説明

治療剤

【課題】天然物由来のアポトーシス誘発作用等の生理機能を有する安全性の高い物質、その製造方法およびその用途を提供すること。
【解決手段】式(I)


(式中、XおよびYは、HまたはCHOH、ただし、XがCHOHのとき、YはH、XがHのとき、YはCHOHである。)で表される化合物、及びその塩から選択される化合物を有効成分として含有するアポトーシス誘発を要する疾患等の治療剤または予防剤、飲食品、抗酸化剤、鮮度保持剤、化粧料、及び3,6−アンヒドロガラクトース類からの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然物由来の生理活性物質の利用に関し、さらに詳しくは該生理活性物質、その製造方法、該生理活性物質を有効成分とする医薬、食品または飲料、抗酸化剤、鮮度保持剤および化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、細胞組織の死に関し、アポトーシス(apoptosis:アポプトーシスともいう。自爆死あるいは細胞自滅)という様式が注目されている。
【0003】
このアポトーシスは、病理的細胞死である壊死と異なり、細胞自身の遺伝子に最初から組込まれている死である。すなわち何らかの外部的または内部的要因が引き金となってアポトーシスをプログラムする遺伝子が活性化されることにより、プログラム死タンパク質が生合成され、またある場合には不活性型として細胞内に存在するプログラム死タンパク質が活性化される。こうして生成した活性型プログラム死タンパク質により細胞自体が分解され、死に至ると考えられている。
【0004】
このようなアポトーシスを所望の組織、細胞で発現せしめることができれば、不要もしくは有害な細胞を自然の形で生体から排除することが可能となり、極めて意義深いものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、天然物由来のアポトーシス誘発作用等の生理機能を有する安全性の高い物質、その製造方法およびその用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明を概説すれば、本発明の第1の態様は、式(I):
【化1】


(I)
(式中、XおよびYは、HまたはCHOH、ただし、XがCHOHのとき、YはH、XがHのとき、YはCHOHである)
で表される化合物、
式(II):
【化2】


(II)
(式中、RはSH基含有化合物からSH基を除いた残基である)
で表される化合物、
及びそれらの塩から選択される化合物を有効成分として含有するアポトーシス誘発を要する疾患、がん性疾患、活性酸素産生抑制を要する疾患、一酸化窒素産生抑制を要する疾患、プロスタグランジン合成抑制を要する疾患、滑膜細胞増殖抑制を要する疾患、熱ショックタンパク産生誘導を要する疾患、またはα−グリコシダーゼ阻害を要する疾患の治療剤または予防剤に関する。
【0007】
本発明の第2の態様は、3,6−アンヒドロガラクトースおよび/または還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを有する化合物を中性からアルカリの条件下で処理することを特徴とする式(I)で表される化合物の製造方法に関する。
【0008】
本発明の第3の態様は、式(II)で表される化合物又はその塩に関する。
【0009】
本発明の第4の態様は、式(I)で表される化合物とSH基含有化合物とを反応させることを特徴とする式(II)で表される化合物の製造方法に関する。
【0010】
本発明の第5の態様は、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物及びそれらの塩から選択される化合物を含有、希釈および/または添加してなる食品または飲料に関する。
【0011】
本発明の第6の態様は、3,6−アンヒドロガラクトースおよび/または還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを有する化合物を、中性からアルカリの条件下で処理することにより得られる式(I)で表される化合物を含有、希釈および/または添加してなる食品または飲料に関する。
【0012】
本発明の第7の態様は、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物及びそれらの塩から選択される化合物を有効成分として含有することを特徴とする抗酸化剤に関する。
【0013】
本発明の第8の態様は、本発明の第7の態様の抗酸化剤を含有することを特徴とする食品または飲料に関する。
