説明

油圧センサが取り付けられた油路形成部材

【課題】被供給部にオイルを導く油路が形成されると共に該油路の油圧を検出する油圧センサが取り付けられた油路形成部材のコスト削減を図りながら、被供給部での油圧状態の検出精度の向上を図る。
【解決手段】油圧式の走行クラッチ70にオイルを導く屈曲した油路82が形成されると共に、油圧センサ88が取り付けられた右カバー16において、油路82は、第1孔85と、該第1孔85と交差して屈曲通路部82dを構成する第2孔86とから構成される。第1孔85および第2孔86の一方の孔である第2孔86は開口端部86aを有し、開口端部86aは油圧センサ88により閉塞される。屈曲通路部82dは、油路82において走行クラッチ70の油圧室78に最も近い位置にある屈曲通路部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルが供給される被供給部にオイルを導く油路が形成されると共に、該油路の油圧を検出する油圧センサが取り付けられた油路形成部材に関する。そして、該油路形成部材は、例えば内燃機関を備える動力装置に備えられる。
【背景技術】
【0002】
内燃機関および変速機が一体化された動力装置においては、該動力装置の摺動部などの潤滑部やオイルを作動油とする油圧作動装置など、オイルが供給される被供給部にオイルを導く多数の油路が形成される。そして、該動力装置の構成部材を油路形成部材として、該油路形成部材に屈曲した油路が形成される場合、通常、該油路の一部をそれぞれ構成する第1孔および第2孔を互いに交差させることにより屈曲通路部が形成される。このとき、第1孔および第2孔の一方の孔は、油路形成部材の外面からのドリル加工により形成され、加工後に、該一方の孔において前記外面に開口している開口端部が、プラグにより閉塞される。(例えば、特許文献1参照)
また、油路形成部材には、該油路形成部材に形成された油路の油圧を検出するために、油圧センサが取り付けられることも知られている。
さらに、油路形成部材を備える動力装置の変速機が、斜板式の静油圧式無段変速機により構成されるものも知られている。(例えば、特許文献2,3参照)
【特許文献1】特開平6−117327号公報
【特許文献2】特開2005−248838号公報
【特許文献3】特開2005−263143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、被供給部に供給されるオイルの供給状態または油圧状態を検出する油圧センサは、被供給部にできる限り近接して配置することが、被供給部での油圧状態をより正確に監視するうえで好ましい。
しかしながら、油圧センサは油路に臨んでいる必要があることから、油圧センサが油路において好適な位置で油圧を検出できるようにするためには、油路に連通すると共に油圧センサを取り付けるための取付孔を油路形成部材に形成しなければならないことがある。しかしながら、このような取付孔の形成は、その加工が必要になる分、油路形成部材のコストの増加を招来する。
また、油路の開口端部を閉塞するプラグも、それ自体が部品点数を増やすことになり、さらにプラグの装着工程が必要になることから、やはりコストを増加させる原因になる。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、請求項1〜3記載の発明は、被供給部にオイルを導く油路が形成されると共に該油路の油圧を検出する油圧センサが取り付けられた油路形成部材のコスト削減を図りながら、被供給部での油圧状態の検出精度の向上を図ることを目的とする。そして、請求項2記載の発明は、さらに、油圧作動装置での油圧状態の検出精度および検出応答性の向上を図ると共に、油圧作動装置の作動状態の監視精度の向上を図ることを目的とし、請求項3記載の発明は、さらに、被供給部での油圧状態の検出応答性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、被供給部(70)にオイルを導く屈曲した油路(82)が形成されると共に、前記油路(82)の油圧を検出する油圧センサ(88)が取り付けられた油路形成部材(16)において、前記油路(82)は、第1孔(85)と、前記第1孔(85)と交差して屈曲通路部(82d)を構成する第2孔(86)とから構成され、前記第1孔(85)および前記第2孔(86)の一方の孔(86)は開口端部(86a)を有し、前記開口端部(86a)は前記油圧センサ(88)により閉塞され、前記屈曲通路部(82d)は、前記油路(82)において前記被供給部(70)に最も近い位置にある屈曲通路部である油路形成部材(16)である。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の油路形成部材(16)において、前記油路(82)は、前記被供給部(70)である油圧作動装置(70)に対して作動油としてのオイルを給排する通路であり、前記第1孔(85)は、前記油路(82)において前記油圧作動装置(70)に最も近い末端通路(82e)を構成し、前記第2孔(86)は、直線状の前記一方の孔(86)であるものである。
