説明

汚水処理装置、制御装置及び汚水処理方法

【課題】余剰汚泥の発生を考慮した再基質化処理を行うことができ、且つ、運用コスト上昇の抑制を図り得る汚水処理装置及び汚水処理方法、更には制御装置を提供する。
【解決手段】汚水処理装置は、曝気槽1、再基質化装置2、再基質化ライン24及び25、返送ライン23、余剰汚泥排出用排出ライン26、制御装置15、測定手段(8〜12)、ライン切替手段(6〜7)を有する。測定手段は、曝気槽1へと流入する汚水の基質濃度CW0、汚水の一日当たりの量Q0、処理汚泥の有機炭素濃度(CD4、CE4、CWS4)、曝気槽1内の生存汚泥のSS濃度XS1、濃縮汚泥の有機炭素濃度(CD3、CE3、CS3)に関する情報を取得する。制御装置15は、測定手段が取得した情報に基づき、曝気槽1に供給できる処理汚泥の一日当たりの量Q4と、この場合に排出できる余剰汚泥の一日当た
りの量Q5とを算出し、Q4及びQ5が満たされるようにライン切替手段に指示を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水処理装置、制御装置及び汚水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、多くの下水処理設備においては、活性汚泥法によって汚水の浄化が行われている。これは、活性汚泥法は微生物の代謝作用を利用するため、処理効率が高く、経済的であるからである。ここで、活性汚泥法について以下に説明する。
【0003】
先ず、汚水は、曝気槽(曝気槽)へと連続的に供給され、そこで好気性微生物の集団と接触する。これにより、汚水の基質(BOD成分)は、好気性微生物の集団によって酸化分解される。この好気性微生物の集団は、一般に「活性汚泥」と呼ばれる。曝気槽で処理された汚水は、微生物集団と共に沈殿槽に流入する。
【0004】
沈殿槽では、微生物集団は互いにくっつき合ってフロックとなり、沈降する。一方、上澄み(分離液)は溢流する。沈殿槽に沈降した微生物集団、即ち、汚泥はポンプによって再び曝気槽に返送され(返送汚泥)、再び基質の酸化分解を行う。
【0005】
但し、微生物は増殖するため、汚泥を全て返送すると、曝気槽で酸素不足となったり、沈殿槽で固液分離が困難になったりする。このため、増殖した分は、余剰汚泥として系外に取り出され、脱水、焼却等の処理が行われる。最終的には、余剰汚泥は埋め立て処分される。
【0006】
ところで、近年において、下水処理設備は増加しており、これに伴い余剰汚泥の発生量も着実に増加している。このため、埋め立て用の最終処分地の確保が年々困難となっている。また、各自治体においては、余剰汚泥の運搬や処理にかかる費用が増大している。このような状況から、余剰汚泥の削減方法については種々の研究がなされている。
【0007】
余剰汚泥を削減するための手段としては、例えば、活性汚泥法の処理プロセスに、再基質化プロセスを追加することが提案されている(例えば、特許文献1又は非特許文献1参照。)。再基質化プロセスは、沈殿槽に沈殿した汚泥(濃縮汚泥)の一部を再び生物分解可能な基質に変換(再基質化)するプロセスである。図6は、再基質化プロセスが追加された活性汚泥法の概略を示す図である。
【0008】
図6に示すように、曝気槽51で発生した汚泥は、沈殿槽53に送られ、そこで沈降・濃縮される。沈殿槽53に沈降した汚泥(濃縮汚泥)のうち、一部は返送汚泥としてそのまま曝気槽51に送られ、別の一部は再基質化装置52に送られる。
【0009】
再基質化装置52は、物理的、化学的又は生物学的方法によって、濃縮汚泥中の微生物の殺傷、細胞壁の破壊、可溶化・低分子化等を行う。これにより、濃縮汚泥中の微生物は死滅し、再度の生物分解(微生物による酸化分解)が難しい汚泥(以下「生存汚泥」という。)の割合が低下し、代わりに、再度の生物分解が可能な汚泥(以下、「再基質化汚泥」という。)の割合が増加する。また、再基質化処理が施された濃縮汚泥(処理汚泥)は、再基質化装置52から曝気槽51へと送られる。そして、処理汚泥中の再基質化汚泥は、再度、曝気槽51において微生物集団によって酸化分解される。この結果、余剰汚泥の削減が図られる。
【0010】
再基質化の具体的な方法としては、オゾン酸化法、好熱細菌法、ビーズミル法、水熱処
理法、超音波法、高速回転ディスク法、ウォータージェット法、電解法、高圧処理法、酸・アルカリ処理法、マイクロ波法等が知られている。このうち、特許文献1においては、オゾン酸化法が開示されており、非特許文献1においては、水熱処理法を利用した方法が開示されている。
【0011】
また、非特許文献1においては、水熱処理法による再基質化プロセスを導入した場合における汚泥削減のメカニズムを理論化する試みがなされている。また、この理論に基づいて構築されたモデルのシミュレーション解析を行い、これによって、再基質化量等の操作条件を決定している。
【0012】
更に、非特許文献1においては、シミュレーション解析から得られた値と実測値とを比較することで、シミュレーション解析の正確性の実証も行っている。このことから、活性汚泥法を実施する既存の汚水処理装置に再基質化装置を組み込み、非特許文献1に開示された操作条件で汚水処理装置を稼動すれば汚泥を削減できると考えられる。
【特許文献1】特許3648751公報
【非特許文献1】奥田友章著 「水熱反応による余剰汚泥削減型活性汚泥法の開発に関する研究」、大阪工業大学大学院工学研究科博士課程学位論文、2002年12月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、再基質化装置を組み込んだ汚水処理装置においては、再基質化プロセスを実行する必要があるため、再基質化装置が組み込まれていない汚水処理装置に比べて、管理者の負担が増加してしまう。このため、余剰汚泥の処分にかかるコストを低減できても、管理者の増員等による運用コストの上昇を招来してしまう。
【0014】
また、非特許文献1に開示された操作条件は、あくまで余剰汚泥を削減するための条件であり、汚水処理装置の省力化に貢献するものではない。更に、非特許文献1においては、余剰汚泥が全く発生しないことを前提にしてモデルを構築し、それに基づいて解析シミュレーションを行っている。このため、実際に汚水処理装置を長時間稼動した場合は、解析結果と実際の状況とが乖離する可能性がある。
【0015】
本発明の目的は、余剰汚泥の発生を考慮した再基質化処理を行うことができ、且つ、運用コスト上昇の抑制を図り得る汚水処理装置及び汚水処理方法、更には汚水処理装置に用いられる制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために本発明における汚水処理装置は、活性汚泥法による汚水の浄化処理を行う汚水処理装置であって、曝気槽と、前記曝気槽で処理された汚水を濃縮汚泥と分離液とに分離させる固液分離手段と、前記濃縮汚泥に対して再基質化処理を行う再基質化手段と、前記濃縮汚泥を前記再基質化手段へと送るための第1の再基質化ラインと、前記再基質化処理された処理汚泥を前記曝気槽へと送るための第2の再基質化ラインと、前記濃縮汚泥を前記曝気槽へと返送するための返送ラインと、前記濃縮汚泥を余剰汚泥として外部へと排出するための排出ラインと、制御手段と、測定手段と、前記制御手段の指示に応じて、前記第1の再基質化ラインによる前記濃縮汚泥の前記再基質化手段への導入又は前記排出ラインによる前記余剰汚泥の外部への排出のうち少なくとも一方が行なえるようラインを切替えるライン切替手段とを備え、前記測定手段は、外部から前記曝気槽へと流入する汚水の基質濃度CW0、前記流入する汚水の一日あたりの量Q0、前記処理汚泥
中の有機炭素濃度、前記曝気槽内の生存汚泥のSS濃度、及び前記濃縮汚泥中の有機炭素濃度に関する情報を取得し、前記制御手段は、前記測定手段が取得した情報に基づいて、前記曝気槽に供給できる前記処理汚泥の一日あたりの量Q4と、前記Q4を達成した場合に
