説明

油圧給排路を短縮したディスク/ローラ型無段変速装置

【課題】ディスク/ローラ型無段変速機構の変速応答性が低いことをそのローラ偏倚用油圧アクチュエータとその油圧室に対する油の給排を切り換える油流制御弁との間の給排油路の長さを短縮することにより補い、ディスク/ローラ型無段変速機構を含む無段変速装置の変速応答性を改善する。
【解決手段】ディスク/ローラ型無段変速装置の油圧アクチュエータに対する油圧の給排を制御する油流制御弁を油圧アクチュエータのシリンダボディ内に組み込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中心軸線に沿って半径が変化する作動面を備えた一対のディスクが該中心軸線に沿って互いに整合した状態に対向して配置され、その間に一対のローラが各々ローラ支持手段により支持された状態で挾圧され、前記ローラ支持手段の各々が油圧アクチュエータにより偏倚されることにより、前記複数のローラの各々がその中心軸線をディスク中心軸線と交差する位置を中心に偏倚されて変速が行われるディスク/ローラ型無段変速機構を備えた無段変速装置に係る。かかる無段変速機構の一対のディスクの作動面は通常トロイド面の一部とされているので、この種の無段変速装置は、一般にトロイダル型無段変速装置と称されている。
【背景技術】
【0002】
上記の如きトロイダル型無段変速装置にける油圧アクチュエータの油圧の給排を制御する前記油流制御弁は、通常、油圧アクチュエータの一方の油圧室を圧油源に接続すると同時に他方の油圧室を排出通路に接続する第一の切換位置と、前記他方の油圧室を圧油源に接続すると同時に前記一方の油圧室を排出通路に接続する第二の切換位置との間に切り換えられる態様にて作動するものであり、従来より一般に多ポート型のピストン式弁装置として構成されている。そのため、それぞれがシリンダ/ピストン構造を有する油圧アクチュエータと油流制御弁とは、それぞれ個別のシリンダボディを備えた別装置として作られている。そのような構造は、例えば下記の特許文献1および2に示されている。
【特許文献1】特開平6-34030
【特許文献2】特開2003-185003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ディスク/ローラ型無段変速機構に於ける変速比の変更は、ローラ中心軸線がディスク中心軸線と交差する位置から偏倚されることによりディスクからローラに作用する回転トルクに半径方向の力成分が含まれるようになることからローラが偏向することによるものであり、油圧アクチュエータによるローラ中心軸線の偏倚からローラが実際に偏向するまでには幾分かの時間を要する。そのためかかるディスク/ローラ型無段変速装置の変速はどうしても遅れがちとなる。そこで、かかるディスク/ローラ型無段変速装置の変速応答の遅れを補うべく、変速指令に対する油圧アクチュエータの応答を速めることが考えられる。この点に於いて、上記の如く変速比変更制御のための油圧アクチュエータと、該油圧アクチュエータの油圧室への油の給排を切換制御する油流制御弁とがそれぞれ個別のシリンダボディを備えた別装置として作られていると、油の給排油路の長さがどうしても長くなり、それだけ変速制御の応答性が制限を受ける。本発明は、この点に着目し、かかる観点からディスク/ローラ型無段変速装置の変速応答性を改善することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するものとして、本発明は、中心軸線に沿って半径が変化する作動面を備えた一対のディスクが該中心軸線に沿って互いに整合した状態に対向して配置され、その間に複数のローラの各々が各ローラ支持手段により支持された状態で挾圧され、前記ローラ支持手段の各々が油圧アクチュエータにより偏倚されることにより、前記複数のローラの各々はその中心軸線が前記ディスク中心軸線と交差する位置を中心に該一対のディスクに対し偏倚可能とされているディスク/ローラ型無段変速機構を備えた無段変速装置にして、前記油圧アクチュエータに対する油圧の給排を制御する油流制御弁が前記油圧アクチュエータのシリンダボディ内に組み込まれていることを特徴とする無段変速装置を提案するものである。
【0005】
この場合、無段変速装置は、前記一対のディスクと同軸に配置された遊星歯車機構と、前記遊星歯車機構の回転要素の一つを制動するブレーキと、前記ブレーキの作動時に前記遊星歯車機構の二つの回転要素間の係合を解除するクラッチとを備え、前記ブレーキが解除されているときには前記一対のディスク間の回転差を遊星変速して正回転の出力を行い、前記ブレーキの作動により逆回転の出力を行なうようになっていてよい。
【0006】
その場合、前記一対のディスクとその間に挾圧されたローラよりなるディスク/ローラ型無段変速機構は2組がそれぞれの出力側ディスクを背中合わせにして同軸に配置され、前記背中合わせの2つの出力側ディスクは互いにトルク伝達関係に連結されてその回転が中空軸により前記クラッチを経て前記遊星歯車機構に入力され、それぞれの入力側ディスクは前記中空軸内を貫通する軸により互いにトルク伝達関係に連結されてその回転が前記遊星歯車機構に入力されていてよい。
【0007】
