説明

水素供給装置

【課題】内燃機関の燃焼室において主燃料と共に燃焼させる水素を供給する場合に、内燃機関の始動時に速やかに供給用の水素の生成を開始できる水素供給装置を提供すること。
【解決手段】内燃機関1の燃焼室において主燃料と共に燃焼させる水素を供給する水素供給装置であって、燃焼時に水素を含む燃焼ガスとなる水素発生燃料を燃焼する水素生成手段3を備え、水素生成手段により燃焼された燃焼ガスに含まれる水素を燃焼室に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素供給装置に関し、特に、内燃機関の燃焼室において主燃料と共に燃焼させる水素を供給する水素供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関におけるCO2(二酸化炭素)の排出量の削減、および熱効率の向上のニーズが高まっている。熱機関の効率を向上させるためには様々な手法が存在するが、火花点火式の内燃機関においては、燃焼速度の向上と高圧縮比化が有効であることが知られている。しかしながら、燃焼速度の向上や高圧縮比化は、吸気の流速や混合気の自着火性による制限を受ける。ここで、水素は燃焼速度の向上や耐ノック性に優れているため、燃焼室に主燃料と共に水素を供給する方法は、内燃機関の熱効率の向上に有効である。しかしながら、水素は保管や搭載等が困難であるという問題がある。このため、水素そのものを搭載するのではなく、水素を生成して内燃機関に供給する技術が考案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、改質用燃料と内燃機関から排出される排気ガスとの改質用混合気を改質触媒により改質して、水素を含む改質ガスを生成する改質器を備える内燃機関が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−291901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のように改質用触媒により水素を生成させる場合、改質のために高温の環境や大きな体積が必要とされる。しかしながら、内燃機関の始動時に短時間で改質用の触媒を高温とすることは困難である。例えば、熱源として内燃機関の排気ガスの熱が利用される場合、内燃機関が始動されてから排気ガスの温度が上昇するまでには所定の時間を要するため、始動時にすぐに水素を生成させることが困難であるという問題がある。
【0006】
内燃機関の燃焼室において主燃料と共に燃焼させる水素を供給する場合に、内燃機関の始動時に速やかに供給用の水素の生成を開始できることが望まれている。
【0007】
本発明の目的は、内燃機関の燃焼室において主燃料と共に燃焼させる水素を供給する場合に、内燃機関の始動時に速やかに供給用の水素の生成を開始できる水素供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の水素供給装置は、内燃機関の燃焼室において主燃料と共に燃焼させる水素を供給する水素供給装置であって、燃焼時に前記水素を含む燃焼ガスとなる水素発生燃料を燃焼する水素生成手段を備え、前記水素生成手段により燃焼された前記燃焼ガスに含まれる前記水素を供給することを特徴とする。
【0009】
本発明の水素供給装置において、更に、前記水素生成手段による前記水素発生燃料の燃焼時の燃焼エネルギーを前記内燃機関の出力が伝達される駆動軸を駆動する動力に変換する変換手段を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の水素供給装置において、前記水素生成手段は、前記内燃機関に設けられた複数の気筒のうちの一部の前記気筒で前記水素発生燃料を燃焼し、前記変換手段は、前記一部の前記気筒における前記水素発生燃料の燃焼時の前記燃焼エネルギーを前記内燃機関の出力軸を回転させる回転エネルギーに変換することを特徴とする。
【0011】
本発明の水素供給装置において、前記変換手段は、前記燃焼ガスで駆動されて前記内燃機関に供給される吸気を過給する過給機を有していることを特徴とする。
【0012】