排出が必要な前記余剰汚泥の一日あたりの量Q5とを算出し、算出した前記Q4及び前記Q5が満たされるように前記ライン切替手段に切替えを行わせることを特徴とする。
【0017】
また、上記目的を達成するために本発明における汚水処理方法は、曝気槽と、前記曝気槽で処理された汚水を濃縮汚泥と分離液とに分離させる固液分離手段と、前記濃縮汚泥に対して再基質化処理を行う再基質化手段と、前記濃縮汚泥を前記再基質化手段へと送るための第1の再基質化ラインと、前記再基質化処理された処理汚泥を前記曝気槽へと送るための第2の再基質化ラインと、前記濃縮汚泥を前記曝気槽へと返送するための返送ラインと、前記濃縮汚泥を余剰汚泥として外部へと排出するための排出ラインとを備えた汚水処理装置を用いて、汚水を浄化する汚水処理方法であって、(a)外部から前記曝気槽へと流入する汚水の基質濃度CW0、前記流入する汚水の一日あたりの量Q0、前記処理汚泥中
の有機炭素濃度、前記曝気槽内の生存汚泥のSS濃度、及び前記濃縮汚泥中の有機炭素濃度に関する情報を取得する工程と、(b)前記(a)の工程で取得された情報に基づいて、前記曝気槽に供給できる前記処理汚泥の一日あたりの量Q4と、前記Q4を達成した場合に排出が必要な前記余剰汚泥の一日あたりの量Q5とを算出する工程と、(c)前記(b
)の工程で算出された前記Q4及び前記Q5が満たされるように、前記第1の再基質化ラインによる前記濃縮汚泥の前記再基質化手段への導入、及び前記排出ラインによる前記余剰汚泥の外部への排出を行う工程とを有することを特徴とする。
【0018】
更に、上記目的を達成するために本発明における制御装置は、曝気槽と、前記曝気槽で処理された汚水を濃縮汚泥と分離液とに分離させる固液分離手段と、前記濃縮汚泥に対して再基質化処理を行う再基質化手段と、前記濃縮汚泥を前記再基質化手段へと送るための第1の再基質化ラインと、前記再基質化処理された処理汚泥を前記曝気槽へと送るための第2の再基質化ラインと、前記濃縮汚泥を前記曝気槽へと返送するための返送ラインと、前記濃縮汚泥を余剰汚泥として外部へと排出するための排出ラインと、測定手段と、前記制御手段の指示に応じて、前記第1の再基質化ラインによる前記濃縮汚泥の前記再基質化手段への導入又は前記排出ラインによる前記余剰汚泥の外部への排出のうち少なくとも一方が行なえるようラインを切替えるライン切替手段とを備え、前記測定手段は、外部から前記曝気槽へと流入する汚水の基質濃度CW0、前記流入する汚水の一日あたりの量Q0
前記処理汚泥中の有機炭素濃度、前記曝気槽内の生存汚泥のSS濃度、及び前記濃縮汚泥中の有機炭素濃度に関する情報を取得する汚水処理装置に用いられる制御装置であって、前記測定手段が取得した情報に基づいて、前記曝気槽に供給できる前記処理汚泥の一日あたりの量Q4と、前記Q4を達成した場合に排出が必要な前記余剰汚泥の一日あたりの量Q5とを算出し、算出した前記Q4及び前記Q5が満たされるように前記ライン切替手段に切
替えを行わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上のように本発明では、曝気槽に供給できる処理汚泥の一日あたりの量が算出される。また、この曝気槽に供給できる処理汚泥の一日当たりの量の算出は、余剰汚泥の発生を考慮して行われており、このとき、排出可能な余剰汚泥の一日あたりの量も算出される。このため、本発明によれば、曝気槽の生物処理性能を維持しつつ、余剰汚泥の発生を考慮した再基質化処理を行うことができ、実際の状況と算出結果との乖離は抑制される。また、本発明における処理装置及び制御装置によれば、装置が算出を行うため、算出分の処理汚泥の曝気槽への供給や、算出分の余剰汚泥の排出を容易に自動化できる、この結果、運用コスト上昇の抑制が図られることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明における汚水処理装置は、活性汚泥法による汚水の浄化処理を行う汚水処理装置であって、曝気槽と、前記曝気槽で処理された汚水を濃縮汚泥と分離液とに分離させる固液分離手段と、前記濃縮汚泥に対して再基質化処理を行う再基質化手段と、前記濃縮汚泥を
前記再基質化手段へと送るための第1の再基質化ラインと、前記再基質化処理された処理汚泥を前記曝気槽へと送るための第2の再基質化ラインと、前記濃縮汚泥を前記曝気槽へと返送するための返送ラインと、前記濃縮汚泥を余剰汚泥として外部へと排出するための排出ラインと、制御手段と、測定手段と、前記制御手段の指示に応じて、前記第1の再基質化ラインによる前記濃縮汚泥の前記再基質化手段への導入又は前記排出ラインによる前記余剰汚泥の外部への排出のうち少なくとも一方が行なえるようラインを切替えるライン切替手段とを備え、前記測定手段は、外部から前記曝気槽へと流入する汚水の基質濃度CW0、前記流入する汚水の一日あたりの量Q0、前記処理汚泥中の有機炭素濃度、前記曝気
槽内の生存汚泥のSS濃度、及び前記濃縮汚泥中の有機炭素濃度に関する情報を取得し、前記制御手段は、前記測定手段が取得した情報に基づいて、前記曝気槽に供給できる前記処理汚泥の一日あたりの量Q4と、前記Q4を達成した場合に排出が必要な前記余剰汚泥の一日あたりの量Q5とを算出し、算出した前記Q4及び前記Q5が満たされるように前記ラ
イン切替手段に切替えを行わせることを特徴とする。
【0021】
上記本発明における汚水処理装置は、前記測定手段が、前記曝気槽における汚水の流入側に配置された第1の測定部と、前記第2の再基質化ラインに配置された第2の測定部と、前記曝気槽に配置された第3の測定部と、前記固液分離手段の前記濃縮汚泥の排出側に配置された第4の測定部とを備え、前記第1の測定部は、外部から前記曝気槽へと流入する汚水の基質濃度CW0及び前記流入する汚水の一日あたりの量Q0を求めるための情報を
取得し、前記第2の測定部は、前記処理汚泥に含まれる再基質化汚泥の溶解成分における有機炭素濃度CD4、前記処理汚泥に含まれる再基質化汚泥の懸濁成分における有機炭素濃度CE4、及び前記処理汚泥に含まれる生存汚泥の有機炭素濃度CS4を求めるための情報を取得し、前記第3の測定部は、前記曝気槽内の生存汚泥のSS濃度XS1を求めるための情報を取得し、前記第4の測定部は、前記濃縮汚泥に含まれる再基質化汚泥の溶解成分における有機炭素濃度CD3、前記濃縮汚泥に含まれる再基質化汚泥の懸濁成分における有機炭素濃度CE3、及び前記濃縮汚泥に含まれる生存汚泥の有機炭素濃度CS3を求めるための情報を取得し、前記制御手段に記憶部が備えられ、前記記憶部は、外部から前記曝気槽へと流入する汚水由来の基質の汚泥転換率YW、前記曝気槽内の再基質化汚泥の懸濁成分の汚
泥転換率YE、前記曝気槽内の再基質化汚泥の溶解成分の汚泥転換率YD、外部から前記曝気槽へと流入する汚水由来の基質の分解速度kW、前記曝気槽内の再基質化汚泥の懸濁成
分の分解速度kE、前記曝気槽内の再基質化汚泥の溶解成分の分解速度kD、外部から前記曝気槽へと流入する汚水由来の基質の飽和定数KsW、前記曝気槽内の再基質化汚泥の懸
濁成分の飽和定数KsE、前記曝気槽内の再基質化汚泥の溶解成分の飽和定数KsD、生存汚泥の自己酸化率bC、前記曝気槽の容積VX1と、予め設定された、前記分離液に含まれ
る再基質化汚泥の溶解成分における有機炭素濃度CD2と、予め設定された、前記分離液に含まれる前記汚水由来の基質の有機炭素濃度CW2とを記憶し、前記制御手段が、前記第1の測定部から前記第4の測定部によって取得された情報から、CW0、Q0、CD4、CE4
S4、XS1、CD3、CE3、及びCS3を求め、求めた値と前記記憶部に記憶された値とを、下記式(1)〜(8)に代入することによって、前記曝気槽に供給できる前記処理汚泥の一日あたりの量Q4と、前記Q4を達成した場合に排出が必要な前記余剰汚泥の一日あたりの量Q5とを算出する態様であるのが好ましい。
【0022】
【数25】

