説明

汽力発電設備の制御装置および制御方法

【課題】汽力発電設備としての効率向上を達成でき、かつ、信頼性を向上させると共に、給電指令にも速やかに応答することのできる汽力発電設備の制御装置を得る。
【解決手段】再循環弁4の開度をタービン駆動給水ポンプ2の吐出圧力に対応させてヒステリシス付き制御する再循環弁制御手段101と、給水バイパス弁7の開度制御で流量を制御し、給水バイパス弁7の差圧をタービン駆動給水ポンプ2の回転数で制御して主給水の流量制御を行い、タービン駆動給水ポンプ2の吐出流量に対応して給水バイパス弁7の感度補正を行う給水制御手段102と、低負荷運転時、ボイラ絞り弁バイパス弁13の開度を不感帯を設けて制御すると共に、ガバナ15の感度を負荷の値に応じて変化させた制御を行う主蒸気圧力制御手段103とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、火力発電所等の汽力発電設備において、特に低負荷運転時の効率を向上するようにした汽力発電設備の制御装置および制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気事業者は、電力の安定供給と地球温暖化ガスである二酸化炭素の削減といった観点から、原子力発電やガスタービン複合発電(コンバインドサイクル)設備など、発電効率が高く、二酸化炭素の排出量の少ない発電設備を高い利用率(定格出力に近い出力)で運用することが求められている。従って、汽力発電設備は、需要に応じた供給力(発電出力調整)の役割を担うことになる。
近年、省エネルギ対策として、汽力発電設備にはできるだけ高い発電効率で運用することが期待されている。
従来、このような汽力発電設備として、プラント熱効率の向上策の一つとして変圧運転を行うようにしたものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−291113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
汽力発電設備においては、一般的なボイラへの給水手段として、電気駆動式給水ポンプ(電動給水ポンプ)と蒸気タービン駆動式給水ポンプ(BFP−T)の2種類が、単独あるいは併用して用いられている。BFP−Tを用いる利点は、モータ動力が不要なため、所内電力の低減(発電所における省エネルギ化)に有効である。一方、電動給水ポンプは主にプラント起動時や低負荷帯で用いられるが、電動であるため、特に低負荷運転時における効率向上の妨げとなっていた。
【0005】
即ち、電動給水ポンプを用いて低負荷運転を行うには次のような問題点があった。
(1)供給信頼度の低下:ユニット起動/停止時は電動給水ポンプにて行う。そして、その後はタービン駆動給水ポンプを用いて運転を行うが、ある低負荷帯の運転値(例えば、定格負荷運転の値が60万kWのプラントにおける15万kW)以下の運転を行う場合は、電動給水ポンプへの切替操作を行うことになる。従って、定格負荷運転から低負荷運転の間の変圧運転を行う場合、このような運転値を境にして幾度も電動給水ポンプの運転/停止を行うことになる。その結果、モータ故障へのリスクが増大し、本来のユニット起動/停止時に電動給水ポンプが使用できなくなる可能性が大きくなる。
【0006】
(2)給電運用の阻害:例えば上記運転値である15万kW以下の給電指令を受けた場合、また、15万kW以下の運転の後、再度15万kWを超える給電指令を受けた場合、タービン駆動給水ポンプから電動給水ポンプへの切替、あるいはその逆の切替が必要となる。その結果、このような負荷下げ/上げで60分出力固定が必要となり、給電指令に制約をかけることになる。
【0007】
(3)プラント効率低下:電動給水ポンプ運転による電力消費により、所内率および送電端効率の低下となる。
【0008】
また、このような問題を解決するため、低負荷運転でもタービン駆動給水ポンプを用いることが考えられる。しかしながら、タービン駆動給水ポンプには、所定の流量以下になった場合のタービン駆動給水ポンプの保護を行うために、吐出側から吸込側に水を再循環させるための再循環弁が接続されており、低負荷運転時には吸込流量が所定の流量以下となるため、この再循環弁が開となる。ところが、その結果、タービン駆動給水ポンプの流量が増加し、軸動力以上の出力が要求されてしまうことからタービン駆動給水ポンプが過負荷となってしまい、このような点からタービン駆動給水ポンプを低負荷運転時に使用することは困難であった。