【0014】
本発明の第9の態様は、式(I)又は式(II)で表される抗酸化用化合物に関する。当該抗酸化用化合物の使用に特に限定はないが、例えば活性酸素産生抑制用の化合物として使用することができる。
【0015】
本発明の第10の態様は、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物及びそれらの塩から選択される化合物を有効成分として含有する鮮度保持剤に関する。
【0016】
本発明の第11の態様は、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物及びそれらの塩から選択される化合物を有効成分として含有する化粧料に関する。
【0017】
本発明の第12の態様は、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物及びそれらの塩から選択される化合物を有効成分として含有するα−グリコシダーゼ阻害剤に関する。
【0018】
本発明の第13の態様は、3,6−アンヒドロガラクトースおよび/または還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを有する化合物を、中性からアルカリの条件下で処理することにより生成するアポトーシス誘発性物質に関する。
【0019】
本発明の第14の態様は、3,6−アンヒドロガラクトースおよび/または還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを有する化合物を、中性からアルカリの条件下で処理することにより生成するアポトーシス誘発性物質を含有、希釈および/または添加してなる食品または飲料に関する。
【発明の効果】
【0020】
天然物由来のアポトーシス誘発作用等の生理機能を有する安全性の高い物質、その製造方法およびその用途が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本明細書における、3,6−アンヒドロガラクトースとは、式(III):
【化3】


(III)
で表される3,6−アンヒドロガラクトピラノース、式(IV):
【化4】


(IV)
で表されるそのアルデヒド体、また式(V):
【化5】


(V)
で表されるその抱水体を意味する。またこれらの硫酸化体、メチル化体も包含する。式(III)〜(V)で表される化合物の構造は、他の表現で表すことも可能であるが、それらも含め、また、可能なそれらの互換異性体も含め、式(III)〜(V)で表すこととする。また、式(III)〜(V)における立体配置は、所望の活性が得られる限り、特に限定するものではなくD−型、L−型またはそれらの混合物であってもよい。
【0022】
本発明において、還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを含有する化合物とは、特に限定はなく、例えば、3,6−アンヒドロガラクトース含有物のpH7未満の酸性下での加水分解および/または酵素分解で得ることができ、また、化学合成法によっても得ることができる。
【0023】
本発明において好適に使用される3,6−アンヒドロガラクトースを含有する化合物とは、例えば、その非還元末端がL−ガラクトース−6−硫酸以外の糖である可溶性の糖化合物であり、例えば、アガロビオース、κ−カラビオースならびに3,6−アンヒドロガラクトースを還元末端に有する、アガロビオースおよびκ−カラビオース以外のオリゴ糖であり、非還元末端がL−ガラクトースである糖化合物、すなわちアガロオリゴ糖はプロドラグとして最適である。
【0024】
また、本発明において3,6−アンヒドロガラクトース含有物は、特に限定するものではなく、例えば、寒天、アガロース、アガロペクチン、フノラン、ポルフィラン、カラゲナン、フルセララン、ヒプネアン等の紅藻の粘質多糖[共立出版(株)発行、多糖生化学1−化学編−、第314頁(1969)]が例示される。またこれらの多糖の含有物も本発明で使用する3,6−アンヒドロガラクトース含有物に包含される。
【0025】
例えば、アガロース、アガロペクチンの原料としてはテングサ科のマクサ、オニグサ、オオブサ、ヒラクサ、オバクサ、ユイキリ等、オゴノリ科のオゴノリ、オオオゴノリ等、イギス科のイギス、エゴノリ等、その他の紅藻類が用いられ、通常、数種類の藻類を配合して原料とする。原料藻類を熱水抽出の後、冷却することによってところてんが得られる。このところてんから凍結脱水または圧搾脱水によって水分を除き、乾燥させることによって寒天が得られる。通常、寒天は約70%のアガロースと約30%のアガロペクチンを含んでいるが、精製を進めてさらに高純度のアガロースを調製することが可能である。
