説明

油圧ショベルの油圧制御装置

【課題】ブーム下げ/アーム押しの複合操作時、またはこれを含む複合操作時にアームシリンダの必要流量を確保するとともに、絞りによる無駄なブースト圧の発生を抑える。
【解決手段】ブーム用コントロールバルブ12Aの下流側にアーム用コントロールバルブ13を設け、油圧ポンプ10からの吐出油をパラレル回路18とセンターバイパスライン16を通じてコントロールバルブ経由でブーム、アーム両シリンダ6,7に供給し、かつ、アーム用コントロールバルブ13の入口側に絞り20を設けた回路構成を前提として、ブーム用コントロールバルブ12Aを、中立時及びブーム下げ操作時の双方でセンターバイパス通路CBが開くように構成するとともに、ブーム下げ操作時にセンターバイパスライン16を最下流側で遮断するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブーム下げとアーム押しの複合操作時の制御内容を改良した油圧ショベルの油圧制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルは、図3に示すように、クローラ式の下部走行体1と、この下部走行体1上に地面に対して鉛直な軸のまわりに旋回自在に搭載された上部旋回体2とを具備する。
【0003】
上部旋回体2には、ブーム3、アーム4、バケット5、及びこれらを駆動するブーム、アーム、バケット各シリンダ6,7,8から成る作業アタッチメント9が装着され、ブーム3の上げ/下げ、アーム4の押し(上向き回動)/引き(下向き回動)、バケット5の掘削(すくい)/戻しの各動作によって掘削、積み込み、均し等の各種作業が行われる。
【0004】
また、他の油圧アクチュエータとして、下部走行体1を走行駆動する左右の走行モータと、上部旋回体2を旋回駆動する旋回モータ(いずれも図示しない)が設けられている。
【0005】
この油圧ショベルにおける従来の油圧回路を図4に示す。
【0006】
ここでは、図示しないエンジンによって駆動される二つの油圧ポンプ(第1及び第2両油圧ポンプ)10,11を備え、第1油圧ポンプ10でブーム、アーム、バケット各シリンダ6,7,8と左右片側の走行モータ(第1グループ)、第2油圧ポンプ11でブーム、アーム両シリンダ6,7と旋回モータ及び左右反対側の走行モータ(第2グループ)を駆動する回路を例示している。
【0007】
但し、ブーム、アーム両シリンダ6,7以外の油圧アクチュエータは本発明とは直接関係がなく、回路構成をできるだけ簡略化して本発明の理解を容易にするために両シリンダ6,7とその関連部分のみについて図示、説明する。
【0008】
ブーム用及びアーム用のコントロールバルブとして、第1油圧ポンプ10を油圧源とする第1グループG1にブーム用第1及びアーム用第2の両コントロールバルブ12,13、第2油圧ポンプ11を油圧源とする第2グループG2にブーム用第2、アーム用第1の両コントロールバルブ14,15がそれぞれ設けられている。
【0009】
各コントロールバルブ12〜15は、パイロット圧によって中立位置と両側作動位置との間で切換わり作動する油圧パイロット切換弁として構成されている。
【0010】
各コントロールバルブ12〜15はそれぞれセンターバイパス通路CBを有し、このセンターバイパス通路CBが、中立位置で全開となり、両側作動位置で操作量に応じて絞られる(最大操作量で全閉となる)。
【0011】
第1グループG1のコントロールバルブ12,13、及び第2グループG2のコントロールバルブ14,15は、それぞれ油圧ポンプ10,11に対して、センターバイパス通路CB同士を連通させるセンターバイパスライン16,17と、ポンプポート同士を並列に接続するパラレル回路18,19とによって接続されている。
【0012】
この場合、アーム引きとブーム上げの複合操作時に、ポンプ吐出油が、相対的に軽負荷側のアームシリンダ7のみに供給されることのないように、
(i) 両グループG1,G2においてアーム用コントロールバルブ13,15が油圧ポンプ10,11に対して下流側(ブーム用コントロールバルブ12,14が上流側)に配置され、
(ii) 第1グループG1のパラレル回路18におけるアーム用第2コントロールバルブ13の入口側に絞り20が設けられている。
【0013】
これにより、アーム引き/ブーム上げの複合操作時に、第1油圧ポンプ10の吐出油が優先的にブームシリンダ6に供給され、同シリンダ6の作動が確保される。
