説明

水中ラインポンプ、及びこれを用いた揚水装置

【課題】圧搾エアーを用いて保守管理が容易であり、かつ、簡易な構造の水中ラインポンプ、及びこれを用いた揚水装置を提供する。
【解決手段】本ポンプ1は、ハウジング2内に軸回転自在に保持すると共に両端開口を外部に連通させた円筒状のロータ3と、ロータの外周側に形成したタービン32と、ロータの内周側に形成したインペラー33と、圧搾エアーをタービンのブレード32aへ噴射させるノズル7と、から成り、ロータの一端開口側を吸引口31aとし、かつ他端開口側を吐出口31bとして構成する。タービンはケーシング6で被う共に、ロータ軸方向に2段配設する。揚水装置Aの構成は、ポンプ吐出口に連結して水面上まで延長する送水パイプ8Aと、吸引口に連結して湖底付近まで延長する吸水パイプ8Bと、吸水パイプの先端に配設した下方開放の椀体9と、椀体の開口縁に配置した濾過手段と、から構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明はダム、湖沼の水中に配置し、揚水及び沈殿物の吸引を行う水中ラインポンプの技術分野に属し、特に、外部供給の圧搾エアーによって駆動する水中ラインポンプ、及びこれを用いた揚水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ダムや湖沼の水を揚水したり、湖底の沈殿物を吸引したりする作業には、水中に配置するラインポンプが使用されていた。
【0003】
近年は高揚程を維持しつつも小型化し、さらには構造を簡略化して高度な加工精度を必要としない水中ラインポンプが望まれていた。そこで、特許文献1の「外部駆動形ラインポンプ」や特許文献2の「ラインポンプ」が提案され開示されている。
【0004】
これらの文献によると、特許文献1の「外部駆動形ラインポンプ」は、駆動マグネットが周囲に配設され、内部には昇圧のための羽根部が設けられたロータと、ロータを回転させるための回転磁界を形成するステータを備え、ステータが周囲に取り付けられると共に、ロータを回転自在に支持する固定軸の保持部が中央部に設けられた隔壁を備え、該隔壁が一体成形され、ステータとロータの間に配設された構成である。
【0005】
また、特許文献2の「ラインポンプ」は、吸込口と吐出口とを一直線上に配置したハウジングと、ハウジング内でベアリングによって回転自在に軸支され被駆動用の磁性体を備えた円筒形状のロータと、ロータの筒内に固定され円筒体の内壁面に羽根を一体形成したファンと、ハウジングの周囲に配置され、ロータに備えた磁性体に対向して設けられた駆動部とを有した構成である。吸込口と吐出口との間には羽根しかないので、ステータは低出力で足りる構成である。小型化する場合には羽根以外の部品が流体の通路に存在しないので、加工精度を要求しない特徴も有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−274386号公報(第3―8頁、第1図)
【特許文献2】特開2009−270512号公報(第3―6頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記文献の水中ラインポンプは、いずれも駆動源をロータ又はステータ側に配置した電磁石及びコイルから構成するものであった。このため、ポンプ本体を水中に配置する場合には、ポンプ本体内を水密に構成する他に、ポンプ内の機器に電力や電気信号を送るための電線自体をも水密に構成する必要があった。そのため、上記文献のポンプは、水密部品(例えば、シール材やパッキング材、等)の取り付けなどで部品点数が増え、かつ高い組み付け精度が必要とされるため、製品コストばかりか保守管理コストも嵩む課題があった。
【0008】
そこで、本願発明は上記課題に着目し、動力源として電力を用いることなく、漏電の心配のない圧搾エアーを用いることに主眼を置き、かつ保守管理が容易であると共に、比較的簡易な構造とした水中ラインポンプ、及びこれを用いた揚水装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明の水中ラインポンプ(以下、「本ポンプ」と称する。)は、上記課題を解決するため、以下の構成を採用している。
【0010】
