汚染物質清掃装置及びこれを用いた汚染物質清掃制御システム
【課題】清掃対象表面に付着した汚染物質を効率的に清掃して分離回収する。
【解決手段】清掃対象A表面に対向して周縁部が接触配置される清掃ヘッド1と、清掃流体Fが清掃ベッド1の内部空間1cを介して循環する流体循環配管2と、清掃流体Fが補充可能に貯留される貯留タンク3と、貯留タンク3に貯留される清掃流体Fを流体循環配管2に循環させる循環駆動源4と、清掃流体Fに対し汚染物質Cがイオン結合する塵物質Wから分離可能となる特性の分離因子を供給する分離因子供給手段5と、流体循環配管2を循環する清掃流体Fを加圧した状態で清掃ヘッド1の流体吐出口1aから清掃ヘッド1の内部空間1cに吐出させる加圧吐出手段6と、流体循環配管2のうち清掃ヘッド1の流体回収口1bから貯留タンク3に至る途中に設けられ、循環する清掃流体F中に含まれる塵物質Wと汚染物質Cとを分離した状態で回収する回収手段7と、を備える。
【解決手段】清掃対象A表面に対向して周縁部が接触配置される清掃ヘッド1と、清掃流体Fが清掃ベッド1の内部空間1cを介して循環する流体循環配管2と、清掃流体Fが補充可能に貯留される貯留タンク3と、貯留タンク3に貯留される清掃流体Fを流体循環配管2に循環させる循環駆動源4と、清掃流体Fに対し汚染物質Cがイオン結合する塵物質Wから分離可能となる特性の分離因子を供給する分離因子供給手段5と、流体循環配管2を循環する清掃流体Fを加圧した状態で清掃ヘッド1の流体吐出口1aから清掃ヘッド1の内部空間1cに吐出させる加圧吐出手段6と、流体循環配管2のうち清掃ヘッド1の流体回収口1bから貯留タンク3に至る途中に設けられ、循環する清掃流体F中に含まれる塵物質Wと汚染物質Cとを分離した状態で回収する回収手段7と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性汚染物質を初めとする様々な汚染物質を清掃する汚染物質清掃装置に係り、特に、清掃対象表面に付着した汚染物質を清掃する上で有効な汚染物質清掃装置及びこれを用いた汚染物質清掃制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば汚染物質の一例として放射性汚染物質を挙げると、地上での放射性汚染物質による汚染は、大気中に浮遊するヨウ素、セシウム等の放射性汚染物質が雨水に含まれ、地上に降下することに起因して生ずることが多い。
このため、道路などの路面、住宅などの屋根面、ベランダ床面等の略水平方向に延びる平面での汚染が著しく、これらの平面近傍での放射線量が他の住宅等の鉛直方向に延びる縦壁面などに比べて上昇していることも既に確認されている。特に、木造、簡易鉄骨造建築物の屋根面では付着した放射性汚染物質が直下の室内放射線量を大幅に上昇させている状況も確認されている。
一般に、室内放射線量は建築物の敷地に沈積した放射性汚染物質からの放射線量の影響を受けるものであり、例えば木造2階建て住宅では室内放射線量は1階が2階を上回ることが多いが、前述したように、屋根面が木造、簡易鉄骨造建築物では屋根面に蓄積した放射線汚染物質からのγ線が屋根面を貫通して室内に到達するため、室内放射線量が1階に比べて2階の方が上回るケースも起こり得る。
【0003】
また、この種の放射性汚染物質やその他の汚染物質を清掃する従来の汚染物質清掃装置や汚染物質清掃方法としては例えば特許文献1〜6に記載のものが既に知られている。
特許文献1には、溶液を噴出する噴出具の外方を、飛散防止カバーで覆うと共に、この飛散防止カバー内に移送出管を接続し、この移送出管により廃液を廃液溜め容器内に一旦収容し、その後、移送ポンプの駆動力により、地上に配置した廃液回収タンク内に貯留する技術が開示されている。
特許文献2には、建物の外壁等を構成している木板の表面に高圧温水を噴射することにより木板表面に付着している汚染物質を洗浄除去する技術が開示されている。
特許文献3には、ガスを加速するための高圧出口を備えた所定の微小な横方向スケールの少なくとも一つの高圧通路を備え、該高圧出口は少なくとも一つの狭いリップを有し、高圧出口及びリップは活性表面を画定し、この活性表面が洗浄対象物の表面から離れたとき、狭いリップと洗浄対象物の表面との間の喉部を画定し、ガスを喉部のところでは略音速まで加速したとき、汚染物質に作用する横方向の空気力学的な除去力を生成する技術が開示されている。
特許文献4には、除染対象物に水をバブリングさせるのと高圧水の放出ノズルを一体化した除染機構と除染された放射性廃液を回収分離する機構と水位、除染状態監視し制御する機構とで構成し、廃液を分離した出口水を高圧水として再利用する技術が開示されている。
特許文献5には、放射能の化学除染方法として、放射性物質で汚染された除染対象物をギ酸とシュウ酸からなる除染液に浸漬し、除染対象物の電位を腐食領域まで下げて除染対象物の表面を溶解し、除染液中の金属イオンを陽イオン交換樹脂で分離し除去する技術が開示されている。
特許文献6には、放射化部品の化学除染方法として、表面に放射性の酸化皮膜を有する放射化部品の表面をモノカルボン酸とジカルボン酸が溶解した還元性の除染液に接触させる還元溶解工程と、放射化部品の表面を酸化剤が溶解した酸化性の除染液に接触させる酸化溶解工程とを備えている技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−277503号公報(発明の実施の形態,図1)
【特許文献2】特開2005−161252号公報(発明を実施するための最良の形態,図1)
【特許文献3】特表2007−514528号公報(発明を実施するための最良の形態,図1a−b)
【特許文献4】特開2002−311193号公報(発明の実施の形態,図1)
【特許文献5】特開2004−286471号公報(発明の実施形態,図1)
【特許文献6】特開2004−170278号公報(発明の実施の形態,図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したような放射性汚染物質による汚染を解消するには、放射性汚染物質が沈積している部位を清掃することが必要である。
しかしながら、例えば屋根面の使用素材や表面構造によって放射性汚染物質の沈積量がまちまちであり、これらの清掃性を良好に保つには放射性汚染物質の沈積量や清掃対象の表面性に応じて清掃条件の最適化を図ることが望まれる。
例えば使用素材の和・洋瓦、コンクリートストレート、金属板では放射性汚染物質の吸着力が大きく異なり、また、表面に凹凸、多孔質性があるコンクリートスレート素材では、セシウム134,137の沈積量が他の素材に比較して大きいことから、放射性汚染物質の沈積量や清掃対象の表面性によっては清掃装置の清掃能力が不十分になるという懸念もある。
また、放射性汚染物質が沈積した部位には、放射性汚染物質のみが沈積しているわけではなく、砂塵等の塵物質に放射性汚染物質が付着しているケースが多く見られる。このような状態において、放射性汚染物質を塵物質と共に除去する清掃方式を採用すると、放射性汚染物質を含む塵物質全てが廃棄物になってしまい、廃棄物の絶対量が著しく増加するという懸念もある。
尚、このような不具合は、放射性汚染物質に限られるものではなく、これ以外の汚染物質についても同様に言えることである。
更に、このような不具合は、上述した特許文献1〜6記載の汚染物質清掃装置や汚染物質清掃方法を用いたとしても改善することは難しい状況である。
【0006】
本発明が解決しようとする技術的課題は、清掃対象表面に付着した汚染物質を効率的に清掃して分離回収することを可能とした汚染物質清掃装置及びこれを用いた汚染物質清掃制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、清掃対象表面に付着した汚染物質を清掃する汚染物質清掃装置であって、清掃対象表面に対向して周縁部が接触配置されて中空状の内部空間を形成し且つ当該内部空間に連通する流体吐出口及び流体回収口を有する清掃ヘッドと、この清掃ヘッドの流体吐出口及び流体回収口に連通接続され、清掃流体が前記清掃ベッドの内部空間を介して循環する流体循環配管と、この流体循環配管の一部に設けられ、清掃流体が補充可能に貯留される貯留タンクと、この貯留タンクに貯留される清掃流体を前記流体循環配管に循環させる循環駆動源と、前記貯留タンク又は前記流体循環配管の一部に設けられ、前記清掃流体に対し前記汚染物質がイオン結合する塵物質から分離可能となる特性の分離因子を供給する分離因子供給手段と、前記流体循環配管を循環する清掃流体を加圧した状態で前記清掃ヘッドの流体吐出口から清掃ヘッドの内部空間に吐出させる加圧吐出手段と、前記流体循環配管のうち前記清掃ヘッドの流体回収口から前記貯留タンクに至る途中に設けられ、循環する清掃流体中に含まれる塵物質と汚染物質とを分離した状態で回収する回収手段と、を備えたことを特徴とする汚染物質清掃装置である。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る汚染物質清掃装置において、前記清掃ヘッドは、清掃対象表面に接触し且つ当該清掃対象表面に対して略鉛直方向に延びる回転軸を中心に回転する清掃体を内部空間に有し、前記流体吐出口と前記流体開出口とを清掃体を挟んだ位置関係に配置することを特徴とする汚染物質清掃装置である。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る汚染物質清掃装置において、前記貯留タンクは、貯留する清掃流体を加熱する加熱源を有することを特徴とする汚染物質清掃装置である。
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3いずれかに係る汚染物質清掃装置のうち、清掃流体が液体である態様において、前記分離因子供給手段は、前記貯留タンクに設けられ、貯留される清掃流体に対し塵物質と汚染物質とのイオン結合を解除可能な添加剤が供給される添加剤供給手段であることを特徴とする汚染物質清掃装置である。
請求項5に係る発明は、請求項1ないし3いずれかに係る汚染物質清掃装置のうち、清掃流体が気体である態様において、前記分離因子供給手段は、加圧吐出手段と前記清掃ヘッドとの間の流体循環配管に設けられ、循環する清掃流体に対し塵物質と汚染物質とのイオン結合を解除可能なイオンを生成するイオン生成手段であることを特徴とする汚染物質清掃装置である。
請求項6に係る発明は、請求項1ないし5いずれかに係る汚染物質清掃装置において、前記回収装置は、前記流体循環配管内の清掃流体の流れ方向の上流側に設けられ、清掃流体に含まれる塵物質を捕捉回収する塵物質回収部と、この塵物質回収部に対し清掃流体の流れ方向下流側に設けられ、清掃流体中の汚染物質を捕捉回収する汚染物質回収部と、を有することを特徴とする汚染物質清掃装置である。
【0009】
請求項7に係る発明は、請求項1ないし6いずれかに係る汚染物質清掃装置において、前記貯留タンクは、貯留される清掃流体に塵物質よりも粒径の小さい微粉体が供給される微粉体供給部を有し、前記回収装置は、前記流体循環配管内の清掃流体の流れ方向の上流側に設けられ、清掃流体に含まれる塵物質を捕捉回収する塵物質回収部と、この塵物質回収部に対し清掃流体の流れ方向下流側に設けられ、清掃流体中の汚染物質が付着した微粉体を捕捉回収する第1の汚染物質回収部と、この第1の汚染物質回収部に対し清掃流体の流れ方向下流側に設けられ、清掃流体に含まれる汚染物質を捕捉回収する第2の汚染物質回収部と、を有することを特徴とする汚染物質清掃装置である。
請求項8に係る発明は、請求項6又は7に係る汚染物質清掃装置において、前記塵物質回収部は、捕捉した塵物質を流体循環配管の通路外に回収するものであることを特徴とする汚染物質清掃装置である。
請求項9に係る発明は、請求項1ないし8いずれかに係る汚染物質清掃装置において、前記回収装置は、清掃流体に含まれる汚染物質が捕捉回収される汚染物質回収部を着脱自在又は移動自在に構成したものであることを特徴とする汚染物質清掃装置である。
請求項10に係る発明は、請求項1ないし9いずれかに係る汚染物質清掃装置のうち清掃対象が放射性汚染物質である態様において、前記回収装置は、放射性汚染物質が捕捉回収される汚染物質回収部の周囲を放射線汚染物質が不透過な材料で構成される遮蔽カバーで覆うものであることを特徴とする汚染物質清掃装置である。
請求項11に係る発明は、請求項1ないし10いずれかに係る汚染物質清掃装置において、自動車両に搭載され、自動車両の移動に伴って清掃対象表面の位置を移動させるようにした汚染物質清掃装置である。
【0010】
請求項12に係る発明は、請求項1ないし11いずれかに係る汚染物質清掃装置と、清掃対象表面の汚染物質による汚染状態を検出する汚染状態検出手段と、この汚染状態検出手段の検出結果に応じて清掃流体による清掃条件を制御する清掃条件制御装置と、を備えている汚染物質清掃制御システムである。
請求項13に係る発明は、請求項1ないし11いずれかに係る汚染物質清掃装置と、前記回収装置における汚染物質回収部による汚染物質の回収状態を検出する回収状態検出手段と、この回収状態検出手段の検出結果に応じて汚染物質回収部の回収条件を制御する回収条件制御装置と、を備えていることを特徴とする汚染物質清掃制御システムである。
請求項14に係る発明は、請求項13に係る汚染物質清掃制御システムにおいて、前記回収装置は、清掃流体に含まれる汚染物質が捕捉回収される汚染物質回収部を着脱自在又は移動自在に構成したものであり、前記回収条件制御装置は、前記回収状態検出手段の検出結果に応じて汚染物質回収部の着脱又は移動時期に関する回収条件を制御するものであることを特徴とする汚染物質清掃制御システムである。
請求項15に係る発明は、請求項13に係る汚染清掃制御システムのうち、清掃対象が放射性汚染物質である態様において、前記回収状態検出手段は、前記回収装置における汚染物質回収部による放射性汚染物質の放射線量を検出するものであり、前記回収条件制御手段は、前記回収状態検出手段で検出された放射線量が予め決められた閾値に達した条件で汚染物質回収部に対する警告を発することを特徴とする汚染物質清掃制御システムである。
請求項16に係る発明は、請求項12ないし15いずれかに係る汚染物質清掃制御システムにおいて、汚染物質清掃装置にて使用済みの清掃流体に対して後処理を施す清掃流体後処理装置を備え、この清掃流体後処理装置は、前記使用済みの清掃流体を後処理用に一次的に貯留する後処理タンクと、この後処理タンクに対して前記使用済みの清掃流体が循環させられる後処理循環配管と、この後処理循環配管の途中に設けられ、前記後処理タンク内の使用済みの清掃流体を後処理循環配管を介して予め決められた時間循環させる後処理循環駆動源と、前記後処理循環配管の途中に設けられ、使用済みの清掃流体に含まれる汚染物質が捕捉される着脱自在な捕捉材と、を有し、後処理終了後の清掃流体を後処理タンクから外部に排出することを特徴とする汚染物質清掃制御システムである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、清掃対象表面に付着した汚染物質を効率的に清掃して分離回収することができる。
請求項2に係る発明によれば、本構成を有さない態様に比べて、清掃ヘッドの清掃性を高め、かつ、清掃流体の循環性を良好に維持することができる。
請求項3に係る発明によれば、清掃性の良好な適温の清掃流体を容易に生成することができる。
請求項4に係る発明によれば、清掃流体が液体である態様において、清掃対象表面に付着する塵物質と汚染物質とのイオン結合が解除可能な清掃流体を、清掃現場で容易に生成することができる。
請求項5に係る発明によれば、清掃流体が気体である態様において、清掃対象表面に付着する塵物質と汚染物質とのイオン結合が解除可能な清掃流体を、清掃現場で容易に生成することができる。
請求項6に係る発明によれば、塵物質と汚染物質とを有効に分離回収することができる。
請求項7に係る発明によれば、本構成を有さない態様に比べて、汚染物質の捕捉回収性を高めることができる。
請求項8に係る発明によれば、捕捉回収した塵物質が清掃流体の流れを阻害する事態を有効に回避することができる。
請求項9に係る発明によれば、清掃流体の通路領域から捕捉回収した塵物質を有効に取り除くことができる。
請求項10に係る発明によれば、放射性汚染物質を清掃対象とする場合であっても、捕捉回収した汚染物質による放射線の漏出を有効に回避することができる。
請求項11に係る発明によれば、自動車両の移動に伴って車道や鉄道線路などの路面清掃に適用することができる。
請求項12に係る発明によれば、清掃対象表面における汚染物質の汚染状態を把握し、清掃流体による清掃条件を的確に調整することで、汚染物質清掃装置による清掃性を良好に保つことができる。
請求項13に係る発明によれば、汚染物質の回収状態を監視し、汚染物質の回収性を良好に保つことができる。
請求項14に係る発明によれば、着脱型又は移動型の汚染物質回収部を採用した態様において、着脱時期又は移動時期を監視し、汚染物質の回収性を良好に保つことができる。
請求項15に係る発明によれば、放射性汚染物質を清掃対象とする態様において、安全に清掃作業を実施することができる。
請求項16に係る発明によれば、使用済みの清掃流体を後処理にて清浄化することができ、もって、清掃流体の排出に伴う環境汚染を有効に防止することできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明が適用された汚染物質清掃装置の実施の形態の概要を示す説明図である。
【図2】(a)〜(c)は図1の汚染物質清掃装置を用いた汚染物質清掃制御システムの実施の形態の概要を示す説明図である。
