説明

水流交絡を使った皮革シート材の形成

再生した皮革繊維及び合成繊維を混合したウェブ(4)を水流交絡することにより皮革繊維シートを作成する。合成繊維は溶融可能な複合繊維である。この複合繊維は交絡を行う前に加熱されて、皮革繊維を支持する網目状構造を溶融し形成する。皮革繊維ウェブ(4)の表面一面にティッシュペーパー(1a)のシート1枚が置かれ、水流交絡のジェット(16)がティッシュペーパーを通してウェブへと当てられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水流交絡(hydroentanglement)またはスパンレース加工(spunlacing)として知られている方法を特に使用して皮革繊維からシート材を形成することに関する。
【背景技術】
【0002】
先願であるWO 01/94673(PCT/GB 01/02451)は、不用な皮革繊維(waste leather fibres)から高品質の再生(reconstituted)皮革シート材を製造するのに水流交絡またはスパンレース加工を用いることに関して述べている。水流交絡を行うジェット(jets)は、特殊なスクリーン(screen)を介して皮革繊維のウェブ(web)へ高圧で当てられる。皮革繊維はウェブの表面で即座に交絡を行う傾向があるため、スクリーンを用いない場合はスクリーンを用いた場合と同程度の深い浸透を得ることはできない。そのためにさらに深い交絡をすることは妨げられていたが、スクリーンを用いることによりジェットの深い浸透が可能となった。
【0003】
不用な皮革を分解して得られた皮革繊維は、通常の水流交絡のプロセスで用いる繊維よりおおむね短く細かい。そのためスクリーンによる拘束作用がある場合でも、繊維がジェットによって洗い流されるのを防ぐという課題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その課題を解決するため、先願WO 03/048437 (PCT/GB 02/05381)では、内側コアよりも低い融点を持つ外層を有する人工の複合繊維(bicomponent)を使用することを提案している。これらの複合繊維は基になる皮革繊維に混合されて、ウェブを形成する。ウェブは加熱され、複合繊維は交差部で互いに融合して、ウェブ内に網目状構造を形成する。
【0005】
水流交絡時にはこの網目状構造が、細かく短い皮革繊維が位置を変えないよう留め置くため、高圧のジェットは繊維のボディへ深く浸透することができる。よって、皮革製品に求められる比較的厚い複数の層を交絡することができる。
【0006】
複合繊維の網目状構造を採用することにより、高圧ジェットを使用して深い交絡を達成することが可能である。こ手法(procedures)は、繊維が分散するのを避けるために最初は低圧のジェットを用いる従来の水流交絡の手法とは対照をなしている。皮革繊維では著しく即座に水流交絡が行われる、且つ、従来の手法では内部の繊維の交絡を妨げる十分に交絡された層が表面に形成される。従って、この従来の手法を皮革繊維に用いるのは適切ではない。
【0007】
しかし、結合した繊維からなる内部の網目状構造を用いるときの1つの問題点は、これが最終製品の皮革のような手触りを失わせることがある、ということである。
【0008】
手触りに顕著な影響を及ぼさないですむほど網目状構造が、十分に実質のないものであれば、特に繊維が短い場合は、高圧ジェットは皮革繊維を浸食しやすくなる。WO 01/94673(PCT/GB 01/02451)に述べられている方法を用いて、比較的長い皮革繊維を製造することができるが、水流交絡を行う前にそのような皮革繊維を均一に集積(even laying)する必要がある。そのため従来の空気集積機器(air laying equipment)を用いたのでは生産が遅くなることもある。WO 01/94673(PCT/GB 01/02451)に述べられているように、最初に高圧ジェットを当てる間に生じる繊維の浸食は、繊維の表面上にスクリーンを使用することにより防ぐことができる。しかし、スクリーンの固体部分(solid parts)に当たる水の割合がかなり大きいため、水流交絡のエネルギーを消耗する。
【0009】
最終製品における複合繊維の網目状構造による影響を最小限に抑えるときのさらに1つの問題点は、このような網目状構造は構造的に弱いため、皮革繊維と複合繊維から作られたウェブを製造条件のもとでリール(reel)から確実に繰り出し、水流交絡のプロセスへと供給することが困難なこともある、ということである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、交絡を行うエネルギーを過度に損失することなく、最終製品の性能を過度に損なわせる内部の網目状構造を使用することなく、十分に深い交絡が達成可能な皮革繊維を交絡することにより皮革シート材を形成する方法を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、薄いウェブの場合でも、確実に取り扱うことができ、しかもリールから繰り出すことができて、水流交絡のプロセスへと供給することができる強化された皮革繊維のウェブを形成可能にすることである。
