説明

油圧緩衝器

【課題】 油圧緩衝器において、簡素な構成により、ダンパケース側の振動に応じて迅速に減衰力特性を調整すること。
【解決手段】 油圧緩衝器10において、減衰力発生装置40が、シリンダ13の軸方向に沿う2位置に固定されて並置される第1と第2のベースピストン50、60を有し、第1のベースピストン50に設けた圧側流路50Aに圧側減衰バルブ51を設け、第2のベースピストンに設けた伸側流路60Aに伸側減衰バルブ61を設け、第1と第2のベースピストン50、60がシリンダ13の内部に区画する錘収容室80Bの内部で、圧側減衰バルブ51と伸側減衰バルブ61を背中合せに配置し、圧側減衰バルブ51を閉じ方向に付勢する第1のスプリング81と、伸側減衰バルブ61を閉じ方向に付勢する第2のスプリング82との間に、シリンダ13の軸方向に沿って振動する錘83を保持してなるもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の懸架装置は、車体側(ばね上)と車軸側(ばね下)の間に懸架スプリングと油圧緩衝器を介装し、路面の凹凸に基づく衝撃入力を懸架スプリングの伸縮により吸収し、懸架スプリングの伸縮振動を油圧緩衝器の減衰力により制振し、自動車等の走行安定性及び乗心地の向上を図っている。
【0003】
従来、ダンパケースの側の振動に応じて減衰力特性を調整できる油圧緩衝器として、特許文献1に記載のものがある。
【0004】
特許文献1に記載の油圧緩衝器は、車両のばね上、ばね下間に装着される油圧緩衝器であって、油液が封入されたシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌装されたピストンと、一端が前記ピストンに連結され他端が前記シリンダの外部へ延出されたピストンロッドと、前記ピストンの摺動によって生じる油液の流れを制御して減衰力を発生させるディスクバルブと、該ディスクバルブの背面側に設けられ、内圧を前記ディスクバルブの閉弁方向に作用させて前記ディスクバルブの開弁を制御する背圧室と、弁体の中立位置から両方向への移動によって前記背圧室の内圧を調整する減衰力調整弁と、前記ばね下の振動に対して慣性によって移動可能に設けられて前記弁体に連結された錘とを備える。減衰力調整弁の弁体及び錘は、スプリングによって中立位置に保持され、錘の両方向の移動によって減衰力調整弁を切換える。これにより、減衰力調整弁は、ピストンロッドの伸び側及び縮み側のストロークに対する錘の移動の振幅が小さいとき、伸び側及び縮み側の減衰力をハード側に調整し、伸び側のストロークに対する錘の移動の振幅が大きいとき、伸び側の減衰力をソフト側に調整すると共に縮み側の減衰力をハード側に調整し、縮み側のストロークに対する錘の移動の振幅が大きいとき、縮み側の減衰力をソフト側に調整すると共に伸び側の減衰力をハード側に調整するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4318071
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の油圧緩衝器にあっては、減衰バルブの減衰力をダンパケース側の振動に応じて調整する手段として、ダンパケース側の振動に対して移動する錘と、この錘を弾発的に保持する上下のスプリングと、この錘が連結される弁体を有してなる減衰力調整弁とを用いるとともに、減衰バルブの背面側に背圧室を設けている。ダンパケースの側の振動に起因する錘の移動によって作動する減衰力調整弁により、減衰バルブの背圧室の内圧を調整することにより、減衰バルブの開弁圧力を調整し、ひいてはその減衰力を調整するものである。
【0007】
従って、特許文献1に記載の油圧緩衝器では、減衰バルブの減衰力をダンパケース側の振動に応じて調整する手段が、錘と上下のスプリングだけでなく、背圧室と減衰力調整弁を設ける必要があり、複雑である。
【0008】
また、ダンパケース側の振動に起因する錘の移動が、直ちに減衰バルブの開弁圧力を調整するものにならず、減衰力調整弁の作動による背圧室の内圧変化を介して減衰バルブの開弁圧力を調整するものになる。従って、ダンパケース側の振動に応ずる減衰バルブの開弁圧力の調整、ひいてはその減衰力の調整の応答に遅れを伴なう。
【0009】
本発明の課題は、油圧緩衝器において、簡素な構成により、ダンパケース側の振動に応じて迅速に減衰力特性を調整することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、車体側と車軸側の一方に取付けられるダンパケースが備えるシリンダの油室に、車体側と車軸側の他方に取付けられるピストンロッドを挿入し、ピストンロッドの先端部に設けたピストンにより、シリンダの油室をピストン側油室とロッド側油室に区画し、シリンダの油室に進退するピストンロッドの容積を補償する油溜室をシリンダの油室に連通し、シリンダのピストン側油室と、ロッド側油室の間に減衰力発生装置を設けてなる油圧緩衝器において、減衰力発生装置が、シリンダの軸方向に沿う2位置に固定されて並置される第1と第2のベースピストンを有し、第1のベースピストンに設けた圧側流路に圧側減衰バルブを設け、第2のベースピストンに設けた伸側流路に伸側減衰バルブを設け、第1と第2のベースピストンがシリンダの内部に区画する錘収容室の内部で、圧側減衰バルブと伸側減衰バルブを背中合せに配置し、圧側減衰バルブを閉じ方向に付勢する第1のスプリングと、伸側減衰バルブを閉じ方向に付勢する第2のスプリングとの間に、シリンダの軸方向に沿って振動する錘を保持してなるようにしたものである。
【0011】
請求項2に係る発明は、車体側と車軸側の一方に取付けられるダンパケースが備えるシリンダの油室に、車体側と車軸側の他方に取付けられるピストンロッドを挿入し、ピストンロッドの先端部に設けたピストンにより、シリンダの油室をピストン側油室とロッド側油室に区画し、シリンダの油室に進退するピストンロッドの容積を補償する油溜室をシリンダの油室に連通し、シリンダのピストン側油室と、ロッド側油室の間に減衰力発生装置を設け、ダンパケースにおけるシリンダの油室の周囲に、ピストン側油室とロッド側油室を連通する外側流路を設け、減衰力発生装置が、圧側行程で、シリンダのピストン側油室の油をシリンダの外側流路からロッド側油室に向けて流す圧側流路が減衰力発生装置に設けられ、この圧側流路の上流側に圧側減衰バルブを、下流側に圧側チェックバルブを設け、この圧側流路に設けた圧側減衰バルブと圧側チェックバルブの中間部を油溜室に連通し、伸側行程で、シリンダのロッド側油室の油をシリンダの外側流路からピストン側油室に向けて流す伸側流路が減衰力発生装置に設けられ、この伸側流路の上流側に伸側減衰バルブを、下流側に伸側チェックバルブを設け、この伸側流路に設けた伸側減衰バルブと伸側チェックバルブの中間部を油溜室に連通してなる油圧緩衝器であって、減衰力発生装置が、シリンダの軸方向に沿う2位置に固定されて並置される第1と第2のベースピストンを有し、第1のベースピストンに設けた圧側流路と伸側流路のそれぞれに圧側減衰バルブと伸側チェックバルブのそれぞれを設け、第2のベースピストンに設けた伸側流路と圧側流路のそれぞれに伸側減衰バルブと圧側チェックバルブのそれぞれを設け、第1と第2のベースピストンがシリンダの内部に区画する錘収容室の内部で、圧側減衰バルブと伸側減衰バルブを背中合せに配置し、圧側減衰バルブを閉じ方向に付勢する第1のスプリングと、伸側減衰バルブを閉じ方向に付勢する第2のスプリングとの間に、シリンダの軸方向に沿って振動する錘を保持してなるようにしたものである。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において更に、前記錘が第1と第2の錘からなり、第1と第2の錘は、シリンダの軸方向に沿って相対移動可能に互いに嵌合し、両者の間に油装填室を区画するとともに、第1と第2の錘は、両者をシリンダの軸方向に沿って互いに離隔する方向に付勢する反発スプリングを備えるとともに、両者が区画した油装填室を外部の錘収容室に連通するチェック弁付流路と絞り付流路を備えてなるようにしたものである。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明において更に、前記チェック弁付流路が、錘収容室から油装填室への油の導入を許容し、第1と第2の錘の全体長を拡大可能にするチェック弁を有してなるようにしたものである。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項3に係る発明において更に、前記チェック弁付流路が、油装填室から錘収容室への油の排出を許容し、第1と第2の錘の全体長を縮小可能にするチェック弁を有してなるようにしたものである。
