説明

水性粘着剤用組成物、水性粘着剤、粘着シート及び積層体

【課題】本発明が解決しようとする課題は、粘着剤との接触面積が小さい多孔体に対して優れた投錨性を有し、表面極性の低い被着体や複雑形状をした被着体に対して優れた接着力を有し、かつ、再剥離性にも優れた水性粘着剤用組成物、及びそれを用いた水性粘着剤を提供することである。
【解決手段】本発明は、N−アルキルアミド構造、ラクタム構造及びモルホリン構造からなる群より選ばれる1種以上を有するビニル重合体(A)、不均化ロジン酸のエステル化物(B)、及び、水系媒体(C)を含有し、前記不均化ロジン酸のエステル化物(B)が、下記一般式(1)で示される構造を有するものであることを特徴とする水性粘着剤用組成物、それを含む水性粘着剤及びそれを用いた粘着シートに関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な被着体の貼り合わせに使用できる水性粘着剤、該水性粘着剤の製造に使用する水性粘着剤用組成物、ならびにそれを用いてなる粘着シート及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、粘着剤は、自動車部品や家電製品をはじめとする様々な工業製品の製造に使用されている。
【0003】
前記工業製品を製造する際に使用される粘着シートとしては、一般に、ウレタンフォーム等の多孔体や不織布等の支持体の片面または両面に粘着剤層が設けられたものが知られている。
前記多孔体や不織布等の支持体は、粘着剤層と接触する面積が小さいため、いわゆる投錨性が十分でなく、その結果、粘着シートを被着体の表面に貼付し、次いで剥離する際に、前記粘着剤層と支持体との間で界面剥離を引き起こす場合が問題とされていた。
【0004】
一方、前記したような粘着シートは、工業製品の高機能化等に伴って様々な被着体の貼り合わせに使用される場合がある。前記被着体としては、例えば前記したような多孔体や、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)やゴム等からなる表面極性の低い基材が挙げられ、また、近年は、曲面部等の複雑な形状を備えた被着体が使用される場合もある。
【0005】
しかし、従来の粘着シート等を前記表面極性の低い基材等の接着に使用しても、優れた接着強度を長期間維持できず、経時的に剥離を引き起こす場合があった。また、曲面部等の複雑な形状を備えた被着体の接着に従来の粘着シートを使用した場合も、被着体の反発力等によって、粘着シートの経時的な剥がれを引き起こす場合があった。
【0006】
前記したような被着体に対して優れた接着力を有し、かつ、多孔体等の支持体に対して優れた投錨性を備えた粘着剤としては、従来、有機溶剤系の粘着剤が使用されていた。
しかし、近年の環境負荷低減の観点から、前記粘着剤に対しても有機溶剤系から水系への転換が求められており、近年は前記接着力や投錨性に優れた水系の粘着剤の開発が進められている。
【0007】
前記水性粘着剤としては、例えば(メタ)アクリル酸アルキル又は脂環式エステルを主単量体成分とするアクリル系ポリマーを含み、かつ全固形分中の溶液可溶分が20〜90質量%である水系感圧性接着剤組成物であって、溶液可溶分としてガラス転移温度が−20℃以下で重量平均分子量が10万以上のアクリル系ポリマー及びガラス転移温度が40℃以上で重量平均分子量が300〜50000のアクリル系ポリマーを含有する水系感圧性接着剤組成物が知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0008】
しかし、前記水系感圧性接着剤組成物では、依然として多孔体に対する投錨性の点で十分でなく、また、表面極性の低い被着体や複雑形状の被着体に対して実用上十分な接着力を発現できず、その結果、経時的に被着体の剥がれを引き起こす場合があった。
【0009】
一方、粘着剤の分野では、前記したとおり優れた投錨性や様々な被着体に対する優れた接着力とともに、優れた再剥離性を両立した粘着剤が求められている。
具体的には、多孔体や不織布等からなる支持体表面に粘着剤層が設けられた粘着シートを、各種被着体の表面に貼付し、次いで、該粘着シートを被着体表面から剥離しようと力を加えた場合に、支持体と粘着剤層との界面剥離を引き起こすことなく、かつ、被着体に対してはその表面に糊残りを生じることなく剥離可能なレベルの再剥離性を備えた粘着剤が求められている。
しかし、前記文献1記載の水系感圧性接着剤組成物では、前記したとおり投錨性の点で十分でないため、支持体と粘着剤層との界面剥離を引き起こす場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−105298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、粘着剤との接触面積が小さい多孔体に対して優れた投錨性を有し、表面極性の低い被着体や複雑形状をした被着体に対して優れた接着力を有し、かつ、再剥離性にも優れた水性粘着剤用組成物、及びそれを用いた水性粘着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、前記課題を解決すべく検討を進めるなかで、従来、水系の粘着剤に使用されているビニル系粘着剤をベースとして検討を進めた。具体的には、従来の水性ビニル系粘着剤に、様々な添加剤を併用することを検討した。
【0013】
例えば添加剤としてテキサノール、ブチルセロソルブ等の造膜助剤、ブチルポリグルコシド等の乾燥遅延剤、低ガラス転移温度を有するアクリル樹脂(ARUFON UC−3510、Tg−50℃、東亜合成(株)製)等を混合した粘着剤を検討したが、前記被着体に対する接着力は低下する傾向にあった。
【0014】
本発明者等は、上記のように様々な種類の添加剤とビニル系粘着剤とを組み合わせ検討するなかで、下記一般式(1)で示される構造を有する不均化ロジン酸のエステル化物をビニル重合体と組み合わせ使用した場合に、多孔体等の支持体に対する優れた投錨性と、表面極性の低い被着体等に対する優れた接着力とを備えた水性粘着剤が得られることを見いだした。
【0015】
また、本発明者等は、前記水性粘着剤の製造方法の検討を進めるなかで、前記粘着剤を構成するビニル重合体(A)中に、特定の窒素原子含有構造を導入した場合に、更に再剥離性をも付与できることを見出した。
【0016】
即ち、本発明は、N−アルキルアミド構造、ラクタム構造及びモルホリン構造からなる群より選ばれる1種以上を有するビニル重合体(A)、不均化ロジン酸のエステル化物(B)、及び、水系媒体(C)を含有し、前記不均化ロジン酸のエステル化物(B)が、下記一般式(1)で示される構造を有するものであることを特徴とする水性粘着剤用組成物、それを含む水性粘着剤及びそれを用いた粘着シートに関するものである。
【0017】
【化1】

【0018】
(前記一般式(1)中のnは、10〜30の整数を示す。)
【発明の効果】
【0019】
本発明の水性粘着剤用組成物を用いることによって、従来の水性粘着剤では達成することができなかった、粘着剤との接触面積が小さい多孔体に対して優れた投錨性を有し、表面極性の低い被着体や複雑形状をした被着体に対して優れた接着力を有し、かつ、再剥離性にも優れた水性粘着剤を得ることができる。前記水性粘着剤及びそれを用いて得られる粘着シートは、例えば、自動車内装材の固着、具体的には自動車天井材やドアトリムの固着をはじめ、クッション剤、シール剤、更には家具、タッチパネル等のITO用途での製造場面で使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の水性粘着剤用組成物は、N−アルキルアミド構造、ラクタム構造及びモルホリン構造からなる群より選ばれる1種以上を有するビニル重合体(A)、下記一般式(1)で示される構造を有する不均化ロジン酸のエステル化物(B)、水系媒体(C)、及び必要に応じてその他の添加剤を含有するものである。
【0021】
前記ビニル重合体(A)及び前記不均化ロジン酸のエステル化物(B)は、前記水系媒体(C)中に溶解または分散しうるものである。具体的には、前記ビニル重合体(A)は、重合体(A)中に存在しても良い親水性基や、後述する反応性界面活性剤によって水系媒体(C)中に安定して分散または溶解されて存在する。
