説明

水中油型睫用化粧料

【課題】睫用化粧料において、根元が太いボリューム効果及び、先端にいくほど鋭く長いシャープロング効果があり、化粧膜の均一性に優れた水中油型睫用化粧料を提供する。
【解決手段】次の成分(A)〜(D);(A)キャンデリラレジン(B)融点が60℃以下である固形またはペースト状の長鎖アルキル変性オルガノポリシロキサン又は長鎖アルコキシ変性オルガノポリシロキサン(C)被膜形成性エマルションポリマー(D)成分(A)、(B)以外のワックスを含有することを特徴とする水中油型睫用化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曳糸性を有する水溶性高分子と、融点が60℃以下である常温で固形またはペースト状の長鎖アルキル変性オルガノポリシロキサン又は長鎖アルコキシ変性オルガノポリシロキサンとを配合した睫用化粧料に関し、より詳しくは、根元が太いボリューム効果及び、先端にいくほど鋭く長いシャープロング効果があり、化粧膜の均一性の高い水中油型睫用化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水中油型睫用化粧料は、睫への密着性を高めたり、睫を太く目立たせたり、睫をカールするなどして目元を際立たせるため、付着性の高いワックス類や樹脂類、及び被膜形成性エマルションポリマーを配合していた(例えば、特許文献1参照)。また、カール効果と同時に更なるボリューム効果を得るために、キャンデリラレジン等の油溶性樹脂を配合する技術が開示されている(例えば、特許文献2、3参照)。更に、キャンデリラレジン等の油溶性樹脂とポリプロピレン等の繊維を配合することにより、睫を長くみせ、目元を際立たせる技術が開示されている(例えば、特許文献4参照)。一方、通常、化粧料において、増粘剤や顔料分散剤として用いられている高重合度ポリエチレングリコールを睫用化粧料に用いてそのボリュームを向上させ、かつ長く見せる効果を得る技術(例えば、特許文献5参照)やボリューム・カール効果を損なわずに、滑らかさを付与するため、シリコーンワックスを添加するなどの試みもなされた(例えば、特許文献6)。さらに、α―オレフィン・ビニルピロリドン共重合体と曳糸性水溶性高分子を配合することで、睫一本一本にボリュームを与え、さらにロングラッシュ効果を演出する技術も検討されてきた(例えば、特許文献7参照)。
【特許文献1】WO041087078
【特許文献2】特開2005−68056号公報
【特許文献3】特開2002−338436号公報
【特許文献4】特開2004−83577
【特許文献5】特開平11−79940号公報
【特許文献6】特願2006−92735号公報
【特許文献7】特開2005−306853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1〜3の技術では睫を太く見せる効果を演出するために、ワックスや油溶性樹脂等を高濃度の配合が必要であった。それにより、束付き(睫同士の付着が強くなること)など使用性上の問題や塗膜の柔軟性が乏しいため、ごわつきや負担感を感じる等の問題があった。また、特許文献6の技術では、滑らかさが向上し、重ね付けがしやすくなることにより自然なロング感は得られるが、その効果は十分満足の行くものではなかった。さらに、特許文献5の技術では化粧膜の持続性に乏しいといった問題点があり、特許文献4の技術では、繊維同士が絡みあい、束付きや枝付きをしたり、塗布膜はがれなどの問題点もあった。また、特許文献7の技術では、睫一本一本を太くし、ロングラッシュ効果を演出することはできるが、滑らかさに欠けるため、重ね塗りをすると、睫の先端がシャープになりにくいといった問題点があった。
このため、重ね塗りがしやすく、束付きや枝付きのないボリューム及び睫の先端に行くほど細くて長いシャープロング効果、そして塗布膜はがれなどのない化粧持ちに優れた睫用化粧料の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
かかる実情において、本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、曳糸性水溶性高分子と融点60℃以下の固形またはペースト状の長鎖アルキル変性オルガノポリシロキサン又は長鎖アルコキシ変性オルガノポリシロキサンとを配合することにより、上記問題点を解決し、根元が太いボリューム効果と、先端にいくほど鋭く長いシャープロング効果、及びその持続性に優れた水中油型睫用化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
さらに本発明者らは、被膜形成性ポリマーエマルションを化粧料中に固形分で0.1〜30質量%配合することにより重ね塗りがしやすく、化粧膜の均一な水中油型睫用化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は次の成分(A)、(B)
(A)曳糸性を有する水溶性高分子、
(B)融点が60℃以下である常温で固形またはペースト状の長鎖アルキル変性オルガノポリシロキサン又は長鎖アルコキシ変性オルガノポリシロキサン
を配合することを特徴とする水中油型睫用化粧料を提供するものである。
【0006】
また、更に成分(C)として被膜形成性ポリマーエマルションを固形分で0.1〜30質量%配合することを特徴とする水中油型睫用化粧料を提供するものである。
【0007】
