説明

水性ポリマー分散液の製造方法

水性ポリマー分散液の製造方法であって、水性媒体中で第1の反応工程でヒドロキシカルボン酸化合物を酵素および分散剤、ならびに場合によっては水中で僅かに可溶性の有機溶剤および/またはエチレン性不飽和モノマーの存在で反応させてポリエステルに変え、引続きポリエステルの存在で第2の反応工程でエチレン性不飽和モノマーをラジカル重合させることによる、水性ポリマー分散液の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、水性ポリマー分散液の製造方法であり、この方法は、水性媒体中で、第一の反応工程において、
a)ヒドロキシカルボン酸化合物Aを、
b)ヒドロキシカルボン酸化合物Aを基礎として、水性媒体中でポリエステルの形成を触媒する酵素B、および
c)分散剤C
ならびに、場合により
d)水中への可溶性が低い有機溶剤D、および/またはe)エチレン性不飽和モノマーEの存在下で反応させて、
ポリエステルを得て、それに引き続き、該ポリエステルの存在下で、第二の反応工程において、エチレン性不飽和モノマーEをラジカル重合させることによって特徴付けられる。
【0002】
また、本発明の対象は、本発明による方法により得られる水性ポリマー分散液、そこから得られるポリマー粉末ならびにその使用に関する。
【0003】
水性のポリエステル分散液の製造方法は、一般に知られている。その際、その製造は、一般に、有機ジオールと有機ジカルボン酸か、またはヒドロキシカルボン酸化合物、例えばラクトンのいずれかを反応させて、ポリエステルを得ることで行われる。このポリエステルを、次いで、後続の工程において、一般にまず、ポリエステル溶融物に変換させ、これを次いで有機溶剤および/または分散剤の補助下に、種々の方法に従って水性媒体中に分散させることで、いわゆる二次分散液が形成される(これについては、例えばEP−A927219号およびそこに引用される文献を参照のこと)。溶剤が使用される場合に、これは、分散段階に引き続き再び留去せねばならない。さらに、ポリエステルを基礎とする水性分散液の酵素触媒による製造は、WO 04/035801号に開示されている。
【0004】
公知法により得られる水性ポリエステル分散液あるいはそのポリエステル自体は、多くの用途において好ましい特性を有するが、それでも矢張りしばしば、更なる最適化の要望がある。
【0005】
本発明の課題は、ポリエステルを基礎とする新規の水性ポリマー分散液を製造するための方法を提供することにあった。
【0006】
意外にも、前記課題は冒頭に定義された方法により解決された。
【0007】
ヒドロキシカルボン酸化合物Aとしては、C2〜C30−脂肪族ヒドロキシカルボン酸もしくは芳香族ヒドロキシカルボン酸、それらのC1〜C5−アルキルエステル、特にそれらのメチルエステルおよび/または環状誘導体、例えばラクトンを使用することができる。
【0008】
ヒドロキシカルボン酸化合物Aとしては、C2〜C30−脂肪族ヒドロキシカルボン酸もしくは芳香族ヒドロキシカルボン酸、それらのC1〜C5−アルキルエステル、特にそれらのメチルエステルおよび/または環状誘導体、例えばラクトンを使用することができる。 例として、遊離のヒドロキシカルボン酸、つまりヒドロキシエタン酸(グリコール酸、2−ヒドロキシ酢酸)、D−、L−、D,L−2−ヒドロキシプロパン酸(D−、L−、D,L−乳酸、2−ヒドロキシプロピオン酸)、3−ヒドロキシプロパン酸(3−ヒドロキシプロピオン酸)、4−ヒドロキシブタン酸(4−ヒドロキシ酪酸)、5−ヒドロキシペンタン酸(5−ヒドロキシ吉草酸)、6−ヒドロキシヘキサン酸(6−ヒドロキシカプロン酸)、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシカプロン酸、7−ヒドロキシヘプタン酸(7−ヒドロキシエナント酸)、8−ヒドロキシオクタン酸(8−ヒドロキシカプリル酸)、9−ヒドロキシノナン酸(9−ヒドロキシペラルゴン酸)、10−ヒドロキシデカン酸(10−ヒドロキシカプリン酸)、11−ヒドロキシウンデカン酸、12−ヒドロキシドデカン酸(12−ヒドロキシラウリン酸)、13−ヒドロキシトリデカン酸、14−ヒドロキシテトラデカン酸(14−ヒドロキシミリスチン酸)、15−ヒドロキシペンタデカン酸、16−ヒドロキシヘキサデカン酸(16−ヒドロキシパルミチン酸)、17−ヒドロキシヘプタデカン酸(17−ヒドロキシマルガリン酸)、18−ヒドロキシオクタデカン酸(18−ヒドロキシステアリン酸)、19−ヒドロキシノナデカン酸、20−ヒドロキシエイコサン酸(20−ヒドロキシアラキン酸)、22−ヒドロキシドコサン酸(22−ヒドロキシベヘン酸)、23−ヒドロキシトリコサン酸、24−ヒドロキシテトラコサン酸(24−ヒドロキシリグノセリン酸)、25−ヒドロキシペンタコサン酸、26−ヒドロキシヘキサコサン酸(26−ヒドロキシセロチン酸)、27−ヒドロキシヘプタコサン酸、28−ヒドロキシオクタコサン酸、29−ヒドロキシノナコサン酸、30−ヒドロキシトリアコンタン酸(30−ヒドロキシメリシン酸)ならびにo−、m−もしくはp−ヒドロキシ安息香酸、それらのC1〜C5−アルキルエステル、特にそれらのメチルエステル、例えばヒドロキシエタン酸メチルエステル、D−、L−、D,L−2−ヒドロキシプロパン酸メチルエステル、3−ヒドロキシプロパン酸メチルエステル、4−ヒドロキシブタン酸メチルエステル、5−ヒドロキシペンタン酸メチルエステル、6−ヒドロキシヘキサン酸メチルエステル、3−ヒドロキシブタン酸メチルエステル、3−ヒドロキシペンタン酸メチルエステル、3−ヒドロキシヘキサン酸メチルエステル、7−ヒドロキシヘプタン酸メチルエステル、8−ヒドロキシオクタン酸メチルエステル、9−ヒドロキシノナン酸メチルエステル、10−ヒドロキシデカン酸メチルエステル、11−ヒドロキシウンデカン酸メチルエステル、12−ヒドロキシドデカン酸メチルエステル、13−ヒドロキシトリデカン酸メチルエステル、14−ヒドロキシテトラデカン酸メチルエステル、15−ヒドロキシペンタデカン酸メチルエステル、16−ヒドロキシヘキサデカン酸メチルエステル、17−ヒドロキシヘプタデカン酸メチルエステル、18−ヒドロキシオクタデカン酸メチルエステル、19−ヒドロキシノナデカン酸メチルエステル、20−ヒドロキシエイコサン酸メチルエステル、22−ヒドロキシドコサン酸メチルエステル、23−ヒドロキシトリコサン酸メチルエステル、24−ヒドロキシテトラコサン酸メチルエステル、25−ヒドロキシペンタコサン酸メチルエステル、26−ヒドロキシヘキサコサン酸メチルエステル、27−ヒドロキシヘプタコサン酸メチルエステル、28−ヒドロキシオクタコサン酸メチルエステル、29−ヒドロキシノナコサン酸メチルエステル、30−ヒドロキシトリアコンタン酸メチルエステルならびにo−、m−もしくはp−ヒドロキシ安息香酸メチルエステルおよび/またはそれらの環状誘導体、例えばグリコリド(1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)、D−、L−、D,L−ジラクチド(3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)、ε−カプロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、バレリアンラクトン、エナントラクトン、カプリルラクトン、ペラルゴラクトン、カプリンラクトン、ウンデカノリド(オキサシクロドデカン−2−オン)、ドデカノリド(オキサシクロトリデカン−2−オン)、トリデカノリド(オキサシクロテトラデカン−2−オン)、テトラデカノリド(オキサシクロペンタデカン−2−オン)またはペンタデカノリド(オキサシクロヘキサデカン−2−オン)が挙げられる。勿論、種々のヒドロキシカルボン酸化合物Aの混合物を使用することもできる。
【0009】
方法に必須のことは、ヒドロキシカルボン酸化合物Aの反応を、水性媒体中で、ヒドロキシカルボン酸化合物Aを基礎として、水性媒体中で、ポリエステルの形成を触媒する酵素Bの存在下で実施することである。その際、ポリエステルの形成下に、ヒドロキシカルボン酸Aからのヒドロキシル基と、ヒドロキシカルボン酸化合物Aからのカルボキシル基もしくはそれから誘導される基との、水の離脱下での(遊離のヒドロキシカルボン酸;−C(=O)OHの場合)、アルコールの離脱下での(ヒドロキシカルボン酸アルキルエステル;−C(=O)Oアルキルの場合)重縮合反応か、ポリエステルの形成下に、相応の環状のヒドロキシカルボン酸化合物A誘導体の開環重合か、いずれかが生ずる。重合反応は、以下の一般反応式に従って進行する:
【化1】

【0010】
殊に
【化2】

【0011】
この場合に、酵素Bとしては、原則的に、ヒドロキシカルボン酸化合物Aを基礎として、水性媒体中で、ポリエステルの形成を触媒できるあらゆる酵素を使用できる。酵素Bとしては、特に、ヒドロラーゼ[EC 3.x.x.x]および/またはトランスフェラーゼ[EC 2.x.x.x]が適している。ヒドロラーゼとしては、例えばエステラーゼ[EC 3.1.x.x]、プロテアーゼ[EC 3.4.x.x]および/またはヒドロラーゼであって、他のペプチド結合としてのC−N結合と反応するものが使用される。本発明によれば、特にカルボキシルエステラーゼ[EC 3.1.1.1]および/またはリパーゼ[EC 3.1.1.3]が使用される。このための例は、アクロモバクターの種、アスペルギルスの種、カンディダの種、カンディダ・アンタルクティカ、ムコールの種、ペニシリウムの種、ゲオトリクムの種、リゾプスの種、ブルクホルデリアの種、シュードモナスの種、シュードモナス・セパシア、サーモマイセスの種、ブタ膵臓もしくはコムギ麦芽に由来するリパーゼならびにバシラスの種、シュードモナスの種、ブルクホルデリアの種、ムコールの種、サッカロマイセスの種、リゾプスの種、サーモアナエロビウムの種、ブタ肝臓もしくはウマ肝臓に由来するカルボキシルエステラーゼである。トランスフェラーゼとしては、例えばアシルトランスフェラーゼ[EC 2.3.x.x]が使用される。このための例は、シュードモナス・オレオボランス、クロモバクテリウム・ビオラセウム、メチロバクテリウム・エクストルクエンスに由来するポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)ポリメラーゼ[EC 2.3.1.−]および/またはクロモバクテリウム・ビオラセウムに由来するアセチル−CoA−C−アセチルトランスフェラーゼである。当然のように、個々の酵素Bを使用することも、または種々の酵素Bの混合物を使用することも可能である。また、酵素Bを遊離形でおよび/または固定化された形で使用することもできる。
【0012】
シュードモナス・セパシア、ブルクホルデリア・プラタリイまたはカンディダ・アンタルクティカ由来のリパーゼを、遊離形でおよび/または固定化された形で使用することが好ましい(例えばNovozymes A/S(デンマーク)社のNovozym(R)435)。
【0013】
使用される酵素Bの全量は、一般に、ヒドロキシカルボン酸化合物Aの全量に対して、それぞれ、0.001〜40質量%、しばしば0.1〜15質量%、たびたび0.5〜8質量%である。
【0014】
本発明による方法により使用される分散剤Cは、原則的に、乳化剤および/または保護コロイドであってよい。その際、当然のように、乳化剤および/または保護コロイドは、それらが特に使用される酵素Bと適合性であり、かつ該酵素を失活しないものが選択される。どのような乳化剤および/または保護コロイドを、規定の酵素Bで使用できるかは、当業者に公知であり、または当業者によって簡単な予備試験において決定されうる。
【0015】
好適な保護コロイドは、例えばポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール、ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸のアルカリ金属塩、ゼラチン誘導体またはアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸および/または4−スチレンスルホン酸を含む共重合体およびそれらのアルカリ金属塩であるが、またN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、アクリルアミド、メタクリルアミド、アミン基を有するアクリレート、メタクリレート、アクリルアミドおよび/またはメタクリルアミドを有するホモポリマーおよびコポリマーである。更なる好適な保護コロイドは、例えばホウベンーヴェイル(Houben−Weyl)の有機化学の手法XIV/1巻、高分子材料、ゲオルグティエメ出版、シュツットガルト、1961年、411〜420頁(Methoden der organischen Chemie,band XIV/1,Makromolekulare Stoffe,Georg−Thieme−Verlag,Stuttgart,1961,Seiten 411 bis 420)に詳細に記載されている。
【0016】
勿論、保護コロイドおよび/または乳化剤からの混合物も使用されてよい。しばしば分散剤として、相対分子量が保護コロイドとは異なって慣用的に1000未満である乳化剤をもっぱら使用する。これらは、アニオン性、カチオン性または非イオン性のいずれかの性質であってよい。当然のように、界面活性剤物質の混合物を使用する場合には、個々の成分が互いに相溶性でなければならず、このことが疑わしい場合には少しの予備試験に基づいて検査することができる。一般に、アニオン性の乳化剤は、互いに相容性であり、かつ非イオン性の乳化剤と相容性である。同じことは、カチオン性の乳化剤についても当てはまり、一方で、アニオン性とカチオン性の乳化剤は、たいてい互いに相容性ではない。好適な乳化剤の概要は、例えばホウベンーヴェイル(Houben−Weyl)の有機化学の手法XIV/1巻、高分子材料、ゲオルグティエメ出版、シュツットガルト、1961年、192〜208頁(Methoden der organischen Chemie, band XIV/1, Makromolekulare Stoffe, Georg−Thieme−Verlag, Stuttgart 1961,Seiten 192 bis 208)に見出される。
