油圧制御装置と油圧制御装置のエア抜き方法
【課題】コストと重量の増大を招くことなく、油圧応答性の確保を図ること。
【解決手段】第1クラッチCL1のクラッチ油圧制御装置において、第1クラッチ油圧ユニット14は、CSCシリンダ40と、CSCシリンダ室42の容積を縮小させる側にCSCピストン41を付勢するダイアフラムスプリング43と、CSCシリンダ室42へのオイル給排を行うオイル給排口44と、を備える。第1クラッチコントロールバルブ6は、CSCシリンダ室42の容積が縮小すると、CSCシリンダ室42に存在するエアをオイルパン39に排出するスプールバルブ60を備える。オイル給排口44は、CSCシリンダ室42に第1クラッチコントロールバルブ6を介してオイルが供給されたとき、CSCシリンダ室42に存在するエアが集まるCSCシリンダ40の上方位置に設定した。
【解決手段】第1クラッチCL1のクラッチ油圧制御装置において、第1クラッチ油圧ユニット14は、CSCシリンダ40と、CSCシリンダ室42の容積を縮小させる側にCSCピストン41を付勢するダイアフラムスプリング43と、CSCシリンダ室42へのオイル給排を行うオイル給排口44と、を備える。第1クラッチコントロールバルブ6は、CSCシリンダ室42の容積が縮小すると、CSCシリンダ室42に存在するエアをオイルパン39に排出するスプールバルブ60を備える。オイル給排口44は、CSCシリンダ室42に第1クラッチコントロールバルブ6を介してオイルが供給されたとき、CSCシリンダ室42に存在するエアが集まるCSCシリンダ40の上方位置に設定した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、初期組付け時等において、シリンダ室に存在する空気(以下、「エア」という。)を抜く油圧制御装置と油圧制御装置のエア抜き方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クラッチと、該クラッチの締結・開放を行うピストンが摺動するシリンダと、オイルポンプと、を備えたクラッチ油圧制御装置において、オイルポンプからシリンダ室までの回路内にエアが存在すると、クラッチの油圧応答性が悪化する。
【0003】
このクラッチの油圧応答性の悪化を回避するため、エア抜きパイプを設けてシリンダ室内のエアを抜くものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平7−29313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、先行技術にあっては、エア抜きパイプを別途設けていたため、コストと重量が増大する、という問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、コストと重量の増大を招くことなく、油圧応答性の確保を図ることができる油圧制御装置と油圧制御装置のエア抜き方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の油圧制御装置は、油圧ユニットと、該油圧ユニットとは油路を介して接続されたコントロールバルブと、を備えている。
この油圧制御装置において、前記油圧ユニットは、
オイル供給源からオイルが供給されるシリンダ室を備えたシリンダと、
該シリンダとともに前記シリンダ室を形成し、前記シリンダ室に前記オイルが給排されるとき前記シリンダに対して摺動するピストンと、
前記シリンダ室の容積を縮小させる側に、前記ピストンを付勢する付勢手段と、
前記シリンダに設けられ、前記シリンダ室へ給排される前記オイルが通流するオイル給排口と、
を備えている。
前記コントロールバルブは、前記ピストンが、前記付勢手段により付勢され、前記シリンダ室の容積を縮小するとき、前記オイル給排口を介して、前記シリンダ室に存在するエアをオイル排出部に排出するバルブを備えている。
そして、前記オイル給排口は、前記シリンダ室に前記コントロールバルブを介して前記オイルが供給されたとき、前記シリンダ室に存在するエアが集まる前記シリンダの上方位置に設定した。
【発明の効果】
【0008】
よって、本発明の油圧制御装置にあっては、シリンダ室にエアが存在する状態で、シリンダへオイルが供給されると、シリンダ室内では、比重の関係でオイルが下側に移動し、エアが上側に移動し、エアがシリンダの上方に集まる。
この状態で付勢手段により、ピストンをシリンダ室の容積を縮小させる側に摺動させ、シリンダ室に存在するエアが、オイル排出口を介して、バルブからオイル排出部に排出される。その際、オイル給排口を、エアが集まるシリンダの上方位置に設定したため、シリンダ室のエアは、オイルよりも先にシリンダ室から抜ける。このように、シリンダ室の上方位置にオイル給排口を設けたため、別途、エア抜き用のパイプを設けることなく、ピストンのストローク動作を伴う加圧・減圧を行うだけで、シリンダ室のエアを抜くことができる。
この結果、コストと重量の増大を招くことなく、油圧応答性の確保を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1のクラッチ油圧制御装置が適用された後輪駆動によるFRハイブリッド車両を示す全体システム図である。
【図2】実施例1の油圧制御装置により締結・開放が制御される第1クラッチCL1(クラッチの一例)が配置されたクラッチ&モータユニット部の構成を示す断面図である。
【図3】実施例1の油圧制御装置を構成する第1クラッチ油圧ユニットと第1クラッチコントロールバルブを接続する外配管を示す外観図である。
【図4】実施例1のクラッチ油圧制御装置の要部構成と油圧制御構成と電子制御構成を示す制御システム図である。
【図5】実施例1の統合コントローラにて実行されるエア抜き制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】実施例1の統合コントローラにて実行されるエア抜き制御処理で出力される油圧指令値のステップ特性を示すタイムチャートである。
【図7】車速とスロットル開度により決められる運転点により第1クラッチが開放されるEV領域と第1クラッチが締結されるHEV領域を定めた走行モード選択マップの一例を示す図である。
【図8】第1クラッチの締結・開放を行うための油圧回路を組み付けたときのエア容積と第1クラッチ圧の関係特性を示す図である。
【図9】第1クラッチ油圧回路の残留エア量と油圧指令値のON-OFF回数の計算式による関係特性と実験値の対比を示す対比特性図である。
【図10】実施例1のクラッチ油圧制御装置において初期組み付け時のエア抜き作用を説明する図であり、(a)はクラッチ油圧回路の容積関係を示し、(b)はエア抜き前の組み付け初期状態を示し、(c)は加圧によるピストンストローク状態を示し、(d)は減圧によるピストン戻り状態を示す。
【図11】実施例2の統合コントローラにて実行されるエア抜き制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】実施例2の統合コントローラにて実行されるエア抜き制御における第1クラッチへの油圧指令値の変化と、ピストンストロークの変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の油圧制御装置と油圧制御装置のエア抜き方法を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1および実施例2に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1のクラッチ油圧制御装置(油圧制御装置の一例)が適用された後輪駆動によるFRハイブリッド車両を示す全体システム図である。以下、図1に基づき全体システム構成を説明する。
【0012】
実施例1におけるFRハイブリッド車両の駆動系は、図1に示すように、エンジンEngと、フライホイールFWと、第1クラッチCL1と、モータ/ジェネレータMGと、第2クラッチCL2と、自動変速機ATと、プロペラシャフトPSと、ディファレンシャルDFと、左ドライブシャフトDSLと、右ドライブシャフトDSRと、左後輪RLと、右後輪RRと、を有する。なお、FLは左前輪、FRは右前輪、M-O/Pはメインオイルポンプ、S-O/Pはサブオイルポンプである。
【0013】
前記エンジンEngは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、エンジンコントローラ1からのエンジン制御指令に基づいて、エンジン始動制御やエンジン停止制御等が行われる。なお、エンジン出力軸には、フライホイールFWが設けられている。
【0014】
前記第1クラッチCL1は、エンジンEngとモータ/ジェネレータMGの間に介装され、EVモード(電気自動車走行モード)の選択時に開放され、HEVモード(ハイブリッド車走行モード)の選択時に締結される走行モード選択クラッチである。この第1クラッチCL1として、ノーマルクローズの乾式単板クラッチを用いている。
【0015】
前記モータ/ジェネレータMGは、第1クラッチCL1と自動変速機ATの間に介装され、電動機として動作する力行と、発電機として動作する回生の機能を持つ。このモータ/ジェネレータMGとしては、ロータに永久磁石を埋設し、ステータにコイルが巻き付けられた三相交流による同期型モータ/ジェネレータを用いている。
【0016】
前記第2クラッチCL2は、モータ/ジェネレータMGと左右後輪RL,RRの間に介装され、例えば、エンジン始動時等のように伝達トルクが変動するとき、スリップ締結状態とすることで、トルク変動を吸収するために設けられたクラッチである。この第2クラッチCL2としては、別途設けるのではなく、自動変速機ATの各変速段にて締結される複数の摩擦締結要素のうち、トルク伝達経路に存在する摩擦締結要素を選択している。
【0017】
前記自動変速機ATは、例えば、前進7速/後退1速等の有段階の変速段を車速やアクセル開度等に応じて自動的に切り換える有段変速機や無段階に変速比を変更する無段変速機であり、変速機出力軸は、プロペラシャフトPS、ディファレンシャルDF、左ドライブシャフトDSL、右ドライブシャフトDSRを介して左右後輪RL,RRに連結されている。
【0018】
前記メインオイルポンプM-O/Pは、自動変速機ATの入力軸に設けられ、機械的にポンプ作動するメカオイルポンプである。前記サブオイルポンプS-O/Pは、ユニットハウジング等に設けられ、メインオイルポンプM-O/Pによる吐出油量が無いときや不足するとき、モータによりポンプ作動する電動オイルポンプである。
【0019】
次に、ハイブリッド車両の制御系を説明する。
実施例1におけるFRハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、インバータ3と、バッテリ4と、第1クラッチコントロールバルブ6と、ATコントローラ7と、ATコントロールバルブ8と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10と、を有して構成されている。なお、各コントローラ1,2,7,9と、統合コントローラ10とは、情報交換が互いに可能なCAN通信線11を介して接続されている。
【0020】
前記エンジンコントローラ1は、エンジン回転数センサ12からのエンジン回転数情報と、統合コントローラ10からの目標エンジントルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、エンジン動作点(Ne、Te)を制御する指令を、エンジンEngのスロットルバルブアクチュエータ等へ出力する(エンジン制御)。
【0021】
前記モータコントローラ2は、モータ/ジェネレータMGのロータ回転位置を検出するレゾルバ13からの情報と、統合コントローラ10からの目標MGトルク指令および目標MG回転数指令と、他の必要情報を入力する。そして、モータ/ジェネレータMGのモータ動作点(Nm、Tm)を制御する指令をインバータ3へ出力する(モータ制御)。なお、このモータコントローラ2では、バッテリ4の充電容量をあらわすバッテリSOCを監視している。
【0022】
前記ATコントローラ7は、アクセル開度センサ16と、車速センサ17と、他のセンサ類18(変速機入力回転数センサ、インヒビタースイッチ等)からの情報を入力する。そして、Dレンジ走行時、アクセル開度APOと車速VSPにより決まる運転点がシフトマップ上で存在する位置により最適な変速段を検索し、検索された変速段を得る制御指令を、ATコントロールバルブ8に出力する(変速制御)。
このATコントローラ7は、第1クラッチ油圧ユニット14のピストンストローク位置を検出する第1クラッチストロークセンサ15からのセンサ情報と、統合コントローラ10からの目標CL1トルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、第1クラッチCL1の締結・スリップ締結・開放を制御する指令を、第1クラッチコントロールバルブ6に出力する(第1クラッチ制御)。
このATコントローラ7は、統合コントローラ10から目標CL2トルク指令を入力すると、第2クラッチCL2のスリップ締結制御指令を、ATコントロールバルブ8に出力する(第2クラッチ制御)。
【0023】
前記ブレーキコントローラ9は、4輪の各車輪速を検出する車輪速センサ19と、ブレーキストロークセンサ20からのセンサ情報と、統合コントローラ10からの回生協調制御指令と、他の必要情報を入力する。そして、ブレーキ操作時、ブレーキストロークBSから求められる要求制動力に対し回生制動力だけでは不足する場合、その不足分を機械的な制動力で補う(回生協調ブレーキ制御)。
【0024】
前記統合コントローラ10は、車両全体の消費エネルギーを管理し、効率的に車両を走行させるための機能を担うもので、モータ回転数Nmを検出するモータ回転数センサ21やエア抜きスイッチ22等からの必要情報およびCAN通信線11を介して情報を入力する。そして、エンジンコントローラ1へ目標エンジントルク指令、モータコントローラ2へ目標MGトルク指令および目標MG回転数指令、第1クラッチコントローラ5へ目標CL1トルク指令、ATコントローラ7へ目標CL2トルク指令、ブレーキコントローラ9へ回生協調制御指令を出力する(統合制御)。
【0025】
図2は、実施例1の油圧制御装置により締結・開放が制御される第1クラッチCL1(クラッチの一例)が配置されたクラッチ&モータユニット部の構成を示す断面図である。図3は、実施例1の油圧制御装置を構成する第1クラッチ油圧ユニットと第1クラッチコントロールバルブを接続する外配管を示す外観図である。図4は、実施例1のクラッチ油圧制御装置の要部構成と油圧制御構成と電子制御構成を示す制御システム図である。以下、図2〜図4に基づいて、第1クラッチCL1を締結・開放する油圧回路構成を説明する。
【0026】
実施例1のクラッチ&モータユニット部は、図2及び図3に示すように、エンジンEngと、フライホイールFWと、第1クラッチCL1(クラッチ)と、モータ/ジェネレータMGと、メインオイルポンプM-O/Pと、自動変速機ATと、ユニットハウジング30と、を備えている。
【0027】
前記ユニットハウジング30は、図2に示すように、フロント側がエンジンEngのエンジンブロック31に連結され、リア側が自動変速機ATのトランスミッションケース32に連結されている。そして、このユニットハウジング30の内部は、図2に示すように、モータカバー33とステータハウジング34により3室に区画されている。エンジンEngとモータカバー33に囲まれた第1室に、フライホイールFWと第1クラッチCL1を配置している。モータカバー33とステータハウジング34に囲まれた第2室に、モータ/ジェネレータMGを配置している。ステータハウジング34と自動変速機ATに囲まれた第3室に、メインオイルポンプM-O/Pを配置している。
【0028】
前記第1クラッチCL1は、図2に示すように、フライホイールFWとモータ/ジェネレータMGの中空モータシャフト35の間に介装される。前記モータ/ジェネレータMGは、図2に示すように、ロータの内側位置にレゾルバ13が配置され、ユニットハウジング30を貫通して強電ハーネス端子36と冷却水出入口ポート37が設けられている。前記メインオイルポンプM-O/Pは、図2に示すように、中空モータシャフト35に結合された変速機入力軸38により駆動する。
【0029】
実施例1の第1クラッチCL1を締結・開放するための油圧回路構成は、図2〜図4に示すように、第1クラッチ油圧ユニット14(油圧ユニット)と、第1クラッチコントロールバルブ6(コントロールバルブ)と、ATコントロールバルブ8と、メインオイルポンプM-O/Pと、サブオイルポンプS-O/P(オイルポンプ)と、オイルパン39(オイル排出部)と、を備えている。
【0030】
前記第1クラッチ油圧ユニット14は、第1クラッチCL1の締結・開放を制御するCSC油圧アクチュエータである。この第1クラッチ油圧ユニット14は、図2に示すように、第1クラッチCL1の締結・開放を行うときCSCシリンダ40(シリンダ)に対して摺動するCSCピストン41(ピストン)と、CSCピストン41をCSCシリンダ室42(シリンダ室)の容積を縮小させる側に付勢するダイアフラムスプリング43(付勢手段)と、CSCシリンダ室42へのオイル給排を行うオイル給排口44と、を備えている。ダイアフラムスプリング43の一端側は、プレッシャリング45に接触し、ダイアフラムスプリング43の他端側は、レリーズベアリング46を介してCSCピストン41に接触する。
