説明

油圧スイッチの故障検知装置

【課題】油圧スイッチの故障判定の精度を高める。
【解決手段】油圧制御弁(オンオフソレノイド弁)22からメインレギュレータバルブ11に供給される信号圧のオン/オフ切り替えで作動する油圧スイッチ30の故障検知装置であって、油圧スイッチ30の作動異常を検知した場合、油圧制御弁22による供給油圧のオン/オフ切り替えを所定回(一例として3回)繰り返す故障確認動作を実行し、当該故障確認動作の実行中に油圧スイッチ30の作動状態が正常に復帰した場合は、油圧スイッチ30を故障と断定せず、当該故障確認動作の終了後に油圧スイッチ30の作動状態が正常に復帰しなかった場合のみ、油圧スイッチ30を故障と断定するようにした。油圧スイッチ30に生じた作動異常が接点の一時的な固着など一過性のものである場合、真性の故障と誤判断することを防止できるので、不要なフェールセーフ処理を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機の油圧回路においてソレノイド弁などで供給された油圧を検出する油圧スイッチの故障を検知するための油圧スイッチの故障検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両などに搭載される自動変速機は、複数の摩擦係合要素(クラッチあるいはブレーキ)を備えており、各摩擦係合要素の締結・解放の組み合わせによって、複数の変速段を実現するようになっている。そして、自動変速機は、各摩擦係合要素に作動圧を供給するための油圧回路を備えている。この油圧回路には、摩擦要素に対する作動圧を検出するための油圧スイッチが設けられている。油圧スイッチで検出した油圧の情報は、作動圧のフィードバック制御に用いられる。
【0003】
自動変速機では、あらかじめ設定された所定の摩擦係合要素の締結に加えて、さらに他の摩擦係合要素が締結されると、同時締結によるインターロックを引き起こすおそれがある。そのため、油圧スイッチの検出結果に基づいて、油圧が供給される摩擦係合要素の組み合わせがインターロックを引き起こすと判断した場合には、インターロック回避対策として、予め定めた変速段に固定するなどのフェールセーフ処理が実行される。
【0004】
しかしながら、万一、油圧スイッチなどの電気系統が故障したときには、作動圧の適切な制御が困難になるとともに、インターロックの誤検知につながる。インターロックの誤検知により、本来不要であるフェールセーフ処理が実行されるという問題がある。このような不要なフェールセーフ処理を出来るだけ回避するには、油圧スイッチの作動状態が正常であることを確認するための手段が必要である。
【0005】
この点に関する従来技術として、特許文献1に記載のフェール検出装置がある。特許文献1のフェール検出装置は、油圧スイッチの故障を精度良く判定することを目的とした装置であり、油圧スイッチに対して油圧が発生していないことが確実な状態(エンジン始動前のイグニッションスイッチオン状態)での油圧スイッチの状態を確認することで、故障判定を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−57057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、油圧スイッチに生じた故障が接点の一時的な固着など一過性の故障である場合、油圧スイッチの故障を断定した後で正常状態に復帰する場合が少なからずあり得る。しかしながら、特許文献1に記載のフェール検出装置を備えた自動変速機では、一旦、油圧スイッチの故障と判断されると、それがたとえ一過性の故障であっても、変速段の固定などのフェールセーフ処理が実行されるという問題があった。なお、特許文献1に記載のフェール検出装置では、油圧スイッチの故障を検知すると、タイマーやカウンタにより故障が所定時間以上継続していると判定した場合に故障を断定するようになっているが、所定時間内に故障から復帰しなければ、当該故障がたとえ一過性のものであっても、故障と断定されてしまうという不都合があった。