説明

水性硬化性組成物

【課題】 常温硬化性を示し、速乾性の高い水性硬化性組成物を提供すること。
【解決手段】
一般式(I)
【化1】


[式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜16の有機基を示す]
で表される(2−アシルアシル)アミノ基およびポリオキシアルキレン基を含有するポリマー(A)、ケトン型および/又はアルデヒド型のカルボニル基を含有する、水溶性又は水分散性ビニル系重合体(B)、およびヒドラジド基および/又はセミカルバジド基を有する化合物(C)を含有することを特徴とする水性硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(2−アシルアシル)アミノ誘導基を有するポリマー(A)、カルボニル基を含有するビニル系重合体(B)及びヒドラジド基および/又はセミカルバジド基(C)を含有する水性硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
環境対応の観点から水性硬化性組成物が求められている。水性硬化性組成物の中でも、ケトン型カルボニル基含有ビニル系重合体、およびヒドラジド化合物および/又はセミカルバジド化合物を含有してなる水性硬化性組成物は、非架橋性ラッカー型のビニル系重合体からなる水性硬化性組成物より乾燥性が優れていることは特許文献1〜5に開示されている。また特許文献6には特定のセミカルバジド硬化剤と、ポリカルボニル化合物として特にスルホン酸基又はスルホネート基を有するエチレン性不飽和単量体、硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体、およびそれらの混合物よりなる群から選ばれるアニオン型エチレン性不飽和単量体の存在下、共重合することによって得られる水性エマルションを組み合わせた組成物が塗膜の耐水性を改善できる事が開示されている。しかしこれらに開示されている水性硬化性組成物も速乾性のレベルはまだ不十分であり、さらに速乾性の高い水性硬化性組成物が求められていた。
【0003】
【特許文献1】特公昭46−20053号公報
【特許文献2】特開昭57−3850号公報
【特許文献3】特開平02−155906号公報
【特許文献4】特開平04−249587号公報
【特許文献5】特開平05−59305号公報
【特許文献6】特開2005−42023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、速乾性にすぐれた水性硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、(A)(2−アシルアシル)アミノ基、および、ポリオキシアルキレン基を含有するポリマー、(B)カルボニル基含有ビニル系重合体、並びに、(C)ヒドラジド化合物および/又はセミカルバジド化合物を含有してなる水性硬化性組成物が、カルボニル基含有ビニル系重合体およびヒドラジド化合物および/又はセミカルバジド化合物を含有してなる従来型の水性硬化性組成物に比べて、極めて速乾性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、以下に示す、特定の(2−アシルアシル)アミノ誘導基を有するポリマー、カルボニル基含有ビニル系重合体、および、特定の架橋剤を含有してなる水性硬化性組成物を提供するものである。
1.(A)一般式(I)
【0007】
【化1】

[式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜16の有機基を示す]
で表される(2−アシルアシル)アミノ基およびポリオキシアルキレン基を含有するポリマー、(B)ケトン型および/又はアルデヒド型のカルボニル基を含有する、水溶性又は水分散性ビニル系重合体、および(C)ヒドラジド基および/又はセミカルバジド基を有する化合物を含有することを特徴とする水性硬化性組成物。
2.ポリマー(A)がさらにカーバメート基を含有することを特徴とする項1に記載の水性硬化性組成物。
3.ポリマー(A)が、ポリオキシアルキレン基を有するアルコール、ポリイソシアネート、並びに一般式(II)
【0008】
【化2】

[式中、Yは炭素数1〜12の有機基を、Rは水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。R及びRは前記と同じ意味を有する。]
で表される(2−アシルアシル)アミノ基を有する1価のアルコール、及び/又は、一般式(III)
【0009】
【化3】

[式中、Y、R及びRは前記と同じ意味を有する。]
で表される(2−アシルアシル)アミノ基を有する2価のアルコールを反応させてなるものであることを特徴とする項2に記載の水性硬化性組成物。
4.ポリマー(A)が、ポリオキシアルキレン基を有するアミン、及び一般式(IV)
【0010】
【化4】

[式中、R1及びR2は前記と同じ意味を有する。]
で表されるジケテン又はその誘導体を反応させてなるものであることを特徴とする項1に記載の水性硬化性組成物。
5.ポリマー(A)が、一般式(V)
【0011】
【化5】

【0012】
[式中、Zは炭素数2〜36の有機基を示す。Xは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、n個の繰り返し単位の中で同じであってもよいし異なっていてもよい。nは2以上の整数を示しm個の繰り返し単位の中で同じであってもよいし異なっていてもよい。mは1以上の整数を示す。Y及びRは前記と同じ意味を有する。]
で表される項2に記載の水性硬化性組成物。
6.ポリマー(A)が、一般式(VI)
【0013】
【化6】

【0014】
[式中、M及びMはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜36の有機基を示す。kは1以上の整数を示す。mは1以上の整数を示しk個の繰り返し単位の中で同じであってもよいし異なっていてもよい。p及びqはそれぞれ独立して0又は1を示す。X、Y、Z及びnは前記と同じ意味を有する。]
で表される項2に記載の水性硬化性組成物。
7.ポリマー(A)が、一般式(VII)
【0015】
【化7】