また、更に成分(D)として、成分(B)以外のワックスを配合することを特徴とする水中油型睫用化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、根元が太いボリューム効果と、先端にいくほど鋭く長いシャープロング効果、及びその持続性に優れ、重ね塗りがしやすく、化粧膜の均一な睫用化粧料を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に使用される成分(A)について説明する。この曳糸性を有する水溶性高分子とは、水に1%溶解したものに25℃において直径3mmの金属棒を1cm針入して垂直に引き上げたとき、3cm以上の糸ひき(溶液が金属棒に付着したまま切れないこと)が起こる成分である。成分(A)は、通常化粧料に用いられるものであれば、特に制限されず使用することができる。例えば、高重合度ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。高重合度ポリエチレングリコールの市販品としては、ポリオックスWSR−N―12K(分子量:100万)(AMECHOL社製)、ポリオックスWSR−N−60K(分子量:200万)、ポリオックスWSR−301(分子量:400万)、ポリオックスWSR COAGULANT(分子量:500万)、ポリオックスWSR−303(分子量:700万)(以上ユニオンカーバイト社製)が例示でき、ポリアクリル酸ナトリウムの市販品としては、アロンビス S(日本純薬社製)が例示でき、カルボキシメチルセルロースナトリウムの市販品としては、CMCダイセル1170、CMCダイセル1180、CMCダイセル1270、CMCダイセル1280、CMCダイセル1290、CMCダイセル1350、CMCダイセル1380(以上ダイセル化学工業社製)が例示でき、ヒアルロン酸ナトリウムの市販品としては、ヒアルロン酸FCH121−S、ヒアルロン酸FCH201S、ヒアルロン酸FCHSU−S(以上紀文フードケミファ社製)、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム(資生堂ファインケミカル事業部製)が例示でき、ポリビニルピロリドン、の市販品としては、LUVISKOL K−90(バディッシュ社製)が例示でき、ポリビニルアルコールの市販品としては、PVA−205、PVA−217、クラレポバール PVA124(以上クラレ社製)、PVA−EG25、PVA−EG40、PVA−GL05S、PVA−EG05、(以上日本合成社製)が例示できる。中でも、高重合ポリエチレングリコールがシャープロング効果及びその化粧持続性の点で好ましく、分子量が10万〜150万であると更に好ましい。これらの曳糸性を有する水溶性高分子は必要に応じ一種または二種以上を組み合わせて用いられる。
【0010】
成分(A)の配合量は、0.01〜0.5質量%(以下単に「%」で示す。)が好ましく、0.02〜0.25%がより好ましい。この範囲であれば、先端が鋭く長いシャープロング効果、化粧持続性の点で満足のいくものが得られる。
【0011】
本発明に使用される成分(B)融点60℃以下である常温で固形またはペースト状長鎖アルキル変性オルガノポリシロキサン又は長鎖アルコキシ変性オルガノポリシロキサンは、通常化粧料においてはべたつきがなくさっぱりとした使用感が得られるもので、本発明においては、付着性の向上や束付きを低減させる効果を有している。また、睫表面にフィルムを形成し、残留性に優れることから、ボリューム効果の演出にも優れるものである。更に成分(B)を含有する化粧料に、他の油剤を配合する場合、長鎖アルキル基及び/又は長鎖アルコキシ基を有しているため、炭化水素油やエステル油等の一般的に化粧料に用いられる無極性あるいは低極性の油剤との親和性が高く油相での均質化が得られ、その結果、化粧料の経時安定性も保持できる。従って、流動パラフィンやワセリン、ミリスチン酸イソプロピル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルなどと容易に溶解し、それらの一部としてあるいは代りとして用いることができ、使用感、経時安定性の向上に効果が期待されるものである。このような成分(B)は下記一般式(1)又は(2)で表される長鎖アルキル及び/又は長鎖アルコキシ変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0012】
【化1】

【0013】
【化2】

【0014】
[式中、R〜Rは同一でも異なっていても良く、CH-、C2n+1O-又はC2n+1-(nは14〜22の整数である)で表されるものであり、p、q、rは各々1〜1500の整数、q+rは2〜2000の範囲である。但し、R=R、R=Rの場合はR〜RがCH-のものを除く]
【0015】
成分(B)の長鎖アルキル及び/又は長鎖アルコキシ基はn=14〜22、が好ましく、16〜18が特に好ましい。このような成分としては、例えば、ステアリルジメチコン、ステアロキシメチルポリシロキサン等が挙げられ、市販品として、Dow Corning 2503 COSMETIC WAX(Dow Corning社製)、Abil Wax9800(Goldschmidt社製)、Abil Wax2434(Goldschmidt社製)、SilCare41M65 StearylDimethicone(Clariant LSM社製)、Wacker−BeiailSDM 5055(Wacker-chemie社製)、Silsoft W−18(OSI Specialties社製)等が挙げられる。これらの常温で固形またはペースト状長鎖アルキル変性オルガノポリシロキサン又は長鎖アルコキシ変性オルガノポリシロキサンは、必要に応じ、一種又は二種以上を使用することができる。