【0023】
【数26】

【0024】
【数27】

【0025】
【数28】

【0026】
【数29】

【0027】
【数30】

【0028】
【数31】

【0029】
【数32】

上記態様においては、前記第2の測定部が、前記処理汚泥中のATP濃度を測定するATP計を備え、前記第4の測定部が、前記濃縮汚泥中のATP濃度を測定するATP計を備え、前記制御手段が、前記2の測定部のATP計が測定したATP濃度に基づいて前記処理汚泥に含まれる生存汚泥の有機炭素濃度CS4を求め、更に、前記第4の測定部のATP計が測定したATP濃度に基づいて前記濃縮汚泥に含まれる生存汚泥の有機炭素濃度CS3を求めるのが好ましい。この場合、算出精度の向上を図ることができる。
【0030】
更に、上記態様においては、前記第3の測定部が、前記曝気槽内のATP濃度を測定するATP計を備え、前記制御手段が、前記第3の測定部のATP計が測定したATP濃度に基づいて前記曝気槽内の生存汚泥のSS濃度XS1を求めるのも好ましい。算出精度の向上がいっそう高められることになる。
【0031】
上記本発明における汚水処理装置は、前記曝気槽の汚泥及び前記再基質化処理された処理汚泥それぞれにおける汚泥中の菌の生死率を測定するためのATP計を備えるのが好ましい。
【0032】
また、上記本発明における汚水処理装置においては、前記再基質化手段が、超音波処理装置、水熱処理装置、又は高速撹拌装置であるのが好ましい。この場合、再基質化処理の確実性を高めることができる。
【0033】
上記本発明における汚水処理装置においては、前記測定手段が、第1の流量計と、第2の流量計とを更に備え、前記第1の流量計は、前記第1の再基質化ライン又は前記第2の再基質化ラインに設けられ、且つ、当該ライン中を流れる汚泥の一日当たりの量を測定し、前記第2の流量計は、前記排出ラインに設けられ、且つ、前記排出ラインを流れる前記余剰汚泥の一日当たりの量を測定し、前記制御手段は、前記第1の流量計で測定された値が、前記曝気槽に供給できる前記処理汚泥の一日あたりの量Q4に到達したかどうかを判
定し、到達した場合に、前記ライン切替手段に、前記第1の再基質化ラインによる前記濃縮汚泥の導入を停止させ、更に、前記第2の流量計で測定された値が、前記余剰汚泥の一日あたりの量Q5に到達したかどうかを判定し、到達した場合に、前記ライン切替手段に
、前記排出ラインによる前記余剰汚泥の排出を停止させるのが好ましい。この場合、再基質化手段に自動的に必要量の濃縮汚泥を供給できる。また、自動的に、必要量の余剰汚泥を排出できる。
【0034】
本発明における処理方法は、曝気槽と、前記曝気槽で処理された汚水を濃縮汚泥と分離液とに分離させる固液分離手段と、前記濃縮汚泥に対して再基質化処理を行う再基質化手段と、前記濃縮汚泥を前記再基質化手段へと送るための第1の再基質化ラインと、前記再基質化処理された処理汚泥を前記曝気槽へと送るための第2の再基質化ラインと、前記濃縮汚泥を前記曝気槽へと返送するための返送ラインと、前記濃縮汚泥を余剰汚泥として外部へと排出するための排出ラインとを備えた汚水処理装置を用いて、汚水を浄化する汚水処理方法であって、(a)外部から前記曝気槽へと流入する汚水の基質濃度CW0、前記流入する汚水の一日あたりの量Q0、前記処理汚泥中の有機炭素濃度、前記曝気槽内の生存
汚泥のSS濃度、及び前記濃縮汚泥中の有機炭素濃度に関する情報を取得する工程と、(b)前記(a)の工程で取得された情報に基づいて、前記曝気槽に供給できる前記処理汚泥の一日あたりの量Q4と、前記Q4を達成した場合に排出が必要な前記余剰汚泥の一日あたりの量Q5とを算出する工程と、(c)前記(b)の工程で算出された前記Q4及び前記Q5が満たされるように、前記第1の再基質化ラインによる前記濃縮汚泥の前記再基質化
手段への導入、及び前記排出ラインによる前記余剰汚泥の外部への排出を行う工程とを有することを特徴とする。
【0035】
上記本発明における処理方法は、前記(a)の工程において、前記曝気槽における汚水の流入側で、外部から前記曝気槽へと流入する汚水の基質濃度CW0及び前記流入する汚水の一日あたりの量Q0を求めるための情報が取得され、前記第2の再基質化ラインで、前
記処理汚泥に含まれる再基質化汚泥の溶解成分における有機炭素濃度CD4、前記処理汚泥に含まれる再基質化汚泥の懸濁成分における有機炭素濃度CE4、及び前記処理汚泥に含まれる生存汚泥の有機炭素濃度CS4を求めるための情報が取得され、前記曝気槽で、前記曝気槽内の生存汚泥のSS濃度XS1を求めるための情報が取得され、前記固液分離手段の前記濃縮汚泥の排出側で、前記濃縮汚泥に含まれる再基質化汚泥の溶解成分における有機炭素濃度CD3、前記濃縮汚泥に含まれる再基質化汚泥の懸濁成分における有機炭素濃度CE3、及び前記濃縮汚泥に含まれる生存汚泥の有機炭素濃度CS3を求めるための情報が取得され、
前記(b)の工程において、前記(a)の工程で取得された情報から、CW0、Q0、CD4
、CE4、CS4、XS1、CD3、CE3、及びCS3が求められ、求めた値、外部から前記曝気槽へと流入する汚水由来の基質の汚泥転換率YW、前記曝気槽内の再基質化汚泥の懸濁成分
の汚泥転換率YE、前記曝気槽内の再基質化汚泥の溶解成分の汚泥転換率YD、外部から前記曝気槽へと流入する汚水由来の基質の分解速度kW、前記曝気槽内の再基質化汚泥の懸
濁成分の分解速度kE、前記曝気槽内の再基質化汚泥の溶解成分の分解速度kD、外部から前記曝気槽へと流入する汚水由来の基質の飽和定数KsW、前記曝気槽内の再基質化汚泥
の懸濁成分の飽和定数KsE、前記曝気槽内の再基質化汚泥の溶解成分の飽和定数KsD、生存汚泥の自己酸化率bC、前記曝気槽の容積VX1、予め設定された、前記分離液に含ま
れる再基質化汚泥の溶解成分における有機炭素濃度CD2、及び予め設定された、前記分離液に含まれる前記汚水由来の基質の有機炭素濃度CW2を上記式(1)〜(8)に代入することによって、前記曝気槽に供給できる前記処理汚泥の一日あたりの量Q4と、前記Q4を達成した場合に排出が必要な前記余剰汚泥の一日あたりの量Q5とが算出される態様とす
るのが好ましい。
【0036】
本発明における制御装置は、曝気槽と、前記曝気槽で処理された汚水を濃縮汚泥と分離液とに分離させる固液分離手段と、前記濃縮汚泥に対して再基質化処理を行う再基質化手段と、前記濃縮汚泥を前記再基質化手段へと送るための第1の再基質化ラインと、前記再基質化処理された処理汚泥を前記曝気槽へと送るための第2の再基質化ラインと、前記濃縮汚泥を前記曝気槽へと返送するための返送ラインと、前記濃縮汚泥を余剰汚泥として外部へと排出するための排出ラインと、測定手段と、前記制御手段の指示に応じて、前記第1の再基質化ラインによる前記濃縮汚泥の前記再基質化手段への導入又は前記排出ラインによる前記余剰汚泥の外部への排出のうち少なくとも一方が行なえるようラインを切替えるライン切替手段とを備え、前記測定手段は、外部から前記曝気槽へと流入する汚水の基質濃度CW0、前記流入する汚水の一日あたりの量Q0、前記処理汚泥中の有機炭素濃度、
前記曝気槽内の生存汚泥のSS濃度、及び前記濃縮汚泥中の有機炭素濃度に関する情報を取得する汚水処理装置に用いられる制御装置であって、前記測定手段が取得した情報に基づいて、前記曝気槽に供給できる前記処理汚泥の一日あたりの量Q4と、前記Q4を達成した場合に排出が必要な前記余剰汚泥の一日あたりの量Q5とを算出し、算出した前記Q4及び前記Q5が満たされるように前記ライン切替手段に切替えを行わせることを特徴とする

【0037】
上記本発明における制御装置は、前記測定手段が、前記曝気槽における汚水の流入側に配置された第1の測定部と、前記第2の再基質化ラインに配置された第2の測定部と、前記曝気槽に配置された第3の測定部と、前記固液分離手段の前記濃縮汚泥の排出側に配置された第4の測定部とを備え、前記第1の測定部は、外部から前記曝気槽へと流入する汚水の基質濃度CW0及び前記流入する汚水の一日あたりの量Q0を求めるための情報を取得
し、前記第2の測定部は、前記処理汚泥に含まれる再基質化汚泥の溶解成分における有機炭素濃度CD4、前記処理汚泥に含まれる再基質化汚泥の懸濁成分における有機炭素濃度CE4、及び前記処理汚泥に含まれる生存汚泥の有機炭素濃度CS4を求めるための情報を取得し、前記第3の測定部は、前記曝気槽内の生存汚泥のSS濃度XS1を求めるための情報を取得し、前記第4の測定部は、前記濃縮汚泥に含まれる再基質化汚泥の溶解成分における有機炭素濃度CD3、前記濃縮汚泥に含まれる再基質化汚泥の懸濁成分における有機炭素濃度CE3、及び前記濃縮汚泥に含まれる生存汚泥の有機炭素濃度CS3を求めるための情報を取得する場合において、
外部から前記曝気槽へと流入する汚水由来の基質の汚泥転換率YW、前記曝気槽内の再基
質化汚泥の懸濁成分の汚泥転換率YE、前記曝気槽内の再基質化汚泥の溶解成分の汚泥転
換率YD、外部から前記曝気槽へと流入する汚水由来の基質の分解速度kW、前記曝気槽内の再基質化汚泥の懸濁成分の分解速度kE、前記曝気槽内の再基質化汚泥の溶解成分の分
解速度kD、外部から前記曝気槽へと流入する汚水由来の基質の飽和定数KsW、前記曝気槽内の再基質化汚泥の懸濁成分の飽和定数KsE、前記曝気槽内の再基質化汚泥の溶解成
分の飽和定数KsD、生存汚泥の自己酸化率bC、前記曝気槽の容積VX1、予め設定された、前記分離液に含まれる再基質化汚泥の溶解成分における有機炭素濃度CD2、及び予め設定された、前記分離液に含まれる前記汚水由来の基質の有機炭素濃度CW2を記憶する記憶部を備え、前記第1の測定部から前記第4の測定部によって取得された情報から、CW0
0、CD4、CE4、CS4、XS1、CD3、CE3、及びCS3を求め、求めた値と前記記憶部に
記憶された値とを、上記式(1)〜(8)に代入することによって、前記曝気槽に供給できる前記処理汚泥の一日あたりの量Q4と、前記Q4を達成した場合に排出が必要な前記余剰汚泥の一日あたりの量Q5とを算出する態様であるのが好ましい。
【0038】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態における汚水処理装置、制御装置、及び汚水処理方法について、図1〜図5を参照しながら説明する。最初に、本発明の汚水処理装置の物質収支モデルについて図1及び図2を用いて説明する。図1は、本発明の汚水処理装置の物質収支モデルを示す図である。図2は、再基質化処理された汚泥の構成を概念的に示す図である。
【0039】
図1に示すように、汚水処理装置の外部から汚水が曝気槽1へと流入すると、汚水中の基質は、曝気槽1内の微生物によって酸化分解され、この結果、汚泥が発生する。また、曝気槽1で生物処理された汚水は、図1には図示していない固液分離手段に送られ、分離液と濃縮汚泥とに分離される。分離液は処理水として排出される。
【0040】
一方、濃縮汚泥の一部は引き抜き汚泥として再基質化装置2へと送られ、引き抜き汚泥に対しては再基質化処理が施される。そして、再基質化処理が施された汚泥(処理汚泥)は、曝気槽1に返送される。また、固液分離手段から取り出された濃縮汚泥の他の一部は、図1には図示していないが、返送汚泥としてそのまま曝気槽1へと送られる。残りの濃縮汚泥は余剰汚泥として外部に排出される。
【0041】
このように、図1に示す汚水処理装置によれば、再基質化処理された汚泥(処理汚泥)が、再度、曝気槽1において生物分解されるため、余剰汚泥の量を削減することができる。但し、再基質化処理された汚泥(処理汚泥)の成分全てが、再度の生物分解が可能なわけではない。
【0042】
図2に示すように、引き抜き汚泥(濃縮汚泥)には、生存汚泥と再基質化汚泥とが含まれているが、再基質化処理により生存汚泥の一部が再基質化汚泥となる。このため、再基質化処理により、生存汚泥の割合(生存化率: δ)が低下し、代わりに再基質化汚泥の割合(再基質化率:ε)が増加する。なお、ε+δ=1となる。
【0043】
また、再基質化汚泥は、死滅した微生物等で構成され、そして懸濁した状態にある成分(懸濁成分)と、液中に溶解している成分(溶解成分)とを含んでいる。再基質化率εが増加すると、これら懸濁成分及び溶解成分は共に増加する。なお、再基質化汚泥全体に対する懸濁成分の比率をζ、溶解成分の比率をηとする。また、ζ+η=1となる。
【0044】
従って、余剰汚泥の一日当たりの量Q5(L/day)の削減を図るためには、引き抜き
汚泥、処理汚泥、更に、曝気槽1における生存汚泥及び再基質化汚泥それぞれの割合を考慮する必要がある。そして、これらの割合を考慮した上で、再基質化装置2へ送る引き抜き汚泥の一日当たりの量Q3(L/day)、即ち、曝気槽1に供給される処理汚泥の一日
当たりの量Q4を適切な値とする必要がある。
【0045】
また、汚泥中の生存汚泥及び再基質化汚泥それぞれの割合を求める手法としては、例えば、ATP(アデノシン3リン酸)を用いた検出方法が考えられる。ATPは、自然界では、生きた細胞内にのみ存在し、細胞が死滅すると直ちに失われることから、汚泥中の生存汚泥と再基質化汚泥との割合を求める指標として有効である。
【0046】
ここで、図1中に記載されている各パラメータの定義を表1に示す。表1に示すパラメータにおいて、Q3=Q4、CW3=CW5、CS3=CS5、CE3=CE5である。
【0047】
【表1】

