説明

永久磁石式回転電機及びそれを用いた電動圧縮機

【課題】 軸心がずれても特性が低下する虞の少ない永久磁石式回転電機を提供すること。
【解決手段】 固定子鉄心6のティース4に集中巻された電機子巻線を、各ティース4毎に、巻回数の異なる少なくとも2個のコイル8a1とコイル8a2、コイル8b1とコイル8b2、コイル8c1とコイル8c2、コイル8d1とコイル8e1とコイル8e2、それにコイル8f1とコイル8f2に分け、 これら2個のコイルを同じティース4ごとに並列に接続した上でY結線し、電機子巻線としたもの。コイル間の誘導起電力の差が小さくなるので、循環電流が抑えられ、特性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石回転界磁型の回転電機に係り、特に、ヒートポンプ用圧縮機に好適な永久磁石式回転電機と、この永久磁石式回転電機を用いた電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エアコン、冷凍庫、或いは冷蔵品用ショーケースなどヒートポンプを使用した機器の電動圧縮機には、集中巻方式の電機子巻線を備えた回転界磁型の永久磁石式回転電機が適用されるようになっている。ここで、この集中巻方式とは、電機子鉄心のティースに電機子巻線が集中して施されている方式のことで、回転界磁型の場合、電機子は固定子となり、電機子巻線は固定子巻線となる。また、このときの界磁には希土類のネオジウム永久磁石が採用されるのが通例である。そして、このような永久磁石式回転電機に関しては、その回転子鉄心中にV字形状の永久磁石挿入孔を設けて永久磁石を配置し、このとき効率向上の見地から、永久磁石の間に凹部を設け、極間の鉄心が削除された形にする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、このような電動圧縮機に使用される永久磁石式回転電機の場合、その駆動にはインバータが用いられるのが通例であるが、この場合のシステム効率は、電動機単体の効率とインバータの効率の乗算値となる。そこで、このシステム効率の向上の観点から、永久磁石式回転電機の極数としては、4極6スロット、或いは6極8スロットが多用されている。一方、特殊な巻線方式、例えば14極12スロット、16極18スロット、10極12スロットの集中巻構成にした場合、巻線インピーダンスのバランスが問題になる。そこで、同一のティース(歯形部)に多層の巻線要素を巻回して接続することにより巻線インピーダンスをバランスさせる方法が従来技術として提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
このとき、4極6スロットの場合については、同一コイルをスロット底部側とスロット開口部側と径方向に2分割し、同相のコイルを4並列回路としたY結線によるものが提案されており、これら従来技術によれば、電動圧縮機駆動用永久磁石式回転電機の回転子形状の最適化が図られ、また、多極機(14極12スロットや16極18スロット)の隣接するティースに多層巻線要素を設けたときの各巻線のインピーダンスをバランスさせることができる。
【特許文献1】特開2002−78255号公報
【特許文献2】特開2001−197696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来技術は、回転電機における軸心のずれに配慮がされておらず、回転子と固定子の空隙が不均一になって特性が低下してしまうという問題があった。すなわち、従来技術は、永久磁石式回転電機の軸心のずれには触れられていない。従って、従来技術では、回転電機の軸心がずれたとき、特性が低下してしまうのである。
【0006】
本発明の目的は、軸心がずれても特性が低下する虞の少ない永久磁石式回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、集中巻方式の電機子巻線を備えた永久磁石式回転電機において、前記電機子巻線の電機子鉄心のティースに集中巻された部分を、巻回数の異なるn個の巻線要素に分け、これらn個の巻線要素を並列に接続して前記電機子巻線を構成することにより達成される。
