説明

油圧回路及び方向制御弁

【課題】方向切換弁と流量制御弁とを備えた方向制御弁において、タンク圧の変動に影響されることのない差圧を用いて流量制御弁を制御できる油圧回路及び同油圧回路で用いることのできる方向制御弁を提供することにある。
【解決手段】方向制御弁8は、2分割された直引きスプール8Aと自動制御スプール8Bとを同軸上に配設して構成し、自動制御スプール8Bをバネ10の付勢力により直引きスプール8Aの動きに追従させる。タンクポート24Fとタンクポート24Gとはドレイン油路42を介してタンク50に接続する。また、自動制御スプール8Bはドレイン油路42に設けた絞り30の前後差圧に応じて制御される。自動制御スプール8Bが絞り30の前後差圧によって制御されることにより、自動制御スプール8Bから排出される戻り油の排出流量を積荷重量の大きさに応じて制御できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータからの戻り油の排出流量を制御する方向制御弁を備えた油圧回路及び同油圧回路に用いられる方向制御弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばフォークリフトにおけるリフトシリンダの下げ制御は、同リフトシリンダのボトム室から排出される戻り油の排出流量を、方向切換弁機能を有したリフトシリンダ用の方向制御弁によって制御していた。このように、方向切換弁機能を有した方向制御弁だけを用いて前記戻り油の流量の制御を行うと、リフトシリンダにおける負荷圧が高いときには、方向制御弁から排出される戻り油の流量が増大して、フォークの下降速度を適正の下降速度に制御することができなかった。
【0003】
このため、リフトシリンダにおける負荷圧が高いときでも、フォークの下降速度が速くならないように制限するため、リフトシリンダと方向制御弁との間に流量調整弁を配設した回路構成が用いられていた。
【0004】
リフトシリンダと方向制御弁との間に流量調整弁を配設する代わりに、方向切換弁機能に加えて流量制御弁機能を持たせた方向制御弁(特許文献1参照。)が、本願出願人によって提案されている。特許文献1に記載された方向制御弁を、本願発明の従来例として、図5には方向制御弁の回路図を示している。
【0005】
図5において方向制御弁91は、方向切換弁91の方向切換スプールとして、同軸上に配設した第1スプール92A及び流量制御弁の流量制御スプールとしての第2スプール92Bを備えた構成となっている。第1スプール92Aは、操作レバー93の操作によって制御される。
【0006】
操作レバー93の操作によって、第1スプール92Aが(I)位置に切換えられることで、リフトシリンダ96A,96Bに可変容量ポンプ90からの吐出流量を供給してリフトシリンダ96A,96Bのピストンを上昇させることができる。また、第1スプール92Aが(III)位置に切換えられることで、リフトシリンダ96A,96Bのボトム側からの戻り油をタンク95に排出させることができ、リフトシリンダ96A,96Bのピストンを下降させることができる。尚、(II)位置は、リフトシリンダ96A,96Bに対する油の供給・排出を停止する中立位置である。
【0007】
第2スプール92Bは、バネ94に付勢されており、バネ94の付勢力によって第1スプール92Aと当接して一体的に摺動することができる。また、方向制御弁91の排出ポートであるタンクポート97E及びタンクポート97Gから排出されたそれぞれの戻り油は合流し、合流した戻り油の圧力と、タンク95から直接導かれたタンク圧との差圧に応じて、タンクポート97Gの開口面積が制御される構成となっている。
【0008】
即ち、油路タンクポート97E及びタンクポート97Gに接続しているドレイン油路100には、絞り98が配設されており、ドレイン油路100は絞り98の下流側においてタンク95に接続したドレイン油路101と接続している。そして、絞り98の上流側の圧力と、タンク95から直接導かれたタンク圧との差圧に応じて、タンクポート97Gの開口面積が制御される構成となっている。
【0009】
リフトシリンダ96A,96Bのボトム側からの戻り油のうちでアクチュエアータポート97Bを介して、タンクポート97Eから排出される戻り油の排出流量は、第1スプール92Aによって制御されている。また、アクチュエアータポート97Dを介して、タンクポート97Gから排出される戻り油の排出流量は、第2スプール92Bによって制御されている。そして、リフトシリンダ96A,96Bからの戻り油の総排出流量は、第1スプール92Aによって制御された排出流量と、第2スプール92Bによって制御された排出流量と、の合計流量となっている。
【0010】
第1スプール92Aが(III)位置に切換えられた状態で前記第2スプール92Bに作用する前記合流した戻り油の圧力が大きくなると、第2スプール92Bはタンクポート97Gの開口面積を狭める方向に制御される。これにより、タンクポート97Gから排出される戻り油の排出流量を減少させることができ、リフトシリンダ96A,96Bにおけるピストンの下降速度が速くなってしまうのを制限することができる。
【特許文献1】特開2006−71051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載されている方向制御弁91では、第1スプール92Aで流量制御された戻り油と第2スプール92Bで流量制御された戻り油とは、合流して排出される回路構成となっている。そして、合流した戻り油の圧力と、タンク95から直接導かれたタンク圧との差圧に応じて、第2スプール92Bが制御される構成となっている。
【0012】
この構成によって、従来のようにリフトシリンダと方向制御弁との間に流量調整弁を配した油圧回路を構成しなくても、方向制御弁91だけでリフトシリンダ96A,96Bにおけるピストンの下降速度を制御することができる。しかも、方向制御弁91をコンパクトに構成することができるので、方向制御弁を設置するスペースを小さくすることができるといった利点を有している。
【0013】