次に、汚泥中の有機炭素成分の濃度に着目して、図1に示す曝気槽1における汚泥の増殖と分解について検討する。曝気槽1における汚泥の増殖と分解は、表1に示すパラメータを用いて下記式(1)、(2)、(9)によって示すことができる。更に、汚泥中のSS濃度に着目すると、汚泥の増殖と分解は、下記式(10)〜(12)によって示すこともできる。
【0048】
なお、式(9)において、CXは曝気槽内の有機炭素濃度を示している。CXは、曝気槽内の流入水由来の基質の有機炭素濃度CW1、生存汚泥の有機炭素濃度CS1、懸濁成分の有機炭素濃度CE1、及び溶解成分の有機炭素濃度CD1の和に相当する。また、式(12)において、XXは曝気槽内のSS濃度を示している。XXは、曝気槽内の生存汚泥のSS濃度XS1と、再基質化汚泥の懸濁成分のSS濃度XE1との和に相当にする。
【0049】
下記式(1)〜(4)、(9)〜(12)で使用されている各種係数の定義を表2に示す。また、表2中のYW、YD、YEの単位は特に限定されるものではなく、記載されてい
る(g−SS/g−TOC)以外の単位、例えば、(g−SS/g−BOD)、(g−SS/g−SS)、(g−SS/g−COD)等であっても良い。
【0050】
【表2】

なお、αは生存汚泥における有機炭素濃度をSS濃度に転換するための転換係数であり、一般的には(g−SS/g−TOC)で示される。また、βは再基質化汚泥における懸濁成分の有機炭素濃度をSS濃度に転換するための転換係数であり、一般的には(g−SS/g−TOC)で示される。
【0051】
【数33】

【0052】
【数34】

【0053】
【数35】

【0054】
【数36】

【0055】
【数37】

【0056】
【数38】

【0057】
更に、図1に示す曝気槽1における溶解成分(溶解性基質)の分解は、表1に示すパラメータを用いて下記式(3)及び(4)によって示すことができる。具体的には、式(3)は曝気槽1に流入してきた汚水由来の基質の分解を示し、式(4)は再基質化処理により生成された再基質化汚泥の溶解成分の分解を示している。
【0058】
【数39】

【0059】
【数40】

【0060】
ここで、図1に示す物質収支モデルにおける物質収支を検討する。曝気槽1における、流入汚水由来の基質の有機炭素濃度CW1、生存汚泥の有機炭素濃度CS1、再基質化汚泥の懸濁成分の有機炭素濃度CE1、再基質化汚泥の溶解成分の有機炭素濃度CD1(mg/L)に着目すると、物質収支は下記式(5)´〜(8)´によって表すことができる。
【0061】
【数41】

【0062】
【数42】

【0063】
【数43】

【0064】
【数44】

また、図1から、Q2=Q0−Q5、Q3=Q4であるから、上記式(5)´〜(8)´は
、それぞれ、下記式(5)〜(8)に書き換えることができる。
【0065】
【数45】

【0066】
【数46】

【0067】
【数47】

【0068】
【数48】

従って、生存汚泥及び再基質化汚泥それぞれの割合を考慮した上で、再基質化装置2に送る引き抜き汚泥の一日当たりの量Q3(L/day)、即ち、曝気槽1に供給される処理
汚泥の一日当たりの量Q4を適切な値とするためには、Q4が上記の物質収支の式(5)〜(8)を満足するように、汚水処理装置を稼動させてやれば良い。
【0069】
次に、本発明の実施の形態における汚水処理装置及び制御装置の構成について図3及び図4を用いて説明する。図3は、本発明の実施の形態における汚水処理装置を示す構成図である。図4は、本発明の実施の形態で用いられる再基質化装置を示す図であり、図4(
a)は側面図、図4(b)は下面図である。
【0070】
図3に示すように、本実施の形態における汚水処理装置は、活性汚泥法を行うための曝気槽1と、再基質化装置2と、沈殿槽3と、制御装置15とを備えている。曝気槽1内には、微生物が存在している。よって、外部から流入する汚水(流入水)中の基質はこの微生物によって酸化分解される。曝気槽1によって処理された汚水は沈殿槽3に流入する。
【0071】
沈殿槽3は、曝気槽1で処理された汚水を濃縮汚泥22と分離液21とに分離させる固液分離手段として機能している。分離液21は溢水によって外部に排出される。一方、濃縮汚泥22は、沈殿槽3の底に接続された引き抜きライン27を介して、ポンプ4による吸引によって、沈殿槽3の外に排出される。
【0072】
なお、本発明においてラインは流路を意味している。また、図3の例では、固液分離手段として沈殿槽3が用いられているが、固液分離手段はこれに限定されるものではない。本発明においては、固液分離手段として、膜分離装置、加圧浮上分離装置、遠心分離装置等を用いても良い。更に、曝気槽1と沈殿槽3との代わりに、曝気槽と固液分離手段とを一体化した回分式処理装置を用いても良い。
【0073】
再基質化装置2は、沈殿槽3で得られた濃縮汚泥22に対して再基質化処理を行う。本発明において再基質化装置2の種類は特に限定されるものではない。再基質化装置2は、水熱処理によって再基質化を行う水熱処理装置であっても良いし、超音波処理によって再基質化を行う超音波処理装置であっても良い。更に、再基質化装置2は、高速撹拌によって再基質化を行う高速撹拌装置であっても良い。さらに、再基質化装置2としては、オゾン酸化法、好熱細菌法、ビーズミル法、高速回転ディスク法、ウォータージェット法、電解法、高圧処理法、酸・アルカリ処理法、またはマイクロ波法等を用いて再基質化処理を行う装置を用いることもできる。
【0074】
図3に示す本実施の形態では、再基質化装置2としては、図4(a)及び(b)に示す超音波処理装置が用いられている。図4(a)及び(b)に示すように、超音波処理装置は、濃縮汚泥を貯留する処理槽31の底面に、複数の超音波振動子32を取り付けて構成されている。この構成により、処理槽31内に送り込まれた濃縮汚泥には、超音波振動子32からの超音波によってキャビテーションが発生する。この結果、濃縮汚泥中の微生物の細胞が破壊され、微生物は死滅する。本実施の形態では、再基質化装置2の稼動、出力調整は、制御装置15によって行われている。なお、図4(a)及び(b)において、超音波振動子32の取り付け部分は断面で示している。
【0075】
また、再基質化装置2として超音波処理装置を用いる場合、超音波周波数は20kHz〜100kHz、特には20kHz〜40kHzに設定するのが好ましい。なお、再基質化装置2として用いることができる超音波処理装置は、図4に示す例に限定されるものではない。例えば、超音波処理装置は、処理槽31の側面に超音波振動子が取り付けられたものであっても良い。
【0076】
再基質化装置2として、水熱処理によって再基質化を行う水熱処理装置を用いる場合、反応温度は100℃〜300℃、特には100℃〜200℃に設定するのが好ましい。なお、水熱処理装置の構成は特に限定されるものではない。更に、水熱処理装置において、加熱方式は特に限定されず、連続式でも回分式でも良い。また、水熱処理を行うための加熱手段も特に限定されず、加熱手段としては、ボイラー、ヒーター、電磁誘導装置、又はマイクロ波照射装置等を用いることができる。
【0077】
再基質化装置2として、高速撹拌によって再基質化を行う高速撹拌装置を用いる場合、
回転速度は1,000〜20,000r/分、特には5,000〜10,000r/分に設定するのが好ましい。なお、高速撹拌装置の構成は特に限定されるものではない。
【0078】
また、図3に示すように、引き抜きライン27は、返送ライン23と、第1の再基質化ライン24と、排出ライン26とに分岐している。返送ライン23は、濃縮汚泥22をそのままの状態で曝気槽1へと返送するためのラインである。第1の再基質化ライン24は、濃縮汚泥を再基質化装置2に導入するためのラインである。排出ライン26は、濃縮汚泥22を余剰汚泥として外部へと排出するためのラインである。なお、25は、再基質化装置2によって再基質化処理が施された汚泥(処理汚泥)を曝気槽1へと送るための第2の再基質化ラインである。
【0079】
また、各分岐ラインそれぞれには、バルブ5〜7が設けられている。バルブ5〜7は、信号の入力による遠隔操作で開閉が可能な自動弁であり、ラインの切り替えを行うライン切替手段として機能する。図3の例では、各バルブ5〜7の開閉は、制御装置15によって制御されている。
【0080】
図3に示すように、本実施の形態における汚水処理装置は、第1の測定部8、第2の測定部9、第3の測定部10及び第4の測定部12を備えている。このうち、第1の測定部8は、曝気槽1における汚水の流入側に配置されている。第1の測定部8は、外部から曝気槽1へと流入する汚水の基質濃度CW0(mg/L)と、外部から曝気槽1へと流入する汚水の一日あたりの量(流入汚水量)Q0(L/day)を求めるための情報を取得する