【0016】
本発明の成分(B)の配合量は、0.1〜20%が好ましく、更に0.5〜10%であることがより好ましい。この範囲であれば、根元が太いボリューム効果、滑らかに伸びることにより成分(A)とあいまったロング効果、及びその化粧持続性の点で満足のいくものが得られる。
【0017】
本発明の水中油型睫用化粧料に、更に成分(C)の被膜形成性ポリマーエマルションを配合することにより、付着性や持続性、安定性が向上する。成分(C)の被膜形成性エマルションポリマーとしては、高分子化合物を水等の水性溶媒にに分散してあるもので、通常化粧料に使用されるものであれば特に制限されず、いずれのものも使用することができる。例えば、アクリル酸アルキル共重合体エマルション、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルション、ポリ酢酸ビニルエマルション、ビニルピロリドン・スチレン共重合体エマルション、シリコーン系ポリマーエマルション等が挙げられ、市販品としては、ヨドゾール32A707、YODOSOL GH810F、YODOSOL GH800F(日本エヌエスシー社製)、プレキシトールB−500(ROHM GMBH社製)、リカボンドET−F527(中央理科工業社製)、ビニブラン1080、ビニブラン1128C,ビニブラン1080M,ビニブラン1080T、ビニブランGV−5651、ビニブラン1108S/W(日信化学工業株式会社)、ANTARA430(ISP社製)が挙げられるが、中でも酢酸ビニルエマルションポリマーが望ましい。これらのポリマーエマルションは、必要に応じ、一種又は二種種以上を使用することができる。
【0018】
本発明に使用される成分(C)の配合量は、ポリマー固形分として、0.1〜30%が好ましく、1〜25%が更に好ましい。この範囲であれば、付着性や持続性、安定性が良好な水中油型睫用化粧料が得られる。
【0019】
更に本発明は、成分(D)として、成分(B)以外のワックスを配合することにより、付着性や持続性が向上する。成分(D)としては、通常化粧料に使用されるものであれば特に制限されず、融点60〜95℃のものであれば、いずれのものも使用することができ、必要に応じ、一種又は二種以上用いることができる。例えば、エチレン・プロピレンコポリマー、ポリエチレンワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ミツロウ等が挙げられる。市販品としては、EPSワックス(日本ナチュラルプロダクツ社製)、PERFORMALENE 655、PERFORMALENE 500(ニューフェーズテクノロジー社製)、PM−WAXX82(日興リカ社製)、OZOKERITE WAX SP−273P(STRAHL & PITSCH社製)、ムルチワックスW−445(SONNEBORN社製)、NC−1630キャンデリラワックス(セラリカ野田社製)、精製キャンデリラワックスSR−3、高融点キャンデリラワックスFR100、精製キャンデリラワックスMD−21、精製カルナウバワックス1号(日本ナチュラルプロダクツ社製)、WHITE BEES WAX(三木化学社製)、BEES WAX S(クローダ社製)等が挙げられる。
【0020】
本発明に使用される成分(D)の配合量は、0.1〜25%が好ましく、更に1〜15%であることがより好ましい。この範囲であれば、睫をカールさせたり、重ね付けにより太く見せ、ボリューム感の演出効果の点で満足のいくものが得られる。
【0021】
本発明に使用される必須成分として、前記の他水性成分や界面活性剤も挙げられる。
【0022】
水性成分としては、水及び水に可溶な成分であれば何れでもよく、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、ソルビトール、マルチトール、ショ糖、でんぷん糖、ラクチトール等の糖類、グアーガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー等の成分A以外の水溶性高分子、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、乳酸ナトリウム等の塩類、アロエベラ、ウィッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液等及び水が挙げられる。
【0023】
本水中油型睫用化粧料を形成するために必要な界面活性剤としては、化粧品一般に用いられている界面活性剤であればいずれのものも使用でき、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。非イオン界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビトールの脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラノリンのアルキレングリコール付加物、ポリオキシアルキレンアルキル共変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸のような脂肪酸の無機及び有機塩、アルキルベンゼン硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α−スルホン化脂肪酸塩、アシルメチルタウリン塩、N−メチル−N−アルキルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩、N−アシルアミノ酸塩、N−アシル−N−アルキルアミノ酸塩、ο−アルキル置換リンゴ酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、ポリアミン及びアルカノールアミン脂肪酸誘導体、アルキル四級アンモニウム塩、環式四級アンモニウム塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、アミノ酸タイプやベタインタイプのカルボン酸型、硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型のものがあり、人体に対して安全とされるものが使用できる。