すなわち、ハウジング内に軸回転自在に保持すると共に両端開口を外部に連通させた円筒状のロータと、該ロータの外周側に形成したタービンと、該ロータの内周側に形成したインペラーと、前記ハウジング内に配置して外部供給源からの圧搾エアーを前記タービンのブレードへ噴射させるノズルと、から成り、前記ロータの一端開口側を吸引口とし、かつ他端開口側を外部系へ送水する吐出口としたことを特徴としている。
【0011】
また、上記タービンに対応させる1又は2以上のノズルを配置したことを特徴としている。より具体的には、タービンの外周位に複数のノズルを配置して、各ノズルのブレードへの噴射角度を調整可能にする形態が好適である。
【0012】
さらに、タービンをハウジング内に保持したケーシングで被ったことを特徴としている。ケーシングは、タービンの上下及び外周のほとんどを被うと共に、ケーシングの所定位置にノズルを配置した構成としても良い。
【0013】
さらにまた、上記のタービンと対応させるノズル、及びケーシングを加えた構成ユニットを、ロータの軸方向に沿って多段に配設するようにしても良い。
【0014】
次に、上記構成の本ポンプを用いた揚水装置の構成は、本ポンプの吐出口に連結して水面上まで延長させた送水パイプと、本ポンプの吸引口に連結して湖底付近まで延長させた吸水パイプと、該吸水パイプの先端開口縁部に該パイプ軸方向へ平行移動可能に取り付けた下方開放の椀体と、該椀体の開口縁から周回状に延長配置した濾過手段と、から成ることを特徴としている。椀体は、吸水パイプを延長して湖底に濾過手段を介して当接状態とすることが好適である。
【0015】
また、椀体は吸水パイプの軸方向へ手動操作によって、又は他所からの当接力によって平行移動可能なことを特徴としている。さらに、この椀体の開口形の面積は、1回の吸引作業工程での領域を規定するものとなるため、吸水パイプの開口径より大口径が好ましいが、その横移動時の作業効率性と湖底面への倣い当接の度合いを考慮して、その最適な開口径が決定される。また、作業対象の湖底面の状況に応じて適宜交換可能としても良い。
【0016】
濾過手段は、礫、小枝、葉、の通過を阻止し得る開口形から成る柵状、網目状、格子状、又は亀甲状であることを特徴としている。
[作用]
【0017】
本ポンプは、ハウジング内に配置したノズルからタービンのブレードに向かって圧搾エアーが噴出してロータ全体が回転し、ロータの内周側に形成したインペラーが水及び湖底の沈殿物をロータの吸引口から吸引すると共に吐出口から外部に送り出すように作用する。
【0018】
また、タービンに対応させるノズルを複数配置しているため、各ノズルからの圧搾エアーの圧力等を調整してタービンの回転数を適宜に増減させることができる。タービンをハウジング内に保持したケーシングで被った形態の場合、ノズルからの圧搾エアーの噴射経路が限定され、ブレードの所定位置への圧搾エアーが噴射可能となる。この場合、圧搾エアーが周囲に拡散せずにロータを効率的に回転させることができる。
【0019】
さらに、タービン、ノズル、及びこれらにケーシングを加えた構成ユニットを、ロータの軸方向に沿って多段に配設した形態の場合には、ポンプ全体の回転数及びトルクを倍増でき、ポンプ能力が向上してその適用範囲が広がることとなる。
【0020】
本ポンプの用いた揚水装置は、椀体をダム等の湖底に当接させた状態で駆動させると、椀体の開口縁から湖底に滞留している腐葉土、汚泥、濁水、砂礫などの流動性のある沈殿物(以下、「沈殿物等」と略称する。)を吸引し、これらを水面上に汲み上げて送り出すこととなる。また、本願にかかる揚水装置に取り付けた椀体は、沈殿物等の引き上げに伴って吸水パイプの軸方向に沿って降下して、濾過手段によって本ポンプ内への大形の沈殿物等の進入を阻止している。
【発明の効果】
【0021】
本ポンプは、上記構成により、以下の効果を奏する。
まず、外部供給の圧搾エアーがタービンに作用してロータを回転させるため、電気モータを駆動源とした従来の水中ラインポンプと比較し、ハウジングの漏水処理に加えて電線に耐水線を用いる必要がない。このため、ポンプ全体の構造を簡略化でき、製品コストだけでなく保守管理コストの削減も可能となり、故障時の修理も迅速に行うことができる。
【0022】
