説明

油圧ポンプ装置

【課題】モータで駆動する油圧ポンプにおいて、搬送するオイルの経路を変更する切換弁を、電磁ソレノイドを用いずにモータの正逆回転を利用して切り換えることで、装置のコスト低減を図る。
【解決手段】油圧ポンプ装置は、正逆回転可能なモータと、モータの正逆回転に係わらず一方向にオイルを搬送する第1ポンプと、モータの正転と逆転で異なる二方向にオイルを搬送する第2ポンプと、装置外の負荷に対して第1ポンプが搬送するオイルの径路を第2ポンプが搬送するオイルの圧力によって変更する切換弁とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧シリンダ等の油圧アクチュエータに油圧を供給する油圧ポンプ装置に関し、特に、モータに駆動されるピストンポンプとモータの正逆回転を利用して油圧の経路を変更する切換弁とを備えた油圧ポンプ装置に関する。

【背景技術】
【0002】
従来、建設工事や様々な施工現場で使用される各種油圧工具及びそれらに油圧を供給する油圧ポンプ装置は、作業場所への可搬性や携帯性が重要であるために、小型でありながら高出力であることが要求される。
【0003】
このような油圧機器については、多くの場合、油圧が数十Mpa近辺、あるいはそれ以上の、いわゆる超高圧と呼ばれる油圧を扱えるものが用いられ、超高圧を発生する油圧ポンプにおいては、一般的に往復ピストンを有するピストンポンプ、特にラジアル形ピストンポンプが使用される。
【0004】
しかし、小径のピストンポンプは高圧を発生させることができる反面、大きな吐出量を得ることが難しく、例えば、油圧シリンダの全ストロークのうち高負荷が作用するまでのアプローチを迅速に作動させることができないため、作業性の低下を招くおそれがある。
【0005】
そのために、低負荷のアプローチ用に低圧ではあるが高吐出量のポンプ、例えばトロコイドポンプ等を別途付加して、高圧ではあるが低吐出量のピストンポンプを補完するようにした油圧ポンプ装置もある。
【0006】
また、油圧シリンダに油圧を供給する油圧ポンプ装置においては、油圧シリンダの始動や停止、あるいは作動方向を変更するために、油圧ポンプと油圧シリンダとの間を移動するオイル(作動油)の経路を変更する切換弁が使用されるが、このような油圧ポンプ装置を手動操作ではなく電気的にリモート操作する場合、切換弁には一般的に電磁ソレノイドを駆動源としたスプール弁が使用されている。
【0007】
図15は、このような従来の油圧ポンプ装置の一例を示す油圧回路図である。図15において、油圧ポンプ装置400は、モータ402が高圧ポンプ(ピストンポンプ)404と低圧ポンプ(トロコイドポンプ)406を駆動し、電磁ソレノイド408を備えた切換弁410を介して油圧シリンダ412の押し側ポート414にオイルを供給する。
【0008】
油圧シリンダ412は、導入したオイルによってピストンロッド416を右方に作動し、引き側ポート418からオイルを排出する。排出されたオイルは切換弁410を介してオイルタンク420に戻される。
【0009】
油圧シリンダ412が高負荷を受けて、押し側ポート414の油圧が所定の圧力に達すると低圧リリーフ弁422が開き、低圧ポンプ406が吐出するオイルは油圧シリンダ412には供給されずに、低圧リリーフ弁422からオイルタンク420に排出され、油圧ポンプ装置400は高圧ポンプ404のみが油圧シリンダ412にオイルを供給する。
【0010】
また、押し側ポート414の油圧を低圧リリーフ弁422に背圧として与え、その背圧(油圧ポンプ装置400の吐出圧)が所定の値に達すると低圧リリーフ弁422を開放して、低圧ポンプ406を無負荷状態にするアンロード機構424を備えるものもある。
【0011】
電磁ソレノイド408に通電して切換弁410を作動させると、高圧ポンプ404から吐出されるオイルは油圧シリンダ412の引き側ポート418に供給され、ピストンロッド416を左方に作動させ、押し側ポート414から排出されるオイルは切換弁410を介してオイルタンク420に戻される。
【0012】
ピストンロッド416が左右のストロークエンドまで到達した場合や、到達以前に高圧ポンプ404から吐出されるオイルの油圧が所定の圧力に達すると高圧リリーフ弁426が開き、高圧ポンプ404から吐出されるオイルはオイルタンク420に排出される。
【0013】
図15に示すような油圧ポンプ装置に使用されるピストンポンプにおいては、駆動源であるモータの正逆回転に係わらず一方向にオイルを搬送するという特徴を有し、トロコイドポンプにおいては、モータの正逆回転によって二方向にオイルを搬送するという特徴を有するが、ポンプ装置の機能としてモータを逆回転させる必要がないため、駆動源のモータは、通常、一方向にしか回転しないインダクションモータを用いる。
【0014】
携帯できるような小型の油圧ポンプ装置においては、インダクションモータより小型で軽量な整流子モータ等を用いるが、直流整流子モータのような正逆回転可能なモータで油圧ポンプを駆動する場合であってもモータは正回転のみで使用され、特に、図15に示すように、モータの回転方向によって吸入と吐出の方向が反転するトロコイドポンプを低圧用として備える場合は、モータを逆回転させることはない。
【0015】
しかし、モータの正逆回転を利用する機能を有する油圧ポンプ装置もあり、その例としては、モータの正逆回転に係わらず一方向にオイルを吐出するポンプと、モータの正逆回転に連動するスプール弁とを設けることで、吐出するオイルの加圧と脱圧とを交互に行えるようにした潤滑油用ポンプ装置(特許文献1)や、モータの正逆回転によってオイルを二方向に吐出できる低圧ポンプと、モータの正逆回転に係わらずオイルを一方向に吐出する高圧ポンプとを設けることで、モータの正逆回転によって高圧と低圧の切り換えが可能な油圧ポンプ(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平6−137489
【特許文献2】特開平8−219018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、スプール弁を電磁ソレノイドで操作する電磁切換弁にあっては、高出力の交流ソレノイドを用いてスプールを直接駆動する直動式と、直流ソレノイドでパイロット弁を操作して、スプールを駆動する油圧を切り換えるパイロット式とがある。
【0018】
前者は始動電流が大きく、また作動不良による過電流でコイルが損傷する危険性があるだけではなく、交流ソレノイドが高価であるという問題があり、後者は高い加工精度が要求されるスプールが二本必要であるため、直流ソレノイドが交流ソレノイドよりも安価であるにも係わらず、切換弁としてのコストがやはり高価になってしまうという問題を持っている。
【0019】
また、特許文献1のポンプ装置は、モータの正逆回転によってスプール弁を二位置に移動するが、このスプール弁は脱圧弁として機能してポンプによる加圧と脱圧を切り換えるだけであり、油圧シリンダ等を操作する切換弁としては機能しない。
【0020】
更に、特許文献1のポンプ装置は、モータの逆回転時には、1回転毎にスプールがバネの伸縮を繰り返して往復作動するために、高速回転になるとスプールの踊り(バルブサージ)が発生する可能性が大きく、そのため低速回転で使用できる潤滑油供給用ポンプでは問題なくとも、油圧シリンダに作動油としてオイルを供給するような油圧ポンプには全く適さない。
【0021】
また、特許文献2の油圧ポンプは、モータの正逆回転によってオイルを二方向に吐出できる低圧ポンプと、モータの正逆回転に係わらずオイルを一方向に吐出する高圧ポンプとを設けているが、モータの正逆回転で低圧と高圧を切り換えるだけであり、切換弁を操作することは不可能である。
【0022】
本発明は、搬送するオイルの径路を変更する切換弁を、電磁ソレノイドを用いずに、油圧ポンプの駆動源であるモータの正逆回転を利用して操作することで、構造が簡潔でコスト低減が可能な油圧ポンプ装置を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0023】
この目的を達成するため本発明の油圧ポンプ装置は次のように構成する。本発明は、正逆回転可能なモータと、モータの正逆回転によって一方向に流体を搬送可能な第1ポンプと、モータの正逆回転によって二方向に流体を搬送可能な第2ポンプと、第1ポンプが搬送する流体の径路を第2ポンプが搬送する流体の圧力(油圧)によって変更する切換弁とを備えたことを特徴とする。
【0024】
本発明の油圧ポンプ装置に於いて、モータは、電源極性の反転によって正逆回転可能な直流整流子モータであり、装置外の負荷に対し油圧を発生する第1ポンプは、往復運動するピストンと、モータの回転運動をピストンの往復運動に変換するカムとを有するピストンポンプ機構を1又は複数備え、装置内の負荷に対し油圧を発生する第2ポンプは、ギヤポンプ機構を1又は2備え、切換弁は、モータの正逆回転によって二位置又は三位置に切り換わるスプール弁であることを特徴とする。
【0025】
また、切換弁は、バネの付勢によって保持される第1位置と、第2ポンプの油圧によって保持される第2位置とに移動可能なスプールを有するスプール弁であるか、あるいは、モータの正回転時に第2ポンプの油圧によって保持される第1位置と、モータの逆回転時に第2ポンプの油圧によって保持される第2位置と、モータの停止時に第2ポンプの漏圧によって第3位置に保持可能なスプールを有するスプール弁であることを特徴とする。
【0026】
また、第1ポンプは、低圧部を構成する大径部と高圧部を構成する小径部とを有するピストンを備えた二段吐出ポンプであり、装置外の負荷が所定の圧力以上の場合に低圧部を無負荷状態にするアンロード機構を備えることを特徴とする。
【0027】
あるいは、第2ポンプは、モータの正回転時に装置外の負荷に対し油圧を発生し、モータの逆回転時に装置内の負荷に対し油圧を発生することを特徴とする。

