説明

汚泥燃料化装置

【課題】汚泥そのもの、助燃料として木質系バイオマス系材料、廃プラスチック、或いは化石燃料等を燃焼炉にて燃焼させても、NOxの放出を回避することができると共に、大型化の必要がなく、しかも、シンプルで消費電力を抑え、ランニングコストを低減できることを課題とする。
【解決手段】汚泥を熱分解炭化処理して熱分解ガス及び炭化物を生成させる熱分解炭化炉6と、熱分解炭化炉6で発生する熱分解ガスを燃焼させる燃焼バーナを有する燃焼炉7を有し、燃焼炉7にて発生する燃焼排ガスを前記熱分解炭化炉の熱源として用いるとともに、燃焼炉7の燃焼火炎先端部に水蒸気を吹き込むスプレーノズルを設置し、燃焼炉7から発生するNOxを低減できるようにすることを特徴とする汚泥燃料化装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理場などから発生する汚泥の燃料化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多量に排出されるプラスチックを始めとする廃棄物に対し所定の処理を施して資源として利用する各種の手法の提案がなされている。特に、CO排出量を低減する観点から、化石燃料の代替エネルギーとして、カーボンニュートラルであるバイオマスが注目されている。その一例として、バイオマス(木材、汚泥、家畜糞尿、生ゴミ等)や廃プラスチック等の有機物処理材料を熱分解処理して、熱分解ガスと熱分解残渣とを生成し、熱分解ガスは凝縮することにより熱分解油として回収し、残渣は所定の処理をすることにより炭化物として利用するシステムが考えられている。この中でも、有機物処理材料として廃プラスチックを用いると、高効率で熱分解油を回収できるので、このような廃プラスチックを熱分解油化処理する装置に関しては多くの提案がなされ、実用化している(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【0003】
一方、下水処理場などから大量に発生する汚泥は、バイオマスの一つである。前記汚泥は、大半が埋め立て処理あるいは焼却処理されており、エネルギーの有効利用がされていないのが実情である。そこで、CO排出量を抑制するため、即ち化石燃料の使用を抑制するために、安定した収集量が見込める下水汚泥を、炭化処理により固体燃料化して、石炭火力発電用の燃料にするシステムが考えられている。
【0004】
汚泥を焼却処理する場合は、汚泥の発熱量を全て焼却熱に使えるので、助燃料の使用量は少ない。しかし、汚泥を炭化処理する場合は、炭化物に熱量を残すために炭化処理するための助燃料の使用量が多くなる。このようなことから、助燃料として化石燃料の使用を抑制することを目的に木質系バイオマスを使用することが提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0005】
特許文献4に記載されている技術によれば、助燃料として化石燃料の使用を抑制することが可能となる。また、炭化炉での炭化処理で汚泥から発生する熱分解ガスに、木質系バイオマスから発生する熱分解ガスが加わるので、熱分解ガスを燃料として燃焼機関を運転し、汚泥を炭化処理するのに必要なエネルギーを得ることができる。しかし、木質系バイオマスの中には発熱量の低い間伐材や剪定材、枝、葉なども多く含まれており発熱量が安定しない為、炭化炉の一定温度制御が行いにくい。また、炭化炉での熱分解処理運転等を安定させる必要から助燃料として多量の木質系バイオマスを使用しなくてはならなくなる。
【0006】
