説明

水性組成物

親水性活性剤と、重合したエチレンオキサイドの少なくとも1つのブロックと、アルキレンが少なくとも4個の炭素原子を含む重合したアルキレンオキサイドの少なくとも1つのブロックとを含むブロックコポリマーとを含む水性組成物が、親水性活性剤を安定化させる方法および親水性活性剤間の親和性を増大させる方法とともに、記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性活性剤を含む水性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
環境的理由および経済的理由により、活性化合物用の液体希釈剤としては有機溶媒よりも水がしばしば好まれる。活性剤を含む安定な水性組成物は、医薬、農業、化粧品、洗剤、および塗料等の産業の多くの種々の技術領域において使用されている。脂溶性活性剤を含む安定な水性組成物を製造するために、界面活性剤等のアジュバントが添加される。
【0003】
これに対し、親水性活性剤は、典型的には水中に単純に溶解する。しかし、この方法は問題を有する場合もある。例えば、活性剤を含む幾つかの水性組成物は、多数の含有成分で構成される。親水性活性剤が示す安定性が欠ける場合、安定性の損失を補うためにこれらを過剰量にする傾向がある。他の場合においては、水性組成物中に溶解した親水性活性剤は、所望よりも早く環境中に放出される場合がある。いずれのシナリオでも(所望よりも早い放出または過剰量)、活性剤は、パーソナルケア組成物中の活性剤による皮膚刺激等の種々の問題をもたらす場合がある。同様に、親水性活性剤と他の成分との不所望の相互作用(親和性の欠如としても知られている)が、活性剤の有効性を低下させる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、以下の、すなわち、水性溶液中の親水性活性剤の安定性の増大、親水性活性剤を含む水性組成物が適用される基質(皮膚等)への影響の低減、親水性活性剤の環境への制御放出、または水性組成物中の他の成分との親和性の増大のうちの1つ以上を実現することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
要約
一態様において、本発明は、液体希釈剤としての50質量パーセント超の水、親水性活性剤、および、重合したエチレンオキサイドの少なくとも1つのブロックと、アルキレンが少なくとも4個の炭素原子を含む重合したアルキレンオキサイドの少なくとも1つのブロックとを含むブロックコポリマーを含む組成物を提供する。
【0006】
本発明はまた、上記の水性組成物を製造する方法、ならびに、親水性活性剤を安定化する方法および親水性活性剤間の親和性を増大させる方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
詳細な説明
一態様において、本発明は、液体希釈剤(すなわち水性組成物)としての50質量パーセント超の水、親水性活性剤、および、重合したエチレンオキサイドの少なくとも1つのブロックと、アルキレンが少なくとも4個の炭素原子を含む重合したアルキレンオキサイドの少なくとも1つのブロックとを含むブロックコポリマーを含む組成物を提供する。
【0008】
水性組成物は、水を主な液体希釈剤として含む。すなわち水の量は、液体希釈剤の総質量の50パーセント超、好ましくは少なくとも70パーセント、より好ましくは少なくとも90パーセントである。一態様において、水は、約50〜約99.5質量パーセント、好ましくは約60〜約98質量パーセント、およびより好ましくは約65〜約95質量パーセントの範囲で存在する。水性組成物はまた、1種以上の有機希釈剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、高級アルコールまたはプロピレングリコールを含むことができるが、好ましくは、水のみが液体希釈剤である。
【0009】
本明細書で用いる用語「親水性活性剤」は、後述するように、所定の最終用途用の所定の水性組成物中で化合物が有用であり、そして化合物が典型的に使用される量で可溶性であることを意味する。好ましくは、活性剤の水中溶解性は、25℃および1気圧で、100グラムの蒸留水中、少なくとも0.1グラムであり、好ましくは少なくとも0.5グラムであり、より好ましくは少なくとも2グラムであり、最も好ましくは少なくとも5グラムである。脂溶性活性剤を伴う場合と異なり、ブロックコポリマーは、水性組成物中に組入れることができる親水性活性剤の量を増大させる可溶化剤としては作用しないことに留意すべきである。親水性活性剤は、上記のように水性組成物中ですでに可溶性である。