【図3】実施の形態1に係る汚染物質清掃装置の全体構成を示す説明図である。
【図4】実施の形態1で用いられる清掃ヘッドの構成例を示す説明図である。
【図5】(a)は清掃ヘッド内に組み込まれる清掃ブラシの構成例を示すパーツ分割説明図、(b)は(a)の清掃ブラシのパーツ組付後の状態を示す説明図である。
【図6】実施の形態1で用いられる貯留タンク及びその周辺の構成を示す説明図である。
【図7】実施の形態1で用いられる回収装置の一例を示す説明図である。
【図8】実施の形態1で用いられる回収装置の他の例を示す説明図である。
【図9】実施の形態1に係る汚染物質清掃装置の制御系を示す説明図である。
【図10】実施の形態1で用いられる‘汚染物質清掃制御処理’の内容を示すフローチャートである。
【図11】図10の‘清掃条件設定処理’の内容を示すフローチャートである。
【図12】図10の‘回収装置管理処理’の内容を示すフローチャートである。
【図13】図10の‘清掃流体管理処理’の内容を示すフローチャートである。
【図14】(a)〜(d)は汚染物質清掃装置による清掃過程を模式的に示す説明図である。
【図15】実施の形態1で用いられる使用済みの清掃流体に対する後処理装置の一例を示す説明図である。
【図16】実施の形態2に係る汚染物質清掃装置の全体構成を示す説明図である。
【図17】実施の形態2で用いられる貯留タンク及びその周辺の構成を示す説明図である。
【図18】実施の形態2で用いられるイオン生成装置の一例を示す説明図である。
【図19】実施の形態3に係る汚染物質清掃装置の全体構成を示す説明図である。
【図20】実施例1に係る汚染物質清掃装置による清掃性能評価を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
◎実施の形態の概要
図1は本発明が適用された汚染物質清掃装置の実施の形態の概要を示す。
同図において、汚染物質清掃装置は、清掃対象A表面に付着した汚染物質Cを清掃する汚染物質清掃装置であって、清掃対象A表面に対向して周縁部が接触配置されて中空状の内部空間1cを形成し且つ当該内部空間1cに連通する流体吐出口1a及び流体回収口1bを有する清掃ヘッド1と、この清掃ヘッド1の流体吐出口1a及び流体回収口1bに連通接続され、清掃流体Fが前記清掃ベッド1の内部空間1cを介して循環する流体循環配管2と、この流体循環配管2の一部に設けられ、清掃流体Fが補充可能に貯留される貯留タンク3と、この貯留タンク3に貯留される清掃流体Fを前記流体循環配管2に循環させる循環駆動源4と、前記貯留タンク3又は前記流体循環配管2の一部に設けられ、前記清掃流体Fに対し前記汚染物質Cがイオン結合する塵物質Wから分離可能となる特性の分離因子を供給する分離因子供給手段5と、前記流体循環配管2を循環する清掃流体Fを加圧した状態で前記清掃ヘッド1の流体吐出口1aから清掃ヘッド1の内部空間1cに吐出させる加圧吐出手段6と、前記流体循環配管2のうち前記清掃ヘッド1の流体回収口1bから前記貯留タンク3に至る途中に設けられ、循環する清掃流体F中に含まれる塵物質Wと汚染物質Cとを分離した状態で回収する回収手段7と、を備えたものである。
【0014】
このような技術的手段において、本例は、路面、屋根、ベランダ面などの地面に対して略平行な面や、壁面、窓面、網戸などの地面に対して略鉛直な面などの清掃対象A表面に付着した汚染物資Cを清掃するものである。ここで、汚染物質Cとは主としては放射性汚染物質を想定しているが、これに限られるものではなく、広く清掃対象A表面を汚染するVOC等の化学物質をも含む。
また、清掃ヘッド1は、液体又は気体からなる清掃流体Fを流体循環配管2を介して循環させることを要するため、周縁部が清掃対象A表面に接触配置される内部空間1c、流体吐出口1a及び流体回収口1bを有することが必要である。
更に、清掃ヘッド1に対して清掃流体Fを循環させるために、流体循環配管2、貯留タンク3及び循環駆動源4を要する。
また、清掃流体Fは清掃対象A表面を清掃する流体であるが、本例では、清掃対象A表面には砂塵などの塵物質Wが汚染物質Cと結合して付着していることを想定し、「塵物質Wとイオン結合する汚染物質Cが塵物質Wから分離可能である特性」を付与することが必要であり、前述した分離因子供給手段5が設けられている。このような特性は、例えば塵物質Wと汚染物質Cとのイオン結合を解除し易くする分離因子(清掃流体Fが液体である場合には、イオン結合電荷と同じ極性のイオンを含むイオン溶液や界面活性剤などの添加剤が挙げられ、清掃流体Fが気体である場合には、イオン結合電荷と同じ極性のイオンを含むイオンが挙げられる。)を付加することで得られる。
更に、加圧吐出手段6としては、流体吐出口1aから清掃ベッド1内に加圧流体を吐出させる加圧要素(コンプレッサ)が代表的であり、必要があれば、流体吐出口1aをノズル構造とすることで加圧力を付加するようにしてもよい。
また、回収手段7としては、清掃流体F中に含まれる塵物質Wと汚染物質Cとを分離して回収するものであれば適宜選択して差し支えない。ここで、塵物質Wと汚染物質Cとを分離しないで回収する手法も考えられるが、汚染物質Cが含まれる塵物質Wごと回収すると、回収量が多くなってしまうばかりか、回収した汚染物質Cの後処理が面倒になる懸念があることから好ましくない。
【0015】
次に、本実施の形態で用いられる構成要素の代表的態様又は好ましい態様について説明する。
先ず、清掃ヘッド1の代表的態様としては、清掃対象Aの凹凸に対応して追従可能にするという観点からすれば、清掃ヘッド1の全部又は少なくとも開口周縁部の一部を可撓性素材で構成することが好ましい。
また、清掃ヘッド1の好ましい態様としては、清掃対象A表面に接触し且つ当該清掃対象A表面に対して略鉛直方向に延びる回転軸を中心に回転する清掃体1dを内部空間1cに有し、流体吐出口1aと流体回収口1bとを清掃体1dを挟んだ位置関係に配置する態様が挙げられる。
本態様は、清掃対象A表面に対し清掃流体Fを加圧吐出させ、更に、清掃対象A表面に対し回転する清掃体1dによって清掃対象A表面を研磨すると共に、清掃体1dの回転力によって清掃対象A表面に吐出し且つ研磨した清掃流体Fを流体回収口1bへと案内するという作用を奏する。
また、貯留タンク3としては、貯留する清掃流体Fを加熱する加熱源8を有することが好ましい。本態様では、加熱源8は清掃流体Fを適宜加熱することで清掃性の良好な温度に調整することが可能である。
更に、分離因子供給手段5の代表的態様としては、清掃流体Fが液体である態様において、貯留タンク3に設けられ、貯留される清掃流体Fに対し塵物質Wと汚染物質Cとのイオン結合を解除可能な添加剤が供給される添加剤供給手段である態様が挙げられる。ここで、清掃流体Fに予め添加剤を付加してもよいが、添加剤供給手段を具備する態様では、清掃現場で既存の流体(水道水)を利用し、その場で清掃流体Fを生成することが可能である。
また、分離因子供給手段5の別の代表的態様としては、清掃流体Fが気体である態様において、加圧吐出手段6と清掃ヘッド1との間の流体循環配管2に設けられ、循環する清掃流体Fに対し塵物質Wと汚染物質Cとのイオン結合を解除可能なイオンを生成するイオン生成手段である態様が挙げられる。本例は、清掃現場で既存の流体(空気)を利用し、その場で所定の特性の清掃流体Fを生成することが可能である。
ここで、イオン生成手段としては、火花放電、コロナ放電、アーク放電、プラズマ放電、ストリーマ放電などの放電ユニットが代表的であり、イオンとしては、オゾン、OHラジカルなどの電離ガスや、陽子、電子などを広く含む。
【0016】
また、回収手段7の代表的態様としては、流体循環配管2内の清掃流体Fの流れ方向の上流側に設けられ、清掃流体Fに含まれる塵物質Wを捕捉回収する塵物質回収部7aと、この塵物質回収部7aに対し清掃流体Fの流れ方向下流側に設けられ、清掃流体F中の汚染物質Cを捕捉回収する汚染物質回収部7bと、を有する態様が挙げられる。
本態様は、塵物質回収部7aと汚染物質回収部7bとを別々に備え、清掃流体Fの流れの上流側で塵物質Wを捕捉回収した後に、汚染物質Cを捕捉回収する。ここで、塵物質回収部7aは塵物質Wを捕捉回収するものを広く含むが、塵物質Wだけを分離する手法(遠心分離方式や塵物質捕捉フィルタの使用、電気集塵方式など)を採用するようにすればよい。
更に、回収手段7の好ましい態様としては、貯留タンク3は、貯留される清掃流体Fに塵物質Wよりも粒径の小さい微粉体が供給される微粉体供給部9を有し、回収手段7は、流体循環配管2内の清掃流体Fの流れ方向の上流側に設けられ、清掃流体Fに含まれる塵物質Wを捕捉回収する塵物質回収部7aと、この塵物質回収部7aに対し清掃流体Fの流れ方向下流側に設けられ、清掃流体F中の汚染物質Cが付着した微粉体(図示せず)を捕捉回収する第1の汚染物質回収部7bと、この第1の汚染物質回収部7bに対し清掃流体Fの流れ方向下流側に設けられ、清掃流体Fに含まれる汚染物質Cを捕捉回収する第2の汚染物質回収部7bと、を有する態様が挙げられる。
本態様は、汚染物質Cの捕捉回収性をより良好に保つために、清掃流体F中に汚染物質Cの捕捉媒体としての微粉体を混入させる方式である。
【0017】
更にまた、塵物質回収部7aの好ましい態様としては、捕捉した塵物質Wを流体循環配管2の通路外に回収するものが挙げられる。本態様の塵物質回収部7aは、塵物質Wを捕捉するが、捕捉したものを清掃流体Fの通路外に回収する。このため、捕捉回収した塵物質Wが清掃流体Fの流れに対して不必要な抵抗として作用することはない。
また、汚染物質回収部7bの好ましい態様としては、清掃流体Fに含まれる汚染物質Cが捕捉回収される汚染物質回収部7bを着脱自在又は移動自在に構成したものが挙げられる。
本態様では、汚染物質Cの捕捉量が増加した場合に、捕捉部分を着脱自在又は移動自在とすることで、汚染物質回収部7bとして新しい捕捉部分に交換することが可能になり、汚染物質Cの回収性能がリフレッシュされる点で好ましい。
更に、放射性汚染物質Cを清掃対象とする好ましい態様としては、回収手段7は、放射性汚染物質Cが捕捉回収される汚染物質回収部7bの周囲を放射性汚染物質Cが不透過な材料で構成される遮蔽カバー7cで覆うものが挙げられる。遮蔽カバー7cは、汚染物質回収部7bからの放射線の漏出を遮蔽し、清掃作業者の作業環境の安全性を考慮したものである。
更にまた、本件の汚染物質清掃装置の使用方法としては、自動車両に搭載され、自動車両の移動に伴って清掃対象A表面の位置を移動させるようにしてもよい。本例では、自動車両に汚染物質清掃装置を搭載することで、車道や鉄道線路などの路面清掃に適用可能である。
【0018】
次に、汚染物質清掃制御システムの代表的適用例又は構成要素の代表的態様について説明する。
先ず、汚染物質清掃制御システムの代表的適用例としては、図2(a)に示すように、前述した汚染物質清掃装置10と、清掃対象A表面の汚染物質Cによる汚染状態を検出する汚染状態検出手段11と、この汚染状態検出手段11の検出結果に応じて清掃流体Fによる清掃条件を制御する清掃条件制御手段12と、を備えている態様が挙げられる。
本態様は、汚染物質Cの汚染状態によって清掃流体Fによる清掃条件(清掃流体の吐出量、温度条件、清掃流体への添加剤の供給量など)を制御するものである。
また、汚染物質清掃制御システムの他の適用例としては、図2(b)に示すように、前述した汚染物質清掃装置10と、回収手段7における汚染物質回収部7bによる汚染物質Cの回収状態を検出する回収状態検出手段13と、この回収状態検出手段13の検出結果に応じて汚染物質回収部7bの回収条件を制御する回収条件制御手段14と、を備えている態様が挙げられる。
本態様は、汚染物質Cの回収状態(汚染物質の回収量、使用時間、清掃流体の通過量、放射性汚染物質の場合には放射線量など)に応じて汚染物質回収部7bによる回収条件(着脱時期、移動時期)を制御するものである。
更に、回収条件制御手段14の代表的態様としては、回収手段7が、清掃流体Fに含まれる汚染物質Cが捕捉回収される汚染物質回収部7bを着脱自在又は移動自在に構成したものであることを前提とし、回収状態検出手段13の検出結果に応じて汚染物質回収部7bの着脱又は移動時期に関する回収条件を制御するものが挙げられる。
また、回収条件制御手段14の他の代表的態様としては、清掃対象Aが放射性汚染物質Cである態様において、回収状態検出手段13は、回収手段7における汚染物質回収部7bによる放射性汚染物質Cの放射線量を検出するものであることを前提とし、回収状態検出手段13で検出された放射線量が予め決められた閾値に達した条件で汚染物質回収部7bに対する警告を発する態様が挙げられる。本態様は、放射性汚染物質Cを清掃対象Aとする場合における適用例で、汚染物質回収部7bでの放射線量を検出し、予め決められた閾値を超えるか否かを監視し、例えば着脱自在又は移動自在の汚染物質回収部7bの着脱時期又は移動時期を知らせたり、安全な基準として予め決められた閾値を超えた場合に警告を発する方式である。
【0019】
更に、汚染物質清掃装置10では清掃流体Fは汚染物質Cで汚染されるものであるから、回収手段7にて汚染物質Cを回収するとはいえ、清掃流体Fを長期に亘って使用すると、清掃流体Fも徐々に汚染されていまい、ある時点を超えると使用が困難になる。
このような場合、使用済みの清掃流体Fをそのまま下水や海に廃棄すると、環境を破壊する懸念があるため、これを回避することが必要である。
このような要請下における好ましい態様としては、図2(c)に示すように、汚染物質清掃装置10にて使用済みの清掃流体Fに対して後処理を施す清掃流体後処理装置15を備え、この清掃流体後処理装置15は、使用済みの清掃流体Fを後処理用に一次的に貯留する後処理タンク16と、この後処理タンク16に対して使用済みの清掃流体Fが循環させられる後処理循環配管17と、この後処理循環配管17の途中に設けられ、後処理タンク16内の使用済みの清掃流体Fを後処理循環配管17を介して予め決められた時間循環させる後処理循環駆動源18と、後処理循環配管17の途中に設けられ、使用済みの清掃流体Fに含まれる汚染物質Cが捕捉される着脱自在な捕捉材19と、を有し、後処理終了後の清掃流体Fを後処理タンク16から外部に排出する態様が挙げられる。
【0020】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。
◎実施の形態1
−汚染物質清掃装置の全体構成−
図3は実施の形態1に係る汚染物質清掃装置の全体構成を示す説明図である。
同図において、汚染物質清掃装置(以下必要に応じて清掃装置という)20は例えば清掃対象A表面に付着した放射性汚染物質C(本例ではセシウム)を清掃するものを想定したものであり、清掃対象A表面に対向して配置される清掃ヘッド30と、この清掃ヘッド30を介して清掃流体F(本例では液体)を循環させる流体循環配管50と、この流体循環配管50の一部に設けられて清掃流体Fが貯留される貯留タンク60と、この貯留タンク60に貯留された清掃流体Fを流体循環配管50に循環させる循環ポンプ70と、貯留タンク60内の清掃流体Fに対し汚染物質Cがイオン結合する塵物質Wから分離可能となる特性の添加剤を供給する添加剤供給装置80(図6参照)と、流体循環配管50のうち清掃ヘット30に向かって循環する清掃流体Fを加圧した状態で清掃ヘッド30内に吐出させるコンプレッサ90と、流体循環配管50のうち清掃ヘッド30から貯留タンク60に至る途中に設けられ、循環する清掃流体F中に含まれる塵物質Wと汚染物質Cとを分離した状態で回収する回収装置100と、を備えている。
【0021】
−清掃ヘッド−
本実施の形態において、清掃ヘッド30は、図4及び図5に示すように、例えば清掃対象Aの凹凸に対応して追従変形するという観点から可撓性を有するゴム又は合成樹脂(例えばウレタン樹脂、シリコン樹脂など)で略カップ状に一体成形され且つ清掃対象A表面に対向して開口するヘッドフード31と、このヘッドフード31内に回転可能に組み込まれる清掃ブラシ40と、を備えている。
<ヘッドフード>
本例では、ヘッドフード31は、開口周縁部に断面舌片状の弾性シール32(例えばシリコンゴム等)を固着すると共に、清掃対象A表面に弾性シール32を接触させることで清掃対象A表面との間に中空状の内部空間33を有するものである。そして、このヘッドフード31のうち清掃対象A表面に対向する頂部の片側は反対側に比べて内部空間33側に凹んだ凹所34を有しており、この凹所34には清掃流体Fを吐出するための流体吐出口35が開設されると共に、この流体吐出口35には清掃対象A表面に向かって流径が窄まる吐出ノズル36が装着される。尚、本例では、可撓性素材からなるヘッドフード31と弾性シール32とを用いているが、ヘッドフード31側の可撓性だけで清掃対象Aの凹凸に対応可能であれば弾性シール32を用いなくてもよいし、逆に、弾性シール32の可撓性で清掃対象Aの凹凸に対応可能であればヘッドフード31としては特に可撓性素材を用いなくてもよい。
一方、ヘッドフード31のうち流体吐出口35に対し清掃ブラシ40を挟んだ反対側には清掃流体Fを回収するための流体回収口37が開設され、この流体回収口37に面したヘッドフード31内にはヘッドフード31の内壁との間に対向する案内板38が設けられ、この案内板38は清掃対象A表面に吐出し且つ清掃ブラシ40の回転に伴って強制移動させられる清掃流体Fをヘッドフード31の内壁との間の案内通路39を介して流体回収口37に案内するようになっている。
【0022】
<清掃ブラシ>
また、本例では、清掃ブラシ40は、図5(a)(b)に示すように、ヘッドフード31内に支持ブラケット41を介して支持され、この支持ブラケット41には清掃対象A平面の略鉛直方向に延びる回転軸をもって回転可能な回転ブラシ42を取付けると共に、この回転ブラシ42をメッシュ状のカバーネット43で覆うようにしたものである。尚、符号45は回転ブラシ42を回転駆動する駆動モータ(図3参照)である。