【0014】
なお、このとき第2油圧ポンプ11の吐出油が、第2グループG2のパラレル回路19及びアーム用第1コントロールバルブ15経由でアームシリンダ7に送られるため、アームシリンダ7の必要流量が確保される。
【0015】
一方、操作手段としてのブーム用及びアーム用リモコン弁21,22が設けられ、両リモコン弁21,22からのパイロット圧によって各コントロールバルブ12〜15の作動が制御される。
【0016】
なお、図4では、両リモコン弁21,22と各コントロールバルブ12〜15とを結ぶパイロットラインのうち、ブーム下げ側パイロットライン23とアーム押し側パイロットライン24のみを示す。
【0017】
ところで、油圧ショベルにおいては、通常、図示しないが両グループG1,G2の最上流側に走直弁が設けられ、この走直弁により、走行直進時に第2油圧ポンプ10の吐出油が左右の走行モータに等量ずつ分配供給される一方、同一グループに属する走行モータ以外の油圧アクチュエータが同時に操作される複合操作時に両油圧ポンプ10,11の吐出油を合流させて必要流量を確保するように構成される。
【0018】
このとき、操作されていないグループのバイパスラインがタンクTに通じていると、ポンプ吐出油がすべてアンロードされてしまい、上記合流作用が行われない。
【0019】
そこで、両センターバイパスライン16,17の最下流側にカット弁25,26が設けられている。
【0020】
このカット弁25,26は、パイロットポート25a,26aに加えられるパイロット圧によってバイパスライン16,17をタンクTに対して連通させる連通位置イとタンクTに対して遮断するブロック位置ロとの間で切換わり作動する油圧パイロット切換弁として構成され、上記複合操作時にこのカット弁25,26によりバイパスライン16,17を遮断する構成がとられている。
【0021】
具体的には、複合操作時の操作量を検出し、コントローラ経由で電磁比例弁を作動させてカット弁25,26の開口面積(ブロック位置ロへの移動量)を操作量に応じて、大操作量で小さくなる(最大操作量で全閉となる)方向に制御する構成がとられている。
【0022】
以上の回路構成は特許文献1,2に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2007−23606号公報
【特許文献2】特開平10−102547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
油圧ショベルでは、均し作業時にブーム3を下げながらアーム4を押す複合操作が行われる。また、ダンプ積み込み後の復帰時にもブーム下げとアーム押しを行いながら旋回させる複合操作が行われる。
【0025】
このようなブーム下げ/アーム押しの複合操作時において、従来の回路構成によると、
(I) アーム用第2コントロールバルブ13の圧油入口側に設けられた絞り20によって、元々、第1油圧ポンプ10からパラレル回路18経由でアームシリンダ7に供給される流量が絞られること、
(II) アーム用第2コントロールバルブ13がブーム用第1コントロールバルブ12の下流側に配置されているため、ブーム用第1コントロールバルブ12が中立位置イからブーム上げ位置ロまたはブーム下げ位置ハに切換わると、そのセンターバイパス通路CBが絞られることによってセンターバイパスライン16経由でアームシリンダ7に供給される流量も減少すること、
の二点により、アームシリンダ流量が不足する事態が発生していた。
【0026】
これにより、必要なアーム押し速度が出ずにサイクルタイムのロスが生じる。
【0027】
また、上記(I)(II)の絞り作用によって無駄なブースト圧が発生するため、エネルギーロス及び発熱が生じるとともに、両油圧ポンプ10,11のポンプ圧が上昇することで馬力制御が働いて両ポンプ流量が低下し、たとえば旋回を含む複合操作時に旋回速度が低下する等の他の油圧アクチュエータの操作性にも悪影響を与えることになっていた。
【0028】
そこで本発明は、ブーム下げ/アーム押しの複合操作時、またはこれを含む複合操作時にアームシリンダの必要流量を確保できるとともに、絞りによる無駄なブースト圧の発生を抑えることができる油圧ショベルの油圧制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