特許文献1に記載されている方向制御弁91では、第2スプール92Bを制御する差圧を求めるのに、絞り98の上流側における圧力とタンク95から直接導かれたタンク圧とが用いられている。しかも、ドレイン油路100とドレイン油路101とが接続する絞り98の下流側では、他のアクチュエータからの戻り油が合流する構成となっている。そして、絞り98の下流側からタンク95までの配管が長く構成されているため、ドレイン油路101における配管抵抗の影響を絞り98の下流側において受けてしまうことになる。
【0014】
即ち、絞り98の下流側からタンク95までのドレイン油路101における配管抵抗を、絞り99として示すと、絞り99の上流側の圧力、即ち、絞り98の下流側における圧力は、他のアクチュエータからの戻り油によって変化してしまうことになる。そして、絞り98の上流側における圧力も、絞り98の下流側における圧力の変化の影響を受けて、変化することになる。
【0015】
更に、油温が変化して油の粘度が変わった場合や、戻り油を濾過してタンク95に戻すために配設したフィルターによる圧損等の影響などによっても、絞り98の下流側における圧力が変化することがある。このような要因によって、絞り98の下流側における圧力が変化すると、その影響を受けて絞り98の上流側における圧力も変化してしまうことになる。
【0016】
このため、上述したような要因によって絞り98の上流側における圧力が、絞り98の下流側における圧力の影響を受けて変化すると、第2スプール92Bを制御する差圧の大きさが変わってしまうことになる。
即ち、リフトシリンダ96A,96Bからの戻り油の圧力とタンク圧との差圧によって、第2スプール92Bが制御されるように差圧条件を予め設定しておいたとしても、絞り98の下流側における圧力が上述したような要因によって変化してしまうと、絞り98の上流側における圧力も変化してしまう。このため、第2スプール92Bの制御を、予め設定しておいた差圧条件に基づいて制御することができなくなってしまう。尚、タンク圧としては、略一定の圧力になっている。
【0017】
例えば、第2スプール92Bに作用するリフトシリンダ96A,96Bからの戻り油の流量は変わっていないとしたときに、上述したような要因によって絞り98の下流側における圧力が上昇すると、第2スプール92Bを制御することになる差圧としては、予め設定しておいた差圧よりも大きな差圧の値となってしまう。このため、ポート97Gから排出される戻り油の流量を適正に制御することができなくなり、リフトシリンダ96A,96Bにおけるピストンの下降速度としては、作業者が意図した下降速度よりも遅くなってしまう事態が発生することになる。
【0018】
本願発明では、方向切換弁と流量制御弁とを備えた方向制御弁において、方向切換弁及び流量制御弁とタンクとを接続するドレイン油路に設けた絞りの下流側における圧力が変動したとしても、絞りの下流側における圧力の変動に影響されることのない差圧で流量制御弁を制御できる油圧回路及び同油圧回路で用いることのできる方向制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願発明の課題は請求項1〜5に記載された油圧回路の構成及び請求項6に記載された方向制御弁の構成により達成することができる。
即ち、本願発明の油圧回路では、アクチュエータへの油の供給流量及び前記アクチュエータからの戻り油の排出流量を制御する方向切換弁、及び前記方向切換弁による排出流量制御とは別に前記アクチュエータからの戻り油の排出流量を制御する流量制御弁、を備えてなる方向制御弁と、前記方向切換弁及び前記流量制御弁とタンクとを接続するドレイン油路に設けた絞りと、を備え、
前記流量制御弁の開口面積が、前記絞りの前後差圧に応じて制御されてなることを最も主要な特徴となしている。
【0020】
また、本願発明の油圧回路では、流量制御弁におけるスプールの構成及び絞りの前後差圧が前記流量制御弁のスプールに作用する構成を特定したことを主要な特徴となしている。
更に、本願発明の油圧回路では、方向切換弁のスプールと流量制御弁のスプールとの配置関係を特定したことを主要な特徴となしている。
更にまた、本願発明の油圧回路では、流量制御弁のスプールを付勢しているバネの配置構成及びその作用を特定したことを主要な特徴となしている。
【0021】
また、本願発明の油圧回路では、アクチュエータの負荷圧と自身が吐出したポンプ圧との差圧に応じてポンプ容量が制御される負荷圧感応型の可変容量油圧ポンプと、前記アクチュエータへの油の供給流量及び前記アクチュエータからの戻り油の排出流量を制御する方向切換弁と、前記アクチュエータからの戻り油の排出流量を制御し、前記排出流量を制御するスプールの部位に段差径が形成された流量制御弁と、
前記可変容量油圧ポンプと前記方向切換弁とを接続する吐出油路と、前記方向切換弁及び前記流量制御弁と前記アクチュエータとを接続する操作油路と、前記操作油路に配設され、前記アクチュエータへの油の供給を許容し、前記アクチュエータからの戻り油の排出を制御するパイロットチェック弁と、前記パイロットチェック弁の制御を行う電磁切換制御弁と、
前記方向切換弁及び前記流量制御弁とタンクとを接続するドレイン油路と、前記ドレイン油路に配設した絞りと、前記絞りの下流側の圧力を、前記流量制御弁のスプールの両端面に作用させるパイロット油路と、を備えた構成を他の最も主要な特徴となしている。
【0022】
本願発明の方向制御弁では、アクチュエータへの油の供給流量及び前記アクチュエータからの戻り油の排出流量を制御する方向切換弁の方向切換スプールと、前記方向切換スプールとは別体に構成され、前記アクチュエータからの戻り油の排出流量を制御する流量制御弁の流量制御スプールと、を同軸上に有してなり、
前記流量制御スプールを前記方向切換スプールに当接させるバネが、前記流量制御スプールの一端部側に配設され、前記アクチュエータからの戻り油の排出流量を制御する前記流量制御スプールの部位に、段差径が形成され、前記方向制御弁及び前記流量制御弁とタンクとを接続するドレイン油路に配設した絞りの下流側の圧力が、前記流量制御スプールの両端面に作用し、前記絞りの上流側における圧力が高くなると、前記流量制御弁の開口面積が狭まる方向に作動してなる構成を別の最も主要な特徴となしている。
【発明の効果】
【0023】
