説明

治療に使用するためのヒト血漿由来のインターα阻害タンパク質の調製方法及びその組成物

本発明は、インターα阻害剤タンパク質(IαIp)に関連する。本発明はさらに、IαIp組成物を精製するための方法、及び敗血症及び敗血症性ショック、リウマチ様関節炎、ガン並びに感染性疾患のようなヒト疾患を治療するためのその使用に関連する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、仮特許出願第60/ 「2003年11月8日出願;発明の名称:治療に使用するのためのヒト血漿由来のインターα阻害タンパク質製剤及び組成物」に開示された主題に関連し、その開示を参照してその全てを本明細書に取り込む。
【0002】
(政府の助成)
本発明の一部は、米国立衛生研究所のグラント第R01 GM053008号、同第R01 GM057468号及び同第R43 GM065667号に基づく助成を受けてなされたものである。
【背景技術】
【0003】
インターα阻害タンパク質(IαIp)ファミリーは、一群の血漿関連のセリンプロテアーゼ阻害剤である。このファミリーのメンバーは、グリコサミノグリカンによって共有結合的に連結される重鎖及び軽鎖ポリペプチドサブユニットから構成される。軽鎖は、ビクニンとも呼ばれており、分子のセリンプロテアーゼ阻害活性を担っている。「ビクニン」の名称は、Kunitz型の2つのプロテアーゼ阻害ドメインの存在を反映している。正常な血漿では、ビクニンは、225kDaの分子量を有するインターα阻害剤(IαI)、及び120kDaの分子量を有するプレα阻害剤(PαI)として、複合体の形態でほとんどが見出されている。IαIでは、ビクニンが2つの重鎖ポリペプチド鎖(H1及びH2)に連結されており、これに対して、PαIでは、1つだけの重鎖(H3)がビクニンに連結されている。これらの複合体化された形態では、ビクニンは、タンパク質分解による部分的な分解(活性を調節するための手段として役立つ機構)により放出されるまでは不活性のままである。複合体から切断された後、活性化されたビクニンは、腎糸球体ろ過(その低い分子量によって、及び受容体媒介による取り込みによって、促進されるプロセス)によって、血漿から迅速に除かれる。米国特許第6,489,128号及び同第6,660,482号は、ガン及び敗血症を診断することへの使用にそれぞれ関連する。転移を阻害する方法、及び敗血症を治療する方法もまた開示されるが、それらの組成物は実質的に純粋でなく、また、安定性(すなわち、短い半減期)の問題を有していた。
【0004】
抗生物質が50年以上前に導入され、実際に、敗血症により誘導される死亡が55%〜35%への減少を見せたにもかかわらず、医薬は、敗血症患者の死亡における著しい減少の恩恵を受けていない。現実には、敗血症は集中治療室における主要な死因の1つであり続けており、非常に多数の敗血症患者が敗血症性ショック及び多臓器不全のために死亡している。敗血症は、感染(例えば、細菌感染)に対する全身性の応答である。敗血症は、一般には、グラム陰性細菌からの内毒素によって、又はグラム陽性細菌からの外毒素(これは内毒素様の応答を開始させ得る)によって引き起こされる。その全身性の応答は、血圧の急激な低下、心臓血管の崩壊、及び/又は多臓器不全によって特徴づけられる、敗血症性ショックを生じさせる。敗血症性ショックと診断された患者の死亡率は35〜45%もの高さになっている。敗血症を迅速かつ確実に治療することは、従来の薬物療法を使用した場合、困難である。
【0005】
敗血症及び敗血症性ショックは、先天性免疫系及び凝固系の活性化と関連する。敗血症及び敗血症性ショックは、臨床的には、全身炎症、凝固障害、低血圧及び多臓器不全によって特徴づけられる(J. -L. Vincent et al,, Annuals of Medicine 34 (2002) 606-613)。重篤な敗血症のときには、特定のプロテアーゼのネットワークにより、凝固因子、線溶系因子及び補体因子が活性化される。これらのプロテアーゼはまた、組織及び器官の損傷を開始させ、かつ、血漿中の凝固因子及び補体因子の非特異的なタンパク質分解を高める(J. Wite et al., Intensive Care Medicine 8 (1982) 215-222; S. J. Weiss, New England Journal of Medicine 320 (1989) 365-376)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ヒト血漿からインターα阻害タンパク質(IαIp)を精製するための方法、そして、敗血症、急性炎症性疾患、重篤なショック、敗血症性ショック、リウマチ様関節炎、ガン、ガン転移、感染性疾患及び早期陣痛のようなヒト疾患を治療する、又は、敗血症、急性炎症性疾患、重篤なショック、敗血症性ショック、リウマチ様関節炎、ガン、ガン転移、感染性疾患及び早期陣痛と関連する死亡の危険性を低減させる、ためのそれらの使用、に関連する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様によれば、血漿由来のIαIpの組成物(ここに於いて、IαI及びPαIが生理学的割合で混合物に存在する)を製造するための方法は、IαI及びPαI(ここに於いて、IαI及びPαIが生理学的割合で存在する)を含有する血漿分画物を血漿から単離すること;及び、血漿分画物を精製して、IαIpの純度が約85%〜約100%の範囲にあるIαIp組成物を得ること、を含む。
【0008】
別の態様によれば、IαIpの組成物は、インターα阻害タンパク質(IαI)及びプレα阻害タンパク質(PαI)の混合物を含み、ここに於いて、IαI及びPαIが純度約85%〜約100%の範囲にある生理学的割合で前記混合物に存在する。
関連した態様では、IαIpの組成物は、インターα阻害タンパク質(IαI)及びプレα阻害タンパク質(PαI)の混合物を含み、ここに於いて、IαI及びPαIが生理学的割合で前記混合物に存在し、かつ、トリプシン阻害の高い比活性を有している。
別の関連した態様では、IαIpの組成物は、1時間を超える半減期を有するIαI及びPαIを含む。
さらに別の関連した態様では、IαIpの組成物は、IαI及びPαIを含み、ここに於いて、IαI及びPαIが、3つの重鎖(H1、H2及びH3)のうちの少なくとも1つと会合したインターα阻害タンパク質の軽鎖から構成される。
【0009】
別の関連した態様では、IαIpの組成物は、インターα阻害タンパク質(IαI)及びプレα阻害タンパク質(PαI)の混合物を含み、ここに於いて、IαI及びPαIが、生理学的割合で混合物に存在し、4つの重鎖(H1、H2、H3及びH4)のうちの少なくとも1つと会合したインターα阻害タンパク質の軽鎖を含む。
なおさらに別の関連した態様では、IαIpの組成物は、IαI及びPαIが生理学的割合で存在するところの、IαI及びPαIを含有する血漿分画物を血漿から単離すること;及び、血漿分画物を精製して、IαIpの純度が約85%〜約100%の範囲にあるIαIp組成物を得ること、を含む方法に従って作製される。
【0010】
別の態様では、本発明による医薬組成物は、治療に有効な、本明細書中に記載されるようなIαIpの組成物、及び医薬的に許容される担体を含む。
【0011】
別の態様は、患者における炎症関連疾患、ガン又は感染性疾患を、治療する方法に関連し、この場合、この方法は、下記に記載される方法のいずれかによって製造されるIαIpの治療有効量を投与することを含む。
【0012】
別の関連した態様では、患者を治療する方法は、IαI、PαI、IαIp、H3、H4、H1、H2及びLCのうちの1つ又はそれ以上の処置前レベルを決定すること;及び、治療有効量のIαIpを患者に投与すること、を含む。
関連した態様では、IαIpによる治療に対する応答を予測するための方法が記載される。この方法は、患者から得られたサンプルをアッセイして、IαI、PαI、IαIp、H3、H4、H1、H2及びLCのうちの1つ又はそれ以上のレベルを検出することを含み、この場合、検出されたレベルにより、IαIpによる治療に対する好ましい応答をもたらし得る患者が特定される。
【0013】
別の関連した態様では、IαIp療法により治療されている患者の進行をモニターする方法が記載され、この方法は、IαI、PαI、IαIp、H3、H4、H1、H2及びLCのうちの1つ又はそれ以上の処置前レベルを決定すること;治療有効量のIαIpを患者に投与すること;及び、IαIpによる初期処置の後で、患者におけるレベルの1つ又はそれ以上のレベルを決定すること、ここに於いて、IαIpによる次の治療で患者のレベルが増大することが、患者がIαIpによる治療に対して好ましい臨床的応答を有しそうであることを示すこと、を含む。
【0014】
別の態様では、IαIpによる治療のためのキットが記載され、このキットは、IαI、PαI、IαIp、H3、H4、H1、H2及びLCのうちの1つ又はそれ以上と、治療に使用するための説明書とを含む。
関連した態様では、IαIpを含む容器、及びIαIpを患者に投与するための指示を伴うラベル又は包装添付文書を含む組成物が記載される。
さらなる関連した態様では、上記に記載されるような組成物、及び治療に使用するための説明書を含むキットが記載される。
本発明の他の実施形態が下記に開示される。
【0015】
(発明の詳細な説明)
IαIpを血漿から精製するための新規な方法が本明細書中に開示される。さらに、急性炎症性疾患、敗血症、重篤なショック、敗血症性ショック、リウマチ様関節炎、ガン、ガン転移、感染性疾患及び早期陣痛を治療するために患者に投与するための、精製されたIαIpの治療用組成物が、本明細書中に開示される。
【0016】
以前より公知の精製物は、ウエスタンブロット分析によって80kDaのバンドとして検出される、第X因子(FX)による混入を含有していた。FXはまた、凝固アッセイでも検出された。FXは血栓形成性であると見なされ、また、ヒトに投与されたならば、有害であり得るので、FXの除去は重要である。本明細書中に記載される方法によって、以前のIαIp組成物のFX混入問題が解決される。
【0017】
インターα阻害タンパク質(IαIp)は、比較的高い濃度(400〜800mg/L)でヒト血漿において見出される構造的に関連したセリンプロテアーゼ阻害剤のファミリーである。IαIpは、トリプシン型プロテアーゼの阻害剤として機能する大きい多成分複合体である。他の阻害剤分子とは異なり、このファミリーの阻害剤は、コンドロイチン硫酸鎖によって特徴的に共有結合的に連結されたポリペプチド鎖(軽鎖及び重鎖)の組合せからなる。インターα阻害タンパク質の重鎖(H1、H2及びH3)はヒアルロン酸結合タンパク質とも呼ばれている。ヒト血漿において見出される主要な形態は、インターα阻害剤(IαI)(これは、2つの重鎖(H1&H2)と、1つだけの軽鎖(L)とからなる)、及びプレα阻害剤(PαI)(これは、1つの重鎖(H3)と、1つの軽鎖(L)とからなる)である。軽鎖(これはビクニン(bi−kunitz阻害剤)とも呼ばれており、2つのKunitzドメインを有する)は、血漿中のセリンプロテアーゼを広範囲に阻害することが知られている。複合体は、好中球エラスターゼ、プラスミン、トリプシン、キモトリプシン、カテプシンG及びアクロシンを含む一連のプロテアーゼの阻害において重要であることが示されている。
【0018】
IαI及びPαIはまた、H4(IαIpタンパク質の別の重鎖)と複合体形成することが見出されている。本発明によるIαIp組成物のある実施形態は、PαIと、IαIと、又はPαI及びIαIの両方との複合体で、H4を含有する。
【0019】
何らかの科学的理論による拘束を望まないが、本発明者らは、IαIpの重鎖が、複合体から遊離した後、HAと結合し、これにより、HAがその受容体(CD44)と結合することを妨げていると推測している。IαIpの重鎖が存在しない場合、HAはCD44に結合し、前炎症性因子(例えば、TNF−α)の分泌を開始させ、炎症を引き起こす。一方で、IαIpの軽鎖は、複合体から遊離すると、抗プロテアーゼ活性を示す。
【0020】
「IαIp組成物」は、IαI及びPαIを生理学的割合で含むIαIpタンパク質の調製物を示す。生理学的割合は、本明細書中で使用される場合、感染又は病気に罹っていない人又は動物において見出される割合、及び/又はヒト血漿において自然の状態で現れるIαI対PαIの比率を含むことが意図される。生理学的割合は、通常の場合、IαIが約60%〜約80%であり、かつ、PαIが約40%〜約20%である。生理学的割合は、患者の遺伝的構成における正常な変化に起因して、これらの範囲から変化することができる。
【0021】
本明細書中で使用される「インターα阻害タンパク質(IαI)及びプレαタンパク質(PαI)の混合物」は、IαI及びPαI複合体の両方を含有する組成物を示す。混合物はまた、IαIp複合体を単離するために使用される緩衝剤、塩又は他の成分を含有する場合がある。特定の態様において、IαI及びPαIは、生理学的割合で混合物として存在する。
【0022】
血漿分画物に存在するIαI及びPαIは、約60,000〜約280,000kDaの見かけ分子量を有する。分子量はドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定することができる。
【0023】
本明細書中で使用される「半減期」は、投与されたIαIpが投与時に活性である量の半分となる時間を示す。本発明によるIαIp組成物は、例えば、約1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、3.5時間、4時間、4.5時間、5時間、7.5時間又は10時間を超える半減期を有する。好ましい実施形態において、IαIp組成物は、約5時間を超える半減期を有する。特に好ましい実施形態において、IαIp組成物は約10時間を超える半減期を有する。例えば、長期間にわたって患者に投与されるためには、より少ない投薬量が要求されるので、より長い半減期が好ましい。
【0024】
本発明のIαIp組成物は、トリプシン阻害の高い比活性を有する場合がある。本発明によるIαIp組成物のトリプシン阻害の比活性は、約1000〜約2000IU/mgで変化できる。好ましくは、トリプシン阻害の比活性は、1200IU/mgを超え、さらにより好ましくは、約1500IU/mgを超える。トリプシン阻害の比活性は、例えば、L−BAPAを基質として使用するトリプシン阻害アッセイによって測定することができる。「HU Bergmeyer編、第5巻、第3版、119 (1984) Verlag Chemie, Weinheim」、「Chromogenic substrate for the assay of trypsin」、「R. Geiger, H. Fritz, Methods of Enzymatic Analysis」を参照されたい。
