説明

油圧駆動装置および油圧駆動装置を備えた作業機械

【課題】従来よりも簡単かつ安価な構成で油圧ポンプの吐出油量を制御してエンジンの負荷を低減させることができ、エンジン過負荷によるエンジンストールを防止することができる油圧駆動装置を提供する。
【解決手段】油圧駆動装置は、油圧ポンプPの容量を変化させて吐出油量を制御するポンプ制御装置150とを有し、このポンプ制御装置150は、油圧ポンプPおよびパイロットポンプ70の吐出油圧を容量制御油圧として用いて油圧ポンプPの可変容量を変化させるサーボピストン151と、容量制御油圧としてパイロットポンプ70の吐出油圧をサーボピストン151に導く油路96から分岐して油タンクTに繋がる油路97に設けられ、作業者の操作入力に応じて油路97を開閉して油タンクTへ流れる圧油流量を調整することにより容量制御油圧を調圧する可変絞り弁155とを備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧アクチュエータにより駆動される建設用作業装置により所要の作業を行うように構成される作業機械に搭載される油圧駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーショベル等の作業機械は、一般的に原動機としてディーゼルエンジンを備え、このエンジンにより油圧ポンプを駆動し、油圧ポンプから吐出される作動油(圧油)により油圧アクチュエータを駆動して所要の作業を行うように構成されている。このような作業機械において、エンジン回転数は油圧ポンプの負荷に応じて常に変動しており、作業を行う際に大きな力や速度を出力するために油圧ポンプの吐出流量を最大にした場合には、エンジンに大きな負荷がかかってエンジン回転数が低下し、さらに油圧ポンプの入力トルクがエンジンの出力トルクよりも大きくなるとエンジンストールが発生する虞がある。このため、エンジンの過負荷によるエンジンストールを防止する観点から、油圧ポンプの入力トルクが予め設定した最大値を超えないように油圧ポンプの斜板の傾転角(押し退け容積)を調整し、入力トルクの制限を行う制御が行われている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003‐21102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようにエンジンストール防止機能を備えた作業機械の油圧駆動装置では、従来、油圧ポンプの吐出油圧を減圧弁を用いて減圧したものを、油圧ポンプの斜板の傾転角調整部に供給して油圧ポンプの吐出油量を制御するように構成されているが、減圧弁自体が高価であり、さらに圧力調整が不便であるという課題がある。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、従来よりも簡単かつ安価な構成で油圧ポンプの吐出油量を制御して、エンジン過負荷によるエンジンストールを防止することができる油圧駆動装置、およびこの油圧駆動装置を備えた作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る油圧駆動装置は、可変容量型の第1油圧ポンプ(例えば、実施形態における油圧ポンプP)と、前記第1油圧ポンプから吐出される圧油により駆動される油圧アクチュエータ(例えば、実施形態におけるブームシリンダ83)と、前記第1油圧ポンプから前記油圧アクチュエータに供給される圧油流量を制御する流量制御手段(例えば、実施形態におけるブーム制御バルブ63)と、前記流量制御手段を駆動させるための圧油を吐出する第2油圧ポンプ(例えば、実施形態におけるパイロット油圧ポンプ70)と、前記第1油圧ポンプの容量を変化させて前記第1油圧ポンプの吐出油量を制御するポンプ制御手段(例えば、実施形態におけるポンプ制御装置150,250)とを有して構成される。その上で、前記ポンプ制御手段は、前記第1油圧ポンプの吐出油圧および前記第2油圧ポンプの吐出油圧を容量制御油圧として用いて前記第1油圧ポンプの可変容量を変化させるポンプ容量制御手段(例えば、実施形態におけるサーボピストン151,251)と、前記容量制御油圧として前記第2油圧ポンプの吐出油圧を前記ポンプ容量制御手段に導く油路から分岐して油タンクに繋がる分岐油路に設けられ、作業者の操作入力に応じて前記分岐油路を開閉して前記油タンクへ流れる圧油流量を調整することにより前記容量制御油圧を調圧する容量制御調圧手段(例えば、実施形態における可変絞り弁155,255)とを備えて構成される。