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の油路形成部材(16)において、前記油圧センサ(88)は、前記屈曲通路部(82d)内に配置されるものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、屈曲した油路を構成すべく油路形成部材に形成された第1,第2孔において、互いに交差して屈曲通路部を構成する第1,第2孔のうちの一方の孔の開口端部を塞ぐために、該油路の油圧を検出する油圧センサが使用される。この結果、前記一方の孔の開口端部を塞ぐ専用のプラグが不要になって、油圧センサが取り付けられた油路形成部材のコストが削減される。
また、油圧センサは、被供給部にオイルを導く油路を構成する前記一方の孔を利用して取り付けられることから、油圧センサを取り付けるための専用の孔を形成する必要がないので、油路形成部材のコストが削減される。しかも、油圧センサが油圧を検出する部位は、油路形成部材に形成される油路において、被供給部に最も近い屈曲通路部であるので、被供給部に近い位置での油圧を検出することが可能になり、被供給部での油圧状態の検出精度を向上させることができる。
請求項2記載の事項によれば、油圧センサは、直線状の第2孔に取り付けられていることから、油路において第2孔により構成される通路の延長上に位置する。このため、油圧作動装置に高油圧の作動油が供給されるときには、第2孔から第1孔を流れて油圧作動装置に達する高油圧の作動油の油圧を迅速に検出することができる一方、油圧作動装置から作動油が排出されるときには、油圧センサは、第1孔から第2孔に向かって流れる作動油の動圧の影響を受けにくいので、作動油が油圧作動装置から排出されるときの油圧の検出精度が向上する。また、油圧センサは、第1,第2孔が交差する部分である屈曲通路部での油圧を検出すること、および、第1孔は、油路において油圧作動装置に最も近い末端通路を構成することから、作動油の給排による油圧作動装置での油圧変化を迅速に検出することができるので、屈曲通路部での油圧を検出する油圧センサによる油圧作動装置での油圧状態の検出応答性が向上する。
この結果、油圧作動装置での油圧状態の検出精度および検出応答性が向上して、油圧作動装置の作動状態の監視精度が向上する。
請求項3記載の事項によれば、油圧センサは、第1,第2孔が交差する部分である屈曲通路部内に配置されるので、屈曲通路部での油圧を屈曲通路部内で直ちに検出することができる。この結果、被供給部での油圧変化をより迅速に検出することができて、被供給部での油圧状態の検出応答性が向上する。
また、被供給部が油圧作動装置である場合には、油圧作動装置に対して供給および排出される作動油の油圧変化を迅速に検出することができて、油圧作動装置での油圧状態の検出応答性が向上し、ひいては油圧作動装置の作動状態の監視精度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図1〜図4を参照して説明する。
図1を参照すると、この実施形態において、本発明が適用された油路形成部材は動力装置Pに備えられ、該動力装置Pは車両としての自動二輪車Vに備えられる。
なお、実施形態において、左右方向および前後方向は、動力装置Pが搭載される自動二輪車Vの左右方向および前後方向にそれぞれ一致し、また上下方向は鉛直方向である。
軸方向とは、後述する各回転軸に関して、その回転中心線の方向である。そして、内燃機関Eに備えられるクランク軸33(図3参照)の軸方向は、この実施形態では左右方向に一致する。そして、右方および左方の一方をクランク軸33の軸方向の一方向とするとき、右方および左方の他方はクランク軸33の軸方向の他方向である。
【0008】
自動二輪車Vは、ヘッドパイプ1、メインフレーム2およびダウンチューブ3を有する車体フレームFと、車体フレームFに支持される動力装置Pと、ヘッドパイプ1に操向可能に支持されるフロントフォーク4に軸支される前輪6と、メインフレーム2に揺動可能に支持されたスイングアーム5に軸支される後輪7と、車体フレームFに支持される燃料タンク8および乗員用のシート9とを備える。そして、動力装置Pは、自動二輪車Vにおいて乗員用のシート9よりも下方に配置される。
【0009】
併せて図2,図3を参照すると、動力装置Pは、水冷式の多気筒4ストローク内燃機関である内燃機関Eと、クランク軸33からの動力が入力される変速機60(図3参照)を備える変速装置Mとを備えると共に、内燃機関Eおよび変速装置Mが一体化された装置であり、駆動対象としての後輪7を駆動する動力を出力する。
クランク軸33が車幅方向に指向する横置き配置で車体フレームFに支持される内燃機関Eは、前バンクB1および後バンクB2を有するV型内燃機関である。変速機60は、油圧ポンプ61および油圧モータ62を備える静油圧式の無段変速機である。
そして、内燃機関Eが発生する動力は、変速装置Mに入力された後、変速装置Mの動力取出軸91から、該動力取出軸91にユニバーサルジョイント141 により連結されると共にスイングアーム5内に収容されたドライブ軸142 を備える終伝達機構140 を介して駆動輪としての後輪7に伝達される。
【0010】
内燃機関Eは、V字形の1対のバンクB1,B2を構成するように配列された複数の、この実施形態では2つのシリンダ10aを有するシリンダブロック10と、各バンクB1,B2のシリンダ10aの上端部に結合される1対のシリンダヘッド11と、各シリンダヘッド11の上端部に結合される1対のシリンダヘッドカバー12と、シリンダブロック10の下端部に結合されるクランクケース13とから構成される機関本体を備える。