例えば、N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシルメチルアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸、N,N,N−トリアルキル−N−スルフォアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビス(ポリオキシエチレン硫酸)アンモニウムベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチル−1−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン、レシチン等が挙げられる。中でもソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸、レシチンが好ましく用いられる。
【0024】
本発明の水中油型睫用化粧料は、上記した成分の他に、通常化粧料に使用される成分、例えば、睫を長く見せる効果を付与するための繊維や、感触調整や着色の目的で粉体成分や、エモリエント成分として油性成分、紫外線吸収剤、保湿剤、ビニルピロリドン・酢酸ビニル共重合体等の水不溶性被膜形成性樹脂、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、香料、などを本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0025】
繊維としては、ナイロン、ポリエステル等の合成繊維、レーヨン等の人造繊維、セルロース等の天然繊維、アセテート人絹等の半合成繊維等が挙げられ、これらは特に限定されるものではなく、必要に応じて一種又は二種以上を用いることができる。また、これらの繊維は本発明の効果を妨げない範囲で一般油剤、シリコーン油、フッ素化合物、界面活性剤等で処理したものも使用することができる。
【0026】
油性成分としては、動物油、植物油、合成油等の起源、及び半固形油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、硬化油類、エステル油類、高級アルコール類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類等が挙げられる。具体的には、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン等の炭化水素類、オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のエステル類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキルメチルポリシロキサン・メチルポリシロキサン共重合体、架橋型オルガノポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体、デキストリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、イソステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等の油性ゲル化剤類等が挙げられる。
【0027】
粉体成分としては、板状、紡錘状、針状等の形状、粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類、等が挙げられる。具体的には、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化セリウム、二酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、合成セリサイト、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、酸化鉄コーティング雲母、酸化鉄雲母チタン、有機顔料処理雲母チタン、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体類、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン、ナイロン等の有機粉体類、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を用いることができる。また、これら粉体は一種又は二種以上の複合化したものを用いても良く、フッ素化合物、シリコーン系油剤、金属石ケン、ロウ、界面活性剤、油脂、炭化水素等を用いて公知の方法により表面処理を施したものであっても良い。
【0028】