【0010】
本発明の組成物は、様々な液体または固体の親水性活性剤を含むことができる。親水性活性剤は、非イオン性またはイオン性であることができる。親水性活性剤は、重合体であってもよいが好ましくは単量体である。
【0011】
幾つかの態様において、本発明の組成物は、パーソナルケア組成物である。パーソナルケア組成物の例としては、ヘアケア組成物、スキンケア組成物、またはマウスケア組成物、例えばシャンプー、コンディショナー、ブリーチ組成物、カラーリング組成物、スキンケア用ローション、歯磨き剤、マウスリンスまたはホワイトニング剤が挙げられ、親水性活性剤は、例えば、水溶性抗炎症剤、殺微生物剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗脂漏性皮膚炎剤、抗にきび剤、角質溶解剤、抗ヒスタミン剤、麻酔剤、瘢痕剤、色素沈着改善剤、日焼け促進剤、人工日焼け剤、リフレッシング剤、アンチエイジング剤、血管保護剤、防虫剤、消臭剤、フケ防止剤、抜け毛防止剤、クレンジング剤、香料、サンスクリーン、酸化防止剤、フリーラジカル捕捉剤、植物もしくは藻類の抽出物または植物もしくは藻類からの抽出物の人工成分、水溶性タンパク、タンパク加水分解物、ペプチド、アルファ−ヒドロキシ酸、エモリエント剤、モイスチャライザー(例えばピログルタミン酸のナトリウム塩)、ピーリング剤(例えばグリコール酸またはビタミン)である。パーソナルケア組成物の公知の化合物である具体的な親水性活性剤は、例えば、サリチル酸、グリコール酸、クエン酸、またはヒアルロン酸等の酸;塩化ナトリウム、カフェイン誘導体等の塩;ピログルタミン酸のナトリウム塩、グリセロール、グリセロール誘導体等のモイスチャライザー;ジヒドロキシアセトン等のスキンホワイトニング剤;ビタミンC等の酸化防止剤またはベンゾフェノン−4等のサンスクリーン剤である。
【0012】
幾つかの態様において、本発明の組成物は医薬組成物である。医薬組成物としては、治療用途、診断用途、または予防用途のためのもの、例えば小分子、ペプチド、タンパク、抗体、ビタミン、ハーブ、およびミネラルサプリメントが挙げられる。医薬組成物としては、獣医用または人体用医療用途のものが挙げられる。親水性活性剤としては、水溶性治療剤、診断剤、ワクチン、ビタミン、ハーブおよびミネラルサプリメントまたは医薬組成物において公知のアジュバントが挙げられる。治療用組成物に含有させることができる具体的な親水性活性剤は、例えば、ビタミンC等のビタミンである。
【0013】
幾つかの態様において、本発明の組成物は、活性剤が洗浄剤、布帛柔軟剤、汚れ再沈着剤または他の従来の洗浄剤成分である液体洗浄組成物である。
【0014】
幾つかの態様において、本発明の組成物は、空気清浄剤、拭き取り剤またはクリーニング溶液等の家庭用製品である。
【0015】
幾つかの態様において、本発明の組成物は、例えば、農業的に有益な親水性活性剤を環境に制御放出させるための農業用組成物である。
【0016】
幾つかの態様において、本発明の組成物は、例えば不安定な活性剤を保護するための治療用組成物である。
【0017】
幾つかの態様において、本発明の組成物は指示薬として使用される。例えば、親水性の色素または顔料の活性剤がブロックコポリマーでカプセル化され、そして組成物の温度がブロックコポリマーの安定温度よりも高くなったときに色の変化が起こる。これに代えて、組み込まれた活性成分が酸化還元対または触媒の半分になることができ、これにより組成物は、所定温度よりも高く加熱されて活性剤が放出されるまで静的状態を保つ。
【0018】
水性組成物中の親水性活性剤の量は、幅広い範囲で変動することができ、そして主に水性組成物の所望の最終用途に左右され、そしてブロックコポリマーを独立に選択できる。親水性活性剤は、ブロックコポリマー不存在下でのその溶解性限界を超えない量で水性組成物中に含有される。
【0019】
ブロックコポリマーは、重合したエチレンオキサイド(「EO」)の少なくとも1つのブロックと、重合したアルキレンオキサイドの少なくとも1つのブロックとを含み、ここでアルキレンは少なくとも4個の炭素原子、好ましくは4〜10個の炭素原子を含む。
【0020】
炭素原子が少なくとも4個の好適なアルキレンオキサイドは1,2−ブチレンオキサイド、1,2−ペンチレンオキサイド、1,2−へキシレンオキサイド、シクロヘキシレンオキサイド、またはスチレンオキサイドである。炭素原子が少なくとも4個の最も好適なアルキレンオキサイドは、1,2−ブチレンオキサイドであり、これを以後「ブチレンオキサイド」または「BO」とする。