なお、各バンクB1,B2でのシリンダ10a、シリンダヘッド11およびシリンダヘッドカバー12が関わる構造は、両バンクB1,B2において基本的に同一であるため、以下では、主に後バンクB2の構造を参照して説明する。
【0011】
図2,図3を参照すると、シリンダヘッド11には、シリンダ軸線方向でピストン20に対向する燃焼室21と、シリンダヘッド11に接続されるスロットルボディ22aを有する吸気装置22からの吸入空気と燃料噴射弁(図示されず)からの燃料との混合気を燃焼室21に導く吸気ポート24と、シリンダヘッド11に接続される排気管23aを有する排気装置23に燃焼室21からの排気ガスを導く排気ポート25と、燃焼室21に臨む点火栓26と、吸気ポート24および排気ポート25をそれぞれ開閉する吸気弁27および排気弁28とが設けられる。
【0012】
吸気弁27および排気弁28を開閉する動弁装置30は、動弁カム30bを有するカム軸30aと、吸気弁27および排気弁28に当接すると共に動弁カム30bにより駆動されて揺動するロッカアーム30c,30dとを備える。動弁カム30bは、ロッカ軸30e,30fに揺動可能にそれぞれ支持されるロッカアーム30c,30dを介して吸気弁27および排気弁28を開閉する。
クランク軸33のトルクによりカム軸30aを回転駆動する動弁用伝動機構31は、クランク軸33の両軸端部33a,33bに設けられた駆動スプロケット31aと、カム軸30aに設けられたカムスプロケット31bと、両スプロケット31a,31bに掛け渡されたチェーン31cとを備える。
【0013】
クランクケース13は、車幅方向(左右方向でもある。)に複数に分割されるケース部分である1対のケース半体13a,13bが結合されて構成される左右割りのクランクケースである。各ピストン20にコンロッド32を介して連結されるクランク軸33は、クランクケース13により形成されるクランク室34内に収容されると共に、両ケース半体13a,13bにそれぞれ1対の主軸受35を介して回転可能に支持される。クランクケース13の一部は、変速装置MのミッションケースMcを構成する。
【0014】
また、内燃機関Eは、左右のケース半体13a,13bに、多数のボルトによりそれぞれ結合される1対のカバー14,15を備える。
そして、クランク軸33において、クランク室34内から左方に突出する一方の軸端部33aは、左ケース半体13aおよび左カバー14により形成される左室である伝動室36内に延びており、クランク室34内から右方に突出する他方の軸端部33bは、右ケース半体13bおよび右カバー15により形成される右室である補機室37内に延びている。軸端部33aには、変速装置Mの入力側伝達機構50とオイルポンプ40を駆動する伝動機構41のチェーン41cが巻き掛けられる駆動スプロケット41aとが設けられ、軸端部33bには交流発電機42が設けられる。変速装置M、オイルポンプ40および交流発電機42は、いずれもクランク軸33のトルクにより駆動される被動装置である。
【0015】
変速装置Mは、クランク軸33のトルクにより回転駆動される変速機60と、クランク軸33のトルクを変速機60に入力する入力側伝達機構50と、変速機60から出力されたトルクが入力される出力側伝達機構Tと、変速機60および両伝達機構50,Tが収容されるミッション室38を形成するミッションケースMcとを備える。
【0016】
そして、内燃機関Eが発生するトルク(または動力)は、機関出力軸であるクランク軸33から、入力側伝達機構50、変速機60、出力側伝達機構Tおよび終伝達機構140 (図1参照)により形成されるトルク伝達経路(以下、「トルク伝達経路」という。)を経て後輪7(図1参照)に伝達される。このトルク伝達経路は、変速機60を境に、クランク軸33と変速機60との間の入力側トルク伝達経路と、変速機60自体と、変速機60と後輪7との間の出力側トルク伝達経路とから構成される。それゆえ、入力側トルク伝達経路は入力側伝達機構50により形成され、出力側トルク伝達経路は、出力側伝達機構Tと、該出力側伝達機構Tからのトルクが入力される終伝達機構140 とにより形成される。
【0017】
ミッションケースMcは、1対のケース半体13a,13bと、左ミッションカバーを兼ねる左カバー14と、右ケース半体13bに結合される右ミッションカバーである右カバー16と、左ケース半体13aの後部に軸受ハウジング96と共に結合されるカバーであるギヤカバー17とを備える。そして、ミッション室38を構成する第1,第2伝動室36,37のうち、変速機60と、入力側伝達機構50と、走行クラッチ70などの一部を除く出力側伝達機構Tの大部分とが配置される第1伝動室36は、両ケース半体13a,13bおよび左カバー14により形成され、走行クラッチ70が配置されるクラッチ室としての第2伝動室37は、右ケース半体13bおよび右カバー16により形成される。
ここで、クランクケース13、左カバー14、両右カバー15,16およびギヤカバー17は、動力装置Pの動力ケースを構成する。
【0018】
入力側伝達機構50は、クランク軸33のトルクを変速機60に伝達するギヤ機構51,52と、入力側トルク伝達経路に発生する過大トルクを吸収する入力側トルクダンパ54とを備える。
