説明

汚染物質の除去方法

フッ素置換有機カーボネート、特に、モノ−、ジ−、トリ−またはテトラフルオロフルオロエチレンカーボネートを、水除去剤として、あるいは他の液体または固体の汚染物質、例えば、グリースやダストを除去するために適用することができる。好ましくは、リチウムイオン電池の添加剤用のこれらのフッ素化カーボネートをそれぞれ貯蔵するために用いる輸送タンクまたは貯蔵タンクを、処理することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジアルキルカーボネートおよび4−R−5−R’−1,3−ジオキソラン−2−オン(式中、Rはアルキルであり、R’はHまたはC1〜C3アルキル基である)からなる群から選択される非環式または環式の非置換有機カーボネート、またはフッ素置換有機カーボネート、好ましくは、フルオロアルキルカーボネート、フルオロアルキルフルオロアルキルカーボネート、4−フルオロ−4−R−5−R’−1,3−ジオキソラン−2−オン(式中、Rは鎖状または分岐アルキルであり、R’はHまたはC1〜C3鎖状または分岐アルキル基である)からなる群から選択される環式または非環式の非置換有機カーボネートまたはフッ素置換有機カーボネート、特に好ましくは、フルオロアルキルアルキルカーボネート、フルオロアルキルフルオロアルキルカーボネート、4−フルオロ−4−R−5−R’−1,3−ジオキソラン−2−オン(式中、Rは鎖状または分岐アルキルであり、R’はHまたはC1〜C3鎖状または分岐アルキル基である)、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、トリフルオロエチレンカーボネートおよびテトラフルオロエチレンカーボネートからなる群から選択される非環式または環式のフッ素置換有機カーボネートを用いて、汚染物質、特に、水およびダストを除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート(4,4−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、特に、シス−およびトランス−4,4−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン)、トリフルオロエチレンカーボネート、テトラフルオロエチレンカーボネート、フルオロアルキルアルキルカーボネート、フルオロアルキルフルオロアルキルカーボネート、および4−フルオロ−4−R−5−R’−1,3−ジオキソラン−2−オン(式中、Rはアルキルであり、R’はHまたはC1〜C3アルキル基である)は、リチウムイオン電池に用いる溶媒または共溶媒として有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−309583号公報
【特許文献2】米国特許出願第2006−0036102号明細書
【特許文献3】米国特許第7268238号明細書
【特許文献4】特開2000−344763号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
これらの化合物は、汚染物質を除去するためにも適していることが分かった。特に、これらの化合物は、水除去剤として好適である。同様に、他の液体または固体の汚染物質、例えば、ダストまたは有機液体を除去することができる。
従って、本発明は、水および/または他の液体または固体の汚染物質を除去する方法であって、非環式または環式の非置換有機カーボネート、非環式または環式のフッ素置換有機カーボネート、またはこれらの混合物を含む除去剤を、水、および/または固体の汚染物質、および/または液体の汚染物質で汚染された固形物品の表面と接触させ、その後、除去剤を接触した表面から分離する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
「非環式または環式の非置換有機カーボネート」という用語は、炭素、水素および酸素からなる有機カーボネートを意味する。好ましい非環式の非置換有機カーボネートは、ジアルキルカーボネートであり、この場合において、アルキル置換基は同一または異なり、鎖状または分岐状のC1〜C5アルキルである。より好ましい化合物は、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、およびメチルエチルカーボネートである。
【0006】
好ましい環式非置換カーボネートは、アルキル基が2〜6個の炭素原子を有するアルキレンカーボネートである。好ましい環式の非置換カーボネートは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,1−ジメチルエチレンカーボネート、および1,2−ジメチルエチレンカーボネートである。
【0007】
非環式フルオロアルキルアルキルカーボネート、鎖状アルキル基およびフルオロアルキル基を有する非環式フルオロアルキルフルオロアルキルカーボネート、ならびに環式のフッ素置換アルキレンカーボネートが特に好ましい。フルオロアルキル基およびフルオロアルキレン基は、少なくとも1つのフッ素原子により置換されており、これらは、2つ以上のフッ素原子により置換されていても、さらに過フッ素化されていてもよい。
【0008】
好ましい非環式フルオロアルキル(フルオロ)アルキルカーボネートは、1つ以上のフッ素原子により置換された第1のC1〜C5アルキル基と、同一または異なり、非置換または1つ以上のフッ素原子により置換された第2のC1〜C5アルキル基を有するようなものであり、アルキル基は、鎖状または分岐状であってよいが、好ましくは、鎖状である。この種の最も好ましい化合物は、フルオロメチルメチルカーボネート、ビス−(フルオロメチル)カーボネート、ジフルオロメチルメチルカーボネート、ジフルオロメチルフルオロメチルカーボネート、ビス−(ジフルオロメチル)カーボネート、トリフルオロメチルメチルカーボネート、トリフルオロメチルジフルオロメチルカーボネート、ビス−(トリフルオロメチル)カーボネート、メチル1−フルオロエチルカーボネート、メチル2−フルオロエチルカーボネート、フルオロメチルエチルカーボネート、フルオロメチル1−フルオロエチルカーボネート、フルオロメチル2−フルオロエチルカーボネート、およびフルオロメチル2,2,2−トリフルオロエチルカーボネートである。