【0008】
同じく上記目的は、集中巻方式の電機子巻線を備えた永久磁石式回転電機において、前記電機子巻線の電機子鉄心のティースに集中巻された部分を、巻回数の異なる少なくとも2個の巻線要素に分け、これら少なくとも2個の巻線要素を並列に接続して前記電機子巻線を構成することにより達成される。
【0009】
同じく上記目的は、集中巻方式の電機子巻線を備えた永久磁石式回転電機において、前記電機子巻線の電機子鉄心のティースに集中巻された部分を、巻回数の異なる少なくとも3個の巻線要素に分け、これら少なくとも3個の巻線要素を並列に接続して前記電機子巻線を構成することにより達成される。
【0010】
同じく上記目的は、集中巻方式の電機子巻線を備えた永久磁石式回転電機において、前記電機子巻線の電機子鉄心のティースに集中巻された部分を、巻回数の異なる少なくとも4個の巻線要素に分け、これら少なくとも4個の巻線要素を並列に接続して前記電機子巻線を構成することにより達成される。
【0011】
同じく上記目的は、集中巻方式のY結線による電機子巻線を二重に備えた永久磁石式回転電機において、前記電機子巻線の電機子鉄心のティースに集中巻された部分を、巻回数の異なる2n個の巻線要素に分け、これら2n個の巻線要素のうちの同一ティースに巻回されているn個同士を並列に接続した上でそれぞれY結線接続し、一方のY結線巻線と他方のY結線巻線により前記電機子巻線を構成することにより達成される。
【0012】
このとき、前記一方のY結線巻線の中性点と前記他方のY結線巻線の中性点が何処にも接続せず、何れも浮かしたままにしておいても上記目的が達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電機子巻線の巻装方法と結線方法により、偏心回転状態になって回転子が回転した時にも各相巻線間に誘導起電力の偏差が発生せず、循環電流を防止できる。また、誘導起電力の偏差が発生しても、中性点を接続せず、並列回路抵抗が高くなるので、循環電流自体が小さくなるので、特性向上が図れる永久磁石式回転電機が得られる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明による永久磁石式回転電機及びそれを用いた電動圧縮機について、図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、各図中において、共通する符号は同一物を示す。また、以下の実施形態では、本発明を4極の永久磁石式回転電機に適用し、このとき回転子の極数と固定子のスロット数との比を2:3とした場合について説明するのであるが、始めに、本発明による永久磁石式回転電機の一実施形態が適用されている電動圧縮機について、図3により説明する。
【0015】
この図3に示した電動圧縮機40は、例えばエアコンなどに使用される密閉型の圧縮機で、全体がケースの中に密封される。そして、このケースは、円筒状のフレーム30と、これに接合されている上端側の上蓋31、及び下端側の下蓋32により密閉容器として構成され、フレーム30の中に永久磁石式回転電機1と圧縮要素50が収納されることになる。このとき、フレーム30は、図4に示すように、厚板鋼板300(厚さ3〜5mm)を両端からP方向に折り曲げ、円筒状にして合わせ面を溶接(溶接点301)し、端部に上蓋31と下蓋32を溶接し、密閉容器としたものである。
【0016】
この図3に示した電動圧縮機40は、スクロール圧縮機を適用した場合のものであり、このため圧縮要素50は、固定スクロール部材51の端板52に直立する渦巻状ラップ53と、旋回スクロール部材54の端板55に直立する渦巻状ラップ56とを噛み合わせた上で旋回スクロール部材54をクランク回転軸16によって旋回運動させることにより圧縮動作を行うようになっている。このときの旋回運動は、旋回スクロール部材54に係合しているクランク回転軸16の軸芯位置と、永久磁石式回転電機1の回転軸16aの軸芯位置が異なることによって与えられる。
【0017】
