説明

油圧装置

【課題】エネルギロスが少なく作動油の温度上昇が抑制される油圧装置を提供すること。
【解決手段】往動用の第1シリンダ室11と、第1シリンダ室の11受圧面積より小さい受圧面積の復動用の第2シリンダ室12と、各シリンダ室を区画するピストン体13と、を備える油圧アクチュエータ1と、正逆両方向に作動油を圧送可能な定容積型主油圧ポンプ21、副油圧ポンプ31及び、それらのポンプを正逆両方向に回転駆動するサーボモータ4と、第1シリンダ室11と第2シリンダ室12とを主油圧ポンプ21を介して連結するクローズド油圧回路2と、第1シリンダ室11と油タンク6とを副油圧ポンプ31を介して連結して第1シリンダ室11と前2シリンダ室12の受圧面積の違いによって生じるクローズド油圧回路2を流れる作動油量の違いを補償するセミクローズド油圧回路3と、 を有することを特徴とする油圧装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ室に作動油を供給してピストン体を駆動し加工(プレス、カシメ、射出成形等)や作業(油圧ショベルの腕の伸縮、油圧クレーンの腕の伸縮等)等を行わせる油圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧アクチュエータには単動シリンダと複動シリンダとがあるが、プレス等の加工や油圧ショベル等の作業を行う油圧装置は往復で仕事をする必要があり、複動シリンダを用いている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−151191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の油圧装置に用いられる複動シリンダでは、ピストンロッドのない第1シリンダ室の受圧面積よりピストンロッドのある第2シリンダ室の受圧面積が小さい。したがって、往動時第1シリンダ室に供給する作動油量が第2シリンダ室から排出される作動油量より多くなり、不足分を油タンクから吸い込む必要がある。また、復動時第1シリンダ室から排出される作動油量が第2シリンダ室に供給する作動油量より多くなり、余分の作動油を油タンクに戻す必要がある。すなわち、従来の油圧装置では油圧回路が所謂オープン油圧回路であり、エネルギロスが大きく、油温が上昇する問題を有していた。
【0005】
本発明は、上記従来の油圧装置の問題に鑑みてなされたものであり、エネルギロスが少なく作動油の温度上昇が抑制される油圧装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するためになされた本発明の油圧装置は、往動用の第1シリンダ室と、前記第1シリンダ室の受圧面積より小さい受圧面積の復動用の第2シリンダ室と、各シリンダ室を区画するピストン体と、を備える油圧アクチュエータと、正逆両方向に作動油を圧送可能な定容積型主油圧ポンプ、副油圧ポンプ及び、それらのポンプを正逆両方向に回転駆動するサーボモータと、前記第1シリンダ室と前記第2シリンダ室とを前記主油圧ポンプを介して連結するクローズド油圧回路と、前記第1シリンダ室と油タンクとを前記副油圧ポンプを介して連結して前記第1シリンダ室と前記第2シリンダ室の受圧面積の違いによって生じる前記クローズド油圧回路を流れる作動油量の違いを補償するセミクローズド油圧回路と、を有することを特徴とする。
【0007】
油圧アクチュエータがクローズド油圧回路で駆動されるので、エネルギロスが少なく作動油の温度上昇が抑制される。
【0008】
上記油圧装置は、前記油圧アクチュエータを増圧するブーストシリンダを有するとよい。
【0009】
ブーストシリンダの第1ブーストシリンダ室と第2ブーストシリンダ室の受圧面積比だけ油圧アクチュエータを増圧することができる。そのため、油圧アクチュエータの駆動圧を低圧から高圧に変更するのにエネルギーを消費する必要がなく、熱の発生も抑制される。
【0010】
また、前記油タンクは、加圧されているとよい。
【0011】