つまり、CSCシリンダ40への油圧供給が無いときは、ダイアフラムスプリング35による付勢力にて第1クラッチCL1の完全締結を保つ。そして、CSCシリンダ40への油圧供給があるときは、ダイアフラムスプリング35の付勢力に抗して摺動するCSCピストン41のストローク量を制御することにより、スリップ締結から完全開放までをコントロールする。なお、CSCとは、「Concentric Slave Cylinder」の略である。
【0031】
前記第1クラッチ油圧ユニット14のCSCシリンダ室42と第1クラッチコントロールバルブ6を接続する油路は、図2〜図4に示すように、オイル給排口44から配管コネクタ50までを接続する内配管51と、配管コネクタ50からケース取り付け部52までを接続する外配管53と、外配管53に連通させてトランスミッションケース32に形成されたケース内油路54と、ケース内油路54に連通させて第1クラッチコントロールバルブ6内に形成された第1クラッチ圧油路55と、により構成されている。なお、外配管53は、その途中位置にてユニットハウジング30に対し、クリップ56により中間支持されている。
【0032】
前記第1クラッチコントロールバルブ6は、図4に示すように、メインオイルポンプM-O/PまたはサブオイルポンプS-O/Pと、CSCシリンダ室42の連通・非連通を切り替える切り替えバルブとして、ソレノイド圧Psolをバルブ作動圧とし、第1クラッチ圧Pclを作り出すスプールバルブ60と、パイロット圧Ppを作動圧とし、ソレノイド圧Psolを作り出すソレノイドバルブ61と、を備えている。
【0033】
前記スプールバルブ60は、バルブ穴60aを摺動可能なスプール60bと、スプール60bを図4の左方向に付勢するスプリング60cと、バルブ穴60aに形成された第1クラッチ圧ポート60d、ライン圧ポート60e、ドレーンポート60f、バルブ作動圧ポート60gと、を有する。第1クラッチ圧ポート60dは、第1クラッチ圧油路55に連通する。ライン圧ポート60eは、ライン圧油路62に連通する。ドレーンポート60fは、ドレーン油路63に連通する。バルブ作動圧ポート60gは、ソレノイド圧油路64に連通する。
そして、スプールバルブ60の第1クラッチ圧ポート60dとライン圧ポート60eが非連通状態(=第1クラッチ圧ポート60dとドレーンポート60fが連通状態)のとき、ダイアフラムスプリング35の付勢力によるピストンストロークを伴ってCSCシリンダ室42の容積が縮小すると、CSCシリンダ室42と、CSCシリンダ室42からスプールバルブ60に至る油路に存在するエアとオイルの一部を、ドレーンポート60fとドレーン油路63を経過してオイルパン39に排出する。
【0034】
前記ソレノイドバルブ61は、ATコントローラ7からの制御指令により、ATコントロールバルブ8により作り出されたパイロット圧Ppを元圧とし、ソレノイド圧Psolを作り出す。このスプールバルブ60とソレノイドバルブ61は、通常走行時における第1クラッチCL1の締結・開放の制御を行うバルブであり、この実施例1では、通常走行時に使用するコントロールバルブをそのまま流用し、初期組み付け時やリペア組み付け時において、CSCシリンダ室42や油路に残留するエアを抜くエア抜き制御を行うようにしている。
【0035】
前記ATコントロールバルブ8は、図4に示すように、ATコントローラ7からの制御指令によりソレノイド圧を作り出すライン圧ソレノイド80と、ポンプ圧を元圧とし、ソレノイド圧を信号圧としてライン圧PLを調圧するプレッシャレギュレータバルブ81と、ポンプ圧を元圧とし、一定のパイロット圧Ppを調圧するパイロットバルブ82と、を備えている。
このATコントロールバルブ8による通常走行時におけるライン圧PLは、自動変速機ATで行う変速制御の元圧として、アクセル開度等に応じた圧力に調圧される。これに対し、エア抜き制御時におけるライン圧PLは、エア抜き制御でピストンストローク状態とする加圧時、配管51,53内のエアをCSCシリンダ室42に送り込めるだけの圧力として予め規定しておいた規定圧力PLsに調圧される。このとき、CSCシリンダ室42の容積も、配管51,53内のエアをCSCシリンダ室42に送り込めるように、その容積が規定されている。
【0036】
前記オイル給排口44は、加圧オイルの供給によりCSCシリンダ室42の容積を拡大するピストンストローク状態において、CSCシリンダ室42と、CSCシリンダ室42からスプールバルブ60に至るまでの油路中に存在するエアが圧縮され、圧縮エアが加圧オイルと共にCSCシンリンダ室42内に入り、CSCシリンダ室42内では、比重によりエアが上方に集まり、オイル層とエア層に分かれる。前記オイル給排口44は、CSCシリンダ室42に存在するエアが集まることでエア層を形成するCSCシリンダ40の上方位置に設定している。したがって、オイル給排口44の設定許容範囲は、図4のA−A断面に示すように、CSCシリンダ室42内でオイル層とエア層に分かれたとき、エア層が存在する範囲Eである。つまり、オイル給排口44は、この範囲Eの何れかの位置に設定することが許容される。
【0037】
図5は、実施例1の統合コントローラ10にて実行されるエア抜き制御処理の流れを示すフローチャートである(エア抜き制御手段)。以下、図5の各ステップについて説明する。
【0038】
初期組み付け時、組み立てラインでは、総合コントローラ10に設備側のコントローラからエア抜き制御開始の信号が送信され、エア抜き制御が開始される。また、メインオイルポンプM-O/Pは、設備側の駆動源により自動変速機ATの入力軸が駆動されることで駆動し、加圧オイルを吐出する。
【0039】
ステップS1では、総合コントローラ10からATコントローラ7を介し、バルブソレノイド61aに対し油圧指令値ONを出力し、ステップS2へ進む。
【0040】
ステップS2では、ステップS1での油圧指令値ONの出力に続き、油圧指令値ONの出力開始から起動されるオンタイマー値Tonが、第1設定時間T1以上であるか否かを判断し、YES(Ton≧T1)の場合はステップS4へ進み、NO(Ton<T1)の場合はステップS1へ戻る。
ここで、「第1設定時間T1」は、加圧指令(油圧指令値ON)の開始からCSCピストン41が最大ストローク位置に達するまでに要する時間を予め計測しておき、この計測データに基づき、無駄時間を抑えた必要最小限域の所要時間に設定される(図6参照)。
【0041】
ステップS3では、ステップS2でのTon≧T1であるとの判断、あるいは、ステップS4でのToff<T2であるとの判断に続き、総合コントローラ10からATコントローラ7を介してバルブソレノイド61aに対し油圧指令値OFFを出力し、ステップS4へ進む。
【0042】
ステップS4では、ステップS3での油圧指令値OFFの出力に続き、油圧指令値OFFの出力開始から起動されるオフタイマー値Toffが、第2設定時間T2以上であるか否かを判断し、YES(Toff≧T2)の場合はステップS6へ進み、NO(Toff<T2)の場合はステップS3へ戻る。
ここで、「第2設定時間T2」は、減圧指令(油圧指令値OFF)の開始からCSCピストン41が初期位置に戻るまでに要する時間を予め計測しておき、この計測データに基づき、無駄時間を抑えた必要最小限域の所要時間に設定される(図6参照)。
【0043】
ステップS5では、ステップS4でのToff≧T2であるとの判断に続き、加圧・減圧の単位を1回としてカウントするカウント値nを、n=n+1の式により書き換え、ステップS6へ進む。なお、カウント値nの初期値は、n=0である。
【0044】
ステップS6では、ステップS7でのカウント値nの書き換えに続き、カウント値nが設定カウント値N以上であるか否かを判断し、YES(n≧N)の場合はエンドへ進み、NO(n<N)の場合はステップS1へ戻る。
ここで、「設定カウント値N」は、加圧・減圧の単位を1回としてカウントするエア抜き制御指令の出力を、油圧応答性が確保されるエア抜け状態に達する所要回数に基づいて設定される。
【0045】
次に、作用を説明する。
まず、「先行技術の解決すべき課題」の説明を行い、続いて、実施例1のクラッチ油圧制御装置における作用を、「本発明のエア抜き方法のメカニズム」、「組み付け時のエア抜き作用」に分けて説明する。
【0046】
[先行技術の解決すべき課題]
ノーマルクローズによる乾式クラッチの油圧ユニットは、外部のクラッチペダル(マスターシリンダ)と油圧シリンダ(CSC)を閉回路で繋ぎ、クラッチペダル操作により油圧シリンダに圧力を掛け、弾性力により締結されている乾式クラッチの開放を行っている(実公平7−29313号公報参照)。
【0047】
この閉回路にエアが存在していると、ペダル操作力を変換した油圧が油圧シリンダまで到達する油圧応答時間に遅れを生じさせ、油圧シリンダの作動に支障をもたらす。したがって、組み付け時に閉回路のエアを抜いて初期応答を確保するため、エアブリード機構の設定とエア抜き作業が必要となる。
【0048】
このエアブリード機構として、ブリーザ(エア抜きパイプ)を設定した場合、エア抜き時にエアと共にオイルがブリーザから外部に抜けてしまう。このため、ブリーザには、別途、オイル受け等の部材が必要となり、コストと重量が増大するし、ブリーザによる占有スペースが拡大し、周辺部品のレイアウト自由度に制約を与える。
【0049】
また、初期組み付け時やリペア組み付け時に行うエア抜き作業は、各油圧ユニットに対して作業者が個々に行う手作業となるため、エア抜き作業が極めて面倒であると共に、エア抜き作業工数も著しく増大する。
【0050】
一方、駆動源としてエンジンとモータを搭載し、エンジンとモータの間に走行モード選択クラッチ(=第1クラッチCL1)を介装したハイブリッド車が知られている。このハイブリッド車の場合、例えば、図7に示すように、スロットル開度がa/8開度(設定開度)以下の領域をEV領域とし、スロットル開度がa/8開度を超える領域をHEV領域とする走行モード選択マップを有する。したがって、走行時、車速とスロットル開度により決められる運転点がEV領域にある場合には第1クラッチCL1が開放され、運転点がHEV領域にある場合には第1クラッチCL1が締結される。
【0051】
そして、EVモードによる走行時、アクセル踏み込み操作により、運転点がEV領域からHEV領域へと移行すると、開放されている第1クラッチCL1を締結し、エンジンを作動させて速やかにエンジンとモータを駆動源とするHEVモードへ遷移し、高い要求駆動力に応える。しかし、第1クラッチCL1の油圧応答性が低いと、エンジン始動の遅れやHEVモードへの遷移遅れとなり、発進性や加速性が劣ってしまう。
【0052】
また、HEVモード走行時、アクセル戻し操作により、運転点がHEV領域からEV領域へと移行すると、締結されている第1クラッチCL1を開放し、エンジンを停止させて速やかにモータのみを駆動源とするEVモードへ遷移し、高い燃費性能を確保する。しかし、第1クラッチCL1の油圧応答性が低いと、エンジン停止の遅れやEVモードへの遷移遅れとなり、燃費性能を低下させる原因となってしまう。
【0053】
このように、EVモードの選択時に開放され、HEVモードの選択時に締結される走行モード選択クラッチの場合、駆動性能と燃費性能を両立させるために、高く安定したクラッチ油圧応答性能を確保したいという要求がある。しかし、エア抜き作業を手作業により行っている限り、この要求に応えることができない。
【0054】
[本発明のエア抜き方法のメカニズム]
本発明は、上記課題を解決するため、初期組み付け時やリペア組み付け時、閉回路に存在する残留エアを、コントローラからの制御指令による加圧・減圧作動(ピストンストローク)を行うだけで抜くというように、ブリーザ(エア抜きパイプ)無しでエア抜きを行う装置及びエア抜き方法を提案するものである。以下、図8〜図10に基づいて、本発明のエア抜き方法のメカニズムを説明する。
【0055】
〈初期状態〉
初期組み付け時やリペア組み付け時であって、組み付け初期状態では、図10(b)に示すように、CSCシリンダ室42と、オイル給排口44を介して接続される内配管51、配管コネクタ50、外配管53、ケース内油路54、第1クラッチ圧油路55に、大気圧レベルのエアが充満している状態である。
【0056】
〈ピストンストローク状態〉
ピストンストローク状態でのオイルとエアの動きを述べる。
(a) まず、CSCピストン41のストローク分の容積によるオイルが、エアが充満している閉回路内に供給される。
(b) 油圧が掛かり、閉回路内のエアが圧縮される。
ここで、閉回路内のエア圧縮は、PV=一定という関係、つまり、油圧Pを高くするほど閉回路内のエア容積を小さくするという関係により圧縮される。例えば、図8に点線矢印C0-C1に示すように、閉回路内のエア容積がB0のとき、油圧を0からP1まで高めると、閉回路内のエア容積がB0からB1まで圧縮される。
(c) エア圧縮された容積分のオイルが閉回路内に供給される。
例えば、エア容積がB0からB1まで圧縮されると、圧縮された容積分(B0−B1)のオイルが閉回路内に供給される。
(d) CSCシリンダ40のCSCシリンダ室42内は、エアとオイルの比重の違いにより、図10(c)に示すように、エアが上部に、オイルは下部に分かれる。なお、オイル給排口44を介してCSCシリンダ室42に接続される油路系51,50,53,54,55は、図10(c)に示すように、オイルがほぼ充満している状態となる。
【0057】
〈ピストン戻り状態〉
ピストン戻り状態でのオイルとエアの動きを述べる。
(a) CSCピストン41が戻った容積分のオイルが排出されていく。
(b) CSCシリンダ室42からは、下部のオイルを残したままで、上部に分かれたエアが、オイル給排口44を介して排出される。
(c) 油圧が低下するにつれてエアは元の容積に拡大しながら排出されてゆく。
(d) エア排出後、CSCシリンダ室42内には、オイルのみが残る。
(e) 図10(d)に示すように、オイルとエアが入れ替わった形になり、初期状態に対してエア量が低下する。
【0058】
〈油圧オン・オフの繰り返し〉
上記説明は、閉回路内にエアが充満している初期状態から1回だけ油圧オン・オフしたとき、ピストンストローク状態からピストン戻り状態に移行してエアを排出し、エア量を低下させるメカニズムである。しかし、1回だけの油圧オン・オフによっては、高いクラッチ油圧応答性を確保できる残留エア量までエア量が低減するという確かな保障がない。そこで、本発明のエア抜き制御では、確実な残留エア量の低減を目指し、油圧オン・オフを複数回繰り返すようにしている。
【0059】
すなわち、油圧オンn回後の残留エア量をVair(n)は、
Vair(n)=(Vp−Vs)+Vair(n-1)油圧制御装置K …(1)
の計算式にてあらわすことができる。
但し、(1)式において、Vpは配管分の容量(図10(a)参照)、VsはCSCピストン41のストローク容量(図10(a)参照)、Vair(n-1)は油圧オン(n-1)回後の残留エア量、Kは油圧による圧縮係数である。
【0060】
そこで、上記(1)の計算式を、残留エア量とON-OFF回数を座標軸とする座標面に特性線にてあらわすと、図9の実線特性に示すように、1回〜3回程度のON-OFF回数によって残留エア量は急激に低下し、その後はON-OFF回数を増してもほぼ横這い状態の特性になる。そして、残留エア量とON-OFF回数の実験値を、同じ座標軸による座標面にプロットすると、図9に示す■印となる。この図9の特性線と実験値を対比してみると、計算式による特性線と実験値とがほぼ一致していることがわかる。したがって、高いクラッチ油圧応答性を確保できる残留エア量の低減を達成するには、油圧オン・オフを何十回も繰り返す必要は無く、数回程度繰り返すだけで達成できることが確認された。
【0061】
この結果、本発明のエア抜き方法は、油圧オン・オフを数回程度繰り返す制御とする。そして、使用初期から高いクラッチ油圧応答性を確保するための組み付け時エア抜きは、第1クラッチCL1の締結・開放を行うための油圧回路構成を組み付けた後、1回目の油圧オン・オフにより閉回路内のエア量を一気に低下させ、2回目以降の油圧オン・オフにより、前回のエア抜きで残った残留エア量を、回数を重ねる毎に減少させてゆくというメカニズムにより達成される。
【0062】
[組み付け時のエア抜き作用]
初期組み付け時やリペア組み付け時におけるエア抜き作用を、図4〜図6に基づいて説明する。
【0063】
第1クラッチCL1の締結・開放を行うための油圧回路構成を組み付けた後、エア抜きスイッチ22をONにすると、図5のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3へと進み、ステップS3にてTon<T1と判断されている間、ステップS2→ステップS3へと進む流れが繰り返される。
つまり、ステップS1では、サブオイルポンプS-O/Pがモータ駆動されると共に、ATコントロールバルブ8により規定圧力PLsによるライン圧PLが作り出される。そして、ステップS2では、第1クラッチコントローラ5からバルブソレノイド61aに対し油圧指令値ONが出力され、この油圧指令値ONの出力は、第1設定時間T1が経過するまで継続される。
【0064】
そして、ステップS3にてTon≧T1と判断されると、図5のフローチャートにおいて、ステップS3からステップS4→ステップS5へと進み、ステップS5にてToff<T2と判断されている間、ステップS4→ステップS5へと進む流れが繰り返される。
つまり、ステップS4では、第1クラッチコントローラ5からバルブソレノイド61aに対し油圧指令値OFFが出力され、この油圧指令値OFFの出力は、第2設定時間T2が経過するまで継続される。
