵抗体52bとを有する。
【0043】
第1抵抗体51bおよび第2抵抗体52bは、空気が流れる方向に開放された多数の連続孔を有する透過フィルタ、多孔質体、網を積層させた網積層体、球体等の複数の物体を積層させた積層体のうちの少なくとも一つで形成されており、単位時間あたり流れる空気の流量を絞って制限することができる。ここで、第1抵抗体51bの空気透過率をβ1とし、第2抵抗体52bの空気透過率をβ2とすると、β1=β2としても良いし、β1≒β2としても良いし、β1<β2としても良いし、β1>β2としても良い。なお空気透過率が高い方が、単位時間あたりに通過させる空気の流量が大きい。
【0044】
本実施例によれば、供給バルブ2の開放用ポート21側には第1抵抗体51bが設けられている。このため実施例1と同様に、供給バルブ2の開放動作は、排出バルブ3の開放動作よりも時間的にΔtoぶん遅延する。同様に、供給バルブ2の閉鎖用ポート23側には第2抵抗体52bが設けられている。このため、供給バルブ2の閉鎖動作は、排出バルブ3の閉鎖動作よりも時間的にΔtsぶん遅延する。
【0045】
このような本実施例によれば、カソードガスの供給開始時には、供給バルブ2の開放動作は、排出バルブ3の開放動作よりも時間的にΔtoぶん遅延する。従ってカソードガス(反応ガス,反応流体)の供給開始時には、排出バルブ3が開放したΔto後に、供給バルブ2が連動して開放する。この場合、スタック6の内部への気体供給性が確保される。
【0046】
同様に、発電停止時には、供給バルブ2の閉鎖動作は、排出バルブ3の閉鎖動作よりも時間的にΔtsぶん遅延する。従って発電停止時には、排出バルブ3が閉鎖したΔts後に、供給バルブ2が連動して閉鎖する。この場合、スタック6の内部におけるカソードガスの封入性が確保される。
【0047】
本実施例によれば、優先遅延要素5Bは、開放制御用通路40の第2開放用通路40sに設けられた第1抵抗体51bを採用する第1方策と、閉鎖制御用通路45の第2閉鎖用通路45sに設けられた第2抵抗体52bを採用する第2方策とを有する。しかしこれに限らず、場合によっては、第1方策および第2方策のうちのいずれか一方のみとしても良い。
【実施例3】
【0048】
図3は実施例3を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成および作用効果を有する。具体的には、開放制御用通路40の第2開放用通路40sの流路長をLO2とし、開放制御用通路40の第1開放用通路40fの流路長をLO1とする。閉鎖制御用通路45の第2閉鎖用通路45sの流路長をLS2とし、閉鎖制御用通路45の第1閉鎖用通路45fの流路長をLS1とする。ここで、第2開放用通路40sには、流路長を長くするためのスパイラル通路48が形成されている。第2閉鎖用通路45sには、流路長を長くするためのスパイラル通路49が形成されている。
【0049】
ここで、優先遅延要素5Cは、スパイラル通路48により流路長LO2を流路長LO1よりも長くすることにより形成されているとともに、スパイラル通路49により流路長LS2を流路長LS1よりも長くすることにより形成されている。制御用空気が流れる流路長の距離が長いと、時間遅延を発生させる。
【0050】
このような本実施例によれば、供給バルブ2の開放動作は、排出バルブ3の開放動作よりも時間的にΔtoぶん遅延する。従ってカソードガスの供給開始時には、排出バルブ3が開放動作したΔto後に、供給バルブ2が連動して開放動作する。
【0051】
同様に、供給バルブ2の閉鎖動作は、排出バルブ3の閉鎖動作よりも時間的にΔtsぶん遅延する。従って発電停止時、つまりカソードガスの供給停止時には、排出バルブ3が閉鎖したΔts後に、供給バルブ2が連動して閉鎖動作する。
【0052】
なお、Δtoぶんの遅延が得られるように、第1開放用通路40fの流路断面積は、第2閉鎖用通路45sの流路断面積と同一または類似にできる。またΔtsぶんの遅延が得られるように、第1閉鎖用通路45fの流路断面積は、第2閉鎖用通路45sの流路断面積と同一または類似にできる。
【0053】