また、本ポンプは、外部配置(主に、地上、又は水上)の駆動源から圧搾エアーをハウジング内へ供給しているため、水面下設置(適宜の水深位置)のハウジング内部は外部に比べて気圧が高くなり、ポンプ内部への浸水を防止できる。この点からもポンプ本体に高度な水密処理を施す必要がなく、その構造をさらに簡略化できる。そして、ハウジング内部に浸水してもハウジング外部へ圧縮エアーと共に排出できるため、本ポンプ内の停滞水による錆や付着物による機器の不具合を少なくすることができ、その保守性と耐久性を向上させることができる。
【0023】
本ポンプは、特に、湖底の沈殿物等の汲み上げを目的とした揚水装置に応用した場合に、顕著な効果を発揮するものである。これを考慮し、併せて本願の揚水装置は、本ポンプの吸引口に連通状に1又は複数個を連結した吸水パイプの先端開口部に椀体を取り付けることによって、1回の吸引作業工程の範囲を椀体で被った範囲やその近辺に特定でき、その領域の沈殿物等の汲み上げを確実にかつ効果的に行うことができるものとしている。
【0024】
さらに、当該椀体の開口縁部に濾過手段を配置することによって、ポンプ内のインペラーを破損させる小枝や小石などの進入を阻止するようにしている。この濾過手段の取り付けは、椀体の開口縁部へ流入する流体流路の総断面積を吸水パイプの開口径より狭小とすることにより、椀体内の負圧状態(別言すると、椀体の内外圧力差)を形成することができる。これにより椀体内の沈殿物等の引き上げ力、又は汲み上げ力を大きくすることができ、より作業効率の向上に寄与する結果となる。
【0025】
加えて、これらの吸引作業は、主に椀体の移動毎にバッチ作業(回分作業)で行うため、一回の作業吸引工程の範囲(椀体の倣い面積)とその範囲の吸引に必要な作業時間(椀体内の吸込み所要時間)が決まれば、対象とする工事作業面積を基に全体の作業工程時間を比較的高い値で予測することができ、作業計画の立案も迅速かつ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本願の揚水装置を示す概略図である。
【図2】本ポンプの縦断面図である。
【図3】本ポンプの一部切り欠き組立斜視図である。
【図4】本ポンプのロータを示す一部切り欠き平面図である。
【図5】本願の揚水装置の椀体の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本ポンプ、及びこれを用いた揚水装置の実施形態例について、添付図面に基づいて詳細に説明する。図1に示す1は本ポンプであり、その上下に連結した複数の送水パイプ8A、及び吸水パイプ8Bをもって、所望のダム、湖沼、等の水中に配置され、揚水装置Aを構成している。なお、以下の説明では、ダム等の水面側を上側と湖底側を下側と定義して説明する。
【0028】
まず、揚水装置Aは、上述したように本ポンプ1の上側に送水パイプ8Aを連結し、下側に吸水パイプ8Bを連結して構成している。上側に連結する送水パイプ8Aは、水面Sに配置した作業台Wまで複数をフランジ接続によって延長している。一方、下側に連結する吸水パイプ8Bは、複数をフランジ接続によって湖底側に延長しており、その下端側に湖底Bに当接する椀体9を配設している。本ポンプ1の水中での配置状況は、水面Sからの水深で30%程度の位置が好適である。
【0029】
揚水装置Aは、本ポンプ1に対して送水パイプ8A及び吸水パイプ8Bが連結しているため、本ポンプ1の駆動によって湖底Bから湖水(図1の矢印a)と椀体9の開口範囲内の沈殿物等の混合物を吸引し、これらを水面Sの作業台Wに引き上げている(図1の矢印b)。
【0030】
次に、本ポンプ1の具体的な構成について説明する。まず、本ポンプ1は、主に、ハウジング2と、ハウジング2の内部に軸回転自在に保持され、一端開口側を吸引口31aとして他端開口側を吐出口31bとするロータ3と、及びロータ3に圧搾エアーを噴射してロータ3を回転駆動させる駆動用のノズル7(以下、「駆動ノズル」と称する。)と、から構成している。
【0031】
まず、ハウジング2は、上側開放の有低筒状を成し、側周面の母線が底面部21に対して鉛直方向ではなく、所定方向に約3度傾斜させている。つまり、底面部21の垂線と側周面の母線とは約3度傾斜させた結果、ハウジング2の側周面の母線とその内部に保持するロータ3の回転軸は約3度傾斜している。また、本ポンプ1の直近上下に連結する以外の送水パイプ8A、及び吸水パイプ8Bの軸線とも約3度傾斜している。別言すれば、鉛直方向とロータ3の回転軸の軸線とは同一直線上ではなく約3度の傾斜を持つようにしてハウジング2と上記各パイプとを連結している。