【0009】
更に、タービン駆動給水ポンプの駆動は主蒸気より抽気した蒸気によって行われるため、タービン駆動給水ポンプからボイラやタービンに至るループが形成されることになり、また、低負荷運転時では、タービン駆動給水ポンプの回転数を制御したり、ボイラ絞り弁やガバナの開度を制御した場合、これらの制御動作が実際の設定値に反映される迄に所定の遅れ時間を有することになる。従って、低負荷運転時にタービン駆動給水ポンプを用いた場合、ボイラ絞り弁やガバナの開度制御やタービン駆動給水ポンプの回転数制御で相互干渉が発生してしまい、このような点からも、低負荷運転時では安定した制御を行うのが困難であった。
【0010】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、汽力発電設備としての効率向上を達成でき、かつ、信頼性を向上させると共に、給電指令にも速やかに応答することのできる汽力発電設備の制御装置および制御方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る汽力発電設備の制御装置は、主給水を行うタービン駆動給水ポンプと、タービン駆動給水ポンプの吐出側から吸込側に水を再循環させるための再循環弁と、タービン駆動給水ポンプの吐出側に設けられ、主給水の流量を制御するための給水弁と、ボイラの水冷壁の圧力制御を行うためのボイラ絞り弁と、主蒸気の圧力制御を行うためのガバナとを備えた汽力発電設備の制御を行う汽力発電設備の制御装置であって、再循環弁の開度をタービン駆動給水ポンプの吸込流量と吐出圧力とに対応させて制御すると共に、開度制御をヒステリシス付き制御とする再循環弁制御手段と、給水弁の開度を一定として、タービン駆動給水ポンプの回転数を制御することで、主給水の流量制御を行う給水制御手段と、所定の負荷以下の負荷運転時では、ボイラ絞り弁の開度を、目標とする制御値に対する偏差の不感帯を設けて制御すると共に、ガバナの感度を負荷の値に応じて変化させた制御を行う主蒸気圧力制御手段とを備えたものである。
【0012】
この発明に係る汽力発電設備の制御装置は、主給水を行うタービン駆動給水ポンプと、タービン駆動給水ポンプの吐出側から吸込側に水を再循環させるための再循環弁と、タービン駆動給水ポンプの吐出側に設けられ、主給水の流量を制御するための給水弁と、ボイラの水冷壁の圧力制御を行うためのボイラ絞り弁と、主蒸気の圧力制御を行うためのガバナとを備えた汽力発電設備の制御を行う汽力発電設備の制御装置であって、再循環弁の開度をタービン駆動給水ポンプの吸込流量と吐出圧力とに対応させて制御すると共に、開度制御をヒステリシス付き制御とする再循環弁制御手段と、給水弁の開度制御によって給水弁を流れる流量を制御し、かつ、給水弁の入口側と出口側の差圧をタービン駆動給水ポンプの回転数で制御することで、主給水の流量制御を行うと共に、タービン駆動給水ポンプの吐出流量に対応して給水弁の感度補正を行う給水制御手段と、所定の負荷以下の負荷運転時では、ボイラ絞り弁の開度を、目標とする制御値に対する偏差の不感帯を設けて制御すると共に、ガバナの感度を負荷の値に応じて変化させた制御を行う主蒸気圧力制御手段とを備えたものである。
【0013】
また、この発明に係る汽力発電設備の制御装置は、再循環弁制御手段による再循環弁の開度制御に対応した保護設定値に基づいて、タービン駆動給水ポンプの保護を行う給水ポンプ保護手段を備えたものである。
【0014】
また、この発明の汽力発電設備の制御方法は、主給水を行うタービン駆動給水ポンプと、タービン駆動給水ポンプの吐出側から吸込側に水を再循環させるための再循環弁と、タービン駆動給水ポンプの吐出側に設けられ、主給水の流量を制御するための給水弁と、ボイラの水冷壁の圧力制御を行うためのボイラ絞り弁と、主蒸気の圧力制御を行うためのガバナとを制御する汽力発電設備の制御方法であって、再循環弁の開度をタービン駆動給水ポンプの吸込流量と吐出圧力とに対応させて制御すると共に、開度制御をヒステリシス付き制御とし、給水弁の開度を一定として、タービン駆動給水ポンプの回転数を制御することで、主給水の流量制御を行い、所定の負荷以下の負荷運転時では、ボイラ絞り弁の開度を、目標とする制御値に対する偏差の不感帯を設けて制御すると共に、ガバナの感度を負荷の値に応じて変化させた制御を行うようにしたものである。