本例では、回転ブラシ42は、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂などの樹脂製又はステンレス等の金属製のブラシ素材を有し、その回転に伴って清掃対象A表面を摺擦することから、清掃対象A表面を研磨する。特に、清掃対象Aがコンクリート等である場合には、研磨性、耐久性を高めるという観点からすれば、金属製のブラシ素材を用いるのが好ましい。
一方、カバーネット43は、例えば樹脂製のネット素材に例えばミロネクトンを練り込むことで清掃流体F中のイオンを吸着する働きをする。これは、汚染物質Cは塵物質Wとイオン結合しているが、後述するように清掃流体Fによって塵物質Wと汚染物質Cとのイオン結合を分離したときに生成されるイオンを清掃流体F中から取り除くものである。
尚、本例では、カバーネット43はイオンの吸着性を付与するためにミロネクトンを用いているが、これに限られるものではなく、このミロネクトンと同様な効能を有するベントナイト、モンモリロナイト、珪藻土などを用いてもよいことは勿論である。また、本例では、カバーネット43を使用しているが、カバーネット43を使用せずに、回転ブラシ42のブラシ素材にミロネクトン等を練り込み、イオンの吸着性という効能を具備させるようにしてもよい。
【0023】
−流体循環配管−
流体循環配管50は、図3に示すように、貯留タンク60と清掃ヘッド30の流体吐出口35との間を連通接続する流体吐出側配管51と、貯留タンク60と清掃ヘッド30の流体回収口37との間を連通接続する流体回収側配管52と、を有している。
そして、流体吐出側配管51のうち、貯留タンク60寄りに循環ポンプ70が設けられると共に清掃ヘッド30寄りにコンプレッサ90が設けられている。
一方、流体回収側配管52の途中(本例では貯留タンク60寄り)に回収装置100が設けられている。
【0024】
−貯留タンク周辺構成−
貯留タンク60は、図3及び図6に示すように、例えば水道栓61から供給管62を介して供給される水をバルブ63の開閉で取り込む構成になっており、これを清掃流体Fとして貯留する。
尚、清掃流体Fとしては、水道水を利用するものに限られず、図示外の保管容器内に予め保管したものを用いても差し支えない。
<加熱ヒータ>
本例では、貯留タンク60内には清掃流体Fを加熱するための加熱ヒータ65が設けられている。ここで、加熱ヒータ65としてはシーズヒータを始め適宜選定して差し支えない。
<添加剤供給装置>
また、放射性汚染物質Cであるセシウムは粘土を含む砂塵などの塵物質Wに良く吸着しており、石英などには吸着力が弱いことが知られている。特に、セシウム134又はセシウム137は、他の物質と陽の電荷をもって電気的に結合していることが判明している。
そこで、本実施の形態では、貯留タンク60に添加剤供給装置80が付設されている。この添加剤供給装置80は、例えば添加剤Mとして陽イオン溶液が収容される添加剤収容容器81を有し、この添加剤収容容器81と貯留タンク60との間を供給管82で接続すると共に、この供給管82の途中にバルブ83を設けたものであり、バルブ83の開放時間を調整することで添加剤Mの供給量を調整可能としたものである。
【0025】
<微粉体供給装置>
更に、本実施の形態では、貯留タンク60には微粉体供給装置85が付設されている。
この微粉体供給装置85は、清掃対象A表面に付着している塵物質Wに比べて小径である略一定の粒径を有し且つ放射性汚染物質Cであるセシウムが吸着され易い物性の微粉体Sが収容される微粉体収容容器86を有し、この微粉体収容容器86と貯留タンク60との間を供給管87で接続すると共に、この供給管87の途中にバルブ88を設けたものであり、バルブ88の開放時間を調整することで微粉体Sの供給量を調整可能としたものである。
本例では、微粉体Sとしては、粘土、セラミックス、金属などの微粒子が用いられる。
【0026】
<電離装置>
本例では、添加剤供給装置80から添加剤Mとしての陽イオン溶液を供給するようにしているが、これに限られるものではなく、添加剤供給装置80に代えて、あるいは、添加剤供給装置80の添加剤Mの生成装置として、例えば図6に示すように、電離装置150を付設し、例えば水道水を電離装置150を経由して陽イオンの多い酸性水Fsとして貯留タンク60に供給するようにすればよい。
ここで、電離装置150は、電界槽151内に電極としての陽極152及び陰極153を設けると共に、両電極間にイオン水交換膜154を設け、陽極152と陰極153との間に直流電流を流すことで陽極152に陽イオンを引き寄せ、陰極153に陰イオンを引き寄せるものであり、本例では、陽極152側の陽イオン溶液を利用するようにすればよい。
尚、本例では陽イオン溶液の酸性水Fsを利用しているが、必要に応じて陰イオン溶液のアルカリ性水Faを利用してもよいことは勿論である。
【0027】
−回収装置−
<第1の構成例>
本実施の形態では、回収装置100は、図7に示すように、流体循環配管50の流体回収側配管52につながる清掃流体Fの流路として回収用配管101を有し、この回収用配管101のうち清掃流体Fの流れ方向上流側から順に塵物質回収部110及び汚染物質回収部120を設けたものである。
本実施の形態では、塵物質回収部110は、清掃流体Fの流路に面した部位に砂塵などの塵物質Wを分離対象として設置される遠心分離器111と、この遠心分離器111に連通接続されて前記清掃流体Fの流路外に設置され且つ遠心分離器111にて分離された塵物質Wを回収する塵物質回収容器112と、を有している。
また、汚染物質回収部120は、主として放射性汚染物質Cが吸着された微粉体Sを捕捉回収する第1の濾材カートリッジ121と、この第1の濾材カートリッジ121よりも清掃流体Fの流れ方向下流側に設けられ、清掃流体F中に浮遊する汚染物質Cを捕捉回収する第2の濾材カートリッジ122と、を有している。
ここで、各濾材カートリッジ121,122はゼオライト、活性炭、粘土質素材などの濾材やHEPAフィルタを用い、回収用配管101の設置部位に対し着脱自在に装着されている。本例では、第1の濾材カートリッジ121で使用する濾材は微粉体Sを捕捉する目の粗さに設定され、第2の濾材カートリッジ122で使用する濾材は、第1の濾材カートリッジ121で使用する濾材に比べて目の粗さが細かくなっている。
更に、本例では、回収用配管101は、放射性汚染物質Cからの放射線が遮蔽される遮蔽カバー102で周囲が密封されており、この遮蔽カバー102内には放射線量を検出する放射線センサ103が設けられている。
【0028】
<第2の構成例>
本実施の形態において、回収装置100の第2の構成例としては、図8に示す態様のものが挙げられる。
同図において、回収装置100の基本的構成は、第1の構成例と同様に、塵物質回収部110と汚染物質回収部120とを有しているが、汚染物質回収部120の構成が第1の構成例と異なるものになっている。尚、図7に示す構成例と同様な構成要素については図7と同様の符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
本例では、汚染物質回収部120は、主として放射性汚染物質Cが吸着された微粉体Sを捕捉回収する第1のウェブ状フィルタ131と、この第1のウェブ状フィルタ131よりも清掃流体Fの流れ方向下流側に設けられ、清掃流体F中に浮遊する汚染物質Cを捕捉回収する第2のウェブ状フィルタ132と、を有している。
ここで、各ウェブ状フィルタ131,132は、いずれも一端側を巻き戻しロール133に巻き戻し自在に巻き付け、他端側を巻き取りロール134に巻き取り可能に係止させたものであり、巻き取りロール134の巻き取り動作に連動して清掃流体Fの流路を過ぎるように適宜移動するものである。
本例では、各ウェブ状フィルタ131,132は、ベース基材141上にゼネライト、活性炭、粘土質素材などの濾材が含まれる捕捉層142を積層し、その上には離型層143を積層したものである。また、各ウェブ状フィルタ131,132の駆動方式は、駆動モータ135からの駆動力を切替スイッチ136を介して夫々の巻き取りロール134に選択的に伝達することで行われるようになっている。
尚、第1、第2の構成例では、塵物質回収部110はいずれも遠心分離器111を利用した遠心分離方式を採用しているが、これに限られるものではなく、本例の汚染物質回収部120に示すような移動自在なウェブ状フィルタ方式を用いてもよいことは勿論である。
【0029】
−制御系−
本実施の形態において、清掃装置20を制御する制御装置160は、例えばマイクロコンピュータにて構成されており、図9に示すように、例えば清掃対象A表面の汚染状態(本例では放射線量)を検出するために清掃ヘッド30に設置された汚染センサ170、回収装置100内に設置された放射線センサ103、流体循環配管50内の清掃流体Fの流量(本例ではコンプレッサ90にて加圧された清掃流体Fの流量)を検出する流量センサ171等の各センサ出力を入力信号として取り込み、図10に示す汚染物質清掃制御処理プログラムを実行し、清掃ヘッド30の駆動モータ45、貯留タンク60内の加熱ヒータ65、循環ポンプ70、添加剤供給装置80のバルブ83、微粉体供給装置85のバルブ88、コンプレッサ90及び回収装置100に対し夫々所定の制御信号を送出するようになっている。
【0030】
−汚染物質清掃制御処理−
本実施の形態では、制御装置160は、図10に示すように、汚染センサ170の出力をチェックし、清掃対象A表面の汚染レベルを認識し、清掃装置20の‘清掃条件設定処理’を実施する。
この後、制御装置160は、清掃装置20の稼動準備が完了したか否かをチェックし、稼動準備完了を待って清掃装置20を稼動する。このとき、制御装置160の図示外のタイマカウンタが清掃装置20の稼動時間を計測して累積する。
そして、清掃装置20の稼動中には、制御装置160は、‘回収装置管理処理’及び‘清掃流体管理処理’を実施する。
この後、清掃装置20による清掃処理が終了すると、制御装置160は、清掃装置20の稼動を停止し、かつ、タイマカウンタによる稼動時間の計測を停止する。
【0031】
<清掃条件設定処理>
本実施の形態では、制御装置160は、図11に示すように、清掃対象A表面の汚染状態によって清掃条件が予め決められた清掃条件テーブルを検索し、汚染センサ170からの情報に基づいて認識した汚染レベルに合致した清掃条件を選定する。
次いで、制御装置160は、貯留タンク60に清掃流体Fを充填したか否かについてオペレータからの確認信号に基づいて確認し、まだ清掃流体Fが充填されていなければ、貯留タンク60に清掃流体Fを充填することを促す警告を表示する。
そして、制御装置160は、貯留タンク60に清掃流体Fが充填された状態において、添加剤供給装置80による添加剤Mの供給処理、微粉体供給装置85による微粉体供給処理及び加熱ヒータ65による清掃流体Fの加熱処理を実施する。これにより、清掃流体Fは、所定量の添加剤M(本例では陽イオン溶液)、所定量の微粉体Sを含むと共に、所定温度に加熱される。
この後、制御装置160は、循環ポンプ70による清掃流体循環量、コンプレッサ90による加圧力及び清掃ヘッド30の清掃ブラシ40の回転数を設定し、清掃条件全ての設定が終了した段階で当該設定処理を終了する。
例えば汚染レベルが高い場合には、清掃流体Fに清掃能力を高めるという観点から、清掃流体Fへの添加剤Mの添加量、微粉体Sの供給量を増加すると共に、加熱温度を高め、更に、清掃流体循環量を増加させると共にコンプレッサ圧を高め、清掃ブラシ40の回転数を増加させるというごとくである。尚、汚染レベルが低い場合には、逆の傾向に夫々設定するようにすればよい。
【0032】
<回収装置管理処理>
本実施の形態では、制御装置160は、図12に示すように、清掃装置20の稼動時間の累積値tsを算出し、ts>ta(ta:濾材カートリッジの寿命に対応する閾値)の条件か否かをチェックし、ts>taであれば、濾材カートリッジ121,122の交換を促す濾材カートリッジ交換表示を行い、ts≦taであれば、濾材カートリッジ121,122の交換を要しないことから、濾材カートリッジ交換非表示とする。
これにより、オペレータは濾材カートリッジ121,122の交換時期を把握することが可能である。
更に、本例では、制御装置160は、回収装置100内の放射線センサ103の出力をチェックし、予め決められた危険レベルを超えた条件下で放射線に対して警告表示する。
これにより、オペレータは、回収装置100に捕捉回収した放射性汚染物質Cから放射線が漏洩していることを把握することが可能であり、清掃装置20の作業環境の安全性を容易に確認することができる。
【0033】
<清掃流体管理処理>
本実施の形態では、制御装置160は、図13に示すように、清掃装置20稼動中において流量センサ171の出力をチェックし、清掃流体Fの流量が規定値か否かを確認し、規定値に合致していれば清掃条件として現状を維持し、異なる状況であれば清掃条件の変更処理を実施する。
これにより、清掃装置20による清掃条件が予め決められた規定値になっているか否かを監視することが可能である。尚、本例では、流量センサ171による清掃流体Fの流量チェックだけを実施するようにしているが、清掃流体Fの温度を検出する温度センサや清掃ブラシ40の回転数を検出する回転数センサなどを設置し、これらからの情報に基づいて各デバイスの動作状態を監視することも可能である。
更に、本例では、制御装置160は、清掃装置20の稼動時間の累積値tsを算出し、ts>tb(tb:清掃流体の使用寿命に対応する閾値)の条件か否かをチェックし、ts>tbであれば、清掃流体Fの交換を促す清掃流体交換表示を行い、ts≦tbであれば、清掃流体Fの交換を要しないことから、清掃流体交換非表示とする。
これにより、オペレータは清掃流体Fの交換時期を把握することが可能である。
【0034】
−清掃装置による清掃過程−
次に、本実施の形態に係る清掃装置の清掃過程について模式的に説明する。
<清掃流体生成時>
図10及び図11に示すように、清掃条件設定処理が行われると、清掃流体Fは、図14(a)に示すように、所定量の添加剤M(本例では陽イオン溶液)及び所定量の微粉体Sを含み、加熱ヒータ65にて所定温度(T℃:20℃〜30℃)に加熱された状態に至る。
このように生成された清掃流体Fは、循環ポンプ70によって貯留タンク60から流体循環配管50を通じて移動していき、清掃ヘッド30に移動していく。
<清掃流体吐出時及び吐出後>
清掃流体Fは、図4及び図14(b)に示すように、コンプレッサ90にて加圧された状態で清掃ヘッド30の流体吐出口35から吐出ノズル36を介して清掃対象A表面に吐出される。
このとき、吐出ノズル36から吐出される清掃流体Fはコンプレッサ90により加圧力Nによって清掃対象A表面に衝突するため、図14(c)に示すように、その衝突力によって清掃対象A表面上の塵物質W及び汚染物質Cは剥離される。
【0035】
また、清掃流体Fは添加剤M(陽イオン溶液)及び微粉体Sを含む高温流体であることから、清掃対象A表面に塵物質Wと汚染物質Cとがイオン結合した状態で付着していたとしても、清掃流体F中の添加剤M及び高温流体であることに起因して、塵物質Wと汚染物質Cとのイオン結合は解除され易く、両者は分離した状態で剥離する。
更に、本例では、清掃流体F中に塵物質Wより小径の微粉体Sが混入されているため、分離した汚染物質Cは微粉体Sに吸着する傾向が多い。
更にまた、本実施の形態では、清掃ヘッド30は清掃ブラシ40を有しているため、図4に示すように、清掃ブラシ40の回転に伴って清掃対象A表面を研磨力Hにて研磨する。この研磨力Hによって清掃対象A表面に付着した塵物質W及び汚染物質Cは掻き取られる。
よって、清掃ヘッド30内では、清掃流体Fが清掃対象A表面に吐出され、かつ、清掃ブラシ40が清掃対象A表面を研磨することから、清掃対象A表面の塵物質W及び汚染物質Cは有効に剥離され、吐出ノズル36から吐出された清掃流体Fは清掃ブラシ40の回転に伴って移動し、清掃ヘッド30内の案内板38にて区画された案内通路39を通じて流体回収口37に導かれる。
更に、本例では、清掃ブラシ40は特殊な素材からなるカバーネット43を有していることから、塵物質Wと汚染物質Cとのイオン結合が解除された際に生成されるイオンをカバーネット43が吸着保持するようになっている。
【0036】
<汚染物質回収時>
清掃ヘッド30の流体回収口37から流体循環配管50に循環する清掃流体Fは回収装置100に至る。
このとき、清掃流体Fには、塵物質W、汚染物質Cを吸着した微粉体S、汚染物質C単体が夫々分離した状態で含まれている。
この状態において、清掃流体Fが回収装置100を通過すると、塵物質回収部110は、遠心分離器111で塵物質Wを遠心分離して塵物質回収容器112に収容する。
次いで、汚染物質回収部120の第1の濾材カートリッジ121が汚染物質Cを吸着した微粉体Sを捕捉回収し、更に、第2の濾材カートリッジ122が清掃流体F中を浮遊する汚染物質C単体を捕捉回収する。
この結果、回収装置100では、塵物質Wと汚染物質Cとが分離した状態で回収されることになり、回収装置100を通過した清掃流体Fは略清浄な状態に至り、貯留タンク60に戻され、引き続き、清掃流体Fとして利用に供される。
【0037】
−清掃流体後処理装置−
本実施の形態では、清掃装置20で使用される清掃流体Fは、図10及び図13に示すように、回収装置100によって清浄化されるため、長期に亘って使用することが可能であるが、長期使用に伴って清掃流体Fが徐々に汚染されることは避けられない。