或はまた、無段変速装置は、中心軸線に沿って半径が変化する作動面を備えた一対のディスクが該中心軸線に沿って互いに整合した状態に対向して配置され、その間に複数のローラの各々が各ローラ支持手段により支持された状態で挾圧され、前記ローラ支持手段の各々が油圧アクチュエータにより偏倚されることにより、前記複数のローラの各々はその中心軸線が前記ディスク中心軸線と交差する位置を中心に該一対のディスクに対し偏倚可能とされているディスク/ローラ型無段変速機構と、前記一対のディスクと同軸に配置された複数の遊星歯車機構とを有し、前記複数の遊星歯車機構の各回転要素から選択された4つの回転要素により前進段と後進段とが切換えて得られるようになっていてよい。
【0008】
前記ローラは一対が前記ディスク中心軸線を挟んで互いに対向して配置され、これら一対のローラに対する前記ローラ支持手段も一対が互いに並んで配置されて各ローラ支持手段の一端部に各ローラ支持手段の前記油圧アクチュエータが互いに並んで配置され、これら一対の油圧アクチュエータのシリンダボディの中央位置に前記油流制御弁が組み込まれていてよい。
【0009】
前記油流制御弁はそれぞれが圧油源からの油の供給を制御する油供給制御部と排油通路への導通を制御する油排出制御部とを有する第一および第二の油流制御弁を含み、前記油圧アクチュエータは第一のポートにより前記第一の油流制御弁の前記油供給制御部より油を供給され得るようになっていると共に前記第二の油流制御弁の前記油排出制御部を経て油を排出され得るようになっており、また第二のポートにより前記第二の油流制御弁の前記油供給制御部より油を供給され得るようになっていると共に前記第一の油流制御弁の前記油排出制御部を経て油を排出され得るようになっており、制御弁作動制御手段による前記第一および第二の油流制御弁の作動制御により作動状態を制御されるようになっていてよい。かかる第一および第二の油流制御弁は同軸に整列して前記油圧アクチュエータのシリンダボディ内に組み込まれていてよい。
【発明の効果】
【0010】
上記の如く中心軸線に沿って半径が変化する作動面を備えた一対のディスクが該中心軸線に沿って互いに整合した状態に対向して配置され、その間に複数のローラの各々が各ローラ支持手段により支持された状態で挾圧され、前記ローラ支持手段の各々が油圧アクチュエータにより偏倚されることにより、前記複数のローラの各々はその中心軸線が前記ディスク中心軸線と交差する位置を中心に該一対のディスクに対し偏倚可能とされているディスク/ローラ型無段変速機構を備えた無段変速装置に於いて、前記油圧アクチュエータに対する油圧の給排を制御する油流制御弁が前記油圧アクチュエータのシリンダボディ内に組み込まれていれば、油圧アクチュエータの油圧室と油流制御弁の各制御ポートとは該シリンダボディ内に形成された油路により極めて短い油流距離にて接続され、油圧アクチュエータと油流制御弁とがそれぞれ個別のシリンダボディを備えた別装置として作られている場合に比して、変速制御指令による油流制御弁の切換えに油圧アクチュエータの作動をより速やかに追従させ、それだけディスク/ローラ型無段変速装置の変速応答性を改善することができる。
【0011】
この場合、無段変速装置が、前記一対のディスクと同軸に配置された遊星歯車機構と、前記遊星歯車機構の回転要素の一つを制動するブレーキと、前記ブレーキの作動時に前記遊星歯車機構の二つの回転要素間の係合を解除するクラッチとを備え、前記ブレーキが解除されているときには前記一対のディスク間の回転差を遊星変速して正回転の出力を行い、前記ブレーキの作動により逆回転の出力を行なうようになっていれば、無段変速装置の回転軸は一軸の線型軸系となるので、一対のローラ支持手段の油圧アクチュエータの間の領域がディスク/ローラ型無段変速機構につきもののカウンタ軸により占められることがなく、油流制御弁を油圧アクチュエータのシリンダボディ内に組み込むことが容易となる。
【0012】
ディスク/ローラ型無段変速機構が車輌用変速装置に用いられる場合には、所要伝達トルク容量を確保するため、ディスク/ローラ型無段変速機構は通常2組がそれぞれの出力側ディスクを背中合わせにして同軸に配置された2連式の構造につくられるが、上記の如くディスクと遊星歯車機構とが同軸に配置され、これに遊星歯車機構の回転要素の一つを制動するブレーキと該ブレーキの作動時に遊星歯車機構の二つの回転要素間の係合を解除するクラッチとが組み合わされ、前記ブレーキが解除されているときには一対のディスク間の回転差を遊星変速して正回転の出力を行い、前記ブレーキの作動により逆回転の出力を行なうようになっている場合に、背中合わせの2つの出力側ディスクが互いにトルク伝達関係に連結されてその回転が中空軸により前記クラッチを経て遊星歯車機構に入力され、それぞれの入力側ディスクが前記中空軸内を貫通する軸により互いにトルク伝達関係に連結されてその回転が遊星歯車機構に入力されていれば、ディスク/ローラ型無段変速機構が2連式とされる場合にも、一対のローラ支持手段の油圧アクチュエータ間の領域にて油流制御弁を油圧アクチュエータのシリンダボディ内に組み込むことができる。
【0013】