【0017】
本発明によれば、分散剤Cとしては、特に乳化剤が使用される。
【0018】
慣用の非イオン性乳化剤は、例えばエトキシ化されたモノ−、ジ−およびトリアルキルフェノール(EO度:3〜50、アルキル基:C4〜C12)ならびにエトキシ化された脂肪アルコール(EO度:3〜80;アルキル基:C8〜C36)である。この例は、BASF社製のLutensol(R)A商標(C1214−脂肪アルコールエトキシレート、EO度:3〜8)、Lutensol(R)AO商標(C1315−オキソアルコールエトキシレート、EO度:3〜30)、Lutensol(R)AT商標(C1618−脂肪アルコールエトキシレート、EO度:11〜80)、Lutensol(R)ON商標(C10−オキソアルコールエトキシレート、EO度:3〜11)およびLutensol(R)TO商標(C13−オキソアルコールエトキシレート、EO度:3〜20)である。
【0019】
慣用のアニオン性乳化剤は、例えばアルキルスルフェート(アルキル基:C8〜C12)、エトキシ化されたアルカノール(EO度:4〜30、アルキル基:C12〜C18)およびエトキシ化されたエトキシ化されたアルキルフェノール(EO度:3〜50、アルキル基:C4〜C12)の硫酸半エステル、アルキルスルホン酸(アルキル基:C12〜C18)およびアルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C9〜C18)のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩である。
【0020】
更に他のアニオン性乳化剤として、一般式(I)
【化3】

[式中、R1およびR2は、H原子であるかまたはC4〜C24−アルキルであり、かつ同時にH原子ではなく、かつM1およびM2は、アルカリ金属イオンおよび/またはアンモニウムイオンであってよい]の他の化合物が判明している。一般式(I)においては、R1およびR2は、好ましくは6〜18個、特に6、12および16個のC原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキル基または水素であり、その際、R1およびR2は同時にH原子ではない。M1およびM2は、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムであることが好ましく、ナトリウムが特に好ましい。M1およびM2がナトリウムであり、R1が12個のC原子を有する分枝鎖状のアルキル基であり、かつR2がH原子であるかまたはR1である化合物(I)が特に有利である。特に、50〜90質量%のモノアルキル化生成物の割合を有する工業用混合物、例えばDowfax(R)2A1(Dow Chemical Company社の商標)を使用する。この化合物(I)は、例えばUS−A4269749号から一般的に公知であり、かつ市販されている。好適なカチオン活性乳化剤は、一般的にはC6〜C18−アルキル−、−アラルキル−または複素環基を有する第一級、第二級、第三級または第四級アンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、オキサゾリニウム塩、モルホリニウム塩、チアゾリニウム塩ならびにアミンオキシドの塩、キノリニウム塩、イソキノリニウム塩、トロピリウム塩、スルホニウム塩およびホスホニウム塩である。例として、ドデシルアンモニウムアセテートまたは相応の硫酸塩、種々の2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルパラフィン酸エステルの硫酸塩もしくは酢酸塩、N−セチルピリジニウム硫酸塩、N−ラウリルピリジニウム硫酸塩ならびにN−セチル−N,N,N−トリメチルアンモニウム硫酸塩、N−ドデシル−N,N,N−トリメチルアンモニウム硫酸塩、N−オクチル−N,N,N−トリメチルアンモニウム硫酸塩、N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウム硫酸塩ならびにジェミニ界面活性剤N,N’−(ラウリルジメチル)エチレンジアミン二硫酸塩、エトキシ化された獣脂アルキル−N−メチルアンモニウム硫酸塩およびエトキシ化されたオレイルアミン(例えばBASF AG社製のUniperol(登録商標)AC、約12個のエチレンオキシド単位)が挙げられる。更なる多数の例は、H.ステシェ著、界面活性剤ポケットブック、カールハンザー出版、ミュンヘン、ウイーン、1981年(H.Staeche,Tensid−Taschenbuch,Carl−Hanser−Verlag,Muenchen,Wien,1981)およびマクカトチェオン著、乳化剤&界面活性剤、MC出版社、グレンロック、1989年(McCutcheon's,Emulsifiers & Detergents,MC Publishing Company,Glen Rock,1989)に見出される。アニオン性の対基ができる限り低く求核性である場合に好ましく、例えばペルクロレート、スルフェート、ホスフェート、ニトレートおよびカルボキシレート、例えばアセテート、トリフルオロアセテート、トリクロロアセテート、プロピオネート、オキサレート、シトレート、ベンゾエートならびにオルガノスルホン酸の共役アニオン、例えばメチルスルホネート、トリフルオロメチルスルホネートおよびパラ−トルエンスルホネート、さらにテトラフルオロボレート、テトラフェニルボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス[ビス(3,5−トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネートまたはヘキサフルオロアンチモネートが好ましい。
【0021】
第一の反応工程において分散剤Cとして好ましくは使用される乳化剤は、ヒドロキシカルボン酸化合物Aの全量に対して、それぞれ、有利には0.005〜20質量%の全量で、好ましくは0.01〜15質量%の全量で、特に0.1〜10質量%の全量で使用される。
【0022】
分散剤Cとして第一の反応工程において付加的にまたは乳化剤の代わりに使用される保護コロイドの全量は、ヒドロキシカルボン酸化合物Aの全量に対して、それぞれ、たびたび0.1〜10質量%、しばしば0.2〜7質量%である。
【0023】
しかしながら好ましくは、第一の反応工程において、乳化剤、特に非イオン性の乳化剤が分散剤Cとして使用される。
【0024】
本発明によれば、第一の反応工程において、場合により付加的に、水中に可溶性が低い有機溶剤Dおよび/またはエチレン性不飽和のモノマーEを使用することもできる。
【0025】
好適な溶剤Dは、5〜30個の炭素原子を有する液状の脂肪族のおよび芳香族の炭化水素、例えばn−ペンタンおよび異性体、シクロペンタン、n−ヘキサンおよび異性体、シクロヘキサン、n−ヘプタンおよび異性体、n−オクタンおよび異性体、n−ノナンおよび異性体、n−デカンおよび異性体、n−ドデカンおよび異性体、n−テトラデカンおよび異性体、n−ヘキサデカンおよび異性体、n−オクタデカンおよび異性体、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クメン、o−、m−もしくはp−キシレン、メシチレンならびに沸点範囲30〜250℃の一般的な炭化水素混合物である。同様に使用可能なものは、ヒドロキシ化合物、例えば10〜28個の炭素原子を有する飽和のおよび不飽和の脂肪アルコール、例えばn−ドデカノール、n−トリデカノール、n−ヘキサデカノールおよびそれらの異性体またはセチルアルコール、エステル、例えば10〜28個の炭素原子を酸部に有し、かつアルコール部に1〜10個の炭素原子を有する脂肪酸エステルまたはカルボン酸および脂肪アルコールからのエステルであって、カルボン酸部に1〜10個の炭素原子を有し、かつアルコール部に10〜28個の炭素原子を有するものである。勿論、前記の溶剤の混合物を使用することもできる。
【0026】
溶剤の全量は、第一の反応工程における水の全量に対して、それぞれ、60質量%まで、有利には0.1〜40質量%、特に有利には0.5〜10質量%である。
【0027】
水中で可溶性が低い溶剤Dとは、本発明の範囲においては、溶剤Dまたは溶剤Dからの脱イオン化された水中の混合物が20℃および1アトム(絶対)において、溶解度≦50g/l、有利には≦10g/l、好ましくは≦5g/lを有するものを表すことが望ましい。
【0028】
エチレン性不飽和モノマーEとしては、原則的に、あらゆるラジカル重合可能なエチレン性不飽和化合物が該当する。モノマーEとしては、特に容易にラジカル重合可能なエチレン性不飽和モノマー、例えばエチレン、ビニル芳香族モノマー、例えばスチレン、α−メチルスチレン、o−クロロスチレンまたはビニルトルエン、ビニルアルコールと1〜18個のC原子を有するモノカルボン酸とのエステル、例えばビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニル−n−ブチレート、ビニルラウレートおよびビニルステアレート、好ましくは3〜6個のC原子を有するα,β−モノエチレン性不飽和モノ−およびジカルボン酸、例えば特にアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸と、一般的には1〜12個、好ましくは1〜8個、特に好ましくは1〜4個のC原子を有するアルカノールとのエステル、例えば特にアクリル酸−およびメタクリル酸メチル−、−エチル−、−n−ブチル−、−イソブチルおよび−2−エチルヘキシルエステル、マレイン酸ジメチルエステルまたはマレイン酸−ジ−n−ブチルエステル、α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸のニトリル、例えばアクリロニトリルならびにC4-8−共役ジエン、例えば1,3−ブタジエンおよびイソプレンが挙げられる。当然のように、前記のモノマーEの混合物を使用することもできる。上述のモノマーEは、一般的に、本発明にかかる方法により重合されるべきモノマーEの全量に対して通常は≧50質量%、有利には≧80質量%または好ましくは≧90質量%の割合を占める主要モノマーを形成する。一般的に、これらのモノマーは水中で通常条件[20℃、1アトム(絶対圧)]の場合に、中程度ないしは低程度の溶解度を有するにすぎない。
【0029】
エチレン性不飽和モノマーEの重合によって得られるポリマーの内部強度を慣用的に高める更なるモノマーEは、通常、少なくとも1個のエポキシ基、ヒドロキシ基、N−メチロール基またはカルボニル基を有するかまたは少なくとも2つの非共役エチレン性不飽和二重結合を有する。この例は、2個のビニル基を有するモノマー、2個のビニリデン基を有するモノマーならびに2個のアルケニル基を有するモノマーである。この場合、2価アルコールとα,β−モノエチレン性不飽和モノカルボン酸とのジエステルが特に有利であり、このカルボン酸のうちアクリル酸およびメタクリル酸が好ましい。かかる2価の非共役エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーの例は、アルキレングリコールジアクリレートおよび−ジメタクリレート、例えばエチレングリコールジアクリレート、1,2−プロピレングリコールジアクリレート、1,3−プロピレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレートおよびエチレングリコールジメタクリレート、1,2−プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレートならびにジビニルベンゼン、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、メチレンビスアクリルアミド、シクロペンタンジエニルアクリレート、トリアリルシアヌレートまたはトリアリルイソシアヌレートである。これと関連して、メタクリル酸−およびアクリル酸−C1−C8−ヒドロキシアルキルエステル、例えば2−ヒドロキシエチル−、3−ヒドロキシプロピル−、または4−ヒドロキシブチルアクリレートおよび−メタクリレートならびに例えばジアセトンアクリルアミドおよびアセチルアセトキシエチルアクリレートもしくは−メタクリレートの化合物が特に重要である。本発明によれば、前記のモノマーは、エチレン性不飽和モノマーEの全量に対して、5質量%までの量で、しばしば0.1〜3質量%の量で、たびたび0.5〜2質量%の量で使用される。
【0030】
モノマーEとしては、シロキサン基を含有するエチレン性不飽和モノマー、例えばビニルトリアルコキシシラン、例えばビニルトリメトキシシラン、アルキルビニルジアルコキシシラン、アクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン、またはメタクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン、例えばアクリルオキシエチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシエチルトリメトキシシラン、アクリルオキシプロピルトリメトキシシランまたはメタクリルオキシプロピルトリメトキシシランを使用することもできる。これらのモノマーは、モノマーEの全量に対して5質量%まで、特に0.01〜3質量%、有利には0.05〜1質量%の量で使用される。
【0031】
さらに、モノマーEとして、付加的に、少なくとも1個の酸基および/またはそれに相応するアニオンを含有するエチレン性不飽和モノマーESか、少なくとも1個のアミノ基、アミド基、ウレイド基またはN−複素環基および/または窒素でプロトン化またはアルキル化されたアンモニウム誘導体を含有するエチレン性不飽和モノマーEAを使用してよい。モノマーESもしくはモノマーEAの量は、重合されるモノマーEの全量に対して10質量%まで、有利には0.1〜7質量%、特に0.2〜5質量%である。
【0032】