【0065】
そして、ステップS5にてToff≧T2と判断されると、図5のフローチャートにおいて、ステップS5からステップS6→ステップS7へと進み、ステップS7にてn<Nと判断されると、ステップS7からステップS2へ戻り、次回の油圧オン・オフによるエア抜き制御が開始される。そして、油圧オン・オフによるエア抜き制御を設定カウント値Nだけ繰り返すことで、ステップS7にてn≧Nと判断されると、ステップS7からエンドヘ進み、エア抜き制御を終了する。
【0066】
上記のように、実施例1のエア抜き制御では、エア抜きスイッチ22のON操作に基づき規定圧力PLsによるライン圧PLを作り出す準備処理を行った後、油圧指令値ONの出力による加圧と、油圧指令値OFFの出力による減圧を1単位とするエア抜き制御指令が出力される。そして、この加圧・減圧の波形は、図6に示すように、油圧指令値ON/OFFによるステップ状波形とされ、加圧・減圧の単位を1回としてカウントするエア抜き制御指令の出力を、油圧応答性が確保されるエア抜け状態に達するまでの所定回数(図6の一例では5回)行われる。
【0067】
前記エア抜きスイッチ22のON操作に基づく準備処理では、規定圧力PLsによるライン圧PLが作り出される。すなわち、ATコントローラ7からライン圧ソレノイド80に制御指令が出力されると、ライン圧ソレノイド80では、ソレノイド圧が作り出され、このソレノイド圧がプレッシャレギュレータバルブ81に加えられる。このソレノイド圧を信号圧とするプレッシャレギュレータバルブ81では、サブオイルポンプS-O/Pからのポンプ圧を元圧とし、予め規定しておいた規定圧力PLs(配管51,53内のエアをCSCシリンダ室42に送り込めるだけの圧力)のライン圧PLに調圧される。
【0068】
前記油圧指令値ONの出力による加圧では、CSCピストン41のストロークによりCSCシリンダ室42の容積を拡大する。すなわち、ATコントローラ7からソレノイドバルブ61へON指令が出力されると、ソレノイドバルブ61は、ライン圧PL(=規定圧力PLs)を連通するソレノイド圧Psolを作り出す。よって、ATコントロールバルブ8からの規定圧力PLsによる加圧オイルは、図4の黒塗り矢印に示すように、ライン圧油路62を経過し、バルブ作動圧ポート60gに供給される。これにより、スプールバルブ60のスプール60bは、スプリング60cに抗して図4の実線位置から仮想線位置へストロークし、第1クラッチ圧ポート60dとライン圧ポート60eを連通する。このバルブ切り替え動作により、ライン圧油路62からの規定圧力PLsによる加圧オイルは、ライン圧ポート60eと第1クラッチ圧ポート60dを経過して第1クラッチ圧油路55に入る。そして、規定圧力PLsによる加圧オイルは、ケース内油路54→外配管53→配管コネクタ50→内配管51を経過し、オイル給排口44からCSCシリンダ室42へと導入され、CSCピストン41を図4の左方向へ押し、CSCピストン41が図4の左方向へストロークすることにより、CSCシリンダ室42の容積を拡大する。
【0069】
前記油圧指令値OFFの出力による減圧では、CSCピストン41の戻りによりCSCシリンダ室42の容積を縮小する。すなわち、CSCピストン41のストロークを伴う加圧後に第1クラッチコントローラ5からソレノイドバルブ61へOFF指令が出力されると、ソレノイドバルブ61は、ライン圧PLを遮断するソレノイド圧Psolを作り出す。よって、スプールバルブ60のバルブ作動圧ポート60gに供給されていたバルブ作動圧(=ライン圧PL)がドレーンされ、スプールバルブ60のスプール60bは、スプリング60cによる付勢力にて図4の仮想線位置から実線位置へストロークし、第1クラッチ圧ポート60dとドレーンポート60fを連通する。このバルブ切り替え動作により、CSCシリンダ室42内のオイル圧が低下し、CSCピストン41は、ダイアフラムスプリング43の付勢力にしたがって、図4の右方向に戻りストロークする。そして、CSCピストン41の戻りストロークに伴ってCSCシリンダ室42の容積が縮小する。
【0070】
このように、スプールバルブ60が連通側に切り替えられ、CSCシリンダ40へ加圧オイルが供給されると、CSCシリンダ室42と、オイル給排口44からスプールバルブ60までの油路に存在するエアが圧縮され、圧縮されたエアがCSCシリンダ室42内に入る。このCSCシリンダ室42内では、比重の関係でオイル(比重が大)が下側に移動し、エア(比重が小)が上側に移動し、オイル層とエア層に分かれる。
【0071】
この状態でスプールバルブ60を非連通側に切り替えると、ダイアフラムスプリング43の付勢力により、CSCピストン41がCSCシリンダ室42の容積を縮小させる側に戻りストロークする。この戻りストロークにより、CSCシリンダ室42と、CSCシリンダ室42とスプールバルブ60を繋ぐ油路に存在するエアとオイルの一部が、図4の白抜き矢印に示すように、CSCシリンダ室42→内配管51→配管コネクタ50→外配管53→ケース内油路54→第1クラッチ圧油路55→第1クラッチ圧ポート60d→ドレーンポート60f→ドレーン油路63を経過し、オイルパン39に排出される。
【0072】
その際、CSCシリンダ40のオイル給排口44を、エア層が存在するCSCシリンダ40の上方位置に設定したため、エアの方がオイルよりも先にCSCシリンダ室42内から抜ける。このように、CSCシリンダ室42の上方位置からオイル給排を行うようにしたため、別途、エア抜き用のパイプを設けることなく、CSCピストン41のストローク動作を伴う加圧・減圧を行うだけで、CSCシリンダ室42内のエアを整然と抜くことができる。
【0073】
上記のように、第1クラッチCL1の締結・開放を行うための油圧回路構成を組み付けた後に行われるエア抜き制御では、1回目の油圧オン・オフ(加圧・減圧)により閉回路内のエア量を一気に低下させ、2回目以降の油圧オン・オフ(加圧・減圧)により、前回のエア抜きで残った残留エア量を、回数を重ねる毎に減少させてゆくというエア抜き作用を示すことになる。この結果、所望の油圧応答性能を得る残留エア量になるまでエアを排出するエア抜き作業を、開始操作だけで自動的に行われるエア抜き制御により、短時間の作業時間で、かつ、ユニット毎のバラツキを無くして安定して行うことができると共に、第1クラッチCL1の使用初期から高いクラッチ油圧応答性を確保することができる。
【0074】
次に、効果を説明する。
実施例1のクラッチ油圧制御装置とクラッチ油圧制御装置のエア抜き方法にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0075】
(1) 油圧ユニット(第1クラッチ油圧ユニット14)と、該油圧ユニット(第1クラッチ油圧ユニット14)とは油路を介して接続されたコントロールバルブ(第1クラッチコントロールバルブ6)と、を備えた油圧制御装置(クラッチ油圧制御装置)のエア抜き方法において、前記油圧ユニット(第1クラッチ油圧ユニット14)は、オイル供給源からオイルが供給されるシリンダ室(CSCシリンダ室42)を備えたシリンダ(CSCシリンダ40)と、該シリンダ(CSCシリンダ40)とともに前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)を形成し、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)に前記オイルが給排されるとき前記シリンダ(CSCシリンダ40)に対して摺動するピストン(CSCピストン41)と、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)の容積を縮小させる側に、前記ピストン(CSCピストン41)を付勢する付勢手段(ダイアフラムスプリング43)と、前記シリンダ(CSCシリンダ40)に設けられ、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)へ給排される前記オイルが通流するオイル給排口44と、を備え、前記コントロールバルブは、前記ピストン(CSCピストン41)が、前記付勢手段(ダイアフラムスプリング43)により付勢され、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)の容積を縮小するとき、前記オイル給排口44を介して、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)に存在するエアをオイル排出部(オイルパン39)に排出するバルブ(スプールバルブ60)を備え、前記オイル給排口44は、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)に前記コントロールバルブ(第1クラッチコントロールバルブ6)を介して前記オイルが供給されたとき、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)に存在するエアが集まる前記シリンダ(CSCシリンダ40)の上方位置に設定した。
このため、コストと重量の増大を招くことなく、油圧ユニット(第1クラッチ油圧ユニット14)の油圧応答性(クラッチ油圧応答性)の確保を図る油圧制御装置(クラッチ油圧制御装置)を提供することができる。
【0076】
(2) 前記オイル排出部(オイルパン39)と、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)にオイルを供給するオイルポンプ(サブオイルポンプS-O/P)と、を備え、前記オイル排出部(オイルパン39)は、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)から排出された前記オイルを貯留し、前記オイルポンプ(サブオイルポンプS-O/P)は、前記オイル排出部(オイルパン39)に貯留されたオイルを吸入して前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)にオイルを供給する。
このように、エアの排出先を油圧制御装置(クラッチ油圧制御装置)のオイル排出部(オイルパン39)としたため、エアの排出とともに排出されるオイルを回収する手段を別途設ける必要がない。これにより、エア抜き作業を効率化することができる。
【0077】
(3) 前記クラッチ油圧ユニット(第1クラッチ油圧ユニット14)の組付け時、前記ピストン(CSCピストン41)を摺動させ前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)の容積を拡大する加圧を行い、その後、前記ピストン(CSCピストン41)が戻ってシリンダ室(CSCシリンダ室42)の容積を縮小する減圧を行うという加圧・減圧を単位とするエア抜き制御を行うエア抜き制御手段(図5)を設けた。
このため、クラッチ油圧ユニット(第1クラッチ油圧ユニット14)の組付け後、車両走行の初期から油圧応答性(クラッチ油圧応答性)の確保を図ることができる。
【0078】
(4) 前記エア抜き制御手段(図5)は、前記エア抜き制御の指令値の加圧・減圧の波形を、ステップ状波形とする(図6)。
このため、エア抜き制御動作で、無駄時間を抑えて加圧と減圧を素早く行うことができ、エア抜き作業時間の短縮化を図ることができる。
【0079】
(5) 前記エア抜き制御手段(図5)は、加圧・減圧の単位を1回としてカウントする前記エア抜き制御の指令値の出力を、所定の油圧応答性が確保されるエア抜け状態に達するまでの所定回数行う(図6)。
このため、エア抜き効果が大きい回数だけ加圧・減圧を行うことで、高いエア抜き効果を達成しながらも、エア抜き作業時間の短縮化を図ることができる。すなわち、加圧・減圧を1回の単位とするエア抜き制御では、ある回数を超えるとエア抜け量が小さく抑えられ、残留エア量がほぼ横這い状態となることによる。
【0080】
(6) 前記エア抜き制御手段(図5)は、前記加圧を行う指令値を出力してから前記ピストン(CSCピストン41)が最大ストローク位置に達するまでに要する時間と、前記減圧を行う指令値を出力してから前記付勢手段(ダイアフラムスプリング43)の付勢力により前記ピストン(CSCピストン41)が初期位置に戻るまでに要する時間を予め計測しておき、1回の加圧・減圧が終わり、次の加圧・減圧を開始するまでのタイミングを、前記計測した時間データに基づいて設定する。
このため、ピストン(CSCピストン41)のストロークを伴う1回のエア抜き作業が終わったタイミングで次のエア抜き作業が開始されるため、エア抜き量を損なうことなく、エア抜き作業時間の短縮化を図ることができる。
【0081】
(7) 前記油路は、前記油圧ユニット(第1クラッチ油圧ユニット14)と前記コントロールバルブ(第1クラッチコントロールバルブ6)を接続する配管(内配管51、外配管53)の内壁により形成された油路であり、前記シリンダ(CSCシリンダ40)は、加圧時、前記配管(内配管51、外配管53)内のエアを前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)に送り込めるように、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)の容積を規定し、前記エア抜き制御手段(図5)は、加圧時、前記配管(内配管51、外配管53)内のエアを前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)に送り込めるように、加圧時の油圧の大きさを規定する(規定油圧PLs)。
このため、油圧ユニット(第1クラッチ油圧ユニット14)とコントロールバルブ(第1クラッチコントロールバルブ6)が配管(内配管51、外配管53)を用いて接続されている場合であっても、効率良いエア抜き作業にて確実に残留エアを抜くことができる。
【0082】
(8) 前記油圧ユニット(第1クラッチ油圧ユニット14)により締結・開放されるクラッチ(第1クラッチCL1)を有し、前記クラッチ(第1クラッチCL1)は、エンジンEngとモータ(モータ/ジェネレータMG)と駆動輪(左右後輪RL,RR)を備えたハイブリッド駆動系のうち、前記エンジンEngと前記モータ(モータ/ジェネレータMG)の間に介装され、電気自動車走行モード(EVモード)の選択時に開放され、ハイブリッド車走行モード(HEVモード)の選択時に締結される走行モード選択クラッチである。
このため、油圧応答性の要求が高いクラッチ(第1クラッチCL1)に、本発明のエア抜き制御を適用することにより、ハイブリッド車両としての駆動力性能と燃費性能の両立を図ることができる。
【0083】
(9) 油圧ユニット(第1クラッチ油圧ユニット14)と、該油圧ユニット(第1クラッチ油圧ユニット14)とは油路を介して接続されたコントロールバルブ(第1クラッチコントロールバルブ6)と、を備えた油圧制御装置(クラッチ油圧制御装置)のエア抜き方法において、前記油圧ユニット(第1クラッチ油圧ユニット14)は、オイル供給源からオイルが供給されるシリンダ室(CSCシリンダ室42)を備えたシリンダ(CSCシリンダ40)と、該シリンダ(CSCシリンダ40)とともに前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)を形成し、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)に前記オイルが給排されるとき前記シリンダ(CSCシリンダ40)に対して摺動するピストン(CSCピストン41)と、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)の容積を縮小させる側に、前記ピストン(CSCピストン41)を付勢する付勢手段(ダイアフラムスプリング43)と、前記シリンダ(CSCシリンダ40)に設けられ、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)へ給排される前記オイルが通流するオイル給排口44と、を備え、前記コントロールバルブは、前記ピストン(CSCピストン41)が、前記付勢手段(ダイアフラムスプリング43)により付勢され、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)の容積を縮小するとき、前記オイル給排口44を介して、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)に存在するエアをオイル排出部(オイルパン39)に排出するバルブ(スプールバルブ60)を備え、前記油圧ユニット(第1クラッチ油圧ユニット14)と前記コントロールバルブ(第1クラッチコントロールバルブ6)を組み付ける組み付け工程と、前記組み付け後、前記ピストン(CSCピストン41)を摺動させ前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)の容積を拡大する加圧を行い、その後、前記ピストン(CSCピストン41)が戻って前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)の容積を縮小する減圧を行い、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)の容積の縮小に伴い前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)に存在するエアを前記オイル排出部(オイルパン39)に排出するエア抜き工程と、を有する。