【0009】
好ましい環式フッ素置換カーボネートは、フルオロアルキレン基が、2〜6個の炭素原子を有し、少なくとも1つのフッ素原子により置換されている、フルオロアルキレンカーボネートである。
【0010】
環式フッ素置換アルキレンカーボネートはまた、本発明の方法を実施するのに特に好適である。この種の最も好ましい化合物は、フルオロエチレンカーボネート、1,1−ジフルオロエチレンカーボネート、シスおよびトランス1,2−ジフルオロエチレンカーボネート、トリフルオロエチレンカーボネート、テトラフルオロエチレンカーボネート、1つ以上のフッ素原子により置換されたプロピレンカーボネートであり、特に、下式
【化1】

(Rは、C1〜C3アルキルである、任意に、少なくとも1つのフッ素原子により置換されていてもよい。R’は、好ましくは、HまたはC1〜C3アルキルであり、任意に、少なくとも1つのフッ素原子により置換されていてもよい。)
に対応するものである。
【0011】
好適な化合物を、以下の表に挙げる。
【0012】
【表1】

【0013】
カーボネート化合物は、単一化合物として、またはこれらの2つ以上の混合物として適用することができる。これらはまた、後述するとおり、他の溶媒と一緒に適用することもできる。化合物は、添加剤やその他の溶媒を全く含ませることなく、ニート(neat)で適用することが好ましい。各化合物または混合物を適用して、水および/または液体または固体汚染物質を除去すべき物品、例えば、貯蔵タンク、リアクタ、ラインまたはバルブを処理することが好ましく、この物品はこの除去処理後に、物品を清浄化するのに用いた同じ化合物または混合物と接触することが意図されている。例えば、フルオロエチレンカーボネートに用いることが意図されている貯蔵タンクを、除去剤としてのフルオロエチレンカーボネートで処理することが好ましい。ジメチルカーボネートとフルオロエチレンカーボネートの特定の混合物に用いることが意図されている貯蔵タンクについては、この特定の混合物で構成された除去剤で処理することが好ましい。混合物は実質的に同一であるべきである。ここで「実質的に」という用語は、同量の化合物AおよびB、ならびに、存在する場合には「X重量%±1重量%」、好ましくは「X重量%±0.5重量%」の他の化合物を含有する組成物を意味する。例えば、90重量%のエチレンカーボネートおよび10重量%のフルオロエチレンカーボネートを含有する組成物を容器に貯蔵する場合には、容器を、90±1重量%のエチレンカーボネートと10±1重量%のフルオロエチレンカーボネートを、両成分が100重量%となるように含有する除去剤で処理することが好ましい。
【0014】
接触は、物品を液体カーボネートに浸漬させるか、あるいは、カーボネートを、物品(例えば、貯蔵タンク)の表面にスプレーするかまたは物品に充填することにより行うことができる。所望であれば、物品とカーボネート間の接触は、機械的、例えば、物品を回転または振とうすることにより増大させることができる。
【0015】
汚染物質が、固体物品から、所望の程度除去された後、物品とカーボネート間の接触を終了させる。例えば、物品をカーボネートから取り出すかまたはカーボネートを流出させることができる。所望であれば、物品を、例えば、真空中で乾燥させることができる。処理することができる物品は、例えば、電子産業の高精密部品、搬送、貯蔵または反応の手段、例えば、ボトルもしくはタンク、パイプ、リアクタ等の容器である。使用済みカーボネートは、例えば、蒸留することによって、再生することができる。
【0016】
好ましい実施形態において、本発明は、水および/または他の液体または固体の汚染物質を除去する方法に関する。この場合において、ジアルキルカーボネート(アルキル基が同一または異なり、鎖状または分岐C1〜C5アルキル基である)の群から選択される非環式または環式の非置換有機カーボネートを含む除去剤、特に好ましい実施形態においては、フルオロアルキルアルキルカーボネート(フルオロアルキル基が少なくとも1つのフッ素原子により置換された1〜5C原子を有する鎖状または分岐アルキルであり、アルキル基が1〜5C原子を有する鎖状または分岐アルキルであるもの);フルオロアルキルフルオロアルキルカーボネート(フルオロアルキル基が同一または異なり、各基が少なくとも1つのフッ素原子により置換された1〜5C原子を有する鎖状または分岐アルキルであるもの);4−フルオロ−4−R−5−R’−1,3−ジオキソラン−2−オン(式中、RはC1〜C5アルキルであり、R’はHまたはC1〜C3アルキル基であるもの);モノ−、ジ−、またはトリフッ素置換プロピレンカーボネート;モノ−、ジ−、トリ−およびテトラフルオロエチレンカーボネート;または前述した化合物の1つ以上の混合物からなる群から選択されるフッ素置換有機カーボネートを含む除去剤を、水および/または固体または液体の汚染物質で汚染された固体物品表面と接触させ、除去剤を接触した表面から分離する。
【0017】
好ましい化合物は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、モノ−、ジ−、トリ−、またはテトラフルオロエチレンカーボネート、フルオロメチルメチルカーボネート、1−フルオロエチルメチルカーボネート、1−フルオロエチルエチルカーボネート、1−フルオロエチル2,2,2−トリフルオロエチルカーボネート、4−フルオロ−4−R−5−R’−1,3−ジオキソラン−2−オン(式中、Rはメチルまたはエチルであり、R’はH、メチル、またはエチル基である)であり、特に、4−フルオロ−4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、そのフッ素置換化合物が特に好ましい。