【0026】
本発明で使用する3,6−アンヒドロガラクトース含有物は、上記の寒天の原料藻類、ところてん、寒天、精製アガロース、精製アガロペクチン、これらの製造工程で得られる中間産物あるいは副産物を包含する。
【0027】
原料藻類は通常天日に干して乾燥させたものを用いるが、本発明においては生の藻類および乾燥した藻類が使用できる。また、乾燥時に散水しながら漂白したいわゆるさらし原藻も使用できる。寒天はその起源となる藻類を問わず、また、棒状、帯状、板状、糸状、粉末状等の種々の形態のものを使用できる。精製アガロースは精製度の低いものから高いものまで、様々なアガロース含量のものを使用できる。
【0028】
アガロースは交互に結合したD−ガラクトースと3,6−アンヒドロ−L−ガラクトースを主構造とする多糖であり、D−ガラクトースの1位と3,6−アンヒドロ−L−ガラクトースの4位がβ−グリコシド結合で、また、3,6−アンヒドロ−L−ガラクトースの1位とD−ガラクトースの3位がα−グリコシド結合で結合している。α−1,3結合は希酸による温和な加水分解やα−アガラーゼによって[カーボハイドレート・リサーチ(Carbohydr. Res.)、第66巻、第207頁(1978)]、また、β−1,4結合はβ−アガラーゼによって選択的に加水分解される。
【0029】
また、カラゲナンはスギノリ科、ミリン科、イバラノリ科等の紅藻類に含まれる多糖であり、κ−カラゲナン、λ−カラゲナン、η−カラゲナンが知られている。κ−カラゲナンは、D−ガラクトース−4−硫酸の1位と3,6−アンヒドロ−D−ガラクトースの4位がβ−グリコシド結合で、また、3,6−アンヒドロ−D−ガラクトースの1位とD−ガラクトース−4−硫酸の3位がα−グリコシド結合で交互に繰り返された基本構造を持つ。λ−カラゲナンはD−ガラクトースの1位とD−ガラクトース−2,6−二硫酸の4位がβ−グリコシド結合で、また、D−ガラクトース−2,6−二硫酸の1位とD−ガラクトースの3位がα−グリコシド結合で交互に繰り返された基本構造を持つ。カラゲナンは食品のゲル化剤として利用されている。
【0030】
3,6−アンヒドロガラクトース含有物を化学的、物理的および/または酵素的方法で部分分解したものも、3,6−アンヒドロガラクトース含有物として本発明で使用できる。また、3,6−アンヒドロガラクトース含有物を化学的、物理的および/または酵素的方法で部分分解することにより、還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを含有する化合物を調製することができる。
【0031】
本発明においては、還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを含有する化合物の精製物および部分精製物あるいは還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを含有する化合物の未精製含有物を目的に応じ使用すればよい。
【0032】
3,6−アンヒドロガラクトース含有物の化学的分解方法の例としては、pH7未満での酸性下での加水分解、物理的分解方法の例としては、電磁波や超音波の照射、酵素的分解方法の例としては加水分解酵素、例えば、アガラーゼ、カラギナーゼ等による加水分解が挙げられる。
【0033】
3,6−アンヒドロガラクトース含有物のpH7未満の酸性下での分解条件は還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを有する化合物、例えば、アガロビオース、κ−カラビオースならびに3,6−アンヒドロガラクトースを還元末端に有する、アガロビオースおよびκ−カラビオース以外の化合物が生成する条件であれば特に限定はない。
【0034】
例えば、3,6−アンヒドロガラクトース含有物を0.0001〜5規定の酸に溶解または懸濁し、数秒から数日間反応させることにより還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを有する化合物が生成する。また、反応時に加熱することにより還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを有する化合物の生成に必要な反応時間は短縮される。
【0035】