モノマーESとしては、少なくとも1個の酸基を有するエチレン性不飽和モノマーが使用される。この場合、酸基は、例えばカルボン酸基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基および/またはホスホン酸基であってよい。モノマーESの例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、4−スチレンスルホン酸、2−メタクリルオキシエチルスルホン酸、ビニルスルホン酸およびビニルホスホン酸ならびにn−ヒドロキシアルキルアクリレートおよびn−ヒドロキシアルキルメタクリレートのリン酸モノエステル、例えばヒドロキシエチルアクリレート、n−ヒドロキシプロピルアクリレート、n−ヒドロキシブチルアクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレート、n−ヒドロキシプロピルメタクリレートまたはn−ヒドロキシブチルメタクリレートのリン酸モノエステルである。しかし、本発明によれば、少なくとも1個の酸基を有する上述のエチレン性不飽和モノマーのアンモニウム塩およびアルカリ金属塩を使用することもできる。アルカリ金属としては、ナトリウムおよびカリウムが特に好ましい。この例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、4−スチレンスルホン酸、2−メタクリルオキシエチルスルホン酸、ビニルスルホン酸およびビニルホスホン酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩ならびにヒドロキシエチルアクリレート、n−ヒドロキシプロピルアクリレート、n−ヒドロキシブチルアクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレート、n−ヒドロキシプロピルメタクリレートまたはn−ヒドロキシブチルメタクリレートのリン酸モノエステルのモノ−およびジ−アンモニウム塩、−ナトリウム塩、および−カリウム塩である。
【0033】
アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、4−スチレンスルホン酸、2−メタクリルオキシエチルスルホン酸、ビニルスルホン酸およびビニルホスホン酸をモノマーESとして使用することが好ましい。
【0034】
モノマーEAとしては、少なくとも1個のアミノ基、アミド基、ウレイド基またはN−複素環基および/または窒素でプロトン化またはアルキル化されたそのアンモニウム誘導体を含有するエチレン性不飽和モノマーを使用する。
【0035】
少なくとも1つのアミノ基を有するモノマーEAの例は、2−アミノエチルアクリレート、2−アミノエチルメタクリレート、3−アミノプロピルアクリレート、3−アミノプロピルメタクリレート、4−アミノ−n−ブチルアクリレート、4−アミノ−n−ブチルメタクリレート、2−(N−メチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N−メチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−エチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N−エチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−n−プロピルアミノ)エチルアクリレート、2−(N−n−プロピルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−イソ−プロピルアミノ)エチルアクリレート、2−(N−イソ−プロピルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−t−ブチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N−t−ブチルアミノ)エチルメタクリレート(例えばElf Atochem社でNorsocryl(登録商標)TBAEMAとして市販されているもの)、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリレート(例えばElf Atochem社でNorsocryl(登録商標)ADAMEとして市販されているもの)、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(例えばElf Atochem社でNorsocryl(登録商標)MADAMEとして市販されているもの)、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N,N−ジ−イソ−プロピルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジ−イソ−プロピルアミノ)エチルメタクリレート、3−(N−メチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N−メチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N−エチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N−エチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N−n−プロピルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N−n−プロピルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N−イソ−プロピルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N−イソ−プロピルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N−t−ブチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N−t−ブチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N,N−ジ−イソ−プロピルアミノ)プロピルアクリレートおよび3−(N,N−ジ−イソ−プロピルアミノ)プロピルメタクリレートである。
【0036】
少なくとも1個のアミド基を含有するモノマーEAの例は、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−t−ブチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピルアクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピルメタクリルアミド、N,N−ジ−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジ−イソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチルアクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチルメタクリルアミド、N−(3−N’,N’−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N−(ジフェニルメチル)アクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミドであるが、N−ビニルピロリドンおよびN−ビニルカプロラクタムも挙げられる。
【0037】
少なくとも1個のウレイド基を含有するモノマーEAの例は、N,N’−ジビニルエチレン尿素および2−(1−イミダゾリン−2−オニル)エチルメタクリレート(例えば、Fa.Elf Atochem社のNorsocryl(登録商標)100として市販されている)である。
【0038】
少なくとも1個のN−複素環基を含有するモノマーEAの例は、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルイミダゾールおよびN−ビニルカルバゾールである。
【0039】
以下の化合物:2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニルイミダゾール、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−t−ブチルアミノ)エチルメタクリレート、N−(3−N’,N’−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミドおよび2−(1−イミダゾリン−2−オニル)エチルメタクリレートを使用することが好ましい。
【0040】
水性反応媒体のpH値に応じて、上述の窒素含有モノマーEAの一部または全量が、窒素でプロトン化された第四級アンモニウム形で存在していてよい。
【0041】
モノマーEAであって、その窒素上に1つの第四級アルキルアンモニウム構造を有するものとしては、例えば2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルアクリレートクロリド(例えばElf Atochem社でNorsocryl(登録商標)ADAMQUATとして市販されるもの)、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルメタクリレートクロリド(例えばElf Atochem社でNorsocryl(登録商標)MADQUAT MC 75として市販されるもの)、2−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルアクリレートクロリド、2−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルメタクリレートクロリド、2−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルアクリレートクロリド、2−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルメタクリレート、2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルアクリレートクロリド(例えばElf Atochem社でNorsocryl(登録商標)ADAMQUAT BZ 80として市販されているもの)、2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルメタクリレートクロリド(例えばElf Atochem社でNorsocryl(登録商標)MADQUAT BZ 75として市販されているもの)、2−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルアクリレートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルメタクリレートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルアクリレートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルメタクリレートクロリド、3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)プロピルアクリレートクロリド、3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)プロピルメタクリレートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルアクリレートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルメタクリレートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルアクリレートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルメタクリレートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)プロピルアクリレートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)プロピルメタクリレートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルアクリレートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルメタクリレートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルアクリレートクロリドおよび3−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルメタクリレートクロリドが挙げられる。上述の塩化物の代わりに、相応する臭化物および硫化物を使用してよいことは勿論である。
【0042】
2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルアクリレートクロリド、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルメタクリレートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルアクリレートクロリドおよび2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルメタクリレートクロリドを使用することが好ましい。
【0043】
上述のエチレン性不飽和モノマーESの混合物を使用してもよいことは勿論である。
【0044】
本発明によれば有利には、エチレン性不飽和モノマーEとして、
アクリル酸および/またはメタクリル酸と、1〜12個のC原子を有するアルカノールとのエステルおよび/またはスチレン50〜99.9質量%、または、
スチレンおよび/またはブタジエン50〜99.9質量%、または、
塩化ビニルおよび/または塩化ビニリデン50〜99.9質量%、または、
ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、バーサチック(Versatic)酸のビニルエステル、長鎖脂肪酸のビニルエステルおよび/またはエチレン40〜99.9質量%を含有するモノマー混合物が使用される。
【0045】
本発明によれば、エチレン性不飽和モノマーEまたは該モノマーEの混合物であって、同様に低い水溶性(溶剤Dと同様)を有するものが好ましい。
【0046】
第一の反応工程で随時使用されるエチレン性不飽和モノマーEの量は、モノマーEの全量に対して、それぞれ、0〜100質量%、しばしば30〜90質量%、たびたび40〜70質量%である。
【0047】
溶剤Dおよび/またはエチレン性不飽和モノマーEおよびそれらの混合物が、第一の反応工程において、溶剤Dおよび/またはエチレン性不飽和モノマーEの水性媒体中での溶解度が、第一の反応工程の反応条件下で、第一の反応工程で随時使用される溶剤Dおよび/またはモノマーEの全量に対して、それぞれ≦50質量%、≦40質量%、≦30質量%、≦20質量%または≦10質量%であり、かつ従って別の相として水性媒体中に存在することが好ましい。好ましくは、第一の反応工程は、溶剤Dおよび/またはモノマーEの存在下で、特に有利にはしかしモノマーEおよび溶剤Dの存在下で実施される。
【0048】
溶剤Dおよび/またはモノマーEは、第一の反応工程において、特に、ヒドロキシカルボン酸化合物Aが水性媒体中で、第一の反応工程の反応条件下で、良好な溶解度を有する、すなわちその溶解度が>50g/l、あるいは≧100g/lである場合に使用される。
【0049】
本発明による方法は、ヒドロキシカルボン酸Aならびに場合により溶剤Dおよび/またはモノマーEの少なくとも一部の量が、水性媒体中に、分散相として、1000nm以下の平均液滴径で存在する(いわゆる水中油ミニエマルジョンまたは短縮してミニエマルジョン)場合に好ましく進行する。
【0050】
特に好ましくは、本発明による方法は、第一の反応工程においては、まず、ヒドロキシカルボン酸化合物A、分散剤Cならびに場合により溶剤Dおよび/またはモノマーEの少なくとも一部の量を一部の量の水もしくは全量の水に導入し、次いで好適な措置によって、ヒドロキシカルボン酸化合物Aならびに場合により溶剤Dおよび/またはモノマーEを含む平均液滴径≦1000nmを有する分散相を生成させ(ミニエマルジョン)、それに引き続きその水性媒体に反応温度で全量の酵素Bならびに場合により残っている水、ヒドロキシカルボン酸化合物A、分散剤Cならびに場合により溶剤Dの残量を添加することで行われる。
【0051】
しばしば、≧50質量%の、≧60質量%の、≧70質量%の、≧80質量%の、≧90質量%のまたは全量のヒドロキシカルボン酸化合物A、分散剤Cおよび場合により溶剤Dを、≧50質量%の、≧60質量%の、≧70質量%の、≧80質量%の、≧90質量%のまたは全量の水に導入し、液滴径≦1000nmを有する分散相を生成させ、そしてそれに引き続き水相に、反応温度で、全量の酵素Bならびに場合により残っている水、ヒドロキシカルボン酸化合物A、分散剤Cおよび場合により溶剤Dの残量を添加する。その際に、酵素Bならびに場合により残っている水、ヒドロキシカルボン酸化合物A、分散剤Cおよび場合により溶剤Dの残量を、水性反応媒体へと、断続的に一回で、断続的に複数回で、ならびに連続的に不変のもしくは可変の流量で添加することができる。
【0052】
しばしば、ヒドロキシカルボン酸化合物Aおよび場合により溶剤Dの全量ならびに分散剤Cの少なくとも一部の量を、主要量もしくは全量の水に導入し、ミニエマルジョンの形成後に反応温度で、全量の酵素Bを、場合により水および分散剤Cの残量と一緒に、水性反応媒体に添加する。
【0053】
本発明により使用されるのが好ましい水性ミニエマルジョンの分散相の液滴の平均寸法は、準弾性的動的光散乱の原理に従って(自動補正関数のユニモーダル分析のいわゆるz平均液滴径dz)、例えばCoulter Scientific Instruments社のCoulter N4 Plus型の粒子解析装置によって測定できる。その測定は、希釈された水性ミニエマルジョンで実施され、分散性成分のその含有率は、約0.01〜1質量%である。希釈は、その際に、事前に水性ミニエマルジョン中に含まれるヒドロキシカルボン酸化合物Aならびに場合により水中に可溶性が低い有機溶剤Dおよび/またはエチレン性不飽和モノマーEで飽和されている水によって行われる。最後の措置は、その希釈により液滴径の変更が伴うことを回避することが望ましい。
【0054】
本発明によれば、いわゆるミニエマルジョンについてこうして測定されたdzについての値は、通常は、≦700nmであり、しばしば≦500nmである。本発明によれば、100nm〜400nmもしくは100nm〜300nmのdz値が好ましい。通常は、本発明により使用される水性ミニエマルジョンのdzは、≧40nmである。
【0055】
水性マクロエマルジョンまたは混合物からの水性ミニエマルジョンの一般的な製造は、当業者に公知である(P.L.Tang、E.D.Sudol、C.A.SilebiおよびM.S.El−Aasser著のJournal of Applied Polymer Science,Vol.43,第1059頁〜第1066頁[1991年])。
【0056】
この目的のために、例えば高圧均質化を使用することができる。それらの成分の微分散は、前記の機器において高い局所的なエネルギー入力によって達成される。これについては、2種類の変法を選択した。
【0057】
第1の変法の場合、水性マクロエマルジョンは、ピストンポンプにより1000バールに圧縮され、引続き狭い間隙を通して放圧される。この場合、この作用は、剪断勾配および圧力勾配と間隙内での空洞化との相互作用に基づく。この原理により機能化された高圧ホモジェナイザーの1例は、ニロ−ソアビ(Niro-Soavi)高圧ホモジェナイザー型NS1001L Pandaである。
【0058】
第2の変法の場合、圧縮された水性マクロエマルジョンは、2個の対向したノズルにより混合室中で放圧される。この場合、微細分布の作用は、特に混合装置の流体力学的比に依存する。前記のホモジェナイザー型の1例は、Microfluidics Corp.社のマイクロフリューダイザ型M 120Eである。前記の高圧ホモジェナイザー中で、水性マクロエマルジョンは、空気圧で駆動するピストンポンプにより120atmにまで圧縮され、所謂"相互作用チャンバー"により放圧される。"相互作用チャンバー"内で、エマルジョン噴流は、マイクロ通路系中で2つの噴流に分配され、この場合これら2つの噴流は、180゜の角度で互いに導かれる。更に、前記の均一化法により作業するホモジェナイザーの1例は、Nanojet Engineering GmbH社のNanojet型Expoである。しかし、このNanojet型の場合には、固定した通路系の代わりに、機械的に調節可能である2個の均一化弁が組み込まれている。
【0059】
しかし、前記に詳説した原理と共に、均一化は、例えば超音波(例えば、Branson Sonifier II 450)を使用することによって行なわれてもよい。この場合、微細分布は、空洞の機構に基づく。超音波による均一化のためには、原則的に英国特許第2250930号明細書および米国特許第5108654号明細書中に記載の装置が適している。この場合、音場で発生される水性ミニエマルジョンの品質は、導入される音波効率に依存するのではなく、別のファクター、例えば混合室内での超音波の強度分布、乳化すべき物質の滞留時間、温度および物理的性質、例えば靭性、界面張力および蒸気圧に依存する。この場合、生じる液滴の寸法は、特に分散剤の濃度ならびに均一化の際に搬入されるエネルギーに依存し、したがって例えば均一化圧力または相応する超音波エネルギーの相応する変化によって意図的に調節可能である。
【0060】
本発明により有利に使用される水性ミニエマルジョンを常用のマクロエマルジョンから超音波により製造するためには、殊に古典的なドイツ連邦共和国特許第19756874号明細書に記載の装置が有効であることが証明された。この場合には、反応空間または貫流反応通路および超音波を反応空間または貫流反応通路に伝達する少なくとも1つの手段を有する装置が重要であり、この場合超音波を伝達する手段は、全反応空間または貫流反応通路が部分区間で均一に超音波で照射されうるように構成されている。この目的のために、超音波を伝達するための手段の放射面は、該放射面が本質的に反応空間の表面に相当するように構成されているか、または反応空間が貫流反応通路の部分区間である場合には、本質的に該通路の全幅に亘って延在し、該放射面に対して本質的に垂直方向の、反応空間の深さは、超音波伝達手段の最大の作用深さより僅かである。
【0061】
本明細書中で"反応空間の深さ"の概念は、本質的に超音波伝達手段の放射面と反応空間の底面との距離である。
【0062】
好ましくは、反応空間の深さは、100mmまでになる。好ましくは、反応空間の深さは、70mm以下、特に有利に50mm以下である。反応空間は、原理的に極めて僅かな深さを有するが、しかし、閉塞の危険ができるだけ僅かであることおよび清浄化の可能性が簡単であること、および生成物の処理量が高いことに関連して、例えば高圧ホモジェナイザーの場合に通常の間隙高さより本質的に大きくかつ多くの場合に10mmを上廻る反応空間の深さが好ましい。反応空間の深さの深さは、好ましくは、例えば種々の深さでケーシング中に浸漬される超音波伝達手段によって変動可能である。
【0063】
この装置の第1の実施形式によれば、超音波を伝達するための手段の放射面積は、本質的に反応空間の表面積に相当する。この実施形式は、本発明により使用されるミニエマルジョンのバッチ形式での製造に使用される。前記装置を用いて、超音波は、全反応空間に作用を及ぼすことができる。反応空間内で軸方向への音波噴流の圧力によって乱流が形成され、この乱流は、強力な横方向への混合を生じさせる。
【0064】
第2の実施形式によれば、この種の装置は、貫流セルを有する。この場合、ケーシングは、供給流および排出流を有する貫流反応通路として形成されており、この場合反応空間は、貫流反応通路の部分区間である。通路の幅は、本質的に流れ方向に対して垂直方向に延びる通路拡張部である。この場合、放射面は、流れ方向に対して横方向に流動通路の全幅を網羅する。前記の幅に対して水力方向の、放射面の長さ、即ち流れ方向の放射面の長さは、超音波の作用範囲を定義する。前記の第1の実施形式の好ましい変形によれば、貫流反応通路は、本質的に矩形の横断面を有する。矩形の片側で相応する寸法を有する同様に矩形の超音波伝達手段が組み込まれている場合には、特に作用を有する均一な音波処理が保証されている。しかし、超音波場を占める乱流挙動のために、円形の伝達手段が欠点なしに使用されてよい。更に、唯一の超音波伝達手段の代わりに、流れ方向に見て順次に接続されている多数の別々の伝達手段が配置されていてよい。この場合、放射面積ならびに反応空間の深さ、即ち反射面と貫流反応通路の底面との距離は、変動可能である。
【0065】
特に好ましくは、超音波を伝達するための手段は、自由な放射面から離れた端部が超音波変換器と結合されている超音波発振器として形成されている。超音波は、例えば逆圧電効果を利用することによって発生させることができる。この場合には、ジェネレーターにより高周波の電気的振動(通常、10〜100kHz、特に20〜40kHzの範囲内)が発生され、圧電変換器により同じ周波数の機械的振動に変換され、伝達要素としての超音波発振器により音波処理すべき媒体中に結合される。
【0066】
特に有利には、超音波発振器は、棒状の軸方向に放射するλ/2(またはλ/2の数倍)の長さ方向の振動装置(Laengsschwinger)として構成されている。このような超音波発振器は、例えば振動結節に設けられたフランジによりケーシングの開口内に固定されてよい。それによって、ケーシング中への超音波発振器の実現を圧密に形成させることができ、したがって音波処理は、高められた圧力下でも反応空間内で実施されることができる。特に、超音波発振器の振動振幅は、調節可能であり、即ちそれぞれ調節された振動振幅は、オンラインで試験され、場合によっては自動的に後制御される。現在の振動振幅の試験は、例えば超音波発振器上に取り付けられた圧電変換器または後接続された評価電子機器を備えた延性測定ストリップによって行なうことができる。
【0067】
この種の装置の他の好ましい構成によれば、反応空間内には、貫流挙動および混合挙動を改善するために取付け物が設けられている。この取付け物は、例えば簡単な転向板または多種多様の多孔質体であることができる。
【0068】
更に、必要な場合には、付加的な攪拌機によってさらに強化させることができる。好ましくは、反応空間は、温度調節可能である。
【0069】
前記の実施形式から、本発明によれば、1000nm以下の記載された量の溶剤液滴および/またはモノマー液滴で別の相として構成させるために、水性媒体中での溶解度が反応条件下で十分に小さいような有機溶剤Dおよび/またはエチレン系不飽和モノマーEが使用されてよいことは、明らかである。更に、形成された溶剤液滴および/またはモノマー液滴の溶解能は、少なくとも部分量、しかし有利には、主要量のヒドロキシカルボン酸化合物Aを吸収するために十分な大きさでなければならない。
【0070】
第1の反応工程でヒドロキシカルボン酸化合物Aと共に、有機ジオール化合物F、ジアミン化合物G、ジカルボン酸化合物H、アミノアルコール化合物I、アミノカルボン酸化合物Kおよび/または1分子当たり少なくとも3個のヒドロキシル基、第1アミノ基または第2アミノ基および/またはカルボキシル基を含有する有機化合物Lを使用することができることは、本発明にとって重要なことである。この場合、個々の化合物F、G、H、I、KおよびKの全体量の総和は、それぞれヒドロキシカルボン酸化合物Aの全体量に対して50質量%以下、有利に40質量%以下、殊に有利に30質量%以下、またはしばしば0.1質量%以上または1質量%以上、大抵は5質量%以上であることは、本質的なことである。
【0071】
ジオール化合物Fとしては、本発明によれば、分枝鎖状のもしくは直鎖状の、2〜18個の炭素原子を有する、有利には4〜14個の炭素原子を有するアルカンジオール、5〜20個の炭素原子を有するシクロアルカンジオールまたは芳香族ジオールが使用される。