本発明の水素供給装置において、前記水素生成手段による前記水素発生燃料の燃焼時の燃焼エネルギーを前記内燃機関が搭載された車両で利用される電力に変換する発電機を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、内燃機関の燃焼室において主燃料と共に燃焼させる水素を供給する場合に、内燃機関の始動時に速やかに供給用の水素の生成を開始することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の水素供給装置の一実施形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1および図2を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、内燃機関の燃焼室において主燃料と共に燃焼させる水素を供給する水素供給装置に関する。
【0016】
前述したように、内燃機関に供給する水素の生成方法として、改質用燃料と内燃機関から排出される排気ガスとの改質用混合気を改質触媒により改質して、水素を含む改質ガスを生成する技術が考案されている。しかしながら、改質触媒により水素を生成させる場合、内燃機関の始動時に早期に水素の生成を開始することは困難であった。これは、水素を生成させるためには改質触媒を高温とする必要があるためである。
【0017】
本実施形態の水素供給装置では、改質触媒により水素を生成させることに代えて、アミン系燃料を燃焼させることにより水素を生成させる。アミン系燃料の燃焼により水素を生成させる場合、内燃機関の始動時に応答性よく速やかに水素の生成を開始することができる。これにより、内燃機関の始動時に速やかに水素を内燃機関の気筒に供給することができると共に、内燃機関の始動性を向上させることが可能となる。
【0018】
図1は、本実施形態に係る装置の概略構成図である。図2は、図1の要部拡大図である。
【0019】
図1において、符号1は、火花点火式のエンジン(内燃機関)を示す。エンジン1には、4つの気筒2、および後述するアミン系燃料燃焼装置3が設けられている。気筒2には、気筒2の内部を往復動可能なピストン4がそれぞれ設けられている。ピストン4は、コンロッド5を介してエンジン1のクランク軸(出力軸)6に接続されている。気筒2の図示しない燃焼室には、主燃料(例えば、ガソリン等の炭化水素系燃料や後述するアミン系燃料等)に加えて、以下に説明するように、アミン系燃料燃焼装置3で生成される水素を含む燃焼ガスが供給される。気筒2に供給される燃料(主燃料および水素)の燃焼エネルギーは、ピストン4およびコンロッド5によりクランク軸6の回転エネルギーに変換される。
【0020】
本実施形態のエンジン1には、アミン系燃料(水素発生燃料)を燃焼させて水素を発生させるアミン系燃料燃焼装置3が設けられている。アミン系燃料燃焼装置3は、本実施形態の水素生成手段および変換手段としての機能を有する。アミン系燃料は、例えば、アンモニアやヒドラジンなどであり、燃焼時に水素を含む燃焼ガスとなる。なお、アミン系燃料燃焼装置3で燃焼させる水素発生燃料は、アミン系燃料には限定されない。燃焼時に水素を含む燃焼ガスとなる燃料であれば水素発生燃料として用いることができる。
【0021】
本実施形態では、水素を含む燃焼ガスを気筒2に供給することにより、気筒2における熱効率の向上を図る。また、アミン系燃料燃焼装置3は、以下に説明するように、水素を発生させるのみならず、アミン系燃料を燃焼させる際の燃焼エネルギーをクランク軸6を回転させる回転エネルギーに変換する変換手段としての機能を有する。
【0022】
図2は、図1におけるアミン系燃料燃焼装置3付近の拡大図である。図2に示すように、アミン系燃料燃焼装置3は、気筒2(図1参照)と同様の構成を有し、かつ気筒2よりも小型の気筒32を有する。気筒32の内部には、気筒32の内部を往復動可能なピストン34が設けられている。ピストン34は、コンロッド35を介してクランク軸6(図1)と接続されている。ピストン34の上方には、燃焼室31が形成されている。気筒32には、燃焼室31にアミン系燃料を噴射する噴射弁36、および燃焼室31の混合気に点火する点火装置37が設けられている。噴射弁36には、図示しない燃料タンクからアミン系燃料が供給される。噴射弁36から燃焼室31に噴射されたアミン系燃料は、図示しない吸気通路から燃焼室31に導入される吸気と混合して混合気となる。吸気通路と燃焼室31が図示しない吸気弁により遮断された状態で点火装置37により混合気が点火されることで、アミン系燃料が燃焼する。
