説明

水素残量表示装置

【課題】容器内部に空間部と水素吸蔵・吸着材料とを有するハイブリッド型水素貯蔵タンクの水素充填状態(水素貯蔵状態)を理解しやすく表示する。
【解決手段】水素残量表示装置の表示部上に、空間部に充填されている空間部水素ガス残量Rsを表示する空間部水素残量表示部SDと、水素吸蔵・吸着材料に貯蔵されている材料部水素残量Rmを表示する材料部水素残量表示部MDを独立して設け分離して表示するようにしているので、ユーザ等に対してそれぞれを別々に認識させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容器内部に水素吸蔵・吸着材料と空間部とを有し、前記水素吸蔵・吸着材料に水素が貯蔵されるとともに前記空間部に高圧の水素ガスが充填される水素貯蔵タンク用の水素残量表示装置に関し、例えば燃料電池車両のダッシュボード等に装着して好適な水素残量表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、水素と酸素の電気化学反応により発電する燃料電池が組み込まれた燃料電池車両においては、前記燃料電池に燃料としての水素ガスを供給するために、高圧の水素ガスが貯蔵された水素貯蔵タンクが搭載される。
【0003】
特開2005−240854号公報(特許文献1)には、水素貯蔵タンク用の燃料残量表示装置が提案されている。この特許文献1に開示された燃料残量表示装置では、温度センサと圧力センサの検出値に基づいて計算された残量が表示され、水素貯蔵タンクが満タン、例えば35[MPa]のときに指針がフルスケールの「F」を指し、水素貯蔵タンクの圧力が供給下限圧力(又は0.1[MPa])のときに空の「E」を指すように表示するようにされている。
【0004】
特開2005−27476号公報(特許文献2)には、水素貯蔵タンク及び燃料電池の他、この燃料電池で発生された電気を蓄電する蓄電装置が搭載され、この蓄電装置と前記燃料電池とから車輪を駆動するモータに電気が供給されることで走行する燃料電池車両の航続可能距離を、前記水素貯蔵タンクの水素残量と前記蓄電装置の蓄電残量とに基づいて算出し表示器上に表示する燃料電池車両が提案されている。
【0005】
特開2004−286178号公報(特許文献3)には、水素貯蔵タンクの形態例として、タンク内部に水素吸蔵・吸着材料と空間部とを有し、前記水素吸蔵・吸着材料に水素が貯蔵されるとともに前記空間部に高圧の水素ガスが充填される水素貯蔵タンク(以下、ハイブリッド型水素貯蔵タンクともいう。)が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−240854号公報([0019]、[0036]、図2)
【特許文献2】特開2005−27476号公報([0013])
【特許文献3】特開2004−286178号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
水素吸蔵・吸着材料は、水素ガスを加圧することにより水素を吸蔵・吸着し、この吸蔵・吸着時には発熱する一方、水素ガスを減圧することにより水素を放出し、この放出時には吸熱する。したがって、加圧しながら冷却することにより水素の吸蔵・吸着が継続され、減圧しながら加温することにより水素の放出が継続される。
【0008】
ところで、満タンの充填圧力(満充填圧力)が35[MPa]のハイブリッド型水素貯蔵タンクに5〜10分程度の時間で水素充填が終了するような急速充填を行うと、容器内部に水素ガスが充填されて圧力が上昇することにより断熱圧縮効果による温度上昇が発生し、容器内部の温度が上昇する。
【0009】
水素ガスの充填中に容器内部の温度が上昇すると、容器内部に収容されている水素吸蔵・吸着材料への水素の吸蔵・吸着反応が停止してしまい、水素ガスは水素吸蔵・吸着材料に吸蔵・吸着されることがなく空間部に充填されつづけ、充填圧力が35[MPa]となった時点で充填が終了する。
【0010】
充填終了後、時間の経過とともに容器内部の温度が低下していくと、水素吸蔵・吸着材料の温度も低下して高圧の水素ガスが次第に水素吸蔵・吸着材料に吸蔵・吸着されていくようになる。この結果、急速充填終了時には35[MPa]の充填圧力であったものが、35[MPa]より低い値、例えば30[MPa]に低下してしまう。
【0011】
このため、上記した特許文献1に開示された従来技術に係る水素貯蔵タンク用の燃料残量表示装置を利用して、ハイブリッド型水素貯蔵タンクの水素残量を表示した場合、充填終了時には、フルスケールの満充填を表示していたのに、時間が経過するとハイブリッド型水素貯蔵タンクの圧力が減少してあたかも水素ガスが消費されている、あるいは漏れているかのようにフルスケールの満充填から水素が減少した表示をすることになる。
【0012】
なお、容器内部の空間部に水素ガスが充填されているハイブリッド型水素貯蔵タンクでは、水素を燃料電池で消費する際、はじめに空間に充填されている水素ガスから燃料電池により消費され、空間に充填されている水素ガスが消費されてから水素吸蔵・吸着材料に貯蔵された水素が放出されて消費が開始される設定が一般的である。
【0013】
以上説明した、容器内部に空間部と水素吸蔵・吸着材料とを有するハイブリッド型水素貯蔵タンクの現象・挙動は、高圧水素ガスのみを耐圧容器に充填した水素貯蔵タンクの場合やガソリンタンクの場合には、存在しない現象・挙動であり、一般ユーザにとって、水素残量表示装置上でハイブリッド型水素貯蔵タンクの水素充填状態が理解しにくいことが懸念される。
【0014】
この発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、容器内部に空間部と水素吸蔵・吸着材料とを有するハイブリッド型水素貯蔵タンクの水素充填状態(水素貯蔵状態)を理解しやすく表示することを可能とする水素残量表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明に係る水素残量表示装置は、容器内部に水素吸蔵・吸着材料と空間部とを有し、前記水素吸蔵・吸着材料に水素が貯蔵されるとともに前記空間部に高圧の水素ガスが充填される水素貯蔵タンク用の水素残量表示装置であって、以下の特徴(1)〜(6)を備える。
