説明

水中探知装置、魚群探知機、水中探知方法及びプログラム

【課題】一の装置で、魚又は水深検出及び底質判別の両方を精度よく行うことができる水中探知装置、魚群探知機、水中探知方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】魚群探知機1は、送信部14で魚群探知用の送信信号と海底の底質判別用の送信信号とを生成する。生成した送信信号を送受波器16へ出力し、魚用超音波と海底用超音波を送波し、その反射波を受波する。このとき、魚群探知機1は、受波した反射波に係る海底エコーのパルス幅が、魚エコーのパルス幅よりも長くなるようにして、各エコーから、信号処理部19において魚群探知及び海底の底質判別を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中へ送波した超音波が反射した反射波に基づいて、水中探知を行う水中探知装置、魚群探知機、水中探知方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶に用いられる魚群探知機では、海底の底質(岩、石、砂等)を判別し、表示を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。底質判別は、超音波の送信パルスの海底エコーを解析することによって行われる。例えば、海底が岩や石等のように硬く起伏の大きい場所では、海底エコーの時間幅は長く、砂や泥等のように柔らかく平坦な場所では、海底エコーの時間幅は短くなる。画面上では、各底質との類似度や、各底質の中で最も類似する底質を表示することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4348415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、魚群探知機は、魚群を精度よく探知することを主とした目的としているため、送波する超音波は、送信パルス幅を短くして、距離分解能が高くなるようにしてあるが、送信パルス幅を短くした場合、エネルギーが低下し、探知距離が低下することで深深度での底質判別が困難となる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、一の装置で、魚又は水深検出及び海底の底質判別の両方を精度よく行うことができる水中探知装置、魚群探知機、水中探知方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る水中探知装置は、第1生成手段と、第2生成手段と、出力手段と、水中検出手段と、底質判別手段とを備える。第1生成手段は、第1送信信号を生成する。第2生成手段は、第1送信信号よりも長いパルス幅の第2送信信号を生成する。出力手段は、送信信号に基づく超音波を水中へ送波し、水中で反射した反射波を受波して受信信号に変換する送受波器へ、第1及び第2生成手段が生成した送信信号を出力する。水中検出手段は、送受波器から出力された第1送信信号に係る第1受信信号に基づいて、魚又は水深を検出する。底質判別手段は、送受波器から出力された第2送信信号に係る第2受信信号に基づいて、海底の底質を判別する。
【0007】
この構成では、パルス幅がそれぞれ異なる魚又は水深検出用及び海底の底質判別用の超音波から、魚又は水深検出及び海底の底質判別を行う。魚又は水深検出用の超音波は、魚体長や魚種又は水深を検出するために、距離分解能を高くする、すなわち、パルス幅を短くする必要がある。逆に、底質判別用の超音波は、エネルギー(信号強度)を強くし、探知距離やSN比を向上させる、すなわち、パルス幅を長くする必要がある。そこで、底質判別用の超音波のパルス幅を、魚又は水深検出用の超音波のパルス幅より長くすることで、一の装置で、魚又は水深検出と底質判別との両処理を行うことが可能となる。
【0008】
本発明に係る水中探知装置において、第1生成手段と、第2生成手段と、出力手段と、水中検出手段と、設定手段とを備える。第1生成手段は、周波数が変化する第1送信信号を生成する。第2生成手段は、固定周波数の第2送信信号を生成する。出力手段は、送信信号に基づく超音波を水中へ送波し、水中で反射した反射波を受波して受信信号に変換する送受波器へ、前記第1及び第2生成手段が生成した送信信号を出力する。水中検出手段は、前記送受波器から出力された前記第1送信信号に係る第1受信信号に基づいて、魚又は水深を検出する。設定手段は、前記送受波器から出力された前記第2送信信号に係る第2受信信号に基づいて、海底の底質を判別する底質判別手段と、前記第1生成手段に、周波数変調を行って第1送信信号を生成させると共に、第1受信信号をパルス圧縮すると共に、パルス圧縮後の第1受信信号よりもパルス幅が長い第2送信信号を前記第2生成手段に生成させる。水中検出手段は、パルス圧縮された第1受信信号に基づいて、魚又は水深を検出する。
