説明

油圧ショベルの油圧制御装置

【課題】ブームとバケットの複合操作時にブーム上げ動作を確保でき、かつバケット掘削時、バケットシリンダのメータアウト側の圧損を低減しエネルギロスを減少させる。
【解決手段】ブーム上げ及びバケット掘削の複合操作時に、バケット用コントロールバルブのバケット掘削側パイロットポートに供給されるパイロット圧をブームボトム圧とバルブ圧損との合算とポンプの作動圧との差圧に応じて減圧し、バケット掘削の単独操作時に、バケット用コントロールバルブのバケット掘削側パイロットポートに供給されるパイロット圧をエンジン回転数と油圧ポンプの作動圧に応じて減圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は共通の油圧ポンプで駆動されるブームとバケットの同時操作時にブーム上げ動作を確保すると共にバケット掘削時のエネルギロスを低減できる油圧ショベルの油圧制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルの作業アタッチメントは、ブームとアームとバケットとこれらを駆動する油圧シリンダによって構成され、ブームの上げ/下げ、アームの押し/引き、バケットの掘削(すくい)
/ 戻しの各動作によって掘削、積み込み等の各種作業が行われる。
【0003】
油圧ショベルの油圧回路で2ポンプ方式をとる場合、第1油圧ポンプでブームシリンダとバケットシリンダを駆動する一方、第2油圧ポンプでアームシリンダを駆動し、この第2油圧ポンプからの圧油の一部をブームシリンダに合流させてブーム作動速度を確保する構成がとられる。
【0004】
ところが、この構成において、ブーム上げ、アーム引き、バケット掘削の三つの動作またはブーム上げ、バケット掘削の二つの動作を空中で同時に行う複合操作時に、自重が動作方向に働くバケット掘削及びアーム引き動作に対してブーム上げ動作が高負荷であることから、油圧ポンプからの圧油がバケットシリンダ及びアームシリンダまたはバケットシリンダに優先的に流れてしまい、ブーム上げ動作がオペレータの意思通りに行われないという問題があった。
【0005】
また、バケットの単独掘削作業時には空中での息つぎ現象(キャビテーション)を防止するためのメータアウト絞りがエネルギロスの原因となるという問題があった。
【0006】
従来、この問題を解決する手段として、特許文献1に示されているように、ブーム上げ、
アーム引き、バケット掘削の複合操作時に、バケット用コントロールバルブのパイロット
圧を減圧してバケット用コントロールバルブスプールのストロークを抑え、これによりコ
ントロールバルブそのものによる絞り作用を働かせてポンプ圧を上昇させ、ブーム上げ動
作を確保する技術が公知である。
【0007】
また、特許文献2に示されているように、バケット単独操作において、空中では息つぎ
現象を防止し、実掘削作業時はメータアウト側の圧損を低減しエネルギロスを減少させる
技術が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−150198号公報
【特許文献2】特開2003−28101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の技術によると、複合操作時にはバケット用コントロールバルブスプールの
ストロークが抑えられ、これによりコントロールバルブそのものによる絞り作用を働かせ
られるが、バケット掘削だけの単独操作時にはコントロールバルブそのものによる絞り作
用は働かない。
【0010】
このため、エンジン回転数が低くポンプ吐出流量の少ないときに空中で息つぎしないように設定されたメータアウトでの絞りが、エンジン回転数が高くポンプ吐出量が多いときも同じであり、エンジン回転数の高い掘削時にはメータアウトでの絞りに依るエネルギロスが増えてしまう。
【0011】
