説明

気液分離装置

【課題】使用する方向と関係なく気液分離を行うことができる気液分離装置を提供すること。
【解決手段】直接液体燃料電池からの液体と気体とを受け入れ、液体と気体とを分離して排出する気液分離装置100において、中空の球形の本体110と、本体に形成された複数の開孔部112に設置され、本体内の気体を選択的に透過させる気体抽出膜120と、本体に連結され、液体と気体とを本体の内部に導入する引き込み口130と、本体に連結され、内部の液体を外部に排出する排出口140と、排出口に一端が連結され、他端が液体に接触され、中空構造であるフレキシブルチューブ150と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気液分離装置に関し、特に直接液体燃料電池のアノード電極から排出された未反応液体燃料と二酸化炭素とを分離して排出する気液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直接液体燃料電池(Direct Liquid Feed Fuel Cell)は、メタノール、エタノールのような有機化合物燃料と酸化剤である酸素との電気化学反応により電気を生成する発電装置であってエネルギー密度及び電力密度が非常に高く、メタノールのような液体燃料を直接使用するために、燃料改質器など、周辺装置が不要であり、燃料の保存及び供給が容易であるという長所を有している。
【0003】
直接液体燃料電池は、図1に図示されているように、アノード電極2とカソード電極3との間に電解質膜1が介在されている構造を有する。それぞれアノード電極2とカソード電極3の構造は、燃料の供給及び拡散のための燃料拡散層22、32と、燃料の酸化/還元反応が起きる触媒層21、31と、電極支持体23、33とを具備する。触媒層21、31における電極反応のための触媒は、低温でも優秀な特性を有する白金のような貴金属触媒が使用され、反応副生成物である一酸化炭素による触媒被毒現象を防止するために、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、ニッケルのような遷移金属の合金触媒が使われる。電極支持体23、33は、炭素ペーパー、炭素ファイバなどが使われ、燃料の供給と反応生成物の排出とが容易なように撥水処理して使用する。電解質膜1は、厚さが50〜200μmである高分子膜であり、水分を含有してイオン伝導性を有する水素イオン交換膜である。
【0004】
直接液体燃料電池のうち、メタノールと水とを混合燃料として使用する直接メタノール燃料電池(DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)の電極反応は、燃料が酸化されるアノード反応と、水素イオンと酸素とによる還元によるカソード反応とから構成され、反応式は、次の通りである。
【0005】
(反応式1)
CHOH+HO→CO+6H+6e(アノード反応)
(反応式2)
3/2O+6H+6e→3HO(カソード反応)
(反応式3)
CHOH+3/2O→2HO+CO(総括反応)
【0006】
酸化反応(反応式1)の起こるアノード電極2では、メタノールと水との反応によって二酸化炭素、水素イオン及び電子が生成され、生成された水素イオンは、電解質膜1を介してカソード電極3に伝えられる。還元反応(反応式2)の起こるカソード電極3では、水素イオン、外部回路を介して伝えられた電子、及び酸素間の反応により水が生成される。従って、DMFCの総括反応(反応式3)は、メタノールと酸素とが反応し、水と二酸化炭素とを生成する反応になる。このとき、メタノール1モルが酸素と反応し、2モルの水が生成される。
【0007】
このときに使われる液体燃料は、純粋なメタノールでなく、システム内部から発生するか、又はすでに保存されている水と混合されて使われねばならず、高濃度燃料を使用する場合、電解質膜(水素イオン交換膜)での燃料のクロスオーバー(分解前の燃料がイオン交換膜を通過し、発電することなく酸素と反応するする現象)による発電能減少が大きいために、一般的に0.5〜2モル(2〜8体積%)の低濃度メタノールに希釈して使用する。
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0175612号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図2A及び図2Bは、燃料電池に使用される気液分離装置を示す概略図である。携帯用燃料電池に使用される気液分離装置10は、携帯用という特性上、使用する方向が固定されず、変動する。通常の方向(図2A)では、アノード電極からの希釈された未反応燃料と二酸化炭素とは、引き込み口11に入る。そして、二酸化炭素は、本体の天井部に形成されたホール12を通過して外部に排出され、未反応燃料は、本体の下部に形成された排出口13を通過して燃料電池に回収され、再びアノード電極へ導入される。
【0010】
