説明

水上発電装置

【課題】海域や淡水域における波や気象の状態によらず、所定以上の発電量が安定して得られるようにした発電効率の高い水上発電装置を提供する。
【解決手段】水上発電装置1は、水面下となる周縁から上向きに中心部に向かう、収斂堤11に区切られた傾斜面3bを遡上して開口3aから上部プール6a内に進入したり、傾斜面3bに設けた取水口21から上部プール6a内に取り込まれたりしたプール6内の水の水位と本体10の外部の水の水位との差によって水車16を回転させて、発電機12に発電させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水面上に浮かばせた本体に水車と、発電機および風力発電装置を搭載し、河川水の水流や海流、潮流、潮汐、波力、風力などを利用して発電する水上発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から地球温暖化や様々な地球環境破壊などが叫ばれてきたが、これらの問題は近年になってますます大きくなっている。これらは、化石エネルギー資源の使用による二酸化炭素排出問題とも密接に関連しているとも言われている。その化石エネルギー資源には、枯渇などエネルギー資源そのものの量的問題等の別の問題もある。これらの問題に対して省エネルギーや省資源が叫ばれる一方で、二酸化炭素排出のないクリーンな自然エネルギーの早期導入や早期実用化が全世界的な課題になっている。
【0003】
また、原子力発電による電気エネルギーの供給が行われているが、原子力利用に関する問題には、原子力発電所などの原子炉の老朽化や地震、天災、人災などに伴って発生し得る放射能漏れ事故がある。周知のように放射能は生態環境への悪影響が大きく、放射能漏れ事故が発生したときには、地域住民の生活環境への悪影響が大きく、被害も甚大になる虞がある。
【0004】
そこで、自然エネルギーの利用に着目すると、例えば水の流れの比較的緩やかな河口付近の河川水においては、水の流れに比較的大きな水流エネルギーが存在する。したがって、これを円錐形状浮体などごく簡単な手段を用いて人間生活に利用することができれば、二酸化炭素削減にも大きな効果が得られる。
【0005】
また、海洋においては、現在は人の住めないような無人島、例えば尖閣諸島や沖ノ鳥島、竹島、小笠原諸島などの島々への居住を可能にしたり、釣り場や観光地としての可能性を高めたりするためにはこれらのような離島への石油などの運搬費とエネルギー資源の節約が必要とされる。また、離島における観光、水産業などの拡大による島民の生活向上や利便性の向上、或いは国民の広域活動と都市集中型人口の分散化などを図るために、海洋エネルギー資源を有効に利用する必要がある。
【0006】
海洋における波エネルギー、風力、太陽光、海流、潮汐等の海洋エネルギー資源や湖沼、河川における波エネルギー、水流のエネルギー等を利用するものとして、本願発明者が既に特許文献1で提案した波エネルギー利用装置がある。すなわち、波エネルギー利用装置1は、水面下端側の周縁から上向きに中心部に向って傾斜した傾斜面3bを有し、中心部に開口3aを有する本体10と、本体10の傾斜面3b上に中心部から傾斜面3b上を下端側の周縁に向って放射状に立設した、波を収斂するための収斂堤11と、開口3aから下方に設けられ、水中側に連通する連通部15を有するプールと、連通部15に配置された水車16と、水車16の回転に連動して発電する発電機18とを備え、中心部が水面上に出るように本体10を水面に浮かせて、波の動きにともなって中心部から本体10のプール内に進入する水を利用するものであり、収斂堤11に区切られた傾斜面3bを遡上して開口3aからプール内に進入した水の水位と本体10外部の水の水位との水位差によって前記水車16を回転させて、発電機18に発電させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4628844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、海洋上や湖沼や河川での波の状態や水流の状態は様々である。このため、これらの状態が発電のために好ましくないような場合でも、所定以上の発電量が得られるようにするために更なる発電効率の向上が求められてきた。
【0009】
本発明は、このような従来の技術が有する課題に着目してなされたもので、海域や淡水域における波や気象などの状態にかかわらず、所定以上の発電量が安定して得られるように発電効率を高めることができるようにした水上発電装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。 [1] 水面下となる周縁から上向きに中心部に向かって傾斜した傾斜面(3b)を有し、前記中心部に開口(3a)を有する本体(10)と、該本体(10)の外部から進入する水を取り込む、前記開口(3a)の下方に設けられたプール(6)と、前記本体(10)の前記傾斜面(3b)上に前記中心部から前記傾斜面(3b)上を下端側の周縁に向かって放射状に立設した、波を収斂するための収斂堤(11)とを備え、前記中心部が水面上に出るように前記本体(10)を水面に浮かせて、波の動きにともなって前記本体(10)の外部から進入する水を利用して発電する水上発電装置(1)において、
前記プール(6)は、上部プール(6a)と下部プール(6b)とに仕切られており、前記上部プール(6a)は前記開口(3a)側が開放されており、前記上部プール(6a)と下部プール(6b)とを連通する連通部(15)を有し、
前記傾斜面(3b)に設けた取水口(21)から前記上部プール(6a)まで連通し、前記本体(10)の外部の水を前記上部プール(6a)に取り込むための取水路(22)と、
前記傾斜面(3b)に設けた排水口(31)から前記下部プール(6b)まで連通し、該下部プール(6b)の水を前記本体(10)の外部に排水するための排水路(32)と、
