説明

水性接着剤組成物とその製造方法

【課題】
幅広い温度領域において、加熱または経時により接着力が上昇せず、凝集力が低下せず、剥離後に被着体への糊残りやテ―プ跡がなく、かつ、被着体の変色も生じない再剥離用水分散型感圧性接着剤とその製造方法を提供する。併せて、低温重合による生産性の向上を図る。
【解決手段】
アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに重合可能なモノマーとを用いたポリマ―が、20℃から150℃までの動的粘弾性値(tanδ)において下記式(1)の関係を有することを特徴とする1液再剥離性水分散型感圧性接着剤。
tanδの最大値 − tanδの最小値 ≦ 0.5 (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧性接着剤、該接着剤の製造方法および接着テープなどに関する。
【背景技術】
【0002】
再剥離用感圧性接着テ―プの要求特性としては、幅広い温度領域において、加熱または経時により接着力が上昇しないこと、凝集力が低下しないこと、剥離後に被着体への糊残りやテ―プ跡がないこと及び被着体の変色などがないことが重要となっている。
【0003】
これらの特性を改良するために、特開平6−322345号公報には、特定の酸素濃度条件下でレドックス系重合開始剤を用いて重合を行うことにより、各種被着体に対して良好な再剥離性を示す感圧性接着剤が開示されている。しかしながら、この感圧性接着剤では粗面に対して十分な接着力を得にくいという問題があった。
また、特開平8−319469号公報には、重合開始剤の添加量を限定し、比較的高温で1段階または2段階の乳化重合を行うことにより、各種被着体に対して良好な再剥離性を示す感圧性接着剤が開示されている。しかしながら、この感圧性接着剤では分岐の少ないポリマーを簡便に得ることができず、良好な凝集力とタックと接着力を備えることも叶わなかった。さらに、比較的高温での重合に時間を要するため、生産性の面でも問題が有った。
【特許文献1】特開平6−322345号公報
【特許文献2】特開平8−319469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、幅広い温度領域において、加熱または経時により接着力が上昇せず、凝集力が低下せず、剥離後に被着体への糊残りやテ―プ跡がなく、かつ、被着体の変色も生じない再剥離用水分散型感圧性接着剤とその製造方法を提供することを目的としている。併せて、低温重合による生産性の向上も図っている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに重合可能なモノマーとを用いたポリマ―が、20℃から150℃までの動的粘弾性値(tanδ)において下記式(1)の関係を有することを特徴とする1液再剥離性水分散型感圧性接着剤に関する。
tanδの最大値 − tanδの最小値 ≦ 0.5 (1)
次に、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー100重量部に対して、0.001〜0.2重量部の重合開始剤を用いて、30℃未満で乳化重合することを特徴とする1液再剥離性水分散型感圧性接着剤の製造方法に関する。
次に、第1段目の乳化重合として、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー100重量部に対して、0.001〜0.2重量部の重合開始剤を用いて、60℃未満で乳化重合を行った後に、
第2段目の乳化重合として、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー100重量部に対して、0.1〜0.5重量部の重合開始剤を加え、60℃未満で乳化重合を行い、
第1段目および第2段目の乳化重合に用いたモノマ―の合計量中に占める第2段目のモノマ―の割合が最大80重量%までとすることを特徴とする1液水分散型感圧性接着剤の製造方法に関する。
次に、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー100重量部に対して、0.001〜0.2重量部の重合開始剤を用いて、60℃未満で乳化重合することにより得ることができる水分散液(A)と、
アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー100重量部に対して、0.1〜0.5重量部の重合開始剤を加え、60℃未満で乳化重合することにより得ることができる水分散液(B)とを、
両液の製造に用いたモノマ―の合計量中に占める水分散液(B)に用いたモノマ―の割合が最大80重量%までとなるように混合することを特徴とする水分散型感圧性接着剤の製造方法に関する。
また、前記乳化重合において、モノマー乳化液を微細に分散し、分散粒子のメディアン径を2.0μm〜5.0μmとして乳化重合を行うことを特徴とする水分散型感圧性接着剤の製造方法やガードナーカラーが3以下の淡色固形樹脂を加えたモノマー乳化液を用いることを特徴とする水分散型感圧性接着剤の製造方法に関する。