上記した本実施例によれば、優先遅延要素5Cは、流路長LO2を流路長LO1よりも長くすることにより形成されている第1方策とともに、流路長LS2を流路長LS1よりも長くする第2方策とを備えている。しかしこれに限らず、場合によっては、第1方策および第2方策のうちのいずれか一方のみとしても良い。スパイラル通路48,49により流路長を調整しているが、これに限らず、場合によっては、スパイラルに限らず、場合によっては、S字状、N字状、M字状の通路を形成して流路長を調整しても良い。
【実施例4】
【0054】
図4は実施例4を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成および作用効果を有する。具体的には、開放制御用通路40の第2開放用通路40sの流路断面積をDO2とし、開放制御用通路40の第1開放用通路40fの流路断面積をDO1とする。閉鎖制御用通路45の第2閉鎖用通路45sの流路断面積をDS2とし、閉鎖制御用通路45の第1閉鎖用通路45fの流路断面積をDS1とする。ここで、優先遅延要素5Dは、流路断面積DO2を流路断面積DO1よりも小さくすることにより形成されているとともに、流路断面積DS2を流路断面積DS1よりも小さくすることにより形成されている。DO1/DO2の値は適宜設定できる。同様に、DS1/DS2の値は適宜設定できる。
【0055】
このような本実施例によれば、供給バルブ2の開放動作は、排出バルブ3の開放動作よりも時間的にΔtoぶん遅延する。従ってカソードガス供給時には、排出バルブ3が開放したΔto後に、供給バルブ2が連動して開放する。同様に、供給バルブ2の閉鎖動作は、排出バルブ3の閉鎖動作よりも時間的にΔtsぶん遅延する。従って発電停止時には、排出バルブ3が閉鎖したΔts後に、供給バルブ2が連動して閉鎖する。
【0056】
なお本実施例によれば、LS2,LS1,LO2,LO1を実施例3通りに定義すれば、LS2=LS1,LS2≒LS1とすることができ、あるいは、LS2>LS1とすることができる。またLO2=LO1,LO2≒LO1とすることができる。あるいは、LO2>LO1とすることができる。
【0057】
上記した本実施例によれば、優先遅延要素5Dは、流路断面積DO2を流路断面積DO1よりも小さくすることにより形成されている第1方策とともに、流路断面積DS2を流路断面積DS1よりも小さくする第2方策とで形成されている。しかしこれに限らず、場合によっては、第1方策および第2方策のうちのいずれか一方のみとしても良い。
【実施例5】
【0058】
図5は実施例5を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成および作用効果を有する。具体的には、優先遅延要素5Eは、開放制御用通路40の第2開放用通路40sに設けられた第1バッファ室51eと、第2開放用通路40sにおいて第1バッファ室51eの上流に設けられた第1絞り51と、閉鎖制御用通路45の第2閉鎖用通路45sに設けられた第2バッファ室52eと、閉鎖制御用通路45において第2バッファ室52eの上流に設けられた第2絞り52とを有する。第1バッファ室51eは第2開放用通路40sよりも、流路断面積が大きくされている。第2バッファ室52eは第2閉鎖用通路45sよりも、流路断面積が大きくされている。
【0059】
すなわち、供給バルブ2の開放用ポート21側には第1バッファ室51eおよび第1絞り51の双方が設けられているため、遅延時間を長くできる。従って、供給バルブ2の開放動作は、排出バルブ3の開放動作よりも時間的にΔtoeぶん遅延する。同様に、供給バルブ2の閉鎖用ポート23側には第2バッファ室52eおよび第2絞り52の双方が設けられているため、遅延時間を長くできる。従って、供給バルブ2の閉鎖動作は、排出バルブ3の閉鎖動作よりも時間的にΔtseぶん遅延する。
【0060】
なお、第1バッファ室51eの容積をη1とし、第2バッファ室52eの容積をη2とすると、η1=η2としても良いし、η1≒η2としても良いし、η1<η2としても良いし、η1>η2としても良い。
【0061】
