説明

気相接触酸化反応のスタートアップ方法、およびこれを用いた(メタ)アクリル酸の製造方法

【課題】気相接触酸化反応を行う場合に、反応器内の熱媒体の温度分布を最小限に抑制し、ホットスポットの発生を抑え、短時間でスタートアップを行うことができるスタートアップ方法、およびこれを用いた(メタ)アクリル酸の製造方法の提供。
【解決手段】反応器の胴内に、触媒が充填された複数の反応管と、反応管の間に形成され、熱媒体が流通する空間と、空間内に熱媒体の流れ方向を転換させる1枚以上の邪魔板とを備えた反応器を用い、空間内に熱媒体を導入しながら反応管に反応原料を含む原料ガスを供給して反応生成ガスを得る際に、反応原料の供給量が、定常運転時における反応原料の供給量の30%に達してから80%に達するまでに要する時間が5時間以上、20時間未満であり、原料ガスの供給開始から定常運転に移行する間に空間内に導入される熱媒体の温度(Th)と、定常運転時に空間内に導入される熱媒体の温度(Ts)が、式{-5<(Th−Ts)<2}を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相接触酸化反応のスタートアップ方法、およびこれを用いた(メタ)アクリル酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、プロピレンからアクロレインやアクリル酸を製造したり、イソブチレンからメタクロレインやメタクリル酸を製造したりする際には、通常、気相接触酸化反応(以下、単に「酸化反応」という場合がある。)が用いられる。該酸化反応を工業的に実施する場合、その酸化反応の際に発生する反応熱が大きいため、複数の反応管を備えた巨大な多管式熱交換器型反応器(以下、単に「反応器」という場合がある。)を用いるのが一般的である。
【0003】
特に、プロピレンやイソブチレンなどの反応原料や分子状酸素を含む原料ガスからの触媒の分離性の観点から、酸化反応触媒を複数の反応管に充填して触媒層を形成し、そこに原料ガスを通過させつつ、反応器の胴内に熱媒体を導入し、反応管の外側を加熱または除熱することで酸化反応を進行させる場合が多い。これにより、反応量を安全に制御すると共に、触媒の急速な劣化を回避し、かつ過度の酸化反応を抑制して高収率を維持しやすくなる。
【0004】
ところで、一般に用いられる反応器には、通常の熱交換器と同様に、熱媒体が反応器内の反応管の周囲を均一に通過するように、邪魔板と呼ばれる熱媒体の流路を定め、流れ方向を転換させるための板が設置されている。この邪魔板により熱媒体の短絡流を抑制し、かつ反応管周囲の除熱能力を維持することができる。
【0005】
しかし、反応器の胴内に導入された熱媒体は、胴内を流れて排出されるまでの間に、酸化反応で発生する熱や原料ガスの予熱に必要な熱により温度が上昇しやすい。そのため、反応器内では熱媒体の温度分布が発生しやすかった。その結果、熱媒体の温度が高い領域に位置する反応管と、熱媒体の温度が低い領域に位置する反応管とでは、反応状態が異なってしまう。特に熱媒体の温度が高い領域に位置する反応管では、周囲の反応管よりも過度な酸化反応が誘発されて収率の低下を引き起こしたり、局部的な触媒の劣化を引き起こしたりしやすい。さらに、除熱能力よりも酸化反応による発熱速度が勝る場合には、酸化反応の暴走に繋がる恐れがある。酸化反応の暴走が起こりそうな状況に陥った場合には、原料ガスの供給を抑えたり、場合によっては緊急停止する必要があり、生産計画を達成できず、多大な損害を被ることになる。
【0006】
一方、酸化反応に用いられる触媒は、反応初期の活性が不安定な場合がある。そのため、反応開始時における過度な酸化反応を抑制する方法として、通常、定常運転時における反応原料の供給量よりも少ない量を供給し、次第に供給量を増やして定常運転に移行させる方法を用いる。
しかし、反応原料の供給を開始してから、反応原料の供給量を次第に増やして定常運転に移行する操作(以下、「スタートアップ」という。)において、目標の供給量に到達する前に触媒層の一部にでもホットスポットと呼ばれる局所的高温帯域が発生した場合は、供給量を増やすのをやめ、ホットスポットが発生した部分の触媒層の温度が低下するのを待たざるをえない。そのため、スタートアップに多くの時間を費やし、目標の生産量が得られず多大な損失になる。
【0007】
上記の問題を解決するために、通常は反応原料の供給開始時の温度を低めに設定する操作や、スタートアップの途中段階で触媒層の温度が低下し、安定するのを待つ操作が行われる。このような操作により、反応原料の供給量が少ないときには、ホットスポットの発生を抑制することができる。しかし、次第に供給量が増えて定常運転に近づくと、触媒層の一部の温度が過剰に上昇してホットスポットが発生することがあった。