【0007】
なお、上記構成の油圧駆動装置において、作業者のアクチュエータ操作入力に応じて前記第2油圧ポンプから前記流量制御手段に供給されるパイロット油圧を制御するパイロット油圧制御手段(例えば、実施形態におけるブームリモコンバルブ53)を備え、前記ポンプ容量制御手段は、前記第2油圧ポンプから前記パイロット油圧制御手段に供給される油圧を前記容量制御油圧として用いるように構成されることが好ましい。または、前記ポンプ容量制御手段は、前記パイロット油圧制御手段により制御されて前記流量制御手段に供給される油圧を前記容量制御油圧として用いるように構成されることが好ましい。
【0008】
また、上記目的を達成するため、第2の本発明に係る作業機械は、上記のように構成された油圧駆動装置と、前記油圧アクチュエータにより駆動される建設用作業装置(例えば、実施形態におけるショベル装置30)とを備え、前記建設用作業装置により所要の作業を行うように構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る油圧駆動装置によれば、流量制御手段に作動油を供給する第2油圧ポンプの吐出油圧をポンプ容量制御手段に導く油路から分岐して油タンクに繋がる分岐油路に設けられ、作業者の操作入力に応じて分岐油路を開閉して油タンクへ流れる圧油流量を調整することにより、油圧アクチュエータへ作動油を供給する第1油圧ポンプの吐出油量を制御するための容量制御油圧を調圧する容量制御調圧手段を備えて構成される。このような構成により、複雑な構成であって高価な減圧弁を用いた従来の構成よりも、簡単かつ安価な構成で油圧ポンプの吐出油量を制御してエンジンの負荷を低減させることができ、エンジン過負荷によるエンジンストールを防止することができる。
【0010】
なお、上記油圧駆動装置において、第2油圧ポンプからパイロット油圧制御手段に供給される油圧を容量制御油圧として用いるように構成されることが好ましく、このように構成すると、上記同様の効果を達成した上で、油圧回路構成をより簡単な構成とすることができる。
【0011】
また、上記油圧駆動装置において、作業者のアクチュエータ操作入力に応じて駆動されるパイロット油圧制御手段により制御されて流量制御手段に供給される油圧を容量制御油圧として用いるように構成されてもよく、このように構成すると、特定の油圧アクチュエータの操作時のみエンジンの負荷を低減させることができる。
【0012】
第2の本発明に係る作業機械によれば、上記油圧駆動装置を備えて構成されるため、上述したように従来の構成よりも、簡単かつ安価な構成で油圧ポンプの吐出油量を制御してエンジンの負荷を低減させることができ、エンジン過負荷によるエンジンストールを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る油圧駆動装置の第1実施形態を示す油圧回路図である。
【図2】本発明に係る油圧駆動装置を備えた作業機械の一例として示すパワーショベルの外観斜視図である。
【図3】上記パワーショベルにおける駆動制御系のブロック図である。
【図4】本発明に係る油圧駆動装置の第2実施形態を示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。本発明に係る油圧駆動装置を備えて作業機械の一例として、パワーショベルPSの外観斜視図を図2に示し、このパワーショベルPSにおける駆動制御系のブロック図を図3に示しており、まず、これらの図面を参照してパワーショベルPSの概要構成を説明する。
【0015】
パワーショベルPSは、走行可能に構成された走行装置1と、走行装置1に水平旋回可能に設けられた旋回台2と、旋回台2に取り付けられた作業装置3とを有して構成される。
【0016】
走行装置1は、駆動輪11、従動輪12およびこれら両輪に掛け回された履帯13等からなるクローラ機構10を、車体フレーム15の左右に設けて構成される。左右のクローラ機構10,10には、各々駆動輪11,11を回転駆動する左走行モータ81aおよび右走行モータ81bが設けられており、左右の走行モータ81a,81bの回転(回転方向および回転速度)を制御することにより任意方向に走行可能に構成されている。