前記ギヤ機構51,52は、軸端部33aにスプライン嵌合されたカラー53と該カラー53にスプライン嵌合された入力カム部材55とから構成される伝達機構を介してクランク軸33に結合される駆動ギヤ51と、変速機60の入力回転体としてのポンプハウジング61aに一体に回転するように設けられた被動ギヤ52とから構成される。駆動ギヤ51は、カラー53に回転可能に支持され、該カラー53を介して軸端部33aに設けられる。
【0019】
カム式のトルクダンパ54は、軸端部33aに対して軸方向に移動可能な入力部材としての入力カム部材55と、入力カム部材55と係合してクランク軸33のトルクが入力カム部材55を介して入力される出力部材としての出力カム部材である駆動ギヤ51と、入力カム部材55を駆動ギヤ51に当接させるように軸方向に付勢する付勢部材としてのダンパバネ56とから構成される。複数の皿バネからなるダンパバネ56は、カラー53に保持されるバネ受け57と入力カム部材55との間に配置される。入力カム部材55は入力カム部55aを有し、駆動ギヤ51は出力カム部51aを有する。入力カム部55aおよび出力カム部51aは、互いに、ダンパバネ56の付勢力により軸方向および周方向で当接すると共に、周方向に相対的に摺動可能である。
【0020】
そして、トルクダンパ54は、入力カム部材55および駆動ギヤ51間で、予め設定された第1設定トルク以下のトルクが作用するとき、入力カム部材55および駆動ギヤ51を一体に回転させ、自動二輪車V(図1参照)または内燃機関Eの減速時など、例えば自動二輪車Vのエンジンブレーキ時に、該第1設定トルクを超える過大トルクが作用するとき、入力カム部材55と駆動ギヤ51との間に周方向での滑りが生じて、出力カム部51aにより駆動される入力カム部材55がダンパバネ56の付勢力に抗して軸方向に移動しながら、入力カム部材55と駆動ギヤ51とが互いに相対回転することにより該過大トルクを吸収する。
【0021】
変速機60は、特許文献3,4に開示された変速機と同様のものであり、斜板式の油圧ポンプ61と、斜板式の油圧モータ62と、油圧ポンプ61と油圧モータ62との間での作動油の流れを制御する弁機構63と、出力回転体としての変速機出力軸64と、変速機出力軸64の停止および回転を切り換える発進クラッチとしての入力側クラッチ65とを備える。
【0022】
油圧ポンプ61は、左カバー14に軸受66を介して回転可能に支持されるポンプハウジング61aと、ポンプハウジング61aに収容されたポンプ斜板61bと、ポンプ斜板61bに軸方向で対向して配置されるポンプボディ61cと、ポンプボディ61cに往復動可能に嵌合すると共にポンプ斜板61bにより駆動されて作動油の吸入および吐出を行う複数のポンププランジャ61dとを備える。
【0023】
油圧モータ62は、右ケース半体13bに固定されるモータハウジング62aと、モータハウジング62aに形成された球面状の支持面に揺動可能に支持される支持部材62eと、支持部材62eに回転可能に支持されるモータ斜板62bと、モータ斜板62bに軸方向で対向して配置されるモータボディ62cと、モータボディ62cに往復動可能に嵌合すると共に油圧ポンプ61から吐出された作動油により駆動される複数のモータプランジャ62dと、支持部材62eを駆動するアクチュエータとしての電動モータ67とを備える。支持部材62eが電動モータ67により駆動されて揺動することにより、モータ斜板62bの傾斜角度が変更されて、クランク軸33の回転速度に対する変速機出力軸64の回転速度が変更されて、クランク軸33の回転速度が変速される。
【0024】
軸方向で油圧ポンプ61と油圧モータ62との間に設けられる弁機構63は、オイルポンプ40から吐出されて右カバー16に形成された油路から変速機出力軸64に形成された油路68を経て供給されるオイルである作動油の流れおよび油圧ポンプ61と油圧モータ62との間の作動油の流れを制御する複数のスプール63aと、それらスプール63aの位置をポンプハウジング61aの回転位置に応じて制御する制御リング63bとを備える。
モータボディ62cにスプライン嵌合する変速機出力軸64は、ポンプハウジング61a、モータハウジング62aおよび右カバー16にそれぞれ軸受69a,69b,69cを介して回転可能に支持され、クランク軸の回転中心線L1と平行な回転中心線L2を有する。また、後述する出力軸72、中間軸90の各回転中心線L3,L4は、両回転中心線L1,L2に平行である。
【0025】
変速機60において軸方向で左カバー14寄りの端部に配置されるクラッチ65は、被動ギヤ52から変速機出力軸64へのトルクの伝達および遮断を行う。クラッチ65は、ポンプハウジング61aと一体に回転する入力部材65aと、入力部材65aに支持されると共に入力部材65aの回転速度に応じて発生する遠心力により入力部材65aに案内されて径方向に移動可能な遠心ウエイト65bと、遠心ウエイト65bの位置に応じて軸方向に移動可能であると共に入力部材65aと一体に回転する出力部材65cと、入力部材65aと出力部材65cとの間に配置されて出力部材65cを介して遠心ウエイト65bを入力部材65aに押し付けるクラッチバネ65eとを備える。
出力部材65cは、変速機出力軸64をスリーブとしてスプール弁を構成するスプール65dを有する。
【0026】