この対策として、乾燥機で乾燥後の粉末状の汚泥に加えて、廃木材、間伐材や剪定材、枝、葉などの木質系バイオマスの性状を安定化させる為、これら木質系バイオマスを破砕しただけの形状、サイズが一定でない木質系バイオマスを混ぜて炭化炉に投入することが考えられる。この対策では、炭化炉への安定投入が行いにくいばかりか、投入材料中に空気が混入しやすくなる。また、熱分解装置内に材料とともに空気も同伴すると、熱分解装置内は高温雰囲気である為、内部で投入材料を燃焼させ、火災・爆発を引き起こすような重大なトラブルを招きかねない。
【0007】
また、上記の手法では、炭化炉内に汚泥だけでなく廃木材、間伐材や剪定材、枝、葉などの木質系バイオマスも大量に投入されることになり、投入材料中の含水率が変動してしまう。このため、特に木質系バイオマスを大量に投入する場合には、燃焼炉の温度を一定温度に制御することが難しい。同時に、炭化炉内面に材料固着、コーキング等が発生し、炭化炉の熱通過率(熱貫流率)が低下するばかりでなく、短時間で処理不能となってしまう大きな問題も生じる。
【0008】
このような問題を解決する手段として、木質系バイオマス投入材料を破砕、粉砕し、あるいは造粒化し、嵩密度を上げた状態で、含水率を確認しつつ汚泥に混ぜて投入することも考えられる。しかし、木質系バイオマス系材料の破砕、造粒を行う破砕機、造粒機の動力が大きくなり、消費電力が増え、作業の手間暇が掛かり、ランニングコストが掛かるばかりでなく、処理設備の設置面積が大きくなってしまうというような大きな問題がある。
【0009】
上記の問題点に鑑み、汚泥を燃料化するための炭化処理において、化石燃料の使用量を大幅に削減するだけでなく、少量の助燃料で処理主体である汚泥を安定的に炭化燃料化することのでき、汚泥及び助燃料を炭化炉に連続的に投入する際に、空気を混入させず安定的に投入、炭化処理でき、しかも、シンプルで消費電力を抑え、ランニングコストを大幅に低減できる汚泥の燃料化方法及び装置を提供する特許提案を既に行っている。
【0010】
但し、何れの場合においても、汚泥そのもの、助燃料としての木質系バイオマス系材料、
廃プラスチック、或いは化石燃料中には窒素(N)分が多く含まれている為、燃焼炉バーナでの燃焼によって、NOが多く発生してしまう。NOが大気に放出されることは、環境上、是非とも回避しなくてはならない。
【0011】
NOの放出を回避する方法としては、特許文献5等によって、最終排ガスのダクト中に無触媒脱硝装置を設置することが提案されている。
【特許文献1】特許3340412号公報
【特許文献2】特許3397764号公報
【特許文献3】特許3435399号公報
【特許文献4】特許3861093号公報
【特許文献5】特開2006−112299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、最終排ガスのダクト中に無触媒脱硝装置を設置することは、汚泥の燃料化装置の大型化につながる。また、このような無触媒脱硝装置は、メンテナンスが困難である。更にコストが増大するという問題もある。
【0013】
本発明はこうした事情を考慮してなされたもので、汚泥を燃料化するための炭化処理において、汚泥そのものの熱分解ガス、助燃料として木質系バイオマス系材料、廃プラスチック等からの熱分解ガス、或いは化石燃料等を燃焼炉にて燃焼させても、NOxの放出を回避することができるとともに、大型化の必要がなく、しかも、シンプルで消費電力を抑え、ランニングコストを低減できる汚泥燃料化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の汚泥燃料化装置は、汚泥を熱分解ガス及び炭化物を生成させる熱分解炭化炉と、前記熱分解炭化炉で発生する熱分解ガスを燃焼させる燃焼バーナを有する燃焼炉を有し、前記燃焼炉にて発生する燃焼排ガスを前記熱分解炭化炉の熱源として用いるとともに、前記燃焼炉の燃焼火炎先端部に水蒸気を吹き込むスプレーノズルを設置し、前記燃焼炉から発生するNOxを低減できるようにすることを特徴とする。
