説明

治療の組成物と方法

治療量の治療用細胞又はその前駆体が引き続いて投与される患者に、治療用細胞に対する寛容性を誘発させる方法であって、該方法は、(a)治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体、及び(b)単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤を患者に投与することを含む。細胞又は組織の再生のために、治療用細胞の移植が必要な患者において、移植の拒絶反応の危険性を低減する方法であって、該方法は、(a)再生される細胞又は組織であるかそれに分化可能な治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体と、(b)単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤とを、移植の前に投与することを含む。細胞又は組織再生を必要とする患者の治療方法であって、該方法は、(a)再生される細胞又は組織であるかそれに分化可能で、引き続いて投与される、治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体、(b)治療用細胞に対して寛容性を誘発させる量で、単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤を患者に投与し、さらに(c)治療量の該治療用細胞を患者に後続投与することを含む。好ましくは、単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤はプロスタグランジンである。好ましくは、GMCSF又はその派生体の組み合わせが使用される。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、治療用組成物、方法及び使用に関し、特に変性疾患の患者の治療方法に関する。
【0002】
多くの重篤な病状、例えばI型糖尿病、変形性関節症、関節リウマチ、多発性硬化症、心不全、卒中、火傷、骨粗鬆症、骨折、パーキンソン病、及び脊髄損傷は、病気又は外傷による患者内部の組織又は細胞型の不全又はそれらへのダメージが原因である。これらは変性疾患と考えることができるが、そのいくつかは加齢と関連しており、細胞がそれら自身で修復したり又は置き換えることはできない。現在の治療は苦痛緩和、進行の遅延化に限定されており、組織の機能は典型的には回復しない。ヒト成人及び胚性幹細胞の単離、増殖及び制御された分化、及び、実験的移植に続く変性疾患の動物モデルにおける正常な組織機能の回復における近年の躍進は、再生医療の新たな主要分野の可能性を広げた。不全な又は損傷を受けた組織又は細胞に代わりその機能をなすことができる細胞を患者へ導入することで、当該組織又は細胞型の不全又は損傷を修正する新規な手順が開発下にある。ある場合では、これらは、機能不全又は損傷を受けた細胞と正確に同じ型であり得る。他の場合では、導入される細胞は置き換えられる組織又は細胞型の前駆細胞であり、それは病気又は損傷の部位で、所望される組織又は細胞型に分化可能である。またある場合では、細胞は病気又は外傷の正確な部位に導入される;他のものでは、細胞は、門脈、心室、又は脈管構造、循環又はリンパ系のどこかに導入され、病気又は外傷の部位への移動が容易になるようになされる。
【0003】
このアプローチ法の具体例は、65歳以上の人口の2%以上が罹患している、非常に一般的な神経変性疾患であるパーキンソン病に関連している。パーキンソン病はドーパミン産生ニューロンの進行性変性及び損失に起因し、これが震え、硬直及び運動低下症(異常に低下した運動性)に至る。近年の研究では、マウス胚性幹細胞が、Nurr1遺伝子の導入によりドーパミン産生ニューロンに分化可能であることが示されている。パーキンソン病のラットモデルの脳内に移植された場合、これらの幹細胞誘導性ドーパミン産生ニューロンがラットパーキンソンモデルの脳を神経再支配し、ドーパミンを放出して、運動機能を改善した。
【0004】
アプローチ法のさらなる例では、例えば慢性心疾患における又は梗塞後の心筋組織への損傷を修復するために、心筋細胞又は骨髄幹細胞が使用される。またさらなる例では、脊髄への損傷を修復するために乏突起膠細胞が使用される。他のさらなる例では、I型糖尿病を治療するために移植治療において使用できるインシュリン産生細胞に分化可能なヒト胚性幹細胞の派生体が使用される。
【0005】
再生医療における幹細胞及びそれらの使用に関する有用な情報は、国立保健研究所(National Institutes of Health)のウェブサイト、例えばhttp://stemcells.nih.gov.に見出され得る。さらに、幹細胞の可能性は、出典明示によりここに援用される、Pfendler & Kawase(2003) Obstetrical & Gynecological Survey 58, 197-208で概説されている。
【0006】
よって、ヒト幹細胞の最も有用な用途の一つは、細胞をベースとした治療に使用可能な、細胞及び組織の産生にある。今日、提供される臓器及び組織は、多くの場合、機能不全になった又は破壊された組織と置き換えるために使用されるが、移植可能な組織及び臓器に対する必要性は、利用可能な供給よりも遙かに上回っており、細胞ベース、特に幹細胞ベースの治療には大きな関心が寄せられている。
【0007】
上で検討したような広がる傾向にあり衰弱させる病気のための細胞ベースの治療を実現するために、移植後に患者中で細胞が生存していることが必要である。治療に使用される細胞、例えば幹細胞が、患者から得られたものでないならば、患者がそれに対して免疫反応を生じさせる可能性が非常に高く、よって患者の免疫系によりそれが拒絶される可能性を低減し、免疫抑制剤を使用しなければならない可能性を増加させる。これは、細胞上に「外来」抗原が存在するため、導入された細胞が患者の免疫系により「外来」であると考えられるからである。実際、このことはヒト胚性幹細胞に関連して到達した結論であり、Drukkerら(2002) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99, 9864-9869には、これらの細胞が高レベルのMHC-Iタンパク質を発現し、よって移植時に拒絶され得ることが記されている。しかしながら、Bell(2002) Nature Reviews Immunology 2, 75には、胚性幹細胞が、宿主条件付けがなくても、同種宿主中で生存しうるという示唆がある。
【0008】
治療に使用される細胞の所望されない免疫反応及び拒絶の可能性を低減する方法が示唆されている。例えば組織適合性複合体(MHC)遺伝子が遺伝子的に修飾又はノックアウトされている「万能」胚性幹細胞系を産生することができる。しかしながら、これは技術的に達成が困難であり、成し遂げられたならば、MHCヌル移植のレシピエントを、感染病及び/又は癌の新たな危険にさらすおそれがある。示唆されている別の方法は、標的とする遺伝子の移動を介して、胚性幹細胞にレシピエントのMHC遺伝子を導入することであるが、個人間でMHCタンパク質が異なるため、ドナーの幹細胞が患者の免疫系によって非自己として認識され、移植片対宿主病(すなわち、細胞傷害性T細胞による破壊)及び最終的に拒絶を惹起する。さらに、このアプローチもまた技術的に難度が高く、複雑である。
【0009】
抗原に対する生物の免疫は、抗原と最初に遭遇し、その後、免疫グロブリン分子、例えばその抗原と選択的に結合可能な抗体が産生される結果として生じる。さらに、免疫反応は、抗原に特異的でありうるT細胞によりコントロールされる。大部分の免疫記憶T細胞集団(8−10%)がMHC抗原を認識する。免疫は、通常は炎症反応を刺激することにより、外来抗原を処理可能な細胞を素早く補充することを可能にする。ある環境下、「寛容性」と呼ばれ得るメカニズムのため、免疫系は抗原に対して免疫反応を起こさない。例えば、生物体自身の構成成分(「自己抗原」)に対して、潜在的に抗体を産生する全てのT及びBリンパ球が発育中に破壊され、よって自己抗原に対する抗体を産生する生物体の能力が除かれるために、免疫系は外来抗原と生物体自身の構成成分を通常は識別することができる。
【0010】
細胞移植を受ける患者の寛容化について示唆されている一方法は、移植用の細胞又は組織が得られる「万能」胚性幹細胞系のMHC抗原に対し、患者を前寛容化させることである。これには、骨髄移植に些か類似した手順が必要であり、確実に侵襲性であり、ある程度の免疫抑制を必要とする。
【0011】
本発明者らは、産生される細胞又は組織の前駆体である細胞が導入される患者に寛容性環境をつくり出すことにより、患者の機能不全の又は損傷を受けた細胞又は組織を「再生する」細胞又は組織に対し、患者に寛容性を誘発するためのさらに単純な方法をここに記載する。特に、前駆細胞が導入される寛容性環境は、単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させることができる薬剤、例えばプロスタグランジン類を、好ましくは顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)又はその派生体と組み合わせて、使用することによりつくり出される。典型的には、プロスタグランジンは、ホスホジエステラーゼ阻害剤と組み合わせて使用することもできる。
【0012】
免疫系の細胞からのインターロイキン-10(IL-10)の放出に対して、プロスタグランジンとホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤との間には相乗効果があることが見出された。さらに、プロスタグランジンとPDE阻害剤とが組み合わせて使用される場合、免疫系の細胞において、インターロイキン-12(IL-12)が阻害され、IL-10が際だって刺激されることが見出されている。PDE阻害剤の存在下、PGE及び19-ヒドロキシPGEの双方によるIL-10の刺激が著しく増加し、寛容性環境が生じる。
【0013】
PDE阻害剤、例えばロリプラムは、細菌コート生成物リポ多糖類(LPS)で刺激される単球/マクロファージにおけるcAMP及びIL-10レベルを上昇させることが知られている(Strassmanら(1994) J. Exp. Med. 180:2365-70;Kraanら(1995) J. Exp. Med. 181:775-9;Kambayashiら(1995) J. Immunol. 155:4909-16)。
【0014】
また、PGE及び19-ヒドロキシPGEの双方の適用により、PDE活性が増加することも示された。これは、刺激効果を低減する直接的な負のフィードバックである。PGEとPDE阻害剤の使用は、PDEメッセージをさらに増加させるが、合成されたホスホジエステラーゼは、阻害剤の存在により無効にされる。
【0015】
プロスタグランジンE2(PGE2)の主要な受容体は、EP2及びEP4サブタイプであるが;他の受容体サブタイプ(すなわちEP1及びEP3)も存在する。EP2及びEP4受容体はアデニルシクラーゼと共役し、メッセンジャー系として上昇したcAMPを使用する。組織中のcAMPレベルは、PDEによる異化及び合成の双方により支配される。PDEは特定の阻害剤によりブロックすることができる。如何なる理論にも縛られるものではないが、本発明者らは、PDE阻害剤の投与により、患者に投与される前駆細胞(又はそこに見出される抗原又はその派生体)に対する寛容性を誘発する際に、プロスタグランジン又はそのアゴニストの効果を高めると考えている。よって、本発明者らは、如何なる理論にも縛られるものではないが、EP2及びEP4受容体に作用するプロスタグランジン又はそのアゴニスト(例えばPGE)の効果は、cAMPを刺激することであり、PDE阻害剤の添加により、単球及びマクロファージに対して、免疫及び/又は炎症反応の低減化に帰する相乗作用をもたらし、これは同量のプロスタグランジン又はそのアゴニスト、もしくはPDE阻害剤を単独で投与した合計のものよりも効果が高いと考えている。
【0016】
さらに、単球細胞中での有効cAMP濃度を上昇させる薬剤、例えばプロスタグランジンと、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)とを組み合わせて使用すると、免疫系の細胞においてIL-10が際だって刺激されることがまた見出された。免疫系の細胞からのIL-10の放出において、プロスタグランジンとGMCSFとの間に相乗効果があり;GMCSFの存在下、プロスタグランジンE(PGE)及び19-ヒドロキシPGEの双方によるIL-10の刺激が著しく増加し、寛容性付与環境が生じることが見出された。換言すれば、GMCSFと単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤、例えばプロスタグランジンとは、IL-10放出の増加により特徴付けられる表現型に、単球を分極させると考えられる。同様に、GMCSFの存在下において、フォルスコリン又はGMCSF単独と比較して相乗的に、フォルスコリンによるIL-10発現の刺激が著しく増加する。細胞が寛容促進性(pro-tolerance)表現型へと方向付けられるだけでなく、抗菌剤であるグラヌリシンの生産の亢進をも伴う。加えて、PGEやGMCSFの効果は長く、これらの薬剤の除去後も継続し、よって細胞は選択的に分化する。
【0017】
GMCSFは顆粒球及びマクロファージ系成熟に重要な役割を持つ。GMCSFは治療薬剤としても治療の標的としても提案されている。組換えヒトGMCSFはある種の癌を治療し、骨髄移植後の造血再構成を促進するために使用されている(Leukine(登録商標) Package Insert Approved Text, 1998年2月、及びBuchselら(2002) Clin. J. Oncol. Nurs. 6(4):198-205)。これに対し、近年の他の報告には、GMCSFは炎症性及び免疫疾患(Hamilton(2002) Trends Immunol 23(8):403-8)及び喘息(Ritzら(2002) Trends Immunol 23(8):396-402)の治療のための有望な標的であると記載されている。
【0018】
異常な又は所望されない免疫反応に起因する疾患では、多くの場合、IL-10が欠乏している。IL-10のこの欠乏は、有用なTヘルパー細胞、特に2型Tヘルパー細胞の発生に有害であり;2型Tヘルパー細胞よりも1型Tヘルパー細胞の数が多いことが自己免疫病の特徴であると考えられている。よって、IL-10の産生を刺激することで、T細胞プライミングのための寛容化環境が誘発されると考えられる。さらに、高IL-10環境は抗原提示細胞(典型的には樹状細胞)に作用し、制御T細胞の生成が確実になり、提示された抗原に特異的な制御T細胞がつくり出される。
【0019】
理論に縛られるものではないが、本発明者らは、単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤、例えばプロスタグランジン又はフォルスコリンとGMCSFとを組み合わせることで、IL-12レベルが低減し、本発明の効果の向上が期待されると考えている。プロスタグランジンとGMCSFとの組み合わせにより、IL-10及びCOX-2の双方の発現が増加し、フォルスコリンとGMCSFとの組み合わせにより、単球細胞におけるIL-10レベルが相乗的に増加することが示されている。よって、IL-10によるIL-12の直接阻害(Hariziら(2002) J. Immunol. 168, 2255-2263)を介して、又はCOX-2誘発に依存するIL-10非依存性経路(Schwachaら(2002) Am. J. Physiol. Cell Physiol. 282, C263-270)を介して、IL-12レベルの低減が生じ得る。