本願発明では、方向制御弁とタンクとを接続するドレイン油路、即ち、方向切換弁及び流量制御弁とタンクとを接続するドレイン油路、に設けた絞りの前後差圧を用いて、アクチュエータからの戻り油の総排出流量のうちで、流量制御弁を流れる流量分を制御している。
【0024】
この構成によって、油温が変化して油の粘度が変わったり、他のアクチュエータからの戻り油の影響や、戻り油を濾過してタンクに戻すために配設したフィルターによる圧損等の影響によって、流量制御弁を制御する差圧を求めるために配設した絞りの下流側における圧力が変化したとしても、同絞りの上流側における圧力も同絞りの下流側における圧力変化に従って変化することになる。
【0025】
従って、絞りの前後差圧としては、絞りの下流側における圧力の変化に影響されない差圧として取り出すことができる。この絞りの前後差圧に基づいて、流量制御弁のスプールを制御することができるので、流量制御弁から排出される戻り油の排出流量としては、予め設定した条件に基づいて、安定した状態で制御することができる。従って、方向制御弁にアクチュエータからの戻り油の排出流量に対する流量制御機能を奏させるときには、絞りの下流側における圧力の変動による影響を排除しておくことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本願発明の油圧回路及び方向制御弁の構成としては、以下でフォークリフトにおけるリフトシリンダに対する油の流量制御を行う方向制御弁を備えた油圧回路及び同油圧回路で用いられる方向制御弁を例にとって説明を行う。
【0027】
しかし、本願発明の油圧回路及び方向制御弁としては、以下で説明するフォークリフトのリフトシリンダ用の油圧回路及び同油圧回路で用いられる方向制御弁に限定されるものではなく、アクチュエータに対する油圧回路及び方向制御弁として多様に適用することができるものである。
【実施例】
【0028】
図1は、本発明に係わる油圧回路図であり、図2は、本願発明に係わる方向制御弁の一つの実施例を示す断面図である。図1では、アクチュエータとしてフォーク昇降用のリフトシリンダ13A,13Bを示しており、図2では、アクチュエータ13でフォーク昇降用のリフトシリンダを代表して示している。
【0029】
図1では、フォークリフトのステアリングを駆動操作するアクチュエータ22を優先されるアクチュエータとして、フォーク昇降用のリフトシリンダ13A,13B及びマストの前後傾動用のチルトシリンダ20A,20Bを優先されないアクチュエータとした油圧回路を示している。
【0030】
図1に示すように、負荷圧感応型の可変容量ポンプ1と優先弁3とは、吐出油路35を介して接続している。優先弁3は、油路36,37に接続しており、油路36はチェック弁33を介して方向制御弁8及びチェック弁34を介して方向切換弁17に接続している。油路37は、優先されるアクチュエータ22を制御するステアリング駆動装置21に接続している。
【0031】
油路37を介した優先されるアクチュエータ22への分流と、油路36を介した優先されないリフトシリンダ13A,13B及びチルトシリンダ20A,20Bへの分流は、負荷圧感応型の優先弁3により制御されることになる。ステアリング駆動装置21からの戻り油は、ドレイン油路45を介してタンク50に排出される。
【0032】
方向制御弁8は、油路38を介して一対のリフトシリンダ13A,13Bに接続している。油路38には、パイロットチェック弁12が配設されており、パイロットチェック弁12は電磁切換弁15によって制御される。一対のリフトシリンダ13A,13Bにおけるヘッド側からの戻り油は、ドレイン油路47を介してタンク50に排出され、一対のリフトシリンダ13A,13Bにおけるボトム側からの戻り油は、油路38を介して排出制御される。
方向切換弁17は、油路39,40を介して一対のチルトシリンダ20A,20Bに接続している。
【0033】
一対のリフトシリンダ13A,13Bにおけるロードセンシング圧(以下、LS圧と略記する。)は、パイロット油路54によって取り出され、シャトル弁27の一端側に導かれている。一対のチルトシリンダ20A,20BにおけるLS圧は、パイロット油路56よって取り出され、シャトル弁27の他端側に導かれている。
【0034】
シャトル弁27で選択された高圧側のLS圧は、パイロット油路57によって取り出され、シャトル弁28の一端側に導かれている。アクチュエータ22におけるLS圧は、パイロット油路51によって取り出され、シャトル弁28の他端側に導かれている。シャトル弁28で選択された最高のLS圧は、パイロット油路58によって取り出され、可変容量ポンプ1を制御する容量制御装置2に導かれている。
【0035】
また、容量制御装置2には、吐出油路35におけるポンプ圧が導かれている。容量制御装置2は、吐出油路35におけるポンプ圧とパイロット油路58によって取り出された最高のLS圧との差であるロードセンシング差圧(以下、LS差圧と略記する。)に応じて、可変容量ポンプ1のポンプ容量を制御することになる。容量制御装置2は、LS差圧が大きいときには、可変容量ポンプ1からの吐出流量を減少させ、前記LS差圧が小さいときには、可変容量ポンプ1からの吐出流量が増大するように可変容量ポンプ1のポンプ容量を制御する。
【0036】
このように、可変容量ポンプ1は、アクチュエータ22、一対のリフトシリンダ13A,13B、一対のチルトシリンダ20A,20Bのいずれかのアクチュエータが必要とする最高の吐出流量を吐出させることができ、負荷圧感応型の油圧ポンプとして構成しておくことができる。
【0037】
パイロット油路58は、ロードセンシングリリーフ弁32(以下、LSリリーフ弁と略記する。)を介してドレイン油路46と連通しており、パイロット油路58を流れる油圧が、所望の圧力以上に上昇したときには、LSリリーフ弁32を介してタンク50に流出させることができる。即ち、LSリリーフ弁32により、パイロット油路58における異常圧力上昇を防止することができ、パイロット油路58を流れる油圧を予め設定した一定の圧力以下にしておくことができる。
【0038】
次に、図1に示す油圧回路を構成する主要部材についての説明を順次行うことにする。