【0021】
ブロックコポリマーは、好ましくは、アニオン重合によって製造する。好ましいブロックコポリマーは、重合したエチレンオキサイドの1つまたは2つのブロックおよび炭素原子が少なくとも4個の重合したアルキレンオキサイドの1つまたは2つのブロックを含む。EO−BO−EOのトリブロックポリマーは、BOブロックが長さ6単位よりも短いという条件下で意図される。EOブロックはヒドロキシル単位末端であることが有利である。特にジブロックコポリマーは好適である。
【0022】
好ましい態様において、ブロックコポリマーは、エチレンオキサイドの少なくとも1つのブロックと、ブチレンオキサイドの少なくとも1つのブロックとを含む。従って、重合したエチレンオキサイドの10〜12単位および重合したブチレンオキサイドの10〜12単位を含むブロックコポリマーは特に好適である。
【0023】
重合エチレンオキサイドブロックの重量平均分子量は、一般的に、約100〜約2200、好ましくは約100〜約970、より好ましくは約200〜約900、および最も好ましくは約500〜約800である。
【0024】
少なくとも4個の炭素原子を含む重合アルキレンオキサイドブロックは、一般的に、重量平均分子量約300〜約3600、好ましくは約300〜約1600、より好ましくは約500〜約1500、および最も好ましくは約700〜約1300を有する。
【0025】
ブロックコポリマーの総重量平均分子量は、好ましくは5800未満、より好ましくは2400未満、最も好ましくは2000未満である。
【0026】
重合したエチレンオキサイドの少なくとも1つのブロックおよび少なくとも4個の炭素原子を含む重合したアルキレンオキサイドの少なくとも1つのブロックを含むブロックコポリマー、ならびにこれらを製造する方法は当該分野で公知である。例えば、米国特許第5,587,143号(その全体を参照により本明細書に組み入れる)は、ブチレンオキサイド−エチレンオキサイドブロックコポリマーを開示する。同様に、J.Keith Harrisら,“Spontaneous Generation of Multilamellar Vescicles from Ethylene Oxide/Butylene Oxide Diblock Copolymers”,Langmuir 2002,18,5337−5342(その全体を参照により本明細書に組み入れる)は、エチレンオキサイド/ブチレンオキサイドジブロックコポリマーの水性溶液中の挙動を議論している。
【0027】
本発明の水性組成物は、好ましくは、組成物の総質量基準で約0.1〜約20質量パーセント、より好ましくは約0.5〜5質量パーセントのブロックコポリマーを含有する。カプセル化された親水性活性剤とブロックコポリマーとの質量比は、好ましくは約0.1〜約1000:1、より好ましくは約1〜約100:1である。
【0028】
得られる水性組成物は、少なくとも1週間の期間に亘って、殆どの場合では更に少なくとも1ヶ月の期間に亘って、そして、本発明の好適な態様では、更に少なくとも3ヶ月の期間に亘って一般的に安定であることを見出した。
【0029】
理論に拘束されることを望まないが、ブロックコポリマーは親水性活性剤をカプセル化し、これによりカプセル化された親水性活性剤をより安定な状態にするために有用であることが意図される。ブロックコポリマーによって単層または多層の小胞が形成されると考えられる。これらの実質的に安定な小胞は、質量基準で主に水中または水性溶液中で自己集合性のブロックコポリマーで構成される。水性組成物が過剰のブロックコポリマーを含む場合、水性組成物中に存在する親水性活性剤の量の一般的には30〜95パーセント、典型的には40〜50パーセントがカプセル化される。カプセル化は、以下の利点:水性溶液中の親水性活性剤の安定性の増大、親水性活性剤と水性組成物中の他の成分との親和性の増大、親水性活性剤を含む水性組成物が適用される基質(皮膚等)への影響の低減、および/または親水性活性剤の環境への制御放出、のうち1つ以上を有する。
【0030】
上記のブロックコポリマー中にカプセル化された親水性活性剤を含むカプセルは、一般的に、直径約0.05〜約50マイクロメートルを有する。カプセルの粒子サイズは、所望の場合超音波処理または他の公知の手順によって左右できる。
【0031】