【0012】
従って本発明によれば、皮革が基になる繊維(leather base fibres)と、溶融可能な外層を備えた添加合成繊維(additional synthetic fibres)とから主としてなる混合繊維(mixture of fibres)からシート材を形成する方法であって、
繊維から1つのウェブを形成するステップと、
添加合成繊維が交差部で互いに融合して、ウェブ内に網目状構造を形成するように、添加合成繊維の外層を溶融させるために加熱するステップと、
網目状構造によって拘束されている基になる繊維を交絡させるためにウェブに水流交絡を行うステップとからなり、
ウェブの少なくとも1つの表面から交絡が行われる前に、ティシュ材(tissue material)が上に少なくとも1つの表面にあてられていることを特徴とする方法を提供する。
【0013】
このようにすると、ティシュは外部スクリーン(external screen)として作用することができ、交絡中に皮革繊維が浸食されるのを抑制する。従って、皮革繊維が交絡中に浸食されやすい比較的短く細い繊維であっても、ウェブ内部に最小限の網目状構造さえあれば、良好な交絡を達成することができる。上記に述べたスクリーンにはありえることだが、ティッシュには比較的実体がないので、交絡中のエネルギーの大きな消耗を引き起こすような大きな遮蔽作用(shielding action)を生じさせることはない。従って、ティッシュ以外の外部スクリーンは完全に除外することができる。とは言え、もし望むのであれば、限定されたまたは低減された範囲で、または水流交絡のジェットによって生じた表面のラインをマスキング(masking)するような別の目的のために、外部スクリーンを追加的に使用してもよい。
【0014】
ティッシュ材(tissue material)は、薄くて微細な多孔質シート材であることが特に重要である。その多孔質シート材は、機械で取り扱われるとき、例えば送りローラ等を使用するとき、容易に分解することのないくらい十分な強度を有する。また、繊維ウェブに抑止効果、または持続効果を付与するためにその繊維ウェブ上に置かれたときは、湿った状態であってもその構造健全性(structual integrity)を保持することができる。しかし、その多孔質シート材は、例えば従来の空気集積技術(air-laying techniques)を用いて空気集積できるように比較的軽量である。また、多孔質シート材は多孔質シート材の下にある皮革繊維を水流交絡するための十分なエネルギーを有する従来の水流交絡の水流ジェットの局所的な貫通力(penetration)に対して、大きな抵抗を与えないように、そして好ましくは、従来の水流交絡の水流ジェットの衝突下で交絡の手法が行われたときには実質的にすべて崩壊するような比較的開口した、または開口可能な多孔の弱い構造的な構成を有する。
【0015】
一般的には、ティッシュ材はティッシュペーパーでもよい。特に木パルプ繊維からできたティッシュペーパーも可能である。しかし、他の天然繊維、及び/または合成繊維からできたティッシュペーパーも可能である。(木パルプ繊維の代替として、または追加として)。ティッシュペーパーは通常は不織布であり、40g/m2未満の重量を有し、好ましくは30g/m2未満の重量を有する。一般的には、その種のティッシュペーパーは25g/m2または21g/m2未満の重量を有し、好ましくは15〜25g/m2または17〜21g/m2の範囲である。また、ティッシュペーパーは「湿潤強さ(wet strength)」を有する種類が好ましい。この点に関して、完全に不織木パルプ繊維から作られたティッシュペーパーの場合は、繊維は水素結合によりともに保持されている。従って湿った状態において、それらの結合は切断され、ペーパーは分解される。「湿潤強さ」を有するティッシュペーパーの場合は、水によって容易には分解されない繊維内部の結合を得るために、少ない割合で添加物が組み込まれている。ポリマー材料の例として、ポリアミノアミド(polyaminoamide)(ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂PAE(a polyamide epichlorohydrin resin PAE))等を少量組み込むことが広く行われている。そのようなポリマー材料は繊維の交差部で集塊し(agglomerate)ており、繊維を結合させるための共有繊維(covalent fibre)を作っている。そのような結合は強度のすべて、または大部分を提供するというより、むしろティッシュの強度に貢献している。