セミクローズド油圧回路で油タンクから作動油を汲み取ることが容易になり、エネルギロスを一層抑制することができる。
【0012】
また、前記サーボモータは、定速回転駆動されるとよい。
【0013】
サーボモータが定速回転駆動されるので、クローズド油圧回路にカウンターバランス弁を組み込む必要がない。その結果、作動油の温度上昇が一層抑制される。
【発明の効果】
【0014】
油圧アクチュエータがクローズド油圧回路で駆動されるので、負荷の落下にクローズド油圧回路の油圧ポンプがブレーキ(車のエンジンブレーキに類似の)をかける。そのため、負荷の落下を防止するカウンターバランス弁を組み込む必要がなくなり、エネルギロスが少なく作動油の温度上昇が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1に係る油圧装置の概略構成図である。
【図2】実施形態2に係る油圧装置の概略構成図である。
【図3】実施形態2に係る油圧装置の加圧動作を説明する図である。
【図4】実施形態2に係る油圧装置の上昇動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
(実施形態1)本実施形態の油圧装置は、図1に示すように、往動用の第1シリンダ室11と、第1シリンダ室11の受圧面積より小さい受圧面積の復動用の第2シリンダ室12と、シリンダ室11、12を区画するピストン体13と、を備える油圧アクチュエータ1を備えている。また、本実施形態の油圧装置は、正逆両方向に作動油を圧送可能な定容積型主油圧ポンプ21、副油圧ポンプ31及び、それらのポンプ21、31を正逆両方向に回転駆動するサーボモータ4と、第1シリンダ室11と第2シリンダ室12とを主油圧ポンプ21を介して連結するクローズド油圧回路2を備えている。さらに、第1シリンダ室11と油タンク6とを副油圧ポンプ31を介して連結して第1シリンダ室11と第2シリンダ室12の受圧面積の違いによって生じるクローズド油圧回路2を流れる作動油量の違いを補償するセミクローズド油圧回路3を備えている。
【0017】
本実施形態の油圧アクチュエータ1では、ピストン体13が上下に駆動される。ピストン体13が下降するように駆動されてピストン体13に装着されたプレス型5で被加工材8が加圧成型される。
【0018】
例えば、油圧アクチュエータ1の第1シリンダ室11がφ135(13.5cm)の場合、受圧面積S1は、π×6.75=143cmである。また、例えば、ピストン体13のピストンロッドがφ95(9.5cm)の場合、第2シリンダ室12は、φ135(13.5cm)−φ95(9.5cm)の環状であるから、受圧面積S2は、π×(6.75−4.752)=72.2cmである。
【0019】
サーボモータ4は、交流サーボモータで、図示しないシーケンサを含む制御ユニットで所定の回転数(定速回転数)に制御される。また、回転方向が(矢印Aの正回転と矢印Bの逆回転に)制御される。
【0020】
主油圧ポンプ21、副油圧ポンプ31は、例えば、定容積型可逆回転式ピストンポンプであり、例えば、軸が矢印A方向に回転されると作動油がそれぞれ三角形A1、A2方向に吐出される。
【0021】
サーボモータ4の回転は、プーリ4a、4b、4cとアイドラー4dに巻回されたタイミングベルト4eで主油圧ポンプ21と副油圧ポンプ31に伝達される。
【0022】
吐出量は、サーボモータ4に取付けのプーリ4aのピッチ径に対して、主油圧ポンプ21に取付けのプーリ4b、副油圧ポンプ31に取付けのプーリ4cとのピッチ径の比率にて制御した「回転数」×「ポンプ押しのけ容積」である。
【0023】
クローズド油圧回路2は、主油圧ポンプ21と第1シリンダ室11とを直接接続する油圧通路22と、主油圧ポンプ21と第2シリンダ室12とを電磁ポペットバルブ24を介して接続する油圧通路23と、を備えている。
【0024】
油圧通路22は、リリーフバルブ25aを介して油タンク6と接続されている。同様に、油圧通路23は、リリーフバルブ25bを介して油タンク6と接続されている。
【0025】