本発明は、組成物への追加の成分を意図する。例えば、カプセル化効率は、ブロックコポリマー中の親水性活性剤のカプセル化後に追加の水溶性含有成分を水性組成物の外部水相に添加することによって更に改善できる。例えば、プロピレングリコールを水性組成物に添加することによりカプセル化効率が改善されることを見出した。ミネラルオイルを添加することもまた、小胞の安定性の改善およびカプセル化効率の改善を与える。
【0032】
同様に、意図される用途に応じ、本発明の組成物は、当該分野で公知の種々の他の成分を含んでもよい。
【0033】
一態様において、本発明の好ましい用途は、水溶性化合物の水性配合物中での安定化、例えば、酸化に対する安定化である。例えば、ビタミンCが、水性パーソナルケア組成物中で上記ブロックコポリマー中にこれをカプセル化することにより安定化できることを見出した。パーソナルケア組成物中で使用されるスキンホワイトニング剤であるジヒドロキシアセトンが、水性組成物中で上記ブロックコポリマー中にこれをカプセル化することにより安定化できることを見出した。
【0034】
他の態様において、本発明は、水性配合物中の2つの化合物(このうち少なくとも1つが親水性活性剤である)の親和性を改善する。2つの化合物の親和性は、上記ブロックコポリマー中に親水性活性剤をカプセル化することによって改善できる。例えば、CARBOPOL(商標)ポリマーは、ローション用の増粘剤として一般的に使用されるアクリル酸の架橋ポリマーである。これらの増粘特性は、ナトリウム−2−ピロリドンカルボキシレート等の塩がローション中に導入されると劇的に低下することが周知である。ナトリウム−2−ピロリドンカルボキシレートは一般的に用いられるヘアケア製品用およびスキンケア製品用のモイスチャライザーである。ナトリウム−2−ピロリドンカルボキシレートを上記ブロックコポリマー中にカプセル化することにより、ローションの粘度を以下に示す実質的な程度に維持できる。
【0035】
本発明の水性組成物は、親水性活性剤を上記のブロックコポリマーと水性希釈剤中でブレンドする工程を含むプロセスで製造できる。全てのブレンド型が意図されるが、親水性活性剤をカプセル化する上記ブロックコポリマーの閉構造を形成するのには穏やかな撹拌で一般的に十分である。ブレンド温度は、幅広い範囲で変動でき、便宜的には例えば室温が挙げられる。
【0036】

以下の例は、例示の目的のみであって、本発明の範囲の限定を意図するものではない。全てのパーセントは特記がない限り質量基準である。
【0037】
例1
溶液中の水溶性化合物のカプセル化は、以下の手順で評価できる。水溶性蛍光色素Eosin Yを蒸留水中に溶解させて0.035質量パーセント溶液を調製する。約10gのこの溶液を、EO11BO11と規定される、重合エチレンオキサイド約11単位および重合ブチレンオキサイド約11単位の0.2gのジブロックコポリマーに添加する。溶液とEO11BO11ブロックコポリマーとを撹拌する。
【0038】
平面重畳光(plane-polymerized light)による試験は、多層小胞(これはこの手順において色素溶液の一部をカプセル化する)の形成(フォーメーション)を検出できる。水相中の残存色素を除去するために、分散体をカチオン交換レジンと混合する。平面重畳光を用いた試料の再試験により、多層小胞がなお損なわれていないことを確認できる。最後に、テトラヒドロフランを用いて多層小胞を崩壊させて明瞭なピンク色外観の透明溶液を形成し、直ちに放出された色素が交換レジン工程の間多層小胞中に存在したことが確認される。
【0039】
例2
ローション中の水溶性化合物のカプセル化は、以下の手順によって評価できる。
【0040】
1質量パーセントのブロックコポリマーEO11BO11中にカプセル化された100ppmのビタミンC;
0.5質量パーセントの乳化剤GLUCAMATE(商標)SSメチルグルコシド誘導体(CFTA/INCI指定メチルグルコースセスキステアレート);
1.5質量パーセントの乳化剤GLUCAMATE(商標)SSE−20メチルグルコシド誘導体(CFTA/INCI指定PEG−20メチルグルコースセスキステアレート);
4質量パーセントのミネラルオイル;
0.2質量パーセントの増粘剤Carbomer 940(Noveonから商品名CARBOPOL(商標)940で市販にて入手可能);
0.3質量パーセントのトリエタノールアミン;および
残部の水
を含むローション配合物を準備する。
【0041】
交差偏光顕微鏡を用い、Maltese Crossパターンが観察された場合には、ブロックコポリマーによる小胞のフォーメーションが示される。