また、この場合に、無段変速装置が、中心軸線に沿って半径が変化する作動面を備えた一対のディスクが該中心軸線に沿って互いに整合した状態に対向して配置され、その間に複数のローラの各々が各ローラ支持手段により支持された状態で挾圧され、前記ローラ支持手段の各々が油圧アクチュエータにより偏倚されることにより、前記複数のローラの各々はその中心軸線が前記ディスク中心軸線と交差する位置を中心に該一対のディスクに対し偏倚可能とされているディスク/ローラ型無段変速機構と、前記一対のディスクと同軸に配置された複数の遊星歯車機構とを有し、前記複数の遊星歯車機構の各回転要素から選択された4つの回転要素により前進段と後進段とが切換えて得られるようになっていれば、上記の変速制御指令による油流制御弁の切換えに油圧アクチュエータの作動をより速やかに追従させ、ディスク/ローラ型無段変速装置の変速応答性を改善する効果を、後進段を得るためにのみ使用される歯車が無くされ、歯車機構に於ける回転要素の総合的作動率が高められた無段変速装置に於いて得ることができる。
【0014】
上記の如く前記ローラが一対とされ、一対のローラが前記ディスク中心軸線を挟んで互いに対向して配置され、これら一対のローラに対する前記ローラ支持手段も一対が互いに並んで配置されて各ローラ支持手段の一端部に各ローラ支持手段の油圧アクチュエータが互いに並んで配置され、これら一対の油圧アクチュエータのシリンダボディの中央位置に前記油流制御弁が組み込まれれば、油圧アクチュエータの油圧室と油流制御弁の各ポートとの間を結ぶ油路の長さは最小とされ得る。
【0015】
前記油流制御弁がそれぞれが圧油源からの油の供給を制御する油供給制御部と排油通路への導通を制御する油排出制御部とを有する第一および第二の油流制御弁を含み、前記油圧アクチュエータが第一のポートにより前記第一の油流制御弁の前記油供給制御部より油を供給され得るようになっていると共に前記第二の油流制御弁の前記油排出制御部を経て油を排出され得るようになっており、また第二のポートにより前記第二の油流制御弁の前記油供給制御部より油を供給され得るようになっていると共に前記第一の油流制御弁の前記油排出制御部を経て油を排出され得るようになっており、制御弁作動制御手段による前記第一および第二の油流制御弁の作動制御により作動状態を制御されるようになっていれば、第一および第二の油流制御弁の何れかにスティック等の障害が生じても、油圧アクチュエータの制御が受ける障害を無くし或いは軽減することができるが、特にこのように油流制御弁が第一および第二の二つ油流制御弁として構成されても、それらが油圧アクチュエータのシリンダボディ内に組み込まれていれば、油圧アクチュエータの油圧室と油流制御弁の各ポートとを結ぶ油路の長さは小さく抑えられる。
【0016】
上記の如き第一および第二の油流制御弁が同軸に整列して油圧アクチュエータのシリンダボディ内に組み込まれれば、一対の油圧アクチュエータに対し第一および第二の油流制御弁を互いに同一の位置関係に配置することができ、一対の油圧アクチュエータについて均整のとれた制御性能を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
添付の図1は、本発明による無段変速装置を一つの実施の形態について示す幾分解図的断面図である。図は、中心軸線10に沿って半径が変化する作動面12を備え、一方が14として示されている一対のディスクの該中心軸線10に垂直で、該一対のディスク間に挾圧された一対のローラ16,18がその中心軸線20,22を互いに整合させた状態で向き合っているときの該中心軸線20,22含む平面にてディスク/ローラ型無段変速機構を切断した断面を示している。一対のローラ16,18がその中心軸線20,22を互いに整合させた状態で向き合うのは、一対のディスク間に伝達される回転運動の変速比が1のときである。一対のローラ16,18の各々は通常トラニオンと称されている一対のローラ支持手段24,26の各々により偏心軸28,30を介して支持されている。トラニオンと偏心軸によるローラの支持部には、図示の如きいくつかのラジアル軸受、スラスト軸受或いはラジアル/スラスト軸受が組み込まれているが、これらの構造自身はこの技術分野に於いては周知であるので、それらについての符号を付した説明は明細書の冗長化を避けるため省略する。
【0018】
一対のローラ支持手段24,26は、偏心軸28,30によるそれらのローラ支持部の上下両側にて、一対の横リンク部材32,34により互いに連結され、該一対の横リンク部材の各々はその中央部にて枢支手段36,38によりハウジング40から枢動可能に支持されている。枢支手段36,38は各々枢支ピン42,44とそれを枢支するポスト部材46,48とを含んでいる。ローラ支持手段24,26と横リンク部材32,34の係合部には、互いに連結される両部材間に幾分かの傾動を許すラジアル/スラスト軸受50,52,54,56が組み込まれている。
【0019】
ローラ支持手段24,26の各々はその下端部に設けられたピストン部58,60とそれを受けるシリンダ装置62,64により構成された油圧アクチュエータにより偏倚されるようになっており、これによって一対のローラ16,18の各々はその中心軸線20,22がディスク中心軸線10に交差する位置を中心に該一対のディスクに対し図にて上下に偏倚可能とされている。シリンダ装置62,64は、ピストン部58,60を受けるシリンダ室66,68とローラ支持手段24,26のピストン軸部70,72を通す孔部74,76を備えたシリンダブロック部材78と、ピストン軸部70,72を通す孔部80,82を備えていてシリンダブロック部材78に重ね合わされてシリンダ室66,68の一端を閉じるシリンダプレート部材84,86とから構成されたシリンダボディを備えている。シリンダブロック部材78およびシリンダプレート部材84,86は、図には示されていない締結手段によりハウジング40と一体に組み合わされている。