このように、長期使用に伴って汚染した清掃流体Fをそのまま下水や海に廃棄することは環境汚染につながることから好ましくなく、本実施の形態では、図15に示す清掃流体後処理装置200が用いられる。
この清掃流体後処理装置200は、使用済みの清掃流体F’を後処理用に一次的に貯留する後処理タンク201と、この後処理タンク201に対し使用済みの清掃流体F’が循環させられる後処理循環配管202と、この後処理循環配管202の途中に設けられ、後処理タンク201内の使用済みの清掃流体F’を後処理循環配管202を介して予め決められた時間循環させる後処理循環ポンプ203と、後処理循環配管202の途中に設けられ、使用済みの清掃流体F’に含まれる汚染物質Cが捕捉される着脱自在な後処理フィルタ204と、を有し、後処理制御装置205によって一連の後処理動作を制御し、後処理終了後の清掃流体F’を後処理タンク201から直接下水道に排水したり、汲み上げポンプで汲み上げ排水するものである。尚、符号206は排水時に使用するバルブである。
ここで、後処理フィルタ204としては、回収装置100で使用した濾材を用いても差し支えないが、これ以外に、吸着剤として、プルシアンブルー(紺青)、グラフト重合体(グラフト重合液を不織布に含浸させたもの)、クラウンエーテルなどを利用することが可能である。
特に、プルシアンブルーは放射性汚染物質Cであるセシウムの吸着性が強く、清掃流体後処理装置200の後処理フィルタ204としては好ましい。但し、プルシアンブルーは熱に弱く容易に分解してシアンガスが発生することから、加熱による焼却には留意することが必要である。
【0038】
◎実施の形態2
図16は実施の形態2に係る清掃装置の全体構成を示す説明図である。
同図において、清掃装置20は、例えば清掃対象A表面に付着した放射性汚染物質C(本例ではセシウム)を清掃するものを想定したものであり、清掃対象A表面に対向して配置される清掃ヘッド30と、この清掃ヘッド30を介して清掃流体F(本例は気体)を循環させる流体循環配管50と、この流体循環配管50の一部に設けられて清掃流体Fが貯留される貯留タンク60と、この貯留タンク60に貯留された清掃流体Fを流体循環配管50に循環させる循環ポンプ70と、流体循環配管50のうち清掃ヘッド30に向かって循環する清掃流体Fを加圧した状態で清掃ヘッド30内に吐出させるコンプレッサ90と、流体循環配管50のうちコンプレッサ90と清掃ヘッド30との間に位置する流体吐出側配管51の途中に設けられ、流体循環配管50中の清掃流体Fに対し塵物質Wと汚染物質Cとのイオン結合を解除するためのイオンを生成するイオン生成装置180と、流体循環配管50のうち清掃ヘッド30から貯留タンク60に至る途中に設けられ、循環する清掃流体F中に含まれる塵物質Wと汚染物質Cとを分離した状態で回収する回収装置100と、を備えている。尚、実施の形態1と同様な構成要素については実施の形態1と同様な符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
また、清掃装置20の制御系についても実施の形態1と略同様に構成される。
【0039】
−貯留タンク周辺構成−
貯留タンク60は、図16及び図17に示すように、例えばバルブ191の開閉で気体を取り込む構成になっており、これを清掃流体Fとして貯留する。
本例では、気体として空気を利用する場合には、外気を直接取り込むようにしても差し支えないが、予め調整された気体をガスボンベ192に充填しておき、貯留タンク60内に所定の圧力で充填するようにしてもよい。
更に、本例では、実施の形態1と同様に、貯留タンク60内には清掃流体Fを加熱するための加熱ヒータ65が設けられている。
また、貯留タンク60には微粉体供給装置85が設けられている。
−イオン生成装置−
本実施の形態では、イオン生成装置180としては例えばコロナ放電を利用した放電ユニットが用いられる。この放電ユニットは、絶縁性材料からなるチャネル状のシールド181を有し、このシールド181には清掃流体Fが通過する開口182を開設すると共に、このシールド181内に一若しくは複数の放電ワイヤ183を配置し、この放電ワイヤ183に対して高圧電源184にて高圧電圧(直流又は交流)を印加することで、放電ワイヤ183にコロナ放電を生じさせ、これによりオゾンやOHラジカルなどの電離ガス、あるいは、陽子、電子などのイオンを生成するものである。
尚、イオン生成装置180としては、火花放電やストリーマ放電を利用した放電ユニットを使用してもよいし、あるいは、アーク放電、プラズマ放電を利用した放電ユニットを利用する等イオンを生成するものであれば適宜選定して差し支えない。
【0040】
−清掃装置による清掃過程−
本実施の形態によれば、清掃装置20は以下のような清掃過程を経る。
先ず、清掃流体Fの生成については、貯留タンク60にて清掃流体Fを貯留し、所定量の微粉体Sを供給すると共に、加熱ヒータ65にて清掃流体Fを所定温度に加熱する。
この状態で、他の清掃条件が設定されると、清掃装置20は稼動し始める。
この結果、清掃流体Fは流体循環配管50を通じて清掃ヘッド30に向かうが、コンプレッサ90と共にイオン生成装置180を作動させることから、清掃ヘッド30に向かう清掃流体Fは、微粉体Sを含む所定温度の気体であり、かつ、コンプレッサ90にて加圧されると共に、イオン生成装置180にて生成されたイオンIを含む状態で、清掃ヘッド30の流体吐出口35を通じて清掃対象A表面に吐出される。
このとき、清掃対象A表面に吐出される清掃流体Fは、気体である点で実施の形態1と異なるが、その性状については同等であることから、清掃ヘッド30内での清掃動作は実施の形態1と略同様である。
この後、清掃ヘッド30にて清掃された清掃流体Fは回収装置100にて実施の形態1と同様に回収処理された後、回収装置100を経て貯留タンク60に戻される。
尚、使用済みの清掃流体F’の後処理についても、実施の形態1に準じて行うようにすればよい。
【0041】
◎実施の形態3
図19は実施の形態3に係る清掃装置の全体構成を示す説明図である。
同図において、清掃装置20の基本的構成は、実施の形態1と略同様な構成を有しているが、実施の形態1と異なり、自動車両300に搭載したものである。尚、実施の形態1と同様な構成要素については実施の形態1と同様な符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
本例では、清掃装置20のうち、清掃ヘッド30は自動車両300の例えば前方側に設けられた昇降台301に昇降自在に支持されており、この昇降台301には例えば光学式位置センサ302が設けられ、昇降台301と清掃対象A表面との距離hを検出するようになっている。
そして、清掃装置20の貯留タンク60、循環ポンプ70、回収装置100は自動車両300の荷台305に搭載され、清掃ヘッド30と貯留タンク60、その他の部品とは流体循環配管50で連通接続されている。
更に、この清掃装置20の制御装置160は自動車両300の運転席310の一部に搭載されている。
尚、本例では、清掃流体Fの収容タンク320や使用済みの清掃流体F’の後処理装置330も自動車両300の荷台305に搭載されている。
従って、本実施の形態では、清掃対象A表面が路面などで広範囲に亘っているような場合でも、自動車両300を運転することで容易に清掃装置20による清掃を実施することが可能である。
また、本例では、自動車両300に清掃流体Fの収容タンク320や後処理装置330を搭載したので、清掃流体Fの交換や後処理をその場で実施することも可能である。
【実施例】
【0042】
◎実施例1
実施の形態1に係る清掃装置を実施例1として、清掃壁面A〜Fに対して汚染物質であるセシウムを清掃するに当たり、実施例1に係る清掃装置による清掃前後における放射線計数率(cpm)を調べたところ、図20に示す結果が得られた。
同図によれば、いずれの壁面A〜Fについても80%以上の汚染物質の除去率が確認された。
◎実施例2
某県某所にある木造2階建て住宅において、放射線量を計測したところ、庭の放射線量は1.5μSv/h、1階の居間中央での室内放射線量は0.5μSv/h、居間直上の2階の寝室での室内放射線量は0.8μSv/hであったが、実施の形態1に係る清掃装置を実施例2とし、2階の屋根面に対して清掃処理を実施したところ、2階の寝室での室内放射線量は0.4μSv/hに低減した。
◎実施例3
実施の形態1に係る清掃装置を実施例3とし、更に、界面活性剤を添加剤として付加した場合と付加しない場合とで汚染物質(本例ではセシウム)の除去率を調べたところ、界面活性剤を添加剤として更に付加した態様が付加しない態様に比べて除去効果が5〜15%上昇することが確認された。
また、加熱ヒータによる清掃流体の加温による影響を調べたところ、20℃に対して30℃に上昇させたとき汚染物質(本例ではセシウム)の除去率が30%上昇することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る汚染物質清掃装置は、塵物質と汚染物質とを分離回収することを企図したものであるが、例えば清掃対象表面が屋根面である場合には雨などで塵物質が殆どなく、汚染物質が主として付着しているケースもあり得る。
このような状況下では、本発明に係る汚染物質清掃装置の回収手段(例えば実施の形態1の回収装置100)の構成を、塵物質回収部と汚染物質回収部とを分離しない形に簡略化して汚染物質を回収する方式を採用しても差し支えない。
この場合、簡略化した回収手段としては、実施の形態1と略同様に、例えば図3に示すように、清掃ヘッド30の流体回収口37と貯留タンク60との間を接続した流体循環配管50の途中に濾材カートリッジなどの回収部品を設けてもよいし、より簡略化するという観点からすれば、清掃ヘッド30内の清掃ブラシ40に回収部品としての回収カバーを付加するようにしてもよい。
ここで、回収カバーとしては、汚染物質が吸着可能な濾材にてネット状の覆い部材(図5に示すカバーネット43の形状に相当する部材)を構成し、清掃ブラシ40にこのネット状覆い部材を被せることで、清掃対象表面から清掃された汚染物質を回収する方式が用いられる。尚、この態様では、清掃ヘッド30の流体回収口37付近にも汚染物質を吸着保持するための濾材フィルタを設けることが好ましい。
【符号の説明】
【0044】
1…清掃ヘッド,1a…流体吐出口,1b…流体回収口,1c…内部空間,1d…清掃体,2…流体循環配管,3…貯留タンク,4…循環駆動源,5…分離因子供給手段,6…加圧吐出手段,7…回収手段,7a…塵物質回収部,7b…汚染物質回収部,7c…遮蔽カバー,8…加熱源,9…微粉体供給部,10…汚染物質清掃装置,11…汚染状態検出手段,12…清掃条件制御手段,13…回収状態検出手段,14…回収条件制御手段,15…清掃流体後処理装置,16…後処理タンク,17…後処理循環配管,18…後処理循環駆動源,19…捕捉材,A…清掃対象,C…汚染物質,F…清掃流体,W…塵物質
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性汚染物質を初めとする様々な汚染物質を清掃する汚染物質清掃装置に係り、特に、清掃対象表面に付着した汚染物質を清掃する上で有効な汚染物質清掃装置及びこれを用いた汚染物質清掃制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば汚染物質の一例として放射性汚染物質を挙げると、地上での放射性汚染物質による汚染は、大気中に浮遊するヨウ素、セシウム等の放射性汚染物質が雨水に含まれ、地上に降下することに起因して生ずることが多い。
このため、道路などの路面、住宅などの屋根面、ベランダ床面等の略水平方向に延びる平面での汚染が著しく、これらの平面近傍での放射線量が他の住宅等の鉛直方向に延びる縦壁面などに比べて上昇していることも既に確認されている。特に、木造、簡易鉄骨造建築物の屋根面では付着した放射性汚染物質が直下の室内放射線量を大幅に上昇させている状況も確認されている。
一般に、室内放射線量は建築物の敷地に沈積した放射性汚染物質からの放射線量の影響を受けるものであり、例えば木造2階建て住宅では室内放射線量は1階が2階を上回ることが多いが、前述したように、屋根面が木造、簡易鉄骨造建築物では屋根面に蓄積した放射線汚染物質からのγ線が屋根面を貫通して室内に到達するため、室内放射線量が1階に比べて2階の方が上回るケースも起こり得る。
【0003】
また、この種の放射性汚染物質やその他の汚染物質を清掃する従来の汚染物質清掃装置や汚染物質清掃方法としては例えば特許文献1〜6に記載のものが既に知られている。
特許文献1には、溶液を噴出する噴出具の外方を、飛散防止カバーで覆うと共に、この飛散防止カバー内に移送出管を接続し、この移送出管により廃液を廃液溜め容器内に一旦収容し、その後、移送ポンプの駆動力により、地上に配置した廃液回収タンク内に貯留する技術が開示されている。
特許文献2には、建物の外壁等を構成している木板の表面に高圧温水を噴射することにより木板表面に付着している汚染物質を洗浄除去する技術が開示されている。
特許文献3には、ガスを加速するための高圧出口を備えた所定の微小な横方向スケールの少なくとも一つの高圧通路を備え、該高圧出口は少なくとも一つの狭いリップを有し、高圧出口及びリップは活性表面を画定し、この活性表面が洗浄対象物の表面から離れたとき、狭いリップと洗浄対象物の表面との間の喉部を画定し、ガスを喉部のところでは略音速まで加速したとき、汚染物質に作用する横方向の空気力学的な除去力を生成する技術が開示されている。
特許文献4には、除染対象物に水をバブリングさせるのと高圧水の放出ノズルを一体化した除染機構と除染された放射性廃液を回収分離する機構と水位、除染状態監視し制御する機構とで構成し、廃液を分離した出口水を高圧水として再利用する技術が開示されている。
特許文献5には、放射能の化学除染方法として、放射性物質で汚染された除染対象物をギ酸とシュウ酸からなる除染液に浸漬し、除染対象物の電位を腐食領域まで下げて除染対象物の表面を溶解し、除染液中の金属イオンを陽イオン交換樹脂で分離し除去する技術が開示されている。
特許文献6には、放射化部品の化学除染方法として、表面に放射性の酸化皮膜を有する放射化部品の表面をモノカルボン酸とジカルボン酸が溶解した還元性の除染液に接触させる還元溶解工程と、放射化部品の表面を酸化剤が溶解した酸化性の除染液に接触させる酸化溶解工程とを備えている技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−277503号公報(発明の実施の形態,図1)
【特許文献2】特開2005−161252号公報(発明を実施するための最良の形態,図1)
【特許文献3】特表2007−514528号公報(発明を実施するための最良の形態,図1a−b)
【特許文献4】特開2002−311193号公報(発明の実施の形態,図1)
【特許文献5】特開2004−286471号公報(発明の実施形態,図1)
【特許文献6】特開2004−170278号公報(発明の実施の形態,図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したような放射性汚染物質による汚染を解消するには、放射性汚染物質が沈積している部位を清掃することが必要である。
しかしながら、例えば屋根面の使用素材や表面構造によって放射性汚染物質の沈積量がまちまちであり、これらの清掃性を良好に保つには放射性汚染物質の沈積量や清掃対象の表面性に応じて清掃条件の最適化を図ることが望まれる。
例えば使用素材の和・洋瓦、コンクリートストレート、金属板では放射性汚染物質の吸着力が大きく異なり、また、表面に凹凸、多孔質性があるコンクリートスレート素材では、セシウム134,137の沈積量が他の素材に比較して大きいことから、放射性汚染物質の沈積量や清掃対象の表面性によっては清掃装置の清掃能力が不十分になるという懸念もある。
また、放射性汚染物質が沈積した部位には、放射性汚染物質のみが沈積しているわけではなく、砂塵等の塵物質に放射性汚染物質が付着しているケースが多く見られる。このような状態において、放射性汚染物質を塵物質と共に除去する清掃方式を採用すると、放射性汚染物質を含む塵物質全てが廃棄物になってしまい、廃棄物の絶対量が著しく増加するという懸念もある。
尚、このような不具合は、放射性汚染物質に限られるものではなく、これ以外の汚染物質についても同様に言えることである。
更に、このような不具合は、上述した特許文献1〜6記載の汚染物質清掃装置や汚染物質清掃方法を用いたとしても改善することは難しい状況である。
【0006】
本発明が解決しようとする技術的課題は、清掃対象表面に付着した汚染物質を効率的に清掃して分離回収することを可能とした汚染物質清掃装置及びこれを用いた汚染物質清掃制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、清掃対象表面に付着した汚染物質を清掃する汚染物質清掃装置であって、清掃対象表面に対向して周縁部が接触配置されて中空状の内部空間を形成し且つ当該内部空間に連通する流体吐出口及び流体回収口を有する清掃ヘッドと、この清掃ヘッドの流体吐出口及び流体回収口に連通接続され、清掃流体が前記清掃ベッドの内部空間を介して循環する流体循環配管と、この流体循環配管の一部に設けられ、清掃流体が補充可能に貯留される貯留タンクと、この貯留タンクに貯留される清掃流体を前記流体循環配管に循環させる循環駆動源と、前記貯留タンク又は前記流体循環配管の一部に設けられ、前記清掃流体に対し前記汚染物質がイオン結合する塵物質から分離可能となる特性の分離因子を供給する分離因子供給手段と、前記流体循環配管を循環する清掃流体を加圧した状態で前記清掃ヘッドの流体吐出口から清掃ヘッドの内部空間に吐出させる加圧吐出手段と、前記流体循環配管のうち前記清掃ヘッドの流体回収口から前記貯留タンクに至る途中に設けられ、循環する清掃流体中に含まれる塵物質と汚染物質とを分離した状態で回収する回収手段と、を備えたことを特徴とする汚染物質清掃装置である。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る汚染物質清掃装置において、前記清掃ヘッドは、清掃対象表面に接触し且つ当該清掃対象表面に対して略鉛直方向に延びる回転軸を中心に回転する清掃体を内部空間に有し、前記流体吐出口と前記流体開出口とを清掃体を挟んだ位置関係に配置することを特徴とする汚染物質清掃装置である。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る汚染物質清掃装置において、前記貯留タンクは、貯留する清掃流体を加熱する加熱源を有することを特徴とする汚染物質清掃装置である。