優先弁3は3ポート23A〜23Cを有した構成となっており、ポート23Cは吐出油路35を介して負荷圧感応型の可変容量ポンプ1に接続している。ポート23Aは、油路36を通りチェック弁33を介して方向制御弁8のポンプポート24Eに接続するとともに、チェック弁34を介して方向制御弁17のポンプポート25Dに接続している。ポート23Bは、油路37を介してステアリング駆動装置21に接続している。
【0039】
優先弁3は、ステアリング駆動装置21に油を供給する油路37における油圧と、電磁切換制御弁4を介してパイロット油路51から取り出したアクチュエータ22のLS圧との差圧に応じて、位置が切換えられる構成となっている。
【0040】
優先弁3のポート23Bに接続した油路37における圧力は、パイロット油路52a,52bを介して優先弁3に導かれており、パイロット油路52aによって導かれた圧力とパイロット油路52bによって導かれた圧力との差圧に応じて、優先弁3の切換え制御が行われる。優先弁3を図1における第1位置(I)側に切換える圧力としては、パイロット油路52aに配した絞りの下流側における圧力とバネ3a付勢力とが作用している。また、優先弁3を図1における第3位置(III)側に切換える圧力としては、パイロット油路52bで導かれている圧力が作用している。
【0041】
また、パイロット油路52aと、アクチュエータ22のLS圧を検出するパイロット油路51とは、パイロット油路53を介して接続している。パイロット油路53には電磁切換制御弁4が配設されている。電磁切換制御弁4が連通状態にあるときには、パイロット油路52aによって優先弁3に導かれる圧力を、パイロット油路51におけるLS圧と等しくすることができる。
【0042】
電磁切換制御弁4に対する切換制御としては、例えば、運転席に設置した着座確認スイッチにより切換制御を行わせることができる。即ち、着座確認スイッチにより運転者の着座が検出されているときには、電磁切換制御弁4のソレノイド4aは励磁されて電磁切換制御弁4は導通状態を維持する。これにより、パイロット油路52aによって優先弁3に導かれる圧力として、パイロット油路51におけるLS圧を利用することができ、アクチュエータ22のLS圧とステアリング駆動装置21に供給するポンプ圧との差圧に応じて、優先弁3を制御することができる。
【0043】
また、電磁切換制御弁4が閉塞状態に切換えられているときには、パイロット油路52a及びパイロット油路52bからそれぞれ優先弁3に導かれる圧力は、略等圧状態となる。このため、優先弁3は、バネ3aの付勢力により第1位置(I)に切換わり、この第1位置(I)状態が維持されることになる。このとき、優先弁3は、他のアクチュエータであるリフトシリンダ13A,13B及び/又はチルトシリンダ20A,20Bへの給油を停止した状態となる。即ち、このとき優先弁3は、優先されるアクチュエータ22に対してだけ可変容量ポンプ1からの吐出流量を供給することができる切換位置となっている。
【0044】
優先弁3が第3位置(III)又は第2位置(II)に切換わっているときには、可変容量ポンプ1からの吐出流量を、優先弁3のポート23Aから油路36を通って方向制御弁8のポンプポート24E及び方向制御弁17のポンプポート25Dに供給することができる。
【0045】
方向制御弁8は7ポート24A〜24Gを備え、直引きスプール8Aと自動制御スプール8Bとに2分割されたスプールを有している。直引きスプール8Aは、操作レバー9の操作によって摺動し、自動制御スプール8Bは、バネ10aの付勢力によって直引きスプール8Aの摺動に追従できる構成となっている。また、操作レバー9には中立バネ10bが設けられており、操作レバー8に対する操作を解除すると、操作レバー8は中立位置に復帰する構成となっている。
【0046】
ロードセンシングポート24A(以下、ロードセンシングポートをLSポートと略記する。)は、リフトシリンダ13A,13BのLS圧を検出するポートとして構成されており、パイロット油路54を介してシャトル弁27に接続している。ポート24Bは、パイロット油路55を介してパイロットチェック弁12に接続しており、パイロット油路55にはパイロットチェック弁12を制御する電磁切換制御弁15が配設されている。
【0047】
直引きスプール8Aの作動側にあるアクチュエータポート24Cと、自動制御スプール8Bの作動側にあるアクチュエータポート24Dとは、それぞれ油路38に接続している。ポンプポート24Eは、チェック弁33を介して優先弁3の出力側のポート23Aに接続している。タンクポート24F,24Gは、リフトシリンダ13A,13Bから排出される油をドレイン油路42に排出するポートとして使用されている。ドレイン油路42は、途中でドレイン油路44に接続し、ドレイン油路44はドレイン油路46を介してタンク50に接続している。
【0048】
ドレイン油路44とドレイン油路46との間に示した絞り49は、油路44、46の配管抵抗を代表的に示している。また、ドレイン油路42には、絞り30が配設されており、絞り30の下流側の圧力は、パイロット油路29を介して自動制御スプール8Bの両端面に導かれている。
【0049】
また、絞り30の上流側の圧力は、後述する自動制御スプール8Bの段差部73(図2参照。)に作用している。尚、図1では、絞り30の上流側の圧力はパイロット油路42aを介して、自動制御スプール8Bに導かれている図として示している。
【0050】
ドレイン油路42に設けた絞り30の前後差圧に応じて、自動制御スプール8Bは切換位置(IV)から切換位置(V)側に切換えられる。そして、操作レバー9の操作によって、直引きスプール8Aは、切換位置(VII)〜切換位置(IX)に切換わることができ、自動制御スプール8Bは直引きスプール8Aに追従して、切換位置(IV)〜切換位置(VI)に切換わることができる。
【0051】
操作レバー9による操作が行われていないときには、方向制御弁8は、中立位置である切換位置(V),(VIII)にあり、油圧ポンプ1からの吐出流量がリフトシリンダ13A,13Bに供給されるのを遮断しておくことができる。即ち、方向制御弁8が中立位置にあるとき、直引きスプール8Aは切換位置(VIII)にあり、自動制御スプール8Bは切換位置(V)にある。
また、方向制御弁8の切換位置(VI),(IX)は、油圧ポンプ1からの吐出流量をリフトシリンダ13A,13Bに供給して、リフトシリンダ13A,13Bを上昇させる位置である。