特許文献1の技術によると、実際に土砂を掘削するような実掘削作業における複合操作(例えばバケット掘削とブーム上がり)では、油圧ポンプの作動圧がブーム上げ圧力よりも低いことを条件として、バケット用コントロールバルブのストロークを抑ええるために電磁比例減圧弁に対する二次圧の指令を出すが、この二次圧はブーム上げ操作量に応じて一義的に決められているので、情況によっては大きな減圧がされ、次に作動圧が高くなって減圧が無くなり、それにより作動圧が下がって、また大きな減圧がされてハンチングするという恐れがある。
【0012】
また、特許文献2の技術によると、単独操作(例えばバケット)では、空中では息つぎ無しで、掘削時はエネルギロスを減少させられるが、バケット掘削、ブーム上げのような複合操作時にはブームが上がらなくなり操作不良となる恐れがある。
【0013】
そこで、本発明の主な目的は、共通の油圧ポンプで駆動されるブームとバケットの同時操作時にブーム上げ動作を確保すると共にバケット掘削時のメータアウト絞りによるエネルギロスを低減できる油圧ショベルの油圧制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる油圧ショベルの油圧制御装置は、ブーム、アーム、バケット及び前記ブームを駆動するブームシリンダ、前記アームを駆動するアームシリンダ、前記バケットを駆動するバケットシリンダを備え、一つの油圧ポンプからの圧油をブーム用コントロールバルブ、バケット用コントロールバルブを介して前記ブームシリンダ及びバケットシリンダにパラレルに供給するように構成され、かつ、前記ブーム用及びバケット用両コントロールバルブとして、操作手段の操作量に応じたパイロット圧によって切換わり作動する油圧パイロット切換弁が用いられた油圧ショベルの油圧制御装置において、ブーム上げ及びバケット掘削の両操作が同時に行われたときに前記バケット用コントロールバルブのバケット掘削側パイロットポートに供給されるパイロット圧をブームボトム圧とポンプの作動圧とから演算した演算値に応じて減圧するパイロット圧制御手段が設けられたことを特徴とするものである。
【0015】
また、この発明にかかる油圧ショベルの油圧制御装置は、上記の発明において、パイロット圧制御手段は、バケット用コントロールバルブのバケット掘削側パイロットラインに設けられた電磁比例減圧弁と、ブームシリンダのブームボトム圧を検出するブームボトム圧検出手段と、油圧ポンプの作動圧を検出するポンプ圧検出手段と、コントローラとを備え、コントローラにて油圧ポンプの作動圧からブームボトム圧とブームコントロールバルブ損失分の圧力を減算し、その減算した値に指令値に変換する係数を乗じ、現在の二次圧の指令値からその係数を乗じた値を減算して、その減算した値を電磁比例減圧弁に対する修正値として指令することを特徴とするものである。
【0016】
また、この発明にかかる油圧ショベルの油圧制御装置は、上記の発明において、バケット掘削の単独操作が行われたときに前記バケット用コントロールバルブのバケット掘削側パイロットポートに供給されるパイロット圧をエンジン回転数と油圧ポンプの作動圧に応じて減圧するパイロット圧制御手段が設けられたことを特徴とするものである。
【0017】
また、この発明にかかる油圧ショベルの油圧制御装置は、上記の発明において、油圧ポンプの作動圧があらかじめ設定した設定圧より小さい場合は、コントローラにてエンジン回転数に応じて演算された2次圧の指令値を電磁比例減圧弁に指令し、これによりパイロット圧を減圧することを特徴とするものである。
【0018】
また、この発明にかかる油圧ショベルの油圧制御装置は、上記の発明において、油圧ポンプの作動圧があらかじめ設定した設定圧より大きい場合は、2次圧を減圧しないように電磁比例減圧弁に対する二次圧の指令を出し、これによりパイロット圧を減圧しないことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