【0015】
本発明の汚泥燃料化装置は、汚泥を熱分解炭化処理して熱分解ガス及び炭化物を生成させる熱分解炭化炉と、前記熱分解炭化炉で発生する熱分解ガスを燃焼させる燃焼バーナを有する燃焼炉を有し、前記燃焼炉にて発生する燃焼排ガスを前記熱分解炭化炉の熱源として用いるとともに、前記燃焼炉の燃焼火炎先端部に尿素水を吹き込むスプレーノズルを設置し、前記燃焼炉から発生するNOxを低減できるようにすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記の発明によれば、汚泥を燃料化するための炭化処理において、汚泥そのもの、助燃料として木質系バイオマス系材料、廃プラスチック、或いは化石燃料等を燃焼炉にて燃焼させても、NOxの放出を回避することができると共に、大型化の必要がなく、しかも、シンプルで消費電力を抑え、ランニングコストを低減できる汚泥の燃料化装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の汚泥燃料化装置について更に詳しく説明する。
(1) 本発明の汚泥燃料化装置は、上述したように、熱分解炭化炉と燃焼バーナを有する燃焼炉を有し、燃焼炉にて発生する燃焼排ガスを前記熱分解炭化炉の熱源として用いるとともに、燃焼炉の燃焼火炎先端部に水蒸気を吹き込むスプレーノズルを設置し、燃焼炉から発生するNOxを低減できるようにすることを特徴とする。こうした構成によれば、汚泥を燃料化するための炭化処理において、汚泥そのものの熱分解ガス、助燃料として木質系バイオマス系材料、廃プラスチック等からの熱分解ガス、あるいは化石燃料等を燃焼炉にて燃焼させても、NOxの放出を回避することができるとともに、大型化の必要がなく、しかも、シンプルで消費電力を抑え、ランニングコストを低減できる。
(2) 上記(1)の発明において、前記燃焼炉の燃焼火炎先端部に燃焼排ガスを熱源に発生させた水蒸気としては、燃焼排ガスを熱源に発生させた水蒸気が挙げられる。
【0018】
(3) 上記(1)又は(2)の発明において、前記燃焼炉の燃焼火炎先端部に散布する水蒸気の流量を、燃焼炉排ガスのNOx計測値に基づき制御できるようにすることが好ましい。こうした構成によれば、水蒸気の吹きかけ流量を、NOx計測値によって制御しているため、常に最適な量の水蒸気を吹きかけることができる。
(4) 上記(1)乃至(3)の発明において、前記燃焼炉の燃焼排ガス排出部には燃焼排ガスの温度を測定する温度測定器が設けられており、燃焼火炎先端部に散布する水蒸気の流量を、燃焼炉排ガスの温度測定器の測定値に基づき制御できるようにすることが好ましい。こうした構成によれば、水蒸気の吹きかけ流量を、温度測定器の測定値によって制御しているため、常に最適な量の水蒸気を吹きかけることができる。
【0019】
(5) 本発明の汚泥燃料化装置は、上述したように、熱分解炭化炉と、燃焼バーナを有する燃焼炉を有し、燃焼炉にて発生する燃焼排ガスを前記熱分解炭化炉の熱源として用いるとともに、燃焼炉の燃焼火炎先端部に尿素水を吹き込むスプレーノズルを設置し、燃焼炉から発生するNOxを低減できるようにすることを特徴とする。こうした構成によれば、上記(1)の発明と同様な効果を有する。
【0020】
(6) 上記(5)の発明において、前記燃焼炉の燃焼火炎先端部に散布する尿素水の流量を、燃焼炉排ガスのNOx計測値に基づき制御できるようにすることが好ましい。こうした構成によれば、尿素水の吹きかけ流量を、NOx計測値によって制御しているため、常に最適な尿素水を吹きかけることができる。
(7) 上記(5)又は(6)の発明において、前記燃焼炉の燃焼排ガス排出部には燃焼排ガスの温度を測定する温度測定器が設けられており、燃焼火炎先端部に散布する尿素水の流量を、燃焼炉排ガスの温度測定器の測定値に基づき制御できるようにすることが好ましい。こうした構成によれば、上記(6)と同様な効果が得られる。