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3いずれかに係る汚染物質清掃装置のうち、清掃流体が液体である態様において、前記分離因子供給手段は、前記貯留タンクに設けられ、貯留される清掃流体に対し塵物質と汚染物質とのイオン結合を解除可能な添加剤が供給される添加剤供給手段であることを特徴とする汚染物質清掃装置である。
請求項5に係る発明は、請求項1ないし3いずれかに係る汚染物質清掃装置のうち、清掃流体が気体である態様において、前記分離因子供給手段は、加圧吐出手段と前記清掃ヘッドとの間の流体循環配管に設けられ、循環する清掃流体に対し塵物質と汚染物質とのイオン結合を解除可能なイオンを生成するイオン生成手段であることを特徴とする汚染物質清掃装置である。
請求項6に係る発明は、請求項1ないし5いずれかに係る汚染物質清掃装置において、前記回収装置は、前記流体循環配管内の清掃流体の流れ方向の上流側に設けられ、清掃流体に含まれる塵物質を捕捉回収する塵物質回収部と、この塵物質回収部に対し清掃流体の流れ方向下流側に設けられ、清掃流体中の汚染物質を捕捉回収する汚染物質回収部と、を有することを特徴とする汚染物質清掃装置である。
【0009】
請求項7に係る発明は、請求項1ないし6いずれかに係る汚染物質清掃装置において、前記貯留タンクは、貯留される清掃流体に塵物質よりも粒径の小さい微粉体が供給される微粉体供給部を有し、前記回収装置は、前記流体循環配管内の清掃流体の流れ方向の上流側に設けられ、清掃流体に含まれる塵物質を捕捉回収する塵物質回収部と、この塵物質回収部に対し清掃流体の流れ方向下流側に設けられ、清掃流体中の汚染物質が付着した微粉体を捕捉回収する第1の汚染物質回収部と、この第1の汚染物質回収部に対し清掃流体の流れ方向下流側に設けられ、清掃流体に含まれる汚染物質を捕捉回収する第2の汚染物質回収部と、を有することを特徴とする汚染物質清掃装置である。
請求項8に係る発明は、請求項6又は7に係る汚染物質清掃装置において、前記塵物質回収部は、捕捉した塵物質を流体循環配管の通路外に回収するものであることを特徴とする汚染物質清掃装置である。
請求項9に係る発明は、請求項1ないし8いずれかに係る汚染物質清掃装置において、前記回収装置は、清掃流体に含まれる汚染物質が捕捉回収される汚染物質回収部を着脱自在又は移動自在に構成したものであることを特徴とする汚染物質清掃装置である。
請求項10に係る発明は、請求項1ないし9いずれかに係る汚染物質清掃装置のうち清掃対象が放射性汚染物質である態様において、前記回収装置は、放射性汚染物質が捕捉回収される汚染物質回収部の周囲を放射線汚染物質が不透過な材料で構成される遮蔽カバーで覆うものであることを特徴とする汚染物質清掃装置である。
請求項11に係る発明は、請求項1ないし10いずれかに係る汚染物質清掃装置において、自動車両に搭載され、自動車両の移動に伴って清掃対象表面の位置を移動させるようにした汚染物質清掃装置である。
【0010】
請求項12に係る発明は、請求項1ないし11いずれかに係る汚染物質清掃装置と、清掃対象表面の汚染物質による汚染状態を検出する汚染状態検出手段と、この汚染状態検出手段の検出結果に応じて清掃流体による清掃条件を制御する清掃条件制御装置と、を備えている汚染物質清掃制御システムである。
請求項13に係る発明は、請求項1ないし11いずれかに係る汚染物質清掃装置と、前記回収装置における汚染物質回収部による汚染物質の回収状態を検出する回収状態検出手段と、この回収状態検出手段の検出結果に応じて汚染物質回収部の回収条件を制御する回収条件制御装置と、を備えていることを特徴とする汚染物質清掃制御システムである。
請求項14に係る発明は、請求項13に係る汚染物質清掃制御システムにおいて、前記回収装置は、清掃流体に含まれる汚染物質が捕捉回収される汚染物質回収部を着脱自在又は移動自在に構成したものであり、前記回収条件制御装置は、前記回収状態検出手段の検出結果に応じて汚染物質回収部の着脱又は移動時期に関する回収条件を制御するものであることを特徴とする汚染物質清掃制御システムである。
請求項15に係る発明は、請求項13に係る汚染清掃制御システムのうち、清掃対象が放射性汚染物質である態様において、前記回収状態検出手段は、前記回収装置における汚染物質回収部による放射性汚染物質の放射線量を検出するものであり、前記回収条件制御手段は、前記回収状態検出手段で検出された放射線量が予め決められた閾値に達した条件で汚染物質回収部に対する警告を発することを特徴とする汚染物質清掃制御システムである。
請求項16に係る発明は、請求項12ないし15いずれかに係る汚染物質清掃制御システムにおいて、汚染物質清掃装置にて使用済みの清掃流体に対して後処理を施す清掃流体後処理装置を備え、この清掃流体後処理装置は、前記使用済みの清掃流体を後処理用に一次的に貯留する後処理タンクと、この後処理タンクに対して前記使用済みの清掃流体が循環させられる後処理循環配管と、この後処理循環配管の途中に設けられ、前記後処理タンク内の使用済みの清掃流体を後処理循環配管を介して予め決められた時間循環させる後処理循環駆動源と、前記後処理循環配管の途中に設けられ、使用済みの清掃流体に含まれる汚染物質が捕捉される着脱自在な捕捉材と、を有し、後処理終了後の清掃流体を後処理タンクから外部に排出することを特徴とする汚染物質清掃制御システムである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、清掃対象表面に付着した汚染物質を効率的に清掃して分離回収することができる。
請求項2に係る発明によれば、本構成を有さない態様に比べて、清掃ヘッドの清掃性を高め、かつ、清掃流体の循環性を良好に維持することができる。
請求項3に係る発明によれば、清掃性の良好な適温の清掃流体を容易に生成することができる。
請求項4に係る発明によれば、清掃流体が液体である態様において、清掃対象表面に付着する塵物質と汚染物質とのイオン結合が解除可能な清掃流体を、清掃現場で容易に生成することができる。
請求項5に係る発明によれば、清掃流体が気体である態様において、清掃対象表面に付着する塵物質と汚染物質とのイオン結合が解除可能な清掃流体を、清掃現場で容易に生成することができる。
請求項6に係る発明によれば、塵物質と汚染物質とを有効に分離回収することができる。
請求項7に係る発明によれば、本構成を有さない態様に比べて、汚染物質の捕捉回収性を高めることができる。
請求項8に係る発明によれば、捕捉回収した塵物質が清掃流体の流れを阻害する事態を有効に回避することができる。
請求項9に係る発明によれば、清掃流体の通路領域から捕捉回収した塵物質を有効に取り除くことができる。
請求項10に係る発明によれば、放射性汚染物質を清掃対象とする場合であっても、捕捉回収した汚染物質による放射線の漏出を有効に回避することができる。
請求項11に係る発明によれば、自動車両の移動に伴って車道や鉄道線路などの路面清掃に適用することができる。
請求項12に係る発明によれば、清掃対象表面における汚染物質の汚染状態を把握し、清掃流体による清掃条件を的確に調整することで、汚染物質清掃装置による清掃性を良好に保つことができる。
請求項13に係る発明によれば、汚染物質の回収状態を監視し、汚染物質の回収性を良好に保つことができる。
請求項14に係る発明によれば、着脱型又は移動型の汚染物質回収部を採用した態様において、着脱時期又は移動時期を監視し、汚染物質の回収性を良好に保つことができる。
請求項15に係る発明によれば、放射性汚染物質を清掃対象とする態様において、安全に清掃作業を実施することができる。
請求項16に係る発明によれば、使用済みの清掃流体を後処理にて清浄化することができ、もって、清掃流体の排出に伴う環境汚染を有効に防止することできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明が適用された汚染物質清掃装置の実施の形態の概要を示す説明図である。
【図2】(a)〜(c)は図1の汚染物質清掃装置を用いた汚染物質清掃制御システムの実施の形態の概要を示す説明図である。
【図3】実施の形態1に係る汚染物質清掃装置の全体構成を示す説明図である。
【図4】実施の形態1で用いられる清掃ヘッドの構成例を示す説明図である。
【図5】(a)は清掃ヘッド内に組み込まれる清掃ブラシの構成例を示すパーツ分割説明図、(b)は(a)の清掃ブラシのパーツ組付後の状態を示す説明図である。
【図6】実施の形態1で用いられる貯留タンク及びその周辺の構成を示す説明図である。
【図7】実施の形態1で用いられる回収装置の一例を示す説明図である。
【図8】実施の形態1で用いられる回収装置の他の例を示す説明図である。
【図9】実施の形態1に係る汚染物質清掃装置の制御系を示す説明図である。
【図10】実施の形態1で用いられる‘汚染物質清掃制御処理’の内容を示すフローチャートである。
【図11】図10の‘清掃条件設定処理’の内容を示すフローチャートである。
【図12】図10の‘回収装置管理処理’の内容を示すフローチャートである。
【図13】図10の‘清掃流体管理処理’の内容を示すフローチャートである。
【図14】(a)〜(d)は汚染物質清掃装置による清掃過程を模式的に示す説明図である。
【図15】実施の形態1で用いられる使用済みの清掃流体に対する後処理装置の一例を示す説明図である。
【図16】実施の形態2に係る汚染物質清掃装置の全体構成を示す説明図である。
【図17】実施の形態2で用いられる貯留タンク及びその周辺の構成を示す説明図である。
【図18】実施の形態2で用いられるイオン生成装置の一例を示す説明図である。
【図19】実施の形態3に係る汚染物質清掃装置の全体構成を示す説明図である。
【図20】実施例1に係る汚染物質清掃装置による清掃性能評価を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
◎実施の形態の概要
図1は本発明が適用された汚染物質清掃装置の実施の形態の概要を示す。
同図において、汚染物質清掃装置は、清掃対象A表面に付着した汚染物質Cを清掃する汚染物質清掃装置であって、清掃対象A表面に対向して周縁部が接触配置されて中空状の内部空間1cを形成し且つ当該内部空間1cに連通する流体吐出口1a及び流体回収口1bを有する清掃ヘッド1と、この清掃ヘッド1の流体吐出口1a及び流体回収口1bに連通接続され、清掃流体Fが前記清掃ベッド1の内部空間1cを介して循環する流体循環配管2と、この流体循環配管2の一部に設けられ、清掃流体Fが補充可能に貯留される貯留タンク3と、この貯留タンク3に貯留される清掃流体Fを前記流体循環配管2に循環させる循環駆動源4と、前記貯留タンク3又は前記流体循環配管2の一部に設けられ、前記清掃流体Fに対し前記汚染物質Cがイオン結合する塵物質Wから分離可能となる特性の分離因子を供給する分離因子供給手段5と、前記流体循環配管2を循環する清掃流体Fを加圧した状態で前記清掃ヘッド1の流体吐出口1aから清掃ヘッド1の内部空間1cに吐出させる加圧吐出手段6と、前記流体循環配管2のうち前記清掃ヘッド1の流体回収口1bから前記貯留タンク3に至る途中に設けられ、循環する清掃流体F中に含まれる塵物質Wと汚染物質Cとを分離した状態で回収する回収手段7と、を備えたものである。
【0014】
このような技術的手段において、本例は、路面、屋根、ベランダ面などの地面に対して略平行な面や、壁面、窓面、網戸などの地面に対して略鉛直な面などの清掃対象A表面に付着した汚染物資Cを清掃するものである。ここで、汚染物質Cとは主としては放射性汚染物質を想定しているが、これに限られるものではなく、広く清掃対象A表面を汚染するVOC等の化学物質をも含む。
また、清掃ヘッド1は、液体又は気体からなる清掃流体Fを流体循環配管2を介して循環させることを要するため、周縁部が清掃対象A表面に接触配置される内部空間1c、流体吐出口1a及び流体回収口1bを有することが必要である。
更に、清掃ヘッド1に対して清掃流体Fを循環させるために、流体循環配管2、貯留タンク3及び循環駆動源4を要する。
また、清掃流体Fは清掃対象A表面を清掃する流体であるが、本例では、清掃対象A表面には砂塵などの塵物質Wが汚染物質Cと結合して付着していることを想定し、「塵物質Wとイオン結合する汚染物質Cが塵物質Wから分離可能である特性」を付与することが必要であり、前述した分離因子供給手段5が設けられている。このような特性は、例えば塵物質Wと汚染物質Cとのイオン結合を解除し易くする分離因子(清掃流体Fが液体である場合には、イオン結合電荷と同じ極性のイオンを含むイオン溶液や界面活性剤などの添加剤が挙げられ、清掃流体Fが気体である場合には、イオン結合電荷と同じ極性のイオンを含むイオンが挙げられる。)を付加することで得られる。
更に、加圧吐出手段6としては、流体吐出口1aから清掃ベッド1内に加圧流体を吐出させる加圧要素(コンプレッサ)が代表的であり、必要があれば、流体吐出口1aをノズル構造とすることで加圧力を付加するようにしてもよい。
また、回収手段7としては、清掃流体F中に含まれる塵物質Wと汚染物質Cとを分離して回収するものであれば適宜選択して差し支えない。ここで、塵物質Wと汚染物質Cとを分離しないで回収する手法も考えられるが、汚染物質Cが含まれる塵物質Wごと回収すると、回収量が多くなってしまうばかりか、回収した汚染物質Cの後処理が面倒になる懸念があることから好ましくない。
【0015】
次に、本実施の形態で用いられる構成要素の代表的態様又は好ましい態様について説明する。
先ず、清掃ヘッド1の代表的態様としては、清掃対象Aの凹凸に対応して追従可能にするという観点からすれば、清掃ヘッド1の全部又は少なくとも開口周縁部の一部を可撓性素材で構成することが好ましい。
また、清掃ヘッド1の好ましい態様としては、清掃対象A表面に接触し且つ当該清掃対象A表面に対して略鉛直方向に延びる回転軸を中心に回転する清掃体1dを内部空間1cに有し、流体吐出口1aと流体回収口1bとを清掃体1dを挟んだ位置関係に配置する態様が挙げられる。
本態様は、清掃対象A表面に対し清掃流体Fを加圧吐出させ、更に、清掃対象A表面に対し回転する清掃体1dによって清掃対象A表面を研磨すると共に、清掃体1dの回転力によって清掃対象A表面に吐出し且つ研磨した清掃流体Fを流体回収口1bへと案内するという作用を奏する。
また、貯留タンク3としては、貯留する清掃流体Fを加熱する加熱源8を有することが好ましい。本態様では、加熱源8は清掃流体Fを適宜加熱することで清掃性の良好な温度に調整することが可能である。
更に、分離因子供給手段5の代表的態様としては、清掃流体Fが液体である態様において、貯留タンク3に設けられ、貯留される清掃流体Fに対し塵物質Wと汚染物質Cとのイオン結合を解除可能な添加剤が供給される添加剤供給手段である態様が挙げられる。ここで、清掃流体Fに予め添加剤を付加してもよいが、添加剤供給手段を具備する態様では、清掃現場で既存の流体(水道水)を利用し、その場で清掃流体Fを生成することが可能である。
また、分離因子供給手段5の別の代表的態様としては、清掃流体Fが気体である態様において、加圧吐出手段6と清掃ヘッド1との間の流体循環配管2に設けられ、循環する清掃流体Fに対し塵物質Wと汚染物質Cとのイオン結合を解除可能なイオンを生成するイオン生成手段である態様が挙げられる。本例は、清掃現場で既存の流体(空気)を利用し、その場で所定の特性の清掃流体Fを生成することが可能である。
ここで、イオン生成手段としては、火花放電、コロナ放電、アーク放電、プラズマ放電、ストリーマ放電などの放電ユニットが代表的であり、イオンとしては、オゾン、OHラジカルなどの電離ガスや、陽子、電子などを広く含む。
【0016】
また、回収手段7の代表的態様としては、流体循環配管2内の清掃流体Fの流れ方向の上流側に設けられ、清掃流体Fに含まれる塵物質Wを捕捉回収する塵物質回収部7aと、この塵物質回収部7aに対し清掃流体Fの流れ方向下流側に設けられ、清掃流体F中の汚染物質Cを捕捉回収する汚染物質回収部7bと、を有する態様が挙げられる。
本態様は、塵物質回収部7aと汚染物質回収部7bとを別々に備え、清掃流体Fの流れの上流側で塵物質Wを捕捉回収した後に、汚染物質Cを捕捉回収する。ここで、塵物質回収部7aは塵物質Wを捕捉回収するものを広く含むが、塵物質Wだけを分離する手法(遠心分離方式や塵物質捕捉フィルタの使用、電気集塵方式など)を採用するようにすればよい。