【0032】
本ポンプ1は、図1に示すように、水中での配置において、ロータ3の回転軸が傾斜しているため、吸引口31a及び吐出口31bの開口方向もこれに伴って傾斜する。このため、本ポンプ1の直近上下に連結する送水パイプ8A、及び吸水パイプ8Bは、この傾斜を修正する角度をもって一方のフランジを形成している。なお、ロータ3の回転軸を鉛直方向から約3度傾斜させることは、ポンプ全体が水中で自転することを防止するために採用する一般的処置である。また、ロータ3の回転軸のみを鉛直方向に対して傾斜させていれば良く、ハウジング2の側周面の母線とロータ3の回転軸とは傾斜なく平行としてハウジング2を形成しても良い。
【0033】
ハウジング2の底面部21には、後述するロータ3の円筒体31の下端部が貫通する開口を形成している。底面部21を貫通した円筒体31の下端部は、椀体9を配設した吸水パイプ8Bと連通している。
【0034】
また、ハウジング2は、開放側を上カバー23で閉塞している。この上カバー23の中央部には、後述するロータ3の円筒体31の上端部が貫通する開口を形成している。上カバー23を貫通した円筒体31の上端部は作業台Wまで延長する送水パイプ8Aと連通している。上カバー23には、駆動ノズル7の給気管71及び排気管23aが接続している。
【0035】
また、ハウジング2の外周面の相互に反対位置となる2箇所に姿勢制御用のノズル22(以下、「姿勢ノズル」と称する。)を配置している。この姿勢ノズル22は配置箇所毎に2個設置し、双方が外周方向を基準に反対向きに設置している。姿勢ノズル22は、作業台Wに設置した圧搾エアーの供給源であるコンプレッサーCと接続し、途中で分岐する給気管22aが配管され、水中に圧搾エアーを噴射する。この姿勢ノズル22は、ロータ3の回転軸に付与した傾斜のみでは対処し得ない場合のポンプ全体の自転を防止するため、補足的に配置している。姿勢ノズル22は、圧搾エアーの噴射圧や噴射方向の調整が可能である。
【0036】
ハウジング2の内部には、その上下方向を軸支持して回転自在にロータ3を配設している。ロータ3は、上端部及び下端部が送水パイプ8A及び吸水パイプ8Bと連通する円筒体31と、この円筒体31の外周のほぼ中間位置に配置した複数のブレード32aから成るタービン32と、円筒体31の内部に固定したインペラー33と、から構成している。
【0037】
ロータ3の円筒体31は、下端部側を下部プレート4が保持する軸受41で軸支持し、上端側を上部プレート5が保持する軸受51で軸支持している。円筒体31の下端部は上述のようにハウジング2の底面部21を貫通して吸引口31aを成して吸水パイプ8Bと連結し、上端部は上カバー23を貫通して吐出口31bを成して送水パイプ8Aと連結している。
【0038】
ロータ3の円筒体31の外周部には、複数のブレード32aを取り付けている。このブレード32aは上面視において略くの字状を呈し、駆動ノズル7から圧搾エアーを受ける側を湾曲させている。複数のブレード32aは、2つの円盤板に狭持されつつ円筒体31の円周方向に配置してタービン32を構成している。このタービン32は円筒体31の軸長方向に2段配設している。
【0039】
上記の2段状のタービン32のそれぞれの外周囲にはケーシング6を配設している。ケーシング6は、タービン32の外周及び上下をほぼ被う形状である。ケーシング6のタービン32に対する配置は、水平方向に2分割したケーシング6をタービン32に対して左右から挟み込むようにして行っている。また、その位置決めは上下方向に延びる帯板状の複数のフレーム61を外周囲に配置して2個のケーシング6を上下に連結すると共に、各フレーム61の上下端部を下部プレート4及び上部プレート5に固定して行っている。
【0040】
ケーシング6はそれぞれ所定の4箇所に後述する駆動ノズル7を固定し、駆動ノズル7から噴射した圧搾エアーをケーシング6の側面形状によりブレード32aの湾曲部に当たるように調整している(図4の矢印f)。また、各ケーシング6はタービン32を回転させた後の圧搾エアーを回収する矩形筒状の回収パイプ62を4本備えている。この回収パイプ62はケーシング間を上下に連結すると共に上側に延びて上端を上部プレート5に接続している。なお、上部プレート5及びハウジング2の上カバー23に圧搾エアーが通過する開孔が形成されており、上カバー23には排気管23aを接続している。