特に、巨大な反応器を用いて酸化反応を行う場合は、反応器内において熱媒体の温度分布が発生しやすく、反応管ごとに反応条件が異なりやすかった。そのため、反応器全体に亘る触媒層の温度を管理し、ホットスポットの発生やホットスポットの温度上昇を抑制して円滑にスタートアップを行い、定常運転に移行させるのは容易ではなかった。
【0008】
スタートアップ中のホットスポットの温度上昇を抑制する方法として、例えば特許文献1には、酸化反応のスタートアップに際して、反応器への原料の単位時間当たりの供給量が、原料の単位時間当たりの許容最大供給量の30%以上に達してから、20時間以上、単位時間当たりの供給量を許容最大供給量の30%以上80%未満に保つ方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−336085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、反応器内での熱媒体の温度分布の発生に起因したホットスポットの発生を十分に抑制することは容易ではなく、スタートアップに長時間を費やすことがあった。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、多管式熱交換器型反応器にて気相接触酸化反応を行う場合に、反応器内の熱媒体の温度分布を最小限に抑制し、ホットスポットの発生を抑え、短時間でスタートアップを行うことができるスタートアップ方法、およびこれを用いた(メタ)アクリル酸の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討した結果、反応器内において、触媒層の温度が低い領域を発生させない条件を設定することで、熱媒体の温度分布を最小限に抑制し、ホットスポットの発生を抑え、短時間でスタートアップできることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明のスタートアップ方法は、多管式熱交換器型反応器の胴内に、内部に触媒が充填された複数の反応管と、反応管の間に形成され、熱媒体が流通する空間と、該空間内に熱媒体の流れ方向を転換させる1枚以上の邪魔板とを備えた多管式熱交換器型反応器を用い、前記空間内に熱媒体を導入しながら、前記反応管に反応原料を含む原料ガスを供給し、気相接触酸化反応により反応生成ガスを得る際のスタートアップ方法において、前記反応原料の供給量が、定常運転時における反応原料の供給量の30%に達してから80%に達するまでに要する時間が5時間以上、20時間未満であり、かつ、原料ガスの供給開始から定常運転に移行する間に前記空間内に導入される熱媒体の温度(T)と、定常運転時に前記空間内に導入される熱媒体の温度(T)が、下記式(1)を満たすことを特徴とする。
−5<(T−T)<2 ・・・(1)
【0014】
また、本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法は、前記スタートアップ方法を用い、反応原料として(メタ)アクロレインを含む原料ガスを反応管に供給して気相接触酸化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、多管式熱交換器型反応器にて気相接触酸化反応を行う場合に、反応器内の熱媒体の温度分布を最小限に抑制し、ホットスポットの発生を抑え、短時間でスタートアップを行うことができるスタートアップ方法、およびこれを用いた(メタ)アクリル酸の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に用いる多管式熱交換器型反応器の一例を示す模式図である。
【図2】図1に示す多管式熱交換器型反応器の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明において、気相接触酸化反応は、多管式熱交換器型反応器を用いて実施される。
多管式熱交換器型反応器としては、化学工業で広く使用される化学機械の一つである多管式熱交換器を用いることができる。多管式熱交換器とは、一般的に管状胴体の両端部にそれぞれ1枚以上の管板を内蔵し、該管板間に両端部外周を固定された複数本の伝熱管(反応管)を有するものである。
【0018】
ここで、本発明に用いる多管式熱交換器型反応器の一例について、図1を参照しながら説明する。この例の反応器10は、該反応器10の胴11内に、内部に触媒が充填され触媒層が形成された複数の反応管12と、反応管12の間に形成され、熱媒体が流通する空間11aと、空間11aに熱媒体の流れ方向を転換させる1枚以上の邪魔板13と、反応器下部に設けられた原料ガス入口14と、反応器上部に設けられた反応生成ガス出口15と、反応管12を加熱または除熱するための熱媒体を反応器10の空間11aに導入する熱媒体入口16と、熱媒体を反応器10の空間11aから排出する熱媒体出口17と、熱媒体を反応器10の空間11aに循環させるポンプ18とを具備して構成される。