更に、回収手段7の好ましい態様としては、貯留タンク3は、貯留される清掃流体Fに塵物質Wよりも粒径の小さい微粉体が供給される微粉体供給部9を有し、回収手段7は、流体循環配管2内の清掃流体Fの流れ方向の上流側に設けられ、清掃流体Fに含まれる塵物質Wを捕捉回収する塵物質回収部7aと、この塵物質回収部7aに対し清掃流体Fの流れ方向下流側に設けられ、清掃流体F中の汚染物質Cが付着した微粉体(図示せず)を捕捉回収する第1の汚染物質回収部7bと、この第1の汚染物質回収部7bに対し清掃流体Fの流れ方向下流側に設けられ、清掃流体Fに含まれる汚染物質Cを捕捉回収する第2の汚染物質回収部7bと、を有する態様が挙げられる。
本態様は、汚染物質Cの捕捉回収性をより良好に保つために、清掃流体F中に汚染物質Cの捕捉媒体としての微粉体を混入させる方式である。
【0017】
更にまた、塵物質回収部7aの好ましい態様としては、捕捉した塵物質Wを流体循環配管2の通路外に回収するものが挙げられる。本態様の塵物質回収部7aは、塵物質Wを捕捉するが、捕捉したものを清掃流体Fの通路外に回収する。このため、捕捉回収した塵物質Wが清掃流体Fの流れに対して不必要な抵抗として作用することはない。
また、汚染物質回収部7bの好ましい態様としては、清掃流体Fに含まれる汚染物質Cが捕捉回収される汚染物質回収部7bを着脱自在又は移動自在に構成したものが挙げられる。
本態様では、汚染物質Cの捕捉量が増加した場合に、捕捉部分を着脱自在又は移動自在とすることで、汚染物質回収部7bとして新しい捕捉部分に交換することが可能になり、汚染物質Cの回収性能がリフレッシュされる点で好ましい。
更に、放射性汚染物質Cを清掃対象とする好ましい態様としては、回収手段7は、放射性汚染物質Cが捕捉回収される汚染物質回収部7bの周囲を放射性汚染物質Cが不透過な材料で構成される遮蔽カバー7cで覆うものが挙げられる。遮蔽カバー7cは、汚染物質回収部7bからの放射線の漏出を遮蔽し、清掃作業者の作業環境の安全性を考慮したものである。
更にまた、本件の汚染物質清掃装置の使用方法としては、自動車両に搭載され、自動車両の移動に伴って清掃対象A表面の位置を移動させるようにしてもよい。本例では、自動車両に汚染物質清掃装置を搭載することで、車道や鉄道線路などの路面清掃に適用可能である。
【0018】
次に、汚染物質清掃制御システムの代表的適用例又は構成要素の代表的態様について説明する。
先ず、汚染物質清掃制御システムの代表的適用例としては、図2(a)に示すように、前述した汚染物質清掃装置10と、清掃対象A表面の汚染物質Cによる汚染状態を検出する汚染状態検出手段11と、この汚染状態検出手段11の検出結果に応じて清掃流体Fによる清掃条件を制御する清掃条件制御手段12と、を備えている態様が挙げられる。
本態様は、汚染物質Cの汚染状態によって清掃流体Fによる清掃条件(清掃流体の吐出量、温度条件、清掃流体への添加剤の供給量など)を制御するものである。
また、汚染物質清掃制御システムの他の適用例としては、図2(b)に示すように、前述した汚染物質清掃装置10と、回収手段7における汚染物質回収部7bによる汚染物質Cの回収状態を検出する回収状態検出手段13と、この回収状態検出手段13の検出結果に応じて汚染物質回収部7bの回収条件を制御する回収条件制御手段14と、を備えている態様が挙げられる。
本態様は、汚染物質Cの回収状態(汚染物質の回収量、使用時間、清掃流体の通過量、放射性汚染物質の場合には放射線量など)に応じて汚染物質回収部7bによる回収条件(着脱時期、移動時期)を制御するものである。
更に、回収条件制御手段14の代表的態様としては、回収手段7が、清掃流体Fに含まれる汚染物質Cが捕捉回収される汚染物質回収部7bを着脱自在又は移動自在に構成したものであることを前提とし、回収状態検出手段13の検出結果に応じて汚染物質回収部7bの着脱又は移動時期に関する回収条件を制御するものが挙げられる。
また、回収条件制御手段14の他の代表的態様としては、清掃対象Aが放射性汚染物質Cである態様において、回収状態検出手段13は、回収手段7における汚染物質回収部7bによる放射性汚染物質Cの放射線量を検出するものであることを前提とし、回収状態検出手段13で検出された放射線量が予め決められた閾値に達した条件で汚染物質回収部7bに対する警告を発する態様が挙げられる。本態様は、放射性汚染物質Cを清掃対象Aとする場合における適用例で、汚染物質回収部7bでの放射線量を検出し、予め決められた閾値を超えるか否かを監視し、例えば着脱自在又は移動自在の汚染物質回収部7bの着脱時期又は移動時期を知らせたり、安全な基準として予め決められた閾値を超えた場合に警告を発する方式である。
【0019】
更に、汚染物質清掃装置10では清掃流体Fは汚染物質Cで汚染されるものであるから、回収手段7にて汚染物質Cを回収するとはいえ、清掃流体Fを長期に亘って使用すると、清掃流体Fも徐々に汚染されていまい、ある時点を超えると使用が困難になる。
このような場合、使用済みの清掃流体Fをそのまま下水や海に廃棄すると、環境を破壊する懸念があるため、これを回避することが必要である。
このような要請下における好ましい態様としては、図2(c)に示すように、汚染物質清掃装置10にて使用済みの清掃流体Fに対して後処理を施す清掃流体後処理装置15を備え、この清掃流体後処理装置15は、使用済みの清掃流体Fを後処理用に一次的に貯留する後処理タンク16と、この後処理タンク16に対して使用済みの清掃流体Fが循環させられる後処理循環配管17と、この後処理循環配管17の途中に設けられ、後処理タンク16内の使用済みの清掃流体Fを後処理循環配管17を介して予め決められた時間循環させる後処理循環駆動源18と、後処理循環配管17の途中に設けられ、使用済みの清掃流体Fに含まれる汚染物質Cが捕捉される着脱自在な捕捉材19と、を有し、後処理終了後の清掃流体Fを後処理タンク16から外部に排出する態様が挙げられる。
【0020】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。
◎実施の形態1
−汚染物質清掃装置の全体構成−
図3は実施の形態1に係る汚染物質清掃装置の全体構成を示す説明図である。
同図において、汚染物質清掃装置(以下必要に応じて清掃装置という)20は例えば清掃対象A表面に付着した放射性汚染物質C(本例ではセシウム)を清掃するものを想定したものであり、清掃対象A表面に対向して配置される清掃ヘッド30と、この清掃ヘッド30を介して清掃流体F(本例では液体)を循環させる流体循環配管50と、この流体循環配管50の一部に設けられて清掃流体Fが貯留される貯留タンク60と、この貯留タンク60に貯留された清掃流体Fを流体循環配管50に循環させる循環ポンプ70と、貯留タンク60内の清掃流体Fに対し汚染物質Cがイオン結合する塵物質Wから分離可能となる特性の添加剤を供給する添加剤供給装置80(図6参照)と、流体循環配管50のうち清掃ヘット30に向かって循環する清掃流体Fを加圧した状態で清掃ヘッド30内に吐出させるコンプレッサ90と、流体循環配管50のうち清掃ヘッド30から貯留タンク60に至る途中に設けられ、循環する清掃流体F中に含まれる塵物質Wと汚染物質Cとを分離した状態で回収する回収装置100と、を備えている。
【0021】
−清掃ヘッド−
本実施の形態において、清掃ヘッド30は、図4及び図5に示すように、例えば清掃対象Aの凹凸に対応して追従変形するという観点から可撓性を有するゴム又は合成樹脂(例えばウレタン樹脂、シリコン樹脂など)で略カップ状に一体成形され且つ清掃対象A表面に対向して開口するヘッドフード31と、このヘッドフード31内に回転可能に組み込まれる清掃ブラシ40と、を備えている。
<ヘッドフード>
本例では、ヘッドフード31は、開口周縁部に断面舌片状の弾性シール32(例えばシリコンゴム等)を固着すると共に、清掃対象A表面に弾性シール32を接触させることで清掃対象A表面との間に中空状の内部空間33を有するものである。そして、このヘッドフード31のうち清掃対象A表面に対向する頂部の片側は反対側に比べて内部空間33側に凹んだ凹所34を有しており、この凹所34には清掃流体Fを吐出するための流体吐出口35が開設されると共に、この流体吐出口35には清掃対象A表面に向かって流径が窄まる吐出ノズル36が装着される。尚、本例では、可撓性素材からなるヘッドフード31と弾性シール32とを用いているが、ヘッドフード31側の可撓性だけで清掃対象Aの凹凸に対応可能であれば弾性シール32を用いなくてもよいし、逆に、弾性シール32の可撓性で清掃対象Aの凹凸に対応可能であればヘッドフード31としては特に可撓性素材を用いなくてもよい。
一方、ヘッドフード31のうち流体吐出口35に対し清掃ブラシ40を挟んだ反対側には清掃流体Fを回収するための流体回収口37が開設され、この流体回収口37に面したヘッドフード31内にはヘッドフード31の内壁との間に対向する案内板38が設けられ、この案内板38は清掃対象A表面に吐出し且つ清掃ブラシ40の回転に伴って強制移動させられる清掃流体Fをヘッドフード31の内壁との間の案内通路39を介して流体回収口37に案内するようになっている。
【0022】
<清掃ブラシ>
また、本例では、清掃ブラシ40は、図5(a)(b)に示すように、ヘッドフード31内に支持ブラケット41を介して支持され、この支持ブラケット41には清掃対象A平面の略鉛直方向に延びる回転軸をもって回転可能な回転ブラシ42を取付けると共に、この回転ブラシ42をメッシュ状のカバーネット43で覆うようにしたものである。尚、符号45は回転ブラシ42を回転駆動する駆動モータ(図3参照)である。
本例では、回転ブラシ42は、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂などの樹脂製又はステンレス等の金属製のブラシ素材を有し、その回転に伴って清掃対象A表面を摺擦することから、清掃対象A表面を研磨する。特に、清掃対象Aがコンクリート等である場合には、研磨性、耐久性を高めるという観点からすれば、金属製のブラシ素材を用いるのが好ましい。
一方、カバーネット43は、例えば樹脂製のネット素材に例えばミロネクトンを練り込むことで清掃流体F中のイオンを吸着する働きをする。これは、汚染物質Cは塵物質Wとイオン結合しているが、後述するように清掃流体Fによって塵物質Wと汚染物質Cとのイオン結合を分離したときに生成されるイオンを清掃流体F中から取り除くものである。
尚、本例では、カバーネット43はイオンの吸着性を付与するためにミロネクトンを用いているが、これに限られるものではなく、このミロネクトンと同様な効能を有するベントナイト、モンモリロナイト、珪藻土などを用いてもよいことは勿論である。また、本例では、カバーネット43を使用しているが、カバーネット43を使用せずに、回転ブラシ42のブラシ素材にミロネクトン等を練り込み、イオンの吸着性という効能を具備させるようにしてもよい。
【0023】
−流体循環配管−
流体循環配管50は、図3に示すように、貯留タンク60と清掃ヘッド30の流体吐出口35との間を連通接続する流体吐出側配管51と、貯留タンク60と清掃ヘッド30の流体回収口37との間を連通接続する流体回収側配管52と、を有している。
そして、流体吐出側配管51のうち、貯留タンク60寄りに循環ポンプ70が設けられると共に清掃ヘッド30寄りにコンプレッサ90が設けられている。
一方、流体回収側配管52の途中(本例では貯留タンク60寄り)に回収装置100が設けられている。
【0024】
−貯留タンク周辺構成−
貯留タンク60は、図3及び図6に示すように、例えば水道栓61から供給管62を介して供給される水をバルブ63の開閉で取り込む構成になっており、これを清掃流体Fとして貯留する。
尚、清掃流体Fとしては、水道水を利用するものに限られず、図示外の保管容器内に予め保管したものを用いても差し支えない。
<加熱ヒータ>
本例では、貯留タンク60内には清掃流体Fを加熱するための加熱ヒータ65が設けられている。ここで、加熱ヒータ65としてはシーズヒータを始め適宜選定して差し支えない。
<添加剤供給装置>
また、放射性汚染物質Cであるセシウムは粘土を含む砂塵などの塵物質Wに良く吸着しており、石英などには吸着力が弱いことが知られている。特に、セシウム134又はセシウム137は、他の物質と陽の電荷をもって電気的に結合していることが判明している。
そこで、本実施の形態では、貯留タンク60に添加剤供給装置80が付設されている。この添加剤供給装置80は、例えば添加剤Mとして陽イオン溶液が収容される添加剤収容容器81を有し、この添加剤収容容器81と貯留タンク60との間を供給管82で接続すると共に、この供給管82の途中にバルブ83を設けたものであり、バルブ83の開放時間を調整することで添加剤Mの供給量を調整可能としたものである。
【0025】
<微粉体供給装置>
更に、本実施の形態では、貯留タンク60には微粉体供給装置85が付設されている。
この微粉体供給装置85は、清掃対象A表面に付着している塵物質Wに比べて小径である略一定の粒径を有し且つ放射性汚染物質Cであるセシウムが吸着され易い物性の微粉体Sが収容される微粉体収容容器86を有し、この微粉体収容容器86と貯留タンク60との間を供給管87で接続すると共に、この供給管87の途中にバルブ88を設けたものであり、バルブ88の開放時間を調整することで微粉体Sの供給量を調整可能としたものである。
本例では、微粉体Sとしては、粘土、セラミックス、金属などの微粒子が用いられる。
【0026】
<電離装置>
本例では、添加剤供給装置80から添加剤Mとしての陽イオン溶液を供給するようにしているが、これに限られるものではなく、添加剤供給装置80に代えて、あるいは、添加剤供給装置80の添加剤Mの生成装置として、例えば図6に示すように、電離装置150を付設し、例えば水道水を電離装置150を経由して陽イオンの多い酸性水Fsとして貯留タンク60に供給するようにすればよい。
ここで、電離装置150は、電界槽151内に電極としての陽極152及び陰極153を設けると共に、両電極間にイオン水交換膜154を設け、陽極152と陰極153との間に直流電流を流すことで陽極152に陽イオンを引き寄せ、陰極153に陰イオンを引き寄せるものであり、本例では、陽極152側の陽イオン溶液を利用するようにすればよい。
尚、本例では陽イオン溶液の酸性水Fsを利用しているが、必要に応じて陰イオン溶液のアルカリ性水Faを利用してもよいことは勿論である。
【0027】
−回収装置−
<第1の構成例>
本実施の形態では、回収装置100は、図7に示すように、流体循環配管50の流体回収側配管52につながる清掃流体Fの流路として回収用配管101を有し、この回収用配管101のうち清掃流体Fの流れ方向上流側から順に塵物質回収部110及び汚染物質回収部120を設けたものである。
本実施の形態では、塵物質回収部110は、清掃流体Fの流路に面した部位に砂塵などの塵物質Wを分離対象として設置される遠心分離器111と、この遠心分離器111に連通接続されて前記清掃流体Fの流路外に設置され且つ遠心分離器111にて分離された塵物質Wを回収する塵物質回収容器112と、を有している。
また、汚染物質回収部120は、主として放射性汚染物質Cが吸着された微粉体Sを捕捉回収する第1の濾材カートリッジ121と、この第1の濾材カートリッジ121よりも清掃流体Fの流れ方向下流側に設けられ、清掃流体F中に浮遊する汚染物質Cを捕捉回収する第2の濾材カートリッジ122と、を有している。
ここで、各濾材カートリッジ121,122はゼオライト、活性炭、粘土質素材などの濾材やHEPAフィルタを用い、回収用配管101の設置部位に対し着脱自在に装着されている。本例では、第1の濾材カートリッジ121で使用する濾材は微粉体Sを捕捉する目の粗さに設定され、第2の濾材カートリッジ122で使用する濾材は、第1の濾材カートリッジ121で使用する濾材に比べて目の粗さが細かくなっている。
更に、本例では、回収用配管101は、放射性汚染物質Cからの放射線が遮蔽される遮蔽カバー102で周囲が密封されており、この遮蔽カバー102内には放射線量を検出する放射線センサ103が設けられている。
【0028】
<第2の構成例>
本実施の形態において、回収装置100の第2の構成例としては、図8に示す態様のものが挙げられる。
同図において、回収装置100の基本的構成は、第1の構成例と同様に、塵物質回収部110と汚染物質回収部120とを有しているが、汚染物質回収部120の構成が第1の構成例と異なるものになっている。尚、図7に示す構成例と同様な構成要素については図7と同様の符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
本例では、汚染物質回収部120は、主として放射性汚染物質Cが吸着された微粉体Sを捕捉回収する第1のウェブ状フィルタ131と、この第1のウェブ状フィルタ131よりも清掃流体Fの流れ方向下流側に設けられ、清掃流体F中に浮遊する汚染物質Cを捕捉回収する第2のウェブ状フィルタ132と、を有している。
ここで、各ウェブ状フィルタ131,132は、いずれも一端側を巻き戻しロール133に巻き戻し自在に巻き付け、他端側を巻き取りロール134に巻き取り可能に係止させたものであり、巻き取りロール134の巻き取り動作に連動して清掃流体Fの流路を過ぎるように適宜移動するものである。
本例では、各ウェブ状フィルタ131,132は、ベース基材141上にゼネライト、活性炭、粘土質素材などの濾材が含まれる捕捉層142を積層し、その上には離型層143を積層したものである。また、各ウェブ状フィルタ131,132の駆動方式は、駆動モータ135からの駆動力を切替スイッチ136を介して夫々の巻き取りロール134に選択的に伝達することで行われるようになっている。
尚、第1、第2の構成例では、塵物質回収部110はいずれも遠心分離器111を利用した遠心分離方式を採用しているが、これに限られるものではなく、本例の汚染物質回収部120に示すような移動自在なウェブ状フィルタ方式を用いてもよいことは勿論である。