【発明の効果】
【0015】
(請求項1、2)
(a)第1と第2のベースピストンがシリンダの内部に区画する錘収容室の内部で、圧側減衰バルブと伸側減衰バルブを背中合せに配置し、圧側減衰バルブを閉じ方向に付勢する第1のスプリングと、伸側減衰バルブを閉じ方向に付勢する第2のスプリングとの間に、シリンダの軸方向に沿って振動する錘を保持した。
【0016】
従って、ダンパケースの側の振動の周波数が高くなり、これが錘と第1と第2のスプリングからなる振動系の固有振動数を超えると、錘とダンパケースは逆位相で振動するに至る。
【0017】
このとき、例えば圧側行程から伸側行程への反転時を考えると、ダンパケースはその振動ストロークの上端側にあり、錘はその振動ストロークの下端側にある。錘によって圧縮される第2のスプリングが伸側減衰バルブを閉じ方向に強く押圧しているから(開弁圧力:大)、圧側行程から伸側行程への反転直後(伸側行程の前半)の伸側減衰力は、錘が両スプリングのばね力の吊り合いにより中立位置から振れていない(又は両スプリングが錘を伴なわない状態で圧側減衰バルブと伸側減衰バルブを押圧している)通常状態におけるよりも大きくなる。伸側行程が更に進むと(伸側行程の後半)、ダンパケースはその振動ストロークの下端側に移動し、錘はその振動ストロークの上端側に移動し、錘によって圧縮される第2のスプリングが伸側減衰バルブを閉じ方向に押圧するばね力は小さくなり(開弁圧力:小)、伸側減衰力は上述の通常状態におけるよりも次第に小さくなる。
【0018】
従って、本発明によれば、通常状態に比して、伸側行程の前半では減衰力を増大させ、後半では減衰力を減少させるものになる。圧側行程でも同様であり、通常状態に比して、圧側行程の前半では減衰力を増大させ、後半では減衰力を減少させるものになる。これを模式的に図示すれば、図10に示す如くになり、図10において、Aは通常状態の減衰力特性を示し、Bは本発明により補正された減衰力特性を示す。
【0019】
即ち、油圧緩衝器では、非圧縮性の油が実際には空気を含んでいること等で圧縮されるため、圧力がかかってから高圧化されるまでにわずかな遅れを生じる。また伸縮の反転時にも、例えば圧側行程から伸側行程に切り換わるときに、今まで開いていた圧側チェックバルブが油の反転で閉じるまでに時間がかかり、油室が高圧化されるまでに遅れを生じる。これらによって通常状態の減衰力特性Aは、本発明により補正された減衰力特性Bよりも遅れたものになる。本発明により、ダンパケースの側の振動に応じて、減衰バルブの減衰力特性の遅れを補正し、応答性の改善を図ることができるものになる。
【0020】
(b)減衰バルブの減衰力をダンパケースの側の振動に応じて調整する手段が、第1と第2のスプリングと、錘を用いるだけで構成され、簡易である。
【0021】
(c)ダンパケースの側の振動に起因する錘の振動が、第1と第2のスプリングを介して直ちに減衰バルブの開弁圧力を調整するものになる。従って、減衰バルブの減衰力特性をダンパケースの側の振動に応じて迅速に調整できる。
【0022】
(請求項3、4、5)
(d)前記錘が第1と第2の錘からなり、第1と第2の錘は、シリンダの軸方向に沿って相対移動可能に互いに嵌合し、両者の間に油装填室を区画するとともに、第1と第2の錘は、両者をシリンダの軸方向に沿って互いに離隔する方向に付勢する反発スプリングを備えるとともに、両者が区画した油装填室を外部の錘収容室に連通するチェック弁付流路と絞り付流路を備える。
【0023】
ここで、前記チェック弁付流路が、錘収容室から油装填室への油の導入を許容し、第1と第2の錘の全体長を拡大可能にするチェック弁を有してなる場合には、ダンパケースの側の振動の周波数が高くなり、第1と第2の錘に作用する加速度が大きくなるほど、それらの錘は反発スプリングと第1又は第2のスプリングにより挟まれた状態で、それらの間隔が拡大する方向に相対変位する。即ち、第1と第2の錘は、両者間の油装填室に装填されている油の存在により伸縮振動することなく、それらに作用する加速度によりそれらの間隔を広げる方向にだけ相対変位し、同時に、錘収容室からチェック弁付流路を経由して油装填室に導入した油を絞り付流路の絞りによって保持することを繰り返し、その間隔を徐々に拡大する。第1と第2の錘の間隔が拡大すると、第1と第2のスプリングの圧縮量が増大し、ひいては圧側減衰バルブと伸側減衰バルブの開弁圧力が増大する結果、圧側減衰力の最大値と伸側減衰力の最大値を高くするものになる。これにより、車両の高速走行(走行速度が高速)で、ダンパケース(車輪)が高周波振動するほど、第1と第2の錘の間隔が拡大して減衰力が高くなり、安定した走行が得られる。
【0024】
他方、前記チェック弁付流路が、油装填室から錘収容室への油の排出を許容し、第1と第2の錘の全体長を縮小可能にするチェック弁である場合には、ダンパケースの側の振動の周波数が高くなり、第1と第2の錘に作用する加速度が大きくなるほど、それらの錘は反発スプリングと第1又は第2のスプリングにより挟まれた状態で、それらの間隔が縮小する方向に相対変位する。即ち、第1と第2の錘は、両者間の油装填室に装填されている油の存在により伸縮振動することなく、それらに作用する加速度によりそれらの間隔を縮める方向にだけ相対変位し、同時に、油装填室の油をチェック弁付流路を経由して錘収容室に排出し、該油装填室の油を絞り付流路の絞りによって保持することを繰り返し、その間隔を徐々に縮小する。第1と第2の錘の間隔が縮小すると、第1と第2のスプリングの圧縮量が減少し、ひいては圧側減衰バルブと伸側減衰バルブの開弁圧力が減少する結果、圧側減衰力の最大値と伸側減衰力の最大値を低くするものになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は油圧緩衝器を示す全体断面図である。
【図2】図2は図1の要部断面図である。
【図3】図3は減衰力発生装置を示す断面図である。
【図4】図4は減衰力発生装置における油の流れを示し、(A)は圧側行程を示し、(B)は伸側行程を示す断面図である。
【図5】図5は第2のベースピストン(伸側ピストン)を示し、(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は底面図である。
【図6】図6は油圧緩衝器を示す全体断面図である。
【図7】図7は図6の要部断面図である。
【図8】図8は減衰力発生装置を示す断面図である。
【図9】図9は減衰力発生装置における油の流れを示し、(A)は圧側行程を示し、(B)は伸側行程を示す断面図である。