上記した本実施例によれば、優先遅延要素5Eは、開放制御用通路40の第2開放用通路40sに設けられた第1バッファ室51eおよび第1絞り51を形成する第1方策と、閉鎖制御用通路45の第2閉鎖用通路45sに設けられた第2バッファ室52eおよび第2絞り52を形成する第2方策とを有する。しかしこれにに限らず、場合によっては、第1方策および第2方策のうちのいずれか一方のみとしても良い。更には、第1方策においても、第1バッファ室51eおよび第1絞り51のうちのいずれか一方のみとしても良い。第2方策においても、第2バッファ室52eおよび第2絞り52のうちのいずれか一方のみとしても良い。
【実施例6】
【0062】
図6は実施例6を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成および作用効果を有する。具体的には、優先遅延要素5Fは、供給バルブ2の開放用ポート21に設けられた第1絞り51と、排出バルブ3の閉鎖用ポート33側に設けられた第2絞り52とを有する。この場合、供給バルブ2の開放用ポート21側には第1絞り51が設けられているため、供給バルブ2の開放用ポート21に単位時間あたり流れる空気の流量が絞られて小さくなり、供給バルブ2の開放動作は、排出バルブ3の開放動作よりも時間的にΔtoぶん遅延する。従って排出バルブ3が開放動作したΔto後に、供給バルブ2が開放動作する。
【0063】
同様に、排出バルブ3の閉鎖用ポート33側には第2絞り52が設けられているため、排出バルブ3の閉鎖用ポート33に単位時間あたり流れる空気の流量が絞られて小さくなる。よって、排出バルブ3の閉鎖動作は、供給バルブ2の閉鎖動作よりも時間的にΔtsaぶん遅延する。
【0064】
すなわち、排出バルブ3の閉鎖用ポート33側には第2絞り52が設けられているため、排出バルブ3の閉鎖動作は、供給バルブ2の閉鎖動作よりも時間的にΔtsaぶん遅延し、供給バルブ2が閉鎖した後に排出バルブ3が閉鎖する。この場合、供給バルブ2が閉鎖されたにも拘わらず、排出バルブ3が開放されている時間が存在するため、スタック6の内部に残留するカソードガスを排出バルブ3からスタック6の外部に排出させるのに有利となる。
【0065】
上記した本実施例によれば、優先遅延要素5Fは、供給バルブ2の開放用ポート21に設けられた第1絞り51を備える第1方策と、排出バルブ3の閉鎖用ポート33側に設けられた第2絞り52を備える第2方策とを有する。しかしこれに限らず、場合によっては、第1方策および第2方策のうちのいずれか一方のみとしても良い。
【実施例7】
【0066】
図7は実施例7を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成および作用効果を有する。具体的には、優先遅延要素5Gは、供給バルブ2の開放用ポート21に設けられた第1絞り521と、供給バルブ2の閉鎖用ポート23側に設けられた第2絞り522と、排出バルブ3の開放用ポート31に設けられた第1絞り531と、排出バルブ3の閉鎖用ポート33側に設けられた第2絞り532とを有する。絞り521.522,531,532は流量絞り作用を有するため、時間遅延作用を発揮する。
【0067】
ここで、第1絞り521の絞り度は、第1絞り531の絞り度よりも大きい。従って単位時間あたり、第1絞り521を流れる空気の流量は、第1絞り531を流れる空気の流量よりも少ない。また、第1絞り522の絞り度は、第1絞り532の絞り度よりも大きい。従って、単位時間あたり、第1絞り522を流れる空気の流量は、第1絞り532を流れる空気の流量よりも少ない。
【0068】
このような本実施例によれば、供給バルブ2および排出バルブ3の開放については、切替連動バルブ7の第1切替ポート71がコンプレッサ82に連通するように切替連動バルブ7が切り替えられたとき(図7参照)、切替時から第1所定時間経過した後に排出バルブ3が開放動作し、その後、第2所定時間経過した後、供給バルブ2が開放動作する。
【0069】
これに対して供給バルブ2および排出バルブ3の閉鎖については、切替連動バルブ7の第2切替ポート72がコンプレッサ82に連通するように切替連動バルブ7が切り替えられたとき、切替時から第4所定時間経過した後に排出バルブ3が閉鎖動作し、その後、第5所定時間経過した後、供給バルブ2が閉鎖動作する。