前記連通部(15)内に配設された水車(16)と、
前記水車(16)の回転に連動して発電する発電機(12)と、を備え、
前記収斂堤(11)に区切られた前記傾斜面(3b)を遡上して前記開口(3a)から前記上部プール(6a)内に進入したり、前記取水口(21)から前記上部プール(6a)内に取り込まれたりした前記プール(6)内の水の水位と本体外部の水の水位との水位差によって前記水車(16)を回転させて、前記発電機(12)に発電させることを特徴とする水上発電装置(1)。
【0011】
[2] 前記本体(10)は、前記本体(10)の中心部の下方に向けて延設された支持部(40)の下端部に取り付けられた錘(50)を備え、
前記錘(50)は、本体の中心線方向に直交して広がる抵抗面を有し、前記本体(10)の中心線方向をほぼ鉛直に保つとともに、前記抵抗面の水に対する抵抗によって前記本体(10)の上下動を減じることを特徴とする項1に記載の水上発電装置(1)。
【0012】
[3] 前記本体(10)の上部から上方に向けて延設した支柱(401)に風を受けて回転する風車(402)を有し、該風車(402)の回転によって発電する風力発電装置(400)を備えたことを特徴とする項2に記載の水上発電装置(1)。
【0013】
[4] 前記錘(50)が取り付けられた前記支持部(40)は、上下方向に変位可能に設けられ、
前記錘(50)は、前記支持部(40)を上下方向に変位させて上下位置を変更可能に設けられたことを特徴とする項2または3に記載の水上発電装置(1)。
【0014】
[5] 前記支持部(40)は、前記本体(10)の中心部の下方に伸縮可能な多段状を成すものであり、
前記錘(50)は、前記支持部(40)の下端部に取り付けられたことを特徴とする項4に記載の水上発電装置(1)。
【0015】
[6] 前記錘(50)は、内部に貯水可能な空洞の浮力室(51)を備えたことを特徴とする項2から5のいずれか一項に記載の水上発電装置(1)。
【0016】
[7] 前記本体(10)の周縁から垂下可能なスカート(5)を備え、
前記スカート(5)の下部と前記錘(50)とを連結して、前記本体(10)と錘(50)とが成す構造の強度を補強したことを特徴とする項2から6のいずれか一項に記載の水上発電装置(1)。
【0017】
[8] 前記取水路(22)は、前記上部プール(6a)に取り込んだ水が前記本体(10)の外部側へ逆流することを防止するための逆止手段(23)が設けられ、
前記排水路(32)は、前記本体(10)の外部の水が前記下部プール(6b)に進入することを防止するための進入防止手段(33)が設けられたことを特徴とする項1から7のいずれか一項に記載の水上発電装置(1)。
【0018】
[9] 前記取水路(22)と排水路(32)とを並設したものを一組とし、前記取水路(22)と排水路(32)の複数組を前記傾斜面(3b)の全周にわたって配設したことを特徴とする項1から8のいずれか一項に記載の水上発電装置(1)。
【0019】
前記本発明は、次のように作用する。
水上発電装置(1)は、海洋や湖沼、河川のような水域の水底(海底)に設置した係留装置の係留チェーン(2)により本体(10)を係留して、水面上に浮遊させておく。この水上発電装置(1)に寄せて来た波(W)や水流は、収斂堤(11)で仕切られた本体(10)の傾斜面(3b)に乗り上がり、傾斜面(3b)を中心部の開口(3a)に向かって進む。
【0020】
隣り合う収斂堤(11)同士の間隔は中心部に向かって狭くなっているので、傾斜面(3b)に乗り上がった波、河川の水流、海流、潮流、潮汐などの水流は、傾斜面(3b)上を中心部に近付くにつれて収斂されて波高や水流の山が大きくなる。波高や水流の山が最も大きくなったところで開口(3a)から上部プール(6a)内に落ちる。
【0021】
また、波や水流は、開口(3a)から上部プール(6a)に入るほか、本体(10)の傾斜面(3b)に設けた取水口(21)から取水路(22)に入って上部プール(6a)に流れ込む。このため、波が傾斜面(3b)を開口(3a)まで遡上する程高くなかったり、水流が傾斜面(3b)を開口(3a)まで上る程強くない状況下でも、上部プール(6a)に水を取り込むことができる。
【0022】
上部プール(6a)に入った水は、傾斜面(3b)を遡上した水位と本体(10)の外部の水の水位との水位差によって、上部プール(6a)と下部プール(6b)とを連通する連通部(15)内に配設した水車(16)を回転させる。水車(16)が回転すると、水車(16)に連動する発電機(12)が発電をする。
【0023】
水車(16)を回転させた水は、連通部(15)によって連通されている下部プール(6b)へ流れ込む。下部プール(6b)へ入った水は、上部プール(6a)から入ってくる水に押されて排水路(32)を通って傾斜面(3b)に設けられた排水口(31)から本体(10)の外へ排水される。
【0024】
なお、取水路(22)には上部プール(6a)に取り込んだ水が本体(10)の外部側へ逆流することを防止するための逆止手段(23)を設け、排水路(32)には本体(10)の外部の水が下部プール(6b)に進入することを防止するための進入防止手段(33)を設けたものでは、それぞれの水路(22,32)において逆流が防止されるので、より効率よく発電することができる。
【0025】
また、取水路(22)および排水路(32)は、それらを一組とし、取水路(22)と排水路(32)の複数組を傾斜面(3b)の全周にわたって略等間隔に配設することが望ましい。これにより、寄せてくる波の方向や水流の方向に対する本体(10)の向きにかかわらず、効率よく波や水流を利用することができる。
【0026】