[式中、nは2以上の整数を示す。Xは前記と同じ意味を有する。]、
又は一般式(VIII)
【0016】
【化8】

[式中、Tは炭素数3〜36で、かつr価の有機基を、rは2〜10の整数を示す。nは2以上の整数を示しr個の中で同じであってもよいし異なっていてもよい。Xは前記と同じ意味を有する。]
で表される項1に記載の水性硬化性組成物。
8.ビニル系重合体(B)がN−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミドおよび/又は2−(アセトアセトキシ)エチルメタクリレートを含んだビニル系モノマー混合物の乳化重合により製造されることを特徴とする項1に記載の水性硬化性組成物。
9.ポリマー(A)中の(2−アシルアシル)アミノ基の濃度が、0.05〜2.5モル/Kgである項1に記載の水性硬化性組成物。
10.ポリマー(A)が有する(2−アシルアシル)アミノ基およびビニル系重合体(B)が有するケトン型のカルボニル基およびアルデヒド型のカルボニル基の合計モル数と化合物(C)が有するヒドラジド基およびセミカルバジド基の合計モル数の比((2−アシルアシル)アミノ基、並びに、ケトン型およびアルデヒド型のカルボニル基の合計モル)/(ヒドラジド基およびセミカルバジド基の合計モル))が0.5〜10である項1に記載の水性硬化性組成物。
11.
ポリマー(A)の質量とポリマー(A)及びビニル系重合体(B)の合計質量との比(ポリマー(A)の質量/(ポリマー(A)及びビニル系重合体(B)の合計質量)が、0.001〜0.1になるように配合してなる項1に記載の水性硬化性組成物。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、従来公知の水性硬化性組成物の成分であるカルボニル基含有ビニル系重合体(B)並びにヒドラジド化合物および/又はセミカルバジド化合物(C)に必須成分として(2−アシルアシル)アミノ基およびポリオキシアルキレン基を含有するポリマー(A)を組み合わせた水性硬化性組成物である。ポリマー(A)に含まれている硬化に関与する基は(2−アシルアシル)アミノ基でありこの基は活性水素を持つアミノ基、ヒドラジド基、セミカルバジド基と常温で縮合反応する。特にヒドラジド基、セミカルバジド基とは水を生成しながら安定なイミンを形成する。そのため従来公知のカルボニル基含有ビニル系重合体(B)並びにヒドラジド化合物および/又はセミカルバジド化合物(C)に(2−アシルアシル)アミノ基、およびポリオキシアルキレン基を含有するポリマー(A)を加えた水性硬化性組成物は硬化の初期に(A)と(C)の反応、及び(A)と(C)の反応生成物の末端にあるヒドラジド基および/またはセミカルバジド基と(B)の反応が円滑に進行し、詳細は未だ不明であるが、結果として急激な粘度上昇が起きるためか、本発明の水性硬化性組成物は、特に塗膜とした場合、速乾性にすぐれたものとなる。
【0018】
またポリマー(A)は、ポリオキシアルキレン構造をもつ幹ポリマーに(2−アシルアシル)アミノ基がつながれており、ポリオキシアルキレン部分が親水性を示し良好な水溶性または水分散性を有することが多いため、水性硬化性組成物に好適に用いる事が出来る。また、ポリマー(A)はカーバメート基を有していてもよい。この場合、カーバメート基に由来する水素結合性ウレタン結合により、硬化物の物性補強を図ることができる。
【0019】
以上の効果により、本発明の水性硬化性組成物は常温〜比較的低温の硬化条件でも速乾性に優れ、物性の良好な架橋体(塗膜)が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[水性硬化性組成物]
本発明の水性硬化性組成物は、(2−アシルアシル)アミノ基およびポリオキシアルキレン基を含有するポリマー(A)、カルボニル基含有ビニル系重合体(B)、並びに、ヒドラジド化合物および/又はセミカルバジド化合物(C)を任意に混合した水溶液または水分散液により形成される。また、必要に応じて着色顔料、体質顔料、防錆顔料、有機溶剤、顔料分散剤、表面調整剤などの塗料添加物を配合することができる。
【0021】
本発明の水性硬化性組成物は、浸漬塗装、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装等の公知の方法によって所望の基材表面に塗装することができる。
【0022】
本発明の水性硬化性組成物は、水性塗料として塗装基材の種類を問わず好適に使用することができる。以下、詳細に説明する。
[ポリマー(A)]
ポリマー(A)は、一般式(I)
【0023】
【化9】

[式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜16の有機基を示す]
で表される(2−アシルアシル)アミノ基、ポリオキシアルキレン基を含有するポリマーである。
一般式(I)の基において、RおよびRで示される炭素数1〜16の有機基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル及びそれらの異性構造のアルキル基;ベンジル、フェネチル等のアラルキル基;これらのアルキル基、アラルキル基等が酸素原子を含んでいる基等を挙げることができる。該有機基の炭素数が17以上になるとポリマー(A)の製造に長時間を要する場合がある。
【0024】
ポリマー(A)中に含まれるポリオキシアルキレン基としては、特には限定されないが、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシ
ブチレン及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基などが挙げられる。これらのポリオキシアルキレン基は、通常、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、オキセタン、及びテトラヒドロフランからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を公知の手法で開環重合させて製造できる。これらは、ホモ型、ランダム型及びブロック型のいずれであってもよい。中でも、製造の容易さから、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンが好ましく、ポリマー(A)へ良好な水溶性または水分散性を付与する面から、ポリオキシエチレン、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンがさらに好ましい。
ポリマー(A)は、硬化物の物性補強を図るために、カーバメート基を有していてもよい。ポリマー(A)は、特には限定されないが、以下の2つの製造方法で製造することが容易であり好ましい。
【0025】
製造方法1.ポリオキシアルキレン基を有するアルコール、ポリイソシアネート、並びに一般式(II)
【0026】
【化10】

[式中、Yは炭素数1〜12の有機基を、Rは水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。R及びRは前記と同じ意味を有する。]
で表される(2−アシルアシル)アミノ基を有する1価のアルコール、及び/又は、一般式(III)
【0027】
【化11】

[式中、Y、R及びRは、前記と同じ意味を有する。]
で表される(2−アシルアシル)アミノ基を有する2価のアルコールを反応させる。
【0028】
ポリオキシアルキレン基を有するアルコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール類;ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル類;トリメチロールプロパンとエチレンオキシドの付加重合物、ペンタエリスリトールとプロピレンオキシドの付加重合物などの多官能アルコールと環状エーテルの付加重合物類などが挙げられる。
【0029】
ポリイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ジイソシアネートペンタン(MPDI)、1,6−ジイソシアネートヘキサン(HDI)、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、リジンジイソシアネート、5−イソシアネート−1−(イソシアネートメチル)−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン(IPDI:略称イソホロンジイソシアネート)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(HMDI)、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ジイソシアネートノルボルナン、ジ(イソシアネートメチル)ノルボルナン、及びダイマージイソシアネートなどのジイソシアネート類;リジントリイソシアネートなどのトリイソシアネート類;及び、これらジイソシアネート類及びトリイソシアネート類からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を原料として製造される多官能ポリイソシアネート類が挙げられる。これらのポリイソシアネートは2種以上併用して用いてもよい。
【0030】
前記の、ジイソシアネート類及びトリイソシアネート類からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を原料として製造される多官能ポリイソシアネートとは、特には限定されないが、例えば、イソシアヌレート構造、アロファネート構造、ビウレット構造、ウレトジオン構造及びカーバメート構造からなる群より選ばれる1種以上の構造を有するポリイソシアネートである。このようなポリイソシアネートとしては、数平均分子量が500〜500,000程度で、イソシアネート基含有率が0.1〜40質量%程度であるものが、粘度が低い点から好ましい。
本明細書において用いる数平均分子量の値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定した数平均分子量を、ポリスチレンの数平均分子量を基準にして換算して得た値である。
【0031】
ここで、イソシアヌレート構造は下記式(IX)で、アロファネート構造は下記式(X)で、ビウレット構造は下記式(XI)で、ウレトジオン構造は下記式(XII)で及びカーバメート構造は下記式(XIII)で、それぞれ表される。
【0032】
【化12】