【0025】
IαIpの組成物は、3つの重鎖(H1、H2及びH3)のうちの少なくとも1つと会合したインターα阻害タンパク質の軽鎖を含む、インターα阻害タンパク質(IαI)及びプレαタンパク質(PαI)の混合物(この場合、IαI及びPαIが生理学的割合で前記混合物に存在する)である場合がある。本発明による組成物はまた、4つの重鎖(H1、H2、H3及びH4)のうちの少なくとも1つと会合したインターα阻害タンパク質の軽鎖を有する場合がある。IαIp複合体における各タンパク質の例は下記の通りである:ビクニン、GenBankアクセション番号:AAB84031、P02760;H1、GenBankアクセション番号:P19827、NP_002206;H2、GenBankアクセション番号:NP_002207、P19823;H3、GenBankアクセション番号:NP_002208;H4、GenBankアクセション番号:Q14624、NP_002209;これらは各々がその全体において参考として本明細書中に組み込まれる。
【0026】
本明細書中で使用される「血漿由来の」は、元は血漿から単離又は精製されていることを示す。すなわち、組成物の自然環境は、血漿である。
【0027】
本明細書中で使用される「血漿分画物」は、元は血漿に由来した、単離工程又は精製工程(例えば、クロマトグラフィー)からの分画物である。本発明による血漿分画物は、例えば、凝固因子IXの精製から得られた副分画物、プロトロンビン(prothrombin)複合体濃縮物の精製からの副分画物、血漿の低温沈降(これは、Hofferらの「Journal of Chromatography B 669 (1995) 187-196」に記載される)から生じる低温沈降上清、又は、クリオプア(cryo-poor)血漿であり得る。クリオプア血漿は本明細書中では低温沈降上清と交換可能に使用される。クリオプア血漿は、低温沈降から得られる上清である。
【0028】
本発明による副分画物の一例が、凝固因子IXの精製から得られる分画物である。IαI/PαIの混合物は、第IX因子(FIX)の精製時に生じた副分画物に存在することが示されている。凝固因子IXの精製から得られる副分画物を得る方法が、Hofferら、Journal of Chromatography B669(1995)、187〜196)に記載される(これはその全体が参考として本明細書により組み込まれる)。副分画物の他の例には、D.Josicらの「Thrombosis Research, 100 (2000), 433-441」(これはその全体が参考として本明細書により組み込まれる)に記載されるように、FIX精製からの副分画物、又はプロトロンビン複合体濃縮物の精製からの副分画物;及び、血漿の低温沈降から生じる低温沈降上清として単離された副分画物が含まれる。(例えば、好適な低温沈降法が、Hofferらの「Journal of Chromatography B 669 (1995) 187-196」に記載される)。IαIp複合体を血液から精製するために有用である他の血漿分画物には、強アニオン交換分画物及びモノリスクロマトグラフィー分画物が含まれ、これらは下記に実施例において記載される。
血漿分画物は、本発明によれば、ヒト、霊長類、ウシ、ブタ、ネコ又はイヌの供給源から得られる。
【0029】
本明細書中で使用される用語「得ること」は、本発明を実施する際に使用される物質の1つ又はそれ以上を購入すること、合成すること、単離すること、又は他の方法で取得することを含む。
【0030】
従って、「血液を得ること」は、本明細書中で使用される場合、血液を、例えば、ヒト、霊長類、ウシ、ブタ、ネコ又はイヌの供給源から取得することを含む。血液は、例えば、血液銀行、病院、ホスピス、民間企業、研究財団又は任意の他の血液供給元から取得及び/又は購入することができる。
【0031】
「血漿を得ること」は、本明細書中で使用される場合、血漿を、例えば、ヒト、霊長類、ウシ、ブタ、ネコ又はイヌの供給源から取得することを含む。血漿は、例えば、血液銀行、病院、ホスピス、民間企業、研究財団又は任意の他の血液供給元から取得及び/又は購入することができる。一方、血漿はまた、血液が得られると、血液から単離することができる。血漿を単離する好適な方法には、重力及び遠心分離が含まれる。
【0032】
本明細書中で使用される「凝固因子IXの精製から得られる副分画物を得ること」は、凝固因子IXの精製から得られる副分画物を、例えば、第IX因子を日常的に精製する企業又は病院から取得及び/又は購入することを含む。
【0033】
本明細書中で使用される「プロトロンビン複合体濃縮物の精製からの副分画物を得ること」は、そのような副分画物を、例えば、プロトロンビン複合体を精製する企業、研究組織又は病院から取得及び/又は購入することを含む。
【0034】
本明細書中で使用される「血漿の低温沈降から生じる低温沈降上清を得ること」は、低温沈降上清を、例えば、本発明における使用のために好適な様式で血漿を低温沈降させる病院、研究組織又は企業から取得及び/又は購入することを含む。
【0035】
「固体支持体」は、捕獲試薬により誘導体化され得るか、又は、そうでない場合には、捕獲試薬に結合させることができる固体物質を示す。例示的な固体支持体には、プロープ、マイクロタイタープレート及びクロマトグラフィー樹脂が含まれる。
【0036】
「吸着」は、吸着試薬又は捕獲試薬に対する分析物の検出可能な非共有結合性の結合を示す。吸着剤表面は、吸着剤(これは「捕獲試薬」又は「親和性試薬」とも呼ばれる)が結合する表面を示す。吸着剤は、分析物(例えば、標的のポリペプチド又は核酸)と結合することができる任意の物質である。
【0037】
クロマトグラフィー吸着剤は、クロマトグラフィーにおいて一般的に使用される物質を示す。クロマトグラフィー吸着剤には、例えば、イオン交換材、金属キレーター(例えば、ニトリロ酢酸又はイミノ二酢酸)、固定化された金属キレーター、疎水性相互作用吸着剤、親水性相互作用吸着剤、染料、単純な生体分子(例えば、ヌクレオチド、アミノ酸、単純な糖及び脂肪酸)、及び混合型モードの吸着剤(例えば、疎水性誘引/静電的反発の吸着剤)が含まれる。
【0038】
生物特異的吸着剤は、生体分子(例えば、核酸分子(例えば、アプタマー)、ポリペプチド、多糖類、脂質、ステロイド、又はこれらのコンジュゲート体(例えば、糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、核酸(例えば、DNA)−タンパク質コンジュゲート)を含む吸着剤を示す。特定の場合において、生物特異的吸着剤は、多タンパク質性の複合体、生物学的膜又はウイルスなどの高分子構造体であり得る。生物特異的吸着剤の例としては、抗体、受容体タンパク質及び核酸である。生物特異的吸着剤は、一般的に、クロマトグラフィー吸着剤よりも標的分析物に対してより大きい特異性を有する。
【0039】
「溶出液」又は「洗浄液」は、吸着剤表面に対する分析物の吸着に影響する又は変化させる、及び/又は非結合物質を表面から除く、ために使用される薬剤、一般的には溶液を示す。溶出液の溶出特性は、例えば、pH、イオン強度、疎水性、カオトロピズム(chaotropizm)の程度、界面活性剤の強さ、及び温度に依存している。
【0040】
「分析物」は、検出されることが所望されるサンプルの任意の成分を示す。この用語はサンプル中の1つだけの成分又は多数の成分を示すことができる。
【0041】
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書中では同義的に使用され、アミノ酸残基のポリマーを示す。これらの用語は、自然に存在するアミノ酸ポリマーと同様に、1つ又はそれ以上のアミノ酸残基が、対応する自然に存在するアミノ酸の類似物(analogs)又は模倣物(mimetics)である、アミノ酸ポリマーに対して適用される。ポリペプチドは、例えば、糖タンパク質を形成させるために炭水化物残基を付加することによって、修飾することができる。「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、非糖タンパク質と同様に、糖タンパク質を含む。
【0042】
「免疫アッセイ」は、抗原(例えば、IαIp複合体)と特異的に結合するために、抗体を使用するアッセイである。免疫アッセイは、抗原を単離し、標的化し、及び/又は定量するための特定の抗体の特異的な結合特性の使用によって特徴づけられる。
【0043】
「抗体」は、エピトープ(例えば、抗原)と特異的に結合し、そして認識する、1つの免疫グロブリン遺伝子又はそれ以上の免疫グロブリン遺伝子によって実質的にはコードされるポリペプチドリガンド又はそのフラグメントを示す。認められている免疫グロブリン遺伝子には、κ及びλの軽鎖定常領域遺伝子、α、γ、δ、ε及びμの重鎖定常領域遺伝子、ならびに、無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。抗体が、例えば、完全な免疫グロブリンとして、又は、様々なペプチダーゼを用いた消化によって作製される数多くの十分に特徴づけられたフラグメントとして存在する。これには、例えば、Fab′フラグメント及びF(ab)フラグメントが含まれる。抗体には、ポリクローナル及びモノクローナル抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、ならびにヒト化抗体、そして同様に、Fab又は他の免疫グロブリン発現ライブラリーの生成物を含むFabフラグメントが含まれる。
【0044】
抗体に「特異的(又は選択的)に結合する」、又は「との特異的(又は選択的)な免疫反応性を有する」という表現は、タンパク質又はペプチドを示すとき、タンパク質及び他の生物学的物質の不均一な集団におけるタンパク質の存在を決定することができる結合反応を示す。従って、示された免疫アッセイ条件のもとでは、指定された抗体は、バックグラウンドの少なくとも2倍で特定のタンパク質に結合し、かつ、サンプルに存在する他のタンパク質には著しい量で実質的に結合しない。そのような条件のもとでの抗体に対する特異的な結合では、特定のタンパク質に対するその特異性について選択される抗体が要求される場合がある。例えば、特定の種(例えば、ラット、マウス又はヒトなど)からのIαIp複合体に対して惹起されたポリクローナル抗体を、IαIp複合体との特異的な免疫反応性を有し、かつ、IαIp複合体の多型の変異体及び対立遺伝子体を除いて、他のタンパク質との特異的な免疫反応性を有しない、そのようなポリクローナル抗体のみを得るために選択することができる。この選択は、他の種に由来するIαIp複合体分子と交差反応する抗体を除くことによって達成することができる。様々な免疫アッセイ形式を、特定のタンパク質との特異的な免疫反応性を有する抗体を選択するために使用することができる。例えば、固相ELISA免疫アッセイが、タンパク質との特異的な免疫反応性を有する抗体を選択するために日常的に使用される(例えば、特異的な免疫反応性を決定するために使用することができる免疫アッセイ形式及び条件の記載については、「Harlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual(1988)」を参照のこと)。一般的に、特異的又は選択的な反応は、バックグラウンドのシグナル又はノイズの少なくとも2倍であり、より一般的には、バックグラウンドよりも10倍から100倍大きい。
【0045】
本明細書中で使用される「機能的に等価」は、本明細書中に記載されるIαIpタンパク質と実質的に類似するインビボ又はインビトロ活性(例えば、敗血症における軽減を達成すること)を示すことができる任意のタンパク質を示す。
【0046】
IαIp生成物の構造及び純度は、例えば、当業者には公知のHPLC又は他のクロマトグラフィー方法によって確認することができる。
【0047】
本明細書中で使用される「IαIp複合体」は、欠失、挿入、付加及び置換を含有するタンパク質を含めて、IαIpタンパク質の自然に存在する生物学的に活性な変異体のすべてを含むことが意図される。IαIpタンパク質の「自然の変異体」は、1つ又はそれ以上のアミノ酸が変化している配列を有する、血漿から得られるペプチドとして定義される。変異体は、置換されたアミノ酸が類似する構造的性質又は化学的性質を有する「保存的」変化(例えば、イソロイシンによるロイシンの置換)を有することができる。他の実施形態では、変異体は「非保存的」変化(例えば、トリプトファンによるグリシンの置換)を有することができる。類似する変化にはまた、アミノ酸の欠失又は挿入、又はその両方が含まれる。どのアミノ酸残基が、そして、どのくらいの数のアミノ酸残基が、生物学的又は免疫学的活性を損なうことなく、置換、挿入又は欠失されるかを決定する指針は、当分野で周知のコンピュータープログラム(例えば、DNASTARソフトエウエア)を使用して見出すことができる。
【0048】
「欠失」は、1つ又はそれ以上のアミノ酸又はヌクレオチド残基がそれぞれ存在しない、アミノ酸又はヌクレオチド配列のいずれかにおける変化として定義される。
【0049】
「挿入」又は「付加」は、自然に存在するIαIp複合体と比較して、1つ又はそれ以上のアミノ酸又はヌクレオチド残基の付加がそれぞれ生じている、アミノ酸又はヌクレオチド配列におけるそのような変化である。
【0050】
「置換」は、1つ又はそれ以上のアミノ酸又はヌクレオチドを、異なるアミノ酸又はヌクレオチドによってそれぞれ置換することから生じる。
【0051】
「生物学的に活性な」という用語は、自然に存在するIαIp複合体の構造的な、調節の又は生化学的な機能を有することを示す。同様に、「免疫学的に活性な」は、適切な動物又は細胞において特異的な免疫応答を誘導し、かつ、特異的な抗体と結合する、自然の、組換えの又は合成のIαIp複合体あるいはそれらの任意のオリゴペプチドの能力を定義する。
【0052】
本明細書中で使用される「誘導体」という用語は、IαIp複合体をコードする核酸、又は、コードされたIαIp複合体の化学的修飾を示す。そのような修飾の例示には、アルキル、アシル又はアミノ基による水素の置換がある。核酸誘導体は、自然のIαIp複合体の本質的な生物学的特性を保持するポリペプチドをコードする。