したがって、油圧通路22の圧力がリリーフバルブ25aの設定圧力を越えると、油圧通路22の作動油の一部は、リリーフバルブ25aを通って油タンク6に流れる。同様に、油圧通路23の圧力がリリーフバルブ25bの設定圧力を越えると、油圧通路23の作動油の一部は、リリーフバルブ25bを通って油タンク6に流れる。なお、27a、27bは、圧力計である。
【0026】
セミクローズド油圧回路3は、副油圧ポンプ31と油タンク6とをリリーフバルブ35の設定圧力にて接続する油圧通路32と、副油圧ポンプ31と油タンク6とを直接接続する油圧通路33と、を備えている。
【0027】
セミクローズド油圧回路3の油圧通路32とクローズド油圧回路2の油圧通路22とはパイロットチェックバルブ34を介して接続されている。また、油タンク6はチェックバルブ36を介して油圧通路32と接続している。なお、37は、圧力計である。
【0028】
油タンク6は、温度計付油面計61、エアーブリーザー62及びマグネットセパレータ63を備えている。
【0029】
上記構成の油圧装置の下降動作及び上昇動作を説明する。尚、動作説明内の数値は全て一例であり、システムの仕様条件等で変更され得る。
<下降動作>サーボモータ4が2250rpmの回転速度で矢印B方向に逆回転されると、主油圧ポンプ21も矢印B方向に逆回転される。すると、回転数1800rpmの主油圧ポンプ21で作動油が油圧アクチュエータ1の第2シリンダ室12から矢印B11→B12と吸い出され、Q1=25.2l/min(=14cc/rev.×1800rpm)の作動油が油圧通路22中に吐出される。
【0030】
同時に、副油圧ポンプ31も矢印B方向に逆回転され、回転数1947rpmの副油圧ポンプ31で油タンク6から作動油が矢印B21→B22→B23→B24→B25と汲み出されて、矢印B26→B27→B28と吐出される。
【0031】
なお、油圧通路32内の圧力がリリーフバルブ35の設定圧力より低いので、矢印B27方向の作動油が交点P2を過ぎて点線矢印B29の方向に流れることはない。
【0032】
油圧通路23中に電磁ポペットバルブ24が配置されているが、切り替える事で作動油は矢印B11→B12と流れる。
【0033】
副油圧ポンプ31の吐出量Q2=27.2l/min(=14cc/rev.×1947rpm)であり、矢印B14方向に流れる作動油は、交点P1を過ぎて矢印B15方向に流れて第1シリンダ室11に供給される作動油量Q3=51.6l/min(≒Q1+Q2)となる。
【0034】
第1シリンダ室11に作動油が1分間に51.6リッター供給されるので、ピストン体13の下降を阻止する力が働かない間は、矢印B0の方向(下方)に速度V0=60mm/sec(={Q3×1000/60/S1}×10)の速度で下降する。
【0035】
第1シリンダ室11に作動油がQ3=51.6l/min供給されても、第2シリンダ室12からは作動油がQ1=25.2l/min(=V0×S2)排出されるだけである。しかし、本実施形態の油圧装置では、セミクローズド油圧回路3でクローズド油圧回路2の油圧通路22にQ3とQ1の差分Q2(=27.2l/min)が供給されるので、ピストン体13は下降する。
【0036】
プレス型5が2tの重量の場合、下降動作中、油圧通路23の圧力は2.7MPa(=W/S2)になる。したがって、従来はピストン体13を定速で下降させるためには、油圧通路23中にカウンターバランス弁を挿入する必要があった。しかし、本実施形態では、クローズド油圧回路2の主油圧ポンプ21の回転数をサーボモータ4で一定に制御しているので、カウンターバランス弁なしでピストン体13を定速下降させることができる。カウンターバランス弁がないので、作動油の温度上昇が抑制される。
【0037】
ピストン体13が下降してプレス型5が下型7に載置された被加工材8に接近すると、図示しないポジションセンサからの信号を受けた制御ユニットでサーボモータ4が低速回転させられ、ピストン体13が低速で下降される。
【0038】