このスクロール圧縮機では、固定スクロール部材51と旋回スクロール部材54により圧縮室57(57a、57b、…)が形成されるようになっている。そして、この圧縮室の中で最も外径側に位置している圧縮室が旋回運動に伴って両スクロール部材51、54の中心に向かって移動し、容積が次第に縮小する。そこで、圧縮室57a、57bが両スクロール部材51、54の中心近傍に達すると、両圧縮室57内の吸入パイプ58から吸入されたガスが圧縮され、圧縮室57に連通した吐出口59から圧縮されたガスが吐出され、吐出された圧縮ガスは固定スクロール部材51及び固定部材60に設けられたガス通路(図示せず)を通って固定部材60下部のフレーム30内に至り、フレーム30の側壁に設けられた吐出パイプ61から電動圧縮機40外に排出される。
【0018】
このとき、永久磁石式回転電機1は、別置のインバータ(図示せず)から給電され、圧縮動作に適した回転速度に制御された状態で回転し、旋回スクロール部材54を旋回駆動する。このため永久磁石式回転電機1は固定子2と回転子3を備え、回転子3は回転軸16aに焼き嵌め嵌合されている。そして、この回転軸16aは、その上側にクランク回転軸16を備えていて、これが旋回スクロール部材54に係合されている。また、この回転軸16aの内部には油孔62が形成され、回転軸16aが回転したときフレーム30の下部にある油溜め部63に貯溜されている潤滑油が油孔62を介して滑り軸受タイプの上側軸受部64と、ボール軸受タイプの下側軸受部65に供給される。
【0019】
永久磁石式回転電機1は、固定子巻線8に三相交流電力が供給されることにより回転動作する。従って固定子巻線8に供給する必要があるが、固定子巻線ゆはフレーム30の中に密閉されている。そこで、これに外部から電力を供給するため、フレーム30には端子66が設けてある。一方、下蓋32には、この電動圧縮機40を据え付けるための台座67が設けてある。また、永久磁石式回転電機1の回転軸16aにはクランク回転軸16が形成してあり、従って軸心が異なるため、回転子3のバランスが崩れる。そこで回転子3の両側にカウンターウェイト68(68a、68b)を取り付け、バランスがとられるようになっている。
【0020】
ところで、フレーム30は、図4で説明したように、板状の鋼板300を折り曲げて円筒状に形成している関係上、内周の円径寸法に対する精度が緩く、通常、径寸法で±20ミクロンm程度は変動している。また、固定子2の固定子鉄心6は、このフレーム30の中に焼嵌め嵌合されるので、このとき固定子2がフレーム30内に強固に保持されるようにするため、締め代が0.1mm程度設けられている。そして、この電動圧縮機の組立に際しては、まず、フレーム30内に固定子6を焼き嵌め嵌合させ、次いで圧縮要素50がフレーム30に取り付けられることになる。
【0021】
このとき回転子3の外周面と、固定子鉄心6の内周面間のギャップが均一になるように調整し、その後、ボール軸受タイプの下側軸受部65がフレーム30に固定されることになるが、しかして、このとき、上記した締め代が必要なため、固定子鉄心6の外径よりフレーム30の内径が0.1mm程度小さくされ、且つ、フレーム30の内径真円度が悪いため、固定子2と回転子3の間のギャップ(空隙)が0.1〜0.2mm程度、変動してしまうのが避けられない。従って、従来技術では、永久磁石式回転電機の特性が低下してしまうのであるが、しかし、以下に説明するように、本発明の実施形態によれば、これが抑えられる。
【0022】
・第1の実施形態
図1は、本発明による永久磁石式回転電機の第1の実施形態を示す断面図で、ここで、まず、固定子2は、固定子鉄心6と電機子巻線8により構成されている。このとき固定子鉄心6には、ティース4とコアバック5が形成されていて、電機子巻線8は、この固定子鉄心6のティース4に集中巻されている。ここで、この電機子巻線8は、U相巻線8a、8dと、V相巻線8b、8e、それにW相巻線8c、8fにより、ティース4の間のスロット7の中に収まるようにして三相巻線を構成している。なお、上記したように、この永久磁石式回転電機1は4極6スロットのものであるから、スロットピッチは電気角で120度になっている。
【0023】