【0053】
本明細書中で使用される「精製すること」は、望ましくない又は混入しているタンパク質、又はある成分をIαIpから除いて、精製されたIαIp複合体を作製する工程又はプロセスを示す。例えば、IαI及びPαIを生理学的割合で含有する血漿分画物を、IαIp組成物を精製するために、一連のクロマトグラフィー工程によって処理することができる。
【0054】
本明細書中で使用される「単離すること」は、IαI及びPαIを生理学的割合で含有する血漿から、血漿分画物を作製することを示す。例えば、血漿分画物を単離することは、血漿をクロマトグラフィー処理することによって本発明に従って達成することができる。単離されることは、その元の環境(例えば、自然に存在するならば、自然の環境)から取り除かれた物質を示しており、その自然の状態から「人の手によって」変化させられている。例えば、単離されたポリペプチド又はタンパク質は血漿の成分であるか、あるいは、細胞内に含有されるが、そのような血漿又は特定の細胞はそのポリペプチドの元の環境ではないと考えられるので、「単離された」と見なすことができる。
【0055】
クロマトグラフィー処理するとは、本明細書中で使用される場合、アニオン交換クロマトグラフィーを含んでもよい。アニオン交換クロマトグラフィーは、粒子に基づいてもよい(例えば、DEAEセファロース(Sepharose)、DEAEセファデックス(Sephadex)A50、トヨパール(Toyopearl)DEAE、TMAEフラクトゲル(Fractogel)、DEAEフラクトゲル又はQセファロース)。アニオン交換クロマトグラフィーはまた、モノリシック支持体によるものであり得る(例えば、固定化されたアニオン交換リガンドを有するCIM、例えば、DEAE−CIM又はQ−CIMなど)。セファロースは、高分子をゲルろ過により分離するための高分子量物質用の、Pharmacia,Inc.(ニュージャージー州)の商品名である。アニオン交換カラムは、マトリックス及びリガンドの2つの成分を有する。マトリックスは、例えば、セルロース、デキストラン、アガロース又はポリスチレンであり得る。リガンドは、ジエチルアミノエチル(DEAE)、ポリエチレンイミン(PEI)又は第四級アンモニウム官能基であり得る。アニオン交換カラムの強さは、リガンドのイオン化状態を示す。強アニオン交換カラム(例えば、第四級アンモニウムリガンドを有するアニオン交換カラム)は、永続的な正電荷を広いpH範囲にわたって有する。弱アニオン交換カラム(例えば、DEAE及びPEIなど)では、正電荷の存在がカラムのpHに依存する。強アニオン交換カラム(例えば、QセファロースFF)又は金属キレート化セファロース(例えば、Cu2+キレート化セファロース)が好ましい。アニオン交換カラムには、一般に、α−グルコシダーゼのpIを超えるpHで、低塩緩衝液が負荷される。
【0056】
本発明のIαIp組成物は、好ましくは、純度が約85%〜約100%である。本明細書中で使用される「純粋即ち純度が100%(pure)」という用語は、その自然の環境から取り出され、単離され、又は分離され、そして、IαIpが自然の状態で会合する他の成分と、少なくとも約85%〜約100%会合していない(好ましくは90%、より好ましくは95%会合していない)IαIp組成物を示す。好ましい実施形態において、実質的に精製されたタンパク質は、組成物に於いて85%、87.5%、90%、92.5%、95%、99%、又はさらにより多くのタンパク質から構成される。
【0057】
「均一に精製されている」ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質とは、本発明に適用される場合、これらのペプチド、ポリペプチド又はタンパク質が、実質的に他のタンパク質及び生物学的成分を含まないレベルの純度を有している、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質であることを意味する。任意の好適な材料及び方法を、血漿の単離工程を行い、精製されたIαIpを得るために使用することができる。
【0058】
一般的に、IαIpの調製では、サンプルの単離、及び目的とするタンパク質を含有することが明らかにされた分割物の回収を伴う。単離方法には、例えば、固相抽出、クロマトグラフィー、例えば、アニオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ヘパリンクロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、系列抽出(sequential extraction)、ゲル電気泳動及び液体クロマトグラフィーが含まれる。調製ではまた、精製することを含むことができ、これには、複数のクロマトグラフィー工程(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、ヘパリンクロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、連続抽出、ゲル電気泳動及び液体クロマトグラフィー)を含むことができる。
【0059】
本発明の1つの実施形態では、サンプルをアニオン交換クロマトグラフィーによって2回精製することができる。アニオン交換クロマトグラフィーは、サンプル中のタンパク質を、大雑把に言って、その電荷特性に従って精製することを可能にする。例えば、Qアニオン交換樹脂を使用することができ(例えば、Q HyperD F, Biosepra)、また、サンプルを、異なるpHを有する溶出液を用いて連続して溶出することができる。アニオン交換クロマトグラフィーは、他のタイプの生体分子からより負側に荷電しているサンプル中の生体分子の分離を可能にする。高いpHを有する溶出液を用いて溶出されるタンパク質は、弱く負に荷電していることが考えられ、低いpHを有する溶出液を用いて溶出される画分は、強く負に荷電していることが考えられる。従って、サンプルの複雑性を減少させることに加えて、アニオン交換クロマトグラフィーでは、タンパク質がその結合特性に従って分離される。
【0060】
さらに別の実施形態では、サンプルをヘパリンクロマトグラフィーによってさらに精製することができる。ヘパリンクロマトグラフィーは、ヘパリンとの親和性相互作用及び電荷特性にも基づいて、サンプル中のIαIp複合体のさらなる精製を可能にする。ヘパリン(硫酸化ムコ多糖類)は、正荷電成分を有するIαIp複合体と結合する、従って、サンプルを、異なるpH又は塩濃度を有する溶出液を用いて、連続して溶出することができる。低いpHを有する溶出液を用いて溶出されたIαIp複合体は、弱く正に荷電している可能性がより高い。高いpHを有する溶出液を用いて溶出されたIαIp複合体は、強く正に荷電している可能性がより高い。従って、ヘパリンクロマトグラフィーはまた、サンプルの複雑性を低下させ、かつ、IαIp複合体をその結合特性に従って分離する。
【0061】
IαIp複合体は、支持体(例えば、任意のバイオチップ、マルチウエルマイクロタイタープレート、樹脂、又はタンパク質の存在に対して続いてプローブされるニトロセルロース膜のようなもの)に固定化された捕獲試薬を用いて捕獲することができる。具体的には、本発明のIαIp複合体を、表面増強レーザー脱着/イオン化(SELDI)タンパク質バイオチップ上で捕獲することができる。捕獲は、クロマトグラフィー表面又は生物特異的表面において可能である。反応性の表面を有するSELDIタンパク質バイオチップはどれも、本発明のIαIp複合体を捕獲及び検出するために使用することができる。これらのバイオチップは、IαIp複合体を特異的に捕獲する抗体を用いて誘導体化することができ、又は、免疫グロブリンと結合するプロテインA又はプロテインGのような捕獲試薬を用いて誘導体化することができる。その場合、IαIp複合体は、特異的な抗体を使用して溶液中で捕獲することができ、捕獲されたIαIp複合体を、捕獲試薬によってチップ上で単離することができる。
【0062】
タンパク質、ポリペプチド又はペプチドの精製度を定量するための様々な方法が、本発明の開示を考慮して当業者には理解される。これらには、例えば、分画物の特異的なタンパク質活性を測定すること、又はゲル電気泳動によって分画物内の多数のポリペプチドを評価すること、が含まれる。
【0063】
本明細書中下記において詳しく記載されるそのような技術に加えて、タンパク質精製に於いて使用される好適な様々な他の技術が、当業者に周知されている。これらには、例えば、硫酸アンモニウム、PEG及び抗体などを用いた、又は熱変性による沈殿化、それに続く遠心分離;例えば、イオン交換、ゲルろ過、逆相、ヒドロキシルアパタイト、レクチンアフィニティ、免疫アフィニティ等のクロマトグラフィー及び他のアフィニティクロマトグラフィーの工程のようなクロマトグラフィー工程;等電点電気泳動法;ゲル電気泳動、HPLC;並びに、そのような及び他の技術の組合せが含まれる。その上、望ましいと考えられるならば、追加の精製工程を、当分野で標準的である方法を用いることができる。これらの方法は十分に、タンパク質の高い純度の調製物をもたらすことができる。
【0064】
他の実施形態では、ゲルクロマトグラフィー、又は分子篩クロマトグラフィーを使用することができる。ゲルクロマトグラフィーは、分子サイズに基づいた、特別な型の分配クロマトグラフィーである。このゲルクロマトグラフィーの基礎となる理論は、小さい細孔を含有する不活性な物質の非常に小さい粒子を用いて調製されるカラム中で、分子が細孔の中又は細孔の近くを通過する際に、そのサイズに依存して、より大きな分子がより小さい分子から分離されることである。作製される物質の粒子が、その分子を吸着しない限り、流速を決定する唯一の因子はサイズである。従って、分子は、形状が比較的一定である限り、サイズが小さくなっていく順に、カラムから溶出される。ゲルクロマトグラフィーは、pH、イオン強度、温度等のような他の全ての要因に依存せず、分子の異なるサイズで分離することでは最高のものである。事実上吸着がなく、帯域の広がりがほとんどなく、従って、溶出体積は単純に分子量に関連づけられる。
【0065】
他の実施形態では、アフィニティクロマトグラフィーを使用することができる。アフィニティクロマトグラフィーは、単離される物質と、その物質が特異的に結合することができる分子との特異的な親和性に基づいたクロマトグラフィー手法である。これは、例えば、受容体−リガンド型の相互作用である。カラム材は、結合パートナーの一方を不溶性マトリックスに共有結合的にカップリングすることによって合成することができる。その場合、カラム材はその物質を溶液から特異的に吸着することができる。溶出は、例えば、結合が生じない条件に変化させること(例えば、pH、イオン強度及び温度を変化させること)によって生じる。
【0066】
本明細書中に記載される方法は、大規模な製造を許容でき、また、治療的投与のために好適な形態で、IαIp複合体及びH4をはじめとするタンパク質をもたらす。
本明細書中に記載される単離工程又は精製工程はいずれも、所望されるならば、より高い純度を得るために繰り返すことができる。クロマトグラフィー工程は回分式又はカラム形式であり得る。
【0067】
本発明の血漿由来のIαIp組成物を製造するための好ましいプロセスでは、IαI及びPαIを含有し、かつ、IαI及びPαIが生理学的割合で存在する、血漿分画物を血漿から単離すること;及びこの血漿分画物を精製して、純度が約85%〜約100%であるIαIp組成物を得ること、が含まれる。
本発明によるプロセスではまた、例えば、ヘパリンアフィニティカラムに通し、素通り(非結合)画分を集めることによって血漿分画物をさらに精製することを含むことができる。
【0068】
本発明を実施することにおいて有用なプロセスではまた、精製及び単離工程の前及び/又は後において、血漿分画物及び/又は精製されたIαIpのウイルス不活性化を含むことができる。典型的なプロセスでは、溶媒/界面活性剤処理又は熱不活性化によるウイルス不活性化が含まれる。本発明の組成物の熱的活性化又は低温殺菌は、例えば、約55℃〜約65℃の温度で、又は70℃〜120℃における乾熱であってもよい。
【0069】
溶媒・界面活性剤処理の場合、溶媒及び界面活性剤の特定の組合せ(例えば、1%のTween−80と組み合わせられた0.3%のトリ−n−ブチルリン酸(TnBP)、24℃にて6時間)が、包膜ウイルス(enveloped viruses)を不活性化するために効果的である(Horowitzら (1985)、 Transfusion 25, 516-522)。あるいは、安定化剤の存在下、55〜65℃での分画物又は精製されたIαIpの低温殺菌は、存在する何らかのウイルスを不活性化するために十分である。
【0070】
精製又は単離工程の間において、安定化剤を加えることができる。IαIpの最終的な組成物もまた安定化剤を含有する場合がある。例えば、適した安定化剤には、アルブミン、ポリエチレングリコール、α,α−トレハロース、アミノ酸、塩、グリセロール、及びリシン、ポリリジン、アルギニン、ε−アミノカプロン酸及びトラネキサム酸のようなω−アミノ酸、スクロースのような糖、又はそれらの組合せが含まれる。
【0071】
本発明のIαIpタンパク質及び組成物は、ヒト疾患を治療するために使用することができる。そのような疾患には、例えば、急性炎症性疾患、敗血症、重篤なショック、敗血症性ショック、リウマチ様関節炎、ガン、ガン転移、早期陣痛及び感染性疾患が含まれる。疾患を治療するために使用されるIαIp組成物は、IαI及びPαIを含有し、かつ、IαI及びPαIが生理学的割合で存在する血漿分画物を血漿から単離すること;及び、この血漿分画物を精製して、IαIpの純度が約85%〜約100%の範囲にあるIαIp組成物を得ること、によって作製することができる。
【0072】
本発明はまた、IαIpの医薬組成物を含む。IαIpの医薬組成物は、医薬的に許容され得る担体と共に、本明細書中に記載されるIαIp組成物のいずれかの治療有効量を有するものである。