【0016】
(1)表示部を備え、前記表示部上に、前記空間部に充填されている水素ガスの残量を表示する空間部水素残量表示部と、前記水素吸蔵・吸着材料に貯蔵されている水素の残量を表示する材料部水素残量表示部を設けることを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、高圧水素ガスとして充填されている高圧水素ガス残量(水素ガス残量ともいう。)を空間部水素残量表示部に表示する一方、水素吸蔵・吸着材料に貯蔵された水素の残量を材料部水素残量表示部に独立(分離)して表示するようにしているので、ユーザ等に対してそれぞれ独立に認識させることができる。
【0018】
すなわち、ユーザ等は、空間部の水素ガス残量と、水素吸蔵・吸着材料の水素残量とを独立して認識できることから、例えば高圧水素ガスを全量消費して水素吸蔵・吸着材料に貯蔵された水素の消費が開始される前に、水素の急速充填を行うことを考慮することができる。この結果、水素の急速充填を行う場合においても容器内部に水素吸蔵・吸着材料を含む水素貯蔵タンクを水素が満充填となる状態とすることができる。
【0019】
(2)上記の特徴(1)を有する発明において、さらに、前記水素貯蔵タンクに前記水素ガスが急速充填されている間、及び急速充填の終了時には、前記表示部上に、前記水素吸蔵・吸着材料には新たに水素が貯蔵されていないことを表示することを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、ユーザ等は水素の急速充填時に水素吸蔵・吸着材料には水素が貯蔵されていないことを認識できる。換言すれば、容器内部に水素吸蔵・吸着材料を含む水素貯蔵タンクにおいては、空間部に水素ガスが満充填状態とされても水素貯蔵タンク全体として満充填された状態ではない場合があることを認識できる。
【0021】
(3)上記の特徴(2)を有する発明において、さらに、前記水素ガスの急速充填終了時からの所定時間を計時する計時手段を備え、前記計時手段が前記所定時間の経過を計時した後に、前記水素ガスの急速充填時に前記空間部に充填された水素ガスが前記水素吸蔵・吸着材料に吸蔵・吸着されて貯蔵されたことを、前記表示部上に表示することを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、ユーザ等は、ハイブリッド型水素貯蔵タンク内の高圧水素ガスの圧力が減少しても、圧力減少分の水素が水素吸蔵・吸着材料に吸蔵・吸着されて貯蔵され、ハイブリッド型水素貯蔵タンク内に貯蔵されている全水素量が変化していないことを認識することができる。
【0023】
(4)上記の特徴(1)〜(3)のいずれかを有する発明において、前記表示部上に、さらに、前記水素貯蔵タンクの水素残量に基づく航続可能距離を表示する航続可能距離表示部を設けることを特徴とする。
【0024】
この発明によれば、ユーザ等は、充填終了時から所定時間が経過して水素残量表示が変化しても、航続可能距離が変化していないことを視認でき、ハイブリッド型水素貯蔵タンク内に貯蔵された水素残量が変化していないことを明確かつ容易に認識することができる。
【0025】
(5)上記の特徴(1)〜(4)のいずれかを有する発明において、前記空間部に充填されている水素ガスの残量を表示する空間部水素残量表示部による残量表示が所定残量表示より少なくなったときに、前記表示部上に水素ガスの再充填を促す表示をすることを特徴とする。
【0026】
この発明によれば、ユーザ等は、高圧水素ガスの全残量が消費されてしまい水素吸蔵・吸着材料に貯蔵されている水素の消費が開始される前に、水素の急速充填を行うことを考慮できる。
【0027】
(6)上記の特徴(1)〜(5)のいずれかを有する発明において、前記水素吸蔵・吸着材料に貯蔵されている水素の残量を表示する前記材料部水素残量表示部による残量表示が所定残量表示より少なくなったときに、前記表示部上に水素ガスの再充填が必要であることの表示をすることを特徴とする。
【0028】
この発明によれば、水素の残量が空になりつつあることをユーザに確実に認識させ、水素の再充填を強く促すことができる。
【発明の効果】
【0029】
この発明によれば、高圧水素ガスとして充填されている高圧水素ガス残量(水素ガス残量ともいう。)を空間部水素残量表示部に表示する一方、水素吸蔵・吸着材料に貯蔵された水素残量を材料部水素残量表示部に独立(分離)して表示するようにしているので、ユーザ等に対して空間部中の水素残量と水素吸蔵・吸着材料中の水素残量をそれぞれ独立に認識させることができる。この結果、容器内部に空間部と水素吸蔵・吸着材料とを有するハイブリッド型水素貯蔵タンクの水素充填状態(水素貯蔵状態)を理解しやすくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0031】
図1は、この発明の一実施形態に係る水素残量表示装置12がダッシュボード(不図示)等に装着された燃料電池車両10の構成を示すブロック図である。
【0032】
水素残量表示装置12は、液晶表示器等のディスプレイを有する表示部96と、表示部96での表示内容を制御する制御部98とから構成されている。
【0033】
燃料電池車両10は、基本的には、上記の水素残量表示装置12の他、燃料電池装置14と、蓄電装置16と、制御装置18と、駆動モータ20と、水素残量検知器22と、蓄電残量検知器23とから構成される。
【0034】
燃料電池装置14は、燃料電池26と、この燃料電池26に燃料としての水素を供給する水素貯蔵タンク30と、外部の空気を取り込み酸化剤としての酸素を含む圧縮空気を燃料電池26に供給する空気圧縮機等からなる空気供給源32とから構成され、燃料電池26は、供給される水素を燃料とし圧縮空気中の酸素を酸化剤として電気化学反応により電気を発生する。
【0035】
蓄電装置16は、二次電池であり、燃料電池26で発生された電気を蓄電(充電)するとともに、減速時等において駆動モータ20から回収される電気を蓄電する。