【0018】
モノ−、ジ−、トリ−、またはテトラフルオロエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−R−5−R’−1,3−ジオキソラン−2−オン(式中、Rはメチルまたはエチルであり、R’はH、メチル、またはエチル基である)、特に、4−フルオロ−4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オンが非常に好ましい。
【0019】
最も好ましい化合物は、モノ−、ジ−、トリ−、またはテトラフルオロエチレンカーボネートである。本発明を、これらの最も好ましい化合物を参照してさらに説明していく。
【0020】
処理後、モノ−、ジ−、トリ−、またはテトラフルオロエチレンカーボネートまたは複数のカーボネートを、接触した物品から除去し、包含した水を除去すること(例えば、シリカゲルで処理すること、好ましくは、モレキュラーシーブ、ゼオライト、結晶化、沈殿で処理すること、あるいは再蒸留すること)によって、再生することができる。水に加えて、本発明の方法を実施する場合に、他の存在する可能性がある不純物、例えば、グリースまたは接着性固体を除去する。例えば、存在する場合には、水と共に、ダストまたは細粒金属またはポリマー粒子も除去することができる。本方法を、好ましくは固体の表面から水を除去するために適用する。水除去と同時に、他の汚染物質、好ましくは、固体汚染物質、特に、ダスト、例えば金属貯蔵タンクの研磨または表面処理に起因する金属微粒子、および物品の製造に適用されたポリマー粒子を除去することができる。例えば、ニートのモノフルオロエチレンカーボネートを適用して、ニートのモノフルオロエチレンカーボネートで充填されることが意図されている容器から水を除去する場合、またはニートのシス−4,5−ジフルオロエチレンカーボネートを適用して、ニートのシス−4,5−ジフルオロエチレンカーボネートで充填されることが意図されている容器から水を除去する場合、またはニートのトランス−4,5−ジフルオロエチレンカーボネートを適用して、ニートトランス−4,5−ジフルオロエチレンカーボネートで充填されることが意図されている容器から水を除去する場合には、固体汚染物質、特に、ダストを同時に除去することができる。
【0021】
フッ素置換有機カーボネート、とりわけ、非置換ジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、フッ素化ジアルキルカーボネート、およびフッ素化アルキレンカーボネート、具体的には、上述したフッ素化エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートならびにこれらの混合物の適用分野は、例えば、水または水分と接触したか、あるいは水と接触した可能性がある、電気、電子、光学および機械産業における高精密部品からの(安全を確実にするための)水の除去である。これらの部品の表面に水が付着すると、これらを使用する後の段階において特定の有害な影響が及ぼされたり、これらの品質に有害な影響が及ぼされたりする危険性がある。従って、数多くの精密部品においては、表面に付着する水を完全になくすことが必須である。
【0022】
本発明の水除去方法の好ましい別の分野は、三次元本体、例えば、ボトルもしくはタンク、パイプ、またはリアクタといった容器のような、搬送、貯蔵、または反応手段の内部領域を処理することである。これらの内部領域が水と接触した場合、これらの内部領域を化学化合物と接触させる前に、この水を除去することが望ましい。内部領域が水と接触した可能性があるような場合であって安全を確実にしたい場合にも、本発明の方法を実施することができる。本方法はまた、カーボネートがその後の使用のために充填される物品の表面、例えば、フッ素カーボネートを含有する液体と接触することが意図されている部品(例えば、Liイオン電池筺体やLiイオン電池カソードおよびアノード)の内部表面から、水または固体汚染物質を除去することもできる。
【0023】
非置換有機カーボネートおよびフッ素置換有機カーボネート、好ましくはフッ素置換アルキレンカーボネート、特にフッ素置換エチレンカーボネート、またはかかる化合物の混合物を、水除去剤としてニート形態で用いることができ、これが、適用の好ましいやり方である。所望であれば、カーボネートまたはカーボネートの混合物を、1種以上の共溶媒、理想的には、水除去剤として知られている共溶媒と共に適用する。「共溶媒」という用語は、フッ素置換有機カーボネート、好ましくはフッ素置換アルキレンカーボネート、特にフッ素置換エチレンカーボネートと、1:100〜1:1の重量割合で混和可能な有機化合物または有機化合物の混合物を意味する。例えば、C3〜C10ハイドロフルオロカーボンからなる群から選択される1種以上の共溶媒、特に、1種以上のC3〜C5ハイドロフルオロカーボン、C5〜C10アルカンもしくはシクロアルカン、C1〜C10アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、およびデカノール)、C3〜C8ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、およびジエチルケトン)、C2〜C8エステル(例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチルお、よび酢酸エチル)、C2〜C8エーテル(例えば、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、および1,4−ジオキサン)、C1〜C3塩素化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、トランス−1,2−ジクロロエチレン、およびシス−1,2−ジクロロエチレン)およびC2〜C4クロロフッ素化炭化水素(例えば、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン)と共に適用することができる。1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、1,1,1,2,2,4−ヘキサフルオロブタン、および1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタンが、好ましいハイドロフルオロカーボンである。1種以上のフルオロアルキレンカーボネート、C3〜C10ハイドロフルオロカーボンと、追加的に1種以上のアルカン、シクロアルカン、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、上述した塩素化またはクロロフッ素化炭化水素とを含む組成物を適用することが多い。