【0042】
以上の手順に実質的に従い、Maltese Crossパターンが観察された。
【0043】
例3
溶液中の更に別の水溶性化合物のカプセル化を以下の手順によって評価できる。ジヒドロキシアセトン(DHAとしても公知である)はサンレス日焼け製品中の含有成分として主に用いられる。L−リシンとジヒドロキシアセトンとの反応により、暗茶系色が得られる。この色変化を手順の指示薬として用いる。
【0044】
0.2質量パーセントのジヒドロキシアセトンを含む水性組成物を調製する。水基準で1質量パーセントのEO11BO11ブロックコポリマーを添加して組成物を振る。MWCO透析バッグ(Spectrum Laboratory,Rancho Dominguez,CA)を介して組成物をろ過し、カプセル化されていないいずれのジヒドロキシアセトンもろ過によって除去する。
【0045】
試料の総質量基準で24質量パーセントのL−リシンを、ろ過された組成物の第1の試料に添加する。ジヒドロキシアセトンがブロックコポリマー中にカプセル化される場合には、茶色への感知できる色変化は起こらない。
【0046】
試料の総質量基準で9質量パーセントのL−リシンおよび11質量パーセントのエタノールを、ろ過された組成物の第2の試料に添加する。エタノールは、EO11BO11ブロックコポリマー小胞を崩壊させるという効果を有する。茶系色の外観は、ジヒドロキシアセトンがEO11BO11ブロックコポリマー小胞中にカプセル化されたこと、そして小胞の崩壊時に直ちに放出されることを示す。
【0047】
以上の手順に実質的に従い、ジヒドロキシアセトンは、重合エチレンオキサイドのブロックと重合ブチレンオキサイドのブロックとを含むブロックコポリマー中にカプセル化されていることが観察された。第1のろ過された組成物へのL−リシンの添加から2時間後、組成物は無色を維持した。第2のろ過された組成物へのL−リシンの添加から2時間後、組成物は茶系色を発現し、これはジヒドロキシアセトンがEO11BO11ブロックコポリマー小胞中にカプセル化されていたことを示す。
【0048】
例4
溶液中のカプセル化効率は、以下の手順によって評価できる。EO11BO11小胞中にカプセル化されたLOWACENE Red−80色素を含む水性組成物は、水を、水の質量基準で50ppmのRed−80色素および1質量パーセントのEO11BO11とブレンドすることによって調製する。LOWACENE Red−80色素は有機水溶性塩である。カプセル化の程度は、溶液中の電子伝導性の関数として測定できる。LOWACENE Red−80色素の電子伝導性を較正して、カプセル化された色素のパーセントおよび伝導性と相関する定量値を与える。LOWACENE Red−80色素がブロックコポリマー小胞中にカプセル化されている場合、伝導性は低下する。伝導性測定の低下から、ブロックコポリマー小胞のカプセル化効率を算出できる。
【0049】
以上の手順に実質的に従い、以下の結果が得られた。表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
試料2について、カプセル化効率は37パーセントであった。すなわち水性組成物中のLOWACENE Red−80色素の総量の37パーセントがカプセル化された。試料3においてEO11BO11中にカプセル化されたRed−80色素を含む水性組成物に0.5パーセントのプロピレングリコールを添加することにより、カプセル化効率は70パーセントに増大した。同様に、EO11BO11中にカプセル化されたRed−80色素を含む水性組成物に0.5パーセントのミネラルオイルを添加することにより、カプセル化効率は65パーセントに増大した。
【0052】
例5
溶液中の水溶性化合物の酸化は、以下の手順により評価できる。100ppmのL−アスコルビン酸(ビタミンC)を含む3つの水性組成物を調製する。第1の組成物を調製するために、100ppmのビタミンCを水中に溶解させる。第2の組成物を調製するために、水の質量基準で1質量パーセントのEO11BO11ブロックコポリマーを水中で撹拌して小胞を形成する。小胞形成後、100ppmのビタミンCを組成物に添加し、よって、ビタミンCはEO11BO11ブロックコポリマー中にカプセル化されていない。第3の組成物を調製するために、100ppmのビタミンCを水中に溶解させ、水の質量基準で1質量パーセントのEO11BO11ブロックコポリマーを添加し、そして組成物を撹拌して、ビタミンCをカプセル化するEO11BO11ブロックコポリマー小胞を形成する。3つの組成物を50℃のオーブン内に1ヶ月間置いてビタミンCの耐酸化性を評価する。ビタミンCが酸化される場合、350nmのUV光を吸収するデヒドロキシアスコルビン酸が形成される。ビタミンC自身は350nmのUV光を吸収しない。UV光吸収度基準で、酸化されたビタミンCのパーセントを評価できる。