【0020】
また、PGE及びGMCSFは、クラスIIのトランス活性化因子(CIITA)及びMHCクラスII等の抗原提示への関与剤のレベルを低減することも示されている(実施例1に示す)。表現型におけるこの変化は、抗ウィルスを含む抗菌特性(Krensky(2000)Biochem. Pharmacol. 59, 317-320)を有し、感染細胞を溶解させる抗ウィルル活性を媒介する活性化T細胞の生成物であると通常は考えられている(Hataら(2001) Viral Immunol. 14, 125-133;Ochoaら(2001) Nature Medicine 7, 174-179;Smythら(2001) J. Leukoc. Biol. 70, 18-20)、グラヌリシンの発現の増加が伴う。グラヌリシンの発現の増加は本発明の重要な結果であると考えられるが、それは、生得的防御分子における増加が寛容性誘発に伴う適応免疫系の無防備状態を補う可能性があるからである。
【0021】
さらに、PGEとGMCSFとを組み合わせることで、COX-2、CD86、CD14の発現が増加することが示されている。COX-2はプロスタグランジン及びGMCSFの除去後の寛容性表現型の維持に関与していると考えられており(実施例2及び3に示す)、CD14及びCD86は分化マーカーであり、より分化した状態であることの証拠となる。
【0022】
発明者らは、患者に寛容化環境を誘発するために、単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤を使用し、細胞又はその前駆体、又はそこに見出される抗原又は該抗原の派生体を、細胞に対する寛容化が誘発されるように患者に投与することにより、患者において細胞に対する寛容性を誘発させることを提案している。このプロセスにより、患者には、寛容化に使用される細胞と同じ抗原的特徴を有する治療用細胞に対する寛容性が作られる。
【0023】
本発明者が承知している限り、細胞ベースの治療に関連して寛容性を生じるこの系の使用、又は変性疾患を治療するための細胞移植におけるその使用については、誰も示唆していない。
この明細書における先に公開された文献の列挙又は検討は、その文献が先行技術の一部であるか、又はありふれた一般的な知識であることを認めているものと必ずしも解釈すべきでない。
【0024】
本発明の第1の態様は、治療量の治療用細胞又はその前駆体が引き続いて投与される患者に、治療用細胞に対する寛容性を誘発させる方法にあり、該方法は、(a)治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体、及び(b)単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤を患者に投与することを含む。
【0025】
寛容性を誘発するとは、患者に治療用細胞又はその前駆体が引き続いて投与される場合に、前寛容化されていない患者と比較して、治療用細胞に対する免疫反応が、大きく低減したか又はダメージを受けなかったと、患者が体験するという意味を含む。よく知られている混合リンパ球テストを、患者が前寛容化されているかどうかを決定するために使用することができる。また、6C10マーカーの損失(Maierら(1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95, 4499)を使用してもよい。
【0026】
寛容性の誘発又は前寛容化は、ダメージを受けた細胞又は組織を修復又は再生する目的で移植を行った場合、治療量の治療用細胞が引き続いて投与される患者に有益であることが理解される。細胞の治療量とは、例えば変性疾患又は障害に抗する際に、患者の必要性を満足させる点で、有益な効果を達成するために投与することが必要とされる量である。治療用細胞は、典型的には不全又はダメージを受けた細胞又は組織を修復又は再生させるために使用される。
寛容性誘発(又は前寛容化)の有益性は、治療用細胞の移植後における拒絶反応の可能性を低減させることであることが理解される。
【0027】
「同じ抗原的特徴を共有する」とは、寛容化細胞が治療用細胞と共通の十分な細胞表面抗原、典型的にはMHC抗原を有しているという意味を含み、寛容化環境において患者に寛容化細胞を投与すると、引き続いて投与される治療用細胞に対する寛容性を導き、寛容化が使用されない場合と比較して、治療用細胞の拒絶反応の可能性が減少する。
典型的には、寛容化細胞と治療用細胞とは同系であり、実質的に同じ抗原を発現する。
【0028】
本発明の第2の態様は、細胞又は組織再生のために、治療用細胞の移植が必要な患者における、移植の拒絶反応の可能性を低減する方法を提供するものであり、該方法は、移植の前に、(a)再生される細胞又は組織であるかそれに分化可能な治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体、及び(b)単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤を患者に投与することを含む。
【0029】
本発明の第3の態様は、細胞又は組織再生を必要とする患者を治療する方法を提供するものであり、該方法は、(a)引き続いて投与され、再生される細胞又は組織であるかそれに分化可能な治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体、(b)上記治療用細胞に寛容化を誘発する量の、単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤を患者に投与し、さらに(c)治療量の該治療用細胞を患者に投与することを含む。
【0030】
本発明は、家畜及び農場用の哺乳動物、例えばネコ、イヌ、ウマ、ヒツジ、ウシなどを含む任意の哺乳動物に対して使用され得るが、典型的には、患者はヒトである。
【0031】
本発明の方法が使用される病気には、変性疾患又は障害、例えばインシュリン産生細胞が機能不全になる糖尿病;卒中、パーキンソン病、ALS(ルー・ゲーリック病)及び脊髄傷害で、神経細胞が機能不全になるもの;心臓発作、心虚血及び鬱血性心不全で、心筋細胞が機能不全になるもの;肝細胞が機能不全になる肝硬変及び肝炎;ある種の癌及び免疫不全症で、血液、骨髄又は造血細胞が機能不全になるもの;骨細胞が機能不全になる骨粗鬆症;軟骨細胞が機能不全になる骨関節炎;皮膚細胞が機能不全になる火傷及び創傷;骨格筋細胞が機能不全になる筋ジストロフィー;網膜細胞が機能不全になる加齢性黄斑変形症;及びミエリンが破壊される多発性硬化症(シュワン細胞不全)が含まれる。
【0032】
本発明の方法の実施における好ましい実施態様には、患者への細胞の投与に、2つの異なる点があることが理解されるであろう。第1は患者の寛容化にあり、第2は、患者が細胞に対して寛容化された場合の治療量の細胞の投与にある。
【0033】
第1の細胞(「寛容化細胞」)は、第2の細胞(「治療用細胞」)と同じ抗原的特徴を共有する任意の適切な細胞であってよい。よって、典型的には、また好ましくは、寛容化細胞と治療用細胞とは、同じ胚性幹細胞から得られる(よって同じ抗原的特徴を有する)。細胞が治療される患者からのものである場合、前寛容化は必要ないため、当該問題の細胞は患者にとっては外来性であることが理解される。
【0034】
典型的には、MHC分子は移植拒絶に関連した主たる抗原決定基であるため、寛容化細胞はMHC分子の良好な発現性を有する細胞である。移植拒絶に関連し得る他の抗原の発現性が良好であることもまた望ましい。寛容化細胞は治療用細胞と同様であってよいが;治療用細胞の前駆体、すなわち治療用細胞に分化可能で、既に治療用細胞に分化することが約束されている細胞であってもよい。よって、寛容化細胞は多能性細胞(すなわち、任意の細胞に分化可能であるもの)ではなく、それはこのような細胞が自発的に奇形種を形成するおそれがあり、患者への投与に適切ではないからである。寛容化細胞が治療用細胞と同じではないならば、治療用細胞としては、(同じ分化経路で)1又は2又は3又はそれ以上の段階、分化が少ない前駆細胞であれば好ましい。
【0035】
治療用細胞としての成人の幹細胞の使用に関し、寛容化細胞としてドナーの末梢血から得られる細胞を使用することが有利でありうる。適切な細胞には、MHC抗原の良好な発現性を有する末梢白血球が含まれる。また、末梢血から単離される幹細胞(例えば、単球由来サブセット;Zhaoら(2003) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100, 2426-2431)は、例えばEGFを使用して分化し、上皮表現型を生じ、寛容化細胞として使用される。
【0036】
治療用細胞は、任意の適切な治療用細胞である。それは、患者においてダメージを受け又は病気になった細胞型と同じ細胞、又は患者においてダメージを受け又は病気になった組織を生成可能な細胞でありうる。好ましくは、細胞は、置き換え又は修復される細胞又は組織の前駆体であり、置き換えられ又は修復される細胞又は組織に分化可能なものである。細胞は、置き換えられ又は修復される細胞又は組織に分化することが既に約束されたものであり、多能性ではない(このような細胞は上で検討した奇形種を生成するおそれがあるため)。
【0037】
治療用細胞(よってその結果、寛容化細胞)は、治療される病気又は疾患によって選択される。しかして、典型的には、治療用細胞は、病気又は疾患の治療において再生されることになる細胞又は組織であり、もしくはそれらに分化可能なものである。例えば前駆細胞に関し、糖尿病の場合には、前駆細胞はインシュリン産生細胞に分化可能なものであり;鬱血性心不全の場合には、前駆細胞は心筋細胞に分化可能なもの;パーキンソン病の場合には、前駆細胞は適切な神経細胞に分化可能なものである等である。変性疾患又は障害において機能不全又はダメージを受けた細胞又は組織の機能を置き換えるために使用される細胞又は組織の型に分化可能な適切な前駆細胞は、当該分野において既知である。図10には、ヒト多能性幹細胞(hPSCs)の幹細胞系譜が記載されており、幹細胞(上で検討したように多能性幹細胞ではない)を含む適切な前駆細胞は、この図を参照して選択することができる。前駆細胞は、機能不全又はダメージを受けた細胞又は組織の機能が発現する分化の段階から一段階取り除かれたものであってよく、又は2又は3又は4又はそれ以上の段階が取り除かれたものであってもよいが、それぞれの場合において、前駆細胞は、治療される病気に関連した機能性細胞又は組織に分化可能である。
【0038】
寛容化細胞及び治療用細胞は、同種成人幹細胞(体幹細胞とも称される)であってもよいし、又はこれから得られるものであってもよい。しかしながら、典型的には、寛容化細胞及び治療用細胞は、同種である胚性幹細胞から得られる(しかしそのものではない)。ヒト胚性幹細胞は、典型的には、試験管内受精(IVF)サイクルの成功を享受し、IFV処置には必要ではない胚を凍結させた一組の男女より提供された多数期(supernumery)胚からのものである。ヒト幹細胞を誘導するためのプロトコルは当該分野でよく知られており、そのいくつかは、出典明示によりここに援用される米国特許第6280718B1号に開示されている。
【0039】
ヒト胚性幹細胞(例えば系特異性幹細胞)の派生体は、全てのヒトが有しており、ある種の組織の修復及び再生に限定された能力をもたらす体幹細胞と、機能的及び生理学的に類似であり、しばしば同一である。これらには、以下のものが含まれる:
(i)全てのタイプの血液細胞:赤血球、Bリンパ球、Tリンパ球、ナチュラルキラー細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球、マクロファージ、及び血小板を生じせしめる造血幹細胞。
(ii)様々な細胞型;骨細胞(bone cells)(osteocytes)、軟骨細胞(cartilage cells)(chondrocytes)、脂肪細胞(fat cells)(adipocytes)、及び他の種類の結合組織細胞、例えば腱中のものを生じせしめる骨髄間質細胞(間葉系幹細胞)。
(iii)主として3つの細胞型;神経細胞(ニューロン)及び2つのカテゴリーの非神経細胞−アストロサイト及びオリゴデンドロサイトを生じせしめる脳内の神経幹細胞。
(iv)いくつかの細胞型:吸収細胞、杯細胞、パネート細胞、及び腸管内分泌細胞を生じせしめ、深い陰窩に生じる消化管の内側にある上皮幹細胞。
(v)毛髪の濾胞の基底部、及び表皮の基底層に生じる皮膚幹細胞。これらの表皮幹細胞は、皮膚の表面に移動し、保護層を形成するケラチノサイトを生じさせる。濾胞性幹細胞は、毛髪の濾胞及び表皮の双方を生じうる。
【0040】
多能性胚性幹細胞を系特異性幹細胞に分化させる方法は、当該技術において公知である。例えば、出典明示によりここに援用されるKaufman及びThomsonの米国特許第6280718B1号には、ヒト多能性胚性幹細胞の培養物から、ヒト造血幹細胞を得るための方法が記載されている。また、出典明示によりここに援用されるRambhatla及びCarpenterの米国特許第6458589B1号には、多能性幹細胞から肝細胞系細胞を産出させる方法が記載されている。さらにPfendler & Kawase(2003) Obstetrical & Gynecological Survey 58, 197-208では、胚性幹細胞を、ドーパミン産生ニューロン、ミエリン産生オリゴデンドロサイト、インシュリン産生細胞、心筋細胞等に分化させる他の方法が概説される。
【0041】
それ自体又はその前駆体が移植される細胞型を寛容化細胞として使用することが好ましいが、そこに見出される抗原を、特にその抗原が組織不適合性に至る主抗原であるならば、使用することもできる。よって、治療用細胞においてMHC抗原に適合するMHC分子を、寛容化のために使用することができる。例えば、MHC分子を適切な合成分子骨格において使用してもよい。
【0042】
適切な寛容化細胞及び治療用細胞を生成可能な「万能」胚性幹細胞は、本発明の実施に便利であることが理解される。寛容化細胞としては、胚性幹細胞から得られるが、(修復又は置き換えられる細胞又は組織への)特定の分化経路が約束されている初期細胞、及び治療用細胞としては、同じ分化経路からの後期細胞の使用が、特に簡便である。このようにして、(初期細胞を使用して)患者が寛容化される間、治療用細胞として適切な細胞が産生される(共に同じ万能胚性幹細胞から誘導され、共通の抗原的特徴を有する)。
【0043】
寛容化細胞又は治療用細胞又はその双方は天然の細胞であってよいし、又は遺伝子操作された細胞であってもよいことが理解される。例えば、寛容化細胞は天然の細胞よりもより免疫原性であり、特にMHC抗原の過剰発現により、より効果的に寛容化されるように遺伝子操作されてもよい。治療用細胞は、それらの治療特性が高められるように遺伝子操作されてもよく、例えばランゲルハンス島を再生可能な細胞を、より良好にインシュリンを産生するように遺伝子操作してもよい。
【0044】
抗原に対する寛容性を誘発するためには、抗原それ自体ではなく、抗原の派生体を患者に投与してもよいことが理解される。抗原の「派生体」とは、例えば、抗原提示細胞(APC)上のクラスI又はクラスIIのMHC分子によって提示が可能であって、抗原そのものに対する寛容性を誘発する抗原の任意の部分を含む。例えば、抗原の適切な部分は、ドナーからのMHCクラスII分子のタンパク分解消化物である。典型的には、抗原の派生体は、例えばT細胞受容体を介して提示された場合に、T細胞によってまた認識される。