【0016】
好ましくは加熱ステップの前にティッシュをウェブの表面にあてて、追加の溶融性の繊維、または追加の複合繊維がティッシュと結合できるようにする。そうすれば、水流交絡中にティッシュが分離するのを防ぐことができる。さらにそのような結合は水流交絡を行う前にウェブを強化するのを助けることになり、その結果、保管中及び製造中にリールを確実に取り扱うことができるようになる。
【0017】
ティッシュで覆われた混合ウェブ(composite web)の表面に、細かな複数の水流ジェットを高圧で当ててもよい。この複数のジェットは、ティッシュを貫通し、その下にある皮革繊維を水流交絡するのに十分なエネルギーを持っている。
【0018】
ジェットの直接パス(path)の部分のティッシュは、水流交絡後に破壊されることもあるが、ジェットが別のラインに沿って作用する別の部分のティッシュは、水流交絡がさらに進むまでそのまま残っている。これらの作業が行われる間に、ティッシュはずぶぬれ状態になり、特に木パルプ製のティッシュはかなり弱くなっている。しかしこのときまでに、ティッシュの保護機能はもはや必要とされない段階にまで、皮革繊維の水流交絡は進行している。ティッシュ材からなる繊維は、基になる繊維のマトリックス(matrix)中へと拡散し、最終製品の不可欠な一部分となる。ティッシュは薄く、ティッシュを含む繊維が混合ウェブ内に占める割合は小さいため、最終製品の中ではティッシュ繊維は目立たなくなる。WO 01/94673 (PCT/GB 01/02451)に述べられている金属製のスクリーンとは異なり、ティッシュ製の「スクリーン」は皮革繊維をジェットからかなりの量遮蔽することなく、事実上すべての水流交絡のエネルギーはウェブを強固にするために利用される。
【0019】
本発明の方法の交絡は、好ましくは多重のパス(multiple passes)の液体(特に水)の高圧ジェットを使用して実施されるのが好ましい。これらの特性についての詳細は、WO 01/94673 (PCT/GB 01/02451)を参照されたい。
【0020】
追加される合成繊維は、人口の複合繊維でもよい。ウェブは複合繊維の外層を溶融する加熱手段を通して進めることができる。そうすれば、複合繊維は繊維の交差部で融合し、ウェブ全体にわたって3次元の網目状組織(three dimentional network)を形成する。これらの特性についての詳細は、WO 03/048437 (PCT/GB 02/05381)を参照されたい。
【0021】
WO 01/94673 (PCT/GB 01/02451)とWO 03/048437 (PCT/GB 02/05381)において述べられているように、ウェブに1つ以上の織物補強材(fabric reinforcement)を組み込んでもよい。ウェブ内の中ほどの位置に、織物補強材を配置してもよい。繊維の小さな隙間の中へと繊維を送り込むためには、水流交絡を行うジェットはウェブの厚さの半分より少し遠くに到達する必要がある。しかし、ある製品の用途によっては、一方の表面のより近くに織物補強材を置くのが好ましいこともある。そうすることにより、反対側の表面側がより厚くなり、ジェットはさらに遠くまで浸透させなければならない。そのような場合(おおむね、厚手の製品の場合)、中心にある繊維に比較的薄い混合層を水流交絡させてから、次に予め固くした層に別の層(複数の層)を水流交絡させることにより、ジェットが浸透しなければならない距離を減少させることができる。いずれの場合にも、ティッシュで覆われた表面にジェットをあてる。ジェットによりその表面は十分に乱され、先に作られた層の中へ、後に続いて行われる水流交絡によって次に作られる層から繊維が送り込まれる。この多層化手法(multiple layering procedure)により、複数の表面にスクリーンの多段適用を必要とする従前の方法と比較すると、水流交絡できる全体的な厚さの上限を約25%増加することができる。
【0022】
さまざまなティッシュが使用可能である。プロセスへのさまざまなティッシュの適合性は、水流交絡を試行することにより決定できる。特にコストを下げるため、ティッシュは大量生産された軽量のペーパーティッシュがよい。湿潤強さと水流交絡のジェットによる浸透の容易さとの適切なバランスを有するこのような材料は、おむつ(diapers)やナプキン(napkins)の裏打ちをするために広く用いられている。また、空気集積または水流交絡のプラント(plants)の多孔質搬送ベルト(porous carrier belts)を通して空気と水が流れるのを妨害しないくらい、ティシュは十分に多孔質でなければならない。湿潤強さは、下に置かれる皮革繊維が満足のいく水流交絡を行う機会を得る前にティッシュが崩壊しないことを確実なものとするのに、十分なものでなければならない。しかし、湿潤強さは、水流交絡を行うジェットがティッシュを通して浸透して下にある皮革繊維に到達するのを妨げるほどに十分であってはならない。このような特性の満足すべき組み合わせは、2000l/m2/sの多孔度と約30N/mの湿潤引張り強度を有する18g/m2のオープングレードおむつ用ティッシュ(open grade diaper tissue)に見られる。