次に回転子3は、軸孔9が形成してある回転子鉄心10を備え、その外周面の近傍に一文字形状の永久磁石挿入孔11を形成し、この孔の中に平板状のネオジウム永久磁石12を挿入し、回転子鉄心10に固定して構成されている。なお、詳しくは後述するが、この図には、固定子2と回転子3の間のギャップについて、一方のギャップg1と反対側のギャップg2に「g1>g2」で示す不均衡が現れてしまっている状況が示されている。ここで、この図1の実施形態の特徴は、図示のように、電機子巻線8のコイル(巻線要素)の構成と結線方法にある。
【0024】
まず、一方のU相の巻線8を、ティース4に対して外側に巻回されるコイル8a1と内側に巻回されるコイル8a2の2個に分け、他方のU相の巻線8も、ティース4に対して外側に巻回されるコイル8d1と内側に巻回されるコイル8d2の2個に分ける。次に、一方のV相の巻線8を、ティース4に対して外側に巻回されるコイル8b1と内側に巻回されるコイル8b2の2個に分け、他方のV相の巻線8も、ティース4に対して外側に巻回されるコイル8e1と内側に巻回されるコイル8e2の2個に分ける。また、一方のW相の巻線8を、ティース4に対して外側に巻回されるコイル8c1と内側に巻回されるコイル8c2の2個に分け、他方のW相の巻線8も、ティース4に対して外側に巻回されるコイル8f1と内側に巻回されるコイル8f2の2個に分ける。
【0025】
その上で、図2に示すように、まず、U相のコイル8a1とコイル8a2、及びコイル8d1とコイル8d2をそれぞれ並列に接続し、これらを直列に接続してY結線のU相巻線とする。次に、V相のコイル8c1とコイル8c2、及びコイル8f1とコイル8f2をそれぞれ並列に接続し、これらを直列に接続してY結線のV相巻線とする。更に、W相のコイル8b1とコイル8b2、及びコイル8e1とコイル8e2をそれぞれ並列に接続し、これらを直列に接続してY結線のW相巻線とする。
【0026】
以上が、この実施形態の特徴であるが、この上で更にティース4に対して外側に巻回されるコイル8a1、8b1、8c1、8d1、8e1、8f1のそれぞれの巻回数(ターン数)と、同じく内側に巻回されるコイル8a2、8b2、8c2、8d2、8e2、8f2のそれぞれの巻回数を異なったものとしてあり、具体的には、各コイルについて、ティース4に対して外側に巻回されるコイル8a1、8b1、8c1、8d1、8e1、8f1のそれぞれの巻回数(ターン数)を、同じく内側に巻回されるコイル8a2、8b2、8c2、8d2、8e2、8f2のそれぞれの巻回数よりも所定の回数、多くしておくのである。なお、このときの所定の回数については、詳しくは後述するが、一方のコイル8a1、8b1、8c1、8d1、8e1、8f1のそれぞれと、他方のコイル8a2、8b2、8c2、8d2、8e2、8f2のそれぞれの起電力が略等しくなるような回数にすることになる。
【0027】
次に、この実施形態の作用効果について説明すると、図3により既に説明したように、電動圧縮機40は、固定子2の内径を基準にして回転子3の位置が決定され、この結果、上述したように、固定子2と回転子3のギャップが変動し、回転子3の回転中心が偏心してしまう場合がある。例えば、図1に示す方向にが偏心した場合、ギャップg1>ギャップg2になる。このとき、ギャップg1側のU相では磁束数が減少し、ギャップg2側のU相では磁束数が増加するので、コイル8d1とコイル8d2の誘導起電力が大きくなり、コイル8d1とコイル8d2の誘導起電力は小さくなる。
【0028】
ここで、もしも従来技術において、図8に示すように、各相の巻線について、例えばU相巻線の場合、コイル8a1、8a2、8d1、8d2を並列に接続したとすると、コイル8a1、8a2、8d1、8d2の間に循環電流が流れ、永久磁石式回転電機1の特性が低下してしまう。
【0029】
このことについて詳細に説明すると、上記した電動圧縮機では、スクロールコンプレッサやロータリーコンプレッサなどの圧縮要素(圧縮機構)50が永久磁石式回転電機1と同じフレーム30の中に納められるが、このフレーム30は、図4で説明したように、平板300を円筒状に折り曲げ、溶接して作られるので、内周寸法の精度保持が難しい。また、このフレーム30内には永久磁石式回転電機の固定子2が焼き嵌めされるので、0.1mm程度の締め代があり、このため焼き嵌めした後で固定子鉄心6の内径が0.1〜0.2mm程度変形する。そして、この固定子鉄心6の内径を基準にして回転子3の軸心位置が決められるため、回転子3が偏心してしまうことになる。