【0045】
抗原がタンパク質である場合、抗原の派生体は、典型的には、MHC結合可能な抗原のアミノ酸の連続配列からなる抗原のペプチド断片である。好ましくは、断片は、6から100アミノ酸長である。さらに好ましくは、断片は、6から50アミノ酸長である。最も好ましくは、断片は、6、又は7、又は8、又は9、又は10、又は11、又は12、又は13、又は14、又は15、又は16、又は17、又は18、又は19、又は20、又は21、又は22、又は23、又は24、又は25アミノ酸長である。
【0046】
抗原の派生体は、抗原と他の化合物との融合体、又は抗原の断片と他の化合物との融合体であって、提示された場合、クラスI又はクラスIIMHC分子のいずれかによって認識が可能で、その抗原そのものに対する寛容性を誘発する融合体を含みうる。典型的には、その融合体は、その抗原そのものに対する寛容性を誘発することが可能な部分を提示するようにAPCによって処理され得るものである。
文脈が別の意味を示していない限り、「抗原」という用語が抗原の文脈で使用される場合は、ここで定義される派生体も含まれる。
【0047】
単球細胞における有効cAMP濃度を上昇させる薬剤は、幾つかの別個であるが関連している生化学的態様でそのように機能しうる。よって、その薬剤は、例えばcAMPの産生に関連している受容体を刺激することによってcAMPの産生を増大させるものでありうる。そのような薬剤には、以下にさらに詳細に記載するプロスタグランジン類及びそのアゴニストが含まれる。Braunら (1999) J. Exp. Med. 189, 541-552に記載されているように、コレラ毒素もまたcAMPレベルを細胞内的に増大させるために使用することができ、それが、望ましいと思われる上皮にわたる抗原輸送を増大させうるという証拠もある。同様に、βアドレナリン受容体を介して細胞内のcAMPレベルを上昇させるβ-アドレナリン作動薬も使用することができる。そのようなβ-アドレナリン作動薬は喘息治療の場合におけるように当該分野でよく知られている。好適なβ-アドレナリン作動薬にはイソプロテレノールが含まれる。
【0048】
上記薬剤は、cAMPの分解を阻害するものであってもよく、よってcAMPホスホジエステラーゼ阻害剤であってもよく、これは以下にさらに詳細に記載する。その薬剤は、細胞からのcAMPの輸送を阻害するものでありうる。細胞からのcAMPの輸送は、例えばプロベネシド(痛風に対して現在用いられている薬剤)又はプロゲステロン又はそのアゴニスト又はアンタゴニスト、例えばメドロキシプロゲステロンアセテート又はRU486(これはまたcAMP輸送体に対して阻害効果を有していると思われる)でブロックされうる特異的輸送体(典型的には多剤耐性タンパク質であるMRP-4)を介してなされる。
【0049】
上記薬剤はまた寛容誘発状態の発生に関連して、細胞中でのcAMPの効果を模倣するが、分解や輸送を受け難いと思われる化合物であってもよい。そのような化合物は、細胞中に存在していると有効cAMP濃度を上昇させると考えることができる。そのような化合物には、Sp-アデノシン3',5'-環状モノホスホロチオエート及び8-ブロモアデノシン-3',5'-環状モノホスフェート及びジブチリルcAMPが含まれる。十分なこれら化合物を投与したことは単球細胞中でIL-10の発現の増加があったことを測定することによって評価することができる。好ましくは、薬剤が最大の応答をもたらす濃度で使用されると、IL-10の発現を少なくとも1.2倍、又は1.5倍、又は2倍、又は5倍、又は10倍上昇させる。典型的には、約1から100μmolのcAMP類似体を患者に投与することができる。
【0050】
フォルスコリン(ホルスコリン)は7β-アセトキシ-8,13-エポキシ-1α,6β,9α-トリヒドロキシラブダ-14-エン-11-オン、7β-アセトキシ-1α,6β,9α-トリヒドロキシ-8,13-エポキシ-ラブダ-14-エン-11-オンである。それはまたコレオノール及びコルフォルシンとも呼ばれ、410のMを有している。それは血圧降下、陽性変力及びアデニルシクラーゼ活性化特性を有する細胞透過性ジテルペノイドである。その生物学的効果の多くはそのアデニル酸シクラーゼの活性化とその結果の細胞内cAMP濃度の増大による。フォルスコリンはカルシウム流に影響を及ぼし、MAPキナーゼを阻害する。コルホルシンはダロパートとして使用される(Ann Thoracic Surgery (2001) 71, 1931-1938)。それは塩酸塩として投与して水溶性を確保することができるが、より速やかに細胞膜を透過することができる可能性のある遊離塩基として使用することもまたできる。
【0051】
Sp-アデノシン-3',5'-環状モノホスホロチオエート(SpcAMP)は446のMを有しており、アデノシン-3',5'-環状モノホスホチオエートのSp-ジアステレオマーである。それは環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼに対して耐性がありながら数多くの系において第二メッセンジャーとしてcAMPの効果を模倣するcAMP依存プロテインキナーゼI及びIIの強力な膜透過性活性因子である。それはフォルスコリンやジブチリル-cAMPのようなcAMP類似体よりも大きな特異性と親和性を示す。
8-ブロモアデノシン-3',5'-環状モノホスフェート(8-BrcAMP)は430のMを有している。それはcAMPよりもホスホジエステラーゼによる加水分解に対してより大なる耐性を有している細胞透過性cAMP類似体である。それはプロテインキナーゼAを活性化させる。
【0052】
コレラ毒素は約100000のMを有している。それは細胞表面上でガングリオシドGM1に毒素を結合させる5つのBサブユニット(それぞれおよそ12kDa)によって囲まれたAサブユニット(27kDa)からなる毒素である。AサブユニットはGTP加水分解酵素活性を低減させα-サブユニットを活性化させる刺激性Gプロテインのα-サブユニット(Gαs)のADPリボシル化を触媒する。Gαsのこの活性化はcAMPのレベル増加を生じるアデニル酸シクラーゼの活性の増大に至る。それはまた眼の桿体外節中でトランスデューシンをADPリボシル化し、そのGTP加水分解酵素活性を不活性化する。コレラ毒素はまたチューブリンをADPリボシル化することが報告されている。それは強力な粘膜ワクチンアジュバントで、インターロイキン-12の産生を阻害することによってTヘルパー細胞2型の応答を誘導することが示されている(上掲のBraunら(1999))。単球におけるcAMPレベルを増加させることができるコレラ毒素の断片を使用することができるが、完全なコレラ毒素を使用するのが好ましい。
コレラ毒素はある条件下では過敏症(過剰感作)を誘導するので、好ましさは低い。
SpcAMP及び8-BrcAMP剤、例えばロリプラム及び場合によってはフォスコリンはcAMP輸出ポンプを阻害し得、これは有効cAMP濃度を上昇させるその能力に寄与しうると思われる。
【0053】
単球細胞における有効cAMP濃度を測定するのが簡便である(つまり、単球細胞への薬剤の効果を評価することによる)。好適な単球細胞はよく知られたヒト単球細胞株U937である。薬剤は他の単球及び単球関連細胞、例えばマクロファージにおける有効cAMP濃度をまた上昇させ、本発明の意味での有用性はこれら細胞に対する効果による場合があることが理解されるであろう。上に述べたように、十分な量のcAMP類似体が存在しているかどうかは単球細胞中のIL-10を測定することによって決定することができる。好ましくは、薬剤が最大の応答をもたらす濃度で使用される場合、薬剤は少なくとも1.2倍、又は1.5倍又は2倍又は5倍又は10倍のcAMP濃度を上昇させる。
図11はcAMPレベルの上昇に導く細胞中又は細胞上の様々な介入場所を模式的に示している。
【0054】
単球細胞における有効cAMP濃度を上げる薬剤はプロスタグランジンであることが好ましい。
本発明のこの態様及び他の全ての態様に対してプロスタグランジン又はそのアゴニストは単球におけるcAMP産生を刺激することが好ましい。
プロスタグランジン又はそのアゴニストは、単球におけるcAMP産生を刺激し、特にGMCSFの存在下で単球にIL-10を発現させる任意の好適なプロスタグランジン又はそのアゴニストでありうる。本発明での使用に好適なプロスタグランジン又はそのアゴニストは当業者によって容易に決定することができる。単球中でのcAMP産生を評価する方法はBurzynら(2000)及び実施例3に見出すことができ、単球におけるIL-10の発現と放出を検出する方法は実施例1及び3のものを含む。
【0055】
「プロスタグランジン又はアゴニスト」とは、プロスタグランジン受容体にプロスタグランジンアゴニストとして作用する任意の化合物を意味する。プロスタグランジンアゴニストはプロスタノイドでありうるが、そうである必要はない。典型的には、プロスタグランジン又はアゴニストは、EP2又はEP4受容体に結合するものである。プロスタグランジンはPGE、PGD又はPGI又はそのアゴニストでありうる。好ましくは、プロスタグランジンは、PGE又はそのアゴニストである。PGIは余りに不安定であるので薬剤として有用ではないが、PGI及びPGIの安定な類似体が好適である。好ましくは、プロスタグランジンはPGF又はそのアゴニストではない。
【0056】
プロスタグランジン又はそのアゴニストは、PGEか、又はその合成類似体であることが好ましい。合成類似体には、15又は16位においてメチル基を添加して修飾したもの、又はヒドロキシルが15位から16位に転位したもの含まれる。プロスタグランジン類似体の好ましい例には、ブタプロスト(EP2受容体アゴニスト)及び11-デオキシPGE1(EP4受容体アゴニスト)、及び19-ヒドロキシPGEが含まれる。疑問を避けるために、「プロスタグランジン」という用語は、天然に生じるプロスタグランジン類並びに合成プロスタグランジン類似体を含む。
【0057】
適切なプロスタグランジン又はそのアゴニストには、ジノプロストン(プロペスとして、ヨーロッパではFerringによって、米国ではForestによって販売され、また、プロスティンE2の名前でPharmaciaによって販売されている)、ゲメプロスト(Farillonによって販売)、ミソプロストール(サイトテックとしてSearleとPharmaciaによって販売)、アルプロスタジル(カベルジェクトとしてPharmaciaによって、ビリダルとしてSchwarzによって、ムセとしてアストラゼネカによって販売されている)、及びリマプロストが含まれる。
ミソプロストールは、EP2及びEP3アゴニスト作用を有するPGE類似体である。その化学構造は、(±)メチル-11α,16-ジヒドロキシ-16-メチル-9-オキソプロスト-13-エノアートである。
プロスタグランジンアゴニストとして作用する非プロスタノイド化合物の例として、EP4受容体アゴニストであるAH23848がある。
本発明を実施するのに有用であるEP2アゴニストはAH13205を含む。
【0058】
好適なプロスタグランジンはまた19-ヒドロキシPGE1及び19-ヒドロキシPGE2を含む。プロスタグランジンEアゴニストは、出典明示によりここに援用される欧州特許第1097922号及び同第1114816号に記載されている。
好適なプロスタグランジン又はそのアゴニストは、出典明示によりここに援用される米国特許第4127612号に記述されている19-ヒドロキシプロスタグランジン類似体の任意のものを含む。
プロスタグランジンは、プロスタグランジンE(PGE)又は19-ヒドロキシPGEであることが好ましい。PGEを含む、プロスタグランジン及びそのアゴニストは、例えば、Pharmacia及びUpjohnからプロスチンE2の名前で市販されている。
【0059】
本発明者らは、単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる他の薬剤と共に、又は単独で、ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤を使用するのが有益である場合があるとさらに信じる。プロスタグランジンE2(PGE2)の主要な受容体はEP2及びEP4サブタイプである;しかしながら、他の受容体サブタイプが存在する(つまり、EP1及びEP3)。EP2及びEP4受容体はアデニルシクラーゼと結合し、メッセンジャー系として増加したcAMPを用いる。組織中のcAMPのレベルは、特異的なPDE阻害剤によってブロックされ得るPDEによるその合成とその異化作用の双方に支配されている。よって、本発明者は、そのEP2及びEP4受容体に作用するプロスタグランジン又はそのアゴニスト(例えばPGE)の効果はcAMPを刺激することにあり、PDE阻害剤の添加は単球とマクロファージへの相乗作用をもたらし、単独で投与される同量のプロスタグランジン又はそのアゴニスト、又はPDE阻害剤の合計効果より大きい免疫及び/又は炎症反応の減少を生じると信じる。
【0060】
さらに、本発明者らは、プロスタグランジンとPDE阻害剤の組み合わせが免疫系の細胞におけるIL-10の発現とそれからの分泌を顕著に刺激しIL-12の発現とそれからの分泌を阻害し、寛容化環境を生じることを以前に見出した。
よって、一実施態様では、組成物はPDE阻害剤をさらに含有しうる。
【0061】
PDE阻害剤は、任意の適切なPDE阻害剤であってよい。好ましくは、PDE阻害剤は、cAMP分解に活性を示すPDEを抑制するものである。cAMP分解に活性を示すことが知られるPDEは、IV、VII及びVIII型のものである。好ましくは、PDE阻害剤は、IV又はVII又はVIII型に対して選択的である。
【0062】
最も好ましくは、PDE阻害剤は、IV型PDEに対して選択的である。「選択的」とは、その阻害剤が、それに対して選択的なPDE阻害剤の特定の型を、別の型に対するよりも強力に抑制することを意味する。好ましくは、IV型選択的阻害剤は、他のPDE型に対してよりも、IV型PDEに対して少なくとも2倍強力な抑制剤である。より好ましくは、IV型選択的阻害剤は、他のPDE型に対してより、IV型PDEに対して、少なくとも5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、200倍、500倍、又は1000倍強力な阻害剤である。
典型的には、選択的阻害剤は、他のPDE型に対してより、選択されたPDE型に対して、約5から50倍強力な阻害剤である。典型的には、選択的阻害剤は、非選択的とされる阻害剤、例えばテオフィリンよりも、選択されたPDE型に対して5から50倍強力な阻害剤である。よって、テオフィリンは、ロリプラムよりも30倍効力が低いことになる。
【0063】
好ましくは、選択的阻害は、IC50レベルの比較によって測定される(Dousa (1999) Kidney International 55: 29-62)。
非特異的PDE阻害剤には、カフェイン、テオフィリン、3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)及びペントキシフィリン(3,7-ジヒドロ-3,7-ジメチル-1-(5-オキソヘキシル)-1H-プリン-2,6-ジオン)が含まれるが、カフェインは、他のものほど活性はないのでそれほど好ましくはない。IBMXのIC50値は2−50μMである。
出典明示によりここに援用する米国特許第6127378号は、選択的PDE阻害剤(主にIV型の)と記述される6位が置換されたフェナンスリジンを開示し、これは、本発明の方法で用いるのに好適である可能性がある。