【0022】
また、前記不均化ロジン酸のエステル化物(B)は、前記一般式(1)で示されるノニオン構造によって水系媒体(C)中に溶解または分散することができる。
【0023】
また、後述するように反応性界面活性剤及び前記不均化ロジン酸のエステル化物(B)の存在下でビニル単量体を重合しビニル重合体(A)を製造した場合、前記不均化ロジン酸のエステル化物(B)は、ビニル重合体(A)粒子の外殻に存在し、該ビニル重合体(A)粒子の分散安定性に寄与する。
【0024】
本発明では、前記ビニル重合体(A)と前記不均化ロジン酸のエステル化物(B)とを組み合わせて使用することが、粘着剤との接触面積が少ない多孔体表面等に対して優れた接着力有する水性粘着剤用組成物を得るうえで重要である。
【0025】
はじめに、前記ビニル重合体(A)について説明する。
前記ビニル重合体(A)としては、N−アルキルアミド構造、ラクタム構造及びモルホリン構造からなる群より選ばれる1種以上を有するものを使用することが、粘着剤に良好な再剥離性を付与するうえで必須である。
前記N−アルキルアミド構造は、アミド基を構成する窒素原子にアルキル基が結合した構造である。より具体的には、N−アルキル(メタ)アクリルアミドを重合した際にビニル重合体中に導入されうる構造である。
前記N−アルキルアミド構造としては、例えばN−メチルアミド構造、N−エチルアミド構造、N−プロピルアミド構造、N−イソプロピルアミド構造、N−ブチルアミド構造等が挙げられる。
また、前記ラクタム構造は、アミド基を構成する窒素原子を含む原子が形成した環状構造である。具体的には、ビニルピロリドンを重合した際にビニル重合体中に導入されうる構造である。
前記ラクタム構造としては、例えばβ-ラクタム、γ-ラクタム、δ-ラクタム等が挙げられる。
また、前記モルホリン構造は、一般にモルホリンといわれるテトラヒドロ−1,4−オキサジンで示される構造である。具体的には、(メタ)アクリロイルモルホリンを重合した際にビニル重合体中に導入されうる構造である。
前記構造のなかでも、N−アルキルアミド構造を使用することが、前記優れた投錨性や接着力を損なうことなく優れた再剥離性を付与できるため好ましい。
前記N−アルキルアミド構造、ラクタム構造及びモルホリン構造からなる群より選ばれる構造は、前記ビニル重合体(A)の全体に対して、合計0.3〜20質量%の範囲で存在することが、前記優れた投錨性や接着力を損なうことなく優れた再剥離性を付与できるため好ましい。
【0026】
前記ビニル重合体(A)としては、例えば50万〜100万の範囲の重量平均分子量を有するものを使用することが好ましく、50万〜80万のものを使用することが、粘着剤との接触面積が小さい多孔体に対して優れた投錨性を有し、表面極性の低い被着体や複雑形状をした被着体に対して優れた接着力を有し、かつ、再剥離性にも優れた水性粘着剤用組成物を得るうえで好ましい。なお、前記ビニル重合体(A)の重量平均分子量とは、前記ビニル重合体(A)と25℃のテトラヒドラフランとを混合し、24時間攪拌した場合に、前記テトラヒドロフランに溶解したビニル重合体(A)を、ゲルパーミションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定して得られる値を指す。
【0027】
また、前記ビニル重合体(A)としては、−10〜−60℃のガラス転移温度を有するものを使用することが好ましく、−30〜−60℃のものを使用することが、粘着剤との接触面積が小さい多孔体に対して優れた投錨性を有し、表面極性の低い被着体や複雑形状をした被着体に対して優れた接着力を備えた水性粘着剤用組成物を得るうえで好ましい。なお、前記ガラス転移温度は、FOXの式によって導かれた計算値を指す。
【0028】
FOXの式によるポリマーのガラス転移温度を計算するための各重合性単量体のガラス転移温度は、例えば、「POLYMER HANDBOOK,THIRD EDITION」のVI/213〜258項や「新高分子文庫・第7巻・塗料用合成樹脂入門(北岡協三著、高分子刊行会、京都、1974年)」の168〜169頁に記載されている数値を採用することができる。なお、上記計算にはラジカル重合性不飽和基を有する反応性界面活性剤は重合性単量体に含めないものとする。
【0029】
また、前記ビニル重合体(A)としては、多孔体等に対する優れた投錨性と、表面極性の低い被着体に対する優れた接着力とを両立する観点から、150〜500nmの平均粒子径を有するものを使用することが好ましく、200〜400nmの範囲がより好ましい。ここで、前記平均粒子径は、動的光散乱法によって測定した値を指す。
【0030】
また、前記ビニル重合体(A)としては、粘着剤との接触面積の小さい多孔体等に対する優れた投錨性と、表面極性の低い被着体に対する優れた接着力とを両立する観点から、できるだけ分岐構造を有さない直鎖脂肪族ビニル重合体を使用することが好ましい。
【0031】
前記ビニル重合体(A)としては、具体的には、N−アクリルアミド構造含有化合物、ラクタム構造含有化合物及びモルホリン構造含有化合物からなる群より選ばれる1種以上のビニル単量体と、必要に応じてその他のビニル単量体とを重合することによって製造することができる。
【0032】
前記N−アルキルアミド構造含有化合物としては、例えばN−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド等を使用することができる。なかでもN−イソプロピル(メタ)アクリルアミドを使用することが好ましい。
また、前記ラクタム構造含有化合物としては、ビニルピロリドンを使用することができる。
また、前記モルホリン構造含有化合物としては、(メタ)アクリロイルモルホリンを使用することができる。
また、前記その他のビニル単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステル、カルボキシル基含有ビニル単量体、水酸基含有ビニル単量体等を使用することができる。
【0033】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等を使用することができる。なかでも、アクリル酸ノニル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ブチルを使用することが、得られるビニル重合体(A)のガラス転移温度を低くでき、その結果、粘着剤との接触面積が小さい多孔体に対して優れた投錨性を有し、表面極性の低い被着体や複雑形状をした被着体に対して優れた接着力を付与できるため好ましい。
【0034】
また、前記(メタ)アクリル酸アクリルエステルとして(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチル、アクリル酸エチルを使用することによって、水性粘着剤に優れた耐熱接着力や接着保持力等の粘着性能を付与することが可能である。
【0035】
また、前記カルボキシル基含有ビニル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸β−カルボキシエチル、2−(メタ)アクリロイルプロピオン酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸ハーフエステル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンサクシネート、β−(メタ)ヒドロキシエチルハイドロゲンフタレート、及びこれらの塩等を、単独または2種以上を併用して使用することができる。なかでも、前記カルボキシル基含有ビニル単量体としては、(メタ)アクリル酸を使用することが好ましい。
【0036】
前記カルボキシル基含有ビニル単量体は、得られるビニル重合体(A)にカルボキシル基やカルボキシレート基を導入し、良好な水分散安定性を付与するうえで使用することが好ましい。また、本発明の水性粘着剤用組成物に後述する油溶性エポキシ化合物(D)を併用する場合には、該化合物(D)の有するエポキシ基と前記ビニル重合体(A)中のカルボキシル基とが架橋することで、耐熱接着力や接着保持力等の粘着性能に優れた粘着層を形成することができる。
