説明

水性流体処理システム

【課題】 少ないスペースで配置できなおかつ少ないエネルギ量で有機性成分と水とを分離し効率よく処理でき、なおかつ固体成分を有効利用できる水性流体処理システムを提供する。
【解決手段】 主として有機成分を含む固体と水とが混合された水性流体中から水性成分を分離し、分離した水性成分を所定基準に浄化するとともに、分離した有機成分を主体とした固体成分を熱分解に供する水性流体処理は、前記流体を固体成分と水性成分に分離する少なくとも1つの固液分離装置100と酸素系気体の微細気泡を発生する微細気泡発生装置を有する微細気泡処理槽を含む水性成分を浄化する水処理装置300と、固液分離した有機成分を主体する固体を熱分解する熱分解装置600と、から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性流体処理システムに関する。より詳しく述べると有機性成分を含有する水から固液分離して所定のレベルの水を排出する省スペースかつ省エネルギの水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、活性汚泥法の処理、河川や湖沼の浄化など微生物を利用した処理を行う際に、微生物を使用しているのが一般的である。。
【0003】
これらの微生物処理の代表例として、好気性生物学的排水処理が挙げられる。好気性生物学的排水処理には、これまで活性汚泥法が広く用いられてきたが、近年、浸漬濾床法又は固定床法(以下、単に浸漬濾床法という)と呼ばれる排水処理方法が提案され、実用化されている。好気性浸漬濾床法では、処理槽内に微生物を付着させるための充填材を浸漬濾床として充填し、この処理槽内に排水を導入するとともに、曝気を行う。これにより、充填材上で微生物が増殖し、この微生物が曝気によって排水中に溶け込んだ溶存酸素を利用して、排水中の汚濁物質の除去を行うものである。
【0004】
このようなシステムは、非常に大型であり、大規模システムが必要であった。一方、下水道設備の普及していない地域の住居、公園、河川敷、山小屋等にトイレを設置した場合、通常その排泄物は固形分と液体分とが一緒にし尿収容槽に溜めて、し尿がある程度の量になるとバキュームカー等で回収して浄化設備を有している場所に移送し当該浄化設備を有している場所で処理していた。
【0005】
特許文献1は、このようなし尿の処理方法として、生物処理を行って、排泄物の固形分と液体とに分離し、分離した固形分はコンポスト化し、一方分離した水分は浄化処理を行ってリサイクルする方法が提案されている。
【0006】
し尿収容槽を利用する方法は、悪臭が発生し、これを使用する者に不快感を与える。また、し尿収容槽に溜められたし尿は液体と固体の両者であり、これを運搬する場合の運送費も高価である。また、微生物による浄化設備は、微生物は温度が低くなると働きが鈍くなり、浄化効率が悪くなるという欠点がある。微生物の管理は非常に微妙であり、予期せぬ出来事により微生物が浄化しないことも生じるおそれがある。
【0007】
また、特許文献2では不安定な生物処理でなく安定した凝結剤による排泄物の固液分離を行い、分離した水をリサイクルするシステムが提案されている。特許文献2に記載のリサイクルシステムは、し尿を細かく砕く粉砕機と、細かく砕いたし尿と凝結剤とを攪拌する攪拌装置と、固液を分離する沈殿槽と、分離した液体を洗浄水として回収するポンプとで構成された水循環式のし尿処理装置から構成されている。
【0008】
特許文献2には、水洗とすることで悪臭が発生せず、し尿に含まれている水をリサイクルして洗浄水とすることで、水洗トイレで使用する水の量を少なくすることができる。またトイレを使用する者に不快感を与えないなどの効果が記載されている(特許文献2、段落0007)。
【0009】
一方、汚泥を燃料化する試みを行われている。非特許文献1によると、汚泥を熱分解しにより炭化して火力発電等の燃料として使用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】 特開平11−131552号公報
