説明

水溶性多糖類の製造方法

【課題】植物繊維質素材を原料として、簡便で効率的に食品工業での機能を有する水溶性多糖類を得る新しい方法を提供することを課題とした。
【解決手段】植物繊維質原料の懸濁液に高温・高圧の水蒸気を直接導入するという加熱を行うことにより、物理的なシェアと熱の効果により効率的な抽出を行う工程を含むことを特徴とする水溶性多糖類の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物素材から、食品工業で有用な水溶性の多糖類を製造する方法に関するものである。詳しくは植物素材の懸濁液を高温・高圧の水蒸気を導入するという加熱をすることにより水溶性の多糖類を抽出・製造する方法に関し、さらには酸性蛋白の安定化機能等食品分野での機能性に優れた有用な水溶性多糖類を効率的に抽出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物由来の水溶性多糖類は食物繊維として利用されているのを始め、食品工業においての機能剤として幅広く利用されている。これら多糖類の植物性繊維質原料として、果実類、穀類、イモ類、豆類、油糧種子植物等が知られている。
【0003】
植物性原料から水溶性多糖類を抽出、製造する技術として従来より、原料に加水しこれを酸性、または中性、或いはアルカリ性において加熱する方法が知られている。例えば、タンパク質の等電点付近のpHで130℃以下の条件で、水溶性多糖類を抽出する方法がある(特許文献1)が、この方法では抽出時間が通常60分以上の長時間を要し、さらに短時間で効率的な抽出法が望まれている。
【0004】
また、穀類や豆類の外皮を130℃から160℃に加熱し、水溶性のヘミセルロースを得る方法(特許文献2)も知られているが、この方法では、温度を上げていって歩留を上げようとすると、着色や低分子化が進んでくるため問題がある。
【0005】
また抽出剤として、ヘキサメタリン酸を使用して80℃以上で、水溶性多糖類を抽出する方法(特許文献3)、が開示されているが、このような抽出剤を使用すること自体食品への利用には問題がある。
【0006】
さらに、高温・高圧水に接触させることにより短時間で抽出を行う方法(特許文献4,5)も知られているが、非常に高圧のため、設備が大掛かりになることと、所望の品質や機能を有する多糖類を得るためには抽出条件の制御が困難となるという問題がある。
【0007】
【特許文献1】特開平03−236759号公報
【特許文献2】特許第2544634号
【特許文献3】特許第3213648号
【特許文献4】特開2002−112724号公報
【特許文献5】特開2002−105101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、植物繊維質原料から、簡便な方法で、短時間で効率よく、分解反応が過剰に進むことなく、食品工業で有用な機能を有する品質の良い、水溶性多糖類を製造する方法を提供することである。なお食品工業で有用な機能の主な例としては、酸性蛋白食品の安定化機能が上げられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、如上の点に鑑み鋭意研究した結果、植物繊維質原料を含む懸濁液に高温・高圧の水蒸気を吹き込み加熱することにより、水溶性多糖類の抽出を容易ならしめる、という知見を得、本発明を完成するに至った。これは蒸気の導入時の物理的なシェアにより、植物繊維質原料の細胞壁を効率的に破壊され、水溶性多糖類の抽出を容易ならしめる、という効果を生じていると考えられる。また、水蒸気導入による加熱を複数回行うこと、及び加熱の後にこの原料懸濁液を瞬間的に減圧して冷却する操作を行うことにより爆砕効果が得られ、さらに効率的な水溶性多糖類の抽出が行えるという知見を得、発明を発展させることが出来た。なお減圧の操作は通常大気圧まで開放する方法が用いられる。
【0010】