本体(10)の中心部の下方に向けて延設された支持部(40)の下端部に錘(50)が取り付けられ、該錘(50)は、本体(10)の中心線方向に直交して広がる抵抗面を有するものでは、波を受けても本体(10)の中心線方向をほぼ鉛直に保つことができるとともに、抵抗面の水に対する抵抗によって本体(10)の上下動を減じることもできるので、安定した発電を行うことができる。
【0027】
さらに本体(10)の上部から上方に向けて延設した支柱(401)に風を受けて回転する風車(402)を設け、該風車(402)の回転によって発電する風力発電装置(400)を備えたものでは、水力による発電に加えて風力を利用した発電も行えるので、より多くの発電量を得ることができる。さらに、前記のような錘(50)の作用で装置本体(10)の縦方向の中心線がほぼ鉛直に保たれるとともに、錘(50)の抵抗面による水の抵抗を利用して上下動が拘束されて風力発電装置(400)を支える支柱(401)がほぼ鉛直に保たれるので、風力発電装置(400)の風車(402)を安全に、かつ、スムーズに回転させることができて発電効率が上昇する。さらに、水上発電装置(1)の破壊や故障を防止することができる。
【0028】
また、錘(50)を取り付けた支持部(40)が上下方向に変位可能なものにあっては、水上発電装置(1)の移動の際に錘(50)を上方に変位させておくことにより、水深の浅いところでも容易に移動させることができ、また、水上発電装置(1)全体のバランスの調整等ができるので、水上発電装置(1)を安全に曳航し、運転することができる。
【0029】
また、錘(50)をその内部に貯水可能な空洞の浮力室(51)を備えたものにあっては、浮力室(51)を空にしたり、任意の水量を貯水したりすることにより、水上発電装置(1)全体のバランスをより良く調整することができる。
【0030】
また、本体(10)の周縁から垂下可能なスカート(5)を備え、該スカート(5)の下部と錘(50)とを連結したものにあっては、本体(10)と錘(50)とが成す構造の強度を補強することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明にかかる水上発電装置によれば、水面上に浮かんだ本体外部の水位と本体の傾斜面の上端の開口からだけではなく、傾斜面に設けた取水口からもプール内に水を取り込み、プール内の水の水位との水位差によって水車を回転させ、その回転力で発電機を駆動して発電するので、発電効率が高まって所定以上の発電量を安定して得ることができる。
【0032】
また、装置本体の中心部の下方に向けて延設された支持部の下端部に錘を取り付け、該錘に本体の中心線方向に直交して広がる抵抗面を設けたものでは、水上発電装置の姿勢を安定させ、水上発電装置の上下動も減じることもできるので、安定した発電を行うことができる。
【0033】
さらに、錘を上下方向に変位可能にしたものでは、ドックなど水上発電装置の製作工場から、装置の設置海域までの曳航時の風圧などにおける転倒防止に、運転時の安定性、バランスの調整ができるため、安全に曳航、運転することができる。
【0034】
また、水上発電装置下部に設ける錘の内部に浮力室を設けることにより、錘ならびに錘の支持部の位置の調整、支持部の伸縮など長さの調整時に作業を容易にすることができる。
【0035】
また、プール内に多量の水が貯水されることにより、装置の固有振動数、固有周期などに関係し、急激な水上発電装置の振動や上下動を抑え、水上発電装置の上部に設けた風力発電装置の振動ならびに上下動を防止するため、風力発電装置を効率よく作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施の形態に係る水上発電装置の縦断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る水上発電装置の本体を示す平面図である。
【図3】図1の水上発電装置の本体を示す拡大縦断面図である。
【図4】図1の水上発電装置を流水域に設置した場合を示す説明図である。
【図5】図4の水上発電装置における本体を示す拡大縦断面図である。
【図6】図1における錘が取り付けられる支持部の構成を説明する図である。
【図7】図1における発電機を制御するための回路の一例を示す回路図である。
【図8】図1における発電機を制御するための回路の別の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面に基づき本発明の好適な一実施の形態を説明する。
図1から図8は本発明の一実施の形態を示している。
図1は、本発明の一実施の形態に係る水上発電装置の構成を示す縦断面図であり、波のある水域に配置した場合を示すものである。図2は、図1の水上発電装置の本体を示す平面図であり、図3は、図1の水上発電装置の本体を示す拡大縦断面図である。
【0038】
水上発電装置1は、海や湖沼、河川等の水のある水域に設置して、河川など水の流れや海洋上の海流、潮流、潮汐、或いは、波や風力などのエネルギーを有効に利用して、本体10の上下動を拘束するとともに、発電や水の鉛直交換、消波などもすることができるものである。以下の説明では、水上発電装置1を海において使用するものとして説明する。
【0039】
図1に示したように、本発明の水上発電装置1は、本体10が水底SGから係留チェーン2により係留されており、水面S上に浮上している。水面Sに浮上している本体10は、中心部が水面Sよりも上方に突き出すように浮力が調整されている。中心部には後述するように水が入り込む開口3aが形成されている。本体10は、この開口3aから下向に傾斜した傾斜面3bを有する板状の傾斜部3を有しており、傾斜部3の下端周縁は、水面下となるように構成されている。
【0040】
図2に示したように、本体10は、上から見たときに傾斜部3の下端周縁がほぼ均等な長さの複数の辺からなるほぼ正多角形をなしている。この上から見た形状は、多角形に限らず、円形、楕円形などにしてもよい。
【0041】