しかし、気液分離装置10が逆になった状態(図2B)では、未反応燃料及び二酸化炭素のホール12、排出口13の方向が変わる。従って、二酸化炭素が、排出口13を通過してアノード電極に入っていくことがあり、また、未反応燃料が、ホール12を通過して外部に流出されうるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、使用する方向と関係なく気液分離を行うことが可能な、新規かつ改良された気液分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、直接液体燃料電池からの液体と気体とを受け入れ、液体と気体とを分離して排出する気液分離装置において、中空の球形の本体と、本体に形成された複数の開孔部に設置され、本体内の気体を選択的に透過させる気体抽出膜と、本体に連結され、液体と気体とを本体の内部に導入する引き込み口と、本体に連結され、内部の液体を外部に排出する排出口と、排出口に一端が連結され、他端が液体に接触され、中空構造であるフレキシブルチューブと、を備えることを特徴とする、気液分離装置が提供される。
【0013】
上記気体抽出膜は、本体の外周と接する仮想正多面体の頂点に対応する位置に少なくとも形成されてもよい。
【0014】
上記仮想正多面体は、正四面体であってもよい。
【0015】
上記気体抽出膜は、ポリテトラフルオロエチレンから製造されてもよい。
【0016】
上記気体抽出膜は、ポリテトラフルオロエチレンと多孔性強化部材とが圧着されてもよい。
【0017】
上記フレキシブルチューブの他端に設置されたウェートをさらに備えてもよい。
【0018】
上記ウェートの比重は、少なくとも1以上であってもよい。
【0019】
上記フレキシブルチューブの長さは、実質的に本体の直径と同じ長さであってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、使用する方向と関係なく気液分離を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態にかかる気液分離装置について説明する。図3は、本実施形態に係る気液分離装置が適用される直接液体燃料電池システムの概略的な構成を示す説明図である。
【0023】
図3に示すように、直接液体燃料電池システムは、直接液体燃料電池、例えば、燃料電池スタック190と、アノード電極から放出された希釈された未反応液体燃料と反応生成物である二酸化炭素とを導入し、二酸化炭素は外部に排出し、未反応液体燃料はウォーターポンプ191で燃料電池スタック190のアノード電極に供給する気液分離装置100と、燃料電池スタック190に燃料タンク195の希釈された液体燃料(メタノール)を供給するウォーターポンプ192と、燃料電池スタック190に空気を供給するブロー193とを具備する。カソード電極で生成された水は、外部に排出されるが、気液分離装置100、又は燃料タンク195に循環されることもある。
【0024】
次に、図4を参照して、本実施形態に係る気液分離装置100の構成について説明する。図4は、本実施形態に係る気液分離装置100を示す断面図である。図4に示すように、所定直径の中空球形の本体110の内部には、直接液体燃料電池のアノード電極から排出された未反応の液体燃料と反応生成物である二酸化炭素とが混合されて導入される引き込み口130が形成されている。また、引き込み口130と向かい合う所には、液体が燃料電池に循環されるように、液体を排出する排出口140が形成されている。本体110には、複数の開孔部112が形成されており、各開孔部112には、気体を選択的に透過させる気体抽出膜120が設けられている。排出口140には、本体110内部で一端が排出口140に連結され、他端が本体110内の液体と接触し、中空構造であるフレキシブルチューブ150が設置されている。サポータ170は、本体110を支持する支持架台であり、使用される燃料電池システムに固定するために使われうる。
【0025】
開孔部112は、本体110の外周と接する仮想正多面体、例えば、正四面体の頂点に該当する位置に少なくとも形成されることが望ましい。上述のように、開孔部112が正四面体の頂点に位置することによって、本体110の方向が回転される状態で気液分離装置100が使用されても、少なくとも一つ以上の頂点に該当する位置の開孔部112が本体110内の液体から離隔される。従って、本体110内の気体は、液体から離隔された位置の気体抽出膜120を介して外部に排出されうる。
【0026】
気体抽出膜120は、疏水性であって多孔性であるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、例えば、商品名「テフロン(登録商標)」によって製造されうる。気体抽出膜120は、PTFEと、通気性クロスのような多孔性強化部材(図示せず)とが圧着され、一定の形状を維持してもよい。気体抽出膜120は、本体110内の液体の排出を防止し、気体、例えば、二酸化炭素又は水蒸気の排出させることができる。
【0027】
フレキシブルチューブ150は、ゴム材により製造され、その長さは、ほぼ球形本体110の直径と同じ長さとしてもよい。そして、その他端には、比重1以上のウェート160が設置される。本体110に流入される液体のほとんどは、水であり、メタノールの比重が0.79であるから、流入液体の比重は1以下となる。従って、フレキシブルチューブ150の他端は、ウェート160によって本体110内の液体に沈むこととなる。
【0028】
