説明

水密被覆ボンド線、水密被覆ボンド線の被覆装置およびその方法

【課題】防食性を有する水密被覆ボンド線、水密被覆ボンド線とする水密被覆ボンド線の被覆装置およびその方法を提供する。
【解決手段】導体部80の両端に端子部90が圧縮接続されて構成されているボンド線の導体部80と、圧縮接続された両端子部90の当該導体部80側の所望の部位とが、水密被覆されて成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンド線に係り、詳しくは、防食性を有する水密被覆ボンド線、水密被覆ボンド線の被覆装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図2は、従来のボンド線を示す構成図である。図2において、ボンド線は、導体部80の両端に端子部90が圧縮接続されて構成されている。導体部80は、アルミ撚線、銅撚線、または鉄撚線からなり、端子部90は、アルミ端子、銅端子、または鉄端子からなる。また、用途に応じて、導体と端子は、異種金属になり得る。
【0003】
このように、従来のボンド線は、裸撚線の導体部80に端子部90が圧縮接続されて用いられるため、雨水等により腐食が発生する。特に撚線の隙間から端子内に雨水が浸入するため、異種金属による端子接続の場合は局部電池作用により腐食の進行が速まり、導体部80と端子部90との境界において、電気抵抗の増加、機械的強度の劣化等の問題が生じる。また、露出している導体部位が取付け部位諸金属と異なった場合、雨水等によりイオン化した水溶液が滴下し、これにより周囲の金属を電蝕する原因となる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、防食性を有する水密被覆ボンド線、水密被覆ボンド線とする水密被覆ボンド線の被覆装置およびその方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の水密被覆ボンド線は、導体部の両端に端子部が圧縮接続されて構成されているボンド線の導体部と、圧縮接続された両端子部の当該導体部側の所望の部位とが、水密被覆されて成ることを特徴とする。
【0006】
本発明の水密被覆ボンド線の被覆装置は、成形剤が注入されてボンド線に水密被覆を形成する射出成形金型と、成形剤を注入する成形剤注入器とを有し、射出成形金型は、ボンド線を把持するため2つ割れ構造を成し、成形剤が注入される注入口とエア抜き口と金型結合部と気密シール部とを備え、注入口は、射出成形金型の中央に設けられ、エア抜き口は、射出成形金型の両端部に設けられ、金型結合部は、射出成形金型を合体させた上下左右の4箇所に設けられ、気密シール部は、2つ割れ構造の射出成形金型の両側の合体面に気密シール構造を有し、成形剤注入器は、成形剤を注出するための注出口を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の水密被覆ボンド線の被覆方法は、ボンド線が、両側から所望の張力をかけて固定される治具に取付けられるステップと、2つ割れ構造の射出成形金型が、両側からボンド線を挟み、ボンド線の両端の端子部の所定の位置にセットされ、上下左右の4箇所の金型結合部により、所定の圧力を維持して固定されるステップと、成形剤注入器の注出口が、2つ割れ構造の射出成形金型の注入口に接続され、成形剤注入器から成形剤の注入が開始され、2つ割れ構造の射出成形金型の左右のエア抜き口から成形剤が露出した時点で注入を停止するステップと、成形剤が硬化するための所定の加熱で硬化時間が経過した後、射出成形金型を解体し、成形された水密被覆ボンド線を治具から取り外すステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、防食性を有する水密被覆ボンド線、水密被覆ボンド線とする水密被覆ボンド線の被覆装置およびその方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による水密被覆ボンド線の被覆工程を説明する装置構成図。
【図2】従来のボンド線を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0010】
本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。図1は、本発明による水密被覆ボンド線の被覆工程を説明する装置構成図である。始めに、水密被覆ボンド線の被覆装置に行いて説明する。図1において、水密被覆ボンド線の被覆装置は、成形剤85が注入されてボンド線に水密被覆を形成する射出成形金型10と、成形剤85を注入する成形剤注入器60とを有する。また、射出成形金型10は、ボンド線を把持するため2つ割れ構造を成し、この2つ割れ構造の射出成形金型10が合わさり、端子部90においてボンド線を把持する。
【0011】