請求項1の発明は、作業アタッチメントのブームを駆動するブームシリンダと、アームを駆動するアームシリンダと、この両シリンダの油圧源としての油圧ポンプと、ブーム用及びアーム用両操作手段の操作に応じて上記両シリンダの作動を制御するブーム用及びアーム用両コントロールバルブとを備え、この両コントロールバルブは、ブーム用コントロールバルブを上流側としてそれぞれのセンターバイパス通路を連通させるセンターバイパスラインと、それぞれのポンプポートを並列に接続するパラレル回路とによって接続され、かつ、上記アーム用コントロールバルブのパラレル回路の入口側に、ポンプ吐出油を上記ブーム用コントロールバルブに優先的に供給するための絞りが設けられるとともに、上記センターバイパスラインの最下流側に、必要に応じてセンターバイパスラインを遮断するカット弁が設けられた油圧ショベルの油圧制御装置において、上記ブーム用コントロールバルブを、中立時及びブーム下げ操作時の双方でセンターバイパス通路が開くように構成するとともに、ブーム下げ操作時に上記センターバイパスラインを最下流側で遮断方向に制御するように構成したものである。
【0030】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、上記ブーム下げ操作時に、カット弁制御手段により上記カット弁を遮断側に作動させてセンターバイパスラインを遮断方向に制御するように構成したものである。
【0031】
請求項3の発明は、請求項2の構成において、上記カット弁制御手段は、上記カット弁の開口面積をブーム下げ操作量に応じて、大操作量で小さくなる方向に制御するように構成したものである。
【0032】
請求項4の発明は、請求項3の構成において、上記ブーム用操作手段としてリモコン弁、上記ブーム用コントロールバルブとして上記リモコン弁からパイロット圧ラインを通じて供給されるパイロット圧によって操作される油圧パイロット弁、上記カット弁としてパイロットポートに加えられるパイロット圧によって制御される油圧パイロット弁をそれぞれ用い、上記リモコン弁のブーム下げ側のパイロット圧ラインを上記カット弁のパイロットポートに接続することによって上記カット弁制御手段を構成したものである。
【0033】
請求項5の発明は、請求項3の構成において、上記カット弁としてパイロットポートに加えられるパイロット圧によって制御される油圧パイロット弁を用い、上記ブーム用コントロールバルブのブーム下げ操作量を検出するブーム下げ操作量検出手段と、このブーム下げ操作量検出手段によって検出されたブーム下げ操作量に応じた指令信号を出力するコントローラと、このコントローラからの指令信号に応じた二次圧を上記カット弁にパイロット圧として供給する電磁比例弁とによって上記カット弁制御手段を構成したものである。
【発明の効果】
【0034】
本発明によると、ブーム下げ操作時に、ブーム用コントロールバルブのセンターバイパス通路を、従来のように絞るのではなく中立時同様に開くように構成したから、ブーム下げ/アーム押しの複合操作時またはこれを含む複合操作時に、センターバイパスラインを通じてアームシリンダに必要流量を供給することができる。
【0035】
これにより、アーム押しの速度を速めてサイクルタイムをアップできるとともに、ポンプ流量の低下によって旋回速度が低下する等の他の油圧アクチュエータの操作性の悪化を防止することができる。
【0036】
また、バイパス通路が絞られることによる無駄なブースト圧が発生しないため、エネルギーロス及び発熱を抑えることができる。
【0037】
ここで、上記のようにブーム用コントロールバルブのセンターバイパス通路をブーム下げ操作時に開く構成とすると、ブーム下げ単独操作時(アーム用コントロールバルブの中立時)にポンプ吐出油がセンターバイパスラインを通じてアンロードされてしまい、ブーム下げ動作が不能となる弊害が生じる。
【0038】
この点、本発明によると、ブーム下げ操作時にセンターバイパスラインを最下流側で遮断方向に制御するため、上記弊害が生じない。
【0039】
この場合、請求項2〜4の発明によると、上記センターバイパスラインの遮断制御を、回路に元々設けられるカット弁を利用して行うため、ブーム下げ操作時専用の遮断弁を追加する必要がなく、回路構成の簡素化及びコストの点で有利となる。
【0040】
また、請求項3〜5の発明によると、ブーム下げ操作量に応じてカット弁の開口面積、つまりアンロード流量を絞るため、ブームシリンダにブーム下げ操作量に応じた流量を送ることで操作性が良いものとなる。