【発明の効果】
【0028】
本発明による油圧ポンプ装置によれば、モータの正逆回転に係わらず一方向にオイルを吐出する第1ポンプと、モータの正逆回転によってオイルの吐出方向が反転する第2ポンプと、第1ポンプが吐出するオイルの径路を第2ポンプが吐出するオイルの油圧によって切り換える切換弁とを備えることで、電磁ソレノイドを用いることなく、モータの回転方向を変更するだけで切換弁を二位置に制御することができ、これによって油圧ポンプ装置のコストを低減できる。

【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による油圧ポンプ装置の第1実施形態を示す断面図
【図2】図1に示す油圧ポンプ装置の油圧回路図
【図3】図1に示す油圧ポンプ装置の正回転時の動作説明図
【図4】図1に示す油圧ポンプ装置の逆回転時の動作説明図
【図5】本発明による油圧ポンプ装置の第2実施形態を示す断面図
【図6】図5に示す油圧ポンプ装置の油圧回路図
【図7】図5に示す油圧ポンプ装置の正回転時(A)と逆回転時(B)の動作説明図
【図8】本発明による油圧ポンプ装置の第3実施形態を示す断面図
【図9】図8に示す油圧ポンプ装置の油圧回路図
【図10】図8に示す油圧ポンプ装置の正回転時(A)と逆回転時(B)の動作説明図
【図11】本発明による油圧ポンプ装置の第4実施形態を示す断面図
【図12】図11に示す油圧ポンプ装置の油圧回路図
【図13】図11に示す油圧ポンプ装置の正回転時(A)と逆回転時(B)の動作説明図
【図14】本発明による油圧ポンプ装置の第5実施形態を示す油圧回路図
【図15】従来の油圧ポンプ装置の一例を示す油圧回路図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、実施形態を示す図面に基づいて、本発明の油圧ポンプ装置を詳細に説明する。各実施形態は、作業場所へ携帯可能なオイルタンク一体型の超高圧小型油圧ポンプ装置を示している。
【0031】
(第1実施形態)
図1は、本発明による油圧ポンプ装置の第1実施形態を示す断面図であり、各機能要素を平面に展開して示している。また図2は、図1に示す油圧ポンプ装置の油圧回路図、図3は、図1に示す油圧ポンプ装置の正回転時の動作説明図、図4は、図1に示す油圧ポンプ装置の逆回転時の動作説明図である。
【0032】
まず、図1において、本発明の油圧ポンプ装置の構造を説明する。油圧ポンプ装置10はモータ12、第1ポンプ14、第2ポンプ16、切換弁18、オイルタンク20で構成され、第1ポンプ14は更にポンプ部22、逆止弁部24、圧力調整部26及び制御回路(図示しない)で構成される。
【0033】
モータ12は、正逆回転可能であり、モータ取付ブロック28に固定されている。正逆回転可能なモータとしては、作業現場で最も容易に確保できる電源である、単相交流100Vを使用した場合に正逆回転可能であれば、コンデンサモータ、インバータモータ、サーボモータ等でも構わないが、ブリッジ回路で整流して得た直流の極性を反転させるだけで正逆回転可能なマグネットモータ(直流整流子モータ)が、制御回路の構成の容易さ、出力に対するサイズ及び重量、コストの点で望ましい。
【0034】
第1ポンプ14のポンプ部22は、モータ12の出力軸30にキー32で締結されてベアリング34及び36で回転自在に支持される偏心カラー38、偏心カラー38に嵌合してカムとして機能するベアリング40、ベアリング40に係合してカムフォロアとして機能する小径の高圧ピストン42、高圧ピストン42に同軸に配置される大径の低圧ピストン44、高圧ピストン42の外周に配置され低圧ピストン44を介して高圧ピストン42をベアリング40の方向に付勢するバネ46、高圧ピストン42を摺動自在に収容する高圧シリンダ48及び低圧ピストン44を摺動自在に収容する低圧シリンダ50を形成するシリンダブロック52、高圧シリンダ48の下端を密閉する封止プラグ54を備える。
【0035】
第1ポンプ14は、高圧ピストン42と高圧シリンダ48で高圧ポンプ56を構成し、低圧ピストン44と低圧シリンダ50で低圧ポンプ58を構成する。
【0036】
第1ポンプ14の逆止弁部24は、逆止弁ブロック60の下部に、ストレーナ62及び64を、逆止弁ブロック60の内部に、高圧ポンプ56がオイルタンク20からストレーナ62を介して吸入するオイルに対し逆止弁として機能する高圧サクション弁66、高圧ポンプ56が吐出するオイルに対し逆止弁として機能する高圧チェック弁68、低圧ポンプ58がオイルタンク20からストレーナ62を介して吸入するオイルに対し逆止弁として機能する低圧サクション弁70、低圧ポンプ58が吐出するオイルに対し逆止弁として機能する低圧チェック弁72を備える。
【0037】
高圧サクション弁66、高圧チェック弁68、低圧サクション弁70、低圧チェック弁72は、どのような方式の弁でも構わないが、本実施形態においては、最も簡潔な方式であるボール、バネ、リテーナプラグで構成している。
【0038】
第1ポンプ14の圧力調整部26は、圧力調整ブロック74の内部に高圧ポンプ56の圧力調整を行う高圧リリーフ弁76、低圧ポンプ58の圧力調整を行う低圧リリーフ弁78、高圧ポンプ56の油圧を背圧として低圧リリーフ弁78のボールを押し開けるニードル80及び高圧部と低圧部をシールするOリング82を備え、低圧リリーフ弁78、ニードル80でアンロード機構84を構成している。
【0039】
高圧リリーフ弁76、低圧リリーフ弁78は、どのような方式の弁でも構わないが、本実施形態においては、最も簡潔な方式であるボール、バネ、リテーナプラグで構成し、外部からリテーナプラグを回転させることで、高圧ポンプ56及び低圧ポンプ58の最高吐出圧を調整することができる。また、高圧リリーフ弁76はボール径が小さいため、バネを受けるためのリテーナを有している。
【0040】
第2ポンプ16は、第2ポンプブロック86の内部に、モータ12の出力軸30と一体に回転する駆動軸92によって駆動されるトロコイドポンプ88と、トロコイドポンプ88の逆回転時の圧力調整を行う逆回転リリーフ弁90を備える。駆動軸92は偏心カラー38に固定ピン94で固定され、ベアリング96により回転自在に支持されている。
【0041】
逆回転リリーフ弁90は、どのような方式の弁でも構わないが、本実施形態においては、最も簡潔な方式であるボール、バネ、リテーナプラグで構成し、外部からリテーナプラグを回転させることで、トロコイドポンプ88の最高吐出圧を調整することができる。
【0042】
切換弁18は、切換弁ブロック98の内部に軸方向移動自在に収容され上端にピストン102を形成するスプール100、スプール100の下端をリテーナ104を介してスプール100を上方に付勢するバネ106、バネ106を受ける封止プラグ108、シリンダ110を密閉する封止プラグ112、ピストン102に装着しシリンダ110の油室110aをシールするOリング114、シリンダ110とTポート118aを繋いで圧力抜きを行う連通路116、バネ収容室126とTポート118bを繋いで圧力抜きを行う連通路128を備える。
【0043】
図1に示す状態では、第1ポンプ14からPポート120に供給されたオイルは、Aポート122からシリンダ142の押し側ポート144に供給され(図2参照)、シリンダ142の引き側ポート146から排出されたオイルはBポート124に戻り、Tポート118bを経由してオイルタンク20に排出される。
【0044】
オイルタンク20は、モータ取付ブロック28と第2ポンプブロック86の間を密閉してオイルを満たしている。オイルタンク20は、ゴム等の可撓性空気室を有する容積可変機構(図示しない)を備えるか、あるいは、オイルタンク20自体をゴム等の可撓性材質で構成し、第1ポンプ14がシリンダ142に吐出して減少したオイルの体積変化を吸収する。本実施形態において、オイルタンク20は密閉式であるが、油圧ポンプ装置10を作動させる際に通気孔を開ける開放式でもかまわない。
【0045】
図1においては、圧力調整ブロック74、モータ取付ブロック28、シリンダブロック52、逆止弁ブロック60、第2ポンプブロック86、切換弁ブロック98は、通しボルト等(図示しない)で固定される。
【0046】
