説明

水路設置型し渣破砕機

【課題】製作コストの低減が図れる水路設置型し渣破砕機を提供する。
【解決手段】螺旋状に巻回したスクリュー羽根2を有し、このスクリュー羽根2には破砕刃21が着脱自在に取り付けられた内回転体3と、下流側に向け平断面視半環形状を呈し、スリット開口部18を形成するように上下方向に間隔的に設けられるリングバー17を有した外胴体4と、を備え、破砕刃21がスリット開口部18を回転通過してし渣を破砕するし渣破砕機1において、破砕刃21およびスリット開口部18をそれぞれ内回転体3、外胴体4の下部側のみに形成するとともに、外胴体4の上部側かつ下流側にし渣捕捉用のスクリーン19を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水路や下水路等の水路に設置され、水路中のし渣を破砕する水路設置型し渣破砕機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に分流式汚水中継ポンプ場などでは、汚水路にし渣破砕機を設置し、汚水内に含まれるし渣を破砕して下流に流す処理が行われており、し渣破砕機の一例として特許文献1に記載のものが挙げられる。
【0003】
同文献1に記載のし渣破砕機は、水路に縦置きに設置され、螺旋状に巻回したスクリュー羽根を有する内回転体と、この内回転体の半径方向外側に設けられる外胴体とを備えている。外胴体は、下流側に向け平断面視半環形状を呈し、スリット状の開口部を形成するように上下方向に間隔的に設けられるリングバーを有する。内回転体のスクリュー羽根の螺旋刃には破砕刃がボルトを介して着脱自在に取り付けられており、この破砕刃がスリット状の開口部を回転通過することでし渣が破砕されて下流に流れる。
【特許文献1】特開2004−49944号公報(段落0012、0046)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分流式の汚水路(下水路)では、降雨時はもちろん晴れた日でも流入汚水量が時刻によって異なる場合が殆どであり、一般には朝、夕方等、各家庭が台所で水を使う時間帯に量が多くなる。し渣破砕機の高さは想定される汚水路のピーク水位に合わせて決定され、その際従来では、前記破砕刃をピーク水位の高さ近傍までにわたってスクリュー羽根に設けている。
【0005】
しかしながら、低水位の時間帯が殆どであるような場合にも拘らず、破砕刃をピーク水位の高さまで設ける構造は不経済である。すなわち、磨耗時には交換できるように破砕刃はスクリュー羽根に対して着脱自在に取り付けられた構造であり、これらの取り付け部を数多く形成する構成では製作コストが嵩み、交換時には全ての破砕刃を交換する時間も長くなる。また、外胴部においても、各リングバーを破砕刃と干渉しないように精密に組み付ける必要があるので、組み付け工数の手間からリングバーの数はできるだけ少ない方が好ましい。
【0006】
本発明は、以上のような問題を解決するために創作されたものであり、製作コストの低減が図れる水路設置型し渣破砕機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するため、水位が変動する水路に縦置きに設置され、螺旋状に巻回したスクリュー羽根を有し、該スクリュー羽根の螺旋刃には半径方向外方に突出する破砕刃が着脱自在に取り付けられた内回転体と、該内回転体の半径方向外側に設けられ、下流側に向け平断面視半環形状を呈し、スリット開口部を形成するように上下方向に間隔的に設けられるリングバーを有した外胴体と、を備え、前記破砕刃が前記スリット開口部を回転通過してし渣を破砕するし渣破砕機であって、前記破砕刃および前記スリット開口部をそれぞれ前記内回転体、外胴体の下部側のみに形成するとともに、前記外胴体の上部側かつ下流側にし渣捕捉用のスクリーンを設け、上方部を、捕捉したし渣を前記スクリュー羽根により下方に向けて搬送するし渣搬送部とし、下方部を、前記破砕刃および前記スリット開口部によりし渣を破砕するし渣破砕部としたことを特徴とする水路設置型し渣破砕機とした。
【0008】