【0036】
水素貯蔵タンク30は、容器内部に、空間部36と、専用容器に収容された状態で前記空間部36と接する水素吸蔵合金(Metal Hydrides)等の水素吸蔵・吸着材料34とを有し、空間部36に図示しない水素充填口から高圧水素ガスが充填されると、所定条件下に、充填された高圧水素ガスが水素吸蔵・吸着材料34に吸蔵・吸着される。
【0037】
水素貯蔵タンク30に貯蔵されている水素残量を検知するための水素残量検知器22が設けられている。水素残量検知器22は、水素貯蔵タンク30の空間部36の圧力と温度を計測する圧力計と温度計とともに、水素吸蔵・吸着材料34の温度を計測する温度計並びに所定時間を計時する計時手段としてのタイマ33を含んで構成される。
【0038】
水素残量検知器22は、前記圧力計により測定される空間部36の圧力及び圧力変化と前記温度計により検出される空間部36の温度と温度変化、並びに水素吸蔵・吸着材料24の温度と温度変化に基づき、空間部36の水素残量(水素質量)と水素吸蔵・吸着材料24の水素残量(水素質量)とを所定の計算式により計算し、又はROM等に予め記憶されている参照テーブル、いわゆるマップを検索して、空間部36の水素残量(水素質量)と水素吸蔵・吸着材料24の水素残量(水素質量)を求めて出力する。
【0039】
水素残量検知器22により検知された水素貯蔵タンク30の空間部36の水素残量(高圧水素ガス残量又は空間部水素ガス残量という。)Rsと水素吸蔵・吸着材料24の水素残量(材料部水素残量という。)Rmとが水素残量表示装置12の制御部98に供給されるとともに、制御装置18の水素残量航続可能距離算出部42に供給される。
【0040】
蓄電装置16には、流入出する電流の量を検知することで蓄電残量(蓄電残量Rqという。)を検知し制御装置18の蓄電残量航続可能距離算出部40及び水素残量表示装置12の制御部98に供給する蓄電残量検知器23が設けられている。
【0041】
制御装置18は、燃料電池26及び蓄電装置16から供給される電力を制御して駆動モータ20へ供給する電力制御部38と、水素残量検知器22により検知された水素残量Ra(水素残量Ra=空間部水素ガス残量Rs+材料部水素残量Rm)を航続可能距離に換算する水素残量航続可能距離算出部42と、蓄電残量検知器23により検知された蓄電残量Rqを航続可能距離に換算する蓄電残量航続可能距離算出部40と、これらを加算した航続可能距離(航続可能距離D)を水素残量表示装置12へ供給する表示制御部44とを備える。
【0042】
水素残量表示装置12の制御部98は、この実施形態では、航続可能距離Dと水素残量Ra(空間部水素ガス残量Rsと材料部水素残量Rm)とに基づき表示部96上に所定の表示をさせる動作を行う。
【0043】
次に、上記実施形態に係る水素残量表示装置12の制御部98による表示部96上への表示例について説明する。
【0044】
第1実施例(第1表示例)の説明
この第1実施例に係る図2A−図2D、図3A−図3Gに示す各図は、水素貯蔵タンク30内に貯蔵された水素残量Ra(空間部水素ガス残量Rsと材料部水素残量Rm)を模式的に示す説明図である。
【0045】
図2E−図2H、図3H−図3Nに示すバーグラフ状の表示は、図2A−図2D、図3A−図3Gに示す各図の水素残量Raにそれぞれ対応する水素残量表示装置12の表示部96上の表示を示す説明図である。
【0046】
図2E−図2H、図3H−図3Nの各図中、水素残量表示部HDは、左下がりハッチング領域(例えば、水色表示)とクロスハッチング領域(例えば、青色表示)で表示される空間部水素残量表示部(空間部水素ガス残量表示部又は高圧水素ガス残量表示部ともいう。)SDと、右下がりハッチング領域(例えば、水色表示)が表示される材料部水素残量表示部MDとが分離されて表示される。
【0047】
図2E−図2H、図3H−図3Nの各図中、材料部水素残量表示部MDの右側には、水素貯蔵タンク30の供給下限圧力Eが表示されている。
【0048】
このように、図2A−図2D、図3A−図3Gに示す水素残量Raと、空間部水素ガス残量Rsと、材料部水素残量Rmは、それぞれ、図2E−図2H、図3H−図3Nに示す水素残量表示部HDの表示と、空間部水素残量表示部SDの表示と、材料部水素残量表示部MDの表示とに対応している。以下、各対応関係について説明する。
【0049】
図2Aの「満充填状態」と説明している水素残量100は、水素貯蔵タンク30が、空間部36に充填された空間部水素ガス残量Rsと、水素吸蔵・吸着材料34に貯蔵された材料部水素残量Rmによって設定積載水素量が100[%]満たされた状態、すなわち満充填(フル充填)状態となっていることを示している。
【0050】
図2Aの満充填状態に対応する図2Eの水素残量表示200は、設定積載水素量が満充填状態であることを示している。この場合、太く表示している外枠は、実際上、青色であるが、この満充填状態を表す水素残量表示200の下側には、航続可能距離D、ここでは、具体例として「560km」を併せて表示している。
【0051】
図2Aに示す満充填状態の水素残量100と図2Eに示す水素残量表示200は、水素貯蔵タンク30を高圧水素ガスで急速充填した後の所定時間経過後に、さらに高圧水素ガスを充填することによりなされる表示である。
【0052】
なお、所定時間というのは、急速充填により空間部水素ガス残量Rsが、設定最大圧力、例えば35[MPa]になったとき(この時点で充填は一旦停止される。)から水素貯蔵タンク30内の空間部36の温度が常温付近まで低下し、高圧水素ガスが水素吸蔵・吸着材料24に吸蔵・吸着されて貯蔵されるまでの時間をいう。この所定時間は、水素残量検知器22内のタイマ33により計時される。つまり、タイマ33は、空間部36が35[MPa]の満充填状態となって高速充填が停止されたときから所定時間を計時する。
【0053】
図2A、図2Eの満充填状態になるまでの様子を、図2B−図2D、図3A−図3D、図2F−図2H、図3H−図3Kを参照して説明する。
【0054】