【0030】
このように回転子3が偏心していると、回転したとき同一相のテイースのコイル間に誘導する起電力に差が生じてしまう。ここでインバータ装置で駆動した場合、電流は誘導起電力の小さいコイルに流れ易くなり、誘導起電力が大きいコイルには流れ難くなる。この場合、インバータ装置からの電流がアンバランスになってしまい、この結果、トルク脈動を発生したり、コイル間に循環電流が流れたりすることになり、永久磁石式回転電機1の特性が低下してしまうのである。
【0031】
これに対して、この実施形態の場合、各コイルが、図2に示したように接続してあり、且つ、ここで、ティース4に対して外側に巻回されるコイル8a1、8b1、8c1、8d1、8e1、8f1のそれぞれの巻回数(ターン数)と、同じく内側に巻回されるコイル8a2、8b2、8c2、8d2、8e2、8f2のそれぞれの巻回数を異なったものとしてある。
【0032】
この結果、図2に示すように、ティース4に近いコイルの誘導起電力Ea1と遠いコイルの誘導起電力Ea2について、これらが略同等になるように、つまり「Ea1≒Ea2」となるようにでき、且つ、軸位置の偏心によるギャップg1>ギャップg2の結果として現れれる誘導起電力差、すなわち「Ea1、Ea2<Ed1、Ed2」ついても、これらの誘導起電力の和であるEa1+Ed1とEa2+Ed2の和、或いはEa1+Ed2とEa2+Ed1の和については何れも同等になるので、各相内に誘導起電力の偏差が発生せず、循環電流の抑制が得られることになる。
【0033】
従って、この第1の実施形態によれば、回転子3が偏心した状態で回転しても、電機子巻線内に循環電流が発生しないので、たとえ軸心がずれていても特性が低下する虞の少ない永久磁石式回転電機を得ることができる。
【0034】
・第2の実施形態
次に、本発明の第2の実施形態について、図5により説明する。ここで、この図5の実施形態が、図1と図2で説明した第1の実施形態と異なる点は、電機子巻線8の分割数にあり、その他の点は同じである。すなわち、この図5の実施形態では、各相の巻線8がそれぞれ3分割され、各相毎に、ティース4の外側から順にコイル8a1、8b1、8c1、8d1、8e1、8f1と、コイル8a2、8b2、8c2、8d2、8e2、8f2、それにコイル8a3、8b3、8c3、8d3、8e3、8f3が巻回されている点で、第1の実施形態とは異なっている。なお、この図5では、回転子が省略してある。
【0035】
このとき、各コイルの巻回数については、反対にティース4側から順次、多くされていて、コイル8a1、8b1、8c1、8d1、8e1、8f1からコイル8a2、8b2、8c2、8d2、8e2、8f2、それにコイル8a3、8b3、8c3、8d3、8e3、8f3の順にターン数が多くされ、各相で誘導起電力が同等になるようにしてある点は、第1の実施形態の場合と同じであり、各相の巻線がY結線されている点も同じである。
【0036】
・第3の実施形態
次に、同じく本発明の第3の実施形態について、図6により説明する。ここで、この図6の実施形態も、図1と図2で説明した第1の実施形態と異なる点は、電機子巻線8の分割数にあり、その他の点は同じである。すなわち、この図6の実施形態では、各相の巻線8がそれぞれ4分割され、各相毎に、ティース4の外側から順にコイル8a1、8b1、8c1、8d1、8e1、8f1と、コイル8a2、8b2、8c2、8d2、8e2、8f2、コイル8a3、8b3、8c3、8d3、8e3、8f3、それにコイル8a4、8b4、8c4、8d4、8e4、8f4が巻回されている。なお、この図6でも、回転子は省略してある。
【0037】