この水路設置型し渣破砕機によれば、低水位のときには、水中に含まれるし渣はし渣破砕部に直接流れて破砕され、水位が上昇したときには、水中上部に含まれるし渣はスクリーンにより捕捉されたうえで、スクリュー羽根の搬送作用によりし渣破砕部まで搬送されて、破砕される。し渣破砕部の形成範囲が下部側のみとなるため、破砕刃の個数やその取り付け部の形成数、リングバーの個数などが減り、し渣破砕機の製作コストの低減が図れる。
【0009】
また本発明は、前記スクリュー羽根は、前記内回転体の下端周りでは、し渣を上方に向けて搬送するように巻回されていることを特徴とする水路設置型し渣破砕機とした。
【0010】
この水路設置型し渣破砕機によれば、し渣は内回転体の下端に到達する手前で、破砕刃とスリット開口部とにより破砕される。したがって、内回転体の下端におけるし渣の絡まりや堆積を防止でき、スムースな内回転体の回転機能を維持できる。
【0011】
また本発明は、前記スクリーンをパンチングメタル板から構成したことを特徴とする水路設置型し渣破砕機とした。
【0012】
この水路設置型し渣破砕機によれば、組み付けの容易なスクリーン構造となり、し渣破砕機の製作コストを一層低減できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、し渣破砕機の製作コストの低減が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明に係る水路設置型し渣破砕機の正面図、図2は図1におけるA−A断面図、図3は水路設置型し渣破砕機の縦断面説明図である。
【0015】
図1に示すように、水路設置型し渣破砕機(以降、し渣破砕機という)1は、例えば矩形断面の水路Sに縦置きに設置される。勿論、ここでいう縦置きとは垂直に立てた状態に限られず、若干の傾斜角度をもって立てた状態も含まれる。水路Sとしては、分流式汚水路(下水路)などの水位が変動する水路であって、特に、通常時は低水位であり、一時的、または限られた時間帯にのみ水位が上昇する水路が本発明の好適な対象となる。
【0016】
図3も参照して、し渣破砕機1は、水路に縦置きに設置され、螺旋状に巻回したスクリュー羽根2を有する内回転体3と、この内回転体3の半径方向外側に設けられる外胴体4と、を備える。図2に示すように、水路Sの両側壁から外胴体4にかけては、上流からの水をし渣破砕機1に導くためのガイド板26が設けられる。
【0017】
内回転体3の一例を説明すると、図3に示すように、内回転体3は、鉛直状に配設される鋼管材等からなるスクリュー軸5と、このスクリュー軸5に巻回したスクリュー羽根2等から構成される。スクリュー羽根2はスクリュー軸5の外周面に等ピッチで、或いは水路やし渣の性質の状況に合わせて不等ピッチで、スクリュー軸5の上端部近傍から下端部近傍にわたって螺旋状に巻回形成されており、スクリュー羽根2の外周の端部は螺旋刃2aを構成する。なお、この螺旋刃2aと外胴体4の内周壁との間でもし渣の破砕が行われる。
【0018】
スクリュー軸5の下端の開口部にはハウジング6が嵌合固定されており、スクリュー軸5は、このハウジング6の部位にて軸受7を介して外胴体4の下部固定座16に回転可能に枢支される。一方、スクリュー軸5の上端側においては、シャフト8が上方に延設するように固設されている。このシャフト8は円筒形状のケーシング9内を軸受10等を介して挿通し、ケーシング9の上部に設置した減速機付きのモータ11(図1)に連結している。ケーシング9は、水路S(図1)の上部において左右に掛け渡した支持部材12に取り付けられ、その下端部はフランジ9aを介して外胴体4の上部固定座15に、図示しないボルトにより締結固定されている。以上の構成により、モータ11を駆動することでスクリュー軸5、すなわち内回転体3が鉛直方向の軸回りに回転する。
【0019】
スクリュー羽根2の螺旋刃2aには、半径方向外方に突出する複数の破砕刃21が着脱自在に取り付けられている。図6は、破砕刃21の取り付け構造の一例を示す斜視図である。この例では、スクリュー羽根2に形成した切欠きに、ブロック状の取り付け座22が溶接等により嵌合固定されている。取り付け座22の外周面側は曲面を呈し、螺旋刃2aの面と滑らかに連なっている。取り付け座22の外周面には凹状の溝22aが形成されていて、この溝22aに、破砕刃21をその刃面21aが外方に臨むようにして内嵌し、ボルト23により締結固定する。このように、ボルト23を用いた着脱方式にすることで、磨耗等が生じた場合の交換作業も容易となる。