すなわち本発明は、植物繊維質原料の懸濁液に高温・高圧の水蒸気を導入して加熱する工程を含むことを特徴とする水溶性多糖類の製造方法である。また高温・高圧の水蒸気を導入するという加熱を複数回行う水溶性多糖類の製造方法であり、本発明はまた、植物繊維質原料として大豆を用いる水溶性多糖類の製造方法である。
【0011】
本発明はさらに植物繊維質原料の加熱時のpHを3〜7とし、かつ加熱温度を140℃以上とする上記記載の水溶性多糖類の製造方法であり、導入する水蒸気の圧力が6Kg/cm2以上である、水溶性多糖類の製造方法である。
【0012】
さらに本発明は植物繊維質原料を複数回の加熱を行う際に、複数回の加熱の合計加熱時間が30分以内で行う水溶性多糖類の製造方法であり、複数回の加熱におけるいずれかの加熱の後に瞬間的に該原料懸濁液を減圧する工程を経ることを特徴とする水溶性多糖類の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、簡便な方法で、短時間で、酸性下での乳蛋白安定能等、高機能を持つ水溶性大豆ヘミセルロースを効率よく製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明において、原料として使用される植物素材は、りんごや柑橘類の果実皮、穀類や芋類、豆類、さらに菜種、パーム等油糧種子の搾油粕等も用いられる。中でも大豆原料で、特に大豆の子葉部分が好適であり、これを多く含む脱脂大豆やおからが特に適している。
【0016】
本発明では原料の懸濁液を加熱するため高圧の水蒸気を導入する。水蒸気導入の方法は特に限定されないが、加熱は出来るだけ短時間で効率的に行うことが望ましく、蒸気インジェクターを使用して原料の懸濁液に、高圧の水蒸気を連続的に吹き込んで加熱する方法が、目的温度まで瞬時に昇温できるので好ましい方式である。
【0017】
本発明では加熱の条件として、原料の植物材料を含む懸濁液に、高圧の水蒸気を吹き込み140℃以上で加熱する。この加熱操作は複数回行うことがより好ましい。本発明の場合、静置状態の反応容器を加熱していく方法に比べ、高圧の水蒸気を原料懸濁液に吹き込むので、急激なシェア(攪拌)がかかる。この現象により、植物細胞壁成分の物理的破壊が起こり、水溶性多糖類が溶出しやすくなり、抽出効果を高めることができる。従って、加熱を複数回行うことは抽出をより効率的に行う効果が期待できる。高圧の水蒸気について言えば、高温を得ることと、物理的なシェアの効果から水蒸気の圧力としてゲージ圧で6kg/cm2以上のものを用いるのが良い。圧力が低すぎると高温が得られないし、蒸気導入時のシェアが弱くなる。またあまりな高圧は装置的なコストが大きくなるし、抽出の制御も難しくなる。
【0018】
加熱後は冷却を行うが、この冷却方法については、本発明においては少なくとも一度は加熱後、瞬間的な減圧、特に瞬間的に大気圧まで減圧して冷却することが好ましい。本発明の140℃以上の加熱では、抽出装置内の圧力は、ほぼその温度における飽和蒸気圧程度の圧力になっており、この圧力から瞬間的な減圧、(通常大気圧まで減圧)することで爆砕効果による、植物細胞壁成分の物理的破壊が起こり、水溶性多糖類の抽出効果をより高めることができる。このように、大気圧まで減圧して冷却する操作は瞬間的に行うが、この瞬間的とは通常1秒もかからない程度である。本発明のような加熱操作を行えば背圧弁を通過した瞬間に圧力が開放され、大気圧まで減圧されるので1秒を超えるような時間にはならない。一方、一般的なプレートによる冷却では急激な圧力降下は起こらず、爆砕効果による水溶性多糖類の抽出効率を上げることはできない。
【0019】
このように、本発明では、水溶性多糖類をより効果的に抽出するために、加熱は複数回することがより有効であり、また、加熱後の冷却方法として、瞬間的に大気圧まで減圧する方法が特に有効である。この加熱と冷却の方法については、1回加熱する毎に冷却し、これを複数回行う方法、充分な冷却を経ずに複数回の加熱を行った上冷却し、再度加熱後冷却する方法、複数回加熱後、最後に冷却する方法がある。このように、加熱時の冷却のタイミングについては制限されないが、加熱後の少なくとも1回、瞬間的に大気圧まで減圧して冷却操作を行うことで大きな効果が得られる。また、複数回の加熱における加熱温度は同じ温度であってもよいし、段階的に温度を変えてもよい。上述の方法は、どれも水溶性多糖類の抽出効率を高めることができる手段であるが、中でも、1回加熱する毎に、瞬間的に大気圧まで減圧して冷却し、これを複数回行う方法が最も有効な手段である。