【0072】
好適なアルカンジオールの例は、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、2,4−ジメチル−2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオールまたは2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオールである。特に適しているのは、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールおよび2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオールまたは1,12−ドデカンジオールである。
【0073】
シクロアルカンジオールの例は、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール(1,2−ジメチロールシクロヘキサン)、1,3−シクロヘキサンジメタノール(1,3−ジメチロールシクロヘキサン)、1,4−シクロヘキサンジメタノール(1,4−ジメチロールシクロヘキサン)または2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールである。
【0074】
好適な芳香族ジオールの例は、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,2−ジヒドロキシベンゼン、ビスフェノールA[2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン]、1,3−ジヒドロキシナフタリン、1,5−ジヒドロキシナフタリンまたは1,7−ジヒドロキシナフタリンである。
【0075】
しかしながらまた、ジオール化合物Fとして、ポリエーテルジオール、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(≧4個のエチレンオキシド単位を有する)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(≧4個のプロピレンオキシド単位を有する)およびポリテトラヒドロフラン(ポリTHF)、特にジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびポリエチレングリコール(≧4個のエチレンオキシド単位を有する)を使用することもできる。ポリTHF、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールとしては、その数平均分子量(Mn)が、一般に200〜10000、有利には600〜5000g/モルの範囲にある化合物が使用される。
【0076】
また前記のジオール化合物Fの混合物を使用してもよい。
【0077】
しかしながら、特に有利には、ジオール化合物Fとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオールおよび/または1,12−ドデカンジオールが使用される。
【0078】
ジアミン化合物Gとしては、2個の第一級もしくは第二級のアミノ基を有するあらゆる有機ジアミン化合物が該当し、その際、第一級アミノ基が好ましい。その際、2個のアミノ基を有する有機骨格は、C2〜C20−脂肪族、C3〜C20−脂環式、芳香族もしくは複素芳香族の構造を有してよい。2つの第一級アミノ基を有する化合物の例は、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン、2−メチル−1,3−ジアミノプロパン、2,2−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン(ネオペンチルジアミン)、1,4−ジアミノブタン、1,2−ジアミノブタン、1,3−ジアミノブタン、1−メチル−1,4−ジアミノブタン、2−メチル−1,4−ジアミノブタン、2,2−ジメチル−1,4−ジアミノブタン、2,3−ジメチル−1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,2−ジアミノペンタン、1,3−ジアミノペンタン、1,4−ジアミノペンタン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、3−メチル−1,5−ジアミノペンタン、2,2−ジメチル−1,5−ジアミノペンタン、2,3−ジメチル−1,5−ジアミノペンタン、2,4−ジメチル−1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,2−ジアミノヘキサン、1,3−ジアミノヘキサン、1,4−ジアミノヘキサン、1,5−ジアミノヘキサン、2−メチル−1,5−ジアミノヘキサン、3−メチル−1,5−ジアミノヘキサン、2,2−ジメチル−1,5−ジアミノヘキサン、2,3−ジメチル−1,5−ジアミノヘキサン、3,3−ジメチル−1,5−ジアミノヘキサン、N,N′−ジメチル−1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、3,3′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン(ジシアン)、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン(Laromin(登録商標))、イソホロンジアミン(3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン)、1,4−ジアジン(ピペラジン)、1,2−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、m−キシリレンジアミン[1,3−(ジアミノメチル)ベンゼン]ならびにp−キシリレンジアミン[1,4−(ジアミノメチル)ベンゼン]である。勿論、前記の化合物の混合物を使用することもできる。
【0079】
ジカルボン酸化合物Hとしては、原則的に、全てのC2〜C40−脂肪族の、C3〜C20−脂環式の、芳香族のもしくは複素芳香族の化合物であって、2つのカルボン酸基(カルボキシル基)またはその誘導体を有するものを使用することができる。誘導体としては、特に前記のジカルボン酸のC1〜C10−アルキル−、有利にはメチル−、エチル−、n−プロピル−もしくはイソプロピル−モノエステルもしくはジエステル、相応のジカルボン酸ハロゲン化物、特にジカルボン酸二塩化物ならびに相応のジカルボン酸無水物が使用される。係る化合物の例は、エタン二酸(シュウ酸)、プロパン二酸(マロン酸)、ブタン二酸(コハク酸)、ペンタン二酸(グルタル酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、ヘプタン二酸(ピメリン酸)、オクタン二酸(コルク酸)、ノナン二酸(アゼライン酸)、デカン二酸(セバシン酸)、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸(ブラシル酸)、C32−二量体脂肪酸(Cognis Corp.社(米国)の商品)、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸(フタル酸)、ベンゼン−1,3−ジカルボン酸(イソフタル酸)またはベンゼン−1,4−ジカルボン酸(テレフタル酸)、それらのメチルエステル、例えばエタン二酸ジメチルエステル、プロパン二酸ジメチルエステル、ブタン二酸ジメチルエステル、ペンタン二酸ジメチルエステル、ヘキサン二酸ジメチルエステル、ヘプタン二酸ジメチルエステル、オクタン二酸ジメチルエステル、ノナン二酸ジメチルエステル、デカン二酸ジメチルエステル、ウンデカン二酸ジメチルエステル、ドデカン二酸ジメチルエステル、トリデカン二酸ジメチルエステル、C32−二量体脂肪酸ジメチルエステル、フタル酸ジメチルエステル、イソフタル酸ジメチルエステルまたはテレフタル酸ジメチルエステル、それらの二塩化物、例えばエタン二酸二塩化物、プロパン二酸二塩化物、ブタン二酸二塩化物、ペンタン二酸二塩化物、ヘキサン二酸二塩化物、ヘプタン二酸二塩化物、オクタン二酸二塩化物、ノナン二酸二塩化物、デカン二酸二塩化物、ウンデカン二酸二塩化物、ドデカン二酸二塩化物、トリデカン二酸二塩化物、C32−二量体脂肪酸二塩化物、フタル酸二塩化物、イソフタル酸二塩化物またはテレフタル酸二塩化物ならびにそれらの無水物、例えばブタン二酸−、ペンタン二酸−またはフタル酸無水物である。勿論、前記の化合物Hの混合物を使用することもできる。
【0080】
好ましくは、ジカルボン酸、特にブタン二酸、ヘキサン二酸、デカン二酸、ドデカン二酸、テレフタル酸またはイソフタル酸もしくはそれらの相応のジメチルエステルが使用される。
【0081】
アミノアルコール化合物Iとしては、原理的に全ての、しかし有利にはC2〜C12−脂肪族、C5〜C10−脂環式または芳香族有機化合物を使用することができ、該化合物は、専らヒドロキシル基および第2または第1、有利に第1アミノ基を有する。例示的に、2−アミノエタノール、3−アミノプロパノール、4−アミノブタノール、5−アミノペンタノール、6−アミノヘキサノール、2−アミノシクロペンノール、3−アミノシクロペンタノール、2−アミノシクロヘキサノール、3−アミノシクロヘキサノール、4−アミノシクロヘキサノールならびに4−アミノメチルシクロヘキサンメタノール(1−メチロール−4−アミノメチルシクロヘキサン)が挙げられる。勿論、前記アミノアルコール化合物Iの混合物が使用されてもよい。
【0082】
本明細書の範囲内でアミノカルボン酸および/またはその相応するラクタム化合物であると理解されるアミノカルボン酸化合物Kもヒドロキシカルボン酸化合物Aと共に使用されてよい。例示的には、天然に存在するアミノカルボン酸、例えばバリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リシン、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、プロリン、セリン、チロシン、アスパラギンまたはグルタミンならびに3−アミノプロピオン酸、4−アミノ酪酸、5−アミノ吉草酸、6−アミノカプロン酸、7−アミノエナント酸、8−アミノカプリル酸、9−アミノペラルゴン酸、10−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノラウリン酸およびラクタムβ−プロピオラクタム、γ−ブチロラクタム、δ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム、7−エナントラクタム、8−カプリロラクタム、9−ペラルゴラクタム、10−デカン酸ラクタム、11−ウンデカン酸ラクタムまたはω−ラウリン酸ラクタムが挙げられる。好ましくは、ε−カプロラクタムおよびω−ラウリン酸ラクタムである。勿論、前記アミノカルボン酸化合物Kの混合物が使用されてもよい。
【0083】
場合によっては、本発明による方法で使用されうる他の成分としては、1分子当たり少なくとも3個のヒドロキシル基、第1アミノ基または第2アミノ基および/またはカルボキシル基を含有する有機化合物Lを挙げることができる。例示的には、次のものが挙げられる:酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリット、ペンタエリトリトール、グリセリン、糖(例えば、グルコース、マンノース、フラクトース、ガラクトース、グルコサミン、サッカロース、ラクトース、トレハロース、マルトース、セロビオース、ゲンチアノース、ケストース、マルトトリオース、ラフィノース、トリメシン酸(1,3,5−ベンゾールカルボン酸ならびにそのエステルまたは無水物)、トリメリット酸(1,2,4−ベンゾールトリカルボン酸ならびにそのエステルまたは無水物)、ピロメリット酸(1,2,4,5−ベンゾールテトラカルボン酸ならびにそのエステルまたは無水物)、4−ヒドロキシイソフタル酸、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ビスヘキサメチレントリアミン、N,N′−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、ジエタノールアミンまたはトリエタノール。前記化合物Lは、1分子当たり少なくとも3個のヒドロキシル基、第1アミノ基または第2アミノ基および/またはカルボキシル基によって、同時に少なくとも2個のポリエステル鎖を組み込むことができる状態にあり、したがって化合物Lは、ポリエステル形成の際に枝分かれ作用または架橋作用を有する。化合物Lの含量が高ければ高いほど、または1分子当たりアミノ基、ヒドロキシル基および/またはカルボキシル基が多ければ多いほど、ポリエステル形成の際に枝分かれ/架橋の程度は、ますます高くなる。勿論、この場合には、化合物Lの混合物が使用されてよい。
【0084】
本発明によれば、有機ジオール化合物F、ジアミン化合物G、ジカルボン酸化合物H、アミノアルコール化合物I、アミノカルボン酸化合物Kおよび/または1分子当たり少なくとも3個のヒドロキシル基、第1アミノ基または第2アミノ基および/またはカルボキシル基を含有する有機化合物Lが使用されてもよい。
【0085】
本発明によれば、第1の反応工程でヒドロキシカルボン酸化合物Aと共に、前記化合物F〜Lの少なくとも1つを使用する場合には、化合物AならびにF〜Lの量は、カルボキシル基および/またはその誘導体(個々の化合物A、H、KおよびLから)とアミノ基および/またはヒドロキシル基および/またはその誘導体の総和(個々の化合物A、F、G、I、KおよびLから)との当量比が0.5〜1.5、一般に0.8〜1.3、しばしば0.9〜1.1、大抵は0.95〜1.05であるように選択されることに注目することができる。当量比が1である場合、即ち等しく多数のアミノ基およびヒドロキシル基、例えばカルボキシル基またはそれから誘導された基が存在することは、特に好ましい。よりいっそう良好に理解するために、ヒドロキシカルボン酸化合物A(遊離酸、エステルおよびラクトン)がカルボキシル基1当量を有し、ジカルボン酸化合物H(遊離酸、エステル、ハロゲン化物または無水物)がカルボキシル基2当量を有し、アミノカルボン酸化合物Kは、カルボキシル基1当量を有し、有機化合物Lは、1分子当たり複数のカルボキシル基を含有するようにカルボキシル基数当量を有することを注釈する。相応するように、ヒドロキシカルボン酸化合物Aは、ヒドロキシル基1当量を有し、ジオール化合物Fは、ヒドロキシル基2当量を有し、ジアミン化合物Gは、アミノ基2当量を有し、アミノアルコール化合物Iは、ヒドロキシル基およびアミノ基1当量を有し、アミノカルボン酸化合物Kは、アミノ基1当量を有し、有機化合物Lは、分子中にヒドロキシル基またはアミノ基を含有するようにヒドロキシル基またはアミノ基4当量を有する。