【実施例8】
【0070】
図8は、供給バルブ2Wおよび排出バルブ3Wの内部構造の一例を示す。供給バルブ2Wは、ハウジング90と、バルブ室91と、バルブ室91に連通する入口92と、バルブ室91に連通する出口93と、バルブ室91に移動可能に設けられたバルブ体94と、バルブ体94の受圧面95に空気圧を作用させる制御ポート96と、入口92および出口93の連通性を遮断させる方向にバルブ体94を付勢する付勢部材としての付勢バネ97とを有する。空気圧が制御ポート96に作用していないとき、付勢バネ97の矢印Y1方向(閉弁方向)の付勢力で、バルブ体94のバルブ面98が着座面99に着座し、入口92および出口93の連通性は遮断されている。開放制御用通路40から制御ポート96に制御用空気が供給されると、空気圧がバルブ体94の受圧面95に作用する。すると、付勢バネ97のバネ力に抗しつつ、バルブ体94が矢印Y2方向(開弁方向)に開放動作し、入口92および出口93が連通され、カソードガスが供給バルブ2Wの入口92、バルブ室91、出口93、スタック6の入口6iの順に流れる。
【0071】
排出バルブ3Wは、供給バルブ2Wと同様に、ハウジング90と、バルブ室91と、バルブ室91に連通する入口92と、バルブ室91に連通する出口93と、バルブ室91に移動可能に設けられたバルブ体94と、バルブ体94の受圧面95に空気圧を作用させる制御ポート96と、入口92および出口93の連通性を遮断させる方向にバルブ体94を付勢する付勢部材としての付勢バネ97とを有する。
【0072】
排出バルブ3Wにおいて、空気圧が制御ポート96に作用していないとき、付勢バネ97の矢印Y1方向(閉弁方向)の付勢力で、バルブ体94のバルブ面98が着座面99に着座しており、入口92および出口93の連通性は遮断されている。開放制御用通路40から排出バルブ3Wの制御ポート96に空気圧が作用すると、付勢バネ97のバネ力に抗しつつ、バルブ体94が矢印Y2方向(開弁方向)に開放動作し、スタック6内のカソードオフガス等のガスがスタック6の出口6p、排出バルブ3Wの入口92、バルブ室91、出口93の順に流れて排出される。
【0073】
図8に示すように、開放制御用通路40のうち供給バルブ2W(開放動作および閉鎖動作を遅延させるバルブ)に連通する第2開放用通路40sには、優先遅延要素として機能する逆止弁100が設けられている。逆止弁100は、ポート101と、ポート101を開閉する弁体102と、弁体102を閉弁方向に付勢するバネ103とを有する。第2開放用通路40sの空気圧が逆止弁100のバネ103のバネ力に打ち勝つまで、ポート101は閉鎖されている。第2開放用通路40sの空気圧がバネ103のバネ力に打ち勝つと、ポート101は開放される。このため、第2開放用通路40sの供給バルブ2Wには、逆止弁100に開弁応答に基づく時間遅れが積極的に発生する。しかし、開放制御用通路40のうち排出バルブ3に連通する第1開放用通路40fには逆止弁が設けられていないため、排出バルブ3における時間遅れは抑えられている。
【実施例9】
【0074】
本発明は上記した各実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。例えば、優先遅延要素は、上記した各実施例のうちの少なくとも二つの特徴を併合させても良い。具体的には、必要な遅延時間を確保すべく、絞り、抵抗体、流路長、流路断面積、バッファ室、逆止弁のうちの少なくとも二種を併合させる構造としても良い。実施例1は燃料電池の入口および出口を開閉する連動バルブシステムに適用されているが、これに限らず、場合によっては、燃料電池に付設される加湿器の入口および出口を開閉する連動バルブシステムに適用されていても良いし、あるいは、ガスエンジンヒートポンプに使用される連動バルブシステム、他のコージェネシステムに使用される連動バルブシステムに適用されていても良い。実施例1に係る供給バルブ2は、開放用ポート21、第1室22、閉鎖用ポート23、第2室24を備えているが、これに限定されない。