内燃機関Eの機関回転速度がアイドリング速度以下のとき、クラッチ65は図3に示されるトルク遮断位置にある。このとき、スプール65dにより、油圧ポンプ61から吐出された作動油は油圧モータ62を回転させることなく油圧ポンプ61に戻る。また、機関回転速度がアイドリング速度を超えるとき、スプール65dは遠心力により径方向外方に移動する遠心ウエイト65bにより駆動されて右方に移動し、クラッチ65はトルク伝達位置を占める。このトルク伝達位置で、油圧ポンプ61から吐出された作動油が油圧モータ62に流入して油圧モータ62が回転駆動され、クランク軸33のトルクが変速機出力軸64に伝達される。そして、アイドリング速度を超える機関回転速度領域で、モータ斜板62bの傾斜角度に応じて変速された回転速度で変速機出力軸64が回転する。
【0027】
出力側伝達機構Tは、変速機出力軸64に設けられて該変速機出力軸64と一体に回転する出力ギヤ64oにより構成される入力機構Tiと、変速機60から後輪7へのトルクの伝達および遮断を行うことによりドライブ位置およびニュートラル位置の切換を行う出力側クラッチとしての走行クラッチ70と、走行クラッチ70を介して伝達された変速機60からのトルクを終伝達機構140 (図1参照)に伝達する伝達機構である出力機構Toとを備える。
【0028】
出力回転体としての出力ギヤ64oは、変速機出力軸64において軸受69bから右方に突出して第2伝動室37内に延びている軸端部64aにスプライン嵌合すると共に、走行クラッチ70の入力ギヤ71と噛合する。
【0029】
図3,図4を参照すると、油圧式の多板摩擦式クラッチである走行クラッチ70は、右ケース半体13bおよび右カバー16に軸受72a,72bを介して回転可能に支持される出力部材としての出力軸72と、出力軸72に回転可能に支持されると共に入力軸としての変速機出力軸64からのトルクが出力ギヤ64oを介して入力される入力部材としての入力ギヤ71と、入力ギヤ71と一体に回転する複数の第1クラッチ板73と、第1クラッチ板73と交互に積層される複数の第2クラッチ板74と、第2クラッチ板74と一体に回転すると共に出力軸72にスプライン嵌合して一体に回転する中間部材としてのハウジング75と、接続状態にある第1,第2クラッチ73,74を介して伝達された入力ギヤ71からのトルクを出力軸72に伝達可能なハウジング75に往復動可能に嵌合すると共に第1,第2クラッチ板73,74が互いに接触するように押圧可能な押圧部材である押圧ピストン76と、第1,第2クラッチ板73,74が離隔するように押圧ピストン76を付勢するクラッチバネ77とを備える。
【0030】
油圧により作動する油圧作動装置としての走行クラッチ70には、ハウジング75と押圧ピストン76とにより、押圧ピストン76を駆動する作動油が導かれる油圧室78が形成される。該作動油は、伝動機構41により駆動されるオイルポンプ40(図2参照)から吐出されたオイルの一部である。
【0031】
油圧室78の油圧は、油圧室78に対するオイルの給排を制御する油圧制御装置により制御される。該油圧制御装置は、右カバー16に設けられて変速位置操作部材の操作に応じて制御装置により制御される油圧制御弁79と、油圧制御弁79により制御されたオイルが流れる油路系統とから構成される。
油圧室78へのオイルの供給および油圧室78からのオイルの排出のための通路である前記油路系統は、右カバー16の一部を弁ボディ79aとする油圧制御弁79にシールプレート79bを介して接続される接続部材80に形成された油路81と、油路81に連なると共に右カバー16に形成された油路82と、油路82と油圧室78とを連通させる油路83とから構成される。
【0032】
単一の部材であると共に変速装置Mにおいて不動の部材である油路形成部材としての右カバー16に形成される油路82は、1以上の屈曲通路部、ここでは2つの屈曲通路部82b,82dを有する屈曲した油路である。油路82は、軸方向に平行に直線状に延びている第1孔85と、第1孔85に平行に直線状に延びている第3孔87と、第1孔85および第3孔87と交差するように直線状に延びている第2孔86とから構成される。これら第1〜第3孔85〜87は、機械加工としてのドリルによる孔加工により形成される。
【0033】
第1孔85は、右カバー16の内面16iからの加工により形成され、第2孔86は、右カバー16の外面16oからの加工により形成され、第3孔87は、内面16iの一部であって接続部材90と合わせられる合わせ面16iaからの加工により形成される。このため、第1〜第3孔85〜87は、ドリル加工による形成開始端部としての開口端部85a〜87aをそれぞれ有し、それら開口端部85a〜87aは、右カバー16の表面を構成する内面16iまたは外面16oに開口する。
また、第1孔85は、第2,第3孔86,87に比べて孔の長さが著しく短く、該孔85に構成される通路部82eは、第1孔85の径(すなわち、円形の横断面形の直径)以下の通路長である。
【0034】
第1孔85、第2孔86および第3孔87から構成されて第2孔86の開口端部86aがプラグを兼ねる油圧センサ88により閉塞されて形成される油路82において、第1孔85は油圧室78に最も近い末端通路としての直線状の通路部82eを構成し、第3孔87は油圧制御弁79に最も近い始端通路としての直線状の通路部82aを構成し、第2孔86は第1,第3孔85,87を連通させるための中間通路としての直線状の通路部82cを構成し、第1孔85と第2孔86とが互いに交差する部分により第1屈曲通路部82dが構成され、第2孔86と第3孔87とが互いに交差する部分により第2屈曲通路部82bが構成される。それゆえ、屈曲通路部82dは、油路82において油圧室78に最も近い位置にある屈曲通路部である。