図2Bの「残量小」と説明している水素残量102は、空間部水素ガス残量Rsの全量が消費され、さらに材料部水素残量Rmも水素吸蔵・吸着材料34に貯蔵された水素の一部が消費された水素貯蔵タンク30内の状態を示している。
【0055】
図2Fは、このときの水素貯蔵タンク30内の水素残量表示202を示している。水素残量表示202において、残りの水素は、水素吸蔵・吸着材料34に貯蔵された水素だけであることを示すために、間隔の狭い右下がりのハッチング領域で示しているが、実際上、表示色はオレンジ色にしている。同時に、航続可能距離が「40km」であり、「燃料充填が必要です。」という表示もしている。
【0056】
図2Cの「急速充填中−1」と説明している水素残量104は、図2Bの状態から急速充填が開始され水素が空間部36に高圧水素ガスとして貯蔵され、水素吸蔵・吸着材料34には水素の貯蔵がなされていない状態を示している。
【0057】
図2Gの水素残量表示204は、空間部水素残量表示部SDの領域において、水素の充填につれて空間部水素ガス残量Rsが増加している状態を、左下がりハッチング領域が図中、矢印で示す左方向に増加することで表示するとともに、水素吸蔵・吸着材料34には水素が貯蔵されていないことをユーザに認識させるために、材料部水素残量表示部MDを低速で点滅させている(実際上は、水色と白色の繰り返し表示)。なお、図2Gの空間部水素残量表示部SD中に描いている矢印は、説明のためのものであって、実際には、表示部96上に表示されないが表示するようにしてもよい。
【0058】
図2Dの「急速充電中−2」と説明している水素残量106は、急速充電が継続され水素が空間部36に高圧水素ガスとして貯蔵されて、水素吸蔵・吸着材料34には貯蔵されていない状態を示している。
【0059】
図2Hの水素残量表示206は、空間部水素残量表示部SDの領域において、水素の急速充填の継続につれて高圧水素ガス残量がさらに増加している状態を、左下がりハッチング領域を図中、左方向に増加させることで表示している。この場合、空間部水素残量表示部SDの左端まで左下がりのハッチング領域が到達しているが、図2Dに示すように、空間部水素ガス残量Rsの空間部36への設定圧力(35[MPa])までの充填状態を表示するものではない。この場合においても、水素吸蔵・吸着材料34には水素が貯蔵されていないことをユーザに認識させるために、材料部水素残量表示部MDを低速で点滅させている。
【0060】
図3Aの「急速充電中−3」と説明している水素残量108は、さらに急速充電が継続され水素が空間部36に高圧水素ガスとして貯蔵され、水素吸蔵・吸着材料34には未だ貯蔵されていない状態を示している。
【0061】
図3Hの水素残量表示208では、急速充填がさらに継続されて高圧水素ガス残量がさらに増加している状態を、空間部水素残量表示部SDが図2Hで左端に到達した左下がりハッチング領域が左端で折返し、クロスハッチング領域として今度は右方向に増加させることにより表示している。この場合にも、水素吸蔵・吸着材料34には水素が貯蔵されていないことをユーザに認識させるために、材料部水素残量表示部MDを低速で点滅させている。
【0062】
図3Bの「急速充電直後」と説明している水素残量108は、急速充電がさらに継続された後に、急速充電が終了した直後の状態を示している。水素が空間部36の貯蔵部分に高圧水素ガスとして設定圧力(35[MPa])まで充填され、水素吸蔵・吸着材料34には貯蔵されていない状態を示している。
【0063】
図3Iの水素残量表示210では、急速充填が終了し高圧水素ガス残量がさらに増加している状態を、空間部水素残量表示部SDのクロスハッチング領域がさらに右方向に増加することにより表示している。この場合にも、水素吸蔵・吸着材料34には水素が貯蔵されていないことをユーザに認識させるために、材料部水素残量表示部MDをゆっくりと点滅させている。
【0064】
図3Cの「所定時間経過後」と説明している水素残量112は、急速充電終了後からタイマ33による所定時間の計時が終了した状態を示している。水素残量112の左側の白色部分は、空間部水素ガス残量Rsの一部が水素吸蔵・吸着材料34に吸蔵・吸着されて材料部水素残量Rmとして貯蔵された状態を示している。
【0065】
図3Jの水素残量表示212では、空間部36に充填された高圧水素ガスの一部が水素吸蔵・吸着材料34に吸蔵・吸着された状態を、空間部水素残量表示部SDのクロスハッチング領域が左方向に向かって減少するとともに、充填直後に点滅していた材料部水素残量表示部MDの点滅が止まり、右下がりハッチング領域(水素が水素吸蔵・吸着材料34に吸蔵されていることを示す領域)に変化していることにより表示している。
【0066】
この第1実施例では、水素貯蔵タンク30に充填された高圧水素ガスの一部が水素吸蔵・吸着材料34に吸収されるというプロセスを空間部水素残量表示部SDで左端から折り返して表示されたクロスハッチング領域を減少させることで表示している。
【0067】
図3Dの「再度急速充填→満充填状態」と説明している水素残量114は、高圧水素ガスの一部が水素吸蔵・吸着材料34に吸収された状態(図3Cに示す水素残量112の状態)から再度急速充電を施して、空間部36から水素吸蔵・吸着材料34に吸収された高圧水素ガス分を充填し、水素貯蔵タンク30の設定積載水素量が100[%]満たされた状態を示している。このような経過により図2Aに示した満充填状態が達成される。
【0068】
図3Kの水素残量表示214は、図2Eに示した水素残量表示200と同一であるので、その説明は省略する。
【0069】
図3Eの「残量大」と説明している水素残量116は、図3Dの満充填状態から水素ガスが燃料電池26で消費された状態を示している。
【0070】
図3Lの水素残量表示216では、満充填を示す濃い外枠の表示は消え、クロスハッチング領域が左方向に減少して水素残量の減少を表示している。クロスハッチング領域の減少に伴い、クロスハッチング領域の下に隠れていた左下がりのハッチング領域が現れてくるが、この表示の変化は水素残量Raの増加を示すものではない。水素残量116での航続可能距離(ここでは、460km)も表示される。