排出バルブ3についても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は例えば燃料電池システム(定置用、車載用等)、加湿システム、コージェネシステム等に利用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1はバルブ組、2は供給バルブ、21は開放用ポート、23は閉鎖用ポート、3は排出バルブ、31は開放用ポート、33は閉鎖用ポート、4は制御用通路、40は開放制御用通路、40fは第1開放用通路、40sは第2開放用通路、45は閉鎖制御用通路、45fは第1閉鎖用通路、45sは第2閉鎖用通路、5は優先遅延要素、51は第1絞り、52は第2絞り、51bは第1抵抗体、52bは第2抵抗体、51eは第1バッファ室、52eは第2バッファ室、6はスタック(機器)、82はコンプレッサを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器に接続され、開放動作の連動および/または閉鎖動作の連動が行われる複数の連動バルブを備えるバルブ組と、
前記バルブ組を構成する各前記連動バルブに制御用気体を供給して各前記連動バルブの開放動作の連動および/または閉鎖動作の連動を制御する制御用通路と、
前記制御用通路および/または前記連動バルブに設けられ、前記バルブ組を構成する各前記連動バルブの前記開放動作の連動および/または閉鎖動作の連動について、時間的な優先遅延関係を維持させる優先遅延要素とを具備することを特徴とする気体制御式バルブシステム。
【請求項2】
請求項1において、前記優先遅延要素は、前記制御用気体が流れる単位時間あたりの流量を絞ることにより、前記バルブ組を構成する各前記連動バルブの前記開放動作の連動および/または閉鎖動作の連動について、時間的な優先遅延関係を設定することを特徴とする気体制御式バルブシステム。
【請求項3】
請求項1において、前記優先遅延要素は、前記制御用通路の少なくとも一部の流路断面積を変化させることにより、前記バルブ組を構成する各前記連動バルブの前記開放動作の連動および/または閉鎖動作の連動について、時間的な優先遅延関係を設定することを特徴とする気体制御式バルブシステム。
【請求項4】
請求項1において、前記優先遅延要素は、前記制御用通路の流路長を変化させることにより、前記バルブ組を構成する各前記連動バルブに対して時間的な優先遅延関係を設定することを特徴とする気体制御式バルブシステム。
【請求項5】
請求項1において、前記優先遅延要素は、前記制御用通路および/または前記連動バルブに設けられたバッファ室で形成されていることを特徴とする気体制御式バルブシステム。
【請求項6】
請求項1〜5のうちの一項において、前記バルブ組は、開放動作により前記機器に流体を供給するための供給バルブと、開放動作により前記機器内の流体を機器外に排出させるための排出バルブとを備えており、
前記供給バルブは、前記供給バルブの開放動作を実施するための開放用ポートと、前記供給バルブの閉鎖動作を実施するための閉鎖用ポートとを備えており、
前記排出バルブは、前記排出バルブの開放動作を実施するための開放用ポートと、前記排出バルブの閉鎖動作を実施するための閉鎖用ポートとを備えており、
前記制御用通路は、前記供給バルブの前記開放用ポートおよび前記排出バルブの前記開放用ポートに連通する開放制御用通路と、前記供給バルブの前記閉鎖用ポートおよび前記排出バルブの前記閉鎖用ポートに連通する閉鎖制御用通路とを備えており、
前記優先遅延要素は、前記供給バルブ、前記排出バルブ、前記開放制御用通路および前記閉鎖制御用通路のうちの少なくとも一つに設けられていることを特徴とする気体制御式バルブシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−180897(P2010−180897A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22249(P2009−22249)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】