【0035】
また、右カバー16には、走行クラッチ70での油圧状態を検出することにより、走行クラッチ70の作動状態を監視するために、前記油路系統の油圧を検出する油圧センサ88が取り付けられる。油圧センサ88は、屈曲通路部82dに臨んで配置されて、油路82のうちの屈曲通路部82dでの油圧を検出する。
具体的には、油圧センサ88は開口端部86aにねじ込まれて挿入される挿入部88aし、挿入部88aには、屈曲通路部82dに臨む検知部としての検出孔88bが設けられる。そして、油圧センサ88は、検出孔88bを通じて流入するオイルの油圧を検出する。検出孔88bは、第2孔86と平行に、かつ同心に形成され、さらに屈曲通路部82d内に開口する。このため、第2孔86の開口端部86aは油圧センサ88により油密に閉塞される。それゆえ、第2孔86は、互いに交差することにより屈曲通路部82dを構成する第1孔85および第2孔86のうちの一方の孔である。
【0036】
そして、油圧制御弁79により制御された高油圧のオイルが油圧室78に供給されるときには、通路部82c(または第2孔86)から通路部82e(または第1孔85)に向かうオイルが検出孔88bに入りやすく、したがって油圧を検出しやすくなることから、油圧の検出が迅速に行われる一方、油圧制御弁79により制御されて油圧室78内のオイルが排出されるときには、通路部82e(または第1孔85)から通路部82c(または第2孔86)に向かうオイルは検出孔88bに流入しにくくなるので、油圧センサ88が通路部82eから通路部82cに向かうオイルの動圧の影響を受けにくくなる。
【0037】
油路83は、通路部82eに開口する油路83aと、油路83aを介して通路部82eに連通すると共に油圧室78に開口する油路83bとから構成される。油路83aは、右カバー16とは別個の部材であると共に保持部材89aおよび回止め89bによりカバー16に取り付けられた導管89cにより形成される。また、油路83bは、可動部材である出力軸72と、出力軸72と一体に回転するハウジング75とに形成された孔または溝により構成される。
【0038】
このような走行クラッチ70において、油圧室78に高油圧のオイルが供給されて油圧室78が高油圧になると、クラッチバネ77の弾発力に抗して押圧ピストン76が第1,第2クラッチ板73,74を押し付けて、両クラッチ板73,74の間の摩擦により入力ギヤ71とハウジング75とが一体に回転する接続状態になり、変速機出力軸64のトルクが両ギヤ64o,71を通じて出力軸72に伝達される。一方、油圧室78の作動油が排出されて油圧室78が低油圧になると、クラッチバネ77の弾発力により両クラッチ板73,74が離隔して入力ギヤ71とハウジング75との間でトルクの伝達が遮断される切断状態になり、変速機出力軸64のトルクの出力軸72への伝達が遮断される。このようにして、油路81,82,83を通じて油圧室78に対するオイルの給排が制御されて、走行クラッチ70の切断および接続が制御される。
【0039】
図3を参照すると、前記出力機構Toは、駆動回転軸としての出力軸72により回転駆動される被動回転軸としての第1動力取出軸である中間軸90と、中間軸90により回転駆動されると共にドライブ軸142 (図1参照)を回転駆動する被動回転軸としての第2動力取出軸91と、出力側トルク伝達経路において出力軸72と中間軸90との間に配置されて出力軸72のトルクを中間軸90に入力する第1伝達機構と、出力側トルク伝達経路において中間軸90と動力取出軸91との間に配置されて中間軸90のトルクを動力取出軸91に入力する第2伝達機構と、出力側トルク伝達経路において変速機60と動力取出軸91との間に配置されて出力側トルク伝達経路に発生する過大トルクを吸収する出力側トルクダンパ100 とを備える。
【0040】
前記第1伝達機構は、出力軸72と一体に回転する駆動回転体としての駆動ギヤ92と、該駆動ギヤ92と噛合すると共に出力軸72のトルクを中間軸90に入力する入力回転体としての被動ギヤ93とから構成される。被動ギヤ93は、トルクダンパ100 の入力カム部材101 にスプライン嵌合して一体に回転するように設けられていて、トルクダンパ100 を介して中間軸90に結合される。
【0041】
中間軸90は、右方の軸部分において、右ケース半体13bに入力カム部材101 および軸受94を介して回転可能に支持され、左方の軸部分において、左ケース半体13aに軸受95および該左ケース半体13aに結合される軸受ハウジング96を介して支持される。
中間軸90において、軸受94から右方に突出する軸端部には、入力カム部材101 を介して被動ギヤ93が配置され、軸受95から左方に突出する軸端部には、駆動ギヤ97が一体成形されて配置される。
【0042】