【特許文献2】 特開2008−284502号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】汚泥熱分解燃料化システムに関する研究 内田 賢治著 http://www.jiwet.jp/quarterly/n011/pdf/n011−006.pdf(平成23年4月16日検索)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1、2に記載の汚泥処理では分離した固体の処理に問題があり、また、非特許文献1の方法では汚泥を乾燥する必要があり、汚泥を乾燥するにあたり多量の熱エネルギを必要とするという問題があった。
【0013】
したがって、本発明の課題は、少ないスペースで配置できなおかつ少ないエネルギ量で有機性成分と水とを分離し効率よく処理でき、なおかつ固体成分を有効利用できる水性流体処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決する本発明は、下記項目に関する。
(1) 主として有機成分を含む固体と水とが混合された水性流体中から水性成分を分離し、分離した水性成分を所定基準に浄化するとともに、分離した有機成分を主体とした固体成分を熱分解に供する水性流体処理システムであって、
(a) 前記流体を固体成分と水性成分に分離する少なくとも1つの固液分離装置と
(b) 酸素、オゾン、エアよりなる群から選択された酸素系気体の微細気泡を発生する微細気泡発生装置を有する微細気泡処理槽を含む水性成分を浄化する水処理装置と、
(c) 固液分離した有機成分を主体する固体を熱分解する熱分解装置と、
から構成されることを特徴とする水性流体処理システム。
【0015】
(2) 前記水処理装置が前記水性成分を微生物処理する少なくとも1つの生物学的処理槽と、酸素、オゾン、エアよりなる群から選択された酸素系気体の微細気泡を発生する微細気泡発生装置を有する微細気泡処理槽と、を含むことを特徴とする項目1に記載の水性流体処理システム。
【0016】
(3) 前記生物学的処理装置が
(1)支持体の表面に繊維糸の織物または編物から構成され、前記繊維間に微生物の生息空間が形成される微生物担体であって、前記微生物担体を構成する繊維が、A支持用の繊維と、B微生物が着床するのに十分な表面を有する微生物着床繊維との少なくとも2種類の繊維とから構成され、前記繊維間で微生物を生息空間を形成した微生物担体又は
(2)支持体の表面にループ状、ループの先端部分をカットした形状、パイルカットした繊維を有する微生物担体
を有する少なくとも1つの生物学的処理装置であることを特徴とする項目2に記載の水性流体処理システム。
【0017】
(4) 前記水処理装置が、酸素、オゾン、エアよりなる群から選択された酸素系気体の微細気泡を発生する微細気泡発生装置を有する凝集槽を含むことを特徴とする項目1から項目3のいずれか1項に記載の水性流体処理システム。
【0018】
(5) 前記水処理装置が、酸素、オゾン、エアよりなる群から選択された酸素系気体の微細気泡を発生する微細気泡発生装置を有する微細気泡処理槽と、酸素系気体の微細気泡により処理された水を圧力下にろ過するろ過装置と、を含むことを特徴とする項目1から項目4のいずれか1項に記載の水性流体処理システム。
【0019】
(6) 前記固液分離装置が流体をスクリーンにより分離するスクリーン式の固液分離装置を含むことを特徴とする項目1から項目5のいずれか1項に記載の水性流体処理システム。
【0020】
(7) 前記スクリーン式の固液分離装置が、固体と液体とを分離するためのスクリーンと、分離した液体を貯留するための貯留部とから構成され、前記貯留部には、貯留した液体成分から固形分を浮上させるための微細気泡発生装置と、浮上した固形分を回収するための固体成分補足部とを有していることを特徴とする項目6に記載の水性流体処理システム。
【0021】
(8) 前記固液分離装置がデカンタ方式の固液分離装置を含むことを特徴とする項目1から項目7のいずれか1項に記載の水性流体処理システム。
【0022】
(9) 前記水性流体処理システムが1又は複数のコンテナに設置されたものであることを特徴とする項目1から項目8のいずれか1項に記載の水性流体処理システム。
【0023】
(10) 前記コンテナの露出面に広告が施されていることを特徴とする項目9に記載の水性流体処理システム。