このため、コストと重量の増大を招くことなく、油圧ユニット(第1クラッチ油圧ユニット14)の油圧応答性(クラッチ油圧応答性)の確保を図る油圧制御装置(クラッチ油圧制御装置)のエア抜き方法を提供することができる。
【実施例2】
【0084】
実施例2は、実施例1が、所定回数オン・オフを繰り返し、エアの抜くのに対して、油圧指令に対するピストンストロークの応答性を見て、応答性が所定値(エアが抜けた場合の応答性に相当する応答性)になったか否かを判断し、所定値に達したらエアが抜けたと判断し、制御を終了する例である。
【0085】
まず、構成を説明する。
【0086】
図11は、実施例2の統合コントローラ10にて実行されるエア抜き制御処理の流れを示すフローチャートである(エア抜き制御手段)。以下、図11の各ステップについて説明する。
【0087】
初期組み付け時、組み立てラインでは、総合コントローラ10に設備側のコントローラからエア抜き制御開始の信号が送信され、エア抜き制御が開始される。また、メインオイルポンプM-O/Pは、設備側の駆動源により自動変速機ATの入力軸が駆動されることで駆動し、加圧オイルを吐出する。
【0088】
ステップS21では、総合コントローラ10からATコントローラ7を介し、バルブソレノイド61aに対し油圧指令値ONを出力し、ステップS22へ進む。
【0089】
ステップS22では、ステップS21での油圧指令値ONの出力に続き、実際のCSCピストンストローク量Stが、規定したCSCピストンストローク量St_1(開放側)以上であるか否かを判断し、YES(St≧St_1)の場合はステップS24へ進み、NO(St<St_1)の場合はステップS23へ進む。
ここで、「CSCピストンストローク量St_1」は、CSCピストンストローク量の開放側規定値である(図12参照)。
【0090】
ステップS23では、ステップS22でのSt<St_1であるとの判断に続き、油圧指令値ONの出力開始から起動されるオンタイマー値Tonが、規定した油圧オン時間Ton_1以上であるか否かを判断し、YES(Ton≧Ton_1)の場合はステップS24へ進み、NO(Ton<Ton_1)の場合はステップS21へ戻る。
ここで、「油圧オン時間Ton_1」は、実施例1の加圧指令(油圧指令値ON)に相当する時間に規定される。
【0091】
ステップS24では、ステップS22でのSt≧St_1であるとの判断、あるいは、ステップS23でのTon≧Ton_1であるとの判断、あるいは、ステップS26でのToff>Toff_1であるとの判断に続き、総合コントローラ10からATコントローラ7を介してバルブソレノイド61aに対し油圧指令値OFFを出力し、ステップS25へ進む。
【0092】
ステップS25では、ステップS24での油圧指令値OFFの出力に続き、実際のCSCピストンストローク量Stが、規定したCSCピストンストローク量St_2(締結側)以下であるか否かを判断し、YES(St≦St_2)の場合はステップS27へ進み、NO(St>St_2)の場合はステップS26へ進む。
ここで、「CSCピストンストローク量St_2」は、CSCピストンストローク量の締結完了ストロークの相当する規定値である(図12参照)。
【0093】
ステップS26では、ステップS25でのSt>St_2であるとの判断に続き、油圧指令値OFFの出力開始から起動されるオフタイマー値Toffが、規定した油圧オフ時間Toff_1以上であるか否かを判断し、YES(Toff≧Toff_1)の場合はステップS27へ進み、NO(Toff<Toff_1)の場合はステップS24へ戻る。
ここで、「油圧オフ時間Toff_1」は、実施例1の減圧指令(油圧指令値OFF)の相当する時間に規定される(図12参照)。
【0094】
ステップS27では、ステップS25でのSt≦St_2であるとの判断、あるいは、ステップS26でのTon≧Toff_1であるとの判断に続き、実際のCSCピストンストローク応答時間Tが、規定したCSCピストンストローク応答時間T_1以下であるか否かを判断し、YES(T≦T_1)の場合はエンドへ進み、NO(T>T_1)の場合はステップS21へ戻る。
ここで、「CSCピストンストローク応答時間T_1」は、油圧指令値ONの出力時点から、第1クラッチCL1が開放ストローク位置に達する時点までに要するピストンストローク時間が、エア抜き時の応答性による所要時間に規定される。
なお、実施例2のハード構成は、実施例1の図1〜図4に示す構成と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
【0095】
次に、実施例2でのエア抜き制御作用を説明する。
実施例2では、設備側のコントローラからエア抜き制御の開始指令が、総合コントローラ10に出力され、エア抜き制御が開始される。
【0096】
総合コントローラ10は、ATコントローラ7を介して加圧指令(油圧指令値ON)を出力し(ステップS21)、その後、CSCピストン41のピストンストロークが、第1クラッチCL1を開放させるまでストロークしたかどうかを判断する(ステップS22)。CSCピストン41のピストンストロークが、第1クラッチCL1を開放させるまでストロークしていない場合は、油圧指令値ONを出力してからの経過時間が、所定時間(エアが抜けていれば、第1クラッチCL1を開放できる時間より長い時間、エアが抜けていなくても十分に加圧できる時間、実施例1のオン時間に相当)を経過したかどうかを判断する(ステップS23)。そして、CSCピストン41のピストンストロークが、第1クラッチCL1を開放させるまでストロークした場合(ステップS22でYES)、あるいは、CSCピストン41のピストンストロークが、第1クラッチCL1を開放させるまでストロークせずに所定時間を経過した場合(ステップS23でYES)、総合コントローラ10は、ATコントローラ7を介して減圧指令(油圧指令値OFF)を出力する(ステップS24)。
【0097】
油圧指令値OFFの出力後、CSCピストン41のピストンストロークが、第1クラッチCL1を締結させるまでストロークした場合(ステップS25でYES)、あるいは、CSCピストン41のピストンストロークが、第1クラッチCL1を締結させるまでストロークせずに所定時間(エアが抜けていても第1クラッチCL1を締結できる時間、実施例1のオフ時間に相当)が経過したら、ピストンストロークの応答性が、所定の応答性となっているかを確認する(ステップS27)。そして、所定の応答性となっていれば、エアが抜けていると判断し、エア抜き制御を終了させる(ステップS27からエンドへ進む)。
【0098】
このように、CSCピストン41のピストンストロークの応答性は、油圧指令値ONが出力されてから、CSCピストン41のピストンストロークが第1クラッチCL1を開放するまでどの程度時間を要したかで判定する。
【0099】
実施例2では、ピストンストロークの応答性をあらわす実際のCSCピストンストローク応答時間Tは、それぞれ、2回目以降の油圧指令値ONの出力時間Tonと等しくなる。
このT(=Ton)が、所定の応答性をあらわすCSCピストンストローク応答時間T_1(エアが抜けていれば、第1クラッチCL1を開放できる時間で、例えば、0.5秒程度)以下となれば、エア抜き制御を終了する。
【0100】
図12のタイムチャートでは、1回目の加圧で、CSCピストン41が十分にストロークしないうちに所定時間が経過し、減圧が始まってしまったことを示している。
しかし、この減圧時、圧縮された空気が抜けて、2回目の加圧で、CSCピストン41が十分にストロークできるようになったことを示している。
それでも、エアが十分に抜けていないため、2回目の加圧では、応答性を判断するCSCピストンストローク応答時間T_1より、所定量だけCSCピストン41がストロークするまで時間がかかっていることを示している。
その後の減圧工程では、再び、エアが抜かれるため、3回目の加圧では、応答性を判断するCSCピストンストローク応答時間T_1と同じ時間で、CSCピストン41のピストンストロークがSt_1に到達している。この時点で応答性が確保されていると判断し、エア抜き制御処理を終了する。
【0101】
実施例1が、エアが抜けにくい場合を考慮し、ある程度余計にオン・オフを繰り返さないといけないのに対し、実施例2では、上記のように、応答性が担保されればエア抜き制御を終了することができる。このため、実施例2は、実施例1に比べ、素早く短時間にてエア抜き制御を終了することができる。
また、それぞれのオン・オフ時間も、実施例1では、ある程度のマージンを持たなければならないのに対し、実施例2では、ピストンストロークが所定量に達するとオン・オフをそれぞれ終了することができるので、オン・オフ時間も短縮することができる。
なお、他の作用は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0102】
次に、効果を説明する。
実施例2のクラッチ油圧制御装置にあっては、下記の効果を得ることができる。
【0103】
(10) 前記エア抜き制御手段(図11)は、加圧・減圧の単位とする前記エア抜き制御の指令値の出力に対する前記ピストン(CSCピストン41)のストローク応答性を監視し、ストローク応答性を示す値が、エアが抜けた場合に相当する所定値に達したらエア抜き制御を終了する。
このため、実施例1の(1)〜(4)の効果に加え、応答性が担保されればエア抜き制御を終了することができるし、オン・オフ時間も短縮することができることで、実施例1に比べ、素早く短時間にてエア抜き制御を終了することができる。
【0104】
以上、本発明の油圧制御装置と油圧制御装置のエア抜き方法を実施例1および実施例2に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0105】
実施例1,2では、第1クラッチCL1の油圧制御回路構成をそのまま流用し、自動制御により油圧オン・オフを行える切り替えバルブの例を示した。しかし、エア抜き制御のために、別途、油圧回路を設けても良いし、また、手動操作による切り替えバルブの構成としても良い。
【0106】
実施例1,2では、初期組み付け時にエア抜き制御を実行する例について説明したが、リペア組み付け時や油圧応答性低下時にエア抜き制御を実行するようにしても良い。リペア組み付け時には、総合コントローラ10に、エア抜き制御の開始信号を出力する設備側のコントローラの外部端末を接続し、外部端末からエア抜き制御の開始指令を出力することでエア抜き制御を実行する。また、油圧応答性低下時には、総合コントローラ10で、クラッチ油圧応答性を確認するようにして、所望の応答性が得られないと判断した場合、次回のイグニッション・オンをトリガーに、サブオイルポンプS-O/Pを駆動し、エア抜き制御を実行する。
【0107】
実施例1,2では、ハイブリッド駆動系に設けられたノーマルクローズの乾式クラッチによる第1クラッチCL1への適用例を示した。しかし、油圧により締結・開放されるノーマルオープンのクラッチや湿式クラッチ等に対しても本発明の油圧制御装置を適用することができる。さらに、クラッチの油圧制御装置の油圧制御に限らず、油圧により動作する可動プーリを有するベルト式無段変速機などの油圧制御装置にも適用することができる。要するに、油圧ユニットと、油路と、コントロールバルブと、オイル供給源と、オイル排出部と、を備えた油圧制御装置であれば適用することができる。
【符号の説明】
【0108】
Eng エンジン
CL1 第1クラッチ(クラッチ)
MG モータ/ジェネレータ(モータ)
RL,RR 左右後輪(駆動輪)
S-O/P サブオイルポンプ(オイルポンプ)
6 第1クラッチコントロールバルブ(コントロールバルブ)
14 第1クラッチ油圧ユニット(クラッチ油圧ユニット)
39 オイルパン(オイル排出部)
40 CSCシリンダ(シリンダ)
41 CSCピストン(ピストン)
42 CSCシリンダ室(シリンダ室)
43 ダイアフラムスプリング(付勢手段)
44 オイル給排口
51 内配管(配管)
53 外配管(配管)
60 スプールバルブ(切り替えバルブ)
60f ドレーンポート
61 ソレノイドバルブ(切り替えバルブ)
【技術分野】
【0001】
本発明は、初期組付け時等において、シリンダ室に存在する空気(以下、「エア」という。)を抜く油圧制御装置と油圧制御装置のエア抜き方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クラッチと、該クラッチの締結・開放を行うピストンが摺動するシリンダと、オイルポンプと、を備えたクラッチ油圧制御装置において、オイルポンプからシリンダ室までの回路内にエアが存在すると、クラッチの油圧応答性が悪化する。
【0003】
このクラッチの油圧応答性の悪化を回避するため、エア抜きパイプを設けてシリンダ室内のエアを抜くものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平7−29313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、先行技術にあっては、エア抜きパイプを別途設けていたため、コストと重量が増大する、という問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、コストと重量の増大を招くことなく、油圧応答性の確保を図ることができる油圧制御装置と油圧制御装置のエア抜き方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の油圧制御装置は、油圧ユニットと、該油圧ユニットとは油路を介して接続されたコントロールバルブと、を備えている。
この油圧制御装置において、前記油圧ユニットは、
オイル供給源からオイルが供給されるシリンダ室を備えたシリンダと、
該シリンダとともに前記シリンダ室を形成し、前記シリンダ室に前記オイルが給排されるとき前記シリンダに対して摺動するピストンと、
前記シリンダ室の容積を縮小させる側に、前記ピストンを付勢する付勢手段と、
前記シリンダに設けられ、前記シリンダ室へ給排される前記オイルが通流するオイル給排口と、
を備えている。
前記コントロールバルブは、前記ピストンが、前記付勢手段により付勢され、前記シリンダ室の容積を縮小するとき、前記オイル給排口を介して、前記シリンダ室に存在するエアをオイル排出部に排出するバルブを備えている。
そして、前記オイル給排口は、前記シリンダ室に前記コントロールバルブを介して前記オイルが供給されたとき、前記シリンダ室に存在するエアが集まる前記シリンダの上方位置に設定した。
【発明の効果】
【0008】
よって、本発明の油圧制御装置にあっては、シリンダ室にエアが存在する状態で、シリンダへオイルが供給されると、シリンダ室内では、比重の関係でオイルが下側に移動し、エアが上側に移動し、エアがシリンダの上方に集まる。
この状態で付勢手段により、ピストンをシリンダ室の容積を縮小させる側に摺動させ、シリンダ室に存在するエアが、オイル排出口を介して、バルブからオイル排出部に排出される。その際、オイル給排口を、エアが集まるシリンダの上方位置に設定したため、シリンダ室のエアは、オイルよりも先にシリンダ室から抜ける。このように、シリンダ室の上方位置にオイル給排口を設けたため、別途、エア抜き用のパイプを設けることなく、ピストンのストローク動作を伴う加圧・減圧を行うだけで、シリンダ室のエアを抜くことができる。
この結果、コストと重量の増大を招くことなく、油圧応答性の確保を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1のクラッチ油圧制御装置が適用された後輪駆動によるFRハイブリッド車両を示す全体システム図である。
【図2】実施例1の油圧制御装置により締結・開放が制御される第1クラッチCL1(クラッチの一例)が配置されたクラッチ&モータユニット部の構成を示す断面図である。
【図3】実施例1の油圧制御装置を構成する第1クラッチ油圧ユニットと第1クラッチコントロールバルブを接続する外配管を示す外観図である。
【図4】実施例1のクラッチ油圧制御装置の要部構成と油圧制御構成と電子制御構成を示す制御システム図である。
【図5】実施例1の統合コントローラにて実行されるエア抜き制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】実施例1の統合コントローラにて実行されるエア抜き制御処理で出力される油圧指令値のステップ特性を示すタイムチャートである。
【図7】車速とスロットル開度により決められる運転点により第1クラッチが開放されるEV領域と第1クラッチが締結されるHEV領域を定めた走行モード選択マップの一例を示す図である。
【図8】第1クラッチの締結・開放を行うための油圧回路を組み付けたときのエア容積と第1クラッチ圧の関係特性を示す図である。
【図9】第1クラッチ油圧回路の残留エア量と油圧指令値のON-OFF回数の計算式による関係特性と実験値の対比を示す対比特性図である。
【図10】実施例1のクラッチ油圧制御装置において初期組み付け時のエア抜き作用を説明する図であり、(a)はクラッチ油圧回路の容積関係を示し、(b)はエア抜き前の組み付け初期状態を示し、(c)は加圧によるピストンストローク状態を示し、(d)は減圧によるピストン戻り状態を示す。