【0052】
方向制御弁8の切換位置(IV),(VII)は、リフトシリンダ13A,13Bを下降させる位置であり、ドレイン油路42に設けた絞り30の前後差圧に応じて、自動制御スプール8Bを直引きスプール8Aとは独立して制御することができる位置である。
方向制御弁8を切換位置(IV),(VII)とすることで、リフトシリンダ13A,13Bのボトムからの戻り油の排出流量を、直引きスプール8Aによる排出流量制御及び自動制御スプール8Bによる排出流量制御によって制御することができる。
【0053】
このように、自動制御スプール8Bによって、リフトシリンダ13A,13Bから排出される油の排出流量を制御することができ、方向制御弁8に流量調整弁としての機能を持たせておくことができる。従って、リフトシリンダ13A,13Bにおける下降速度の制御を自動制御スプール8Bによって行うことができる。
【0054】
自動制御スプール8Bに作用する絞り30の前後差圧に応じて、自動制御スプール8Bがリフトシリンダ13A,13Bから排出される戻り油の排出流量を制御しているときにおいても、直引きスプール8Aは、切換位置(VII)にあり、操作レバー9の操作量に応じてリフトシリンダ13A,13Bから排出される戻り油の排出流量を制御している。そして、リフトシリンダ13A,13Bから排出される戻り油の総排出流量としては、自動制御スプール8Bによる排出流量と、直引きスプール8Aによる排出流量との合計流量となっている。
尚、方向制御弁8の構成については、図2及び図3を用いて後述する。
【0055】
アクチュエータポート24C,24Dに接続した油路38は、リフトシリンダ13A,13Bのボトムに接続しており、油路38の途中には、パイロットチェック弁12が配されている。パイロットチェック弁12は、パイロット油路55に設けた電磁切換制御弁15によって制御される。
【0056】
電磁切換制御弁15は安全装置として作動し、運転者が運転席に着座しているときには、ソレノイド15aが作動して連通位置に切換えることができる。また、運転者が運転席に着座していないときには、ソレノイド15aが作動せずに電磁切換制御弁15は、バネの付勢力によって遮断位置に切換えられている。
【0057】
方向制御弁8が切換位置(IV),(VII)にあって電磁切換制御弁15が遮断位置にあるときには、リフトシリンダ13A,13Bを下降させようとしてもパイロットチェック弁12のリフトシリンダ13A,13B側の圧力、即ち、パイロット油路55の圧力、が落ちないため、パイロットチェック弁12が開かない。
このため、リフトシリンダ13A,13Bからの戻り油は、パイロットチェック弁12において止められることになる。
【0058】
方向制御弁8が切換位置(IV),(VII)にあって電磁切換制御弁15が連通位置に切換わっているときには、パイロット油路55の圧力は、ポート24Bからタンクポート24Fを通ってタンク50に通じる圧力になる。これにより、パイロットチェック弁12を連通状態としておくことができる。即ち、リフトシリンダ13A,13Bのボトム側からの戻り油は、パイロットチェック弁12を通ってアクチュエータポート24C,24Dに戻されることになる。
【0059】
リフトシリンダ13Aとリフトシリンダ13Bとの間には、下降セフティ弁14が配されている。下降セフティ弁14は、例えば、油路38等が破損した場合にリフトシリンダ13Aが下降したとしても、リフトシリンダ13Bの下降を停止させるように機能する。
【0060】
チルトシリンダ20A,20Bの作動制御を行う方向切換弁17は、3位置5ポート25A〜25Eの制御弁として構成されている。アクチュエータポート25A,25Cは、油路39,40を介してそれぞれチルトシリンダ20A,20Bのボトム側とヘッド側とに接続している。LSポート25Bは、チルトシリンダ20A,20BにおけるLS圧を取り出すポートであって、リフトシリンダ13A,13BのLS圧との間で高圧側のLS圧を取り出すシャトル弁27に接続している。
【0061】
ポンプポート25Dには、油路36及びチェック弁34を介して優先弁3から出力された油が供給されている。タンクポート25Eは、ドレイン油路44に接続しており、チルトシリンダ20A,20Bからの戻り油は、タンクポート25Eからドレイン油路44、46を介してタンク50に戻すことができる。
【0062】
次に、図2、図3を用いて方向制御弁8、特に自動制御スプール8Bに基づくリフトシリンダ13からの戻り油の流量制御について説明する。図2は、方向制御弁8が中立位置(V),(VIII)にあるときの状態を示し、図3は、方向制御弁8を切換位置(IV),(VII)に切換えたときに、絞り30の前後差圧に応じて自動制御スプール8Bが独立して制御されている状態を示している。
【0063】
尚、図2、図3では、図1に示している優先弁3関係の回路構成、ステアリング駆動装置関係の回路構成、チルトシリンダ20A,20B関係の回路構成、パイロットチェック弁12、電磁切換制御弁15、下降セフティ弁14等の図示を省略している。また、図2、図3において、図1に示した部材と同じ部材については、同一の符号を用いることで、その部材の説明を省略しているが、直引きスプール8A及び自動制御スプール8Bの配設位置は、図1と図2、図3とでは左右逆になっている。
【0064】
方向制御弁8には、ポンプ圧を入力するポンプポート24E、アクチュエータ13であるリフトシリンダへの油の出力及びアクチュエータ13からの戻り油圧を受け入れる2個のアクチュエータポート24C,24D、タンク50に接続した2個のタンクポート24F,24G、LSポート24Aの他に、圧力室65、及びバネ室64内の圧力室66が形成されている。尚、図1で示したポート24Bは、図2では省略している。
【0065】
圧力室65及びバネ室64内の圧力室66は、自動制御スプール8Bを制御するための圧力室であって、ドレイン油路42に配設した絞り30の下流側の圧力がパイロット油路29を介して導かれている。また、LSポート24Aには、容量制御弁2を制御するための負荷圧をシャトル弁27(図1参照)に導くパイロット油路54(図1参照)が接続している。
【0066】
