説明

水晶発振回路

【課題】回路構成が簡単で、起動信号の入力から安定した発振の定常状態になるまでの時間を短縮した水晶発振回路を提供する。
【解決手段】水晶発振回路1は、外付けした水晶振動子2と、帰還抵抗3と、水晶振動子2の発振振幅を増幅させるインバータ6を備え、その入力端Aに、起動信号によって所定時間オン動作して前記入力端Aの電位を下げるトランジスタ9からなるスイッチング素子を設け、このトランジスタ9は、起動信号が入力するとモノパルスを発生するモノパルス発生回路10によって、モノパルス信号が出力されている間オン動作するよう制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶発振回路は、水晶振動子の発振振幅を増幅させる増幅回路(インバータ)を備え、その入力端は、発振停止時には電源電圧に固定され、起動信号が与えられると、入力端は電源電圧から切り離されて、徐々に発振が開始される。水晶発振回路は入力信号を必要とせず、発振条件さえ満たしていれば、徐々に発振するのであるが、入力端の電位が定常状態の電位レベルにまで下がるのに時間がかかり、安定動作に達するまでには長時間を要するのが一般的である。
【0003】
従来においても、電源投入後の発振開始から安定した発振までの起動時間の短縮を図ったものとして、水晶発振子の両端に、互いに位相の異なるクロック信号を一定時間与えて、水晶振動子の励振を促進することが提案されている。(特許文献1)
【特許文献1】特開平11−284438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述した改良提案では、発振回路が待機状態にあるときでもクロック信号を生成する回路やクロック信号をカウントするカウンタなどを必要とするので、回路構成が複雑になるという不都合がある。本発明は、この不都合を解消した水晶発振回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、起動信号入力前には電源電圧と同レベルにある入力端の電位を、起動信号の入力時に、一時的に接地方向に下げて、定常状態になるのを促進するもので、具体的には、本発明の請求項1に係る水晶発振回路は、例えば水晶振動子を外付けし、この水晶振動子の発振振幅を増幅させる増幅回路を備えた水晶発信回路において、この水晶発振回路の入力端に、起動信号によって所定時間オン動作して前記入力端の電位を下げるスイッチング素子を設けたものである。
【0006】
また、本発明の請求項2に係る水晶発振回路は、上述のスイッチング素子を、水晶発振回路の入力端と接地間に挿入されたトランジスタで構成し、このトランジスタは、起動信号が入力するとモノパルスを発生するモノパルス発生回路によってオンオフ制御されるよう構成したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る水晶発振回路によれば、起動信号の入力時に水晶発振回路の入力端の電位を一時的に下げることにより、起動信号が入力して発振を開始してから発振動作が安定する定常状態になるまでの時間を短縮することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態を、図1に示す概略的な回路図に基づいて説明する。水晶発振回路1は、外付けした水晶発振子2と、帰還抵抗3と、この帰還抵抗3と直列に挿入し、水晶発振回路1の待機時にはオフ状態で、起動信号が入力するとオン状態になるトランスファゲート回路4と、前記帰還抵抗3と前記トランスファゲート回路4の接続点と電源との間に挿入し、水晶発振回路1の待機時にはオン状態で、起動信号がゲートに入力するとオフ状態になるMOSトランジスタ5と、反転増幅回路であるインバータ6と、発振動作安定用のキャパシタ7,8とからなる。
【0009】
水晶発振回路1の入力端Aと接地間には、NMOSトランジスタ9を挿入し、このNMOSトランジスタ9のゲートには、起動信号が入力するとモノパルス信号を出力するモノパルス発生回路10の出力端を接続している。図2はモノパルス発生回路10の構成を示し、DFF(ディレイフリップフロップ)11と、AND回路12と、インバータ13,14とからなる。DFF11の入力端子Dには電源電圧が入力し、DFF11の入力端子CとAND回路12の一方の入力端に起動信号が入力し、また、DFF11の入力端子CLにはインバータ14からのクリア信号が入力する。さらに、DFF11の出力端子Qから、起動信号あるいはクリア信号の入力に応じてなされる出力は、AND回路12の他方の入力端に入力し、AND回路12の出力は、NMOSトランジスタ9に出力されるとともに、インバータ13に入力する。
【0010】
続いて、上述した水晶発振回路1の動作を説明する。水晶発振回路1の待機状態においては、MOSトランジスタ5がオン状態にあって、電源電圧が帰還抵抗3を介して入力端Aに与えられるが、トランスファゲート回路4はオフ状態にあり、帰還路が形成されないので発振は開始しない。起動信号が入力すると、MOSトランジスタ5はオフとなって水晶発振回路1は電源電圧から切り離されるとともに、トランスファゲート回路4がオン動作して帰還路が形成され、発振が開始する。
【0011】
この時、起動信号はモノパルス発生回路10にも入力し、DFF11の出力端Qから「H」が出力される。これによって、AND回路12の両入力端に「H」が入力し、前記AND回路12は「H」を出力する。この出力はNMOSトランジスタ9をオンさせ、これによって水晶発振回路1の入力端Aの電位は下降する一方、各インバータ13,14を介してクリア信号としてDFF11の入力端子CLに入力し、出力端子Qの出力は「L」となる。これによって、AND回路12の出力も「L」となり、前記NMOSトランジスタ9はオフとなる。すなわち、モノパルス発生回路10のAND回路12から出力されるモノパルス信号は、DFF11に起動信号が入力してからクリア信号が入力するまでの時間出力されて、この時間だけNMOSトランジスタ9がオンされる(図3参照)。
【0012】
NMOSトランジスタ9がオフになると、水晶発振回路1の入力端Aの電位の下降も停止し、通常の発振動作が継続されて、従来よりも早く安定した定常状態で発振する。発振動作が定常状態になるまでの時間は、従来の約1/3である。
【0013】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、例えば、スイッチング素子はNMOSトランジスタ9に限らないが、入力端Aの電位を下げるための通電時間の制御を考えると、モノパルス発生回路10とMOSトランジスタとの組み合わせが好適であり、MOSトランジスタはN型に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】水晶発振回路の概略的な回路図。
【図2】モノパルス発生回路の概略的な回路図
【図3】起動信号とモノパルス発生回路の出力との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0015】
1 水晶発振回路
2 水晶振動子
3 帰還抵抗
4 トランスファゲート回路
5 MOSトランジスタ
6 インバータ
7,8 キャパシタダイオード
9 NMOSトランジスタ
10 モノパルス発生回路
11 DFF
12 AND回路
13,14 インバータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶振動子の発振振幅を増幅させる増幅回路を備えた水晶発振回路において、
この水晶発振回路の入力端に、起動信号によって所定時間オン動作して前記入力端の電位を下げるスイッチング素子を設けた
ことを特徴とする水晶発振回路。
【請求項2】
スイッチング素子は水晶発振回路の入力端と接地間に挿入されたトランジスタからなり、このトランジスタは、起動信号が入力するとモノパルスを発生するモノパルス発生回路によってオンオフ制御されることを特徴とする請求項1記載の水晶発振回路。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−318398(P2007−318398A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−145050(P2006−145050)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(390009667)セイコーNPC株式会社 (161)
【Fターム(参考)】