【図10】図10は減衰力特性を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
油圧緩衝器10は、図1〜図3に示す如く、車軸側に取付けられるダンパケース11がダンパチューブ12を有し、ダンパチューブ12の内部にダンパシリンダ13を挿嵌している。そして、油圧緩衝器10は、車体側に取付けられるピストンロッド14をダンパケース11のダンパチューブ12、シリンダ13の中心部に摺動自在に挿入し、ダンパケース11とピストンロッド14の外側部に懸架スプリング15を介装している。
【0027】
ダンパケース11はダンパチューブ12のボトムキャップ12Aの外面中央部に車軸側取付部材16を備え、ピストンロッド14は車体側取付部材17を備える。ダンパケース11におけるダンパチューブ12の外周部にはばね受18を備え、ピストンロッド14における車体側取付部材17の外周部にはばね受19を備える。懸架スプリング15は、ばね受18とばね受19の間に介装され、懸架スプリング15のばね力によって車両が路面から受ける衝撃力を吸収する。
【0028】
ダンパケース11のダンパチューブ12は、ピストンロッド14が貫通するロッドガイド21をその開口部に備える。ロッドガイド21は、頭部21Aの大外径部をダンパチューブ12に液密に挿着され、オイルシール22、ブッシュ23を備える内径部に、ピストンロッド14を液密に摺動自在に挿入している。
【0029】
油圧緩衝器10は、ダンパケース11がダンパチューブ12の内部にシリンダ13を挿嵌し、シリンダ13が外筒13Aと内筒13Bからなるものにし、ダンパケース11はカップ状ボトムキャップ12Aの外周にダンパチューブ12の下端内周を嵌合して溶接等により固定している。
【0030】
ボトムキャップ12Aのカップ内周には、鋼板プレス製のカップ状ボトムプレート24の胴部24Aの外周が隙間嵌めされてセンタリング配置され(ボトムプレート24の底部24Bはボトムキャップ12Aのカップ底面との間に一定の隙間を介する)、ボトムキャップ12Aのカップ上端面に載るボトムプレート24のフランジ24Cの外周から立上がる嵌合筒部24Dの内周には、後述する第2のベースピストン60の外周の大外径部が圧入されてセンタリング配置されている。第2のベースピストン60の下端面はボトムプレート24のフランジ24Cの上面に載る。そして、第2のベースピストン60の外周の中外径部と小外径部のそれぞれにシリンダ13の外筒13Aと内筒13Bの各下端内周が圧入等されて固定されている。
【0031】
他方、シリンダ13の外筒13Aと内筒13Bの各上端内周はロッドガイド21の頭部21Aの下に設けた中外径部と小外径部のそれぞれに圧入等して固定されている。そして、ダンパチューブ12はロッドガイド21の頭部21Aを挿着され、頭部21Aの上のオイルシール22、オイルシール22の上面に設けたワッシャ22Aよりも上方に突出し、その突出端を加締部12Bとする。ダンパチューブ12は、ボトムキャップ12Aと加締部12Bの間に、ロッドガイド21、オイルシール22、ワッシャ22A、ボトムプレート24、第2のベースピストン60を介して、シリンダ13の外筒13A、内筒13Bを軸方向で挟み込み固定するものになる。
【0032】
油圧緩衝器10は、以上により、ダンパケース11の全体をダンパチューブ12と、シリンダ13の外筒13A、内筒13Bとが同軸配置された三重管としている。そして、内筒13Bの内部にピストン側油室27Aとロッド側油室27Bからなる油室27を形成し、外筒13Aと内筒13Bの間の環状間隙によりピストン側油室27Aとロッド側油室27Bを連通する外側流路13Cを形成し、ダンパチューブ12と外筒13Aの間の環状間隙をエア室31と油溜室32とする。
【0033】
即ち、油圧緩衝器10は、ピストンロッド14をダンパケース11のダンパチューブ12、シリンダ13の中心部に挿入するとき、ピストンロッド14の先端部に挿着したピストン25をナット26で固定し、内筒13Bの内周に摺動可能に挿入されたピストン25により、シリンダ13の油室27をピストン側油室27Aとロッド側油室27Bに区画する。28はリバウンドスプリング、29はバンプラバーである。
【0034】
そして、油圧緩衝器10は、ダンパチューブ12と外筒13Aの環状間隙の上下にエア室31と油溜室32のそれぞれを設け、油溜室32をシリンダ13の油室27に連通するように設け、この油溜室32によりシリンダ13の油室27に進退するピストンロッド14の容積(油の温度膨張分の容積を含む)を補償する。
【0035】
油圧緩衝器10は、シリンダ13のピストン側油室27Aとロッド側油室27Bの間に減衰力発生装置40を設ける。
【0036】
減衰力発生装置40は、シリンダ13の軸方向に沿う2位置に固定されて並置される第1と第2のベースピストン50、60を有する。
【0037】
減衰力発生装置40は、第1と第2のベースピストン50、60をボルト70まわりに固定的に設けたバルブユニット40Aの状態で、シリンダ13の外筒13Aと内筒13Bの各下端内周に挿着されて内蔵される。
【0038】
減衰力発生装置40のバルブユニット40Aは、ボルト70の頭部71Aの側から順に、その棒状ねじ部71Bの外周に串刺し状に装填される、圧側チェックバルブ52(バルブスプリング52A)、第2のベースピストン60、伸側減衰バルブ61、バルブストッパ72A、後に詳述する減衰力調整装置80のカラー80A、バルブストッパ72B、圧側減衰バルブ51、第1のベースピストン50、伸側チェックバルブ62、バルブストッパ73を有し、これらを棒状ねじ部71Bに螺着されるナット71Cにより固定化する。
【0039】
減衰力発生装置40のバルブユニット40Aは、ボトムキャップ12Aに隙間嵌めされるボトムプレート24のフランジ24C、嵌合筒部24Dに対し第2のベースピストン60の外周の大外径部を前述の如くに組付け、この第2のベースピストン60の外周の中外径部と小外径部のそれぞれにシリンダ13の外筒13Aと内筒13Bの各下端内周を前述の如くに組付ける。第1のベースピストン50は外周に設けたOリングを介してシリンダ13の内筒13Bの内周に液密に挿着される。これにより、バルブユニット40Aの第2のベースピストン60をシリンダ13の一端側の底部に固定化し、バルブユニット40Aの第1のベースピストン50をシリンダ13の内周に固定化する。
【0040】
減衰力発生装置40は、内筒13Bの内部における第1のベースピストン50と第2のベースピストン60に挟まれる環状スペースを伸圧共用流路41とする。内筒13Bの内部における第1のベースピストン50の上側スペースをピストン側油室27Aとする。内筒13Bの内部における第2のベースピストン60の下側スペースは、第2のベースピストン60に穿設される孔状流路60C、シリンダ13の外筒13Aと内筒13Bの間の外側流路13Cを介してロッド側油室27Bに連通する伸圧共用流路42とされる。内筒13Bの上端側、本実施例ではロッドガイド21の小外径部には、ロッド側油室27Bを外側流路13Cに連通する伸圧共用流路43が切欠形成される。
【0041】
減衰力発生装置40は、第1のベースピストン50に圧側減衰バルブ51により開閉される圧側流路50Aと伸側チェックバルブ62により開閉される伸側流路50Bを設けるとともに、第2のベースピストン60に圧側チェックバルブ52により開閉される圧側流路60Bと伸側減衰バルブ61により開閉される伸側流路60Aを設ける。減衰力発生装置40は、伸圧共用流路41、42、43と、第1のベースピストン50に設けた圧側流路50A、伸側流路50Bと、第2のベースピストン60に設けた圧側流路60B、伸側流路60A、孔状流路60Cと、シリンダ13の外筒13Aと内筒13Bの環状間隙に設けられる外側流路13Cを介して、シリンダ13のピストン側油室27Aとロッド側油室27Bを連通する(ピストン25はピストン側油室27Aとロッド側油室27Bを連通する流路を備えない)。