【0020】
加熱の温度は140℃以上で行われるが、好ましくは150℃以上、より好ましくは160℃以上で行うのが良い。加熱温度が140℃未満だと、抽出効果が低下し、短時間で目的の水溶性多糖類を効率的に抽出することはできない。また、加熱時の上限温度については特に限定されないが、加熱温度を上げていくと、分解反応が進みやすく、過剰な分解を抑制し、目的とする機能を有する多糖類を得る為には反応時間制御が厳しくなる。加熱温度が190℃を超えると水溶性多糖類の分解が進みすぎることがあり、これ以上の温度での加熱は好ましくない。
【0021】
加熱回数については特に限定しないが、通常3〜4回までで十分である。これ以上加熱回数を増やしても工程を増やすだけで、水溶性多糖類の抽出率を高める効果は低い。
【0022】
大気圧まで瞬間的に減圧して冷却する回数の上限については特に限定しないが、通常2〜3回までで十分である。
【0023】
抽出時のpHは3〜7で行われる。好ましくは4〜6である。抽出時のpHが3未満になると、酸による加水分解を受け易く、抽出される多糖類が低分子化して、高機能を有する水溶性多糖類を得ることが難しくなる。また、pHが7を超えると、原料素材に蛋白質が共存している場合、この蛋白質が分解して水溶性多糖類と一緒に溶出してしまい、多糖類純度が低下し、多糖類の溶液が白濁したり、分解されて生じた糖とアミノ酸とが反応して黒褐色に褐変してしまい品質が悪くなりがちである。
【0024】
加熱時間の合計は、30分以内で充分であるが、工業的に効率的な生産を行うためには20分以内、より好ましくは10分以内で行うと良い。時間が長くなれば、分解率が高くなり水溶性多糖類の抽出効率は向上するが、低分子化が進み、機能が低下するので好ましくない。当反応では、最低時間については特に限定しないが、水溶性多糖類の抽出量を充分得るためには、通常1分程度は必要である。
【0025】
水溶性多糖類の分子量については、どのような分子量であっても、ある程度の機能は得られるが、分子量が大き過ぎると粘度が高くなり、取り扱いが困難になるという欠点が出てくる。また分子量が小さ過ぎると、安定化機能が弱くなってしまう。分子量としては通常数千〜数百万のものが適切であり、好ましくは1万〜100万の範囲である。
【0026】
以下、実施例により本発明の実施態様を説明するが、これは例示であって本願発明の精神がこれらの例示によって制限されるものではない。なお、例中、部および%は何れも重量基準を意味する。
【実施例1】
【0027】
図1に示す反応装置において、原料タンク1中に、脱脂された乾燥おから1部に水14部を加え、塩酸でpHを5.0に調整した。このおからの懸濁液をポンプ7で、ホールディング管へ送液し、蒸気インジェクター11を使用して、圧力が7Kg/cm2の水蒸気を導入し、155℃まで瞬間的に加熱し、2.5分間ホールド後、再び蒸気インジェクター12を使用して、圧力が7Kg/cm2の水蒸気を導入し、165℃まで瞬間的に加熱し、2.5分間ホールド後冷却装置6で100℃以下に冷却し、反応液受入器5にスラリーを受入れた。得られたスラリーを遠心分離により分離し、上清液をエタノール沈殿処理後、沈殿物を乾燥し、水溶性多糖類を得た。
【実施例2】
【0028】
図1に示す反応装置において原料タンク1中に、脱脂された乾燥おから1部に水14部を加え、塩酸でpHを5.0に調整した。このおからの懸濁液をポンプ7でホールディング管に送液し、蒸気インジェクター11を使用して、圧力が7Kg/cm2の水蒸気を導入し、155℃まで瞬間的に加熱し、2.5分間ホールド後、再び蒸気インジェクター12を使用して、圧力が7.0Kg/cm2の水蒸気を導入し、165℃まで瞬間的に加熱し、2.5分間ホールド後、瞬間的に大気圧まで減圧して冷却し、スラリーをタンク2で受け、ポンプ8により反応液受入器5にスラリーを受入れた。得られたスラリーを遠心分離により分離し、上清液をエタノール沈殿処理後、沈殿物を乾燥し、水溶性多糖類を得た。