【図11】実施例2の統合コントローラにて実行されるエア抜き制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】実施例2の統合コントローラにて実行されるエア抜き制御における第1クラッチへの油圧指令値の変化と、ピストンストロークの変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の油圧制御装置と油圧制御装置のエア抜き方法を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1および実施例2に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1のクラッチ油圧制御装置(油圧制御装置の一例)が適用された後輪駆動によるFRハイブリッド車両を示す全体システム図である。以下、図1に基づき全体システム構成を説明する。
【0012】
実施例1におけるFRハイブリッド車両の駆動系は、図1に示すように、エンジンEngと、フライホイールFWと、第1クラッチCL1と、モータ/ジェネレータMGと、第2クラッチCL2と、自動変速機ATと、プロペラシャフトPSと、ディファレンシャルDFと、左ドライブシャフトDSLと、右ドライブシャフトDSRと、左後輪RLと、右後輪RRと、を有する。なお、FLは左前輪、FRは右前輪、M-O/Pはメインオイルポンプ、S-O/Pはサブオイルポンプである。
【0013】
前記エンジンEngは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、エンジンコントローラ1からのエンジン制御指令に基づいて、エンジン始動制御やエンジン停止制御等が行われる。なお、エンジン出力軸には、フライホイールFWが設けられている。
【0014】
前記第1クラッチCL1は、エンジンEngとモータ/ジェネレータMGの間に介装され、EVモード(電気自動車走行モード)の選択時に開放され、HEVモード(ハイブリッド車走行モード)の選択時に締結される走行モード選択クラッチである。この第1クラッチCL1として、ノーマルクローズの乾式単板クラッチを用いている。
【0015】
前記モータ/ジェネレータMGは、第1クラッチCL1と自動変速機ATの間に介装され、電動機として動作する力行と、発電機として動作する回生の機能を持つ。このモータ/ジェネレータMGとしては、ロータに永久磁石を埋設し、ステータにコイルが巻き付けられた三相交流による同期型モータ/ジェネレータを用いている。
【0016】
前記第2クラッチCL2は、モータ/ジェネレータMGと左右後輪RL,RRの間に介装され、例えば、エンジン始動時等のように伝達トルクが変動するとき、スリップ締結状態とすることで、トルク変動を吸収するために設けられたクラッチである。この第2クラッチCL2としては、別途設けるのではなく、自動変速機ATの各変速段にて締結される複数の摩擦締結要素のうち、トルク伝達経路に存在する摩擦締結要素を選択している。
【0017】
前記自動変速機ATは、例えば、前進7速/後退1速等の有段階の変速段を車速やアクセル開度等に応じて自動的に切り換える有段変速機や無段階に変速比を変更する無段変速機であり、変速機出力軸は、プロペラシャフトPS、ディファレンシャルDF、左ドライブシャフトDSL、右ドライブシャフトDSRを介して左右後輪RL,RRに連結されている。
【0018】
前記メインオイルポンプM-O/Pは、自動変速機ATの入力軸に設けられ、機械的にポンプ作動するメカオイルポンプである。前記サブオイルポンプS-O/Pは、ユニットハウジング等に設けられ、メインオイルポンプM-O/Pによる吐出油量が無いときや不足するとき、モータによりポンプ作動する電動オイルポンプである。
【0019】
次に、ハイブリッド車両の制御系を説明する。
実施例1におけるFRハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、インバータ3と、バッテリ4と、第1クラッチコントロールバルブ6と、ATコントローラ7と、ATコントロールバルブ8と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10と、を有して構成されている。なお、各コントローラ1,2,7,9と、統合コントローラ10とは、情報交換が互いに可能なCAN通信線11を介して接続されている。
【0020】
前記エンジンコントローラ1は、エンジン回転数センサ12からのエンジン回転数情報と、統合コントローラ10からの目標エンジントルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、エンジン動作点(Ne、Te)を制御する指令を、エンジンEngのスロットルバルブアクチュエータ等へ出力する(エンジン制御)。
【0021】
前記モータコントローラ2は、モータ/ジェネレータMGのロータ回転位置を検出するレゾルバ13からの情報と、統合コントローラ10からの目標MGトルク指令および目標MG回転数指令と、他の必要情報を入力する。そして、モータ/ジェネレータMGのモータ動作点(Nm、Tm)を制御する指令をインバータ3へ出力する(モータ制御)。なお、このモータコントローラ2では、バッテリ4の充電容量をあらわすバッテリSOCを監視している。
【0022】
前記ATコントローラ7は、アクセル開度センサ16と、車速センサ17と、他のセンサ類18(変速機入力回転数センサ、インヒビタースイッチ等)からの情報を入力する。そして、Dレンジ走行時、アクセル開度APOと車速VSPにより決まる運転点がシフトマップ上で存在する位置により最適な変速段を検索し、検索された変速段を得る制御指令を、ATコントロールバルブ8に出力する(変速制御)。
このATコントローラ7は、第1クラッチ油圧ユニット14のピストンストローク位置を検出する第1クラッチストロークセンサ15からのセンサ情報と、統合コントローラ10からの目標CL1トルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、第1クラッチCL1の締結・スリップ締結・開放を制御する指令を、第1クラッチコントロールバルブ6に出力する(第1クラッチ制御)。
このATコントローラ7は、統合コントローラ10から目標CL2トルク指令を入力すると、第2クラッチCL2のスリップ締結制御指令を、ATコントロールバルブ8に出力する(第2クラッチ制御)。
【0023】
前記ブレーキコントローラ9は、4輪の各車輪速を検出する車輪速センサ19と、ブレーキストロークセンサ20からのセンサ情報と、統合コントローラ10からの回生協調制御指令と、他の必要情報を入力する。そして、ブレーキ操作時、ブレーキストロークBSから求められる要求制動力に対し回生制動力だけでは不足する場合、その不足分を機械的な制動力で補う(回生協調ブレーキ制御)。
【0024】
前記統合コントローラ10は、車両全体の消費エネルギーを管理し、効率的に車両を走行させるための機能を担うもので、モータ回転数Nmを検出するモータ回転数センサ21やエア抜きスイッチ22等からの必要情報およびCAN通信線11を介して情報を入力する。そして、エンジンコントローラ1へ目標エンジントルク指令、モータコントローラ2へ目標MGトルク指令および目標MG回転数指令、第1クラッチコントローラ5へ目標CL1トルク指令、ATコントローラ7へ目標CL2トルク指令、ブレーキコントローラ9へ回生協調制御指令を出力する(統合制御)。
【0025】
図2は、実施例1の油圧制御装置により締結・開放が制御される第1クラッチCL1(クラッチの一例)が配置されたクラッチ&モータユニット部の構成を示す断面図である。図3は、実施例1の油圧制御装置を構成する第1クラッチ油圧ユニットと第1クラッチコントロールバルブを接続する外配管を示す外観図である。図4は、実施例1のクラッチ油圧制御装置の要部構成と油圧制御構成と電子制御構成を示す制御システム図である。以下、図2〜図4に基づいて、第1クラッチCL1を締結・開放する油圧回路構成を説明する。
【0026】
実施例1のクラッチ&モータユニット部は、図2及び図3に示すように、エンジンEngと、フライホイールFWと、第1クラッチCL1(クラッチ)と、モータ/ジェネレータMGと、メインオイルポンプM-O/Pと、自動変速機ATと、ユニットハウジング30と、を備えている。
【0027】
前記ユニットハウジング30は、図2に示すように、フロント側がエンジンEngのエンジンブロック31に連結され、リア側が自動変速機ATのトランスミッションケース32に連結されている。そして、このユニットハウジング30の内部は、図2に示すように、モータカバー33とステータハウジング34により3室に区画されている。エンジンEngとモータカバー33に囲まれた第1室に、フライホイールFWと第1クラッチCL1を配置している。モータカバー33とステータハウジング34に囲まれた第2室に、モータ/ジェネレータMGを配置している。ステータハウジング34と自動変速機ATに囲まれた第3室に、メインオイルポンプM-O/Pを配置している。
【0028】
前記第1クラッチCL1は、図2に示すように、フライホイールFWとモータ/ジェネレータMGの中空モータシャフト35の間に介装される。前記モータ/ジェネレータMGは、図2に示すように、ロータの内側位置にレゾルバ13が配置され、ユニットハウジング30を貫通して強電ハーネス端子36と冷却水出入口ポート37が設けられている。前記メインオイルポンプM-O/Pは、図2に示すように、中空モータシャフト35に結合された変速機入力軸38により駆動する。
【0029】
実施例1の第1クラッチCL1を締結・開放するための油圧回路構成は、図2〜図4に示すように、第1クラッチ油圧ユニット14(油圧ユニット)と、第1クラッチコントロールバルブ6(コントロールバルブ)と、ATコントロールバルブ8と、メインオイルポンプM-O/Pと、サブオイルポンプS-O/P(オイルポンプ)と、オイルパン39(オイル排出部)と、を備えている。
【0030】
前記第1クラッチ油圧ユニット14は、第1クラッチCL1の締結・開放を制御するCSC油圧アクチュエータである。この第1クラッチ油圧ユニット14は、図2に示すように、第1クラッチCL1の締結・開放を行うときCSCシリンダ40(シリンダ)に対して摺動するCSCピストン41(ピストン)と、CSCピストン41をCSCシリンダ室42(シリンダ室)の容積を縮小させる側に付勢するダイアフラムスプリング43(付勢手段)と、CSCシリンダ室42へのオイル給排を行うオイル給排口44と、を備えている。ダイアフラムスプリング43の一端側は、プレッシャリング45に接触し、ダイアフラムスプリング43の他端側は、レリーズベアリング46を介してCSCピストン41に接触する。
つまり、CSCシリンダ40への油圧供給が無いときは、ダイアフラムスプリング35による付勢力にて第1クラッチCL1の完全締結を保つ。そして、CSCシリンダ40への油圧供給があるときは、ダイアフラムスプリング35の付勢力に抗して摺動するCSCピストン41のストローク量を制御することにより、スリップ締結から完全開放までをコントロールする。なお、CSCとは、「Concentric Slave Cylinder」の略である。
【0031】
前記第1クラッチ油圧ユニット14のCSCシリンダ室42と第1クラッチコントロールバルブ6を接続する油路は、図2〜図4に示すように、オイル給排口44から配管コネクタ50までを接続する内配管51と、配管コネクタ50からケース取り付け部52までを接続する外配管53と、外配管53に連通させてトランスミッションケース32に形成されたケース内油路54と、ケース内油路54に連通させて第1クラッチコントロールバルブ6内に形成された第1クラッチ圧油路55と、により構成されている。なお、外配管53は、その途中位置にてユニットハウジング30に対し、クリップ56により中間支持されている。
【0032】
前記第1クラッチコントロールバルブ6は、図4に示すように、メインオイルポンプM-O/PまたはサブオイルポンプS-O/Pと、CSCシリンダ室42の連通・非連通を切り替える切り替えバルブとして、ソレノイド圧Psolをバルブ作動圧とし、第1クラッチ圧Pclを作り出すスプールバルブ60と、パイロット圧Ppを作動圧とし、ソレノイド圧Psolを作り出すソレノイドバルブ61と、を備えている。
【0033】
前記スプールバルブ60は、バルブ穴60aを摺動可能なスプール60bと、スプール60bを図4の左方向に付勢するスプリング60cと、バルブ穴60aに形成された第1クラッチ圧ポート60d、ライン圧ポート60e、ドレーンポート60f、バルブ作動圧ポート60gと、を有する。第1クラッチ圧ポート60dは、第1クラッチ圧油路55に連通する。ライン圧ポート60eは、ライン圧油路62に連通する。ドレーンポート60fは、ドレーン油路63に連通する。バルブ作動圧ポート60gは、ソレノイド圧油路64に連通する。
そして、スプールバルブ60の第1クラッチ圧ポート60dとライン圧ポート60eが非連通状態(=第1クラッチ圧ポート60dとドレーンポート60fが連通状態)のとき、ダイアフラムスプリング35の付勢力によるピストンストロークを伴ってCSCシリンダ室42の容積が縮小すると、CSCシリンダ室42と、CSCシリンダ室42からスプールバルブ60に至る油路に存在するエアとオイルの一部を、ドレーンポート60fとドレーン油路63を経過してオイルパン39に排出する。
【0034】
前記ソレノイドバルブ61は、ATコントローラ7からの制御指令により、ATコントロールバルブ8により作り出されたパイロット圧Ppを元圧とし、ソレノイド圧Psolを作り出す。このスプールバルブ60とソレノイドバルブ61は、通常走行時における第1クラッチCL1の締結・開放の制御を行うバルブであり、この実施例1では、通常走行時に使用するコントロールバルブをそのまま流用し、初期組み付け時やリペア組み付け時において、CSCシリンダ室42や油路に残留するエアを抜くエア抜き制御を行うようにしている。
【0035】
前記ATコントロールバルブ8は、図4に示すように、ATコントローラ7からの制御指令によりソレノイド圧を作り出すライン圧ソレノイド80と、ポンプ圧を元圧とし、ソレノイド圧を信号圧としてライン圧PLを調圧するプレッシャレギュレータバルブ81と、ポンプ圧を元圧とし、一定のパイロット圧Ppを調圧するパイロットバルブ82と、を備えている。
このATコントロールバルブ8による通常走行時におけるライン圧PLは、自動変速機ATで行う変速制御の元圧として、アクセル開度等に応じた圧力に調圧される。これに対し、エア抜き制御時におけるライン圧PLは、エア抜き制御でピストンストローク状態とする加圧時、配管51,53内のエアをCSCシリンダ室42に送り込めるだけの圧力として予め規定しておいた規定圧力PLsに調圧される。このとき、CSCシリンダ室42の容積も、配管51,53内のエアをCSCシリンダ室42に送り込めるように、その容積が規定されている。
【0036】
前記オイル給排口44は、加圧オイルの供給によりCSCシリンダ室42の容積を拡大するピストンストローク状態において、CSCシリンダ室42と、CSCシリンダ室42からスプールバルブ60に至るまでの油路中に存在するエアが圧縮され、圧縮エアが加圧オイルと共にCSCシンリンダ室42内に入り、CSCシリンダ室42内では、比重によりエアが上方に集まり、オイル層とエア層に分かれる。前記オイル給排口44は、CSCシリンダ室42に存在するエアが集まることでエア層を形成するCSCシリンダ40の上方位置に設定している。したがって、オイル給排口44の設定許容範囲は、図4のA−A断面に示すように、CSCシリンダ室42内でオイル層とエア層に分かれたとき、エア層が存在する範囲Eである。つまり、オイル給排口44は、この範囲Eの何れかの位置に設定することが許容される。
【0037】
図5は、実施例1の統合コントローラ10にて実行されるエア抜き制御処理の流れを示すフローチャートである(エア抜き制御手段)。以下、図5の各ステップについて説明する。
【0038】
初期組み付け時、組み立てラインでは、総合コントローラ10に設備側のコントローラからエア抜き制御開始の信号が送信され、エア抜き制御が開始される。また、メインオイルポンプM-O/Pは、設備側の駆動源により自動変速機ATの入力軸が駆動されることで駆動し、加圧オイルを吐出する。
【0039】
ステップS1では、総合コントローラ10からATコントローラ7を介し、バルブソレノイド61aに対し油圧指令値ONを出力し、ステップS2へ進む。
【0040】
ステップS2では、ステップS1での油圧指令値ONの出力に続き、油圧指令値ONの出力開始から起動されるオンタイマー値Tonが、第1設定時間T1以上であるか否かを判断し、YES(Ton≧T1)の場合はステップS4へ進み、NO(Ton<T1)の場合はステップS1へ戻る。
ここで、「第1設定時間T1」は、加圧指令(油圧指令値ON)の開始からCSCピストン41が最大ストローク位置に達するまでに要する時間を予め計測しておき、この計測データに基づき、無駄時間を抑えた必要最小限域の所要時間に設定される(図6参照)。
【0041】
ステップS3では、ステップS2でのTon≧T1であるとの判断、あるいは、ステップS4でのToff<T2であるとの判断に続き、総合コントローラ10からATコントローラ7を介してバルブソレノイド61aに対し油圧指令値OFFを出力し、ステップS4へ進む。
【0042】
ステップS4では、ステップS3での油圧指令値OFFの出力に続き、油圧指令値OFFの出力開始から起動されるオフタイマー値Toffが、第2設定時間T2以上であるか否かを判断し、YES(Toff≧T2)の場合はステップS6へ進み、NO(Toff<T2)の場合はステップS3へ戻る。
ここで、「第2設定時間T2」は、減圧指令(油圧指令値OFF)の開始からCSCピストン41が初期位置に戻るまでに要する時間を予め計測しておき、この計測データに基づき、無駄時間を抑えた必要最小限域の所要時間に設定される(図6参照)。