【0023】
このようなパルプが基になるティッシュの乾燥強度は、普通は湿潤引張り強度よりもはるかに大きい。従って、作られたウェブは通常、水流交絡を行う以前のプロセスの中で確実に取り扱うために求められる適切な強さ以上の強さを有することができる。
【0024】
より強度及び重量のあるティッシュを使用することは技術的に可能である。しかし、これは費用を高くし、最終製品中に残る非皮革繊維の量を多くする。より軽量のティッシュを使用することには許容範囲があるが、通常は市販されているティッシュで適切なものは18g/m2が限界である。木パルプ以外の繊維からできたティッシュを使用することも可能であるが、これは非常に高価であり、また通常は繊維の長さがジェットの浸透にとって障害になることが多い。
【0025】
追加される合成繊維として、さまざまな複合繊維が使用可能である。この複合繊維が皮革繊維の重量に占める割合は、例えば4%と同じくらい低い。
【0026】
特に経済的で、しかも皮革のような手触りの優れた互換性を備えた複合繊維は、溶融性の低いポリエチレンの外層(a low melt polyethylene outer layer)を有する4mmまたは6mmで、1.7dtexのポリプロピレン(polypropylene)である。このような繊維は空気集積された製品を結合するのに広く使用されている。ただし、好ましい非常に低い投与量(dosage)、つまり皮革繊維の重量の約4%までの投与量しか使用されていない、というわけではない。複合繊維の投与量(dosage)を4%未満に減少させることは可能である。制限するための要因は、計量機器の精度と、皮革繊維全体におけるばらつきの均等度、繊維本体にティッシュをしっかり固定するためのティッシュへの結合である。このような固定材(anchorage)は、水流交絡のジェットを通過して次に続くどのパスにも持ちこたえるのに十分なほど皮革繊維がよく交絡する前に、ティッシュが皮革繊維から洗い流されるのを防ぐのに好ましい。4%を超えて複合繊維(例えば20%以上)を使用することは可能ではあるが、最終製品の皮革のような感触を悪くすることがある。WO 03/048437 (PCT/GB 02/05381)に示されているように、複合繊維の含有率が高いほど最終製品の表面のひび割れを防ぐのに役立つ。この役目と手触りの間で、うまくバランスをとることが望ましい。
【0027】
補強のために、皮革繊維と複合繊維に追加して他の繊維を組み込んでもよい。非常に短い皮革繊維を使用する場合(例えば、ハンマーミリング(hammer milling)によって製造された皮革繊維の場合)、このような補強が必要となることがある。適切な人工補強繊維は、紙製品及び木パルプ製品の強度を増すために考案された繊維である(例えば、6mm1.7dtexの捲縮加工が施された(crimped)テンセル繊維(Tencel fibres))。補強繊維の投与割合は、最終製品の必要条件に応じて広範囲に変わる。短い皮革繊維を使用する靴への応用の場合は、ジェットによって生じる溝(grooves)により引き起こされた表面のクラックは、皮革繊維の重量の約20%を追加することにより防ぐことができる。通常、この段階での投与の割合は、最終製品の仕上げ表面を取り囲む繊維層にとってのみ必要である。仕上げ表面から離れた複数の層は、補強繊維の投与量はそれより低くてもよく、または含まなくてもよい。内部の補強繊維についても、上記に述べたように使用することができる。
【0028】
上記に述べたとおり、多くの混合ウェブは最終製品の必要条件に応じて、特にその全体的な重量と厚さに応じて、多重層によって固く結びつけることができる。一般的に、乾燥繊維とティシュの総投入量は、約530g/m2であるが、(例えば)これは600g/m2を超えて増加させてもよい。これら重量のある基材を作成するには、第1のウェブと第2のウェブを固結した後に第3のウェブを追加し、それから第3のウェブが第2のウェブと固結し且つ合体するように第3のウェブを水流交絡すれば良好な固結(consolidation)が得られる。このような場合、通常ウェブの重量はそれぞれ同じになるように調整されるが、このことは必須というわけではない。最終製品の必要条件と製品の厚さに応じて、補強繊維のどちらか一方の側面、または両方の側面の上に2以上の層を作ることができる。あるいは、補強繊維の1方の側面に1つのみのウェブ、またはそれぞれの側面に1つずつのウェブを作ることもできる。ウェブの総重量は300g/m2未満になるようにすることができる。また、いかなる補強繊維も含まない多重層を使用することもできる。