【0053】
以上の手順に実質的に従い、以下の結果が得られた。表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
3つの組成物各々についての、ビタミンCの総質量基準での酸化されたビタミンCのパーセントは、カプセル化されたビタミンC(試料7とされる)の受けた酸化が表2に列挙する他の試料よりもかなり少なかったことを示す。
【0056】
例6
水中の架橋増粘剤の水溶性化合物の粘度を低下させる塩は、以下の手順によって評価できる。3つの組成物:1)0.5質量%のCARBOPOL(商標)2020(中和され、残部は水)、2)0.5質量%のCARBOPOL(商標)2020(中和されたもの)、0.1質量%のPCAナトリウム、および残部が水、ならびに3)0.5質量%CARBOPOL(商標)2020(0.1質量%のPCAナトリウムおよび0.1質量%のEO11BO11ブロックコポリマーで中和、残部は水)を形成する。全てのパーセントは水の質量基準である。各組成物の粘度は、温度24℃でBrookfield LV粘度計を用いて測定する。
【0057】
CARBOPOL(商標)ポリマーは、ローション用の増粘剤として一般的に使用されるアクリル酸の架橋ポリマーである。ローション配合物中に塩が導入される場合に増粘特性が劇的に低下することは周知である。ナトリウム−2−ピロリドンカルボキシレート(PCAナトリウム)塩は、ヘアケア製品用およびスキンケア製品用に一般的に用いられるモイスチャライザーである。
【0058】
以上の手順に実質的に従い、以下の結果が得られた。表3に示す。
【0059】
【表3】

【0060】
表3に示すように、ナトリウム−2−ピロリドンカルボキシレートをブロックコポリマーEO11BO11中にカプセル化することにより、試料10とされた配合物の粘度を、塩を含まない試料8と比べて十分な程度に維持できる。
【0061】
例7
1質量パーセントのブロックコポリマーEO11BO11の不存在下または存在下の5質量パーセントのグリコール酸を含む水性組成物の皮膚刺激は、以下の手順で評価できる。
【0062】
10人のパネリストの前腕の背部上に溶液を適用し、3インチの面積に均一に塗り広げて、約10分間腕の上に乗せたままにする。一方の腕には、5質量パーセントのグリコール酸を含む水性溶液A)が適用され、他方の腕には、5質量パーセントのグリコール酸と1質量パーセントのブロックコポリマーEO11BO11を含む水性溶液B)が適用され、パネリストには溶液の組成を開示しない。次いで、いずれの腕でより灼熱感が少ないかを尋ねることにより、いずれの腕がより刺激を感じるかを決めるようパネリストに依頼する。以上の手順に実質的に従って、以下の結果が得られた。全てのパネリストが、溶液B)が適用された腕でより灼熱感が少ないことを示した。よって、5質量パーセントのグリコール酸のカプセル化は、いずれの皮膚刺激作用も低減すると思われる。
【0063】
本発明は、本明細書に具体的に開示されおよび例示される態様に限定されないことが理解される。本発明の種々の改変は当業者に明らかであろう。そのような変更および改変は添付の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなくなされることができる。
【0064】
更に、各限定範囲は、範囲の全てのコンビネーションおよびサブコンビネーション、更にその中に含まれる具体的な数値を包含する。加えて、本明細書で引用または記載した各特許、特許出願および公開公報の開示は参照によりこれらの全部を本明細書に組み入れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体希釈剤としての50質量パーセント超の水、
親水性活性剤、および
重合したエチレンオキサイドの少なくとも1つのブロックと、アルキレンが少なくとも4個の炭素原子を含む重合したアルキレンオキサイドの少なくとも1つのブロックとを含むブロックコポリマー
を含む組成物。
【請求項2】
