説明

水分散型樹脂、二液型熱硬化性樹脂組成物及びこれらの製造方法

【課題】取り扱いが容易で、且つ塗膜外観に優れるにもかかわらず、ポットライフに優れる二液型熱硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】二液型熱硬化性樹脂組成物の主剤に含有される水分散型樹脂であり、1分子中に複数のビニル基を有する多官能モノマー、酸基含有モノマー及び水酸基含有モノマーを含むモノマー混合物を2段以上の溶液重合に供することによって溶剤型樹脂を得、当該溶剤型樹脂を水分散させることにより得られ、モノマー混合物における前記多官能モノマーの割合が0.1質量%以上3質量%以下であり、固形分酸価が10mgKOH/g以上45mgKOH/g以下であり、固形分水酸基価が50以上200以下であり、不揮発分が45質量%であるときの粘度が50mPa・s以上10,000mPa・s以下であることを特徴とする水分散型樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分散型樹脂、及び当該樹脂を含む二液型熱硬化性樹脂組成物、並びにこれらの製造方法に関し、より特定的には、水性の二液型熱硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料分野において使用される硬化性樹脂組成物は、使用直前に2つ以上の成分を混合することなく使用する一液型のものと、2つ以上の成分を使用直前に混合して使用する多液型のものとに分けられる。多液型のもののうち最もよく利用されるものは、二液型のものである。
【0003】
二液型の硬化性樹脂組成物は、バインダー成分を含む主剤と、当該バインダー成分を硬化させるための硬化剤とからなる。特許文献1は、水酸基含有モノマーを含有するモノマー混合物を重合することによって得られるバインダー分散体を開示している。特許文献1に記載のバインダー分散体を含む主剤は、イソシアネート基を含有する硬化剤と反応させることで塗膜を形成することができる。
【0004】
また、特許文献2も特許文献1と同様に、水酸基含有樹脂とイソシアネート基とのウレタン結合による硬化反応を利用した2液型水性塗料組成物を開示している。
【特許文献1】特開2000−219711号公報
【特許文献2】特開平10−36767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のバインダー分散体は、溶剤に対して配合するモノマー混合物の割合が大きいため、得られる樹脂の粘度が高く、取り扱いが困難であるという問題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載の二液型水性塗料組成物は、含有する水分散型共重合体の重量平均分子量が20,000〜400,000と非常に大きいため、塗膜形成時に良好な外観が得られないという問題があった。
【0007】
ここで、上記特許文献1に記載のバインダー分散体及び特許文献2に記載の水分散型共重合体の分子量を小さくすれば、取り扱い易さ及び得られる塗膜の外観は改善されるが、当該樹脂の分散安定性が悪化し、これによりポットライフが悪化するおそれがあった。
【0008】
それゆえに、本発明の目的は、取り扱いが容易で、且つ塗膜外観に優れるにもかかわらず、ポットライフに優れる二液型熱硬化性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を行った。本発明者は、取り扱いを容易にするために、主剤に含まれる水分散型共重合体(水分散型樹脂)の分子量を小さくして粘度を低下させると、二液型熱硬化性樹脂組成物のポットライフが悪化することは、樹脂の分子間の凝集力が低下することが原因であると考えた。具体的には、水分散型樹脂の分子間の凝集力が低下すると、水分散型樹脂の分散安定性が低下し、水分散型樹脂と硬化剤との衝突を制御できなくなるために、ポットライフが悪化すると考えた。
【0010】
しかしながら、水分散型樹脂の分子量を大きくして前記凝集力を強くしすぎると、上述した特許文献の構成のように、得られる塗膜のフロー性が小さくなり、塗膜外観が悪化してしまう。
【0011】
このため、本発明者は、低粘度であっても所定の範囲の凝集力を有する水分散型樹脂を得るために検討を行った。その結果、多官能モノマーを所定量含むモノマー混合物を多段重合させることにより、取り扱いが容易で、且つ塗膜外観に優れるにもかかわらず、ポットライフに優れる二液型熱硬化性樹脂組成物を実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明に係る水分散型樹脂は、上記課題を解決するために、二液型熱硬化性樹脂組成物の主剤に含有される水分散型樹脂であり、1分子中に複数のビニル基を有する多官能モノマー、酸基含有モノマー及び水酸基含有モノマーを含むモノマー混合物を2段以上の溶液重合に供することによって溶剤型樹脂を得、当該溶剤型樹脂を水分散させることにより得られ、前記モノマー混合物における前記多官能モノマーの割合が0.1質量%以上3質量%以下であり、固形分酸価が10mgKOH/g以上45mgKOH/g以下であり、固形分水酸基価が50以上200以下であり、不揮発分が45質量%であるときの粘度が50mPa・s以上10,000mPa・s以下であることを特徴としている。
【0013】
上記構成によれば、低粘度であっても所定の範囲の凝集力を有すると考えられるため、取り扱いが容易で、且つ塗膜外観に優れるにもかかわらず、ポットライフに優れる二液型熱硬化性樹脂組成物を提供することができるという効果を奏する。
【0014】
本発明に係る水分散型樹脂では、前記溶液重合が2段であることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、工数を低減でき、生産効率を高めることができる。
【0016】
本発明に係る水分散型樹脂では、上記2段以上の溶液重合は、重合の段数をnとする場合、n段階に分けて加えられるモノマー混合物1〜nを、それぞれモノマー混合物1からnの順に加えて重合させることにより行われ、モノマー混合物1〜n−1とモノマー混合物モノマー混合物nとの質量比が5:5以上9:1以下の範囲内であることが好ましい。
【0017】
本発明に係る水分散型樹脂では、多官能モノマー全量における、モノマー混合物1〜n−1として使用する多官能モノマーの割合が80質量%以上100質量%以下の範囲内であることが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、得られる塗料のフロー性がより改善され、塗膜の平滑性が向上する。
【0019】
本発明に係る水分散型樹脂では、酸基含有モノマー全量における、モノマー混合物nとして使用する酸基含有モノマーの割合が90質量%以上100質量%以下の範囲内であることが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、当該樹脂粒子をより良好に水分散させることができるため、取り扱いがより容易で、且つ塗膜外観により優れ、ポットライフにより優れる二液型熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【0021】
本発明に係る水分散型樹脂では、水酸基含有モノマー全量における、モノマー混合物nとして使用する水酸基含有モノマーの割合が20質量%以上65質量%以下の範囲内であることが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、当該樹脂粒子をより良好に水分散させることができるため、取り扱いがより容易で、且つ塗膜外観により優れ、ポットライフにより優れる二液型熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【0023】
本発明に係る主剤は、上記課題を解決するために、水分散性を有するポリイソシアネートを硬化剤として含む二液型熱硬化性樹脂組成物に含まれる主剤であり、上記本発明に係る水分散型樹脂を含むことを特徴としている。
【0024】
上記構成によれば、取り扱いが容易で、且つ塗膜外観に優れるにもかかわらず、ポットライフに優れる二液型熱硬化性樹脂組成物を提供することができるという効果を奏する。
【0025】
本発明に係る二液型熱硬化性樹脂組成物は、上記課題を解決するために、上記本発明に係る水分散型樹脂を含む主剤と、水分散性を有するポリイソシアネートを含む硬化剤とを含有することを特徴としている。
【0026】
上記構成によれば、上記本発明に係る水分散型樹脂を含有するため、取り扱いが容易で、且つ塗膜外観に優れるにもかかわらず、ポットライフに優れる二液型熱硬化性樹脂組成物を提供することができるという効果を奏する。
【0027】
本発明に係る二液型熱硬化性樹脂組成物では、前記主剤中の水酸基に対する前記硬化剤中のイソシアネート基の当量比が1以上2以下であることが好ましい。
【0028】
上記構成によれば、熱硬化性樹脂組成物の硬化性をより向上させることができる。
【0029】
また、本発明に係る二液型熱硬化性樹脂組成物はトップコート塗料組成物であってもよく、また、ベースコート塗料組成物であってもよい。また、二液型熱硬化性樹脂組成物は中塗り塗料組成物であってもよく、また、プライマーサーフェーサーであってもよい。
【0030】
好ましくは、二液型熱硬化性樹脂組成物は、被塗装物表面に、中塗り塗料組成物を塗布して中塗り塗膜を形成する工程(1)と、中塗り塗膜を完全に硬化させることなく、当該中塗り塗膜上にベースコート塗料組成物、及びトップコート塗料組成物をウェットオンウェットで順次塗布し、ベースコート塗膜及びトップコート塗膜を形成する工程(2)と、工程(1)及び(2)によって得られた中塗り塗膜、ベースコート塗膜、及びトップコート塗膜を同時に加熱硬化する工程(3)とを備える複層塗膜形成方法に用いられる。