【0029】
−制御系−
本実施の形態において、清掃装置20を制御する制御装置160は、例えばマイクロコンピュータにて構成されており、図9に示すように、例えば清掃対象A表面の汚染状態(本例では放射線量)を検出するために清掃ヘッド30に設置された汚染センサ170、回収装置100内に設置された放射線センサ103、流体循環配管50内の清掃流体Fの流量(本例ではコンプレッサ90にて加圧された清掃流体Fの流量)を検出する流量センサ171等の各センサ出力を入力信号として取り込み、図10に示す汚染物質清掃制御処理プログラムを実行し、清掃ヘッド30の駆動モータ45、貯留タンク60内の加熱ヒータ65、循環ポンプ70、添加剤供給装置80のバルブ83、微粉体供給装置85のバルブ88、コンプレッサ90及び回収装置100に対し夫々所定の制御信号を送出するようになっている。
【0030】
−汚染物質清掃制御処理−
本実施の形態では、制御装置160は、図10に示すように、汚染センサ170の出力をチェックし、清掃対象A表面の汚染レベルを認識し、清掃装置20の‘清掃条件設定処理’を実施する。
この後、制御装置160は、清掃装置20の稼動準備が完了したか否かをチェックし、稼動準備完了を待って清掃装置20を稼動する。このとき、制御装置160の図示外のタイマカウンタが清掃装置20の稼動時間を計測して累積する。
そして、清掃装置20の稼動中には、制御装置160は、‘回収装置管理処理’及び‘清掃流体管理処理’を実施する。
この後、清掃装置20による清掃処理が終了すると、制御装置160は、清掃装置20の稼動を停止し、かつ、タイマカウンタによる稼動時間の計測を停止する。
【0031】
<清掃条件設定処理>
本実施の形態では、制御装置160は、図11に示すように、清掃対象A表面の汚染状態によって清掃条件が予め決められた清掃条件テーブルを検索し、汚染センサ170からの情報に基づいて認識した汚染レベルに合致した清掃条件を選定する。
次いで、制御装置160は、貯留タンク60に清掃流体Fを充填したか否かについてオペレータからの確認信号に基づいて確認し、まだ清掃流体Fが充填されていなければ、貯留タンク60に清掃流体Fを充填することを促す警告を表示する。
そして、制御装置160は、貯留タンク60に清掃流体Fが充填された状態において、添加剤供給装置80による添加剤Mの供給処理、微粉体供給装置85による微粉体供給処理及び加熱ヒータ65による清掃流体Fの加熱処理を実施する。これにより、清掃流体Fは、所定量の添加剤M(本例では陽イオン溶液)、所定量の微粉体Sを含むと共に、所定温度に加熱される。
この後、制御装置160は、循環ポンプ70による清掃流体循環量、コンプレッサ90による加圧力及び清掃ヘッド30の清掃ブラシ40の回転数を設定し、清掃条件全ての設定が終了した段階で当該設定処理を終了する。
例えば汚染レベルが高い場合には、清掃流体Fに清掃能力を高めるという観点から、清掃流体Fへの添加剤Mの添加量、微粉体Sの供給量を増加すると共に、加熱温度を高め、更に、清掃流体循環量を増加させると共にコンプレッサ圧を高め、清掃ブラシ40の回転数を増加させるというごとくである。尚、汚染レベルが低い場合には、逆の傾向に夫々設定するようにすればよい。
【0032】
<回収装置管理処理>
本実施の形態では、制御装置160は、図12に示すように、清掃装置20の稼動時間の累積値tsを算出し、ts>ta(ta:濾材カートリッジの寿命に対応する閾値)の条件か否かをチェックし、ts>taであれば、濾材カートリッジ121,122の交換を促す濾材カートリッジ交換表示を行い、ts≦taであれば、濾材カートリッジ121,122の交換を要しないことから、濾材カートリッジ交換非表示とする。
これにより、オペレータは濾材カートリッジ121,122の交換時期を把握することが可能である。
更に、本例では、制御装置160は、回収装置100内の放射線センサ103の出力をチェックし、予め決められた危険レベルを超えた条件下で放射線に対して警告表示する。
これにより、オペレータは、回収装置100に捕捉回収した放射性汚染物質Cから放射線が漏洩していることを把握することが可能であり、清掃装置20の作業環境の安全性を容易に確認することができる。
【0033】
<清掃流体管理処理>
本実施の形態では、制御装置160は、図13に示すように、清掃装置20稼動中において流量センサ171の出力をチェックし、清掃流体Fの流量が規定値か否かを確認し、規定値に合致していれば清掃条件として現状を維持し、異なる状況であれば清掃条件の変更処理を実施する。
これにより、清掃装置20による清掃条件が予め決められた規定値になっているか否かを監視することが可能である。尚、本例では、流量センサ171による清掃流体Fの流量チェックだけを実施するようにしているが、清掃流体Fの温度を検出する温度センサや清掃ブラシ40の回転数を検出する回転数センサなどを設置し、これらからの情報に基づいて各デバイスの動作状態を監視することも可能である。
更に、本例では、制御装置160は、清掃装置20の稼動時間の累積値tsを算出し、ts>tb(tb:清掃流体の使用寿命に対応する閾値)の条件か否かをチェックし、ts>tbであれば、清掃流体Fの交換を促す清掃流体交換表示を行い、ts≦tbであれば、清掃流体Fの交換を要しないことから、清掃流体交換非表示とする。
これにより、オペレータは清掃流体Fの交換時期を把握することが可能である。
【0034】
−清掃装置による清掃過程−
次に、本実施の形態に係る清掃装置の清掃過程について模式的に説明する。
<清掃流体生成時>
図10及び図11に示すように、清掃条件設定処理が行われると、清掃流体Fは、図14(a)に示すように、所定量の添加剤M(本例では陽イオン溶液)及び所定量の微粉体Sを含み、加熱ヒータ65にて所定温度(T℃:20℃〜30℃)に加熱された状態に至る。
このように生成された清掃流体Fは、循環ポンプ70によって貯留タンク60から流体循環配管50を通じて移動していき、清掃ヘッド30に移動していく。
<清掃流体吐出時及び吐出後>
清掃流体Fは、図4及び図14(b)に示すように、コンプレッサ90にて加圧された状態で清掃ヘッド30の流体吐出口35から吐出ノズル36を介して清掃対象A表面に吐出される。
このとき、吐出ノズル36から吐出される清掃流体Fはコンプレッサ90により加圧力Nによって清掃対象A表面に衝突するため、図14(c)に示すように、その衝突力によって清掃対象A表面上の塵物質W及び汚染物質Cは剥離される。
【0035】
また、清掃流体Fは添加剤M(陽イオン溶液)及び微粉体Sを含む高温流体であることから、清掃対象A表面に塵物質Wと汚染物質Cとがイオン結合した状態で付着していたとしても、清掃流体F中の添加剤M及び高温流体であることに起因して、塵物質Wと汚染物質Cとのイオン結合は解除され易く、両者は分離した状態で剥離する。
更に、本例では、清掃流体F中に塵物質Wより小径の微粉体Sが混入されているため、分離した汚染物質Cは微粉体Sに吸着する傾向が多い。
更にまた、本実施の形態では、清掃ヘッド30は清掃ブラシ40を有しているため、図4に示すように、清掃ブラシ40の回転に伴って清掃対象A表面を研磨力Hにて研磨する。この研磨力Hによって清掃対象A表面に付着した塵物質W及び汚染物質Cは掻き取られる。
よって、清掃ヘッド30内では、清掃流体Fが清掃対象A表面に吐出され、かつ、清掃ブラシ40が清掃対象A表面を研磨することから、清掃対象A表面の塵物質W及び汚染物質Cは有効に剥離され、吐出ノズル36から吐出された清掃流体Fは清掃ブラシ40の回転に伴って移動し、清掃ヘッド30内の案内板38にて区画された案内通路39を通じて流体回収口37に導かれる。
更に、本例では、清掃ブラシ40は特殊な素材からなるカバーネット43を有していることから、塵物質Wと汚染物質Cとのイオン結合が解除された際に生成されるイオンをカバーネット43が吸着保持するようになっている。
【0036】
<汚染物質回収時>
清掃ヘッド30の流体回収口37から流体循環配管50に循環する清掃流体Fは回収装置100に至る。
このとき、清掃流体Fには、塵物質W、汚染物質Cを吸着した微粉体S、汚染物質C単体が夫々分離した状態で含まれている。
この状態において、清掃流体Fが回収装置100を通過すると、塵物質回収部110は、遠心分離器111で塵物質Wを遠心分離して塵物質回収容器112に収容する。
次いで、汚染物質回収部120の第1の濾材カートリッジ121が汚染物質Cを吸着した微粉体Sを捕捉回収し、更に、第2の濾材カートリッジ122が清掃流体F中を浮遊する汚染物質C単体を捕捉回収する。
この結果、回収装置100では、塵物質Wと汚染物質Cとが分離した状態で回収されることになり、回収装置100を通過した清掃流体Fは略清浄な状態に至り、貯留タンク60に戻され、引き続き、清掃流体Fとして利用に供される。
【0037】
−清掃流体後処理装置−
本実施の形態では、清掃装置20で使用される清掃流体Fは、図10及び図13に示すように、回収装置100によって清浄化されるため、長期に亘って使用することが可能であるが、長期使用に伴って清掃流体Fが徐々に汚染されることは避けられない。
このように、長期使用に伴って汚染した清掃流体Fをそのまま下水や海に廃棄することは環境汚染につながることから好ましくなく、本実施の形態では、図15に示す清掃流体後処理装置200が用いられる。
この清掃流体後処理装置200は、使用済みの清掃流体F’を後処理用に一次的に貯留する後処理タンク201と、この後処理タンク201に対し使用済みの清掃流体F’が循環させられる後処理循環配管202と、この後処理循環配管202の途中に設けられ、後処理タンク201内の使用済みの清掃流体F’を後処理循環配管202を介して予め決められた時間循環させる後処理循環ポンプ203と、後処理循環配管202の途中に設けられ、使用済みの清掃流体F’に含まれる汚染物質Cが捕捉される着脱自在な後処理フィルタ204と、を有し、後処理制御装置205によって一連の後処理動作を制御し、後処理終了後の清掃流体F’を後処理タンク201から直接下水道に排水したり、汲み上げポンプで汲み上げ排水するものである。尚、符号206は排水時に使用するバルブである。
ここで、後処理フィルタ204としては、回収装置100で使用した濾材を用いても差し支えないが、これ以外に、吸着剤として、プルシアンブルー(紺青)、グラフト重合体(グラフト重合液を不織布に含浸させたもの)、クラウンエーテルなどを利用することが可能である。
特に、プルシアンブルーは放射性汚染物質Cであるセシウムの吸着性が強く、清掃流体後処理装置200の後処理フィルタ204としては好ましい。但し、プルシアンブルーは熱に弱く容易に分解してシアンガスが発生することから、加熱による焼却には留意することが必要である。
【0038】
◎実施の形態2
図16は実施の形態2に係る清掃装置の全体構成を示す説明図である。
同図において、清掃装置20は、例えば清掃対象A表面に付着した放射性汚染物質C(本例ではセシウム)を清掃するものを想定したものであり、清掃対象A表面に対向して配置される清掃ヘッド30と、この清掃ヘッド30を介して清掃流体F(本例は気体)を循環させる流体循環配管50と、この流体循環配管50の一部に設けられて清掃流体Fが貯留される貯留タンク60と、この貯留タンク60に貯留された清掃流体Fを流体循環配管50に循環させる循環ポンプ70と、流体循環配管50のうち清掃ヘッド30に向かって循環する清掃流体Fを加圧した状態で清掃ヘッド30内に吐出させるコンプレッサ90と、流体循環配管50のうちコンプレッサ90と清掃ヘッド30との間に位置する流体吐出側配管51の途中に設けられ、流体循環配管50中の清掃流体Fに対し塵物質Wと汚染物質Cとのイオン結合を解除するためのイオンを生成するイオン生成装置180と、流体循環配管50のうち清掃ヘッド30から貯留タンク60に至る途中に設けられ、循環する清掃流体F中に含まれる塵物質Wと汚染物質Cとを分離した状態で回収する回収装置100と、を備えている。尚、実施の形態1と同様な構成要素については実施の形態1と同様な符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
また、清掃装置20の制御系についても実施の形態1と略同様に構成される。
【0039】
−貯留タンク周辺構成−
貯留タンク60は、図16及び図17に示すように、例えばバルブ191の開閉で気体を取り込む構成になっており、これを清掃流体Fとして貯留する。
本例では、気体として空気を利用する場合には、外気を直接取り込むようにしても差し支えないが、予め調整された気体をガスボンベ192に充填しておき、貯留タンク60内に所定の圧力で充填するようにしてもよい。
更に、本例では、実施の形態1と同様に、貯留タンク60内には清掃流体Fを加熱するための加熱ヒータ65が設けられている。
また、貯留タンク60には微粉体供給装置85が設けられている。
−イオン生成装置−
本実施の形態では、イオン生成装置180としては例えばコロナ放電を利用した放電ユニットが用いられる。この放電ユニットは、絶縁性材料からなるチャネル状のシールド181を有し、このシールド181には清掃流体Fが通過する開口182を開設すると共に、このシールド181内に一若しくは複数の放電ワイヤ183を配置し、この放電ワイヤ183に対して高圧電源184にて高圧電圧(直流又は交流)を印加することで、放電ワイヤ183にコロナ放電を生じさせ、これによりオゾンやOHラジカルなどの電離ガス、あるいは、陽子、電子などのイオンを生成するものである。
尚、イオン生成装置180としては、火花放電やストリーマ放電を利用した放電ユニットを使用してもよいし、あるいは、アーク放電、プラズマ放電を利用した放電ユニットを利用する等イオンを生成するものであれば適宜選定して差し支えない。
【0040】
−清掃装置による清掃過程−
本実施の形態によれば、清掃装置20は以下のような清掃過程を経る。
先ず、清掃流体Fの生成については、貯留タンク60にて清掃流体Fを貯留し、所定量の微粉体Sを供給すると共に、加熱ヒータ65にて清掃流体Fを所定温度に加熱する。
この状態で、他の清掃条件が設定されると、清掃装置20は稼動し始める。
この結果、清掃流体Fは流体循環配管50を通じて清掃ヘッド30に向かうが、コンプレッサ90と共にイオン生成装置180を作動させることから、清掃ヘッド30に向かう清掃流体Fは、微粉体Sを含む所定温度の気体であり、かつ、コンプレッサ90にて加圧されると共に、イオン生成装置180にて生成されたイオンIを含む状態で、清掃ヘッド30の流体吐出口35を通じて清掃対象A表面に吐出される。
このとき、清掃対象A表面に吐出される清掃流体Fは、気体である点で実施の形態1と異なるが、その性状については同等であることから、清掃ヘッド30内での清掃動作は実施の形態1と略同様である。
この後、清掃ヘッド30にて清掃された清掃流体Fは回収装置100にて実施の形態1と同様に回収処理された後、回収装置100を経て貯留タンク60に戻される。
尚、使用済みの清掃流体F’の後処理についても、実施の形態1に準じて行うようにすればよい。
【0041】
◎実施の形態3
図19は実施の形態3に係る清掃装置の全体構成を示す説明図である。
同図において、清掃装置20の基本的構成は、実施の形態1と略同様な構成を有しているが、実施の形態1と異なり、自動車両300に搭載したものである。尚、実施の形態1と同様な構成要素については実施の形態1と同様な符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
本例では、清掃装置20のうち、清掃ヘッド30は自動車両300の例えば前方側に設けられた昇降台301に昇降自在に支持されており、この昇降台301には例えば光学式位置センサ302が設けられ、昇降台301と清掃対象A表面との距離hを検出するようになっている。
そして、清掃装置20の貯留タンク60、循環ポンプ70、回収装置100は自動車両300の荷台305に搭載され、清掃ヘッド30と貯留タンク60、その他の部品とは流体循環配管50で連通接続されている。
更に、この清掃装置20の制御装置160は自動車両300の運転席310の一部に搭載されている。
尚、本例では、清掃流体Fの収容タンク320や使用済みの清掃流体F’の後処理装置330も自動車両300の荷台305に搭載されている。
従って、本実施の形態では、清掃対象A表面が路面などで広範囲に亘っているような場合でも、自動車両300を運転することで容易に清掃装置20による清掃を実施することが可能である。
また、本例では、自動車両300に清掃流体Fの収容タンク320や後処理装置330を搭載したので、清掃流体Fの交換や後処理をその場で実施することも可能である。
【実施例】
【0042】
◎実施例1
実施の形態1に係る清掃装置を実施例1として、清掃壁面A〜Fに対して汚染物質であるセシウムを清掃するに当たり、実施例1に係る清掃装置による清掃前後における放射線計数率(cpm)を調べたところ、図20に示す結果が得られた。
同図によれば、いずれの壁面A〜Fについても80%以上の汚染物質の除去率が確認された。
◎実施例2
某県某所にある木造2階建て住宅において、放射線量を計測したところ、庭の放射線量は1.5μSv/h、1階の居間中央での室内放射線量は0.5μSv/h、居間直上の2階の寝室での室内放射線量は0.8μSv/hであったが、実施の形態1に係る清掃装置を実施例2とし、2階の屋根面に対して清掃処理を実施したところ、2階の寝室での室内放射線量は0.4μSv/hに低減した。
◎実施例3