水上発電装置1のほぼ中心部、すなわち、開口3aの周縁からは、傾斜面3b上を傾斜部3の下端周縁に向かってほぼ均等の角度をもって放射状に延びる板状の収斂堤11が立設されている。この収斂堤11は、開口3a側から傾斜部3の下端周縁側までその上縁の高さの位置が変わらない。言い換えると、傾斜部3の傾斜面3bから収斂堤11の上縁までの高さは、傾斜面3bが開口3a側から下端周縁に向かって低くなるに従って、傾斜部3から収斂提11の上縁までの高さが高くなっている。この収斂堤11の内部には、水上発電装置1に浮力を与えるための不図示の浮力室が形成されている。
【0042】
傾斜部3の傾斜面3b上に立設されている収斂堤11の各々には、傾斜部3の下端周縁側の端部にバランス浮体Bが取り付けられている。このバランス浮体Bは、水上発電装置1に浮力を与えるためのものである。したがって、バランス浮体Bの浮力の大きさによっては前記した収斂堤11の内部の浮力室は、ある程度小さくしてもよい。
【0043】
バランス浮体Bは、約半分程度が水面S上に出て、残りの約半分は水面S下に没する程度に設定されている。これにより、設置水域に大波などが発生しても、水上発電装置1が転倒することを防止することができる。また、バランス浮体Bは、船などに衝突された場合の緩衝装置の役目も果たしている。
【0044】
水上発電装置1の全体に亘って本体10の周縁には、本体10を囲むようにスカート5が取り付けられている。このスカート5は、格子状に組んだ骨組みと各格子を覆う網目状の金網やプラスチック網から成っており、上下に可動或いは着脱可能なものである。スカート5は、水上発電装置1の運搬時には邪魔にならないように上方に吊り上げたり、取り外したりしておくことができる。
【0045】
このスカート5は、装置の稼動時には本体10の側壁4から水中に吊り下げておくことにより、波による揺動や振動、傾きなどを抑制して本体10の安定性を向上させることができる。また、スカート5の網目を通過しようとする波を消波できるので、水上発電装置1全体による消波効果等を高めることができる。水上発電装置1による消波の例としては、波の来る側で傾斜部3の傾斜面3bを遡上する波の収斂、波打ち作用、砕波現象などの繰り返しによって成される消波がある。
【0046】
また、スカート5は網目形状を有しているので、外側で運動している波の水粒子の運動が水上発電装置1の下部内に進入することを防止し、水粒子の運動が網目を通過することにより、水粒子の運動を変化させて消波させると共に、水の流通を良くすることができる。
【0047】
なお、水上発電装置1の姿勢の安定性を向上させるためにスカート5の下方に錘50を設けてもよい。
また、スカート5の網目は、海水中の生物の付着をし易くした機能を有し、浮漁礁等の効果も併せ持っている。
【0048】
このスカート5に囲まれた内側には、本体10の中心部に設けた開口3aの下方に位置するプール6が配設されている。このプール6は、開口3aとほぼ同心に配設されており、中底8aによって上部プール6aと下部プール6bとに仕切られている。上部プール6aは、開口3a側が開放されている。上部プール6aと下部プール6bとは、複数設けた連通部15によって連通している。この複数の連通部15それぞれの内部には、後述する発電機12を駆動させるための水車16が配設されている。
【0049】
このプール6の底板8bは、その中央に向かって低くなるコニカル状などにして、波力および風力発電装置1の下方から来る波の揚圧力を減ずるようにすることが好ましい。プール6のプール側壁の外側には、このプール側壁を囲むように浮力室9が形成されている。この浮力室9は、プール側壁と、傾斜部3の傾斜面3bの裏面と、隔壁9aとによって密閉可能な空間として形成されている。この浮力室9には浮力の調整のためのバラスト水が出入りするため、不図示のノズルや通気配管ならびにポンプ装置、波浪の大小による装置の浮沈コントロール設備などが設けられている。
【0050】
傾斜面3bには、取水口21が設けられており、この取水口21からは上部プール6aまで連通する取水路22が設けられている。この取水路22は、本体10の外部の水を上部プール6aに取り込むための水流路である。この取水路22の上部プール6aの近傍には、上部プール6aに取り込んだ水が本体10の外部側へ逆流することを防止するための逆止手段23が配設されている。
【0051】
この逆止手段23は、逆止弁でもよいが、より簡易な構造のものとして、取水路22を塞ぐことができる板状体を、取水路22を塞いだ状態よりも取水口21側へは揺動しないように取り付けたものでよい。なお、逆止手段23の取り付け位置は、取水路22の上部プール6aの近傍に限られず、上部プール6aに取り込んだ水が本体10の外部側へ逆流することを防止できる位置であればよい。
【0052】
また、傾斜面3bには、取水口21に並んで排水口31が設けられている。この排水口31からは下部プール6bまで連通する排水路32が設けられている。この排水路32は、下部プール6bの水を本体10の外部に排水するための排水路である。この排水路32の排水口31の近傍には、本体10の外部の水が下部プール6bに進入することを防止するための進入防止手段33が配設されている。
【0053】
この進入防止手段33は、逆止弁でもよいが、より簡易な構造のものとして、排水路32を塞ぐことができる板状体を、排水路32を塞いだ位置よりも排水路32側へは揺動しないように取り付けたものでよい。なお、進入防止手段33の取り付け位置は、排水路32の排水口31の近傍に限られず、本体10の外部の水が下部プール6bに進入することを防止できる位置であればよい。
【0054】