IV型特異的(又は選択的)PDE阻害剤には、ロリプラム(4-[3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシフェニル]-2-ピロリジノン)、及びRo-20-1724(4-[3-ブトキシ-4-メトキシベンジル]-2-イミダゾリジノン)が含まれる。ロリプラムのIC50は800nMであり、Ro-20-1724のIC50は2μMである。
【0064】
もう一つの好適なIV型選択的PDE阻害剤は、デンブフィリン(1,3-ジ-n-ブチル-7-(2-オキソプロピル)-キサンチン)である。
CP80 633(Hanifinら (1996) J. Invest. Dermatol. 107, 51-56)、CP102 995及びCP76 593は皆強力なIV型阻害剤である(コネティカット州グロトンのファイザー社、中央研究部から市販)。
その他の高親和性IV型選択的PDE阻害剤には、CPD840、RP73401及びRS33793(Dousa, 1999)が含まれる。高親和性IV型選択的PDE阻害剤は約1nMのKiを有する一方、低親和性阻害剤は約1μMのKiを有する。
IV型PDE選択的阻害剤に関するDousa (1999);Muellerら(1996, Trends Pharmacol.Sci.17:294-298);Palfreyman及びSouness (1996, Prog Med Chem 33:1-52);Stafford及びFeldman (1996, Annual Reports in Medical Chemistry (vol 31) pp71-80;Bristol編, Academic Press, NY, USA);及びTeixeiraら (1997, Trends Pharmacol. Sci.18:164-171)の開示を出典明示によりここに援用する。
典型的には、IV型PDE選択的阻害剤を経口投与する場合、約1から30mgが使用される。従って、ロリプラム又はデンブフィリンの典型的経口用量は、1mg又は5mg又は10mg又は30mgである。非選択的PDE阻害剤、例えばテオフィリンを用い、しかも経口投与する場合は、用量は5と50mgの間、例えば、5又は10又は20又は30又は40又は50mgである。
【0065】
組成物がプロゲステロンを含む場合、プロゲステロンの用量は100nMと50μMの間のレベルをもたらすのに十分ならば好適である。
好適な組み合わせ:
PGE
PGE+ロリプラム
PGE+プロベニシド
PGE+ロリプラム+プロベニシド
フォルスコリン
フォルスコリン+ロリプラム
フォルスコリン+ロリプラム+プロベニシド
8-ブロモcAMP+プロベニシド
8-ブロモcAMP+ロリプラム+プロベニシド
Sp-アデノシン3,5-環状モノホスホチオエート(SpcAMP)
SpcAMP+プロベニシド
SpcAMP+ロリプラム+プロベニシド
コレラ毒素
コレラ毒素+プロベニシド。
好ましくは、これら(及び単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる他の薬剤)は、GMCSFと組み合わせられる。
本発明者は、これらの(及びその他の)組み合わせが相乗的に作用して、単球細胞における有効cAMPレベルを所望されるように上昇させうると信じる。cAMPに対する全ての代謝点を操作することによって(図11参照)、単一の成分だけと比較して同じ効果をもたらすために、混合物の成分のより低い用量が可能になることがまた理解される。
【0066】
「GMCSF」には、ヒトGMCSF遺伝子及びその天然に生じる変異体の遺伝子産物を含む。ヒトGMCSFのヌクレオチド及びアミノ酸配列はGenbank受入番号NM 000758及び図1に見出される。GMCSFの幾つかの天然に生じる変異体はまたNM 000758に列挙されている。GMCSFはコロニー刺激因子2(CSF2)としても知られている。
本発明は、野生型GMCSFの生物学的活性を保持する、つまりその前駆細胞から顆粒球及びマクロファージの産生を刺激し、プロスタグランジンEの存在下で単球にIL-10を発現させるGMCSFの派生体の使用を含む。
GMCSFの「派生体」には、その断片、融合体又は修飾体又は類似体、あるいはその断片の融合体又は修飾体を含む。
GMCSFの「断片」とは、その前駆細胞から顆粒球及びマクロファージの産生を刺激し、プロスタグランジンEの存在下で単球にIL-10を発現させる糖タンパク質の任意の部分を意味する。典型的には、断片は完全長GMCSFの活性の少なくとも30%を有する。断片は完全長GMCSFの活性の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%を有していることがより好ましい。最も好ましくは、断片は完全長GMCSFの活性の100%又はそれ以上を有する。
【0067】
派生体は、部分的タンパク質分解法(外因性溶解又は内因性溶解の何れか)を使用するタンパク化学技術を用いて、又は新規合成法によって作製することができる。あるいは、派生体は組換えDNA技術によって作製してもよい。核酸のクローニング、操作、修飾及び発現、及び発現されたタンパク質の精製のための好適な技術は当該分野でよく知られており、例えば出典明示によりここに援用されるSambrookら (2001) 「Molecular Cloning, a Laboratory Manual」、 第3版, Sambrookら編, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, USAに記載されている。
本発明はまたその前駆細胞から顆粒球及びマクロファージの産生を刺激し、プロスタグランジンEの存在下で単球にIL-10を発現させる完全長GMCSFの修飾又はその断片を含む。
そのような修飾には、完全な又は部分的な糖タンパク質の脱グリコシル化が含まれる。他の修飾には、天然に生じるヒトGMCSFに見出されるものとは異なったグリコシル化パターンを有する完全長GMCSF又はその断片が含まれる。
【0068】
完全長GMCSF又はその断片の他の修飾には、一又は複数の位置においての、保存的であれ非保存的であれ、アミノ酸挿入、欠失及び置換が含まれる。そのような修飾はGMCSFの類似体とも呼ぶことができる。「保存的置換」とは、Gly、Ala;Val、Ile、Leu;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr;Lys、Arg;及びPhe、Tyrのような組み合わせを意図する。そのような修飾は、上掲のSambrookら 2001 に記載されたように、タンパク工学及び部位特異的突然変異誘発の方法を使用して行うことができる。好ましくは、修飾されたGMCSF又は修飾されたGMCSF断片は完全長GMCSFの活性の少なくとも30%を保持する。修飾されたGMCSF又はGMCSF派生体が完全長GMCSFの活性の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%を有するならばさらに好ましい。より好ましくは、修飾されたGMCSF又は修飾されたGMCSF断片は完全長GMCSFの活性の100%又はそれ以上を有する。
本発明はまた他の化合物への完全長GMCSF又はその断片の融合体の使用を含む。好ましくは、融合体は完全長GMCSFの活性の少なくとも30%を保持する。融合体は完全長GMCSFの活性の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%を有するならばさらに好ましい。最も好ましくは、融合体は完全長GMCSFの活性の100%又はそれ以上を有する。
【0069】
GMCSFとその類似体は、それぞれを出典明示によりここに援用する次の刊行物に記載されている:米国特許第5229496号(Deeleyら);米国特許第5391485号(Deeleyら);米国特許第5393870号(Deeleyら);米国特許第5602007号(Dunnら);Wongら, 「Human GM-CSF: molecular cloning of the complementary DNA and purification of the natural and recombinant proteins」, Science 228 (4701), 810-815 (1985);Leeら, 「Isolation of cDNA for a human granulocyte-macropharge colony-stimulating factor by functional expression in mammalian cells」, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 82(13), 4360-4364 (1985);Cantrellら, 「Cloning, sequence, and expression of a human granulocyte/macrophage colony-stimulating factor」, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 82(18), 6250-6254 (1985);及びMiyatakeら, 「Structure of the chromosomal gene for granulocyte-macrophage colony stimulating factor: comparison of the mouse and human genes」, EMBO J. 4(10), 2561-2568 (1985)。
GMCSFは上述のようにヒトGMCSFであるのが好ましいが、GMCSFには他の種のGMCSFもまた含める。しかしながら、GMCSFが患者に投与される用途に対しては、GMCSFは患者と同じ種由来であることが好ましいことが理解される。よって、GMCSFがヒト患者に投与されるならば、GMCSFは好ましくはヒトGMCSFである。
【0070】
この発明の実施に適したGMCSFは、Peprotech EC Ltd., 29 Margravine Road, London, W6 8LL、カタログ番号300-03から取得できる。
この発明の実施に好適なGMCSFは、Immunex, Inc.によって生産され、商品名Leukine(登録商標)で販売されている酵母由来組換えヒトGMCSFの正式名であるサルグラモスチムである。Leukine(登録商標)はパン酵母発現系で産生された組換えヒトGMCSFである。Leukine(登録商標)は19500、16800及び15500ダルトンの分子量を有する3つの主要分子種を特徴とする127のアミノ酸の糖タンパク質である。Leukine(登録商標)のアミノ酸配列は23位のロイシンの置換が天然のヒトGMCSFとは異なり、糖鎖部分は天然タンパク質とは異なっている場合がある。Leukine(登録商標)は皮下又は静脈内投与に適している(Leukine(登録商標) Package Insert Approved Text, Feb. 1998)。
文脈が別のことを示していない限り、「GMCSF」という用語が使用される場合は常にここに定義された派生体が含まれる。
【0071】
一実施態様では、単球求引走化剤は、単球の求引により寛容化環境の産生助成にも使用され得る。この発明の実施に好適な走化剤には、MIP-1α及びMCP-1が含まれ、これは、Peprotech EC Ltd., 29 Margravine Road, London, W6 8LL、カタログ番号300-04から得ることができる。他の好適な走化剤は、出典明示によりここに援用されるKellyの米国特許第5908829に記載されている。
【0072】
典型的には、本発明の第1、第2及び第3の態様において、寛容化細胞、又はそこに見出される抗原又は該抗原の派生体、及び単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤は、患者に同時投与される。より典型的には、それらは同じ組成物(例えば薬学的組成物又は調製物;以下参照)に全て存在している。成分を別々に投与することもできるが、その場合、単球細胞において有効cAMPの濃度を上昇させる薬剤は、寛容化細胞、又はそこに見出される抗原又は該抗原の派生体の投与前に投与される。典型的には、薬剤と細胞との投与の間に時間差があるならば、分のオーダーである。
【0073】
典型的には、本発明の第3の態様において、治療量の治療用細胞は、寛容化細胞及び前記薬剤の投与により寛容化が達成された後に投与される。よって患者は治療用細胞を治療投与する前に、細胞に対して前寛容化される。典型的には、前寛容化療法と治療用細胞の治療投与との間の時間は、1〜10日のオーダーである。
【0074】
寛容化細胞及び前記薬剤の投与は、成分が免疫系と接触可能で、寛容性誘導が生じるのに簡便な部位になされる。簡便には、細胞と薬剤との「寛容化」複合体が使用され、非侵襲的にアクセス可能な粘膜に投与される。よって、適切な粘膜には、口、膣、肛門、消化管及び鼻に見出されるものが含まれる。よって典型的には、成分は、頬用錠剤、膣坐薬、膣用錠剤又はリング、又は坐薬、又は鼻用スプレーとして処方される。
【0075】
治療量の前駆細胞の投与は、機能不全又はダメージを受けた細胞又は組織を再生するために必要な部位に、直接又は間接的になされる。典型的には、変性又はダメージ又は外傷のある部位であり、治療される病気又は疾患に応じて変わる。
【0076】
使用される寛容化細胞の数は、典型的には約100〜10の細胞であるが、変えてもよい。単球細胞にける有効cAMP濃度を上昇させるのに十分な薬剤が、患者に寛容化環境を産出させるために投与される。典型的には、約2μmolのプロスタグランジン、約50〜100ngのGMCSF、及び約10μmolのPDE阻害剤が投与され得る。組み合わせて使用される場合、より少ない量の成分しか必要としないと思われる。
有益な効果、例えば病気又はダメージを受けた細胞又は組織の修復又は再生を開始をするのに十分な治療用細胞が投与される。典型的には、約10〜10、例えば10又は10の治療用細胞が投与される。
【0077】
病気又は外傷の部位に細胞はどのように導入されるかは様々である。例えば、糖尿病の治療のためには、「エドモントンプロトコル」が使用され、ここでは島細胞又はその即時的前駆体を肝臓の門脈に注射し、その臓器では、効果的で、生理学的に正常なグルコース応答性及びインシュリン生成島が形成される(プロトコルのさらなる詳細は、http://www.diabetes.org.uk/islets/trans/edmonton.htmを参照)。パーキンソン病の治療のためには、細胞は、黒質の正しい位置に移動した箇所から、アクセス可能な心室又は門脈の一方に注入され得る。心臓病の兆候及び脊髄傷害用には、細胞は、修復のために、ダメージを受けた部位に直接注入され得る。
【0078】
本発明のさらなる態様は、(a)治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体、(b)単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤、場合によっては(c)顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)又はその派生体を含有し、治療量の治療用細胞又はその前駆体が引き続いて投与される患者に治療用細胞に対する寛容性を誘発させるための組成物を提供する。上述したように、このような組成物は寛容性の誘発に有用である。便宜的に、組成物はヒト又は獣医薬としての使用を含む、医薬として使用されるように包装され、提供される。典型的には、組成物は治療用細胞に対する寛容性の誘発における使用のために包装され、提供される。