【0037】
また、前記水酸基含有ビニル単量体としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等を使用することができる。
【0038】
前記水酸基含有ビニル単量体を使用することによって、ビニル重合体(A)中に水酸基を導入することができる。かかる水酸基は、例えばポリイソシアネート架橋剤等を組み合わせ使用する場合に、該架橋剤が有するイソシアネート基と反応する。これにより、耐熱接着力や接着保持力保持力等の粘着性能に優れた粘着層を形成することができる。
【0039】
前記ビニル重合体(A)の製造に使用するその他のビニル単量体としては、前記した以外に、例えば(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N−モノアルキルアミノアルキル、(メタ)アクリル酸N,N−ジアルキルアミノアルキル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アミルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類;(メタ)アクリロニトリル等のビニル系ニトリル類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルアニソール、α−ハロスチレン、ビニルナフタリン等の芳香族環を有するビニル系単量体;イソプレン、ブタジエン、エチレン等の官能基を有しないビニル系単量体等を使用することもできる。
【0040】
本発明で使用するビニル重合体(A)としては、前記ビニル単量体からなる混合物の全量に対して、N−アクリルアミド構造含有化合物、ラクタム構造含有化合物及びモルホリン構造含有化合物からなる群より選ばれる1種以上のビニル単量体を合計0.3〜20質量%、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルを45〜85質量%、カルボキシル基含有ビニル単量体を1〜5質量%含むビニル単量体混合物を重合して得られたものを使用することが好ましい。なかでも、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン及び(メタ)アクリロイルモルホリンを合計0.3〜20質量%と、45〜85質量%のアクリル酸2−エチルヘキシルと、1〜5質量%のカルボキシル基含有ビニル単量体とを含むビニル単量体混合物を重合して得られるものを使用することが、粘着剤との接触面積が小さい多孔体に対して優れた投錨性を有し、表面極性の低い被着体や複雑形状をした被着体に対して優れた接着力を有し、かつ、再剥離性にも優れた水性粘着剤用組成物を得るうえで好ましい。
【0041】
前記ビニル重合体(A)は、例えば、前記ビニル単量体を、重合開始剤と水系媒体(C)と必要に応じて界面活性剤の存在下で乳化重合することによって製造することができる。
【0042】
ここで、前記ビニル単量体としてアクリル酸2−エチルヘキシルを使用する場合、得られるビニル重合体が分岐構造を形成しやすい。また、前記アクリル酸2−エチルヘキシルを概ね70質量%以上使用する場合には、一層、多分岐化したビニル重合体が得られる傾向にある。本願発明では、前記したとおりできる限り分岐していない直鎖状の脂肪族ビニル重合体を使用することが好ましいため、前記分岐を最小限に抑制する製造方法によってビニル重合体(A)を製造することが好ましい。
【0043】
前記分岐構造形成の抑制には、乳化重合温度を前記45〜60℃の範囲に調整し、かつ重合開始剤としてアゾ開始剤を使用し、該アゾ開始剤の使用量を前記ビニル単量体の全量に対して0.01〜0.10質量%の範囲に調整することが有効である。
【0044】
前記アゾ開始剤としては、前記ビニル重合体(A)の分岐構造の形成を抑制し、かつ前記ビニル重合体(A)の生産効率低下を防止する観点から、10時間半減期温度が「前記乳化重合温度−5℃」以下であるアゾ開始剤を使用することが好ましい。具体的には、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン二塩酸塩及び2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン二硫酸塩からなる群より選ばれる1種以上のものを使用することが好ましい。
【0045】
前記アゾ開始剤の市販品としては、例えば、「VA−044(和光純薬工業、10時間半減期温度44℃、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド)」、「VA−046B(和光純薬工業、10時間半減期温度46℃、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジスルフェートジハイドレート)」等を使用することができる。
【0046】
また、前記ビニル重合体(A)の製造に使用可能な界面活性剤としては、例えば陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤等を使用できる。なかでも、陰イオン性界面活性剤を使用することが、粘着剤の機械的安定性を向上する上で好ましい。
【0047】
前記陰イオン性界面活性剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルスルホン酸塩等を単独または2種以上を併用して使用することができる。
【0048】
前記界面活性剤としては、前記ビニル単量体とともに乳化重合しうるラジカル重合性不飽和二重結合を有する界面活性剤、いわゆる反応性界面活性剤を使用することが、該界面活性剤のブリードアウトに起因した接着力等の低下を防止するうえで好ましい。
【0049】
前記反応性界面活性剤としては、例えば、スルホン酸基及びその塩を有する「ラテムルS−180、PD−104」〔商標;花王株式会社製〕、「エレミノールJS−2、RS−30」〔商標;三洋化成工業株式会社製〕等;硫酸基及びその塩を有する「アクアロンKH−05、KH−10」〔商標;第一工業製薬株式会社製〕、「アデカリアソープSE−10、SE−20」〔商標;旭電化工業株式会社製〕等;リン酸基を有する「ニューフロンティアA−229E」〔商標;第一工業製薬株式会社製〕等;非イオン性親水基を有する「アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50」〔商標;第一工業製薬株式会社製〕、「ラテムルPD−420、PD−430、PD−450」〔商標;花王株式会社製〕等が挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0050】
前記界面活性剤の使用量は、界面活性剤の種類等によって相違するが、例えば前記非イオン性界面活性剤の場合には、前記ビニル単量体混合物の全量に対して1.0〜5.0質量%の範囲であることが好ましく、1.5〜3.5質量%の範囲がより好ましい。
【0051】
また、前記界面活性剤が陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤である場合には、前記界面活性剤の使用量は0.5〜3.0質量%の範囲であることが好ましく、1.0〜2.5質量%の範囲がより好ましい。
【0052】
次に、本発明で使用する不均化ロジン酸のエステル化物(B)について説明する。
【0053】
前記不均化ロジン酸のエステル化物(B)は、不均化ロジン酸と、下記一般式(1)で示される構造を有するポリオールとをエステル化反応して得られるものであって、下記一般式(1)で示されるエチレンオキサイド構造の繰り返し単位(一般式(1)中のn)が10〜30の範囲の整数であることを特徴とする。
【0054】
【化2】

【0055】
(前記一般式(1)中のnは、10〜30の整数を示す。)
ここで、前記不均化ロジン酸のエステル化物(B)の代わりに、前記nが8である不均化ロジン酸のエステル化物を使用して得られた水性粘着剤では、該水性粘着剤の軟化点が低下し、多孔体に対する投錨性や、該多孔体及び低表面極性の被着体に対する接着力、耐熱接着力の低下を引き起こす場合がある。一方、前記nが40の不均化ロジン酸のエステル化物を使用して得られた水性粘着剤も、多孔体に対する投錨性や、該多孔体及び低表面極性の被着体に対する接着力、耐熱接着力の低下を引き起こす場合がある。