ピストン体13が下降してプレス型5が下型7に載置された被加工材8に当接すると、もはや下降することができず、プレス(加圧)加工が行われる。本実施形態では、リリーフバルブ25aの設定圧力が14MPa(=143kgf/cm)であるので、20.4t(=14MPa×10.2×S1)の荷重でプレスされる。
【0039】
なお、油圧通路22の圧力がリリーフバルブ25aの設定圧力(14MPa)を超えると、作動油Q3の一部は分岐点P3からリリーフバルブ25aを通って油タンク6に流れるので、油圧装置が破損することがない。
<上昇動作>
プレス加工が終了すると、サーボモータ4は、矢印A方向に正回転させられ、主油圧ポンプ21、副油圧ポンプ31も矢印A1、A2方向にそれぞれ正回転させられる。すると、回転数1800rpmの主油圧ポンプ21によって、Q1=25.2l/min(=14cc/rev.×1800rpm)の作動油が油圧通路23中に吐出される。吐出された作動油は電磁ポペットバルブ24を切り替える事で、矢印A15→A16と流れて第2シリンダ室12に供給される。すると、ピストン体13は、矢印A0の方向(上方)に速度V0=60mm/sec(=Q1/S2)の速度で上昇する。同時に、第1シリンダ室11からQ3=51.6l/min(=V0×S1×60/1000/10)の作動油が矢印A11方向に排出される。
【0040】
一方、矢印A2方向に正回転させられた副油圧ポンプ31で油圧通路33に作動油がQ2=27.2l/min(=14cc/rev.×1947rpm)吐出される。したがって、油圧通路22中を矢印A11方向に流れるQ3=51.6l/minの作動油の内、27.2l/min(=Q2)が交点P1で矢印A21方向に分流される。A21方向に分流された作動油は、油圧通路23の圧力で開弁されたパイロットチェックバルブ34を流れて油圧通路32中を矢印A22方向に流れ、副油圧ポンプ31に吸い込まれる。なお、矢印A21方向に流れる作動油が交点P2で点線矢印B29の方向に分流しないのは、油圧通路32の圧力がリリーフバルブ35の設定圧力より低いからである。
【0041】
副油圧ポンプ31に吸い込まれたQ2=27.2l/minの作動油は、矢印A23方向に吐出され、矢印A24→A25→A26→A27→A28と流れ、油タンク6に戻される。
【0042】
上記のように、第1シリンダ室11から排出される作動油の量が第2シリンダ室12に供給される作動油量より多くても、余分の作動油がセミクローズド油圧回路3で油タンク6に戻されるので、交点P1を過ぎて矢印A12方向に流れる作動油Q1=25.2l/min(=Q3―Q2)となる。したがって、ピストン体13は上昇される。
【0043】
本実施形態では、主油圧ポンプ21を1800rpm回転させ、副油圧ポンプ31を1947rpm回転させるのに1台のサーボモータ4でベルト4eを用いて行ったが、サーボモータを2台用いてそれぞれのサーボモータで主油圧ポンプ21を1800rpm回転させ、副油圧ポンプ31を1947rpm回転させてもよい。
(実施形態2)本実施形態の油圧装置は、図2に示すように、実施形態1の油圧装置に油圧アクチュエータを増圧するブーストシリンダと油タンクを加圧する加圧手段とを付加したものである。同一の構成要素には同一の符号を付し説明を省略する。
【0044】
ブーストシリンダ9は、第1ブーストシリンダ室91、第2ブーストシリンダ室92、油圧アクチュエータ1の第1シリンダ室11と連通する第3ブーストシリンダ室93、ブーストピストン体94を備えている。第1ブーストシリンダ室91は、ソレノイドバルブ20を介して油圧通路22の交点P4に接続されている。第2ブーストシリンダ室92は、ソレノイドバルブ20と油圧通路40を介して油タンク6に接続されている。第1ブーストシリンダ室91がφ140(14cm)の場合、受圧面積S11は、π×7.0=153.8cm2で、第3ブーストピストン体94がφ63(6.3cm)の場合、第3ブーストシリンダ室93の受圧面積S13は、π×3.152=31.16cmであり、ブースト比S11:S13は4.93:1である。
【0045】