【0071】
図3Fの「残量中−1」と説明している水素残量118は、空間部水素ガス残量Rsがさらに減少した状態を示している。
【0072】
図3Mの水素残量表示218では、クロスハッチングの領域がさらに減少させることにより空間部水素ガス残量Rsの減少を表示している。水素消費によりクロスハッチングの領域が減少(後退)して左端に達すると、クロスハッチング領域の下に隠れていた左下がりのハッチング領域が現れてくる。航続可能距離(ここでは、360km)も表示される。
【0073】
図3Gの「残量中−2」と説明している水素残量120は、さらに水素が消費されて、水素貯蔵タンク30内の空間部36の高圧水素ガスの多くが消費されているが、水素吸蔵・吸着材料34に貯蔵された水素が水素貯蔵タンク30に残留している状態を示している。
【0074】
図3Nの水素残量表示220では、左下がりのハッチング領域を右方向に減少させることにより空間部水素ガス残量Rsの減少を表示している。この場合にも、航続可能距離(ここでは、120km)が表示されるとともに、空間部水素ガス残量Rsの全量が消費される可能性があるので、「燃料充填を推奨します。」等、ユーザに燃料充填を促す表示が現れている。
【0075】
この状態でさらに水素が消費されると、上述した図2Bの水素残量102の状態と図2Fの水素残量表示202となる。
【0076】
以上説明したように上述した燃料電池車両10に搭載された第1実施例に係る水素残量表示装置12は、容器内部に水素吸蔵・吸着材料34と空間部36とを有し、水素吸蔵・吸着材料34に水素が貯蔵されるとともに空間部36に高圧の水素ガスが充填される水素貯蔵タンク30用の水素残量表示装置12であって、以下の作用効果(1)−(6)を備える。
【0077】
(1)表示部96を備え、この表示部96上に、空間部36に充填されている空間部水素ガス残量Rsを表示する空間部水素残量表示部SDと、水素吸蔵・吸着材料34に貯蔵されている材料部水素残量Rmを表示する材料部水素残量表示部MDを独立して設け分離して表示するようにしているので、ユーザ等に対してそれぞれを別々に認識させることができる。
【0078】
(2)この場合、図2G、図2H、図3H、図3Iに示すように、水素貯蔵タンク30に水素ガスが急速充填されている間、及び急速充填の終了時には、表示部96上に、水素吸蔵・吸着材料34には新たに水素が貯蔵されていないことを点滅表示で知らせるようにしているので、ユーザ等は水素の急速充填時に水素吸蔵・吸着材料34には水素が貯蔵されていないことを明確に認識できる。
【0079】
(3)さらに、水素ガスの急速充填終了時からタイマ33により所定時間を計時した後に、図3Jに示すように、水素ガスの急速充填時に空間部36に充填された水素ガスが水素吸蔵・吸着材料34に吸蔵・吸着されて貯蔵されたことを、空間部水素残量表示部SD及び材料部水素残量表示部MDに表示するようにしているので、ユーザ等は、水素貯蔵タンク30内の高圧水素ガスの圧力が減少しても、圧力減少分の水素が水素吸蔵・吸着材料34に吸蔵・吸着されて貯蔵され、水素貯蔵タンク30内に貯蔵されている水素量が変化していないことを認識することができる。
【0080】
(4)また、表示部96上に、水素残量Ra(Ra=Rs+Rm)に基づく航続可能距離を表示する航続可能距離表示部を設けているので、図示はしていないが、ユーザ等は、充填終了時から所定時間が経過して水素残量表示が変化しても、航続可能距離は変化していないことを視認でき、水素貯蔵タンク30内に貯蔵された水素残量が変化していないことを明確かつ容易に認識することができる。
【0081】
(5)さらに、図3Nに示すように、空間部36に充填されている水素ガスの残量を表示する空間部水素残量表示部SDの残量表示が所定残量表示より少なくなったときに、表示部96上に水素ガスの再充填を促す表示をしているので、ユーザ等は、高圧水素ガスの全残量が消費されてしまい水素吸蔵・吸着材料34に貯蔵されている水素の消費が開始される前に、水素の急速充填を行うことを考慮できる。
【0082】
(6)さらにまた、図2Fに示すように、水素吸蔵・吸着材料34に貯蔵されている水素の残量を表示する材料部水素残量表示部MDによる残量表示が所定残量表示より少なくなったときに、表示部96上に水素ガスの再充填が必要であるとの表示をしているので、水素の残量が空になりつつあることをユーザに確実に認識させ、水素の再充填を強く促すことができる。
【0083】
このように、第1実施例によれば、高圧水素ガスとして充填されている空間部水素ガス残量Rsを空間部水素残量表示部SDに表示する一方、水素吸蔵・吸着材料34に貯蔵された材料部水素残量Rmを材料部水素残量表示部MDに分離、独立して表示するようにしているので、ユーザ等に対して空間部36中の空間部水素ガス残量Rsと水素吸蔵・吸着材料34中の材料部水素残量Rmをそれぞれ独立に認識させることができる。この結果、容器内部に空間部36と水素吸蔵・吸着材料34とを有する水素貯蔵タンク30の水素充填状態(水素貯蔵状態)を理解しやすくすることができる。
【0084】
第2実施例(第2表示例)の説明
この第2実施例に係る図4A−図4Eに示す図は、水素貯蔵タンク30内に貯蔵された水素残量Ra(空間部水素ガス残量Rsと材料部水素残量Rm)を模式的に示す説明図であり、図4F−図4Jに示すバーグラフ状の表示は、図4A−図4Eに示す図にそれぞれ対応する表示部96上の水素残量Ra(空間部水素ガス残量Rsと材料部水素残量Rm)の表示を示す説明図である。
【0085】
図4F−図4Jに示す水素残量表示部HDは、空間部水素残量表示部SDと、材料部水素残量表示部MDとが分離されて表示される。
【0086】
材料部水素残量表示部MDの右側には、水素貯蔵タンク30の供給下限圧力Eを示すアルファベットEが表示されている。また、空間部水素残量表示部SDの左側には、水素貯蔵タンク30の満充填Fを示すアルファベットFが表示されている。
【0087】