【0079】
本発明のさらなる態様は、(a)治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体、(b)単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤、場合によっては(c)顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)又はその派生体を含有し、治療量の治療用細胞又はその前駆体が引き続いて投与される患者に治療用細胞に対する寛容性を誘発させる治療システムを提供する。
【0080】
本発明のさらなる他の態様は、(a)治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体、(b)単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤、場合によっては(c)顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)又はその派生体を含有し、治療量の治療用細胞又はその前駆体が引き続いて投与される患者に治療用細胞に対する寛容性を誘発させるキット・オブ・パーツを提供する。
該治療システム及びキット・オブ・パーツは、患者における治療用細胞に対する寛容性の誘発に有用である。通常、治療システム又はキット・オブ・パーツは、再生される細胞又は組織であるかそれに分化可能な治療用細胞を、さらに含んでいてもよい。
【0081】
(a)治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体、(b)単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤、場合によっては(c)顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)又はその派生体、及び薬学的に許容可能な担体を含有し、治療量の治療用細胞又はその前駆体が引き続いて投与される患者において、治療用細胞に対する寛容性を誘発させるための組成物を含む薬学的組成物も、本発明に含まれる。
【0082】
担体、希釈剤又は賦形剤は、本発明の組成物と適合性があり、そのレシピエントに対して有害ではないという意味で「許容可能」でなければならない。典型的には、担体は無菌でパイロジェン不含有の水又は生理食塩水である。治療用途に許容可能な担体又は希釈剤は製薬分野でよく知られており、RemingtonのPharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A.R. Gennaro編 1985)に記載されている。薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は希釈剤の選択は意図される投与経路と標準的な製薬実務に関して選択することができる。薬学的組成物は、担体、賦形剤又は希釈剤として、又はそれに加えて、任意の適切なバインダー(類)、潤滑剤(類)、懸濁化剤(類)、コーティング剤(類)又は可溶化剤(類)を含有しうる。
防腐剤、安定剤、染料及びさらには香料を薬学的組成物中に提供してもよい。防腐剤の例には、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸及びp-ヒドロキシ安息香酸のエステルが含まれる。酸化防止剤と懸濁化剤もまた使用されてよい。
【0083】
本発明の他の態様には、以下のものが含まれる:
治療量の治療用細胞又はその前駆体が引き続いて投与される患者において、治療用細胞に対する寛容性を誘発させるための医薬の製造における、(a)治療的に投与される治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体と、(b)単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤との組み合わせの使用。
治療量の治療用細胞が引き続いて投与される患者において、治療用細胞に対する寛容性を誘発させるための医薬の製造における、治療的に投与される治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体の使用であって、患者には単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤が投与される使用。
治療量の治療用細胞が引き続いて投与される患者において、治療用細胞に対する寛容性を誘発させるための医薬の製造における、単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤の使用であって、患者には治療的に投与される治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体が投与される使用。
【0084】
患者において治療用細胞に対する寛容性を誘発させるための医薬の製造における、(a)治療的に投与される治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体、(b)単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤、及び(c)GMCSFの任意の一又は二の使用であって、該患者には治療量の治療用細胞が後続投与され、上述した医薬には見出されない(a)、(b)又は(c)の一又は双方が投与される使用。
【0085】
細胞又は組織の再生のために、治療用細胞の移植が必要な患者において、移植の拒絶反応の危険性を低減するための医薬の製造における、(a)再生される細胞又は組織であるかそれに分化可能な治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体と、(b)単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤との組み合わせの使用。
細胞又は組織の再生のために、治療用細胞の移植が必要な患者において、移植の拒絶反応の危険性を低減するための医薬の製造における、再生される細胞又は組織であるかそれに分化可能な治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体の使用であって、該患者には単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤が投与される使用。
細胞又は組織の再生のために、治療用細胞の移植が必要な患者において、移植の拒絶反応の危険性を低減するための医薬の製造における、単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤の使用であって、該患者には、再生される細胞又は組織であるかそれに分化可能な治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体が投与される使用。
【0086】
細胞又は組織の再生のために、治療用細胞の移植が必要な患者において、移植の拒絶反応の危険性を低減するための医薬の製造における、(a)再生される細胞又は組織であるかそれに分化可能な治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体、(b)単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤、及び(c)GMCSFの任意の一又は二の使用であって、該患者には上述した医薬には見出されない(a)、(b)又は(c)の一又は双方が投与される使用。
細胞又は組織再生を必要とする患者を治療するための医薬の製造における、(a)再生される細胞又は組織であるかそれに分化可能で、引き続いて投与される治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体と、(b)単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤との組み合わせの使用であって、該患者には治療量の該治療用細胞が引き続いて投与される使用。
【0087】
細胞又は組織再生を必要とする患者を治療するための医薬の製造における、再生される細胞又は組織であるかそれに分化可能で、引き続いて投与される治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体の使用であって、該患者には、単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤が投与され、さらに治療量の該治療用細胞が引き続いて投与される使用。
細胞又は組織再生を必要とする患者を治療するための医薬の製造における、単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤の使用であって、該患者には、再生される細胞又は組織であるかそれに分化可能で、引き続いて投与される治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体が投与され、さらに治療量の該治療用細胞が引き続いて投与される使用。
【0088】
細胞又は組織再生を必要とする患者を治療するための医薬の製造における、(a)再生される細胞又は組織であるかそれに分化可能で、引き続いて投与される治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体、(b)単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤、及び(c)GMCSF又はその派生体の任意の一又は二の使用であって、該患者には上述した医薬には見出されない(a)、(b)又は(c)の一又は二が投与され、さらに治療量の該治療用細胞が引き続いて投与される使用。
細胞又は組織再生を必要とする患者を治療するための医薬の製造における、再生される細胞又は組織であるかそれに分化可能な、治療量の治療用細胞の使用であって、該患者には、(a)治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体、及び(b)単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤、及び場合によっては(c)GMCSFが予め投与されている使用。
本発明を以下の図及び実施例を参照して、さらに詳細に記載する。
【実施例】
【0089】
実施例1:免疫寛容の誘導のためのプロスタグランジンE/GMCSFの相乗作用
Eシリーズのプロスタグランジンは免疫寛容に関与している証拠が増大している。これは、経口寛容性におけるその役割(病原体と共生生物を識別する免疫系の能力)、サイトカイン割合を調節する能力、精子に対する寛容性が必須であるヒト精漿中でのその高濃度から導かれる。
プロスタグランジンは有益な又は有害な細菌を収容し、さらに病原体に対する反応を高めるべき身体の多くの粘膜表面で産生される。Newberryら(1999) Nature Medicine 5, 900-906には、エッグ-ホワイトライソザイムを特異的に認識するT細胞受容体を発現している3A9TCRα−/−マウスが、プロスタグランジン合成が、この場合には、誘発性シクロオキシゲナーゼアイソフォームCOX-2により阻害されない限り、この抗原に対する炎症性反応を高めることはないことが示されている。プロスタグランジンが除去され、特異的抗原にさらされると、これらのマウスは炎症性腸疾患類似の疾患を発達させる(Newberry ら(1999)、上掲)。これらの実験は、プロスタグランジン合成を阻害する主要効果を持つインドメタシンなどの非ステロイド性抗炎症薬が寛容性を破壊するという以前の研究を確認するものである(Scheuerら(1987)Immunology 104, 409-418; Louisら(1996)Immunology 109, 21-26)。
【0090】
正常固有層の単球はCD80ではなくCD86を発現するので、明確な表現型を持つ。炎症性病態(例えば、炎症性腸疾患)が持続する時、単球はCD80を発現する(Rugtveitら(1997)Clin. Exp. Immunol. 104, 409-418)。それゆえ、常在性のマクロファージ(CD80−veCD86+ve)は、CD80+ve、CD86+veである最近補充されたマクロファージとは区別される。
単球は多くの免疫学的媒介物の主要源であり、プロスタグランジンを含めて、それ自体が抗原提示のためにサイトカイン環境を変化させる。PGEは寛容性に関連するサイトカインに主要な影響を持ち、寛容原であるサイトカインIL-10(Strassmannら(1994)J. Exp. Med. 180, 2365-2370)を刺激し、寛容性を破壊するIL-12(Kraanら(1995)J. Exp. Med. 181, 775-779)を阻害する。また、PGEは抗原提示樹状細胞の成熟に直接影響し、IL-10の分泌を増加し、IL-12の分泌を減少させる細胞の生産を刺激するであろう(Kalinskiら(1997)Adv. Exp. Med. Biol. 417, 363-367)。
ヒト精漿におけるPGE及び19-ヒドロキシPGEの濃度がいずれもとても高い(およそミリモル)ことが、必須寛容性を確実にする際のプロスタグランジンの重要性をさらに示す。明らかに、精子が免疫学的にコンピテントで感染可能な雌性生殖器に侵入するための免疫寛容は種の継続に必須であり、プロスタグランジンレベルは多くの上皮下、さらにはリンパ節細胞が影響を受ける値であろう。このようにして、精子は確実に免疫学的な保護を受けるように進化している。
【0091】
過去の実験(上掲のStrassmannら(1994);上掲のKraanら(1995))では、PGEがIL-10産生を刺激するためにリポ多糖類(LPS)を必要とし、加えてIL-10への伝達はおよそ12時間遅れて伝わり、これら双方の因子が難題となるとされている。本発明の知見により、LPSはGMCSFの発現を刺激し、このことが遅延とその後のIL-10発現の原因となっているであろうことが示唆される。
今回我々は、プロスタグランジンとGMCSF間の相乗効果により、単球への寛容性誘発における主要なプロスタグランジン効果が媒介されうることを示す。この併用の短期曝露により、IL-10の発現は非常に増加し、CIITA及びMHCIIのような抗原提示関係細胞のレベルは減少するという表現型となる。さらに、この表現型の変化はグラヌリシンによる発現亢進にも付随する。この分子は、抗微生物特性を有し(Krenskyら(2000)Biochem, Pharmacol. 59, 317-320)、活性化T細胞(感染した細胞を溶解する抗ウイルス活性を媒介する(Hataら(2001)Viral Immunol. 14, 125-133;Ochoaら(2001)Nature Medicine 7, 174-179;Smythら(2001)J. Leukos. Biol. 70, 18-29)の産物と通常考えられている。このような先天的防御分子の増加は、寛容性誘発を必然的に伴う適応免疫系の妥協を補うであろう。さらに、この表現型は、CD80への中和効果だけでなくCD86の刺激により特徴づけられる。
【0092】
実験の詳細