【実施例3】
【0029】
図1に示す反応装置において原料タンク1中に、脱脂された乾燥おから1部に水14部を加え、塩酸にてpHを5に調整した。このおからの懸濁液をポンプ7でホールディング管に送液し、蒸気インジェクター11を使用して、圧力が7Kg/cm2の水蒸気を導入し、155℃まで瞬間的に加熱し、2.5分間ホールド後、瞬間的に大気圧まで減圧して冷却し、スラリーをタンク3で受けた。スラリーをポンプ9によりホールディング管に送液し、蒸気インジェクター13を使用して、圧力が7Kg/cm2の水蒸気を導入し、165℃まで瞬間的に加熱し、2.5分間ホールド後、瞬間的に大気圧まで減圧して冷却し、スラリーをタンク4で受け、ポンプ10により、反応液受入器5にスラリーを受入れた。得られたスラリーを遠心分離により分離し、上清液をエタノール沈殿処理後、沈殿物を乾燥し、水溶性多糖類を得た。
【0030】
〈比較例1〉
脱脂された乾燥おから1部に水14部を加え、塩酸にてpHを5に調整した。このおからの懸濁液をオートクレーブに入れ、165℃に加熱し、5分間ホールド後自然冷却した。得られたスラリーを再び、オートクレーブに入れ、165℃に加熱し、5分間ホールド後自然冷却した。得られたスラリーを遠心分離により分離し、上清液をエタノール沈殿処理後、沈殿物を乾燥し、水溶性多糖類を得た。
【0031】
〈比較例2〉
図1に示す反応装置において原料タンク1中に、脱脂された乾燥おから1部に水14部を加え、塩酸にてpHを5に調整した。このおからの懸濁液をポンプ7でホールディング管に送液し、蒸気インジェクター11を使用して、圧力が7Kg/cm2の水蒸気を導入し、130℃まで瞬間的に加熱し、10分間ホールド後、瞬間的に大気圧まで減圧して冷却し、スラリーをタンク3で受けた。スラリーをポンプ9によりホールディング管に送液し、蒸気インジェクター13を使用して、圧力が7Kg/cm2の水蒸気を導入し、130℃まで瞬間的に加熱し、10分間ホールド後、瞬間的に大気圧まで減圧して冷却し、スラリーをタンク4で受けた。この操作をさらにもう一度行い、反応液受入器5にスラリーを受入れた。得られたスラリーを遠心分離により分離し、上清液をエタノール沈殿処理後、沈殿物を乾燥し、水溶性多糖類を得た。
【0032】
〈比較例3〉
図1に示す反応装置において原料タンク1中に、脱脂された乾燥おから1部に水14部を加え、塩酸でpHを2.5に調整した。このおからの懸濁液をポンプ7でホールディング管に送液し、蒸気インジェクター11を使用して、圧力が7Kg/cm2の水蒸気を導入し、155℃まで瞬間的に加熱し、2.5分間ホールド後、蒸気インジェクター12を使用して、圧力が7Kg/cm2の水蒸気を導入し、165℃まで瞬間的に加熱し、2.5分間ホールド後冷却装置6で100℃以下に冷却し、反応液受入器5にスラリーを受入れた。得られたスラリーを遠心分離により分離し、上清液をエタノール沈殿処理後、沈殿物を乾燥し、水溶性多糖類を得た。
【0033】
結果を比較して以下に示す。
〔(1)水溶性多糖類の歩留〕
水溶性多糖類の歩留は、原料の固形量に対して得られた水溶性多糖類量により算出した。尚、表中のゲージ圧とは圧力計が示す圧力で、圧力計は大気圧を0MPaとした圧力表示になっている。
【0034】
【表1】

【0035】
実施例1のように、複数回の加熱を短時間で行うことにより、原料の固形量に対する水溶性多糖類の歩留は26%と、高歩留で得られた。また、実施例2、3のように、加熱後瞬間的に大気圧まで減圧して冷却することにより、さらに高歩留の水溶性多糖類が得られた。この実施例の操作は、圧力のデータが示すように、飽和蒸気圧より若干高い、極めて飽和蒸気圧に近い圧力で行う方法であることがわかる。圧力があまり高くなく、抽出条件としては温和な条件で、設備としても大掛かりなものにはならないので、簡便な方法である。さらに、実施例の方法から得られた水溶性大豆ヘミセルロースの分子量分布を分析したところ、従来の抽出方法と同様の分子量パターンであることが確認できた。一方、比較例1のようなオートクレーブ式の加熱方法では、加熱時間を延ばしたとしても、歩留は低くなった。比較例2のように、加熱温度が130℃と低い場合、本発明の加熱・冷却方法を用いても歩留はかなり低くなった。比較例3では、歩留は上がるが、分子量パターンを分析した結果、高分子の画分が分解し、かなり低分子化が進んでいることがわかった。