【0041】
この場合、請求項4の発明では、リモコン弁のブーム下げパイロット圧によって直接カット弁を開口制御するため、回路構成が簡単で、かつ、動作の信頼性が高いものとなる。
【0042】
これに対し請求項5の発明では、ブーム下げ操作量を検出してコントローラから電磁比例弁に指令信号を送り、同比例弁の二次圧でカット弁を開口制御するため、つまり、カット弁を本来の制御と同様に比例弁制御するため、カット弁の兼用が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施形態を示す回路構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示す回路構成図である。
【図3】油圧ショベルの全体構成を示す概略側面図である。
【図4】従来の回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の実施形態を図1,2によって説明する。
【0045】
以下の実施形態では、背景技術の説明に合わせて、第1及び第2両油圧ポンプ10,11を備え、第1油圧ポンプ10でブーム、アーム、バケット各シリンダ6,7,8と左右片側の走行モータ(第1グループ)、第2油圧ポンプ11でブーム、アーム両シリンダ6,7と旋回モータ及び左右反対側の走行モータ(第2グループ)を駆動する回路を適用対象としている。
【0046】
また、図4と同様に、回路構成をできるだけ簡略化して本発明の理解を容易にするためにブーム、アーム両シリンダ6,7とその関連部分のみについて図示、説明する。
【0047】
なお、図1,2において、図4に示す従来回路と異なる部分を太線で示している。
【0048】
実施形態において、次の各点は図4に示す従来技術と同じである。
【0049】
(I) ブーム用及びアーム用のコントロールバルブとして、第1油圧ポンプ10を油圧源とする第1グループG1にブーム用第1及びアーム用第2の両コントロールバルブ12A,13、第2油圧ポンプ11を油圧源とする第2グループG2にブーム用第2、アーム用第1の両コントロールバルブ14,15がそれぞれ設けられている点。
【0050】
(II) 各コントロールバルブ12A,13〜15は、パイロット圧によって中立位置と両側作動位置との間で切換わり作動する油圧パイロット切換弁として構成されている点。
【0051】
(III) 各コントロールバルブ12A,13〜15はそれぞれセンターバイパス通路CBを有し、ブーム用第1コントロールバルブ12A以外についてはこのセンターバイパス通路CBの開口面積が、中立位置で最大となり、両側作動位置で操作量に応じて絞られる点。
【0052】
(IV) 第1グループG1のコントロールバルブ12A,13、及び第2グループG2のコントロールバルブ14,15は、それぞれ油圧ポンプ10,11に対して、センターバイパス通路CB同士を連通させるセンターバイパスライン16,17と、ポンプポート同士を並列に接続するパラレル回路18,19とによって接続されている点。
【0053】
(V) この場合、アーム引きとブーム上げの複合操作時に、ポンプ吐出油が、相対的に軽負荷側のアームシリンダ7のみに供給されることのないように、両グループG1,G2においてアーム用コントロールバルブ13,15がポンプ10,11に対して下流側(ブーム用コントロールバルブ12,14が上流側)に配置されるとともに、第1グループG1のパラレル回路18におけるアーム用第2コントロールバルブ13の入口側に絞り20が設けられている点。
【0054】
(VI) 操作手段としてのブーム用及びアーム用リモコン弁21,22が設けられ、両リモコン弁21,22からのパイロット圧によって各コントロールバルブ12A,13〜15の作動が制御される点。
【0055】
(VII) 両センターバイパスライン16,17の最下流側にカット弁25,26が設けられている点。
【0056】
(VIII) このカット弁25,26は、パイロットポート25a,26aに加えられるパイロット圧によってバイパスライン16,17をタンクTに対して連通させる連通位置イとタンクTに対して遮断するブロック位置ロとの間で切換わり作動する油圧パイロット切換弁として構成され、同一グループに属する走行モータ以外の油圧アクチュエータが同時に操作される複合操作時に、このカット弁25,26によりバイパスライン16,17を遮断する構成がとられている点。