【0020】
上記のシリンダボディ、特に図示の実施の形態では主としてそのシリンダブロック部材78の部分内に、ローラ支持手段24,26のピストン部58,60とシリンダ装置62,64よりなる油圧アクチュエータを作動させるための図2に示す如き油圧回路を構成する油流制御弁88および90が組み込まれており、またこれらの油流制御弁の各ポートとシリンダ室66,68のピストン部58,60より上にある室空間および下にある室空間とを結ぶ油路は、図1に92,94,96,98として幾分解図的に示されている如く、シリンダブロック部材78とシリンダプレート部材84,86よりなるシリンダボディ内に穿孔された油路として形成されている。
【0021】
図2に示す油圧回路は、油圧ポンプ等よりなる圧油源100と、上記2つの油流制御弁88および90と、排油溜102とを含んでいる。油流制御弁88は、給油取入れポート104、給油取出しポート106、排油取入れポート108、排油取出しポート110を備えた弁ハウジング112と、ポート104と106の間の連通または遮断およびポート108と110の間の連通または遮断を制御する弁スプール114と、該弁スプールをポート104と106の間を遮断しまたポート108と110の間を遮断する位置へ付勢する圧縮コイルばね116と、弁スプール114を圧縮コイルばね116のばね力に抗してポート104と106の間を連通しまたポート108と110の間を連通する位置へ駆動する電磁駆動装置118とを含んでいる。
【0022】
同様に、油流制御弁90は、給油取入れポート120、給油取出しポート122、排油取入れポート124、排油取出しポート126を備えた弁ハウジング128と、ポート120と122の間の連通または遮断およびポート124と126の間の連通または遮断を制御する弁スプール130と、該弁スプールをポート120と122の間を遮断しまたポート124と128の間を遮断する位置へ付勢する圧縮コイルばね132と、弁スプール130を圧縮コイルばね132のばね力に抗してポート120と122の間を連通しまたポート124と126の間を連通する位置へ駆動する電磁駆動装置134とを含んでいる。
【0023】
圧油源100は、一方では、油路136と138を経て油流制御弁88の給油取入れポート104に接続され、これに対応する給油取出しポート106は油路140および142を経てシリンダ室66のピストン部58より上側(図1にて左上)に、また油路140および144を経てシリンダ室68のピストン部60より下側(図1にて右下)に接続されている。かかる給油経路に対応して、シリンダ室66のピストン部58より下側(図1にて左下)およびシリンダ室68のピストン部60より上側(図1にて右上)はそれぞれ油路146および148と油路150を経て油流制御弁88の排油取入れポート108に接続され、これに対応する排油取出しポート110は油路152と154を経て排油溜102に接続されている。
【0024】
しかし、また、圧油源100は、他方では、油路136と156を経て油流制御弁90の給油取入れポート120に接続され、これに対応する給油取出しポート122は油路158と146を経てシリンダ室66のピストン部58より下側(図1にて左下)および油路158と148を経てシリンダ室68のピストン部60より上側(図1にて右上)に接続されている。かかる給油経路に対応して、シリンダ室66のピストン部58より上側(図1にて左上)およびシリンダ室68のピストン部60より下側(図1にて右下)はそれぞれ油路142および144と油路160を経て油流制御弁90の排油取入れポート124に接続され、これに対応する排油取出しポート126は油路162と154を経て排油溜102に接続されている。
【0025】
油流制御弁88および90の電磁駆動装置118および134への通電は、マイクロコンピュータを備えた制御弁作動制御手段164により制御されるようになっている。
【0026】
上記の如き構成に於いて、今、ディスク14が駆動側ディスクであり、図1で見て反時計廻り方向に回転するものとする。変速比を増大させるべきとき(ダウンシフト時)には、制御弁作動制御手段164の制御により、一例として、先ず、油流制御弁88の電磁駆動装置118のみに電流が供給される。電流値がある所定値以上になると、給油取入れポート104と給油取出し106の間の連通が始まり、図1で見て左上シリンダ室と右下シリンダ室に電流に応じた油量が供給される。このとき反対側の左下シリンダ室と右上シリンダ室は排油取入れポート108と排油取出しポート110の連通により排油溜り102に連通される。これによって左側のローラ16はディスク14に対し下方へ偏倚し、ローラ16にはディスク14より時計廻り方向のトルクの他に半径方向内向きの力が作用するようになり、ローラ16はディスク14との接触点にて半径方向内向きに駆動される。右側のローラ18はディスク14に対し上方へ偏倚し、同じくディスク14との接触点にて半径方向内向きに駆動される。
【0027】