【0043】
ステップS5では、ステップS4でのToff≧T2であるとの判断に続き、加圧・減圧の単位を1回としてカウントするカウント値nを、n=n+1の式により書き換え、ステップS6へ進む。なお、カウント値nの初期値は、n=0である。
【0044】
ステップS6では、ステップS7でのカウント値nの書き換えに続き、カウント値nが設定カウント値N以上であるか否かを判断し、YES(n≧N)の場合はエンドへ進み、NO(n<N)の場合はステップS1へ戻る。
ここで、「設定カウント値N」は、加圧・減圧の単位を1回としてカウントするエア抜き制御指令の出力を、油圧応答性が確保されるエア抜け状態に達する所要回数に基づいて設定される。
【0045】
次に、作用を説明する。
まず、「先行技術の解決すべき課題」の説明を行い、続いて、実施例1のクラッチ油圧制御装置における作用を、「本発明のエア抜き方法のメカニズム」、「組み付け時のエア抜き作用」に分けて説明する。
【0046】
[先行技術の解決すべき課題]
ノーマルクローズによる乾式クラッチの油圧ユニットは、外部のクラッチペダル(マスターシリンダ)と油圧シリンダ(CSC)を閉回路で繋ぎ、クラッチペダル操作により油圧シリンダに圧力を掛け、弾性力により締結されている乾式クラッチの開放を行っている(実公平7−29313号公報参照)。
【0047】
この閉回路にエアが存在していると、ペダル操作力を変換した油圧が油圧シリンダまで到達する油圧応答時間に遅れを生じさせ、油圧シリンダの作動に支障をもたらす。したがって、組み付け時に閉回路のエアを抜いて初期応答を確保するため、エアブリード機構の設定とエア抜き作業が必要となる。
【0048】
このエアブリード機構として、ブリーザ(エア抜きパイプ)を設定した場合、エア抜き時にエアと共にオイルがブリーザから外部に抜けてしまう。このため、ブリーザには、別途、オイル受け等の部材が必要となり、コストと重量が増大するし、ブリーザによる占有スペースが拡大し、周辺部品のレイアウト自由度に制約を与える。
【0049】
また、初期組み付け時やリペア組み付け時に行うエア抜き作業は、各油圧ユニットに対して作業者が個々に行う手作業となるため、エア抜き作業が極めて面倒であると共に、エア抜き作業工数も著しく増大する。
【0050】
一方、駆動源としてエンジンとモータを搭載し、エンジンとモータの間に走行モード選択クラッチ(=第1クラッチCL1)を介装したハイブリッド車が知られている。このハイブリッド車の場合、例えば、図7に示すように、スロットル開度がa/8開度(設定開度)以下の領域をEV領域とし、スロットル開度がa/8開度を超える領域をHEV領域とする走行モード選択マップを有する。したがって、走行時、車速とスロットル開度により決められる運転点がEV領域にある場合には第1クラッチCL1が開放され、運転点がHEV領域にある場合には第1クラッチCL1が締結される。
【0051】
そして、EVモードによる走行時、アクセル踏み込み操作により、運転点がEV領域からHEV領域へと移行すると、開放されている第1クラッチCL1を締結し、エンジンを作動させて速やかにエンジンとモータを駆動源とするHEVモードへ遷移し、高い要求駆動力に応える。しかし、第1クラッチCL1の油圧応答性が低いと、エンジン始動の遅れやHEVモードへの遷移遅れとなり、発進性や加速性が劣ってしまう。
【0052】
また、HEVモード走行時、アクセル戻し操作により、運転点がHEV領域からEV領域へと移行すると、締結されている第1クラッチCL1を開放し、エンジンを停止させて速やかにモータのみを駆動源とするEVモードへ遷移し、高い燃費性能を確保する。しかし、第1クラッチCL1の油圧応答性が低いと、エンジン停止の遅れやEVモードへの遷移遅れとなり、燃費性能を低下させる原因となってしまう。
【0053】
このように、EVモードの選択時に開放され、HEVモードの選択時に締結される走行モード選択クラッチの場合、駆動性能と燃費性能を両立させるために、高く安定したクラッチ油圧応答性能を確保したいという要求がある。しかし、エア抜き作業を手作業により行っている限り、この要求に応えることができない。
【0054】
[本発明のエア抜き方法のメカニズム]
本発明は、上記課題を解決するため、初期組み付け時やリペア組み付け時、閉回路に存在する残留エアを、コントローラからの制御指令による加圧・減圧作動(ピストンストローク)を行うだけで抜くというように、ブリーザ(エア抜きパイプ)無しでエア抜きを行う装置及びエア抜き方法を提案するものである。以下、図8〜図10に基づいて、本発明のエア抜き方法のメカニズムを説明する。
【0055】
〈初期状態〉
初期組み付け時やリペア組み付け時であって、組み付け初期状態では、図10(b)に示すように、CSCシリンダ室42と、オイル給排口44を介して接続される内配管51、配管コネクタ50、外配管53、ケース内油路54、第1クラッチ圧油路55に、大気圧レベルのエアが充満している状態である。
【0056】
〈ピストンストローク状態〉
ピストンストローク状態でのオイルとエアの動きを述べる。
(a) まず、CSCピストン41のストローク分の容積によるオイルが、エアが充満している閉回路内に供給される。
(b) 油圧が掛かり、閉回路内のエアが圧縮される。
ここで、閉回路内のエア圧縮は、PV=一定という関係、つまり、油圧Pを高くするほど閉回路内のエア容積を小さくするという関係により圧縮される。例えば、図8に点線矢印C0-C1に示すように、閉回路内のエア容積がB0のとき、油圧を0からP1まで高めると、閉回路内のエア容積がB0からB1まで圧縮される。
(c) エア圧縮された容積分のオイルが閉回路内に供給される。
例えば、エア容積がB0からB1まで圧縮されると、圧縮された容積分(B0−B1)のオイルが閉回路内に供給される。
(d) CSCシリンダ40のCSCシリンダ室42内は、エアとオイルの比重の違いにより、図10(c)に示すように、エアが上部に、オイルは下部に分かれる。なお、オイル給排口44を介してCSCシリンダ室42に接続される油路系51,50,53,54,55は、図10(c)に示すように、オイルがほぼ充満している状態となる。
【0057】
〈ピストン戻り状態〉
ピストン戻り状態でのオイルとエアの動きを述べる。
(a) CSCピストン41が戻った容積分のオイルが排出されていく。
(b) CSCシリンダ室42からは、下部のオイルを残したままで、上部に分かれたエアが、オイル給排口44を介して排出される。
(c) 油圧が低下するにつれてエアは元の容積に拡大しながら排出されてゆく。
(d) エア排出後、CSCシリンダ室42内には、オイルのみが残る。
(e) 図10(d)に示すように、オイルとエアが入れ替わった形になり、初期状態に対してエア量が低下する。
【0058】
〈油圧オン・オフの繰り返し〉
上記説明は、閉回路内にエアが充満している初期状態から1回だけ油圧オン・オフしたとき、ピストンストローク状態からピストン戻り状態に移行してエアを排出し、エア量を低下させるメカニズムである。しかし、1回だけの油圧オン・オフによっては、高いクラッチ油圧応答性を確保できる残留エア量までエア量が低減するという確かな保障がない。そこで、本発明のエア抜き制御では、確実な残留エア量の低減を目指し、油圧オン・オフを複数回繰り返すようにしている。
【0059】
すなわち、油圧オンn回後の残留エア量をVair(n)は、
Vair(n)=(Vp−Vs)+Vair(n-1)油圧制御装置K …(1)
の計算式にてあらわすことができる。
但し、(1)式において、Vpは配管分の容量(図10(a)参照)、VsはCSCピストン41のストローク容量(図10(a)参照)、Vair(n-1)は油圧オン(n-1)回後の残留エア量、Kは油圧による圧縮係数である。
【0060】
そこで、上記(1)の計算式を、残留エア量とON-OFF回数を座標軸とする座標面に特性線にてあらわすと、図9の実線特性に示すように、1回〜3回程度のON-OFF回数によって残留エア量は急激に低下し、その後はON-OFF回数を増してもほぼ横這い状態の特性になる。そして、残留エア量とON-OFF回数の実験値を、同じ座標軸による座標面にプロットすると、図9に示す■印となる。この図9の特性線と実験値を対比してみると、計算式による特性線と実験値とがほぼ一致していることがわかる。したがって、高いクラッチ油圧応答性を確保できる残留エア量の低減を達成するには、油圧オン・オフを何十回も繰り返す必要は無く、数回程度繰り返すだけで達成できることが確認された。
【0061】
この結果、本発明のエア抜き方法は、油圧オン・オフを数回程度繰り返す制御とする。そして、使用初期から高いクラッチ油圧応答性を確保するための組み付け時エア抜きは、第1クラッチCL1の締結・開放を行うための油圧回路構成を組み付けた後、1回目の油圧オン・オフにより閉回路内のエア量を一気に低下させ、2回目以降の油圧オン・オフにより、前回のエア抜きで残った残留エア量を、回数を重ねる毎に減少させてゆくというメカニズムにより達成される。
【0062】
[組み付け時のエア抜き作用]
初期組み付け時やリペア組み付け時におけるエア抜き作用を、図4〜図6に基づいて説明する。
【0063】
第1クラッチCL1の締結・開放を行うための油圧回路構成を組み付けた後、エア抜きスイッチ22をONにすると、図5のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3へと進み、ステップS3にてTon<T1と判断されている間、ステップS2→ステップS3へと進む流れが繰り返される。
つまり、ステップS1では、サブオイルポンプS-O/Pがモータ駆動されると共に、ATコントロールバルブ8により規定圧力PLsによるライン圧PLが作り出される。そして、ステップS2では、第1クラッチコントローラ5からバルブソレノイド61aに対し油圧指令値ONが出力され、この油圧指令値ONの出力は、第1設定時間T1が経過するまで継続される。
【0064】
そして、ステップS3にてTon≧T1と判断されると、図5のフローチャートにおいて、ステップS3からステップS4→ステップS5へと進み、ステップS5にてToff<T2と判断されている間、ステップS4→ステップS5へと進む流れが繰り返される。
つまり、ステップS4では、第1クラッチコントローラ5からバルブソレノイド61aに対し油圧指令値OFFが出力され、この油圧指令値OFFの出力は、第2設定時間T2が経過するまで継続される。
【0065】
そして、ステップS5にてToff≧T2と判断されると、図5のフローチャートにおいて、ステップS5からステップS6→ステップS7へと進み、ステップS7にてn<Nと判断されると、ステップS7からステップS2へ戻り、次回の油圧オン・オフによるエア抜き制御が開始される。そして、油圧オン・オフによるエア抜き制御を設定カウント値Nだけ繰り返すことで、ステップS7にてn≧Nと判断されると、ステップS7からエンドヘ進み、エア抜き制御を終了する。
【0066】
上記のように、実施例1のエア抜き制御では、エア抜きスイッチ22のON操作に基づき規定圧力PLsによるライン圧PLを作り出す準備処理を行った後、油圧指令値ONの出力による加圧と、油圧指令値OFFの出力による減圧を1単位とするエア抜き制御指令が出力される。そして、この加圧・減圧の波形は、図6に示すように、油圧指令値ON/OFFによるステップ状波形とされ、加圧・減圧の単位を1回としてカウントするエア抜き制御指令の出力を、油圧応答性が確保されるエア抜け状態に達するまでの所定回数(図6の一例では5回)行われる。
【0067】
前記エア抜きスイッチ22のON操作に基づく準備処理では、規定圧力PLsによるライン圧PLが作り出される。すなわち、ATコントローラ7からライン圧ソレノイド80に制御指令が出力されると、ライン圧ソレノイド80では、ソレノイド圧が作り出され、このソレノイド圧がプレッシャレギュレータバルブ81に加えられる。このソレノイド圧を信号圧とするプレッシャレギュレータバルブ81では、サブオイルポンプS-O/Pからのポンプ圧を元圧とし、予め規定しておいた規定圧力PLs(配管51,53内のエアをCSCシリンダ室42に送り込めるだけの圧力)のライン圧PLに調圧される。
【0068】
前記油圧指令値ONの出力による加圧では、CSCピストン41のストロークによりCSCシリンダ室42の容積を拡大する。すなわち、ATコントローラ7からソレノイドバルブ61へON指令が出力されると、ソレノイドバルブ61は、ライン圧PL(=規定圧力PLs)を連通するソレノイド圧Psolを作り出す。よって、ATコントロールバルブ8からの規定圧力PLsによる加圧オイルは、図4の黒塗り矢印に示すように、ライン圧油路62を経過し、バルブ作動圧ポート60gに供給される。これにより、スプールバルブ60のスプール60bは、スプリング60cに抗して図4の実線位置から仮想線位置へストロークし、第1クラッチ圧ポート60dとライン圧ポート60eを連通する。このバルブ切り替え動作により、ライン圧油路62からの規定圧力PLsによる加圧オイルは、ライン圧ポート60eと第1クラッチ圧ポート60dを経過して第1クラッチ圧油路55に入る。そして、規定圧力PLsによる加圧オイルは、ケース内油路54→外配管53→配管コネクタ50→内配管51を経過し、オイル給排口44からCSCシリンダ室42へと導入され、CSCピストン41を図4の左方向へ押し、CSCピストン41が図4の左方向へストロークすることにより、CSCシリンダ室42の容積を拡大する。
【0069】
前記油圧指令値OFFの出力による減圧では、CSCピストン41の戻りによりCSCシリンダ室42の容積を縮小する。すなわち、CSCピストン41のストロークを伴う加圧後に第1クラッチコントローラ5からソレノイドバルブ61へOFF指令が出力されると、ソレノイドバルブ61は、ライン圧PLを遮断するソレノイド圧Psolを作り出す。よって、スプールバルブ60のバルブ作動圧ポート60gに供給されていたバルブ作動圧(=ライン圧PL)がドレーンされ、スプールバルブ60のスプール60bは、スプリング60cによる付勢力にて図4の仮想線位置から実線位置へストロークし、第1クラッチ圧ポート60dとドレーンポート60fを連通する。このバルブ切り替え動作により、CSCシリンダ室42内のオイル圧が低下し、CSCピストン41は、ダイアフラムスプリング43の付勢力にしたがって、図4の右方向に戻りストロークする。そして、CSCピストン41の戻りストロークに伴ってCSCシリンダ室42の容積が縮小する。
【0070】
このように、スプールバルブ60が連通側に切り替えられ、CSCシリンダ40へ加圧オイルが供給されると、CSCシリンダ室42と、オイル給排口44からスプールバルブ60までの油路に存在するエアが圧縮され、圧縮されたエアがCSCシリンダ室42内に入る。このCSCシリンダ室42内では、比重の関係でオイル(比重が大)が下側に移動し、エア(比重が小)が上側に移動し、オイル層とエア層に分かれる。
【0071】
この状態でスプールバルブ60を非連通側に切り替えると、ダイアフラムスプリング43の付勢力により、CSCピストン41がCSCシリンダ室42の容積を縮小させる側に戻りストロークする。この戻りストロークにより、CSCシリンダ室42と、CSCシリンダ室42とスプールバルブ60を繋ぐ油路に存在するエアとオイルの一部が、図4の白抜き矢印に示すように、CSCシリンダ室42→内配管51→配管コネクタ50→外配管53→ケース内油路54→第1クラッチ圧油路55→第1クラッチ圧ポート60d→ドレーンポート60f→ドレーン油路63を経過し、オイルパン39に排出される。
【0072】
その際、CSCシリンダ40のオイル給排口44を、エア層が存在するCSCシリンダ40の上方位置に設定したため、エアの方がオイルよりも先にCSCシリンダ室42内から抜ける。このように、CSCシリンダ室42の上方位置からオイル給排を行うようにしたため、別途、エア抜き用のパイプを設けることなく、CSCピストン41のストローク動作を伴う加圧・減圧を行うだけで、CSCシリンダ室42内のエアを整然と抜くことができる。
【0073】
上記のように、第1クラッチCL1の締結・開放を行うための油圧回路構成を組み付けた後に行われるエア抜き制御では、1回目の油圧オン・オフ(加圧・減圧)により閉回路内のエア量を一気に低下させ、2回目以降の油圧オン・オフ(加圧・減圧)により、前回のエア抜きで残った残留エア量を、回数を重ねる毎に減少させてゆくというエア抜き作用を示すことになる。この結果、所望の油圧応答性能を得る残留エア量になるまでエアを排出するエア抜き作業を、開始操作だけで自動的に行われるエア抜き制御により、短時間の作業時間で、かつ、ユニット毎のバラツキを無くして安定して行うことができると共に、第1クラッチCL1の使用初期から高いクラッチ油圧応答性を確保することができる。
【0074】
次に、効果を説明する。
実施例1のクラッチ油圧制御装置とクラッチ油圧制御装置のエア抜き方法にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0075】