また、高圧ポンプ56、低圧ポンプ58及びトロコイドポンプ88によって吸入、吐出されるオイルは、各ブロックに形成された油路を通り搬送され、各ブロックを跨ぐ油路は各ブロックの係合面でOリング等(図示しない)によってシールされている。また、各油路の加工孔は封止プラグ(一部、図示しない)で密閉してある。
【0047】
次に、図2、図3及び図4において、本発明の油圧ポンプ装置の機能及び作用を説明する。図2において、油圧ポンプ装置10は、モータ12が同軸に連結した低圧ポンプ58、高圧ポンプ56、トロコイドポンプ88を正逆回転で駆動し、切換弁18は二位置四方弁として機能する。
【0048】
図3において、モータ12が起動し駆動軸30が正回転Fで回転すると、カムを構成する偏心カラー38とベアリング40及びバネ46によって高圧ピストン42と低圧ピストン44は往復運動し、高圧ピストン42と低圧ピストン44の下死点から上死点への移動が吸入行程、上死点から下死点への移動が吐出行程となる。
【0049】
高圧ポンプ56は、オイルタンク20からストレーナ62、高圧サクション弁66を介して吸入ポート130にオイルを吸入し、吐出ポート132から高圧チェック弁68を介して切換弁18のPポート120にオイルを吐出する。
【0050】
同時に、低圧ポンプ58は、オイルタンク20からストレーナ62、低圧サクション弁70を介して吸入ポート134にオイルを吸入し、吐出ポート136から低圧チェック弁72を介して切換弁18のPポート120にオイルを吐出する。
【0051】
切換弁18は、スプール100がバネ106の付勢によって保持された位置で、Pポート120はAポート122に連通し、Bポート124はTポート118bに連通しているので、高圧ポンプ56と低圧ポンプ58から高圧チェック弁68、低圧チェック弁72を介してPポート120に導入されたオイルはAポート122から排出される。
【0052】
図3においては、高圧ピストン42と低圧ピストン44は上死点にあるが、高圧ポンプ56と低圧ポンプ58は吸入行程にあり、高圧サクション弁66と低圧サクション弁70は開いて、高圧チェック弁68と低圧チェック弁72は閉じている。
【0053】
また、高圧ピストン42と低圧ピストン44がこの状態から下死点方向に移動する吐出行程にあっても、高圧ポンプ56と低圧ポンプ58の吐出圧は等しいため、高圧リリーフ弁76と低圧リリーフ弁78は閉じている。
【0054】
トロコイドポンプ88は、駆動軸92の正回転Fにおいてf方向にオイルを搬送するため、切換弁18のシリンダ110から吸入吐出ポート140にオイルを吸入し、吸入吐出ポート138から吐出するように働くが、図3に示す状態ではシリンダ110の油室110aには吸入するオイルがないため、トロコイドポンプ88は空転し、入吐出ポート140が負圧になるだけで吸入吐出ポート138にオイルを吐出することはない。この状態では、逆回転リリーフ弁90は閉じている。
【0055】
図2に示すように、切換弁18のAポート122から排出されたオイルは、油圧シリンダ142の押し側ポート144に供給されてピストンロッド148を右方に作動させ、ピストンロッド148が右方に作動することで、油圧シリンダ142の引き側ポート146からオイルを排出する。排出されたオイルは切換弁18のBポート124に導入され、Tポート118からオイルタンク20に戻される。
【0056】
Pポート120の油圧をニードル80(図3参照)を介して低圧リリーフ弁78に背圧として与えているため、油圧シリンダ142が高負荷を受けて押し側ポート144の油圧(Pポート120の油圧)が低圧ポンプ58の最大吐出圧(低圧リリーフ弁78の作動圧)を超えない所定の圧力、例えば2〜15MPaの特定の圧力に達すると、ニードル80が低圧リリーフ弁78を開け、低圧ポンプ58は、オイルタンク20からストレーナ62を介して吸入したオイルをオイルタンク20に排出するだけの無負荷状態になる(アンロード機構)。
【0057】
ピストンロッド148が右方のストロークエンドまで到達した場合や、到達以前に高圧ポンプ56の吐出ポート132の油圧が所定の圧力、例えば20〜70MPaの特定の圧力に達すると高圧リリーフ弁76が開き、高圧ポンプ56が吐出するオイルはオイルタンク20に排出される。
【0058】
図4に示すように、この状態でモータ12が高圧ポンプ56、低圧ポンプ58、トロコイドポンプ88を逆回転Rで駆動すると、高圧ポンプ56と低圧ポンプ58は正回転Fで駆動した場合と同様にオイルタンク20からストレーナ62を介してオイルを吸入して切換弁18のPポート120に吐出するが、トロコイドポンプ88は、正回転Fの場合とは異なりr方向にオイルを搬送するため、オイルタンク20からストレーナ64を介して吸入吐出ポート138にオイルを吸入して吸入吐出ポート140から切換弁18のシリンダ110に吐出する。
【0059】
切換弁18は、シリンダ110の油室110aが導入したオイルの油圧がピストン102をバネ106の付勢に抗して下方(図2においては右方)に押すことで、スプール100が、Pポート120がBポート124に連通し、Aポート122がTポート118aに連通した位置に移動する。
【0060】
図4においては、高圧ピストン42と低圧ピストン44は下死点にあるが、高圧ポンプ56と低圧ポンプ58は吐出行程にあり、高圧サクション弁66と低圧サクション弁70は閉じて、高圧チェック弁68は開いている。
【0061】
しかし、Pポート120の圧力を背圧として受けたニードル80によって低圧リリーフ弁78が開いており、低圧ポンプ58はアンロード状態である。この状態では、低圧ポンプ58が吸入したオイルはオイルタンク20に排出されるため低圧チェック弁72は閉じている。高圧リリーフ弁76が閉じているため、高圧ポンプ56が吐出したオイルだけがPポート120に導入される。
【0062】
また、図4に示す状態では油室110aはトロコイドポンプ88が吐出するオイルをこれ以上導入することができないため、吸入吐出ポート140の油圧が所定の圧力、例えば0.5MPaに達すると逆回転リリーフ弁90が開き、トロコイドポンプ88が吐出するオイルはオイルタンク20に排出される。
【0063】
図2においては、切換弁18のスプール100が右方に移動し、この状態では、高圧ポンプ56から切換弁18のPポート120に導入されたオイルはBポート124から排出され、油圧シリンダ142の引き側ポート146に供給されてピストンロッド148を左方に作動させる。
【0064】
ピストンロッド148が左方のストロークエンドまで到達した場合や、到達以前に高圧ポンプ56の吐出ポート132の油圧が所定の圧力に達すると高圧リリーフ弁76が開き、高圧ポンプ56が吐出するオイルはオイルタンク20に排出される。
【0065】
その後、モータ12を停止すると、トロコイドポンプ88は、高圧ポンプ56、低圧ポンプ58と共に作動を停止するが、トロコイドポンプ88は停止時にオイルリーク(漏圧)が大きいため、切換弁18は、バネ106によってスプール100が押し戻されてシリンダ110内のオイルをトロコイドポンプ88を経由してオイルタンク20に排出し、図3に示すような状態に復帰する。
【0066】
本実施形態においては、油圧シリンダ142が複動式であるため、切換弁18は4ポート(二位置四方弁)であるが、油圧シリンダ142がピストンロッド148を左方に付勢するバネを有する単動式の場合は、切換弁18は3ポート(二位置三方弁)とする(図14参照)。
【0067】
(第2実施形態)
図5は、本発明による油圧ポンプ装置の第2実施形態を示す断面図であり、第2ポンプ及び切換弁以外は図1に示す第1実施形態と同じであるため省略してある。また図6は、図5に示す油圧ポンプ装置の油圧回路図、図7(A)は、図5に示す油圧ポンプ装置の正回転時の動作説明図、図7(B)は、図5に示す油圧ポンプ装置の逆回転時の動作説明図である。
【0068】
まず、図5において、本発明の油圧ポンプ装置の構造を説明する。第2ポンプ152は、第2ポンプブロック154の内部に、モータ12の出力軸30と一体に回転する駆動軸92によって駆動されるトロコイドポンプ156、トロコイドポンプ156が正回転時にオイルタンク20からストレーナ64を介して吸入するオイルに対し逆止弁として機能する正回転サクション弁158、トロコイドポンプ156の正回転時の圧力調整を行う正回転リリーフ弁160、また、トロコイドポンプ156が逆回転時にオイルタンク20からストレーナ64を介して吸入するオイルに対し逆止弁として機能する逆回転サクション弁162、トロコイドポンプ156の逆回転時の圧力調整を行う逆回転リリーフ弁164を備える。