例えば、本発明による医薬組成物は、インターα阻害タンパク質(IαI)及びプレαタンパク質(PαI)の混合物であり、この混合物にIαI及びPαIが生理学的割合で存在し、かつ、純度が約85%〜約100%の範囲にあるところの、治療有効量のIαIp組成物であり得る。医薬組成物はまた、インターα阻害タンパク質(IαI)及びプレαタンパク質(PαI)の混合物であり、この混合物にIαI及びPαIが生理学的割合で存在し、かつ、3つの重鎖(H1、H2及びH3)のうちの少なくとも1つと、又はH1、H2、H3及びH4のうちの少なくとも1つと会合したインターα阻害タンパク質の軽鎖を含むところの、治療有効量のIαIp組成物であり得る。医薬組成物はまた、インターα阻害タンパク質(IαI)及びプレαタンパク質(PαI)の混合物であり、この混合物にIαI及びPαIが生理学的割合で存在し、かつ、トリプシン阻害の高い比活性を有するところの、治療有効量のIαIp組成物であり得る。医薬組成物はまた、インターα阻害タンパク質(IαI)及びプレαタンパク質(PαI)の混合物であり、この混合物にIαI及びPαIが生理学的割合で存在し、かつ、1時間、5時間又は10時間よりも大きい半減期を有するところの、治療有効量のIαIp組成物であり得る。
【0073】
「医薬的に許容され得る担体又は補助剤」という用語は、本発明の組成物と一緒に患者に投与することができる担体又は補助剤で、組成物の治療有効量を送達するために十分な用量で投与されたとき、その薬理学的活性を無効にせず、かつ非毒性である担体又は補助剤を示す。
【0074】
本発明の医薬組成物において使用され得る医薬的に許容され得る担体、補助剤又は媒体には、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸塩のような自己乳化性薬物送達システム(SEDDS)、Tween又は他の類似するポリマー送達マトリックスのような薬学的投薬形態物において使用される界面活性剤、ヒト血清アルブミンのような血清タンパク質、リン酸塩のような緩衝剤物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩など)、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリラート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレンのブロックポリマー、ポリエチレングリコール、及び羊毛脂が含まれるが、これらに限定されるものではない。α−、β−及びγ−シクロデキストリンのようなシクロデキストリン、又は、2−及び3−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含むヒドロキシアルキルシクロデキストリンのような化学修飾された誘導体、又は他の可溶化された誘導体もまた、本明細書中に記載される組成物の送達を高めるために、都合よく使用することができる。
【0075】
本発明の医薬組成物は、経口的に、非経口的に、吸入スプレーによって、局所的に、直腸に、鼻腔に、口内に、膣に、又は埋め込まれたリザーバーを介して投与することができ、好ましくは、経口投与又は注射による投与によって投与することができる。
【0076】
本発明の医薬組成物は、任意の従来型の非毒性の医薬的に許容される担体、補助剤又は媒体を含有することができる。場合により、配合物のpHを、配合された組成物又はその送達形態物の安定性を高めるために、医薬的に許容され得る酸、塩基又は緩衝剤を用いて調節することができる。本明細書中で使用される用語の非経口的とは、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液嚢内、胸骨内、クモ膜下、病巣内及び頭蓋内の注射技術又は注入技術を含む。適した投与方法は、錠剤、カプセルとして、又は、静脈内注射によってであり、注射可能な投与形態物が特に好まれる。
【0077】
医薬組成物は、例えば、無菌の注射可能な水性又は油性懸濁物として、無菌の注射可能な調製物の形態であり得る。このような懸濁物は、適した分散化剤又は湿潤化剤(例えば、Tween80のような)及び懸濁化剤を使用して、当技術分野で公知の技術に従って配合することができる。無菌の注射可能な調製物はまた、例えば、1,3−ブタンジオールにおける溶液のような、非毒性の非経口的に許容され得る希釈剤又は溶媒に於いて、無菌の注射可能な溶液又は懸濁物であり得る。許容される媒体及び溶媒には、マンニトール、水、リンゲル液及び等張性の塩化ナトリウム溶液が含まれる。加えて、無菌の固定油が、溶媒又は懸濁化媒体として従来から用いられている。この目的のために、任意の無刺激性の固定油を用いることができ、これには、合成されたモノ−又はジ−グリセリドが含まれる。オレイン酸のような脂肪酸及びそのグリセリド誘導体は、自然の医薬的に許容され得るオリーブ油又はひまし油のようなオイル、特にそのポリオキシエチル化体において、注射物の調製において有用である。これらのオイル溶液又はオイル懸濁物はまた、医薬的に許容されるエマルション及び懸濁物のような投薬形態物の配合において、一般に使用される長鎖アルコールの希釈剤又は分散剤、あるいは、カルボキシメチルセルロース又は類似する分散化剤を含有することができる。医薬的に許容され得る固体、液体又は他の投薬形態物の製造において一般に使用される、Tween又はSpanのような他の一般的に使用されている界面活性剤、及び/又は他の類似する乳化剤又は生物学的利用能の増強剤もまた、製剤の目的のために使用することができる。
【0078】
本発明の医薬組成物は、カプセル、錠剤、エマルション及び水性の懸濁物、分散物、及び溶液(これらに限定されないが)を含む、任意の経口的に許容され得る投薬形態物で経口投与することができる。経口使用のための錠剤の場合、一般に使用される担体には、ラクトース及びコーンスターチが含まれる。ステアリン酸マグネシウムのような滑剤もまた、一般的に加えられる。カプセル形態での経口投与のために、有用な希釈剤には、ラクトース及び乾燥されたコーンスターチが含まれる。水性の懸濁物及び/又はエマルションが経口投与されるとき、有効成分は、乳化剤及び/又は懸濁化剤との組合せで油相に懸濁又は溶解することができる。所望されるならば、ある種の甘味剤及び/又は香味料及び/又は着色剤を加えることができる。
【0079】
本発明の医薬組成物はまた、直腸投与のための坐薬の形態で投与することができる。このような組成物は、本発明の組成物を、室温で固体であるが、直腸温度では液体であり、従って、直腸で融解して、有効成分を放出する好適な非刺激性の賦形剤と混合することによって調製することができる。そのような物質には、カカオバター、密ろう及びポリエチレングリコールが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0080】
本発明の医薬組成物の局所投与は、所望される治療が局所的適用によって容易に近づける区域又は器官に関係するときに有用である。皮膚に対する局所的な適用のために、医薬組成物は、担体に懸濁又は溶解されている有効成分を含有する適した軟膏を用いて配合されるであろう。本発明の組成物の局所投与のための担体には、鉱物油、鉱油、白色鉱油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン組成物、乳状ワックス及び水が含まれるが、これらに限定されるものではない。あるいは、医薬組成物は、適した乳化剤とともに担体に懸濁又は溶解されている有効成分を含有する、適したローション又はクリームを用いて配合することができる。適した担体には、鉱油、ソルビタンモノステアラート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の医薬組成物はまた、直腸坐薬配合物によって、又は適した浣腸配合物において下部腸管に局所適用することができる。局所的経皮パッチもまた本発明に含まれる。
【0081】
本発明の医薬組成物は、鼻腔エアロゾル又は吸入によって投与することができる。そのような組成物は、製薬配合の分野で周知の技術に従って調製され、また、ベンジルアルコール又は他の適した保存剤、生物学的利用能を高めるための吸収促進剤、フルオロカーボン、及び/又は当技術分野で公知の他の可溶化剤もしくは分散化剤を用いて、生理的食塩水における溶液として調製することができる。
【0082】
患者における炎症関連疾患、例えば、リウマチ様関節炎、敗血症及び敗血症性ショック、頭部外傷/障害及び髄膜炎、炎症性腸疾患(クローン病)、慢性閉塞性肺疾患、鼻炎など;ガン、早期陣痛、又は感染性疾患を本発明に従って治療する方法では、本発明の方法に従って作製されるIαIp組成物の治療有効量を投与することを含むことができる。
【0083】
本明細書における組成物は、約1〜50mg/kg体重の範囲の投薬量で、好ましくは、1回の服用あたり500mg〜1000mgの投薬量で、4時間〜120時間毎に投与され、又は、特定の薬物の要求に従って投与される。本明細書における方法では、所望される効果又は明言された効果を達成するために組成物の有効量を投与することが意図される。一般には、本発明の医薬組成物は、1日あたり約1回〜約6回で投与されるか、あるいは連続注入として投与される。そのような投与は長期治療又は救急治療として使用することができる。単回投薬形態物を作製するために担体物質と組み合わせることができる有効成分の量は、治療される宿主及び特定の投与様式に依存して変化する。一般的な調製物は、約5%〜約95%(w/w)の有効な組成物を含有する。あるいは、そのような調製物は、約20%〜約80%の有効な組成物を含有する。
【0084】
上記で示された用量よりも低い又は大きい用量が好都合である場合がある。任意の特定の患者のための具体的な投薬量及び治療様式は、用いられる具体的な組成物の活性、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与時間、排出速度、薬物の組合せ、疾患の重篤度及び経過、病状及び症状、疾患・病状・症状に対する患者の素因、並びに治療医師の判断を含む、様々な要因に依存する。
【0085】
病状が改善したとき、本発明の組成物又は併用物の維持用量を、必要ならば、投与することができる。その後、投薬量又は投与頻度、あるいは、その両方を、症状が所望のレベルに軽減されて、治療を終えるときには、改善された病状が保持されるレベルに、症状の関数として下げることができる。しかしながら、患者は、疾患症状が再発した場合には、長期間に基づく間断的な治療を必要とする。病状の改善はまた、肝臓におけるIαIpのレベルに基づいて判断することができる。IαIpの正常な生理学的レベルが肝臓において見出され、また、患者又は治療医師によって患者症状が改善されていると判断されるならば、患者は維持用量により治療することができる。
【0086】
本発明の組成物が、IαIp組成物及び1つ又はそれ以上の追加の治療剤又は予防剤との組合せを含むとき、組成物及び追加の薬剤はともに、単独治療様式において通常的に投与される投薬量の約1%〜100%、より好ましくは約5%〜95%の投薬量レベルで存在すべきであろう。追加の薬剤は、多回服薬療法の一部として、本発明の組成物とは別々に投与することができる。あるいは、そのような薬剤は、単一投薬形態物の一部として、又は本発明の組成物と一緒に混合されて一組成物であってもよい。
【0087】
急性炎症性疾患、敗血症、重篤なショック、敗血症性ショック、リウマチ様関節炎、ガン、ガン転移、感染性疾患及び/又は早期陣痛について患者を治療するための方法では、IαI、PαI、IαIp、H3、H4、H1、H2及びLCのうちの1つ又はそれ以上の、処置前レベルを決定する工程;及び治療有効量のIαIpを患者に投与する工程が含まれる。IαI、PαI、IαIp、H3、H4、H1、H2及びLCの処置前レベルは、IαIp又はIαIp複合体タンパク質のいずれかの最初の投与の前での患者における、そのようなタンパク質のレベルである。処置後レベルは、IαIpの投与後において測定されたIαIpのレベルである。本発明の方法は、IαIpによる初期処置の後で、IαI、PαI、IαIp、H3、H4、H1、H2及びLCのうちの1つ又はそれ以上の処置後レベルを決定することを含む。IαIpのレベルにおける変化は、その治療が好ましい臨床的応答を生じさせていることの目安である。初期処置期間は、IαIpの血漿中濃度が定常状態を達成するために必要とされる時間である。
【0088】
IαI、PαI、IαIp、H3、H4、H1、H2及び/又はLCのレベルは、例えば、免疫学的方法によって決定することができる。例えば、IαIp複合体を、例えば、気相イオン分光測定法、光学的方法、電気化学的方法、原子間力顕微鏡、高周波法、表面プラズモン共鳴、偏光解析法の免疫学的方法及び原子間力顕微鏡法をはじめとする様々な検出方法によって検出及び/又は測定することができる。
【0089】
別の実施形態では、免疫アッセイを、サンプル中のIαIp複合体を検出及び分析するために使用することができる。この方法は、(a)IαIp複合体に特異的に結合する抗体を提供すること;(b)サンプルを抗体と接触させること;及び(c)サンプル中のIαIp複合体に結合した抗体の複合体の存在を検出すること、を含む。本発明の方法において使用される適した抗体には、MAb69.31、MAb69.26、抗IαIpポリクローナル抗体(R16又はR20)、及び抗ビクニンモノクローナル抗体又は抗ビクニンポリクローナル抗体が含まれる。
【0090】
免疫アッセイは、抗原(例えば、IαIp複合体)と特異的に結合するために抗体を使用するアッセイである。免疫アッセイは、抗原を単離し、標的化し、及び/又は定量するために、特定の抗体の特異的な結合特性を使用することによって特徴づけられる。抗体に「特異的(又は選択的)に結合する」、又は、「との特異的(又は選択的)な免疫反応性を有する」の表現は、タンパク質又はペプチドを示すとき、タンパク質及び他の生物学的物質の不均一な集団におけるタンパク質の存在を決定することができる結合反応を示す。従って、示された免疫アッセイ条件のもとでは、指定された抗体はバックグラウンドの少なくとも2倍で特定のタンパク質に結合し、かつ、サンプルに存在する他のタンパク質には著しい量で実質的に結合しない。そのような条件下での抗体に対する特異的な結合では、特定のタンパク質に対するその特異性について選択される抗体が要求されることがある。例えば、ラット、マウス又はヒトのような特定の種からのIαIp複合体に対して惹起されたポリクローナル抗体を、IαIp複合体との特異的な免疫反応性を有し、かつ、IαIp複合体の多型の変異体及び対立遺伝子体を除いて、他のタンパク質との特異的な免疫反応性を有しない、そのようなポリクローナル抗体のみを得るために選択することができる。この選択は、他の種に由来するIαIp複合体分子と交差反応する抗体を除くことによって達成することができる。
【0091】