(8) 上記(1)〜(7)の発明において、前記燃焼炉は、850℃以上の高温で前記熱分解炭化炉から発生する熱分解ガスを燃焼することが好ましい。
【0021】
次に、本発明の汚泥燃料化装置の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態は下記に述べることに限定されない。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態における汚泥燃料化装置の概念フロー図である。また、図2は、汚泥燃料化装置の燃焼炉の構成を示す概略図である。
図1に示すように、汚泥の燃料化装置は、下水汚泥1が投入される汚泥投入機(投入フィーダ)2と、この投入フィーダ2から定量的に投入される下水汚泥を水蒸気により間接的に加熱して乾燥する乾燥炉3と、乾燥させた脱水汚泥を投入する乾燥汚泥投入ホッパー4、この乾燥汚泥投入ホッパー4に接続する乾燥汚泥投入機5と、乾燥された下水汚泥を炭化処理する外熱式ロータリーキルン型の熱分解炭化炉6と、この熱分解炭化炉6で生成した熱分解ガスを燃焼させるセラミックス製の燃焼炉7と、この燃焼炉7で発生した燃焼排ガス(熱風)を加熱源とする排熱回収ボイラー8を主な構成としている。
【0022】
熱分解炭化炉6の出口側には炭化物排出ダクト9が設置されており、該ダクト9から炭化物10が排出される。炭化物10は、炭化物冷却器11を経て炭化物貯留ホッパー12に貯留される。冷却され炭化物貯留ホッパー12内に溜まった生成炭化物は、ホッパー内のレベル或いは重量等を計測、監視し、その状態量により定期的に搬出されるように制御されており、利用先での利用方法に合わせた形で出荷、運搬される。
【0023】
前記熱分解炭化炉6の内筒側と燃焼炉7とは、熱分解炭化炉6で発生する熱分解ガスの配管であるライン13により接続されている。熱分解ガスは、ライン13を経て燃焼炉6内の燃焼バーナ(図示せず)に吸引される。燃焼炉7と熱分解炭化炉6の外側ジャケット部6aとは、燃焼炉7から熱分解炭化炉6へ燃焼排ガスを送る第1の燃焼排ガスライン(熱風ライン)14aにより接続されている。熱分解炭化炉6と排熱回収ボイラー8は、熱分解炭化炉6から排熱回収ボイラー8へ燃焼排ガスを送る第2の燃焼排ガスライン14bにより接続されている。前記第1の燃焼排ガスライン14aには、排熱回収ボイラー8からの第3の燃焼排ガスライン14cが合流している。ここで、前記第1〜第3燃焼排ガスライン14a,14b,14cにより熱風循環ラインを構成しており、これにより熱分解炭化炉6の加熱用排ガス熱風循環風量を高めることができる。
【0024】
なお、図1において、符番15は、乾燥炉3からの乾燥排ガスを集塵装置16に送るためのラインを示す。乾燥排ガスは集塵装置16を経て燃焼炉7の燃焼用空気として利用される。また、図1中の符番17は排熱回収ボイラー8から出た熱風排ガスを吸引する熱風循環ブロアを、符番18は熱風排ガスを洗浄する洗浄装置を、符番19は排気塔を、符番20は空気予熱器を、符番23は熱風吸引ブロアを示す。
【0025】
次に、上記汚泥燃料化装置の構成について更に詳しく説明する。
図1では乾燥炉3の熱源として排熱回収ボイラー8で発生した水蒸気を用い、乾燥炉3内の温度が高温になり処理材料から熱分解ガスが発生しないようにしている。しかし、熱風温度を下げて熱風を直接接触させる方式や、脱水汚泥を燃焼させずに乾燥できるものであれば特に限定されない。
【0026】
乾燥炉3から排出された脱水汚泥は乾燥汚泥搬送ライン21を経由して乾燥汚泥投入ホッパー4まで搬送されるが、このホッパー4までの途中には乾燥した汚泥を搬送できるコンベア、エアー搬送機(夫々図示せず)等が配置されている。処理規模、レイアウト等に応じて適宜最適設計することが好ましい。