【0056】
水性粘着剤との接触面積が小さい多孔体や、表面極性の低い被着体に対する、より一層優れた接着力を備えた水性粘着剤用組成物を得るためには、前記nが好ましくは10〜20、より好ましくは14〜16の整数である不均化ロジン酸のエステル化物を使用することが好適である。
【0057】
前記不均化ロジン酸のエステル化物(B)の製造に使用する不均化ロジン酸としては、例えばデヒドロアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸、サンダラコピマール酸等を使用することができ、なかでもデヒドロアビエチン酸を使用することが好ましい。
【0058】
また、前記不均化ロジン酸と反応するポリオールとしては、例えばエチレンオキサイド構造からなる繰り返し単位が10〜30の範囲であるポリオキシエチレングリコールを使用することが好ましく、より好ましくは10〜20、特に好ましくは14〜16の範囲の繰り返し単位を有するポリオキシエチレングリコールを使用することができる。
【0059】
前記不均化ロジン酸のエステル化物(B)は、例えば前記不均化ロジン酸の有するカルボキシル基と、前記ポリオールの有する水酸基とを周知慣用の方法で縮合させることによって製造することができる。得られた不均化ロジン酸のエステル化物(B)の末端は、水酸基や、メトキシ基やエトキシ基等のアルコキシ基であることが、粘着剤との接触面積が小さい多孔体に対して、特に優れた投錨性を付与し、表面極性の低い被着体や複雑形状をした被着体に対して優れた接着力を付与するうえで好ましい。
【0060】
前記不均化ロジン酸のエステル化物(B)は、前記ビニル重合体(A)の全量に対して、0.1質量%〜5質量%の範囲で使用することが好ましく、0.5質量%〜3質量%の範囲で使用することが、粘着剤との接触面積が小さい多孔体に対して、特に優れた投錨性を付与し、表面極性の低い被着体や複雑形状をした被着体に対して優れた接着力を付与し、かつ、不均化ロジン酸エステル化物(B)の被着体表面へのブリードを抑制できるため好ましい。
【0061】
次に、本発明で使用する水系媒体(C)について説明する。
前記水系媒体(C)としては、水、水と混和する親水性有機溶剤、及び、これらの混合物を使用することができる。前記親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−及びイソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム類等の、一般に高沸点溶剤として知られるものを使用することができる。本発明では、水のみを用いても良く、また水及び水と混和する有機溶剤との混合物を用いても良く、水と混和する有機溶剤のみを用いても良い。安全性や環境に対する負荷の点から、水のみ、又は、水及び水と混和する有機溶剤との混合物が好ましく、水のみが特に好ましい。
【0062】
前記水系媒体(C)は、本発明の水性粘着剤用組成物の全量に対して30〜70質量%含まれることが好ましく、40〜60質量%含まれることがより好ましい。
【0063】
次に、本発明で使用することができる油溶性エポキシ化合物(D)について説明する。
【0064】
油溶性エポキシ化合物(D)は、加熱等により前記ビニル重合体(A)が有していてもよいカルボキシル基と反応し架橋構造を形成しうるエポキシ基を有するものである。
【0065】
前記油溶性エポキシ化合物(D)としては、例えば、デナコールEX−622〔ナガセ化成工業株式会社製〕、デナコールEX−201〔同社製〕、デナコールEX−212〔同社製〕、デナコールEX−922〔同社製〕、デナコールEX−2000〔同社製〕、デナコールEX−4000〔同社製〕、デナコールEX−721〔同社製〕、デナコールEX−221〔同社製〕、TETRAD−C〔三菱ガス化学株式会社製〕、TETRAD−X〔同社製〕などを使用することができる。なかでもアミン基を有するTETRAD−X、TETRAD−Cを使用することが、架橋反応をより促進できるため好ましい。
【0066】
前記油溶性エポキシ化合物(D)は、粘着剤層のゲル分率を調整し、多孔体や表面極性の低い被着体に対する優れた接着力を付与する観点から、前記ビニル重合体(A)の全量に対して0.01〜3質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0067】
次に、本発明で使用できるロジン系樹脂(E)について説明する。
本発明では、150〜200℃の軟化点を有するロジン系樹脂(E)を、前記不均化ロジン酸のエステル化物(B)と組み合わせ使用することが、多孔体や表面極性の低い被着体に対する耐熱接着力を向上させるうえで特に好ましい。
【0068】
前記耐熱接着力としては、具体的には、被着体を本発明の水性粘着剤を用いて貼り合わせて得られた積層体を、概ね80℃程度の高温環境下に長期間放置した場合であっても被着体の剥離等を引き起こさないレベルの特性が求められる。なお、前記ロジン系樹脂(E)の軟化点は、JIS K−5902方法で測定された値を指す。
【0069】
前記ロジン系樹脂(E)としては、例えば天然ロジン、ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステル、水添ロジン、水添ロジンエステル、不均化ロジン、不均化ロジンエステル等のうち、150〜200℃の軟化点を有するものを使用することができる。なかでも重合ロジンエステル等を使用することが好ましい。
【0070】
前記ロジン系樹脂(E)は、粘着剤との接触面積が小さい多孔体や、表面極性の低い被着体に対する優れた接着力と、優れた耐熱接着力とを両立する観点から、前記ビニル重合体(A)の全量に対して10〜35質量%の範囲で使用することが好ましく、20〜30質量%がより好ましい。
【0071】
また、本発明では、上記に加え、更にその他のロジン系樹脂を使用することができる。具体的には、天然ロジン、ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステル、水添ロジン、水添ロジンエステル、不均化ロジン、不均化ロジンエステル等のうち150℃未満の軟化点を有するものを使用することができる。
【0072】
また、本発明の水性粘着剤用組成物は、前記ビニル重合体(A)や不均化ロジン酸のエステル化物(B)や水系媒体(C)や油溶性エポキシ化合物(D)やロジン系樹脂(E)の他に、必要に応じてその他の添加剤等を含有していても良い。
【0073】
前記その他の添加剤としては、例えばα−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水添テルペンフェノール樹脂等のテルペン系粘着付与剤樹脂を使用することができる。
【0074】
また、前記添加剤としては、脂肪族炭化水素系樹脂や脂肪族環式構造含有樹脂等の性基油系樹脂を使用することができる。例えば、一般にC5系樹脂やC9系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂等として知られる石油系樹脂を併用することもできる。
【0075】
次に、本発明の水性接着剤用組成物の製造方法について説明する。
本発明の水性接着剤用組成物は、例えば前記したように予め製造したビニル重合体(A)の水系分散体と、不均化ロジン酸のエステル化物(B)と必要に応じて油溶性エポキシ化合物(D)及び前記ロジン系樹脂(E)とを混合、攪拌することによって製造することができる。
【0076】
また、粘着剤との接触面積が小さい多孔体や、表面極性の低い被着体に対する、より一層優れた接着力を備えた水性粘着剤用組成物を得るためには、例えば前記と同様の反応性界面活性剤と前記不均化ロジン酸のエステル化物(B)と水系媒体(C)との混合物中に、前記ビニル単量体の混合物と重合開始剤と必要に応じて連鎖移動剤とを一括または別々に供給し、前記ビニル単量体混合物を乳化重合法により反応させることによって、ビニル重合体(A)を含む水性粘着剤用組成物を製造する方法を採用することが好ましい。
【0077】