この発明にかかる油圧ショベルの油圧制御装置は、バケット掘削とブーム上げの複合操作時に、油圧ポンプの作動圧がブームボトム圧とブーム上げ側のコントロールバルブ損失圧力の合算値を保持できることから、ブーム上げ動作を確保した上で、メータアウトでの絞りを最適に設定できるので、エネルギロスを最小に抑えながらスムーズな操作性を確保できる。
【0020】
また、この発明にかかる油圧ショベルの油圧制御装置は、複合操作の良好な操作性を維持した上で、空中でのバケット掘削だけの単独操作時にエンジン回転数に応じたメータアウト絞りを設定できるので、エンジン回転の高いところでのエネルギロスを抑えられ、実掘削時にはメータアウト絞りを無くしてメータアウト側のエネルギロスを減少させる。
【0021】
以上より、この発明にかかる油圧ショベルの油圧制御装置により、良好な操作性と燃費低減が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態である油圧ショベルの概略構成を示す模式図であ る。
【図2】本発明の実施例1に係る油圧ショベルの油圧制御装置を示す図である。
【図3】実施例1に係るバケットスプールの掘削側C−T開口面積の特性図である。
【図4】バケット単独掘削時のC−T開口面積と操作レバーとの複数の特性図である。
【図5】本発明の油圧制御装置の作用を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施例2に係る油圧ショベルの油圧回路を示す図である。
【図7】実施例2に係るバケットスプールの掘削側C−T開口面積とメータアウト制御弁の開口面積の特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明の第1の実施の形態であるショベルの概略構成を示す模式図である。図1において、ショベル1は、下部走行体2と、上部旋回体3と、掘削アタッチメント4とから構成されている。
【0025】
下部走行体2は、左右のクローラを回転駆動する左右の走行用モータ(図示せず)を有している。
【0026】
上部旋回体3は、旋回フレーム、キャビン5などから成っている。旋回フレームには、図2に示す、動力源としてのエンジン61と、エンジン61に連結された油圧ポンプ21、22と、コントロールバルブ23、24、25、26と、上部旋回体3を回転させるための旋回モータ(図示せず)と、ショベル全体の制御を行うコントローラ40と、操作レバー付きリモコン弁51,52,53とが設置されている。
【0027】
エンジン61の制御は、エンジンコントローラ62によって行われる。エンジンコントローラ62は、コントローラ40からの目標回転数の指令を受け、その回転数が得られるように燃料噴射量を増減する。また、エンジンコントローラ62は、エンジン61のエンジン回転数を含むエンジンデータをコントローラ40に出力する。
【0028】
掘削アタッチメント4は、ブーム6と、伸縮作動してブーム6を起伏させるブームシリンダ9と、アーム7と、アーム7を回動させるアームシリンダ10と、バケット8と、バケット8を回動させるバケットシリンダ11とを具備している。
【0029】
図2 は本発明の実施例1に係る油圧ショベルの油圧制御装置を示す図である。
【0030】
図2の如く、第1油圧ポンプ21に対してバケットシリンダ11とブームシリンダ9がそれぞれバケット用及びブーム用両コントロールバルブ23,24
を介してパラレルに接続されている。
【0031】
また、第2油圧ポンプ22に対してブームシリンダ9とアームシリンダ10がそれぞれブーム合流用及びアーム用両コントロールバルブ25,26を介してパラレルに接続されている。
【0032】
各コントロールバルブ23,24 ,25 ,26
は、それぞれ操作手段としてのバケット用、ブーム用、ブーム合流用、アーム用各レバー付リモコン弁51,52 ,53からのパイロット圧によって切換わり作動する油圧パイロット弁として構成され、バケット掘削、ブーム上げ、アーム引きの三動作の複合操作時に、バケット用、ブーム用両コントロールバルブ23,24