【0081】
第2の測定部9は、第2の再基質化ライン25に配置されている。第2の測定部9は、処理汚泥に含まれる再基質化汚泥の溶解成分の有機炭素濃度CD4(mg−TOC/L)、処理汚泥に含まれる再基質化汚泥の懸濁成分の有機炭素濃度CE4(mg−TOC/L)、及び処理汚泥に含まれる生存汚泥の有機炭素濃度CS4(mg−TOC/L)を求めるための情報を取得する。また、第3の測定部10は、曝気槽1に取り付けられている。第3の測定部10は、曝気槽1内の生存汚泥のSS濃度XS1(mg/L)を求めるための情報を取得する。
【0082】
第4の測定部12は、沈殿槽3における濃縮汚泥22の排出側、即ち、引き抜きライン27に配置されている。第4の測定部12は、引き抜き汚泥(濃縮汚泥)に含まれる再基質化汚泥の溶解成分の有機炭素濃度CD3(mg−TOC/L)、引き抜き汚泥に含まれる再基質化汚泥の懸濁成分の有機炭素濃度CE3(mg−C/L)、及び引き抜き汚泥に含まれる生存汚泥の有機炭素濃度CS3(mg−TOC/L)を求めるための情報を取得する。
【0083】
本実施の形態では、各測定部8〜12は、取得した情報(測定値)を特定する信号を制御装置15へと出力する。但し、本発明において、各測定部8〜12は、制御装置15に信号を出力する機能を備えていないものであっても良い。本発明では、各測定部で取得された情報が、汚水処理装置の操作者によって入力部20から制御装置15に入力される態様であっても良い。入力された値は、記憶部18に格納される。
【0084】
また、図3に示すように、第1の再基質化ライン24におけるバルブ6と再基質化装置2との間には、流量計13が配置されている。流量計13は、再基質化装置2へ送られる引き抜き汚泥の量Q3を測定する。なお、流量計13によって測定された引き抜き汚泥の
量Q3は、再基質化処理された後に曝気槽1に供給される処理汚泥の量Q4にも相当する。
【0085】
更に、排出ライン26におけるバルブ7の下流側には、流量計14が設けられている。流量計14は、排出ライン26を通る余剰汚泥の量Q5を測定する。前記流入汚水量Q0
ら余剰汚泥の量Q5を差し引いたものが分離水の量Q2に相当する。また、流量計13及び14は、測定値を特定する信号を制御装置15へと出力する。なお、流量計13及び14の種類は特に限定されるものではない。具体的には、超音波式や電磁式の流量計が挙げられる。
【0086】
本実施の形態において、制御装置15は、上記した記憶部18に加え、検出部16、演算部17、駆動部19、及び入力部20を備えている。検出部16は、第1の測定部8〜第4の測定部12と、流量計13及び14とに接続されている。各測定部8〜12が出力した信号や、流量計13及び14が出力した信号は、検出部16に入力される。
【0087】
本実施の形態において、各測定部8〜12が出力した信号や、流量計13及び14が出力した信号はアナログ信号である。検出部16は、これらのアナログ信号に対してA/D変換を行う。そして、検出部16は、各測定部8〜12や流量計13及び14が取得した情報(測定値)を特定するデジタル信号を演算部17に入力する。本実施の形態では、各測定部8〜12と検出部16とによって測定手段が構成されている。
【0088】
演算部17は、各測定部8〜12が取得した情報に基づいて、曝気槽に供給できる前記処理汚泥の一日あたりの量Q4と、Q4を達成した場合に排出が必要な余剰汚泥の一日あたりの量Q5とを算出する。本実施の形態においては、演算部17は、先ず、検出部16か
らのデジタル信号によって特定される情報から、Q4及びQ5の算出に必要な各種のパラメータを算出する。そして、演算部17は、得られたパラメータを用いて、Q4及びQ5を算出する。この点について、各測定部8〜12の具体的構成と共に以下に説明する。
【0089】
本実施の形態において、第1の測定部8は、図示していないが、流量計と負荷測定器とを備えている。流量計は、流入汚水量Q0(L/day)を特定する信号を検出部16に
出力する。負荷測定器は、基質濃度CW0(mg/L)を特定する信号を検出部16に出力する。よって、演算部17は、流入汚水量Q0(L/day)を特定するデジタル信号と
、基質濃度CW0(mg/L)を特定するデジタル信号とを取得する。
【0090】
また、本実施の形態において、第2の測定部9は、図示していないが、処理汚泥中の有機炭素濃度を測定する全有機炭素(TOC)計と、処理汚泥中のATP濃度を測定するATP(アデノシン三リン酸)計とを備えている。また、TOC計及びATP計は、第2の基質化ライン25から分岐した分岐ライン25aに設置されている。
【0091】
更に、分岐ライン25aには、図示されていないが、粒子保持能力が5μm以上、好ましくは1.2μm以上のフィルターが備えられている。第2の測定部9は、フィルターによってろ過された処理汚泥のろ液の有機炭素濃度を測定するTOC計も備えている。第2の測定部9は、有機炭素濃度の測定値を特定する信号と、ATP濃度の測定値を特定する信号とを検出部16に出力する。
【0092】
演算部17は、処理汚泥及びそのろ液の有機炭素濃度と、ATP濃度とから、処理汚泥に含まれる再基質化汚泥の溶解成分の有機炭素濃度CD4、処理汚泥に含まれる再基質化汚泥の懸濁成分の有機炭素濃度CE4、及び処理汚泥に含まれる生存汚泥の有機炭素濃度CS4を算出する。
【0093】
具体的には、演算部17は、処理汚泥のろ液の有機炭素濃度から、後述する引き抜き汚泥に含まれる再基質化汚泥の溶解成分の有機炭素濃度CD3を差し引くことによって、再基質化汚泥おける溶解成分の有機炭素濃度CD4を算出する。また、演算部17は、処理汚泥のATP濃度に、転換係数γを乗じてCS4を算出する。更に、演算部17は、ろ過されていない処理汚泥の有機炭素濃度から、CD3、CD4及びCS4を差し引くことによってCE4
算出する。
【0094】
なお、転換係数γは、生存汚泥のATP濃度から生存汚泥の有機炭素濃度を算出するための転換係数であり、予め実験によって求められる。この実験については後述する。また、求められた転換係数γは、記憶部18に記憶されている。また、転換係数γの単位は、一般に(g−TOC/μmol−ATP)で表される。
【0095】
また、本実施の形態において、第3の測定部10は、図示していないが、ATP計を備えている。ATP計は、曝気槽1から延びる分岐ライン1aに設置され、曝気槽1内の汚泥のATP濃度を測定する。第3の測定部10は、ATP濃度の測定値を特定する信号を検出部16に出力する。そして、演算部17は、得られた曝気槽1内の汚泥のATP濃度に、上述した転換係数γを乗算し、得られた乗算値に更に転換係数αを乗算して、曝気槽1内の生存汚泥のSS濃度XS1を算出する。なお、転換係数αも、予め実験によって求められ、記憶部18に記憶されている。
【0096】
本実施の形態において、第4の測定部12は、第2の測定部9と同様に、図示していないが、引き抜き汚泥中の有機炭素濃度を測定するTOC計と、引き抜き汚泥中のATP濃度を測定するATP計とを備えている。第4の測定部12を構成するTOC計及びATP濃度は、引き抜きライン27から分岐した分岐ライン27aに設置されている。
【0097】
また、分岐ライン27aにも、図示されていないが、第2の測定部9の場合と同様のフィルターが備えられている。第4の測定部12は、更に、フィルターによってろ過された引き抜き汚泥(濃縮汚泥)のろ液の有機炭素濃度を測定するTOC計も備えている。第4の測定部12は、有機炭素濃度の測定値を特定する信号と、ATP濃度の測定値を特定する信号とを検出部16に出力する。
【0098】
演算部17は、引き抜き汚泥及びそのろ液の有機炭素濃度と、ATP濃度とから、引き抜き汚泥に含まれる再基質化汚泥の溶解成分の有機炭素濃度CD3、引き抜き汚泥に含まれる再基質化汚泥の懸濁成分の有機炭素濃度CE3、及び引き抜き汚泥に含まれる生存汚泥の有機炭素濃度CS3を算出する。
【0099】
具体的には、演算部17は、ろ液の有機炭素濃度を測定するTOC計によって測定された有機炭素濃度を、引き抜き汚泥に含まれる再基質化汚泥の溶解成分の有機炭素濃度CD3とする。また、演算部17は、引き抜き汚泥のろ液のATP濃度に、上述した転換係数γを乗じてCS3を算出する。更に、演算部17は、ろ過されていない引き抜き汚泥の有機炭素濃度から、CD3及びCS3を差し引くことによりCE4を算出する。
【0100】
本実施の形態において、転換係数γは、例えば、次の手法によって求めることができる。先ず、再基質化装置2を運転させない状態で、第1の再基質化ライン24から第2の再基質化ラインへと引き抜き汚泥の移送を行う。そして、移送を行いながら、第4の測定部12によって、引き抜き汚泥の有機炭素濃度とATP濃度を測定する。次いで、測定された引き抜き汚泥の有機炭素濃度とATP濃度との比(有機炭素濃度/ATP濃度)を求め、これを転換係数γとする。
【0101】
本実施の形態において、第1の測定部8を構成する負荷測定器は、特に限定されるものではない。負荷測定器としては、例えば、BOD計、COD計、SS計、TOC計等が挙げられる。また、第2の測定部9及び第4の測定部12を構成するTOC計は、その測定方式が限定されるものではない。TOC計としては、例えば、触媒燃焼酸化法を利用したものや、湿式酸化法を利用したもの等が挙げられる。
【0102】
更に、第2の測定部9、第3の測定部10及び第4の測定部12を構成するATP計も、その測定方式が限定されるものではない。ATP計としては、例えば、生物発光分析法を利用したもの等が挙げられる。また、本実施の形態においては、TOC計及びATP計が測定部毎に備えられておらず、各測定部がこれらを共有している態様であっても良い。具体的には、分岐ライン1a、分岐ライン25a、及び分岐ライン27aが、それぞれ、バルブを介して共通の測定器に接続された態様が挙げられる。この態様では、各バルブの開放を順次行うことによって、各種汚泥の有機炭素濃度及びATP濃度が測定される。