【0019】
反応管12の本数は複数本であればよく、例えば10000〜35000本でもよい。また、反応管12の外径、肉厚、長さについては特に制限されない。
【0020】
邪魔板13の枚数は特に限定されず、1枚でもよく2枚以上でもよい。反応管12の取り付け強度、熱媒体の循環設備の能力、熱媒体の循環による圧力損失、管板の耐圧性などを考慮し、適宜経済性に合うように設計すればよい。
また、邪魔板13の形式としては、セグメンタル型、ダブルセグメンタル型、ディスク−ドーナツ型、ロッド型など様々な型式が挙げられる。本発明は、熱媒体の流路履歴の影響を受けやすい欠円型セグメンタルバッフルにおいて特に効果を発揮するが、邪魔板13の形式は特に限定されない。
【0021】
このような反応器10を用いた気相接触酸化反応(以下、単に「酸化反応」という。)では、熱媒体を熱媒体入口16から反応器10の空間11a内に導入させ、反応原料を含む原料ガスを原料ガス入口14から反応器10に供給し、熱媒体により加熱された各反応管12に、原料ガスを流通させる。そして、反応管12に形成された触媒層に原料ガスが下から上へ流通したときに、反応原料が気相接触酸化反応により酸化され、反応生成ガスが生成する。その際、反応管12の管壁を介して酸化反応熱が熱媒体より授受され、反応器10内の酸化反応を制御できる。生成された反応生成ガスは、反応生成ガス出口15から排出され、回収される。一方、熱媒体は熱媒体出口17から排出される。
【0022】
本発明においては、上述した酸化反応においてスタートアップを行う際の条件を規定した。
なお、本発明において「定常運転」とは、反応原料が許容最大供給量あるいはその付近の目標の供給量に達し、一定で運転している状態のことである。また、「許容最大供給量」とは、反応原料の反応器に供給しても良い最大値である。この値は反応器の生産能力と相関し、反応器の設計段階で決定される。
【0023】
本発明は、反応原料の供給量が定常運転時における反応原料の供給量の30%に達してから80%に達するまでに要する時間(t)を5時間以上、20時間未満とした。
また、本発明は、原料ガスの供給開始から定常状態に移行する間(すなわち、スタートアップを行う間)に、反応器の空間内に導入される熱媒体の温度(T)と、定常運転時に反応器の空間内に導入される熱媒体の温度(T)が、下記式(1)を満たすように規定した。なお、「反応器の空間内に導入される熱媒体の温度」とは、反応器の熱媒体入口を通過する直前の熱媒体の温度のことである。
−5<(T−T)<2 ・・・(1)
【0024】
本発明者らは鋭意検討した結果、スタートアップ中において触媒層の温度が低い領域を発生させないことが、熱媒体の温度分布を最小限に抑制し、ホットスポットの発生を抑え、短時間でスタートアップする上で重要であることを見出した。その理由は以下の通りである。
【0025】
反応原料の供給量が少ないスタートアップの初期段階において、反応器の空間内に導入された熱媒体は反応器の奥側(熱媒体入口から離れた領域)に到達するまでに、酸化反応を進行させるため熱が奪われ、熱媒体自身は温度が低下しやすい。従って、反応器の奥側ほど熱媒体の温度は低くなる傾向にある。そのため、反応器の奥側に設置された反応管の触媒層は、反応器の手前側(熱媒体入口付近)に設置された反応管の触媒層に比べて温度が低く、反応量が減少しやすい。よって、反応器全体として一定の反応量を確保するためには、反応器の奥側(触媒層の温度が低い領域)以外に設置された反応管で通常よりも過剰に反応させて不足した反応量を補う必要がある。そこで、熱媒体の温度を上げて一定の反応量を確保しようとしても、一旦触媒層の温度が低い領域が発生してしまうと、当該領域の温度上昇は、それ以外の領域の温度上昇に比べて小さいため、反応管毎における触媒層の温度差が拡大する。その結果、触媒層の温度が高い領域での触媒層の温度上昇がさらに進行してしまうため、熱媒体の温度をさらに上げることはできず、一定の反応量を確保することが困難となるばかりか、触媒層の温度が高い領域の触媒が失活するのを待つか、反応原料の供給量を減少させてスタートアップをやり直すこととなり、スタートアップの時間が長くなる。
【0026】
本発明によれば、スタートアップを行う際の条件を上述したように規定することで、反応原料を含む原料ガスの供給量が少ないスタートアップの初期段階において、熱媒体の温度が低下しやすい領域(熱媒体入口から離れた領域)の触媒層での酸化反応を十分に進行させることができる。従って、スタートアップ中において触媒層の温度が低い領域を発生させることなく、高温に保った状態でスタートアップを完了できる。
【0027】