【0033】
イソシアヌレート構造又はアロファネート構造を含有するポリイソシアネートは、上記ジイソシアネート及び/又はトリイソシアネート及び/又は公知のポリイソシアネートを原料とし、触媒などを用いて公知の方法で製造することができる。ビウレット構造を含有するポリイソシアネートは、上記ジイソシアネート及び/又はトリイソシアネート及び/又は公知のポリイソシアネートと水を反応させて得ることができる。ウレトジオン構造を含有するポリイソシアネートは、上記ジイソシアネート及び/又はトリイソシアネート及び/又は公知のポリイソシアネート、さらに必要に応じてヒドロキシル基含有化合物などを原料とし、触媒などを用いて公知の方法で製造することができる。カーバメート構造を含有するポリイソシアネートは、ヒドロキシル基含有化合物と上記ジイソシアネート及び/又はトリイソシアネート及び/又は公知のポリイソシアネートを反応させて得ることができる。
【0034】
上記ヒドロキシル基含有化合物としては、特には限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノールなどのアルカノール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノメチルエーテルなどのエーテル基含有モノオール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール、メチルプロパンジオール、ペンタンジオール、メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2'−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ヒドロキシピバリン酸−ネオペンチルグリコールエステル、ジメチロールプロパン酸、ジメチロールブタン酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、トリメチロールオクタン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の水酸基を有する化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、ラクトン及び/又はシクロカーボネートとの開環付加物;アミノ基を有する化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、ラクトン及び/又はシクロカーボネートとの開環付加物;1分子中にアミノ基と水酸基の両方を有する化合物とエポキシ基含有化合物との反応生成物;1分子中にアミノ基と水酸基の両方をもつ化合物とポリイソシアネートとの反応生成物;水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有ポリウレタン樹脂、水酸基含有ポリカーボネート樹脂、水酸基含有ビニル系重合体、エポキシ樹脂などの公知のポリオール類等が挙げられる。
【0035】
ジイソシアネート類及びトリイソシアネート類からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を原料として製造される、イソシアヌレート構造、アロファネート構造、ビウレット構造、ウレトジオン構造及びカーバメート構造からなる群より選ばれる1種以上の構造を含有するポリイソシアネートは、市販されているものを用いても良い。
ポリオキシアルキレン基を有するアルコール、ポリイソシアネート、及び一般式(II)で表される(2−アシルアシル)アミノ基を有する1価のアルコール、及び/又は、一般式(III)で表される(2−アシルアシル)アミノ基を有する2価のアルコールの反応は、ヒドロキシル基とイソシアネート基からカーバメート基を生成させる反応であり、ヒドロキシル基とイソシアネート基の公知の反応条件を用いることができる。必要に応じて、加熱および/又は触媒を用いて反応を促進させることができる。加熱する場合は、特には限定されないが、60〜130℃が好ましく、100〜110がさらに好ましい。また、必要に応じて、溶媒を使用することができる。この場合、イソシアネート基と反応しにくい非プロトン性溶媒が好ましい。
【0036】
触媒を用いる場合は、ルイス酸触媒と塩基触媒のいずれを用いてもよい。ルイス酸触媒としては、例えば、チタニウムテトラアルコキシド、四ハロゲン化チタンなどのチタン化合物、酸化ジアルキル錫、ジアルキル錫ジカルボキシレート、モノアルキル錫トリカルボキシレート、錫ジカルボキシレート、四塩化錫などの錫化合物、ジルコニウムテトラアルコキシド、四ハロゲン化ジルコニウムなどのジルコニウム化合物、亜鉛ジカルボキシレート、ハロゲン化亜鉛などの亜鉛化合物、アルミニウム化合物、鉛化合物、ビスマス化合物、アンチモン化合物、金属アセチルアセトネート化合物、クレイ、酸性白土、活性白土、シリカ、アルミナ、ゼオライト、カチオン交換樹脂などの固体酸触媒類などが挙げられる。塩基性触媒としては、トリエチレンジアミン、トリエチルアミンなどのアミン類、ナトリウムカルボキシラートなどの有機酸金属塩類、ナトリムメトキシドなどの金属アルコキシド類などが挙げられる。触媒を用いた場合は、製造後に用いた触媒の一部又は全部を、中和しても良いし、吸着剤で吸着除去しても良い。触媒を中和する場合、酸触媒は塩基性化合物で、塩基触媒は酸性化合物で中和することができる。吸着剤としては、特に限定されないが、例として、酸性白土、活性白土、アルミナ、シリカ、ゼオライト、イオン交換樹脂、酸性無機化合物、塩基性無機化合物などが挙げられる。触媒を吸着剤で吸着除去する場合には吸着後の吸着剤の除去はろ過、沈殿分離等公知の方法を任意に用いる事ができる。
【0037】
また、ポリマー(A)を製造方法1により製造する場合は、ポリオキシアルキレン基を有するアルコール、ポリイソシアネート、並びに一般式(II)で表される(2−アシルアシル)アミノ基を有する1価のアルコール、及び/又は、一般式(III)で表される(2−アシルアシル)アミノ基を有する2価のアルコールを反応させる際に、必要に応じて、ポリオキシアルキレン基を有さない公知のアルコールや水を共存させて反応させてもよい。これによりポリマー(A)の性質を変化させることができる。
【0038】
ポリマー(A)を製造方法1により製造する場合は、特に限定されるものではないが、ポリオキシアルキレン基を有するアルコールとしてポリオキシアルキレングリコールを、ポリイソシアネートとしてジイソシアネートを用いて、一般式(II)で表される(2−アシルアシル)アミノ基を有する1価のアルコールとして下記の一般式(XIV)
【0039】
【化13】

[式中、R及びYは前記と同じ意味を有する。]
で表されるアセトアセタミド基を有するアルコール及び/又は一般式(III)で表される(2−アシルアシル)アミノ基を有する2価のアルコールとして下記の一般式(XV)
【0040】
【化14】

[式中、Yは前記と同じ意味を有する。]で表される(2−アシルアシル)アミノ基を有する2価のアルコールと反応させて製造するのが容易であり好ましい。このようにして製造されるポリマー(A)は、例えば一般式(V)
【0041】
【化15】