【0042】
減衰力発生装置40は、第1のベースピストン50と第2のベースピストン60の各圧側流路50A、60Bに設けた圧側減衰バルブ51と圧側チェックバルブ52の中間部(伸圧共用流路41に連通する部分)を油溜室32に連通するとともに、第1のベースピストン50と第2のベースピストン60の各伸側流路50B、60Aに設けた伸側減衰バルブ61と伸側チェックバルブ62の中間部(伸圧共用流路41に連通する部分)を油溜室32に連通する連絡路44を第2のベースピストン60に設けた。
【0043】
第2のベースピストン60は、ダンパケース11のダンパチューブ12、シリンダ13に前述の如くに組込まれたとき、ボトムプレート24の嵌合筒部24Dに圧入される大外径部の外周の一部を油溜室32に臨ませる。そして、第2のベースピストン60は、図5に示す如く、大外径部の上述の外周の一部から半径方向に向けて圧側流路60Bの中間部に達する横孔を穿設され、この横孔を連絡路44とする。
【0044】
従って、油圧緩衝器10の減衰力発生装置40にあっては、圧側行程で、シリンダ13のピストン側油室27Aの油を、シリンダ13の外側流路13Cからロッド側油室27Bに向けて流す圧側流路(伸圧共用流路41、42、43、圧側流路50A、60B、孔状流路60C)を用い、この圧側流路(伸圧共用流路41、42、43、圧側流路50A、60B、孔状流路60C)の上流側に圧側減衰バルブ51を、下流側に圧側チェックバルブ52を設け、この圧側流路(伸圧共用流路41、42、43、圧側流路50A、60B、孔状流路60C)における圧側減衰バルブ51と圧側チェックバルブ52の中間部を、連絡路44を介して油溜室32に連通するものになる。
【0045】
また、伸側行程で、シリンダ13のロッド側油室27Bの油を、シリンダ13の外側流路13Cからピストン側油室27Aに向けて流す伸側流路(伸圧共用流路41、42、43、伸側流路50B、60A、孔状流路60C)を用い、この伸側流路(伸圧共用流路41、42、43、伸側流路50B、60A、孔状流路60C)の上流側に伸側減衰バルブ61を、下流側に伸側チェックバルブ62を設け、この伸側流路(伸圧共用流路41、42、43、伸側流路50B、60A、孔状流路60C)における伸側減衰バルブ61と伸側チェックバルブ62の中間部を、連絡路44を介して油溜室32に連通するものになる。
【0046】
従って、油圧緩衝器10は以下の如くに減衰作用を行なう。
(圧側行程)(図4(A)の実線矢印の流れ)
ピストン側油室27Aの油が昇圧し、減衰力発生装置40の第1のベースピストン50の圧側流路50Aの圧側減衰バルブ51を押し開いて圧側減衰力を発生する。この圧側減衰バルブ51から伸圧共用流路41に流出する油は第2のベースピストン60の圧側流路60Bにおいて2分し、一方の油は第2のベースピストン60の圧側流路60Bの圧側チェックバルブ52から伸圧共用流路42、第2のベースピストン60の孔状流路60C、シリンダ13の外側流路13C、伸圧共用流路43を通ってロッド側油室27Bに流出し、他方の油は第2のベースピストン60の連絡路44から油溜室32に排出される。この油溜室32に排出される他方の油は、ピストンロッド14の進入容積分の油を補償する。
【0047】
(伸側行程)(図4(B)の実線矢印の流れ)
ロッド側油室27Bの油が昇圧し、伸圧共用流路43、シリンダ13の外側流路13Cを通って減衰力発生装置40の第2のベースピストン60の孔状流路60C、伸圧共用流路42に流入し、第2のベースピストン60の伸側流路60Aの伸側減衰バルブ61を押し開いて伸側減衰力を発生する。この伸側減衰バルブ61から伸圧共用流路41に流出する油は、油溜室32から第2のベースピストン60の連絡路44、圧側流路60Bを介して補給される油と合流した後、第1のベースピストン50の伸側流路50Bの伸側チェックバルブ62を通ってピストン側油室27Aに流出する。油溜室32から補給される油はピストンロッド14の退出容積分の油を補償する。
【0048】
従って、本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)油圧緩衝器10の減衰力発生装置40において、シリンダ13のピストン側油室27Aと、ロッド側油室27Bの間に減衰力発生装置40を設け、圧側行程で、シリンダ13のピストン側油室27Aの油をシリンダ13の外側流路13Cからロッド側油室27Bに向けて流す圧側流路(伸圧共用流路41、42、43、圧側流路50A、60B、孔状流路60C)を用い、この圧側流路(伸圧共用流路41、42、43、圧側流路50A、60B、孔状流路60C)の上流側に圧側減衰バルブ51を、下流側に圧側チェックバルブ52を設け、この圧側流路(伸圧共用流路41、42、43、圧側流路50A、60B、孔状流路60C)における圧側減衰バルブ51と圧側チェックバルブ52の中間部を連絡路44を介して油溜室32に連通し、伸側行程で、シリンダ13のロッド側油室27Bの油をシリンダ13の外側流路13Cからピストン側油室27Aに向けて流す伸側流路(伸圧共用流路41、42、43、伸側流路50B、60A、孔状流路60C)を用い、この伸側流路(伸圧共用流路41、42、43、伸側流路50B、60A、孔状流路60C)の上流側に伸側減衰バルブ61を、下流側に伸側チェックバルブ62を設け、この伸側流路(伸圧共用流路41、42、43、伸側流路50B、60A、孔状流路60C)における伸側減衰バルブ61と伸側チェックバルブ62の中間部を連絡路44を介して油溜室32に連通させた。
【0049】
圧側行程では、ピストン側油室27Aの昇圧した油が減衰力発生装置40の圧側流路(伸圧共用流路41、42、43、圧側流路50A、60B、孔状流路60C)の上流側の圧側減衰バルブ51を通って圧側減衰力を発生する。この圧側減衰バルブ51から流出する油のうちの一方の油の流れが圧側チェックバルブ52からシリンダ13の外側流路13Cを通ってロッド側油室27Bに流入する。また、この圧側減衰バルブ51から流出する油のうちの他方の油の流れである、ピストンロッド14の進入容積分の油の流れが第2のベースピストン60の連絡路44から油溜室32に流入する。このとき、ロッド側油室27Bの圧力は(圧側減衰バルブ51の下流側の圧側チェックバルブ52〜シリンダ13の外側流路13Cの流路抵抗が小さいので)エア室31の圧力だけにほぼ依存し、圧側減衰バルブ51の流路抵抗の設定によって変動しない。従って、伸側反転時の減衰力のさぼりを回避できる。
【0050】
伸側行程では、ロッド側油室27Bの昇圧した油がシリンダ13の外側流路13Cから減衰力発生装置40の伸側流路(伸圧共用流路41、42、43、伸側流路50B、60A、孔状流路60C)の上流側の伸側減衰バルブ61を通って伸側減衰力を発生する。この伸側減衰バルブ61から流出する油は、油溜室32から第2のベースピストン60の連絡路44を介して補給されるピストンロッド14の退出容積分の油と合流した後、伸側チェックバルブ62を通ってピストン側油室27Aに流入する。
【0051】
尚、油溜室32を加圧するエア室31の圧力を高圧に設定することにより、圧側行程ではロッド側油室27Bの圧力を大きく正圧にして伸側反転時の減衰応答性を向上できる。
【0052】