IαIpを用いた治療のために適した患者は、炎症、外傷/傷害、腫瘍侵入、腫瘍転移、敗血症、敗血症性ショック又は感染性疾患を有するとして特定することができる。そのような患者は自身によって確認されるるか、あるいは、炎症、腫瘍侵入、腫瘍転移、敗血症、敗血症性ショック又は感染性疾患を有するとして医者によって診断される。患者は、霊長類、ヒト又は他の動物であり得る。
【0092】
方法ではまた、他の治療剤の同時投与が含まれる。例えば、追加の治療剤は、抗ガン剤、抗炎症剤、抗凝固剤又は免疫調節剤であり得る。例えば、ジデオキシヌクレオシドとして、例えば、ジドブジン(AZT)、2’,3’−ジデオキシイノシン(ddI)及び2’,3’−ジデオキシシチジン(ddC)、ラミブジン(3TC)、スタブジン(d4T)、並びにTRIZIVIR(アバカビル+ジドブジン+ラミブジン);非ヌクレオシド、例えば、エファビレンツ(DMP−266、DuPont Pharmaceuticals/ Bristol Myers Squibb)、ネビラピン(Boehringer Ingeleheim)及びデラビリジン(Pharmacia-Upjohn);Ro3−3335及びRo24−7429のようなTAT拮抗薬;プロテアーゼ阻害剤、例えば、インジナビル(Merck)、リトナビル(Abbott)、サキナビル(Hoffmann LaRoche)、ネルフィナビル(Agouron Pharmaceuticals)、141W94(Glaxo-Wellcome)、アタザナビル(Bristol Myers Squibb)、アンプレナビル(GlaxoSmithKline)、ホスアンプレナビル(GlaxoSmithKline)、チプラナビル(Boehringer Ingeleheim)、KALETRA(ロピナビル+リトナビル、Abbott)及び9−(2−ヒドロキシエトキシメチル)グアニン(アシクロビル)のような他の薬剤;インターフェロン(例えば、α−インターフェロン)、インターロイキンII及びホスホノホルマート(Foscarnet)、あるいは、進入阻害剤(例えば、T20(エンフビルチド、Roche/ Trimeris)又はUK−427,857(Pfizer))、レバミソール又はチモシン、シスプラチン、カルボプラチン、ドセタキセル、パクリタキセル、フルロウラシル、カペシタビン、ゲムシタビン、イリノテカン、トポテカン、エトポシド、マイトマイシン、ゲフィチニブ、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、デキサメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、アセトアミノフェン、ミソニダゾール、アミホスチン、タムスロシン、フェナゾピリジン、オンダンセトロン、グラニセトロン、アロセトロン、パロノセトロン、プロメタジン、プロクロルペラジン、トリメトベンズアミド、アプレピタント、アトロピンとのジフェノキシラート、及び/又はロペラミドである。抗トロンビンIIIのような抗凝固剤、活性化プロテインC、及びフューリン阻害剤のようなプロテアーゼ阻害剤など。
【0093】
方法はまた、患者から得られたサンプルをアッセイして、IαI、PαI、IαIp、H3、H4、H1、H2及びLCのうちの1つ又はそれ以上のレベルを検出することによって、IαIpによる治療に対する応答を予測することが含まれ、この場合、検出されたレベルにより、IαIpによる治療に対する好ましい応答をもたらせる患者が特定される。例えば、IαI及び/又はPαIの検出可能なレベルにおける減少は、患者がIαIpの投与から利益を受けることができることを示す。
【0094】
方法ではまた、IαI、PαI、IαIp、H3、H4、H1、H2及びLCのうちの1つ又はそれ以上の処置前レベルを決定すること;治療有効量のIαIpを患者に投与すること;及び、IαIpによる初期処置の後の患者におけるレベルの1つ又はそれ以上のレベルを決定すること、によってIαIp療法により治療されている患者の進行をモニターすることが含まれ、ここに於いて、IαIpによる治療の後での患者におけるレベルの増大は、患者がIαIpによる治療に対する好ましい臨床的応答を有しそうであることを示す。
【0095】
IαIpによる治療のためのキットは、IαI、PαI、IαIp、H3、H4、H1、H2及びLCの1つ又はそれ以上と、治療に使用するための説明書とを含むことができる。キットは、本明細書中に記載されるIαIp組成物と、使用のための説明書とを有することもまた意図される。例えば、キットは、IαI及びPαIと、投薬量、投与形態及び貯蔵条件に関する情報を提供する説明書とを有することができる。
IαIpを含む容器、及びIαIpを患者に投与するための指示を伴うラベル又は包装添付文書もまた意図される。説明書は、投薬量、投与形態及び貯蔵条件のための指示を提供することができる。
【0096】
(実施例)
本発明は、以下に記載される実施例に限定されると解釈されるものではなく、むしろ、本明細書中に提供される如何なる適用、及び当業者の技術に含まれるすべての均等な変形をも含むものと解釈されたい。
【実施例1】
【0097】
(IαIp複合体の一部としてのH4の特長づけ)
SELDI−TOF質量分析法による分析では、重鎖4(H4)もまた125kDaのバンド(PαI)及び250kDaのバンド(IαI)の両方に存在することが示された(データは示されず)。250kDaのバンドにおけるH4の存在が、より顕著である。このことは、IαI(H1+H2+LC)及びPαI(H3+LC)とは異なる別の複合体タンパク質が本発明のいくつかの組成物では存在し得ることを示唆している。これまでのところ、H4は複合体化形態では記載されていない。遊離状態のH4は125kDa又は250kDaよりも小さい。質量分析法の結果により、本発明者らは、H4がビクニン(軽鎖)又は他の何かとの複合体で存在しているのではないかと考える。
【実施例2】
【0098】
(敗血症の動物モデル)
オスのスプラーグドーリー(Sprague-Dawley)ラット(275g〜325g)を温度制御の部屋において12時間の明暗周期で飼育し、ラットには標準的なPurinaラット規定食を与えた。敗血症を誘導する前に、ラットを水を自由に摂取させる以外は一晩絶食させた。ラットをイソフルラン吸入により麻酔し、腹側頸部、腹部及び鼠径部の毛を剃り、その部分を10%のポビドンヨウ素により洗浄した。2cmの中線腹部切開を行った。盲腸を露出させ、腸閉塞を避けるために回盲弁の丁度末端で結紮し、18ゲージのニードルにより2回穿刺し、少量の糞便が穴から流れることを可能にするようにわずかに圧迫し、その後、腹腔に戻した。その後、腹部切開を層状に閉じた。偽手術の動物(すなわち、対照動物)は、同じ手順を受けたが、盲腸の結紮又は穿刺のいずれも行われなかった。動物を、手術後直ちに皮下への3ml/100gBWの規定食塩水により蘇生させた。その後、動物を、組織サンプルの採取のために、盲腸結紮・穿刺(CLP)又は偽手術の後の様々な間隔で麻酔した。すべての実験は、実験動物の使用に関する国立衛生研究所の指針に従って行われた。この計画は、North Shore−Long Island Jewish Research Instituteの施設内動物管理使用委員会によって承認された。
【0099】
(ヒトIαIpの調製及び投与)
ヒトIαIp(IαI及びPαIの両方)を、凝固因子VIIIをヒト血漿から精製するために設計された手法の副産物として単離した。この手法は低温沈降物のイオン交換クロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィーを伴う。約70%の純度がクロマトグラフィー分離後に達成された。このIαIp含有調製物は、毒性、血栓形成性又は低血圧に関して副作用をほとんど有していない。敗血症発症後の1、5、10時間又は10及び20時間で、左大腿静脈に、イソフルラン麻酔下、ポリエチレン−50チューブをカニューレ挿入した。30mg/kgBWの用量でのヒトIαIp濃縮物、又は等体積の媒体(規定食塩水、1.5ml/ラット)を、一定の注入速度で30分かけて、大腿カテーテルを介して静脈内投与した。ヒトIαIpの投与は、以前の実験では、注入期間中又はその後において平均動脈圧又は心拍数を変化させなかった(データは示されず)。
【0100】
(肝臓ビクニン遺伝子のRNA抽出及び測定)
肝臓は、ビクニンの主要な供給源と考えられる。従って、本発明者らは肝臓におけるビクニンのmRNA発現を測定した。総RNAをTri−Reagent(Molecular Research Center, Cincinnati, OH)によって肝臓から抽出した。100mgの肝臓組織を1.5mlのTri−Reagentにおいてホモジナイズし、クロロホルムの添加によって水相及び有機相に分離し、遠心分離した。RNAをイソプロパノールの添加によって水相から沈殿させ、エタノールにより洗浄した。ペレットを0.1%のDEPCで処理した脱イオン化蒸留水に溶解した。RNAの濃度及び純度を、260及び280nmにおいて吸光度を測定することによって決定した。各組織に由来する5μgのRNAを、50mMのKCl、10mMのTris−HCl、5mMのMgCl、1mMのdNTP、20UのRNase阻害剤、2.5mMのオリゴd(T)16プライマー、及び50Uの逆転写酵素を含有する20μlの反応体積に逆転写した。逆転写反応液を42℃にて1時間インキュベーションし、その後95℃で5分間加熱した。1μlのcDNAを、50mMのKCl、10mMのTris−HCl、2mMのMgCl、0.2mMのdNTP、及び0.7UのAmpliTaq DNAポリメラーゼを含有する、25μlのPCR混合物において、ラットのビクニン(633bp)(5’TGACGAATATGCCATTTTCC3’、5’CCACAGTACTCCTTGCACTCC3’)(受入番号S87544)、ラットのグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ7(G3PDH)(24)(983bp)(5’TGAAGGTCGGTGTCAACGGATTTGGC3’、5’CATGTAGGCCATGAGGTCCACCAC3’)に対して特異的な、3’及び5’プライマーのそれぞれ0.15μMを用いて、増幅した。PCRをBio−Radサーマルサイクラーで行った。RT−PCR後、5μlの反応混合物を、0.22μg/mlの臭化エチジウムを含有する、1.2%のTBEアガロースゲルで電気泳動した。その後、ゲルを展開させ、バンドの強度を、Bio−Rad画像システム(Hercules、CA)を使用してG3PDHによって正規化した。
【0101】
(タンパク質の放射性ヨウ素化及びIαIp半減期の決定)
精製されたIαIpを、1,3,4,6−テトラクロロ−3a−6a−ジフェニルグリコルリル(IODO−GENヨウ素化試薬;Pierce, Rockford, IL)を使用してNa125I(Amersham, Arlington Heights, IL)により放射性ヨウ素化した。取り込まれなかった125Iを、反応混合物をExcellulose GF−5脱塩カラム(Pierce)に加えることによって除いた。放射能をガンマカウンタ(Pharmacia-LKB, Piscataway, NJ)で測定した。CLP又は偽手術の後12時間で、動物をイソフルリン吸入により麻酔した。鎮静の定常状態をナトリウムペントバルビタール(約30mg/kgBW)のその後の静脈内注射により維持した。ポリエチレン−50カテーテルを右頸静脈及び左大腿動脈に設置し、125I標識のIαIpのボーラス注射(約500,000cpm/ラット)を、頸静脈カニューレを介して施した。シリンジにおける残留放射能をガンマカウンタにより測定し、その放射能カウントを最初の注射前のカウントから引いて、正味の注射された放射能を求めた。血液サンプルを、循環における125I−IαIpの半減期(t1/2)を求めるために、注射後直ちに、そしてその後、8時間の間に2時間毎に採取した。各サンプルにおける放射能(cpm)をガンマカウンタにより測定した。t1/2を、Wu R、Zhou M、Cui Xら(Ghrelinクリアランスは多菌性敗血症の後期段階では低下する、Int J Mol Med. 2003, 12: 777-782)に従って計算した。
【0102】
(生存の検討)
CLPを上記のように行った。CLP後1、5、10時間又は10及び20時間で、ヒトIαIp濃縮物(30mg/kgBW)又は媒体(規定食塩水、1.5ml/ラット、CLP後1時間にて、又はCLP後10時間及び20時間にて)を静脈内注入した、CLP後20時間にて、壊死した盲腸を切除し、腹腔を40mlの暖かい滅菌された規定食塩水溶液を使用することによって2回洗浄した。その後、腹部切開を層状に閉じた。CLP動物における盲腸切除の手法は、敗血症病巣を可能ならいつでも除去しなければならない臨床的状況を模倣するために行った。その後、動物には食物及び水を自由に取らせ、そして、動物を、生存を記録するために10日間モニターした。
【0103】
(統計学的分析)
結果は平均値±SEとして表される。一元配置分散分析(ANOVA)及びチューキー検定を使用して、異なる実験動物群を比較した。生存率をカプラン・マイヤー法によって推定し、ログランク検定によって比較した。値における違いは、P<0.05ならば、有意であると見なした。
【0104】
(CLP後のビクニンのmRNA発現における変化)
ビクニンはIαIpの活性な部分である。肝臓はビクニンの主要な供給源である。従って、本発明者らは、IαIpの産生を示すために、肝臓におけるビクニンのmRNA発現を選んでいる。図3に示されるように、肝臓におけるビクニンのmRNA発現はCLP後5時間では変化しない、しかしながら、CLP後20時間で32%の減少が、偽手術の動物と比較して見出された(P<0.05)。
【0105】
(CLP後の125I−IαIpの半減期における変化)
IαIpの半減期を、敗血症発症後12時間で注射された放射能標識IαIpの血中レベルの変化を測定することによって評価した。図4に示されるように、125I−IαIpのt1/2が、CLP後、5.6±0.3時間〜11.8±2.7時間に著しく増大した(P<0.05)。
【0106】
(生存率に対するIαIpの効果)
CLP及び盲腸切除の後における生存率は、(CLP後1時間での)1回の媒体投与の場合、2日目で75%であり、5〜10日目では50%に低下した(図5)。しかしながら、CLP後1時間でのヒトIαIpの投与は、10日間の観察期間中を通して、生存率を92%に改善させた(P<0.05;図5)。CLP後5時間又は10時間でのヒトIαIpの投与は、生存率を64%及び73%にそれぞれ改善させたが、これらの改善は統計学的には有意ではなかった(図6)。CLP及び盲腸切除の後における生存率は、(CLP後10時間及び20時間での)2回の媒体投与の場合、2日目で56%であり、5〜10日目では44%に低下した(図7)。これは、1回の媒体投与(図5)と比較して、著しく異なっていなかった。しかしながら、CLP後10時間及び20時間でのヒトIαIpの投与は、10日間の観察期間中を通して、生存率を81%に改善させ、これは、媒体群と比較して、著しく異なっていた(P<0.05;図7)。