【0024】
(11) 前記熱分解装置は、有機成分を油化する油化装置又は有機成分を炭化する炭化装置であることを特徴とする項目1から項目10のいずれか1項に記載の水性流体処理システム。
【0025】
(12) 前記熱分解装置は、固液分離した固体成分を乾燥するための乾燥装置と、乾燥装置で乾燥した固体成分を熱分解する熱分解装置本体と、前記熱分解装置で発生した熱を前記乾燥装置に送る熱風送り配管と、前記乾燥装置と配管を通じて接続され前記乾燥装置で乾燥に使用した気体を浄化するための浄化装置と、を備えたことを特徴とする項目1から項目11のいずれか1項に記載の水性流体処理システム。
【0026】
(13) 前記熱分解装置は、熱分解により発生した熱を用いて発電を行う発電装置を備えたことを特徴とする項目1から項目12のいずれか1項に記載の水性流体処理システム。
【発明の効果】
【0027】
本発明の水性流体処理システムは、主として有機成分を含む固体と水とが混合された水性流体中から水性成分を分離し、分離した水性成分を所定基準に浄化するとともに、分離した有機成分を主体とした固体成分を熱分解に供する水性流体処理システムであり、
(a) 前記流体を固体成分と水性成分に分離する少なくとも1つの固液分離装置と、(b)酸素、オゾン、エアよりなる群から選択された酸素系気体の微細気泡を発生する微細気泡発生装置を有する微細気泡処理槽を含む水性成分を浄化する水処理装置と、(c)固液分離した有機成分を主体する固体を熱分解する熱分解装置と、から構成される。
【0028】
したがって、少ないスペースで配置できなおかつ少ないエネルギ量で有機性成分と水とを分離し効率よく処理でき、分離した水層を省スペースで効率よく処理可能である。一方、分離した固体成分を熱分解装置により油化又は炭化するので、分離した固体成分を有効利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】 本発明の実施形態に係る水性流体処理システムの処理フローを示す図面。
【図2】 本発明の水性流体処理システムの一実施形態を示す図面。
【図3】 本発明の水性流体処理システムの別の一実施形態を示す図面。
【図4】 (a)、(b)は本発明で使用する微生物担体を示す図面。
【図5】 (a)、(b)は本発明で使用する微生物担体を示す図面。
【図6】 本発明で使用する微生物担体の微生物着床表面を示す図面。
【図7】 (a)、(b)は本発明で使用する微生物担体を示す図面。
【図8】 (a)から(d)は本発明で使用する微生物担体を示す図面。
【図9】 本発明の水性流体処理システムのさらに別の一実施形態を示す図面。
【図10】 図9に示す水性流体処理システムをコンテナに組み込んだ様子を示す図面。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示す通り本実施形態で適用可能な流体は、汚泥、河川、湖沼等の水、廃棄物由来(特に生分解成分を含有する)の廃水、食品・食品加工由来廃液、畜産由来廃液等の生分解性の廃液である。
【0031】
本発明においては、これらの水性流体を固液分離装置100で固液分離し、固液分離した液層を水処理装置200で処理し、放流又は上水・中水として利用する。
【0032】
一方、固液分離装置100で分離した固体成分は、熱分解装置600により熱分解し、オイル又は炭化物として再利用する。
【0033】
本発明において、使用する流体は、固液分離後に目的に応じた水処理装置により処理された後に応じて放流されたり、中水として使用したり(汚泥、廃棄物由来(特に生分解成分を含有する)の廃水、食品・食品加工由来廃液、畜産由来廃液等)、上水(河川、湖沼等の水)として使用されてりする。
【0034】
本発明における固液分離装置100は、目的に応じて1台であっても複数台であってもよく当該技術分野に公知の固液分離装置から適宜選択されるもので特に限定されるものではない。例えば、スクリーン式固液分離装置、デカンタ式固液分離装置、遠心分離(連続式・バッチ式)、脱水装置などから目的に応じて適宜選択できる。
【0035】