上述した条件において、時間(t)が5時間未満であると、触媒の活性が高い初期の段階で、多量の反応原料が反応管に供給されることになるので、短時間で急激に酸化反応が進行し、その結果、大きな発熱を生じることになる。さらに、この状態のまま反応原料の供給量が増加するので、さらなる発熱を生じ、ホットスポットが発生する。
一方、時間(t)が20時間以上であると、熱媒体入口から離れた領域に設置された反応管周辺の熱媒体の温度が低くなり、該領域の反応管の触媒層の温度が次第に低下してしまう。
時間(t)の下限値は10時間以上が好ましく、上限値は19時間以下が好ましい。
【0028】
反応原料の供給量が、定常運転時における反応原料の供給量の80%に達してから定常運転に移行するまでに要する時間は特に限定されない。例えば反応原料の供給量を1%増加させ、その状態を1時間保持した後に再び供給量を1%増加させ、その状態を1時間保持する操作を繰り返すなどして、触媒層の温度や反応率を管理しながら反応原料の供給量を段階的に増やせばよい。
【0029】
また、上述した条件において、(T−T)が−5℃以下であると、定常運転に移行するまでに熱媒体の温度が低い状態となるため、熱媒体入口から離れた領域の触媒層での酸化反応を十分に進行させ、高温に保つことが困難となる。
一方、(T−T)が2℃以上であると、スタートアップ中に導入される熱媒体の温度が高すぎるため、過度な酸化反応が誘発されやすくなり、ホットスポットが発生しやすくなる。
(T−T)の下限値は−4.5℃以上が好ましく、−4.0℃以上がより好ましい。一方、(T−T)の上限値は1.5℃以下が好ましく、1.0℃以下がより好ましい。
【0030】
なお、スタートアップ中に導入される熱媒体の温度は、上記式(1)を満たす温度、すなわち(T−5)℃を超え、(T+2)℃未満の範囲内であれば自由に変化させることができる。
【0031】
反応器の空間内に導入される熱媒体の温度は、上記式(1)を満たすものであれば特に限定されず、反応原料の供給量に応じて温度を上昇させてもよいし、常に一定値としてもよい。また、触媒層の温度分布や反応率、反応器内の熱媒体の温度分布などの反応状態に応じて、反応器の空間内に導入される熱媒体の温度を上げたり下げたりしてもよい。
一方、定常運転時に空間内に導入される熱媒体の温度は、実績値や実験設備における実験値、シミュレーション等によって、予め設定しておくのが好ましい。
【0032】
上述したように、本発明は触媒層中に温度の低い領域を発生させない条件でスタートアップを行うが、触媒層の温度を把握するために、反応管12内の触媒層中に熱電対等の測温器具を設置することが好ましい。特に、図2に示すように、反応管12の原料ガス入口14側の端部19と、該端部19から数えて1枚目の邪魔板13aとの間に、測定ポイントAを設けるのが好ましい。
なお、破線aで囲まれた×印(a−1〜a−6)は、測定ポイントAで切断して上から見たときの、各反応管12内の触媒層中に設置された測温器具の位置の一部を示している。また、破線bで囲まれた×印(b−1〜b−6)は、端部19から数えて2枚目の邪魔板13bと、1枚目の邪魔板13aとの間に設けられた測定ポイントBで切断して上から見たときの、各反応管12内の触媒層中に設置された測温器具の位置の一部を示している。
【0033】
測温器具の設置数は、多いほど反応器内部の状態を的確に把握できるが、その一方で設置コストやデータ処理等の煩雑性が増すため、熱媒体の流路方向が変化する場所や、触媒の反応特性上、発熱しやすい場所など、代表的なポイントを適宜選択し、その設置数を最低限にするのが好ましい。触媒の反応特性上、発熱しやすい場所は、例えばベンチ反応器のように反応管が1本の反応設備で酸化反応を行った際に触媒層の温度を計測して設定してもよいし、反応速度解析やシミュレーションを用いて計算で求めてもよい。
また、代表的なポイントを選択せずとも、現実的な分割数で反応器を仮想的に均一に分割し、各分割された領域に一様に測温器具を設置しても構わない。
【0034】
測温器具は直接触媒層の中に設置してもよいし、反応管12に保護管を挿入し、該保護管内に測温器具を設置してもよい。なお、保護管内には、触媒が充填されないものとする。
また、測温器具は、必要に応じて移動可能とし、一つの測温器具で多数の場所の温度を測定してもよい。
【0035】
本発明に用いる原料ガスは、反応原料と酸素を含む。また、水蒸気を含んでいてもよい。
反応原料としては、気相接触酸化反応に使用できる原料であれば特に制限されないが、本発明は、イソブチレン、プロピレンから(メタ)アクロレインを生成したり、(メタ)アクロレインから(メタ)アクリル酸を生成したりする反応など、酸化反応熱が著しく大きな酸化反応に好適である。従って、本発明は、反応原料として、イソブチレン、プロピレン、第三級ブチルアルコール、(メタ)アクロレインなどを用いる場合に特に適しており、中でも(メタ)アクロレインを用いる場合に好適である。