これら取水路22と排水路32とは、それらを一組として、前記取水路22と排水路32の複数組を前記の傾斜面3bの全周にわたって略等間隔に配設することが好ましい。例えば、隣り合う2つの収斂堤11によって画成された傾斜面3bごとに一組を配設する。なお、一組の取水路22と排水路32とを収斂堤11によって画成された傾斜面3bごとではなく、画成された傾斜面3bの一つ置きに配設してもよいし、二つ置き以上間隔をあけても良い。すなわち、略等間隔に配設すればよい。
【0055】
これにより、水上発電装置1を水上に設置する際に、波の寄せてくる向きや水流の向きを考慮することなく水上発電装置1をどのような向きに設置しても変わらない発電効率で発電することができる。
【0056】
前記のように連通部15内には、連通部15内を上部プール6aから下部プール6bへ流れる水を利用して発電機12を駆動させるための水車16が配設されている。水車16は、その回転軸17が連通部15の中心と同心となるように延設されている。これら水車16の回転軸17の上部には不図示の変速機が連結されており、該変速機を介して発電機12が連結されている。
【0057】
連通部15内には水車16よりも下流部分に不図示の開閉弁が設けられている。この開閉弁を閉じることによって上部プール6aから下部プール6bへの水の流れを止めて水車16が回転しないようにすることができる。
【0058】
図7および図8は、発電機12を制御するための回路の異なる形態を例示する回路図である。
発電機12は、図7および図8に例示したような回路によって回転数を制御することができる。
【0059】
図7に示したものは、発電機12を抵抗値の異なる複数の抵抗に択一的に接続できるようにしたものであり、図8に示したものは、容量の異なる複数の蓄電池部に択一的に接続できるようにしたものである。図8では、1つの蓄電池からなる蓄電池部と、2つの蓄電池からなる蓄電池部と、3つの蓄電池からなる蓄電池部とに択一的に選択できるものとして例示されている。
【0060】
図7または図8に示した回路に接続されている発電機12は、蓄電池部や抵抗値などを択一的に変化させることに伴って発生電圧、電流などを変化させる負荷制御によって回転数を制御することができる。したがって、発電機12と連動する水車16の回転数を制御することができる。
【0061】
このように発電機12に連動する水車16の回転を制御することにより、プール6内の水の排水量は、ある程度制御することができる。この発電機12の回転制御は、装置本体10内に設けるバラストタンク、並びにそのバラスト水の出し入れによるものとは別々の制御であるが、それらとの連携制御にすることもある。
【0062】
水上発電装置1の本体10の上部には、本体10の中心部を縦方向に延びる仮想の中心線を中心にする支柱401が延設されている。すなわち、支柱401は、本体10の中心部を上方に向かってほぼ鉛直に延設されている。
【0063】
この支柱401の上端には風力発電装置400が設けられている。風力発電装置400は、風車402を備え、この風車402の回転によって発電するものである。
【0064】
本体10は、中心部のプール6を貫通する支持部40が配設されている。支持部40は、上下方向に伸縮可能な多段状を成すものであり、最下端に錘50が取り付けられている。図6に例示した支持部40は、4段に構成されたものである。
【0065】
支持部40は、同心円で径の異なる3つ支持管410,420,430と支持棒440とから構成されている。支持管410,420,430は、最外郭の支持管410と、該支持管410の内部に収納可能な支持管420と、該支持管420の内部に収納可能な支持管430である。支持管430の内部には下端部に錘50が取り付けられた支持棒440が出没可能に収納されている。なお、支持部40を構成する支持管410,420,430と支持棒440は、断面が円形のものである必要はなく、多角形や楕円形であっても良い。
【0066】
最外郭の支持管410は、プール6の中心を貫通し、プール6の中底8aおよび底部8bに固定されている。支持管410の上部にはフランジ411が設けられており、下部にはフランジ412が設けられている。
【0067】
また、支持管420の上部にはスリーブ423、フランジ421、下部にはフランジ422が設けられている。支持管430の上部にはスリーブ433、下部にはフランジ432が設けられている。支持棒440の上部にはスリーブ443、下部にはフランジ442が設けられている。
【0068】
支持管410,420,430と支持棒440は、前記のスリーブ423,433,443で滑り動作ができる。また、それぞれが脱落したり上方に抜けないように前記のフランジ411,412,421,422,432,442の大きさが適宜に設定されている。以上のように構成されている支持部40は、支持管410,420,430と支持棒440を上下方向に伸縮可能に変位させることができる。
【0069】
支持棒440の下部に取り付けられた錘50の内部には浮力室51が設けられ、この浮力室51内に水と空気を出し入れして錘50内の水と空気の量を変化させることにより、錘50の上下の位置の調整作業が行いやすく、水上発電装置1の運転時には本体10の中心線をほぼ鉛直に保つことができる。浮力室51への水の注入および排水は、不図示のポンプ等を備える一般的な注入排出手段によって行われる。また、浮力室51は錘50の中心に近付くにつれ、上下方向の幅を広くし、錘50の底板52はドレーンが溜まりやすく、錘50の天板53は空気が溜まりやすくなっている。ドレーンや空気が溜まる部分には、ドレーンや空気を抜き取るための内管や弁等が取り付けられている。
【0070】
なお、錘50は、本体の中心線方向をほぼ鉛直に保つことができるとともに、底板52が前記の中心線方向に直交して広がる抵抗面を成しているので、抵抗面の水に対する抵抗によって本体10の上下動を減じることができる。浮力室51には、設計次第によってはコンクリートや鉄スクラップ、鉱石、石材などを入れた固定錘としてもよい。