【0009】
この構成では、パルス圧縮した第1受信信号よりもパルス幅を長くして第2送信信号を生成すると共に、パルス圧縮した受信信号に基づいて魚又は水深検出を行う。魚又は水深検出用の超音波は、長い探知距離、精度のよい受信信号のSN比、及び高い距離分解能(魚群の識別能力)が要求される。しかし、距離分解能を高くするために超音波のパルス幅を短くすると、超音波のエネルギーが小さくなり、その結果、探知距離及びSN比が低下する。逆にパルス幅を長くすると、パルス幅より小さい魚を検出することができず、距離分解能が低下する。一方、海底の底質判別では、距離分解能が要求されず、また、海底は、反射波が散乱(二次反射や残響)する巨大(広域)な反射体であるので、送信信号を周波数変調して広帯域とすると、海底での反射波に含まれるノイズが増大する。そこで、魚群検出用の送信信号のみ周波数変調し、受信信号をパルス圧縮することで、エネルギーを低下させることなく、パルス幅を短くした超音波を送受したことと同様の効果を得ることができる。その結果、精度のよい魚又は水深検出及び海底の底質判別を行える。
【0010】
本発明に係る水中探知装置は、第1受信信号のフィルタ処理を行う第1フィルタと、第2受信信号のフィルタ処理を行う第2フィルタとを備える。第1フィルタは、第2フィルタよりも広い帯域幅を有する。
【0011】
この構成では、送信信号のパルス幅を長くすると、フィルタ帯域幅を狭くできるので、第2フィルタは、第1フィルタよりも狭い帯域幅とすることができ、その結果、第2受信信号のSN比を第1受信信号よりさらに向上させることができる。
【0012】
本発明に係る水中探知装置において、出力手段は、第1及び第2生成手段が生成した第1及び第2送信信号を、交互に出力する。
【0013】
この構成では、魚又は水深検出用の超音波と、海底の底質判別用の超音波とを交互に送波することで、一の送受波器により、魚又は水深検出と底質判別との両処理を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一の装置で、魚又は水深検出及び海底の底質判別の両方を精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係る魚群探知機の構成を模式的に示すブロック図
【図2】送信部の構成を模式的に示すブロック図
【図3】信号処理部の構成を模式的に示すブロック図
【図4】パルス幅T1とパルス幅T2との超音波を送波した場合の、エコー信号の対比を示すグラフ
【図5】パルス幅T1の超音波とパルス幅T2との超音波を送波した場合に得られたSN比の実験結果を示す図
【図6】魚群探知機において実行される処理の手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る水中探知装置、魚群探知機、水中探知方法及びプログラムの好適な実施の形態について図面を参照して説明する。以下では、魚群探知機について説明する。魚群探知機は、超音波パルス(以下、単に超音波という)を振動子から海底に向けて送波し、超音波が魚群や海底で反射した反射波を振動子で受波する。さらに、魚群探知機は、受波した反射波に対して演算処理を施した結果に基づいて、魚群や海底の画像(エコーデータ)を表示部に表示する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る魚群探知機の構成を模式的に示すブロック図である。魚群探知機1は、制御部(設定手段)10、記憶部11、操作部12、表示部13、送信部14、送受切替部15、送受波器16、受信部17、A/D変換器18及び信号処理部19備えている。
【0018】
記憶部11は、例えばROM(Read Only Memory)などの不揮発性メモリであり、必要なプログラム11A及び各種データを記憶する。操作部12は、オペレータから海底探知レンジ(海底深度)の設定等の指示入力等の各種操作を受け付ける。表示部13は、画面上の縦軸を深度方向とし、横軸を時間方向としたエコーデータの表示を行うものである。なお、表示部13は、魚群探知機1が備えていなくてもよく、例えば船舶に既に設置された表示装置を用いてもよい。
【0019】