本発明の好ましい実施形態において、固液分離装置100は、スクリーン式固液分離装置である。この装置は、流体を固形分と水分とに分離するスクリーンと分離した水を一次貯蔵するための分離水槽に加えて水処理装置200からのオゾン及び/又は酸素の微細気泡を導入するための微細気泡導入口と、導入された微細気泡により浮上した固形分を補足するための固形分補足部とを備えていることを特徴とし、必要により補足した固形分を掻きとるための図示しない掻きとり手段を有している。
【0036】
ここで、使用するスクリーン1のメッシュは、流体中の固形分のサイズに応じて適宜選択されるが、メッシュを通過して分離水槽に入った固形分を微細気泡導入口からの酸素及び/又はオゾンの微細気泡により浮上させて固形分補足部で補足する。
【0037】
また、本発明では、所望に応じてデカンタ式の固液分離装置を適用できる。例えば、GFA社からデカンタUCDの商品名で販売される固液分離装置を適用可能である。
【0038】
このようにして、固液分離した水層は、生物学的処理槽、凝集槽あるいはこれらの組み合わせにより処理されるが、本発明において、水処理装置は、酸素系ガスの微細気泡を導入する点に特徴がある。酸素系ガスとは具体的には濃縮酸素及び/又はオゾンである。このような酸素系ガスは、酸素濃縮装置(PSA)303で空気中の酸素を濃縮し、オゾン発生装置302により濃縮した酸素をオゾン化して微細気泡発生装置301により微細気泡として水処理槽300に導入する。
【0039】
なお、酸素の微細気泡を導入したい場合には酸素濃縮装置(PSA)303で濃縮した酸素をオゾン発生装置302をバイパスすることにより実現可能である。
【0040】
このように酸素系の微細気泡を水処理槽200に導入することにより、例えば生物学的処理槽200からの有機成分が分解するとともに、微生物が除去され、あるいは微細気泡を含有した処理水を圧力下でろ過処理する際の圧力の軽減を図ることが可能となる。なお、処理液の種類によっては、重金属の除去等を行ってもよい。
【0041】
一方、固液分離装置100により分離した有機成分を主体とする固形分は、熱分解装置600により熱分解処理されるが、本発明の好ましい実施形態では、固形分を乾燥するために熱分解により発生する熱を利用することが好ましい(後述の図2から図4参照)。
【0042】
次に、図2から図8に基づいて本発明の水性流体処理システムの具体例を示す。
図2及び図3に示す水性流体処理システムは、主として汚泥、畜産由来廃液、生ゴミ等の浸漬水を放流基準にあった水まで処理するシステムである。図2に示す水処理システムは、固液分離装置を一台設けた構成で図3に示す水処理システムは、固液分離装置を二台設けた構成である点が相違する。
【0043】
固液分離装置100で分離した固体成分は、水処理装置である生物学的処理槽200に送られ微生物処理した後に水処理槽300により最終処理される。
【0044】
本発明では、固液分離装置100、100’で分離した水分を次いで生物学的処理槽200により生物学的処理する。なお、所望に応じて従来公知の通り、凝集剤を添加して固液分離を更に行うこともできる。この際に、好ましい凝集剤は、イオン系の凝集剤である。
【0045】
この際に、本発明の目的・効果を奏するために本発明では、図3から図7に示すような微生物担体を固定した生物学的処理槽200を採用することに特徴がある。
【0046】
図3および図4に示す通り、本発明の微生物担体は、支持用繊維20Aと微生物着床用繊維20Bの二種類の繊維から構成された織物から微生物生息空間21が露出するように形成されている。
【0047】
支持用繊維20Aとは、微生物担体2の形状を保持するのに十分な強度を有する繊維から形成されるものであり、このような強度を有する繊維であれば特に限定されるものではない。
【0048】
本実施形態では、支持用繊維20Aを高収縮糸から形成された織物を使用している。なお、高収縮糸とは、熱付与により収縮する糸を言い、従来公知の収縮糸から強度、比重、所望とする微生物生息空間のサイズを考慮して適宜選択され、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル系樹脂が挙げられる。
【0049】