【0017】
車体フレーム15の中央上部には、図示省略する旋回駆動機構を介して旋回台2の本体フレーム20が水平旋回自在に取り付けられ、旋回駆動機構に設けられた旋回モータ86を正転または逆転させることにより、走行装置1に対して旋回台2を右旋回(平面視における時計回り)または左旋回(平面視における反時計回り)に水平旋回可能になっている。本体フレーム20には、前方に突出して作業装置ブラケット21が設けられており、ここに作業装置3としてショベル装置30が取り付けられている。
【0018】
ショベル装置30は、作業装置ブラケット21に上下揺動自在に枢結され、ブームシリンダ83の伸縮作動により起伏動可能に設けられたブーム33と、ブーム33の先端部に上下揺動自在に枢結され、アームシリンダ84の伸縮作動により屈伸動可能に設けられたアーム34と、アーム34の先端部に上下揺動自在に枢結され、バケットシリンダ85の伸縮作動により揺動可能に設けられたバケット35とを有して構成される。
【0019】
旋回台2の本体フレーム20上には、作業者が搭乗するオペレータキャビン25が設けられている。オペレータキャビン25の内部には、作業者が着座するオペレータシート26と、走行装置1の作動操作を行う左右一対の走行操作レバー27a,27bと、旋回台2および作業装置3(ショベル装置30)の作動操作を行う左右の作業操作レバー28a,28bと、詳細は後述するエンジン負荷設定ダイヤル29と、各操作レバーおよび設定ダイヤルに対する操作に基づいて各部の作動を制御する制御コントローラ40が設けられている。また、オペレータキャビン後方の車体カバー22内には、エンジンE、およびエンジンEにより駆動される油圧ポンプ等からなる油圧駆動装置が設けられている。
【0020】
走行操作レバー27a,27bおよび作業操作レバー28a,28bには、各操作レバーの位置状態(中立位置からの傾倒操作方向及び操作量)を検出する操作検出器27as,27bs,28as,28bsがそれぞれ設けられており、各操作検出器により検出された操作信号が制御コントローラ40に入力される。また、エンジン負荷設定ダイヤル29には、ダイヤルの位置状態を検出する操作検出器29sが設けられており、この検出器29sにより検出された操作信号が制御コントローラ40に入力される。なお、操作検出器は、各操作装置の位置状態を検出可能な構成であればよく、例えば、油圧式の操作装置の場合には、各操作装置の位置状態に応じて変動するパイロット信号圧を検出する圧力センサを用いて構成され、電気式の操作装置の場合には、操作装置の位置状態に応じて変動する電気抵抗を検出するポテンショメータを用いて構成される。
【0021】
制御コントローラ40は、走行操作レバー27a,27bおよび作業操作レバー28a,28bの各操作検出器から入力される操作信号に基づいて指令信号を生成し、その指令信号を後述する油圧駆動装置に出力して走行装置1や旋回台2、作業装置3等の各部の作動を制御する。
【0022】
このように概要構成されたパワーショベルPSでは、左右の走行操作レバー27a,27bを中立位置から前・後に傾倒操作することにより、制御コントローラ40から油圧駆動装置に指令信号を出力し、その指令信号に基づいて油圧駆動装置が左右の走行モータ81a,81bに供給する圧油の供給量および供給方向を制御し、車両を任意方向に移動させることができる。また、左右の作業操作レバー28a,28bを中立位置から前・後・左・右に傾倒操作することにより、制御コントローラ40からの指令信号に基づいて油圧駆動装置が旋回モータ86および作業装置3の各シリンダ83,84,85に供給する圧油の供給量および供給方向を制御し、ショベル装置30による地盤の掘削作業等を行うことができる。以下、本発明に係る油圧駆動装置の構成について2つの実施形態を説明する。
【0023】
まず、本発明に係る油圧駆動装置の第1の実施形態について、図1および図3を用いて説明する。第1実施形態に係る油圧駆動装置100は、油圧ポンプP、パイロット油圧ポンプ70(以下、パイロットポンプ70と称する)、リモコンバルブ群50、制御バルブ群60およびポンプ制御装置150を有して構成される。