油圧通路22の交点P4は、ロジックバルブ32を介して第1シリンダ室11と接続されている。ロジックバルブ32は、油圧通路22と接続される通路接続室32a、第1シリンダ室11に接続されるシリンダ接続室32b、背圧室32c、ポペット弁体32dを備えている。ポペット弁体32dは、背圧室32cの圧力を背面で受け、通路接続室32aとシリンダ接続室32bとの間を遮断および連通し且つ移動量に応じて開口面積を変化させるようにハウジング内に摺動自在に配置されている。
【0046】
シリンダ接続室32bと背圧室32cとは、オリフィス31を介してパイロット通路接続されている。また、シリンダ接続室32bと背圧室32cとは、パイロットチェックバルブ30を介して油圧通路40とパイロット通路接続されている。
【0047】
なお、シリンダ接続室32bに接続される33はストップバルブであり、34は圧力計である。
【0048】
加圧手段10は、例えば設定圧力0.15MPaのミストセパレータレギュレータ101、クイックエキゾーストバルブ102、サイレンサ103を備えており、油タンク6の油面を0.15MPa加圧する。
【0049】
上記構成の油圧装置の下降動作、加圧動作及び上昇動作を説明する。尚、動作説明内の数値は全て一例であり、システムの仕様条件等で変更され得る。
<下降動作> 図2に示すように、サーボモータ4が例えば2250rpmの回転速度で矢印B方向に逆回転されると、主油圧ポンプ21も矢印B方向に逆回転される。すると、回転数1800rpmの主油圧ポンプ21は油圧アクチュエータ1の第2シリンダ室12から作動油を矢印B11→B12と吸い込み、Q1=25.2l/min(=14cc/rev.×1800rpm)の作動油を油圧通路22中に吐出する。
【0050】
同時に、副油圧ポンプ31も矢印B方向に逆回転され、回転数1947rpmの副油圧ポンプ31で油タンク6から作動油が矢印B21→B22→B23→B24→B25と汲み出されて、矢印B26→B27→B28と吐出される。
【0051】
なお、油圧通路32内の圧力がリリーフバルブ35の設定圧力より低いので、矢印B27方向の作動油が交点P2を過ぎて点線矢印B29の方向に流れることはない。
【0052】
また、本実施形態の油圧装置では、油タンク6が加圧手段10で加圧されているので油タンク6から作動油を矢印B21→B22→B23→B24→B25と副油圧ポンプ31が吸い込む際、キャビテーションの発生がなく、スムーズに汲み出される。
【0053】
油圧通路23中に電磁ポペットバルブ24が配置されているが、切り替える事で作動油は矢印B11→B12と流れる。
【0054】
副油圧ポンプ31の吐出量Q2=27.2l/min(=14cc/rev.×1947rpm)であり、矢印B14方向に流れる作動油は、交点P1を過ぎて矢印B15方向に流れて第1シリンダ室11に供給される作動油量Q3=51.6l/min(≒Q1+Q2)となる。
【0055】
矢印B15方向に流れる作動油がロジックバルブ32の通路接続室32aに供給されると、ポペット弁体32dが背圧室32cの圧力に抗して開弁され、ポートBがポートAと連通される。すると、作動油は矢印B16方向へと流れ、第1シリンダ室11に作動油が供給される。すると、ピストン体13の下降を阻止する力が働かない間は、矢印B0の方向(下方)に速度V0=60mm/sec(={Q3×1000/60/S1}×10)の速度で下降する。
【0056】
なお、第1ブーストシリンダ室91に連通するソレノイドバルブ20のBポートが閉じているので、第1シリンダ室11に作動油が供給されても第3ブーストシリンダ室93には供給されない。
【0057】
シリンダ接続室32bを出た作動油は、一部オリフィス31を通り、交点P5の圧力で開弁されたチェックバルス30を通り点線矢印C1→C2→C3と流れる。
【0058】
第1シリンダ室11に作動油がQ3=51.6l/min供給されても、第2シリンダ室12からは作動油がQ1=25.2l/min(=V0×S2)排出されるだけである。しかし、本実施形態の油圧装置では、セミクローズド油圧回路3でクローズド油圧回路2の油圧通路22にQ3とQ1の差分Q2(=27.2l/min)が供給されるので、ピストン体13は下降する。