U937(ヒト単球細胞系)細胞を、10%ウシ胎仔血清(PAA Laboratories社)を添加したRPMI(PAA Laboratories社)培地中で成長させた。5ng/mlのGMCSFと共に又はこれを伴わないで10−6モルのプロスタグランジンE2を用いて、細胞を4時間処理した。処理を除去して、細胞をさらに20時間培養した。細胞をペレット状にしてTri試薬(Sigma社、プール、UK)を用いてmRNAを抽出した。全RNAを、クロロホルムの添加とそれに続くイソプロパノール沈殿によって得た。RNAは、逆転写酵素(Applied Biosystem社)とランダムヘキサマー(Applied Biosystems社)を用いて逆転写させた。IL-10及び多くの他の分子の増幅と検出のためのプローブとプライマーはPrimer Express(Applied Biosystem社)を用いて以下のようにデザインした。
【0093】
IL-10プライマー
CTACGGCGCTGTCATCGAT
TGGAGCTTATTAAAGGCATTCTTCA
IL-10プローブ
CTTCCCTGTGAAAACAAGAGCAAGGCC
BAXプライマー
CATGGAGCTGCAGAGGATGA
CTGCCACTCGGAAAAAGACCT
Baxプローブ
TGCCGCCGTGGACACAGACTCC
BCL2プライマー
CCGGGAGGCGACCGTAGT
GGGCTGCGCACCCTTTC
BCL2プローブ
CGCCGCGCAGGACCAGGA
CD80プライマー
TCCACGTGACCAAGGAAGTG
CCAGCTCTTCAACAGAAACATTGT
CD80プローブ
AAGAAGTGGCAACGCTGTCCTGTGG
CD86プライマー
CAGACCTGCCATGCCAATT
TTCCTGGTCCTGCCAAAATACTA
CD86プローブ
CAAACTCTCAAAACCAAAGCCTGAGTGAGC
【0094】
COX-1プライマー
TGTTCGGTGTCCAGTTCCAATA
ACCTTGAAGGAGTCAGGCATGAG
COX-1プローブ
CGCAACCGCATTGCCATGGAGT
COX-2プライマー
GTGTTGACATCCAGATCACATTTGA
GAGAAGGCTTCCCAGCTTTTGTA
COX-2プローブ
TGACAGTCCACCAACTTACAATGCTGACTATGG
EP2プライマー
GAC CGC TTA CCT GCA GCT GTA C
TGA AGT TGC AGG CGA GCA
EP2プローブ
CCA CCC TGC TGC TGC TTC TCA TTG TCT
EP4プライマー
ACGCCGCCTACTCCTACATG
AGAGGACGGTGGCGAGAAT
EP4プローブ
ACG CGG GCT TCA GCT CCT TCC T
PDE4bプライマー
CCTTCAGTAGCACCGGAATCA
CAAACAAACACACAGGCATGTAGTT
PDE4bプローブ
AGCCTGCAGCCGCTCCAGCC
【0095】
グラヌリシンプライマー
CAGGGTGTGAAAGGCATCTCA
GGAGCATGGCTGCAAGGA
グラヌリシンプローブ
CGGCTGCCCCACCATGGC
CD14プライマー
GCGCTCCGAGATGCATGT
AGCCCAGCGAACGACAGA
CD14プローブ
TCCAGCGCCCTGAACTCCCTCA
E合成酵素プライマー
CGGAGGCCCCCAGTATTG
GGGTAGATGGTCTCCATGTCGTT
E合成酵素プローブ
CGACCCCGACGTGGAACGCT
IRAKMプライマー
CCT GCC CTC GGA ATT TCT CT
CTT TGC CCG CGT TGC A
IRAKMプローブ
CAC ACC GGC CTG CCA AAC AGA A
CIITAプライマー
GCTGTTGTGTGACATGGAAGGT
RTGGGAGTCCTGGAAGACATACTG
CIITAプローブ
CCGCGATATTGGCATAAGCCTCCCT
ClassIIプライマー
AGCCCAACGTCCTCATCTGT
TCGAAGCCACGTGACATTGA
ClassIIプローブ
TCATCGACAAGTTCACCCCACCAGTG
【0096】
Taqman7700機においてプローブにFAM/TAMRA色素を用いて鋳型を40サイクル増幅した。Applied Biosystemsキットを用いて増幅し、リボソーム(18S)RNAをコントロールとして検出した。40サイクル後、FAMと18S(VIC)を表すCt(シグナルが現れるサイクル数に関連)を記録し、式2−ΔΔCtを用いて、絶対相対定量化を達成した。
この実験の結果は図2に示すが、そこには、免疫系の細胞からのIL-10、CD-14、CD86、COX-2、及びグラヌリシンの放出に対してプロスタグランジン(PGE2)とGMCSF間に相乗作用があることが示されている。
【0097】
実施例2:IL-10を誘発するためのプロスタグランジンE/GMCSFの相乗作用
実施例1に示すように細胞を培養したが、4時間後に培地を除去し、細胞を洗浄し、単独培地にてさらに48時間培養する。実施例1に記載したように細胞からRNAを抽出した。
この実験の結果は図3に示すが、そこには、IL-10発現に対してプロスタグランジン(PGE2)とGMCSF間に相乗作用があり、この表現型が処理物除去後48時間維持されることが示されている。
【0098】
実施例3:PGE及びGMCSFに応答した単球からのIL-10の放出
U937細胞を、10%ウシ胎仔血清(PAA Laboratories社)を添加したRPMI(PAA Laboratories社)培地中で成長させた。5ng/mlのGMCSFを伴う場合と伴わない場合で10−6モルのプロスタグランジンE2を用いて、細胞を4時間処理した。処理物を除去して、細胞をさらに20時間培養した。培地を除去し、対応したモノクローナル抗体対(Pharmingen)又は市販のELISA(オックスフォード州、アビンドン、R&DSystem社、カタログ番号D1000)を用いてIL-10の分析を行った。図4はPGEとGMCSFに応答した単球からのIL-10の放出を示している。
環状AMPレベルを分析するために、細胞が成長しているウェルを0.01N塩酸で処理して細胞内cAMPを抽出する。この抽出物をpH6に中和し、競合的酵素免疫測定法(オックスフォード州、アビンドン、R&DSystem社、カタログ番号DE0450)にて環状AMPを分析する。
【0099】
実施例4:U937(前単球)細胞によるIL-10及びIL-12の産生に対するPGEとロリプラムの組み合わせの効果
U937(ヒト単球細胞系)細胞を、10%ウシ胎仔血清(PAA Laboratories社)を添加したRPMI(PAA Laboratories社)培地中で成長させた。10ng/mlのインターフェロン-γ、又は10−6モルのプロスタグランジンE2で、細胞を24時間処理した。全てのウェルには、1μg/mlのロリプラムと10μMのインドメタシンが存在していた。細胞をペレット状にしてTri試薬(Sigma社、プール、UK)を用いてmRNAを抽出した。全RNAはクロロホルムの添加とそれに続くイソプロパノール沈殿によって得た。RNAは逆転写酵素(Applied Biosystem社)とランダムヘキサマー(Applied Biosystems社)で逆転写させた。IL-10とIL-12(p35)のためのプローブとプライマーはPrimer Express(Applied Biosystem社)を用いて以下のようにデザインした。
【0100】
IL-12p35プライマー
CCACTCCAGACCCAGGAATG
TGTCTGGCCTTCTGGAGCAT
IL-12プローブ
TCCCATGCCTTCACCACTCCCAA
IL-10プライマー
CTACGGCGCTGTCATCGAT
TGGAGCTTATTAAAGGCATTCTTCA
IL-10プローブ
CTTCCCTGTGAAAACAAGAGCAAGGCC
【0101】
Taqman7700機においてプローブにFAM/TAMRA色素を用いて鋳型を40サイクル増幅した。Applied Biosystemsキットを用いて増幅し、リボソーム(18S)RNAをコントロールとして検出した。40サイクル後、FAMと18S(VIC)を表すCt(シグナルが現れるサイクル数に関連)を記録し、式2−ΔΔCtを用いて、絶対相対定量化を達成した。
この実験の結果を図5の説明文に記載する。それには、免疫系細胞からのIL-10の放出に対してプロスタグランジン(PGE2)とPDE阻害剤(ロリプラム)との間に相乗作用があり、プロスタグランジン(PGE2)とPDE阻害剤(ロリプラム)とが組み合わせて使用されると、免疫系細胞において、際だってIL-10が刺激され、IL-12が阻害されることが示されている。
【0102】
実施例5:LPSのあるなしにより達成されるIL-10産生の刺激
U937細胞を、10%ウシ胎仔血清(PAA Laboratories社)を添加したRPMI(PAA Laboratories社)培地中で成長させた。フラスコ当たり2x10の細胞を、10−6モルのプロスタグランジンE又はロリプラム(4x10−6)で24時間処理した。20時間目に培地を除去し、ELISAにより分析した。捕獲抗体(Pharmingen)で96ウェルプレートをコーティングし、各ウェルに培養培地を添加した。組換えIL-10タンパク質を用いて、標準曲線を作成した。インキュベーションと洗浄後、ビオチン標識化モノクローナル抗体(Pharmingen)を添加し、インキュベーションと洗浄に続き、ペルオキシダーゼ標識化ストレプトアビジンを添加した。洗浄後、テトラメチルベンジジン基質を添加し、元の試料/標準において、IL-10に比例して発色させた。プレート光度計(Labsystems, Multiskan)を使用して色調を読み取った。リポ多糖類(LPS)を含有しないコントロールにおける平均濃度(N=3)は38.2pg/mlであったが、LPS(100nM)の存在下では、43.9プロスタグランジン/mlであった。
インキュベーション後(20時間)、細胞をペレット状にしてTri試薬(Sigma社、プール、UK)を用いてmRNAを抽出した。全RNAはクロロホルムの添加とそれに続くイソプロパノール沈殿によって得た。RNAを逆転写酵素(Applied Biosystem社)とランダムヘキサマー(Applied Biosystems社)で逆転写させた。IL-10とIL-12(p35)のためのプローブとプライマーはPrimer Express(Applied Biosystem社)を用いて以下のように設定した。
【0103】
IL-12p35プライマー
CCACTCCAGACCCAGGAATG
TGTCTGGCCTTCTGGAGCAT
IL-12プローブ
TCCCATGCCTTCACCACTCCCAA
IL-10プライマー
CTACGGCGCTGTCATCGAT
TGGAGCTTATTAAAGGCATTCTTCA
IL-10プローブ
CTTCCCTGTGAAAACAAGAGCAAGGCC
【0104】
Taqman7700機においてプローブにFAM/TAMRA色素を用いて鋳型を40サイクル増幅した。Applied Biosystemsキットを用いて増幅し、同じ反応管内の内部コントロールとして、リボソーム(18S)RNAを検出した(VIC/TAMRA色素を使用)。40サイクル後、FAMと18S(VIC)を表すCt(シグナルが見られるサイクル数に関連)を記録し、式2−ΔΔCtを用いて絶対相対定量化を達成し、ここで、△は、各実験に含まれる標準コンパレータに関連したFAMとVICシグナルとの間の差異を表す。
【0105】
実施例6
ロリプラムのあるなしで、IL-10の刺激に対するPGE1、PGE2、19ヒドロキシPGE1及び19ヒドロキシPGE2の影響を、実施例5において上述したようにして調べた。ELISAアッセイ(R&D Ltd, Oxford)を使用し、IL-10レベルを測定した。製造者の使用説明書に従い、測定を実施した。結果を図7及び図8に示す。
【0106】
実施例7
ホスホジエステラーゼIV-bのmRNAを、上述の実施例5に記載したようにして測定した。4時間インキュベートした後、mRNAを抽出した。PGEの濃度は1x10−6であって、19-ヒドロキシPGEの濃度は5x10−6であった。PDE IV b mRNAの定量化のために、次のプライマー及びTaqmanプローブを使用した。

CCTTCAGTAGCACCGGAATCA

CAAACAAACACACAGGCATGTAGTT
プローブ
AGCCTGCAGCCGCTCCAGCC
【0107】
結果を図9に示す。PDE活性における増加は、PGEと19-ヒドロキシPGE適用後の双方で見られ、これは、刺激の効果を低減させる直接的な負のフィードバックによると思われる。PGEとIV型選択的PDE阻害剤を使用すると、PDEメッセージレベルがさらに増加するが、そのとき、合成されたホスホジエステラーゼは、阻害剤の存在により無効になる。
【0108】
実施例8:IL-10を誘発する際の単球細胞中のcAMPレベルを上昇させる様々な薬剤の相対的効力
実験の詳細
U937(ヒト単球細胞系)細胞を、10%ウシ胎仔血清(PAA Laboratories社)を添加したRPMI(PAA Laboratories社)培地中で成長させた。5ng/mlのGMCSFを伴うか又は伴わないで10−6モルのプロスタグランジンE2、10−6モルのロリプラム、50x10−6モルのフォルスコリンを用いて、細胞を48時間処理した。細胞をペレット状にして、Tri試薬(Sigma社、プール、UK)を用いてmRNAを抽出した。全RNAはクロロホルムの添加とそれに続くイソプロパノール沈殿によって得た。RNAは逆転写酵素(Applied Biosystem社)とランダムヘキサマー(Applied Biosystems社)で逆転写させた。IL-10の増幅と検出のためのプローブとプライマーはPrimer Express(Applied Biosystem社)を用いて以下のようにデザインした。
IL-10プライマー
CTACGGCGCTGTCATCGAT
TGGAGCTTATTAAAGGCATTCTTCA
IL-10プローブ
CTTCCCTGTGAAAACAAGAGCAAGGCC
図12を参照。
【0109】
実施例9:TNFαと比較したIL-10誘発の際の単球細胞中のcAMPレベルを上昇させる様々な薬剤の相対的効力
実施例4のとおりであるが、TNFαのmRNAをも含む。
PMA(2x10−7M)は選択的分化薬剤として用い、IL-10はPMA分化により増加するが、TNFα(前起炎性及び抗寛容性薬剤)も増加した。フォルスコリンとGMCSFによる分化はTNFαを認めうるほどには上昇させなかった。データはIL-10mRNA/TNFαmRNAの割合で示す。P=PMA=ホルボールミリストイルアセテート;F=Fsk=フォルスコリン、g=GMCSF、C=ビヒクルコントロール。
TNFαプライマー
GGAGAAGGGTGACCGACTCA
TGCCCAGACTCGGCAAAG
TNFαプローブ
CGCTGAGATCAATCGGCCCGACTA
図13を参照。
【0110】
実施例10:グラヌリシン誘発の際の単球細胞中のcAMPレベルを上昇させる様々な薬剤の相対的効力
実施例4に示すとおりであるが、グラヌリシンのmRNAを実施例1に記載したプライマーを用いて測定した(図14を参照)。
G=GMCSF;FSK=フォルスコリン。
【0111】
実施例11:IL-10を誘発するためのプロスタグランジンE/GMCSF/プロベニシド相乗作用
細胞は実施例1に記載したようにして培養し、20時間後に培地を除去し、細胞を洗浄し、実施例1に記載したようにして細胞からRNAを抽出した。
この実験の結果を図15に示すが、そこには、IL-10の発現に対して、プロスタグランジン(PGE2)及びGMCSF及びプロベニシド間に相乗作用があることが示されている。
E=PGE2
【0112】
実施例12:サイトカインを用いた前寛容化及び交雑移植研究