また、本実施形態では微生物着床用繊維20Bとして図5に示すように微生物着床部分を構成する繊維表面に多数の微細空間を有しているマイクロファイバが好適に使用できる。
【0050】
本発明の好ましい実施形態おいて、微生物着床用繊維20Bに使用するマイクロファイバとして、PET等のリサイクル品を原料として製造されたマイクロファイバがリサイクルの観点から特に好ましい。このようなマイクロファイバとして、株式会社菊池エコアースからEE−RMFの商品名で販売されているリサイクルマイクロファイバが特に好ましい。
【0051】
このような本発明の微生物担体1は、図3(a)に示す通り、高収縮糸からなる支持用繊維20Aとマイクロファイバ(普通糸)からなる着床用繊維20Bとを所定間隔で交差して一体化した前駆体から容易に製造できる。
【0052】
このように構成した前駆体に熱を所定条件で付与すると支持用繊維20Aが収縮し、収縮しない普通糸からなる着床用繊維20Bとの間で図3(b)に示す通り所定の空隙が構成される。本発明においては、このような開口部を微生物生息空間21として使用する。
【0053】
同様にして、図4に示す通り、高収縮糸からなる支持用繊維20Aとマイクロファイバ(普通糸)からなる着床用繊維20Bとを積層し、例えば繊維の長手軸に対して垂直方向に所定間隔で固着する(固着部分X1、X2・・Xn)。このようにして一体化した積層体からなる前駆体に熱を所定条件で付与すると支持用繊維20Aが収縮し、収縮しない普通糸からなる着床用繊維20Bとの間で図4に示す通り所定の空隙が構成される。なお、この際の固着方法は、本発明の目的・効果を奏するものであれば特に限定されるものではなく、接着剤(例えばホットメルト接着剤)による接着、熱付与による融着、縫合など適宜選択できる。
【0054】
この際の、熱付与は、使用する高収縮糸の種類、太さなどに依存して例えば熱湯中に数分、例えば2〜3分浸漬するという簡単な方法で実施できる。
【0055】
このようにして形成された微生物担体2は、微生物着床用繊維20Bを有しているので、微生物着床用繊維20Bの微生物着床用表面に微生物が着床しやすく、着床した微生物が微生物生息空間である空隙に広がって繁殖する。そのため、従来技術の微生物担体に比較して容易に微生物コロニを形成できるというメリットがある。
【0056】
本発明においては、図7に示す通り、微生物担体2を固定床として生物学的水処理槽200に適用する。すなわち、図7(a)に示す通り、本発明の微生物担体1を微生物生息空間が表面に露出するように構成した板状物である。このような板状の微生物担体を、処理槽の全空間あるいは所定間隔で配置することによって、固定床の微生物処理にも適用可能である。
【0057】
あるいは図7(b)に示す本発明の微生物担体1の使用例は、ひも状に本発明の微生物担体を構成し、これをフックなどの固定手段で固定床に固定して適用する。
【0058】
このように生物学的処理水槽200を構成することによって、安価で軽量な材料から構成され、単位体積当たり大容量の微生物を生息させる空間構成できるので、省スペースで効率的に生物学的処理が可能となる。
【0059】
図3から図6に示す微生物担体に加えて、あるいはこれに代えて、図8に示すような支持体の表面にループ状、ループの先端部分をカットした形状、パイルカットした繊維を有する微生物担体を使用することも可能である。
【0060】
このようにして生物学的処理された液体成分は、次いで水処理槽300により最終処理される。
【0061】
本発明における水処理槽300は、図1に示す通り、酸素系ガスの微細気泡を導入する点に特徴がある。酸素系ガスとは具体的には濃縮酸素及び/又はオゾンである。このような酸素系ガスは、酸素濃縮装置(PSA)303で空気中の酸素を濃縮し、オゾン発生装置302により濃縮した酸素をオゾン化して微細気泡発生装置301により微細気泡として水処理槽300に導入する。
【0062】
なお、酸素の微細気泡を導入したい場合には酸素濃縮装置(PSA)303で濃縮した酸素をオゾン発生装置302をバイパスすることにより実現可能である。
【0063】
このように酸素系の微細気泡を水処理槽300に導入することにより、生物学的処理槽200からの有機成分が分解するとともに、微生物が除去される。なお、処理液の種類によっては、重金属の除去等を行ってもよい。