【0086】
この場合、本発明による方法それ自体にとって、酵素Bが殊に使用されるヒドロキシカルボン酸化合物Aならびに有機ジオール化合物F、ジアミン化合物G、ジカルボン酸化合物H、アミノアルコール化合物I、アミノカルボン酸化合物K、1分子当たり少なくとも3個のヒドロキシル基、第1アミノ基または第2アミノおよび/またはカルボキシル基を含有する有機化合物L、または分散剤C、溶剤Dおよび/またはエチレン系不飽和モノマーEと認容性であり、かつ前記化合物または前記基によって不活性化されないように選択されることは、理解される。一定の酵素Bの場合には、どの化合物AならびにC〜Lを使用することができるのかを当業者であれば知っているかまたはこの酵素によって簡単な前試験で測定することができる。
【0087】
ヒドロキシカルボン酸化合物Aと共に前記化合物F、G、H、I、Kおよび/またはLの1つを使用する場合には、本発明による方法の第1の反応工程は、最初にヒドロキシカルボン酸化合物Aの部分量、化合物F、G、H、I、Kおよび/またはL、分散剤Cおよび場合によっては溶解剤Dおよび/またはエチレン系不飽和モノマーEを水の少なくとも1つの部分量中に導入し、その後に適当な手段によりヒドロキシカルボン酸化合物A、化合物F、G、H、I、Kおよび/またはLならびに場合によっては溶解剤Dおよび/またはエチレン系不飽和モノマーEを含む、1000nm以下の平均液滴直径を有する分散相を形成させ(ミニエマルジョン)、それに引続き水性媒体に反応温度で酵素Bの全体量ならびに場合によっては残存する残留量のヒドロキシカルボン酸化合物A、化合物F、G、H、I、Kおよび/またはLおよび溶解剤Dを添加することにより構成された利点をもって行なわれる。しばしば、≧50質量%の、≧60質量%の、≧70質量%の、≧80質量%の、≧90質量%のまたはむしろ全量のヒドロキシカルボン酸化合物A、化合物F、G、H、I、Kおよび/またはL、分散剤Cおよび場合により溶剤Dを、≧50質量%の、≧60質量%の、≧70質量%の、≧80質量%の、≧90質量%のまたはむしろ全量の水に導入し、引続き液滴径≦1000nmを有する分散相を生成させ、そしてそれに引き続き水相に、反応温度で、全量の酵素Bならびに場合により残っているヒドロキシカルボン酸化合物A、化合物F、G、H、I、Kおよび/またはLおよび場合により溶剤Dの残量を添加する。その際に、酵素B、場合により残っているヒドロキシカルボン酸化合物A、化合物F、G、H、I、Kおよび/またはLおよび溶剤Dの残量を、水性反応媒体へと、別々にかまたは一緒にして、断続的に一回で、断続的に複数回で、ならびに連続的に不変のもしくは可変の流量で添加することができる。
【0088】
本発明による方法の第1の反応工程は、一般に20〜90℃、しばしば35〜35〜60℃、大抵は45〜55℃の反応温度で一般に0.8〜10バール、有利に0.9〜2バールの圧力、殊に1atm(=1.101バール=大気圧)で行なわれる。
【0089】
更に、水性反応媒体が第1の反応工程で室温(20〜25℃)で2以上および11以下、しばしば3以上および9以下、大抵は6以下および8以下のpH値を有することは、好ましい。殊に、水性反応媒体中で酵素Bが最適な作用を有するようなpH値(範囲)に調節される。このpH値は、どの位のpH値であるのかを当業者であれば知っているかまたはこのpH値によって簡単な前試験で測定することができる。pH値を調節するための相応する手段、即ち相応する量の酸、例えば硫酸、塩基、例えばアルカリ金属水酸化物、殊に水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの水溶液、または緩衝剤、例えば燐酸水素カリウム/燐酸水素二ナトリウム、酢酸/酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム/塩化アンモニウム、燐酸水素カリウム/水酸化ナトリウム、ボラックス/塩酸、ボラックス/水酸化ナトリウムまたはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/塩酸の添加量は、当業者に公知である。
【0090】
本発明による方法のためには、通常、澄明であり、しばしば飲料水の品質を有する水が使用される。しかし、好ましくは、本発明による方法には、脱イオン水および第1の反応工程で滅菌された脱イオン水が使用される。この場合、水量は、第1の反応工程で、本発明による形成される水性ポリエステル分散液がそれぞれ水性ポリエステル分散液に対して30質量%以上、しばしば50質量%以上および99質量%以下、または65質量%以上および95質量%以下、大抵は70質量%以上および90質量%以下であり、70質量%以下、しばしば1質量%以上および50質量%以下、または5質量%以上および35質量%以下、大抵は10質量%以上および30質量%以下のポリエステル固体含量に相当するように選択される。本発明による方法は、第1の反応工程ならびに第2の反応工程で有利に酸素不含の不活性ガス雰囲気下で、例えば窒素雰囲気下またはアルゴン雰囲気下で実施されることも述べられている。
【0091】
本発明によれば、好ましくは、第1の反応工程の水性ポリエステル分散液には、酵素触媒による重合反応に引き続いてかまたは該重合反応の終結時に助剤(不活性化剤)が添加され、この場合この助剤は、本発明により使用される酵素Bを不活性化(即ち、酵素Bの触媒作用を破壊または抑制)させる状態にある。不活性化剤としては、それぞれの酵素Bを不活性化させる状態にある全ての化合物が使用されてよい。不活性化剤としては、しばしば殊に錯体化合物、例えばニトリロ三酢酸またはエチレンジアミン四酢酸、またはこれらのアルカリ金属塩またはアニオン乳化剤、例えばナトリウムドデシルスルフェートを使用することができる。不活性化剤の量は、通常、不活性化剤がまさにそれぞれの酵素Bを不活性化させるのに十分であるように算定される。しばしば、使用される酵素Bを95℃以上または100℃以上の温度への水性ポリエステル分散液の加熱によって不活性化することも可能であり、この場合には、一般に沸騰反応の抑制のために不活性ガスが圧力下で圧縮される。勿論、一定の酵素Bを水性反応媒体のpH値を変えることによって不活性化することも可能である。
【0092】
本発明による方法により第1の反応工程で自由に利用できるポリエステルは、−100℃〜+200℃のガラス転移温度を有することができる。使用目的に応じて、しばしばガラス転移温度が一定の範囲以下にあるようなポリエステルが必要とされる。本発明による方法で使用される成分AならびにF〜Lを適当に選択することによって、当業者には、意図的にガラス転移温度が望ましい範囲内にあるようなポリエステルを製造することが可能である。
【0093】
ガラス転移温度Tgは、ガラス転移温度の限界値を意味し、G.カニッヒ(G.Kanig)(コロイドマガジン&ポリマーマガジン第190巻第1頁、方程式1(Kolloid-Zeitschrift & Zeitschrift fuer Polymer, Bd.190, Seite1, Gleichung 1))によると、このガラス転移温度は分子量の増大とともに限界値に向かう傾向にある。このガラス転移温度は、DSC法(示差走査熱量測定、20K/分、中点値測定、DIN53765)により測定される。
【0094】
本発明方法により得られる水性ポリエステル分散液のポリエステル粒子は、一般に、10〜1000nm、しばしば50〜700nm、大抵は100〜500nmにある平均粒径を有する[準弾性光散乱(ISO規格13321)により測定された累積率z平均値が記載されている]。
【0095】
本発明方法により第1の反応工程で得られるポリエステルは、一般に2000g/mol以上〜1000000g/mol、しばしば3000g/mol以上〜500000g/mol以下または5000g/mol〜100000g/mol以下、大抵は5000g/mol〜50000g/molまたは6000g/mol以上〜30000g/mol以下の質量平均分子量を有する。質量平均分子量の測定は、DIN 55672−1に関連するゲル浸透クロマトグラフィーにより行なわれる。
【0096】
第2の反応工程でエチレン系不飽和モノマーEが、第1の反応工程で形成されたポリエステルを含有する水性媒体中でラジカル重合されることは、本方法にとって本質的なことである。この場合、この重合は、好ましくはラジカル開始された水性乳化重合の条件下で行なわれる。この方法は、既に数多く記載されており、従って当業者には十分に公知である(例えば、ポリマーサイエンス&エンジニアリング百科事典第8巻659〜677頁、ジョン・ウィレイ&サンス株式会社、1987年(Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, Vol.8, Seiten659 bis 677, John Wiley & Sons. Inc. 1987);D.C.ブラックレイ著、乳化重合155〜465頁、応用科学出版有限会社、エセックス、1975年(D.C.Blacklay, Emulsion Polymerisation, Seiten 155 bis 465, Applied Science Publischers, Ltd., Essex, 1975);D.C.ブラックレイ著、ポリマー格子第2版第1巻、33〜415頁、チャップマン&ホール社、1997年(D.C.Blacklay, Polymer Latices, 2nd Edition, Vol.1, Seiten 33 bis 415, Chapmann & Haoo, 1997);H.ワーソン著、合成樹脂エマルジョンの応用、49〜244頁、アーネスト・ベン有限会社、ロンドン、1972年(H.Warson, The Applications of Synthetic Resin Emulsions, Seiten 49 bis 244, Ernest Benn, Ltd., London, 1972);D.ディーダーリッヒ著、現代の化学、1990年、24号、135〜142頁、化学出版、ヴァインハイム(D.Diederich, Chemie in unserer Zeit, 1990,24, Seiten 135 bis 142, Verlag Chemie, Weinheim);J.ピルマ著、乳化重合1〜287頁、アカデミックプレス社、1982年(J.Piirma, Emulsion Polymerisation, Seiten 1 bis 287, Academic Press, 1982);F.ヘルシャー著、合成高分子ポリマーの分散1〜160頁、シュプリンガー出版、ベルリン、1969年(F.Hoelscher, Dispersionen synthetischer Hochpolymerer, Seiten 1 bis 160, Springer-Verlag, Berlin, 1969)及びドイツ連邦共和国特許出願公開第4003422号明細書を参照のこと)。このラジカル的に開始される水性乳化重合は、通常、エチレン性不飽和モノマーを一般に分散助剤の併用下で水性媒体中に分散分布させ、そして少なくとも1つのラジカル重合開始剤を用いて重合温度で重合させることによって実施される。
【0097】
第2の反応工程で安定な水性ポリマー分散液を得るために、分散剤Cおよびその量は、第1の反応工程で形成されるポリエステル粒子ならびに第2の反応工程の重合に使用されるエチレン系不飽和モノマーEをモノマー液滴の形で安定化することができ、ならびにラジカル重合反応の際に形成されるポリマー粒子を水性媒体中で分散相として安定化することができるように算定されなければならない。この場合、第2の反応工程の分散剤Cは、第1の反応工程の分散剤と同一であってよい。しかし、第2の反応工程で他の分散剤Cを添加することもできる。分散剤Cの全体量は、水性媒体に既に第1の反応工程で添加されていてもよい。しかし、分散剤Cの部分量を水性媒体に第2の反応工程でラジカル重合前、ラジカル重合中またはラジカル重合後、殊にラジカル重合前またはラジカル重合中に添加することも可能である。これは、殊に第1の反応工程で別の量または僅かな量の分散剤Cが使用される場合、または第2の反応工程でエチレン系不飽和モノマーEの部分量または全体量が水性モノマーエマルジョンの形で使用される場合のことである。どの分散剤Cおよびどの位の量の分散剤Cが第2の反応工程で有利に付加的にしようされるのかは当業者に公知であるか、または当業者によって簡単な予備試験において決定されうる。しばしば第1の反応工程での分散剤Cの添加量は、それぞれ本発明による方法で使用される分散剤の全量に対して1質量%以上および100質量%以下、20質量%以上および90質量%以下または40質量%以上および70質量%以下であり、それに応じて第2の反応工程で0質量%以上および99質量%以下、10質量%以上および80質量%以下または30質量%以上および60質量%以下である。
【0098】
分散剤Cとして有利に使用される乳化剤は、それぞれヒドロキシカルボン酸化合物Aおよびエチレン系不飽和モノマーEの全量に対して、有利には0.005〜20質量%の全量で、特に0.01〜10質量%の全量で、殊に0.1〜5質量%の全量で使用される。
【0099】
分散剤Cとして付加的にまたは乳化剤の代わりに使用される保護コロイドの全量は、ヒドロキシカルボン酸化合物Aおよびエチレン系不飽和モノマーEの全量に対して、それぞれ、たびたび0.1〜10質量%、しばしば0.2〜7質量%である。
【0100】
しかし、有利には、乳化剤、殊に非イオン乳化剤が単独の分散剤Cとして使用される。
【0101】