【0031】
本発明に係る水分散型樹脂の製造方法は、上記課題を解決するために、二液型熱硬化性樹脂組成物の主剤に含有される水分散型樹脂の製造方法であり、前記二液型熱硬化性樹脂組成物は、水分散性を有するポリイソシアネートを硬化剤として含み、1分子中に複数のビニル基を有する多官能モノマー、酸基含有モノマー及び水酸基含有モノマーを含むモノマー混合物を2段以上の溶液重合に供することによって溶剤型樹脂を得、当該溶剤型樹脂を水分散させる工程を含み、前記モノマー混合物における前記多官能モノマーの割合が0.1質量%以上3質量%以下であり、前記モノマー混合物の酸価が10mgKOH/g以上45mgKOH/g以下であり、前記モノマー混合物の水酸基価が50以上200以下であることを特徴としている。
【0032】
上記方法によれば、取り扱いが容易で、且つ塗膜外観に優れるにもかかわらず、ポットライフに優れる二液型熱硬化性樹脂組成物を提供し得る水分散型樹脂を製造することができるという効果を奏する。
【0033】
本発明に係る二液型熱硬化性樹脂組成物の製造方法は、上記課題を解決するために、主剤と、水分散性を有するポリイソシアネートを含む硬化剤とを含有する二液型熱硬化性樹脂組成物の製造方法であって、本発明に係る上記方法により水分散型樹脂を製造する工程と、硬化剤を、上記水分散型樹脂を含む主剤と混合する工程と、を含むことを特徴としている。
【0034】
上記方法によれば、取り扱いが容易で、且つ塗膜外観に優れるにもかかわらず、ポットライフに優れる二液型熱硬化性樹脂組成物を製造することができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、取り扱いが容易で、且つ塗膜外観に優れるにもかかわらず、ポットライフに優れる二液型熱硬化性樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の実施の一形態について説明すれば、以下の通りである。
【0037】
なお、本明細書では、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸又はメタクリル酸を意味し、同様に「(メタ)アクリレート」はアクリレート又はメタクリレートを意味し、「水分散型樹脂」とは、樹脂を水分散した、樹脂分散液を意味する。また、範囲を示す「A〜B」は、A以上B以下であることを示す。
【0038】
さらには、本明細書で挙げられている各種物性は、特に断りの無い限り後述する実施例に記載の方法により測定した値を意味する。また、本明細書では、「水酸基価」の単位については記載を省略しているが、その単位は「mgKOH/g」である。
【0039】
A.二液型熱硬化性樹脂組成物の構成
本発明に係る二液型熱硬化性樹脂組成物は、水分散型樹脂を含む主剤と、水分散性を有するポリイソシアネートを含む硬化剤とを含有する。
【0040】
水分散型樹脂は、溶剤型樹脂を水分散させることにより得られ、当該溶剤型樹脂は、1分子中に複数のビニル基を有する多官能モノマー、酸基含有モノマー及び水酸基含有モノマーを含むモノマー混合物を2段以上の溶液重合に供することによって得られる。
【0041】
モノマー混合物における多官能モノマーの割合は、0.1〜3質量%である。
【0042】
水分散型樹脂は、固形分酸価が10〜45mgKOH/g、固形分水酸基価が50〜200、不揮発分が45質量%であるときの粘度が50〜10,000mPa・sである。
【0043】
なお、本明細書における水分散型樹脂の「固形分酸価」及び「固形分水酸基価」は、使用したモノマー混合物の酸価及び水酸基価から計算して求めた値を意味する。
【0044】
以下、これらの詳細について説明する。
【0045】
B.モノマー混合物
モノマー混合物は、多官能モノマー、酸基含有モノマー、及び水酸基含有モノマーを含む。
【0046】
(多官能モノマー)
本明細書における「多官能モノマー」とは、1分子中に複数のビニル基を有するモノマーである。多官能モノマーとしては、多価アルコールの重合性不飽和モノカルボン酸エステル、多塩基酸の重合性不飽和アルコールエステル、及び2個以上のビニル基で置換された芳香族化合物等が挙げられる。
【0047】
具体的には、例えば、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。重合性および入手容易性の点から、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0048】
上記モノマー混合物における多官能モノマーの含有量は、0.1〜3質量%、好ましくは0.1〜1.0質量%である。多官能モノマーの含有量が0.1質量%未満である場合、ポットライフが低下し、また、塗膜形成時において良好な塗膜平滑性を得ることができない。一方、多官能モノマーの含有量が3質量%を超える場合、フロー性が低下するため、塗膜形成時における外観が低下してしまう。
【0049】
(酸基含有モノマー)
酸基含有モノマーは、酸性基を含有するエチレン性不飽和モノマーであれば特に限定されず、カルボン酸基含有モノマーやリン酸基含有モノマーが挙げられる。
【0050】
カルボン酸基含有モノマーは、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、及びクロトン酸等が挙げられる。リン酸基含有モノマーは、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸、α−ホスホノスチレン、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸及びその塩、例えばそのアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0051】
上記モノマー混合物における酸基含有モノマーの含有量は、1.0〜15.0質量%であることが好ましく、より好ましくは1.5〜6.0質量%である。
【0052】
酸基含有モノマーの含有量が上記範囲内であれば、樹脂の安定性により優れ、樹脂及び塗料の貯蔵安定性により優れる。また、樹脂粘度が上昇することを抑制できるため、樹脂及び塗料の不揮発分を低下させる必要が無い。さらには、この場合、モノマー混合物の親水性が高くなりすぎないため、塗膜等の形成時における耐水性がより向上する。また、硬化剤に含まれるイソシアネートをより安定的に水分散させることができるため、ポットライフがより向上する。
【0053】
(水酸基含有モノマー)
水酸基含有モノマーは、水酸基を含有するエチレン性不飽和モノマーであれば特に限定されず、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アリルアルコール及びメタクリルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとε−カプロラクトンとの付加物等が挙げられる。
【0054】
モノマー混合物における水酸基含有モノマーの含有量は、10.0〜50.0質量%であることが好ましく、より好ましくは10.0〜35.0質量%である。
【0055】
水酸基含有モノマーの含有量が上記範囲内であれば、樹脂の安定性により優れ、樹脂及び塗料の貯蔵安定性により優れる。また、樹脂粘度が上昇することを抑制できるため、樹脂及び塗料の不揮発分を低下させる必要が無い。さらには、この場合、モノマー混合物の親水性が高くなりすぎないため、塗膜等の形成時における耐水性がより向上する。また、硬化剤に含まれるイソシアネートをより安定的に水分散させることができるため、ポットライフがより向上する。
【0056】
(その他のモノマー)
モノマー混合物は、多官能モノマー、酸基含有モノマー、及び水酸基含有モノマー以外のモノマー(以下、中性モノマーと呼ぶ)を含有していてもよい。
【0057】
中性モノマーはアクリル系のモノマーであってもよく、非アクリル系のモノマーであってもよい。
【0058】
アクリル系のモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート及びジヒドロジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0059】
一方、非アクリル系のモノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルケトン、t−ブチルスチレン、パラクロロスチレン及びビニルナフタレン等の重合性芳香族化合物、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等の重合性ニトリル、酢酸ビニル及びその誘導体等が挙げられる。なお、これらのモノマーは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0060】
モノマー混合物における中性モノマーの含有量は、32.0〜88.9質量%であることが好ましい。具体的には、モノマー混合物におけるスチレン等の重合性芳香族化合物は3〜30質量%であることが好ましく、それ以外は必要とする塗膜性能にあわせて、適宜調整すればよい。
【0061】
以上のように説明したモノマーを混合したモノマー混合物は、当該モノマー混合物を重合し、水分散させた際に得られる水分散型樹脂の固形分酸価が10〜45mgKOH/g、固形分水酸基価が50〜200となるように設計される。好ましくは、モノマー混合物は、固形分酸価が15〜40mgKOH/g、固形分水酸基価が100〜200となるように設計される。
【0062】
尚、主剤に含まれる各成分の含有量、固形分濃度等は適宜設定することができる。
【0063】
C.水分散型樹脂の製造方法
水分散型樹脂は、上記で説明したモノマー混合物を2段以上の溶液重合に供することによって溶剤型樹脂を得、当該溶剤型樹脂を水分散させることにより得られる。