【0015】
また、この発明の汽力発電設備の制御方法は、主給水を行うタービン駆動給水ポンプと、タービン駆動給水ポンプの吐出側から吸込側に水を再循環させるための再循環弁と、タービン駆動給水ポンプの吐出側に設けられ、主給水の流量を制御するための給水弁と、ボイラの水冷壁の圧力制御を行うためのボイラ絞り弁と、主蒸気の圧力制御を行うためのガバナとを制御する汽力発電設備の制御方法であって、再循環弁の開度をタービン駆動給水ポンプの吸込流量と吐出圧力とに対応させて制御すると共に、開度制御をヒステリシス付き制御とし、給水弁の開度制御によって給水弁を流れる流量を制御し、かつ、給水弁の入口側と出口側の差圧をタービン駆動給水ポンプの回転数で制御することで、主給水の流量制御を行うと共に、タービン駆動給水ポンプの吐出流量に対応して給水弁の感度補正を行い、所定の負荷以下の負荷運転時では、ボイラ絞り弁の開度を、目標とする制御値に対する偏差の不感帯を設けて制御すると共に、ガバナの感度を負荷の値に応じて変化させた制御を行うようにしたものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明の汽力発電設備の制御装置によれば、汽力発電設備としての効率向上を達成でき、かつ、信頼性を向上させると共に、給電指令にも速やかに応答することができる。
また、この発明の汽力発電設備の制御装置によれば、給水制御手段を備えたので、更に低負荷運転時における安定した制御が実現でき、より汽力発電設備としての効率向上を達成することができる。
また、この発明の汽力発電設備の制御装置によれば、再循環弁制御手段による再循環弁の制御に対応したタービン駆動給水ポンプの保護動作を行うことができる。
【0017】
また、この発明の汽力発電設備の制御方法によれば、汽力発電設備としての効率向上を達成でき、かつ、信頼性を向上させると共に、給電指令にも速やかに応答することができる制御を実現することができる。
また、この発明の汽力発電設備の制御方法によれば、給水弁とタービン駆動給水ポンプの制御を行うようにしたので、更に低負荷運転時における安定した制御が実現でき、より汽力発電設備としての効率向上を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による制御装置が適用される汽力発電設備の構成図である。
図において、脱気器1、タービン駆動給水ポンプ(TD−BFP)2、電動給水ポンプ(M−BFP)3、再循環弁(PRC)4、電動給水ポンプ流量制御弁(FWB)5、第1の給水弁(FWV)6、第2の給水弁(FWVB)7、高圧ヒータ8、エコノマイザ(ECO)9、ボイラ循環ポンプ(BCP)10、水冷壁(WW)11、第1のボイラ絞り弁(BT)12、第2のボイラ絞り弁(BTB)13、スーパーヒータ(SH1,SH2)14a,14b、ガバナ(GOV)15、タービン(HP)16、低レンジ給水流量計17、高レンジ給水流量計18、制御装置100を備えている。
【0019】
脱気器1は、図示しない復水器からの気体を含んだ液体の脱気処理を行う装置である。タービン駆動給水ポンプ2は、図示省略したタービンによって駆動される給水ポンプであり、主給水を行うためのポンプである。また、電動給水ポンプ3は、電力によって駆動され、プラント起動時に用いられる給水ポンプである。再循環弁4は、タービン駆動給水ポンプ2や電動給水ポンプ3の吐出側から吸込側に水を再循環させるためのバルブであり、制御装置100の後述する再循環弁制御手段101によって制御されるよう構成されている。また、電動給水ポンプ流量制御弁5は、電動給水ポンプ3の流量を制御するためのバルブである。
【0020】
第1の給水弁6は、タービン駆動給水ポンプ2及び電動給水ポンプ3と高圧ヒータ8との間の主給水路に設けられた開閉弁である。また、第2の給水弁7は、第1の給水弁6を流れる水量を制御するためのバイパス弁であり、制御装置100の後述する給水制御手段102によって制御されるよう構成されている。尚、これら第1の給水弁6および第2の給水弁7は、主給水の流量を制御するための給水弁に相当する構成であり、以下、第1の給水弁6は単に給水弁6と称し、第2の給水弁7は給水バイパス弁7と称する。また、高圧ヒータ8は、主給水を加熱する加熱器である。