【0024】
油圧ポンプPは、入力軸(ポンプ軸)がエンジンEの出力軸に連結され、エンジンEの駆動力が伝達されて駆動されるように構成されており、作動油が貯留されている油タンクTから作動油を吸引してこの作動油を圧送し、この圧送された作動油(圧油)が制御バルブ群60を介して左右の走行モータ81a,81b等の油圧アクチュエータに供給されて、当該油圧アクチュエータが駆動される。また、油圧ポンプPは、斜板式の可変容量型油圧ポンプであり、ポンプ制御装置150により斜板Sの傾転角を変化させる制御が行われることにより、油圧ポンプPからの圧油の吐出流量が増減されるように構成されている。
【0025】
パイロットポンプ70は、油圧ポンプPと同様に入力軸(ポンプ軸)がエンジンEの出力軸に連結され、エンジンEの駆動力が伝達されて駆動されるように構成されており、油タンクTから作動油を吸引してこの作動油を圧送し、この圧送された作動油(圧油)がリモコンバルブ群50を介して制御バルブ群60にパイロット圧として供給されて、制御バルブ群60が駆動される。
【0026】
リモコンバルブ群50は、各操作レバーの傾倒操作により制御コントローラ40から出力される指令信号を受けて駆動される複数の電磁比例弁からなり、左走行操作レバー27aの傾倒操作により駆動される左走行リモコンバルブ51aと、右走行操作レバー27bの傾倒操作により駆動される右走行リモコンバルブ51bと、左右の作業操作レバー28a,28bの傾倒操作により駆動されるブームリモコンバルブ53、アームリモコンバルブ54、バケットリモコンバルブ55および旋回リモコンバルブ56とを有して構成され、パイロットポンプ70から供給される作動油圧(パイロット圧)を各操作レバーの操作方向および操作量に応じて制御バルブ群60の各制御バルブに出力する。なお、図1においては、左右の走行リモコンバルブ51a,51bおよび旋回リモコンバルブ56の図示は省略し、ブームリモコンバルブ53、アームリモコンバルブ54およびバケットリモコンバルブ55のみを示している。
【0027】
制御バルブ群60は、左走行リモコンバルブ51aから出力されたパイロット圧により駆動される左走行制御バルブ61aと、右走行リモコンバルブ51bから出力されたパイロット圧により駆動される右走行制御バルブ61bと、ブームリモコンバルブ53から出力されたパイロット圧により駆動されるブーム制御バルブ63と、アームリモコンバルブ54から出力されたパイロット圧により駆動されるアーム制御バルブ64と、バケットリモコンバルブ55から出力されたパイロット圧により駆動されるバケット制御バルブ65と、旋回リモコンバルブ56から出力されたパイロット圧により駆動される旋回制御バルブ66とを有して構成され、油圧ポンプPから吐出される作動油(圧油)を各油圧アクチュエータに供給する制御を行う。なお、図1においては、左右の走行制御バルブ61a,61bおよび旋回制御バルブ66の図示は省略し、ブーム制御バルブ63、アーム制御バルブ64およびバケット制御バルブ65のみを示している。
【0028】
ポンプ制御装置150は、サーボピストン151、可変絞り弁155および固定絞り弁156を有して構成される。油圧ポンプPと各制御バルブとを繋ぐ油路90は、図1に示すように分岐して、油路91を介してサーボピストン151の第1油室152に接続される。そのため、油圧ポンプPから吐出される作動油(圧油)は、各制御バルブを介して各油圧アクチュエータに供給されるとともに、油圧ポンプPの斜板Sの傾転角を制御するサーボピストン151の第1油室152に供給されるようになっている。
【0029】
パイロットポンプ70と各リモコンバルブとを繋ぐ油路95は、図1に示すように分岐して、油路96を介してサーボピストン151の第2油室153に接続される。そのため、パイロットポンプ70から吐出される作動油(圧油)は、各リモコンバルブを介して各制御バルブに供給されるとともに、油路96を介してサーボピストン151の第2油室153に供給されるようになっている。また、油路96は、図1に示すように分岐して、油路97を介して油タンクTに接続されており、この油路97に可変絞り弁155が設けられ、油路96,97の接続点よりも上流側の油路96に固定絞り弁156が設けられている。
【0030】