具体的には、前記反応性界面活性剤と前記不均化ロジン酸のエステル化物(B)と水系媒体(C)との混合物へのビニル単量体混合物や重合開始剤等の供給は、一括供給または逐次供給であることが好ましい。
【0078】
前記供給後、概ね0℃〜80℃程度の温度範囲で約3〜10時間程度反応させ、前記ビニル単量体混合物のラジカル重合を乳化重合法により行うことが好ましい。前記供給後の反応温度は、ビニル重合体(A)が分岐構造となるのを抑制する観点から、概ね65℃以下の比較的低温で行うことが好ましい。
【0079】
前記したように、前記不均化ロジン酸のエステル化物(B)等の存在下でビニル重合体(A)を製造し本発明の水性粘着剤用組成物を得ることによって、ビニル重合体(A)の粒子の外殻に前記不均化ロジン酸のエステル化物(B)が局在化し、その結果、粘着剤との接触面積が小さい多孔体や表面極性の低い被着体に対する、より一層優れた接着力を発現することが可能な水性粘着剤用組成物を得ることができる。
【0080】
前記方法で得られた水性粘着剤用組成物にも、必要に応じて前記油溶性エポキシ化合物(D)や前記ロジン系樹脂(E)を併用することができる。具体的には、前記方法で得た水性粘着剤用組成物と前記油溶性エポキシ化合物(D)や前記ロジン系樹脂(E)とを混合、攪拌することによって得ることができる。
【0081】
前記製法で使用する連鎖移動剤としては、例えばラウリルメルカプタン等のメルカプタン系化合物、α−ピネン、リモネン、ターピノーレン等のテルペン系化合物、アリルアルコール、α−メチルスチレンダイマー等を使用することができる。
【0082】
前記連鎖移動剤は、前記ビニル単量体の全量に対して好ましくは0.01〜0.5質量%、より好ましくは0.01〜0.2質量%の範囲で使用することができる。
【0083】
前記方法等で得られた本発明の水性接着剤用組成物は、もっぱら水性粘着剤に使用することができる。
【0084】
また、前記水性粘着剤は、例えば支持体の片面または両面に粘着層を有する粘着シートの製造に使用することができる。
【0085】
前記粘着シートは、例えば支持体の片面または両面に、前記水性粘着剤を塗工し、水系媒体(C)を除去するとともに、塗工層のゲル分率が概ね25〜55%程度になるまで硬化し粘着層を形成することによって製造することができる。
【0086】
前記支持体としては、例えばポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルカーボネート及びこれらのラミネート体などを使用することができる。なかでもポリエチレンテレフタレートからなるフィルムを使用することが好ましい。
【0087】
前記支持体の表面は、前記粘着層との密着性を向上する観点から、予めコロナ処理等による易接着表面処理が施されていても良い。
【0088】
また、前記支持体としては、一般に、両面粘着テープの芯材に使用される例えば、綿、麻、レーヨン、または、ポリエステルと綿、麻、レーヨンとの混紡品からなる不織布や織布を使用することもできる。
【0089】
前記支持体表面に水性粘着剤を塗工する方法としては、例えばロールコーター、グラビアコーター、リバースコーター、リップコーター、スプレーコーター、エアーナイフコーター、ダイコーター等を用いる方法が挙げられる。
【0090】
前記支持体表面に形成される粘着層の厚みは、特に制限はないが、1〜100μmの範囲であることが好ましく、10〜60μmの範囲であることがより好ましい。
【0091】
前記で得られた粘着シートは、とりわけ発泡体等の多孔体の表面に対しても優れた接着力を有することから、例えばウレタンフォーム等の多孔体からなる被着体の接着や積層体の形成に好適に使用することができる。
【0092】
また、本発明の粘着シートは、表面極性の低い被着体に対して優れた接着力を有することから、例えばポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンや、クロロプレンやEPDMゴム等、及び金属などからなる被着体の接着に使用することができる。
【実施例】
【0093】
以下、本発明を実施例及び比較例により、一層具体的に説明する。
【0094】
[ビニル重合体の調製]
(合成例1)
容器に反応性界面活性剤としてラテムルPD−104(花王株式会社製、固形分20質量%)を30質量部及びアクアロンKH−1025(第一工業製薬株式会社製、固形分25質量%)を24質量部と、アクリル酸2−エチルヘキシルを435質量部、アクリル酸ブチルを120質量部、メタクリル酸メチルを24質量部、N−イソプロピルアクリルアミド6質量部及びアクリル酸を15質量部と、連鎖移動剤としてラウリルメルカプタン0.21質量部と、イオン交換水90質量部とを仕込み、攪拌することによって、乳化液を調製した。
【0095】
温度計、滴下ロート、還流冷却管及び攪拌装置を備えた重合容器内を窒素ガスで置換し、イオン交換水373.2質量部を仕込み、内温52.5℃に昇温した。
【0096】
前記重合容器に、前記乳化液の全量に対して1質量%の乳化液を仕込んだ後、ピロ亜硫酸ナトリウムを0.15質量部及び過硫酸アンモニウムを0.18質量部添加し、重合を開始した。
【0097】
30分間ホールドした後、残りの乳化液(99質量%)と、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド水溶液(不揮発分0.5質量%)10質量部とを、前記重合容器内に6時間かけて滴下した。
【0098】
滴下終了後、重合容器を内温52.5℃にて1時間保持し、次いで、重合容器を約25℃に冷却した後、内容物を200メッシュ濾布(ポリエステル)で濾過することによって、固形分53.0質量%、粘度250mPa・s、pH2.5、粒子径280nm、分子量70万のビニル重合体エマルジョン1を得た。
【0099】
(実施例1)
前記合成例1で得たビニル重合体1エマルジョンの固形分100質量部に対して、不均化ロジン酸のエステル化物(B)としてエチレングリコールデヒドロアビエチン酸エステル(EO付加モル数:15モル、末端構造は水酸基)1質量部を混合した後、更に12.5質量%のアンモニア水を4.2質量部と、ボンコート3750−E(DIC株式会社製の増粘剤、不揮発分23質量%)1.5質量部とイオン交換水2質量部とを混合することによって、BM粘度が10000mPa・s(#4×12)、pHが8であるビニル重合体エマルジョン1−1を得た。
【0100】
次いで、前記ビニル重合体エマルジョン1−1と油溶性エポキシ化合物であるTETRAD−C(三菱ガス化学株式会社製)0.02質量部とを混合し、200メッシュの濾布(ポリエステル製)を用いて濾過することにより、水性粘着剤用組成物1を得た。
【0101】
(実施例2)
容器に反応性界面活性剤としてラテムルPD−104(花王株式会社製、固形分20質量%)を45質量部と、不均化ロジン酸のエステル化物(B)としてエチレングリコールデヒドロアビエチン酸エステル(EO付加モル数:15モル、末端構造は水酸基)を6質量部と、アクリル酸2−エチルヘキシルを435質量部、アクリル酸ブチルを120質量部、メタクリル酸メチルを24質量部、N−イソプロピルアクリルアミド6質量部及びアクリル酸を15質量部と、連鎖移動剤としてラウリルメルカプタン0.21質量部と、イオン交換水108質量部とを仕込み、攪拌することによって、乳化液を調製した。
【0102】
温度計、滴下ロート、還流冷却管及び攪拌装置を備えた重合容器内を窒素ガスで置換し、イオン交換水364.8質量部を仕込み、内温52.5℃に昇温した。
【0103】
前記重合容器に、前記乳化液の全量に対して1質量%の乳化液を仕込んだ後、ピロ亜硫酸ナトリウムを0.15質量部及び過硫酸アンモニウムを0.18質量部添加し、重合を開始した。
【0104】
30分間ホールドした後、残りの乳化液(99質量%)と、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド水溶液(不揮発分0.5質量%)10質量部とを、前記重合容器内に6時間かけて滴下し、更に重合容器を内温52.5℃にて1時間保持した後、約25℃に冷却することで、ビニル重合体エマルジョン2−1を得た。
【0105】