【0021】
エコノマイザ9〜スーパーヒータ14a,14bは、汽力発電設備のボイラを構成する構成であり、エコノマイザ9は、排ガスにより高圧ヒータ8からの水を加熱する加熱器である。ボイラ循環ポンプ10は、水冷壁11への給水を行うポンプであり、水冷壁11は、図示しないバーナによってボイラ循環ポンプ10で送られた水を加熱する熱交換器である。
【0022】
第1のボイラ絞り弁12および第2のボイラ絞り弁13は、水冷壁11の圧力制御を行うためのボイラ絞り弁に相当する構成であり、これらボイラ絞り弁は、制御装置100の後述する主蒸気圧力制御手段103によって制御されるよう構成されている。また、第2のボイラ絞り弁13は、第1のボイラ絞り弁12のバイパス弁であり、以下、第1のボイラ絞り弁12は単にボイラ絞り弁12と称し、第2のボイラ絞り弁13は、ボイラ絞り弁バイパス弁13と称する。スーパーヒータ14a,14bは、1次過熱器および2次過熱器である。ガバナ15は、タービン16に供給する蒸気を制御するための制御弁であり、このガバナ15も制御装置100の後述する主蒸気圧力制御手段103によって制御されるよう構成されている。また、タービン16は、主蒸気によって駆動される高圧タービンである。
【0023】
低レンジ給水流量計17は、給水弁6が全閉状態となり、給水バイパス弁7を介して給水が行われる場合の低レンジの流量を計測する流量計であり、その出力は制御装置100に入力されるよう構成されている。また、高レンジ給水流量計18は、高圧ヒータ8の下流側に設けられ、主給水の流量を計測する流量計であり、その出力は制御装置100に入力されるよう構成されている。
【0024】
制御装置100は、汽力発電設備としての各制御弁やタービン駆動給水ポンプ2の制御を行うものであり、再循環弁制御手段101、給水制御手段102、主蒸気圧力制御手段103、給水ポンプ保護手段104を備えている。再循環弁制御手段101は、再循環弁4の開度をタービン駆動給水ポンプ2の吸込流量と吐出圧力とに対応させて制御すると共に、その開度制御をヒステリシス付きの制御を行う手段である。給水制御手段102は、給水バイパス弁7の開度制御によって給水バイパス弁7を流れる流量を制御し、かつ、給水バイパス弁7の入口側と出口側の差圧をタービン駆動給水ポンプ2の回転数で制御することで、主給水の流量制御を行うと共に、タービン駆動給水ポンプ2の吐出流量に対応して給水バイパス弁7の感度補正を行う手段である。
【0025】
主蒸気圧力制御手段103は、所定の負荷以下の負荷運転時では、ボイラ絞り弁バイパス弁13の開度制御に対して不感帯を設けて制御すると共に、ガバナ15の感度を負荷の値に応じて変化させた制御を行う手段である。給水ポンプ保護手段104は、保護設定値104aに基づいてタービン駆動給水ポンプ2の保護を行う手段であり、この保護設定値104aは、再循環弁制御手段101による再循環弁4の開度制御に対応した設定値となっている。
【0026】
次に、実施の形態1の動作について説明する。
再循環弁制御手段101は、タービン駆動給水ポンプ2における吸込流量と吐出圧力との関係に基づいて再循環弁4の開度制御を行う。
図2は、再循環弁4の開度制御の一例を示す説明図であり、吸込流量と吐出圧力(ゲージ圧)との関係を示している。
図中、実線200a,200bは本実施の形態の全開、全閉直線を示し、破線300a,300bは従来の全開、全閉の値を示している。図示のように、従来では、吸込流量のみによる全開または全閉制御(この例では、吸込流量290(t/h)で全開、370(t/h)で全閉)であったのに対し、本実施の形態では、吐出圧力と吸込流量との値に応じて開度制御を行っている。例えば、従来では、吸込流量が290(t/h)の値になれば、再循環弁4は全開であったのに対し、本実施の形態では、吸込流量が290(t/h)以下で再循環弁4が開き始め、図中の矢印のように吐出圧力が一定の場合は、そのまま吸込流量が200(t/h)強の値になるまで、吸込流量の減少に応じて開度制御が行われる。また、再循環弁制御手段101は再循環弁4の開度制御をヒステリシス付きの制御で行っているため、再循環弁は、吸込流量が260(t/h)になるまで全開状態で保持され、それ以上の流量で340(t/h)まで吸込流量の増大に応じて開度制御される。尚、ヒステリシス付き制御については後述する。