実施の形態1に係る清掃装置を実施例3とし、更に、界面活性剤を添加剤として付加した場合と付加しない場合とで汚染物質(本例ではセシウム)の除去率を調べたところ、界面活性剤を添加剤として更に付加した態様が付加しない態様に比べて除去効果が5〜15%上昇することが確認された。
また、加熱ヒータによる清掃流体の加温による影響を調べたところ、20℃に対して30℃に上昇させたとき汚染物質(本例ではセシウム)の除去率が30%上昇することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る汚染物質清掃装置は、塵物質と汚染物質とを分離回収することを企図したものであるが、例えば清掃対象表面が屋根面である場合には雨などで塵物質が殆どなく、汚染物質が主として付着しているケースもあり得る。
このような状況下では、本発明に係る汚染物質清掃装置の回収手段(例えば実施の形態1の回収装置100)の構成を、塵物質回収部と汚染物質回収部とを分離しない形に簡略化して汚染物質を回収する方式を採用しても差し支えない。
この場合、簡略化した回収手段としては、実施の形態1と略同様に、例えば図3に示すように、清掃ヘッド30の流体回収口37と貯留タンク60との間を接続した流体循環配管50の途中に濾材カートリッジなどの回収部品を設けてもよいし、より簡略化するという観点からすれば、清掃ヘッド30内の清掃ブラシ40に回収部品としての回収カバーを付加するようにしてもよい。
ここで、回収カバーとしては、汚染物質が吸着可能な濾材にてネット状の覆い部材(図5に示すカバーネット43の形状に相当する部材)を構成し、清掃ブラシ40にこのネット状覆い部材を被せることで、清掃対象表面から清掃された汚染物質を回収する方式が用いられる。尚、この態様では、清掃ヘッド30の流体回収口37付近にも汚染物質を吸着保持するための濾材フィルタを設けることが好ましい。
【符号の説明】
【0044】
1…清掃ヘッド,1a…流体吐出口,1b…流体回収口,1c…内部空間,1d…清掃体,2…流体循環配管,3…貯留タンク,4…循環駆動源,5…分離因子供給手段,6…加圧吐出手段,7…回収手段,7a…塵物質回収部,7b…汚染物質回収部,7c…遮蔽カバー,8…加熱源,9…微粉体供給部,10…汚染物質清掃装置,11…汚染状態検出手段,12…清掃条件制御手段,13…回収状態検出手段,14…回収条件制御手段,15…清掃流体後処理装置,16…後処理タンク,17…後処理循環配管,18…後処理循環駆動源,19…捕捉材,A…清掃対象,C…汚染物質,F…清掃流体,W…塵物質
【特許請求の範囲】
【請求項1】
清掃対象表面に付着した汚染物質を清掃する汚染物質清掃装置であって、
清掃対象表面に対向して周縁部が接触配置されて中空状の内部空間を形成し且つ当該内部空間に連通する流体吐出口及び流体回収口を有する清掃ヘッドと、
この清掃ヘッドの流体吐出口及び流体回収口に連通接続され、清掃流体が前記清掃ベッドの内部空間を介して循環する流体循環配管と、
この流体循環配管の一部に設けられ、清掃流体が補充可能に貯留される貯留タンクと、
この貯留タンクに貯留される清掃流体を前記流体循環配管に循環させる循環駆動源と、
前記貯留タンク又は前記流体循環配管の一部に設けられ、前記清掃流体に対し前記汚染物質がイオン結合する塵物質から分離可能となる特性の分離因子を供給する分離因子供給手段と、
前記流体循環配管を循環する清掃流体を加圧した状態で前記清掃ヘッドの流体吐出口から清掃ヘッドの内部空間に吐出させる加圧吐出手段と、
前記流体循環配管のうち前記清掃ヘッドの流体回収口から前記貯留タンクに至る途中に設けられ、循環する清掃流体中に含まれる塵物質と汚染物質とを分離した状態で回収する回収手段と、
を備えたことを特徴とする汚染物質清掃装置。
【請求項2】
請求項1記載の汚染物質清掃装置において、
前記清掃ヘッドは、清掃対象表面に接触し且つ当該清掃対象表面に対して略鉛直方向に延びる回転軸を中心に回転する清掃体を内部空間に有し、前記流体吐出口と前記流体回収口とを清掃体を挟んだ位置関係に配置することを特徴とする汚染物質清掃装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の汚染物質清掃装置において、
前記貯留タンクは、貯留する清掃流体を加熱する加熱源を有することを特徴とする汚染物質清掃装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれかに記載の汚染物質清掃装置のうち、清掃流体が液体である態様において、
前記分離因子供給手段は、前記貯留タンクに設けられ、貯留される清掃流体に対し塵物質と汚染物質とのイオン結合を解除可能な添加剤が供給される添加剤供給手段であることを特徴とする汚染物質清掃装置。
【請求項5】
請求項1ないし3いずれかに記載の汚染物質清掃装置のうち、清掃流体が気体である態様において、
前記分離因子供給手段は、加圧吐出手段と前記清掃ヘッドとの間の流体循環配管に設けられ、循環する清掃流体に対し塵物質と汚染物質とのイオン結合を解除可能なイオンを生成するイオン生成手段であることを特徴とする汚染物質清掃装置。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれかに記載の汚染物質清掃装置において、
前記回収手段は、前記流体循環配管内の清掃流体の流れ方向の上流側に設けられ、清掃流体に含まれる塵物質を捕捉回収する塵物質回収部と、
この塵物質回収部に対し清掃流体の流れ方向下流側に設けられ、清掃流体中の汚染物質を捕捉回収する汚染物質回収部と、
を有することを特徴とする汚染物質清掃装置。
【請求項7】
請求項1ないし6いずれかに記載の汚染物質清掃装置において、
前記貯留タンクは、貯留される清掃流体に塵物質よりも粒径の小さい微粉体が供給される微粉体供給部を有し、
前記回収手段は、前記流体循環配管内の清掃流体の流れ方向の上流側に設けられ、清掃流体に含まれる塵物質を捕捉回収する塵物質回収部と、
この塵物質回収部に対し清掃流体の流れ方向下流側に設けられ、清掃流体中の汚染物質が付着した微粉体を捕捉回収する第1の汚染物質回収部と、
この第1の汚染物質回収部に対し清掃流体の流れ方向下流側に設けられ、清掃流体に含まれる汚染物質を捕捉回収する第2の汚染物質回収部と、
を有することを特徴とする汚染物質清掃装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の汚染物質清掃装置において、
前記塵物質回収部は、捕捉した塵物質を流体循環配管の通路外に回収するものであることを特徴とする汚染物質清掃装置。
【請求項9】
請求項1ないし8いずれかに記載の汚染物質清掃装置において、
前記回収手段は、清掃流体に含まれる汚染物質が捕捉回収される汚染物質回収部を着脱自在又は移動自在に構成したものであることを特徴とする汚染物質清掃装置。
【請求項10】
請求項1ないし9いずれかに記載の汚染物質清掃装置のうち清掃対象が放射性汚染物質である態様において、
前記回収手段は、放射性汚染物質が捕捉回収される汚染物質回収部の周囲を放射線汚染物質が不透過な材料で構成される遮蔽カバーで覆うものであることを特徴とする汚染物質清掃装置。
【請求項11】
請求項1ないし10いずれかに記載の汚染物質清掃装置において、
自動車両に搭載され、自動車両の移動に伴って清掃対象表面の位置を移動させるようにした汚染物質清掃装置。
【請求項12】
請求項1ないし11いずれかに記載の汚染物質清掃装置と、
清掃対象表面の汚染物質による汚染状態を検出する汚染状態検出手段と、
この汚染状態検出手段の検出結果に応じて清掃流体による清掃条件を制御する清掃条件制御手段と、
を備えている汚染物質清掃制御システム。
【請求項13】
請求項1ないし11いずれかに記載の汚染物質清掃装置と、
前記回収装置における汚染物質回収部による汚染物質の回収状態を検出する回収状態検出手段と、
この回収状態検出手段の検出結果に応じて汚染物質回収部の回収条件を制御する回収条件制手段と、
を備えていることを特徴とする汚染物質清掃制御システム。
【請求項14】
請求項13記載の汚染物質清掃制御システムにおいて、
前記回収手段は、清掃流体に含まれる汚染物質が捕捉回収される汚染物質回収部を着脱自在又は移動自在に構成したものであり、
前記回収条件制御装置は、前記回収状態検出手段の検出結果に応じて汚染物質回収部の着脱又は移動時期に関する回収条件を制御するものであることを特徴とする汚染物質清掃制御システム。
【請求項15】
請求項13記載の汚染清掃制御システムのうち、清掃対象が放射性汚染物質である態様において、
前記回収状態検出手段は、前記回収装置における汚染物質回収部による放射性汚染物質の放射線量を検出するものであり、
前記回収条件制御手段は、前記回収状態検出手段で検出された放射線量が予め決められた閾値に達した条件で汚染物質回収部に対する警告を発することを特徴とする汚染物質清掃制御システム。
【請求項16】
請求項12ないし15いずれかに記載の汚染物質清掃制御システムにおいて、
汚染物質清掃装置にて使用済みの清掃流体に対して後処理を施す清掃流体後処理装置を備え、
この清掃流体後処理装置は、前記使用済みの清掃流体を後処理用に一次的に貯留する後処理タンクと、
この後処理タンクに対して前記使用済みの清掃流体が循環させられる後処理循環配管と、
この後処理循環配管の途中に設けられ、前記後処理タンク内の使用済みの清掃流体を後処理循環配管を介して予め決められた時間循環させる後処理循環駆動源と、
前記後処理循環配管の途中に設けられ、使用済みの清掃流体に含まれる汚染物質が捕捉される着脱自在な捕捉材と、
を有し、後処理終了後の清掃流体を後処理タンクから外部に排出することを特徴とする汚染物質清掃制御システム。
【請求項1】
清掃対象表面に付着した汚染物質を清掃する汚染物質清掃装置であって、
清掃対象表面に対向して周縁部が接触配置されて中空状の内部空間を形成し且つ当該内部空間に連通する流体吐出口及び流体回収口を有する清掃ヘッドと、
この清掃ヘッドの流体吐出口及び流体回収口に連通接続され、清掃流体が前記清掃ベッドの内部空間を介して循環する流体循環配管と、
この流体循環配管の一部に設けられ、清掃流体が補充可能に貯留される貯留タンクと、
この貯留タンクに貯留される清掃流体を前記流体循環配管に循環させる循環駆動源と、
前記貯留タンク又は前記流体循環配管の一部に設けられ、前記清掃流体に対し前記汚染物質がイオン結合する塵物質から分離可能となる特性の分離因子を供給する分離因子供給手段と、
前記流体循環配管を循環する清掃流体を加圧した状態で前記清掃ヘッドの流体吐出口から清掃ヘッドの内部空間に吐出させる加圧吐出手段と、
前記流体循環配管のうち前記清掃ヘッドの流体回収口から前記貯留タンクに至る途中に設けられ、循環する清掃流体中に含まれる塵物質と汚染物質とを分離した状態で回収する回収手段と、
を備えたことを特徴とする汚染物質清掃装置。
【請求項2】
請求項1記載の汚染物質清掃装置において、
前記清掃ヘッドは、清掃対象表面に接触し且つ当該清掃対象表面に対して略鉛直方向に延びる回転軸を中心に回転する清掃体を内部空間に有し、前記流体吐出口と前記流体回収口とを清掃体を挟んだ位置関係に配置することを特徴とする汚染物質清掃装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の汚染物質清掃装置において、
前記貯留タンクは、貯留する清掃流体を加熱する加熱源を有することを特徴とする汚染物質清掃装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれかに記載の汚染物質清掃装置のうち、清掃流体が液体である態様において、
前記分離因子供給手段は、前記貯留タンクに設けられ、貯留される清掃流体に対し塵物質と汚染物質とのイオン結合を解除可能な添加剤が供給される添加剤供給手段であることを特徴とする汚染物質清掃装置。
【請求項5】
請求項1ないし3いずれかに記載の汚染物質清掃装置のうち、清掃流体が気体である態様において、
前記分離因子供給手段は、加圧吐出手段と前記清掃ヘッドとの間の流体循環配管に設けられ、循環する清掃流体に対し塵物質と汚染物質とのイオン結合を解除可能なイオンを生成するイオン生成手段であることを特徴とする汚染物質清掃装置。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれかに記載の汚染物質清掃装置において、
前記回収手段は、前記流体循環配管内の清掃流体の流れ方向の上流側に設けられ、清掃流体に含まれる塵物質を捕捉回収する塵物質回収部と、
この塵物質回収部に対し清掃流体の流れ方向下流側に設けられ、清掃流体中の汚染物質を捕捉回収する汚染物質回収部と、
を有することを特徴とする汚染物質清掃装置。
【請求項7】
請求項1ないし6いずれかに記載の汚染物質清掃装置において、
前記貯留タンクは、貯留される清掃流体に塵物質よりも粒径の小さい微粉体が供給される微粉体供給部を有し、
前記回収手段は、前記流体循環配管内の清掃流体の流れ方向の上流側に設けられ、清掃流体に含まれる塵物質を捕捉回収する塵物質回収部と、
この塵物質回収部に対し清掃流体の流れ方向下流側に設けられ、清掃流体中の汚染物質が付着した微粉体を捕捉回収する第1の汚染物質回収部と、
この第1の汚染物質回収部に対し清掃流体の流れ方向下流側に設けられ、清掃流体に含まれる汚染物質を捕捉回収する第2の汚染物質回収部と、
を有することを特徴とする汚染物質清掃装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の汚染物質清掃装置において、
前記塵物質回収部は、捕捉した塵物質を流体循環配管の通路外に回収するものであることを特徴とする汚染物質清掃装置。
【請求項9】
請求項1ないし8いずれかに記載の汚染物質清掃装置において、
前記回収手段は、清掃流体に含まれる汚染物質が捕捉回収される汚染物質回収部を着脱自在又は移動自在に構成したものであることを特徴とする汚染物質清掃装置。
【請求項10】
請求項1ないし9いずれかに記載の汚染物質清掃装置のうち清掃対象が放射性汚染物質である態様において、
前記回収手段は、放射性汚染物質が捕捉回収される汚染物質回収部の周囲を放射線汚染物質が不透過な材料で構成される遮蔽カバーで覆うものであることを特徴とする汚染物質清掃装置。
【請求項11】
請求項1ないし10いずれかに記載の汚染物質清掃装置において、
自動車両に搭載され、自動車両の移動に伴って清掃対象表面の位置を移動させるようにした汚染物質清掃装置。
【請求項12】
請求項1ないし11いずれかに記載の汚染物質清掃装置と、
清掃対象表面の汚染物質による汚染状態を検出する汚染状態検出手段と、
この汚染状態検出手段の検出結果に応じて清掃流体による清掃条件を制御する清掃条件制御手段と、
を備えている汚染物質清掃制御システム。
【請求項13】
請求項1ないし11いずれかに記載の汚染物質清掃装置と、
前記回収装置における汚染物質回収部による汚染物質の回収状態を検出する回収状態検出手段と、
この回収状態検出手段の検出結果に応じて汚染物質回収部の回収条件を制御する回収条件制手段と、
を備えていることを特徴とする汚染物質清掃制御システム。
【請求項14】
請求項13記載の汚染物質清掃制御システムにおいて、
前記回収手段は、清掃流体に含まれる汚染物質が捕捉回収される汚染物質回収部を着脱自在又は移動自在に構成したものであり、
前記回収条件制御装置は、前記回収状態検出手段の検出結果に応じて汚染物質回収部の着脱又は移動時期に関する回収条件を制御するものであることを特徴とする汚染物質清掃制御システム。
【請求項15】
請求項13記載の汚染清掃制御システムのうち、清掃対象が放射性汚染物質である態様において、
前記回収状態検出手段は、前記回収装置における汚染物質回収部による放射性汚染物質の放射線量を検出するものであり、
前記回収条件制御手段は、前記回収状態検出手段で検出された放射線量が予め決められた閾値に達した条件で汚染物質回収部に対する警告を発することを特徴とする汚染物質清掃制御システム。
【請求項16】
請求項12ないし15いずれかに記載の汚染物質清掃制御システムにおいて、
汚染物質清掃装置にて使用済みの清掃流体に対して後処理を施す清掃流体後処理装置を備え、
この清掃流体後処理装置は、前記使用済みの清掃流体を後処理用に一次的に貯留する後処理タンクと、
この後処理タンクに対して前記使用済みの清掃流体が循環させられる後処理循環配管と、
この後処理循環配管の途中に設けられ、前記後処理タンク内の使用済みの清掃流体を後処理循環配管を介して予め決められた時間循環させる後処理循環駆動源と、
前記後処理循環配管の途中に設けられ、使用済みの清掃流体に含まれる汚染物質が捕捉される着脱自在な捕捉材と、
を有し、後処理終了後の清掃流体を後処理タンクから外部に排出することを特徴とする汚染物質清掃制御システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−79884(P2013−79884A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220533(P2011−220533)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(301071022)
【出願人】(511240357)暮らしの科学研究所株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(301071022)
【出願人】(511240357)暮らしの科学研究所株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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