【0036】
〔(2)酸性下での乳蛋白安定性評価〕
酸性下での乳蛋白安定性評価は、特開平5-262802号に示される方法で行った。方法は以下の通りである。
【0037】
(ヨーグルトの調製)
水に脱脂粉乳を加え(21%)、加熱攪拌し、95℃で殺菌後冷却し、スターターとして市販のプレーンヨーグルトを接種し、38℃の恒温器中で醗酵させた。醗酵したヨーグルトを攪拌機を用いてカードを均質化した。その後、10〜15℃に冷却した。
【0038】
(安定剤溶液の調製)
水溶性ヘミセルロース2%溶液を加熱攪拌し(80℃、10分間攪拌)、その後25℃に冷却した。
【0039】
(酸性乳飲料の調製)
水に砂糖を加え、次いで上記のヨーグルトを加え、乳酸、クエン酸ナトリウム水溶液でpHを調整した。その後、ホモゲナイザー(150Kg/cm2)で均質化し、瓶詰め後冷蔵庫内で1週間保存した。それぞれの配合は、安定剤溶液、ヨーグルト、砂糖、及び水をそれぞれ、20、40、7、及び33%であった。結果を表2に示す。
【0040】
(表2)
No. 7日後の状態
――――――――――――――――――――――
実施例1 (−)
実施例2 (−)
実施例3 (−)
比較例3 (+)
―――――――――――――――――――――――
*酸性乳飲料の保存後の状態評価
(−): 分離せず安定。(+): 二層に分離
【0041】
実施例の方法で得られた水溶性多糖類は、酸性下での乳蛋白安定化能があり、高機能を持つことが確認された。
一方、比較例3のように低pHで抽出して得られた水溶性多糖類は低分子化が進み、酸性乳飲料の安定化能はなく、歩留は高くても、高機能を有する水溶性多糖類を得ることはできない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、水溶性多糖類の効率的な製造方法であり、特に食品産業での有益な機能が優れている水溶性多糖類の工業的に有利な製法を提供するものである。本発明により食品工業で有用な水溶性多糖類が効率よく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】多糖類の加熱・抽出の装置を示した説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物繊維質原料の懸濁液に高温・高圧の水蒸気を導入して加熱する工程を含むことを特徴とする水溶性多糖類の製造方法。
【請求項2】
高温・高圧の水蒸気を導入する加熱を複数回行う請求項1に記載の水溶性多糖類の製造方法。
【請求項3】
植物繊維質原料が大豆である請求項2記載の水溶性多糖類の製造方法。
【請求項4】
加熱時のpHが3〜7でかつ加熱温度が140℃以上である、請求項3記載の水溶性多糖類の製造方法。
【請求項5】
導入する水蒸気の圧力が6Kg/cm2以上である、請求項3記載の水溶性多糖類の製造方法。
【請求項6】
複数回の加熱の合計加熱時間が30分以内である請求項3に記載の水溶性多糖類の製造方法。
【請求項7】
複数回の加熱におけるいずれかの加熱の後に瞬間的に該原料懸濁液を減圧する工程を経ることを特徴とする水溶性多糖類の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−348089(P2006−348089A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−173201(P2005−173201)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(000236768)不二製油株式会社 (386)
【Fターム(参考)】