【0069】
正回転サクション弁158、正回転リリーフ弁160、逆回転サクション弁162、逆回転リリーフ弁164は、どのような方式の弁でも構わないが、本実施形態においては、最も簡潔な方式であるボール、バネ、リテーナプラグで構成している。正回転リリーフ弁160と逆回転リリーフ弁164は、外部からリテーナプラグを回転させることで、トロコイドポンプ156の正逆回転時の各々の最高吐出圧を調整することができる。
【0070】
切換弁166は、切換弁ブロック168の内部に軸方向移動自在に収容され上端にピストン172を形成するスプール170、スプール170の下端に固定されたピストン174、上部のシリンダ176を密閉する封止プラグ180、下部のシリンダ178を密閉する封止プラグ182、ピストン172に装着しシリンダ176の油室176aをシールするOリング184、ピストン174に装着しシリンダ178の油室178aをシールするOリング186、シリンダ176とTポート118aを繋いで圧力抜きを行う連通路188、シリンダ178とTポート118bを繋いで圧力抜きを行う連通路190を備える。
【0071】
次に、図6、図7(A)及び図7(B)において、本発明の油圧ポンプ装置の機能及び作用を説明する。図6において、油圧ポンプ装置150は、モータ12が同軸に連結した低圧ポンプ58、高圧ポンプ56、トロコイドポンプ156を正逆回転で駆動し、切換弁166は二位置四方弁として機能する。低圧ポンプ58、高圧ポンプ56に関する機能及び作用は、図2と同じであるため説明を省略する。
【0072】
図7(A)において、トロコイドポンプ156は、駆動軸92の正回転Fにおいてf方向にオイルを搬送するため、切換弁166のシリンダ176から吸入吐出ポート194にオイルを吸入し、吸入吐出ポート192から切換弁166のシリンダ178に吐出するように働く。
【0073】
切換弁166は、オイルがシリンダ176の油室176aから排出されシリンダ178の油室178aに導入されることでスプール170が上方(図6においては左方)に移動し、切換弁166は、図7(A)に示される位置に保持される。
【0074】
この状態では、切換弁166のPポート120はAポート122に連通し、Bポート124はTポート118bに連通しているので、高圧ポンプ56と低圧ポンプ58から高圧チェック弁68、低圧チェック弁72を介してPポート120に導入されたオイルはAポート122から排出される。
【0075】
トロコイドポンプ156は、油室176aからオイルを全て吸い出すと、オイルタンク20からストレーナ64、正回転サクション弁158を介して吸入吐出ポート194にオイルを吸入し、吸入吐出ポート192から吐出する。
【0076】
従って、油室176aからトロコイドポンプ156を介して油室178aに移動するオイルの量が不足する場合は、トロコイドポンプ156がオイルタンク20からオイルを吸入し不足分を補う。
【0077】
図7(A)に示す状態では、油室178aは既にオイルで満杯になっているため、トロコイドポンプ156の吸入吐出ポート192から吐出されたオイルは、正回転リリーフ弁160を介してオイルタンク20に排出される。この状態では、逆回転サクション弁162と逆回転リリーフ弁164は閉じている。
【0078】
図7(B)に示すように、モータ12が高圧ポンプ56、低圧ポンプ58と共に、トロコイドポンプ156を逆回転Rで駆動すると、高圧ポンプ56と低圧ポンプ58は正回転Fで駆動した場合と同様にオイルタンク20からストレーナ62を介してオイルを吸入して切換弁166のPポート120に吐出するが、トロコイドポンプ156は、正回転Fの場合とは異なりr方向にオイルを搬送するため、切換弁166のシリンダ178から吸入吐出ポート192にオイルを吸入し、吸入吐出ポート194から切換弁166のシリンダ176に吐出するように働く。
【0079】
切換弁166は、オイルが油室178aから排出され油室176aに導入されることでスプール170が下方(図6においては右方)に移動し、図7(B)に示される位置に保持される。
【0080】
この状態では、切換弁166のPポート120はBポート124に連通し、Aポート122はTポート118aに連通しているので、高圧ポンプ56と低圧ポンプ58から高圧チェック弁68、低圧チェック弁72を介してPポート120に導入されたオイルはBポート122から排出される。
【0081】
トロコイドポンプ156は、油室178aからオイルを全て吸い出すと、オイルタンク20からストレーナ64、逆回転サクション弁162を介して吸入吐出ポート192にオイルを吸入し、吸入吐出ポート194から吐出する。
【0082】
従って、油室178aからトロコイドポンプ156を介して油室176aに移動するオイルの量が不足する場合は、トロコイドポンプ156がオイルタンク20からオイルを吸入し不足分を補う。
【0083】
図7(B)に示す状態では、油室176aは既にオイルで満杯になっているため、トロコイドポンプ156の吸入吐出ポート194から吐出されたオイルは、逆回転リリーフ弁164を介してオイルタンク20に排出される。この状態では、正回転サクション弁158と正回転リリーフ弁160は閉じている。
【0084】
その後、モータ12を停止すると、トロコイドポンプ156は、高圧ポンプ56、低圧ポンプ58と共に作動を停止する。トロコイドポンプ156は停止時にオイルリーク(漏圧)が大きいため、切換弁166は、スプール170の位置が不定となるが、再度モータ12を正回転で起動すると、切換弁166は、図7(A)の状態になる。
【0085】
本実施形態においては、油圧シリンダ142が複動式であるため、切換弁166は4ポート(二位置四方弁)であるが、油圧シリンダ142がピストンロッド148を左方に付勢するバネを有する単動式の場合は、切換弁166は3ポート(二位置三方弁)とする(図14参照)。
【0086】
(第3実施形態)
図8は、本発明による油圧ポンプ装置の第3実施形態を示す断面図であり、第2ポンプ及び切換弁以外は図1に示す第1実施形態と同じであるため省略してある。また図9は、図8に示す油圧ポンプ装置の油圧回路図、図10(A)は、図8に示す油圧ポンプ装置の正回転時の動作説明図、図10(B)は、図8に示す油圧ポンプ装置の逆回転時の動作説明図である。また、図8に示す第2ポンプは、図5に示す第2実施形態の第2ポンプと同じである。
【0087】
まず、図8において、本発明の油圧ポンプ装置の構造を説明する。第2ポンプ152は、第2ポンプブロック154の内部に、モータ12の出力軸30と一体に回転する駆動軸92によって駆動されるトロコイドポンプ156、トロコイドポンプ156が正回転時にオイルタンク20からストレーナ64を介して吸入するオイルに対し逆止弁として機能する正回転サクション弁158、トロコイドポンプ156の正回転時の圧力調整を行う正回転リリーフ弁160、また、トロコイドポンプ156が逆回転時にオイルタンク20からストレーナ64を介して吸入するオイルに対し逆止弁として機能する逆回転サクション弁162、トロコイドポンプ156の逆回転時の圧力調整を行う逆回転リリーフ弁164を備える。
【0088】
正回転サクション弁158、正回転リリーフ弁160、逆回転サクション弁162、逆回転リリーフ弁164は、どのような方式の弁でも構わないが、本実施形態においては、最も簡潔な方式であるボール、バネ、リテーナプラグで構成している。正回転リリーフ弁160と逆回転リリーフ弁164は、外部からリテーナプラグを回転させることで、トロコイドポンプ156の正逆回転時の各々の最高吐出圧を調整することができる。
【0089】
切換弁202は、切換弁ブロック204の内部に軸方向移動自在に収容され上端にピストン208を形成するスプール206、スプール206の下端に配置されたピストン210、上部のシリンダ212内に設置されスプール206を下方に付勢するバネ216、下部のシリンダ214内に設置されピストン210を介してスプール206を上方に付勢するバネ218、バネ216を受けシリンダ212を密閉する封止プラグ220、バネ218を受けシリンダ214を密閉する封止プラグ222、ピストン208に装着しシリンダ212の油室212aをシールするOリング224、ピストン210に装着しシリンダ214の油室214aをシールするOリング226、シリンダ212とTポート118aを繋いで圧力抜きを行う連通路228、シリンダ214とTポート118bを繋いで圧力抜きを行う連通路230を備える。