こうして両ローラが所定の変速比に対応する傾動角まで傾動されたとき(実際にはそれを予測して幾分早めに)、電磁駆動装置118への通電が停止され、次いで制御弁90の電磁駆動装置134のみに電流が供給される。この場合にも、電流値がある所定値以上になると、給油取入れポート120と給油取出し122の間の連通が始まり、図1で見て左下シリンダ室と右上シリンダ室に電流に応じた油量が供給される。このとき反対側の左上シリンダ室と右下シリンダ室は排油取入れポート124と排油取出しポート126の連通により排油溜り102に連通される。これによって左側のローラ16は上方へ移動し、右側のローラ18は下方へ移動し、それぞれディスク14に対する整合位置へ向けて戻る。こうして両ローラがディスク14に対する整合位置へ戻ったとき(実際にはそれを予測して幾分早めに)、電磁駆動装置134への通電が停止されればよい。
【0028】
変速比を減小させるべきとき(アップシフト時)には、上記と逆に先ず電磁駆動装置134への通電が行われ、ディスク14に対し左側のローラ16を上方へまた右側のローラ18を下方へ偏倚させ、所定の変速比に対応する傾動角まで両ローラが傾動したところで、電磁駆動装置134への通電が停止され、次いで電磁駆動装置118が通電されて両ローラがディスクとの整合位置へ戻され、そこで電磁駆動装置118の通電が停止されればよい。
【0029】
尚、上記の2つの油流制御弁を用いた構成は、例えば、油流制御弁88を作動させて無段変速機の変速比を増大させるダウンシフト制御を行っている最中に油流制御弁88に異物の噛込み等によるスティックが生じ、電磁駆動装置118への通電を切っても弁スプール112が全閉位置まで戻らなくなったとき、かかる状態をそのまま放置すると、目標変速比に到達してもダウンシフトが続けられることになるが、そのときには、例えば図には示されていないローラ偏向角度センサによる検知に基づいて、油流制御弁90を作動させ、その排油取入れポート124と排油取出しポート126とを連通させ、スティックを生じた油流制御弁88の給油取出しポート106より左上シリンダ室および右下シリンダ室へ向けて送られつつある油を排油溜102へ向けて逃がし、また同時に油流制御弁90の給油取出しポート122に現れる油を左下シリンダ室および右上シリンダ室へ向けて供給し、これら両作用により無段変速機の異常な変速比増大を迅速に停止させ、また必要ならば変速比を減小方向に後戻りさせることもできる。
【0030】
同様に、油流制御弁90を作動させて無段変速機の変速比を減小させるアップシフト制御を行っている最中に油流制御弁90に異物の噛込み等によるスティックが生じ、電磁駆動装置134への通電を切っても弁スプール130が全閉位置まで戻らなくなった場合、かかる状態をそのまま放置すると、無段変速機のアップシフトが続けられ、無段変速機が最小変速比に固定された状態となり、車輌が一旦停止されると、発進が困難になるという不都合が生ずる恐れがあるが、それに対しても、そのことが例えば上記のローラ偏向角度センサにより検知されたときには、油流制御弁88を作動させ、その排油取入れポート108と排油取出しポート110とを連通させ、スティックを生じた油流制御弁90の給油取出しポート122より左下シリンダ室および右上シリンダ室へ向けて送られつつある油を排油溜102へ向けて逃がし、また同時に油流制御弁88の給油取出しポート106に現れる油を左上シリンダ室および右下シリンダ室へ向けて供給し、これら両作用により無段変速機の異常な変速比減小を停止させ、また必要ならば変速比を増大方向に後戻りさせることもできる。
【0031】
図3は、本発明を、本件出願と同一の発明者および出願人による同日の別出願に開示の、ディスク/ローラ型無段変速機構に遊星歯車機構を同軸に組み合わせ、これに前記遊星歯車機構の回転要素の一つを制動するブレーキと、該ブレーキの作動時に前記遊星歯車機構の二つの回転要素間の係合を解除するクラッチとを付加し、前記ブレーキが解除されているときには前記ディスク/ローラ型無段変速機構の一対のディスク間の回転差を遊星変速して正回転の出力を行い、前記ブレーキの作動により逆回転の出力を行なうようにした無段変速装置であって、且つそれを車輌用無段変速装置に適するよう、2組のディスク/ローラ型無段変速機構がそれぞれの出力側ディスクを背中合わせにして同軸に配置され、背中合わせの2つの出力側ディスクが互いにトルク伝達関係に連結されてその回転が中空軸により前記クラッチを経て遊星歯車機構に入力され、それぞれの入力側ディスクが前記中空軸内を貫通する軸により互いにトルク伝達関係に連結されてその回転が前記遊星歯車機構に入力される構造に於いて実施した無段変速装置に適用した例を示す幾分解図的断面図である。
【0032】
かかる2連式のディスク/ローラ型無段変速機構は、従来より通常4つのローラの各々を支持するトラニオンが垂直配置とされ、油圧式アクチュエータにより垂直方向に偏倚されるようになっているものである。図示の無段変速装置もこの点に関しては従来一般の構造に倣ったものであり、従って図の断面はそのような無段変速装置のディスク中心軸線を通る水平断面を示している。また、図1に示した断面構造を図3に当て嵌めれば、概略図3に於ける切断面I−Iによる断面を矢印方向に見たものに相当する。従って、図3に示す構造中、図1に付した符号に対応させたほうが対照の便に寄与すると思われる部分については、図1に付した符号に対応する符号を付するものとする。図4は図3にIV−IVとして示す切断面による断面を矢印方向に見た断面図である。
【0033】