さらに、本発明の水分散型感圧性接着剤を、基材の少なくとも片面に設けてなることを特徴とする粘着テープや当該粘着テープを被着体に貼付してなる物品に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、室温での接着力が高く、加熱時の凝集力の低下が少なくて、加熱直後の剥離に際し糊残りがみられず、また加熱後の接着力の上昇性も低く、そのうえ粗面に対しても良好な接着力を示す再剥離用水分散型感圧性接着剤とその製造方法を提供することができる。また、低温重合により生産性も向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に用いる(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、1種または2種以上を用いる。具体的には、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリルなどが挙げられる。これらのモノマ―は主成分として全モノマ―の50重量%以上の割合で用いられる。これより少ないと本発明の目的とする特性にすぐれた再剥離用水分散型感圧性接着剤が得られにくい。また、アルキル基の炭素数は4〜6が好ましい。
【0008】
モノマ―としては、上記の主成分のほかに、必要に応じて上記の主成分と重合可能な他のモノマ―を併用してもよい。この他のモノマ―は、全モノマ―の50重量%未満の範囲で、各モノマ―の種類に応じて適宜その使用量を選択できるが、良好な感圧接着性を発現させるために、得られるポリマ―のガラス転移点が通常−20℃以下となるように、使用量を決めるのが望ましい。
【0009】
他のモノマ―としては、たとえば、メチルアクリレ―ト、エチルアクリレ―ト、イソプロピルアクリレ―ト、メチルメタクリレ―トなどのアルキル基の炭素数が1〜3の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸、イタコン酸などのカルボキシル基含有モノマ―、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、グリセリンジメタクリレ―トなどの水酸基含有モノマ―、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリン、シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸グリシジルなどがある。
【0010】
これらのモノマーに対して、必要に応じてガードナーカラーが3以下の淡色固形樹脂を溶解して重合を行うこともできる。ガードナーカラーとは、コーティングテスター工業社製のガードナー色数管を用いて、樹脂の色とガードナー色数管が同じ色味となった色数をいう。
本発明に用いられるガードナーカラーが3以下の淡色固形樹脂(T)としては、エチレン性不飽和単量体混合物(M)に溶解又は分散するものであればよく、例えばアルコンP−70、アルコンP−90、アルコンP−100、アルコンP−115、アルコンP−120、アルコンP−140、アルコンM−90、アルコンM−100、アルコンM−115、アルコンM−135等の水添石油樹脂、KR−1840、KR−1842等の水酸基含有水添石油樹脂、パインクリスタルKR−85、パインクリスタルKR−612、パインクリスタルKR−614、パインクリスタルKE−604等の水添ロジン、パインクリスタルKE−100、パインクリスタルKE−311、パインクリスタルKE−359等の水添ロジンエステル、パインクリスタルD−6010等の水添ロジン含有ジオール、パインクリスタルM−1500、パインクリスタルM−1550等の水添ロジン金属塩、パインクリスタルKE−604等の高酸価水添ロジン、パインクリスタルKE−604B等の高酸価水添ロジン酸(以上、荒川化学工業(株)製)、YSレジンPX1250、YSレジンPX1150、YSレジンPX1000、YSレジンPX800、YSレジンD105、YSレジンD115、YSレジンPX1150N、YSレジンA800等のテルペン樹脂、YSレジンTO125、YSレジンTO115、YSレジンTO105、YSレジンTO85、YSレジンTR105等の芳香族変性テルペン樹脂、クリアロンP125、クリアロンP115、クリアロンP105、クリアロンP85等の水添テルペン樹脂、クリアロンM115、クリアロンM105、クリアロンK110、クリアロンK100、クリアロンK4090等の芳香族変性水添テルペン樹脂、YSポリスターTH130等の水添テルペンフェノール樹脂(以上、ヤスハラケミカル(株)製)、FTR0100、FTR0120、FTR0140等のα−メチルスチレン樹脂、FTR2120、FTR2140等のα−メチルスチレン/スチレン共重合系樹脂、FTR6100、FTR6110、FTR6125等のスチレン系モノマー/脂肪族系モノマー共重合系樹脂、FTR7080、FTR7100、FTR7125等のスチレン系モノマー/脂肪族系モノマー/α−メチルスチレン共重合系樹脂、FTR8080、FTR8100、FTR8120等のスチレン樹脂、FMR0150等のスチレン系モノマー/芳香族系モノマー共重合系樹脂(以上、三井化学(株)製)、クイントンP195N等の脂肪族系炭化水素樹脂、クイントン1325、クイントン1345等の脂環族系炭化水素樹脂(以上、日本ゼオン(株)製)などが挙げられる。
【0011】
このうち特に好ましくはガードナーカラーが1以下のものであり、さらに好ましくは、ロジン骨格またはテルペン骨格を有するものである。ここで、水添とは一部または全部の炭素炭素二重結合に水素を反応させ、炭素炭素一重結合に変性させることを示す。
【0012】