【0027】
このように、従来では、吸込流量のみによる再循環弁4の全開/全閉制御であったため、再循環弁4全開時のタービン駆動給水ポンプ2の過負荷防止の観点から低負荷帯でのタービン駆動給水ポンプ2による給水が困難であったのに対し、本実施の形態では、吸込流量と吐出圧力との値に応じて再循環弁4を流れる流量をきめ細かく制御するため、低負荷帯での給水制御を可能とすることができる。
【0028】
次に、再循環弁制御手段101の再循環弁4に対するヒステリシス付きの開度制御について説明する。
図3は、吸込流量と再循環弁4の開度との関係を示す説明図である。
図示のように、吸込流量290(t/h)以下になると、再循環弁4が開かれ、200(t/h)強で全開となる。また、全開状態から吸込流量が増加しても直ちに閉側に制御せず、260(t/h)まで全開状態のままとし、それ以上の値で閉側に制御し、340(t/h)で全閉状態まで制御する。その後は全閉状態のままとし、290(t/h)以下の吸込流量となると、上記の開閉制御を繰り返す。このような制御を行うことにより、タービン駆動給水ポンプ2の給水制御に外乱を与えることがなく、安定したタービン駆動給水ポンプ2の給水制御を行うことができる。
【0029】
このような再循環弁制御手段101の制御により、吸込流量を小さくしても、再循環流量を多くすることなくタービン駆動給水ポンプ2の運転が可能となることから、タービン駆動給水ポンプ2の過負荷を防止することができると共に、ヒステリシス付き制御により、安定した給水制御を行うことができる。
【0030】
次に、給水制御手段102の動作について説明する。
給水制御手段102は、低負荷帯での流量制御として、給水バイパス弁7の制御により、タービン駆動給水ポンプ2から高圧ヒータ8に至る給水路の流量制御を行い、かつ、給水バイパス弁7の差圧制御をタービン駆動給水ポンプ2の回転数によって制御する。即ち、給水制御手段102は、低レンジ給水流量計17で計測された流量に基づいて給水バイパス弁7を開閉制御することによって、給水バイパス弁7を流れる流量を所望する値に制御すると共に、流量変化によって、給水バイパス弁7の入口側と出口側の差圧が変化した場合、その差圧に応じてタービン駆動給水ポンプ2の回転数を制御する。
【0031】
このように、給水制御手段102は、低負荷帯では、給水弁6を全閉状態に制御し、給水バイパス弁7の開度制御とタービン駆動給水ポンプ2の回転数制御によって流量制御を行う。また、所定の値以上の負荷帯では給水弁6を開状態、給水バイパス弁7を閉状態に制御して、高レンジ給水流量計18からの流量計測値に基づいてタービン駆動給水ポンプ2の回転数制御を行って流量制御を行う。
【0032】
更に、タービン駆動給水ポンプ2からの吐出流量に応じて、給水バイパス弁7の開閉制御量を変化させる。即ち、吐出流量が小さい場合は給水バイパス弁7が大きく動くよう制御し、吐出流量が大きい場合は給水バイパス弁7が小さく動くよう制御する。つまり、タービン駆動給水ポンプ2の吐出流量が小さい場合は給水バイパス弁7の感度が高く、吐出流量が大きい場合は給水バイパス弁7の感度が低くなるよう給水バイパス弁7の感度補正を行うのと同等の制御を行うものである。
【0033】
このような給水バイパス弁7の開閉制御とタービン駆動給水ポンプ2の回転数の制御とを行うことにより、ポンプの特性が良好な領域での制御が行え、その結果、流量が小さい値であっても、安定してその値に制御することができる。
【0034】
次に、主蒸気圧力制御手段103の動作について説明する。
低負荷運転時では、タービン駆動給水ポンプ2の駆動蒸気は主蒸気から抽気されるため、ボイラ、ガバナ15、タービン駆動給水ポンプ2といったループが形成される。また、低負荷運転時では、ボイラ絞り弁バイパス弁13およびガバナ15の開閉動作と、実際の蒸気圧力との間には制御遅れが大きくなる。このような理由から、低負荷運転では、定格運転時と同じ制御を行った場合、タービン駆動給水ポンプ2と、ボイラ絞り弁バイパス弁13やガバナ15の制御によって相互干渉が発生し易くなる。
【0035】