【0041】
インペラー33は円管状の基部に2枚の羽根を内部に突出するように配設して構成し、円筒体31の上方と下方の2箇所に配設している。インペラー33は上面視において右回転(図4の矢印r)した場合に水や沈殿物等を上方に送る向き(図2の矢印u)、すなわち、右回転側が斜め下向きになるように設定している。なお、インペラー33の羽根数や形状は使用環境等により適宜に変更可能である。
【0042】
駆動ノズル7には給気管71が配管されており、ロータ3のタービン32に圧搾エアーを噴射し、ロータ3の回転駆動源を構成している。駆動ノズル7はケーシング毎に4個が接続し、2段のケーシング6において合計8個が接続している。全ての給気管71は作業台Wに設置したコンプレッサーCに接続しており、上カバー23を経て所定の駆動ノズル7に接続している。なお、駆動ノズル7の配置位置や個数は、ロータ3の回転数や本ポンプ1のトルクを調整するために適宜に変更可能であり、例えば、ケーシング6に対する配置位置数を増減したり、1の配置位置に対して複数の駆動ノズル7を接続したりしても良い。
【0043】
また、上述したように、駆動ノズル7から噴射された圧搾エアーを回収して排気する合計4本の回収パイプ62をケーシング6に配設している。回収パイプ62は上部プレート5及び上カバー23を通過して排気管23aと連通し、排気管23aは作業台Wまで延長している。
【0044】
本ポンプ1の吸引口31aに接続する吸水パイプ8Bの下端には、本ポンプ1と共に揚水装置Aを構成する椀体9を配設している。椀体9は、下面側を開放した有低筒状を成すと共に内部中央に管体91を配置し、この管体91を吸水パイプ8Bの外周部に二重管構造となるように外装して全体を取り付けている。椀体9は、この取り付け態様により吸水パイプ8Bのパイプ軸方向への平行移動が自在(以下、「上下動自在」と定義して用いる。)となっている(図5の矢印m1)。
【0045】
椀体9の開口縁には、椀体外周部に対してガイド(図示省略)を介して上下動自在となるカバー体92を配設している。カバー92の下端開口縁には、U字状に折り曲げ形成した棒体を周回状に配設して成り、濾過手段として機能する濾過部92aを配設している。濾過部92aは、椀体9の下端が湖底Bに突き刺さったり、又は密着状態となったりすること防止するため下端側をU字状の棒体の曲げ部分とし、さらに、大きなゴミ(例えば、礫、小枝、葉、小魚、等)の通過を阻止すると共に水が通過し得る隙間をもって複数のU字状の棒体を配列している。なお、濾過部92aは、前記のゴミ等の通過を阻止できれば、適宜に柵状、網目状、格子状、又は亀甲状に変更しても良い。
【0046】
また、カバー体92は、湖底Bへの密着状態となった場合にその状態を解消するワイヤー92bを配設している。このワイヤー92bは、作業台Wからの操作によりカバー体92を上下動(図5の矢印m2)させることができる上、カバー体92が上死点に到達すれば、椀体9も上下動(図5の矢印m1)させることができる。
[本実施例の作用]
【0047】
上記構成の本ポンプ1は、作業台Wに設置したコンプレッサーCによって送気する圧搾エアーを駆動ノズル7からタービン32に噴射してロータ3を回転させ、インペラー33を回転させて駆動する。なお、本ポンプ1の駆動時の自転は、ロータ3の回転軸の傾斜、及びハウジング2の外周に配設した姿勢ノズル22からの圧搾エアーの噴射によって防止する。
【0048】
本ポンプ1は、上記のようにタービン32をケーシング6で被うと共にケーシング6の複数の位置に駆動ノズル7を配置している。この構成により、駆動ノズル7からの圧搾エアーの噴射流路を限定してタービン32を効率よく回転させることが可能であり、ポンプとしての高揚程を維持している。また、各駆動ノズル7において、噴射圧を適宜に調整することが可能であるため、ロータ3の回転数やトルクの制御も容易となっている。
【0049】
加えて、本ポンプ1の駆動時にはハウジング内部に圧搾エアーを噴射しているために内圧が上昇する結果、ハウジング内部への浸水が防止されることとなる。