なお、本発明において「(メタ)アクロレイン」はメタクロレインとアクロレインの両方を示し、「(メタ)アクリル酸」はメタクリル酸とアクリル酸の両方を示す。
【0036】
スタートアップ中に供給される原料ガスの濃度、原料ガスの流量、反応圧力、温度は特に限定されないが、それぞれ段階的に変化させることが好ましい。例えば、スタートアップに要する時間を計画し、単位時間あたりの変化分が一定となるように定めてもよいし、反応原料の供給量が多い範囲で次第に増加分を減少させてもよい。
【0037】
一方、定常運転時に供給される原料ガスの濃度は、例えば反応原料として(メタ)アクロレインを含む場合、反応原料の濃度が3〜9容量%、酸素の濃度が5〜15容量%、水蒸気の濃度が5〜50容量%であることが好ましい。
また、原料ガスには、本反応に対して実質的に影響を与えない低級飽和アルデヒドやケトンなどの不純物を少量含んでいてもよいし、原料ガスを二酸化炭素等の不活性ガスを加えて希釈してもよい。
また、原料ガスの酸素源には空気を用いるのが経済的に有利である。
【0038】
定常運転時に供給される原料ガスの流量は特に限定されないが、反応管1本あたり、および触媒1gあたりの空間速度が0.5〜2.0NL/hr/本/gとなるような流量が好ましい。
また、反応圧力は常圧から数気圧まで実施できる。
また、原料ガスの温度としては特に限定されないが、100〜300℃が好ましい。
また、反応原料の供給量としては特に制限されないが、本発明は、反応原料の供給量について、反応原料の供給量を反応管の本数で割った値、すなわち反応管1本あたりの反応原料の供給量が5mol/hr以上の場合において特に優れた効果を発揮できる。
【0039】
スタートアップ中や定常運転時に反応器に原料ガスを供給する方法は、反応原料の形態によって適宜選定すればよい。例えば、反応原料が液体の場合には、ケトル型リボイラーやストリッパーなどを用いて原料を揮発させて供給すればよい。また、反応原料が気体の場合には、圧力差を利用してそのまま反応器に供給してもよいし、圧縮機で押し込む操作を行って反応器に供給してもよい。さらには、反応器に原料ガスを供給する前に、原料ガスを予熱してもよい。ただし、外部の熱交換器などを用いて原料ガスを予熱する場合は、熱交換器のコストや圧力損失の増大などの問題が生じるため、適度に実施するのがよい。
【0040】
反応器の空間内に導入する熱媒体としては、例えば、硝酸カリウム、亜硝酸ナトリウム等の塩溶融物が挙げられるが特に限定されず、設定温度、圧力環境に応じて適したものを選定すればよい。
【0041】
熱媒体の循環設備としては、熱媒体を貯蔵する熱媒体タンクを備え、ポンプを経由して反応器の空間内を循環させてもよいし、複数台のポンプを備えて循環流量を制御してもよい。さらには、図1に示すように、反応器10にポンプ18を直結して熱媒体タンクを省略してもよい。熱媒体の循環設備は、1系列でもよいし、2系列以上を設けてもよい。
【0042】
熱媒体の導入方法としては、反応器の円周から均一に導入する方法を用いてもよいし、複数個のノズルから導入する方法を用いてもよいし、単一のノズルから導入する方法を用いてもよい。
ノズルを用いる場合は、反応器への導入口(熱媒体入口)に角度を持たせ、できるだけ均一に導入することが好ましい。
【0043】
なお、原料ガスの流通方向と熱媒体の流通方向としては、併流型、向流型、直交流型など適宜選択することができる。ただし、一般的には原料ガスが供給される側の反応速度は大きく、かつ反応生成ガスが排出される側の反応速度は途中の反応履歴の影響を受けやすいことから、反応制御の観点より併流型とすることが好ましい。
【0044】
本発明に用いる触媒としては、例えば反応原料としてイソブチレンを用い、メタクロレインを生成する酸化反応や、反応原料としてプロピレンを用い、アクロレインを生成する酸化反応などには、下記の式(I)で表される組成を有する固体触媒が好適であるが、目的とする反応に適したものであれば特に制限されない。
MoBiFeSi ・・・(I)
【0045】
式(I)において、Mo、Bi、Fe、SiおよびOはそれぞれモリブデン、ビスマス、鉄、ケイ素および酸素を示し、Mはコバルトおよびニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Xはクロム、鉛、マンガン、カルシウム、マグネシウム、ニオブ、銀、バリウム、スズ、タンタルおよび亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Yはリン、ホウ素、硫黄、セレン、テルル、セリウム、タングステン、アンチモンおよびチタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Zはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびタリウムなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示す。