【0064】
(溶液重合)
溶液重合において、モノマー混合物はn段階(n;2以上の自然数)に分けて滴下される。具体的には、加熱条件下において、複数に分割したモノマー混合物を重合開始剤と共に溶媒中へ滴下しながら撹拌する方法が例として挙げられる。溶液重合する際の条件は、例えば、重合温度が60〜160℃、滴下時間が0.5〜10時間である。
【0065】
ここで、n段目に滴下されるモノマー混合物をモノマー混合物nと呼ぶ。例えば、溶液重合が2段である場合、モノマー混合物は、1段目に滴下されるモノマー混合物(モノマー混合物1)と、モノマー混合物全体からモノマー混合物1を除いた残り(モノマー混合物2)とからなる。
【0066】
n段階に分けて滴下されるモノマー混合物1〜nは、それぞれモノマー混合物1からnの順に滴下され、溶剤中で樹脂粒子を形成する。樹脂粒子において、n番目に滴下されるモノマー混合物nから得られる樹脂が外殻となり、1〜n−1番目に滴下されるモノマー混合物1〜n−1から得られる樹脂を内包する形態で溶剤中に存在すると考えられる。
【0067】
なお、溶液重合は2段以上の多段で行われるが、工数低減のため2段で行うことが好ましい。2段で溶液重合する場合、まず、モノマー混合物1を溶液重合した後、ここにモノマー混合物2をさらに加えて溶液重合する。
【0068】
(モノマー混合物の分配)
内包される樹脂を形成すると考えられるモノマー混合物(モノマー混合物1〜n−1)と、外殻の樹脂を形成すると考えられるモノマー混合物(モノマー混合物n)との分配比(質量比)は、好ましくは5:5〜9:1、より好ましくは7:3〜8:2である。
【0069】
モノマー混合物全体におけるモノマー混合物1〜n−1の割合が5割未満である場合、すなわち内包される樹脂の量が少ない場合、得られる水分散型樹脂の粘度が高くなり、取り扱いが困難になったり、所定の粘度に調整した場合、固形分濃度が低下したりする。これにより、最終的な塗料の不揮発分に影響し、塗着効率の低下やタレ等の塗装作業性等に影響するおそれがある。
【0070】
一方、モノマー混合物全体におけるモノマー混合物1〜n−1の割合が9割を超える場合、すなわち外殻の樹脂の量が少ない場合、得られる水分散型樹脂の水分散安定性が低下するおそれがある。
【0071】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は水性であるため、n段目に滴下されるモノマー混合物nが、1〜n−1番目に滴下されるモノマー混合物1〜n−1に比べ親水性が高くなるようにモノマー混合物1〜nを構成することが好ましい。
【0072】
(多官能モノマーの分配)
多官能モノマー全量における、モノマー混合物1〜n−1として使用する多官能モノマーの割合は、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは100質量%である。
つまり、多官能モノマーの全量における、モノマー混合物nとして使用する割合は20質量%を超えないことが好ましい。
【0073】
モノマー混合物1〜n−1が含有する多官能モノマーの割合が多いほど、得られる水分散体の膨潤を抑制できると考えられるため、最終的に得られる塗膜の平滑性が向上する傾向にある。
【0074】
(酸基含有モノマーの分配)
酸基含有モノマー全量における、モノマー混合物nとして使用する酸基含有モノマーの割合は、好ましくは90〜100質量%、より好ましくは100質量%である。モノマー混合物nから得られる樹脂が樹脂粒子の外殻を形成すると考えられるため、当該樹脂粒子を水分散させるために外殻に親水性を持たせることが必要だからである。
【0075】
(水酸基含有モノマーの分配)
水酸基含有モノマー全量における、モノマー混合物nとして使用する水酸基含有モノマーの割合は、好ましくは20〜65質量%である。モノマー混合物nから得られる樹脂が樹脂粒子の外殻を形成すると考えられるため、当該樹脂粒子を水分散させるために外殻に親水性を持たせることが必要だからである。
【0076】
(樹脂粒子)
得られる樹脂粒子の体積平均粒子径は、0.01〜1.0μmの範囲であることが好ましい。
【0077】
体積平均粒子径が上記範囲内であれば、得られる塗膜の外観により優れ、また、硬化剤中に含まれるポリイソシアネートをより水分散させることができるため、ポットライフがより向上する。平均粒子径は、例えば、モノマー組成や重合条件を調整することにより制御可能である。なお、体積平均粒子径は、例えばレーザー光散乱法を用いて測定することができる。
【0078】
また、上記重合開始剤は、通常の重合に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、アゾ系化合物や過酸化物が挙げられる。一般に、モノマー混合物100質量部に対する重合開始剤の量は0.1〜18質量部であることが好ましく、より好ましくは0.3〜12質量部である。
【0079】
また、ここで用いうる溶媒は反応に悪影響を与えないものであれば特に限定されず、例えば、アルコール、ケトン及び炭化水素系溶媒等が挙げられる。さらに、分子量を調節するために、ラウリルメルカプタンのようなメルカプタン及びα−メチルスチレンダイマー等のような連鎖移動剤を必要に応じて用いることができる。
【0080】
次に、樹脂粒子を含有する溶液から溶剤を除去し、水を添加して樹脂粒子を水分散させた水分散型樹脂を得る。このとき、中和剤を添加してもよい。ここでいう中和剤は、樹脂中の酸性基を中和して水との溶解性又は分散性を付与するものである。例えば、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ジエチルアミノエタノール等が挙げられる。
【0081】
このようにして得られる上記水分散型樹脂の粘度は、上述の固形分酸価及び固形分水酸基価の条件を満たし、かつ不揮発分が45質量%である場合に、50〜10,000mPa・sであり、好ましくは、同条件下における粘度が300〜8,000mPa・sである。なお、上記粘度は、例えば、E型粘度計を用いて測定した値を意味する。
【0082】
また、水分散型樹脂の数平均分子量は、好ましくは1,000〜20,000であり、より好ましくは、3,000〜10,000である。なお、数平均分子量は、ポリスチレン換算で、GPCにより測定した値を意味する。
【0083】
D.硬化剤
上記硬化剤は、水分散性を有していて、ポリイソシアネートを含有している。
【0084】
上記ポリイソシアネートとは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物をいう。ポリイソシアネートは、例えば、脂肪族系、脂環式系、芳香族系及び芳香族−脂肪族系等のうちの何れであってもよい。
【0085】
具体的には、ポリイソシアネートは、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、及びその混合物(TDI)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(4,4’−MDI)、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート(2,4’−MDI)、及びその混合物(MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジシクロへキシルメタン・ジイソシアネート(水素化HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、へキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水素化キシリレンジイソシアネート(HXDI)等が挙げられる。
【0086】
上記硬化剤は、具体的には、ポリイソシアネートを水分散させるための乳化剤を含んでいてもよく、また、ポリイソシアネートのイソシアネート基を親水性のブロック剤でマスクしたブロックポリイソシアネートであってもよい。ブロック剤は、常温では安定であるが解離温度以上に加熱すると遊離のイソシアネート基を再生し得る。例えば、ポリイソシアネートにポリエチレンオキサイドユニットを導入することにより、親水性が付与されたポリイソシアネートを硬化剤として用いることができる。
【0087】
E.主剤及び硬化剤の配合比
硬化剤の配合量は、主剤に含有される樹脂の固形分に対して20〜100質量%であることが好ましい。硬化剤の配合量が上記範囲内であれば、膜の硬化性を低下させることなく、得られる硬化膜が堅くなりすぎることを抑制することができる。
【0088】
主剤と硬化剤とは、好ましくは、主剤中の水酸基と前記硬化剤中のイソシアネート基との当量比が1:1〜1:2、より好ましくは1:1.2〜1:1.6となるように配合する。上記範囲内であれば、熱硬化性樹脂組成物の硬化性をより向上させることができる。
【0089】
尚、硬化剤におけるポリイソシアネート化合物の含有量は適宜設定することができる。
【0090】
F.二液型水性塗料組成物
本発明の二液型熱硬化性樹脂組成物は、水性塗料組成物に適用し得る。水性塗料組成物は、上記の主剤及び硬化剤を含有する。また、水性塗料組成物は、被塗装物表面に、中塗り塗料組成物を塗布して中塗り塗膜を形成する工程(1)と、中塗り塗膜を完全に硬化させることなく、当該中塗り塗膜上にベースコート塗料組成物、及びトップコート塗料組成物をウェットオンウェットで順次塗布し、ベースコート塗膜及びトップコート塗膜を形成する工程(2)と、工程(1)及び(2)によって得られた中塗り塗膜、ベースコート塗膜、及びトップコート塗膜を同時に加熱硬化する工程(3)とを備える複層塗膜形成方法に用いられ得る。
【0091】