【0042】
[式中、Zは炭素数2〜36の有機基を示す。Xは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、n個の繰り返し単位の中で同じであってもよいし異なっていてもよい。nは2以上の整数を示しm個の繰り返し単位の中で同じであってもよいし異なっていてもよい。mは1以上の整数を示す。Y及びRは前記と同じ意味を有する。]、又は、一般式(VI)
【0043】
【化16】


[式中、M及びMはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜36の有機基を示す。kは1以上の整数を示す。mは1以上の整数を示しk個の繰り返し単位の中で同じであってもよいし異なっていてもよい。p及びqはそれぞれ独立して0又は1を示す。X、Y、Z及びnは前記と同じ意味を有する。]で表されるものである。
【0044】
製造方法2.ポリオキシアルキレン基を有するアミン、および、
一般式(IV)
【0045】
【化17】

[式中、R1及びR2は前記と同じ意味を有する。]
で表されるジケテン又はその誘導体を反応させる。
【0046】
製造方法2における、ポリオキシアルキレン基を有するアミンとしては、特には限定されないが、例えば、末端に1級又は2級のアミノ基を有する通称「ポリエーテルアミン」が挙げられる。中でも、一般式(XVI)
【0047】
【化18】

[式中、nは2以上の整数を示す。Xは前記と同じ意味を有する。]
で表される化合物、及び
一般式(XVII)
【0048】
【化19】

【0049】
[式中、Tは炭素数3〜36で、かつr価の有機基を、rは2〜10の整数を示す。nは2以上の整数を示しr個の中で同じであってもよいし異なっていてもよい。Xは前記と同じ意味を有する。]
で表される化合物などが、比較的安価なため好ましい。
【0050】
上記の、末端に1級又は2級のアミノ基を有する通称「ポリエーテルアミン」のポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンなどが挙げられる。これらのポリオキシアルキレン基は、通常、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、オキセタン、及びテトラヒドロフランからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を公知の手法で開環重合させて製造することができる。これらは、ホモ型、ランダム型及びブロック型のいずれであってもよい。中でも、製造の容易さから、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンが好ましく、ポリマー(A)に良好な水溶性または水分散性を付与するために、ポリオキシエチレン、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンがさらに好ましい。
【0051】
一般式(IV)
【0052】
【化19】

[式中、R1及びR2は前記と同じ意味を有する。]
で表されるジケテン又はその誘導体としては、例えば、ジケテン(ケテン2量体)、3−デシル−4−ウンデシリデニル−オキセタン−2−オンや3−ドデシル−4−トリデシリデニル−オキセタン−2−オンのようなR及びRがアルキル基であるダイマー(アルキルケテン2量体)、同様にR及びRがデセニル基やヘキサデセニル基のようなアルケニル基であるダイマー(アルキルケテン2量体)、p−ターシャリーブチルフェニル基やノニルフェニル基のようなアルカリル基であるダイマー(アルカリルケテン2量体)、フェニルエチル基のようなアラルキル基であるダイマー(アラルキルケテン2量体)、フェニル基のようなアリール基であるダイマー(アリールケテン2量体)などが挙げられる。これらの中でも、R及びRが水素原子であるジケテン(ケテン2量体)が入手しやすく好ましい。
【0053】
ポリオキシアルキレン基を有するアミンと一般式(IV)で表されるジケテン又はその誘導体の反応は、ジケテンのアミンによる付加開環反応である。ポリオキシアルキレン基を有するアミンと一般式(IV)で表されるジケテン又はその誘導体の反応は、特には限定されないが、−40〜+100℃程度の温度で行うことができる。但し、低温すぎると反応が完結するまでの時間が長くなりすぎ、また、高温にするとジケテンの重合反応が起きやすくなるので、より好ましくは−20〜+30℃程度である。この反応では必要に応じて反応溶媒を用いることができる。反応溶媒としては、特には限定されないが、例えば、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒;テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;酢酸エチルなどのエステル系溶剤;アセトン、2−ブタノンなどのケトン系溶媒;メタノールなどのアルコール系溶媒などが挙げられる。
【0054】
ポリオキシアルキレン基を有するアミンと一般式(IV)で表されるジケテン又はその誘導体の反応において、反応容器に一般式(IV)で表されるジケテン又はその誘導体を仕込んでおいて、そこにポリオキシアルキレン基を有するアミンを滴下などにより添加しても良いし、反応容器にポリオキシアルキレン基を有するアミンを仕込んでおいてそこに一般式(IV)で表されるジケテン又はその誘導体を滴下などにより添加しても良いし、ポリオキシアルキレン基を有するアミンと一般式(IV)で表されるジケテン又はその誘導体を滴下などにより同時に反応容器中に導入しても良い。この場合、必要に応じて、あらかじめ反応容器にポリオキシアルキレン基を有するアミンや一般式(IV)で表されるジケテン又はその誘導体を仕込んでおいても良い。さらに、収率や生成物の安定性を高めるために、反応過程において常に一般式(IV)で表されるジケテン又はその誘導体が若干過剰になるような条件でポリオキシアルキレン基を有するアミンと一般式(IV)で表されるジケテン又はその誘導体を同時に滴下しても良い。
【0055】
ポリマー(A)を製造方法2により製造する場合は、特には限定されないが、
ポリオキシアルキレン基を有するアミンとして一般式(XVI)で表される化合物又は一般式(XVII)で表される化合物とジケテンを用いて製造することが容易であり好ましい。このようにして製造されるポリマー(A)は、例えば一般式(VII)
【0056】
【化20】