はそれぞれ図下側の位置( バケット掘削位置、ブーム上げ位置) に、またブーム合流用及びアーム用両コントロールバルブ25,26は図上側の位置( 合流位置、アーム引き位置)
にそれぞれセットされる。
【0033】
これにより、第1油圧ポンプ21からバケット、ブーム両シリンダ11,9に、第2油圧ポンプ22からブーム、アーム両シリンダ9,10
にそれぞれコントロールバルブ操作量に応じた流量が送られて各シリンダ11,9,10 が伸長作動する。
【0034】
図2では、各コントロールバルブ23,24,25,26
にパイロット圧を供給するパイロットラインとして、バケット掘削側パイロットライン28、ブーム上げ側パイロットライン29、同パイロットライン29にパラレルに接続された合流パイロットライン30、アーム引き側パイロットライン31のみを示し、バケット戻し側、ブーム下げ側、合流停止側、アーム押し側の各パイロットラインの図示を省略している。
【0035】
圧力センサ41,42,43,44はそれぞれ第1油圧ポンプ21の作動圧(Pp)、ブームシリンダのボトム圧(Pb)、バケット掘削側のリモコン弁からのパイロット圧(P1)、ブーム上げ側のリモコン弁からのパイロット圧(P2)を検出してコントローラ40に入力する。
【0036】
電磁比例減圧弁27はコントローラ40からの指令により、バケット用操作レバー付リモコン弁51からのバケット掘削側パイロット圧を減圧してバケット掘削側パイロットライン28に供給する。
【0037】
図3はバケットスプールの掘削側C−T開口面積の特性図であり、縦軸がメータアウト絞りとなるC−T開口面積、横軸がスプールのストロークである。また下段はパイロットライン28のパイロット圧である。A点はエンジンの設定最小回転数Nminに対応する点であり、B点はエンジンの設定最大回転数Nmaxに対応する点である。
【0038】
図3のA点はコントローラ40からの電磁比例減圧弁27への指令電流がI(PA)のときであり、I(PA)の指令電流を受けた電磁比例減圧弁27は減圧をしてバケット掘削側パイロットライン28に供給するパイロット圧をPAに抑え、そのときの開口面積はMAとなる。
【0039】
またB点はコントローラ40からの電磁比例減圧弁27への指令電流がI(PB)のときであり、I(PB)の指令電流を受けた電磁比例減圧弁27は減圧をしてバケット掘削側パイロットライン28に供給するパイロット圧をPBに抑え、そのときの開口面積はMBとなる。
【0040】
さらに、コントローラ40からの電磁比例減圧弁27への指令が減圧無しのときは、電磁比例減圧弁27は減圧を行わず、バケット掘削側パイロットライン28に減圧の無いパイロット圧を供給し、フル操作時の開口面積は最大となる。
【0041】
図4はバケット単独掘削時のC−T開口面積と操作レバーとの複数の特性図であり、縦軸がメータアウト絞りとなるC−T開口面積、横軸が操作レバー付リモコン弁51の操作レバー角度である。イ)は空中掘削時でエンジン回転数はNmin(アイドリング時)、ロ)は空中掘削時でエンジン回転数はNmax 、ハ)は実掘削時である。
【0042】
イ)は空中掘削時でエンジン回転数はNmin(アイドリング時)のときで有るが、操作レバー付リモコン弁51の操作レバー角度を増やしていき、フル操作をしても開口面積はMAに抑えられる。これによりアイドリング時のポンプ吐出流量の少ないときでも息つぎを防止できる。
【0043】
ロ)は空中掘削時でエンジン回転数はNmaxのときで有るが、レバー付リモコン弁51の操作レバー角度を増やしていき、フル操作をすると開口面積はMBにまで増える。これによりエンジン回転数Nmax時に息つぎを防止しながら、メータアウトの絞りをMAからMBに増加させてエネルギロスの増加を抑えられる。
【0044】
ハ)は実掘削時であり、息つぎの恐れは無いため電磁比例減圧弁27の減圧は無く、C−T開口面積は最大となる。これによりメータアウトの絞りによるエネルギロスを抑えられる。
【0045】