そこで、本実施の形態では、主蒸気圧力制御手段103は、低負荷帯では、ボイラ絞り弁バイパス弁13について、目標とする制御値に対する偏差の不感帯を設け、この不感帯の範囲では、ボイラ絞り弁バイパス弁13の開閉動作を行わないよう制御する。尚、低負荷運転時では、ボイラ絞り弁12は全閉状態に制御され、ボイラ絞り弁バイパス弁13の開度のみが制御される。また、主蒸気圧力制御手段103は、ガバナ15の感度を負荷に応じて変化させる。即ち、負荷が低くなればなるほど、感度が低くなるよう設定する。これは、低負荷運転時では、プラント全体の制御の時定数が大きくなるため、この時定数に対応させてゆっくりとした制御を行うようにするためである。
【0036】
このような制御を行うことにより、低負荷運転時におけるタービン駆動給水ポンプ2とボイラ絞り弁バイパス弁13とガバナ15との相互干渉を回避することができ、低負荷運転時においても安定して流量制御を行うことができる。
尚、上記の不感帯については、固定した値の不感帯とするのではなく、負荷が低くなればなるほど、不感帯の範囲が大きくなるよう設定してもよい。
【0037】
次に、給水ポンプ保護手段104の動作について説明する。
給水ポンプ保護手段104は、再循環弁4が所定の開度になってもタービン駆動給水ポンプ2の吐出流量が所定の値に達しない場合、タービン駆動給水ポンプ2を保護するため、タービン駆動給水ポンプ2を停止させるよう制御する。ここで、保護設定値104aは、再循環弁4の開度とタービン駆動給水ポンプ2の吸込流量との関係によって定められた設定値である。即ち、本実施の形態では、タービン駆動給水ポンプの吸込流量が従来よりも小さい値まで制御されるため、このような低流量で給水ポンプ保護手段104が誤動作しないよう、再循環弁4の開度に対応したタービン駆動給水ポンプ2の最低流量の値に基づいて保護設定値104aが設定されている。本実施の形態では、このような保護設定値104aを用いることにより、給水ポンプ保護手段104は、再循環弁制御手段101による再循環弁4の制御に対応したタービン駆動給水ポンプ2の保護動作を行うことができる。
【0038】
尚、上記実施の形態では、給水弁の構成として給水弁6と給水バイパス弁7とを有し、低負荷帯では、給水バイパス弁7のみを制御する構成について説明したが、このような構成以外にも、例えば、給水弁6が常時開状態に設定され、タービン駆動給水ポンプ2の回転数制御によって流量制御が行われるような汽力発電設備であっても、本発明は適用可能である。即ち、この場合、給水制御手段102は、上述した所定の値以上の負荷帯における流量制御と同様に、給水弁6を一定開度とし、かつ、給水バイパス弁7を閉状態に制御して、タービン駆動給水ポンプ2の回転数を制御することで流量制御を行う。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の実施の形態1による汽力発電設備の制御装置を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1における再循環弁の開度制御を示す説明図である。
【図3】この発明の実施の形態1における吸込流量と再循環弁の開度との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0040】
2 タービン駆動給水ポンプ
4 再循環弁
6 第1の給水弁
7 第2の給水弁
12 第1のボイラ絞り弁
13 第2のボイラ絞り弁
15 ガバナ
100 制御装置
101 再循環弁制御手段
102 給水制御手段
103 主蒸気圧力制御手段
104 給水ポンプ保護手段
104a 保護設定値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主給水を行うタービン駆動給水ポンプと、当該タービン駆動給水ポンプの吐出側から吸込側に水を再循環させるための再循環弁と、前記タービン駆動給水ポンプの吐出側に設けられ、主給水の流量を制御するための給水弁と、ボイラの水冷壁の圧力制御を行うためのボイラ絞り弁と、主蒸気の圧力制御を行うためのガバナとを備えた汽力発電設備の制御を行う汽力発電設備の制御装置であって、
前記再循環弁の開度を前記タービン駆動給水ポンプの吸込流量と吐出圧力とに対応させて制御すると共に、当該開度制御をヒステリシス付き制御とする再循環弁制御手段と、