【0027】
図1では、熱分解炭化炉6を外熱式ロータリーキルン型としている。熱分解炭化炉6の内筒内には乾燥汚泥投入機5から酸素の混入しない状態で乾燥汚泥を連続投入し、保持しつつ回転する内部キルンの外側ジャケット部6aに加熱源の燃焼排ガスを流している。また、内部キルンを外側から加熱する反対側の内筒から生成炭化物10及び熱分解ガスを排出する構成としている。
【0028】
燃焼炉7内では、850℃以上、滞留時間2秒以上で熱分解ガスを完全燃焼させ無害化した後、発生する熱風は第1の燃焼排ガスライン14aを経由して熱分解炭化炉6の外側ジャケット部6aへと送風する。乾燥炉3からの乾燥排ガスは、ライン15、集塵装置16を経て燃焼炉7の燃焼用空気として利用される。
【0029】
熱分解炭化炉6の外側ジャケット部6aから排出された燃焼排ガスは、第2の燃焼排ガスライン14bを経て排熱回収ボイラー8に導入される。排熱回収ボイラー8から排出された燃焼排ガスは熱風循環ブロア17に吸引されて第3の燃焼排ガスライン14cを経て熱分解炭化炉6の外側ジャケット部6a側に循環し、一部は熱風吸引ブロア23に吸引されて排気ライン22を経由して排気塔19から系外に排出される。
なお、排熱回収ボイラー8の負荷が低い場合は、燃焼排ガスの残部を排気塔19から系外に排出させたり、他の加熱源がある場合には、それらに排ガスを供給することも可能である。
【0030】
排熱回収ボイラー8では、熱分解炭化炉6で加熱後の熱風を利用して水蒸気を発生させ、この蒸気を熱源として乾燥炉2を加熱する。排熱回収ボイラー8から出た熱風排ガスは、熱風吸引ブロア17で吸引され、洗浄装置18にて排ガス中のダスト分を除去した後、排気塔19から排気される。
【0031】
図1では、熱風吸引ブロア17で吸引した熱風排ガスを洗浄装置18にて洗浄し、その排ガスの白煙防止用に熱風吸引ブロア17を出た排ガスを加熱源とする洗浄装置18を設置し、空気を加熱して排気塔19から排気されるガスと混合させている。しかし、熱風排ガス中にダスト分が殆ど含まれない場合には、そのまま洗浄装置18、白煙防止用装置等を設置せずそのまま排気してもよい。
【0032】
燃焼炉7には、上述した熱分解炭化炉6で生成した熱分解ガスをライン13を経て加えるとともに、乾燥炉3からの乾燥排ガスをライン14、集塵装置15を経て燃焼用空気として導入する。そして、前記のように約850℃の温度で燃焼を行う。この燃焼により発生した燃焼排ガスは、第1の燃焼排ガスライン14aを介して熱分解炭化炉6の外側ジャケット部6aに導入し、熱分解炭化処理の熱源として使用する。これにより、熱分解炭化処理に必要なエネルギーを十分に得ることができるので、化石燃料の使用量を大幅に削減することができる。但し、初期起動時の運転においては、助燃料として若干量の化石燃料(灯油、LPGガス等)を燃焼炉7に供給することはやむをえない。
【0033】
次に、図2を参照して燃焼炉7について説明する。
燃焼炉7の上部には、熱分解ガスライン13より送られる熱分解ガスを燃焼するメインバーナ32、補助バーナ33が設けられている。ここで、補助バーナ33は、起動時や熱分解ガスの熱量が不足する場合に使用される。また、燃焼炉7の上部には、希釈空気(乾燥排ガス)を導入するための導入口34、水蒸気供給ライン35より水蒸気を燃焼炉の火炎先端部に導入するスプレーノズル36が設けられている。燃焼炉7の下部には最終排ガスを排出する排出部37が設けられ、この排出部37にはNOx測定器38が設けられている。このNOx測定器38の測定値により注入する水蒸気の吹き込み流量を制御できる。なお、図中の符番39は火炎、符番40は燃焼排ガス(熱風)を示す。