重合したアルキレンオキサイドの少なくとも1つのブロックが、重合したブチレンオキサイドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ブロックコポリマーが、重合したエチレンオキサイド10〜12単位と重合したブチレンオキサイド10〜12単位とを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
活性剤とブロックコポリマーとが組合された後に添加される、プロピレングリコールまたはミネラルオイルの少なくとも1種を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
親水性活性剤が、パーソナルケア剤、医薬剤、洗浄関連剤、クリーニング剤、農業用剤、指示薬または触媒としての活性を有する成分である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
親水性活性剤が、ビタミン、塩または酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
親水性活性剤の水中溶解性が、25℃および1気圧で100グラムの蒸留水中少なくとも0.1グラムである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
親水性活性剤の水中溶解性が、25℃および1気圧で100グラムの蒸留水中少なくとも2グラムである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
親水性活性剤とブロックコポリマーとの質量比が約0.1〜約1000:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
親水性活性剤とブロックコポリマーとの質量比が約1〜約100:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
組成物質量の約0.1〜約20質量パーセントのブロックコポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
組成物の総質量基準で約0.5〜約5質量パーセントのブロックコポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
ブロックコポリマーの重量平均分子量が2000未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
重合したエチレンオキサイドのブロックの重量平均分子量が200〜900である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
組成物中の液体希釈剤が実質的に水のみである、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
水が約50〜約99.5質量パーセントの範囲で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
水性希釈剤中で親水性活性剤をブロックコポリマーとブレンドすることを含む、請求項1に記載の水性組成物を製造する方法。
【請求項18】
親水性活性剤を、重合したエチレンオキサイドの少なくとも1つのブロックとアルキレンが少なくとも4個の炭素原子を含む重合したアルキレンオキサイドの少なくとも1つのブロックとを含むブロックコポリマーと、水性希釈剤中でブレンドすることによって、ブロックコポリマー中の親水性活性剤の所定パーセントをカプセル化することを含む、水性組成物中の親水性活性剤を安定化する方法。
【請求項19】
親水性活性剤を、重合したエチレンオキサイドの少なくとも1つのブロックと、アルキレンが少なくとも4個の炭素原子を含む重合したアルキレンオキサイドの少なくとも1つのブロックとを含むブロックコポリマーと、水性希釈剤中でブレンドすることによって、ブロックコポリマー中の親水性活性剤の所定パーセントをカプセル化することを含む、成分の少なくとも1つが親水性活性剤である水性組成物の2つの成分の親和性を改善する方法。

【公表番号】特表2010−501676(P2010−501676A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525710(P2009−525710)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/076292
【国際公開番号】WO2008/024703
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】