3,6−アンヒドロガラクトース含有物を溶解または懸濁する酸の種類に特に限定はないが、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、クエン酸、ギ酸、酢酸、乳酸、アスコルビン酸等の有機酸が使用可能である。酸の濃度も特に限定はないが、0.0001〜5規定、好ましくは0.001〜1規定の濃度で使用可能である。また、反応温度も特に限定はないが、0〜200℃、好ましくは20〜130℃に設定すればよい。また反応時間も特に限定は無いが、数秒〜数日に設定すればよい。酸の種類と濃度、反応温度および反応時間は原料となる3,6−アンヒドロガラクトース含有物、例えば、アガロース、カラゲナン等の種類および目的とする還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを含有する化合物、例えば、アガロビオース、κ−カラビオースや、還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを有する、アガロビオースおよびκ−カラビオース以外の化合物の生成量、目的とする還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを有する、アガロビオースやκ−カラビオース以外の化合物の重合度により適宜選択すればよい。一般に、弱酸よりも強酸、低濃度の酸よりも高濃度の酸、低温よりも高温を選択することにより酸分解反応は速やかに進行する。
【0036】
例えば、寒天を0.1N HClに10重量%に懸濁し、100℃で13分間加熱溶解して得られる酸分解物は、冷却しても、その氷結点においても、もはやゲル化しなくなる。この液に含まれる糖類をゲルろ過HPLC、順相HPLC等の方法で分析すると高分子の糖類はほとんど見られず、大部分が可溶性の10糖以下まで分解されている。
【0037】
本発明で使用する3,6−アンヒドロガラクトースを還元末端に有する、アガロビオースおよびκ−カラビオース以外の化合物とは、例えば、3,6−アンヒドロガラクトースの1位以外の水酸基に糖が結合したものであり、特に限定はない。例えば、アガロースの酸分解物やα−アガラーゼ分解物であるアガロビオース、アガロテトラオース、アガロヘキサオース、アガロオクタオース、アガロデカオース等が挙げられる。また、カラゲナンの酸分解物やカラギナーゼ分解物が挙げられる。さらに、グルコース、マンノース、ガラクトース等のヘキソース、キシロース、アラビノース、リボース等のペントース、グルクロン酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸、グルロン酸等のウロン酸、グルコサミン、ガラクトサミン等のアミノ糖、N−アセチルノイラミン酸等のシアル酸、フコース等のデオキシ糖、およびこれらのエステル、アミドおよび/またはラクトンが1個または複数個、3,6−アンヒドロガラクトースの1位以外の水酸基に結合したものも本発明で使用する3,6−アンヒドロガラクトースを還元末端に有する、アガロビオース、κ−カラビオース以外の化合物に含まれる。さらに、上記アガロビオース、κ−カラビオース、3,6−アンヒドロガラクトースを還元末端に有するアガロビオースおよび3,6−アンヒドロガラクトースを還元末端に有するκ−カラビオース以外の化合物に、ピルビン酸および/または硫酸基を結合したもの、また該化合物の水酸基がメチル化されたものも、本発明で使用する3,6−アンヒドロガラクトースを還元末端に有する、アガロビオース、κ−カラビオース以外の化合物と定義される。
【0038】
還元末端の3,6−アンヒドロガラクトースの1位はアノマー炭素であるので3,6−アンヒドロガラクトースを還元末端に有する化合物にはα型とβ型が存在するが、いずれも3,6−アンヒドロガラクトースを還元末端に有する化合物として本発明で使用できる。また、還元末端の3,6−アンヒドロガラクトースの1位がアルデヒド型のものも3,6−アンヒドロガラクトースを還元末端に有する化合物として使用できる。さらに、3,6−アンヒドロガラクトースがD−型であるかL−型であるかは問わない。また、上記α型、β型、アルデヒド型の混合物およびD−型、L−型の混合物も使用できる。
【0039】
本発明のアポトーシス誘発性物質は、還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを有する化合物、例えば、アガロビオース、κ−カラビオースならびに3,6−アンヒドロガラクトースを還元末端に有する、アガロビオースおよびκ−カラビオース以外の化合物を中性からアルカリの条件下で処理することにより得ることができる。また、3,6−アンヒドロガラクトース含有物のpH7未満での酸加水分解および/または酵素分解を行い、ついで得られた酸分解物および/または酵素分解物を中性からアルカリの条件下で処理することにより得ることができる。