制御部10は、例えばマイクロコンピュータなどを備え、記憶部11に記憶されるプログラム11Aを読み取り、操作部12からの各種操作に応じて、魚群探知機1を統括的に制御する。例えば、制御部10は、送信部14に対して後述する送信信号の送信周期及び海底探知レンジ等の設定、A/D変換器18のサンプリング周期の設定、信号処理部19への各種処理の実行指示を行う。
【0020】
送信部14は、トラップ回路を内蔵した送受切替部15を介して、制御部10から指示された送信周期で、生成した2つの送信信号を交互に送受波器16へ出力する。送信部14の構成については後にさらに詳述する。
【0021】
送受波器16は、船底等に配置され、複数の超音波振動子を備えている。送受波器16は、送信部14からの送信信号に基づいて、海中へ超音波を送波する。また、送受波器16は、送波した超音波が魚群等の物標や海底に反射することで生じる反射波を超音波振動子で受波し、反射波の強度に応じたエコー信号を生成して、送受切替部15を介して受信部17へ出力する。送受波器16は、魚群探知機1が備えたものではなく、既に船舶に搭載されている送受波器が用いられるようにしてもよい。以下では、魚に反射してなるエコー信号を魚エコー(第1受信信号)といい、海底に反射してなるエコー信号を海底エコー(第2受信信号)という。
【0022】
受信部17は、送受波器16からのエコー信号を増幅してA/D変換器18へ出力する。A/D変換器18は、エコー信号を所定のタイミングでサンプリングして、デジタル信号に変換し、信号処理部19へ出力する。サンプリングするタイミングは、深度方向の距離分解能に基づいて制御部10により設定される。
【0023】
信号処理部19は、デジタル化されたエコー信号をメモリ(不図示)に順次記録する。信号処理部19は、記録したエコー信号から周波数帯域以外のノイズ成分を除去するフィルタ処理を行い、魚群検出処理、海底検出処理及び底質判別処理を行う。信号処理部19が行った魚群検出処理、海底検出処理及び底質判別の結果等を示す情報は、表示部13に画面表示される。
【0024】
次に、送信部14について詳述する。図2は、送信部14の構成を模式的に示すブロック図である。送信部14は、魚群探知用信号生成部(第1生成手段)141、底質判別用信号生成部(第2生成手段)142及び送信タイミング制御部(出力手段)143を備えている。
【0025】
魚群探知用信号生成部141は、制御部10からの指示により、魚群探知用の送信信号として、FM(Frequency Modulation)チャープ信号を生成する。FMチャープ信号(第1送信信号)は、魚群探知に適した信号周波数を時間的に掃引させた信号であり、振幅が一定で、周波数が波形長に相当する時間の間に低域端周波数から高域端周波数まで変化する信号である。
【0026】
魚群探知用の超音波(以下、魚用超音波という)は、高い距離分解能(魚群の識別能力)が要求される。超音波のパルス幅が長い場合、パルス幅に比べて小さい魚等は検出できず、距離分解能が低下する。しかし、距離分解能を高くするために超音波のパルス幅を短くすると、超音波のエネルギーが小さくなり、SN比が低下し、魚を精度よく探知できない。そこで、魚群探知用信号生成部141が生成したFMチャープ信号に基づく魚用超音波を一定時間送信し、目標物(魚)で反射されてなる魚エコーにパルス圧縮を施すことによって、パルス幅が短く、強いエネルギーの超音波を送受したのと同じ効果を得ることができるため、魚群探知に適した超音波の送受が可能となる。なお、魚用超音波は、海中の深度を検出するための超音波としても使用可能である。
【0027】
底質判別用信号生成部142は、制御部10からの指示により、海底の底質判別用の送信信号として、固定周波数信号(第2送信信号)を生成する。底質判別用信号生成部142は、少なくともパルス圧縮後の魚エコーのパルス幅よりも長く、探知レンジに応じて決定するパルス幅の送信信号を生成する。底質判別は、海底エコーの特性を解析して、例えば、海底エコーのエネルギーが強い場合には海底の底質が固く、岩盤や岩礁などの硬質の海底であると判別される。海底エコーのエネルギーが弱い場合、海底の底質が柔らく、砂地などの海底であると判別される。従って、底質判別用の超音波(以下、海底用超音波という)は、魚用超音波とは異なり、距離分解能は不要となる一方、強いエネルギー及び高いSN比を必要とする。このため、底質判別用信号生成部142は、少なくともパルス圧縮後の魚エコーのパルス幅よりも長いパルス幅の送信信号を生成する。この送信信号が送受波器16へ出力されると、送受波器16は、生成された送信信号のパルス幅の超音波が送波される。