水性塗料組成物において、水分散型樹脂の固形分は、水性塗料組成物の主剤の全固形分に対して好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上である。水分散型樹脂の固形分比率が30質量%未満である場合、得られる塗膜の耐水性が低下する傾向がある。
【0092】
また、主剤及び硬化剤の配合比は、上記「E.主剤及び硬化剤の配合比」で説明したものと同様であるので、説明を省略する。
【0093】
水性塗料組成物は、上記二液型熱硬化性樹脂組成物に加えて、任意の適切な塗料用添加剤をさらに含有し得る。
【0094】
塗料用添加剤の具体例としては、例えば、金属ドライヤー等の硬化触媒、アンモニア水、水酸化ナトリウム等のpH調整剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤、相溶化剤、架橋剤、増粘剤、静電助剤、可塑剤、熱安定剤、光安定剤等が挙げられる。添加される塗料用添加剤の数、種類及び量は、目的に応じて適切に選択され得る。本発明の塗料組成物が目的に応じて顔料及び染料等の着色成分や他の樹脂成分をさらに含有し得ることはいうまでもない。
【0095】
本発明の水性塗料組成物は、エナメル塗料、建築用、自動車車体用、自動車部品用等の塗料用途、印刷インキ等の被覆材、不織布用の接合剤、接着剤、充填材、形成材料、レジスト等に好適に使用することができるが、上記複層塗膜形成方法において用いられる自動車車体用のトップコート塗料、ベースコート塗料、中塗り塗料(プライマーサーフェーサー)として特に好適に使用することができる。
【0096】
トップコート塗料、ベースコート塗料、及び中塗り塗料は、以下に示す特徴を有する。
【0097】
中塗り塗膜を形成する中塗り塗料は、本発明の硬化性樹脂組成物、有機系・無機系の各種着色顔料、及び体質顔料等を含有する。中塗り塗膜は、下地を隠蔽し、上塗り塗装後の表面平滑性を確保(外観向上)し、塗膜物性(耐衝撃性、耐チッピング性等)を付与することができる。
【0098】
中塗り塗料に用いられる着色顔料としては、有機系のアゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等が挙げられ、無機系では黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック、二酸化チタン等が挙げられる。またさらに、体質顔料として、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク等の体質顔料や、アルミニウム粉、マイカ粉等の扁平顔料を併用してもよい。
【0099】
標準的には、カーボンブラックと二酸化チタンとを主要顔料としたグレー系中塗り塗料が用いられる。さらに、上塗り塗色と明度あるいは色相等を合わせたセットグレーや各種の着色顔料を組み合わせた、いわゆるカラー中塗り塗料を用いることもできる。
【0100】
中塗り塗膜の乾燥膜厚は所望の用途により変化するが、多くの場合10〜60μm、好ましくは10〜40μmである。上限を超えると、鮮映性が低下したり、塗装時にムラあるいは流れ等の不具合が起こったりすることがあり、下限未満であると、下地が隠蔽できず膜切れが発生する。
【0101】
ベースコート塗料組成物は、本発明の硬化性樹脂組成物、及び体質顔料の他に、さらに、各種光輝性顔料または着色顔料の少なくとも何れか一方を含有する。
【0102】
光輝性顔料としては、例えばアルミニウムフレーク顔料、着色アルミニウムフレーク顔料、金属酸化物被覆アルミナフレーク顔料、干渉マイカ顔料、着色マイカ顔料、金属酸化物被覆ガラスフレーク、金属めっきガラスフレーク、金属酸化物被覆ガラスフレーク、金属酸化物被覆シリカフレーク顔料、金属チタンフレーク、グラファイト、ステンレスフレーク、板状酸化鉄、フタロシアニンフレーク及びホログラム顔料等を挙げることができる。
【0103】
また、着色顔料としては、基本的には中塗り塗料組成物と同様の有機系、無機系の各種着色顔料を用いることができ、体質顔料も基本的には中塗り塗料組成物と同様のものを使用することができる。
【0104】
上記光輝性顔料及び着色顔料の添加量は、所望の色相を発現するのに必要な任意の量に設定できる。また、これら光輝性顔料及び着色顔料に、さらに、各種体質顔料等を併用することができる。
【0105】
なお、塗料中の光輝性顔料または着色顔料の顔料全体としての質量濃度(顔料全体の質量/(顔料全体の質量+塗料樹脂固形分質量)から計算され、一般にPWCと表される値)は、50質量%未満が好ましく、30質量%未満がより好ましい。PWCが50質量%を超えると塗膜外観が低下する。
【0106】
ベースコート塗料組成物を自動車車体等に塗装する場合、意匠性を高めるためにエアー静電スプレー塗装、あるいは、通称「μμ(マイクロマイクロ)ベル」、「μ(マイクロ)ベル」あるいは「メタベル」等と言われる回転霧化式の静電塗装機による多ステージ塗装、好ましくは2ステージで塗装するとよい。
【0107】
ベースコート塗膜の乾燥膜厚は所望の用途により変化するが、多くの場合5〜20μm、好ましくは6〜18μmである。上限を超えると、塗装時にムラ、タレ、ピンホール等の不具合が発生し、下限未満であると、スケ、ムラや外観が低下する。
【0108】
ベースコート塗膜を形成した後に塗装されるトップコート塗膜は、ベースコート塗膜に含まれる光輝性顔料に起因する凹凸、チカチカ等を平滑にし、保護するために形成される。塗装方法として具体的には、先に述べたμμベル、μベル等の回転霧化式の静電塗装機により塗膜形成することが好ましい。
【0109】
トップコート塗料組成物は、本発明の硬化性樹脂組成物を含有する。
【0110】
トップコート塗料により形成されるトップコート塗膜の乾燥膜厚は、所望の用途により変化するが、多くの場合10〜80μm、より好ましくは20〜60μm程度である。上限を超えると、鮮映性が低下したり、塗装時にムラ、ピンホールあるいは流れ等の不具合が起こったりすることがあり、下限未満であると、下地が隠蔽できず膜切れが発生する。
【0111】
トップコート塗膜の塗装後、ベースコート塗膜を硬化させる硬化温度を80〜180℃、好ましくは120〜160℃に設定することで高い架橋度の硬化塗膜を得られる。上限を超えると、塗膜が固く脆くなり、下限未満では硬化が充分でない。硬化時間は硬化温度により変化するが、120℃〜160℃で10〜30分が適当である。
【0112】
本発明で形成される積層塗膜の膜厚は、多くの場合30〜300μmであり、好ましくは50〜250μmである。上限を超えると、冷熱サイクル等の膜物性が低下し、下限未満であると膜自体の強度が低下する。
【0113】
なお、中塗り塗料、及びベースコート塗料の塗装後、必要に応じて室温で放置することにより乾燥させたり、又は室温を超える温度、例えば80〜120℃で加熱し強制乾燥させたりするとよい。
【実施例】
【0114】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における部及び%は質量基準である。
【0115】
(製造例1)水分散型樹脂1の製造
攪拌機、温度計、滴下ロート、還流冷却器及び窒素導入管等を備えた通常のアクリル系樹脂エマルション製造用の反応容器にプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、MPと呼ぶ)675部を仕込み、攪拌しながら120℃に昇温した。その後、下記表1に示す組成のモノマー混合物1を上記反応容器中に1時間30分にわたって攪拌しながら滴下した。また、モノマー混合溶液1の滴下と併行して、カヤエステルO(重合開始剤、化薬アクゾ(株)製)22部をMP145部に溶解した重合開始溶液を、上記反応容器中に上記モノマー混合物1の滴下終了時まで均等に滴下した。
【0116】
モノマー混合物1の滴下終了後、さらに120℃で1時間反応を継続し、下記表1に示す組成のモノマー混合物2を1時間にわたって攪拌しながら上記反応容器中に滴下した。このときもモノマー混合物1の滴下時と同様に、モノマー混合物2の滴下と併行して、カヤエステルO 5部をMP36部に溶解した重合開始溶液を上記反応容器中に均等に滴下した。当該溶液の滴下は上記モノマー混合物2の滴下終了時まで行った。
【0117】
モノマー混合物2の滴下終了後、さらに120℃で2時間反応を継続した後、90℃まで冷却し、プロピレングリコールモノブチルエーテル(以下、PnBと呼ぶ)81gを添加して減圧状態とし、MPを856g留去した。そして常圧に戻した後、ソルベッソ100(商品名、エクソンケミカル社製)81g、ジメチルエタノールアミン12g、及びトリエタノールアミン37gを添加し、これらを均一に混合した後、水888g中に分散させることにより水分散型樹脂1を得た。
【0118】
当該水分散型樹脂1の設計値は、固形分酸価30mgKOH/g、固形分水酸基価140である。得られた水分散型樹脂1は、不揮発分(NV)45質量%、粘度約5,000mPa・s(25℃、1rpm)、体積平均粒子径190nm、数平均分子量5,000であった(表2)。
【0119】
なお、水分散型樹脂の不揮発分の測定は、JIS K 5600 1−2に準拠して行った。また、水分散型樹脂の粘度は、E型粘度計(例えば、R−100型粘度計、東機産業社製)を用いて、1rpm、25℃で測定して求めた。水分散型樹脂の数平均分子量は、ゲルパーエミーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定し、ポリスチレン換算により求めた。水分散型樹脂の体積平均粒子径はレーザー光散乱法により、堀場製作所社製LB−500を用いて測定を行い求めた。
【0120】
なお、以下特に断らない場合には、上記各物性は上記各測定方法により測定した。
【0121】
【表1】

【0122】
【表2】

【0123】
なお、表1中の略語は以下の通りである。
ST スチレン