前記ビニル重合体エマルジョン2−1の固形分100質量部に対して、12.5質量%のアンモニア水を2.0質量部と、ボンコート3750−E(DIC株式会社製の増粘剤、不揮発分23質量%)を1.5質量部とイオン交換水1.8質量部を混合することによって、BM粘度が10000mPa・s(#4×12)、pHが8であるビニル重合体エマルジョン2−2を得た。
【0106】
次いで、前記ビニル重合体エマルジョン2−2と、油溶性エポキシ化合物であるTETRAD−C(三菱ガス化学株式会社製)0.02質量部とを混合し、該混合物を200メッシュ濾布(ポリエステル)を用いて濾過することによって、固形分52.5質量%、粘度242mPa・s、pH2.6、粒子径285nm、分子量65万のビニル重合体と不均化ロジン酸のエステル化物とイオン交換水と油溶性エポキシ化合物とを含む水性粘着剤用組成物2を得た。
【0107】
(実施例3)
前記実施例2で使用したものと同様のビニル重合体エマルジョン2−1の固形分100質量部に対して、ロジン系樹脂(E)としてスーパーエステル E−865−NT(荒川化学工業株式会社製、軟化点160℃、不揮発分50質量%、重合ロジンエステル)30質量部とを混合し、次いで、該混合物に12.5質量%のアンモニア水1.9質量部と、ボンコート3750−E(DIC株式会社製の増粘剤、不揮発分23質量%)0.6質量部とイオン交換水0.6質量部とを混合することによって、BM粘度が10000mPa・s(#4×12)、pHが8であるビニル重合体エマルジョン3−1を得た。
【0108】
前記ビニル重合体エマルジョン3−1と、油溶性エポキシ化合物であるTETRAD−C(三菱ガス化学株式会社製)0.02質量部とを混合し、該混合物を200メッシュ濾布(ポリエステル)を用いて濾過することによって、固形分52.5質量%、粘度242mPa・s、pH2.6、粒子径285nm、分子量65万のビニル重合体と不均化ロジン酸のエステル化物とイオン交換水と油溶性エポキシ化合物とを含む水性粘着剤用組成物3を得た。
【0109】
(実施例4)
容器に反応性界面活性剤としてラテムルPD−104(花王株式会社製、固形分20質量%)を45質量部と、不均化ロジン酸のエステル化物(B)としてエチレングリコールデヒドロアビエチン酸エステル(EO付加モル数:15モル、末端構造は水酸基)を6質量部と、アクリル酸2−エチルヘキシルを435質量部、アクリル酸ブチルを90質量部、アクリル酸エチル30質量部、メタクリル酸メチルを24質量部、N−イソプロピルアクリルアミド6質量部及びアクリル酸を15質量部と、連鎖移動剤としてラウリルメルカプタン0.21質量部と、イオン交換水108質量部とを仕込み、攪拌することによって、乳化液を調製した。
【0110】
温度計、滴下ロート、還流冷却管及び攪拌装置を備えた重合容器内を窒素ガスで置換し、イオン交換水364.8質量部を仕込み、内温52.5℃に昇温した。
【0111】
前記重合容器に、前記乳化液の全量に対して1質量%の乳化液を仕込んだ後、ピロ亜硫酸ナトリウムを0.15質量部及び過硫酸アンモニウムを0.18質量部添加し、重合を開始した。
【0112】
30分間ホールドした後、残りの乳化液(99質量%)と、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド水溶液(不揮発分0.5質量%)10質量部とを、前記重合容器内に6時間かけて滴下し、更に重合容器を内温52.5℃にて1時間保持した後、約25℃に冷却することで、ビニル重合体エマルジョン4−1を得た。
【0113】
前記ビニル重合体エマルジョン4−1の固形分100質量部に対して、ロジン系樹脂(E)としてスーパーエステル E−865−NT(荒川化学工業株式会社製、軟化点160℃、不揮発分50質量%、重合ロジンエステル)固型分30質量部とを混合し、更に12.5質量%のアンモニア水を2.1質量部と、ボンコート3750−E(DIC株式会社製の増粘剤、不揮発分23質量%)を1.6質量部とイオン交換水1.1質量部を混合することによって、BM粘度が10000mPa・s(#4×12)、pHが8であるビニル重合体エマルジョン4−2を得た。
【0114】
前記ビニル重合体エマルジョン4−2と、油溶性エポキシ化合物であるTETRAD−C(三菱ガス化学株式会社製)0.02質量部とを混合し、200メッシュ濾布(ポリエステル)を用いて濾過することによって、固形分52.2質量%、粘度208mPa・s、pH2.6、粒子径318nm、分子量62万のビニル重合体と不均化ロジン酸のエステル化物とイオン交換水と油溶性エポキシ化合物とを含む水性粘着剤用組成物4を得た。
【0115】
(実施例5)
エチレングリコールデヒドロアビエチン酸エステル(EO付加モル数:15モル、末端構造は水酸基)の代わりにエチレングリコールデヒドロアビエチン酸エステル(EO付加モル数:18モル、末端構造は水酸基)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法により水性粘着剤用組成物5を得た。
【0116】
(実施例6)
容器に反応性界面活性剤としてラテムルPD−104(花王株式会社製、固形分20質量%)を45質量部と、不均化ロジン酸のエステル化物(B)としてエチレングリコールデヒドロアビエチン酸エステル(EO付加モル数:18モル、末端構造は水酸基)を6質量部と、アクリル酸2−エチルヘキシルを435質量部、アクリル酸ブチルを120質量部、メタクリル酸メチルを24質量部、N−イソプロピルアクリルアミド6質量部及びアクリル酸を15質量部と、連鎖移動剤としてラウリルメルカプタン0.21質量部と、イオン交換水108質量部とを仕込み、攪拌することによって、乳化液を調製した。
【0117】
温度計、滴下ロート、還流冷却管及び攪拌装置を備えた重合容器内を窒素ガスで置換し、イオン交換水364.8質量部を仕込み、内温52.5℃に昇温した。
【0118】
前記重合容器に、前記乳化液の全量に対して1質量%の乳化液を仕込んだ後、ピロ亜硫酸ナトリウムを0.15質量部及び過硫酸アンモニウムを0.18質量部添加し、重合を開始した。
【0119】
30分間ホールドした後、残りの乳化液(99質量%)と、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド水溶液(不揮発分0.5質量%)10質量部とを、前記重合容器内に6時間かけて滴下し、更に重合容器を内温52.5℃にて1時間保持した後、約25℃に冷却することで、ビニル重合体エマルジョン6−1を得た。
【0120】
前記ビニル重合体エマルジョン6−1の固形分100質量部に対して、更に12.5質量%のアンモニア水を2.2質量部と、ボンコート3750−E(DIC株式会社製の増粘剤、不揮発分23質量%)を1.2質量部とイオン交換水0.8質量部を混合することによって、BM粘度が10000mPa・s(#4×12)、pHが8であるビニル重合体エマルジョン6−2を得た。
【0121】
前記ビニル重合体エマルジョン6−2と油溶性エポキシ化合物であるTETRAD−C(三菱ガス化学株式会社製)0.02質量部とを混合し、200メッシュ濾布(ポリエステル)を用いて濾過することによって、固形分52.4質量%、粘度314mPa・s、pH2.8、粒子径297nm、分子量64万のビニル重合体と不均化ロジン酸のエステル化物とイオン交換水と油溶性エポキシ化合物とを含む水性粘着剤用組成物6を得た。
【0122】
(実施例7)
容器に反応性界面活性剤としてラテムルPD−104(花王株式会社製、固形分20質量%)を45質量部と、不均化ロジン酸のエステル化物(B)としてエチレングリコールデヒドロアビエチン酸エステル(EO付加モル数:30モル、末端構造は水酸基)を6質量部と、アクリル酸2−エチルヘキシルを435質量部、アクリル酸ブチルを120質量部、メタクリル酸メチルを24質量部、N−イソプロピルアクリルアミド6質量部及びアクリル酸を15質量部と、連鎖移動剤としてラウリルメルカプタン0.21質量部と、イオン交換水108質量部とを仕込み、攪拌することによって、乳化液を調製した。
【0123】
温度計、滴下ロート、還流冷却管及び攪拌装置を備えた重合容器内を窒素ガスで置換し、イオン交換水364.8質量部を仕込み、内温52.5℃に昇温した。
【0124】
前記重合容器に、前記乳化液の全量に対して1質量%の乳化液を仕込んだ後、ピロ亜硫酸ナトリウムを0.15質量部及び過硫酸アンモニウムを0.18質量部添加し、重合を開始した。