【0064】
このように構成された本発明の水処理システムは、所定の分離装置100、100’、所定の生物学的水処理槽200、水処理槽300の簡単な構成で効率よく有機成分を含む水を処理可能である。しかも、固液分離装置、水処理槽はエネルギ消費量が少ないので、エネルギが十分行き届かない場所でも安定して水処理を行うことが可能である。
【0065】
以上説明したとおり、本発明の水処理システムは、コンパクトで設計度が自由であり、エネルギ消費量も少ない。したがって、小規模から中規模の水処理システムとして種々の分野、例えば食品由来廃液、養殖用の循環水システムなどの分野にも適用可能である。
【0066】
次に図9に基づいて、本発明の第2実施形態に係る水性流体処理システムについて説明する。
【0067】
図9に示す通り、本発明の第2実施形態に係る水性流体処理システムは、アオコ、藻類、水中浮遊物(セストン)等が繁殖した河川・湖沼等の水を処理し、工業用水、農業用水、飲料水に処理するためのシステムに適用した例を示すものである。
【0068】
図9に示すシステムは生物学的処理槽200に代えて、本実施形態では凝集槽200’を設けた。凝集槽200’は、固液分離した液体を従来公知の水処理手段である。凝集槽200’に加えて砂ろ過装置等の従来公知の水処理手段を加えてもよい。
【0069】
なお、本発明の好ましい実施形態において、凝集剤として金属イオン系の凝集剤を加えることが好ましい。
【0070】
また、凝集槽200’に酸素系微細気泡発生装置301Bを設けて更に水中浮遊成分を浮上処理することもできる。このようにして処理した水を次いで、水処理用ろ過手段である水処理用(RO)膜301により処理し、所望により重金属吸着剤により更に処理した後、処理水として排出する。この際に凝集槽200’に図示しないスイパーなどにより浮上した固体を抜き取ることも可能である。抜き取られた固体は固体処理槽400に送り処理することも可能である。
【0071】
一方、固液分離した固体成分は、図2及び図3に示す実施形態と同様にして熱分解装置により熱分解され、オイル又は炭化物として有効利用される。
【0072】
以上、本発明を添付図面に基づいて説明したが本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0073】
例えば、本発明の水性流体水処理システムを、例えば、図10に示す通りコンテナ等に組み込んで本発明の水処理システムを移動式システムとして適用することも可能である。この際に、コンテナ等に広告を施すこともできる。このこうにコンテナ等に組み込むことにより移動式、仮設の汚泥処理、中水処理システムとして適用可能である。また、コンテナの露出面に広告を施すことも本発明の範囲内である。
【符号の説明】
【0074】
100,100’ 固液分離装置
200 水処理装置
300 水処理槽
500 急速乾燥装置
600 熱分解装置
700 オイル精製装置
701 熱風送り配管
800 オイル精製装置
801 オイルタンク
900 スクラバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主として有機成分を含む固体と水とが混合された水性流体中から水性成分を分離し、分離した水性成分を所定基準に浄化するとともに、分離した有機成分を主体とした固体成分を熱分解に供する水性流体処理システムであって、
(a) 前記流体を固体成分と水性成分に分離する少なくとも1つの固液分離装置と
(b) 酸素、オゾン、エアよりなる群から選択された酸素系気体の微細気泡を発生する微細気泡発生装置を有する微細気泡処理槽を含む水性成分を浄化する水処理装置と、
(c) 固液分離した有機成分を主体する固体を熱分解する熱分解装置と、
から構成されることを特徴とする水性流体処理システム。
【請求項2】
前記水処理装置が前記水性成分を微生物処理する少なくとも1つの生物学的処理槽と、
酸素、オゾン、エアよりなる群から選択された酸素系気体の微細気泡を発生する微細気泡発生装置を有する微細気泡処理槽と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の水性流体処理システム。