【0020】
なお、破砕刃21の材質については、リングバー17(図4)よりも相対的に軟らかい材質にして意図的にリングバー17よりも磨耗しやすい状態としてやれば、固定的に構成されるリングバー17の磨耗を抑制できる。
【0021】
従来では、前記破砕刃21は概ねスクリュー羽根2の下端から上端までにわたり取り付けられていたが、本発明では、破砕刃21をスクリュー羽根2の下部側、つまり内回転体3の下部側のみに取り付ける。
【0022】
次いで、外胴体4について説明する。図4の(a)は外胴体4の側面説明図(内回転体3の一部を仮想線で示す)、(b)はスクリュー羽根2とスクリーン19、リングバー17との位置関係を示す断面説明図である。また、図5は外胴体4の外観斜視図である。図3ないし図5を参照して、外胴体4は、その基本枠組みとして、環状の上部固定座15と、円盤状の下部固定座16と、両固定座を連結する左右一対の鉛直状の連結柱13と、連結柱13の高さ方向中程下部寄りに取り付けられた中部固定座14とを備える。中部固定座14は、上部固定座15や下部固定座16の外径と同程度の寸法を有する環状の部材である。連結柱13の下部には、破砕刃21を回転通過させるための溝13aが形成されている。
【0023】
中部固定座14と下部固定座16との間で、左右の連結柱13間には複数のリングバー17が掛け渡され、その端部が例えば溶接等により連結柱13に固設される。リングバー17は、下流側に向け凸となるように平断面視半環形状を呈した部材であって、スリット開口部18を形成するように上下方向に間隔的に設けられる。内回転体3の回転に伴い、破砕刃21がスリット開口部18を上下のリングバー17と摺動する程度に回転通過することによりし渣が破砕され、下流に流れる。
【0024】
外胴体4の上部側でかつ下流側には、し渣捕捉用のスクリーン19が設けられる。スクリーン19の好適例としては、水(および大きさが許容範囲内のし渣)を通過させる小径のスクリーン孔20aが複数穿設されたパンチングメタル板20が挙げられる。パンチングメタル板20は、平断面視半環形状に形成され、下流側に向け凸となるようにして、縁周りが上部固定座15、中部固定座14および左右の連結柱13にボルト締めなどにより固定される。
【0025】
そして、スクリュー羽根2は、少なくとも中部固定座14近辺よりも上部側が、し渣を下方に向けて搬送するようにスクリュー軸5に巻回されている。
以上の構造により、図4に示すように、し渣破砕機1は、中部固定座14周りを境にして、上方部が、スクリーン19により捕捉したし渣をスクリュー羽根2の搬送作用により下方に向けて搬送するし渣搬送部24として構成され、下方部が、破砕刃21およびスリット開口部18によりし渣を破砕するし渣破砕部25として構成される。
【0026】
したがって、例えば通常時の水位が中部固定座14の高さ近辺であれば、水中に含まれるし渣は下方部のし渣破砕部25に直接流れて破砕され、降雨時や水の需要が高い時間帯など一時的に水位が上昇したときには、水中上部に含まれるし渣はスクリーン19により捕捉されたうえで、スクリュー羽根2の搬送作用によりし渣破砕部25まで搬送されて、破砕される。水位が上昇してし渣破砕部25におけるし渣の処理量が一時的に増えても、その時間が限られていればさほど問題はない。
【0027】
本発明によれば、分流式の汚水路など水位が変動する水路において、し渣破砕部25の形成範囲をピーク水位に合わせるのではなく、時間帯の長い通常時の低水位に合わせて、し渣破砕機1の下部側のみとすることで、破砕刃21の個数やその取り付け部の形成数、リングバー17の個数などが減り、し渣破砕機1の製作コストの低減が図れる。メンテナンス時などに破砕刃21を交換する際も、個数が少ないため作業時間が短くて済む。
【0028】
また、スクリュー羽根2の巻回方向については、し渣を下方に向けて搬送するように、内回転体3の上端から下端までにわたって同じ方向にしてもよいが、その場合、内回転体3の下端周りにし渣が絡まったり堆積しやすくなるので、軸受7の機能が損なわれるおそれがある。これに対して、スクリュー羽根2を、内回転体3の下端周りに限ってし渣を上方に向けて搬送するように逆に巻回すれば、し渣は内回転体3の下端に到達する手前で、破砕刃21とスリット開口部18とによる破砕部に送られて破砕される。これによりし渣の絡まりや堆積を防止でき、軸受7の機能、すなわちスムースな内回転体3の回転機能を維持できる。