【0028】
なお、魚群探知用信号生成部141が固定周波数信号を生成し、その魚エコーをパルス圧縮せずに魚群探知を行う場合、底質判別用信号生成部142は、魚群探知用信号生成部141が生成する送信信号より長いパルス幅の送信信号を生成する。これにより、魚群探知機1は、魚用超音波よりも長いパルス幅の海底用超音波を送波することになる。
【0029】
送信タイミング制御部143は、魚群探知用信号生成部141及び底質判別用信号生成部142が生成した送信信号を、所定のタイミングで交互に、送受切替部15を介して送受波器16へ出力する。すなわち、魚群探知機1は、送受波器16から魚用超音波と海底用超音波とを交互に送波する。より具体的には、魚群探知機1は、魚用超音波を送波し、その反射波を受波した後、海底用超音波を送波し、その反射波を受波する。
【0030】
以下、信号処理部19の処理について詳細に説明する。図3は、信号処理部19の構成を模式的に示すブロック図である。信号処理部19は、底質判別処理部(底質判別手段)191、パルス圧縮部(設定手段)192、魚群検出部(水中検出手段)193及び表示処理部194を備えている。
【0031】
底質判別処理部191には、A/D変換器18からエコー信号が入力される。底質判別処理部191は、1回の測定分(1ping分)のエコー信号をメモリ(不図示)に記録し、以下に示す処理を1ping分のエコー信号を記録する度に行う。底質判別処理部191は、海底エコーに基づいて海底の底質を判別する処理を行う。底質の判別手法は特に限定されないが、例えば、海底エコーとリファレンスデータとのマッチング度(類似度)によって判別される。すなわち、底質判別処理部191は、入力されたエコー信号から海底深度を求め、この海底深度から所定時間範囲の(所定閾値以上のエネルギーを有する)エコー信号を海底エコーとし、リファレンスデータとパターンマッチングを行うことにより、類似度を算出する。マッチングの手法として、ファジィ推論やニューラルネットワーク等を用いてもよい。リファレンスデータは、泥、砂、石、岩等の複数種類のデータを用意しておく。このため、海底エコーには、強いエネルギー及び高いSN比が必要とされる。
【0032】
なお、海底深度の検出手法は、エコー信号が所定のエネルギー以上のタイミングを基準とする手法や、微分値が最も高くなるタイミングを基準とする手法、あるいは、送波した超音波のパルス幅に等しい波形をリファレンス信号として、エコー信号との相関を求め、相関値が最も高くなるタイミングを基準とする手法等、種々の手法を用いることができる。
【0033】
パルス圧縮部192は、魚エコーをパルス圧縮する。具体的には、パルス圧縮部192は、魚エコーとFMチャープ信号とのマッチドフィルタによる相関処理を行い、FMチャープ信号と同じ帯域のみを取り出し、他の帯域をカットすることで、魚エコーをパルス圧縮する。これにより、魚エコーの分解能が向上し、後段の魚群検出部193により魚を精度良く検出することができる。
【0034】
魚群検出部193は、既知の方法により、パルス圧縮後の魚エコーから魚群検出を行う。魚群の検出には、魚体長や魚種の判別、魚群までの水深などの検出が含まれる。魚エコーは、パルス圧縮部192のパルス圧縮により分解能が高められるため、魚群検出部193は、精度のよい魚群の検出を行える。魚群検出部193は、処理結果を表示処理部194へ出力する。
【0035】
次に、異なるパルス幅の超音波を送波した結果、得られるエコー信号について説明する。図4は、パルス幅T1とパルス幅T2との超音波を送波した場合の、エコー信号の対比を示すグラフである。なお、図4では、パルス幅T1<パルス幅T2である。図4(A)はパルス幅T1の超音波を送波した場合、図4(B)はパルス幅T2の超音波を送波した場合を示しており、上図が送信パルス、下図が受信パルスを示す。なお、図4は、説明の都合上、分かりやすく示したグラフであり、実際のエコー信号を示すものではない。また、図4は、エコー信号にパルス圧縮をしていない場合を示している。
【0036】
短いパルス幅の超音波を送波した場合、距離分解能が向上し、個々の魚の識別精度(魚体長や魚種の識別精度)が向上する。従って、図4(A)に示すように、パルス幅T1の超音波を送波した場合、パルス幅T2の超音波の場合より、精度のよい魚エコーを取得できるのが判る。魚群探知では、高い距離分解能(図4の横軸)を必要し、エネルギー(図4の縦軸)を必要としないため、短いパルス幅の超音波が適している。
【0037】