MMA メチルメタクリレート
nBA ブチルアクリレート
nBMA ブチルメタクリレート
IBOMA イソボルニルメタクリレート
HEMA ヒドロキシエチルメタクリレート
EGDM エチレングリコールジメタクリレート
AA アクリル酸
【0124】
(製造例2)水分散型樹脂2の製造
モノマー混合物1及び2の組成を上記表1に示すように変更したこと以外は、製造例1と同様の手順で水分散型樹脂2を製造した。なお、水分散型樹脂2の設計値は水分散型樹脂1と同様である。得られた水分散型樹脂2は、不揮発分45質量%、粘度約6,500mPa・s(25℃、1rpm)、体積平均粒子径180nm、数平均分子量5,000であった(表2)。
【0125】
(製造例3)水分散型樹脂3の製造
モノマー混合物1及び2の組成を、上記表1に示すように変更したこと以外は製造例1と同様の手順で水分散型樹脂3を製造した。なお、水分散型樹脂3の設計値は、固形分酸価30mgKOH/g、固形分水酸基価110である。得られた水分散型樹脂3は、不揮発分45質量%、粘度約5,500mPa・s(25℃、1rpm)、体積平均粒子径210nm、数平均分子量5,000であった(表2)。
【0126】
(製造例4)水分散型樹脂4の製造
モノマー混合物1及び2の組成を、上記表1に示すように変更したこと以外は製造例1と同様の手順で水分散型樹脂4を製造した。なお、水分散型樹脂4の設計値は、固形分酸価30mgKOH/g、固形分水酸基価180である。得られた水分散型樹脂4は、不揮発分45質量%、粘度約6,000mPa・s(25℃、1rpm)、体積平均粒子径170nm、数平均分子量5,000であった(表2)。
【0127】
(製造例5)水分散型樹脂5の製造
モノマー混合物1及び2の組成を、上記表1に示すように変更したこと以外は製造例1と同様の手順で水分散型樹脂5を製造した。なお、水分散型樹脂5の設計値は、固形分酸価15mgKOH/g、固形分水酸基価130である。得られた水分散型樹脂5は、不揮発分45質量%、粘度約5000mPa・s(25℃、1rpm)、体積平均粒子径250nm、数平均分子量5,000であった(表2)。
【0128】
(製造例6)水分散型樹脂6の製造
モノマー混合物1及び2の組成を、上記表1に示すように変更したこと以外は製造例1と同様の手順で水分散型樹脂6を製造した。なお、水分散型樹脂6の設計値は、固形分酸価24mgKOH/g、固形分水酸基価130、Tg45℃である。得られた水分散型樹脂6は、不揮発分45質量%、粘度約2,500mPa・s(25℃、1rpm)、体積平均粒子径200nm、数平均分子量5,000であった(表2)。
【0129】
(製造例7)着色顔料ペーストの製造
ノニオン・アニオン系分散剤(商品名;Disperbyk 190、ビックケミー社製)4.5部、消泡剤(商品名;Disperbyk 110、ビックケミー社製)4.5部、脱イオン水22.9部、ルチル型二酸化チタン57.5部、硫酸バリウム14.4部を予備混合した後、ペイントコンディショナー中でガラスビーズ媒体を加え、室温で粒度5μm以下となるまで混合分散し、着色顔料ペーストを得た。
【0130】
(製造例8)3wet用水性中塗り塗料の製造
(カルボジイミド化合物の製造)
4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート3,930部を、カルボジイミド化触媒である3−メチル−1―フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド79部と共に、180℃で16時間反応させ、1分子にカルボジイミド基を4個有し、両末端にイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物を得た。
【0131】
ここに、オキシエチレン基の繰り返し単位が平均9個であるポリエチレングリコールモノメチルエーテル1,296部及びジブチル錫ジラウレート2部を加え、90℃で2時間加熱して、末端がイソシアネート基及び親水性基であるカルボジイミド化合物を得た。
【0132】
次に、グリセリンの3つの水酸基に、プロピレンオキサイドを平均で16.7モルずつ付加した構造を有するGP−3000(商品名、三洋化成社製)3000部を加え、90℃で、6時間反応させた。反応物は、IRによってイソシアネート基が消失していることが確認された。ここに脱イオン水18,800部を加えて撹拌し、樹脂固形分30質量%のカルボジイミド化合物の水分散体を得た。
【0133】
(水分散型ポリウレタン組成物の製造)
数平均分子量2,000の1,6−ヘキサンジオールから得られるポリカーボネートジオール0.26モル部、イソホロンジイソシアネート1.0モル部、及びジメチロールプロピオン酸0.36モル部と、これらの合計質量に対して39質量%のN−メチル−2−ピロリドンとを反応フラスコに仕込み、窒素気流下において、125℃で2時間反応させた後にトリエチルアミン0.47モル部を加え、さらに1時間撹拌してプレポリマーを得た。
【0134】
シリコーン系消泡剤SE−21(商品名、ワッカーシリコン社製)0.05gを溶解した120gの水に、上記で得られたプレポリマー100gを15分で滴下した。その後、モノエタノールアミン2.4gを加え、さらに、赤外吸収分光法を用いた測定により、イソシアネート基由来の吸収が喪失するまで40℃で撹拌して、不揮発分31.5質量%の水分散型ポリウレタン組成物を得た。
【0135】
GPC分析により、水分散型ポリウレタン組成物に分散しているポリウレタンの数平均分子量を測定したところ、2,200であった。
【0136】
なお、数平均分子量の測定条件は、以下の通りとした。
カラム;TSKgel G4000 G3000 G2000、
溶離液;THF、
流量;1.000mL/分、
検出;UV(245nm)、
標準物質;PST
【0137】
(水分散型アクリル樹脂の製造)
撹拌機や温度計、滴下ロート、還流冷却器、窒素導入菅等を備えた通常のアクリル系樹脂エマルション製造用の反応容器に、脱イオン水445部及びニューコール293(商品名、日本乳化剤社製)5部を仕込み、撹拌しながら75℃に昇温した。下記モノマー混合液(固形分酸価10mgKOH/g、水酸基価60)、脱イオン水240部とニューコール293 30部とを混合した混合物をホモジナイザーによって乳化した。ホモジナイザーによって乳化したモノマープレ乳化液を反応容器中に3時間にわたって撹拌しながら滴下した。また、モノマープレ乳化液の滴下と並行して、重合開始剤としてAPS(過硫酸アンモニウム)1部を水50部に溶解した水溶液を、滴下速度を一定に保ちながら、モノマープレ乳化液の滴下終了時まで反応容器中に滴下した。モノマープレ乳化液の滴下終了後、さらに80℃で1時間反応を継続し、その後冷却した。冷却後、ジメチルアミノエタノール2部を水20部に溶解した水溶液を投入し、不揮発分40.0質量%の水性樹脂エマルションを得た。得られた樹脂エマルションは、30%ジメチルアミノエタノール水溶液を用いてpH7.2に調整した。
【0138】
(モノマー混合液の組成)
メタクリル酸メチル 119部
アクリル酸ブチル 231部
スチレン 62部
アクリル酸4−ヒドロキシブチル 80部
メタクリル酸 8部
エチレングリコールジメタクリレート 20部
【0139】
(水溶性アクリル樹脂の製造)
反応容器にジプロピレングリコールメチルエーテル23.9部及びプロピレングリコールメチルエーテル16.1部を加え、窒素気流中で混合攪拌しながら120℃に昇温した。次いで、アクリル酸エチル54.5部、メタクリル酸メチル12.5部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル14.7部、スチレン10.0部、メタクリル酸8.5部の混合溶液とジプロピレングリコールメチルエーテル10.0部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート2.0部からなる開始剤溶液とを3時間にわたり並行して反応容器に滴下した。滴下終了後、0.5時間同温度で熟成を行った。
【0140】
さらに、ジプロピレングリコールメチルエーテル5.0部及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.3部からなる開始剤溶液を0.5時間にわたり反応容器に滴下した。滴下終了後、1時間同温度で熟成を行った。
【0141】
次いで、脱溶剤装置により、減圧下(70Torr)110℃で溶剤を16.1部留去した後、脱イオン水187.2部及びジメチルアミノエタノール8.8部を加えて、不揮発分は31質量%、数平均分子量が27,000、固形分酸価56.2mgKOH/g、固形分水酸基価70、粘度は15,000mPa・s(測定機器;東機産業社製R型シリーズ500、円錐型回転式粘度計、測定条件;1.34度コーン、1rpm/25℃)の水溶性アクリル樹脂を得た。
【0142】
(着色顔料ペーストの製造)
ノニオン・アニオン系分散剤(商品名;Disperbyk 190、ビックケミー社製)9.4部、脱イオン水36.8部、ルチル型二酸化チタン34.5部、硫酸バリウム34.4部及びタルク6部を予備混合した後、ペイントコンディショナー中でガラスビーズ媒体を加え、室温で粒度5μm以下となるまで混合分散し、着色顔料ペーストを得た。
【0143】
(硬化剤複合エマルションの製造)
撹拌機(商品名;T.K.ロボミックス、特殊機化工業株式会社製)を備えた10Lステンレスビーカーに、脱イオン水1,876部、反応性界面活性剤20%水溶液(商品名;ラムテルPD−104、花王株式会社製)400部、ロンガリット(スルホキシル酸ナトリウム・ホルムアルデヒド)8部を入れ、ロンガリットが溶解するまで撹拌した。
【0144】