(b)第1と第2のベースピストン50、60の各圧側流路50A、60Bのそれぞれに設けた圧側減衰バルブ51と圧側チェックバルブ52の中間部を油溜室32に連通するとともに、第1と第2のベースピストン50、60の各伸側流路50B、60Aのそれぞれに設けた伸側減衰バルブ61と伸側チェックバルブ62の中間部を油溜室32に連通する連絡路44を、第2のベースピストン60に設けた。これにより、圧側行程で、ピストン側油室27Aから減衰力発生装置40を通って油溜室32に流出する上述(a)の油の流路と、伸側行程で、油溜室32から減衰力発生装置40を通ってピストン側油室27Aへ流出する上述(a)の油の流路を、第2のベースピストン60に設けた連絡路44により形成するものになる。連絡路44は、単純な横孔等の流路であり、シリンダ13の油室27〜油溜室32の流路面積を容易に確保し、エア室31の圧力をスムースにロッド側油室27Bに印加できるから、伸側反転時の減衰力のさぼりを一層確実に回避できる。また、連絡路44は、その流路長を短く、その流路抵抗を小さく設定でき、その設定の自由度を向上できる。また、連絡路44は、第2のベースピストン60に孔加工するだけで形成でき、部品点数を多くすることなく、コスト低減できる。
【0053】
(c)油圧緩衝器10において、ダンパケース11におけるシリンダ13の油室27の周囲に、ピストン側油室27Aとロッド側油室27Bを連通する外側流路13Cを設け、ダンパケース11におけるシリンダ13の油室27及び外側流路13Cの周囲に、油溜室32を設けた。従って、ダンパケース11におけるシリンダ13の中心部に油室27を設け、油室27の外側に外側流路13Cを設け、外側流路13Cの更に外側に油溜室32を設けるものになる。これにより、油圧緩衝器10において、ダンパケース11を長大化することなく、全長の短いダンパケース11の内部にシリンダ13の油室27、外側流路13C及び油溜室32を併せ設けることができ、これが搭載される車両におけるレイアウト上の自由度を向上できる。
【0054】
(d)ダンパケース11がダンパチューブ12の内部にシリンダ13を挿嵌し、シリンダ13が外筒13Aと内筒13Bからなり、内筒13Bの内部に前記油室27を形成し、外筒13Aと内筒13Bの間に前記外側流路13Cを形成し、ダンパチューブ12と外筒13Aの間に前記油溜室32を形成する。ダンパチューブ12とシリンダ13の外筒13A及び内筒13Bとからなる三重管構造により、コンパクトに上述(c)を実現できる。
【0055】
(e)第1と第2のベースピストン50、60をボルト70まわりに固定的に設け、第2のベースピストン60をシリンダ13の一端側の底部に固定化してなる。従って、第1と第2のベースピストン50、60をシリンダ13の軸方向に沿う2位置に簡易に組込みできる。
【0056】
尚、減衰力発生装置40は、圧側流路(伸圧共用流路41、42、43、圧側流路50A、60B、孔状流路60C)の下流側に設けられる圧側チェックバルブ52に圧側減衰力発生手段を付帯させても良い。この圧側減衰力発生手段は圧側チェックバルブ52を積層板バルブとし、及び/又は圧側チェックバルブ52が設けられる圧側流路60Bを絞り流路とする等により構成できる。
【0057】
これによれば、圧側行程で、上流側の圧側減衰バルブ51から流出する油のうちの一方の油の流れは、圧側チェックバルブ52からシリンダ13の外側流路13Cを通ってロッド側油室27Bに流入するものの、圧側チェックバルブ52がチェック機能とともに圧側減衰力発生機能を果たす。圧側チェックバルブ52はピストン速度に依存する減衰力ΔFを発生し、ロッド側油室27Bの圧力Prは油溜室32を加圧するエア室31の圧力PaからΔFを減じた値、換言すればピストン速度に依存して制御される値になる。
【0058】
このように圧側行程でロッド側油室27Bの圧力Prがピストン速度に依存して制御されることは、伸側反転時の減衰力の立上り特性をピストン速度に依存して制御できることを意味する。ピストン速度が高速のときには、圧側チェックバルブ52の絞りによってΔFが大きくなり、Prが小さくなるから、伸側反転時の減衰力の立上りは緩やかになって乗心地を良くする。ピストン速度が低速のときには、圧側チェックバルブ52の絞りによるΔFが小さくなり、Prが大きくなるから伸側反転時の減衰力の立上りは急になって車体のフラフラ感を抑えて走行安定性を良くする。
【0059】
このとき、圧側減衰力の総量は、圧側減衰バルブ51の減衰力と、圧側チェックバルブ52の減衰力の総和になるが、通常のセッティングでは、圧側減衰バルブ51の減衰力をより大きくする。圧側減衰力の総量は、概ね圧側減衰バルブ51の減衰力に依存する。
【0060】
また、減衰力発生装置40は、伸側流路(伸圧共用流路41、42、43、伸側流路50B、60A、孔状流路60C)の下流側に設けられる伸側チェックバルブ62に伸側減衰力発生手段を付帯させても良い。この伸側減衰力発生手段は伸側チェックバルブ62を積層板バルブとし、及び/又は伸側チェックバルブ62が設けられる伸側流路50Bを絞り流路とする等により構成できる。
【0061】
これによれば、伸側行程で、上流側の伸側減衰バルブ61から流出する油のうちの一方の油の流れは、伸側チェックバルブ62からシリンダ13の外側流路13Cを通ってピストン側油室27Aに流入するものの、伸側チェックバルブ62がチェック機能とともに伸側減衰力発生機能を果たす。伸側チェックバルブ62はピストン速度に依存する減衰力ΔFを発生し、ピストン側油室27Aの圧力Ppは油溜室32を加圧するエア室31の圧力PaからΔFを減じた値、換言すればピストン速度に依存して制御される値になる。
【0062】
このように伸側行程でピストン側油室27Aの圧力Ppがピストン速度に依存して制御されることは、圧側反転時の減衰力の立上り特性をピストン速度に依存して制御できることを意味する。ピストン速度が高速のときには、伸側チェックバルブ62の絞りによってΔFが大きくなり、Ppが小さくなるから、圧側反転時の減衰力の立上りは緩やかになって乗心地を良くする。ピストン速度が低速のときには、伸側チェックバルブ62の絞りによるΔFが小さくなり、Ppが大きくなるから圧側反転時の減衰力の立上りは急になって車体のフラフラ感を抑えて走行安定性を良くする。
【0063】
このとき、伸側減衰力の総量は、伸側減衰バルブ61の減衰力と、伸側チェックバルブ62の減衰力の総和になるが、通常のセッティングでは、伸側減衰バルブ61の減衰力をより大きくする。伸側減衰力の総量は、概ね伸側減衰バルブ61の減衰力に依存する。
【0064】
しかるに、油圧緩衝器10は、簡易な構成により、ダンパケースの側の振動に応じて迅速に減衰力特性を調整するため、前述の減衰力調整装置80を以下の如くに具備する。
【0065】
減衰力調整装置80は、図3に示す如く、減衰力発生装置40のバルブユニット40Aのボルト70に前述の如くに組込んだカラー80Aの周囲に、第1のスプリング81(ばね定数K1)と第2のスプリング82(ばね定数K2)と錘83(質量M)を設けている。
【0066】
即ち、減衰力調整装置80は、第1と第2のベースピストン50、60がシリンダ13の内筒13Bの内部に区画する錘収容室80B(伸圧共用流路41と同じ)の内部で、圧側減衰バルブ51と伸側減衰バルブ61を背中合せに配置し、圧側減衰バルブ51を閉じ方向に付勢する第1のスプリング81と、伸側減衰バルブ61を閉じ方向に付勢する第2のスプリング82との間に、シリンダ13の軸方向に沿って振動する錘83を保持する。第1のスプリング81は圧側減衰バルブ51の背面と錘83との間に介装され、第2のスプリング82は伸側減衰バルブ61の背面と錘83との間に介装される。
【0067】