【0029】
さらに、スクリーン19をパンチングメタル板20から構成すれば、組み付けの容易なスクリーン構造となり、し渣破砕機1の製作コストを一層低減できる。
スクリーン19の他の例としては、図7に示すようにバースクリーン27が挙げられる。この場合、し渣の下方への搬送をスムースにするため、バー27aを鉛直方向に延設させたいわゆる縦引きタイプのバースクリーン27とすることが好ましい。
【0030】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。し渣搬送部24とし渣破砕部25の形成範囲の割合は、設置する水路Sの水位変動の状況から適宜に設定されるものである。その他、各構成要素のレイアウト、形状等は、図面に記載したものに限定されず、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で適宜に設計変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る水路設置型し渣破砕機の正面図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】水路設置型し渣破砕機の縦断面説明図である。
【図4】(a)は外胴体の側面説明図(内回転体の一部を仮想線で示す)、(b)はスクリュー羽根とスクリーン、リングバーとの位置関係を示す断面説明図である。
【図5】外胴体の外観斜視図である。
【図6】破砕刃の取り付け構造の一例を示す斜視図である。
【図7】スクリーンの変形例を示す平断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 し渣破砕機
2 スクリュー羽根
2a 螺旋刃
3 内回転体
4 外胴体
5 スクリュー軸
17 リングバー
18 スリット開口部
19 スクリーン
20 パンチングメタル板
21 破砕刃
24 し渣搬送部
25 し渣破砕部
S 水路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水位が変動する水路に縦置きに設置され、螺旋状に巻回したスクリュー羽根を有し、該スクリュー羽根の螺旋刃には半径方向外方に突出する破砕刃が着脱自在に取り付けられた内回転体と、
該内回転体の半径方向外側に設けられ、下流側に向け平断面視半環形状を呈し、スリット開口部を形成するように上下方向に間隔的に設けられるリングバーを有した外胴体と、
を備え、前記破砕刃が前記スリット開口部を回転通過してし渣を破砕するし渣破砕機であって、
前記破砕刃および前記スリット開口部をそれぞれ前記内回転体、外胴体の下部側のみに形成するとともに、前記外胴体の上部側かつ下流側にし渣捕捉用のスクリーンを設け、
上方部を、捕捉したし渣を前記スクリュー羽根により下方に向けて搬送するし渣搬送部とし、
下方部を、前記破砕刃および前記スリット開口部によりし渣を破砕するし渣破砕部としたことを特徴とする水路設置型し渣破砕機。
【請求項2】
前記スクリュー羽根は、前記内回転体の下端周りでは、し渣を上方に向けて搬送するように巻回されていることを特徴とする請求項1に記載の水路設置型し渣破砕機。
【請求項3】
前記スクリーンをパンチングメタル板から構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水路設置型し渣破砕機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−221700(P2009−221700A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65724(P2008−65724)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(390014074)前澤工業株式会社 (134)
【Fターム(参考)】