これを2,000rpmで撹拌しているところにスチレン80部、メチルメタクリレート227部、メチルアクリレート393部、エチルアクリレート549部、4−ヒドロキシブチルアクリレート246部、メタクリル酸24部、エチレングリコールジメタクリレート80部及びメラミン樹脂(商品名;サイメル211、固形分80質量%、メトキシ/ブトキシ比=65/35、水相溶性=8mL/g、キシレン相溶性>100mL/g、日本サイテックインダストリーズ株式会社製)667部を均一に混合したものを徐々に加え、一次乳化物を得た。これを氷水で冷却しながら、12,000rpmで20分間乳化して体積平均粒子径を測定した(商品名ELS−800、大塚電子株式会社製)。得られたプレエマルションの体積平均粒子径は154nmであった。
【0145】
次に、撹拌装置や温度計、冷却管、窒素ガス導入菅、及びウォーターバスを備えた5L縦長フラスコに、プレエマルション758部を仕込み、150rpmで撹拌しながら40℃に昇温した。脱イオン水80部及びt−ブチルハイドロオキサイド70%水溶液(商品名;カヤブチルH−70、化薬アクゾ株式会社製)8部を混合した開始剤水溶液の15部を添加し重合を開始した。10分間温度を40℃に保った後、残りのプレエマルション3,792部と開始剤水溶液73部を3時間かけて並行滴下した。
【0146】
プレエマルションと開始剤水溶液の滴下終了後も2時間40℃を保った。そこへDMEA(ジメチルアミノエタノール)の25%水溶液51部を30分かけて滴下した。DMEA水溶液の滴下終了後も1時間40℃を保った後、室温に冷却し、400メッシュでろ過して取り出した。得られたエマルションの不揮発分は45.5質量%、pHは8.6、体積平均粒子径は256nmであった。
【0147】
(水性硬化性樹脂組成物の製造)
得られた水分散型アクリル樹脂組成物の27.5部(固形分)、得られた水溶性アクリル樹脂を5部(固形分)に、硬化剤としてメラミン樹脂(商品名;サイメル211、固形分80質量%、メトキシ/ブトキシ比=65/35、水相溶性=8mL/g、キシレン相溶性>100mL/g、日本サイテックインダストリーズ株式会社製)を12.5部(固形分)混合した後、ウレタン会合型増粘剤(商品名;アデカノールUH814N、旭電化工業社製)を0.3部(固形分)混合撹拌し、水性硬化性樹脂組成物を得た。得られた水性硬化性樹脂組成物を脱イオン水で希釈し、不揮発分(NV)36質量%に調整した。
【0148】
(比較製造例1)水分散型樹脂7の製造
特許文献1に記載の実施例について追試した。
【0149】
反応容器にMP135部を仕込み、攪拌しながら120℃に昇温した。その後、上記表1に示す組成のモノマー混合物1を上記反応容器中に1時間30分にわたって攪拌しながら滴下した。モノマー混合物1の滴下と併行して、カヤエステルO 22部をMP100部に溶解した重合開始溶液を、モノマー混合物1の滴下終了時まで上記反応容器中に均等に滴下した。モノマー溶液の滴下終了後、さらに120℃で反応を継続途中でゲル化し、水分散型樹脂7を得ることができなかった。
【0150】
(比較製造例2)水分散型樹脂8の製造
モノマー混合物1の組成を上記表1に示すように変更したこと以外は、比較製造例1と同様の手順で水分散型樹脂8の製造を試みた。その結果、モノマー混合物1の滴下終了後、さらに120℃で反応を継続している途中でゲル化し、水分散型樹脂8を得ることができなかった。
【0151】
(比較製造例3)水分散型樹脂9の製造
反応容器にMP675部を仕込み、攪拌しながら120℃に昇温した。昇温後、表1に示す組成のモノマー混合物1を上記反応容器中に3時間にわたって攪拌しながら滴下した。また、モノマー混合溶液1の滴下と併行して、カヤエステルO 27部をMP180部に溶解した重合開始溶液を、上記反応容器中に上記モノマー混合物1の滴下終了時まで均等に滴下した。
【0152】
モノマー混合物1の滴下終了後、さらに120℃で2時間反応を継続した後、90℃まで冷却し、PnB81部を添加して減圧状態とし、MPを855部留去した。そして常圧に戻した後、ソルベントナフサ100 81部、ジメチルエタノールアミン12部、及びトリエタノールアミン37部を添加し、これらを均一に混合した後、水888部中に分散させることにより水分散型樹脂9を得た。なお、水分散型樹脂9の設計値は水分散型樹脂1と同様である。得られた水分散型樹脂9は、不揮発分45質量%、粘度約25,000mPa・s(25℃、1rpm)、体積平均粒子径120nm、数平均分子量5,000であった(表2)。
【0153】
(比較製造例4)水分散型樹脂10の製造
反応容器にMP675部を仕込み、攪拌しながら120℃に昇温した。その後、下記表1に示す組成のモノマー混合物1を上記反応容器中に1時間30分にわたって攪拌しながら滴下した。また、モノマー混合溶液1の滴下と併行して、カヤエステルO22部をMP145部に溶解した重合開始溶液を、上記反応容器中に上記モノマー混合物1の滴下終了時まで均等に滴下した。
【0154】
モノマー混合物1の滴下終了後、さらに120℃で1時間反応を継続し、下記表1に示す組成のモノマー混合物2を1時間にわたって攪拌しながら上記反応容器中に滴下した。このときもモノマー混合物1の滴下時と同様に、モノマー混合物2の滴下と併行して、カヤエステルO5部をMP36部に溶解した重合開始溶液を上記反応容器中に均等に滴下した。当該溶液の滴下は上記モノマー混合物2の滴下終了時まで行った。
【0155】
モノマー混合物2の滴下終了後、さらに120℃で2時間反応を継続した後、90℃まで冷却し、プロピレングリコールモノブチルエーテル(以下、PnBと呼ぶ)81部を添加して減圧状態とし、MPを856部留去した。そして常圧に戻した後、ソルベントナフサ100 81部、ジメチルエタノールアミン12部、及びトリエタノールアミン37部を添加し、これらを均一に混合した後、水888部中に分散させることにより水分散型樹脂10を得た。
【0156】
当該水分散型樹脂10の設計値は、固形分酸価30mgKOH/g、水酸基価140である。得られた水分散型樹脂10は、不揮発分45質量%、粘度約15,000mPa・s(25℃、1rpm)、体積平均粒子径190nm、数平均分子量7,500であった(表2)。
【0157】
(比較製造例5)水分散型樹脂11の製造
モノマー混合物1及び2の組成を、上記表1に示すように変更したこと以外は比較製造例4と同様の手順で水分散型樹脂11を製造した。なお、水分散型樹脂11の設計値は、固形分酸価30mgKOH/g、水酸基価140である。得られた水分散型樹脂11は、不揮発分45質量%、粘度約3,000mPa・s(25℃、1rpm)、体積平均粒子径220nm、数平均分子量4,800であった(表2)。
【0158】
(比較製造例6)水分散型樹脂12の製造
先仕込みMPを250部、モノマー混合液1及びモノマー混合液2と並行して滴下を行うカヤエステルOの量をそれぞれ4部、1部とし、モノマー混合物1及び2の組成を、上記表1に示すように変更し、比較製造例4と同様の手順で水分散型樹脂12を製造した。なお、水分散型樹脂12の設計値は、固形分酸価30mgKOH/g、水酸基価140である。得られた水分散型樹脂12は、不揮発分45質量%、粘度約45,000mPa・s(25℃、1rpm)、体積平均粒子径215nm、数平均分子量20,000であった(表2)。
【0159】
(比較製造例7)水分散型樹脂13の製造
モノマー混合物1及び2の組成を、上記表1に示すように変更したこと以外は比較製造例4と同様の手順で水分散型樹脂13を製造した。なお、水分散型樹脂13の設計値は、固形分酸価30mgKOH/g、水酸基価250である。得られた水分散型樹脂13は、不揮発分45質量%、粘度約8,500mPa・s(25℃、1rpm)、体積平均粒子径170nm、数平均分子量5,000であった(表2)。
【0160】
(比較製造例8)水分散型樹脂14の製造
モノマー混合物1及び2の組成を、上記表1に示すように変更したこと以外は比較製造例4と同様の手順で水分散型樹脂14を製造した。なお、水分散型樹脂14の設計値は、固形分酸価60mgKOH/g、水酸基価140である。得られた水分散型樹脂14は、不揮発分45質量%、粘度約7,500mPa・s(25℃、1rpm)、体積平均粒子径150nm、数平均分子量5,000であった(表2)。
【0161】
(比較製造例9)水分散型樹脂15の製造
モノマー混合物1及び2の組成を、上記表1に示すように変更したこと以外は比較製造例4と同様の手順で水分散型樹脂15の製造を試みた。その結果、脱溶剤終了後、ソルベントナフサ100 81部、ジメチルエタノールアミン12部、及びトリエタノールアミン37部を添加し、これらを均一に混合した後、水888部中に分散させるようと試みたが、良好な水分散体は得られなかった。
【0162】
(実施例)
(中塗り塗料組成物)
(実施例1〜6、比較例3〜8)
製造例1で得られた水分散型樹脂1を35.0部(固形分)、製造例7で得られた顔料ペーストを41.1部、表面調整剤(商品名;Disperbyk 347、ビックケミー社製)0.3部、消泡剤(商品名;Disperbyk 011、ビックケミー社製)1.7部混合した後、ウレタン会合型増粘剤(商品名;アデカノールUH814N、旭電化工業社製)を0.05部(固形分)混合撹拌し、さらに後に水分散性を有するポリイソシアネート硬化剤(商品名:ハイビジュールVPLS−2319)25.0部(固形分)を混合し、実施例1の水分散性水性硬化性樹脂組成物を得た。
【0163】
実施例1で得られた水分散性水性硬化性樹脂組成物の水酸基とポリイソシアネート基の当量比は1.0:1.2であった。
【0164】
同様に、製造例2〜6及び比較製造例3〜8で得られた水分散型樹脂をそれぞれ用いて、実施例2〜6及び比較例3〜8を行い、実施例2〜6、比較例3〜8の水分散性水性硬化性樹脂組成物をそれぞれ得た。これら得られた各水分散性水性硬化性樹脂組成物の水酸基とポリイソシアネート基との当量比は表3に記載した。