前記給水弁の開度を一定として、前記タービン駆動給水ポンプの回転数を制御することで、主給水の流量制御を行う給水制御手段と、
所定の負荷以下の負荷運転時では、前記ボイラ絞り弁の開度を、目標とする制御値に対する偏差の不感帯を設けて制御すると共に、前記ガバナの感度を負荷の値に応じて変化させた制御を行う主蒸気圧力制御手段とを備えた汽力発電設備の制御装置。
【請求項2】
主給水を行うタービン駆動給水ポンプと、当該タービン駆動給水ポンプの吐出側から吸込側に水を再循環させるための再循環弁と、前記タービン駆動給水ポンプの吐出側に設けられ、主給水の流量を制御するための給水弁と、ボイラの水冷壁の圧力制御を行うためのボイラ絞り弁と、主蒸気の圧力制御を行うためのガバナとを備えた汽力発電設備の制御を行う汽力発電設備の制御装置であって、
前記再循環弁の開度を前記タービン駆動給水ポンプの吸込流量と吐出圧力とに対応させて制御すると共に、当該開度制御をヒステリシス付き制御とする再循環弁制御手段と、
前記給水弁の開度制御によって当該給水弁を流れる流量を制御し、かつ、当該給水弁の入口側と出口側の差圧を前記タービン駆動給水ポンプの回転数で制御することで、主給水の流量制御を行うと共に、前記タービン駆動給水ポンプの吐出流量に対応して前記給水弁の感度補正を行う給水制御手段と、
所定の負荷以下の負荷運転時では、前記ボイラ絞り弁の開度を、目標とする制御値に対する偏差の不感帯を設けて制御すると共に、前記ガバナの感度を負荷の値に応じて変化させた制御を行う主蒸気圧力制御手段とを備えた汽力発電設備の制御装置。
【請求項3】
再循環弁制御手段による再循環弁の開度制御に対応した保護設定値に基づいて、タービン駆動給水ポンプの保護を行う給水ポンプ保護手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の汽力発電設備の制御装置。
【請求項4】
主給水を行うタービン駆動給水ポンプと、当該タービン駆動給水ポンプの吐出側から吸込側に水を再循環させるための再循環弁と、前記タービン駆動給水ポンプの吐出側に設けられ、主給水の流量を制御するための給水弁と、ボイラの水冷壁の圧力制御を行うためのボイラ絞り弁と、主蒸気の圧力制御を行うためのガバナとを制御する汽力発電設備の制御方法であって、
前記再循環弁の開度を前記タービン駆動給水ポンプの吸込流量と吐出圧力とに対応させて制御すると共に、当該開度制御をヒステリシス付き制御とし、
前記給水弁の開度を一定として、前記タービン駆動給水ポンプの回転数を制御することで、主給水の流量制御を行い、
所定の負荷以下の負荷運転時では、前記ボイラ絞り弁の開度を、目標とする制御値に対する偏差の不感帯を設けて制御すると共に、前記ガバナの感度を負荷の値に応じて変化させた制御を行うことを特徴とする汽力発電設備の制御方法。
【請求項5】
主給水を行うタービン駆動給水ポンプと、当該タービン駆動給水ポンプの吐出側から吸込側に水を再循環させるための再循環弁と、前記タービン駆動給水ポンプの吐出側に設けられ、主給水の流量を制御するための給水弁と、ボイラの水冷壁の圧力制御を行うためのボイラ絞り弁と、主蒸気の圧力制御を行うためのガバナとを制御する汽力発電設備の制御方法であって、
前記再循環弁の開度を前記タービン駆動給水ポンプの吸込流量と吐出圧力とに対応させて制御すると共に、当該開度制御をヒステリシス付き制御とし、
前記給水弁の開度制御によって当該給水弁を流れる流量を制御し、かつ、当該給水弁の入口側と出口側の差圧を前記タービン駆動給水ポンプの回転数で制御することで、主給水の流量制御を行うと共に、前記タービン駆動給水ポンプの吐出流量に対応して前記給水弁の感度補正を行い、
所定の負荷以下の負荷運転時では、前記ボイラ絞り弁の開度を、目標とする制御値に対する偏差の不感帯を設けて制御すると共に、前記ガバナの感度を負荷の値に応じて変化させた制御を行うことを特徴とする汽力発電設備の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−271189(P2007−271189A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−98567(P2006−98567)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】