【0125】
30分間ホールドした後、残りの乳化液(99質量%)と、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド水溶液(不揮発分0.5質量%)10質量部とを、前記重合容器内に6時間かけて滴下し、更に重合容器を内温52.5℃にて1時間保持した後、約25℃に冷却することで、ビニル重合体エマルジョン7−1を得た。
【0126】
前記ビニル重合体エマルジョン7−1の固形分100質量部に対して、更に12.5質量%のアンモニア水を2.2質量部と、ボンコート3750−E(DIC株式会社製の増粘剤、不揮発分23質量%)を1.2質量部とイオン交換水1.8質量部を混合することによって、BM粘度が10000mPa・s(#4×12)、pHが8であるビニル重合体エマルジョン7−2を得た。
【0127】
前記ビニル重合体エマルジョン7−2と、油溶性エポキシ化合物であるTETRAD−C(三菱ガス化学株式会社製)0.02質量部と混合し、200メッシュ濾布(ポリエステル)を用いて濾過することによって、固形分52.1質量%、粘度620mPa・s、pH2.8、粒子径281nm、分子量64万のビニル重合体と不均化ロジン酸のエステル化物とイオン交換水と油溶性エポキシ化合物とを含む水性粘着剤用組成物7を得た。
【0128】
(比較例1)
前記合成例1で得られたビニル重合体エマルジョン1の固形分100質量部に対して、更に12.5質量%のアンモニア水を2.2質量部と、ボンコート3750−E(DIC株式会社製の増粘剤、不揮発分23質量%)を1.0質量部とイオン交換水0.8質量部を混合することによって、BM粘度が10000mPa・s(#4×12)、pHが8であるビニル重合体エマルジョン8−1を得た。
【0129】
前記ビニル重合体エマルジョン8−1と油溶性エポキシ化合物であるTETRAD−C(三菱ガス化学株式会社製)0.02質量部とを混合し、200メッシュ濾布(ポリエステル)を用いて濾過することによって、固形分53.0質量%、粘度250mPa・s、pH2.5、粒子径280nm、分子量70万のビニル重合体とイオン交換水と油溶性エポキシ化合物とを含む水性粘着剤用組成物8を得た。
【0130】
(比較例2)
前記合成例1で得られたビニル重合体エマルジョン1の固形分100質量部に対して、乾燥遅延剤としてノニオシド B−15(ブチルポリグルコシド、第一工業製薬株式会社製、固形分50質量%)1質量部とを混合した後、更に12.5質量%のアンモニア水を2.5質量部と、ボンコート3750−E(DIC株式会社製の増粘剤、不揮発分23質量%)を1.1質量部とイオン交換水0.9質量部を混合することによって、BM粘度が10000mPa・s(#4×12)、pHが8であるビニル重合体エマルジョン9−1を得た。
【0131】
前記ビニル重合体エマルジョン9−1と、油溶性エポキシ化合物であるTETRAD−C(三菱ガス化学株式会社製)0.02質量部とを混合し、200メッシュ濾布(ポリエステル)を用いて濾過することによって、固形分53.0質量%、粘度250mPa・s、pH2.5、粒子径280nm、分子量70万のビニル重合体とイオン交換水と油溶性エポキシ化合物と乾燥遅延剤とを含む水性粘着剤用組成物9を得た。
【0132】
(比較例3)
容器に反応性界面活性剤としてラテムルPD−104(花王株式会社製、固形分20質量%)を45質量部と、不均化ロジン酸のエステル化物(B)としてエチレングリコールデヒドロアビエチン酸エステル(EO付加モル数:8モル、末端構造は水酸基)を6質量部と、アクリル酸2−エチルヘキシルを435質量部、アクリル酸ブチルを120質量部、メタクリル酸メチルを24質量部、N−イソプロピルアクリルアミド6質量部及びアクリル酸を15質量部と、連鎖移動剤としてラウリルメルカプタン0.21質量部と、イオン交換水108質量部とを仕込み、攪拌することによって、乳化液を調製した。
【0133】
温度計、滴下ロート、還流冷却管及び攪拌装置を備えた重合容器内を窒素ガスで置換し、イオン交換水364.8質量部を仕込み、内温52.5℃に昇温した。
【0134】
前記重合容器に、前記乳化液の全量に対して1質量%の乳化液を仕込んだ後、ピロ亜硫酸ナトリウムを0.15質量部及び過硫酸アンモニウムを0.18質量部添加し、重合を開始した。
【0135】
30分間ホールドした後、残りの乳化液(99質量%)と、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド水溶液(不揮発分0.5質量%)10質量部とを、前記重合容器内に6時間かけて滴下し、次いで重合容器を内温52.5℃にて1時間保持した後、約25℃に冷却した。
【0136】
前記重合物の固形分100質量部に対して、更に12.5質量%のアンモニア水を2.2質量部と、ボンコート3750−E(DIC株式会社製の増粘剤、不揮発分23質量%)を1.4質量部とイオン交換水1.0質量部を混合することによって、BM粘度が10000mPa・s(#4×12)、pHが8であるビニル重合体エマルジョン10−1を得た。
【0137】
前記ビニル重合体エマルジョン10−1と油溶性エポキシ化合物であるTETRAD−C(三菱ガス化学株式会社製)0.01質量部とを混合し、内容物を200メッシュ濾布(ポリエステル)で濾過することによって、固形分52.1質量%、粘度234mPa・s、pH2.7、粒子径287nm、分子量60万のビニル重合体と不均化ロジン酸のエステル化物とイオン交換水とを含む水性粘着剤用組成物10を得た。
【0138】
[粘着シートの作製]
前記水性粘着剤用組成物を用いて得られた水性粘着剤を、アプリケーターを用いて離型紙上に、乾燥膜厚が60μmとなるように塗工した。
【0139】
次いで、前記塗工物を100℃の乾燥オーブン中で3分間乾燥し、該塗工表面に、厚さ5mmのウレタンフォーム(イノアックコーポレーション株式会社製、ECSウレタンフォーム)を載置し、該ウレタンフォームの厚さが2.5mmとなるまで加圧し前記塗工表面と前記ウレタンフォームとを接着することによって積層体を得た。
【0140】
得られた積層体を40℃の雰囲気下に48時間以上放置しエージングすることによって、本発明の粘着シートを得た。
【0141】
[両面粘着シートの作製]
前記水性粘着剤用組成物を用いて得られた水性粘着剤を、アプリケーターを用いて2枚の離型紙上に、それぞれ、乾燥膜厚が60μmとなるように塗工した。
【0142】
次いで、前記塗工物を100℃の乾燥オーブン中で3分間乾燥した後、一方の塗工物の塗工面にレーヨン不織布(秤量14g/m)を載置し、次いで該レーヨン不織布上に他方の塗工物の塗工面を載置したものを、100℃に調整したロールを用い4000gf/cmの圧力で圧着し、40℃×50RH%の高温高湿室で2日間放置することによって両面粘着シートを得た。
【0143】
[多孔体に対する接着力(投錨性)の評価方法]
<目視による評価方法>
前記方法で得られた粘着シートを裁断し、その断面をマイクロスコープ(キーエンス株式会社、倍率50倍)を用いて、粘着剤層とウレタンフォームとの接触部位(接着部位)の状態を目視で観察した。
【0144】
[判定基準]
◎;ウレタンフォームと粘着剤層との間に空隙や明確な界面がない。
○;ウレタンフォームと粘着剤層との接触部位全体の10%未満の範囲で、空隙や明確な界面が確認された。
△;ウレタンフォームと粘着剤層との接触部位全体の10以上30%未満の範囲で、空隙や明確な界面が確認された。
×;ウレタンフォームと粘着剤層との接触部位全体の30%以上の範囲で、空隙や明確な界面が確認された。
【0145】
[表面極性の低い被着体に対する接着力の評価方法]
前記方法で得られた両面粘着シートの一方の面側のみ離型紙を除去し、その粘着剤層表面に、厚さ25μmのポリエステルフィルムを載置し、その上部から、2kgのロールを2往復させ荷重をかけることにより、それらを圧着させた。
【0146】
次いで前記両面粘着シートと前記ポリエステルフィルムとからなる積層体を幅20mm×長さ100mmの大きさに切り取って得た試験片の、他方の面側の離型紙を除去し、その粘着剤層表面にポリプロピレン基材を載置し、その上部から2kgロール1往復の荷重をかけることにより、それらを貼り合わせた。