【0103】
また、本実施の形態において、演算部17は、このようにして得られた、CW0、Q0
D4、CE4、CS4、XS1、CD3、CE3、及びCS3を、上述した式(1)〜式(8)に代入する。これにより、再基質化装置2へ送る処理汚泥の一日あたりの量Q4(L/day)と
、排出する余剰汚泥の一日当たりの量Q5(L/day)とが算出される。
【0104】
また、本実施の形態では、上述した式(1)〜式(8)は記憶部18に格納されている。更に、式(1)〜(8)に用いられる係数や、演算部17が求めたパラメータ以外のパラメータの設定値も記憶部18に格納されている。演算部17は、Q4及びQ5の算出においては、式(1)〜(8)、各種係数、パラメータの読み出しも行う。
【0105】
具体的には、記憶部18は、表2に記載の係数、即ち、流入水由来の基質の汚泥転換率YW、曝気槽1内の再基質化汚泥の懸濁成分の汚泥転換率YE、曝気槽1内の再基質化汚泥の溶解成分の汚泥転換率YD、外部から曝気槽1へと流入する汚水由来の基質の分解速度
W、曝気槽1内の再基質化汚泥の懸濁成分の分解速度kE、曝気槽1内の再基質化汚泥の溶解成分の分解速度kD、外部から曝気槽1へと流入する汚水由来の基質の飽和定数KsW、曝気槽1内の再基質化汚泥の懸濁成分の飽和定数KsE、曝気槽1内の再基質化汚泥の
溶解成分の飽和定数KsD、生存汚泥の自己酸化率bCを格納している。
【0106】
また、記憶部18は、上述した転換係数γ、転換係数α、曝気槽1の容積VX1、更には、入力部20介して予め入力された設定値も格納している。入力部20は、キーボード等の利用者が操作を行うためのインターフェースである。本実施の形態においては、入力部20から予め入力される設定値としては、分離液に含まれる再基質化汚泥の溶解成分の有機炭素濃度CD2と、分離液に含まれる汚水由来の基質の有機炭素濃度CW2とが挙げられる。有機炭素濃度CW2及びCD2は、共に利用者が設定した任意の値であっても良いが、本実施の形態においては、汚水処理装置の外へと排出される分離水の水質基準値又は水質目標値に相当する値であるのが好ましい。
【0107】
駆動部19は、演算部17の指示に応じて、ライン切替手段として機能するバルブ5、6、及び7の開閉操作を行うための信号を出力する。例えば、演算部17が再基質化装置2へ引き抜き汚泥を導入することを指示した場合は、駆動部19は、バルブ6を開け、バルブ7を閉じる。また、演算部17が余剰汚泥を排出することを指示した場合は、駆動部19は、バルブ6を閉じ、バルブ7を開ける。
【0108】
また、本実施の形態では、検出部16から演算部17には、上述したように流量計13及び流量計14の測定値を特定する信号も入力される。よって、演算部17は、再基質化装置2へ導入された引き抜き汚泥の量と余剰汚泥の量とを監視し、バルブ6及び7の開閉操作において、算出されたQ4とQ5とが達成されるようにフィードバック制御も行っている。
【0109】
次に、本実施の形態における処理方法、図3に示す本実施の形態における汚水処理装置及び制御装置の動作について図5を用いて説明する。図5は、図3に示す汚水処理装置の動作を示すフロー図である。なお、以下の説明においては、適宜図3を参酌する。また、
本実施の形態における処理方法は、本実施の形態における汚水処理装置を動作させることによって実行することができる。
【0110】
図5に示すように、先ず、演算部17は、分離液に含まれる再基質化汚泥の溶解成分の有機炭素濃度CD2及び分離液に含まれる汚水由来の基質の有機炭素濃度CW2の入力部20からの入力を受付ける(ステップS1)。次に、演算部17は、駆動部19に対してバルブ7のみを閉じるように指示を与え、この状態で再基質化処理装置2を稼動させる(ステップS2)。
【0111】
次に、演算部17は、記憶部18から、処理汚泥の量Q4及び余剰汚泥の量Q5の算出に必要な係数を読み出す(ステップS3)。読み出される係数は、上述した、YW(g−S
S/g−TOC)、YE(g−SS/g−SS)、YD(g−SS/g−TOC)、kW
1/day)、kE(1/day)、kD(1/day)、KsW(mg/L)、KsE(mg/L)、KsD(mg/L)、bC(1/day)、VX1(L)である。
【0112】
次に、演算部17は、第1の測定部8〜第4の測定部12が測定した測定値に基づいて、ステップS4〜S7を実施して、CW0、Q0、CD4、CE4、CS4、XS1、CD3、CE3
及びCS3を算出する。本実施の形態において、ステップS4〜S7の順序は特に限定されるものではなく、これらは同時に実施することもできる。
【0113】
ステップS4では、演算部17は、検出部16は、第1の測定部8に備えられた流量計及び負荷測定器の測定値から、流入汚水量Q0及び基質濃度CW0を検出する。ステップS
5では、演算部17は、第2の測定部9に備えられたTOC計及びATP計の測定値から、処理汚泥に含まれる再基質化汚泥の溶解成分の有機炭素濃度CD4、処理汚泥に含まれる再基質化汚泥の懸濁成分の有機炭素濃度CE4、及び処理汚泥に含まれる生存汚泥の有機炭素濃度CS4を算出する。
【0114】
ステップS6では、演算部17は、第3の測定部10に備えられたATP計の測定値から、曝気槽1内の生存汚泥のSS濃度XS1を算出する。ステップS7では、演算部17は、第4の測定部12に備えられたTOC計及びATP計の測定値から、引き抜き汚泥に含まれる再基質化汚泥の溶解成分の有機炭素濃度CD3、引き抜き汚泥に含まれる再基質化汚泥の懸濁成分の有機炭素濃度CE3、及び引き抜き汚泥に含まれる生存汚泥の有機炭素濃度CS3を検出する。
【0115】
次に、演算部17は、記憶部18に格納された式(1)〜(8)を読み出し、ステップS3〜S7によって得られた係数及び測定値をこれらの式に代入する(ステップS8)。これにより、曝気槽1に供給できる処理汚泥の一日当たりの量Q4(L/day)と、Q4を達成した場合に排出が必要となる余剰汚泥の一日当たりの量Q5(L/day)とが算出さ
れる。
【0116】
次に、演算部17は、再基質化ライン用のバルブ6が開状態、排出ライン用のバルブ7が閉状態であることを確認する(ステップS9)。なお、この場合において、バルブ5は開いた状態であっても良いし、閉じた状態であっても良い。また、確認の結果、再基質化ライン用のバルブ6が閉状態であったり、排出ライン用のバルブ7が開状態であったりする場合は、バルブ6が開状態、バルブ7が閉状態となるように駆動部19に指示を与える。
【0117】
次に、演算部17は、流量計13によって測定された引き抜き汚泥の流量が、ステップS7で算出された処理汚泥の量Q4(L/day)に到達したかどうかを判定する(ステッ
プS10)。到達していない場合は、駆動部19にステップS9の状態を維持させたまま
、演算部17は待機状態となる。
【0118】
到達している場合は、演算部17は、再基質化ライン用のバルブ6が閉状態、排出ライン用のバルブ7が開状態となるように、駆動部19に指示を与える(ステップS11)。また、演算部17は、再基質化装置2に対しては稼動を停止するよう信号を出力する。なお、この場合においても、バルブ5は開いた状態であっても良いし、閉じた状態であっても良い。
【0119】
次に、演算部17は、流量計14によって測定された余剰汚泥の量が、ステップS8で算出された余剰汚泥の量Q5(L/day)に到達したかどうかを判定する(ステップS
12)。到達していない場合は、駆動部19にステップS11の状態を維持させたまま、演算部17は待機状態となる。到達した場合は、演算部17は、排出ライン用のバルブ7が閉状態となるように、駆動部19に指示を与えて処理を終了する。
【0120】
このように図3に示す汚水処理装置によれば、制御装置15によって、自動的に、曝気槽1に供給できる処理汚泥の一日当たりの量Q4と、Q4を達成した場合に排出が必要な余剰汚泥の一日当たりの量Q5とが算出される。また、制御装置15は、自動的に、算出分
の処理汚泥を曝気槽1に供給し、算出分の余剰汚泥を排出する。このため、余剰汚泥の発生を考慮した再基質化処理を行うことができると同時に、管理者の負担の増加を抑制できるので運用コストの上昇も抑制できる。
【0121】
また、本実施の形態は、演算部17が、式(5)及び式(6)に示した微分方程式に対してルンゲクッタ法を実施して近似解を求める態様とすることができる。この態様では、分離液に含まれる流入汚水由来の基質の有機炭素濃度CW2及び分離液に含まれる再基質化汚泥の溶解成分における有機炭素濃度CD2の近似値を算出することができる。分離液21中の有機炭素濃度は、生物処理が適切に行われているかどうかを判定する指標となるため、この態様とした場合は、曝気槽1に負荷がかかり過ぎているかどうかを判定できる。
【0122】
ところで、本実施の形態において、記憶部18に予め格納させておく係数の値は、汚水の種類に応じて、実験によって適宜設定できる。例えば、外部から曝気槽へと流入する汚水由来の基質の汚泥転換率YW、曝気槽1内の再基質化汚泥中の懸濁成分の汚泥転換率YE、曝気槽1内の再基質化汚泥の溶解成分の汚泥転換率YD、及び生存汚泥の自己酸化率bC、は、上述した「非特許文献1」の第91頁から第102頁に記載された、異なる条件下での回分式の生物処理実験によって、基質の変化量、汚泥の変化量を測定することにより求めることができる。
【0123】
また、外部から曝気槽1へと流入する汚水由来の基質の分解速度kW、曝気槽1内の再
基質化汚泥の懸濁成分の分解速度kE、曝気槽1内の再基質化汚泥の溶解成分の分解速度
D、外部から曝気槽1へと流入する汚水由来の基質の飽和定数KsW、曝気槽1内の再基質化汚泥の懸濁成分の飽和定数KsE、曝気槽1内の再基質化汚泥の溶解成分の飽和定数
KsDも、上記の非特許文献1に記載の実験から求めることができる。非特許文献1に記
載の生物処理実験によって得られた係数の一例を下記の表3に示す。
【0124】
【表3】