可変絞り弁155は、油路96から分岐して油タンクTに繋がる油路97に設けられ、絞り部分の開口面積(絞り開度)を変化させることにより、油路96から油路97を介して油タンクTに流れる圧油の流量を制御可能に構成されている。この可変絞り弁155は、オペレータキャビン25内に設けられたエンジン負荷設定ダイヤル29の操作に応じて制御コントローラ40から出力される指令信号により、絞り開度を変更可能に構成されている。このため、エンジン負荷設定ダイヤル29の操作に応じて可変絞り弁155の絞り開度を変化させることにより、油路96から油路97を介して油タンクTに流れる圧油の流量を変化させることで、油路96を介してサーボピストン151に供給される作動圧を制御することができるようになっている。
【0031】
固定絞り弁156は、パイロットポンプ70と各リモコンバルブとを繋ぐ油路95から分岐した油路96に設けられ、予め設定された絞り開度により、油路95から油路96に流れる圧油の流量を規制するように構成されている。この固定絞り弁156が油路95から油路96に流れる圧油の流量を規制することにより、パイロットポンプ70から吐出され油路95を介して各リモコンバルブに供給される圧油を所定圧(設定圧)に保持することができるようになっている。
【0032】
サーボピストン151では、第1油室152が油路91,90を介して油圧ポンプPに接続され、第2油室153が油路96,95を介してパイロットポンプ70に接続されている。このため、第1油室152には、油圧ポンプPの吐出圧が油路90,91を介して常時作用している。さらに、第2油室153には、パイロットポンプ70の吐出圧が油路95,96を介し可変絞り弁155により調整されて常時作用している。そして、第1および第2油室152,153に作用する油圧力に応じてサーボピストン151がバネ154の付勢力に抗して移動することにより、油圧ポンプPの斜板Sの傾転角を変化させて、油圧ポンプPの吐出流量を制御することができるようになっている。
【0033】
パイロットポンプ70と各リモコンバルブとを繋ぐ油路95には、この油路95から分岐して油タンクTに繋がるリリーフ油路98が設けられている。このリリーフ油路98には、パイロットポンプ70から吐出され油路95を介して各リモコンバルブに供給される圧油が所定圧(設定圧)を超えないように調整するリリーフ弁75が設けられている。
【0034】
このように構成される油圧駆動装置100の作動について、作業装置3(ショベル装置30)の各シリンダ83〜85を伸縮駆動させてショベル装置30により地盤の掘削作業等を行う場合について説明する。まず、左右の作業操作レバー28a,28bが操作されると、各操作レバーの操作検出器28as,28bsから操作信号が制御コントローラ40に入力され(図3を参照)、制御コントローラ40は各操作レバーの操作方向および操作量に応じた指令信号をブームリモコンバルブ53、アームリモコンバルブ54およびバケットリモコンバルブ55のそれぞれに出力する。
【0035】
上記指令信号を受けた各リモコンバルブ53〜55は、パイロットポンプ70から供給された作動油圧(パイロット圧)をパイロット油路を介してブーム制御バルブ63、アーム制御バルブ64およびバケット制御バルブ65のそれぞれに出力する。そして、各制御バルブ63〜65は、上記パイロット圧に応じて駆動され、油圧ポンプPから吐出される圧油をブームシリンダ83、アームシリンダ84およびバケットシリンダ85のそれぞれに供給して各シリンダを伸縮駆動させる。このように各シリンダ83〜85を伸縮駆動させてブーム33、アーム34およびバケット35をそれぞれ揺動させ、ショベル装置30により地盤の掘削作業等を行うことができる。
【0036】
ところで、油圧ポンプPおよびパイロットポンプ70を駆動させるエンジンEの出力トルクは、エンジンEを取り巻く環境で大きく変わってくる。例えば、気圧が低い高地などで作業を行う場合、エンジンEの吸入空気量が平地に比べて減少するため、燃料濃度が濃くなって不完全燃焼となることにより、エンジンEの燃焼効率が悪くなった結果、エンジンEの出力トルクが低下する傾向にある。このため、各ポンプP,70の入力トルクがエンジンEの出力トルクよりも大きくなって、エンジンストールが発生し易い環境下での作業となる。
【0037】