【0059】
ピストン体13が下降してプレス型5が下型7に載置された被加工材8に接近すると、図示しないポジションセンサからの信号を受けた制御ユニットでサーボモータ4が低速回転させられ、ピストン体13が低速で下降する。
<加圧動作>ピストン体13が下降してプレス型5が下型7に載置された被加工材8に当接すると、もはや下降することができず、図3に示すように、加圧が行われる。
【0060】
図示しない制御ユニットが図示しないセンサーからピストン体13の下死点信号を受けると、制御ユニットはソレノイドバルブ20を切り替え、交点P4と第1ブーストシリンダ室92を連通するようにする。同時に第2ブーストシリンダ室92と油タンク6を連通するようにする。
【0061】
すると、ピストン体13が下降できずに停止しているので、油圧通路22を矢印B15方向に流れる作動油は、もはや第1シリンダ室11に流れ込むことができず、交点P4から矢印B31方向に流れ、ソレノイドバルブ20のPポートに供給される。Pポートに供給された作動油は、Bポートから排出され、矢印B32方向に流れて第1ブーストシリンダ室91に供給され、ブーストピストン体92が下方に押される。
【0062】
本実施形態では、リリーフバルブ25aの設定圧力が14MPa(=143kgf/cm)であるので、ピストン体13は、20.4t(=14MPa×10.2×S1)の荷重で下方に押される。すると、第3ブーストシリンダ室93の作用面積S13が31.2cmと、第1ブーストシリンダ室91の作用面積S11の約1/5であるので、第1シリンダ室11には約100t(=20.4t×5)の圧力がかかる。
【0063】
なお、第2シリンダ室12と電磁ポペットバルブ24の通路間に圧力が発生すると、パイロットチェックバルブ30が開かれ、ロジックバルブ32のポペット弁が閉まらない為、増圧が出来なくなる。その為、電磁ポペットバルブ24を切り替えておく。
【0064】
第1ブーストシリンダ室91に作動油が供給され、ブーストピストン体94が下降すると、第2ブーストシリンダ室92の作動油は矢印A31方向に流され、ソレノイドバルブ20のAポート→Tポートを通り、矢印A32方向に流され、油タンク6に戻される。
【0065】
一方、セミクローズド油圧回路33は、以下のように動作する。加圧動作中、副油圧ポンプ31で油タンク6から作動油が矢印B21方向に汲み出される。矢印B21方向に流れる作動油は、交点P6で矢印B20方向と矢印B10方向に分流される。矢印B20方向に流れる作動油は、矢印B22→B23→B24→B25と流れ、副油圧ポンプ31に吸入される。副油圧ポンプ31に吸入された作動油は、矢印B26方向に吐出され、矢印B27→B29と流される。
【0066】
交点P6を過ぎて矢印B10方向に流れる作動油は、チェックバルブ26aを流れて矢印B12方向に流され、主油圧ポンプ21に吸引される。主油圧ポンプ21に吸引された作動油は、矢印B13方向に吐出され、油圧通路22中を矢印B14→B15と流される。
<上昇動作>プレス加工が終了すると、図示しない制御ユニットでソレノイドバルブ20が図4に示すように切り替えられ(遮断され)、サーボモータ4が矢印A方向に正回転させられる。すると、主油圧ポンプ21、副油圧ポンプ31も矢印A方向にそれぞれ正回転させられる。すると、回転数1800rpmの主油圧ポンプ21によって、Q1=25.2l/min(=14cc/rev.×1800rpm)の作動油が油圧通路23中に吐出される。吐出された作動油は電磁ポペットバルブ24を切り替える事で、矢印A15→A16と流れて第2シリンダ室12に供給される。すると、ピストン体13は、矢印A0の方向(上方)に速度V0=60mm/sec(={Q1×1000/60/S2}×10)の速度で上昇する。同時に、第1シリンダ室11からQ3=51.6l/min(=V0×S1×60/1000/10)の作動油が矢印A11方向に排出される。
【0067】