【0057】
図4に示す従来回路におけるブーム用第1コントロールバルブ12のバイパス通路CBは、中立位置イで全開となり、ブーム上げ、ブーム下げ両位置ロ,ハでは操作量に応じて絞られる(最大操作量で全閉となる)ように構成されている。
【0058】
これに対し、第1及び第2両実施形態のブーム用第1コントロールバルブ12Aにおいては、図示のようにセンターバイパス通路CBが中立位置イとブーム下げ位置ハの双方で全開となり、ブーム上げ位置ロのみで操作量に応じて絞られる(最大操作量で全閉となる)ように構成されている。
【0059】
この構成によると、ブーム下げ/アーム押しの複合操作時、またはこれにたとえば旋回が加わった複合操作時に、ブーム用第1コントロールバルブ12Aのセンターバイパス通路CB、センターバイパスライン16、アーム用第2コントロールバルブ13を通じてアームシリンダ7に必要流量(アーム押し操作量に応じた流量)を供給することができる。
【0060】
これにより、アーム押しの速度を速めてサイクルタイムをアップできるとともに、ポンプ流量の低下によって旋回速度が低下する等の他の油圧アクチュエータの操作性の悪化を防止することができる。
【0061】
また、ブーム用第1コントロールバルブ12Aのバイパス通路CBが絞られることによる無駄なブースト圧が発生しないため、エネルギーロス及び発熱を抑えることができる。
【0062】
ここで、上記のようにブーム用第1コントロールバルブ12Aのセンターバイパス通路CBをブーム下げ操作時に開く構成とすると、ブーム下げ単独操作時、つまりアーム用第2コントロールバルブ13は中立(センターバイパスCBが全開)のまま、ブーム用第1コントロールバルブ12Aがブーム下げ位置ハに切換わった状態でセンターバイパスライン16が開いた状態となるため、ブームシリンダ6に供給されるべき第1油圧ポンプ10の吐出油がセンターバイパスライン16を通じてアンロードされてしまい、ブーム下げ動作が不能となる弊害が生じる。
【0063】
そこで、両実施形態においては、ブーム下げ操作時に、既存のカット弁25を利用し、センターバイパスライン16を最下流側でブーム下げ操作量に応じた開口面積に絞るように構成されている。
【0064】
具体的には、第1実施形態(図1)においては、ブーム用リモコン弁21のブーム下げ側のパイロット圧ライン23にカット弁用パイロットライン27が接続され、同パイロットライン27がカット弁25のパイロットポート25aに接続されている。
【0065】
これによってカット弁制御手段28が構成され、このカット弁制御手段28により、ブーム下げ操作時にカット弁25がブーム下げ操作量に応じた開口面積に自動制御される。
【0066】
こうすれば、ブーム下げ単独操作時にブームシリンダ6に操作量に応じた流量を供給することができる。
【0067】
また、回路に元々設けられているカット弁25を利用してバイパスライン16の開口制御を行うため、ブーム下げ操作時専用の遮断弁を追加する必要がなく、回路構成が簡単でコストが安くてすむ。
【0068】
しかも、ブーム下げ操作量に応じてカット弁25の開口面積、つまりアンロード流量を絞るため、ブームシリンダ6にブーム下げ操作量に応じた流量を送ることで操作性が良いものとなる。
【0069】
この場合、リモコン弁21のブーム下げパイロット圧によって直接カット弁25を開口制御するため、回路構成が簡単で、かつ、動作の信頼性が高いものとなる。
【0070】
一方、第2実施形態(図2)においては、ブーム下げパイロット圧(ブーム下げ操作量)を検出するパイロット圧センサ29と、このパイロット圧センサ29によって検出されたブーム下げ操作量に応じた指令信号を出力するコントローラ30と、このコントローラ30からの指令信号に応じた二次圧をカット弁25にパイロット圧として供給する電磁比例弁31とによってカット弁制御手段32が構成されている。
【0071】
この第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0072】
また、カット弁25を、本来の制御と同様に比例弁制御するため、カット弁25の兼用が容易となる。
【0073】
他の実施形態
(1) 上記実施形態では、ブーム下げ操作時にバイパスラインを遮断(開口面積を制御)する弁として、既存のカット弁25を利用する構成をとったが、このカット弁25とは別の弁を設け、カット弁25とは別に制御する構成をとってもよい。