カム式のトルクダンパ100 は、中間軸90に回転可能に支持されると共に出力軸72のトルクが入力される入力部材としての入力カム部材101 と、入力カム部材101 と係合して入力カム部材101 からのトルクを中間軸90に伝達する出力部材としての出力部材としての出力カム部材102 と、出力カム部材102 を入力カム部材101 に当接させるように軸方向に付勢する付勢部材としてのダンパバネ103 とを有する。コイルバネからなるダンパバネ103 は、軸受95の固定部材でもあるバネ受け95aと出力カム部材102 との間に配置される。
入力カム部材101 は中間軸90に回転可能に支持されるので、被動ギヤ93も中間軸90に回転可能に支持される。
【0043】
入力カム部材101 が有する入力カム部101aと出力カム部材102 が有する出力カム部102aは、互いに、ダンパバネ103 の付勢力により軸方向および周方向で当接すると共に、周方向に相対的に摺動可能である。そして、トルクダンパ100 は、両カム部材101 ,102 間に前記第2設定トルク以下のトルクが作用するとき、入力カム部材101 および出力カム部材102 を一体に回転させ、自動二輪車V(図1参照)または内燃機関Eの減速時など、例えば自動二輪車Vのエンジンブレーキ時に、該第2設定トルクを超える過大トルクが作用するとき、入力カム部材101 と出力カム部材102 との間に回転方向での滑りが生じて、出力カム部材102 が入力カム部材101 により駆動されてダンパバネ103 の付勢力に抗して軸方向に移動しながら、入力カム部材101 と出力カム部材102 とが互いに相対回転することにより該過大トルクを吸収する。
【0044】
前記第2伝達機構は、ベベルギヤからなる駆動ギヤ97と、該駆動ギヤ97と噛合すると共に動力取出軸91に一体成形されて設けられたベベルギヤからなる被動ギヤ98とから構成される。
動力取出軸91は、左ケース半体13aに結合されるギヤカバー17内に配置され、1対の軸受99a,99bを介して回転可能に支持される。また、ギヤカバー17には、被動ギヤ98の回転位置を検出する回転位置センサ19が設けられ、該センサ19の検出信号に基づいて車速が検出される。
【0045】
図2,図3を参照すると、車幅方向(クランク軸33の軸方向でもある。)での動力装置Pの一側壁を構成する左ケース半体13aと左カバー14とギヤカバー17(以下、「左ケース半体13a、左カバー14およびギヤカバー17」の全体を、必要に応じて「側部カバー」という。)の大部分が、動力装置Pの外側で所定方向としての左方から外装カバーC1により覆われ、車幅方向での動力装置Pの別の一側壁を構成する右ケース半体13bと右カバー16の大部分が、動力装置Pの外側である右方から外装カバーC2により覆われる。合成樹脂により形成される両外装カバーC1,C2は、動力装置Pの外観性を向上させると共に、動力装置Pが発生する放射音を低減するカバー部材としての遮音カバーである。
【0046】
外装カバーC1は、複数としての3つの取付部111 においてボルト110 により左ケース半体13a、左カバー14およびギヤカバー17に設けられた取付座112 (図3には、左ケース半体13aに設けられた取付座112 が示されている。)に固定される。外装カバーC1は、左カバー14の下縁部を除いて左カバー14のほぼ全体と、ギヤカバー17の全体を左方から覆う。
【0047】
左右方向での間隔が形成されるように配置される側部カバーと外装カバーC1との間には、空間Sが形成される。
外装カバーC1には、放射音を低減するために、発泡材料(例えばウレタンフォーム)からなる吸音材115 が、空間Sに面する内面に沿って配置される。
そして、空間Sには、放射音の特定周波数で共鳴するレゾネータ120 が、吸音材115 と前記側部カバーとの間に配置される。レゾネータ120 は首部126 により形成される開口部127 により空間Sと連通する。
【0048】
次に、前述のように構成された実施形態の作用および効果について説明する。
油圧式の走行クラッチ70にオイルを導く屈曲した油路82が形成されると共に、油圧センサ88が取り付けられた右カバー16において、油路82は、第1孔85と、該第1孔85と交差して屈曲通路部82dを構成する第2孔86とから構成され、第1孔85および第2孔86の一方の孔である第2孔86は開口端部86aを有し、開口端部86aは油圧センサ88により閉塞され、該屈曲通路部82dは、油路82において走行クラッチ70の油圧室78に最も近い位置にある屈曲通路部であることにより、屈曲した油路82を構成すべく右カバー16に形成された第1,第2孔85,86において、互いに交差して屈曲通路部82dを構成する第2孔86の開口端部86aを塞ぐために、該油路82の油圧を検出する油圧センサ88が使用される。この結果、第2孔86の開口端部86aを塞ぐ専用のプラグが不要になって、油圧センサ88が取り付けられた右カバー16のコストが削減される。
また、油圧センサ88は、被供給部である走行クラッチ70にオイルを導く油路82を構成する第2孔86を利用して取り付けられることから、油圧センサ88を取り付けるための専用の孔を形成する必要がないので、右カバー16のコストが削減される。しかも、油圧センサ88が油圧を検出する部位は、右カバー16に形成される油路82において、オイルが供給される走行クラッチ70に最も近い屈曲通路部82dであるので、走行クラッチ70に近い位置での油圧を検出することが可能になり、走行クラッチ70での油圧状態の検出精度を向上させることができる。
【0049】