図4Aの「満充填状態」と説明している水素残量122は、水素貯蔵タンク30が空間部36に充填された空間部水素ガス残量Rsと水素吸蔵・吸着材料34に貯蔵された材料部水素残量Rmによって設定積載水素量が100[%]満たされた状態、すなわち満充填(フル充填)状態を示している。
【0088】
図4Fの水素残量表示222は、設定積載水素量が満充填状態であることを示している。太く表示している外枠は、実際には青色であるが、この満充填状態を表す水素残量表示222の下側には、上述した航続可能距離D、ここでは、具体例として「560km」を併せて表示している。
【0089】
図4Bの「残量中」と説明している水素残量124は、満充填状態から水素が消費されて、水素貯蔵タンク30内の空間部36の高圧水素ガスの大部分は消費されているが、高圧水素ガスがまだ水素貯蔵タンク30内に残留している状態を示している。
【0090】
図4Gは、このときの水素貯蔵タンク30内の水素残量表示224を示している。消費された水素の分だけ左下がりのハッチング領域が白色部に変化し、水素残量Raが左下がりのハッチング領域で表示されている。この場合、航続可能距離、ここでは、「120km」が表示されるとともに、空間部水素ガス残量Rsの全量が消費される可能性があるので、「燃料充填を推奨します。」等、ユーザに燃料充填を促す表示がなされる。
【0091】
図4Cの「残量小」と説明している水素残量126は、空間部水素ガス残量Rsの全量が消費され、さらに材料部水素残量Rmも水素吸蔵・吸着材料34に貯蔵された水素の一部も消費された水素貯蔵タンク30内の状態を示している。
【0092】
図4Hは、このときの水素貯蔵タンク30内の水素残量表示226を示している。水素残量表示226において、残りの水素は、水素吸蔵・吸着材料34に貯蔵された水素だけであることを示すために、間隔の狭い右下がりのハッチングの領域で示しているが、実際上、表示色はオレンジ色にしている。同時に、航続可能距離が「40km」であり、「燃料充填が必要です。」という表示もしている。さらに、水素吸蔵・吸着材料34に貯蔵された水素から消費された水素に相当する量は急速充填終了時には水素貯蔵タンク30に充填されないことをユーザ等に認識させるため、水素吸蔵・吸着材料34に貯蔵された水素から消費された水素に相当する外枠部分が点線表示に変化している。
【0093】
図4Dの「急速充電直後」と説明している水素残量128は、高圧水素ガスの全量が消費され、さらに水素吸蔵・吸着材料34に貯蔵された水素の一部も消費された状態のときに、水素を急速充填した直後の水素貯蔵タンク30内の状態を示している。水素が空間部36の貯蔵部分に高圧水素ガスとして満充填されて、材料部水素残量Rmの白色部分は、水素吸蔵・吸着材料34には水素が貯蔵されないことを示している。
【0094】
図4Iの水素残量表示228では、黒の実線の外枠で囲まれた左下がりのハッチング領域と右下がりのハッチング領域との和の領域は、急速充填終了時に水素貯蔵タンク30内に存在する水素の総残量を示している。
【0095】
実際には、急速充填終了時には、水素吸蔵・吸着材料34には水素は貯蔵されていない。左端の点線枠内の白部分は、このことをユーザ等に認識してもらうとともに、水素の急速充填終了時には、水素吸蔵・吸着材料34には新たに水素が貯蔵されないことを示している。
【0096】
図4Eの「所定時間経過後」と説明している水素残量130は、急速充電終了後からタイマ33による所定時間が経過した状態を示している。水素残量130の左側の白色部分は、空間部水素ガス残量Rsの一部が水素吸蔵・吸着材料34に吸蔵・吸着されて貯蔵された状態を示している。
【0097】
図4Jの水素残量表示230では、図4Iの水素残量表示228の点線部が実線表示となり、空間部36に充填された高圧水素ガスの一部が水素吸蔵・吸着材料34に吸蔵・吸着されて貯蔵されたこと、及び水素貯蔵タンク30内の水素の総残量は、急速充填終了時と変化していないことをユーザ等に認識させるようにしている。
【0098】
この後、35[Mpa]まで、急速充填することで、図4Aに示した「満充填状態」と説明している水素残量122となり、図4Fに示した水素残量表示222となる。
【0099】
上述した第2実施例に係る水素残量表示装置12も、上述した第1実施例の(1)−(6)の作用効果を備える。
【0100】
第3実施例(第3表示例)の説明
この第3実施例に係る図5A−図5Eに示す図は、水素貯蔵タンク30内に貯蔵された水素残量Ra(空間部水素ガス残量Rsと材料部水素残量Rm)を模式的に示す説明図であり、図5F−図5Jに示すバーグラフ状の表示は、図5A−図5Eに示す図にそれぞれ対応する表示部96上の水素残量Ra(空間部水素ガス残量Rsと材料部水素残量Rm)の表示を示す説明図である。
【0101】
図5F−図5Jに示す水素残量表示部HDは、空間部水素残量表示部SDと、材料部水素残量表示部MDとが分離されて表示される。
【0102】
材料部水素残量表示部MDの右側には、水素貯蔵タンク30の供給下限圧力Eを示すアルファベットEが表示されている。また、空間部水素残量表示部SDの左側には、水素貯蔵タンク30の満充填Fを示すアルファベットFが表示されている。
【0103】
図5Aの「満充填状態」と説明している水素残量132は、水素貯蔵タンク30が空間部36に充填された空間部水素ガス残量Rsと水素吸蔵・吸着材料34に貯蔵された材料部水素残量Rmによって設定積載水素量が100[%]満たされた状態、すなわち満充填(フル充填)状態を示している。
【0104】
図5Fは、このときの水素貯蔵タンク30内の水素残量表示232を示している。第2実施例の図4Fと同一であるので説明は省略する。
【0105】
図5Bの「残量中」と説明している水素残量134は、満充填状態から水素が消費されて、水素貯蔵タンク30内の空間部36の高圧水素ガスの大部分は消費されているが、高圧水素ガスがまだ水素貯蔵タンク30内に残留している状態を示している。
【0106】
図5Gは、このときの水素貯蔵タンク30内の水素残量表示234を示している。第2実施例の図4Gと同一であるので説明は省略する。
【0107】