ガードナーカラーが3を超えるものは、連鎖移動剤、重合遅延剤として強く働くものが多く、分子量の低下を招き、保持力や加工性の低下をもたらすものが多い。その問題解決のために極性基含有単量体、架橋性基を有する単量体を増やす方法が従来とられているが、ポリオレフィンへの接着力や基材への投錨性が悪くなるため好ましくない。同時に、ガードナーカラーが3を超えるものは感圧性接着シートとしたのちの熱時の変色が著しいという公知の問題点を併せ持つため好ましくない。つまり、ガードナーカラーが3以下の淡色固形樹脂(T)を使用することで、耐変色性、加工性、保持力、ポリオレフィンへの接着力を同時に満たす感圧性接着組成物を得ることが可能になる。また、淡色であっても常温で液状の樹脂は、保持力や加工性の低下をもたらすためそれのみで用いるのは好ましくないが、上記の淡色固形樹脂と併用されるならば使用しても構わない。
【0013】
本発明に用いる重合開始剤には、一般に使用されるアゾ系、過硫酸塩、過酸化物系などがある。たとえば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチルアミジン)、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、ベンゾイルパ―オキサイド、t−ブチルハイドロパ―オキサイド、過硫酸塩と還元剤としては、グルコース、デキストロース、ホルムアルデヒドナトリウム、スルホキシラート、チオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイトナトリウム等を、および促進剤としては硫酸第一鉄、硫酸銅等を使用することができる。特に、40℃以下の低温重合には酸化剤―還元剤―促進剤からなるレドックス系重合開始剤を用いることが好ましい。
【0014】
本発明のいわゆる1段重合としては、上記のアルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと他のモノマ―の全量100重量部に対して0.001〜0.2重量部、好ましくは0.01〜0.1重量部となる割合の上記の重合開始剤を用いて、30℃未満の重合温度で、常法により乳化重合させることにより、本発明の再剥離用水分散型感圧性接着剤を製造する。
【0015】
ここで、重合開始剤の使用量が0.001重量部より少ないと、実質上安定に重合反応させることが困難であり、窒素置換量の違いや温度の微妙な違いにより反応が開始するまでの誘導期間がばらつき、場合によっては重合反応が進まないことがある。誘導期間のばらつきはポリマ―物性にも影響を及ぼすことになる。上記の使用量が0.2重量部より多いと、ポリマ―の分子量が低下するため、高温での剥離において糊残りが発生し、良好な接着特性と凝集力が得られない。また、重合温度が30℃以上となると、1段重合では分岐が増した分子量の低いポリマーしか得ることができない。
【0016】
本発明の乳化重合に際し、重合安定性を確保するために、モノマ―100重量部に対して0.3〜5重量部、好ましくは、0.4〜3重量部となる割合の乳化剤が用いられる。乳化剤は、一般的なアニオン系またはノニオン系の乳化剤があり、1種または2種以上を用いる。アニオン系としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエ―テル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフエニルエ―テル硫酸ナトリウムなどが、ノニオン系としては、ポリオキシエチレンアルキルエ―テル、ポリオキシエチレンアルキルフエニルエ―テルなどがある。また、アニオン系およびノニオン系のいずれにおいても、たとえば、プロペニル基などを導入したラジカル重合性の乳化剤を用いてもよい。
【0017】
本発明においては、以下の条件によって、第1段目の乳化重合と第2段目の乳化重合を連続して行うこともできる。
すなわち、第1段目の乳化重合として、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー100重量部に対して、0.001〜0.2重量部の重合開始剤を用いて、60℃未満で乳化重合を行った後に、第2段目の乳化重合として、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー100重量部に対して、0.1〜0.5重量部の重合開始剤を加え、60℃未満で乳化重合を行い、第1段目および第2段目の乳化重合に用いたモノマ―の合計量中に占める第2段目のモノマ―の割合が最大80重量%までとすることを特徴とする1液水分散型感圧性接着剤の製造方法である。
【0018】
第1段目の重合開始剤の使用量は、第1段目の全モノマ―100重量部に対して0.001〜0.2重量部、好ましくは0.01〜0.1重量部である。
第2段目の重合開始剤の使用量は、第2段目の全モノマ―100重量部に対し0.1〜0.5重量部、好ましくは0.15〜0.4重量部である。
第1段目の乳化重合温度は60℃未満であり、40℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。第2段目の乳化重合温度は60℃未満であり、40℃以下が好ましい。さらに第1段目及び第2段目の乳化重合温度がともに40℃以下であることが好ましい。
【0019】
このように重合開始剤の使用量を第1段目より多くし、必要に応じて、一方の段階の重合温度を他方の段階の重合温度よりも高くすることによって、第1段目とは異なる特性のポリマ―が生成し、このポリマ―にて第1段目で生成するポリマ―の物性が変性されることにより、用途目的に応じた最適の性能を有する再剥離用水分散型感圧性接着剤が得られる。この場合、第1および第2段目の乳化重合に用いたモノマ―の合計量中に占める第2段目のモノマ―の割合が80重量%を超えると、第1段目の乳化重合に基づく良好な再剥離性などが損なわれるため、上記範囲内において各モノマ―の種類や用途目的に応じた最適の使用量を選択すればよい。
【0020】