【0024】
フッ素置換アルキレンカーボネートと、1種以上の共溶媒との混合物において、カーボネートは、1重量%から100重量%未満の量で存在する。
【0025】
さらに、添加剤、特に、表面活性剤を存在させることができる。例えば、脂肪族脂肪モノカルボン酸の塩または脂肪族脂肪モノアミンの塩を存在させることができる。あるいは、イミダゾリンを存在させることができる。有用なイミダゾリンは、その内容を本明細書に参考文献として援用する米国特許第5948174号明細書に記載されている。好ましくは、イミダゾリンは、遊離塩基の形態、あるいはモノ−またはジカルボキシレート塩の形態、例えば、ラウリン酸塩およびオレイン酸塩で存在する。これらは、Servamin(登録商標)KOO360およびServamin(登録商標)KOO330(Servo社より販売)、Imidazoline180H、Imidazoline12NH、およびImidazoline12OH(Lakeland社より販売)、ならびにMiramine(登録商標)(Rhone−Poulenc社より販売)の名称で市販されている。イミダゾリン含量は、組成物の5重量%を超えない。所望であれば、揮発性溶媒、例えば、ハイドロフルオロカーボンによる後処理を、後で実施してもよい。
【0026】
好ましい実施形態では、フッ素置換有機カーボネート、好ましくはフッ素置換アルキレンカーボネート、特にフッ素置換エチレンカーボネートが、唯一の水除去剤であり、ニート形態で用いる。好ましい実施形態では、水除去剤は、フッ素置換有機カーボネートからなる。好ましくは、水除去剤は、モノフルオロエチレンカーボネート(フルオロエチレンカーボネートと表されることもある)、または、ジフルオロエチレンカーボネート、トリフルオロエチレンカーボネート、もしくはテトラフルオロエチレンカーボネートのうちの1つからなる。非常に好ましい実施形態では、フッ素置換有機カーボネート、特にフッ素置換エチレンカーボネートを、ニート形態および高純度で用いる。「高純度」という用語は、HFの含量が、0.01重量%以下、好ましくは、100ppmより少ない、好ましくは、20ppmより少ない、特に好ましくは、10ppmより少ないことを意味する。ニートの物質を、水を除去する任意の用途で適用することができるが、ニートの水除去剤を適用して、ニートであり、好ましくは純粋である同一の各フッ素置換有機カーボネートの搬送、貯蔵または反応に用いる手段を処理することが好ましい。好ましい実施形態では、ニートの水除去剤を適用して、フッ素置換エチレンカーボネートの搬送、貯蔵または反応に用いるかまたは用いることが意図されている手段を処理する。例えば、ニートであり純粋である各フッ素置換アルキレンカーボネート、特にフッ素置換エチレンカーボネートで後で充填されることとなっている容器を、ニートであり純粋であるフッ素置換アルキレンカーボネート、特にフッ素化エチレンカーボネートと接触させることができる。「容器」という用語には、例えば、任意の所望のサイズ、例えば、10〜1000mlの容積、または1〜1000リットル、さらには60,000リットルまで、およびそれ以上の容積の、ボトルやタンクが含まれる。これらのタンクは、例えば、ISO容器である。このように、工業目的のレクチャーボトルおよび大小貯蔵タンクを清浄化することができる。
【0027】
本発明の方法を実施することができる別の分野は、ニートであり純粋であるフッ素置換有機カーボネートの製造に用いる接触手段である。フッ素置換エチレンカーボネートを考慮して、特に、ニートであり純粋であるフッ素置換エチレンカーボネートの製造を考慮して、あるいは、ニートであり純粋であるフッ素置換エチレンカーボネートを得るための不純なフッ素置換エチレンカーボネートの精製を考慮して、以下に詳細に説明するが、フッ素置換非環式カーボネートの製造にも適用することができる。かかる手段としては、パイプ、バルブ、リアクタ、蒸留装置、ストリッピングカラム、および貯蔵タンクが挙げられる。本発明の方法は、ニートの純粋なフッ素置換エチレンカーボネートを取り扱うために用いる接触手段によって、適用することもできる。例えば、搬送ボトルまたは搬送タンクのみならず、貯蔵タンク(例えば、固定貯蔵タンクおよび大型トラックまたは貨車の貯蔵タンク)間のポンプ、パイプまたはラインを、ニートの純粋な化合物と接触させて、これらの物品を、ニート、純粋な化合物を一方の貯蔵タンクから他方へ通過させることによる取扱いを開始するためにニート、純粋な化合物と接触させる前に、手段に付着している可能性がある全ての水を除去することができる。
【0028】
上述したとおり、各除去剤と、後で処理された表面と接触することとなるフッ素置換有機カーボネートとは同一であることが好ましい。このように、トランス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを適用して、トランス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの搬送または貯蔵に用いられることが意図されている物品から水を除去する。同じことが、相当するシス化合物に当てはまる。このシス化合物の融点は、約50℃であり、他の溶媒と共に、または高温で適用する必要がある。
【0029】