つぎにコントローラ40からの電磁比例減圧弁27への減圧指令を図5の油圧制御装置の作用を示すフローチャートによって以下に詳述する。
【0046】
S1ステップにおいて、エンジン回転数Neに応じた電磁比例減圧弁への電流指令値を演算する。Neがエンジンの設定最小回転数Nmin時はI(PA)、エンジンの設定最大回転数Nmax時はI(PB)であり、その間の電流値はS1ステップの図の如くであり、コントローラ40内の記憶装置にはデータテーブル形式で記憶されている。
【0047】
つぎにS2ステップにおいて、S1ステップで演算した電流指令値を電磁比例減圧弁27に出力する。
【0048】
S3ステップにおいて、バケット掘削側のリモコン弁の圧力センサ43から、バケット掘削側操作が有るかどうかを判定する。無ければS1に戻り、有ればS4ステップに進む。
【0049】
S4ステップにおいて、ブーム上げ側のリモコン弁の圧力センサ44から、ブーム上げ側操作が有るかどうかを判定する。無ければS7に進み、有ればS5ステップに進む。
【0050】
S5ステップにおいて、第1油圧ポンプ21の作動圧(Pp)とブームシリンダのボトム圧(Pb)にブームコントロールバルブ損失分の圧力(△P)を合算した圧力との差圧に応じた電磁比例減圧弁への電流指令値(I)を(1)式の如く演算する。
I=Ie―k(Pp―Pb―△P) …(1)
ここにおいて、IはS5ステップで演算される電流指令値であり、Ieは現在の電流指令値でありS5ステップで演算される前の値である。またPpは第1油圧ポンプ21の作動圧、Pbはブームシリンダのボトム圧、△Pはブームコントロールバルブ損失分の圧力、k は電流指令値に変換する係数である。
【0051】
つぎにS6ステップにおいて、S5ステップで演算した電流指令値を電磁比例減圧弁27に出力する。
【0052】
これにより、第1油圧ポンプ21の作動圧(Pp)がブームシリンダのボトム圧(Pb)とブームコントロールバルブ損失分の圧力(△P)との合算より大きい場合、k(Pp−Pb−△P)はプラスとなり、電流指令値Iは現在の電流指令値Ieより減少し、バケット用コントロールバルブのC−T開口面積は増加する。
【0053】
また、第1油圧ポンプ21の作動圧(Pp)がブームシリンダのボトム圧(Pb)とブームコントロールバルブ損失分の圧力(△P)との合算より小さい場合、k(Pp−Pb−△P)はマイナスとなり、電流指令値Iは現在の電流指令値Ieより増加し、バケット用コントロールバルブのC−T開口面積は減少する。
【0054】
これによりバケット掘削とブーム上げの複合操作時にブーム上げ動作を確保しながら、バケット用コントロールバルブのC−T開口面積での絞り効果を必要最小限に抑えて、絞りによるエネルギロスを減少させることができる。
【0055】
特許文献1の技術によると、第1油圧ポンプの作動圧がブーム上げ圧力よりも低いことを条件として電磁比例減圧弁に対する二次圧の指令を出すが、その指令はブーム上げ操作量に応じたものであり、絞りすぎる恐れがある。その結果第1油圧ポンプの作動圧が大きく上がり、二次圧の減圧指令は解除される。すると第1油圧ポンプの作動圧は下がりまた減圧指令が出される。これによりハンチングの起こる恐れがある。
【0056】
これに対して本考案では、第1油圧ポンプ21の作動圧(Pp)とブームシリンダのボトム圧(Pb)にブームコントロールバルブ損失分の圧力(△P)を合算した圧力との差圧に応じた電磁比例減圧弁への電流指令値(I)を演算しているため、差圧が小さくなると減圧量の変動も小さくなりハンチングの恐れがない。
【0057】
つぎに、S7ステップにおいて、第1油圧ポンプ21の作動圧(Pp)があらかじめ設定した設定圧より大きいかどうかを判定する。大きければS8に進み、大きくなければS1ステップに戻る。
【0058】
S8ステップにおいて、電磁比例減圧弁27に減圧無しの指令値を出力する。
【0059】