矢印A11方向に排出された作動油がロジックバルブ32のシリンダ接続室32bに供給されると、ポペット弁体32dが背圧室32cの圧力に抗して開弁され、ポートAとポートBが連通される。すると、作動油は矢印A11a方向へと流れる。
【0068】
シリンダ接続室32bに供給される作動油は、一部オリフィス31を通り、交点P5の圧力で開弁されたチェックバルス30を通り点線矢印C1→C2→C3と流れる。
【0069】
一方、矢印A方向に正回転させられた副油圧ポンプ31で油圧通路33に作動油がQ2=27.2l/min(=14cc/rev.×1947rpm)吐出される。したがって、油圧通路22中を矢印A11a方向に流れるQ3=51.6l/minの作動油の内、27.2l/min(=Q2)が交点P1で矢印A21方向に分流される。A21方向に分流された作動油は、油圧通路23の圧力で開弁されたパイロットチェックバルブ34を通って油圧通路32中を矢印A22方向に流れ、副油圧ポンプ31に吸い込まれる。なお、矢印A21方向に流れる作動油が交点P2で点線矢印B29の方向に分流されないのは、油圧通路32の圧力がリリーフバルブ35の設定圧力より低いからである。
【0070】
副油圧ポンプ31に吸い込まれたQ2=27.2l/minの作動油は、矢印A23方向に吐出され、矢印A24→A25→A26→A27→A28と流れ、油タンク6に戻る。
【0071】
上記のように、第1シリンダ室11から排出される作動油の量が第2シリンダ室12に供給される作動油量より多くても、余分の作動油がセミクローズド油圧回路3で油タンク6に戻されるので、交点P1を過ぎて矢印A12方向に流れる作動油Q1=25.2l/min(=Q3―Q2)となる。したがって、ピストン体13は上昇される。
【符号の説明】
【0072】
1・ ・・・・・・・・ ・・油圧アクチュエータ
11・・・・・・・・・・第1シリンダ室
12・・・・・・・・・・第2シリンダ室
13・・・・・・・・・・ピストン体
2・・・・・・・・・・・・クローズド油圧回路
21・・・・・・・・・・主油圧ポンプ
3・・・・・・・・・・・・セミクローズド油圧回路
31・・・・・・・・・・副油圧ポンプ
4・・・・・・・・・・・・サーボモータ
6・・・・・・・・・・・・油タンク
9・・・・・・・・・・・・ブーストシリンダ
10・・・・・・・・・・・加圧手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
往動用の第1シリンダ室と、前記第1シリンダ室の受圧面積より小さい受圧面積の復動用の第2シリンダ室と、各シリンダ室を区画するピストン体と、を備える油圧アクチュエータと、
正逆両方向に作動油を圧送可能な定容積型主油圧ポンプ、副油圧ポンプ及び、それらのポンプを正逆両方向に回転駆動するサーボモータと、
前記第1シリンダ室と前記第2シリンダ室とを前記主油圧ポンプを介して連結するクローズド油圧回路と、
前記第1シリンダ室と油タンクとを前記副油圧ポンプを介して連結して前記第1シリンダ室と前記第2シリンダ室の受圧面積の違いによって生じる前記クローズド油圧回路を流れる作動油量の違いを補償するセミクローズド油圧回路と、
を有することを特徴とする油圧装置。
【請求項2】
前記油圧アクチュエータを増圧するブーストシリンダを有する請求項1に記載の油圧装置。
【請求項3】
前記油タンクを加圧する加圧手段を有する請求項1または2に記載の油圧装置。
【請求項4】
前記サーボモータは、定速回転駆動される請求項1から3のいずれか1項に記載の油圧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−102855(P2012−102855A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254470(P2010−254470)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(597156236)日邦興産株式会社 (4)
【Fターム(参考)】