好ましい実施形態では、フルオロエチレンカーボネートを、フルオロエチレンカーボネートで充填されることが意図されている貯蔵手段、取扱い手段、または搬送手段を処理するために、水除去剤として適用する。本発明を、好ましい化合物であるフルオロエチレンカーボネートの使用を考慮して、さらに説明していく。
【0030】
上述したフルオロエチレンカーボネートを、リチウムイオン電池の溶媒または共溶媒として用いる。この使用には、非常に乾燥した製品が必要とされる。フルオロエチレンカーボネートは、その製造中に乾燥することができるが、取扱い中に、例えば、湿った空気、または湿った搬送もしくは貯蔵容器(例えば、ボトルやタンク)と接触することによって、水を取り込む恐れがある。フルオロエチレンカーボネートは、ステンレス鋼容器中、またはポリマーコーティングされたシート金属容器(通常、これらの物品はポリエチレンライニングされている)中で貯蔵または搬送されることが多い。ステンレス鋼容器は、場合により周囲圧より低い圧力を加えることによる助けを借りて、加熱工程およびこれらに不活性ガスを吹き込む工程によって乾燥させることができるが、ライニングに付着している水分を通常含有するPEライニング物品にはあまり有効ではない。ここでは、乾燥した(無水の)フルオロエチレンカーボネートと接触させることによる水除去は、非常に単純かつ有効な方法である。とりわけ、貯蔵または搬送物品が、追加的な化学薬品と接触しないことが大きな利点である。かかる貯蔵または搬送物品の充填は、フルオロエチレンカーボネートの製造に関連してなされることが多いことから、水含有カーボネートを、フルオロエチレンカーボネートの製造過程におけるフルオロエチレンカーボネートに添加することができ、その調製プロセスの枠組みにおいて、溶解した水を除去することができる。水の除去に加えて、他の汚染物質、例えば、ダストや有機汚染物質のような固体汚染物質も除去される。ポリマーライニングされたシートからできた物品を考慮すると利点は特に明白であるが、本発明の方法は、鋼容器から水を除去するためにも適用することができる。ここでは、エネルギーを節約し、水の除去ばかりでなく、鋼物品の内部に付着するであろう固体の汚染物質または有機汚染物質も除去することが可能である。本方法は、組立後にフルオロエチレンカーボネートと接触するLiイオン電池部品を清浄化するために用いることもできる。
【0031】
このように、各フッ素置換カーボネートを用いて、水および、存在する場合には、グリース、ダスト、または付着した固体を、ニートの各精製フッ素置換カーボネート、好ましくはフッ素置換アルキレンカーボネート、特にフッ素置換エチレンカーボネートと接触するように設計された物品から除去することが、本発明の方法の好ましい実施形態である。
【0032】
本発明の別の実施形態は、非環式または環式のフッ素置換有機カーボネート、特にフッ素置換アルキレンカーボネートを、少なくとも1種の界面活性剤または水の吸収を改善するかあるいはエマルジョンの形成を防ぐ溶剤(例えば、界面活性剤またはイミダゾリン)と共に含む水除去用組成物である。組成物は、共溶媒を含んでいてもよい。好ましい共溶媒は、C3〜C10ハイドロフルオロカーボン、特に、1種以上のC3〜C5ハイドロフルオロカーボン;C5〜C10アルカンまたはシクロアルカン;C3〜C8ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、およびジエチルケトン);C2〜C8エステル(例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、および酢酸エチル);C2〜C8エーテル(例えば、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、および1,4−ジオキサン);C1〜C3飽和塩素化炭化水素またはC2およびC3不飽和塩素化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、トランス−1,2−ジクロロエチレン、およびシス−1,2−ジクロロエチレン);およびC2〜C4クロロフッ素化炭化水素(例えば、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン)からなる群から選択される。C1〜C10アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、およびデカノール)を用いてもよいが、これは好ましくない。
【0033】
好ましいフッ素置換有機カーボネートは、上述したものである。最も好ましくは、組成物は、フルオロアルキルアルキルカーボネートおよびフルオロアルキルフルオロアルキルカーボネート(フルオロアルキル基およびアルキル基が、1〜5個の炭素原子を含み、鎖状および分岐であるもの)および環式フルオロアルキレンカーボネート(フルオロアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含有するもの)からなる群から選択されるフッ素置換有機カーボネートを含む。
【0034】
その最も広い形態における本発明による方法の利点は、さらなる水除去剤を提供することである。
【0035】
好ましい実施形態における本発明の利点は、水、ダストまたはグリース除去剤として用いた同じ化合物の取扱い(例えば、貯蔵または搬送)に用いることが意図されている物品の内側表面から水(およびダストやグリースなどのその他の汚染物質)を除去することができることである。
【0036】
本発明を、さらに詳細に説明していくが、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0037】