【0074】
(2) 上記実施形態では、ブーム下げ操作時にカット弁25によってバイパスライン16の開口面積をブーム下げ操作量に応じて制御する構成をとったが、ブーム下げ操作時にオンオフ弁によってバイパスラインを完全に遮断するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0075】
3 ブーム
4 アーム
6 ブームシリンダ
7 アームシリンダ
9 作業アタッチメント
10 油圧ポンプ
12A ブーム用コントロールバルブであるブーム用第1コントロールバルブ
13 アーム用コントロールバルブであるアーム用第2コントロールバルブ
CB センターバイパス通路
16 センターバイパスライン
18 パラレル回路
21 操作手段としてのブーム用リモコン弁
22 操作手段としてのアーム用リモコン弁
23 ブーム下げ側パイロット圧ライン
25 カット弁
25a パイロットポート
27 カット弁用パイロットライン
28 カット弁制御手段
29 パイロット圧センサ
30 コントローラ
31 電磁比例弁
32 カット弁制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業アタッチメントのブームを駆動するブームシリンダと、アームを駆動するアームシリンダと、この両シリンダの油圧源としての油圧ポンプと、ブーム用及びアーム用両操作手段の操作に応じて上記両シリンダの作動を制御するブーム用及びアーム用両コントロールバルブとを備え、この両コントロールバルブは、ブーム用コントロールバルブを上流側としてそれぞれのセンターバイパス通路を連通させるセンターバイパスラインと、それぞれのポンプポートを並列に接続するパラレル回路とによって接続され、かつ、上記アーム用コントロールバルブのパラレル回路の入口側に、ポンプ吐出油を上記ブーム用コントロールバルブに優先的に供給するための絞りが設けられるとともに、上記センターバイパスラインの最下流側に、必要に応じてセンターバイパスラインを遮断するカット弁が設けられた油圧ショベルの油圧制御装置において、上記ブーム用コントロールバルブを、中立時及びブーム下げ操作時の双方でセンターバイパス通路が開くように構成するとともに、ブーム下げ操作時に上記センターバイパスラインを最下流側で遮断方向に制御するように構成したことを特徴とする油圧ショベルの油圧制御装置。
【請求項2】
上記ブーム下げ操作時に、カット弁制御手段により上記カット弁を遮断側に作動させてセンターバイパスラインを遮断方向に制御するように構成したことを特徴とする請求項1記載の油圧ショベルの油圧制御装置。
【請求項3】
上記カット弁制御手段は、上記カット弁の開口面積をブーム下げ操作量に応じて、大操作量で小さくなる方向に制御するように構成したことを特徴とする請求項2記載の油圧ショベルの油圧制御装置。
【請求項4】
上記ブーム用操作手段としてリモコン弁、上記ブーム用コントロールバルブとして上記リモコン弁からパイロット圧ラインを通じて供給されるパイロット圧によって操作される油圧パイロット弁、上記カット弁としてパイロットポートに加えられるパイロット圧によって制御される油圧パイロット弁をそれぞれ用い、上記リモコン弁のブーム下げ側のパイロット圧ラインを上記カット弁のパイロットポートに接続することによって上記カット弁制御手段を構成したことを特徴とする請求項3記載の油圧ショベルの油圧制御装置。
【請求項5】
上記カット弁としてパイロットポートに加えられるパイロット圧によって制御される油圧パイロット弁を用い、上記ブーム用コントロールバルブのブーム下げ操作量を検出するブーム下げ操作量検出手段と、このブーム下げ操作量検出手段によって検出されたブーム下げ操作量に応じた指令信号を出力するコントローラと、このコントローラからの指令信号に応じた二次圧を上記カット弁にパイロット圧として供給する電磁比例弁とによって上記カット弁制御手段を構成したことを特徴とする請求項3記載の油圧ショベルの油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−72610(P2012−72610A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218829(P2010−218829)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】