【0165】
【表3】

【0166】
(実施例7)
製造例1で得られた水分散型樹脂1を35.0部(固形分)、製造例7で得られた顔料ペーストを41.1部、表面調整剤(商品名;Disperbyk 347、ビックケミー社製)0.3部、消泡剤(商品名;Disperbyk 011、ビックケミー社製)1.7部混合した後、ウレタン会合型増粘剤(商品名;アデカノールUH814N、旭電化工業社製)を0.05部(固形分)混合撹拌し、さらに後に水分散性を有するポリイソシアネート硬化剤(商品名:ハイビジュールVPLS−2319)12.5部、水分散性を有さないポリイソシアネート(商品名:N3600 住化バイエル社製)12.5部(固形分)を混合し水分散性水性硬化性樹脂組成物を得た。
【0167】
比較例1〜2及び9は、比較製造例1〜2及び9が合成不可であったため作製しなかった。
【0168】
(中塗り塗膜試験片の作製)
リン酸亜鉛処理した300×400×0.8mmのダル鋼板に、カチオン電着塗料(商品名:パワートップU−50、日本ペイント社製)を、乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装し、160℃で30分間加熱硬化させ、電着塗装板を得た。
【0169】
得られた基板に、中塗り塗料組成物をエアースプレー塗装にて30μm塗装し、80℃で5分プレヒートを行った後、140℃で30分間の加熱硬化を行い、塗膜の形成された試験片を得た。
【0170】
(中塗り塗膜試験片の評価)
上記で得られた水分散型樹脂組成物を用い、ポットライフを評価した。また、上記で得られた試験片を用い、外観を評価した。それらの結果を表3に示す。
【0171】
<中塗り表面粗度(Ra)>
中塗りの表面粗度(粗さ曲線:Ra)を表面粗さ計(SJ-201P:ミツトヨ製)を用い、カットオフ値2.5mmの条件で測定した。
【0172】
<ポットライフ>
まず、調製直後の水性中塗り塗料組成物を観察した。次に、室温にて1/4時間毎に水性中塗り塗料組成物を観察し、調製直後の観察結果と比較することにより、ポットライフを評価した。その評価基準を以下に示した。×となった時間をポットライフ性とした。
【0173】
○ ;調製直後の水性中塗り塗料組成物と比較して、減粘、増粘や塗膜外観の低下が見られない
× ;調製直後の水性中塗り塗料組成物と比較して、減粘、増粘や塗膜外観の低下が見られる。
【0174】
<耐水性>
試験片を40℃の温水に10日間浸漬した。その後1時間洗浄した試験片の外観を目視により観察し、下記の基準により評価した。なお、評価結果が◎又は○であれば、実用上問題のないレベルである。
◎;変化なし
○;温水浸漬部が、かすかに膨潤しているが、速やかに回復する
△;温水浸漬部が、かすかに膨潤しており、回復に時間を要する
×;温水浸漬部が、かなり膨潤しており、回復に非常に時間を要する
(ベース塗料組成物)
(実施例8〜13、比較例12〜17)
製造例1で得られた水分散型樹脂1を35.0部(固形分)、アルミ顔料ペースト(STAPA HYDROLAN 9157:ECKART社)8.0部(固形分)、表面調整剤(商品名;Disperbyk 347、ビックケミー社製)0.3部、消泡剤(商品名;Disperbyk 011、ビックケミー社製)1.7部混合した後、ウレタン会合型増粘剤(商品名;アデカノールUH814N、旭電化工業社製)を0.05部(固形分)混合撹拌し、さらに後に水分散性を有するポリイソシアネート硬化剤(商品名:ハイビジュールVPLS−2319)25.0部(固形分)を混合し、実施例8の水分散性水性硬化性樹脂組成物を得た。
【0175】
実施例8で得られた水分散性水性硬化性樹脂組成物の水酸基とポリイソシアネート基との当量比は1.0:1.2であった。
【0176】
同様に、製造例2〜6、比較製造例3〜8で得られた水分散型樹脂をそれぞれ用いて、実施例9〜13、比較例12〜17を行い、実施例9〜13、比較例12〜17の水分散性水性硬化性樹脂組成物をそれぞれ得た。これら実施例の水酸基とポリイソシアネート基との当量比は表4に記載した。
【0177】
【表4】

【0178】
(実施例14)
製造例1で得られた水分散型樹脂1を35.0部(固形分)、アルミ顔料ペースト(STAPA HYDROLAN 9157:ECKART社)8.0部(固形分)、表面調整剤(商品名;Disperbyk 347、ビックケミー社製)0.3部、消泡剤(商品名;Disperbyk 011、ビックケミー社製)1.7部混合した後、ウレタン会合型増粘剤(商品名;アデカノールUH814N、旭電化工業社製)を0.05部(固形分)混合撹拌し、さらに後に水分散性を有するポリイソシアネート硬化剤(商品名:ハイビジュールVPLS−2319)12.5部(固形分)、水分散性を有さないポリイソシアネート(商品名:N3600 住化バイエル社製)12.5部(固形分)を混合し水分散性水性硬化性樹脂組成物を得た。
【0179】
比較例10〜11、18は、比較製造例1〜2及び9が合成不可であったため作製できなかった。
【0180】
(ベース塗膜試験片の作製)
リン酸亜鉛処理した300×400×0.8mmのダル鋼板に、カチオン電着塗料(商品名:パワートップU−50、日本ペイント社製)を、乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装し、160℃で30分間加熱硬化させ、電着塗装板を得た。
【0181】
得られた基板に、ベース塗料組成物をエアースプレー塗装にて15μm塗装し、80℃で5分プレヒートを行った後、140℃で30分間の加熱硬化を行い、塗膜の形成された試験片を得た。
【0182】
(ベース塗膜試験片の評価)
上記で得られた水分散型樹脂組成物を用い、ポットライフを評価した。また、上記で得られた試験片を用い、外観を評価した。それらの結果を表4に示す。
【0183】
<ベース表面粗度(Ra)>
ベースの表面粗度(粗さ曲線:Ra)を表面粗さ計(SJ-201P:ミツトヨ製)を用い、カットオフ値2.5mmの条件で測定した。
【0184】
<ポットライフ>
まず、調製直後の水性ベース塗料組成物を観察した。次に、室温にて1/4時間毎に水性ベース塗料組成物を観察し、調製直後の観察結果と比較することにより、ポットライフを評価した。その評価基準を以下に示した。×となった時間をポットライフ性とした。
【0185】
○ ;調製直後の水性ベース塗料組成物と比較して、減粘、増粘や塗膜外観の低下が見られない
× ;調製直後の水性ベース塗料組成物と比較して、減粘、増粘や塗膜外観の低下が見られる
(クリヤー塗料組成物)
(実施例15〜20、比較例21〜26)
製造例1で得られた水分散型樹脂1を35.0部(固形分)、表面調整剤(商品名;Disperbyk 347、ビックケミー社製)0.3部、消泡剤(商品名;Disperbyk 011、ビックケミー社製)1.7部混合した後、ウレタン会合型増粘剤(商品名;アデカノールUH814N、旭電化工業社製)を0.05部(固形分)混合撹拌し、さらに後に水分散性を有するポリイソシアネート硬化剤(商品名:ハイビジュールVPLS−2319)25.0部(固形分)を混合し、実施例15の水分散性水性硬化性樹脂組成物を得た。実施例15の水分散性水性硬化性樹脂組成物の水酸基とポリイソシアネート基との当量比は1.0:1.2であった。
【0186】
同様に、実施例16〜20及び比較例21〜26を、製造例2〜6、比較製造例3〜8で得られた水分散型樹脂をそれぞれ用いて行い、実施例実施例16〜20、比較例21〜26の水分散性水性硬化性樹脂組成物をそれぞれ得た。これら実施例の水酸基とポリイソシアネート基との当量比は表5に記載した。
【0187】
【表5】

【0188】
(実施例21)
製造例1で得られた水分散型樹脂1を35.0部(固形分)、表面調整剤(商品名;Disperbyk 347、ビックケミー社製)0.3部、消泡剤(商品名;Disperbyk 011、ビックケミー社製)1.7部混合した後、ウレタン会合型増粘剤(商品名;アデカノールUH814N、旭電化工業社製)を0.05部(固形分)混合撹拌し、さらに後に水分散性を有するポリイソシアネート硬化剤(商品名:ハイビジュールVPLS−2319)12.5部(固形分)、水分散性を有さないポリイソシアネート(商品名:N3600 住化バイエル社製)12.5部(固形分)を混合し水分散性水性硬化性樹脂組成物を得た。
【0189】
比較例19〜20及び27は、比較製造例1〜2及び9が合成不可であったため作製できなかった。
【0190】
(クリヤー塗膜試験片の作製)
リン酸亜鉛処理した300×400×0.8mmのダル鋼板に、カチオン電着塗料(商品名:パワートップU−50、日本ペイント社製)を、乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装し、160℃で30分間加熱硬化させ、電着塗装板を得た。
【0191】
得られた基板に、水性クリヤー塗料組成物をエアースプレー塗装にて30μm塗装し、80℃で5分プレヒートを行った後、140℃で30分間の加熱硬化を行い、塗膜の形成された試験片を得た。
【0192】
(クリヤー塗膜試験片の評価)
上記で得られた水分散型樹脂組成物を用い、ポットライフを評価した。また、上記で得られた試験片を用い、外観を評価した。それらの結果を表5に示す。
【0193】
<クリヤー表面粗度(Ra)>
クリヤーの表面粗度(粗さ曲線:Ra)を表面粗さ計(SJ-201P:ミツトヨ製)を用い、カットオフ値2.5mmの条件で測定した。
【0194】
<ポットライフ>
まず、調製直後の水性クリヤー塗料組成物を観察した。次に、室温にて1/4時間毎に水性クリヤー塗料組成物を観察し、調製直後の観察結果と比較することにより、ポットライフを評価した。その評価基準を以下に示した。×となった時間をポットライフ性とした。