概論:実施例で適用したフルオロエチレンカーボネートは、エチレンカーボネートまたはフルオロエチレンカーボネートの、HFで希釈した元素フッ素による直接フッ素化、および精製操作によってそれぞれ得られる、極めて純粋な化合物である。例えば、フルオロエチレンカーボネート(「F1EC」)は、1,3−ジオキソラン−2−オン(エチレンカーボネート、「EC」)の元素フッ素との反応によって非置換エチレンカーボネートからそれぞれ調製することができる。このことは、例えば、特開2000−309583号公報に記載されており、ここでは、反応が、ECの溶融物またはその無水フッ化物溶液で実施されている。任意に、パーフルオロヘキサンを存在させることができ、この場合、1,3−ジオキソラン−2−オンの懸濁液が形成される。米国特許出願第2006−0036102号明細書では、エチレンカーボネートを、F1ECに溶解し、フッ素と接触させている。米国特許第7268238号明細書では、反応が、ラシヒリングのあるリアクタで実施され、フッ素ガスの好適な泡サイズが得られている。ジ−、トリ−、およびテトラフルオロエチレンカーボネートは、高比率のフッ素を反応に添加してエチレンカーボネートから調製することができ、あるいは、モノフッ素化エチレンカーボネートをさらにフッ素と反応させることによって調製することができる。この方法でのジフルオロエチレンカーボネートの製造は、特開2000−344763号公報に記載されている。粗反応混合物を水で処理してHFを除去することができ、その後蒸留することができる。あるいは、水系ワークアップを省略して、3回以上の蒸留により単離を行うことができる。
【0038】
フルオロアルキル(フルオロ)アルキルカーボネートは、COCl、COFCl、またはCOClおよび各アルコールの逐次的反応を、所望される場合には、塩基、例えば、第3級アミン(例えば、トリエチルアミン)の存在下で実施し、任意に、その後に塩素−フッ素交換を実施することによって、製造することができる。C−1位がアルキル基で置換されたアルキルカーボネートは、未公開の欧州特許出願第09165665.2号明細書に記載したとおりに製造することができる。
【0039】
そのプロセスでは、式(II)の1−フルオロアルキルフルオロホルメート、FCHROC(O)F、または式(II’)の1−フルオロアルキルクロロホルメート、FCHROC(O)Clを、式(III)のアルコール、R’OH(式中、Rは水素またはC1〜C4アルキル基であり、R’は、任意に少なくとも1個のフッ素原子により置換されていてもよいC1〜C5アルキル基である)と反応させるか、あるいは、式(IV)のクロロアルキルフルオロホルメート、ClCHROC(O)F、または式(IV’)のクロロアルキルクロロホルメート、ClCHROC(O)Cl(式中、Rは上述したとおりである)と、式(III)のアルコール、R’OH(式中、R’は上述したとおりである)とを反応させ、その後塩素−フッ素交換させる。
【0040】
式(II)の中間体化合物、FCHROC(O)F、および(IV)の中間体化合物、ClCHROC(O)Fは、それぞれ、フッ化カルボニルまたは塩化カルボニルと、式:RC(O)H(式中、Rは、1〜5C原子を有する鎖状または分岐のアルキルまたはHを意味する)のアルデヒドとから製造することができる。好ましくは、RはHを意味し、ここでは、アルデヒドはホルムアルデヒドである。ホルムアルデヒドは、モノマーホルムアルデヒドを形成させるには、例えば、熱的にクラッキングしなければならない、パラホルムアルデヒドまたはトリオキサンの形態で適用することができる。
【0041】
フッ化カルボニルまたは塩化カルボニルとアルデヒドとのモル比は、それぞれ、0.9:1以上であることが好ましい。フッ化カルボニルまたは塩化カルボニルとアルデヒドとのモル比は、それぞれ、5:1以下であることが好ましい。
【0042】
フッ化カルボニルまたは塩化カルボニルとアルデヒドと間の反応が、触媒されることが好ましい。
【0043】
反応は、例えば、Fにより触媒され得る。例えば、反応は、そのまま添加することができるHFか、または少量の水の添加により系内で調製したHFによって、触媒され得る。
【0044】
好ましい触媒は、フッ化物アニオン(例えば、アルカリ土類金属フッ化物またはアルカリ金属フッ化物、例えば、CsF)を含有する触媒、あるいはフッ化カルボニルから形成されたフッ化物イオンと予備触媒とを含有する触媒である。好ましい予備触媒は、ジアルキルホルムアミド、特にジメチルホルムアミドである。ホルムアミドとフッ化カルボニルとは、アルデヒド上の求核反応を開始する「裸の」フッ化物イオンを形成すると考えられる。フッ化物イオンとアルデヒド分子とから形成された付加物の負に帯電した酸素が、次にフッ化カルボニル分子と反応して、フルオロメチルフルオロホルマート、一般的には、フルオロアルキルフルオロホルマートを形成する。
【0045】
ピリジン、有利には4−ジアルキルアミノピリジン、特に4−ジメチルアミノピリジンも、好適な予備触媒と考えられる。
【0046】
4−フルオロ−4−R−5−R’−1,3−ジオキソラン−2−オンは、式(II)の化合物、FC(O)OCHR’C(O)R(式中、Rはアルキルであり、R’はHまたはC1〜C3アルキルである)の環化により、未公開の欧州特許出願第09161429.7号明細書に記載したとおりに調製することができる。Rは、好ましくは、C1〜C5アルキル、より好ましくは、C1〜C3アルキルを意味する。最も好ましくは、Rは、メチル、エチル、i−プロピル、およびn−プロピルを意味する。R’は、好ましくはHである。特に好ましくは、Rはメチルであり、R’はHである。
【0047】
環化反応は、窒素含有複素環化合物により、またはフッ化物イオンにより触媒されることが好ましい。好ましい実施形態では、複素環化合物は、芳香族化合物である。例えば、ピリジンまたは2−メチルイミダゾールを触媒として用いることができる。特に好ましいのは、少なくとも1個のジアルキルアミノ基によって置換されたピリジンである。4−ジメチルアミノピリジンが非常に好適である。他の4−ジアルキルアミノピリジン、例えば、アルキルがC1〜C3アルキル基を意味するものも好適と考えられる。
【0048】
環化反応は、好ましくは、20℃以上の温度で実施する。50℃以上の温度で実施することが好ましい。200℃以下の温度で実施することが好ましい。
【0049】
反応は、液相で実施する。バッチ式または連続式で実施することができる。