【0034】
次に、上述した構成の汚泥燃料化装置の作用について図1及び図2で説明する。
まず、水分が約80%になるまで脱水された下水汚泥1は定量的に汚泥投入機2により乾燥機3に送られる。なお、本発明で対象となる汚泥は、炭化処理により固体燃料化できる有機性の汚泥であれば下水汚泥に限定されるものでなく、例えば、食品汚泥、製紙汚泥、ビルピット汚泥、消化汚泥、活性汚泥などにも適用できる。
【0035】
乾燥機3では、汚泥の水分が約40%位になるまで汚泥を乾燥する。乾燥させた汚泥は、ライン21を介して脱水汚泥貯留ホッパー4から定量的に乾燥汚泥投入機5に落され、この乾燥汚泥投入機5を経て熱分解炭化炉6に導入する。
【0036】
熱分解炭化炉6では、汚泥を無酸素状態で約300〜600℃に加熱して熱分解炭化処理を行い、熱分解ガスと固体燃料である炭化物10とを生成する。生成する炭化物の利用用途等により要求される炭化物10の性状も変わる為、その状況に合わせて加熱源の燃焼排ガス温度を調整する。熱分解ガスは、ライン13を介して燃焼炉7に導入する。炭化物10は、炭化物貯留ホッパー12に貯留される。
【0037】
また、排熱回収ボイラー8の加熱源の燃焼排ガス温度を調整することで、排熱回収ボイラー8で発生する蒸気量、蒸気温度を適宜制御することにより、下水汚泥を加熱し過ぎることなく安全に一定温度条件で乾燥させることができる。
【0038】
一方、熱分解ガスは燃焼炉7のメインバーナ32にて燃焼し、燃焼排ガスが発生する。この燃焼排ガスは、熱分解炭化炉6、排熱回収ボイラー8の熱源として送られ、熱風循環した後、大気に放出される。なお、起動時や熱分解ガスの熱量が不足する場合には、燃焼炉7の補助バーナ33にて燃焼するようにする。
【0039】
燃焼炉7にてメインバーナ32のバーナ火炎によって850℃以上の高温で2秒間以上燃焼処理する。この時、水蒸気吹き込みスプレーノズル36から、バーナ火炎の先端部近傍の位置に水蒸気が吹きかけられる。
【0040】
水蒸気は燃焼炉内で排ガス中のNOx量を抑制する。この抑制原理については、日本機械学会「技術資料:燃焼に伴う環境汚染物質の生成機構とその抑制法」(昭和55年12月20日発行)の第134頁〜第137頁に詳細に記載されている。これにより、燃焼排ガスのNOx量を抑制することができる。
【0041】
本実施形態での水蒸気の吹きかけ量は、排出部に設けられたNOx測定器38の測定値によって制御される。NOxの測定値が高い場合には、水蒸気の吹きかけ量を増大させる。このため、常に最適な量の水蒸気を吹きかけることができる。
【0042】
汚泥燃料化装置内の余剰熱を熱源として水蒸気を発生させ、この水蒸気供給ライン35に供給することが効率的である。
【0043】
以上のように、第1の実施形態によれば、燃焼炉内での燃焼中に水蒸気がNOxの生成を抑制するため、NOxの放出を効果的に回避することができる。また、水蒸気の吹きかけ量を、NOx測定器38の測定値によって制御しているため、常に適量の水蒸気を吹きかけることができる。更に、汚泥燃料化装置が大型化することなく、コスト上も有利である。
なお、図1,2において、燃焼炉7は縦向きに設置しているが、横向きに設置しても構わない。
【0044】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態における汚泥燃料化装置の一構成である燃焼炉の構成を示す概略図である。但し、図1,2と同部材は同符番を付して説明を省略する。
図3中の符番41は、尿素注入ライン42に沿って燃焼炉7の燃焼火炎先端部に尿素水を吹き込む尿素水吹込みスプレーノズルを示す。
【0045】
こうした構成の燃焼炉では、燃焼炉7にて燃焼バーナ32のバーナ火炎によって850℃以上の高温で2秒間以上燃焼処理する。この時、尿素水吹き込みスプレーノズル41から、バーナ火炎の先端部近傍の位置に尿素水が吹きかけられる。