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、故障判定の精度を効果的に高めることができる油圧スイッチの故障検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、変速機の油圧回路(10)に油圧を供給するための油圧供給手段(22)と、油圧供給手段(22)による供給油圧で作動する油圧スイッチ(30)と、油圧供給手段(22)による供給油圧のオン/オフ切り替えを制御すると共に、当該供給油圧のオン/オフ切り替えに伴う油圧スイッチ(30)の作動状態に基づいて油圧スイッチ(30)の故障の有無を判断する制御手段(50)と、を備えた油圧スイッチの故障検知装置であって、制御手段(50)は、油圧スイッチ(30)の作動異常を検知した場合、油圧供給手段(22)による供給油圧のオン/オフ切り替えを所定回繰り返す故障確認動作を実行し、故障確認動作の実行中に油圧スイッチ(30)の作動状態が正常に復帰した場合は、油圧スイッチ(30)を故障と判断せず、故障確認動作の終了後に油圧スイッチ(30)の作動状態が正常に復帰しなかった場合のみ、油圧スイッチ(30)を故障と判断することを特徴とする。この場合、油圧スイッチ(30)に生じた作動異常の一態様として、油圧供給手段(22)による供給油圧のオン/オフ切り替えを行っているにも関わらず、油圧スイッチ(30)がオン又はオフのままとなる状態が挙げられる。
【0010】
本発明にかかる油圧スイッチの故障検知装置によれば、油圧スイッチの作動異常を検知した場合、所定の故障確認動作を実行し、当該故障確認動作の終了後に最終的な油圧スイッチの故障判断を行うことで、油圧スイッチの作動異常が接点の一時的な固着など一過性のものである場合、真性の故障と誤判断することを効果的に防止できる。このように、油圧スイッチの作動状態の異常を検知した場合、直ちに故障を判断せず、一過性の故障かどうかを確認してから故障を判断することで、故障判定の精度を高めることができる。また、故障確認動作によって油圧スイッチが正常に復帰した場合には故障と判断しないことで、故障による不具合を回避するための不要なフェールセーフ処理を抑制できる。
【0011】
また、上記の故障検知装置では、制御手段(50)は、故障確認動作の実行中に油圧スイッチ(30)の作動状態が正常に復帰した場合、その時点で故障確認動作を停止するとよい。これによれば、油圧スイッチの作動状態が正常に復帰した場合は、以降の故障確認動作を行わないことで、不要な故障確認動作を抑制することができる。また、変速機を通常の動作状態に迅速に復帰させることが可能となる。
なお、ここでの括弧内の符号は、後述する実施形態の対応する構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる油圧スイッチの故障検知装置によれば、油圧スイッチに生じた作動異常が一過性のものである場合、油圧スイッチを故障と誤判断することを防止できるので、油圧スイッチの故障判定の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態にかかる故障検知装置による故障検知対象の油圧スイッチを備えた油圧回路の一部を示す図である。
【図2】油圧スイッチの故障確認動作の手順(メインフロー)を示すフローチャートである。
【図3】油圧スイッチの故障確認動作の手順(サブルーチン)を示すフローチャートである。
【図4】油圧スイッチの故障確認動作を行う際の経過時間に対する動作タイマーの残量(残り時間)、油圧制御弁のオン/オフ、油圧スイッチのオン/オフ、油圧スイッチ故障判定フラグの変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、車両に搭載された自動変速機が備える油圧回路を示す図である。同図に示す油圧回路10は、本発明にかかる故障検知装置による故障検知対象である油圧スイッチ30を備えている。同図の油圧回路10は、自動変速機が備える油圧回路の全体のうち、主にトルクコンバータ40への供給油圧を制御する部分のみを示している。この油圧回路10には、オイル溜めOTから作動油を汲み上げて下流側へ送るオイルポンプOP、オイルポンプOPから供給されるライン圧を調圧するためのメインレギュレータバルブ11、トルクコンバータ40の内圧を調圧するためのTCレギュレータバルブ12、トルクコンバータ40が備えるロックアップクラッチ41の締結制御に用いるためのLCシフトバルブ13、LCコントロールバルブ14などが設けられている。オイルポンプOPは、エンジン(図示せず)の回転で駆動するギヤポンプやベーンポンプなどの容積型ポンプで、メインレギュレータバルブ11やLCコントロールバルブ14を含む油圧回路10の各部にライン圧を供給するようになっている。
【0015】