一方、長いパルス幅の超音波を送波した場合、反射波のエネルギー、探知距離やSN比が向上する。従って、図4(B)に示すように、パルス幅T2の超音波を送波した場合、パルス幅T1の超音波の場合より、エコー信号のエネルギーが強く、かつ、ノイズレベルが低下(SN比が向上)しているのが判る。海底の底質判別では、分解能を必要とせず、エネルギーを必要とするため、長いパルス幅の超音波が適している。また、パルス幅T1とパルス幅T2の何れの場合であっても、海底エコーから得られる海底の特徴(形状)が損なわれていないことが判る。
【0038】
次に、長いパルス幅の超音波を送波することで、SN比が向上することについて説明する。図5は、パルス幅T1の超音波とパルス幅T2との超音波を送波した場合に得られたSN比の実験結果を示す図である。例えば、探知レンジを100[m]とした場合、1.0[ms]のパルス幅T1の超音波を送波していたところ、3.0[ms]のパルス幅T2の超音波を送波することで、SN比が約4.8[dB]向上していることを示している。また、受信帯域幅はパルス幅の逆数に比例するため、1.0[ms]のパルス幅T1の超音波に対しては、受信フィルタ(第1フィルタ)の帯域幅を1.5[kHz]としていたところ、3.0[ms]のパルス幅T2の超音波に対しては、受信フィルタ(第2フィルタ)の帯域幅を0.5[kHz]となる。フィルタの帯域が狭くなると、ノイズ成分が減るため、SN比が約4.8[dB]向上していることを示している。この結果、SN比がトータルで、約9.5[dB]のSN比が向上していることを示している。このように、パルス幅T2をより長くすることで、パルス幅T1の場合よりSN比が向上させることが可能である。
【0039】
以下に、魚群探知機1における動作について説明する。図6は、魚群探知機1において実行される処理の手順を示すフローチャートである。図6に示す処理は、制御部10が記憶部11に記憶されるプログラム11Aを読み取ることで実行される。
【0040】
制御部10は、送受波器16から魚用超音波を送波し、その反射波を受波する(S1)。詳しくは、制御部10は、送信部14において、FMチャープ信号を生成し、送受波器16へ出力することで、魚用超音波を送波する。また、制御部10は、反射波を受波した送受波器16から出力される魚エコーを信号処理部19でパルス圧縮する。次に、制御部10は、魚エコーに基づいて、魚群探知を行う(S2)。
【0041】
続いて、制御部10は、送受波器16から海底用超音波を送波し、その反射波を受波する(S3)。このとき、制御部10は、送波する海底用超音波のパルス幅を、パルス圧縮後の魚エコーのパルス幅よりも長くする。制御部10は、反射波を受波した送受波器16からの海底エコーに基づいて、信号処理部19で海底の底質判別を行う(S4)。そして、制御部10は、本処理を終了する。
【0042】
以上説明したように、本実施形態では、魚群探知機1は、異なるパルス幅の超音波をそれぞれ受波して、魚群探知と、海底の底質判別とを行う。魚群探知と、海底の底質判別とは、求める特性が異なるため、受波する反射波のパルス幅を異ならせることで、一の装置で、魚群探知と、海底の底質判別とを行うことが可能となる。
【0043】
なお、魚群探知機1の具体的構成などは、適宜設計変更可能であり、上述の実施形態に記載された作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、上述の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0044】
送信部14は、複数周波数の送信信号を生成可能であり、2種類以上の異なる周波数の送信信号を送信する構成であってもよい。例えば、魚群探知機1は、魚用超音波として40kHz〜80kHzのFMチャープ信号と175kHz〜225kHzのFMチャープ信号とを交互に送信し、または、低周波60kHzの固定周波数信号と200kHzの固定周波数信号とを交互に送信してもよい。また、魚群探知機1は、海底用超音波として60kHzの固定周波数信号と200kHzの固定周波数信号とを交互に送信するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1−魚群探知機、10−制御部、11−記憶部、12−操作部、13−表示部(表示器)、14−送信部、15−送受切替部、16−送受波器、17−受信部、18−A/D変換器、19−信号処理部、141−魚群探知用信号生成部、142−パルス圧縮部(第1生成手段)、142−底質判別用信号生成部、143−送信タイミング制御部、191−底質判別処理部、193−魚群検出部、194−表示処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1送信信号を生成する第1生成手段と、