(1) 油圧ユニット(第1クラッチ油圧ユニット14)と、該油圧ユニット(第1クラッチ油圧ユニット14)とは油路を介して接続されたコントロールバルブ(第1クラッチコントロールバルブ6)と、を備えた油圧制御装置(クラッチ油圧制御装置)のエア抜き方法において、前記油圧ユニット(第1クラッチ油圧ユニット14)は、オイル供給源からオイルが供給されるシリンダ室(CSCシリンダ室42)を備えたシリンダ(CSCシリンダ40)と、該シリンダ(CSCシリンダ40)とともに前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)を形成し、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)に前記オイルが給排されるとき前記シリンダ(CSCシリンダ40)に対して摺動するピストン(CSCピストン41)と、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)の容積を縮小させる側に、前記ピストン(CSCピストン41)を付勢する付勢手段(ダイアフラムスプリング43)と、前記シリンダ(CSCシリンダ40)に設けられ、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)へ給排される前記オイルが通流するオイル給排口44と、を備え、前記コントロールバルブは、前記ピストン(CSCピストン41)が、前記付勢手段(ダイアフラムスプリング43)により付勢され、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)の容積を縮小するとき、前記オイル給排口44を介して、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)に存在するエアをオイル排出部(オイルパン39)に排出するバルブ(スプールバルブ60)を備え、前記オイル給排口44は、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)に前記コントロールバルブ(第1クラッチコントロールバルブ6)を介して前記オイルが供給されたとき、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)に存在するエアが集まる前記シリンダ(CSCシリンダ40)の上方位置に設定した。
このため、コストと重量の増大を招くことなく、油圧ユニット(第1クラッチ油圧ユニット14)の油圧応答性(クラッチ油圧応答性)の確保を図る油圧制御装置(クラッチ油圧制御装置)を提供することができる。
【0076】
(2) 前記オイル排出部(オイルパン39)と、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)にオイルを供給するオイルポンプ(サブオイルポンプS-O/P)と、を備え、前記オイル排出部(オイルパン39)は、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)から排出された前記オイルを貯留し、前記オイルポンプ(サブオイルポンプS-O/P)は、前記オイル排出部(オイルパン39)に貯留されたオイルを吸入して前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)にオイルを供給する。
このように、エアの排出先を油圧制御装置(クラッチ油圧制御装置)のオイル排出部(オイルパン39)としたため、エアの排出とともに排出されるオイルを回収する手段を別途設ける必要がない。これにより、エア抜き作業を効率化することができる。
【0077】
(3) 前記クラッチ油圧ユニット(第1クラッチ油圧ユニット14)の組付け時、前記ピストン(CSCピストン41)を摺動させ前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)の容積を拡大する加圧を行い、その後、前記ピストン(CSCピストン41)が戻ってシリンダ室(CSCシリンダ室42)の容積を縮小する減圧を行うという加圧・減圧を単位とするエア抜き制御を行うエア抜き制御手段(図5)を設けた。
このため、クラッチ油圧ユニット(第1クラッチ油圧ユニット14)の組付け後、車両走行の初期から油圧応答性(クラッチ油圧応答性)の確保を図ることができる。
【0078】
(4) 前記エア抜き制御手段(図5)は、前記エア抜き制御の指令値の加圧・減圧の波形を、ステップ状波形とする(図6)。
このため、エア抜き制御動作で、無駄時間を抑えて加圧と減圧を素早く行うことができ、エア抜き作業時間の短縮化を図ることができる。
【0079】
(5) 前記エア抜き制御手段(図5)は、加圧・減圧の単位を1回としてカウントする前記エア抜き制御の指令値の出力を、所定の油圧応答性が確保されるエア抜け状態に達するまでの所定回数行う(図6)。
このため、エア抜き効果が大きい回数だけ加圧・減圧を行うことで、高いエア抜き効果を達成しながらも、エア抜き作業時間の短縮化を図ることができる。すなわち、加圧・減圧を1回の単位とするエア抜き制御では、ある回数を超えるとエア抜け量が小さく抑えられ、残留エア量がほぼ横這い状態となることによる。
【0080】
(6) 前記エア抜き制御手段(図5)は、前記加圧を行う指令値を出力してから前記ピストン(CSCピストン41)が最大ストローク位置に達するまでに要する時間と、前記減圧を行う指令値を出力してから前記付勢手段(ダイアフラムスプリング43)の付勢力により前記ピストン(CSCピストン41)が初期位置に戻るまでに要する時間を予め計測しておき、1回の加圧・減圧が終わり、次の加圧・減圧を開始するまでのタイミングを、前記計測した時間データに基づいて設定する。
このため、ピストン(CSCピストン41)のストロークを伴う1回のエア抜き作業が終わったタイミングで次のエア抜き作業が開始されるため、エア抜き量を損なうことなく、エア抜き作業時間の短縮化を図ることができる。
【0081】
(7) 前記油路は、前記油圧ユニット(第1クラッチ油圧ユニット14)と前記コントロールバルブ(第1クラッチコントロールバルブ6)を接続する配管(内配管51、外配管53)の内壁により形成された油路であり、前記シリンダ(CSCシリンダ40)は、加圧時、前記配管(内配管51、外配管53)内のエアを前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)に送り込めるように、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)の容積を規定し、前記エア抜き制御手段(図5)は、加圧時、前記配管(内配管51、外配管53)内のエアを前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)に送り込めるように、加圧時の油圧の大きさを規定する(規定油圧PLs)。
このため、油圧ユニット(第1クラッチ油圧ユニット14)とコントロールバルブ(第1クラッチコントロールバルブ6)が配管(内配管51、外配管53)を用いて接続されている場合であっても、効率良いエア抜き作業にて確実に残留エアを抜くことができる。
【0082】
(8) 前記油圧ユニット(第1クラッチ油圧ユニット14)により締結・開放されるクラッチ(第1クラッチCL1)を有し、前記クラッチ(第1クラッチCL1)は、エンジンEngとモータ(モータ/ジェネレータMG)と駆動輪(左右後輪RL,RR)を備えたハイブリッド駆動系のうち、前記エンジンEngと前記モータ(モータ/ジェネレータMG)の間に介装され、電気自動車走行モード(EVモード)の選択時に開放され、ハイブリッド車走行モード(HEVモード)の選択時に締結される走行モード選択クラッチである。
このため、油圧応答性の要求が高いクラッチ(第1クラッチCL1)に、本発明のエア抜き制御を適用することにより、ハイブリッド車両としての駆動力性能と燃費性能の両立を図ることができる。
【0083】
(9) 油圧ユニット(第1クラッチ油圧ユニット14)と、該油圧ユニット(第1クラッチ油圧ユニット14)とは油路を介して接続されたコントロールバルブ(第1クラッチコントロールバルブ6)と、を備えた油圧制御装置(クラッチ油圧制御装置)のエア抜き方法において、前記油圧ユニット(第1クラッチ油圧ユニット14)は、オイル供給源からオイルが供給されるシリンダ室(CSCシリンダ室42)を備えたシリンダ(CSCシリンダ40)と、該シリンダ(CSCシリンダ40)とともに前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)を形成し、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)に前記オイルが給排されるとき前記シリンダ(CSCシリンダ40)に対して摺動するピストン(CSCピストン41)と、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)の容積を縮小させる側に、前記ピストン(CSCピストン41)を付勢する付勢手段(ダイアフラムスプリング43)と、前記シリンダ(CSCシリンダ40)に設けられ、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)へ給排される前記オイルが通流するオイル給排口44と、を備え、前記コントロールバルブは、前記ピストン(CSCピストン41)が、前記付勢手段(ダイアフラムスプリング43)により付勢され、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)の容積を縮小するとき、前記オイル給排口44を介して、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)に存在するエアをオイル排出部(オイルパン39)に排出するバルブ(スプールバルブ60)を備え、前記油圧ユニット(第1クラッチ油圧ユニット14)と前記コントロールバルブ(第1クラッチコントロールバルブ6)を組み付ける組み付け工程と、前記組み付け後、前記ピストン(CSCピストン41)を摺動させ前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)の容積を拡大する加圧を行い、その後、前記ピストン(CSCピストン41)が戻って前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)の容積を縮小する減圧を行い、前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)の容積の縮小に伴い前記シリンダ室(CSCシリンダ室42)に存在するエアを前記オイル排出部(オイルパン39)に排出するエア抜き工程と、を有する。
このため、コストと重量の増大を招くことなく、油圧ユニット(第1クラッチ油圧ユニット14)の油圧応答性(クラッチ油圧応答性)の確保を図る油圧制御装置(クラッチ油圧制御装置)のエア抜き方法を提供することができる。
【実施例2】
【0084】
実施例2は、実施例1が、所定回数オン・オフを繰り返し、エアの抜くのに対して、油圧指令に対するピストンストロークの応答性を見て、応答性が所定値(エアが抜けた場合の応答性に相当する応答性)になったか否かを判断し、所定値に達したらエアが抜けたと判断し、制御を終了する例である。
【0085】
まず、構成を説明する。
【0086】
図11は、実施例2の統合コントローラ10にて実行されるエア抜き制御処理の流れを示すフローチャートである(エア抜き制御手段)。以下、図11の各ステップについて説明する。
【0087】
初期組み付け時、組み立てラインでは、総合コントローラ10に設備側のコントローラからエア抜き制御開始の信号が送信され、エア抜き制御が開始される。また、メインオイルポンプM-O/Pは、設備側の駆動源により自動変速機ATの入力軸が駆動されることで駆動し、加圧オイルを吐出する。
【0088】
ステップS21では、総合コントローラ10からATコントローラ7を介し、バルブソレノイド61aに対し油圧指令値ONを出力し、ステップS22へ進む。
【0089】
ステップS22では、ステップS21での油圧指令値ONの出力に続き、実際のCSCピストンストローク量Stが、規定したCSCピストンストローク量St_1(開放側)以上であるか否かを判断し、YES(St≧St_1)の場合はステップS24へ進み、NO(St<St_1)の場合はステップS23へ進む。
ここで、「CSCピストンストローク量St_1」は、CSCピストンストローク量の開放側規定値である(図12参照)。
【0090】
ステップS23では、ステップS22でのSt<St_1であるとの判断に続き、油圧指令値ONの出力開始から起動されるオンタイマー値Tonが、規定した油圧オン時間Ton_1以上であるか否かを判断し、YES(Ton≧Ton_1)の場合はステップS24へ進み、NO(Ton<Ton_1)の場合はステップS21へ戻る。
ここで、「油圧オン時間Ton_1」は、実施例1の加圧指令(油圧指令値ON)に相当する時間に規定される。
【0091】
ステップS24では、ステップS22でのSt≧St_1であるとの判断、あるいは、ステップS23でのTon≧Ton_1であるとの判断、あるいは、ステップS26でのToff>Toff_1であるとの判断に続き、総合コントローラ10からATコントローラ7を介してバルブソレノイド61aに対し油圧指令値OFFを出力し、ステップS25へ進む。
【0092】
ステップS25では、ステップS24での油圧指令値OFFの出力に続き、実際のCSCピストンストローク量Stが、規定したCSCピストンストローク量St_2(締結側)以下であるか否かを判断し、YES(St≦St_2)の場合はステップS27へ進み、NO(St>St_2)の場合はステップS26へ進む。
ここで、「CSCピストンストローク量St_2」は、CSCピストンストローク量の締結完了ストロークの相当する規定値である(図12参照)。
【0093】
ステップS26では、ステップS25でのSt>St_2であるとの判断に続き、油圧指令値OFFの出力開始から起動されるオフタイマー値Toffが、規定した油圧オフ時間Toff_1以上であるか否かを判断し、YES(Toff≧Toff_1)の場合はステップS27へ進み、NO(Toff<Toff_1)の場合はステップS24へ戻る。
ここで、「油圧オフ時間Toff_1」は、実施例1の減圧指令(油圧指令値OFF)の相当する時間に規定される(図12参照)。
【0094】
ステップS27では、ステップS25でのSt≦St_2であるとの判断、あるいは、ステップS26でのTon≧Toff_1であるとの判断に続き、実際のCSCピストンストローク応答時間Tが、規定したCSCピストンストローク応答時間T_1以下であるか否かを判断し、YES(T≦T_1)の場合はエンドへ進み、NO(T>T_1)の場合はステップS21へ戻る。
ここで、「CSCピストンストローク応答時間T_1」は、油圧指令値ONの出力時点から、第1クラッチCL1が開放ストローク位置に達する時点までに要するピストンストローク時間が、エア抜き時の応答性による所要時間に規定される。
なお、実施例2のハード構成は、実施例1の図1〜図4に示す構成と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
【0095】
次に、実施例2でのエア抜き制御作用を説明する。
実施例2では、設備側のコントローラからエア抜き制御の開始指令が、総合コントローラ10に出力され、エア抜き制御が開始される。
【0096】
総合コントローラ10は、ATコントローラ7を介して加圧指令(油圧指令値ON)を出力し(ステップS21)、その後、CSCピストン41のピストンストロークが、第1クラッチCL1を開放させるまでストロークしたかどうかを判断する(ステップS22)。CSCピストン41のピストンストロークが、第1クラッチCL1を開放させるまでストロークしていない場合は、油圧指令値ONを出力してからの経過時間が、所定時間(エアが抜けていれば、第1クラッチCL1を開放できる時間より長い時間、エアが抜けていなくても十分に加圧できる時間、実施例1のオン時間に相当)を経過したかどうかを判断する(ステップS23)。そして、CSCピストン41のピストンストロークが、第1クラッチCL1を開放させるまでストロークした場合(ステップS22でYES)、あるいは、CSCピストン41のピストンストロークが、第1クラッチCL1を開放させるまでストロークせずに所定時間を経過した場合(ステップS23でYES)、総合コントローラ10は、ATコントローラ7を介して減圧指令(油圧指令値OFF)を出力する(ステップS24)。
【0097】
油圧指令値OFFの出力後、CSCピストン41のピストンストロークが、第1クラッチCL1を締結させるまでストロークした場合(ステップS25でYES)、あるいは、CSCピストン41のピストンストロークが、第1クラッチCL1を締結させるまでストロークせずに所定時間(エアが抜けていても第1クラッチCL1を締結できる時間、実施例1のオフ時間に相当)が経過したら、ピストンストロークの応答性が、所定の応答性となっているかを確認する(ステップS27)。そして、所定の応答性となっていれば、エアが抜けていると判断し、エア抜き制御を終了させる(ステップS27からエンドへ進む)。
【0098】
このように、CSCピストン41のピストンストロークの応答性は、油圧指令値ONが出力されてから、CSCピストン41のピストンストロークが第1クラッチCL1を開放するまでどの程度時間を要したかで判定する。
【0099】
実施例2では、ピストンストロークの応答性をあらわす実際のCSCピストンストローク応答時間Tは、それぞれ、2回目以降の油圧指令値ONの出力時間Tonと等しくなる。
このT(=Ton)が、所定の応答性をあらわすCSCピストンストローク応答時間T_1(エアが抜けていれば、第1クラッチCL1を開放できる時間で、例えば、0.5秒程度)以下となれば、エア抜き制御を終了する。
【0100】