【0090】
次に、図9、図10(A)及び図10(B)において、本発明の油圧ポンプ装置の機能及び作用を説明する。図9において、油圧ポンプ装置200は、モータ12が同軸に連結した低圧ポンプ58、高圧ポンプ56、トロコイドポンプ156を正逆回転で駆動し、切換弁202は三位置四方弁として機能する。低圧ポンプ58、高圧ポンプ56に関する機能及び作用は、図2と同じであるため説明を省略する。
【0091】
図10(A)において、トロコイドポンプ156は、駆動軸92の正回転Fにおいてf方向にオイルを搬送するため、切換弁202のシリンダ212から吸入吐出ポート194にオイルを吸入し、吸入吐出ポート192から切換弁202のシリンダ214に吐出するように働く。
【0092】
切換弁202は、オイルがシリンダ212の油室212aから排出されシリンダ214の油室214aに導入されることでスプール206が上方(図9においては左方)に移動し、切換弁202は、図10(A)に示される位置に保持される。
【0093】
この状態では、切換弁202のPポート120はAポート122に連通し、Bポート124はTポート118に連通しているので、高圧ポンプ56と低圧ポンプ58から高圧チェック弁68、低圧チェック弁72を介してPポート120に導入されたオイルはAポート122から排出される。
【0094】
トロコイドポンプ156は、油室212aからオイルを全て吸い出すと、オイルタンク20からストレーナ64、正回転サクション弁158を介して吸入吐出ポート194にオイルを吸入し、吸入吐出ポート192から吐出する。
【0095】
従って、油室212aからトロコイドポンプ156を介して油室214aに移動するオイルの量が不足する場合は、トロコイドポンプ156がオイルタンク20からオイルを吸入し不足分を補う。
【0096】
図10(A)に示す状態では、油室214aは既にオイルで満杯になっているため、トロコイドポンプ156の吸入吐出ポート192から吐出されたオイルは、正回転リリーフ弁160を介してオイルタンク20に排出される。この状態では、逆回転サクション弁162と逆回転リリーフ弁164は閉じている。
【0097】
図10(B)に示すように、モータ12が高圧ポンプ56、低圧ポンプ58と共に、トロコイドポンプ156を逆回転Rで駆動すると、高圧ポンプ56と低圧ポンプ58は正回転Fで駆動した場合と同様にオイルタンク20からストレーナ62を介してオイルを吸入して切換弁202のPポート120に吐出するが、トロコイドポンプ156は、正回転Fの場合とは異なりr方向にオイルを搬送するため、切換弁202のシリンダ214から吸入吐出ポート192にオイルを吸入し、吸入吐出ポート194から切換弁202のシリンダ212に吐出するように働く。
【0098】
切換弁202は、オイルが油室214aから排出され油室212aに導入されることでスプール206が下方(図9においては右方)に移動し、図10(B)に示される位置に保持される。
【0099】
この状態では、切換弁202のPポート120はBポート124に連通し、Aポート122はTポート118a に連通しているので、高圧ポンプ56と低圧ポンプ58から高圧チェック弁68、低圧チェック弁72を介してPポート120に導入されたオイルはBポート122から排出される。
【0100】
トロコイドポンプ156は、油室214aからオイルを全て吸い出すと、オイルタンク20からストレーナ64、逆回転サクション弁162を介して吸入吐出ポート192にオイルを吸入し、吸入吐出ポート194から吐出する。
【0101】
従って、油室214aからトロコイドポンプ156を介して油室212aに移動するオイルの量が不足する場合は、トロコイドポンプ156がオイルタンク20からオイルを吸入し不足分を補う。
【0102】
図10(B)に示す状態では、油室212aは既にオイルで満杯になっているため、トロコイドポンプ156の吸入吐出ポート194から吐出されたオイルは、逆回転リリーフ弁164を介してオイルタンク20に排出される。この状態では、正回転サクション弁158と正回転リリーフ弁160は閉じている。
【0103】
その後、モータ12を停止すると、トロコイドポンプ156は、高圧ポンプ56、低圧ポンプ58と共に作動を停止するが、トロコイドポンプ156は停止時にオイルリーク(漏圧)が大きいため、切換弁202は、スプール206がバネ216とバネ218の付勢力によってバランスする位置、すなわち図8に示す中間位置に保持される。
【0104】
図9に示すように、スプール206が中間位置にある場合、切換弁202は、ABPTの4ポート全てが遮断されているため、油圧ポンプ装置200と油圧シリンダ142との間のオイルの移動は停止する。
【0105】
本実施形態においては、油圧シリンダ142が複動式であるため、切換弁166は4ポート(三位置四方弁)であるが、油圧シリンダ142がピストンロッド148を左方に付勢するバネを有する単動式の場合は、切換弁166は3ポート(三位置三方弁)とする。
【0106】
(第4実施形態)
図11は、本発明による油圧ポンプ装置の第4実施形態を示す断面図であり、第2ポンプ及び切換弁以外は図1に示す第1実施形態と同じであるため省略してある。また図12は、図11に示す油圧ポンプ装置の油圧回路図、図13(A)は、図11に示す油圧ポンプ装置の正回転時の動作説明図、図12(B)は、図11に示す油圧ポンプ装置の逆回転時の動作説明図である。
【0107】
まず、図11において、本発明の油圧ポンプ装置の構造を説明する。第2ポンプ252は、第2ポンプブロック254a及び254bの内部に、モータ12の出力軸30と一体に回転する駆動軸92によって駆動される第1トロコイドポンプ256及び第2トロコイドポンプ258、第1トロコイドポンプ256の正回転時の圧力調整を行う正回転リリーフ弁260、第2トロコイドポンプ258の逆回転時の圧力調整を行う逆回転リリーフ弁262を備える。
【0108】
正回転リリーフ弁260と逆回転リリーフ弁262は、どのような方式の弁でも構わないが、本実施形態においては、最も簡潔な方式であるボール、バネ、リテーナプラグで構成し、外部からリテーナプラグを回転させることで、第1トロコイドポンプ256の正回転時、第2トロコイドポンプ258の逆回転時の最高吐出圧を調整することができる。
【0109】
切換弁264は、切換弁ブロック266の内部に軸方向移動自在に収容され上端にピストン270を形成したスプール268、スプール268の下端に固定されたピストン272、上部のシリンダ274を密閉する封止プラグ278、下部のシリンダ276を密閉する封止プラグ280、ピストン270に装着しシリンダ274の油室274aをシールするOリング282、ピストン272に装着しシリンダ276の油室276aをシールするOリング284、シリンダ274とTポート118aを繋いで圧力抜きを行う連通路286、シリンダ276とTポート118bを繋いで圧力抜きを行う連通路288を備える。
【0110】
次に、図12、図13(A)及び図13(B)において、本発明の油圧ポンプ装置の機能及び作用を説明する。図12において、油圧ポンプ装置250は、モータ12が同軸に連結した低圧ポンプ58、高圧ポンプ56、第2トロコイドポンプ258、第1トロコイドポンプ256を正逆回転で駆動する。低圧ポンプ58、高圧ポンプ56に関する機能及び作用は、図2と同じであるため説明を省略する。
【0111】
図13(A)において、第2トロコイドポンプ258は、駆動軸92の正回転Fにおいてf方向にオイルを搬送するため、切換弁264のシリンダ274から吸入吐出ポート294にオイルを吸入し、吸入吐出ポート296から第1トロコイドポンプ256の吸入吐出ポート292に吐出するように働く。
【0112】
第1トロコイドポンプ256は、駆動軸92の正回転Fにおいてf方向にオイルを搬送するため、吸入吐出ポート292から吸入したオイルを吸入吐出ポート290から切換弁264のシリンダ276に吐出するように働く。
【0113】
切換弁264は、オイルがシリンダ274の油室274aから排出されシリンダ276の油室276aに導入されることでスプール268が上方(図12においては左方)に移動し、図13(A)に示される位置に保持される。