図5Cの「残量小」と説明している水素残量136は、空間部水素ガス残量Rsの全量が消費され、さらに材料部水素残量Rmも水素吸蔵・吸着材料34に貯蔵された水素の一部も消費された水素貯蔵タンク30内の状態を示している。
【0108】
図5Hは、このときの水素貯蔵タンク30内の水素残量表示236を示している。第1実施例の図2Fと同一であるので説明は省略する。
【0109】
図5Dの「急速充填直後」と説明している水素残量138は、高圧水素ガスの全量が消費され、さらに水素吸蔵・吸着材料34に貯蔵された水素の一部も消費された状態のときに、水素を急速充填した直後の水素貯蔵タンク30内の状態を示している。図5D中、材料部水素残量Rmの白色部分は、水素吸蔵・吸着材料34には水素が貯蔵されないことを示している。
【0110】
図5Iは、このときの水素貯蔵タンク30内の水素残量表示238を示している。右下がりのハッチング領域は、急速充填開始時に、水素貯蔵タンク30内に水素吸蔵・吸着材料34に貯蔵されて水素として残量していた水素残量を表示している。急速充電終了時には、水素吸蔵・吸着材料34には水素があらたに貯蔵されないことを表している。すなわち、次に、図5E、図5Jを参照して説明する空間部水素ガス残量Rsの一部が水素吸蔵・吸着材料34に貯蔵されるまでの間、水素が貯蔵されていないことをユーザに認識させるために、図5Iの水素残量表示238では、材料部水素残量表示部MDを低速で点滅させている。
【0111】
図5Eの「所定時間経過後」と説明している水素残量140は、急速充電終了後からタイマ33による所定時間が経過した状態を示している。水素残量140の左側の白色部分は、空間部水素ガス残量Rsの一部が水素吸蔵・吸着材料34に吸蔵・吸着されて貯蔵された状態を示している。
【0112】
図5Jの水素残量表示240では、図5Iの水素残量表示238の点滅部が右下がりハッチング領域の表示となり、空間部36に充填された高圧水素ガスの一部が水素吸蔵・吸着材料34に吸蔵・吸着されて貯蔵されたこと、及び水素貯蔵タンク30内の水素の総残量は、急速充填終了時と変化していないことをユーザ等に認識させるようにしている。
【0113】
この後、35[Mpa]まで、急速充填することで、図5Aに示した「満充填状態」と説明している水素残量132となり、図5Fに示した水素残量表示232となる。
【0114】
上述した第3実施例に係る水素残量表示装置12も、上述した第1実施例の(1)−(6)の作用効果を備える。
【0115】
第4実施例(第4表示例)の説明
この第4実施例に係る図6A−図6Eに示す図は、水素貯蔵タンク30内に貯蔵された水素残量Ra(空間部水素ガス残量Rsと材料部水素残量Rm)を模式的に示す説明図であり、図6F−図6Jに示す面積の大小による表示は、図6A−図6Eに示す図にそれぞれ対応する原点170を回転中心として所定角度回転する指針172を有し、指針172は、水素残量表示部HDを構成する空間部水素残量表示部SDの最上端側の目盛174と、材料部水素残量表示部MDの最下端側の目盛180との間を移動する。空間部水素残量表示部SDと材料部水素残量表示部MDとの境界に、目盛178が設けられ、空間部水素残量表示部SDの中間部に、目盛176が設けられる。
【0116】
材料部水素残量表示部MDの下端側の目盛180の傍らには、水素貯蔵タンク30の供給下限圧力Eを示すアルファベットEが表示されている。また、空間部水素残量表示部SDの右端側の目盛174の傍らには、水素貯蔵タンク30の満充填Fを示すアルファベットFが表示されている。
【0117】
図6Aの「満充填状態」と説明している水素残量142は、水素貯蔵タンク30が空間部36に充填された空間部水素ガス残量Rsと水素吸蔵・吸着材料34に貯蔵された材料部水素残量Rmによって設定積載水素量が100[%]満たされた状態、すなわち満充填(フル充填)状態を示している。
【0118】
図6Fは、このときの水素貯蔵タンク30内の水素残量表示252を示している。水素貯蔵タンク30内が満充填された状態の残量を、指針172を満充填Fを示す目盛174の位置に表示し、空間部水素残量表示部SDが左下がりのハッチング領域(実際には、緑色)で示すように、また、材料部水素残量表示部MDが右下がりのハッチング領域(実際には黄色)で示すようにそれぞれ独立に表示している。航続可能距離も、ここでは560kmと表示している。
【0119】
図6Bの「残量中」と説明している水素残量144は、満充填状態から水素が消費されて、水素貯蔵タンク30内の空間部36の高圧水素ガスの大部分は消費されているが、高圧水素ガスがまだ水素貯蔵タンク30内に残留している状態を示している。
【0120】
図6Gは、このときの水素貯蔵タンク30内の水素残量表示254を示している。消費された水素の分だけ左下がりのハッチング領域の面積が減少し、水素残量は、空間部水素残量表示部SDの高圧水素ガスの残量と、材料部水素残量表示部MDの水素吸蔵・吸着材料34に貯蔵された水素の残量の面積の和として表示している。この場合、航続可能距離が「120km」と表示されるとともに高圧水素ガスの全量が消費されそうなので燃料充填を促す表示がなされる。
【0121】
図6Cの「残量小」と説明している水素残量146は、空間部水素ガス残量Rsの全量が消費され、さらに材料部水素残量Rmも水素吸蔵・吸着材料34に貯蔵された水素の一部も消費された水素貯蔵タンク30内の状態を示している。
【0122】
図6Hは、このときの水素貯蔵タンク30内の水素残量表示236を示している。残りの水素は、水素吸蔵・吸着材料34に貯蔵された水素だけであることを示すために、目盛178と目盛180の間の位置を指針172が指すようにしている。この場合にも、航続可能距離「40km」と水素の補充が必要であることを表示している。
【0123】
図6Dの「急速充電直後」と説明している水素残量148は、高圧水素ガスの全量が消費され、さらに水素吸蔵・吸着材料34に貯蔵された水素の一部も消費された状態のときに、水素を急速充填した直後の水素貯蔵タンク30内の状態を示している。図6D中、材料部水素残量Rmの白色部分は、水素吸蔵・吸着材料34には水素が貯蔵されないことを示している。