【0125】
本発明において、制御装置15は、入出力のインターフェースを備えたコンピュータに、図5に示すステップS1〜S11を具現化させるプログラムをインストールし、このプログラムを実行することによって、実現することができる。この場合、コンピュータのCPU(central processing unit)は、演算部17として機能し、処理を行う。
【0126】
また、A/D変換回路備えた入力用インターフェースが検出部16として機能し、D/A変換回路を備えた出力用インターフェースが駆動部19として機能する。更に、コンピュータ備えられたメモリやハードディスク等の記憶装置が、記憶部18として機能する。コンピュータに接続されたマウスやキーボード等が入力部20として機能する。なお、制御装置15へのデータの入力は、有線又は無線で接続された別のコンピュータから行うこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
以上のように、本発明における汚水処理装置によれば、余剰汚泥の発生を最小限に抑えることができるため、余剰汚泥の処分にかかるコストを低減でき、又余剰汚泥の処分地の確保が難しいという問題の解決にも貢献できる。本発明における汚水処理装置は、産業上の利用可能性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】図1は、本発明の汚水処理装置の物質収支モデルを示す図である。
【図2】図2は、再基質化処理された汚泥の構成を概念的に示す図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態における汚水処理装置を示す構成図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態で用いられる再基質化装置を示す図であり、図4(a)は側面図、図4(b)は下面図である。
【図5】図5は、図3に示す汚水処理装置の動作を示すフロー図である。
【図6】再基質化プロセスが追加された活性汚泥法の概略を示す図である。
【符号の説明】
【0129】
1 生物処理槽
1a、25a、27a 分岐ライン
2 再基質化装置
3 沈殿槽(固液分離手段)
4 ポンプ
5、6、7 バルブ
8 第1の測定手段
9 第2の測定手段
10 第3の測定手段
12 第4の測定手段
13、14 流量計
15 制御装置
16 検出部
17 演算部
18 記憶部
19 駆動部
20 入力部
21 分離液
22 濃縮汚泥
23 返送ライン
24、48 第1の再基質化ライン
25、49 第2の再基質化ライン
26 排出ライン
27 引き抜きライン
31 処理槽
32 超音波振動子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性汚泥法による汚水の浄化処理を行う汚水処理装置であって、
曝気槽と、前記曝気槽で処理された汚水を濃縮汚泥と分離液とに分離させる固液分離手段と、前記濃縮汚泥に対して再基質化処理を行う再基質化手段と、前記濃縮汚泥を前記再基質化手段へと送るための第1の再基質化ラインと、前記再基質化処理された処理汚泥を前記曝気槽へと送るための第2の再基質化ラインと、前記濃縮汚泥を前記曝気槽へと返送するための返送ラインと、前記濃縮汚泥を余剰汚泥として外部へと排出するための排出ラインと、制御手段と、測定手段と、前記制御手段の指示に応じて、前記第1の再基質化ラインによる前記濃縮汚泥の前記再基質化手段への導入又は前記排出ラインによる前記余剰汚泥の外部への排出のうち少なくとも一方が行なえるようラインを切替えるライン切替手段とを備え、
前記測定手段は、外部から前記曝気槽へと流入する汚水の基質濃度CW0、前記流入する汚水の一日あたりの量Q0、前記処理汚泥中の有機炭素濃度、前記曝気槽内の生存汚泥の
SS濃度、及び前記濃縮汚泥中の有機炭素濃度に関する情報を取得し、
前記制御手段は、前記測定手段が取得した情報に基づいて、前記曝気槽に供給できる前記処理汚泥の一日あたりの量Q4と、前記Q4を達成した場合に排出が必要な前記余剰汚泥の一日あたりの量Q5とを算出し、算出した前記Q4及び前記Q5が満たされるように前記
ライン切替手段に切替えを行わせることを特徴とする汚水処理装置。
【請求項2】
前記測定手段が、前記曝気槽における汚水の流入側に配置された第1の測定部と、前記第2の再基質化ラインに配置された第2の測定部と、前記曝気槽に配置された第3の測定部と、前記固液分離手段の前記濃縮汚泥の排出側に配置された第4の測定部とを備え、
前記第1の測定部は、外部から前記曝気槽へと流入する汚水の基質濃度CW0及び前記流入する汚水の一日あたりの量Q0を求めるための情報を取得し、
前記第2の測定部は、前記処理汚泥に含まれる再基質化汚泥の溶解成分における有機炭素濃度CD4、前記処理汚泥に含まれる再基質化汚泥の懸濁成分における有機炭素濃度CE4、及び前記処理汚泥に含まれる生存汚泥の有機炭素濃度CS4を求めるための情報を取得し、
前記第3の測定部は、前記曝気槽内の生存汚泥のSS濃度XS1を求めるための情報を取得し、
前記第4の測定部は、前記濃縮汚泥に含まれる再基質化汚泥の溶解成分における有機炭素濃度CD3、前記濃縮汚泥に含まれる再基質化汚泥の懸濁成分における有機炭素濃度CE3、及び前記濃縮汚泥に含まれる生存汚泥の有機炭素濃度CS3を求めるための情報を取得し、
前記制御手段に記憶部が備えられ、
前記記憶部は、外部から前記曝気槽へと流入する汚水由来の基質の汚泥転換率YW、前
記曝気槽内の再基質化汚泥の懸濁成分の汚泥転換率YE、前記曝気槽内の再基質化汚泥の
溶解成分の汚泥転換率YD、外部から前記曝気槽へと流入する汚水由来の基質の分解速度
W、前記曝気槽内の再基質化汚泥の懸濁成分の分解速度kE、前記曝気槽内の再基質化汚泥の溶解成分の分解速度kD、外部から前記曝気槽へと流入する汚水由来の基質の飽和定
数KsW、前記曝気槽内の再基質化汚泥の懸濁成分の飽和定数KsE、前記曝気槽内の再基質化汚泥の溶解成分の飽和定数KsD、生存汚泥の自己酸化率bC、前記曝気槽の容積VX1、予め設定された、前記分離液に含まれる再基質化汚泥の溶解成分における有機炭素濃度CD2、及び予め設定された、前記分離液に含まれる前記汚水由来の基質の有機炭素濃度CW2を記憶し、
前記制御手段が、前記第1の測定部から前記第4の測定部によって取得された情報から、CW0、Q0、CD4、CE4、CS4、XS1、CD3、CE3、及びCS3を求め、
求めた値と前記記憶部に記憶された値とを、下記式(1)〜(8)に代入することによって、前記曝気槽に供給できる前記処理汚泥の一日あたりの量Q4と、前記Q4を達成した場
合に排出が必要な前記余剰汚泥の一日あたりの量Q5とを算出する請求項1に記載の汚水
処理装置。
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】