【0114】
油室274aから第2トロコイドポンプ258と第1トロコイドポンプ256を介して油室276aに移動するオイルの量が不足する場合は、第1トロコイドポンプ256がオイルタンク20からストレーナ64を介して吸入吐出ポート292にオイルを吸入し不足分を補う。
【0115】
この状態では、切換弁264のPポート120はAポート122に連通し、Bポート124はTポート118bに連通しているので、高圧ポンプ56と低圧ポンプ58から高圧チェック弁68、低圧チェック弁72を介してPポート120に導入されたオイルはAポート122から排出される。
【0116】
図13(A)に示す状態では油室274aには吸入するオイルがないため、第2トロコイドポンプ258は空転し、吸入吐出ポート294が負圧になるだけで吸入吐出ポート296にオイルを吐出することはない。
【0117】
また、油室276aは既にオイルで満杯になっているため、第1トロコイドポンプ256の吸入吐出ポート290から吐出されたオイルは、正回転リリーフ弁260を介してオイルタンク20に排出される。この状態では、逆回転リリーフ弁262は閉じている。
【0118】
図13(B)に示すように、モータ12が高圧ポンプ56、低圧ポンプ58と共に、第2トロコイドポンプ258、第1トロコイドポンプ256を逆回転Rで駆動すると、高圧ポンプ56と低圧ポンプ58は正回転Fで駆動した場合と同様にストレーナ62からオイルを吸入して切換弁264のPポート120に吐出する。
【0119】
第1トロコイドポンプ256は、正回転Fの場合とは異なりr方向にオイルを搬送するため、切換弁264のシリンダ276から吸入吐出ポート290にオイルを吸入し、吸入吐出ポート292から第2トロコイドポンプ258の吸入吐出ポート296に吐出するように働く。
【0120】
第2トロコイドポンプ258は、駆動軸92の逆回転Rにおいてr方向にオイルを搬送するため、吸入吐出ポート296から吸入したオイルを吸入吐出ポート294から切換弁264のシリンダ274に吐出するように働く。
【0121】
切換弁264は、オイルが油室276aから排出され油室274aに導入されることでスプール268が下方(図12においては右方)に移動し、図13(B)に示される位置に保持される。
【0122】
油室276aから第1トロコイドポンプ256と第2トロコイドポンプ258を介して油室274aに移動するオイルの量が不足する場合は、第2トロコイドポンプ258がストレーナ64から吸入吐出ポート296にオイルを吸入し不足分を補う。
【0123】
この状態では、切換弁264のPポート120はBポート124に連通し、Aポート122はTポート118aに連通しているので、高圧ポンプ56と低圧ポンプ58から高圧チェック弁68、低圧チェック弁72を介してPポート120に導入されたオイルはBポート122から排出される。
【0124】
図13(B)に示す状態では油室276aには吸入するオイルがないため、第1トロコイドポンプ256は空転し、吸入吐出ポート290が負圧になるだけで吸入吐出ポート292にオイルを吐出することはない。
【0125】
また、油室274aは既にオイルで満杯になっているため、第2トロコイドポンプ258の吸入吐出ポート294から吐出されたオイルは、逆回転リリーフ弁262を介してオイルタンク20に排出される。この状態では、正回転リリーフ弁260は閉じている。
【0126】
その後、モータ12を停止すると、第1トロコイドポンプ256、第2トロコイドポンプ258は、高圧ポンプ56、低圧ポンプ58と共に作動を停止する。第1トロコイドポンプ256及び第2トロコイドポンプ258は停止時にオイルリーク(漏圧)が大きいため、切換弁264は、スプール268の位置が不定となるが、再度モータ12を正回転で起動すると、切換弁264は、図13(A)の状態になる。
【0127】
本実施形態においては、油圧シリンダ142が複動式であるため、切換弁264は4ポート(二位置四方弁)であるが、油圧シリンダ142がピストンロッド148を左方に付勢するバネを有する単動式の場合は、切換弁264は3ポート(二位置三方弁)とする(図14参照)。
【0128】
(第5実施形態)
図14は、本発明による油圧ポンプ装置の第5実施形態を示す油圧回路図である。図14において油圧ポンプ装置300は、モータ12が同軸に連結した高圧ポンプ(第1ポンプ)302、低圧ポンプとして機能するトロコイドポンプ(第2ポンプ)304を正逆回転で駆動し、切換弁306は二位置三方弁として機能する。
【0129】
モータ12が正回転で起動すると、高圧ポンプ302は、オイルポンプ20からストレーナ62、高圧サクション弁308を介して吸入ポート310にオイルを吸入し、吐出ポート312から高圧チェック弁322を介して切換弁306のPポート332に吐出する。
【0130】
また、トロコイドポンプ304は、モータ12の正回転でf方向にオイルを搬送するために、切換弁306のシリンダ340から吸入吐出ポート318にオイルを吸入するように働くが、切換弁306のシリンダ340内にはオイルがないため、オイルタンク20からストレーナ64、正回転サクション弁314を介して吸入吐出ポート318にオイルを吸入し、吸入吐出ポート320から低圧チェック弁324を介して切換弁306のPポート332に吐出する。
【0131】
切換弁306は、バネ338によって保持された位置で、Pポート332はAポート334に連通しているので、Pポート332に導入されたオイルはAポート334から油圧シリンダ342の押し側ポート344に供給され、バネ346の付勢に抗してピストンロッド348を右方に作動させる。この状態では、高圧リリーフ弁326、低圧リリーフ弁328及び逆回転リリーフ弁330は閉じている。
【0132】
ピストンロッド348に負荷が働き、Pポート332の油圧が所定の圧力に達した場合、あるいは吸入吐出ポート320の油圧が低圧リリーフ弁328の作動圧力に達すると低圧リリーフ弁328が開き、トロコイドポンプ304は、オイルタンク20からストレーナ64を介して吸入したオイルをオイルタンク20に排出するだけの無負荷状態となる。
【0133】
ピストンロッド348がストロークエンドまで到達した場合や、到達以前に高圧ポンプ302の吐出ポート312の油圧が所定の圧力に達すると高圧リリーフ弁326が開き、高圧ポンプ302が吐出ポート312から吐出するオイルはオイルタンク20に排出される。
【0134】
この状態でモータ12を逆回転させると、トロコイドポンプ304はr方向にオイルを搬送するため、オイルタンク20からストレーナ64、逆回転サクション弁316を介して吸入吐出ポート320にオイルを吸入し、吸入吐出ポート318から切換弁306のシリンダ340に吐出する。
【0135】
切換弁306は、シリンダ340に導入したオイルによって、Pポート332を遮断してAポート334がTポート336に連通する位置に切り換わる。その後、シリンダ340がオイルで満杯になり、吐出吸入ポート318の油圧が所定の圧力に達すると逆回転リリーフ弁330が開き、トロコイドポンプ304が吐出吸入ポート318から吐出するオイルはオイルタンク20に排出される。
【0136】
シリンダ342は、バネ346の付勢によってピストンロッド348を左方に押し戻し、押し側ポート344から排出されたオイルはAポート334、Tポート336を介してオイルタンク20に戻される。
【0137】
本実施形態では油圧シリンダ342は単動式であるが、これは、本実施形態において複動式の油圧シリンダを使用した場合、モータの逆回転で油圧シリンダの引き側ポートにオイルを吐出するのは吐出量の少ない高圧ポンプだけとなり、ピストンロッドの戻りが遅くなってしまうためである。
【0138】
上述の実施形態1乃至5の如く、本発明の油圧ポンプ装置は、電磁ソレノイドに替えてトロコイドポンプを備え、モータの回転方向を変更することで切換弁を操作している。本発明の油圧ポンプ装置で使用するようなトロコイドポンプは、切換弁に使用するような電磁ソレノイドに比べて遥かに安価であるため、油圧ポンプ装置のコストを低減させることが可能となる。
【0139】
なお、本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、本発明は、上記の実施形態の数値による限定は受けない。