a、b、c、d、e、f、g、hおよびiは各元素の原子比を表し、a=12のときb=0.01〜3、c=0.01〜5、d=1〜12、e=0〜8、f=0〜5、g=0.001〜2、h=0〜20であり、iは前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素原子比である。
【0046】
また、反応原料として(メタ)アクロレインを用い、(メタ)アクリル酸を生成する酸化反応には、下記の式(II)で表される組成を有する固体触媒が好適であるが、目的とする反応に適したものであれば特に限定されない。
MoCu ・・・(II)
【0047】
式(II)において、Mo、P、V、CuおよびOはそれぞれモリブデン、リン、バナジウム、銅および酸素を示し、Xはアンチモン、ビスマス、ヒ素、ゲルマニウム、ジルコニウム、テルル、セレン、ケイ素、タングステン、ホウ素および銀からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Yは鉄、亜鉛、クロム、マグネシウム、タンタル、マンガン、コバルト、バリウム、ガリウム、セリウムおよびランタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Zはカリウム、ルビジウム、セシウムおよびタリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示す。
j、k、l、m、n、o、pおよびqは各元素の原子比を表し、j=12のときk=0.5〜3、l=0.01〜3、m=0〜2、n=0〜3、o=0〜3、p=0.01〜3であり、qは前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素原子比である。
【0048】
触媒の形状や大きさ等については特に制限はなく、球状、円柱状、リング状、星形状等、通常の打錠成型機、押出成形機、造粒機等で成形されたものを用いることができる。また、上述したような形状を有する担体に、触媒活性物質を担持した担持触媒を用いてもよい。
2つ以上の触媒群を用いる場合、各触媒群に含まれる触媒の形状は、触媒群ごとに異なっていてもよいが、触媒の製造が簡易になることから、同一形状であることが好ましい。
【0049】
また、反応管に触媒を充填し、触媒層を形成する際には、触媒をシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリコンカーバイト、チタニア、マグネシア、セラミックボール、ステンレス鋼等の不活性担体で希釈して用いることもできる。
【0050】
さらに、反応管の原料ガス入口側の端部と触媒層との間に、触媒のサポートや原料ガスの予熱などを目的とした不活性物質層を設けてもよい。
不活性物質層は不活性物質のみからなる。不活性物質とは、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリコンカーバイト、チタニア、マグネシア、セラミックボール、ステンレス鋼等、目的とする酸化反応に寄与しない物質であれば何を用いてもよい。特に、触媒層の平均的な活性を調整するために不活性担体で触媒濃度の希釈操作を行っている場合には、不活性担体と同一の不活性物質を用いると、反応終了後の抜き取り、篩別操作が簡便となり好都合である。
【0051】
以上説明したように、本発明のスタートアップ方法によれば、反応原料の供給量が定常運転時における反応原料の供給量の30%に達してから80%に達するまでに要する時間を5時間以上、20時間未満に規定し、かつ、スタートアップを行う間に反応器の空間内に導入される熱媒体の温度と、定常運転時に空間内に導入される熱媒体の温度が、上記式(1)を満たすように規定することで、反応器内において触媒層中に温度の低い領域が発生するのを抑制できる。その結果、熱媒体の温度分布を最小限に抑制し、ホットスポットの発生を抑え、短時間でスタートアップできる。
【0052】
また、本発明は、イソブチレン、プロピレンから(メタ)アクロレインを生成したり、(メタ)アクロレインから(メタ)アクリル酸を生成したりする反応など、酸化反応熱が著しく大きな酸化反応に適している。特に(メタ)アクロレインから(メタ)アクリル酸を生成する酸化反応に好適である。
【実施例】
【0053】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例および比較例中の「Thmin」、「Thmax」、「T」、「t」、「ΔT」、「ΔT最大値」、および「ΔT分布」は、以下のように定義される。
【0054】