本発明による法で使用される全水量は、既に第1の反応工程で使用されていてよい。しかし、水の部分量を第1の工程および第2の工程で添加することも可能である。第2の反応工程での水の部分量の添加は、殊に水性モノマーエマルジョンの形での第2の反応工程でのエチレン系飽和モノマーEの添加およびラジカル開始剤の相応する水溶液または水性分散液の形でのラジカル開始剤の添加が行なわれる場合に実施される。この場合、全水量は、本発明により形成される水性ポリマー分散液がそれぞれ水性ポリマー分散液に対して30質量%以上、しばしば40質量%以上および99質量%以下、または45質量%以上および95質量%以下、大抵は50質量%以上および90質量%以下であり、70質量%以下、しばしば1質量%以上および60質量%以下、または5質量%以上および55質量%以下、大抵は10質量%以上および50質量%以下のポリマー固体含量に相当するように選択される。しばしば第1の反応工程での添加された水量は、それぞれ本発明による方法で使用される全水量に対して10質量%以上および100質量%以下、40質量%以上および90質量%以下または60質量%以上および80質量%以下であり、それに応じて第2の反応工程で0質量%以上および90質量%以下、10質量%以上および60質量%以下または20質量%以上および40質量%以下である。
【0102】
本発明による方法で使用される、モノマーEの全量は、第1の反応工程ならびに第2の反応工程で使用されてよい。しかし、モノマーの部分量を第1の工程および第2の工程で添加することも可能である。第2の反応工程でモノマーEの部分量または全量の添加は、殊に水性モノマーエマルジョンの形で行なわれる。この場合、モノマーEの全量は、一般に、本発明により形成される水性ポリマー分散液が70質量%以下、しばしば1質量%以上および60質量%以下、または5質量%以上および55質量%以下、大抵は10質量%以上および50質量%以下のポリマーの固体含量(=第1の反応工程のポリエステルと第2の反応工程でのエチレン系不飽和モノマーEの重合によって得られるポリマーとの総和)であるように選択される。しばしば第1の反応工程でのモノマーEの添加量は、それぞれモノマーEの全量に対して0質量%以上および100質量%以下、20質量%以上および90質量%以下または40質量%以上および70質量%以下であり、それに応じて第2の反応工程で0質量%以上および100質量%以下、10質量%以上および80質量%以下または30質量%以上および60質量%以下である。
【0103】
本発明によれば、ヒドロキシカルボン酸化合物Aの全量とエチレン性不飽和モノマーEとの量比は、一般に1:99〜99:1、有利に1:9〜9:1、好ましくは1:5〜5:1で4ある。
【0104】
好ましくは、モノマーEの少なくとも1つの部分量、しかし、好ましくはモノマーEの全量が第1の反応工程で使用される。この結果、第1の反応工程で形成されたポリエステル粒子がモノマーEを溶解して含有するかまたはモノマーEと一緒になって膨潤しているか、またはポリエステルがモノマーEの液滴中に溶解されているかまたは分散されていることは、好ましい。これら双方の方法は、第1の反応工程のポリエステルと第2の反応工程のポリマーとから形成されているポリマー(ハイブリッド)粒子の形成に有利に作用する。
【0105】
本発明方法により第2の反応工程でモノマーEから得られるポリマーは、−70℃〜+150℃のガラス転移温度を有することができる。水性ポリマー分散液の設計された使用目的に応じて、しばしばガラス転移温度が一定の範囲内にあるようなポリマーが必要とされる。本発明による方法で使用されるモノマーEを適当に選択することによって、ガラス転移温度が望ましい範囲内にあるようなポリマーを意図的に製造することは、当業者にとって可能である。
【0106】
フォックス(Fox)(T.G. Fox, Bull. Am. Phys. Soc. 1956[Ser. II]1,第123頁およびUllmann's Encyclopaedie der technischen Chemie, 第19巻, 第18頁, 第4版, Verlag Chemie, Weinheim, 1980)により、次の良好な近似式が最大で弱く架橋されたコポリマーのガラス転移温度Tgに適用される:
1/Tg=x1/Tg1 + x2/Tg2 +....xn/Tgn
上記式中、x1,x2,....xnは、モノマー1,2,....nの質量分数を表わし、Tg1,Tg2,....Tgnは、それぞれモノマー1,2,...nの1つから形成されたポリマーのケルビン度でのガラス転移温度を表わす。多くのモノマーのホモポリマーのためのTg値は、公知であり、例えばウルマン工業化学百科事典第5版、第A21巻、第169頁、化学出版、ヴァインハイム在、1992年(Ulmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry,Bd5, Vol A21, Seite196, Verlag Chemie, Weinheim, 1992)に記載されており、さらにホモポリマーのガラス転移温度についての出典は、例えばJ.ブランドララップ、E.H.イマーグート著、ポリマーハンドブック第1版、J.ウィリイ社、ニューヨーク在、1966年、第2版、J.ウィリイ社、ニューヨーク在、1975年および第3版、J.ウィリイ社、ニューヨーク、1989年(J.Brandrup, E.H.Immergut, Polymer Handbook, 1st Ed., J.Wiley, New York 1966, 2nd Ed. J. Wiley, New York 1975 und 3rd Ed.J.Wiley, New York 1989である。本発明による方法について特徴的なのは、ラジカルにより誘発された重合反応の開始のために第2の反応工程で、いわゆる水溶性の、また同様にいわゆる油溶性ラジカル開始剤も使用することができることである。この際、水溶性ラジカル開始剤とは一般に、通常ラジカルにより開始される水性エマルジョン重合の際に使用される全てのラジカル開始剤であると理解され、その一方で油溶性ラジカル開始剤とは、当業者がラジカルにより開始される溶液重合の際に通常使用される全ての油溶性ラジカル開始剤であると理解される。本刊行物の範囲内において、水溶性ラジカル開始剤として、20℃および大気圧で脱イオン水中で溶解度≧1質量%を有する全てのラジカル開始剤が理解され、その一方で油溶性ラジカル開始剤として、前述の条件下で溶解度<1質量%を有する全てのラジカル開始剤が理解される。しばしば、水溶性のラジカル開始剤は、前記条件下で2質量%以上、5質量%以上、または10質量%以上の水溶性を有し、一方で、油溶性のラジカル開始剤は、しばしば0.9質量%以下、0.8質量%以下、0.7質量%以下、0,6質量%以下、0.5質量%以下、0.4質量%以下、0.3質量%以下、0.2質量%以下または0.1質量%以下の水溶性を有する。
【0107】
水溶性ラジカル重合開始剤は、この際例えば、ペルオキシドならびにアゾ化合物であることができる。勿論、レドックス開始剤系も挙げられる。ペルオキシドとしては、原則的に、無機ペルオキシド、例えば過酸化水素またはペルオキソ二硫酸塩、例えばペルオキソ二硫酸のモノ−またはジ−アルカリ金属−、またはアンモニウム塩、例えばモノ−またはジ−ナトリウム−、−カリウム−またはアンモニウム塩、または有機ペルオキシド、例えばアルキルヒドロペルオキシド、例えばt−ブチル−、p−メンチル−またはクミルヒドロペルオキシドを使用することができる。アゾ化合物としては、主に2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)および2,2’−アゾビス(アミジノプロピル)二塩酸塩(AIBA、Wako Chemicals社のV−50に相当)が使用される。レドックス開始剤系のための酸化剤としては、主として上述のペルオキシドが挙げられる。相応する還元剤としては、低い酸化段階を有する硫黄化合物、例えばアルカリ金属亜硫酸塩、例えば亜硫酸カリウムおよび/または亜硫酸ナトリウム、アルカリ金属亜硫酸水素塩、例えば亜硫酸水素カリウムおよび/または亜硫酸水素ナトリウム、アルカリ金属メタ重亜硫酸塩、例えばメタ重亜硫酸カリウムおよび/またはメタ重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸塩、例えばホルムアルデヒドスルホキシル酸カリウムおよび/またはホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、アルカリ金属塩、特に脂肪族スルフィン酸のカリウム塩および/またはナトリウム塩、ならびにアルカリ金属硫化水素、例えば硫化水素カリウムおよび/または硫化水素ナトリウム、多価金属塩、例えば硫酸鉄(II)、硫酸アンモニウム鉄(II)、燐酸鉄(II)、エンジオール、例えばジヒドロキシマレイン酸、ベンゾインおよび/またはアスコルビン酸ならびに還元糖類、例えばソルボース、グルコース、フルクトースおよび/またはジヒドロキシアセトンを使用することができる。
【0108】
有利には水溶性ラジカル開始剤として、ペルオキソ二硫酸のモノ−またはジ−アルカリ金属−またはアンモニウム塩、例えばペルオキシド二硫酸二カリウム、ペルオキシド二硫酸二ナトリウムまたはペルオキシド二硫酸二アンモニウムが使用される。勿論、前述の水溶性ラジカル開始剤の混合物を使用することもできる。
【0109】
油溶性ラジカル開始剤としては例示的に、ジアルキル−またはジアリールペルオキシド、例えばジ−tert−アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、tert−ブチルクミルペルオキシド、2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキセン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ブタンまたはジ−tert−ブチルペルオキシド、脂肪族ペルオキシエステルおよび芳香族ペルオキシエステル、例えばクミルペルオキシネオデカノアート、2,4,4−トリメチルペンチル−2−ペルオキシネオデカノアート、tert−アミルペルオキシネオデカノアート、tert−ブチルペルオキシネオデカノアート、tert−アミルペルオキシピバラート、tert−ブチルペルオキシピバラート、tert−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、tert−ブチルペルオキシジエチルアセタート、1,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、tert−ブチルペルオキシイソブタノアート、tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノアート、tert−ブチルペルオキシアセタート、tert−アミルペルオキシベンゾアートまたはtert−ブチルペルオキシベンゾアート、ジアルカノイル−またはジベンゾイルペルオキシド、例えばジイソブタノイルペルオキシド、ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサンまたはジベンゾイルペルオキシド、ならびにペルオキシカルボナート、例えばビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカルボナート、ビス(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカルボナート、ジ−tert−ブチルペルオキシジカルボナート、ジセチルペルオキシジカルボナート、ジミリスチルペルオキシジカルボナート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート、またはtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシル−カルボナートが挙げられる。
【0110】
有利には油溶性ラジカル開始剤として、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート(Trigonox(登録商標) 21)、tert−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、tert−ブチルオキシベンゾアート(Trigonox(登録商標) C)、tert−アミルペルオキシベンゾアート、tert−ブチルペルオキシアセタート、tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノアート(Trigonox(登録商標) 42 S)、tert−ブチルペルオキシイソブタノアート、tert−ブチルペルオキシジエチルアセタート、tert−ブチルペルオキシピバラート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート(Trigonox(登録商標) BPIC)およびtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルカルボナート(Trigonox(登録商標) 117)を含む群から選択される化合物が使用される。勿論、前述の油溶性ラジカル開始剤の混合物を使用することもできる。
【0111】
殊に有利には、水溶性ラジカル開始剤が使用される。
【0112】
使用されるラジカル開始剤の全量は、そのつどモノマーEの全量に対して、0.01〜5質量%、しばしば0.5〜3質量%、大抵は1〜2質量%である。
【0113】
ラジカル重合反応のための反応温度として、−特に使用されるラジカル開始剤に依存して−0〜170℃の全範囲が考慮される。この場合、一般に50〜120℃、特に60〜110℃、有利には70以上〜100℃の温度が適用される。第2の反応工程のラジカル重合反応は、1atm(絶対圧)より小さい圧力、これと同じ圧力またはこれより大きい圧力で実施されてよく、この場合、この重合温度は100℃を超過しており、かつ170℃までであってよい。易揮発性のモノマー、例えばエチレン、ブタジエンまたは塩化ビニルを、圧力を高めて重合させることは、好ましい。この場合、1.2、1.5、2.5、10、15バールの圧力または更に高い値を設定してよい。乳化重合を低圧で実施する場合には、950ミリバール、特に900ミリバール、有利には850ミリバール(絶対圧)の圧力に調節される。好ましくは、ラジカル重合反応は、大気圧で不活性ガス雰囲気下で実施される。