【符号の説明】
【0140】
10、150、200、250、300、400:油圧ポンプ装置
12、402:モータ
14:第1ポンプ
16、152、252:第2ポンプ
18、166、202、264、306、410:切換弁
20、420:オイルタンク
22:ポンプ部
24:逆止弁部
26:圧力調整部
28:モータ取付ブロック
30:出力軸
32:キー
34、36、40、96:ベアリング
38:偏心カラー
42:高圧ピストン
44:低圧ピストン44
46、106、216、218、338、346:バネ
48:高圧シリンダ
50:低圧シリンダ
52:シリンダブロック
54、108、112、180、182、220、222、278、280:封止プラグ
56、302、404:高圧ポンプ
58、406:低圧ポンプ
60:逆止弁ブロック
62、64:ストレーナ
66、308:高圧サクション弁
68、322:高圧チェック弁
70:低圧サクション弁
72、324:低圧チェック弁
74:圧力調整ブロック
76、326、426:高圧リリーフ弁
78、328、422:低圧リリーフ弁
80:ニードル
82、184、186、224、226、282、284:Oリング
84、424:アンロード機構
86、154、254:第2ポンプブロック
88、156、304:トロコイドポンプ
90、164、262、330:逆回転リリーフ弁
92:駆動軸
94:固定ピン
98、168、204、266:切換弁ブロック
100、170、206、268:スプール
102、172、174、208、210、270、272:ピストン
104:リテーナ
110、176、178、212、214、274、276、340:シリンダ
116、128、188、190、228、230、286、288:連通路
118、336:Tポート
120、332:Pポート
122、334:Aポート
124:Bポート
126:バネ収容室
130、134、310:吸入ポート
132、136、312:吐出ポート
138、140、192、194、290、292、294、296、318、320:吸入吐出ポート
142、342、412:油圧シリンダ
144、344、414:押し側ポート
146、418:引き側ポート
148、348、416:ピストンロッド
158、314:正回転サクション弁
160、260:正回転リリーフ弁
162、316:逆回転サクション弁
256:第1トロコイドポンプ
258:第2トロコイドポンプ
302:高圧ポンプ
304:トロコイドポンプ
408:電磁ソレノイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正逆回転可能なモータと、
前記モータの正逆回転によって一方向に流体を搬送可能な第1ポンプと、
前記モータの正逆回転によって二方向に流体を搬送可能な第2ポンプと、
前記第1ポンプが搬送する流体の径路を前記第2ポンプが搬送する流体の圧力によって変更する切換弁と、
を備えたことを特徴とする油圧ポンプ装置。