また、水上発電装置1の設置場所や用途によっては、錘50は、底板52と天板53とを平板にして合わせて一体にして浮力室51のないものとしても良いし、一枚の平板から成るものとしてもよい。
【0071】
支持棒440の上端部には、錘50の上下の位置を調整するワイヤー453を取り付けるためのアイプレート444が設けられており、該アイプレート444にはリング環445が取り付けられている。このリング環445にはワイヤー453の下端に取り付けたフック446を掛けることができる。
【0072】
一方、風力発電装置400が設けられている支柱401の内部には滑車450とホイスト451を取り付けるビーム452が支柱401の内部に設けられている。このホイスト451のワイヤー453を巻き上げることによって支持部40が引き上げられて錘50が吊り上げられる。
【0073】
また、ホイスト451のワイヤー453を緩めることにより、錘50は支持部40とともに降下し、支持管420,430と支持棒440を下方に限界まで伸ばして錘50を最下端まで下げることができる。また、スリーブ423,433,443やフランジ411,412,421,422,432,442にピンや固定金物などを取り付けることにより、支持部40の伸縮を調整でき、長さを固定化することができる。
【0074】
以上のように構成された水上発電装置1は、起き上がりこぼしの原理や、やじろべえの原理などを踏まえた上で、水上発電装置1全体が転倒しないように設計されている。
【0075】
次に実施の形態の作用を説明する。
水上発電装置1は、水面S上に浮かぶ浮体構造物であると同時に、傾斜部3の傾斜面3bが渚と同様の作用をするため、浮島渚とも浮遊渚とも言えるものであり、波や潮流、河川等の水流の発生する水域に設置される。水上発電装置1の本体10は、海底のような水底SGから係留装置の係留チェーン2により係留してある。
【0076】
水上発電装置1の平面形状は、傾斜部3が均等なリング状の多角形をなしているために、波がどの方向から来てもほぼ同様の作動ができ、ほぼ同様の効果が得られる。したがって、水上発電装置1を設置する際に、原理的に特定の設置方向を定める必要はない。
【0077】
水上発電装置1に寄せて来た波Wや河川水の水流、海流、潮流、潮汐などの水流は、先ず、バランス浮体Bに当たるか直接に傾斜部3の傾斜面3bに乗り上げる。バランス浮体Bは前記したとおり、所定の間隔を保ちながら収斂堤11の延長線上に配置されているので、バランス浮体Bに当たった波Wはバランス浮体Bの両側に分かれて進み、側壁4の上を通過して収斂堤11で仕切られた傾斜部3の傾斜面3bに乗り上げる。
【0078】
この水上発電装置1に寄せて来た波Wや水流は、収斂堤11で仕切られた本体10の傾斜面3bに乗り上がり、傾斜面3bを中心部の開口3aに向かって進む。本体10の隣り合う収斂堤11同士の間隔は中心部に向かって狭くなっているので、波Wは、中心部に近付くにつれて収斂堤11によって絞り上げられるような収斂作用によって収斂されるとともに波高が高くなる。
【0079】
波Wは、各々の傾斜部3の傾斜面3b上で収斂、波打ち作用、砕波現象などを繰り返しながら最後に傾斜部3の頂点を越波して開口3aからプール6内に落ちる。また、波Wや水流は、開口3aから上部プール6aに入るほか、本体10の傾斜面3bに設けた取水口21から取水路22に入って上部プール6aに流れ込む。
【0080】
これにより、波Wが傾斜面3bを開口3aまで遡上する程高くなかったり、水流が傾斜面3bを開口3aまで上る程強くない状況下でも、上部プール6aに水を取り込むことができる。また、取水路22に設けた逆止手段23は、上部プール6aに取り込んだ水が取水路22内を本体の外部側へ向かって逆流することを防止するので、水を本体10の外部からプール6内により効率よく取り込むことができる。
【0081】
より具体的に説明すれば、水上発電装置1を上から見て傾斜面3bのどこかに波Wの山部が有るとすれば、水はこの傾斜面3bに設けた取水口21から取水路22を通り、上部プール6aに流れ込む。水上発電装置1の作動を一定の時間で区切り、その間の水の流れを見れば、時計の針が回るようにある程度の均等な角速度をもって時計回りの流れと反時計回りの流れとが同時に起こるような現象でプール6内に波Wが入ることになる。このような現象はある程度の平滑化された入力とみなすこともできる。
【0082】
これにより、例えば大海にぽっかり浮かんだ小島のように、大海全体としてはある程度一定の方向に波Wが進行している場合でも、小島の中に立って小島そのものの波打ち際を見ればある程度の方向性はあるものの、全周囲からその小島に波Wが押し寄せてくる。例えば、大海の波Wの進行方向とは全く逆方向の下手側においても、波Wはある程度小波にはなっているものの、その下手側からもその小島に対して廻り波、返し波のような現象でその海岸線に打ち寄せてくる。
【0083】
この現象を本発明の水上発電装置1に利用して、どのような方向からどのような状況で入射してくる波Wであっても、効率よく収斂堤11で区切られた傾斜部3の傾斜面3b上に、すなわち水上発電装置1内に有効に取り入れ、次々と越波してくる波Wや河川の水流、海流、潮流、潮汐などの水流を効率良くプール6内に取り入れることができる。
【0084】
取水路22や開口3aから上部プール6aに入った水は、傾斜面3bを遡上した水位と本体10の外部の水の水位との水位差によって、上部プール6aと下部プール6bとを連通する連通部15内に配設した水車16を回転させる。
【0085】
水車16が回転すると、水車16から上方に向けて延設されている回転軸17が回転して水車16に連動する発電機12が発電をする。水車16の回転部が回転すると、回転軸17には保護管が設けられているために、水の流れや波浪現象等による水撃から回転軸17の回転を保護することができる。
【0086】