[式中、nは2以上の整数を示す。Xは前記と同じ意味を有する。]、
又は一般式(VIII)
【0057】
【化21】

[式中、Tは炭素数3〜36のr価の有機基を、rは2〜10の整数を示す。nは2以上の整数を示しr個の繰り返し単位の中で同じであってもよいし異なっていてもよい。Xは前記と同じ意味を有する。]で表されるものである。
【0058】
ポリマー(A)は、水又は/及び有機溶剤に希釈した状態で、水性硬化性組成物製造に使用することができる。ポリマー(A)の希釈に用いる有機溶剤としては、室温で液状のものであればよく、特に限定されない。
【0059】
ポリマー(A)の分子量は特には限定されないが、数平均分子量で1500〜70,000程度が好ましい。500未満になると速乾性向上の効果が小さくなる場合があり、100,000を超えると水性硬化性組成物の貯蔵安定性が悪くなる場合がある。また、ポリマー(A)中の(2−アシルアシル)アミノ基の濃度は特には限定されないが、0.05〜2.5モル/Kgが好ましい。0.05モル/Kg未満になると速乾性向上の効果が小さくなる場合があり、また、2.5モル/Kgを超えるとポリマー(A)の水性硬化性組成物の貯蔵安定性が悪くなる場合がある。なお、ポリマー(A)中の(2−アシルアシル)アミノ基の濃度が、0.05〜2.5モル/Kgの範囲にあるとき、mは1〜400、nは2〜20,000の範囲にある。
【0060】
[カルボニル基含有ビニル系重合体(B)]
カルボニル基含有ビニル系重合体(B)は、ケトン型および/又はアルデヒド型のカルボニル基を一分子中に少なくとも2個含有する、水溶性又は水分散性ビニル系重合体であり、ケトン型および/又はアルデヒド型のカルボニル基を含有するビニル系単量体とその他のビニル系単量体を共重合することにより合成される。ケトン型および/又はアルデヒド型のカルボニル基を含有するビニル系単量体とは、分子中にカルボン酸基、エステル基、アミド基以外の少なくとも1個のケトン型カルボニル基もしくはアルデヒド型カルボニル基、および重合可能な二重結合を有する単量体である。
【0061】
このような単量体は、用いる他の単量体成分と共重合可能であればとくに限定されるものではないが、ビニル系重合体(B)中に1〜40質量%、好ましくは2〜30質量%となる範囲で共重合される。カルボニル基あるいはアルデヒド基含有ビニル系単量体の共重合量が1質量%未満であると、得られる塗膜の耐溶剤性、耐候性が不十分となる傾向にあり、この共重合量が40質量%を越えると、水性硬化性組成物の貯蔵性が不良になる場合がある。かかるケトン型および/又はアルデヒド型のカルボニル基を含有するビニル系単量体の具体例としては、アクロレイン、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)(メタ)アクリルアミド、ホルミルスチロ−ル、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、(メタ)アクリルアミドピバリンアルデヒド、ジアセトン(メタ)アクリレ−ト、アセトニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレ−トアセチルアセテート、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ブタンジオ−ル−1,4−アクリレート−アセチルアセテート、アクリルアミドメチルアニスアルデヒドなどが用いられるが、中でもN−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミドおよび2−(アセトアセトキシ)エチルメタアクリレートが特に好ましい。これらケトン型および/又はアルデヒド型のカルボニル基を含有するビニル系単量体は一種で、又は二種以上を混合して使用することも可能である。
【0062】
前記その他の共重合可能なビニル系単量体は、ビニル系重合体(B)中に60〜99質量%、好ましくは70〜98質量%の範囲で用いられ、少なくとも1個の重合可能なビニル基を有するものの中から目的に応じて任意に選ぶことができる。かかるビニル系単量体としては特には限定されないが、その具体例として挙げると、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンおよびベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族ビニル化合物類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボン酸含有モノマー類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のグリコールジ(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアルキルアミノ(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートメチルクロライド塩、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及び(メタ)アクリロニトリル等の公知の重合性ビニル単量体が挙げられる。またマクロモノマー(例えばRohm社製ポリエチレングリコールメタクリレート、商品名MPEG2000MA)を用いる事もできる。これらビニル系単量体は一種で、又は二種以上を混合して使用することも可能である。
ビニル系重合体(B)を製造する際の重合方法としては、懸濁重合法、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法等が適用できるが、特に乳化重合法により製造されるのが好ましい。ビニル系重合体(B)を乳化重合法で得る場合には、乳化剤を使用して水溶性の重合開始剤により重合を行なわせる方法や、過硫酸カリウムのような無機過酸化物とチオ硫酸ナトリウム等の還元剤のレドックス系開始剤を用いてソープフリー重合により重合を行なわせることも可能である。また、連鎖移動剤の使用も可能である。乳化剤としては、アニオン性、カチオン性及びノニオン性のもの、さらには高分子乳化剤が挙げられる。モノマーの重合系中への供給方法は、従来公知の方法が利用できる。
【0063】
ビニル系重合体(B)を溶液重合法により得る際に用い得る溶剤としては、本発明で用いる単量体および重合体を共に溶解させるものなら特には限定されないが、後述するように水系に転換することを考慮すると親水性溶剤が好ましい。その具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール等のアルコール類;エチルセロソルブ、セロソルブアセテート、ブチルカルビトール;プロピレングリコールメチルエーテル等のグリコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類等が挙げられる。また、重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキサイドのごとき過酸化物系開始剤等、従来公知の開始剤を適宜選択して用いるのがよい。また、分子量調節剤としてn−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー等の連鎖移動剤を用いてもよい。単量体の重合系内への供給方法は、従来公知の方法が利用できる。
【0064】
溶液重合法で得たビニル系重合体を水系に転換するには、共重合させたカルボン酸含有モノマーの一部または全量を塩基により中和して水溶化または水分散する方法、共重合させたアミノ基含有塩基性モノマーの一部または全量を酸により中和して水溶化または水分散する方法、ノニオン性界面活性能をもつマクロモノマーを共重合させ水分散する方法など従来公知の方法を適宜選択して用いることが出来る。
【0065】
本発明で用いるビニル系重合体(B)の分子量は特には限定されないが、数平均分子量で5,000〜2,000,000程度が好ましく、より好ましくは10,000〜1,000,000の範囲である。5000未満になると、硬化物が脆く、また、耐溶剤性、耐候性が不十分となる場合があり、また、2,000,000を超えると、硬化物の成膜性が低下する場合がある。
【0066】
[ヒドラジド基および/又はセミカルバジド基を有する化合物(C)]