そこで、このような作業環境下の場合には、オペレータキャビン25内に設けられたエンジン負荷設定ダイヤル29を操作してエンジンEの負荷を低減させることができるようになっている。まず、エンジン負荷設定ダイヤル29を操作して可変絞り弁155の絞り開度を小さくすると、油路96から油路97を介して油タンクTに流れる油量が減少する。そのため、パイロットポンプ70から吐出され油路96を介してサーボピストン151の第1油室152に供給される圧油が増大して、サーボピストン151に作用する油圧力が大きくなり、この油圧力に応じてサーボピストン151がバネ154の付勢力に抗して図1における左方向に移動する。そして、サーボピストン151が左方向へ移動することにより、油圧ポンプPの斜板Sの傾転角が小さくなって油圧ポンプPの吐出流量が減少される。したがって、油圧ポンプPの入力トルクが小さくなり、これによりエンジンEの負荷を低減させることができ、エンジン過負荷によるエンジンストールを防止することができる。
【0038】
次に、本発明に係る油圧駆動装置の第2実施形態について、図3および図4を用いて説明する。なお、上記の第1実施形態と同一の構成部材については、同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。第2実施形態に係る油圧駆動装置200は、油圧ポンプP、パイロットポンプ70、リモコンバルブ群50、制御バルブ群60およびポンプ制御装置250を有して構成される。
【0039】
なお、図4においては、左右の走行リモコンバルブ51a,51bおよび旋回リモコンバルブ56の図示は省略し、ブームリモコンバルブ53、アームリモコンバルブ54およびバケットリモコンバルブ55のみを示している。また、図4においては、左右の走行制御バルブ61a,61bおよび旋回制御バルブ66の図示は省略し、ブーム制御バルブ63、アーム制御バルブ64およびバケット制御バルブ65のみを示している。
【0040】
ポンプ制御装置250は、サーボピストン251、可変絞り弁255、固定絞り弁256およびシャトル弁261〜265を有して構成される。油圧ポンプPと各制御バルブとを繋ぐ油路90は、図4に示すように分岐して、油路291を介してサーボピストン251の第1油室252に接続される。そのため、油圧ポンプPから吐出される作動油(圧油)は、各制御バルブを介して各油圧アクチュエータに供給されるとともに、油圧ポンプPの斜板Sの傾転角を制御するサーボピストン251の第1油室252に供給されるようになっている。
【0041】
ブームリモコンバルブ53とブーム制御バルブ63とを繋ぐパイロット油路57,57′、アームリモコンバルブ54とアーム制御バルブ64とを繋ぐパイロット油路58,58′、およびバケットリモコンバルブ55とバケット制御バルブ65とを繋ぐパイロット油路59,59′は、図4に示すように、シャトル弁261〜265および油路296を介してサーボピストン251の第2油室253に接続されている。そのため、パイロットポンプ70から吐出される作動油(圧油)は、各リモコンバルブを介して各制御バルブに供給されるとともに、各制御バルブのパイロット油路からシャトル弁261〜265および油路296を介してサーボピストン251の第2油室253に供給されるようになっている。また、油路296は、図4に示すように分岐して、油路297を介して油タンクTに接続されており、この油路297に可変絞り弁255が設けられている。
【0042】
シャトル弁261〜265はいずれも、作用する油圧のうち高い方の油圧を油路296に導くように構成されている。このため、ブーム制御バルブ63のパイロット油路57,57′、アーム制御バルブ64のパイロット油路58,58′およびバケット制御バルブ65のパイロット油路59,59′内の油圧のうち最も高い圧の圧油が油路296を介してサーボピストン251の第2油室253に供給されるようになっている。
【0043】
なお、図4において図示を省略した左右の走行リモコンバルブ51a,51bと左右の走行制御バルブ61a,61bとを繋ぐパイロット油路、および旋回リモコンバルブ56と旋回制御バルブ66とを繋ぐパイロット油路にはそれぞれ、シャトル弁が設けられており、各パイロット油路がこれらのシャトル弁および油路296を介してサーボピストン251の第2油室253に接続されている。