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等、保湿剤としては、例えばタンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等、酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸等、美容成分としては、例えばビタミン類、消炎剤、生薬等、防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0029】
本発明の水中油型睫用化粧料としては、マスカラ、マスカラオーバーコート、マスカラ下地等が挙げられ、形態としては、乳液状、クリーム状等が挙げられる。
【0030】
本発明の水中油型睫用化粧料の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、成分(B)、(D)を含む油性成分と界面活性剤及び粉体を加熱混合し、同様に加熱混合した成分(A)、成分(C)及びその他の水溶性被膜形成剤を含む水性成分に加え、乳化、冷却、脱泡して容器に充填することにより、得ることができる。
【実施例】
【0031】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら制約されるものではない。
【0032】
実施例1〜5及び比較例1〜5 水中油乳化型マスカラ(クリーム状)
表1、表2に示す処方のマスカラを調製し、睫に塗布し、根元のボリューム効果、シャープロング効果、化粧効果の持続性、重ね塗りのしやすさ、化粧膜の均一性について下記の方法により官能評価を行った。その結果もあわせて表1、表2に示す。
【0033】
【表1】

【表2】

【0034】
(製造方法)
A.成分(1)〜(13)を110℃に加熱溶解し、成分(14)を加えて均一に混合する。
B.成分(15)〜(25)を均一に混合する。
C.AにBを加え、乳化する。
D.Cを容器に充填し、水中油乳化型マスカラを得た。
【0035】
下記評価項目について各々評価を行った。
(評価項目)
(a)化粧効果(根元のボリューム効果)
(b)化粧効果(シャープロング効果)
(c)化粧効果の持続性
(d)使用性(重ね塗りのしやすさ)
(e)化粧膜の均一性
【0036】
(評価方法)
化粧歴10年以上の官能検査パネル20名により、各試料を上記a〜eについて、下記絶対評価を用いて7段階に評価し、各試料ごとの評点の平均値を4段階判定基準を用いて判定した。但し、cについては、試料を使用後、パネルに通常の生活をしてもらい、6時間後の化粧効果について評価した。
【0037】
(7段階絶対評価基準)
(評点):(評価)
6:非常に良い
5:良い
4:やや良い
3:普通
2:やや悪い
1:悪い
0:非常に悪い
(4段階判定基準)
(評点の平均値) (判定)
5点を超える :◎
3点を超えて5点以下 :○
1.5点を超えて3点以下 :△
1.5点以下 :×
【0038】
本結果から明らかなように、本発明品である実施例1〜5の水中油乳化型クリーム状マスカラは、目元を際だたせる化粧効果(ボリューム効果、シャープロング効果)や化粧効果の持続性、重ね塗りのしやすさ、化粧膜の均一性のすべての点で優れた特性を有していた。一方、成分(A)、(B)を配合しない比較例1は化粧効果(シャープロング効果)や重ね塗りのしやすさ、そして化粧膜の均一性に満足できず、成分(B)を配合しない比較例2はボリューム効果や化粧膜の均一性に劣り、重ね塗りのしやすさにも満足できなかった。また、成分(B)の替わりに融点70℃以上のシリコーンワックスを配合した比較例3は化粧効果(シャープロング効果)や重ね塗りのしやすさが得られず、さらに、成分(B)の替わりに液状のシリコーン油を配合した比較例4は化粧効果(ボリューム効果)や化粧効果の持続性の点で満足のいくものが得られなかった。次に、成分Aの代わりに曳糸性を有しない水溶性高分子を用いた比較例5は、化粧効果(シャープロング効果)や化粧効果の持続性の点で満足のいくものが得られなかった。さらに、比較例6は、化粧効果(シャープロング効果)や使用性(重ね塗りのしやすさ)の点で満足のいくものが得られなかった。
【0039】
実施例6 水中油型マスカラ(クリーム状)
(成分) (%)
(1)ステアリン酸 3
(2)キャンデリラレジン *11 1
(3)ミツロウ 1
(4)ステアリルジメチコン*1 5
(5)エイコセン・ポリビニルピロリドン共重合体 *4 20
(6)ステアロキシメチルポリシロキサン *12 2
(7)自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 1
(8)ショ糖脂肪酸エステル 2
(9)モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン 1.3
(10)セスキオレイン酸ソルビタン 0.5
(11)ベンガラ 5
(12)無水ケイ酸*13 0.1
(13)無水ケイ酸*14 0.1
(14)トリエタノールアミン 1.2
(15)1,3−ブチレングリコール 8
(16)パラオキシ安息香酸エステル 0.2
(17)アクリル酸エマルションポリマー(固形分40%) *7 10
(18)酢酸ビニルエマルションポリマー(固形分50%) *8 0.5
(19)高重合ポリエチレングリコール*9 0.1
(20)酢酸トコフェロール 0.03
(21)精製水 残量
*11キャンデリラ樹脂E―1(日本ナチュラルプロダクツ社製)(樹脂分90%、遊離アルコール5%、遊離脂肪酸分2%、エステル分2%、炭化水素分1%、軟化点=47〜48℃)
*12 ABIL WAX 2434(ゴールドシュミット社製)
*13 サイリシア550(富士シリシア化学社製)