LCシフトバルブ13には、トルクコンバータ40のタービン側油室41aに連通する油路15が接続されている。また、LCシフトバルブ13に供給する信号圧のオン/オフを切り替えるための第1油圧制御弁(オンオフソレノイド弁)21が接続されている。一方、LCコントロールバルブ14には、オイルポンプOPからの作動油が流通する油路16が接続されているとともに、LCシフトバルブ13に連通する油路17が接続されている。
【0016】
オイルポンプOPからのライン圧は、第1油圧制御弁(オンオフソレノイド弁)21を介して信号圧としてLCシフトバルブ13に供給される。この際、第1油圧制御弁21によって、当該信号圧のオン/オフの切り替えが行われる。また、オイルポンプOPからのライン圧は、LCコントロールバルブ14にも供給される。
【0017】
LCシフトバルブ13でトルクコンバータ40に供給される油圧を制御することにより、トルクコンバータ40のタービン側油室41aとカバー側油室41bの油圧バランス制御が行われ、ロックアップクラッチ41の係合制御が行われる。またこのとき、LCコントロールバルブ14の切り替えで、タービン側油室41aの内圧を調整することで、ロックアップクラッチ41の係合力を調節することができる。
【0018】
また、油圧回路10には、メインレギュレータバルブ11を作動するための信号圧の供給制御を行う第2油圧制御弁(オンオフソレノイド弁)22が設けられている。第2油圧制御弁22には、オイルポンプOPからのライン圧が供給されるようになっており、供給されたライン圧を用いて油路23への油圧のオン/オフ切り替えを行うことが可能である。すなわち、第2油圧制御弁22のオン/オフ切り替えで、メインレギュレータバルブ11に対する油圧(信号圧)の供給・停止を切り替えるようになっている。また、第2油圧制御弁22は、油路24を介してLCシフトバルブ13にも繋がっており、LCシフトバルブ13に対する信号圧の供給・停止の切り替えも行えるようになっている。
【0019】
第2油圧制御弁22とメインレギュレータバルブ11とを繋ぐ油路23には、第2油圧制御弁22から供給される油圧を検知するための油圧スイッチ30が設けられている。油圧スイッチ30は、油圧によってオン/オフが切り換わる構成のスイッチであり、第2油圧制御弁22によるメインレギュレータバルブ11への信号圧の供給の有無を検知できるようになっている。本実施形態の故障検知装置は、この油圧スイッチ30の作動異常を検知した場合、当該油圧スイッチ30の故障確認動作を行うことで、その故障判定を行うものである。
【0020】
第2油圧制御弁22は、車両に搭載された電子制御ユニット(以下、「ECU」という。)50によって動作が制御されるようになっている。また、油圧スイッチ30が検知したオン/オフ信号は、ECU50に供給されるようになっている。これにより、ECU50は、第2油圧制御弁22による供給油圧のオン/オフ切り替えを制御すると共に、当該供給油圧のオン/オフ切り替えに伴う油圧スイッチ30の作動状態に基づいて、油圧スイッチ30の故障の有無を判断する制御手段として機能する。
【0021】
次に、油圧スイッチ30の故障確認処理の手順について説明する。図2は、油圧スイッチ30の故障確認処理の手順を説明するためのフローチャート(メインフロー)である。なお、ここでは、油圧スイッチ30の作動異常として、油圧スイッチ30に接点の動作不良などによるオン状態での固着が生じている場合を例に説明する。
【0022】
図2のメインフローで、まず、油圧スイッチ30の作動異常を検知したか否かを判断する(ステップST1)。ここでは、第2油圧制御弁(以下、単に「油圧制御弁」と記す。)22がオフになっており、油路23への作動油の供給が停止しているにも関わらず、油圧スイッチ30がオンになっているときに、油圧スイッチ30の作動異常が検知される。その結果、油圧スイッチ30の作動異常が検知されていない場合(NO)は、そのまま油圧スイッチ30の故障確認処理を終了する。一方、油圧スイッチ30の作動異常が検知された場合(YES)は、続けて、オイルポンプOPから供給されるライン圧が油圧制御弁22からメインレギュレータバルブ11への供給圧(信号圧)として発生可能であるか否かを判断する(ステップST2)。その結果、油圧制御弁22から供給圧(信号圧)として発生可能でなければ(NO)、油圧スイッチ20が故障していると判断し(ステップST3)、油圧スイッチ30の故障確認処理を終了する。一方、油圧制御弁22から供給圧(信号圧)として発生可能であれば(YES)、続けて、油圧スイッチ故障確認動作のサブルーチンを実行する(ステップST4)。
【0023】