「Thmin」とは、スタートアップを行う間に反応器の空間内に導入される熱媒体の最低温度のことであり、「Thmax」とは、スタートアップを行う間に反応器の空間内に導入される熱媒体の最高温度のことである。
「T」とは、定常運転時に反応器の空間内に導入される熱媒体の温度のことである。
「t」とは、反応原料の供給量が定常運転時における反応原料の供給量の30%に達してから80%に達するまでに要する時間のことである。
【0055】
触媒層の温度は、反応管の管軸方向に対して垂直な断面の中心に設置した保護管に挿入した熱電対により測定する。なお、保護管は反応系と隔離されており、温度を測定する位置は挿入する熱電対の長さを調節して変えることができる。「ΔT」とは、このとき測定した触媒層の温度と熱媒浴の温度との差(ΔT=触媒層の温度−熱媒浴の温度)である。
なお、「熱媒浴の温度」とは、反応器の空間内の熱媒体の温度である。反応器の空間内の熱媒体は、反応器の形態、反応条件、熱媒の流動状態によって温度に若干の不均一分布が生じる場合がある。この不均一分布の度合いが小さい場合は、反応器の空間内の熱媒体の平均温度を「熱媒浴の温度」として採用してよい。ただし、不均一分布の度合いが大きい場合は、触媒層の位置に応じて触媒層近傍の熱媒体の温度を測定し、これを「熱媒浴の温度」として、ΔTを求める。
【0056】
「ΔT最大値」とは、測定された触媒層の温度のうち、最大となる温度から反応器に導入される熱媒体の温度を差し引いた値である。
「ΔT分布」とは、原料ガスの流入方向からの距離が等しい位置にある複数の触媒層の温度のうち、最大値から最小値を差し引いた値である。なお、ΔT分布の値が大きいほど、反応器内の熱媒体の温度分布が大きくなり、低温領域と高温領域の形成が進行していると判断できる。
【0057】
[実施例1]
気相接触酸化反応には、図1に示す反応器10を用いた。
触媒としては、上記式(II)で示される組成であり、直径5mm×高さ5mmの円柱形状である、メタクロレインの気相接触酸化によるメタクリル酸合成用触媒を用いた。なお、触媒の酸素以外の原子比は以下の通りである。
Mo121.50.5Cu0.3Te0.1Fe0.4Cs1.0
【0058】
上記触媒を、内径25.4mm、長さ6mの反応管12を20000本備えるセグメンタル型邪魔板13を5枚有する反応器10に、反応管1本あたり3500gずつ充填し、触媒層を形成した。なお、反応管の空洞部(原料ガス入口側の端部と触媒層との間)に、直径6mmのアルミナ球を充填した。
また、反応管12の触媒層中に熱電対を挿入し、触媒層の温度を測定した。測定ポイントは、図2に示すように各邪魔板から100mm下方に離れた位置(測定ポイントA、B)に設定した。
【0059】
反応器10の空間11a内には、硝酸カリウム50質量%と、亜硝酸ナトリウム50質量%からなる塩溶融物を熱媒体として導入し、空間11a内を循環させた。
反応原料としては、メタクロレインを用いた。反応原料の供給量が、定常運転時における反応原料の供給量の30%と80%と100%(すなわち、定常運転時)に達したときの、反応管1本あたりの原料ガスの流量、原料ガス中の反応原料(メタクロレイン)および酸素の濃度を表1に示す。
【0060】
そして、表2に示す条件(「Thmin」、「Thmax」、「T」、および「t」)にて、メタクロレインの気相接触酸化反応のスタートアップを以下のように行った。
スタートアップ中はΔT最大値が高温になると触媒が暴走反応を起こすことがあるため、ΔT最大値が50℃を超えた場合は反応原料の供給量を上昇させず、ΔT最大値が50℃以下に下がったのを確認した後、反応原料の供給量を上昇させることとした。また、ΔT最大値の管理上限値を60℃とし、上限値を超える場合は直ちに反応原料の供給を止め、反応を停止することとした。
反応原料の供給量は、0%から定常運転時における供給量まで10%ずつ段階的に上昇させた。また、反応原料の供給量はΔT最大値が一定になった後、上昇させた。ここで「ΔT最大値が一定になる」とは、ΔT最大値の温度変化が、30分以上にわたり±1.0℃の範囲の状態を意味する。
なお、反応原料の供給量が定常運転時の供給量に達し、ΔT最大値が一定になった後を定常運転とした。
【0061】
反応原料の供給量が定常運転時における供給量の80%に達した時点でのΔT最大値およびΔT分布を求めた。結果を表2に示す。また、原料ガスの供給開始から定常運転に移行するまでに要した時間(スタートアップ時間)は、60時間であった。
【0062】
[実施例2、3]
表2に示す条件(「Thmin」、「Thmax」、「T」、および「t」)に変更した以外は、実施例1と同様にしてメタクロレインの気相接触酸化反応のスタートアップを行った。
反応原料の供給量が定常運転時における供給量の80%に達した時点でのΔT最大値およびΔT分布と、原料ガスの供給開始から定常運転に移行するまでに要した時間(スタートアップ時間)を表2に示す。