射出成形金型10は、成形剤85が注入される注入口20とエア抜き口30と金型結合部40と気密シール部50とを備えている。注入口20は、均一に成形剤85を注入するため射出成形金型10の中央に設けられている。エア抜き口30は、成形剤85の注入時におけるエア抜きとして、射出成形金型10の両端部に設けられている。金型結合部40は、2つ割れ構造の射出成形金型10を合体させて所定の圧力で固定するため、上下左右の4箇所に設けられている。気密シール部50は、2つ割れ構造の射出成形金型10の両側の合体面に、注入時における成形剤85の漏洩を防ぐための気密シール構造を有している。
【0012】
また、成形剤85を注入する成形剤注入器60は、注入口20に接続して成形剤85を注入するための注出口70を具備している。注入口20は、両端から、射出成形金型10の全長の1/4の長さの位置にそれぞれ設けても良い、この場合、エア抜き口30を射出成形金型10の中央に設けても良い。また、成形剤85は、シリコーン樹脂であることが望ましい。
【0013】
次に、水密被覆ボンド線の被覆方法に行いて説明する。再び図1において、従来のボンド線が、中央部が弛まないように両側から所望の張力をかけて固定する治具(図示せず)に取付けられる。次に、2つ割れ構造の射出成形金型10により、両側からボンド線を挟み、両側の端子部90の所定の位置にセットされていることを確かめた後、上下左右の4箇所の金型結合部40が、所定の圧力を維持して固定される。次に、成形剤注入器60の注出口70が、注入口20に接続される。次に、成形剤注入器60から成形剤85の注入が開始され、左右のエア抜き口30から成形剤85が露出した時点で注入を停止する。次に、成形剤85が硬化するための所定の加熱で硬化時間が経過した後、射出成形金型10を解体し、成形された水密被覆ボンド線を治具から取り外し完了する。
【0014】
以上説明したように本発明によれば、従来のボンド線を容易に水密被覆ボンド線に成形することができるため、成形された水密被覆ボンド線の導体部の腐食は防止され、且つ、撚線の隙間から端子内に雨水が浸入することが無くなるため、導体部と端子部との境界において生じる、電気抵抗の増加、機械的強度の劣化等の問題を解消することができる。
【符号の説明】
【0015】
10 射出成形金型
20 注入口
30 エア抜き口
40 金型結合部
50 気密シール部
60 成形剤注入機
70 注出口
80 導体部
85 成形剤
90 端子部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体部の両端に端子部が圧縮接続されて構成されているボンド線の前記導体部と、前記圧縮接続された両端子部の前記導体部側の所望の部位とが、水密被覆されて成ることを特徴とする水密被覆ボンド線。
【請求項2】
水密被覆ボンド線の被覆装置であって、
成形剤が注入されてボンド線に水密被覆を形成する射出成形金型と、前記成形剤を注入する成形剤注入器とを有し、
前記射出成形金型は、前記ボンド線を把持するため2つ割れ構造を成し、成形剤が注入される注入口とエア抜き口と金型結合部と気密シール部とを備え、
前記注入口は、前記射出成形金型の中央に設けられ、前記エア抜き口は、前記射出成形金型の両端部に設けられ、前記金型結合部は、前記射出成形金型を合体させた、上下左右の4箇所に設けられ、前記気密シール部は、前記2つ割れ構造の射出成形金型の両側の合体面に、気密シール構造を有し、
前記成形剤注入器は、前期成形剤を注出するための注出口を有することを特徴とする水密被覆ボンド線の被覆装置。
【請求項3】
水密被覆ボンド線の被覆方法であって、
ボンド線が、両側から所望の張力をかけて固定される治具に取付けられるステップと、
2つ割れ構造の射出成形金型が、両側から前記ボンド線を挟み、前記ボンド線の両端の端子部の所定の位置にセットされ、上下左右の4箇所の金型結合部により、所定の圧力を維持して固定されるステップと、
成形剤注入器の注出口が、前記2つ割れ構造の射出成形金型の注入口に接続され、前記成形剤注入器から成形剤の注入が開始され、前記2つ割れ構造の射出成形金型の左右のエア抜き口から前記成形剤が露出した時点で注入を停止するステップと、
前記成形剤が硬化するための所定の加熱で硬化時間が経過した後、前記射出成形金型を解体し、成形された前記水密被覆ボンド線を治具から取り外すステップとを有することを特徴とする水密被覆ボンド線の被覆方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−94384(P2012−94384A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241019(P2010−241019)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000117010)旭電機株式会社 (127)
【Fターム(参考)】