これによりバケット掘削の単独操作時に空中ではエンジン回転数Neに応じた最適なバケット用コントロールバルブのC−T開口面積を選定でき、息つぎを防止した上でC−T開口面積での絞りによるエネルギロスを最小にすることができ、実掘削では減圧を解除して、C−T開口面積での絞りによるエネルギロス減少させる。
【0060】
特許文献1の技術ではバケット掘削の単独操作時に減圧指令はなされない、このためエンジン回転数の低いときに息つきしないようにC−T開口面積を設定すると、エンジン回転数が高いときにC−Tのエネルギロスが増えるが、本考案ではこれを解消できる。
【0061】
また、特許文献2の技術ではバケット掘削の単独操作時の減圧のみであり、複合操作時には減圧はなされなく、複合操作時に操作不良の恐れがあり、例えばバケット掘削とブーム上げ時にブームが上がらなく恐れがある。本考案ではこれも解消した上でバケット掘削の単独操作時の減圧をエンジン回転数に応じて行うので安定して行える。
【実施例2】
【0062】
図6 は本発明の実施例2に係る油圧ショベルの油圧制御装置を示す図であり、図6中、図2に示した部材と同等のものには同じ符号を付している。本実施の形態は、メータアウト制御弁を電気的に制御するものである。
【0063】
図6においては、バケット掘削側パイロットライン28に二次圧を供給する図2における電磁比例減圧弁27を備えていない。その代わりに、本実施の形態に係わる油圧制御装置は、メータアウト制御弁33と電磁比例減圧弁27を有し、コントローラ40から電磁比例減圧弁27に指令電流が出力されると電磁比例減圧弁27の二次圧が信号圧力としてメータアウト制御弁33に与えられる。
【0064】
図7は実施例2に係るバケット用コントロールバルブ34のスプールの掘削側C−T開
口面積とメータアウト制御弁33の開口面積の特性図である。油圧回路におけるバケットシリンダの掘削時のC−T開口面積は全体としてはバケット用コントロールバルブ34のスプールの掘削側C−T開口面積とメータアウト制御弁33の開口面積との合算となる。
【0065】
エンジンの設定最小回転数Nminに対応するコントローラ40からの電磁比例減圧弁27への指令電流がI(PA)のときは、電磁比例減圧弁27は減圧をしてメータアウト制御弁パイロットライン32に供給するパイロット圧をPAに抑える。これにより、操作レバー付リモコン弁51をフル操作してパイロット圧(P1)を最大に高めてもバケット用コントロールバルブ34のスプールの掘削側C−T開口面積はMAであり、メータアウト制御弁33の開口面積は0のため全体でMAとなり実施例1と同じとなる。
【0066】
エンジンの設定最小回転数Nmaxに対応するコントローラ40からの電磁比例減圧弁27への指令電流がI(PB)のときは、電磁比例減圧弁27は減圧をしてメータアウト制御弁パイロットライン32に供給するパイロット圧をPBに抑える。これにより、操作レバー付きリモコン弁51をフル操作してパイロット圧を最大に高めてもバケット用コントロールバルブ34のスプールの掘削側C−T開口面積はMAであり、メータアウト制御弁33の開口面積はMB―MAのため全体でMBとなり実施例1と同じとなる。
【0067】
これらから実施例2は実施例1と機能が同じであり、油圧制御装置の作用を示すフローチャートも実施例1と同じとなり、操作性と省エネルギに対する効果も実施例1と同じとなる。
【0068】
これらから、本発明によれば共通の油圧ポンプで駆動されるブームとバケットの同時操作時にブーム上げ動作を確保すると共に、バケット掘削時のメータアウト絞りによるエネルギロスを低減できる。
【符号の説明】
【0069】
1 ショベル
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 掘削アタッチメント
5 キャビン
6 ブーム
7 アーム
8 バケット
9 ブームシリンダ
10 アームシリンダ
11 バケットシリンダ
21 第1油圧ポンプ
22 第2油圧ポンプ
23 バケット用コントロールバルブ(実施例1)
24 ブーム用コントロールバルブ
25 ブーム合流用コントロールバルブ
26 アーム用コントロールバルブ