更に、本実施形態の燃焼炉7は、最終排ガスを排出する排出部37を有しており、排出部37には、最終排ガスのNOx放出量を測定するNOx測定器38の測定値によって尿素水吹き込み流量を制御されるようになっている。
【0046】
尿素水は、燃焼炉内で以下のように反応して、まずアンモニアガスを発生する。
CO(NH +HO → 2NH + CO
そして、このアンモニアガスが、以下のように反応によって排ガス中のNOxを還元させる。
4NO + 4NH +O → 4N + 6H
これにより、燃焼排ガスのNOx量を抑制することができる。
【0047】
第2の実施形態において、尿素水の吹きかけ流量は、排出部に設けられたNOx測定器38の測定値によって制御される。NOxの測定値が高い場合には、尿素水の吹きかけ流量を増大させる。このため、常に最適な量の尿素水を吹きかけることができる。
【0048】
また、汚泥燃料化装置内の余剰熱を熱源として尿素水を発生させ、尿素水吹き込みノズル41に供給することが効率的である。特に冬場などの低温時においては、尿素水も低温になり、尿素水も結晶化しやすいため、尿素水注入ライン42が閉塞する恐れがあるからである。
【0049】
以上のように、第2の実施形態によれば、熱分解ガスの燃焼中に、尿素水に含まれる尿素がNOxと反応してNOxをNに還元するため、還元反応を円滑に確実に進行させることが容易である。また、尿素水の吹きかけ流量を、排出部に設けられたNOx測定器38の測定値によって制御しているため、常に最適な量の尿素水を吹きかけることができる。更に、汚泥燃料化装置内の余剰熱を熱源として尿素水を加熱し、この尿素水吹き込みノズル41に供給することが効率的である。さらには、汚泥燃料化装置が大型化することなく、コスト上も有利である。
【0050】
(第3の実施形態)
図4は、本発明の第3の実施形態における汚泥燃料化装置の一構成である燃焼炉の構成を示す概略図である。但し、図1,2と同部材は同符番を付して説明を省略する。
図4に示すように、本実施形態の汚泥燃料化装置は、燃焼排ガス排出部37にNOx測定器の代わりに燃焼排ガス排出部37の温度を測定する温度測定器43が設けられている他は、図2及び図3に示す実施形態の汚泥燃料化装置と同様の構成である。
【0051】
本実施形態においては、燃焼排ガス排出部37の温度が高い場合にはNOxの残存量が多いという関係を利用して、燃焼排ガス排出部37の温度が高い場合には、水蒸気吹き込みスプレーノズル36の吹きかけ流量を増大させる。
【0052】
第3の実施形態によれば、燃焼排ガス排出部37の温度測定器43の測定値を利用して、水蒸気の吹きかけ流量を適量に制御することができる。このように、水蒸気の吹きかけ流量を、燃焼排ガス排出部37の温度測定器43の温度測定値によって制御しているため、常に最適な量の水蒸気を吹きかけることができる。また、温度測定器43はNOx測定器に比べて安い費用で設置できるというメリットもある。更に、汚泥燃料化装置が大型化することなく、コスト上も有利である。
【0053】
なお、第3の実施形態においては、水蒸気の吹きかけ流量を適量に制御する場合について述べたが、これに限らず、図3の燃焼炉に適用した場合、尿素水の吹きかけ流量を適量に制御することができる。
【0054】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態における汚泥燃料化装置の概念フロー図である。
【図2】図2は、本発明の第2の実施形態における汚泥燃料化装置の一構成である燃焼炉の概念図である。
【図3】図3は、本発明の第3の実施形態における汚泥燃料化装置の一構成である燃焼炉の構成概略図である。