【0040】
還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを含有する化合物、例えば、アガロビオース、κ−カラビオースならびに3,6−アンヒドロガラクトースを還元末端に有する、アガロビオースおよびκ−カラビオース以外の化合物のpH7超のアルカリ処理において、これらの化合物から選択される少なくとも1以上の化合物を溶解または懸濁するアルカリの種類に特に限定はないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等の無機塩基、トリス、エチルアミン、トリエチルアミン等の有機塩基が使用可能である。アルカリの濃度も特に限定はないが、0.0001〜5規定、好ましくは、0.001〜1規定の濃度で使用可能である。また、反応温度も特に限定はないが、0〜200℃、好ましくは20〜130℃に設定すればよい。また反応時間も特に限定は無いが、数秒〜数日に設定すればよい。アルカリの種類と濃度、反応温度および反応時間は原料となる上記化合物の種類および目的とするアポトーシス誘発性物質の生成量により適宜選択すればよい。一般に、pH7超であれば良いが、低濃度のアルカリよりも高濃度のアルカリ、低温よりも高温を選択することにより本発明のアポトーシス誘発性物質の生成は速やかに進行する。
【0041】
例えば、アガロビオースまたはκ−カラビオースのpH11.5の溶液を調製し、37℃で5分間保持することにより、本発明のアポトーシス誘発性物質が生成する。
【0042】
生成した本発明のアポトーシス誘発性物質を含有するアルカリ液は、目的に応じ中和して用いても良く、またpH7未満の酸性溶液として使用しても良い。
【0043】
本発明のアポトーシス誘発性物質のアポトーシス誘発活性は、例えば、がん細胞への増殖抑制作用を指標として測定することができる。本発明のアポトーシス誘発性物質は、該活性を指標とし精製することができる。精製手段としては、化学的方法、物理的方法等の公知の精製手段を用いればよく、ゲルろ過法、分子量分画膜による分画法、溶媒抽出法、イオン交換樹脂等を用いた各種クロマトグラフィー等の精製方法を組合せ精製すればよい。
【0044】
本発明のアポトーシス誘発性物質の精製物としては上記の式(I)で表される化合物が例示される。
【0045】
例えば、アガロビオースの中性からアルカリの条件下での処理物より式(I)で表される化合物のXがCHOH、YがHである化合物が精製され、κ−カラビオースの中性からアルカリでの条件下での処理物より、式(I)で表される化合物のXがH、YがCHOHである化合物が精製される。
【0046】
本発明において使用する式(I)で表される化合物は上記のように3,6−アンヒドロガラクトースまたは還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを含有する化合物、例えば、アガロビオース、κ−カラビオースならびに3,6−アンヒドロガラクトースを還元末端に有する、アガロビオースおよびκ−カラビオース以外の化合物の中性からアルカリでの条件下での処理において生成し、本発明において使用する式(I)で表される化合物、その生理作用の発現を目的とする3,6−アンヒドロガラクトースおよび/または還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを含有する化合物の使用は、いずれも本発明に包含されるものである。
【0047】
本発明の式(I)で表される化合物の生体内での発現を目的としたプロドラグの使用も本発明に包含される。プロドラグとしては、臓器親和性、組織親和性を有するリガンドを有する3,6−アンヒドロガラクトースが好ましく、当該プロドラグは細胞内に取り込まれた後、その生理的条件下で、式(I)で表される化合物となり、種々の生理機能を示す。リガンドとしては、ガラクトースが例示され、リガンドがガラクトースである場合は特に肝組織へのターゲッティングが効率よく行われる。当該リガンドを有する化合物としては非還元末端にガラクトースを有するアガロビオース、アガロヘキサオース、アガロオクタオース等のアガロオリゴ糖があり、これらのアガロオリゴ糖はプロドラグとして有用である。
【0048】