なお、第2段目の乳化重合に用いるモノマ―は、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするものであれば、第1段目のモノマ―と組成的に異なっていてもよい。また、最終的に得られるポリマ―のガラス転移点が−20℃以下となるものであれば、第2段目の乳化重合用モノマ―のみからなるポリマ―のガラス転移点が−20℃より高くなるものであってもよい。さらに、第2段目の乳化重合は一括添加、連続滴下、間欠滴下のいかなる方法を用いてもよいが、重合安定性の面では、滴下方式を採用するのが好ましい。また、第2段目の乳化重合に用いる乳化剤は、第1段目の場合と同様の乳化剤をいずれも使用できる。さらに、重合安定性の良好なものであれば、上記以外の公知の乳化剤を用いることができる。
【0021】
本発明においては、さらに、第1段目の乳化重合と第2段目の乳化重合を連続して行わず、それぞれ別個に乳化重合したものをブレンドすることにより、2段重合法の場合と同様の再剥離用水分散型感圧性接着剤を製造できる。
すなわち、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー100重量部に対して、0.001〜0.2重量部の重合開始剤を用いて、60℃未満で乳化重合することにより得ることができる水分散液(A)と、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー100重量部に対して、0.1〜0.5重量部の重合開始剤を加え、60℃未満で乳化重合することにより得ることができる水分散液(B)とを、両液の製造に用いたモノマ―の合計量中に占める水分散液(B)に用いたモノマ―の割合が最大80重量%までとなるように混合することを特徴とする水分散型感圧性接着剤の製造方法である。
【0022】
本発明の1段重合および2段重合によって得られる1液再剥離性水分散型感圧性接着剤や別個に乳化重合したものをブレンドすることにより得られる再剥離用水分散型感圧性接着剤によって、多官能モノマーを使用せず、架橋剤によって架橋しないにもかかわらず、幅広い温度領域で良好な凝集力、タックおよび接着力を有する温感性の低い感圧性接着剤を提供できる。この点は、架橋剤を用いた2液硬化型感圧性接着剤に比べても有利な効果を奏する。
【0023】
本発明では、上記のモノマー、乳化剤および水の混合液(以下は、モノマー乳化液という。)を微細に分散して乳化重合を行うことにより、被着体に対する接着力や凝集力に優れた感圧性接着剤を得ることができる。その際、モノマー乳化液に対して前述したガードナーカラーが3以下の淡色固形樹脂を加えて微分散することが好ましい。
モノマー乳化液の微細な分散は、重合開始剤と共存しながら行っても良いし、重合開始剤を加えない系で行っても良い。特に、重合開始剤を加えない系で分散することが好ましい。重合開始剤を加えない場合には、モノマー乳化液の分散後に重合開始剤を後添加するか、モノマー乳化液の分散体を別の重合開始剤を含む系に添加して重合を行うこととなる。
【0024】
モノマー乳化液の微分散体は、分散粒子のメディアン径が2.0μm〜5.0μmであることが好ましい。本発明のメディアン径とは、水中での油滴粒子やミセル粒子からなる分散粒子を動的光散乱法で測定した場合の、累積体積平均径をいい、例えば、日機装(株)製マイクロトラックUPA粒度分布計で測定された値をいう。
メディアン径を2.0μm〜5.0μmとする方法としては、通常市販されている乳化機や特開2004−300366公報で示された乳化機を使用できる。例えば、回転型連続乳化機、コロイド型乳化機、高圧ホモジナイザー型乳化機、超音波処理型乳化機等の強制乳化機を使用できる。特に、回転型連続乳化機である回転子/固定子型高速回転連続型乳化機が、本発明のモノマー乳化液を得るのに適合し、メンテナンスおよび単位時間あたりの処理量の点も好ましい。
【0025】
前述したガードナーカラーが3以下の淡色固形樹脂は、全モノマー100重量部に対して、淡色固形樹脂が1〜50重量部であることが好ましく、より好ましくは5.5〜40重量部であり、さらに好ましくは7〜30重量部である。淡色固形樹脂が1重量部未満では充分な接着性、特にポリオレフィンに対する接着性が得られず、50重量部を超えると重合が不安定になるため好ましくない。
【0026】
本発明の1段重合、2段重合、ブレンド、モノマー乳化液の分散体およびガードナーカラーが3以下の淡色固形樹脂を加えた分散体を用いて製造される感圧性接着剤は、いずれも背景技術に対する貢献が共通若しくは密接に関連している。すなわち、室温での高い接着力、加熱時の凝集力の低下が少ないこと、加熱直後の剥離に際し糊残りがみられないこと、加熱後の接着力の上昇が低いこと、および粗面に対する高い接着力という技術的特徴を有する。
【0027】
本発明の再剥離用水分散型感圧性接着剤は、多官能モノマーを使用せず、また架橋剤による架橋がないにもかかわらず上記の式(1)に示したとおり、20℃から150℃において、tanδの最大値から最小値を引いた値が0.5以下を示すことが大きな特徴とである。
ここで、tanδとは、レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー社製動的粘弾性測定装置ARESIIIを使用して、8mm×8mm×1.3mmの試験片をズリモードで、角振動数1Hzで測定したときの20℃〜150℃でのtanδの値をいう。