【0044】
可変絞り弁255は、油路296から分岐して油タンクTに繋がる油路297に設けられ、絞り部分の開口面積(絞り開度)を変化させることにより、油路296から油路297を介して油タンクTに流れる圧油の流量を制御可能に構成されている。この可変絞り弁255は、オペレータキャビン25内に設けられたエンジン負荷設定ダイヤル29の操作に応じて制御コントローラ40から出力される指令信号により、絞り開度を変更可能に構成されている。このため、エンジン負荷設定ダイヤル29の操作に応じて可変絞り弁255の絞り開度を変化させることにより、油路296から油路297を介して油タンクTに流れる圧油の流量を変化させることで、油路296を介してサーボピストン251に供給される作動圧を制御することができるようになっている。
【0045】
固定絞り弁256は、油路296における油路297との接続点よりもパイロット油路側の位置に設けられ、予め設定された絞り開度により、各パイロット油路から油路296に流れる圧油の流量を規制するように構成されている。この固定絞り弁256がパイロット油路から油路296に流れる圧油の流量を規制することにより、パイロットポンプ70から吐出され各リモコンバルブを介して各制御バルブに供給される圧油を所定圧(設定圧)に保持することができるようになっている。
【0046】
サーボピストン251では、第1油室252が油路291,90を介して油圧ポンプPに接続され、第2油室253が油路296、固定絞り弁256、シャトル弁261〜265、制御バルブ63〜65のパイロット油路、リモコンバルブ53〜55および油路95を介してパイロットポンプ70に接続されている。このため、第1油室252には、油圧ポンプPの吐出圧が油路90,291を介して常時作用している。さらに、第2油室253には、パイロットポンプ70の吐出圧がシャトル弁261〜265および油路296等を介し可変絞り弁255により調整されて常時作用している。そして、第1および第2油室252,253に作用する油圧力に応じてサーボピストン251がバネ254の付勢力に抗して移動することにより、油圧ポンプPの斜板Sの傾転角を変化させて、油圧ポンプPの吐出流量を制御することができるようになっている。
【0047】
このように構成される油圧駆動装置200の作動について、作業装置3(ショベル装置30)の各シリンダ83〜85を伸縮駆動させてショベル装置30により地盤の掘削作業等を行う場合について説明する。左右の作業操作レバー28a,28bが操作されると、上述の油圧駆動装置100と同様に、この操作に応じて制御コントローラ40が指令信号を出力してリモコンバルブ53〜55および制御バルブ63〜65の作動制御がなされ、油圧ポンプPから吐出される作動油(圧油)をブームシリンダ83、アームシリンダ84およびバケットシリンダ85のそれぞれに供給して各シリンダを伸縮駆動させる。このように各シリンダ83〜85を伸縮駆動させてブーム33、アーム34およびバケット35をそれぞれ揺動させ、ショベル装置30により地盤の掘削作業等を行うことができる。
【0048】
ここで、上述したようにエンジンEの出力トルクが低下し易い作業環境下の場合(例えば、気圧の低い高地などで作業を行う場合)には、オペレータキャビン25内に設けられたエンジン負荷設定ダイヤル29を操作して可変絞り弁255の絞り開度を小さくする。可変絞り弁255の絞り開度を小さくすると、油路296から油路297を介して油タンクTに流れる油量が減少するため、パイロットポンプ70から吐出され油路296を介してサーボピストン251の第2油室253に供給される圧油が増大して、サーボピストン251に作用する油圧力が大きくなり、この油圧力に応じてサーボピストン251がバネ254の付勢力に抗して図4における左方向に移動する。そして、サーボピストン251が左方向へ移動することにより、油圧ポンプPの斜板Sの傾転角が小さくなって油圧ポンプPの吐出流量が減少される。したがって、油圧ポンプPの入力トルクが小さくなり、これによりエンジンEの負荷を低減させることができ、エンジン過負荷によるエンジンストールを防止することができる。
【0049】