*14 AEROSIL 300(日本アエロジル社製)
(製法)
A.成分(1)〜(10)を110℃に加熱溶解し、成分(11)を加え、均一に混合する。
B.成分(12)〜(21)を均一に混合する。
C.AにBを加え、乳化する。
D.Cを容器に充填して水中油乳化型クリーム状マスカラを得た。
【0040】
実施例7 水中油型マスカラ(乳液状)
(成分) (%)
(1)ステアリン酸 2
(2)キャンデリラレジン *11 4
(3)ミツロウ 1
(4)ステアロキシメチルシロキサン *12 5
(5)自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 1
(6)ショ糖脂肪酸エステル 2
(7)モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン 1.3
(8)セスキオレイン酸ソルビタン 0.5
(9)ベンガラ 5
(10)レーヨンファイバー *17 2
(11)トリエタノールアミン 1.2
(12)1,3−ブチレングリコール 8
(13)パラオキシ安息香酸エステル 0.2
(14)アクリル酸エマルションポリマー(固形分40%) *7 10
(15)酢酸ビニルエマルションポリマー(固形分50%) *8 0.5
(16)ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体 *18 0.1
(17)酢酸トコフェロール 0.03
(18)精製水 残量
*17:レーヨンファイバー7D−2MM(中部パイル社製)
*18:PVP/VAE−735(ISP社製)
(製法)
A.成分(1)〜(8)を110℃に加熱溶解し、成分(9)を加え、均一に混合する。
B.成分(10)〜(18)を均一に混合する。
C.AにBを加え、乳化する。
D.Cを容器に充填して水中油乳化型乳液状マスカラを得た。
【0041】
実施例8 水中油型マスカラ(クリーム状)
(成分) (%)
(1)ステアリン酸 3
(2)キャンデリラレジン *11 1
(3)ミツロウ 1
(4)ステアリルジメチコン*1 5
(5)ステアロキシメチルポリシロキサン *12 2
(6)自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 1
(7)ショ糖脂肪酸エステル 2
(8)モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンン 1.3
(9)セスキオレイン酸ソルビタン 0.5
(10)ベンガラ 5
(11)雲母チタン 2
(12)ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末 0.5
(13)無水ケイ酸 0.1
(14)トリエタノールアミン 1.2
(15)ナイロンファイバー* 6 3
(16)1,3−ブチレングリコール 8
(17)パラオキシ安息香酸エステル 0.2
(18)高重合ポリエチレングリコール *19 0.5
(19)ヒアルロン酸ナトリウム*20 0.1
(20)アクリル酸エマルションポリマー(固形分40%) *7 10
(21)酢酸ビニルエマルションポリマー(固形分50%) *8 0.5
(22)シャクヤクエキス 0.03
(23)精製水 残量
*19:ポリオックスWSR N―60K(ユニオンカーバイト社製)(分子量200万)
*20:ヒアルロン酸FCH−121S(紀文フードケミファ社製)
(製法)
A.成分(1)〜(9)を110℃に加熱溶解し、成分(10)〜(13)を加え、均一に混合する。
B.成分(14)〜(23)を均一に混合する。
C.AにBを加え、乳化する。
D.Cを容器に充填して水中油乳化型マスカラを得た。
【0042】
以上のようにして得られた実施例6〜8の水中油乳化型マスカラは、根元が太いボリューム効果、先端にいくほど鋭く長いシャープロング効果、及びその持続性に優れ、重ね塗りがしやすく、化粧膜の均一性に優れた水中油型睫用化粧料であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)
(A)曳糸性を有する水溶性高分子、
(B)融点が60℃以下である常温で固形またはペースト状の長鎖アルキル変性オルガノポリシロキサン又は長鎖アルコキシ変性オルガノポリシロキサン
を配合することを特徴とする水中油型睫用化粧料。
【請求項2】
前記成分(A)の配合量が0.01〜0.5質量%、(B)の配合量が0.1〜20質量%であることを特徴とする請求項1に記載の水中油型睫用化粧料。
【請求項3】
前記成分(A)が、高重合度ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の水中油型睫用化粧料。
【請求項4】
請求項3に記載される成分(A)のうち、高重合度ポリエチレングリコールの分子量が10万〜150万である請求項1〜3の何れかの項に記載の水中油型睫用化粧料。
【請求項5】
更に成分(C)として被膜形成性ポリマーエマルションを配合することを特徴とする請求項1〜4の何れかの項に記載の水中油型睫用化粧料。
【請求項6】
更に成分(D)として、成分(B)以外のワックスを配合することを特徴とする請求項1〜5の何れかの項に記載の水中油型睫用化粧料。

【公開番号】特開2008−88112(P2008−88112A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271225(P2006−271225)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】