錘83は両端側の内周にブッシュ83A、83Aを圧入等して設け、これらのブッシュ83Aを介してカラー80Aの外周に摺接する状態で、シリンダ13の軸方向に沿って振動する。カラー80Aの両端側の外周には、バルブストッパ72A、72Bの上に載る環状のゴム製ストッパ84、84が挿着されて固定され、振動ストローク端に達する錘83をそれらのストッパ84に衝合させて緩衝し、その振動ストロークを規制する。
【0068】
従って、本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(f)第1と第2のベースピストン50、60がシリンダ13の内部に区画する錘収容室80Bの内部で、圧側減衰バルブ51と伸側減衰バルブ61を背中合せに配置し、圧側減衰バルブ51を閉じ方向に付勢する第1のスプリング81と、伸側減衰バルブ61を閉じ方向に付勢する第2のスプリング82との間に、シリンダ13の軸方向に沿って振動する錘83を保持した。
【0069】
従って、ダンパケース11の側の振動の周波数が高くなり、これが錘83と第1と第2のスプリング81、82からなる振動系の固有振動数を超えると、錘83とダンパケース11は逆位相で振動するに至る。
【0070】
このとき、例えば圧側行程から伸側行程への反転時を考えると、ダンパケース11はその振動ストロークの上端側にあり、錘83はその振動ストロークの下端側にある。錘83によって圧縮される第2のスプリング82が伸側減衰バルブ61を閉じ方向に強く押圧しているから(開弁圧力:大)、圧側行程から伸側行程への反転直後(伸側行程の前半)の伸側減衰力は、錘83が両スプリング81、82のばね力の吊り合いにより中立位置から振れていない(又は両スプリング81、82が錘83を伴なわない状態で圧側減衰バルブ51と伸側減衰バルブ61を押圧している)通常状態におけるよりも大きくなる。伸側行程が更に進むと(伸側行程の後半)、ダンパケース11はその振動ストロークの下端側に移動し、錘83はその振動ストロークの上端側に移動し、錘83によって圧縮される第2のスプリング82が伸側減衰バルブ61を閉じ方向に押圧するばね力は小さくなり(開弁圧力:小)、伸側減衰力は上述の通常状態におけるよりも次第に小さくなる。
【0071】
従って、本発明によれば、通常状態に比して、伸側行程の前半では減衰力を増大させ、後半では減衰力を減少させるものになる。圧側行程でも同様であり、通常状態に比して、圧側行程の前半では減衰力を増大させ、後半では減衰力を減少させるものになる。これを模式的に図示すれば、図10に示す如くになり、図10において、Aは通常状態の減衰力特性を示し、Bは本発明により補正された減衰力特性を示す。
【0072】
即ち、油圧緩衝器10では、非圧縮性の油が実際には空気を含んでいること等で圧縮されるため、圧力がかかってから高圧化されるまでにわずかな遅れを生じる。また伸縮の反転時にも、例えば圧側行程から伸側行程に切り換わるときに、今まで開いていた圧側チェックバルブ52が油の反転で閉じるまでに時間がかかり、油室27が高圧化されるまでに遅れを生じる。これらによって通常状態の減衰力特性Aは、本発明により補正された減衰力特性Bよりも遅れたものになる。本発明により、ダンパケース11の側の振動に応じて、減衰バルブ51、61の減衰力特性の遅れを補正し、応答性の改善を図ることができるものになる。
【0073】
(g)減衰バルブ51、61の減衰力をダンパケース11の側の振動に応じて調整する手段が、第1と第2のスプリング81、82と、錘83を用いるだけで構成され、簡易である。
【0074】
(h)ダンパケース11の側の振動に起因する錘83の振動が、第1と第2のスプリング81、82を介して直ちに減衰バルブ51、61の開弁圧力を調整するものになる。従って、減衰バルブ51、61の減衰力特性をダンパケース11の側の振動に応じて迅速に調整できる。
【0075】
図6〜図9に示した油圧緩衝器100は、図1〜図5に示した油圧緩衝器10の変形例である。油圧緩衝器100が油圧緩衝器10と異なる点は、減衰力調整装置80を減衰力調整装置110に代えたことにある。
【0076】
減衰力調整装置110は、図8に示す如く、減衰力発生装置40のバルブユニット40Aのボルト70に組込んだカラー110Aの周囲に、第1のスプリング111(ばね定数K1)と第2のスプリング112(ばね定数K2)と錘120(質量M1、M2)を設けている。
【0077】
即ち、減衰力調整装置110は、第1と第2のベースピストン50、60がシリンダ13の内筒13Bの内部に区画する錘収容室110B(伸圧共用流路41と同じ)の内部で、圧側減衰バルブ51と伸側減衰バルブ61を背中合せに配置し、圧側減衰バルブ51を閉じ方向に付勢する第1のスプリング111と、伸側減衰バルブ61を閉じ方向に付勢する第2のスプリング112との間に、シリンダ13の軸方向に沿って振動する錘120を保持する。第1のスプリング111は圧側減衰バルブ51の背面と錘120との間に介装され、第2のスプリング112は伸側減衰バルブ61の背面と錘120との間に介装される。
【0078】
錘120は、第1の錘121(質量M1)と第2の錘122(質量M2)からなる。第1の錘121と第2の錘122は固有振動数が互いに異なる。第1の錘121と第2の錘122は、例えば第1の錘121の外周に第2の錘122の内周を嵌合することにより、シリンダ13の軸方向に沿って相対移動可能に互いに嵌合し、両者の間に油装填室123を区画する。第1の錘121は第2の錘122と反対側の端部の内周にブッシュ121Aを圧入等して設け、第2の錘122は第1の錘121と反対側の端部の内周にブッシュ122Aを圧入等して設けている。第1の錘121と第2の錘122は、これらのブッシュ121A、122Aを介してカラー110Aの外周に摺接する状態で、シリンダ13の軸方向に沿って振動する。カラー110Aの両端側の外周には環状のゴム製ストッパ113、113が挿着されて固定され、振動ストローク端に達する錘121、122をそれらのストッパ113に衝合させて緩衝し、その振動ストロークを規制する。
【0079】
第1の錘121と第2の錘122は、両者をシリンダ13の軸方向に沿って互いに離隔する方向に付勢する反発スプリング124を備える。反発スプリング124は油装填室123の内部で、カラー110Aまわりに備える。
【0080】
第1の錘121と第2の錘122は、両者が区画した油装填室123を外部の錘収容室110Bに連通するチェック弁付流路125と絞り付流路126を備える。
【0081】
チェック弁付流路125は、錘収容室110Bから油装填室123への油の導入を許容し、第1の錘121と第2の錘122の全体長(シリンダ13の軸方向において、第1の錘121が第1のスプリング111を支持する面と第2の錘122が第2のスプリング112を支持する面の間隔)L(図8)を拡大可能にするチェック弁125A(バルブスプリング125B)を有する。尚、第2の錘122は、図8(C)に示す如く、軸方向に2分割された分割体122U、122Lを嵌合一体化され、両分割体122U、122Lの間にチェック弁125A、バルブスプリング125Bを内蔵している。
【0082】
絞り付流路126は、例えば第1の錘121の外周と第2の錘122の内周の嵌合部の環状隙間126A(油装填室123を外部の錘収容室110Bに連通する環状隙間)により構成され、油装填室123から錘収容室110Bへの油の流出抵抗を大きくする。絞り付流路126は、チェック弁125Aに設けたオリフィス126A(油装填室123を外部の錘収容室110Bに連通するオリフィス)、又は第1の錘121(第2の錘122でも可)の油装填室123及び錘収容室110Bに臨む壁体に穿設されるオリフィス126Aにより構成することもできる。
【0083】
従って、本実施例によれば、前述した油圧緩衝器10における(a)〜(e)に加え、以下の作用効果を奏する。