図3に於いて、14aおよび14bが1組のディスク/ローラ型無段変速機構の一対のディスクであり、14cおよび14dが他の1組のディスク/ローラ型無段変速機構の一対のディスクである。それらの作動面12a、12b、12c、12dは凹状のトロイド面として形成されている。ディスク14a、14b、14c、14dは共通の中心軸線10に整合して配列されている。ディスク14aと14bは一対のローラ16m、18mと共に1組のディスク/ローラ型無段変速機を構成し、ディスク14cと14dとは他の一対のローラ16n、18nと共に他の1組のディスク/ローラ型無段変速機を構成している。
【0034】
ディスク14a、14bとローラ16m、18mとにより構成されたディスク/ローラ型無段変速機に於いては、ディスク14aが入力側であり、ディスク14bが出力側である。ディスク14c、14dとローラ16n、18nとにより構成されたディスク/ローラ型無段変速機に於いては、ディスク14cが入力側であり、ディスク14dが出力側である。出力側ディスク14bと14dとは、図示の例では、中心軸線10に沿って同軸に背中合わせに一体に接合され、その中央の軸部11にて軸受13により図には示されていない変速装置のハウジングより回転式に支持されている。
【0035】
回転入力は入力部材15から円板部材17へ導入され、該円板部材の周縁部に設けられた爪19よりこれに噛み合う円板部材21に伝達され、その裏側に設けられた環状のローディングカム23を経てディスク14aに伝達される。円板部材21には入力軸25が連結されており、入力軸25は以下に説明される遊星歯車機構の一部を経てディスク14cと連結されている。ディスク14aは入力軸25上に軸受27により遊嵌されており、ディスク14aが円板部材21よりローディングカム23を経て回転駆動されると、ディスク14aが円板部材21に対し僅かに回動偏倚することによりローディングカム23が軸線方向に拡開し、入力軸25を支持部材としてディスク14aを図にて右方へ押しやり、ディスク14aとディスク14cの間の間隔を引き締め、ディスク14aと14bの間に於けるローラ16m、18mの挾圧と、ディスク14cと14dの間に於けるローラ16n、18nの挾圧に必要な押圧力をもたらすようになっている。
【0036】
ローラ16m,18m,16n,18nはそれぞれ図にて解図的に示されたトラニオン(ローラ支持手段)24m,26m,24n,26nにより担持されており、変速比の変更に際して、これらのトラニオンがそれらの下端部に設けられたピストン部とシリンダ装置62m,64m,62n,64nよりなる油圧アクチュエータにより上下に偏倚され、ローラ中心軸線がディスク中心軸線に対し上下に偏倚されることにより、各ローラはディスクに対する傾動角を変えるようになっている。
【0037】
入力軸25の周りには中空の出力軸29が設けられており、その左端部はスプライン31により出力側ディスク14bおよび14dとトルク伝達関係に連結されている。入力側ディスク14cは出力軸29上にラジアル軸受33を介して遊嵌されている。出力軸29の右端にはスプライン35によりワンウェイクラッチ37がトルク伝達関係に取り付けられ、ナット39の如き締結手段により保持されている。ワンウェイクラッチ37の周りには第一のサンギヤ41が取り付けられている。
【0038】
入力軸25の図に於ける右端にはキャリア43がスプライン45によりトルク伝達関係に取り付けられ、ナット47の如き締結手段により入力軸25を引っ張る方向の力に対し強固に取り付けられている。キャリア43は3個の押圧脚部49を有しており、それらの図1で見た左端はディスク10cに右方向より当接している。ディスク10cには押圧脚部49の左端を受ける窪み51が形成されている。また、これらの押圧脚部49を介してキャリア43には補助円板部材53が同軸に組み合わされている。キャリア43はラジアル軸受55により3個のピニオン軸57を回転可能に支持している。ピニオン軸57の左端はラジアル軸受59により補助円板部材53から支持されている。ピニオン軸57の周りには第一のピニオン61が設けられている。
【0039】
ピニオン軸57の右端部には第二のピニオン63がスプライン65を経てトルク伝達関係に担持されている。ピニオン63の内側にはキャリア43の3個のピニオン支持軸部67よりラジアル軸受69を介して回転自在に担持された第三のピニオン71が噛み合わされている。ピニオン軸57の右端にはラジアル軸受73を介して環状の補強リング75が装着されている。キャリア43には更に3個の支持ピン部77が設けられており、補強リング75はこれらの支持ピン部77により支持された状態でピニオン支持軸部67とピニオン軸57の右端を受けている。
【0040】
第二のピニオン63の外側にはリングギヤ79が噛合わされており、リングギヤ79は、その周りに配置され、図には示されていない変速装置のケーシングにより支持されたブレーキアクチュエータ81により操作されるブレーキシュー83によりその回転が選択的に制動されるようになっている。
【0041】
第三のピニオン71の内側には、スプライン85を経て出力軸87を駆動する第二のサンギヤ89が噛み合わされている。
【0042】
図5は図1に示すディスク/ローラ型無段変速機構と遊星歯車機構の組合せにより得られる第一のサンギヤ41、キャリア43、リングギヤ79、第二のサンギヤ89、ピニオン軸57と共に回転する第一および第二のピニオン61,63の間の回転速度の関係を示す線図である。Cはキャリア43の回転速度であり、入力側ディスク10a,10cの回転速度、即ち変速装置の入力回転速度である。S1は第一のサンギヤ41の回転速度であり、出力側ディスク10b,10dの回転速度である。Rはリングギヤ79の回転速度である。S2は第二のサンギヤ89の回転速度、即ち変速装置の出力回転速度である。Ppは第一および第二のピニオン61,63の回転速度である。図中、a〜dの大きさは以下の関係にある。