これまで、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、可変絞り弁は、エンジン負荷設定ダイヤルの操作に応じて制御コントローラから出力される指令信号により(電気的に)絞り開度を変更可能に構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、エンジン負荷設定ダイヤルの操作に応じて機械的に絞り開度を変更させる構成であってもよい。
【0050】
また、上述した実施形態では、本発明に係る油圧駆動装置を備えた作業機械の一例としてパワーショベルについて説明したが、本発明はパワーショベルに限られるものではなく、例えば、ショベルローダ、油圧クレーン等の他の作業機械であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
PS パワーショベル(作業機械)
P 油圧ポンプ(第1油圧ポンプ)
30 ショベル装置(建設用作業装置)
53 ブームリモコンバルブ(パイロット油圧制御手段)
54 アームリモコンバルブ(パイロット油圧制御手段)
55 バケットリモコンバルブ(パイロット油圧制御手段)
63 ブーム制御バルブ(流量制御手段)
64 アーム制御バルブ(流量制御手段)
65 バケット制御バルブ(流量制御手段)
70 パイロット油圧ポンプ(第2油圧ポンプ)
83 ブームシリンダ(油圧アクチュエータ)
84 アームシリンダ(油圧アクチュエータ)
85 バケットシリンダ(油圧アクチュエータ)
100,200 油圧駆動装置
150,250 ポンプ制御装置(ポンプ制御手段)
151,251 サーボピストン(ポンプ容量制御手段)
155,255 可変絞り弁(容量制御調圧手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変容量型の第1油圧ポンプと、前記第1油圧ポンプから吐出される圧油により駆動される油圧アクチュエータと、前記第1油圧ポンプから前記油圧アクチュエータに供給される圧油流量を制御する流量制御手段と、前記流量制御手段を駆動させるための圧油を吐出する第2油圧ポンプと、前記第1油圧ポンプの容量を変化させて前記第1油圧ポンプの吐出油量を制御するポンプ制御手段とを有する油圧駆動装置であって、
前記ポンプ制御手段は、前記第1油圧ポンプの吐出油圧および前記第2油圧ポンプの吐出油圧を容量制御油圧として用いて前記第1油圧ポンプの可変容量を変化させるポンプ容量制御手段と、前記容量制御油圧として前記第2油圧ポンプの吐出油圧を前記ポンプ容量制御手段に導く油路から分岐して油タンクに繋がる分岐油路に設けられ、作業者の操作入力に応じて前記分岐油路を開閉して前記油タンクへ流れる圧油流量を調整することにより前記容量制御油圧を調圧する容量制御調圧手段とを備えて構成されることを特徴とする油圧駆動装置。
【請求項2】
作業者のアクチュエータ操作入力に応じて前記第2油圧ポンプから前記流量制御手段に供給されるパイロット油圧を制御するパイロット油圧制御手段を備え、
前記ポンプ容量制御手段は、前記第2油圧ポンプから前記パイロット油圧制御手段に供給される油圧を前記容量制御油圧として用いることを特徴とする請求項1に記載の油圧駆動装置。
【請求項3】
作業者のアクチュエータ操作入力に応じて前記第2油圧ポンプから前記流量制御手段に供給されるパイロット油圧を制御するパイロット油圧制御手段を備え、
前記ポンプ容量制御手段は、前記パイロット油圧制御手段により制御されて前記流量制御手段に供給される油圧を前記容量制御油圧として用いることを特徴とする請求項1に記載の油圧駆動装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の油圧駆動装置と、前記油圧アクチュエータにより駆動される建設用作業装置とを備え、前記建設用作業装置により所要の作業を行うように構成されることを特徴とする作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−87914(P2012−87914A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237212(P2010−237212)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000150154)株式会社竹内製作所 (50)
【Fターム(参考)】