【0050】
本ポンプ1の配置状況や能力をより具体的に詳述すれば、水深30〜50mのダムや湖沼に配置して使用することが好適であり、各ノズルの噴射圧は0.6〜0.8Mpaに設定すれば、ロータ3の回転数は3000〜4000rpmとなる能力を有する。
【0051】
揚水装置Aは、本ポンプ1の駆動によって駆動して湖水や沈殿物等を湖底Bから作業台Wまでの引き上げ作業を実施する。
【0052】
また、揚水装置Aは、吸水パイプ8Bの下端側に椀体9を配設し、その全体やカバー体92の上下動によって開口部を湖底Bに密着状態とならない程度に当接している。そして、この状態で駆動するため、椀体9の開口部が対向する部分の沈殿物等を主に吸引する。また、同時に濾過部92bの隙間から周囲の湖水も共に吸引し、大きめのゴミの濾過部92bの通過を阻止して本ポンプ1の目詰まり等を防止する。なお、椀体9及びカバー体92は上記吸引により沈殿物等が減少すれば、自重によって降下することとなる。
【0053】
揚水装置Aは、所定位置における沈殿物等の引き上げ作業が終了すれば、椀体9の湖底Bへの当接状態を解き、順次に全体を移動させて引き上げ作業を実施する。
【符号の説明】
【0054】
A 揚水装置
1 本ポンプ
2 ハウジング
21 底面部
22 姿勢ノズル
22a 給気管
23 上カバー
23a 排気管
3 ロータ
31 円筒体
31a 吸引口
31b 吐出口
32 タービン
32a ブレード
33 インペラー
4 下部プレート
41 軸受
5 上部プレート
51 軸受
6 ケーシング
61 フレーム
62 回収パイプ
7 駆動ノズル
71 給気管
8A 送水パイプ
8B 吸水パイプ
9 椀体
91 管体
92 カバー体
92a 濾過部
92b ワイヤー
W 作業台
C コンプレッサー
B 湖底
S 水面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に軸回転自在に保持すると共に両端開口を外部に連通させた円筒状のロータと、
該ロータの外周側に形成したタービンと、
該ロータの内周側に形成したインペラーと、
前記ハウジング内に配置して外部供給源からの圧搾エアーを前記タービンのブレードへ噴射させるノズルと、から成り、
前記ロータの一端開口側を吸引口とし、かつ他端開口側を外部系への吐出口としたことを特徴とする水中ラインポンプ。
【請求項2】
タービンに対応させる1又は2以上のノズルを配置したことを特徴とする請求項1記載の水中ラインポンプ。
【請求項3】
タービンをハウジング内に保持したケーシングで被ったことを特徴とする請求項1、又は2記載の水中ラインポンプ。
【請求項4】
タービンと対応させるノズルとの構成ユニットを、ロータの軸方向に沿って多段に配設したことを特徴とする請求項1、2、又は3記載の水中ラインポンプ。
【請求項5】
請求項1乃至4記載の水中ラインポンプと、
該水中ラインポンプの吐出口に連結して水面上まで延長させた送水パイプと、
上記水中ラインポンプの吸引口に連結して湖底付近まで延長させた吸水パイプと、
該吸水パイプの先端開口縁部に該パイプ軸方向へ平行移動可能に取り付けた下方開放の椀体と、
該椀体の開口縁から周回状に延長配置した濾過手段と、
から成ることを特徴とする揚水装置。
【請求項6】
椀体のパイプ軸方向への平行移動が、手動操作によって、又は他所からの当接力によって移動するものであることを特徴とする請求項5記載の揚水装置。
【請求項7】
濾過手段が、礫、小枝、葉、の通過を阻止し得る開口形から成る柵状、網目状、格子状、又は亀甲状であることを特徴とする請求項5記載の揚水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−36868(P2012−36868A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179280(P2010−179280)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【特許番号】特許第4695223号(P4695223)
【特許公報発行日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(510219235)
【Fターム(参考)】