非還元末端にガラクトースを有するアガロオリゴ糖はこれまでにも人類は長い間食してきた。このアガロオリゴ糖は中性あるいはアルカリ性で還元末端の3,6−アンヒドロガラクトースが外れることにより、3,6−アンヒドロガラクトースが式(I)で表される化合物に変化し、生理活性が発現する。すなわちプロドラグとして生体内に吸収されたアガロオリゴ糖が式(I)で表される化合物に変化し、生理機能を発現する。このアガロオリゴ糖は吸収されやすい適度な分子量であるので、消化管で吸収されやすく、更に、非還元末端にガラクトースがあるので、肝臓で積極的に吸収され肝臓を介した血流にも乗りやすい。吸収後、非還元末端のガラクトースに親和性のある組織局所で式(I)で表される化合物に変化し生理活性を発現する。すなわち、プロドラグとしてのアガロオリゴ糖を投与することによって、安定性に優れ、取り込み効率の良く、局所で濃縮された状態で式(I)で表される化合物に変化し、その生理活性を発現することができる。
【0049】
式(I)で表される化合物の塩としては、医薬として許容される塩があり、公知の方法にて変換することができる。
【0050】
本発明において使用する式(II)で表される化合物は、式(I)で表される化合物とSH基含有化合物とを反応させることにより、反応液中に生成する。
【0051】
使用するSH基含有化合物は何ら限定はなく、例としてはメタンチオール、ブタンチオール、メルカプトエタノール、SH基含有アミノ酸、SH基含有アミノ酸誘導体等が挙げられる。SH基含有アミノ酸の例としては、システイン、ホモシステイン等が挙げられる。
【0052】
SH基含有アミノ酸誘導体としては、上記アミノ酸の誘導体、例えばシステイン誘導体、システイン含有ペプチド、システイン誘導体含有ペプチドが例示される。システイン含有ペプチドとしてはペプチド中にシステインが構成成分となっていれば良く、特に限定はない。本発明のシステイン含有ペプチドとしては、オリゴペプチド、例えばグルタチオンのような低分子物からタンパク質のような高分子物までを包含する。またシスチン又はホモシスチンを含有するペプチドも反応中にシステイン又はホモシステイン含有ペプチドとなる条件下、例えば還元処理を組合せることにより、本発明のシステイン又はホモシステイン含有ペプチドとして使用することができる。なおシステイン含有ペプチドとしては、糖質、脂質等を含有するシステイン含有ペプチドも包含される。また、上記した各種の物の塩、酸無水物、エステル等であってもよい。
【0053】
式(II)で表される化合物を製造する際の式(I)で表される化合物とSH基含有化合物との反応は、公知の反応条件で行えばよく、SH基含有化合物のSH基が反応性を有する条件であれば、特に限定はない。
【0054】
式(I)で表される化合物とSH基含有化合物、例えばSH基含有化合物、又はその誘導体とが反応し、生成した式(II)で表される化合物の精製、単離手段としては、化学的方法、物理的方法等の公知の精製手段を用い、当該化合物を精製することができる。
【0055】
式(I)で表される化合物は生体内で、例えばSH基含有化合物(例えばシステイン、グルタチオン等)と反応し、医薬として有用な式(II)で表される代謝誘導体を生成する。従って、この代謝誘導体が示す薬効は、式(I)で表される化合物を投与した場合においても得られ、式(II)で表される化合物の生体内での生成を目的とした、式(I)で表される化合物の使用も本発明に包含される。
【0056】
式(II)で表される化合物の塩としては、医薬として許容される塩があり、公知の方法にて変換することができる。
【0057】
本発明に使用する式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩はアポトーシス誘発活性、制がん活性、活性酸素産生抑制活性、過酸化脂質ラジカル産生抑制活性、一酸化窒素産生抑制活性等の抗酸化活性、抗病原微生物活性、抗変異原活性、α−グリコシダーゼ阻害活性、免疫調節作用、プロスタグランジン合成抑制作用、抗炎症作用、抗アレルギー作用、サイトカイン産生調節作用、抗リウマチ作用、抗糖尿病作用、滑膜細胞増殖抑制活性、熱ショックタンパク産生誘導作用等の生理活性を有する。