直引きスプール8Aは、バネ室61内に収納した中立バネ63によって中立位置に維持されるように付勢されており、直引きスプール8Aの端部には、操作レバー9(図1参照)が回動自在に連結されている。
【0067】
図2に示すように、直引きスプール8Aには、環状溝69,70と連通穴75とが形成されている。環状溝69の操作レバー側には、環状溝69よりも深さの浅い切欠溝69aが形成されており、環状溝69の自動制御スプール8B側には、切欠溝69bが形成されている。また、環状溝70の自動制御スプール8B側には、切欠溝70bが形成されている。連通穴75は、LS圧を取り出す通路として構成されており、連通穴75の途中には、キリ孔76が形成されており、連通穴75の底部には、キリ穴77が形成されている。
【0068】
環状溝69は、アクチュエータポート24Cとタンクポート24Fとの接続、及びアクチュエータポート24CとLSポート24Aとの切換え接続を行うことができる。環状溝69が、アクチュエータポート24CとLSポート24Aとを接続する位置にあるときには、環状溝70は、ポンプポート24EとLSポート24Aとを接続させる位置に来ることになる。
即ち、このとき、ポンプポート24Eの入力した油圧ポンプ1(図1参照)からの吐出流量は、ポンプポート24EからLSポート24A及びアクチュエータポート24Cを通って、アクチュエータ13に供給されることになる。
【0069】
連通穴75は、図2で示すように直引きスプール8Aが中立位置にあるときには、キリ孔77はタンクポート24Fに連通し、キリ孔76はLSポート24Aに連通している。即ち、このときには、LSポート24Aにおける圧力をタンク圧とすることができる。また、直引きスプール8Aがアクチュエータ13に油を供給する位置(図1の(IX)位置)にあるときには、キリ孔77はタンクポート24Fとの連通が遮断され、LSポート24Aは環状溝70を介してポンプポート24Eに連通することができる。
【0070】
自動制御スプール8Bには、環状溝72が形成されており、環状溝72のバネ室64側は段差部73として形成されている。即ち、環状溝72を挟んで自動制御スプール8Bの直引きスプール8A側における外周径よりも、自動制御スプール8Bのバネ室64側における外周径が大きく構成されている。
【0071】
また、自動制御スプール8B内には、バネ室64内の圧力室66と圧力室65とを連通させる連通路74が形成されており、連通路74の圧力室65側の端部には、連通路74と圧力室65とを連通するキリ孔74aが形成されている。これにより、バネ室64内の圧力室66に供給された絞り30の下流側における圧力は、圧力室65にも導かれることになる。
【0072】
自動制御スプール8Bの環状溝72は、アクチュエータポート24Dとタンクポート24Gとの断接を行うことができる。即ち、直引きスプール8Aの環状溝69が、アクチュエータポート24Cとタンクポート24Fとを接続する位置にあるときには、環状溝72は、アクチュエータポート24Dとタンクポート24Gとの接続を行うことができる。このとき、アクチュエータ13からの戻り油は、タンクポート24F,24Gを通って、ドレイン油路42からタンク50に排出することができる。
【0073】
そして、このときにおけるアクチュエータポート24Cとタンクポート24Fを接続している開口面積は、操作レバー9(図1参照)の操作量によって制御されている。また、アクチュエータポート24Dとタンクポート24Gとを接続している開口面積は、環状溝72における段差部73によってもたらされた面積差の部分に作用しているタンクポート24Gにおける負荷圧、即ち、絞り30の上流側の圧力と、バネ室内の圧力室66において段差部73によってもたらされた面積差の部分に作用している絞り30の下流側における圧力と、の差圧に応じて制御されることになる。
【0074】
直引きスプール8Aと自動制御スプール8Bとの当接面67には、当接面67に油が流れ込めるようにスリットが形成されている。図示例では、自動制御スプール8Bの当接面67にスリットを形成した例を示しているが、スリットは、直引きスプール8Aと自動制御スプール8Bの一方における当接面に形成しておくことも、両方の当接面にそれぞれ形成しておくこともできる。当接面にスリットを形成しておくことによって、絞り30の下流側における圧力を自動制御スプール8Bの端面に作用させておくことができる。
【0075】
直引きスプール8Aの外周径と自動制御スプール8Bの外周径とについて見ると、直引きスプール8Aの外周径よりも自動制御スプール8Bの外周径が大きな外周径となるように構成されている。尚、直引きスプール8Aの外周径と自動制御スプール8Bの外周径とを同じ外周径となるように構成しておくことも、直引きスプール8Aの外周径を自動制御スプール8Bの外周径よりも大きな外周径となるように構成しておくこともできる。
【0076】
操作レバー9(図1参照)の操作によって、直引きスプール8Aが摺動し、直引きスプール8Aの摺動に追従して、自動制御スプール8Bは直引きスプール8Aの摺動方向と同じ方向に摺動する。そして、図3で示すように、直引きスプール8Aを図3の左方向(図1では、(VII)位置側)に摺動させることで、アクチュエータ13から排出された戻り油の排出流量を直引きスプール8Aによって制御することができる。
【0077】
しかも、このとき自動制御スプール8Bは、図3の左方向(図1では、(IV)位置側)に追従して摺動することになり、直引きスプール8Aによる排出流量制御とは独立して、自動制御スプール8Bによって戻り油の排出流量を制御することができる。即ち、自動制御スプール8Bは、段差部73によってもたらされた面積差の部分に作用させている絞り30の前後差圧に応じて、戻り油の排出流量を制御することができる。
【0078】
このとき、アクチュエータ13から排出される油の排出流量としては、直引きスプール8Aによって制御される排出流量と、自動制御スプール8Bによって制御される排出流量と、の合計流量となる。直引きスプール8Aによる排出流量は、操作レバー9(図1参照)の操作によって制御され、アクチュエータポート24Cとタンクポート24Eとを接続する開口面積に基づいた排出流量となる。自動制御スプール8Bによる排出流量は、絞り30の前後差圧に応じて制御され、自動制御スプール8Bにおけるアクチュエータポート24Dとタンクポート24Gとを接続する開口面積に基づいた排出流量となる。