20℃〜150℃でのtanδの最大値から最小値を引いた値が0.5を超えると粘着剤の力学的性質を一定に保つことができず、再剥離時の剥離力を上昇したり、加熱時の剥離において糊残りが生じたりする。20℃〜150℃でのtanδの最大値から最小値を引いた値が0.5以下であると粘着剤の力学的性質、特に凝集力を一定に保つことができ、再剥離時の剥離力の上昇性が少なく、かつ加熱時の剥離においても糊残りがほとんどみられないといった特有の効果が奏される。
【0028】
本発明の再剥離用水分散型感圧性接着剤には、必要により、各種の添加剤、たとえば、粘着付与樹脂、可塑剤、軟化剤、充てん剤、顔料、染料、老化防止剤などを配合することができる。なお、これらの添加剤を含有するときは、ポリマ―およびこれらの添加剤を含有する接着剤全体としての20℃〜150℃での動的粘弾性の値が上記の式(1)の関係を有していればよい。
【0029】
本発明の再剥離型感圧接着剤組成物を応用してなる再剥離性粘着シートの表面基材としては、一般のものが使用できる。例えば、上質紙、アート紙、コート紙、キャスト紙等の印刷用紙、感熱記録用紙、熱転写記録用紙、静電記録用紙、インクジェット記録用紙等の情報記録用紙、その他クラフト紙、含浸紙、低サイズ紙、水溶紙等の紙基材、また、PETフィルム、PEフィルム、PPフィルムや合成紙、不織布等のフィルム基材が挙げられ、これら基材単独、または、粘着剤との密着性を向上させる目的でアンカー層を積層した基材を使用できる。また、本発明の再剥離型感圧接着剤組成物を基材側(基材の裏面)へ直接塗工する場合は、塗工時の該組成物のしみ込みによる皺抑制の目的で目止め層を積層した基材が好ましい。また、感熱記録紙や各種フィルムの如く熱に影響を受ける基材の場合は、耐熱性の高いグレードを選択することや、低温乾燥で対応することが好ましい。なお、前記のアンカー層や目止め層は特に限定はなく、例えば、カゼイン、デキストリン、澱粉、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル酸エステル共重合体等の天然または合成樹脂および/または顔料を主成分とした材料を、乾燥重量で0.1〜10g/m程度設けることができる。また、前記顔料としては、カオリン、炭酸カルシウム、クレー、タルク、焼成カオリン、デラミカオリン、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、ホワイトカーボン等の無機顔料、或いはポリスチレン樹脂微粒子、尿素ーホルマリン樹脂微粒子、微小中空粒子等の有機合成顔料等を用いることができる。
【0030】
次に、本発明の再剥離性粘着シートの剥離シートには、一般のものが使用できる。剥離紙基材としては、例えば、ポリエチレン等のラミネート紙、グラシン紙、クレーコート紙、またはグラシン紙やクラフト紙または上質紙等に目止め層として、例えばカゼイン、デキストリン、澱粉、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル酸エステル共重合体等の天然または合成樹脂および/または顔料とを主成分とした目止め層を、乾燥重量で0.1〜10g/m程度設けた基紙や、PETフィルム、PEフィルム、PPフィルムや合成紙、不織布等のフィルム基材が挙げられる。前記顔料としては、カオリン、炭酸カルシウム、クレー、タルク、焼成カオリン、デラミカオリン、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、ホワイトカーボン等の無機顔料、或いはポリスチレン樹脂微粒子、尿素ーホルマリン樹脂微粒子、微小中空粒子等の有機合成顔料等を用いることができる。剥離剤としては一般のものが使用でき、例えば、水分散型、溶剤型あるいは無溶剤型のシリコーン樹脂やフッ素樹脂等が使用でき、前記剥離基材に乾燥重量で0.05〜3g/m程度塗被後、熱硬化、電離放射線硬化等によって剥離層を形成し、剥離シートを得られる。
【0031】
本発明の再剥離性粘着シートの製造方法は、通常直接法、即ち表面基材裏面上に粘着剤組成物を塗被、乾燥して粘着剤層を設け、次いで剥離シートと貼合する方法で仕上げられる。この場合の表面基材裏面へ直接粘着剤を塗布するのは、粘着剤表面に粘着性微粒子(A)が形成する物理的な凹凸面を得るためであり、一旦剥離シート上に粘着剤組成物を塗被、乾燥し、表面基材と貼合する転写法でも、塗工方法や製造後の粘着シートの養生方法により、前記直接法で得られる粘着剤層表面と同様な面が得られれば問題なく、直接法、転写法に限定はされない。
【0032】
次に、本発明の再剥離型感圧接着剤組成物を表面基材、または剥離シートへ塗被する装置としては、例えばロールコーター、リバースロールコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、スロットダイコーター、リップコーター、グラビアコーター、リバースグラビアコーター等の一般の塗被装置が挙げられ、また、スクリーン印刷、グラビア印刷等の印刷機でも製造することができる。
【実施例】
【0033】
つぎに、本発明をさらに具体的に説明するため、実施例および比較例を示す。本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、以下において部とあるのは重量部を意味する。また、再剥離用水分散型感圧性接着剤のtanδは、下記の方法により測定したものである。
【0034】
<tanδの測定>
再剥離用水分散型感圧性接着剤を離型紙上に乾燥重量で20g/m2塗工し105℃で1.5分間乾燥させた後、その感圧性接着面同士を貼付し、片面の離型紙を剥がす操作を繰り返し積層することで離型紙に挟まれた厚さ1.3mmの貯蔵弾性率試験片を得た。これを8mm×8mmにカットし、レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー社製動的粘弾性測定装置ARESIIIを使用して、ズリモードで、角振動数1Hzで測定したときの20℃〜150℃でのtanδを測定した。