ヒドラジド基および/又はセミカルバジド基を有する化合物(C)は、1分子中に少なくとも2個のヒドラジド基又はセミカルバジド基を有するヒドラジン誘導体であり、該ヒドラジン誘導体としては、例えば蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等の2〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪族カルボン酸ジヒドラジド;マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等のモノオレフィン性不飽和ジカルボン酸ジヒドラジド;フタル酸、テレフタル酸またはイソフタル酸ジヒドラジド、ならびにピロメリット酸ジヒドラジド等の芳香族カルボン酸ジヒドラジド;ピロメリット酸トリヒドラジドまたはテトラヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド、カルボン酸低級アルキルエステル基を有する低重合体をヒドラジンまたはヒドラジン水化物(ヒドラジンヒドラ−ド)と反応させてなるポリヒドラジド(特公昭52−22878号参照)等のポリカルボン酸ポリヒドラジド;炭酸ジヒドラジド、ビスセミカルバジド;ヘキサメチレンジイソシアネ−トやイソホロンジイソシアネ−ト等のジイソシアネ−ト及びそれより誘導されるポリイソシアネ−ト化合物にヒドラジンや上記例示のジヒドラジドを反応させて得られる多官能セミカルバジド、該ポリイソシアネ−ト化合物とポリエ−テルポリオ−ル類やポリエチレングリコ−ルモノアルキルエ−テル類等の親水性基を含む活性水素化合物との反応物中イソシアネ−ト基にヒドラジンや上記例示のジヒドラジドを反応させて得られる水系多官能セミカルバジド、或いは該多官能セミカルバジドと水系多官能セミカルバジドとの混合物(特開平8−151358号、特開平8−283377号、特開平8−245878号参照)等が挙げられる。
[水性硬化性組成物の調製及び適用]
本発明の水性硬化性組成物は、(2−アシルアシル)アミノ基およびポリオキシアルキレン基を含有するポリマー(A)、ケトン型および/又はアルデヒド型のカルボニル基を含有する、水溶性又は水分散性ビニル系重合体(B)および(C)ヒドラジド基および/又はセミカルバジド基を有する化合物を混合することで得ることができる。この混合は、慣用の混合方法、例えば、攪拌、振盪などの操作により行うことができる。なお、混合に際して、水及び/又は有機溶剤を加えて混合しても良い。混合する際の温度は特には限定されないが、水性硬化性組成物製造の容易さの観点から室温近傍で行うのが好ましい。
【0067】
本発明組成物の硬化性及びその塗膜等の硬化物の物性が十分である観点から、本発明の水性硬化性組成物の好ましい配合比率は、ポリマー(A)が有する(2−アシルアシル)アミノ基およびビニル系重合体(B)が有するケトン型のカルボニル基およびアルデヒド型のカルボニル基の合計モル数と化合物(C)が有するヒドラジド基およびセミカルバジド基の合計モル数の比((2−アシルアシル)アミノ基、並びに、ケトン型およびアルデヒド型のカルボニル基の合計モル)/(ヒドラジド基およびセミカルバジド基の合計モル))が0.5〜10の範囲である。この範囲を外れると水性硬化性組成物の貯蔵性や硬化塗膜の物性に問題が生じる事がある。
また、ポリマー(A)の質量とポリマー(A)及びビニル系重合体(B)の合計質量の比(ポリマー(A)の質量/(ポリマー(A)及びビニル系重合体(B)の合計質量)は、特には限定されないが、0.001〜0.1が好ましく、0.005〜0.05がさらに好ましい。0.001未満だと速乾性向上の効果が小さくなる場合があり、0.1を超えると水性硬化性組成物の貯蔵性や硬化物の耐水性が低下する場合がある。
【0068】
本発明の水性硬化性組成物は、1液型としても、例えば(A+B)とCを分離してなる2液型としても用いることができ、いずれの場合も、常温又は加熱下で優れた硬化性を発揮する。
【0069】
本発明の水性硬化性組成物には、用途に応じて、例えば、成膜助剤、界面活性剤、分散剤、乳化剤、表面調整剤、防腐剤、防菌剤、消泡剤、着色顔料、体質顔料、充填剤、増粘剤、可塑剤、防錆剤、有機溶剤、水分散性樹脂、水溶解性樹脂等の種々の添加剤を配合してもよい。この場合の有機溶剤としては、例えば、エタノール、エチレングリコールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレンなどの脂肪族、脂環族又は芳香族炭化水素類などを挙げることができる。
【0070】
本発明の水性硬化性組成物は、塗膜形成時の水の系外への離脱・蒸発により、従来公知の、ビニル系重合体(B)中のケトン型カルボニル基およびアルデヒド型カルボン基と化合物(C)のヒドラジド基および/又はセミカルバジド基の反応に加えて、ポリマー(A)中の(2−アシルアシル)アミノ基と化合物(C)中のヒドラジド基および/又はセミカルバジド基との縮合反応、及び(A)と(C)の反応生成物の末端にあるヒドラジド基および/またはセミカルバジド基とビニル系重合体(B)中のケトン型カルボニル基およびアルデヒド型カルボニル基の反応が円滑に進行し、詳細は未だ不明であるが、結果として急激な粘度上昇が起きるためか速乾性の塗膜を得ることが出来る。また、常温〜比較的低温であっても、(A)、(B)と(C)の間の架橋反応が進行し物性良好な架橋塗膜が得られる。また、本発明の水性硬化性組成物は、加熱したり、酸触媒を使用することによって架橋を促進させることもできる。加熱温度は特には限定されないが、40〜140℃、好ましくは60〜100℃の範囲内の温度が適しており、加熱時間は3〜200分程度、好ましくは15〜60分程度で十分に硬化した塗膜を得る事が出来る。
【0071】
このように本発明の水性硬化性組成物は低温硬化性に優れており、水性塗料、水性粘着剤、水性接着剤、水性紙加工処理剤、水性インク、水性ヘアースプレー用組成物、水性化粧料、水性染毛剤、水性美爪料、水性感光性樹脂組成物、水性ポリマー改質剤、水性イオン交換樹脂組成物、水性担体用樹脂組成物、水性薬剤徐放用樹脂組成物、成形体材料等の広い範囲で使用できる。
本発明の水性硬化性組成物を、水性塗料として用いる場合の塗装方法は、従来から知られている方法、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、刷け塗り等により塗装することができ、その膜厚は特に制限されるものではないが、硬化塗膜に基いて、1〜100μm程度が好ましく、5〜60μm程度がより好ましい。エアスプレー及びエアレススプレーにおいては、必要に応じて、静電印加を行ってもよい。
また、本発明の水性硬化性組成物は、電着塗装により、導電性金属表面を有する基材に塗装することができる。被塗物である基材の具体例としては、例えば、自動車車体、電気製品などを挙げることができる。
電着塗装は、本発明組成物が、カチオン性組成物である場合は、被塗物を陰極として、別に陽極を設けて、通電により陰極上に析出させる公知の方法によって行なわれる。また、本発明組成物が、アニオン性組成物である場合は、カチオン性組成物の場合と電極を反対にすることにより行なうことができる。
【0072】
より具体的には、例えば、カチオン性組成物の場合、被塗物を陰極、炭素板を陽極とし、浴温20〜35℃程度、電圧100〜400V程度、電流密度0.01〜5A程度、通電時間1〜10分程度で、電着塗装することができる。電着塗装を行う場合の塗装膜厚は、通常、加熱硬化した場合において10〜40μm程度が好ましく、15〜30μm程度がより好ましい。
【0073】
本発明によれば、次のような顕著な効果が得られる。
特定の官能基を有する(2−アシルアシル)アミノ基を有するポリマー(A)、カルボニル基含有ビニル系重合体(B)、及びヒドラジド基および/又はセミカルバジド基を有する化合物(C)を含有してなる本発明の水性硬化性組成物は、カルボニル基含有ビニル系重合体(B)およびヒドラジド基および/又はセミカルバジド基を有する化合物(C)からなる従来型の水性硬化性組成物に比べて、極めて速乾性に優れ、常温硬化性にも優れる。
【実施例】
【0074】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。但し、これらの例は、本発明の範囲を限定するものではない。
【0075】