【0029】
水流交絡の順序及び圧力、直径やジェットの間隔のようなジェットのパラメータに関しては、最終製品の必要条件に依存する。そして、これらは試行錯誤によるテストから確立することができる。一般的な指針としては、薄手のウェブ(特に最終製品の仕上がりの表面をその次に提供する側では)の場合は、上記のようにジェットによって生じる深い跡(furrows)を低減するために圧力を低くすることもできるが、最大限に強固にする場合には、200bar以上の高圧を用いてもよい。あるいは、WO 01/94673に記載されているタイプの表面スクリーンを当てることにより、最終のパスを通過する間に溝ができるのを避けることができる。こうすることで複数のラインは連続的な溝というよりむしろ不連続な複数の窪みに分断され、結果的に目立ちにくいものとなる。強固さの度合いも、複数のウェブ層の厚さとジェットの下を層が通過する速度に依存する。厚手の構造の場合は速度は遅くなり(例えば、5m/min)、薄手の構造の場合は通常それより速い速度で(例えば、10〜16m/min以上)固結することができる。
【0030】
水流交絡を効率化するための機器には、ジェットヘッド(jet heads)を通過したウェブを運ぶための水平な搬送ベルトが含まれる。しかし、WO 01/94673(PCT/GB 01/02451)に記載されているように、よりコンパクトな配置になるように、ジェットヘッドは多孔ドラムの周囲に様々な角度で取り付けることができる。このような場合、本発明の方法を用いれば、外部スクリーンがなくてもよいのでレイアウトはかなり簡素化できる。WO 01/94673(PCT/GB 01/02451)とWO 03/048437(PCT/GB 02/05381)に記載されているように通常は、ジェットから出てウェブの表面で跳ね返った水は、収集用のトレイを使用して集めるのが望ましい。また通常は、搬送ベルトの下にある真空吸引(vacuum extraction)による採集を十分に行い、ジェットから出てウェブを通った水の少なくともある程度は吸い上げるのが望ましい。皮革繊維のもつ細かさという特質(fine nature)は水の流れを妨げる。そしてこのような真空度は600mbarである必要がある。これは従来の作業で使用したものよりはるかに高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
関連のある図面を参照して、本発明を一例に用いて説明する。
【0032】
図1は、本発明による方法を実施するときに使用する装置の最初のステージにおける、形態の一例を示す概略図であり、融合した複合網目状構造を有する繊維ウェブを作るための商業プラントの主要な操作原理を示している。
【0033】
図2は、補強繊維でそのようなウェブを結合し、それにより作られたサンドイッチ(sandwich)を水流交絡するための装置のさらに先のステージを示している。
【0034】
図1を参照すると、不用な皮革繊維には1.7dtexの複合繊維4%と3.0dtexの標準ポリエステル繊維5%とが混合されている。複合繊維と標準ポリエステル繊維はどちらも一定の6mm長にカットされている。
【0035】
約2000l/m2/sの多孔率を持った、18g/m2の重量の連続した長さの多孔質ペーパーティッシュ1aは、駆動されている多孔質ベルト1の上に載せられる。ベルト1の下にある真空ボックス(vacuum box)3によりティッシュ1aの上に繊維が引き寄せられながら、駆動されている多孔質ベルト1の上のティッシュ1aの上に混合繊維は少なくとも1組の多孔質ドラム2によって約200g/m2の割合で一様に散布される。
【0036】
ティッシュ1aとともに一様に置かれた繊維で作られたウェブ4は、多孔質ベルト6及び多孔質ベルト7へと公知の真空コンベヤ5によって運ばれる。ボックス8から出る熱い空気は多孔質ベルト7及び多孔質ベルト6、そしてウェブ4を通って吹き抜けて、吸引ボックス9に回収されながら、多孔質ベルト6及び多孔質ベルト7はウェブを収容して、部分的に圧縮する。熱い空気の温度は複合繊維の外側シースを溶融するのに十分であり(内側コアではない)、繊維の交差部で繊維をともに融合する。
【0037】
複合繊維の交差部で溶融したシースが十分に固まる前に、溶融した複合繊維からなる3次元の網目状構造によって支えられている未結合の皮革繊維とポリエステル繊維とを含むより目の詰んだウェブを形成するために、ニップローラ10によってウェブを圧縮してもよい。交差部の凝固により、運搬及び/または保管するためリール11に巻かれるウェブに十分な強度を網目状構造は提供する。すべてこれらのステップは、おむつ(diapers)のような空気集積されたパルプ製品を製造する市販の機器を使用して実行される。
【0038】