【0050】
環化反応は、ニートで、あるいは溶媒の存在下で実施することができる。好適な溶媒は、非プロトン性有機溶媒である。例えば、エーテル、エステル、クロロカーボン、パーフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、炭化水素、および芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、1個以上のC1〜C3アルキル基で置換されたベンゼン、1個以上のハロゲン原子で置換されたベンゼンが好適である。トルエンまたはテトラヒドロフランが非常に好適である。また、個々の目的とする生成物、4−フルオロ−4−アルキル−5−R’−1,3−ジオキソラン−2−オンが好適な溶媒であり、追加の化合物を分離する必要がないため、ワークアップが特に容易である。
【0051】
生成した4−フルオロ−4−アルキル−5−R’−1,3−ジオキソラン−2−オンを、公知の方法、例えば、蒸留、結晶化または沈殿によって単離することができる。
【0052】
[実施例1]:PEライニングされた搬送容器からのF1ECを用いる水の除去
30リットルの内部容積のPEライニングされた容器を、電池溶媒として用いる高純度フルオロエチレンカーボネートの搬送手段として適用するものとする。2リットルの乾燥フルオロエチレンカーボネート(純度:>99.9重量%)を容器にスプレーする。容器の気体雰囲気は、主に、不活性ガス(窒素)で構成される。容器の内壁は、電池溶媒とすることが意図されたフルオロエチレンカーボネートにおいて望ましくない付着水分を含んでいる。容器を閉じ、振とうすることにより、内壁が、フルオロエチレンカーボネートと完全に接触する。付着水分が、フルオロエチレンカーボネートにより除去される。容器を開き、フルオロエチレンカーボネートを除去し、新たな高純度フルオロエチレンカーボネートをそれが中に貯蔵される容器に充填する。貯蔵されたフルオロエチレンカーボネートに実質的に水分が検出される可能性はない。
【0053】
容器から除去された水含有フルオロエチレンカーボネートを、精製工程におけるフルオロエチレンカーボネート含有反応混合物に、特に、蒸留前の反応混合物に添加する。
【0054】
[実施例2]:シス−4,5−ジフルオロエチレンカーボネートを用いる水除去
電池の溶媒として有用なシス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの貯蔵に用いるものとする容器について実施する以外は、実施例1を繰り返す。ここでは、容器を、60℃で、シス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(「シス−F2EC」)と接触させる。水を含有するシス−F2ECを、フルオロエチレンカーボネート生成の反応混合物、またはジフルオロエチレンカーボネート生成の反応混合物のいずれかに添加することができる。脱水容器を、純粋なシス−4,5−ジフルオロエチレンカーボネートで充填する。貯蔵された生成物に水分が検出される可能性はない。
【0055】
[実施例3]:トランス−4,5−ジフルオロエチレンカーボネートを用いる水除去
電池の溶媒として同じく有用なトランス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの貯蔵に用いられるものとする容器について実施する以外は、実施例2を繰り返す。ここでは、容器を、トランス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(「トランス−F2EC」)と接触させる。水を含有するトランス−F2ECを、フルオロエチレンカーボネート生成の反応混合物、またはジフルオロエチレンカーボネート生成の反応混合物のいずれかに添加することができる。脱水容器を、純粋なトランス−4,5−ジフルオロエチレンカーボネートで充填する。貯蔵された生成物に水分が検出される可能性はない。
【0056】
[実施例4]:水除去組成物による水除去
水除去組成物は、70重量部のHFC−365mfc、30重量部のトランス−1,2−ジクロロエチレン、および15重量部のフルオロエチレンカーボネートを含み、これらの成分を混合することによって得られたものである。その表面にある程度水分を含む金属部品を、この組成物に浸漬して水分を除去する。次いで、処理した金属部品を組成物から取り出す。
【0057】
[実施例5]:水除去組成物による水除去
水除去組成物は、90重量部のジメチルカーボネートおよび10重量部のフルオロエチレンカーボネートを含み、これらの成分を混合することによって得られたものである。その表面にある程度水分を含む金属貯蔵タンクの内側表面に、この組成物をスプレーする。溶剤混合物を、タンクから除去し、ジメチルカーボネートとフルオロエチレンカーボネートとの同一の混合物を、それが中に貯蔵されるタンクに充填する。
【0058】
[実施例6]:水除去組成物による水除去
前記重量比のポリプロピレンカーボネートとフルオロエチレンカーボネートとの混合物を用いて、実施例5を繰り返す。
【0059】
[実施例7]:水除去組成物による水除去
前記重量比のエチレンカーボネートとフルオロエチレンカーボネートとの混合物を用いて、実施例5を繰り返す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水および/または他の液体もしくは固体の汚染物質を表面から除去する方法であって、非環式もしくは環式の非置換有機カーボネート、非環式フッ素置換有機カーボネート、環式フッ素置換有機カーボネート、またはこれらの混合物を含む除去剤を、水および/または固体もしくは液体の汚染物質で汚染された固形物品の表面と接触させ、前記除去剤を前記接触させた表面から分離する方法。
【請求項2】