前記第1送信信号よりも長いパルス幅の第2送信信号を生成する第2生成手段と、
送信信号に基づく超音波を水中へ送波し、水中で反射した反射波を受波して受信信号に変換する送受波器へ、前記第1及び第2生成手段が生成した送信信号を出力する出力手段と、
前記送受波器から出力された前記第1送信信号に係る第1受信信号に基づいて、魚又は水深を検出する水中検出手段と、
前記送受波器から出力された前記第2送信信号に係る第2受信信号に基づいて、海底の底質を判別する底質判別手段と、
を備えることを特徴とする水中探知装置。
【請求項2】
周波数が変化する第1送信信号を生成する第1生成手段と、
固定周波数の第2送信信号を生成する第2生成手段と、
送信信号に基づく超音波を水中へ送波し、水中で反射した反射波を受波して受信信号に変換する送受波器へ、前記第1及び第2生成手段が生成した送信信号を出力する出力手段と、
前記送受波器から出力された前記第1送信信号に係る第1受信信号に基づいて、魚又は水深を検出する水中検出手段と、
前記送受波器から出力された前記第2送信信号に係る第2受信信号に基づいて、海底の底質を判別する底質判別手段と、
前記第1生成手段に、周波数変調を行って第1送信信号を生成させると共に、第1受信信号をパルス圧縮すると共に、パルス圧縮後の第1受信信号よりもパルス幅が長い第2送信信号を前記第2生成手段に生成させる設定手段と、
を備え、
前記水中検出手段は、
パルス圧縮された第1受信信号に基づいて、魚又は水深を検出する
ことを特徴とする水中探知装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水中探知装置であって、
第1受信信号のフィルタ処理を行う第1フィルタと、
第2受信信号のフィルタ処理を行う第2フィルタと
を備え、
前記第1フィルタは、
前記第2フィルタよりも広い帯域幅を有する
ことを特徴とする水中探知装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一つに記載の水中探知装置であって、
前記出力手段は、
前記第1及び第2生成手段が生成した第1及び第2送信信号を、交互に出力する
ことを特徴とする水中探知装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一つに記載の水中探知装置と、
該水中探知装置の前記水中検出手段による検出結果、及び底質判別手段による判別結果を表示する表示器と
を備えることを特徴とする魚群探知機。
【請求項6】
水中へ送波した超音波が反射した反射波に基づいて、水中探知を行う水中探知方法において、
第1送信信号を生成し、
前記第1送信信号よりも長いパルス幅の第2送信信号を生成し、
送信信号に基づく超音波を水中へ送波し、水中で反射した反射波を受波して受信信号に変換する送受波器へ、生成した送信信号を出力し、
前記送受波器から出力された前記第1送信信号に係る第1受信信号に基づいて、魚を検出し、
前記送受波器から出力された前記第2送信信号に係る第2受信信号に基づいて、海底の底質を判別する
ことを特徴とする水中探知方法。
【請求項7】
水中へ送波した超音波が反射した反射波に基づいて、水中探知を行うコンピュータで実行されるプログラムにおいて、
コンピュータを、
第1送信信号を生成する第1生成手段、
前記第1送信信号よりも長いパルス幅の第2送信信号を生成する第2生成手段、
送信信号に基づく超音波を水中へ送波し、水中で反射した反射波を受波して受信信号に変換する送受波器へ、前記第1及び第2生成手段が生成した送信信号を出力する出力手段、
前記送受波器から出力された前記第1送信信号に係る第1受信信号に基づいて、魚又は水深を検出する水中検出手段、及び、
前記送受波器から出力された前記第2送信信号に係る第2受信信号に基づいて、海底の底質を判別する底質判別手段
として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−225651(P2012−225651A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90436(P2011−90436)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】