【0063】
[比較例1〜4]
表2に示す条件(「Thmin」、「Thmax」、「T」、および「t」)に変更した以外は、実施例1と同様にしてメタクロレインの気相接触酸化反応のスタートアップを行った。
反応原料の供給量が定常運転時における供給量の80%に達した時点でのΔT最大値およびΔT分布と、原料ガスの供給開始から定常運転に移行するまでに要した時間(スタートアップ時間)を表2に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
表2から明らかなように、実施例1の場合、ΔT最大値が21.2℃、ΔT分布が8.2℃であった。そして、定常運転まで問題が起きることなく、原料ガスの供給開始から60時間で定常運転に移行した。
実施例2の場合、ΔT最大値が20.9℃、ΔT分布が8.2℃であった。そして、定常運転まで問題が起きることなく、原料ガスの供給開始から62時間で定常運転に移行した。
実施例3の場合、ΔT最大値が24.8℃、ΔT分布が10.9℃であった。そして、定常運転まで問題が起きることなく、原料ガスの供給開始から45時間で定常運転に移行した。
このように、各実施例では反応器内の熱媒体の温度分布を最小限に抑制でき、ホットスポットの発生を抑えることができた。そして、定常運転まで問題が起きることなく、短時間でスタートアップを行うことができた。
【0067】
一方、比較例1の場合、ΔT最大値が33.6℃、ΔT分布が7.0℃であり、ΔT最大値が低下するまで反応原料の供給量の上昇(以下、「ロードアップ」という。)を中断した。その結果、原料ガスの供給開始から定常運転に移行するまでに140時間も要した。
比較例2の場合、ΔT最大値が34.7℃、ΔT分布が14.0℃であり、ΔT最大値が低下するまでロードアップを中断した。その結果、原料ガスの供給開始から定常運転に移行するまでに200時間も要した。
比較例3の場合、ΔT最大値が25.6℃、ΔT分布が15.4℃であった。比較例3では、反応原料の供給量が定常運転時における供給量の80%に達した後、定常運転に移行するまでの間、反応量を維持するために熱媒体の温度を上げざるをえなかった。その結果、ホットスポットが発生し、ΔT最大値が低下するまでロードアップを中断した。そのため、原料ガスの供給開始から定常運転に移行するまでに172時間も要した。
比較例4の場合、ΔT最大値が20.0℃、ΔT分布が11.5℃であった。比較例4では、反応原料の供給量が定常運転時における供給量の80%に達した後、定常運転に移行するまでの間は問題が起きることなく、原料ガスの供給開始から56時間で定常運転に移行した。しかしながら、定常運転に移行した直後にホットスポットが発生し、直ちに原料ガスの供給量を下げざるをえなかった。再びロードアップを行い定常運転に移行するまでに200時間を要した。すなわち、比較例4の場合、スタートアップ時間の合計は256時間であった。
【符号の説明】
【0068】
10:多管式熱交換器型反応器、11:胴、11a:空間、12:反応管、13:邪魔板、14:原料ガス入口、15:反応生成ガス出口、16:熱媒体入口、17:熱媒体出口、18:ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多管式熱交換器型反応器の胴内に、内部に触媒が充填された複数の反応管と、反応管の間に形成され、熱媒体が流通する空間と、該空間内に熱媒体の流れ方向を転換させる1枚以上の邪魔板とを備えた多管式熱交換器型反応器を用い、前記空間内に熱媒体を導入しながら、前記反応管に反応原料を含む原料ガスを供給し、気相接触酸化反応により反応生成ガスを得る際のスタートアップ方法において、
前記反応原料の供給量が、定常運転時における反応原料の供給量の30%に達してから80%に達するまでに要する時間が5時間以上、20時間未満であり、
かつ、原料ガスの供給開始から定常運転に移行する間に前記空間内に導入される熱媒体の温度(T)と、定常運転時に前記空間内に導入される熱媒体の温度(T)が、下記式(1)を満たすことを特徴とするスタートアップ方法。
−5<(T−T)<2 ・・・(1)
【請求項2】
請求項1に記載のスタートアップ方法を用い、反応原料として(メタ)アクロレインを含む原料ガスを反応管に供給して気相接触酸化することを特徴とする(メタ)アクリル酸の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−183313(P2011−183313A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51950(P2010−51950)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】