なお、製造例において固形分は以下の方法で求めた。また実施例、比較例について指触乾燥時間(速乾性の目安)、貯蔵性は以下の方法により評価した。
【0076】
固形分(%):試料をブリキ皿に載せ、105℃の乾燥炉で3時間加熱乾燥させ残渣の質量を秤量し、次式により算出した。
固形分(%)=(C/D)×100
ただし、Cは残渣の質量、Dは試料の質量を表す。
指触乾燥時間:水性硬化性組成物を製造後25℃で10日間熟成させた後、25℃で湿度70%RH条件下で、硬化膜厚が約40μmになるようにアプリケータでガラス板上に塗装し、1分おきに表面のべとつき性を調べた。水性硬化性組成物は一般的に塗装後時間の経過とともに少しずつべとつき性がなくなっていき良好な硬化物を形成していくが、本発明での指触乾燥時間とは、塗膜の上に人差し指を接触させた時のべとつき性がなくなり、塗膜が指につかなくなるまでの時間である。指触乾燥時間は、短いほど速乾性に優れることを示す。
【0077】
貯蔵性:水性硬化性組成物を製造後、25℃で密閉条件下で1週間貯蔵し、組成物構成成分の凝集傾向またはゲル化の有無を調査した。
○:ゲル化も凝集化も認められず良好
△:凝集傾向が認められる。
【0078】
×:ゲル化が認められ不良。
【0079】
製造例1 2−(N−メチル−N−(2−アセチルアセチル)アミノ)エタノールの製造
四つ口の5,000mLフラスコに、アセトニトリル692.5gとジケテン46.5gを仕込み、よく攪拌しながら、フラスコ内の温度が−5〜0℃になるように冷却した。これに、ジケテンを毎時220g、2−(メチルアミノ)エタノールを毎時196.5gの速度で、同時に滴下し始め、計4時間滴下を続けた。滴下中は、フラスコ内の温度が−5〜0℃を保持するように適宜冷却した。その後、2−(メチルアミノ)エタノールを毎時196.5gの速度で25.5g滴下した。その後、室温に昇温し、12時間熟成させた。その後、フラスコ内の温度が40〜50℃を保持するように適宜加熱しながら減圧条件でアセトニトリルを除去し、最終的に約0.001気圧で4時間保持し、約1700gの2−(N−メチル−N−(2−アセチルアセチル)アミノエタノールを得た。
【0080】
製造例2 2−(N−(2−アセチルアセチル)アミノ)エタノールの製造
四つ口の5,000mLフラスコに、アセトニトリル825gとジケテン55.0gを仕込み、フラスコ内の温度が−5〜0℃になるように冷却した。これに、ジケテンを毎時261.5g、2−アミノエタノールを毎時190gの速度で、同時に滴下し始め、計4時間滴下を続けた。この際、滴下開始より約2時間後に反応系が不均一になって攪拌が難しくなったため、冷却したアセトニトリル1,000gをさらに加えて、その後は懸濁状態で滴下を続けた。滴下中は、フラスコ内の温度が−5〜0℃を保持するように適宜冷却した。その後、2−アミノエタノールを毎時190gの速度で25g滴下した。その後、室温に昇温し、12時間熟成させた。その後、フラスコ内の温度が50℃を保持するように適宜加熱しながら減圧条件でアセトニトリルを除去し、最終的に約0.001気圧で4時間保持し、約1,850gの2−(アセトアセタミド)エタノールを得た。
【0081】
製造例3 (2−アシルアシル)アミノ基およびポリオキシアルキレン基を含有するポリマー(A−1)の製造
フラスコに、PEG6000S(三洋化成工業(株)製のポリエチレングリコール、水酸基価13)420gを入れ、減圧下攪拌しながら加熱溶融させた。その後、窒素雰囲気下でイソホロンジイソシアネート約22gおよびジブチル錫ジラウレート0.05gを添加し、100℃で約1時間攪拌を続けた。その後、製造例1で製造した2−(N−メチル−N−(2−アセチルアセチル)アミノ)エタノール約13gおよびジブチル錫ジラウレート約1gを添加し、約2時間攪拌を続けた。その後、水1365gを加え、ポリマー(A−1)の固形分約25%の水分散液を得た。ポリマー(A−1)の数平均分子量は約3万であった。
【0082】
製造例4 (2−アシルアシル)アミノ基およびポリオキシアルキレン基を含有するポリマー(A−2)の製造
フラスコに、PEG6000Sを420g入れ、減圧下攪拌しながら加熱溶融させた。その後、窒素雰囲気下でイソホロンジイソシアネート約22gおよびジブチル錫ジラウレート0.05gを添加し、100℃で約1時間攪拌を続けた。その後、製造例2で製造した2−(N−(2−アセチルアセチル)アミノ)エタノール約12gおよびジブチル錫ジラウレート約1gを添加し、約2時間攪拌を続けた。その後、水1360gを加え、ポリマー(A−2)の固形分約25%の水分散液を得た。ポリマー(A−2)の数平均分子量は約3万であった。
【0083】
製造例5 (2−アシルアシル)アミノ基およびポリオキシアルキレン基を含有するポリマー(A−3)の製造
フラスコに、PEG20000(三洋化成工業(株)製のポリエチレングリコール、水酸基価5.6)1000gを入れ、減圧下攪拌しながら加熱溶融させた。その後、窒素雰囲気下でイソホロンジイソシアネート約22gおよびジブチル錫ジラウレート0.1gを添加し、100℃で約1時間攪拌を続けた。その後、製造例1で製造した2−(N−メチル−N−(2−アセチルアセチル)アミノ)エタノール約13gおよびジブチル錫ジラウレート約2gを添加し、約2時間攪拌を続けた。その後、水3100gを加え、ポリマー(A−3)の固形分約25%の水分散液を得た。ポリマー(A−3)の数平均分子量は約8万であった。
【0084】
製造例6 ケトン型カルボニル基を含有するビニル系重合体(B)の製造
フラスコに、水230gおよびニューコール−707SF(日本乳化剤(株)製の陰イオン性界面活性剤)0.1gを添加し、攪拌しながら、83℃に昇温した。これに、過硫酸アンモニウム1g及び水20gの混合物を添加した。その後、水255g、ニューコール−707SF 40g、スチレン40g、シクロヘキシルメタクリレート320g、2−エチルヘキシルメタクリレート160g、2−エチルヘキシルアクリレート20g、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート2.5g、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド5g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート12.5g及び過硫酸アンモニウム3gの混合物を約3時間かけて添加した。次に、水95g、ニューコール−707SF 20g、シクロヘキシルメタクリレート136g、2−エチルヘキシルメタクリレート84g、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド12g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート4g及びアクリル酸4gを約1時間かけて添加した。その後、水20g及び過硫酸アンモニウム1gの混合物を添加して熟成させた。その後、アンモニア水を添加し、pHを約8.5に調整し、ビニル系重合体(B)の固形分約55%の水分散液を得た。ビニル系重合体(B)の数平均分子量は約百万であった。
【0085】
実施例1
攪拌しながら固形分約55%のビニル系重合体(B)水分散液57.1質量部にTEXANOL(イーストマンケミカル社販売の成膜助剤の商品名:2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートを主成分とするもの)3.77質量部を加え10分間攪拌した。その後、攪拌を続けながら、ポリマー(A−1)の25%水分散液3.77質量部を少しずつ加えた。さらに10分間攪拌後、アジピン酸ジヒドラジドの10%水溶液(C)2.5質量部及び水5.26質量部を加え、10分間攪拌し、固形分45%の水性硬化性組成物を得た。
【0086】
実施例2〜6および比較例1〜2
実施例1と同様の方法で、表1に記載する配合で、固形部45%の水性硬化性組成物をそれぞれ得た。ただし、表1記載の「質量比」とはポリマー(A)の質量とポリマー(A)及びビニル系重合体(B)の合計質量の比(ポリマー(A)の質量/(ポリマー(A)及びビニル系重合体(B)の合計質量)を示す。尚、比較例2はポリマー(A)に替えてポリオキシアルキレン基を有するが(2−アシルアシル)アミノ基を有しないポリマーであるPEG2OOOOを配合したものである。
【0087】
【表1】