【0023】
エンジン1が搭載された車両(図示せず)には、車両各部を制御するECU(Electronic Control Unit)を有する制御部20が設けられている。噴射弁36および点火装置37は、制御部20に接続されており、制御部20によりそれぞれ制御される。
【0024】
アミン系燃料燃焼装置3では、アミン系燃料を高温で過濃燃焼させることにより水素を発生させる。制御部20は、燃焼室31の混合気におけるアミン系燃料の濃度を理論空燃比(理論当量比)よりも高濃度(リッチ)とするように、噴射弁36によるアミン系燃料の噴射量を制御する。燃焼室31内の混合気は、ピストン34の上昇により断熱圧縮されて高温となった状態で、点火装置37により点火される。このように、アミン系燃料が高温で過濃燃焼されることにより、高温の環境でアミン系燃料の燃焼が促進され、過濃燃焼により効率的に水素を発生させることができる。後述するように、制御部20は、アミン系燃料の燃焼条件、例えば、混合気におけるアミン系燃料の濃度を調節することにより、燃焼で発生する水素の量(燃焼ガスにおける水素濃度)を制御する。
【0025】
燃焼室31には、アミン系燃料燃焼装置3で発生した水素を含む燃焼ガスを各気筒2へ導く燃焼ガス通路7が接続されている。燃焼ガス通路7の一端部は、燃焼室31に接続されている。燃焼ガス通路7の他端部は、各気筒2に吸気を導入する吸気通路(例えば、吸気ポート)に接続されている。燃焼ガス通路7と燃焼室31との接続部には、燃焼ガス通路7を開閉する燃料弁33が設けられている。燃料弁33は、クランク軸6(図1)の回転と連動して開閉駆動される。燃料弁33は、アミン系燃料燃焼装置3における排気行程(アミン系燃料の燃焼後のピストン34の上昇過程)において開弁し、燃焼室31と燃焼ガス通路7とを連通する。燃料弁33が開弁すると、アミン系燃料の燃焼により発生した水素を含む燃焼ガスは、燃焼室31から燃焼ガス通路7を経て各気筒2へ流れる。なお、燃焼ガス通路7には、液体燃料除去ユニット8が設けられている。燃焼ガス中に含まれる液体燃料は、液体燃料除去ユニット8で除去される。本実施形態の水素供給装置は、アミン系燃料燃焼装置3、燃焼ガス通路7、および制御部20を含んで構成されている。
【0026】
各気筒2へ水素が供給され、気筒2内の混合気に水素が混合されることにより、気筒2における燃焼速度が向上する。また、水素は耐ノック性に優れているため、気筒2における高圧縮比化が可能となる。燃焼速度の向上と高圧縮比化により、エンジン1の熱効率を向上させることができる。水素が混合気に混合されると、混合気の比熱が低くなるため、エンジン1の燃費が向上する。また、本実施形態では、エンジン1に供給する水素として、水素そのものを搭載するのではなく、アミン系燃料の燃焼により水素を発生させるため、水素の搭載や保管に伴う問題を回避することができる。
【0027】
本実施形態の水素供給装置では、エンジン1の始動時に速やかに水素の生成を開始することができる。アミン系燃料の燃焼により水素を発生させる場合には、改質用触媒等により水素を発生させる場合に比べて、エンジン1の始動時に速やかに供給用の水素の生成を開始することができる。特に、本実施形態のアミン系燃料燃焼装置3では、ピストン34によりアミン系燃料の混合気が圧縮(断熱圧縮)されるため、混合気が高温となる。このため、エンジン1の始動時に速やかに混合気の燃焼を開始して水素を発生させることができる。
【0028】
また、本実施形態の水素供給装置は、単純な装置で容易に水素を生成することができる。燃料を改質用触媒により改質して水素を生成させる場合には、装置が複雑となり、大きな体積が必要となる。これに対して、本実施形態によれば、単純な装置により水素を生成することができ、設置スペースやコストを低減することができる。