【0035】
(実施例1)
純水180部を反応釜に仕込み、他方、アクリル酸2−エチルヘキシル480部、アクリル酸20部、ラウリル硫酸ナトリウム2部、純水200部の混合物を乳化し、滴下ロートに装入した。滴下ロート中に窒素ガスを吹き込み1時間窒素置換した。同様に、反応釜に窒素ガスを吹き込み1時間窒素置換した。その後、撹拌下に反応釜の温度を28℃に保ち、1重量%の硫酸第一鉄水溶液1部を添加した。直ちに、モノマー乳化物、0.5重量%のt−ブチルハイドロパーオキシド水溶液25部、0.5重量%の重亜硫酸ナトリウム水溶液25部を滴下し、3時間で重合を完結した。反応終了後、10重量%の水酸化ナトリウム5部を添加し、中和した。固形分濃度49.5%、粘度200cpsのエマルジョンを得た。
【0036】
このようにして得られたポリマ―の水分散液を、再剥離用水分散型感圧性接着剤とした。この水分散型感圧性接着剤の20℃〜150℃でのtanδの変化量は0.13であった。つぎに、この感圧性接着剤を12μmのPETフイルム上に乾燥後の厚さが20μmとなるように塗布、乾燥し、感圧性接着テ―プを作製した。
【0037】
(実施例2)
第1段目の乳化重合として、純水180部を反応釜に仕込み、他方、アクリル酸2−エチルヘキシル480部、アクリル酸20部、ラウリル硫酸ナトリウム2部、純水200部の混合物を乳化し、滴下ロートに装入した。滴下ロート中に窒素ガスを吹き込み1時間窒素置換した。同様に、反応釜に窒素ガスを吹き込み1時間窒素置換した。その後、撹拌下に反応釜の温度を40℃に保ち、1重量%の硫酸第一鉄水溶液1部を添加した。直ちに、モノマー乳化物、0.5重量%のt−ブチルハイドロパーオキシド水溶液25部、0.5重量%の重亜硫酸ナトリウム水溶液25部を滴下し、3時間で重合した。
次いで、第2段目の乳化重合として重合系内に、アクリル酸2エチルヘキシル43部、アクリル酸エチル6部、アクリル酸1部、ラウリル硫酸ナトリウム1部、ポリオキシエチレンラウリルエ―テル0.5部および水75部をあらかじめ乳化したものを加え、温度を40℃に保ち、過硫酸アンモニウム0.2部を加え、さらに3時間乳化重合した。重合率は99.5重量%であった。
【0038】
このようにして得られたポリマ―の水分散液を、再剥離用水分散型感圧性接着剤とした。この水分散型感圧性接着剤の20℃〜150℃でのtanδの変化量は0.18であった。つぎに、この再剥離用水分散型感圧性接着剤を用いて、実施例1と同様の方法により、感圧性接着テ―プを作製した。
【0039】
(実施例3)
純水180部を反応釜に仕込み、他方、アクリル酸2−エチルヘキシル496部、アクリル酸2部、ノニルフェノール・ポリオキシエチレンエーテル−サルフェート2部、純水200部の混合物を乳化し、滴下ロートに装入した。滴下ロート中に窒素ガスを吹き込み1時間窒素置換した。同様に、反応釜に窒素ガスを吹き込み1時間窒素置換した。その後、撹拌下に反応釜の温度を40℃に保ち、1重量%の硫酸第一鉄水溶液1部を添加した。直ちに、モノマー乳化物、0.5重量%のt−ブチルハイドロパーオキシド水溶液25部、0.5重量%の重亜硫酸ナトリウム水溶液25部を3時間にわたり滴下し、重合を完結し、水分散液Aを得た。重合率は99.8重量%であった。
次に、あらたな反応釜に純水180部を仕込み、他方、アクリル酸2エチルヘキシル43部、アクリル酸エチル6部、アクリル酸1部、ラウリル硫酸ナトリウム1部、ポリオキシエチレンラウリルエ―テル0.5部および水75部をあらかじめ乳化したものを加え、温度を40℃に保ち、過硫酸アンモニウム0.2部を加え、さらに3時間乳化重合し、水分散液Aを得た。重合率は99.5重量%であった。
【0040】
このようにして得られたポリマ―の水分散液Aと水分散液Bを、混合して再剥離用水分散型感圧性接着剤とした。この水分散型感圧性接着剤の20℃〜150℃でのtanδの変化量は0.18であった。つぎに、この再剥離用水分散型感圧性接着剤を用いて、実施例1と同様の方法により、感圧性接着テ―プを作製した。
【0041】
(実施例4)
純水200部、アクリル酸2−エチルヘキシル480部、アクリル酸20部、ラウリル硫酸ナトリウム2部および淡色固形樹脂として水添ロジンエステル樹脂(荒川化学社製「パインクリスタルKE−100」、ガードナーカラー1以下)50部をあらかじめ溶解し、攪拌翼を用いて攪拌混合してモノマー乳化液を得た。次いで、回転子/固定子にスリット式ユニットを使用したキャビトロンCD1010型(株式会社ユーロテック社製)を用いて、回転数11200rpm、回転子の最外周の周速度が40m/秒、圧力が0.12Mpa、処理量10kg/分の運転条件で2Pass処理して乳化し、分散粒子のメディアン径が3.0μmのモノマー乳化液752部を得た。このモノマー乳化液を滴下ロートに装入し、窒素ガスを吹き込み1時間窒素置換した。
また、別の反応釜に純水180部を仕込み、窒素ガスを吹き込み1時間窒素置換した。その後、撹拌下に反応釜の温度を28℃に保ち、1重量%の硫酸第一鉄水溶液1部を添加した。直ちに、モノマー乳化液、0.5重量%のt−ブチルハイドロパーオキシド水溶液25部、0.5重量%の重亜硫酸ナトリウム水溶液25部を滴下し、3時間で重合を完結した。反応終了後、10重量%の水酸化ナトリウム5部を添加し、中和した。固形分濃度49.0%、粘度200cpsのエマルジョンを得た。