【0195】
○ ;調製直後の水性クリヤー塗料組成物と比較して、減粘、増粘や塗膜外観の低下が見られない
× ;調製直後の水性クリヤー塗料組成物と比較して、減粘、増粘や塗膜外観の低下が見られる
実施例7、14、21の結果が示すように、硬化剤であるポリイソシアネートは必ずしも全てが水分散性を有する必要は無く、半量が水分散性を有していないポリイソシアネートであっても、上記記載の水分散型樹脂との共存下であれば良好なポットライフ性を有する。
【0196】
(複層塗膜の形成 その1(中塗りが2液型熱硬化樹脂組成物である場合))
(実施例22〜28及び比較例30〜35)
リン酸亜鉛処理したダル鋼板に、カチオン電着塗料(商品名;パワートップU−50、日本ペイント社製)を、乾燥塗膜が20μmとなるように電着塗装し、160℃で30分間の加熱硬化後冷却して、鋼板基板を準備した。
【0197】
得られた基板に、実施例1〜7及び比較例3〜8で得られた水性中塗り塗料組成物をエアースプレー塗装にて20μm塗装し、80℃で5分プレヒートを行った後、水性メタリックベース塗料組成物(商品名;アクアレックスAR−2000シルバーメタリック、日本ペイント社製)をエアースプレー塗装にて15μm塗装し、80℃で3分プレヒートを行った。さらに、その塗板にクリヤー塗料として、酸エポキシ硬化型クリヤー塗料組成物(商品名;マックフロー O−1800W−2クリヤー、日本ペイント社製)をエアースプレー塗装にて35μm塗装した後、140℃で30分間の加熱硬化を行い、複層塗膜の形成された試験片を得た。
【0198】
比較例28〜29及び36は比較製造例1〜2及び9が合成不可であったため作製できなかった。
【0199】
(複層塗膜の形成 その2(クリヤーが2液型熱硬化樹脂組成物である場合))
(実施例29〜35及び比較例39〜44)
リン酸亜鉛処理したダル鋼板に、カチオン電着塗料(商品名;パワートップU−50、日本ペイント社製)を、乾燥塗膜が20μmとなるように電着塗装し、160℃で30分間の加熱硬化後冷却して、鋼板基板を準備した。
【0200】
得られた基板に、製造例8で得られた3wet用水性中塗り塗料組成物をエアースプレー塗装にて20μm塗装し、80℃で5分プレヒートを行った後、水性メタリックベース塗料組成物(商品名;アクアレックスAR−2000シルバーメタリック、日本ペイント社製)をエアースプレー塗装にて15μm塗装し、80℃で3分プレヒートを行った。さらに、その塗板にクリヤー塗料として、実施例15〜21及び比較例21〜26で得られたクリヤー塗料組成物をエアースプレー塗装にて30μm塗装した後、140℃で30分間の加熱硬化を行い、複層塗膜の形成された試験片を得た。
【0201】
比較例37〜38及び45は比較製造例1〜2及び9が合成不可であったため作製できなかった。
【0202】
(複層膜塗膜試験片の評価)
上記で得られた試験片を用い、外観及び耐水性を評価した。それらの結果を表6及び表7に示す。
【0203】
【表6】

【0204】
【表7】

【0205】
<複層塗膜の外観評価>
複層塗膜の仕上がり外観について、Wave Scan(BYK Gardner社製)を用い、LW(測定波長;1,300〜12,000μm)、SW(測定波長;300〜1,200μm)を測定した。数値が小さいほど、塗膜の外観が良好であることを示す。
【0206】
<耐水性>
試験片を40℃の温水に10日間浸漬した。その後1時間洗浄した試験片の外観を目視
により観察し、下記の基準により評価した。なお、評価結果が◎又は○であれば、実用上
問題のないレベルである。
【0207】
◎;変化なし
○;温水浸漬部が、かすかに膨潤しているが、速やかに回復する
△;温水浸漬部が、かすかに膨潤しており、回復に時間を要する
×;温水浸漬部が、かなり膨潤しており、回復に非常に時間を要する
【産業上の利用可能性】
【0208】
本発明は、取り扱いが容易で、且つ塗膜外観に優れるにもかかわらず、ポットライフに優れる二液型熱硬化性樹脂組成物等として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二液型熱硬化性樹脂組成物の主剤に含有される水分散型樹脂であり、
1分子中に複数のビニル基を有する多官能モノマー、酸基含有モノマー及び水酸基含有モノマーを含むモノマー混合物を2段以上の溶液重合に供することによって溶剤型樹脂を得、当該溶剤型樹脂を水分散させることにより得られ、
前記モノマー混合物における前記多官能モノマーの割合が0.1質量%以上3質量%以下であり、
固形分酸価が10mgKOH/g以上45mgKOH/g以下であり、
固形分水酸基価が50以上200以下であり、
不揮発分が45質量%であるときの粘度が50mPa・s以上10,000mPa・s以下であることを特徴とする水分散型樹脂。
【請求項2】
前記溶液重合が2段であることを特徴とする、請求項1に記載の水分散型樹脂。
【請求項3】
前記2段以上の溶液重合は、重合の段数をnとする場合、n段階に分けて加えられるモノマー混合物1〜nを、それぞれモノマー混合物1からnの順に加えて重合させることにより行われ、
モノマー混合物1〜n−1とモノマー混合物モノマー混合物nとの質量比が5:5以上9:1以下の範囲内であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の水分散型樹脂。
【請求項4】
多官能モノマー全量における、モノマー混合物1〜n−1として使用する多官能モノマーの割合が80質量%以上100質量%以下の範囲内であることを特徴とする、請求項3に記載の水分散型樹脂。
【請求項5】
酸基含有モノマー全量における、モノマー混合物nとして使用する酸基含有モノマーの割合が90質量%以上100質量%以下の範囲内であることを特徴とする、請求項3又は4に記載の水分散型樹脂。
【請求項6】
水酸基含有モノマー全量における、モノマー混合物nとして使用する水酸基含有モノマーの割合が20質量%以上65質量%以下の範囲内であることを特徴とする、請求項3〜5の何れか1項に記載の水分散型樹脂。
【請求項7】
水分散性を有するポリイソシアネートを硬化剤として含む二液型熱硬化性樹脂組成物に含まれる主剤であり、
請求項1〜6の何れか1項に記載の水分散型樹脂を含むことを特徴とする主剤。
【請求項8】
請求項7に記載の主剤と、水分散性を有するポリイソシアネートを含む硬化剤とを含有することを特徴とする、二液型熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記主剤中の水酸基に対する前記硬化剤中のイソシアネート基の当量比が1以上2以下であることを特徴とする、請求項8に記載の二液型熱硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
前記二液型熱硬化性樹脂組成物はトップコート塗料組成物である、請求項8又は9に記載の二液型熱硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
前記二液型熱硬化性樹脂組成物はベースコート塗料組成物である、請求項8又は9に記載の二液型熱硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
前記二液型熱硬化性樹脂組成物は中塗り塗料組成物である、請求項8又は9に記載の二液型熱硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
前記二液型熱硬化性樹脂組成物はプライマーサーフェーサーである、請求項8又は9に記載の二液型熱硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
前記二液型熱硬化性樹脂組成物は、
被塗装物表面に、中塗り塗料組成物を塗布して中塗り塗膜を形成する工程(1)と、
前記中塗り塗膜を完全に硬化させることなく、当該中塗り塗膜上にベースコート塗料組成物、及びトップコート塗料組成物をウェットオンウェットで順次塗布し、ベースコート塗膜及びトップコート塗膜を形成する工程(2)と、
前記工程(1)及び(2)によって得られた中塗り塗膜、ベースコート塗膜、及びトップコート塗膜を同時に加熱硬化する工程(3)とを備える複層塗膜形成方法に用いられる、請求項10〜12の何れか1項に記載の二液型熱硬化性樹脂組成物。
【請求項15】
二液型熱硬化性樹脂組成物の主剤に含有される水分散型樹脂の製造方法であり、
前記二液型熱硬化性樹脂組成物は、水分散性を有するポリイソシアネートを硬化剤として含み、
1分子中に複数のビニル基を有する多官能モノマー、酸基含有モノマー及び水酸基含有モノマーを含むモノマー混合物を2段以上の溶液重合に供することによって溶剤型樹脂を得、当該溶剤型樹脂を水分散させる工程を含み、
前記モノマー混合物における前記多官能モノマーの割合が0.1質量%以上3質量%以下であり、
前記モノマー混合物の酸価が10mgKOH/g以上45mgKOH/g以下であり、
前記モノマー混合物の水酸基価が50以上200以下であることを特徴とする水分散型樹脂の製造方法。
【請求項16】
主剤と、水分散性を有するポリイソシアネートを含む硬化剤とを含有する二液型熱硬化性樹脂組成物の製造方法であって、
請求項15に記載の方法により水分散型樹脂を製造する工程と、
硬化剤を、前記水分散型樹脂を含む主剤と混合する工程と、
を含むことを特徴とする二液型熱硬化性樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2009−221243(P2009−221243A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64303(P2008−64303)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】