【0029】
本実施形態の水素供給装置は、気筒2で燃焼される主燃料として、アミン系燃料が用いられる場合に特に有効である。アミン系燃料が主燃料として使用されるエンジン1では、炭化水素系燃料(例えば、ガソリン)が主燃料として使用される場合に比べて、CO2(二酸化炭素)の排出量が少ない。また、アミン系燃料は炭化水素系燃料と比較して比熱が小さいため、熱効率が高いという利点を有する。しかしながら、アミン系燃料は、炭化水素系燃料に比べて燃焼速度が遅いため、気筒2における燃焼速度を促進することが求められる。
【0030】
アミン系燃料を主燃料とするエンジン1に本実施形態の水素供給装置が適用される場合、気筒2の混合気に水素を添加して燃焼速度を向上させることができるだけでなく、エンジン1の始動性を高めることができる。始動時にアミン系燃料燃焼装置3で発生する高温の燃焼ガスが各気筒2に供給されることにより、気筒2の温度上昇を促進すると共に、燃焼速度を向上させてエンジン1の始動性を高めることができる。
【0031】
本実施形態では、エンジン1の運転条件により、アミン系燃料燃焼装置3において発生させる燃焼ガスの水素濃度が調節される。例えば、エンジン1の運転条件に基づいて、気筒2における燃焼速度をさらに向上させたい場合には、アミン系燃料燃焼装置3において発生させる燃焼ガスの水素濃度が高められる。この場合、制御部20は、燃焼室31の混合気におけるアミン系燃料の濃度をより高濃度とする。これにより、アミン系燃料燃焼装置3において発生する燃焼ガスの水素濃度が上昇し、より多くの水素が気筒2に供給される。よって、気筒2における燃焼速度が向上する。また、アミン系燃料燃焼装置3において、より高濃度の混合気が燃焼することにより、燃焼ガスの温度が高温となる。高温の燃焼ガスが気筒2に供給されることで、気筒2における燃焼性を向上させることができる。アミン系燃料燃焼装置3において発生させる燃焼ガスの水素濃度を高めると判定されるエンジン1の運転条件には、エンジン1の暖機時、高速運転時、および低負荷時などが含まれる。
【0032】
アミン系燃料燃焼装置3は、水素を発生させるのみならず、アミン系燃料を燃焼させる際の燃焼エネルギーをクランク軸6を回転させる回転エネルギーに変換する変換手段としての機能を有する。アミン系燃料を燃焼させる際の燃焼エネルギーは、ピストン34およびコンロッド35により、クランク軸6(図1参照)を回転させる回転エネルギーに変換される。すなわち、アミン系燃料燃焼装置3は、アミン系燃料の燃焼エネルギーをエンジン1の出力が伝達される駆動軸を駆動する動力に変換する。本実施形態では、このように、アミン系燃料から取り出した水素を気筒2に供給してエンジン1の熱効率を向上させるだけでなく、アミン系燃料の燃焼エネルギーを利用して駆動軸を駆動することで、車両の駆動力を向上させることができる。
【0033】
なお、本実施形態ではエンジン1が車両に搭載されるエンジンである場合について説明したが、これには限定されない。例えば、車両の駆動用以外の用途に用いられるエンジン1に本実施形態の水素供給装置が適用されてもよい。
【0034】
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態の変形例について説明する。
【0035】
上記第1実施形態では、アミン系燃料燃焼装置3は、気筒2とは独立して設けられていた。これに代えて、4つの気筒2のうち一部の気筒2がアミン系燃料燃焼装置3として構成されることができる。以下に、4つの気筒2のうち1つの気筒2がアミン系燃料燃焼装置3として構成される場合について説明する。以下の説明では、アミン系燃料燃焼装置3として構成される1つの気筒2を水素発生用の気筒2とする。
【0036】
この場合、水素発生用の気筒2で発生する燃焼ガスは、水素発生用の気筒2以外の気筒2へ導かれる。なお、水素を含む燃焼ガスが大気へ排出されることは好ましくないため、水素発生用の気筒2で発生する水素を含む燃焼ガスは、全量いずれかの気筒2へ導かれるように構成される。
【0037】
水素発生用の気筒2におけるアミン系燃料の混合気の濃度は、上記第1実施形態におけるアミン系燃料燃焼装置3における場合と同様に、理論空燃比よりも高濃度に調節される。