このようにして得られたポリマ―の水分散液を、再剥離用水分散型感圧性接着剤とした。この水分散型感圧性接着剤の20℃〜150℃でのtanδの変化量は0.12であった。つぎに、この再剥離用水分散型感圧性接着剤を用いて、実施例1と同様の方法により、感圧性接着テ―プを作製した。
【0042】
(実施例5)
第1弾目の乳化重合として、純水200部、アクリル酸2−エチルヘキシル480部、アクリル酸20部、ラウリル硫酸ナトリウム2部および淡色固形樹脂として水添ロジンエステル樹脂(荒川化学社製「パインクリスタルKE−100」、ガードナーカラー1以下)50部をあらかじめ溶解し、攪拌翼を用いて攪拌混合してモノマー乳化液を得た。
次いで、回転子/固定子にスリット式ユニットを使用したキャビトロンCD1010型機(株式会社ユーロテック社製)を用いて、回転数11200rpm、回転子の最外周の周速度が40m/秒、圧力が0.12Mpa、処理量10kg/分の運転条件で2Pass処理して乳化し、分散粒子のメディアン径が2.5μmのモノマー乳化液752部を得た。このモノマー乳化液を滴下ロートに装入し、窒素ガスを吹き込み1時間窒素置換した。
また、別の反応釜に純水180部を仕込み、窒素ガスを吹き込み1時間窒素置換した。その後、撹拌下に反応釜の温度を40℃に保ち、1重量%の硫酸第一鉄水溶液1部を添加した。直ちに、モノマー乳化液、0.5重量%のt−ブチルハイドロパーオキシド水溶液25部、0.5重量%の重亜硫酸ナトリウム水溶液25部を滴下し、3時間で重合した。
次いで、第2段目の乳化重合として、アクリル酸2エチルヘキシル43部、アクリル酸エチル6部、アクリル酸1部、ラウリル硫酸ナトリウム1部、ポリオキシエチレンラウリルエ―テル0.5部、水75部および水添ロジンエステル樹脂(荒川化学社製「パインクリスタルKE−100」、ガードナーカラー1以下)5部を混合し、キャビトロンCD1010型機によって、あらかじめ分散したモノマー乳化液を滴下ロートに装入し、1時間窒素置換した。このモノマー乳化液を先の重合系に加え、温度を40℃に保ち、過硫酸アンモニウム0.2部を加え、さらに3時間乳化重合した。重合率は99.5重量%であった。
【0043】
このようにして得られたポリマ―の水分散液を、再剥離用水分散型感圧性接着剤とした。この水分散型感圧性接着剤の20℃〜150℃でのtanδの変化量は0.12であった。つぎに、この再剥離用水分散型感圧性接着剤を用いて、実施例1と同様の方法により、感圧性接着テ―プを作製した。
【0044】
(比較例1)
純水180部を反応釜に仕込み、他方、アクリル酸2−エチルヘキシル480部、アクリル酸20部、ラウリル硫酸ナトリウム2部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル10部および純水200部の混合物を乳化し、滴下ロートに装入した。滴下ロート中に窒素ガスを吹き込み1時間窒素置換した。同様に、反応釜に窒素ガスを吹き込み1時間窒素置換した。その後、撹拌下に反応釜の温度を50℃に保ち、1重量%の硫酸第一鉄水溶液1部と2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド0.15部を添加した。直ちに、モノマー乳化物を滴下し、3時間で重合を完結した。反応終了後、10重量%の水酸化ナトリウム5部を添加し、中和した。重合率は99.5重量%であつた。
【0045】
このようにして得られたポリマ―の水分散液を、再剥離用水分散型感圧性接着剤とした。この水分散型感圧性接着剤の20℃〜150℃でのtanδの変化量は0.52であった。つぎに、この水分散型感圧性接着剤を用いて、実施例1と同様の方法により、感圧性接着テ―プを作製した。
【0046】
(比較例2)
純水180部を反応釜に仕込み、他方、アクリル酸2−エチルヘキシル496部、アクリル酸2部、ノニルフェノール・ポリオキシエチレンエーテル−サルフェート2部および純水200部の混合物を乳化し、滴下ロートに装入した。滴下ロート中に窒素ガスを吹き込み1時間窒素置換した。同様に、反応釜に窒素ガスを吹き込み1時間窒素置換した。その後、撹拌下に反応釜の温度を30℃に保ち、1重量%の硫酸第一鉄水溶液1部を添加した。直ちに、モノマー乳化物、0.5重量%のt−ブチルハイドロパーオキシド水溶液25部および0.5重量%の重亜硫酸ナトリウム水溶液25部を滴下し、3時間で重合を完結した。反応終了後、10重量%の水酸化ナトリウム5部を添加し、中和した。重合率は99.7重量%であった。
【0047】
このようにして得られたポリマ―の水分散液を、再剥離用水分散型感圧性接着剤とした。この水分散型感圧性接着剤の20℃〜150℃でのtanδの変化量は0.59であった。つぎに、この水分散型感圧性接着剤を用いて、実施例1と同様の方法により、感圧性接着テ―プを作製した。
【0048】
(比較例3)
比較例1の方法で第1段目の乳化重合を行った後、引き続き第2段目の乳化重合として、重合計内にアクリル酸2エチルヘキシル43部、アクリル酸エチル6部、アクリル酸1部、ラウリル硫酸ナトリウム1部、ポリオキシエチレンラウリルエ―テル0.5部および水75部をあらかじめ乳化したものを加え、温度を70℃に保ち、過硫酸アンモニウム0.2部を加え、さらに3時間乳化重合した。重合率は99.5重量%であった。
【0049】
このようにして得られたポリマ―の水分散液を、再剥離用水分散型感圧性接着剤とした。この水分散型感圧性接着剤の20℃〜150℃でのtanδの変化量は0.59であった。つぎに、この水分散型感圧性接着剤を用いて、実施例1と同様の方法により、感圧性接着テ―プを作製した。
【0050】