【0107】
敗血症は、全身炎症、凝固障害、呼吸不全、心筋機能不全、腎不全及び神経認知欠如によって特徴づけられる臨床的症候群である。この症候群は、侵入微生物による内因性の炎症性媒介因子の過度な始動から生じていると一般には推定されている。このような媒介因子には、活性化された単球、マクロファージ、内皮細胞及び好中球によって放出される物質、例えば、サイトカイン、反応性の酸素化学種、及びプロテアーゼなどが含まれる。重篤な炎症性応答では、多形核球の顆粒球を含む様々な血液細胞及び組織細胞が、リソソームプロテイナーゼを細胞外及び循環内に放出する。そのようなプロテアーゼ、並びに食作用(ファゴサイトーシス)中に産生される通常的な細胞内の酸化性因子は、組織及び器官の損傷を開始させ、そして、血漿の凝固因子及び補体因子の非特異的なタンパク質分解を高めることができる。好中球プロテイナーゼ(特に、ヒト白血球エラスターゼ)の放出は、敗血症患者における合併症の進行に関係している。それらの血漿中レベルは、感染により誘導される炎症の重篤度と緊密に相関しており、来るべき臓器不全を大いに予測することができる。
【0108】
ヒトにおける敗血症性ショックのときには、プロテアーゼの上昇した活性に加えて、IαIpの低下した血漿中レベルが報告されている。IαIpの濃度がひどく低下した患者は、死亡率がより大きい。本発明者らの結果は、肝臓におけるビクニンの遺伝子発現が、CLP動物では、偽手術の動物の場合よりも著しく低いことを示している。インターα阻害剤ファミリーにおけるタンパク質に関連づけられたmRNAの発現を、霊長類、ブタ及び齧歯類において様々な組織で調べた。これらの検討は、IαIpファミリーのすべてのメンバーの源である遺伝子が主として肝臓において転写されることを示している。本発明者らの結果はまた、他の器官(すなわち、腸及び腎臓)におけるビクニンの遺伝子発現が、偽手術体と比較して、CLP後の5時間又は20時間で著しく変化しなかったことを示している(データは示されず)。
【0109】
CLP後20時間で肝臓においてだけ観測された著しいダウンレギュレーションは、この器官がIαIpの重要な供給源であり得ること、及び、その上、敗血症の後期段階では、肝臓におけるビクニン遺伝子の発現が著しく減少することを示唆している。治療的には、ビクニンは、胃切除後の膵炎を防止するため、又は心臓手術後の臓器傷害を弱めるため、の予防的治療としてヒトにおいて有益な効果を有することが報告されている。致死性の大腸菌菌血症の急性イヌモデルにおけるビクニンの効果を調べた検討では、血行力学的変数の改善及び心拍出量及び平均動脈圧の正常化、を伴った類似する結果が示された。ビクニンの血漿中の半減期は非常に短い(約10分)ので、この薬剤の持続した有益な効果を維持するために、ビクニンの半減期を伸ばすことは重要であると考えられる。本発明者らの結果は、偽手術動物におけるIαIpの半減期が5.6時間であることを示している。放射性標識されたIαIpが敗血症発症後の12時間で注射されたとき、本発明者らは、IαIpの半減期が11.8時間に伸びたことを見出した。これらの結果は、IαIpのクリアランスが、敗血症期間中に著しく低下したことを示している。しかしながら、クリアランスが低下した場合でさえ、IαIpの血漿中レベルは敗血症の患者では著しくより低いままである。本発明者らの以前の検討は、敗血症発症後の早期(すなわち、CLP後1時間)での低純度のIαIpの投与は、心拍出量及び全身酸素送達を維持し、かつ、全身酸素消費及び全身酸素除去率を増大させたことを示している。その上、IαIpは、CLP後20時間で、TNFαの産生をダウンレギュレーションし、かつ、肝細胞の傷害及び乳酸アシドーシスを弱めた。加えて、敗血症発症後1時間でのIαIpの投与は敗血症動物において生存を改善した。
【0110】
ヒトIαIpタンパク質を工業的規模の血漿分画の副産物として単離した。この単離方法は、主要な血漿形態のビクニン含有タンパク質(IαI及びPαI)を高度に、かつ同時に濃縮する。従って、この調製では、血漿IαIpの生理学的組成物が得られる。死亡について実施された検討の結果は、CLP後1時間でのIαIpの投与により、生存率がCLP及び盲腸切除の後の10日間で50%〜92%に改善されたことを示している。CLP後5時間又は10時間でのヒトIαIpの投与は、生存率を64%及び73%にそれぞれ改善したが、これらの改善は統計学的には有意ではなかった。
【0111】
しかしながら、CLP後10時間又は20時間でのヒトIαIpの投与は、生存率を44%〜81%に著しく改善させた。従って、IαIpは、多菌性の敗血症の進行時における生存を改善するための有用な補助剤である。まとめると、肝臓におけるビクニンの遺伝子発現は敗血症時に減少し、IαIpの半減期が5.6±0.3時間〜11.8±2.7時間に増大した。このことは、低下したクリアランスにもかかわらず、敗血症におけるビクニンのダウンレギュレーションを示唆している。CLP後1時間でのIαIpの投与は、生存率を50%〜92%に改善し、これに対して、IαIpがCLP後5時間又は10時間で投与されたときには、著しい改善が認められなかった。しかしながら、CLP後10時間及び20時間でのIαIpの2回の注入は、生存率を44%〜81%に増大させた。ヒトIαIpの遅延した、しかし、繰り返された投与は、CLP後の生存を改善している。
【実施例3】
【0112】
(IαIpの精製)
DEAEセファデックスA50を用いた固相抽出の後の、透析又は限外ろ過/透析ろ過された溶出物を加えた後、弱く結合した成分が、0.28Mの塩化ナトリウムを含有する0.005Mのクエン酸ナトリウム/0.0055Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)を用いてDEAE−セファロースFFカラムから溶出させる(これは、Hofferら(Journal of Chromatography B 669 (1995) 187-196)に記載される)。前の工程において、カラムを、0.20Mの塩化ナトリウムを含有する0.005Mのクエン酸ナトリウム/0.0055Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)により洗浄した。
0.005Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に対する透析又は限外ろ過/透析ろ過(UF/DF)の後、溶出液をヒドロキシルアパタイトカラムに加えた。IαIpタンパク質はカラムに結合せず、IαIpタンパク質を素通り画分として集めた。混入しているタンパク質(主に、FII、FVII及びFX)を、リン酸ナトリウム緩衝液の増大する濃度によるグラジエントを使用して溶出させることができる。IαI/PαI分画物は、90%を超える標的タンパク質(主に、IαI及びPαI)を含有する。
【実施例4】
【0113】
(第IX因子の素通り画分からのIαIpの精製)
ヘパリンセファロースアフィニティクロマトグラフィー(L.Hofferらの「J. of Chromatography B」)からの非結合タンパク質を、DEAE−セファロースFFアニオン交換カラムに加える。カラムを少なくとも3カラム体積の0.005Mのリン酸塩緩衝液(pH7.0)により洗浄した後、IαI/PαI含有画分を、0.55Mの塩化ナトリウムを含有する0.005Mのリン酸塩緩衝液(pH7.0)(溶出緩衝液)により溶出した。溶出液は約30〜40%のIαI/PαIを含有する。0.005Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に対する透析又は限外ろ過/透析ろ過(UF/DF)の後、DEAEセファロースFFからの溶出液をヒドロキシルアパタイトカラムに加えた。IαI/PαIはカラムに結合せず、IαI/PαIを素通り画分として集める。混入しているタンパク質(主に、FII及びFX)を、リン酸ナトリウム緩衝液の増大する濃度によるグラジエントを使用して溶出させることができる。精製されたIαI/PαI画分は、90%を超える標的タンパク質を含有する。
【実施例5】
【0114】
DEAE−セファデックスA50(L. Hoffer et al., J. of Chromatography B)又はQ−セファデックスA50(D. Josic et al., Thrombosis Research、上記参照)でのクリオプア血漿の固相抽出からの溶出液を、80mLのカラム体積を有するDEAE−CIMチューブモノリスに加えた(K. Branovic et al., J of Chromatography A, 903 (2000) 21-32 を参照のこと)。非結合画分(素通り)を集めた。続いて、カラムを3カラム体積の0.02MのTris−HCl(pH7.4)(平衡緩衝液)により洗浄した。結合したタンパク質を、0.35Mol/Lの塩化ナトリウムを含有する0.02MのTris−HCl(pH7.4)を用いた最初の工程で溶出し(溶出液1)、そして、0.55Mの塩化ナトリウムを含有する0.02MのTris−HCl(pH7.4)を用いた第2の工程で溶出した(溶出液2)。IαI/PαIが素通り画分及び溶出液1に見出される。素通り画分は約35〜45%のIαI/PαIを含有する。溶出液1におけるこれらの標的タンパク質の量は、20〜30%である。IαI/PαIを含有する分画物を、0.005Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7)に対する透析又は限外ろ過/透析ろ過(UF/DF)に供し、そして、ヒドロキシルアパタイトカラムに加えた。IαIpはカラムに結合せず、IαIpを素通り画分として集める。素通り画分は90%を超えるIαI/PαIを含有する。
図8a及び図8bは、実施例3〜5によって表されるように、IαIpの例示的な精製スキームを流れ図で記述する。
【実施例6】
【0115】
(動物検討における高度に精製されたIαIpの有益な効果)
多菌性の敗血症を、オスのスプラーグドーリーラットにおいて盲腸の結紮・穿刺(CLP)によって誘導した。動物を、CLPを行う前に水を自由に摂取させる以外は一晩絶食させた。実験のとき、ラットをメチルフルラン吸入によって麻酔し、2cmの腹部中線切開を行った。盲腸を露出させ、腸閉塞を避けるために回盲弁の丁度末端で結紮し、18ゲージのニードルにより2回穿刺し、少量の糞便が押し出されるように穏やかに圧迫し、その後、腹腔に戻した。腹部切開を層状に閉じ、動物に30mL/kg体重の規定食塩水溶液を蘇生液としてCLP後直ちに皮下に与えた。2群のラット(n=12/群)をこの実験に使用した。治療群には、高度に精製されたIαIpを、30mg/kg体重で、CLP後の10時間及び20時間にて与えた。対照群には、生理的食塩水を与えた。CLP後20時間で、壊死した盲腸を切除し、腹腔を、40mlの暖かい滅菌された規定食塩水溶液を使用することによって2回洗浄した。その後、腹部切開を層状に閉じた。CLP動物における盲腸切除の手法は、敗血症病巣が除去される臨床的状況を模倣するために行った。実験動物には食物を自由に取らせ、そして、動物を、非生存体について死亡時間を記録するために10日間モニターした。対数順位検定(log-rank test)を、異なる動物群の間での死亡率の比較のために用い、p値をカプラン・マイヤー法によって求めた。生存における著しい増大が、生理的食塩水のコントロール群と比較して、治療群で観測された(対照群の44%に対して、治療群において動物の81.3%が生存した(p値=0.0293))。このことは、高度に精製されたIαIpが生物学的に活性(有効)であり、かつ、敗血症動物において敗血症関連死を減少させることにおいて効果的であることを示唆している。結果を図9に示す。
【0116】
【表1】

【0117】
高度に精製されたIαIp(クリオプア血漿由来)の阻害の比活性を計算し、低温沈降物(fVIII製造の副分画物)から精製されたIαIpと比較した。IαIpの生物学的活性を、発色性基質のL−BAPA(N(α)−ベンゾイル−L−アルギニン−4−ニトロアニリド塩酸塩:Fluka Chemicals)を使用するトリプシン阻害アッセイで測定した。このアッセイは、L−BAPAの加水分解を阻害するIαIpの能力に基づく。阻害を、410nmでのΔ吸光度/分の速度における減少によってモニターすることができる。総タンパク質濃度をBioRadタンパク質アッセイによって定量測定し、IαIp濃度を、Limら(J. of Infectious Diseases (2003))に記載されるようにMAb69.31を使用する競合的ELISAによって測定した。クリオプア血漿と低温沈降物から精製されたIαIp調製物との間には、トリプシン阻害の比活性の著しい違いは、存在しなかった(p値=0.939)。このことは、両方の分画物におけるIαIpは匹敵し得る生物学的活性を有していることを示唆している。
【実施例7】
【0118】
(FIX精製からの副分画物)
DEAE−セファロースFFでの凝固因子FIXのクロマトグラフィー精製からの「洗浄画分」(Josic et al, Journal of Chromatography、上記にて引用)。この画分は、0.25Mの塩化ナトリウムを含有する0.01〜0.1Mのクエン酸ナトリウム/0.005〜0.1Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)を用いて溶出させることができる。IαI及びPαIがこの画分における主成分である。FIX含有画分は、次の工程において、0.3〜0.6Mの塩化ナトリウムを含有する0.01〜0.1Mのクエン酸ナトリウム/0.005〜0.1Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)を用いて、DEAEセファロースFFカラムから溶出させることができる。この分画物もまた、残存量のIαIpと一緒に、凝固因子II(FII)、凝固因子X(FX)、より少ない量の凝固因子VII(FVII)のような他のビタミンK依存性凝固因子を含有する。モル浸透圧濃度及び塩濃度を低下させるために透析を行った後、FIX画分における残留IαIpを、固定化ヘパリンでのアフィニティクロマトグラフィー、そして、塩濃度及びモル浸透圧濃度が増大する緩衝液での段階的溶出によって回収することができる。洗浄緩衝液での初期の溶出段階から得られる画分は、80%を超えるIαIpを含有し、FIXの混入が非常に低い。後の工程の塩濃度及びモル浸透圧濃度が高い緩衝液では、FIXの溶出が生じる。ヘパリンに結合しない素通り画分もまた存在し、これはFIXを含まず、IαIp(30〜40%)、ビタミンK依存性凝固因子、及びウイルス不活性化のために使用された溶媒/界面活性剤(S/D)の混合物、を含有する。S/Dは、DEAE−セファロースFFの追加のロマトグラフィー工程で除くことができる。