実験設定
一般的記載
一近交系マウス(C57BL/6)の組織(皮膚)を、遺伝的/免疫学的に異なることが知られている他の近交系(BALB/c)に移植した。前寛容化レジメには、ドナーマウスからの白血球の単離が必要である。ついで、これらの白血球を、PGE類似体(IL-6、16-ジメチルPGE2)及びマウスGM-CSFと混合する。ついで、この混合物をレシピエントマウスの腹腔に、皮膚移植の48時間前、及び全部で2回の注射の24時間前に注射する。仮説では、このレジメでレシピエントマウスの前寛容化がなされ、供与された皮膚移植片が「取り込まれる」、すなわち拒絶されない。マウスを観察し、移植領域における拒絶の兆候を、毎日視診する。
拒絶時、動物を屠殺し、移植領域を切り取って調査し、また拒絶が20日以内に生じなくても、動物を屠殺し、移植領域を切り取って調査した。切り取って調査される領域において組織診断を行い、H&Eで染色した。
【0113】
動物基準
ドナー:
種/系統: マウス:C57BL/6
数及び性別:18匹のメス+2匹の予備
年齢: 6−8週齢
体重: 年齢相応
供給元: Simonsen Laboratories又はCharles River
順化: 3日
レシピエント:
種/系統: マウス:BALB/c
数及び性別:9匹のメス+2匹の予備
年齢: 6−8週齢
体重: 年齢相応
供給元: Simonsen laboratories又はCharles River
順化: 3日
【0114】
【表1】

【表2】

【0115】
経路及びスケジュール
GM-CSF+プロスタグランジン+白血球のカクテルを、皮膚移植の48時間及び24時間前に腹腔内注射した。
投薬手順
約150μLの容量で、腹腔内注射を介して所定の投与量を投与した。投与のスクラフにより、動物は一時的に抑制されるが、鎮静はしていない。使い捨て滅菌シリンジを、各動物/投与に使用した。
【0116】
白血球+サイトカインのカクテル
白血球調製
マウスの血液から白血球を調製するための、lymphoprep又はFicoll沈降の代案。ドナーマウス(移植片を得たもの)からの全血0.2mlを遠心分離し、全ての細胞をペレット状にする。注意深く上清を除去し、0.2mlの赤血球細胞溶解バッファー(Sigma社、カタログ番号R7757、2004年度版カタログの1178頁)に細胞を再懸濁させる。1分後、3mlの緩衝生理食塩水(PBS)を添加。7分、500gで遠心分離し、100〜200μlのPBSにペレットを完全に再懸濁させる。これによりほとんどの赤血球細胞は溶解するが、多くは残存し、溶液はかなり赤い。このことは、ほとんどの赤血球細胞を除去するという考えにより、問題とはされない。
【0117】
注射用のカクテル調製
GMCSFとジメチルPGE2のカクテルを、最小量の溶液−例えば100μlに、IP注射直前に混合した。
GM-CSFとプロスタグランジンのカクテル100μlを、50μlの細胞調製物と混合し、2日連続して腹腔内注射した。
移植手順
マウスに麻酔をかけた。全層胴体皮膚の2つの1.0in片を、6ないし8週齢のドナーマウスの各側腹部から収集した。レシピエント移植領域とドナー皮膚を、ベタジン(Betadine)及び70%エタノールで清浄にすることにより調製した。レシピエント動物当たり一移植片を、6ないし8週齢のレシピエントの左胸部にストレスをかけることなく縫合した。同種移植体に抗生物質軟膏を含浸させた。移植領域の90%以上で、移植壊死した場合に、拒絶と定義される。外科手術後、マウスを個々のケージに保持した。
【0118】
生存中の観察及び測定
健康観察
病気になっていると思われる動物は、研究者が注意をし、顕著な効果を示す動物は研究から除外した。
研究の間中、少なくとも毎日一回、ケージ内にて動物を観察した。一般的外見及び行動の変化について、各動物を観察した。任意の異常な観察が、研究者により報告された。
移植観察
各動物の皮膚移植を、壊死、呈色、水和、毛細管補充時間、及び皮膚張力について観察した。
体重
第1回の投与前、その後週毎に体重を測定した。
【0119】
材料及び方法
テスト/コントロール品情報
経路
腹腔内径路は、文献検索に基づき、類似の研究において効果的であることが証明されているため、この経路を選択した。
同定
プロスタグランジン
16,16-ジメチルPGE2を400μg/kgで使用
ほぼ5mgのパック(トリアセチン)
カタログ番号14750.1
体重1キログラム当たり400μg(マイクログラム)で使用
供給源:Cayman Chemicals
1180E Ellsworth Road
Ann Arbor
Michigan 48108
www.caymanchem.com
GM-CSF:
マウス顆粒球マクロファージコロニー刺激因子
Peprotech社製
www.Peprotech.com
カタログ番号315-03
水溶液に易溶性で、体重1キログラム当たり5μg(マイクログラム)で使用
【0120】
結果及び結論
以下の観察を、15日(グループ1)、14日(グループ2)及び13日(グループ3、4及び5)で行った。よって、処理グループ(グループ1)は、処理しない同等のグループ(グループ2)よりもさらに1日進めた。
グループ1:
#5518−中心で正常、縁部で壊死が出現
#5522−中心で正常、縁部で壊死が出現
#5528−皮膚グラフトが消失、残存部位が瘡蓋化
#5530−10−20%が壊死、加湿、穏やかな張力
#5531−20−40%が壊死、脱水、腫れぼったい
#5535−20−40%が壊死、加湿、中程度の張力
【0121】
グループ2:
#5513−40−60%が壊死、脱水、穏やかな張力
#5520−10−20%が壊死、加湿、中程度の張力
#5523−10−20%が壊死、加湿、中程度の張力
#5527−10−20%が壊死、加湿、中程度の張力
#5532−10−20%が壊死、加湿、中程度の張力
#5536−10−20%が壊死、加湿、中程度の張力
【0122】
グループ3:
#5519−正常な皮膚
#5521−正常な皮膚
グループ4:
#5515−正常な皮膚
#5517−正常な皮膚
グループ5:
#5533−20−40%が壊死、加湿、穏やかな張力
#5534−10−20%が壊死、加湿、中程度の張力
上記結果には、未処理のグループ(グループ2)と比較して、処理グループ(グループ1)では、拒絶が遅延化されることの証拠が提示されている。
【0123】
実施例13:真性糖尿病の幹細胞処理を被った患者の前寛容化
ネスチン陽性島誘導性前駆細胞は、Lechnerら(2002)Biochem. Biophys. Res. Comm. 293, 670-674に記載されている。それらは膣坐薬においてPGE2及びロリプラム及び/又はGMCSFと組み合わされ、該膣坐薬が細胞に対して患者を寛容化させるために女性患者の膣に挿入される。10日後、10-10のネスチン陽性島誘導性前駆細胞を、エドモントンプロトコルを使用して患者に投与する。要するに、細胞は、それらが肝臓に取り込まれる箇所から患者の肝門静脈に注射され、そこではインシュリン産生島が形成される。
【0124】
実施例14:パーキンソン病の幹細胞処置を受けた患者の前寛容化
倫理的に承認されたドナー源からのヒト胚性幹細胞を、PA6細胞、頭蓋骨髄から誘導された間質細胞系と共培養することにより、ドーパミン生成神経細胞に分化する。これらはPGE2及びロリプラム及び/又はGMCSFを組み合わされて、膣坐薬に調製される。患者には膣坐薬が投与される。
幹細胞が寛容化されると、神経細胞は、患者の黒質の正しい位置に移動し、統合された箇所から、アクセス可能な心室又は門脈の一方に導入される。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1A】Genbank登録番号NM_000758より得たヒトGMCSFのcDNA配列。
【図1B】Genbank登録番号NM_000758より得たヒトGMCSFのアミノ酸配列。
【図2】U937細胞中での遺伝子発現に対するPGEとGMCSFの影響を示すグラフである。細胞はペレット状にしてRNAを抽出する前に、4時間、GMCSFのあるなしの条件でPGE2で処理し、洗浄して処理物を除去し、さらに20時間インキュベートした。CD14、CD80、CD86、BCL-2、BAX、COX-1(シクロ-オイゲナーゼ1)、COX-2、PGES(プロスタグランジンシンターゼ)、EP2(プロスタグランジン受容体)、EP4(プロスタグランジン受容体)、PDE4B(ホスホジエステラーゼ)、IRAK-M、CIITA(MHCクラスIIトランス活性化因子)、MHC-II、IL-10及びグラヌリシン(グランリンと省略)のmRNAレベルを測定した。グラフはGMCSF及びPGE2の存在下での発現レベルの変化パーセントを示す。
【図3】U937細胞中でのIL-10のmRNA産生に対するPGE及びGMCSFの相乗効果を示すグラフで、この表現型が処理物除去後48時間、維持されることを示している。細胞はペレット状にしてRNAを抽出する前に、グラフの下に示した薬剤で4時間処理し、洗浄して処理物を除去し、さらに48時間インキュベートした。PGE2、E2及びEはすべてプロスタグランジンE2を表し;GMはGMCSFを表し;MはMCSFを表す。
【図4】U937細胞中でのIL-10のタンパク質放出に対するPGE及びGMCSFの相乗効果を示すグラフで、この表現型が処理物の除去後に維持されることを示している。培地をIL-10についてアッセイする前に、細胞をグラフの下に表示した薬剤で4時間処理し、洗浄して処理物を除去し、さらに20時間インキュベートした。PGEはプロスタグランジンE2を表し、GMはGMCSFを表す。
【図5A】サイトカインIL-10及びIL-12のサブユニットp35に対するmRNAの発現。実験は、1μg/ml=4μMのロリプラム及び10μMのインドメタシンの存在下、U937細胞(前単球)について実施した。インドメタシンは細胞からのプロスタグランジン合成を防止する。留意すべきは、PGE+ロリプラムの効果は、未刺激細胞及びIFNγ刺激細胞双方に対して、IL-10を顕著に刺激し、IL-12を阻害することである。縦軸は、リアルタイム定量PCR(Taqman)により測定した、コントロールサンプルと比較したmRNAの測定値である。
【図5B】サイトカインIL-10及びIL-12のサブユニットp35に対するmRNAの発現。実験は、1μg/ml=4μMのロリプラム及び10μMのインドメタシンの存在下、U937細胞(前単球)について実施した。インドメタシンは細胞からのプロスタグランジン合成を防止する。留意すべきは、PGE+ロリプラムの効果は、未刺激細胞及びIFNγ刺激細胞双方に対して、IL-10を顕著に刺激し、IL-12を阻害することである。縦軸は、リアルタイム定量PCR(Taqman)により測定した、コントロールサンプルと比較したmRNAの測定値である。
【図6A】U937細胞中でのIL-10mRNAの産生に対するPGEとロリプラムの影響を示すグラフである。
【図6B】U937細胞中でのIL-10mRNAの産生に対するLPS、PGE及びロリプラムの影響を示すグラフである。
【図6C】U937細胞からのIL-10放出に対するLPS、PGE及びロリプラムの影響を示すグラフである。
【図6D】U937細胞からのIL-10放出に対するPGE及びロリプラムの影響を示すグラフである。
【図7】ロリプラムの有無による、IL-10の刺激に対する19ヒドロキシPGE1及び19ヒドロキシPGE2の影響を示すグラフである。
【図8】ロリプラムの有無による、IL-10の刺激に対するPGE1及びPGE2の影響を示すグラフである。
【図9】ロリプラムの有無による、ホスホジエステラーゼIVbmRNAの産生に対するPGE及び19ヒドロキシPGEの影響を示すグラフである。
【図10】ヒト多能性幹細胞の幹細胞系譜。
【図11】図11は、細胞内cAMPを制御する薬剤を示す模式図である。白抜き矢印は細胞内cAMPレベルを効果的に下げている。実線の矢印は刺激である。併用は相乗的である。
【図12】図12は、IL-10発現の誘導における様々な薬剤の相対的効力を示す。詳細は実施例4を参照。
【図13】図13は、IL-10誘導における様々な薬剤の相対的効力を、IL-10/TNFαmRNA発現の割合として表すものである。詳細は実施例5を参照。
【図14】図14は、グラヌリシンmRNA発現の誘導における様々な薬剤と薬剤の併用の相対的効力を示す。詳細は実施例6を参照。
【図15】図15は、IL-10発現に対するプロスタグランジン(PGE2)とGMCSFとプロベニシド間の相乗効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療量の治療用細胞又はその前駆体が引き続いて投与される患者において治療用細胞に対する寛容性を誘発させる方法であって、(a)治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体と、(b)単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤を患者に投与することを含む方法。
【請求項2】
細胞又は組織の再生のために、治療用細胞の移植が必要な患者において移植の拒絶反応の危険性を低減する方法であって、(a)再生される細胞又は組織であるかそれに分化可能な治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体と、(b)単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤とを、移植の前に患者に投与することを含む方法。
【請求項3】
細胞又は組織再生を必要とする患者の治療方法であって、(a)再生される細胞又は組織であるかそれに分化可能で、引き続いて投与される治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体、(b)治療用細胞に対して寛容性を誘発させる量で、単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤を患者に投与し、続いて(c)治療量の該治療用細胞を患者に投与することを含む方法。
【請求項4】
工程(a)において細胞が患者に投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)の寛容化細胞及び工程(c)の治療用細胞が、同じ親の胚性幹細胞から由来するものである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)又はその派生体を患者にさらに投与する、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
患者が変性疾患又は障害を被っている、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
変性疾患又は障害が、糖尿病、卒中、パーキンソン病、ALS(ルー・ゲーリック病)、脊髄傷害、心臓発作、心虚血、鬱血性心不全、肝炎、肝硬変、癌、免疫不全症、骨粗鬆症、骨関節炎、黄斑変性症、火傷、創傷、筋ジストロフィー及び多発性硬化症からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
(a)寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体と、(b)単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤とが、一緒に投与される、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