a:b=第一のピニオン61の歯数:第一のサンギヤ41の歯数
c:b=第二のピニオン63の歯数:第二のサンギヤ89の歯数
d:c=第二のサンギヤ89の歯数:リングギヤ79の歯数
【0043】
線α、β、γはブレーキ79が解放されている正転駆動時であり、このうち線αはディスク/ローラ型無段変速機構の出力側ディスクが入力側ディスクに対し等速にて逆回転しているとき、線βは出力側ディスクが入力側ディスクに対し2倍の速度にて逆回転しているとき、線γは出力側ディスクが入力側ディスクに対し半分の速度にて逆回転しているときである。線δはブレーキ79が係合されている逆転駆動時である。尚、この線図より分かる通り、図1に示した本発明の実施の形態に於いては、少なくとも正転駆動時には、出力回転速度に対する入力回転速度の比、即ち所謂減速比は1以下、即ち変速は増速となる。
【0044】
図3に於いては、断面の一部を破断して、図1で見てシリンダブロック部材78の部分に組み込まれた油量制御弁88および90が示されている。油量制御弁88および90はそれぞれの圧縮コイルばね116と132とが互いに付き合わされ、電磁駆動装置118と134とが互いに隔たる両端部をなすように同軸上に線型に整合して配置されている。上記の如く無段変速装置が、ディスク/ローラ型無段変速機構にそのディスクと同軸に遊星歯車機構を組み合わせ、これに遊星歯車機構の回転要素の一つを制動するブレーキと、該ブレーキの作動時に遊星歯車機構の二つの回転要素間の係合を解除するクラッチとを付加し、ブレーキが解除されているときには一対のディスク間の回転差を遊星変速して正回転の出力を行い、ブレーキの作動により逆回転の出力を行なうように構成されていれば、それが無段変速機構として2組のディスク/ローラ型無段変速機構をその出力側ディスクが背中合わせにして同軸に配置され並列接続にて用いる構造であるときにも、背中合わせにされた出力側ディスクより回転出力を取り出すのにカウンタ軸は必要とされないので、図3に示す如く4つのローラ偏倚用油圧アクチュエータの間の中央部に油圧アクチュエータ作動用の油量制御弁を油圧アクチュエータのシリンダボディに組み込まれた構造に設けることができ、図1に油路92,94,96,98として解図的に示した如く油圧アクチュエータの油圧室と油量制御弁の各ポートの間に必要な油路を極短い長さに短縮し、それによってディスク/ローラ型無段変速機構による無段変速装置の変速応答性を改善めることができる。
【0045】
以上に於いては本発明をいくつかの実施の形態について詳細に説明したが、これらの実施の形態について本発明の範囲内にて種々の変更が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明による無段変速装置を一つの実施の形態について示す幾分解図的断面図。
【図2】図1に示す無段変速装置の作動を制御する油圧装置を示す油圧回路図。
【図3】本発明による無段変速装置を本願と同日出願された逆転可の同軸ディスク/ローラ/遊星歯車型無段変速装置について実施した例を示す幾分解図的断面図。
【図4】図3にIV−IVとして示す切断面による断面を矢印方向に見た断面図。
【図5】図3および4に示すディスク/ローラ型無段変速機構と遊星歯車機構の組合せにより得られる第一のサンギヤ41、キャリア43、リングギヤ77、第二のサンギヤ89、ピニオン軸57とともに同時に回転する第一および第二のピニオン61,63の間の回転速度の関係を示す線図。
【符号の説明】
【0047】
10…ディスク中心軸線、12,12a,12b,12c,12d…ディスク作動面、14,14a,14b,14c,14d…ディスク、16,16m,16n…ローラ、18,18m,18n…ローラ、20,22…ローラ中心軸線、24,24m,24n,26,26m,26n…ローラ支持手段、28,30…偏心軸、32,34…横リンク部材、36,38…枢支手段、40…ハウジング、42,44…枢支ピン、46,48…枢支手段のポスト部材、50,52,54,56…ラジアル/スラスト軸受、58,60…ピストン部、62,64…シリンダ装置、66,68…シリンダ室、70,72…ピストン軸部、74,76…孔部、78…シリンダブロック部材、80,82…孔部、84,86…シリンダプレート部材、88,90…油流制御弁、92,94,96,98…油路、100…圧油源、102…排油溜、104…給油取入れポート、106…給油取出しポート、108…排油取入れポート、110…排油取出しポート、112…弁ハウジング、114…弁スプール、116…圧縮コイルばね、118…電磁駆動装置、120…給油取入れポート、122…給油取出しポート、124…排油取入れポート、126…排油取出しポート、128…弁ハウジング、130…弁スプール、132…圧縮コイルばね、134…電磁駆動装置、136〜162…油路、164…制御弁作動制御手段、11…軸部、13…軸受、15…入力部材、17…円板部材、19…爪、21…円板部材、23…ローディングカム、25…入力軸、27…軸受、29…出力軸、31…スプライン、33