前記除去剤をニートで適用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記除去剤を、前記除去処理の後に、除去処理に用いた前記カーボネートまたはカーボネート混合物と実質的に同一の有機カーボネートまたは有機カーボネート混合物と接触させることが意図されている物品を処理するために使用する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記除去剤には、アルキル基が同一または異なり、鎖状または分岐C1〜C5アルキルで表わされるジアルキルカーボネート、アルキレン基がC2〜C6アルキルで表わされるアルキレンカーボネート、フルオロアルキル基およびアルキル基が鎖状または分岐であり1〜5個の炭素原子を有するフルオロアルキルアルキルカーボネートおよびフルオロアルキルフルオロアルキルカーボネート、ならびに、フルオロアルキレン基が2〜6個の炭素原子を有する環式フッ素置換フルオロアルキレンカーボネートが含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記除去剤が、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、モノ−、ジ−、トリ−、またはテトラフルオロエチレンカーボネート、フルオロメチルメチルカーボネート、1−フルオロエチルメチルカーボネート;1−フルオロエチルエチルカーボネート、1−フルオロエチル2,2,2−トリフルオロエチルカーボネート、および4−フルオロ−4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オンからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記除去剤が、モノ−、ジ−、トリ−、およびテトラフルオロエチレンカーボネートまたはこれらの混合物からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
モノフルオロエチレンカーボネート、シス−4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、またはトランス−4,5−ジフルオロエチレンカーボネートを適用する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ニートのモノフルオロエチレンカーボネート、シス−4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、またはトランス−4,5−ジフルオロエチレンカーボネートを適用する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ニートのモノフルオロエチレンカーボネートで充填されることが意図されている容器から水を除去するためにニートのモノフルオロエチレンカーボネートを適用するか、ニートのシス−4,5−ジフルオロエチレンカーボネートで充填されることが意図されている容器から水を除去するためにニートのシス−4,5−ジフルオロエチレンカーボネートを適用するか、あるいはニートのトランス−4,5−ジフルオロエチレンカーボネートで充填されることが意図されている容器から水を除去するためにニートのトランス−4,5−ジフルオロエチレンカーボネートを適用する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
他の汚染物質を同時に除去する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
モノフルオロエチレンカーボネート、シス−4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、またはトランス−4,5−ジフルオロエチレンカーボネートを用いて、Liイオン電池電解質溶媒用の添加剤として用いられる前記各フッ素化カーボネートを貯蔵することが意図されている容器を清浄化するか、あるいはLiイオン電池部品を清浄化する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
非環式または環式の非置換有機カーボネートまたは非環式または環式のフッ素化有機カーボネートと、少なくとも1種の界面活性剤とを含む、水除去に好適な組成物。
【請求項13】
非環式または環式のフッ素化有機カーボネートを含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記フッ素化有機カーボネートが、フルオロアルキル基およびアルキル基が鎖状または分岐状であり1〜5個の炭素原子を有するフルオロアルキルアルキルカーボネートおよびフルオロアルキルフルオロアルキルカーボネート、ならびにフルオロアルキレン基が2〜6個の炭素原子を有する環式フルオロアルキレンカーボネートからなる群から選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記フッ素化有機カーボネートが、モノフルオロ−、ジフルオロ−、トリフルオロ−もしくはテトラフルオロエチレンカーボネート、またはこれらの混合物からなる群から選択される、請求項14に記載の組成物。

【公表番号】特表2012−501242(P2012−501242A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524358(P2011−524358)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060938
【国際公開番号】WO2010/026080
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(592165314)ゾルファイ フルーオル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (55)
【氏名又は名称原語表記】Solvay Fluor GmbH
【住所又は居所原語表記】Hans−Boeckler−Allee 20,D−30173 Hannover,Germany
【Fターム(参考)】