次に、本発明の第1の実施形態に係る液体燃料電池の気液分離装置の作用について説明する。図5は、本実施形態に係る気液分離装置の作用を示す断面図である。図5を参照すれば、気液分離装置が傾いた方向に使用されるとき、燃料電池からの液体が本体110の一部を満たす場合には、少なくとも1つの開孔部112が液体と離隔される位置にある。従って、燃料電池からの気体である二酸化炭素及び水蒸気は、本体110内の圧力増加により、液体と接触しない気体抽出膜120を介して外部に排出される。一方、フレキシブルチューブ150の端は、ウェート160によって本体110の最低部に位置し、ウォーターポンプ191(図3参照)の駆動によって、フレキシブルチューブ150の端を通過した液体が排出口140と連結された燃料電池のアノード電極へ供給される。
【0029】
図6は、本発明で使用した気体抽出膜120の作用テストに使用された装置を示す断面図である。図6を参照すれば、容器210の下部に、3mm×3mmサイズの正方形の開孔部212が形成されており、開孔部212の下部には、気体抽出膜220である疏水性PTFE、例えば、テフロン(登録商標)が付着されている。容器210内には、1モル濃度のメタノール溶液が18mm高に満たされており、メタノール溶液は、ヒータ(図示せず)で80℃に維持されている。テストの結果、開孔部112に形成された気体抽出膜220を介しては、メタノール溶液が流出しないということが分かった。
【0030】
上述のとおり、気液分離装置100は、使用する位置が随時変わる携帯用の直接液体燃料電池に使用するとき、使用する方向の変更に関係なく気体と液体とを分離する。従って、気液分離装置を具備した燃料電池は、使用する方向に関係なく性能を発揮する。
【0031】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、気液分離装置に適用可能であり、特に燃料電関連の技術分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】一般的な直接液体燃料電池の基本的な構成を示す断面図である。
【図2A】従来の燃料電池に使用される気液分離装置を示す概略図である。
【図2B】従来の燃料電池に使用される気液分離装置を示す概略図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る気液分離装置が適用される直接液体燃料電池システムの概略的な構成を示す説明図である。
【図4】同実施形態に係る気液分離装置を示す断面図である。
【図5】同実施形態に係る気液分離装置の作用を示す断面図である。
【図6】同実施形態で使用した気体抽出膜の作用テストに使われた装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 電解質膜
2 アノード電極
3 カソード電極
10、100 気液分離装置
11 引き込み口
12 ホール
13 排出口
21、31 触媒層
22、32 燃料拡散層
23、33 電極支持体
110 本体
112、212 開孔部
120、220 気体抽出膜
130 引き込み口
140 排出口
150 フレキシブルチューブ
160 ウェート
170 サポータ
190 燃料電池スタック
191、192 ウォータポンプ
193 ブロー
195 燃料タンク
210 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接液体燃料電池からの液体と気体とを受け入れ、前記液体と気体とを分離して排出する気液分離装置において:
中空の球形の本体と;
前記本体に形成された複数の開孔部に設置され、前記本体内の前記気体を選択的に透過させる気体抽出膜と;
前記本体に連結され、前記液体と気体とを前記本体の内部に導入する引き込み口と;
前記本体に連結され、内部の液体を外部に排出する排出口と;
前記排出口に一端が連結され、他端が前記液体に接触され、中空構造であるフレキシブルチューブと;
を備えることを特徴とする、気液分離装置。
【請求項2】
前記気体抽出膜は、前記本体の外周と接する仮想正多面体の頂点に対応する位置に少なくとも形成されたことを特徴とする、請求項1に記載の気液分離装置。
【請求項3】
前記仮想正多面体は、正四面体であることを特徴とする、請求項2に記載の気液分離装置。
【請求項4】
前記気体抽出膜は、ポリテトラフルオロエチレンから製造されたことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の気液分離装置。
【請求項5】
前記気体抽出膜は、前記ポリテトラフルオロエチレンと多孔性強化部材とが圧着されたことを特徴とする、請求項4に記載の気液分離装置。
【請求項6】
前記フレキシブルチューブの前記他端に設置されたウェートをさらに備えることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の気液分離装置。
【請求項7】
前記ウェートの比重は、少なくとも1以上であることを特徴とする、請求項6に記載の気液分離装置。
【請求項8】
前記フレキシブルチューブの長さは、実質的に前記本体の直径と同じ長さであることを特徴とする、請求項6に記載の気液分離装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−12597(P2007−12597A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−139367(P2006−139367)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】