水車16を回転させた水は、連通部15によって連通されている下部プール6bへ流れ込む。下部プール6bへ水が流れ込むと、既に下部プール6bに入っていた水が排水路32へ押し出されて、傾斜面3bに設けられた排水口31から本体10の外へ排水される。排水路32に設けた進入防止手段33は、本体10の外部の水が排水口31から排水路32に入って下部プール6bに進入することを防止できるので、より効率よく発電することができる。
【0087】
したがって、水上発電装置1を上から見たときに、傾斜面3bのどこかに波Wの谷部があるとすれば、この傾斜面3bに設けた排水口31の排水路32を通って下部プール6b内の壬水が排水される。
【0088】
また、水上発電装置1を側方から見たときに、例えば入射波の山が水上発電装置1の前部にあり、波Wの谷が水上発電装置1の反対側の後部にあるとすると、水上発電装置1の前部の波Wの山と後部の波Wの谷では、取水と排水とが同時に行われるため、非常に発電効率がよい。
【0089】
例えば、ピストン式内燃機関等において12気筒エンジンでは圧縮と爆発の行程を少しずつずらして時間差をつけて一行程を動作させている。本発明に係る水上発電装置1では、収斂堤11によって傾斜部3が12等分に分割されていて、到来する波Wがこれらに入射する屈折角度の違いから、時間差をもって波の山と谷が訪れるために、12気筒の内燃機関とほぼ類似の動作となる。
【0090】
なお、本実施の形態においては、取水路22と排水路32とを一組とし、取水路22と排水路32の複数組を傾斜面3bの全周にわたって略等間隔に配設してあるので、寄せてくる波Wの方向や水流の方向に対する本体10の向きにかかわらず、波Wや水流から水を効率よく取り込んで利用することができる。
【0091】
水車16の回転を止めるには、水車16の下方に設けてある開閉弁14を閉状態にすればよい。この各開閉弁14を適宜に開状態または閉状態にしておくことにより、必要に応じて水車16を動力源とする発電機12を稼動させたり、停止させたりすることができる。
【0092】
発電機12の稼動と停止の他に、ブレーキ制御や電圧、電流などを変化させる負荷制御によって発電機12の回転数を制御することができる。発電機12の回転数を制御することは、これに連動する水車16の回転数を制御することになる。この水車16の回転数制御は、プール6内の排水量を制御することになり、それはすなわち、プール6内の貯水量を制御することになる。
【0093】
水車16の回転数が制御されると装置本体10の中心部に設けたプール6内の水の排水量が制御され、これにともない、プール6内の貯水量が制御される。この貯水量の制御が波Wの運動における水上発電装置1の固有振動数、固有周期などを持って水上発電装置1自体の振動を制御できる。例えば、プール6内の貯水量を増加することにより、水上発電装置1の重量が大きくなるので振動や上下動などを防止できる。これにより、風力発電装置400の発電効率の上昇につながるばかりでなく、大波時における水上発電装置1の破壊を防止することができる。
【0094】
風力発電装置400は、本体10の上部から上方に向けて延設した支柱401に設けてある風車402が風を受けて回転することによって発電する。これにより水上発電装置1は、水力による発電に加えて風力を利用した発電も行える。このため、より多くの発電量を得ることができる。さらに、錘50の作用で装置本体10の縦方向の中心線がほぼ鉛直に保たれるとともに、錘50の抵抗面による水の抵抗を利用して水上発電装置1の上下動が拘束され、風力発電装置400を支える支柱401がほぼ鉛直に保たれる。これにより、風力発電装置400の風車402を安全に、かつ、スムーズに回転することができて発電効率が上昇する。さらに、水上発電装置1の破壊や故障を防止することができる。
【0095】
錘50は、本体10の中心部の下方に向けて延設された支持部40の下端部に取り付けられており、底板52と天板53とが本体10の中心線方向に直交して広がる抵抗面を有しているので、波を受けても本体10の中心線方向をほぼ鉛直に保つことができるとともに、抵抗面の水に対する抵抗によって本体の上下動を減じることもできるので、安定した発電を行うことができる。
【0096】
また、図6に示したように、錘50を取り付けた支持部40は上下方向に変位可能であるので、水上発電装置1の移動の際に錘50を上方に変位させておくことにより、水上発電装置1は水深の浅いところでも容易に移動させることができる。例えば、水深の比較的浅い海底条件による水上発電装置1のドック引出し、運搬、曳航時の作業には、支持棒440を挿入し、錘50を吊り上げて、装置の座高を低くすることによって水上発電装置1全体のバランスの調整等ができるので、比較的簡単に作業を行うことができる。
【0097】
また、錘50は、その内部に貯水可能な空洞の浮力室51を備えているので、浮力室51を空にしたり、任意の水量を貯水したりすることによっても水上発電装置1全体のバランスをより良く調整することができる。
【0098】
また、本発明の実施の形態に係る水上発電装置1の使用は、海水域や湖沼等での使用の他に、図4および図5に示したように水流のある河川や汽水域でも使用することもできる。
【0099】
以上の作動原理により水上発電装置1の上下動の少ない本体10に、風力発電装置400を設けることによって非常に合理的でありしかも発電効率のよい発電装置とすることができる。また、波Wが水上発電装置1に進入する際に、先ず傾斜部3に当たり傾斜面3b上を遡上することと、収斂堤11で仕切られた各区分けされた部分は、それぞれ波Wや流水の入射角度が違い、全ての力を斜めにで受けて直交面で受けることがないために、波圧、水流、水撃などの分散効果があり、波圧や水流による衝撃力が小さいところにも振動、揺動等を防止し、効率上昇と耐久性、経済性のメリットがある。
【0100】