これらの活性により、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩から選択される化合物を有効成分とし、アポトーシス誘発を要する疾患、がん性疾患、活性酸素産生抑制を要する疾患、過酸化脂質ラジカル産生抑制を要する疾患、一酸化窒素産生抑制を要する疾患、病原微生物による疾患、変異原により誘発される疾患、α−グリコシダーゼ阻害を要する疾患、免疫調節を要する疾患、プロスタグランジン合成抑制を要する疾患、炎症抑制を要する疾患、アレルギー抑制を要する疾患、サイトカイン産生調節を要する疾患、リウマチ、糖尿病、滑膜細胞増殖抑制を要する疾患、熱ショックタンパク産生誘導を要する疾患等の治療剤または予防剤、すなわちアポトーシス誘発剤、制がん剤、活性酸素産生抑制剤、過酸化脂質ラジカル産生抑制剤、一酸化窒素産生抑制剤等の抗酸化剤等、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗変異原剤、血糖上昇抑制剤、抗高脂質剤、免疫調節剤、プロスタグランジン合成抑制剤、抗炎症剤、抗アレルギー剤、サイトカイン産生調節剤、滑膜細胞増殖抑制剤、抗リウマチ剤、抗糖尿病剤、熱ショックタンパク産生誘導剤等を製造することができる。
【0058】
また、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩から選択される化合物を有効成分として含有する本発明のアポトーシス誘発剤は、自己免疫疾患患者の自己反応性リンパ球、がん細胞、ウイルス感染細胞等を排除するのに有効であり、アポトーシスを所望の組織、細胞で発現させることにより、不要もしくは有害な細胞を自然の形で生体から排除することができる。本発明のアポトーシス誘発剤が有効な疾患としては、例えば、全身性エリテマトーデス、免疫介在性糸球体腎炎、多発性硬化症、膠原病等の自己免疫疾患、リウマチ等である。
【0059】
本発明のアポトーシス誘発剤はアポトーシス誘発方法に使用することができ、該方法はアポトーシス誘発機構の解明、アポトーシス誘発剤、アポトーシス誘発阻害剤のスクリーニング等に有用である。
【0060】
なお、本発明のアポトーシス誘発剤によるアポトーシス誘発作用は、キャスパーゼ(Caspase)の阻害剤、例えば、IL−1βコンバーティング・エンザイム・インヒビターV〔Z−Val−Ala−DL−Asp(OMe)−フルオロメチルケトン:宝酒造社製〕により阻害されるので、キャスパーゼに依存するアポトーシスによる細胞死である。
【0061】
このキャスパーゼは、種々の細胞死の際に先行して上昇すること、その過剰発現により細胞死が誘導されること、ペプチド阻害剤や阻害タンパク質であるCrmA、p35によりアポトーシスが抑制されること、キャスパーゼ−1、キャスパーゼ−3のノックアウトマウスでは正常に見られるアポトーシスの一部が抑制されることから、アポトーシスの重要なメディエーターとして機能していることが明らかにされている[生化学、第70巻、第14〜21頁(1998)]。すなわち、アポトーシスの過程ではシステインプロテアーゼであるキャスパーゼが活性化され、核や細胞質のタンパク質を分解する。キャスパーゼは、まず前駆体として合成され、スプライシングにより活性化型となる。このキャスパーゼの活性化経路の制御が細胞の生死を決める。哺乳類では10種類以上のキャスパーゼが存在し、上位のキャスパーゼが下位のキャスパーゼをスプライシングすることで細胞内タンパク質分解活性は雪崩式に増幅される[細胞工学、第17巻、第875〜880頁(1998)]。反対に、システインプロテアーゼであるキャスパーゼの阻害剤でそのスプライシング活性を阻害すれば、キャスパーゼ依存型のアポトーシスによる細胞死を止めることができる。
【0062】
本発明に使用する式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩は酸化物質、例えば、活性酸素の産生抑制に有用であり、該化合物を有効成分とする活性酸素産生抑制剤等の抗酸化剤は活性酸素の産生および/または過剰が起因となる疾病の治療または予防に有用である。
【0063】
活性酸素は、大きくラジカルと非ラジカルの活性酸素に分類することができる。ラジカル系活性酸素には、ヒドロキシラジカル、ヒドロキシペルオキシラジカル、ペルオキシラジカル、アルコキシラジカル、二酸化窒素、一酸化窒素(以下、NOと略す)、チイルラジカル、スーパーオキシドがある。一方、非ラジカル系活性酸素には、一重項酸素、過酸化水素、脂質ヒドロペルオキシド、次亜塩素酸、オゾン、ペルオキシ亜硝酸がある。いずれも多くの病態、すなわち、各種の炎症性疾患、糖尿病、がん、動脈硬化、神経疾患、虚血再潅流障害などと関わりがある。
【0064】