【0114】
この場合、第2の反応工程のラジカル重合は、一般に90質量%以上、好ましくは95質量%以上、有利に98質量%以上のモノマーEの変換率になるまで行なわれる。
【0115】
特に有利には、本発明による方法は、第1の反応工程で、最初にヒドロキシカルボン酸化合物Aの部分量、分散剤Cならびに場合によっては溶解剤Dおよび/またはエチレン系不飽和モノマーEを水の少なくとも1つの部分量中に導入し、その後に適当な手段によりヒドロキシカルボン酸化合物A、ならびに場合によっては溶解剤Dおよび/または場合によってはエチレン系不飽和モノマーEを含む、1000nm以下の平均液滴直径を有する分散相を形成させ、それに引続き水性媒体に反応温度で酵素Bの全量ならびに場合によっては残存する残留量のヒドロキシカルボン酸化合物Aおよび溶解剤Dを添加し、ポリエステル形成の終結後に第2の反応工程で場合によっては残存する残留量の水、分散剤Cおよび/またはエチレン系不飽和モノマーEならびに全量のラジカル開始剤を添加するようにして行なわれる。この場合、場合によっては残存する残留量の水、分散剤Cおよび/またはエチレン系不飽和モノマーEならびに全量のラジカル開始剤の添加は、別々にかまたは一緒にして、断続的に一回で、断続的に複数回で、または連続的に不変のもしくは可変の流量で行なうことができる。
【0116】
本発明方法により得られる水性ポリマー分散液は、好ましくは接着剤、シール材料、プラスチックプラスター、塗被紙用材料、印刷用インキ、化粧用配合物および塗装材の成分として、ならびに皮革および織物を加工するため、繊維を結合するため、ならびに鉱物結合剤またはアスファルトを変性するために適している。
【0117】
更に、本発明により得られる水性ポリマー分散液が乾燥によって相応するポリマー粉末に変換されうることは、重要である。相応する乾燥法、例えば凍結乾燥法または噴霧乾燥法は、当業者に公知である。
【0118】
本発明方法により得られる水性ポリマー分散液は、好ましくは顔料、プラスチック配合物中の充填剤、接着剤中の成分、シール材料、プラスチックプラスター、塗被紙用材料、印刷用インキ、化粧用配合物、粉末塗料および塗装材の成分として、ならびに皮革および織物を加工するため、繊維を結合するためらびに鉱物結合剤またはアスファルトを変性するために使用することができる。
【0119】
本発明による方法は、ポリエステルの製品特性ならびにポリマーの製品特性を兼ね備えている新規の水性ポリマー分散液を簡単で安価に得ることができる方法を開示する。
【0120】
次に、本発明を実施例により詳説するが、これに限定されるものではない。
【0121】
実施例1
窒素雰囲気下に室温でペンタデカノリド3.06g(12.5ミリモル)(98質量%、Sigma-Aldrich Inc.,)、スチレン3.0g(28.8ミリモル)およびヘキサデカン0.25gを電磁攪拌機により攪拌することによって均一になるように混合した。この混合物中に攪拌しながらLutensol(登録商標)AT 50 0.25g(非イオン乳化剤、BASF AG社の販売製品)と脱イオン水25gとからなる均一溶液を添加した。引続き、得られた均一な混合物を電磁攪拌機で1分当たり60回転(rpm)で10分間攪拌し、その後に同様に窒素を勾配を備えた80mlの容器(Steilbrustgefaess)中に移し、ウルトラターラックス(Ultraturrax)T25装置(Janke & Kunkel GmbH & Co. KG)により20500rpmで30秒間攪拌した。その後に、得られた液状の不均一な混合物を1000nm以下の平均液滴直径を有する液滴に変換するために3分間、超音波検出器(70W、Bandelin electric GmbH & Co. KGのUW 2070装置)により超音波処理に掛けた。こうして得られたミニエマルジョン中に窒素雰囲気下で一回分で、Amano Lipase PS 0.12g(シュードモナス セパ−キアから)(Sigma-Aldrich Inc., No. 53464-1)、Lutensol(登録商標)AT 50 0.12gおよび脱イオン水12gから得られた均一な酵素混合物を添加し、次に得られた混合物を攪拌しながら50℃に加熱し、この混合物を窒素雰囲気下で前記温度で20秒間攪拌した。
【0122】
これに引続き、攪拌しながら酵素の不活性化のための、ドデシル硫酸ナトリウム0.06gを添加し、水性ポリエステル分散液を50℃でさらに30分間攪拌した。引続き、得られた水性ポリエステル分散液に窒素雰囲気下で攪拌しながら、ペルオキソ二硫酸ナトリウム0.04gおよび脱イオン水0.36gからなる溶液を添加し、この重合混合物を80℃に加熱し、この温度で2時間攪拌し、次に得られた水性ポリマー分散液を室温に冷却した。
【0123】
14.3質量%の固体含量を有する水性ポリマー分散液約44gが得られた。平均粒度205nmを測定した。得られたポリマーは、89℃の融点を有していた。
【0124】
固体含量を一般的に、定義された量の水性ポリマー分散液(約5g)が、180℃で乾燥器中で恒量になるまで乾燥させることによって測定した。それぞれ、2回の別個の測定を実施した。それぞれの実施例中に記載の値は、この両方の測定結果の平均値である。
【0125】
ポリマー粒子の平均粒子直径を、23℃で、Malvern Instruments社、EnglandのAutosizer IICを用いる0.005〜0.01質量%水性分散液での動的光散乱により算出した。測定された自己相関関数の累積評価(累積z−平均(cumulant z-average))の平均直径が記載される(ISO規格13321)。
【0126】
ガラス転移温度または融点の測定は、DIN 53765によりMettler-Toledo Intl. Inc.,社のシリーズTA8000を用いて行なわれた。
【0127】
実施例2
実施例2を実施例1と同様に実施したが、しかし、スチレンの代わりにn−ブチルアクリレート3.0g(23.4ミリモル)を使用した。
【0128】
13.5質量%の固体含量を有する水性ポリマー分散液約44gが得られた。平均粒度420nmを測定した。得られたポリマーは、43℃、67℃および81℃の融点を有していた。ガラス転移温度−36℃を測定した。
【0129】
実施例3
実施例3を実施例1と同様に実施したが、しかし、ペンタデカノリドの代わりにε−カプロラクトン3.0g(26.3ミリモル)を使用した。
【0130】
10.8質量%の固体含量を有する水性ポリマー分散液約44gが得られた。平均粒度50nmを測定した。得られたポリマーは、49℃の融点および88℃のガラス転移温度を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ポリマー分散液の製造方法において、水性媒体中で、第一の反応工程において、
a)ヒドロキシカルボン酸化合物Aを
b)ヒドロキシカルボン酸化合物Aを基礎として、水性媒体中でポリエステルの形成を触媒する酵素B、および
c)分散剤C
ならびに、場合により
d)水中への可溶性が低い有機溶剤D、および/または
e)エチレン性不飽和モノマーEの存在下で反応させて、
ポリエステルを得て、それに引き続き、該ポリエステルの存在下で、第二の反応工程でエチレン性不飽和モノマーEをラジカル重合させることを特徴とする、水性ポリマー分散液の製造方法。
【請求項2】
第1の反応工程で、ヒドロキシカルボン酸化合物Aの少なくとも1つの部分量、溶解剤Dおよび/またはエチレン系不飽和モノマーEを、水性媒体中に、1000nm以下の平均液滴直径を有する分散相として装入する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
最初にヒドロキシカルボン酸化合物Aの少なくとも1つの部分量、分散剤Cならびに場合によっては溶解剤Dおよび/またはエチレン系不飽和モノマーEを水の少なくとも1つの部分量中に導入し、その後に適当な手段によりヒドロキシカルボン酸化合物A、ならびに場合によっては溶解剤Dおよび/または場合によってはエチレン系不飽和モノマーEを含む、1000nm以下の平均液滴直径を有する分散相を形成させ、それに引続き水性媒体に反応温度で酵素Bの全量ならびに場合によっては残存する残留量のヒドロキシカルボン酸化合物Aおよび溶解剤Dを添加する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
第1の反応工程でヒドロキシカルボン酸化合物Aと共に、ジオール化合物F、ジアミン化合物G、ジカルボン酸化合物H、アミノアルコール化合物I、アミノカルボン酸化合物Kおよび/または1分子当たり少なくとも3個のヒドロキシル基、第1アミノ基または第2アミノ基および/またはカルボキシル基を含有する有機化合物Lを使用する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
個々の化合物F、G、H、I、KおよびLの全体量の総和は、ヒドロキシカルボン酸化合物Aに全量に対して50質量%以下である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
化合物AならびにF〜Lの量を、カルボキシル基および/またはその誘導体(個々の化合物A、H、KおよびLから)とアミノ基および/またはヒドロキシル基および/またはそれらの誘導体(個々の化合物A、F、G、I、KおよびLから)の総和との当量比が0.5〜1.5であるように選択する、請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
酵素Bとしてヒドロラーゼおよび/またはトランスフェラーゼを使用する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
酵素Bとしてリパーゼおよび/またはカルボキシルエステラーゼを使用する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
分散剤Cとして非イオン性乳化剤を使用する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
水性媒体は、第1の反応工程で3以上および9以下のpH値を有する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ヒドロキシカルボン酸化合物Aとして脂肪族または芳香族ヒドロキシカルボン酸、そのアルキルエステルおよび/または環状誘導体を使用する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
化合物Aならびに場合によってはF〜Lを、得られたポリエステルが−100℃〜+200℃のガラス転移温度を有するように選択する、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
第1の反応工程で溶解剤Dおよび/またはエチレン性不飽和モノマーEを使用する、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
水中で僅かに可溶性の有機溶剤Dを水の全量に対して0.1〜40質量%の量で第1の反応工程で使用する、請求項1から13でのいずれか1項に記載の方法
【請求項15】
エチレン性不飽和モノマーEは、僅かな水溶性を有する、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
ヒドロキシカルボン酸化合物Aとエチレン性不飽和モノマーEとの量比は、1:99〜99:1である、請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
エチレン性不飽和モノマーEとして、アクリル酸および/またはメタクリル酸と、1〜20個のC原子を有するアルカノールおよび/またはスチレンとのエステル50〜99.9質量%、またはスチレンおよびブタジエン50〜99.9質量%、または塩化ビニルおよび/または塩化ビニリデン50〜99.9質量%、または、ビニルアセタート、ビニルプロピオナート、バーサチック酸のビニルエステル、長鎖脂肪酸のビニルエステルおよび/またはエチレン40〜99.9質量%を含有するモノマー混合物を使用する、請求項1から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
反応混合物に第1の反応工程でのポリエステル形成の終結後に場合によっては残存する残留量の水、分散剤Cおよび/またはエチレン性不飽和モノマーEならびにラジカル開始剤の全量を第2の反応工程で添加する、請求項3から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1から18までのいずれか1項に記載の方法により得られる水性ポリマー分散液。
【請求項20】
接着剤、シール材料、プラスチックプラスター、塗被紙用材料、印刷用インキ、化粧用配合物および塗装材の成分として、ならびに皮革および織物を加工するため、繊維を結合するため、ならびに鉱物結合剤またはアスファルトを変性するための請求項19記載の水性ポリマー分散液の使用。
【請求項21】
請求項19記載の水性ポリマー分散液の乾燥によるポリマー粉末の製造。
【請求項22】
顔料、プラスチック配合物中の充填剤、接着剤中の成分、シール材料、プラスチックプラスター、塗被紙用材料、印刷用インキ、化粧用配合物、粉末塗料および塗装材の成分として、ならびに皮革および織物を加工するため、繊維を結合するため、ならびに鉱物結合剤またはアスファルトを変性するための請求項21記載のポリマー粉末の使用。

【公表番号】特表2009−501241(P2009−501241A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−515194(P2008−515194)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【国際出願番号】PCT/EP2006/062786
【国際公開番号】WO2006/131479
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】