3つのウェブ4a、ウェブ4b、ウェブ4cは、各1個の重量は異なって形成されている。1つのウェブ4aの重量は150g/m2である。他のウェブ4b及びウェブ4cの重量は190g/m2であり、これは繊維をより大量に追加することにより達成される。
【0039】
図2を参照すると、リール12から繰り出された繊維補強材4dと一緒にリール11a及びリール11bから繰り出された2つのウェブ4a及びウェブ4bが、ローラ13によってともに運ばれ、多孔質ベルト14上に送られる。ウェブ4a及びウェブ4bとその間にある繊維4dは、複合サンドウィッチ(composite sandwich)15を構成する。複合サンドウィッチ15は、水流交絡を行っているジェット16を通過してベルト14によって運ばれる。ジェットから出た水は、複合サンドウィッチ15と多孔質ベルト14を通過して真空ボックス17によって吸い込まれる。WO 01/94673(PCT/GB 01/02451)に詳細が記載されているように、複合サンドウィッチ15の表面から跳ね返った水はトレイ18の中に集められて、運び去られる。
【0040】
固結したウェブ構造は、同じ多孔質ベルト14及びさらに続く複数のベルトに載せられて、複数の連続する水流交絡のステージ(stage)を通過する。こうすることにより、ウェブ構造体の両面にジェットを当てることができる。さらに続くそのようなベルトのうちの1つのベルトに来たとき、第3のウェブ4cが繰り出され、おもて面を形成するウェブ4aとは反対側にあるウェブ4bの水流交絡された表面上に、ティッシュ面(tissue face)を最上部にして第3のウェブ4が置かれる。できた多重層はウェブ4bがウェブ4aにしっかりと付着するように、さらに複数の水流交絡のステージを通過する。
【0041】
3つのウェブ4a、ウェブ4b、ウェブ4cと繊維4dを固結するために、さらに詳細には以下のように水流交絡の手法が適用される。
【0042】
最初の固結:ウェブ4bの表面のティッシュが最上部になるようにして、ウェブ4aの表面のティッシュをベルトに接触させ、繊維4dはウェブ4aとウェブ4bの間に挟まれて、ウェブ4a、補強繊維4d及びウェブ4bは8m/minで進む多孔質搬送ベルトの上へとリールから送られる。200barの圧力で、ジェットの孔の中央から別のジェットの孔の中央までの間隔を0.7mmとし、その直径130ミクロンの水流交絡を行う複数のジェットを具備する第1のジェットヘッドの下を、3つの層は通過する。第2のジェットヘッドの下でこの手順を繰り返すことにより、固結はさらに増す。最終のレベルに近づくまで、そしてウェブ4bの繊維が繊維4dの隙間に十分に入り込み、ウェブ4a内の繊維と結合(リンク)するまで、これらの手順によりウェブ4b内の繊維を水流交絡する。このようにして複数の層は構造(fabric)にしっかりと付着し、固結した最初の多重ウェブ構造体を形成する。
【0043】
仕上がりおもて面の固結:作成された最初のウェブ構造体は第2の多孔質搬送ベルトへと導かれ、ウェブ4aの表面のティッシュが最上部になるように第3のジェットヘッドの下を通過する。ジェットの直径と間隔は、先のヘッドと同様である。
【0044】
ウェブ4bと比較するとウェブ4aは軽量であり、ジェットによって形成される溝の深さを限定する必要があるためにジェットの圧力は120barより低い。さもなければ、製品の仕上がりの外観に悪影響を与えることもある。先に通過した複数のジェットによって生じたジェットラインの山と谷をぼかし、最終製品の表面の仕上がりをさらに向上させるために、80bar及び50barという漸次低くなる圧力でさらに2つのジェットヘッドの下を、最初のウェブ構造体は通過する。
【0045】
追加ウェブと最終固結:十分に固結された最初の多重ウェブ構造体は、ウェブ4bのティッシュ面が最上部になるようにして、第3の搬送ベルトへと導かれる。ウェブ4cのティッシュ面を最上部にして、ウェブ4cがウェブ4bの表面へと繰り出される。ウェブ4cと最初のウェブ構造体は、第1のジェットヘッドと同様のジェットタイプ及び同様の高圧のジェットヘッドの下をさらに通過する。さらに続くジェットヘッドにおいて、この手順を繰り返す。最終製品の裏面の仕上がりにラインをあまり残さないようにするために、仕上がりおもて面4aについて述べたように、十分に固結した構造体はさらに、2つの非常に低圧のジェットヘッドを通過してもよい。仕上がりおもて面については、ジェットが低圧なので、ほとんど綿密な固結は与えられない。低圧にする主要な目的は、表面の外観を向上させ、最終製品において表面にクラックを生じさせるジェットによって生じる溝ができる可能性を軽減することである。
【0046】