【請求項3】
前記生物学的処理装置が
(1)支持体の表面に繊維糸の織物または編物から構成され、前記繊維間に微生物の生息空間が形成される微生物担体であって、前記微生物担体を構成する繊維が、A支持用の繊維と、B微生物が着床するのに十分な表面を有する微生物着床繊維との少なくとも2種類の繊維とから構成され、前記繊維間で微生物を生息空間を形成した微生物担体又は
(2)支持体の表面にループ状、ループの先端部分をカットした形状、パイルカットした繊維を有する微生物担体
を有する少なくとも1つの生物学的処理装置であることを特徴とする請求項2に記載の水性流体処理システム。
【請求項4】
前記水処理装置が、酸素、オゾン、エアよりなる群から選択された酸素系気体の微細気泡を発生する微細気泡発生装置を有する凝集槽を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の水性流体処理システム。
【請求項5】
前記水処理装置が、酸素、オゾン、エアよりなる群から選択された酸素系気体の微細気泡を発生する微細気泡発生装置を有する微細気泡処理槽と、
酸素系気体の微細気泡により処理された水を圧力下にろ過するろ過装置と、
を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の水性流体処理システム。
【請求項6】
前記固液分離装置が流体をスクリーンにより分離するスクリーン式の固液分離装置を含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の水性流体処理システム。
【請求項7】
前記スクリーン式の固液分離装置が、固体と液体とを分離するためのスクリーンと、分離した液体を貯留するための貯留部とから構成され、前記貯留部には、貯留した液体成分から固形分を浮上させるための微細気泡発生装置と、浮上した固形分を回収するための固体成分補足部とを有していることを特徴とする請求項6に記載の水性流体処理システム。
【請求項8】
前記固液分離装置がデカンタ方式の固液分離装置を含むことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の水性流体処理システム。
【請求項9】
前記水性流体処理システムが1又は複数のコンテナに設置されたものであることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の水性流体処理システム。
【請求項10】
前記コンテナの露出面に広告が施されていることを特徴とする請求項9に記載の水性流体処理システム。
【請求項11】
前記熱分解装置は、有機成分を油化する油化装置又は有機成分を炭化する炭化装置であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の水性流体処理システム。
【請求項12】
前記熱分解装置は、固液分離した固体成分を乾燥するための乾燥装置と、
乾燥装置で乾燥した固体成分を熱分解する熱分解装置本体と、
前記熱分解装置で発生した熱を前記乾燥装置に送る熱風送り配管と、
前記乾燥装置と配管を通じて接続され前記乾燥装置で乾燥に使用した気体を浄化するための浄化装置と、
を備えたことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の水性流体処理システム。
【請求項13】
前記熱分解装置は、熱分解により発生した熱を用いて発電を行う発電装置を備えたことを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の水性流体処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−223746(P2012−223746A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105668(P2011−105668)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(306016523)株式会社菊池エコアース (11)
【出願人】(510120540)GGIジャパン株式会社 (4)
【Fターム(参考)】