【0079】
絞り30の下流側には、他のアクチュエータからの戻り油が流れるドレイン油路44が接続されており、ドレイン油路は、図1にも示したようにドレイン油路46を介してタンク50に接続している。しかも、絞り30の下流側からタンク50までにおけるドレイン油路46の配管が長く構成されているため、ドレイン油路46における配管抵抗の影響が、絞り30の下流側において及ぼされることになる。
尚、フォークリフトのように作業機が同時に操作されることのない作業機械では、ドレイン油路44を絞り30の上流側につなげた構成としておくこともできる。
【0080】
ドレイン油路46における、絞り30の下流側からタンク50までの配管抵抗を、絞り31として示すと、絞り31の上流側の圧力、即ち、絞り30の下流側における圧力は、ドレイン油路44を流れる他のアクチュエータからの戻り油によって変化してしまうことになる。また、油温が変化して油の粘度が変わった場合や、戻り油を濾過してタンク55に戻すために配設したフィルターによる圧損等の影響などによって、絞り30の下流側における圧力が変化することがある。
【0081】
しかし、本発明に係わる自動制御スプール8Bは、絞り30の前後差圧に応じて制御される構成となっているので、絞り30の下流側における圧力が変化したとしても、絞り30の上流側における圧力も絞り30の下流側における圧力変化の影響を受けて同じく変化することになる。
【0082】
このため、絞り30の前後差圧としては、絞り30の下流側における圧力の変化に影響されない差圧として取り出すことができる。この絞り30の前後差圧に基づいて、自動制御スプール8Bを制御することができるので、方向制御弁8から排出されるアクチュエータ13からの戻り油の排出流量を予め設定した差圧条件に基づいて、安定した状態で制御することができる。
【0083】
図1を用いて説明を行うと、戻り油による圧力が高くて、絞り30の前後差圧が大きいときには、自動制御スプール8Bは(V)位置側に切換わり、タンクポート24Gを通って排出されるリフトシリンダ13A,13Bから戻り油の排出流量を減少させることができる。従って、リフトシリンダ13A,13Bにおける下降速度が高速とならないように制御することができる。
また、戻り油による圧力が低くて、絞り30の前後差圧が小さいときには、自動制御スプール8Bは(IV)位置側に切換わり、タンクポート24Gを通って排出されるリフトシリンダ13A,13Bから戻り油の排出流量を増大させておくことができる。
【0084】
アクチュエータポート24Dと環状溝72との間における開口面積に応じて、同開口面積を狭める方向にフローフォースが働くことになる。しかし、環状溝72の形状により、フローフォースの力を予め調整しておくこともできる。
【0085】
次に、アクチュエータ13としてのリフトシリンダによって積荷重量16を下降させるときにおける、アクチュエータ13から方向制御弁8を介してタンク50に排出される油の流量制御について説明する。
図3に示す状態は、自動制御スプール8Bは直引きスプール8Aの摺動に連動して摺動している状態を示しており、アクチュエータ13のボトム側からの戻り油は、アクチュエータポート24C,24Dに導入される。アクチュエータポート24Cに導入された戻り油は、環状溝69、切欠溝69aを通って、タンクポート24Fに流入し、ドレイン油路42,44,46を介してタンク50に排出される。
【0086】
一方、自動制御スプール8Bでは、アクチュエータポート24Dに導入された戻り油は、環状溝72を通って、タンクポート24Gに流入し、ドレイン油路42からタンク50に排出される。同時に、環状溝72の段差部73によってもたらされた面積差の部分には、タンクポート24Gに流入した戻り油の油圧と、バネ室64内の圧力室66に供給された絞り30の下流側の圧力及びバネ10の付勢力との差圧が作用することになる。
【0087】
そして、自動制御スプール8Bは、直引きスプール8Aとの当接状態から離間して、絞り30の前後差圧に応じて直引きスプール8Aとは独立して制御されることになる。アクチュエータ13のボトム側からの戻り油の総排出流量Qtとしては、直引きスプール8Aによって制御される排出流量Q1と、自動制御スプール8Bによって制御される排出流量Q2と、の合計流量(Qt=Q1+Q2)となっている。
【0088】
図4には、積荷重量16に対する、直引きスプール8Aから排出される戻り油の排出流量Q1との関係、自動制御スプール8Bから排出される戻り油の排出流量Q2との関係、及び排出流量Q1と排出流量Q2との和である方向制御弁8から排出される戻り油の総排出流量Qtの関係を示している。
【0089】
図4に示すように、排出流量Q1としては、積荷重量16が増大するのに伴って増大していく。これに対して、排出流量Q2は、積荷重量16がある重量となるまでは、積荷重量16の増大に伴って急激に排出流量を大きくしておくことができる。そして積荷重量16がある重量を超えると、今度は逆に積荷重量16の増大とともに排出流量を減少させていくことができる。
【0090】
即ち、絞り30の上流側における圧力が高くなると、自動制御スプール8Bにおける開口面積が狭まる方向に自動制御スプール8Bを作動させることができる。これにより、積荷重量16が増大して絞り30の上流側における圧力が高くなると、自動制御スプール8Bから排出される戻り油の排出流量Q2を減少させていくことができる。
【0091】
このような戻り油に対する排出特性を直引きスプール8Aと自動制御スプール8Bとに持たせておくことで、方向制御弁8から排出される戻り油の総排出流量Qtとしては、積荷重量16が所望の重量範囲内では、略一定の総排出流量として制御することができる。また、積荷重量16が所望の重量範囲を超えたときには、方向制御弁8から排出される戻り油の排出流量を右下がりで徐々に減少するように制御することができる。
【0092】
これにより、フォークリフトの下降速度の性能として要求されている、積荷重量の増大とともに右下がりに下降速度が減少する制御を行わせることができる。即ち、無負荷の下降時には下降速度を早く制御し、高負荷の下降時には下降速度が遅くなるように制御することができる。