27 電磁比例減圧弁
28 バケット掘削側パイロットライン
29 ブーム上げ側パイロットライン
30 ブーム上げ合流側パイロットライン
31 アーム引き側パイロットライン
32 メータアウト制御弁パイロットライン
33 メータアウト制御弁
34 バケット用コントロールバルブ(実施例2)
40 コントローラ
41 第1油圧ポンプ作動圧の圧力センサ
42 ブームボトム圧の圧力センサ
43 バケット掘削側のリモコン弁の圧力センサ
44 ブーム上げ側のリモコン弁の圧力センサ
51 バケット用レバー付リモコン弁
52 ブーム用レバー付リモコン弁
53 アーム用レバー付リモコン弁
61 エンジン
62 エンジンコントローラ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブーム、アーム、バケット及び前記ブームを駆動するブームシリンダ、前記アームを駆動するアームシリンダ、前記バケットを駆動するバケットシリンダを備え、一つの油圧ポンプからの圧油をブーム用コントロールバルブ、バケット用コントロールバルブを介して前記ブームシリンダ及びバケットシリンダにパラレルに供給するように構成され、かつ、前記ブーム用及びバケット用両コントロールバルブとして、操作手段の操作量に応じたパイロット圧によって切換わり作動する油圧パイロット切換弁が用いられた油圧ショベルの油圧制御装置において、ブーム上げ及びバケット掘削の両操作が同時に行われたときに前記バケット用コントロールバルブのバケット掘削側パイロットポートに供給されるパイロット圧をブームボトム圧とポンプの作動圧とから演算した演算値に応じて減圧するパイロット圧制御手段が設けられたことを特徴とする油圧ショベルの油圧制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の油圧ショベルの油圧制御装置において、パイロット圧制御手段は、バケット用コントロールバルブのバケット掘削側パイロットラインに設けられた電磁比例減圧弁と、ブームシリンダのブームボトム圧を検出するブームボトム圧検出手段と、油圧ポンプの作動圧を検出するポンプ圧検出手段と、コントローラとを備え、コントローラにて油圧ポンプの作動圧からブームボトム圧とブームコントロールバルブ損失分の圧力を減算し、その減算した値に指令値に変換する係数を乗じ、現在の二次圧の指令値からその係数を乗じた値を減算して、その減算した値を電磁比例減圧弁に対する修正値として指令することを特徴とする油圧ショベルの油圧制御装置。
【請求項3】
請求項1記載の油圧ショベルの油圧制御装置において、バケット掘削の単独操作が行われたときに前記バケット用コントロールバルブのバケット掘削側パイロットポートに供給されるパイロット圧をエンジン回転数と油圧ポンプの作動圧に応じて減圧するパイロット圧制御手段が設けられたことを特徴とする油圧ショベルの油圧制御装置。
【請求項4】
請求項3記載の油圧ショベルの油圧制御装置において、油圧ポンプの作動圧があらかじめ設定した設定圧より小さい場合は、コントローラにてエンジン回転数に応じて演算された2次圧の指令値を電磁比例減圧弁に指令し、これによりパイロット圧を減圧することを特徴とする油圧ショベルの油圧制御装置。
【請求項5】
請求項3記載の油圧ショベルの油圧制御装置において、油圧ポンプの作動圧があらかじめ設定した設定圧より大きい場合は、2次圧を減圧しないように電磁比例減圧弁に対する二次圧の指令を出し、これによりパイロット圧を減圧しないことを特徴とする油圧ショベルの油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−179208(P2011−179208A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43637(P2010−43637)
【出願日】平成22年2月28日(2010.2.28)
【出願人】(709006552)
【Fターム(参考)】