…ラジアル軸受、35…スプライン、37…ワンウェイクラッチ、39…ナット、41…第一のサンギヤ、43…キャリア、45…スプライン、47…ナット、49…押圧脚部、51…窪み、53…補助円板部材、55…ラジアル軸受、57…ピニオン軸、59…ラジアル軸受、61…第一のピニオン、63…第二のピニオン、65…スプライン、67…ピニオン支持軸部、69…ラジアル軸受、71…第三のピニオン、73…ラジアル軸受、75…補強リング、77…支持ピン部、79…リングギヤ、81…ブレーキアクチュエータ、83…ブレーキシュー、85…スプライン、87…出力軸、89…第二のサンギヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線に沿って半径が変化する作動面を備えた一対のディスクが該中心軸線に沿って互いに整合した状態に対向して配置され、その間に複数のローラの各々が各ローラ支持手段により支持された状態で挾圧され、前記ローラ支持手段の各々が油圧アクチュエータにより偏倚されることにより、前記複数のローラの各々はその中心軸線が前記ディスク中心軸線と交差する位置を中心に該一対のディスクに対し偏倚可能とされているディスク/ローラ型無段変速機構を備えた無段変速装置にして、前記油圧アクチュエータに対する油圧の給排を制御する油流制御弁が前記油圧アクチュエータのシリンダボディ内に組み込まれていることを特徴とする無段変速装置。
【請求項2】
前記一対のディスクと同軸に配置された遊星歯車機構と、前記遊星歯車機構の回転要素の一つを制動するブレーキと、前記ブレーキの作動時に前記遊星歯車機構の二つの回転要素間の係合を解除するクラッチとを備え、前記ブレーキが解除されているときには前記一対のディスク間の回転差を遊星変速して正回転の出力を行い、前記ブレーキの作動により逆回転の出力を行なうようになっていることを特徴とする請求項1に記載の無段変速装置。
【請求項3】
前記一対のディスクとその間に挾圧されたローラよりなるディスク/ローラ型無段変速機構は2組がそれぞれの出力側ディスクを背中合わせにして同軸に配置され、前記背中合わせの2つの出力側ディスクは互いにトルク伝達関係に連結されてその回転は中空軸により前記クラッチを経て前記遊星歯車機構に入力され、それぞれの入力側ディスクは前記中空軸内を貫通する軸により互いにトルク伝達関係に連結されてその回転は前記遊星歯車機構に入力されていることを特徴とする請求項2に記載の無段変速装置。
【請求項4】
中心軸線に沿って半径が変化する作動面を備えた一対のディスクが該中心軸線に沿って互いに整合した状態に対向して配置され、その間に複数のローラの各々が各ローラ支持手段により支持された状態で挾圧され、前記ローラ支持手段の各々が油圧アクチュエータにより偏倚されることにより、前記複数のローラの各々はその中心軸線が前記ディスク中心軸線と交差する位置を中心に該一対のディスクに対し偏倚可能とされているディスク/ローラ型無段変速機構と、前記一対のディスクと同軸に配置された複数の遊星歯車機構とを有し、前記複数の遊星歯車機構の各回転要素から選択された4つの回転要素により前進段と後進段とが切換えて得られるようになっており、前記油圧アクチュエータに対する油圧の給排を制御する油流制御弁が前記油圧アクチュエータのシリンダボディ内に組み込まれていることを特徴とする無段変速装置。
【請求項5】
前記ローラは一対が前記ディスク中心軸線を挟んで互いに対向して配置され、これら一対のローラに対する前記ローラ支持手段も一対が互いに並んで配置されて各ローラ支持手段の一端部に各ローラ支持手段の前記油圧アクチュエータが互いに並んで配置され、これら一対の油圧アクチュエータのシリンダボディの中央位置に前記油流制御弁が組み込まれていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の無段変速装置。
【請求項6】
前記油流制御弁はそれぞれが圧油源からの油の供給を制御する油供給制御部と排油通路への導通を制御する油排出制御部とを有する第一および第二の油流制御弁を含み、前記油圧アクチュエータは第一のポートにより前記第一の油流制御弁の前記油供給制御部より油を供給され得るようになっていると共に前記第二の油流制御弁の前記油排出制御部を経て油を排出され得るようになっており、また第二のポートにより前記第二の油流制御弁の前記油供給制御部より油を供給され得るようになっていると共に前記第一の油流制御弁の前記油排出制御部を経て油を排出され得るようになっており、制御弁作動制御手段による前記第一および第二の油流制御弁の作動制御により作動状態を制御されるようになっていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の無段変速装置。
【請求項7】
前記第一および第二の油流制御弁は同軸に整列して前記油圧アクチュエータのシリンダボディ内に組み込まれていることを特徴とする請求項6に記載の無段変速装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−46513(P2006−46513A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−229174(P2004−229174)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】