GMCSFが、(a)寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体と、(b)単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤と同時に投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
(a)寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体が、(b)単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤と、使用されるならばGMCSF又はその派生体との投与後に投与される、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
治療量の治療用細胞又はその前駆体が引き続いて投与される患者において治療用細胞に対する寛容性を誘発させるための医薬の製造における、(a)治療的に投与される治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体と、(b)単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤との組み合わせの使用。
【請求項13】
治療量の治療用細胞が引き続いて投与される患者において治療用細胞に対する寛容性を誘発させるための医薬の製造における、治療的に投与される治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体の使用であって、該患者には、単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤が投与される使用。
【請求項14】
治療量の治療用細胞が引き続いて投与される患者において治療用細胞に対する寛容性を誘発させるための医薬の製造における、単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤の使用であって、該患者には、治療的に投与される治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体が投与される使用。
【請求項15】
患者において治療用細胞に対する寛容性を誘発させるための医薬の製造における、(a)治療的に投与される治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体と、(b)単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤と、(c)GMCSFのいずれか一又は二の使用であって、該患者には治療量の治療用細胞が引き続いて投与され、上記医薬には見出されない(a)、(b)又は(c)の一又は双方が投与される使用。
【請求項16】
細胞又は組織の再生のために治療用細胞の移植が必要な患者において移植の拒絶反応の危険性を低減するための医薬の製造における、(a)再生される細胞又は組織であるかそれに分化可能な治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体と、(b)単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤との組み合わせの使用。
【請求項17】
細胞又は組織の再生のために治療用細胞の移植が必要な患者において移植の拒絶反応の危険性を低減するための医薬の製造における、再生される細胞又は組織であるかそれに分化可能な治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体の使用であって、該患者には単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤が投与される使用。
【請求項18】
細胞又は組織の再生のために治療用細胞の移植が必要な患者において移植の拒絶反応の危険性を低減するための医薬の製造における、単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤の使用であって、該患者には、再生される細胞又は組織であるかそれに分化可能な治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体が投与される使用。
【請求項19】
細胞又は組織の再生のために治療用細胞の移植が必要な患者において、移植の拒絶反応の危険性を低減するための医薬の製造における、(a)再生される細胞又は組織であるかそれに分化可能な治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体、(b)単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤、及び(c)GMCSFの任意の一又は二の使用であって、該患者には上述した医薬には見出されない(a)、(b)又は(c)の一又は双方が投与される使用。
【請求項20】
細胞又は組織再生を必要とする患者を治療するための医薬の製造における、(a)再生される細胞又は組織であるかそれに分化可能で、引き続いて投与される治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体と、(b)単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤との組み合わせの使用であって、該患者には治療量の該治療用細胞が引き続いて投与される使用。
【請求項21】
細胞又は組織再生を必要とする患者を治療するための医薬の製造における、再生される細胞又は組織であるかそれに分化可能で、引き続いて投与される治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体の使用であって、該患者には、単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤が投与され、さらに治療量の該治療用細胞が引き続いて投与される使用。
【請求項22】
細胞又は組織再生を必要とする患者を治療するための医薬の製造における、単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤の使用であって、該患者には、再生される細胞又は組織であるかそれに分化可能で、引き続いて投与される治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体が投与され、さらに治療量の該治療用細胞が引き続いて投与される使用。
【請求項23】
細胞又は組織再生を必要とする患者を治療するための医薬の製造における、(a)再生される細胞又は組織であるかそれに分化可能で、引き続いて投与される治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体、(b)単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤、及び(c)GMCSF又はその派生体の任意の一又は二の使用であって、該患者には上記医薬には見出されない(a)、(b)又は(c)の一又は二が投与され、さらに治療量の該治療用細胞が引き続いて投与される使用。
【請求項24】
細胞又は組織再生を必要とする患者を治療するための医薬の製造における、再生される細胞又は組織であるかそれに分化可能な、治療量の治療用細胞の使用であって、該患者には、(a)治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体と、(b)単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤と、場合によっては(c)GMCSFが予め投与されている使用。
【請求項25】
(a)治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体、(b)単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤、場合によっては(c)顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)又はその派生体を含有し、治療量の治療用細胞又はその前駆体が引き続いて投与される患者に治療用細胞に対する寛容性を誘発させるための組成物。
【請求項26】
(a)治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体、(b)単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤、場合によっては(c)顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)又はその派生体を含有し、治療量の治療用細胞又はその前駆体が引き続いて投与される患者に治療用細胞に対する寛容性を誘発させる治療システム。
【請求項27】
(a)治療用細胞と同じ抗原的特徴を共有する寛容化細胞、又はそこに見出される抗原もしくは該抗原の派生体、(b)単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤、場合によっては(c)顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)又はその派生体を含有し、治療量の治療用細胞又はその前駆体が引き続いて投与される患者に治療用細胞に対する寛容性を誘発させるキット・オブ・パーツ。
【請求項28】
単球細胞中の有効cAMP濃度を上昇させる薬剤が、プロスタグランジン又はそのアゴニスト、β-アドレナリン作動薬、細胞からのcAMP輸送の遮断薬、フォルスコリン又はその誘導体、cAMPホスホジエステラーゼ阻害剤、cAMP類似体、又はコレラ毒又はその派生体又は断片のうちのいずれか又は複数である、請求項1ないし11のいずれか一項に記載の方法、請求項11ないし24のいずれか一項に記載の使用、請求項25に記載の組成物、請求項26に記載の治療システム、又は請求項27に記載のキット・オブ・パーツ。
【請求項29】
細胞からのcAMP輸送の遮断薬がプロベニシド又はプロゲステロンである、請求項28に記載の方法又は使用又は組成物又は治療システム又はキット・オブ・パーツ。
【請求項30】
cAMP類似体が、Sp-アデノシン-3',5'-環状モノホスホロチオエート又は8-ブロモアデノシン-3',5'-環状モノホスフェート又はジブチリルcAMPである、請求項28に記載の方法又は使用又は組成物又は治療システム又はキット・オブ・パーツ。
【請求項31】
プロスタグランジン又はそのアゴニストが単球におけるcAMP産生を刺激する、請求項28に記載の方法又は使用又は組成物又は治療システム又はキット・オブ・パーツ。
【請求項32】
プロスタグランジン又はそのアゴニストが、プロスタグランジンE等のプロスタグランジンE又はその類似体、ジノプロストン、ゲメプロスト、ミソプロストール、アルプロスタジル、リマプロスト、ブタプロスト、11-デオキシPGE1、AH23848、AH13205、又は19-ヒドロキシPGEのいずれか一つである、請求項28又は31に記載の方法又は使用又は組成物又は治療システム又はキット・オブ・パーツ。
【請求項33】
GMCSFが、存在する場合、図1に記載のアミノ酸配列を持つヒトGMCSF、又はその天然に生じる変異体である、請求項6に記載の方法、又は請求項15又は19又は23のいずれか一項に記載の使用、又は請求項25に記載の組成物、又は請求項26に記載の治療システム、又は請求項27に記載のキット・オブ・パーツ。
【請求項34】
GMCSFがサルグラモスチムである、請求項33に記載の方法又は使用又は組成物又は治療システム又はキット・オブ・パーツ。
【請求項35】
患者に単球走化剤を投与することを含む、請求項1ないし11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
単球走化剤がMCP-1又はMIP-1αである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
患者にPDE阻害剤を投与することを含む、請求項1ないし11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
PDE阻害剤が、3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)、ペントキシフィリン(3,7-ジヒドロ-3,7-ジメチル-1-(5-オキソヘキシル)-1H-プリン-2,6-ジオン)、ロリプラム(4-[3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシフェニル]-2-ピロリジノン)、CP80 633、CP102 995、CP76 593、Ro-20-1724(4-[3-ブトキシ-4-メトキシベンジル]-2-イミダゾリジノン)、テオフィリン、又はデンブフィリン(1,3-ジ-n-ブチル-7-(2-オキソプロピル)-キサンチン)のいずれか一つである、請求項28に記載の方法又は使用又は組成物又は治療システム又はキット・オブ・パーツ。
【請求項39】
PDE阻害剤がIV型PDEに対して選択的である、請求項38に記載の方法又は使用又は組成物又は治療システム又はキット・オブ・パーツ。
【請求項40】
IV型PDEに対して選択的なPDE阻害剤が、ロリプラム(4-[3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシフェニル]-2-ピロリジノン)、CP80 633、CP102 995、CP76 593、Ro-20-1724(4-[3-ブトキシ-4-メトキシベンジル]-2-イミダゾリジノン)、デンブフィリン(1,3-ジ-n-ブチル-7-(2-オキソプロピル)-キサンチン)、又は、CDP840、RP73401又はRS33793のいずれか一つである、請求項39に記載の方法又は使用又は組成物又は治療システム又はキット・オブ・パーツ。
【請求項41】
請求項25に記載の組成物と、薬学的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤を含有する薬学的組成物。
【請求項42】
医薬への使用のための、請求項25に記載の組成物。
【請求項43】
再生される細胞又は組織であるかそれに分化可能な治療用細胞をさらに含む、請求項26に記載の治療システム又は請求項27に記載のキット・オブ・パーツ。
【請求項44】
ここに記載したように、細胞に対して患者を前寛容化する任意の新規方法。
【請求項45】
患者において細胞又は組織を再生させるために、治療量の細胞又はその前駆体を患者に引き続いて投与する、ここに記載したように細胞に対して患者を前寛容化するための任意の新規方法

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2007−509854(P2007−509854A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536157(P2006−536157)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004412
【国際公開番号】WO2005/044298
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(504171433)メディカル リサーチ カウンシル (16)
【出願人】(505103976)アーダナ バイオサイエンス リミテッド (11)
【Fターム(参考)】