【0038】
(第2実施形態)
図3を参照して第2実施形態について説明する。第2実施形態については、上記第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0039】
上記第1実施形態では、エンジン1の各気筒2に供給する水素を発生させるために、気筒32でアミン系燃料が燃焼された。これに代えて、本実施形態では、水素を発生させる水素生成手段として、アミン系燃料バーナー(図3の符号21参照)が設けられている。なお、本実施形態のエンジン1は、上記第1実施形態のアミン系燃料燃焼装置3が設けられていないものであってもよい。
【0040】
また、上記第1実施形態では、アミン系燃料の燃焼エネルギーがクランク軸6を回転させる回転エネルギーに変換されたが、これに代えて、本実施形態では、アミン系燃料の燃焼エネルギーが、過給機(変換手段、図3の符号40参照)によるエンジン1の吸気の過給を通じて駆動軸を駆動する動力に変換される。また、本実施形態では、アミン系燃料の燃焼時の燃焼エネルギーを車両で利用される電力に変換する発電機(図3の符号23参照)が設けられている。
【0041】
図3は、本実施形態に係る装置の概略構成図である。
【0042】
図3において、符号21は、アミン系燃料を燃焼させるアミン系燃料バーナーを示す。符号40は、アミン系燃料バーナーから排出される燃焼ガスにより駆動される過給機を示す。過給機40は、コンプレッサー(圧縮機)41、タービン42、および回転軸43を有する。コンプレッサー41とタービン42とは同軸上に配置されており、回転軸43により連結されている。
【0043】
アミン系燃料バーナー21においてアミン系燃料の燃焼により発生する水素を含む燃焼ガスは、符号B1に示すように過給機40のタービン42に導かれる。タービン42は、アミン系燃料バーナー21においてアミン系燃料が燃焼(例えば、リッチ(過濃)燃焼)されることで発生する高温高圧の燃焼ガスのエネルギーにより駆動されて回転する。タービン42の回転と連動して、コンプレッサー41が回転し、吸気(空気)を圧縮する。コンプレッサー41に供給される吸気は、コンプレッサー41により圧縮された上で、符号A、および符号Cに示すように、アミン系燃料バーナー21、および各気筒2へ向けてそれぞれ供給される。
【0044】
各気筒2へ供給される吸気Cには、タービン42を駆動した後の燃焼ガスB2が合流し、最終的に各気筒2の吸気ポート(図示せず)へ流入する。過給機40によりエンジン1に供給される吸気が過給されてエンジン1の出力が向上することで、アミン系燃料の燃焼エネルギーが駆動軸を駆動する動力に変換される。
【0045】
本実施形態の車両には、モータ23が設けられている。モータ23は、発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されている。モータ23の回転軸25は、車両の駆動軸と連結可能に構成されており、回転軸25から駆動軸へ動力を伝達することができる。モータ23は、バッテリー24と接続されており、図示しないインバータを介してバッテリー24と電力のやり取りを行う。モータ23は、発電機として駆動されてバッテリー24を充電することができると共に、バッテリー24から電力の供給を受けて電動機として機能し、駆動軸を駆動することができる。なお、バッテリー24に充電される電力は、モータ23を駆動する以外にも、車両の各部で利用される電力として用いられることができる。
【0046】
過給機40の回転軸43とモータ23の回転軸25との間には、クラッチ22が設けられている。回転軸43の回転は、クラッチ22を介して回転軸25に伝達される。クラッチ22は、係合または解放することによって、回転軸43と、回転軸25との機械的な接続を断続する。クラッチ22を係合すると、回転軸43の回転が回転軸25に伝達され、モータ23が発電機として駆動される。一方、クラッチ22を解放すると、回転軸43と回転軸25との機械的な接続が切断される。モータ23で発電される電力が車両で利用されることにより、エンジン1に駆動されて発電するオルタネータの容量を低減させることが可能となる。