【0119】
DEAE−セファロース、固定化ヘパリン、又はヘパリンからの素通りから集められたIαIp含有画分は、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーによって個々に、又はまとめて精製することができる。いずれかの方法を使用しても、最終的な調製物は90%を超えるITIを含有する。
【0120】
これらのプロトコルを用いて精製された濃縮物は、90%を超えるIαI/PαIを含有する。これは溶媒/界面活性剤処理によってウイルス不活性化されている。安定化剤の使用を伴うか、又は伴わないで、30分を超える最終容器での最終的な加熱、又は安定化剤の存在下で55〜65℃にて低温殺菌を、活性の著しい喪失を伴うことなく、第2のウイルス不活性化工程として導入することができる。
【0121】
90%を超えるIαI/PαIを含有する得られた濃縮物は、S/D処理を用いてウイルス不活性化すること、又は第2のウイルス不活性化工程として、安定化剤を伴うか、又は伴わないで、30分間の精製タンパク質の最終的な加熱、又代わりに、安定化剤の存在下で55℃〜65℃にて低温殺菌を用いてウイルス不活性化することができる。
【0122】
(強アニオン交換の分画物)
弱アニオン交換体DEAEセファデックスA50による固相抽出後の溶出液の代わりに、強アニオン交換体QセファデックスA50による固相抽出後の溶出液を使用することができる。溶出条件がドイツ国特許DE4342132C1号に記載される。IαI及びPαIの混合物は、このモノリシックアニオン交換支持体DEAE−CIMに結合しないか、又は弱く結合するだけである。凝固因子のFII、FVII、FIX及びFX、凝固阻害剤のPC、PS及びPZ、接着タンパク質のビトロネクチン、並びにプロテアーゼFSAPのような、他のタンパク質は別個の画分に溶出される。残留する混入物のさらなる分離を、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーを使用して次の工程で達成することができる。
【0123】
(モノリスクロマトグラフィーの分画物)
DEAE CIMモノリス(膜)を、DEAEセファロースFF又は他の粒子型アニオン交換体の代わりに、FIX精製におけるクロマトグラフィー分離のために使用することができる(ドイツ国特許DE4342132C1号を参照のこと)。驚くべきことに、IαI及びPαIは、このモノリシック支持体に結合しないか、又は弱く結合しただけであった。FIX、ビトロネクチン、並びにFII、FVII(少量)及びFXのような、他のタンパク質、が別個の画分として溶出した。第VII因子活性化プロテアーゼ(FSAP)(J. Roemisch, Biological Chemistry, 383 (2002) 1119-1124)に主に由来するタンパク質分解活性もまた、この精製工程で完全に分離された。IαI/PαI含有画分からの残留する混入物、すなわち、微量のビタミンK依存性凝固因子FII、FVII及びFXのさらなる分離が、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーを使用して次の工程で達成された。
【0124】
本願明細書で引用されるすべての刊行物及び特許文書は、個々の刊行物又は特許文書にそれぞれ示されているように、参照してその全てを本明細書に取り込む。別途定義されない限り、本明細書中で使用されているすべての技術的用語及び科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般に理解される意味を有する。下記の参考文献は、当業者に、本発明において使用される多くの用語の一般的な定義を提供するものである;Singletonらの「Dictionary of Microbiology and Molecular Biology (2nd ed. 1994)」;「The Cambridge Dictionary of Science and Technology (Walker ed. 1988)」;R.Riegerら(編)、Springer Verlagの「The Glossary of Genetics, 5th Ed.(1991)」 ;及び、Hale及びMarhamの「The Harper Collins Dictionary of Bilogy(1991)」。
【0125】
(参照による取り込み)
本出願明細書全体を通して引用されるすべての参考文献(文献、発行された特許、公開された特許出願、及び同時係属中の特許出願を含む)の内容は、参照して特にその全てを本明細書に取り込む。
【0126】
(均等物)
当業者であれば、本明細書中に記載される本発明の特定の実施形態の多くの均等物を認識するか、又は通常の実験により確認することができるものである。そのような均等物は、上記の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】図1は、脾臓の組織病理を示す。正常な周囲の白脾髄及びわずかに細胞過多の赤脾髄を有するIαIpで治療された動物(B)に対する対照動物(A)における赤脾髄細胞エレメントの広範囲にわたる喪失を伴って白脾髄によって囲まれた筆毛動脈(H&E染色、倍率20倍)。
【図2】図2は、H4のアミノ酸配列を示す。
【図3】図3は、盲腸結紮・穿刺(CLP)又は偽手術(Sham)後の5時間及び20時間での肝臓におけるビクニンのmRNA発現の変化を示す。データは、平均値±SE(n=8/群)として表され、一元配置分散分析(ANOVA)及びチューキー検定によって比較される:P<0.05対sham。図3Aは、増幅され、ゲルでサイズにより分離されたmRNAを示し、図3Bは、ビクニンレベルがG3PDHの発現に対して正規化されている結果をグラフにより示す。
【図4】図4は、盲腸結紮・穿刺(CLP)又は偽手術(Sham)後の5時間及び20時間での125I−IαIのt1/2の変化を示す。データは平均値±SE(n=5/群)として表され、一元配置分散分析(ANOVA)及びチューキー検定によって比較される。
【図5】図5は、媒体治療を伴う盲腸結紮・穿刺及び盲腸切除(CLP+媒体)の後、並びに、インターα阻害剤治療を伴う盲腸結紮・穿刺(CLP+IαIp)後の10日間での生存率の変化を示す。各群には12匹の動物が存在した。生存率をカプラン・マイヤー法によって評価し、対数順位検定を使用することによって比較した:P<0.05対CLP+媒体。
【図6】図6は、媒体治療を伴う盲腸結紮・穿刺及び盲腸切除(CLP+媒体)の後、並びに、インターα阻害剤治療を伴う盲腸結紮・穿刺(CLP+IαIp)後の10日間での生存率の変化を示す。各群には11から12匹の動物が存在した。生存率をカプラン・マイヤー法によって評価し、対数順位検定を使用することによって比較した:P<0.05対CLP+媒体。
【図7】図7は、媒体治療を伴う盲腸結紮・穿刺及び盲腸切除(CLP+媒体)の後、ならびに、インターα阻害剤治療を伴う盲腸結紮・穿刺(CLP+IαIp)後の10日間での生存率の変化を示す。各群には16匹の動物が存在した。生存率をカプラン・マイヤー法によって評価し、対数順位検定を使用することによって比較した:P<0.05対CLP+媒体。
【図8a】図8aは、本発明による、ヒト血漿からのIαIpの精製スキームを記載する。
【図8b】図8bは、本発明による、ヒト血漿からのIαIpの精製スキームを記載する。
【図9】図9は、動物による敗血症の研究における、高度に精製されたIαIpの有益な効果をグラフにより示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターα阻害タンパク質(IαI)及びプレαタンパク質(PαI)が生理学的割合で存在する、IαI及びPαIを含有する血漿分画物を、血漿から単離すること、及び
血漿分画物を精製して、IαIpの純度が約85%〜約100%の範囲にあるIαIp組成物を得ること、
からなるIαI及びPαIを生理学的割合で含む、血漿由来のIαIp組成物を製造するための方法。
【請求項2】
単離が、固相抽出によるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
固相抽出が、DEAEセファデックスによるものである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
単離が、血漿をクロマトグラフィー処理するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
クロマトグラフィーが、アニオン交換クロマトグラフィーによるものである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
アニオン交換クロマトグラフィーが粒子に基づいたものである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
粒子が、DEAEセファロース、DEAEセファデックスA50、トヨパールDEAE、TMAEフラクトゲル、DEAEフラクトゲル又はQセファロースのような固定化アニオン交換基を含有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
血漿をクロマトグラフィー処理することが、モノリシック支持体によって行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
モノリシック支持体が、DEAE−CIM又はQ−CIMのような固定化されたアニオン交換リガンドを有するCIMである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
血漿分画物が、凝固因子IXの精製から得られる副分画物を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
血漿分画物が、プロトロンビン複合体濃縮物の精製からの副分画物を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
血漿分画物が、血漿の低温沈降反応から生じる低温沈降上清として単離される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
血漿分画物が、クリオプア血漿である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
血漿分画物が、ヒト、霊長類、ウシ、ブタ、ネコ又はイヌに由来する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
血液を得ることをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
血漿を得ることをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
凝固因子IXの精製から得られる副分画物を得ることをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
プロトロンビン複合体濃縮物の精製からの副分画物を得ることをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
血漿の低温沈降反応から生じる低温沈降上清を得ることをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
クリオプア血漿を得ることをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
精製することが、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーによって実施される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
精製することが、アフィニティクロマトグラフィーによって実施される、請求項1〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
アフィニティクロマトグラフィーがヘパリンである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
精製することが、イオン交換クロマトグラフィー及びヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーによって実施される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
血漿分画物に存在するIαI及びPαIが、約60,000〜約280,000kDaの見かけの分子量を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
分子量が、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
血漿分画物をさらに精製することをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
さらに精製することが、ヘパリンアフィニティカラムに通すこと、及び素通り(非結合)画分を集めることによって実施される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
血漿分画物及び/又は精製されたIαIpを、ウイルス不活性化することをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
ウイルス不活性化することが、溶媒/界面活性剤処理又は熱不活性化によって実施される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