【0124】
図6Iは、このときの水素貯蔵タンク30内の水素残量表示258を示している。点滅部は、急速充電終了時には、水素吸蔵・吸着材料34には水素があらたに貯蔵されないことを表示している。
【0125】
図6Eの「所定時間経過後」と説明している水素残量150は、急速充電終了後からタイマ33による所定時間が経過した状態を示している。水素残量140の左側の白色部分は、空間部水素ガス残量Rsの一部が水素吸蔵・吸着材料34に吸蔵・吸着されて貯蔵された状態を示している。
【0126】
図6Jの水素残量表示260では、図6Iの水素残量表示258の点滅部が白色部の空の表示となり、空間部36に充填された高圧水素ガスの一部が水素吸蔵・吸着材料34に吸蔵・吸着されて貯蔵されたこと、及び水素貯蔵タンク30内の水素の総残量は、急速充填終了時と変化していないことをユーザ等に認識させるようにしている。
【0127】
この後、35[Mpa]まで、急速充填することで、図6Aに示した「満充填状態」と説明している水素残量142となり、図6Fに示した水素残量表示252となる。
【0128】
上述した第4実施例に係る水素残量表示装置12も、上述した第1実施例の(1)−(6)の作用効果を備える。
【0129】
なお、この発明は、上述の実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】この発明の一実施形態に係る水素残量表示装置が適用された燃料電池車両の構成を示すブロック図である。
【図2】図2A−図2Dは、水素貯蔵タンク内に貯蔵された水素残量を模式的に示す第1実施例に係る説明図、図2E−図2Hは、図2A−図2Dに示す各図の水素残量にそれぞれ対応する水素残量表示装置の表示部上の表示を示す説明図である。
【図3】図3A−図3Gは、水素貯蔵タンク内に貯蔵された水素残量を模式的に示す第1実施例に係る残りの説明図、図3H−図3Nは、図3A−図3Gに示す各図の水素残量にそれぞれ対応する水素残量表示装置の表示部上の表示を示す説明図である。
【図4】図4A−図4Eは、水素貯蔵タンク内に貯蔵された水素残量を模式的に示す第2実施例に係る説明図、図4F−図4Jは、図4A−図4Eに示す各図の水素残量にそれぞれ対応する水素残量表示装置の表示部上の表示を示す説明図である。
【図5】図5A−図5Eは、水素貯蔵タンク内に貯蔵された水素残量を模式的に示す第3実施例に係る説明図、図5F−図5Jは、図5A−図5Eに示す各図の水素残量にそれぞれ対応する水素残量表示装置の表示部上の表示を示す説明図である。
【図6】図6A−図6Eは、水素貯蔵タンク内に貯蔵された水素残量を模式的に示す第4実施例に係る説明図、図6F−図6Jは、図6A−図6Eに示す各図の水素残量にそれぞれ対応する水素残量表示装置の表示部上の表示を示す説明図である。
【符号の説明】
【0131】
10…燃料電池車両 12…水素残量表示装置
30…水素貯蔵タンク 33…タイマ
34…水素吸蔵・吸着材料 36…空間部
96…表示部 HD…水素残量表示部
MD…材料部水素残量表示部 SD…空間部水素残量表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内部に水素吸蔵・吸着材料と空間部とを有し、前記水素吸蔵・吸着材料に水素が貯蔵されるとともに前記空間部に高圧の水素ガスが充填される水素貯蔵タンク用の水素残量表示装置であって、
表示部を備え、
前記表示部上に、前記空間部に充填されている水素ガスの残量を表示する空間部水素残量表示部と、前記水素吸蔵・吸着材料に貯蔵されている水素の残量を表示する材料部水素残量表示部を設ける
ことを特徴とする水素残量表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の水素残量表示装置において、
さらに、前記水素貯蔵タンクに前記水素ガスが急速充填されている間、及び急速充填の終了時には、前記表示部上に、前記水素吸蔵・吸着材料には新たに水素が貯蔵されていないことを表示する
ことを特徴とする水素残量表示装置。
【請求項3】
請求項2記載の水素残量表示装置において、
さらに、前記水素ガスの急速充填終了時からの所定時間を計時する計時手段を備え、
前記計時手段が前記所定時間の経過を計時した後に、前記水素ガスの急速充填時に前記空間部に充填された水素ガスが前記水素吸蔵・吸着材料に吸蔵・吸着されて貯蔵されたことを、前記表示部上に表示する
ことを特徴とする水素残量表示装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の水素残量表示装置において、
前記表示部上に、さらに、前記水素貯蔵タンクの水素残量に基づく航続可能距離を表示する航続可能距離表示部を設ける
ことを特徴とする水素残量表示装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の水素残量表示装置において、
前記空間部に充填されている水素ガスの残量を表示する空間部水素残量表示部による残量表示が所定残量表示より少なくなったときに、前記表示部上に水素ガスの再充填を促す表示をする
ことを特徴とする水素残量表示装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の水素残量表示装置において、
前記水素吸蔵・吸着材料に貯蔵されている水素の残量を表示する前記材料部水素残量表示部による残量表示が所定残量表示より少なくなったときに、前記表示部上に水素ガスの再充填が必要であることの表示をする
ことを特徴とする水素残量表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−106817(P2008−106817A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288646(P2006−288646)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】