図3は、油圧スイッチ故障確認動作のサブルーチンを示すフローチャートである。また、図4は、油圧スイッチ故障確認動作を行う際の経過時間に対するカウンタ(油圧スイッチ30の確認動作の実行回数を計数するカウンタ)の状態、動作タイマーの残量、油圧制御弁22のオンオフ状態、油圧スイッチ30のオンオフ状態、油圧スイッチ故障判定フラグの経時変化をそれぞれ示すグラフである。
【0024】
図3に示す油圧スイッチ故障確認動作のサブルーチンでは、まず、カウンタを確認し、カウンタ=0か否かを判断する(ステップST4−1)。その結果、カウンタ=0、すなわち今回の油圧スイッチ30の確認動作が初回であれば(YES)、カウンタに1を加算して(ステップST4−2)、動作タイマーをセットする(ステップST4−3)。動作タイマーの設定時間は、図4に示すように、油圧制御弁22のオン状態を継続する時間である油圧制御弁オン時間T1と、油圧制御弁22をオフした後、油圧スイッチ30の復帰(オフ)の有無を判定するための時間である油圧スイッチ復帰判定時間T2とを合計した時間である。このような動作タイマーをセットしたら、油圧制御弁22をオンに切り替えて作動油圧を供給する(ステップST4−4)。また、油圧制御弁オンフラグ=1とする(ステップST4−5)。
【0025】
一方、先のステップST4−1でカウンタ=0で無い場合(NO)、すなわちカウンタが1以上である場合は、油圧制御弁オン時間T1が経過しているか否かを判断する(ステップST4−6)。その結果、油圧制御弁オン時間T1の経過前であれば(NO)、油圧制御弁22をオンに切り替えて(ステップST4−4)、油路23に作動油圧を供給する。また、油圧制御弁オンフラグ=1とする(ステップST4−5)。一方、ステップST4−6で油圧制御弁オン時間T1が既に経過していれば(YES)、油圧スイッチ復帰判定時間T2が経過しているか否かを判断する(ステップST4−7)。その結果、油圧スイッチ復帰判定時間T2の経過後であれば(YES)、カウンタが閾値以上か否かを判断する(ST4−8)。なお、ここでのカウンタの閾値は、油圧スイッチ30の故障確認動作の規定回数を意味する。以下、このカウンタの閾値は、一例として3(規定回数が3回)である場合について説明する。その結果、カウンタが閾値以上、すなわち、故障確認動作が規定回数である3回に既に達している場合(YES)は、確認動作完了フラグ=1とする(ST4−9)。なお、確認動作完了フラグは、一度0から1に変更したら、一連の油圧スイッチ30の故障確認動作を行っている間は1のままとする。一方、ステップST4−8でカウンタが閾値未満、すなわち、故障確認動作がまだ規定回数である3回に達していない場合(NO)は、カウンタに1を加算して(ステップST4−10)、再度、動作タイマーをセットする(ステップST4−11)。
【0026】
そして、ステップST4−7で油圧スイッチ復帰判定時間T2の経過前である場合(NO)、又はステップST4−9で確認動作完了フラグ=1とした場合、又はステップST4−11で動作タイマーのセットを再度行った場合のいずれにおいても、その後、油圧スイッチ30がオンであるか否かを判断する(ステップST4−12)。その結果、油圧スイッチ30がオンであれば(YES)、故障判定フラグ=1として、油圧スイッチ30が故障していると判定する(ステップST4−13)。一方、油圧スイッチ30がオフであれば(NO)、故障判定フラグ=0として(ステップST4−14)、油圧スイッチ30が正常に復帰したと判定する。また、確認動作完了フラグ=1とする(ステップST4−15)。すなわち、油圧スイッチ30の正常復帰が確認されたら、その時点で故障確認動作を終了(停止)する。その後、油圧制御弁22をオフに切り替えることで、油路23への作動油圧の供給を停止する(ステップST4−16)。また、油圧制御弁オンフラグ=0とする(ステップST4−17)。
【0027】
油圧スイッチ故障確認サブルーチンが終了したら、図2のメインフローに戻り、油圧スイッチ故障確認動作が完了したか否かの判断を行う(ステップST5)。すなわち、確認動作完了フラグ=1でなければ、油圧スイッチ故障確認動作が完了していないと判断し(NO)、再度、ステップST4の油圧スイッチ故障確認サブルーチンを実行する。一方、確認動作完了フラグ=1であれば、油圧スイッチ故障確認動作が完了していると判断し(YES)、続けて、油圧スイッチ30が故障と判定されたか否かの判断を行う(ステッップST6)。その結果、故障判定フラグ=0であって、油圧スイッチ30が故障と判定されなかった場合(NO)は、油圧スイッチ30が正常に復帰しているので、そのまま処理を終了する。一方、故障判定フラグ=1であって、油圧スイッチ30が故障と判定された場合(YES)は、油圧スイッチ30が故障していると断定する(ステップST3)。