熱不活性化が、約55℃〜約65℃の温度であるか、又は70℃〜120℃における乾熱である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
安定化剤の添加をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
精製されたIαIpの低温殺菌又は約70℃〜約120℃における乾熱処理をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
精製されたIαIpのアニオン交換クロマトグラフィー処理をさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
アニオン交換クロマトグラフィーがDEAEセファロースである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
IαIp組成物が1時間を超える半減期を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
IαIp組成物が5時間を超える半減期を有する、請求項1〜36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
IαIp組成物が、トリプシン阻害の高い比活性を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
トリプシン阻害の比活性が、約1000〜約2000IU/mgである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
インターα阻害タンパク質(IαI)及びプレαタンパク質(PαI)が生理学的割合で存在し、その純度が約85%〜約100%であるIαI及びPαIの混合物を含有してなる、IαIpの組成物。
【請求項41】
IαIpが、約60%〜約80%のIαI及び約40%〜約20%のPαIを含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
生理学的割合が、ヒト血漿において自然の状態で現れるIαI対PαIの比率である、請求項40に記載の組成物。
【請求項43】
タンパク質が、ヒト疾患を治療するために使用される、請求項40に記載の組成物。
【請求項44】
ヒト疾患が、急性炎症性疾患、敗血症、重篤なショック、敗血症性ショック、リウマチ様関節炎、ガン、ガン転移、外傷/傷害、感染性疾患及び早期陣痛である、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
安定化剤をさらに含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項46】
安定化剤が、アルブミン、ポリエチレングリコール、α,α−トレハロース、アミノ酸、塩、グリセロール、ω−アミノ酸、糖、又はそれらの組合せである、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
インターα阻害タンパク質(IαI)及びプレαタンパク質(PαI)の混合物を含み、IαI及びPαIが、生理学的割合で前記混合物中に存在し、かつ、トリプシン阻害の高い比活性を有するものである、IαIpの組成物。
【請求項48】
IαIpが、約60%〜約80%のIαI及び約40%〜約20%のPαIを含む、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
生理学的割合が、ヒト血漿において自然の状態で現れる比率である、請求項47に記載の組成物。
【請求項50】
タンパク質が、ヒト疾患を治療するために使用される、請求項47に記載の組成物。
【請求項51】
ヒト疾患が、急性炎症性疾患、敗血症、重篤なショック、敗血症性ショック、リウマチ様関節炎、ガン、ガン転移、感染性疾患及び早期陣痛である、請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
安定化剤をさらに含む、請求項47に記載の組成物。
【請求項53】
安定化剤が、アルブミン、ポリエチレングリコール、α,α−トレハロース、アミノ酸、塩、グリセロール、ω−アミノ酸、糖、又はそれらの組合せである、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
インターα阻害タンパク質(IαI)及びプレαタンパク質(PαI)の混合物を含み、IαI及びPαIが、生理学的割合で前記混合物中に存在し、かつ、1時間を超える半減期を有するものである、IαIpの組成物。
【請求項55】
IαIpが、約60%〜約80%のIαI及び約40%〜約20%のPαIを含む、請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
IαIp組成物が、少なくとも5時間の半減期を有する、請求項54に記載の組成物。
【請求項57】
IαIp組成物が、少なくとも10時間の半減期を有する、請求項54に記載の組成物。
【請求項58】
生理学的割合が、ヒト血漿において自然の状態で現れる比率である、請求項54に記載の組成物。
【請求項59】
タンパク質が、ヒト疾患を治療するために使用される、請求項54に記載の組成物。
【請求項60】
ヒト疾患が、急性炎症性疾患、敗血症、重篤なショック、敗血症性ショック、リウマチ様関節炎、ガン、ガン転移、感染性疾患及び早期陣痛である、請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
安定化剤をさらに含む、請求項54に記載の組成物。
【請求項62】
安定化剤が、アルブミン、ポリエチレングリコール、α,α−トレハロース、アミノ酸、塩、グリセロール、ω−アミノ酸、糖、又はそれらの組合せである、請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
インターα阻害タンパク質(IαI)及びプレαタンパク質(PαI)の混合物を含み、IαI及びPαIが、生理学的割合で前記混合物中に存在し、かつ、3つの重鎖(H1、H2及びH3)のうちの少なくとも1つと会合したインターα阻害タンパク質の軽鎖を含むものである、IαIpの組成物。
【請求項64】
IαIpが、約60%〜約80%のIαI及び約40%〜約20%のPαIを含む、請求項63に記載の組成物。
【請求項65】
生理学的割合が、ヒト血漿において自然の状態で現れるIαI対PαIの比率である、請求項63に記載の組成物。
【請求項66】
タンパク質が、ヒト疾患を治療するために使用される、請求項63に記載の組成物。
【請求項67】
ヒト疾患が、急性炎症性疾患、敗血症、重篤なショック、敗血症性ショック、リウマチ様関節炎、ガン、ガン転移及び感染性疾患である、請求項66に記載の組成物。
【請求項68】
安定化剤をさらに含む、請求項63に記載の組成物。
【請求項69】
安定化剤が、アルブミン、ポリエチレングリコール、α,α−トレハロース、アミノ酸、塩、グリセロール、ω−アミノ酸、糖、又はそれらの組合せである、請求項63に記載の組成物。
【請求項70】
インターα阻害タンパク質(IαI)及びプレαタンパク質(PαI)の混合物を含み、IαI及びPαIが、生理学的割合で前記混合物中に存在し、かつ、4つの重鎖(H1、H2、H3及びH4)のうちの少なくとも1つと会合したインターα阻害タンパク質の軽鎖を含むものである、IαIpの組成物。
【請求項71】
IαIpが、約60%〜約80%のIαI及び約40%〜約20%のPαIを含む、請求項70に記載の組成物。
【請求項72】
生理学的割合が、ヒト血漿において自然の状態で現れるIαI対PαIの比率である、請求項70に記載の組成物。
【請求項73】
タンパク質が、ヒト疾患を治療するために使用される、請求項70に記載の組成物。
【請求項74】
ヒト疾患が、急性炎症性疾患、敗血症、重篤なショック、敗血症性ショック、リウマチ様関節炎、ガン、ガン転移、感染性疾患及び早期陣痛である、請求項73に記載の組成物。
【請求項75】
安定化剤をさらに含む、請求項70に記載の組成物。
【請求項76】
安定化剤が、アルブミン、ポリエチレングリコール、α,α−トレハロース、アミノ酸、塩、グリセロール、ω−アミノ酸、又はそれらの組合せである、請求項75に記載の組成物。
【請求項77】
インターα阻害タンパク質(IαI)及びプレαタンパク質(PαI)の混合物を含み、IαI及びPαIが、生理学的割合で前記混合物中に存在し、請求項1〜39のいずれかに従って作製されるものである、IαIpの組成物。
【請求項78】
追加の治療剤をさらに含む、請求項40〜77のいずれかに記載の組成物。
【請求項79】
追加の治療剤が、抗ガン剤、抗炎症剤、抗凝固剤又は免疫調節剤である、請求項78に記載の組成物。
【請求項80】
請求項40、47、54、63、70又は77のいずれかに記載される治療に有効な組成物、及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項81】
請求項1〜39のいずれかに記載される方法によって作製される、IαIpの治療有効量を投与することを含む、患者における炎症関連障害、ガン又は感染性疾患を治療する方法。
【請求項82】
IαIpが、患者から単離される、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
患者が、ヒト、ウシ、ブタ、ヤギ又は霊長類である、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
IαIpが、錠剤、カプセル又は注射剤として投与される、請求項81に記載の方法。
【請求項85】
IαIpが、少なくとも85%の純度である、請求項81に記載の方法。
【請求項86】
IαIpが、約85%〜約100%の純度である、請求項81に記載の方法。
【請求項87】
IαIpが、約60%〜約80%のIαI及び約40%〜約20%のPαIを含む、請求項81に記載の方法。
【請求項88】
(a)患者において、下記:
(i) IαIのレベル;
(ii) PαIのレベル;
(iii) IαIpのレベル;
(iv) H3のレベル;
(v) H4のレベル;
(vi) H1のレベル;
(vii) H2のレベル;及び
(viii)LCのレベル
の1つ又はそれ以上の処置前レベルを決定すること、並びに
(b)治療有効量のIαIpを患者に投与すること、
を含む、急性炎症性疾患、敗血症、重篤なショック、敗血症性ショック、リウマチ様関節炎、ガン、ガン転移、感染性疾患又は早期陣痛について、患者を治療する方法。
【請求項89】
(c)IαIpによる初期処置の後の、処置後のレベルの1つ又はそれ以上を決定することをさらに含み、IαIpのレベルの調節が、治療が好ましい臨床的応答を生じさせているという指標である、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
調節が、IαIpのレベルに於いて増大することである、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
IαI、PαI、IαIp、H3、H4、H1、H2及びLCのレベルが免疫学的方法によって決定される、請求項88に記載の方法。
【請求項92】
患者が、炎症、腫瘍侵入、腫瘍転移、敗血症、敗血症性ショック、リウマチ様関節炎、早期陣痛、ガン又は感染性疾患を有することで特定される、請求項88に記載の方法。
【請求項93】
初期処置の期間が、定常状態の血漿中IαIp濃度に到達するのに要する時間である、請求項88に記載の方法。
【請求項94】
追加の治療剤を投与することをさらに含む、請求項88に記載の方法。
【請求項95】
追加の治療剤が、抗ガン剤、抗炎症剤、抗凝固剤又は免疫調節剤である、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
下記:
(i) IαI;
(ii) PαI;
(iii) IαIp;
(iv) H3;
(v) H4;
(vi) H1;
(vii) H2;及び
(viii)LC
の1つ又はそれ以上のレベルを検出するために、患者から取得したサンプルをアッセイし、検出されたレベルが、IαIp療法に対して好ましい応答をする患者を特定することを含む、IαIp療法に対する応答を予測するための方法。
【請求項97】
検出されたレベルが、IαI及びPαIのレベルに於いて減少しているものである、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
(a)下記:
(i) IαIのレベル;
(ii) PαIのレベル;
(iii) IαIpのレベル;
(iv) H3のレベル;
(v) H4のレベル;
(vi) H1のレベル;
(vii) H2のレベル;及び
(viii)LCのレベル;
の1つ又はそれ以上の患者に於ける処置前レベルを決定すること、
(b)治療有効量のIαIpを患者に投与すること、及び
(c)IαIpによる初期処置の後の患者に於けるレベルの1つ又はそれ以上を決定することを含み、IαIpによる処置後の患者に於けるレベルが増大することが、患者がIαIpによる治療に対して好ましい臨床的応答を有しそうであるということを示すものである、IαIp療法を受けている患者の進行をモニターする方法。
【請求項99】
下記:
(i) IαI;
(ii) PαI;
(iii) IαIp;
(iv) H3;
(v) H4;
(vi) H1;
(vii) H2;及び
(viii)LC;
のうちの1つ又はそれ以上、並びに治療に使用するための説明書を含む、IαIp療法のためのキット。
【請求項100】
IαIpの入った容器、及びIαIpを患者に投与するための指示が書かれているラベル又は能書、を含む組成物。
【請求項101】
請求項40、47、54、63、70又は77のいずれかに記載される組成物、及び治療に使用するための説明書、を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−515397(P2007−515397A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539658(P2006−539658)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/036848
【国際公開番号】WO2005/046587
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(506155118)
【Fターム(参考)】