【請求項2】
請求項1記載の油圧ポンプ装置に於いて、前記モータは、電源極性の反転によって正逆回転可能な直流整流子モータであることを特徴とする。

【請求項3】
請求項1記載の油圧ポンプ装置に於いて、前記第1ポンプは、往復運動するピストンと、前記モータの回転運動を前記ピストンの往復運動に変換するカムとを有するピストンポンプ機構を1又は複数備え、装置外の負荷に対し圧力を発生することを特徴とする。

【請求項4】
請求項1記載の油圧ポンプ装置に於いて、前記第2ポンプは、ギヤポンプ機構を1又は2備え、装置内の負荷に対し圧力を発生することを特徴とする。

【請求項5】
請求項1記載の油圧ポンプ装置に於いて、前記切換弁は、前記モータの正逆回転によって二位置又は三位置に切り換わるスプール弁であることを特徴とする。

【請求項6】
請求項5記載の油圧ポンプ装置に於いて、前記切換弁は、バネの付勢によって保持される第1位置と、前記第2ポンプの圧力によって保持される第2位置とに移動可能なスプールを有するスプール弁であることを特徴とする。

【請求項7】
請求項5記載の油圧ポンプ装置に於いて、前記切換弁は、前記モータの正回転時に前記第2ポンプの圧力によって保持される第1位置と、前記モータの逆回転時に前記第2ポンプの圧力によって保持される第2位置とに移動可能なスプールを有するスプール弁であることを特徴とする。

【請求項8】
請求項7記載の油圧ポンプ装置に於いて、前記切換弁は、前記モータの停止時に前記第2ポンプの漏圧によって保持される第3位置に移動可能なスプールを有するスプール弁であることを特徴とする。

【請求項9】
請求項3記載の油圧ポンプ装置に於いて、前記第1ポンプは、低圧部を構成する大径部と高圧部を構成する小径部とを有するピストンを備えた二段吐出ポンプであることを特徴とする。

【請求項10】
請求項9記載の油圧ポンプ装置に於いて、前記第1ポンプは、前記装置外の負荷が所定の圧力以上の場合に前記低圧部を無負荷状態にするアンロード機構を備えることを特徴とする。

【請求項11】
請求項4記載の油圧ポンプ装置に於いて、前記第2ポンプは、前記モータの正回転時に装置外の負荷に対し圧力を発生し、前記モータの逆回転時に装置内の負荷に対し圧力を発生することを特徴とする。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−7100(P2011−7100A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150868(P2009−150868)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(303015505)三央工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】