(f)第1と第2のベースピストン50、60がシリンダ13の内部に区画する錘収容室110Bの内部で、圧側減衰バルブ51と伸側減衰バルブ61を背中合せに配置し、圧側減衰バルブ51を閉じ方向に付勢する第1のスプリング111と、伸側減衰バルブ61を閉じ方向に付勢する第2のスプリング112との間に、シリンダ13の軸方向に沿って振動する錘120を保持した。
【0084】
従って、ダンパケース11の側の振動の周波数が高くなり、これが錘120と第1と第2のスプリング111、112からなる振動系の固有振動数を超えると、錘120とダンパケース11は逆位相で振動するに至る。
【0085】
このとき、例えば圧側行程から伸側行程への反転時を考えると、ダンパケース11はその振動ストロークの上端側にあり、錘120はその振動ストロークの下端側にある。錘120によって圧縮される第2のスプリング112が伸側減衰バルブ61を閉じ方向に強く押圧しているから(開弁圧力:大)、圧側行程から伸側行程への反転直後(伸側行程の前半)の伸側減衰力は、錘120が両スプリング111、112のばね力の吊り合いにより中立位置から振れていない(又は両スプリング111、112が錘120を伴なわない状態で圧側減衰バルブ51と伸側減衰バルブ61を押圧している)通常状態におけるよりも大きくなる。伸側行程が更に進むと(伸側行程の後半)、ダンパケース11はその振動ストロークの下端側に移動し、錘120はその振動ストロークの上端側に移動し、錘120によって圧縮される第2のスプリング112が伸側減衰バルブ61を閉じ方向に押圧するばね力は小さくなり(開弁圧力:小)、伸側減衰力は上述の通常状態におけるよりも次第に小さくなる。
【0086】
従って、本発明によれば、通常状態に比して、伸側行程の前半では減衰力を増大させ、後半では減衰力を減少させるものになる。圧側行程でも同様であり、通常状態に比して、圧側行程の前半では減衰力を増大させ、後半では減衰力を減少させるものになる。これを模式的に図示すれば、図10に示す如くになり、図10において、Aは通常状態の減衰力特性を示し、Bは本発明により補正された減衰力特性を示す。
【0087】
即ち、油圧緩衝器10では、非圧縮性の油が実際には空気を含んでいること等で圧縮されるため、圧力がかかってから高圧化されるまでにわずかな遅れを生じる。また伸縮の反転時にも、例えば圧側行程から伸側行程に切り換わるときに、今まで開いていた圧側チェックバルブ52が油の反転で閉じるまでに時間がかかり、油室27が高圧化されるまでに遅れを生じる。これらによって通常状態の減衰力特性Aは、本発明により補正された減衰力特性Bよりも遅れたものになる。本発明により、ダンパケース11の側の振動に応じて、減衰バルブ51、61の減衰力特性の遅れを補正し、応答性の改善を図ることができるものになる。
【0088】
(g)減衰バルブ51、61の減衰力をダンパケース11の側の振動に応じて調整する手段が、第1と第2のスプリング111、112と、錘120を用いるだけで構成され、簡易である。
【0089】
(h)ダンパケース11の側の振動に起因する錘120の振動が、第1と第2のスプリング111、112を介して直ちに減衰バルブ51、61の開弁圧力を調整するものになる。従って、減衰バルブ51、61の減衰力特性をダンパケース11の側の振動に応じて迅速に調整できる。
【0090】
(i)前記錘120が第1と第2の錘121、122からなり、第1と第2の錘121、122は、シリンダ13の軸方向に沿って相対移動可能に互いに嵌合し、両者の間に油装填室123を区画するとともに、第1と第2の錘121、122は、両者をシリンダ13の軸方向に沿って互いに離隔する方向に付勢する反発スプリング124を備えるとともに、両者が区画した油装填室123を外部の錘収容室110Bに連通するチェック弁付流路125と絞り付流路126を備える。
【0091】
ここで、前記チェック弁付流路125が、錘収容室110Bから油装填室123への油の導入を許容し、第1と第2の錘121、122の全体長を拡大可能にするチェック弁125Aを有してなる場合には、前記錘120が第1と第2の錘121、122からなり、第1と第2の錘121、122は、シリンダ13の軸方向に沿って相対移動可能に互いに嵌合し、両者の間に油装填室123を区画するとともに、第1と第2の錘121、122は、両者をシリンダ13の軸方向に沿って互いに離隔する方向に付勢する反発スプリング124を備えるとともに、両者が区画した油装填室123を外部の錘収容室110Bに連通するチェック弁付流路125と絞り付流路126を備える。
【0092】
ダンパケース11の側の振動の周波数が高くなり、第1と第2の錘121、122に作用する加速度が大きくなるほど、それらの錘121、122は反発スプリング124と第1又は第2のスプリング111、112により挟まれた状態で、それらの間隔が拡大する方向に相対変位する。即ち、第1と第2の錘121、122は、両者間の油装填室123に装填されている油の存在により伸縮振動することなく、それらに作用する加速度によりそれらの間隔を広げる方向にだけ相対変位し、同時に、錘収容室110Bからチェック弁付流路125を経由して油装填室123に導入した油を絞り付流路126の絞りによって保持することを繰り返し、その間隔を徐々に拡大する。第1と第2の錘121、122の間隔が拡大すると、第1と第2のスプリング111、112の圧縮量が増大し、ひいては圧側減衰バルブ51と伸側減衰バルブ61の開弁圧力が増大する結果、圧側減衰力の最大値と伸側減衰力の最大値を高くするものになる。これにより、車両の高速走行(走行速度が高速)で、ダンパケース11(車輪)が高周波振動するほど、第1と第2の錘121、122の間隔が拡大して減衰力が高くなり、安定した走行が得られる。
【0093】
尚、減衰力調整装置110を構成するチェック弁付流路125は、油装填室123から錘収容室110Bへの油の排出を許容し、第1と第2の錘121、122の全体長Lを縮小可能にするチェック弁を有するものでも良い。
【0094】
この場合には、ダンパケース11の側の振動の周波数が高くなり、第1と第2の錘121、122に作用する加速度が大きくなるほど、それらの錘121、122は反発スプリング124と第1又は第2のスプリング111、112により挟まれた状態で、それらの間隔が縮小する方向に相対変位する。即ち、第1と第2の錘121、122は、両者間の油装填室123に装填されている油の存在により伸縮振動することなく、それらに作用する加速度によりそれらの間隔を縮める方向にだけ相対変位し、同時に、油装填室123の油をチェック弁付流路125を経由して錘収容室110Bに排出し、該油装填室123の油を絞り付流路126の絞りによって保持することを繰り返し、その間隔を徐々に縮小する。第1と第2の錘121、122の間隔が縮小すると、第1と第2のスプリング111、112の圧縮量が減少し、ひいては圧側減衰バルブ51と伸側減衰バルブ61の開弁圧力が減少する結果、圧側減衰力の最大値と伸側減衰力の最大値を低くするものになる。
【0095】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、減衰力発生装置40は、第1のベースピストン50と第2のベースピストン60の各圧側流路50A、60Bに設けた圧側減衰バルブ51と圧側チェックバルブ52の中間部(伸圧共用流路41に連通する部分)を油溜室32に連通するとともに、第1のベースピストン50と第2のベースピストン60の各伸側流路50B、60Aに設けた伸側減衰バルブ61と伸側チェックバルブ62の中間部(伸圧共用流路41に連通する部分)を油溜室32に連通する連絡路44を第1のベースピストン50に設け、又は第1と第2のベースピストン50、60の両方に設けても良い。