【0047】
上記第1実施形態の制御部20に代えて、制御部30が設けられている。制御部30は、クラッチ22と接続されており、制御部30によりクラッチ22が制御される。制御部30は、例えば、過給機40による過給をモータ23による発電よりも優先するか否かに応じてクラッチ22の係合および解放の状態を制御する。過給機40による過給を優先させる場合には、クラッチ22が解放される。これにより、過給機40による過給圧が上昇する。一方、過給機40による過給を優先させない場合には、クラッチ22が係合される。これにより、モータ23が駆動されて発電し、バッテリー24への充電がなされる。
【0048】
また、制御部30は、アミン系燃料バーナー21に供給されるアミン系燃料の供給量を制御する。制御部30は、例えば、上記第1実施形態と同様に、エンジン1の運転条件に基づいてアミン系燃料の供給量を制御する。各気筒2に供給する水素の量を増量させる場合、制御部30は、アミン系燃料バーナー21に供給されるアミン系燃料の供給量を増加させる。これにより、アミン系燃料バーナー21で燃焼される混合気におけるアミン系燃料の濃度が増加し、各気筒2に供給される燃焼ガスの水素濃度が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の水素供給装置の第1実施形態の概略構成図である。
【図2】本発明の水素供給装置の第1実施形態のアミン系燃料燃焼装置を示す図である。
【図3】本発明の水素供給装置の第2実施形態の概略構成図である。
【符号の説明】
【0050】
1 エンジン
2 気筒
3 アミン系燃料燃焼装置
4 ピストン
5 コンロッド
6 クランク軸
7 燃焼ガス通路
20 制御部
21 アミン系燃料バーナー
22 クラッチ
23 モータ
24 バッテリー
25 回転軸
30 制御部
31 燃焼室
32 気筒
33 燃料弁
34 ピストン
35 コンロッド
36 噴射弁
37 点火装置
40 過給機
41 コンプレッサー
42 タービン
43 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃焼室において主燃料と共に燃焼させる水素を供給する水素供給装置であって、
燃焼時に前記水素を含む燃焼ガスとなる水素発生燃料を燃焼する水素生成手段を備え、
前記水素生成手段により燃焼された前記燃焼ガスに含まれる前記水素を供給する
ことを特徴とする水素供給装置。
【請求項2】
請求項1記載の水素供給装置において、
更に、前記水素生成手段による前記水素発生燃料の燃焼時の燃焼エネルギーを前記内燃機関の出力が伝達される駆動軸を駆動する動力に変換する変換手段を備える
ことを特徴とする水素供給装置。
【請求項3】
請求項2記載の水素供給装置において、
前記水素生成手段は、前記内燃機関に設けられた複数の気筒のうちの一部の前記気筒で前記水素発生燃料を燃焼し、
前記変換手段は、前記一部の前記気筒における前記水素発生燃料の燃焼時の前記燃焼エネルギーを前記内燃機関の出力軸を回転させる回転エネルギーに変換する
ことを特徴とする水素供給装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の水素供給装置において、
前記変換手段は、前記燃焼ガスで駆動されて前記内燃機関に供給される吸気を過給する過給機を有している
ことを特徴とする水素供給装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の水素供給装置において、
前記水素生成手段による前記水素発生燃料の燃焼時の燃焼エネルギーを前記内燃機関が搭載された車両で利用される電力に変換する発電機を備える
ことを特徴とする水素供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−156037(P2009−156037A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331882(P2007−331882)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】