【数5】

【数6】

【数7】

【数8】

【請求項3】
前記曝気槽の汚泥及び前記再基質化処理された処理汚泥それぞれにおける汚泥中の菌の生死率を測定するためのATP計を備える請求項1に記載の汚水処理装置。
【請求項4】
前記第2の測定部が、前記処理汚泥中のATP濃度を測定するATP計を備え、
前記第4の測定部が、前記濃縮汚泥中のATP濃度を測定するATP計を備え、
前記制御手段が、前記2の測定部のATP計が測定したATP濃度に基づいて前記処理汚泥に含まれる生存汚泥の有機炭素濃度CS4を求め、更に、前記第4の測定部のATP計が測定したATP濃度に基づいて前記濃縮汚泥に含まれる生存汚泥の有機炭素濃度CS3を求める請求項2に記載の汚水処理装置。
【請求項5】
前記第3の測定部が、前記曝気槽内のATP濃度を測定するATP計を備え、
前記制御手段が、前記第3の測定部のATP計が測定したATP濃度に基づいて前記曝
気槽内の生存汚泥のSS濃度XS1を求める請求項4に記載の汚水処理装置。
【請求項6】
前記再基質化手段が、超音波処理装置、水熱処理装置、又は高速撹拌装置である請求項1〜5のいずれかに記載の汚水処理装置。
【請求項7】
前記測定手段が、第1の流量計と、第2の流量計とを更に備え、
前記第1の流量計は、前記第1の再基質化ライン又は前記第2の再基質化ラインに設けられ、且つ、当該ライン中を流れる汚泥の一日当たりの量を測定し、
前記第2の流量計は、前記排出ラインに設けられ、且つ、前記排出ラインを流れる前記余剰汚泥の一日当たりの量を測定し、
前記制御手段は、前記第1の流量計で測定された値が、前記曝気槽に供給できる前記処理汚泥の一日あたりの量Q4に到達したかどうかを判定し、到達した場合に、前記ライン
切替手段に、前記第1の再基質化ラインによる前記濃縮汚泥の導入を停止させ、
更に、前記第2の流量計で測定された値が、前記余剰汚泥の一日あたりの量Q5に到達し
たかどうかを判定し、到達した場合に、前記ライン切替手段に、前記排出ラインによる前記余剰汚泥の排出を停止させる請求項1〜6のいずれかに記載の汚水処理装置。
【請求項8】
曝気槽と、前記曝気槽で処理された汚水を濃縮汚泥と分離液とに分離させる固液分離手段と、前記濃縮汚泥に対して再基質化処理を行う再基質化手段と、前記濃縮汚泥を前記再基質化手段へと送るための第1の再基質化ラインと、前記再基質化処理された処理汚泥を前記曝気槽へと送るための第2の再基質化ラインと、前記濃縮汚泥を前記曝気槽へと返送するための返送ラインと、前記濃縮汚泥を余剰汚泥として外部へと排出するための排出ラインとを備えた汚水処理装置を用いて、汚水を浄化する汚水処理方法であって、
(a)外部から前記曝気槽へと流入する汚水の基質濃度CW0、前記流入する汚水の一日あたりの量Q0、前記処理汚泥中の有機炭素濃度、前記曝気槽内の生存汚泥のSS濃度、及
び前記濃縮汚泥中の有機炭素濃度に関する情報を取得する工程と、
(b)前記(a)の工程で取得された情報に基づいて、前記曝気槽に供給できる前記処理汚泥の一日あたりの量Q4と、前記Q4を達成した場合に排出が必要な前記余剰汚泥の一日あたりの量Q5とを算出する工程と、
(c)前記(b)の工程で算出された前記Q4及び前記Q5が満たされるように、前記第1の再基質化ラインによる前記濃縮汚泥の前記再基質化手段への導入、及び前記排出ラインによる前記余剰汚泥の外部への排出を行う工程とを有することを特徴とする汚水処理方法。
【請求項9】
前記(a)の工程において、
前記曝気槽における汚水の流入側で、外部から前記曝気槽へと流入する汚水の基質濃度CW0及び前記流入する汚水の一日あたりの量Q0を求めるための情報が取得され、
前記第2の再基質化ラインで、前記処理汚泥に含まれる再基質化汚泥の溶解成分における有機炭素濃度CD4、前記処理汚泥に含まれる再基質化汚泥の懸濁成分における有機炭素濃度CE4、及び前記処理汚泥に含まれる生存汚泥の有機炭素濃度CS4を求めるための情報が取得され、
前記曝気槽で、前記曝気槽内の生存汚泥のSS濃度XS1を求めるための情報が取得され、前記固液分離手段の前記濃縮汚泥の排出側で、前記濃縮汚泥に含まれる再基質化汚泥の溶解成分における有機炭素濃度CD3、前記濃縮汚泥に含まれる再基質化汚泥の懸濁成分における有機炭素濃度CE3、及び前記濃縮汚泥に含まれる生存汚泥の有機炭素濃度CS3を求めるための情報が取得され、
前記(b)の工程において、
前記(a)の工程で取得された情報から、CW0、Q0、CD4、CE4、CS4、XS1、CD3
E3、及びCS3が求められ、
求めた値、外部から前記曝気槽へと流入する汚水由来の基質の汚泥転換率YW、前記曝気
槽内の再基質化汚泥の懸濁成分の汚泥転換率YE、前記曝気槽内の再基質化汚泥の溶解成
分の汚泥転換率YD、外部から前記曝気槽へと流入する汚水由来の基質の分解速度kW、前記曝気槽内の再基質化汚泥の懸濁成分の分解速度kE、前記曝気槽内の再基質化汚泥の溶
解成分の分解速度kD、外部から前記曝気槽へと流入する汚水由来の基質の飽和定数KsW、前記曝気槽内の再基質化汚泥の懸濁成分の飽和定数KsE、前記曝気槽内の再基質化汚
泥の溶解成分の飽和定数KsD、生存汚泥の自己酸化率bC、前記曝気槽の容積VX1、予め設定された、前記分離液に含まれる再基質化汚泥の溶解成分における有機炭素濃度CD2、及び予め設定された、前記分離液に含まれる前記汚水由来の基質の有機炭素濃度CW2を下記式(1)〜(8)に代入することによって、前記曝気槽に供給できる前記処理汚泥の一日あたりの量Q4と、前記Q4を達成した場合に排出が必要な前記余剰汚泥の一日あたりの量Q5とが算出される請求項8に記載の汚水処理方法。
【数9】

【数10】

【数11】

【数12】

【数13】

【数14】

【数15】

【数16】

【請求項10】
曝気槽と、前記曝気槽で処理された汚水を濃縮汚泥と分離液とに分離させる固液分離手段と、前記濃縮汚泥に対して再基質化処理を行う再基質化手段と、前記濃縮汚泥を前記再基質化手段へと送るための第1の再基質化ラインと、前記再基質化処理された処理汚泥を
前記曝気槽へと送るための第2の再基質化ラインと、前記濃縮汚泥を前記曝気槽へと返送するための返送ラインと、前記濃縮汚泥を余剰汚泥として外部へと排出するための排出ラインと、測定手段と、前記制御手段の指示に応じて、前記第1の再基質化ラインによる前記濃縮汚泥の前記再基質化手段への導入又は前記排出ラインによる前記余剰汚泥の外部への排出のうち少なくとも一方が行なえるようラインを切替えるライン切替手段とを備え、
前記測定手段は、外部から前記曝気槽へと流入する汚水の基質濃度CW0、前記流入する汚水の一日あたりの量Q0、前記処理汚泥中の有機炭素濃度、前記曝気槽内の生存汚泥の
SS濃度、及び前記濃縮汚泥中の有機炭素濃度に関する情報を取得する汚水処理装置に用いられる制御装置であって、
前記測定手段が取得した情報に基づいて、前記曝気槽に供給できる前記処理汚泥の一日あたりの量Q4と、前記Q4を達成した場合に排出が必要な前記余剰汚泥の一日あたりの量Q5とを算出し、算出した前記Q4及び前記Q5が満たされるように前記ライン切替手段に
切替えを行わせることを特徴とする制御装置。
【請求項11】
前記測定手段が、前記曝気槽における汚水の流入側に配置された第1の測定部と、前記第2の再基質化ラインに配置された第2の測定部と、前記曝気槽に配置された第3の測定部と、前記固液分離手段の前記濃縮汚泥の排出側に配置された第4の測定部とを備え、
前記第1の測定部は、外部から前記曝気槽へと流入する汚水の基質濃度CW0及び前記流入する汚水の一日あたりの量Q0を求めるための情報を取得し、
前記第2の測定部は、前記処理汚泥に含まれる再基質化汚泥の溶解成分における有機炭素濃度CD4、前記処理汚泥に含まれる再基質化汚泥の懸濁成分における有機炭素濃度CE4、及び前記処理汚泥に含まれる生存汚泥の有機炭素濃度CS4を求めるための情報を取得し、
前記第3の測定部は、前記曝気槽内の生存汚泥のSS濃度XS1を求めるための情報を取得し、
前記第4の測定部は、前記濃縮汚泥に含まれる再基質化汚泥の溶解成分における有機炭素濃度CD3、前記濃縮汚泥に含まれる再基質化汚泥の懸濁成分における有機炭素濃度CE3、及び前記濃縮汚泥に含まれる生存汚泥の有機炭素濃度CS3を求めるための情報を取得し、
当該制御装置が、
外部から前記曝気槽へと流入する汚水由来の基質の汚泥転換率YW、前記曝気槽内の再基
質化汚泥の懸濁成分の汚泥転換率YE、前記曝気槽内の再基質化汚泥の溶解成分の汚泥転
換率YD、外部から前記曝気槽へと流入する汚水由来の基質の分解速度kW、前記曝気槽内の再基質化汚泥の懸濁成分の分解速度kE、前記曝気槽内の再基質化汚泥の溶解成分の分
解速度kD、外部から前記曝気槽へと流入する汚水由来の基質の飽和定数KsW、前記曝気槽内の再基質化汚泥の懸濁成分の飽和定数KsE、前記曝気槽内の再基質化汚泥の溶解成
分の飽和定数KsD、生存汚泥の自己酸化率bC、前記曝気槽の容積VX1、予め設定された、前記分離液に含まれる再基質化汚泥の溶解成分における有機炭素濃度CD2、及び予め設定された、前記分離液に含まれる前記汚水由来の基質の有機炭素濃度CW2を記憶する記憶部を備え、
前記第1の測定部から前記第4の測定部によって取得された情報から、CW0、Q0、CD4、CE4、CS4、XS1、CD3、CE3、及びCS3を求め、
求めた値と前記記憶部に記憶された値とを、下記式(1)〜(8)に代入することによって、前記曝気槽に供給できる前記処理汚泥の一日あたりの量Q4と、前記Q4を達成した場合に排出が必要な前記余剰汚泥の一日あたりの量Q5とを算出する請求項10に記載の制
御装置。
【数17】

【数18】

【数19】

【数20】

【数21】

【数22】

【数23】

【数24】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−161836(P2008−161836A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−356460(P2006−356460)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発表した研究集会:第43回環境工学研究フォーラム 主催者:社団法人 土木学会 開催日:平成18年11月17日〜19日 発表した刊行物:環境工学研究論文集(Vol.43 2006)第411頁−第417頁 発行者:社団法人 土木学会 発行日:平成18年11月17日
【出願人】(591261336)松下環境空調エンジニアリング株式会社 (29)
【出願人】(503420833)学校法人常翔学園 (62)
【Fターム(参考)】