【0096】
また、油圧緩衝器100において(図6〜図9)、減衰力調整装置110から第1のスプリング111と第2のスプリング112の一方を撤去しても良い。この場合には、減衰力調整装置110が第1のスプリング111(又は第2のスプリング112)、錘120を有し、錘120が第1の錘121、第2の錘122、油装填室123、反発スプリング124、チェック弁付流路125、絞り付流路126を有して構成される。第1のスプリング111(又は第1の錘121)が圧側減衰バルブ51の背面に着座し、第2の錘122(又は第2のスプリング112)が伸側減衰バルブ61の背面に着座する。これによれば、前述(f)、(g)、(h)の作用効果を奏しないものの、前述(i)の作用効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、車体側と車軸側の一方に取付けられるダンパケースが備えるシリンダの油室に、車体側と車軸側の他方に取付けられるピストンロッドを挿入し、ピストンロッドの先端部に設けたピストンにより、シリンダの油室をピストン側油室とロッド側油室に区画し、シリンダの油室に進退するピストンロッドの容積を補償する油溜室をシリンダの油室に連通し、シリンダのピストン側油室と、ロッド側油室の間に減衰力発生装置を設けてなる油圧緩衝器において、減衰力発生装置が、シリンダの軸方向に沿う2位置に固定されて並置される第1と第2のベースピストンを有し、第1のベースピストンに設けた圧側流路に圧側減衰バルブを設け、第2のベースピストンに設けた伸側流路に伸側減衰バルブを設け、第1と第2のベースピストンがシリンダの内部に区画する錘収容室の内部で、圧側減衰バルブと伸側減衰バルブを背中合せに配置し、圧側減衰バルブを閉じ方向に付勢する第1のスプリングと、伸側減衰バルブを閉じ方向に付勢する第2のスプリングとの間に、シリンダの軸方向に沿って振動する錘を保持してなるものにした。これにより、油圧緩衝器において、簡素な構成により、ダンパケース側の振動に応じて迅速に減衰力特性を調整することができる。
【符号の説明】
【0098】
10 油圧緩衝器
11 ダンパケース
12 ダンパチューブ
13 ダンパシリンダ
13A 外筒
13B 内筒
13C 外側流路
14 ピストンロッド
25 ピストン
27 油室
27A ピストン側油室
27B ロッド側油室
31 エア室
32 油溜室
40 減衰力発生装置
41〜43 伸圧共用流路
44 連絡路
50A 圧側流路
50B 伸側流路
51 圧側減衰バルブ
52 圧側チェックバルブ
60 伸側ピストン
60A 伸側流路
60B 圧側流路
61 伸側減衰バルブ
62 伸側チェックバルブ
70 ボルト
80 減衰力調整装置
80B 錘収容室
81 第1のスプリング
82 第2のスプリング
83 錘
100 油圧緩衝器
110 減衰力調整装置
110B 錘収容室
111 第1のスプリング
112 第2のスプリング
120 錘
121 第1の錘
122 第2の錘
123 油装填室
124 反発スプリング
125 チェック弁付流路
126 絞り付流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側と車軸側の一方に取付けられるダンパケースが備えるシリンダの油室に、車体側と車軸側の他方に取付けられるピストンロッドを挿入し、
ピストンロッドの先端部に設けたピストンにより、シリンダの油室をピストン側油室とロッド側油室に区画し、
シリンダの油室に進退するピストンロッドの容積を補償する油溜室をシリンダの油室に連通し、
シリンダのピストン側油室と、ロッド側油室の間に減衰力発生装置を設けてなる油圧緩衝器において、
減衰力発生装置が、シリンダの軸方向に沿う2位置に固定されて並置される第1と第2のベースピストンを有し、
第1のベースピストンに設けた圧側流路に圧側減衰バルブを設け、第2のベースピストンに設けた伸側流路に伸側減衰バルブを設け、
第1と第2のベースピストンがシリンダの内部に区画する錘収容室の内部で、圧側減衰バルブと伸側減衰バルブを背中合せに配置し、圧側減衰バルブを閉じ方向に付勢する第1のスプリングと、伸側減衰バルブを閉じ方向に付勢する第2のスプリングとの間に、シリンダの軸方向に沿って振動する錘を保持してなることを特徴とする油圧緩衝器。
【請求項2】
車体側と車軸側の一方に取付けられるダンパケースが備えるシリンダの油室に、車体側と車軸側の他方に取付けられるピストンロッドを挿入し、
ピストンロッドの先端部に設けたピストンにより、シリンダの油室をピストン側油室とロッド側油室に区画し、
シリンダの油室に進退するピストンロッドの容積を補償する油溜室をシリンダの油室に連通し、
シリンダのピストン側油室と、ロッド側油室の間に減衰力発生装置を設け、
ダンパケースにおけるシリンダの油室の周囲に、ピストン側油室とロッド側油室を連通する外側流路を設け、
減衰力発生装置が、
圧側行程で、シリンダのピストン側油室の油をシリンダの外側流路からロッド側油室に向けて流す圧側流路が減衰力発生装置に設けられ、この圧側流路の上流側に圧側減衰バルブを、下流側に圧側チェックバルブを設け、この圧側流路に設けた圧側減衰バルブと圧側チェックバルブの中間部を油溜室に連通し、
伸側行程で、シリンダのロッド側油室の油をシリンダの外側流路からピストン側油室に向けて流す伸側流路が減衰力発生装置に設けられ、この伸側流路の上流側に伸側減衰バルブを、下流側に伸側チェックバルブを設け、この伸側流路に設けた伸側減衰バルブと伸側チェックバルブの中間部を油溜室に連通してなる油圧緩衝器であって、
減衰力発生装置が、シリンダの軸方向に沿う2位置に固定されて並置される第1と第2のベースピストンを有し、
第1のベースピストンに設けた圧側流路と伸側流路のそれぞれに圧側減衰バルブと伸側チェックバルブのそれぞれを設け、第2のベースピストンに設けた伸側流路と圧側流路のそれぞれに伸側減衰バルブと圧側チェックバルブのそれぞれを設け、
第1と第2のベースピストンがシリンダの内部に区画する錘収容室の内部で、圧側減衰バルブと伸側減衰バルブを背中合せに配置し、圧側減衰バルブを閉じ方向に付勢する第1のスプリングと、伸側減衰バルブを閉じ方向に付勢する第2のスプリングとの間に、シリンダの軸方向に沿って振動する錘を保持してなることを特徴とする油圧緩衝器。
【請求項3】
前記錘が第1と第2の錘からなり、
第1と第2の錘は、シリンダの軸方向に沿って相対移動可能に互いに嵌合し、両者の間に油装填室を区画するとともに、
第1と第2の錘は、両者をシリンダの軸方向に沿って互いに離隔する方向に付勢する反発スプリングを備えるとともに、両者が区画した油装填室を外部の錘収容室に連通するチェック弁付流路と絞り付流路を備えてなる請求項1又は2に記載の油圧緩衝器。
【請求項4】
前記チェック弁付流路が、錘収容室から油装填室への油の導入を許容し、第1と第2の錘の全体長を拡大可能にするチェック弁を有してなる請求項3に記載の油圧緩衝器。
【請求項5】
前記チェック弁付流路が、油装填室から錘収容室への油の排出を許容し、第1と第2の錘の全体長を縮小可能にするチェック弁を有してなる請求項3に記載の油圧緩衝器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−2338(P2012−2338A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140839(P2010−140839)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000146010)株式会社ショーワ (715)
【Fターム(参考)】