なお、装置本体10の下方に設けたスカート5の下端と錘50とを補鉄骨、ワイヤー、ロープ、チェーン等で連結することにより、水上発電装置1の揺動などに対して強度的な向上を図ることができ、非常に安定性のあるものとなる。したがって、海の波Wに対しても水上発電装置1が揺動したり、上下動したりしにくい浮体となり、風力発電装置400の支柱401がほぼ鉛直に立ち、傾きにくい水上発電装置1となる。
【0101】
また、水車16で発電した電力と、風力発電装置400で発電した電力を各々別途に陸上に送電してもよし、或いは変換装置などを介して、系統を一本にまとめ陸上に送電してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明に係る水上発電装置は、水上であれば一般に広く使用することができる。
【符号の説明】
【0103】
B…バランス浮体
S…水面
SG…水底
W…波
1…水上発電装置
2…係留チェーン
3…傾斜部
3a…開口
3b…傾斜面
4…側壁
5…スカート
6…プール
6a…上部プール
6b…下部プール
8a…中底
8b…底板
9…浮力室
9a…隔壁
10…本体
11…収斂堤
12…発電機
14…開閉弁
15…連通部
16…水車
17…回転軸
21…取水口
22…取水路
23…逆止手段
31…排水口
32…排水路
33…進入防止手段
40…支持部
50…錘
51…浮力室
52…底板
53…天板
400…風力発電装置
401…支柱
402…風車
410…支持管
411…フランジ
412…フランジ
420…支持管
421…フランジ
422…フランジ
423…スリーブ
430…支持管
432…フランジ
433…スリーブ
440…支持棒
442…フランジ
443…スリーブ
450…滑車
451…ホイスト
452…ビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面下となる周縁から上向きに中心部に向かって傾斜した傾斜面を有し、前記中心部に開口を有する本体と、該本体の外部から進入する水を取り込む、前記開口の下方に設けられたプールと、前記本体の前記傾斜面上に前記中心部から前記傾斜面上を下端側の周縁に向かって放射状に立設した、波を収斂するための収斂堤とを備え、前記中心部が水面上に出るように前記本体を水面に浮かせて、波の動きにともなって前記本体の外部から進入する水を利用して発電する水上発電装置において、
前記プールは、上部プールと下部プールとに仕切られており、前記上部プールは前記開口側が開放されており、前記上部プールと下部プールとを連通する連通部を有し、
前記傾斜面に設けた取水口から前記上部プールまで連通し、前記本体の外部の水を前記上部プールに取り込むための取水路と、
前記傾斜面に設けた排水口から前記下部プールまで連通し、該下部プールの水を前記本体の外部に排水するための排水路と、
前記連通部内に配設された水車と、
前記水車の回転に連動して発電する発電機と、を備え、
前記収斂堤に区切られた前記傾斜面を遡上して前記開口から前記上部プール内に進入したり、前記取水口から前記上部プール内に取り込まれたりした前記プール内の水の水位と本体外部の水の水位との水位差によって前記水車を回転させて、前記発電機に発電させることを特徴とする水上発電装置。
【請求項2】
前記本体は、前記本体の中心部の下方に向けて延設された支持部の下端部に取り付けられた錘を備え、
前記錘は、本体の中心線方向に直交して広がる抵抗面を有し、前記本体の中心線方向をほぼ鉛直に保つとともに、前記抵抗面の水に対する抵抗によって前記本体の上下動を減じることを特徴とする請求項1に記載の水上発電装置。
【請求項3】
前記本体の上部から上方に向けて延設した支柱に風を受けて回転する風車を有し、該風車の回転によって発電する風力発電装置を備えたことを特徴とする請求項2に記載の水上発電装置。
【請求項4】
前記錘が取り付けられた前記支持部は、上下方向に変位可能に設けられ、
前記錘は、前記支持部を上下方向に変位させて上下位置を変更可能に設けられたことを特徴とする請求項2または3に記載の水上発電装置。
【請求項5】
前記支持部は、前記本体の中心部の下方に伸縮可能な多段状を成すものであり、
前記錘は、前記支持部の下端部に取り付けられたことを特徴とする請求項4に記載の水上発電装置。
【請求項6】
前記錘は、内部に貯水可能な空洞の浮力室を備えたことを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の水上発電装置。
【請求項7】
前記本体の周縁から垂下可能なスカートを備え、
前記スカートの下部と前記錘とを連結して、前記本体と錘とが成す構造の強度を補強したことを特徴とする請求項2から6のいずれか一項に記載の水上発電装置。
【請求項8】
前記取水路は、前記上部プールに取り込んだ水が前記本体の外部側へ逆流することを防止するための逆止手段が設けられ、
前記排水路は、前記本体の外部の水が前記下部プールに進入することを防止するための進入防止手段が設けられたことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の水上発電装置。
【請求項9】
前記取水路と排水路とを並設したものを一組とし、前記取水路と排水路の複数組を前記傾斜面の全周にわたって配設したことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の水上発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−193676(P2012−193676A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58599(P2011−58599)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(592007092)大洋プラント株式会社 (6)
【Fターム(参考)】