そして、このとき、各コイルの巻回数についても、反対にティース4側から順次、多くされていて、コイル8a1、8b1、8c1、8d1、8e1、8f1からコイル8a2、8b2、8c2、8d2、8e2、8f2、コイル8a3、8b3、8c3、8d3、8e3、8f3、それにコイル8a4、8b4、8c4、8d4、8e4、8f4の順にターン数(巻回数)が多くされ、各相で誘導起電力が同等になるようにしてある点も、第1の実施形態の場合と同じであり、各相の巻線がY結線されている点も同じである。
【0038】
そして、この図6の実施形態では、各こいるは図8に示すように接続されるが、この場合、各コイルの巻回数が異なっている。従って、これら第2の実施形態と第3の実施形態によっても、ティース4に近いコイルの誘導起電力と遠いコイルの誘導起電力について略同等になるようになり、且つ、偏心回転状態になっても各相巻線間に誘導起電力の偏差が発生しないようにできることになり、この結果、これら第2の実施形態と第3の実施形態によれば、コイルの分割数を多くした場合でも循環電流が防止でき、且つ、たとえ軸心がずれていても特性が低下する虞の少ない永久磁石式回転電機を得ることができる。
【0039】
・第4の実施形態
次に、同じく、本発明の第4の実施形態について、図7により説明すると、この図7の実施形態は、図1と図2で説明した第1の実施形態と同じ分割コイルによる巻線構成を備えている点は同じで、このとき各巻線の巻回数が変えられているいる点も同じであり、異なっているのは、図7から明らかなように、電機子巻線8のY結線接続にあり、図示のように、Y結線接続が2系統に分けられ<電機子鉄心のティースに集中巻された部分を、巻回数の異なる2n個の巻線要素に分け、これら2n個の巻線要素のうちの同一ティースに巻回されているn個同士を並列に接続した上でそれぞれY結線接続し、一方のY結線巻線と他方のY結線巻線により前記電機子巻線が構成ているのが特徴である。
【0040】
このため電機子巻線8は、ティース4に近い内側から外側に向かって巻回数が少なくされているU相巻線8a1、8a2、8d1、8d2と、V相巻線8b1、8b2、8c1、8c2、それにW相巻線8e1、8e2、8f1、8f2を備えている。従って、この場合は、n=2となる。そして、まずU相巻線8a1、8a2とV相巻線8b1、8b2、それにW相巻線8c1、8c2をそれぞれ並列に接続した上で、これらをスター接続して一方のY相結線Y1とし、次にU相巻線8d1、8d2と、V相巻線8e1、8e2、それにW相巻線8f1、8f2をそれぞれ並列に接続した上で、これらもスター接続して他方のY相結線Y2とする。そして、これらY相結線Y1の中性点とY相結線Y2の中性点は何処にも接続せず、何れも浮いたままにしておくのである。
【0041】
従って、この第4の実施形態によっても、ティース4に近いコイルの誘導起電力と遠いコイルの誘導起電力について略同等になるようになり、且つ、偏心回転状態になっても各相巻線間に誘導起電力の偏差が発生しないようにできることになり、この結果、コイルの分割数を多くした場合でも循環電流を防止し、たとえ軸心がずれていても特性が低下する虞の少ない永久磁石式回転電機を得ることができる。また、この第4の実施形態によれば、2系統のY相結線の中性点が何処にも接続されていないことから、並列回路抵抗が高くなるので、この点でも循環電流の抑制が得られ、たとえ軸心がずれていても特性が低下する虞の少ない永久磁石式回転電機を得ることができる。
【0042】
ところで、以上の実施形態では、何れも電機子巻線として単線の場合について説明したが、多層巻線の各層の巻線コイルを複数本持ちにより構成しても良く、この場合でも循環電流を抑制し、循環電流の減少が得られる点には変わりない。また、以上の実施形態では、圧縮要素としてスクロール圧縮機を適用した場合について説明したが、本発明による永久磁石式回転電機の適用対象かスクロール圧縮機に限られないことは言うまでもなく、ロータリーコンプレッサやレシプロコンプレッサなどの圧縮機に適用しても良く、勿論、駆動対象が圧縮機に限られないことも、言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による永久磁石式回転電機の第1の実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による電機子巻線の結線図である。