【0028】
以上説明したように、本実施形態の故障検知装置では、油圧スイッチ30の作動異常を検知した場合、油圧制御弁22による供給油圧のオン/オフ切り替えを所定回繰り返す故障確認動作を実行し、当該故障確認動作の実行中に油圧スイッチ30の作動状態が正常に復帰した場合には、油圧スイッチ30を故障と断定せず、当該故障確認動作の終了後に油圧スイッチ30の作動状態が正常に復帰しなかった場合のみ、油圧スイッチ30を故障と断定するようにした。すなわち、油圧スイッチ30の作動異常を検知した場合、所定の故障確認動作を実行し、当該故障確認動作の終了後に最終的な油圧スイッチ30の故障判断を行う。これにより、油圧スイッチ30に生じた作動状態の異常が一過性のものである場合、誤って真性の故障と判断することを防止できる。また、油圧スイッチ30に一過性の作動異常が生じた場合でも、故障確認動作によって正常に復帰した場合は故障と判断しないので、不要なフェールセーフ処理の実行を抑制できるようになる。
【0029】
また、本実施形態の故障検知装置では、故障確認動作の実行中に油圧スイッチ30の作動状態が正常に復帰した場合、その時点で故障確認動作を停止するようになっている。このように、油圧スイッチ30の作動状態が正常に復帰した場合は、以降の故障確認動作を行わないことで、不要な故障確認動作を抑制することができる。また、油圧回路10を迅速に正常な動作状態に復帰させることができる。
【0030】
上記実施形態では、故障検知対象の油圧スイッチ30として、第2油圧制御弁22とメインレギュレータバルブ11とを繋ぐ油路23に設置した油圧スイッチ30を例に挙げたが、本発明にかかる故障検知装置の故障検知対象としては、自動変速機が備える油圧回路に設置した油圧スイッチであれば、他の箇所に設置した油圧スイッチであってもよい。例えば、図示は省略するが、自動変速機が備えるクラッチやブレーキなどの摩擦係合要素に対応して設けた当該摩擦係合要素への油圧のオンオフを切り替える油圧制御弁と、その油圧供給先であるクラッチやブレーキなどの摩擦係合要素とを繋ぐ油路に設けた油圧スイッチを故障検知の対象としてもよい。
【0031】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0032】
10 油圧回路
11 メインレギュレータバルブ
12 TCレギュレータバルブ
13 LCシフトバルブ
14 LCコントロールバルブ
22 第2油圧制御弁(オンオフソレノイド弁)
30 油圧スイッチ
50 ECU(制御手段)
OP オイルポンプ
TC トルクコンバータ
LC ロックアップクラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機の油圧回路に油圧を供給するための油圧供給手段と、
前記油圧供給手段による供給油圧で作動する油圧スイッチと、
前記油圧供給手段による供給油圧のオン/オフ切り替えを制御すると共に、当該供給油圧のオン/オフ切り替えに伴う前記油圧スイッチの作動状態に基づいて前記油圧スイッチの故障の有無を判断する制御手段と、
を備えた油圧スイッチの故障検知装置であって、
前記制御手段は、前記油圧スイッチの作動異常を検知した場合、前記油圧供給手段による供給油圧のオン/オフ切り替えを所定回繰り返す故障確認動作を実行し、
前記故障確認動作の実行中に前記油圧スイッチの作動状態が正常に復帰した場合は、前記油圧スイッチを故障と判断せず、前記故障確認動作の終了後に前記油圧スイッチの作動状態が正常に復帰しなかった場合のみ、前記油圧スイッチを故障と判断する
ことを特徴とする油圧スイッチの故障検知装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記故障確認動作の実行中に前記油圧スイッチの作動状態が正常に復帰した場合、その時点で前記故障確認動作を停止する
ことを特徴とする請求項1に記載の油圧スイッチの故障検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−281343(P2010−281343A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133283(P2009−133283)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】