【0093】
しかも、自動制御スプール8Bにおける排出流量を制御する差圧としては、絞り30の前後差圧を用いているので、絞り30の下流側における圧力が、油温等の影響で変化したとしても、その変化に対応して絞り30の上流側の圧力も変化することになる。このため、絞り30の前後差圧としては、絞り30の下流側における圧力の変動に影響されない差圧を用いることができる。
【0094】
このように、流量制御弁を構成する自動制御スプール8Bに段差部73を形成しておき、段差部73によって形成した受圧面積を用いて絞り30の前後差圧を作用させた構成とすることによって、絞り30の前後差圧に応じて制御する自動制御スプール8Bの応答性を高めておくことができる。
【0095】
しかも上述したように、自動制御スプール8Bに作用するフローフォースに対して、環状溝72の形状により、フローフォースの力を予め調整しておくこともできる。
更に、直引きスプール8Aと自動制御スプール8Bとを同軸上に配した構成としているので、方向制御弁8をコンパクトに構成することができるので、方向制御弁8を配設するスペースも小さくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明に係わる油圧回路及び方向制御弁は、アクチュエータからの戻り油の排出量を制御するものに対して好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】油圧回路図である。(実施例)
【図2】方向制御弁の断面図である。(実施例)
【図3】自動制御スプールが作動したときの方向制御弁の断面図である。(実施例)
【図4】積荷重量と方向制御弁における排出流量との関係を示す図である。(実施例)
【図5】油圧回路図である。(従来例)
【符号の説明】
【0098】
1・・・可変容量ポンプ、 3・・・優先弁、 4・・・電磁切換制御弁、 8・・・方向制御弁、13A、13B・・・リフトシリンダ、17・・・方向切換弁、20A、20B・・・チルトシリンダ、21・・・ステアリング駆動装置、27〜28・・・シャトル弁、29・・・パイロット油路、30,31・・・絞り、73・・・段差部、75・・・連通孔、76,77・・・キリ孔、91・・・方向制御弁、92A・・・第1スプール、92B・・・第2スプール、98,99・・・絞り、100,101・・・ドレイン油路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータへの油の供給流量及び前記アクチュエータからの戻り油の排出流量を制御する方向切換弁、及び前記方向切換弁による排出流量制御とは別に前記アクチュエータからの戻り油の排出流量を制御する流量制御弁、を備えてなる方向制御弁と、
前記方向切換弁及び前記流量制御弁とタンクとを接続するドレイン油路に設けた絞りと、
を備え、
前記流量制御弁の開口面積が、前記絞りの前後差圧に応じて制御されてなることを特徴とする油圧回路。
【請求項2】
前記流量制御弁が、段差径を有するスプールを備え、
前記絞りの上流側の圧力が、前記スプールの前記段差径を形成した段差部に作用し、
前記絞りの下流側の圧力が、前記スプールの両端面に作用してなることを特徴とする請求項1記載の油圧回路。
【請求項3】
前記方向切換弁のスプールと前記流量制御弁のスプールとが、同軸上に配されてなることを特徴とする請求項1又は2記載の油圧回路。
【請求項4】
前記流量制御弁のスプールを前記方向切換弁のスプールに当接させるバネが、前記流量制御弁のスプールの一端部側に配設されてなり、
前記バネが、前記流量制御弁からの排出を遮断する初期位置に前記流量制御弁のスプールを戻すバネであって、前記方向切換弁のスプールの作動に前記流量制御弁のスプールを追従させるバネであることを特徴とする請求項3記載の油圧回路。
【請求項5】
アクチュエータの負荷圧と自身が吐出したポンプ圧との差圧に応じてポンプ容量が制御される負荷圧感応型の可変容量油圧ポンプと、
前記アクチュエータへの油の供給流量及び前記アクチュエータからの戻り油の排出流量を制御する方向切換弁と、
前記アクチュエータからの戻り油の排出流量を制御し、前記排出流量を制御するスプールの部位に段差径が形成された流量制御弁と、
前記可変容量油圧ポンプと前記方向切換弁とを接続する吐出油路と、
前記方向切換弁及び前記流量制御弁と前記アクチュエータとを接続する操作油路と、
前記操作油路に配設され、前記アクチュエータへの油の供給を許容し、前記アクチュエータからの戻り油の排出を制御するパイロットチェック弁と、
前記パイロットチェック弁の制御を行う電磁切換制御弁と、
前記方向切換弁及び前記流量制御弁とタンクとを接続するドレイン油路と、
前記ドレイン油路に配設した絞りと、
前記絞りの下流側の圧力を、前記流量制御弁のスプールの両端面に作用させるパイロット油路と、
を備えたことを特徴とする油圧回路。
【請求項6】
アクチュエータへの油の供給流量及び前記アクチュエータからの戻り油の排出流量を制御する方向切換弁の方向切換スプールと、前記方向切換スプールとは別体に構成され、前記アクチュエータからの戻り油の排出流量を制御する流量制御弁の流量制御スプールと、を同軸上に有してなり、
前記流量制御スプールを前記方向切換スプールに当接させるバネが、前記流量制御スプールの一端部側に配設され、
前記アクチュエータからの戻り油の排出流量を制御する前記流量制御スプールの部位に、段差径が形成され、
前記方向切換弁及び前記流量制御弁とタンクとを接続するドレイン油路に配設した絞りの下流側の圧力が、前記流量制御スプールの両端面に作用し、
前記絞りの上流側における圧力が高くなると、前記流量制御弁の開口面積が狭まる方向に作動してなることを特徴とする方向制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−19660(P2009−19660A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181150(P2007−181150)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】