図12のタイムチャートでは、1回目の加圧で、CSCピストン41が十分にストロークしないうちに所定時間が経過し、減圧が始まってしまったことを示している。
しかし、この減圧時、圧縮された空気が抜けて、2回目の加圧で、CSCピストン41が十分にストロークできるようになったことを示している。
それでも、エアが十分に抜けていないため、2回目の加圧では、応答性を判断するCSCピストンストローク応答時間T_1より、所定量だけCSCピストン41がストロークするまで時間がかかっていることを示している。
その後の減圧工程では、再び、エアが抜かれるため、3回目の加圧では、応答性を判断するCSCピストンストローク応答時間T_1と同じ時間で、CSCピストン41のピストンストロークがSt_1に到達している。この時点で応答性が確保されていると判断し、エア抜き制御処理を終了する。
【0101】
実施例1が、エアが抜けにくい場合を考慮し、ある程度余計にオン・オフを繰り返さないといけないのに対し、実施例2では、上記のように、応答性が担保されればエア抜き制御を終了することができる。このため、実施例2は、実施例1に比べ、素早く短時間にてエア抜き制御を終了することができる。
また、それぞれのオン・オフ時間も、実施例1では、ある程度のマージンを持たなければならないのに対し、実施例2では、ピストンストロークが所定量に達するとオン・オフをそれぞれ終了することができるので、オン・オフ時間も短縮することができる。
なお、他の作用は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0102】
次に、効果を説明する。
実施例2のクラッチ油圧制御装置にあっては、下記の効果を得ることができる。
【0103】
(10) 前記エア抜き制御手段(図11)は、加圧・減圧の単位とする前記エア抜き制御の指令値の出力に対する前記ピストン(CSCピストン41)のストローク応答性を監視し、ストローク応答性を示す値が、エアが抜けた場合に相当する所定値に達したらエア抜き制御を終了する。
このため、実施例1の(1)〜(4)の効果に加え、応答性が担保されればエア抜き制御を終了することができるし、オン・オフ時間も短縮することができることで、実施例1に比べ、素早く短時間にてエア抜き制御を終了することができる。
【0104】
以上、本発明の油圧制御装置と油圧制御装置のエア抜き方法を実施例1および実施例2に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0105】
実施例1,2では、第1クラッチCL1の油圧制御回路構成をそのまま流用し、自動制御により油圧オン・オフを行える切り替えバルブの例を示した。しかし、エア抜き制御のために、別途、油圧回路を設けても良いし、また、手動操作による切り替えバルブの構成としても良い。
【0106】
実施例1,2では、初期組み付け時にエア抜き制御を実行する例について説明したが、リペア組み付け時や油圧応答性低下時にエア抜き制御を実行するようにしても良い。リペア組み付け時には、総合コントローラ10に、エア抜き制御の開始信号を出力する設備側のコントローラの外部端末を接続し、外部端末からエア抜き制御の開始指令を出力することでエア抜き制御を実行する。また、油圧応答性低下時には、総合コントローラ10で、クラッチ油圧応答性を確認するようにして、所望の応答性が得られないと判断した場合、次回のイグニッション・オンをトリガーに、サブオイルポンプS-O/Pを駆動し、エア抜き制御を実行する。
【0107】
実施例1,2では、ハイブリッド駆動系に設けられたノーマルクローズの乾式クラッチによる第1クラッチCL1への適用例を示した。しかし、油圧により締結・開放されるノーマルオープンのクラッチや湿式クラッチ等に対しても本発明の油圧制御装置を適用することができる。さらに、クラッチの油圧制御装置の油圧制御に限らず、油圧により動作する可動プーリを有するベルト式無段変速機などの油圧制御装置にも適用することができる。要するに、油圧ユニットと、油路と、コントロールバルブと、オイル供給源と、オイル排出部と、を備えた油圧制御装置であれば適用することができる。
【符号の説明】
【0108】
Eng エンジン
CL1 第1クラッチ(クラッチ)
MG モータ/ジェネレータ(モータ)
RL,RR 左右後輪(駆動輪)
S-O/P サブオイルポンプ(オイルポンプ)
6 第1クラッチコントロールバルブ(コントロールバルブ)
14 第1クラッチ油圧ユニット(クラッチ油圧ユニット)
39 オイルパン(オイル排出部)
40 CSCシリンダ(シリンダ)
41 CSCピストン(ピストン)
42 CSCシリンダ室(シリンダ室)
43 ダイアフラムスプリング(付勢手段)
44 オイル給排口
51 内配管(配管)
53 外配管(配管)
60 スプールバルブ(切り替えバルブ)
60f ドレーンポート
61 ソレノイドバルブ(切り替えバルブ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ユニットと、該油圧ユニットとは油路を介して接続されたコントロールバルブと、を備えた油圧制御装置において、
前記油圧ユニットは、
オイル供給源からオイルが供給されるシリンダ室を備えたシリンダと、
該シリンダとともに前記シリンダ室を形成し、前記シリンダ室に前記オイルが給排されるとき前記シリンダに対して摺動するピストンと、
前記シリンダ室の容積を縮小させる側に、前記ピストンを付勢する付勢手段と、
前記シリンダに設けられ、前記シリンダ室へ給排される前記オイルが通流するオイル給排口と、
を備え、
前記コントロールバルブは、前記ピストンが、前記付勢手段により付勢され、前記シリンダ室の容積を縮小するとき、前記オイル給排口を介して、前記シリンダ室に存在するエアをオイル排出部に排出するバルブを備え、
前記オイル給排口は、前記シリンダ室に前記コントロールバルブを介して前記オイルが供給されたとき、前記シリンダ室に存在するエアが集まる前記シリンダの上方位置に設定したことを特徴とする油圧制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載された油圧制御装置において、
前記オイル排出部と、前記シリンダ室にオイルを供給するオイルポンプと、を備え、
前記オイル排出部は、前記シリンダ室から排出された前記オイルを貯留し、
前記オイルポンプは、前記オイル排出部に貯留されたオイルを吸入して前記シリンダ室にオイルを供給することを特徴とする油圧制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された油圧制御装置において、
前記油圧ユニットの組付け時、前記ピストンを摺動させ前記シリンダ室の容積を拡大する加圧を行い、その後、前記ピストンが戻ってシリンダ室の容積を縮小する減圧を行うという加圧・減圧を単位とするエア抜き制御を行うエア抜き制御手段を備えたことを特徴とする油圧制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載された油圧制御装置において、
前記エア抜き制御手段は、前記エア抜き制御の指令値の加圧・減圧の波形を、ステップ状波形とすることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載された油圧制御装置において、
前記エア抜き制御手段は、加圧・減圧の単位を1回としてカウントする前記エア抜き制御の指令値の出力を、所定の油圧応答性が確保されるエア抜け状態に達するまでの所定回数行うことを特徴とする油圧制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載された油圧制御装置において、
前記エア抜き制御手段は、前記加圧を行う指令値を出力してから前記ピストンが最大ストローク位置に達するまでに要する時間と、前記減圧を行う指令値を出力してから前記付勢手段の付勢力により前記ピストンが初期位置に戻るまでに要する時間を予め計測しておき、1回の加圧・減圧が終わり、次の加圧・減圧を開始するまでのタイミングを、前記計測した時間データに基づいて設定することを特徴とする油圧制御装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までの何れか1項に記載された油圧制御装置において、
前記油路は、前記油圧ユニットと前記コントロールバルブを接続する配管の内壁により形成された油路であり、
前記シリンダは、加圧時、前記配管内のエアを前記シリンダ室に送り込めるように、前記シリンダ室の容積を規定し、
前記エア抜き制御手段は、加圧時、前記配管内のエアを前記シリンダ室に送り込めるように、加圧時の油圧の大きさを規定することを特徴とする油圧制御装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までの何れか1項に記載された油圧制御装置において、
前記油圧ユニットにより締結・開放されるクラッチを有し、
前記クラッチは、エンジンとモータと駆動輪を備えたハイブリッド駆動系のうち、前記エンジンと前記モータの間に介装され、電気自動車走行モードの選択時に開放され、ハイブリッド車走行モードの選択時に締結される走行モード選択クラッチであることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項9】
請求項3または請求項4に記載された油圧制御装置において、
前記エア抜き制御手段は、加圧・減圧の単位とする前記エア抜き制御の指令値の出力に対する前記ピストンのストローク応答性を監視し、ストローク応答性を示す値が、エアが抜けた場合に相当する所定値に達したらエア抜き制御を終了することを特徴とする油圧制御装置。
【請求項10】
油圧ユニットと、該油圧ユニットとは油路を介して接続されたコントロールバルブと、を備えた油圧制御装置のエア抜き方法において、
前記油圧ユニットは、
前記オイル供給源からオイルが供給されるシリンダ室を備えたシリンダと、
該シリンダとともに前記シリンダ室を形成し、前記オイルが給排されるとき前記シリンダに対して摺動するピストンと、
前記シリンダ室の容積を減少させる側に、該ピストンを付勢する付勢手段と、
前記シリンダ室に設けられ、前記シリンダ室へ給排される前記オイルが通流するオイル給排口と、を備え、
前記コントロールバルブは、前記ピストンが前記付勢手段により付勢され、前記シリンダ室の容積が縮小するとき、前記オイル給排口を介して、前記シリンダ室に前記コントロールバルブを介して前記オイルが供給されたとき、前記シリンダ室に存在するエアをオイル排出部に排出するバルブを備え、
前記油圧ユニットと前記コントロールバルブを組み付ける組み付け工程と、
前記組み付け後、前記ピストンを摺動させ前記シリンダ室の容積を拡大する加圧を行い、その後、前記ピストンが戻って前記シリンダ室の容積を縮小する減圧を行い、前記シリンダ室の容積の縮小に伴い前記シリンダ室に存在するエアを前記オイル排出部に排出するエア抜き工程と、
を有することを特徴とする油圧制御装置のエア抜き方法。
【請求項1】
油圧ユニットと、該油圧ユニットとは油路を介して接続されたコントロールバルブと、を備えた油圧制御装置において、
前記油圧ユニットは、
オイル供給源からオイルが供給されるシリンダ室を備えたシリンダと、
該シリンダとともに前記シリンダ室を形成し、前記シリンダ室に前記オイルが給排されるとき前記シリンダに対して摺動するピストンと、
前記シリンダ室の容積を縮小させる側に、前記ピストンを付勢する付勢手段と、
前記シリンダに設けられ、前記シリンダ室へ給排される前記オイルが通流するオイル給排口と、
を備え、
前記コントロールバルブは、前記ピストンが、前記付勢手段により付勢され、前記シリンダ室の容積を縮小するとき、前記オイル給排口を介して、前記シリンダ室に存在するエアをオイル排出部に排出するバルブを備え、
前記オイル給排口は、前記シリンダ室に前記コントロールバルブを介して前記オイルが供給されたとき、前記シリンダ室に存在するエアが集まる前記シリンダの上方位置に設定したことを特徴とする油圧制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載された油圧制御装置において、
前記オイル排出部と、前記シリンダ室にオイルを供給するオイルポンプと、を備え、
前記オイル排出部は、前記シリンダ室から排出された前記オイルを貯留し、
前記オイルポンプは、前記オイル排出部に貯留されたオイルを吸入して前記シリンダ室にオイルを供給することを特徴とする油圧制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された油圧制御装置において、
前記油圧ユニットの組付け時、前記ピストンを摺動させ前記シリンダ室の容積を拡大する加圧を行い、その後、前記ピストンが戻ってシリンダ室の容積を縮小する減圧を行うという加圧・減圧を単位とするエア抜き制御を行うエア抜き制御手段を備えたことを特徴とする油圧制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載された油圧制御装置において、
前記エア抜き制御手段は、前記エア抜き制御の指令値の加圧・減圧の波形を、ステップ状波形とすることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載された油圧制御装置において、
前記エア抜き制御手段は、加圧・減圧の単位を1回としてカウントする前記エア抜き制御の指令値の出力を、所定の油圧応答性が確保されるエア抜け状態に達するまでの所定回数行うことを特徴とする油圧制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載された油圧制御装置において、
前記エア抜き制御手段は、前記加圧を行う指令値を出力してから前記ピストンが最大ストローク位置に達するまでに要する時間と、前記減圧を行う指令値を出力してから前記付勢手段の付勢力により前記ピストンが初期位置に戻るまでに要する時間を予め計測しておき、1回の加圧・減圧が終わり、次の加圧・減圧を開始するまでのタイミングを、前記計測した時間データに基づいて設定することを特徴とする油圧制御装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までの何れか1項に記載された油圧制御装置において、
前記油路は、前記油圧ユニットと前記コントロールバルブを接続する配管の内壁により形成された油路であり、
前記シリンダは、加圧時、前記配管内のエアを前記シリンダ室に送り込めるように、前記シリンダ室の容積を規定し、
前記エア抜き制御手段は、加圧時、前記配管内のエアを前記シリンダ室に送り込めるように、加圧時の油圧の大きさを規定することを特徴とする油圧制御装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までの何れか1項に記載された油圧制御装置において、
前記油圧ユニットにより締結・開放されるクラッチを有し、
前記クラッチは、エンジンとモータと駆動輪を備えたハイブリッド駆動系のうち、前記エンジンと前記モータの間に介装され、電気自動車走行モードの選択時に開放され、ハイブリッド車走行モードの選択時に締結される走行モード選択クラッチであることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項9】
請求項3または請求項4に記載された油圧制御装置において、
前記エア抜き制御手段は、加圧・減圧の単位とする前記エア抜き制御の指令値の出力に対する前記ピストンのストローク応答性を監視し、ストローク応答性を示す値が、エアが抜けた場合に相当する所定値に達したらエア抜き制御を終了することを特徴とする油圧制御装置。
【請求項10】
油圧ユニットと、該油圧ユニットとは油路を介して接続されたコントロールバルブと、を備えた油圧制御装置のエア抜き方法において、
前記油圧ユニットは、
前記オイル供給源からオイルが供給されるシリンダ室を備えたシリンダと、
該シリンダとともに前記シリンダ室を形成し、前記オイルが給排されるとき前記シリンダに対して摺動するピストンと、
前記シリンダ室の容積を減少させる側に、該ピストンを付勢する付勢手段と、
前記シリンダ室に設けられ、前記シリンダ室へ給排される前記オイルが通流するオイル給排口と、を備え、
前記コントロールバルブは、前記ピストンが前記付勢手段により付勢され、前記シリンダ室の容積が縮小するとき、前記オイル給排口を介して、前記シリンダ室に前記コントロールバルブを介して前記オイルが供給されたとき、前記シリンダ室に存在するエアをオイル排出部に排出するバルブを備え、
前記油圧ユニットと前記コントロールバルブを組み付ける組み付け工程と、
前記組み付け後、前記ピストンを摺動させ前記シリンダ室の容積を拡大する加圧を行い、その後、前記ピストンが戻って前記シリンダ室の容積を縮小する減圧を行い、前記シリンダ室の容積の縮小に伴い前記シリンダ室に存在するエアを前記オイル排出部に排出するエア抜き工程と、
を有することを特徴とする油圧制御装置のエア抜き方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−149490(P2011−149490A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11180(P2010−11180)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
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