油路82は、油圧作動装置である走行クラッチ70に対して作動油としてのオイルを給排する通路であり、第1孔85は、油路82において走行クラッチ70に最も近い末端通路を構成し、開口端部86aを有する第2孔86は直線状のであることにより、油圧センサ88は、直線状の第2孔86に取り付けられていることから、油路82において第2孔86により構成される通路である通路部82cの延長上に位置する。このため、走行クラッチ70に高油圧の作動油が供給されるときには、第2孔86から第1孔85を流れて走行クラッチ70に達する高油圧の作動油の油圧を迅速に検出することができる一方、走行クラッチ70から作動油が排出されるときには、油圧センサ88は、第1孔85から第2孔86に向かって流れる作動油の動圧の影響を受けにくいので、作動油が走行クラッチ70から排出されるときの油圧の検出精度が向上する。また、油圧センサ88は、第1,第2孔85,86が交差する部分である屈曲通路部82dでの油圧を検出すること、および、第1孔85は、油路82において走行クラッチ70に最も近い末端通路を構成することから、作動油の給排による走行クラッチ70での油圧変化を迅速に検出することができるので、屈曲通路部82dでの油圧を検出する油圧センサ88による走行クラッチ70での油圧状態の検出応答性が向上する。
この結果、走行クラッチ70での油圧状態の検出精度および検出応答性が向上して、走行クラッチ70の作動状態の監視精度が向上する。
【0050】
油圧センサ88は、屈曲通路部82d内に配置されることにより、屈曲通路部82dでの油圧を屈曲通路部82d内で直ちに検出することができる。この結果、走行クラッチ70での油圧変化をより迅速に検出することができて、走行クラッチ70での油圧状態の検出応答性が向上し、ひいては走行クラッチ70の作動状態の監視精度が向上する。
【0051】
以下、前述した実施形態の一部が変更された形態について、変更された部分を中心に説明する。
油路は、1つのみの屈曲通路部82b,82dを有する油路であってもよく、その場合には、該屈曲通路部82b,82dが、油路において被供給部としての走行クラッチ70に最も近い位置にあることになる。
油路において、第1孔85,86,87が右カバーの外面からのドリル加工により形成され、該第1孔85,86,87の開口端部85a,86a,87aに油圧センサ88により閉塞されてもよい。この場合、第2孔85,86,87の開口端部85a,86a,87aはプラグにより閉塞されることになる。
被供給部は、走行クラッチ70以外の油圧作動装置であってもよく、また潤滑のためにオイルが供給される潤滑箇所であってもよい。
駆動対象を駆動する動力装置Pは、前記実施形態のように内燃機関Eと変速装置とが一体化された装置である必要はなく、内燃機関のみまたは変速装置のみで構成されてもよく、さらに内燃機関以外の機関で構成されてもよい。
【0052】
内燃機関は、V型2気筒以外の多気筒内燃機関、または単気筒内燃機関であってもよい。また、変速機は、斜板式以外の静油圧式無段変速機、油圧式以外の無段変速機、または無段変速機以外の変速機であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明が適用された遮音構造体を備える自動二輪車の要部左側面図である。
【図2】図1の自動二輪車が備える動力装置の要部側面図である。
【図3】(a)は、図2のIII−III線断面図であり、(b)は、(a)のb部分の拡大図ある。
【図4】図3の動力装置の走行クラッチ付近の拡大図である。
【符号の説明】
【0054】
13…クランクケース、14…左カバー、33…クランク軸、60…変速機、61…油圧ポンプ、62…油圧モータ、70…走行クラッチ、78…油圧室、81〜83…油路、82b,82d…屈曲通路部、85,86,87…孔、85a,86a,87a…開口端部、88…油圧センサ、
V…自動二輪車、P…動力装置、E…内燃機関、M…変速装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被供給部にオイルを導く屈曲した油路が形成されると共に、前記油路の油圧を検出する油圧センサが取り付けられた油路形成部材において、
前記油路は、第1孔と、前記第1孔と交差して屈曲通路部を構成する第2孔とから構成され、
前記第1孔および前記第2孔の一方の孔は開口端部を有し、前記開口端部は前記油圧センサにより閉塞され、
前記屈曲通路部は、前記油路において前記被供給部に最も近い位置にある屈曲通路部であることを特徴とする油路形成部材。
【請求項2】
前記油路は、前記被供給部である油圧作動装置に対して作動油としてのオイルを給排する通路であり、
前記第1孔は、前記油路において前記油圧作動装置に最も近い末端通路を構成し、
前記第2孔は、直線状の前記一方の孔であることを特徴とする請求項1記載の油路形成部材。
【請求項3】
前記油圧センサは、前記屈曲通路部内に配置されることを特徴とする請求項1または2記載の油路形成部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−197662(P2009−197662A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39403(P2008−39403)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】