【0147】
次いで、前記粘着層とポリプロピレン基材との間の接着強度を、JISZ0237に準拠し、180度方向300mm/minの速度で剥離しようとした際の剥離強度に基づき評価した。
【0148】
また、前記ポリプロピレン基材の代わりにステンレス(SUS)基材を用いる以外は前記と同様の方法で、粘着剤層とステンレス基材との間の接着強度を評価した。
前記剥離強度が、いずれの基材に対しても概ね14N/20mm以上のものを、表面極性の低い被着体に対する接着力に優れると評価した。
【0149】
[耐熱接着力の評価方法]
<耐熱クリープ試験による評価>
離型紙を除去した前記粘着シートを、幅25mm×長さ50mmの面積のポリプロピレン基材に貼付し、5kgのロールを用いて1往復圧着することにより積層体を得た。
【0150】
80℃の環境下で簡易型保持力試験機(テスター産業株式会社製)を用い、前記積層体を構成する粘着シートの支持体であるウレタンフォーム部分に、サンドペーパー#360番手を介して100gのおもりをつけ、前記ウレタンフォーム部分が下になる状態で30分間放置した。
【0151】
30分後、粘着シートがポリプロピレン基材から剥離(mm)した距離を測定した。なお、30分経過前に、粘着シートを構成する支持体であるウレタンフォームと粘着剤層とが剥離し、前記ウレタンフォームが落下した場合には、落下までに要した時間(分)を測定した。
【0152】
また、前記ポリプロピレン基材の代わりにステンレス基材を使用すること以外は前記と同様の方法により、耐熱接着力の評価を行った。
前記30分以内に落下することがなく、または、落下した場合であっても落下までに要した時間が10分以上であるものを、耐熱接着力に優れると評価した。
【0153】
<軟化点による評価>
離型紙を除去した前記粘着シートを、幅25mm×長さ25mmの面積のポリプロピレンからなる被着体に貼付し、5kgのロールを用いて1往復圧着することにより積層体を得た。
【0154】
23℃の環境下、簡易型保持力試験機(テスター産業株式会社製)を用い、前記積層体を構成する粘着シートの支持体であるウレタンフォーム部分に、サンドペーパー#360番手を介して310gのおもりをつけ、前記ウレタンフォーム部分が下になる状態で、23℃から3℃/5分の速度で昇温し、粘着シートがポリプロピレン基材から落下した温度を測定した。
【0155】
また、前記ポリプロピレン基材の代わりにステンレス基材を使用すること以外は前記と同様の方法により、軟化点の測定を行った。
前記軟化点がいずれの基材に対しても60℃以上であるものを、耐熱接着力に優れると評価した。
【0156】
[再剥離性の評価方法]
離型紙を除去した前記粘着シートの、幅20mm×長さ50mmの面積をステンレス基材に貼付し、5kgのロールを用いて1往復圧着することにより積層体を得た。この積層体を60℃の乾燥オーブン中で500時間保存した後、23℃下に取出し、1時間放置した。
次いで、前記積層体から前記ステンレス基材を手で剥離し、ステンレス基材への糊残りの状態を目視にて観察を行った。ステンレス基材と粘着面の界面で剥離し、ステンレスに糊残り無い状態であったものを「○界面」と評価し、ステンレス基材に粘着剤が糊残りしたものを「×糊残り」と評価した。
【0157】
[ゲル分率の評価方法]
前記方法で作製した両面粘着シートを縦20mm及び横100mmの大きさに切り取ったものを試験片とした。前記試験片から離型紙を除去した粘着剤層の質量を、精密天秤を用いて測定した(W1)。
【0158】
次に、前記粘着剤層を50ccのトルエン中に24時間浸漬した後、100℃の乾燥オーブン中で2時間乾燥した。乾燥後の粘着剤層の質量(W2)を、精密天秤を用いて測定した。
【0159】
ゲル分率は、(質量(W2)−不織布の質量)/(質量(W1)−不織布の質量)×100に基づいて算出した。
【0160】
なお、前記不織布の質量は、0.028gである。
【0161】
【表1】

【0162】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−アルキルアミド構造、ラクタム構造及びモルホリン構造からなる群より選ばれる1種以上を有するビニル重合体(A)、不均化ロジン酸のエステル化物(B)、及び、水系媒体(C)を含有し、前記不均化ロジン酸のエステル化物(B)が、下記一般式(1)で示される構造を有するものであることを特徴とする水性粘着剤用組成物。

(前記一般式(1)中のnは、10〜30の整数を示す。)
【請求項2】
前記ビニル重合体(A)がカルボキシル基及びカルボキシレート基からなる群より選ばれる1種以上を有するものである、請求項1に記載の水性粘着剤用組成物。
【請求項3】
前記ビニル重合体(A)が、N−アルキルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン及びアクリロイルモルホリンからなる群より選ばれる1種以上を含有するビニル単量体混合物を重合して得られるものである、請求項1に記載の水性粘着剤用組成物。
【請求項4】
前記ビニル単量体混合物が、前記ビニル単量体混合物の全量に対して、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル45〜85質量%と、カルボキシル基含有ビニル単量体1〜5質量%と、N−アルキルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン及びアクリロイルモルホリンからなる群より選ばれる1種以上を0.3〜20質量%含むものである、請求項3に記載の水性粘着剤用組成物。
【請求項5】
前記不均化ロジン酸のエステル化物(B)の有する前記一般式(1)で示される構造中のnが10〜20の整数である、請求項1に記載の水性粘着剤用組成物。
【請求項6】
前記不均化ロジン酸のエステル化物(B)が、デヒドロアビエチン酸の有するカルボキシル基と、ポリオキシエチレングリコールの有する水酸基とを反応させて得られるものである、請求項1に記載の水性粘着剤用組成物。
【請求項7】
前記不均化ロジン酸のエステル化物(B)が、前記ビニル重合体(A)の全量に対して0.1〜5質量%含まれる、請求項1に記載の水性粘着剤用組成物。
【請求項8】
更に、油溶性エポキシ化合物(D)を含有する請求項1に記載の水性粘着剤用組成物。
【請求項9】
更に、軟化点が150℃〜200℃のロジン系樹脂(E)を含有する請求項1または8に記載の水性粘着剤用組成物。
【請求項10】
反応性界面活性剤と、下記一般式(1)で示される構造を有する不均化ロジン酸のエステル化物(B)と水系媒体(C)との混合物中に、ビニル単量体混合物及び重合開始剤を一括または別々に供給し、乳化重合法によりビニル重合体(A)を製造することによって得られる水性粘着剤用組成物の製造方法。

(前記一般式(1)中のnは、10〜30の整数を示す。)
【請求項11】
前記ビニル単量体混合物が、前記ビニル単量体混合物の全量に対して、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル45〜85質量%と、カルボキシル基含有ビニル単量体1〜5質量%と、N−アルキルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン及びアクリロイルモルホリンからなる群より選ばれる1種以上を0.3〜20質量%含むものである、請求項10記載の水性粘着剤用組成物の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれかに記載の水性粘着剤用組成物からなる水性粘着剤。
【請求項13】
支持体表面に、請求項12に記載の水性粘着剤を用いて形成された粘着層を有する粘着シート。
【請求項14】
多孔体からなる被着体の表面に請求項13に記載の粘着シートを貼り合わせて得られる積層体。

【公開番号】特開2013−1752(P2013−1752A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132139(P2011−132139)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】