以上の実施例1〜5および比較例1〜3の各再剥離用感圧性接着テ―プについて、以下の方法により、接着力、接着力上昇性および粗面接着力を測定した。結果を表1および表2に示した。
<接着力の測定>
JIS Z−0237に準じて、180度ピ―リング試験を行い、剥離力(g/20mm)を測定した。被着体としては、#280のサンドペ―パ―でサンディングしたステンレス板を用いた。
【0051】
<接着力上昇性の測定>
接着力の測定と同様の方法で貼り合せたサンプルを80℃で1時間加熱し、直後に剥離した場合の破壊形態と放冷後の剥離力を測定した。破壊形態は、界面破壊を○、一部凝集破壊を△、凝集破壊を×とした。
【0052】
<粗面接着力の測定>
#100のサンドペ―パ―を用いた以外は、接着力の測定の場合と同様の方法で粗面接着力を測定した。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
上記の表1および表2の結果から、比較例1〜3の各再剥離用感圧性接着テ―プは、加熱直後の剥離において糊残りが生じており、さらに加熱後の接着力上昇性が高いのに対し、実施例1〜5の各再剥離用感圧性接着テ―プは、加熱直後の剥離において糊残りせず、また加熱後の接着力上昇性が低く、しかも粗面に対しても良好な接着力を示すものであることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によって、室温での接着力が高く、加熱時の凝集力の低下が少なくて、加熱直後の剥離に際し糊残りがみられず、また加熱後の接着力の上昇性も低く、そのうえ粗面に対しても良好な接着力を示す再剥離用水分散型感圧性接着剤や再剥離用感圧性接着テ―プを提供できるため、接着や貼り合わせを必要とする工業用および家庭用の種々の分野に活用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに重合可能なモノマーとを用いたポリマ―が、20℃から150℃までの動的粘弾性値(tanδ)において下記式(1)の関係を有することを特徴とする1液再剥離性水分散型感圧性接着剤。
tanδの最大値 − tanδの最小値 ≦ 0.5 (1)
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数が4〜6であることを特徴とする請求項1に記載の1液再剥離性水分散型感圧性接着剤。
【請求項3】
アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー100重量部に対して、0.001〜0.2重量部の重合開始剤を用いて、30℃未満で乳化重合することを特徴とする1液再剥離性水分散型感圧性接着剤の製造方法。
【請求項4】
第1段目の乳化重合として、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー100重量部に対して、0.001〜0.2重量部の重合開始剤を用いて、60℃未満で乳化重合を行った後に、
第2段目の乳化重合として、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー100重量部に対して、0.1〜0.5重量部の重合開始剤を加え、60℃未満で乳化重合を行い、
第1段目および第2段目の乳化重合に用いたモノマ―の合計量中に占める第2段目のモノマ―の割合が最大80重量%までとすることを特徴とする1液水分散型感圧性接着剤の製造方法。
【請求項5】
第1段目および/または第2段目の乳化重合の温度が40℃以下であることを特徴とする請求項4記載の1液水分散型感圧性接着剤の製造方法。
【請求項6】
アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー100重量部に対して、0.001〜0.2重量部の重合開始剤を用いて、60℃未満で乳化重合することにより得ることができる水分散液(A)と、
アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー100重量部に対して、0.1〜0.5重量部の重合開始剤を加え、60℃未満で乳化重合することにより得ることができる水分散液(B)とを、
両液の製造に用いたモノマ―の合計量中に占める水分散液(B)に用いたモノマ―の割合が最大80重量%までとなるように混合することを特徴とする水分散型感圧性接着剤の製造方法。
【請求項7】
前記乳化重合において、モノマー乳化液を微細に分散し、分散粒子のメディアン径を2.0μm〜5.0μmとして乳化重合を行うことを特徴とする請求項3〜6いずれか1項に記載の水分散型感圧性接着剤の製造方法。
【請求項8】
ガードナーカラーが3以下の淡色固形樹脂を加えたモノマー乳化液を用いることを特徴とする請求項7記載の水分散型感圧性接着剤の製造方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載の粘着剤を、基材の少なくとも片面に設けてなることを特徴とする粘着テープ。
【請求項10】
請求項3〜8のいずれか1項に記載の方法で製造した粘着剤を、基材の少なくとも片面に設けてなることを特徴とする粘着テープ。
【請求項11】
請求項9または10に記載の粘着テープを被着体に貼付してなる物品



























【公開番号】特開2007−2147(P2007−2147A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−185940(P2005−185940)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】