【図3】永久磁石式回転電機を搭載した電動圧縮機の一例を示す断面図である。
【図4】電動圧縮機のフレーム製造方法の一例を示す説明図である。
【図5】本発明による永久磁石式回転電機の第2の実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明による永久磁石式回転電機の第3の実施形態を示す断面図である。
【図7】本発明の第4の実施形態による電機子巻線の結線図である。
【図8】本発明の第3の実施形態による結線図である。
【符号の説明】
【0044】
1:永久磁石式回転電機
2:固定子
3:回転子
4:ティース
5:コアバック
6:固定子鉄心
7:スロット
8:電機子巻線
9:シャフト孔
10:回転子鉄心
11:永久磁石挿入孔
12:ネオジウム永久磁石
16:クランク回転軸
16a:回転軸
30:フレーム
31:上蓋
32:下蓋
40:電動圧縮機
50:圧縮要素
51:固定スクロール部材
52:端板
53:渦巻状ラップ
54:旋回スクロール部材
55:端板
56:渦巻状ラップ
57:圧縮室
58:吸入パイプ
59:吐出口
60:固定部材
61:吐出パイプ
62:油孔
63:油溜め部
64:上側軸受部
65:下側軸受部
66:ターミナル
67:台座
68:カウンターウェイト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集中巻方式の電機子巻線を備えた永久磁石式回転電機において、
前記電機子巻線の電機子鉄心のティースに集中巻された部分を、巻回数の異なるn個の巻線要素に分け、
これらn個の巻線要素を並列に接続して前記電機子巻線が構成されていることを特徴とする永久磁石式回転電機。
【請求項2】
集中巻方式の電機子巻線を備えた永久磁石式回転電機において、
前記電機子巻線の電機子鉄心のティースに集中巻された部分を、巻回数の異なる少なくとも2個の巻線要素に分け、
これら少なくとも2個の巻線要素を並列に接続して前記電機子巻線が構成されていることを特徴とする永久磁石式回転電機。
【請求項3】
集中巻方式の電機子巻線を備えた永久磁石式回転電機において、
前記電機子巻線の電機子鉄心のティースに集中巻された部分を、巻回数の異なる少なくとも3個の巻線要素に分け、
これら少なくとも3個の巻線要素を並列に接続して前記電機子巻線が構成されていることを特徴とする永久磁石式回転電機。
【請求項4】
集中巻方式の電機子巻線を備えた永久磁石式回転電機において、
前記電機子巻線の電機子鉄心のティースに集中巻された部分を、巻回数の異なる少なくとも4個の巻線要素に分け、
これら少なくとも4個の巻線要素を並列に接続して前記電機子巻線が構成されていることを特徴とする永久磁石式回転電機。
【請求項5】
集中巻方式のY結線による電機子巻線を二重に備えた永久磁石式回転電機において、
前記電機子巻線の電機子鉄心のティースに集中巻された部分を、巻回数の異なる2n個の巻線要素に分け、
これら2n個の巻線要素のうちの同一ティースに巻回されているn個同士を並列に接続した上でそれぞれY結線接続し、一方のY結線巻線と他方のY結線巻線により前記電機子巻線が構成されていることを特徴とする永久磁石式回転電機。
【請求項6】
請求項5に記載の永久磁石式回転電機において、
前記一方のY結線巻線の中性点と前記他方のY結線巻線の中性点が何処にも接続せず、何れも浮かしたままにされていることを特徴とする永久磁石式回転電機。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5の何れかに記載の永久磁石式回転電機を搭載したことを特徴とする電動圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−312513(P2007−312513A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−139264(P2006−139264)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】