ジェットによって生じる溝が完全にない仕上がりおもて面が要求される製品については、WO 01/94673(PCT/GB 01/02451)に記載されているような多孔質スクリーンを、ジェットとウェブ4aの表面との間に置いてもよい。こうすることにより、ジェットによって生じるライン状の溝を多数の個々の窪みへと変えることができる。一般的に、この方が最終製品では目立ちにくい。そのような場合には通常は、先に述べたようにジェットの圧力を120barから200barへと増加させるのが望ましい。これは、スクリーンによって妨害されるために失われる水流交絡のエネルギーを補うためである。
【0047】
十分に固結したウェブ構造体を水流交絡した後に、最終製品の手触りと耐久性を向上するために油乳剤(oil emalsions)、顔料(pigments)、ポリマー(polymers)を染みこませてもよい。これらの手入れは、おおむね従来の皮革製造作業のとおりである。皮革のような最終仕上がりを提供するために、それらの手入れのあとでおもて面と表面の両方のコーティングに乾燥、バフ仕上げ(buffing)を行う。
【0048】
先に述べたように、このプロセスにより靴の製造に適した素材を得ることができる。本発明はこれに限定されるものではなく、このプロセスを他へ応用するための皮革素材を形成するのに使用してもよい。
【0049】
もちろん本発明は、一例に取り上げた上記の実施例に限定されるものではないことを理解されたい。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮革が基になる繊維と、溶融可能な外層を備えた添加合成繊維とから主としてなる混合繊維からシート材を形成する方法であって、
前記繊維から1つのウェブを形成するステップと、
前記添加合成繊維が交差部で互いに融合して、前記ウェブ内に網目状構造を形成するように、前記添加合成繊維の前記外層を溶融させるために加熱するステップと、
前記網目状構造によって拘束されている前記基になる繊維を交絡させるために前記ウェブに水流交絡を行うステップとからなり、
前記ウェブの少なくとも1つの表面から前記交絡が行われる前に、ティシュ材が前記少なくとも1つの表面上にあてられていることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ティシュに前記添加繊維が結合するように、前記加熱するステップの前に前記ティシュが前記ウェブの前記表面にあてられている請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数の高圧水流ジェットを使って、前記交絡が行われる請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のジェットの複数のパスが使用される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記添加合成繊維が、複合繊維である請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ウェブが、織物補強材を組み入れる請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ティシュが、木パルプ製ティシュペーパである請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ティシュペーパが、15g/m2から25g/m2の重量である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ティシュペーパが2000l/m2/sの多孔度と30N/mの湿潤引張強度を有する18g/m2のオープングレードのおむつ用ティシュである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記添加合成繊維が、前記皮革繊維の重量の4%までを構成する請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
仕上げにおいて少なくとも1つのスクリーンにおける前記1つのパス、または複数のパスが、前記複数のジェットと前記ウェブとの間に位置する請求項4またはこれに従属する請求項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の方法によって形成された皮革シート。

【公表番号】特表2008−501868(P2008−501868A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−514119(P2007−514119)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002136
【国際公開番号】WO2005/118932
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(502435742)イー−レザー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】