【0088】
注1:ポリマー(A)の質量/(ポリマー(A)及びビニル系重合体(B)の合計質量)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式(I)
【化1】

[式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜16の有機基を示す]
で表される(2−アシルアシル)アミノ基およびポリオキシアルキレン基を含有するポリマー、(B)ケトン型および/又はアルデヒド型のカルボニル基を含有する、水溶性又は水分散性ビニル系重合体、および(C)ヒドラジド基および/又はセミカルバジド基を有する化合物を含有することを特徴とする水性硬化性組成物。
【請求項2】
ポリマー(A)がさらにカーバメート基を含有することを特徴とする請求項1に記載の水性硬化性組成物。
【請求項3】
ポリマー(A)が、ポリオキシアルキレン基を有するアルコール、ポリイソシアネート、並びに一般式(II)
【化2】

[式中、Yは炭素数1〜12の有機基を、Rは水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。R及びRは前記と同じ意味を有する。]
で表される(2−アシルアシル)アミノ基を有する1価のアルコール及び/又は、一般式(III)
【化3】

[式中、Y、R及びRは前記と同じ意味を有する。]
で表される(2−アシルアシル)アミノ基を有する2価のアルコールを反応させてなるものであることを特徴とする請求項2に記載の水性硬化性組成物。
【請求項4】
ポリマー(A)が、ポリオキシアルキレン基を有するアミン、および一般式(IV)
【化4】

[式中、R1及びR2は前記と同じ意味を有する。]
で表されるジケテン又はその誘導体を反応させてなるものであることを特徴とする請求項1に記載の水性硬化性組成物。
【請求項5】
ポリマー(A)が、一般式(V)
【化5】

[式中、Zは炭素数2〜36の有機基を示す。Xは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、n個の繰り返し単位の中で同じであってもよいし異なっていてもよい。nは2以上の整数を示しm個の繰り返し単位の中で同じであってもよいし異なっていてもよい。mは1以上の整数を示す。Y及びRは前記と同じ意味を有する。]
で表される請求項2に記載の水性硬化性組成物。
【請求項6】
ポリマー(A)が、一般式(VI)
【化6】

[式中、M及びMはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜36の有機基を示す。kは1以上の整数を示す。mは1以上の整数を示しk個の繰り返し単位の中で同じであってもよいし異なっていてもよい。p及びqはそれぞれ独立して0又は1を示す。X、Y、Z及びnは前記と同じ意味を有する。]
で表される請求項2に記載の水性硬化性組成物。
【請求項7】
ポリマー(A)が、一般式(VII)
【化7】

[式中、nは2以上の整数を示す。Xは前記と同じ意味を有する。]、
又は一般式(VIII)
【化8】

[式中、Tは炭素数3〜36で、かつr価の有機基を、rは2〜10の整数を示す。nは2以上の整数を示しr個の中で同じであってもよいし異なっていてもよい。Xは前記と同じ意味を有する。]
で表される請求項1に記載の水性硬化性組成物。
【請求項8】
ビニル系重合体(B)が、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミドおよび/又は2−(アセトアセトキシ)エチルメタクリレートを含んだビニル系モノマー混合物の乳化重合により製造されることを特徴とする請求項1に記載の水性硬化性組成物。
【請求項9】
ポリマー(A)中の(2−アシルアシル)アミノ基の濃度が、0.05〜2.5モル/Kgである請求項1に記載の水性硬化性組成物。
【請求項10】
ポリマー(A)が有する(2−アシルアシル)アミノ基およびビニル系重合体(B)が有するケトン型のカルボニル基およびアルデヒド型のカルボニル基の合計モル数と化合物(C)が有するヒドラジド基およびセミカルバジド基の合計モル数の比((2−アシルアシル)アミノ基、並びに、ケトン型およびアルデヒド型のカルボニル基の合計モル)/(ヒドラジド基およびセミカルバジド基の合計モル))が0.5〜10である請求項1に記載の水性硬化性組成物。
【請求項11】
ポリマー(A)の質量とポリマー(A)及びビニル系重合体(B)の合計質量との比(ポリマー(A)の質量/(ポリマー(A)及びビニル系重合体(B)の合計質量)が、0.001〜0.1になるように配合してなる請求項1に記載の水性硬化性組成物。

【公開番号】特開2008−138096(P2008−138096A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326328(P2006−326328)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】