【図4】図4は、本発明の第4の実施形態における汚泥燃料化装置の一構成である燃焼炉の構成概略図である。
【符号の説明】
【0056】
1…下水汚泥、2…汚泥投入機(投入フィーダー)、3…乾燥炉(乾燥機)、4…乾燥汚泥投入ホッパー、5…乾燥汚泥投入機、6…熱分解炭化炉、7…燃焼炉、8…排熱回収ボイラー、9…炭化物排出ダクト、11…炭化物冷却器、12…炭化物貯留ホッパー、14a…第1の燃焼排ガスライン、14b…第2の燃焼排ガスライン、14c…燃焼排ガスライン、17…熱風循環ブロア、18…洗浄装置、19…排気塔、22…排気ライン、23…熱風吸引ブロア、32…メインバーナ、33…補助バーナ、36…水蒸気吹き込みスプレーノズル、37…燃焼排ガス排出部、38…NOx測定器、41…尿素水吹込みスプレーノズル、43…温度測定器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥を熱分解炭化処理して熱分解ガス及び炭化物を生成させる熱分解炭化炉と、前記熱分解炭化炉で発生する熱分解ガスを燃焼させる燃焼バーナを有する燃焼炉を有し、前記燃焼炉にて発生する燃焼排ガスを前記熱分解炭化炉の熱源として用いるとともに、前記燃焼炉の燃焼火炎先端部に水蒸気を吹き込むスプレーノズルを設置し、前記燃焼炉から発生するNOxを低減できるようにすることを特徴とする汚泥燃料化装置。
【請求項2】
前記燃焼炉の燃焼火炎先端部に燃焼排ガスを熱源に発生させた水蒸気は、燃焼排ガスを熱源に発生させた水蒸気であることを特徴とする請求項1記載の汚泥燃料化装置。
【請求項3】
前記燃焼炉の燃焼火炎先端部に散布する水蒸気の流量を、燃焼炉排ガスのNOx計測値に基づき制御できるようにすることを特徴とする請求項1若しくは2に記載の汚泥燃料化装置。
【請求項4】
前記燃焼炉の燃焼排ガス排出部には燃焼排ガスの温度を測定する温度測定器が設けられており、燃焼火炎先端部に散布する水蒸気の流量を、燃焼炉排ガスの温度測定器の測定値に基づき制御できるようにすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の汚泥燃料化装置。
【請求項5】
汚泥を熱分解炭化処理して熱分解ガス及び炭化物を生成させる熱分解炭化炉と、前記熱分解炭化炉で発生する熱分解ガスを燃焼させる燃焼バーナを有する燃焼炉を有し、前記燃焼炉にて発生する燃焼排ガスを前記熱分解炭化炉の熱源として用いるとともに、前記燃焼炉の燃焼火炎先端部に尿素水を吹き込むスプレーノズルを設置し、前記燃焼炉から発生するNOxを低減できるようにすることを特徴とする汚泥燃料化装置。
【請求項6】
前記燃焼炉の燃焼火炎先端部に散布する尿素水の流量を、燃焼炉排ガスのNOx計測値に基づき制御できるようにすることを特徴とする請求項5に記載の汚泥燃料化装置。
【請求項7】
前記燃焼炉の燃焼排ガス排出部には燃焼排ガスの温度を測定する温度測定器が設けられており、燃焼火炎先端部に散布する尿素水の流量を、燃焼炉排ガスの温度測定器の測定値に基づき制御できるようにすることを特徴とする請求項5若しくは6に記載の汚泥燃料化装置。
【請求項8】
前記燃焼炉は、850℃以上の高温で前記熱分解炭化炉から発生する熱分解ガスを燃焼することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の汚泥燃料化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−97758(P2009−97758A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268097(P2007−268097)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】