生体内では絶えずいくつかの経路で低濃度の活性酸素が生成している。これは生理的にミトコンドリアなどの電子伝達系から漏出するスーパーオキシドや過酸化水素、銅や鉄などの遷移金属が触媒することによるヒドロキシラジカル、好中球や単球などによって生成される感染防御のための次亜塩素酸、アルギニンの分解により生成するNOなど、いずれも避けることのできないものである。これらの活性酸素生成に対して、生体は活性酸素消去系としての酵素、低分子化合物をもち、生成と消去のバランスを保っている。しかし、生成系がなんらかの原因で活性化されたり、逆に消去系が不活性化されて、活性酸素生成系が消去系に対して優位に立った場合、生体は酸化的障害を受けることになる。このような状態を酸化ストレスという。さらに、生体内のバランスがずれた場合だけでなく、大気や食品などの生体外のものからも、生体は常に酸化ストレスにさらされており、日常生活を送る上で酸化ストレスは避けることができない。
【0065】
すなわち、酸化ストレスは上記したように、様々な疾患と関わりがあり、生体は、常に酸化ストレスによる疾患、あるいは、疾病の悪化につながる状況にさらされている。したがって、このような酸化ストレスが引き起こす疾病の予防、治療あるいは悪化防止にも、本発明の抗酸化剤、例えば、活性酸素産生抑制剤は有用である。
【0066】
また、酸化ストレスに必ずつきまとうのが脂質過酸化反応であり、この反応は過酸化脂質ラジカルができると一挙に進む反応である。そこで生成される4−ヒドロキシ−2−ノネナール(HNE)はグルタチオンやタンパク質を特異的な標的とする毒性アルデヒドである。そのHNEとタンパク質との反応生成物が、様々な病態組織において検出されており、酸化ストレスの関わる疾患病態の誘発因子ではないかと考えられている。そのため、過酸化脂質ラジカルの生成を抑えることのできる本発明に使用される抗酸化物質、すなわち、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩から選択される化合物を有効成分として含有する抗酸化剤は酸化ストレスによる生活習慣病疾患の予防および治療に有用である。
【0067】
NOは内皮細胞由来血管平滑筋弛緩因子(EDRF)の本体である[ネーチャー(Nature)、第327巻、第524〜526頁(1987)]。本発明によりNO産生の抑制を必要とする疾病治療剤または予防剤が提供される。
【0068】
本発明において、NO産生の抑制を必要とする疾病とは、特に限定はないが、例えば、毒性ショックやある種のサイトカインによる治療等による全身性血圧低下、血圧応答低下、糖尿病、血管機能不全、病因性血管拡張、組織損傷、心臓血管系虚血、痛感過敏症、脳虚血、血管新生を伴う疾病、がん等の疾病を含むものである。
【0069】
L―アルギニンと酸素からL―シトルリンとNOを生産する一酸化窒素合成酵素(NOS)には、常に発現しているcNOSと誘導型のiNOSがある。マクロファージ等において、iNOSは、細胞毒素やサイトカイン(LPS、INF−γ等)の刺激により誘導され、NOを生産する。iNOS自体は生体系の維持においてなくてはならない存在である。しかし、一方で、種々の要因により必要以上に過剰発現し過剰なNOを産生することにより、種々の疾病を引き起こすことも明らかになっている。
【0070】
本発明者らは式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩がこのiNOSの発現を抑制することを、ウエスタンブロティングよりタンパク質レベルで、RT−PCRによりメッセンジャーRNAレベルで確認した。つまり、本発明で使用する式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩から選択される化合物は、種々の要因により過剰に発現し過剰なNOを生産するiNOSの発現を抑制することにより、NO産生抑制を必要とする疾病の治療および予防に有効である。
【0071】
かくして、本発明で使用する式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩はマクロファージのNO産生を抑制し、マクロファージのNO産生に起因する疾病、発がん等の治療、予防に有用である。また、本発明に使用する化合物のNO産生抑制はNO産生誘起物質であるLPSや、INF−γに対する拮抗阻害ではない。また、本発明に使用する化合物を予め加えておくことによって、NO産生抑制効果の増強が見られ、本発明に使用する式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩から選択される化合物は抗酸化物質の産生の予防剤の有効成分として極めて有用である。
【0072】
また、本発明のNO産生抑制剤はNO産生機構研究、NO作用機作研究に有用であり、また、NO産生機構に関与する物質のスクリーニングに使用することもできる。
【0073】
固形がんの増大に血管新生は必須であるが、血管内皮増殖因子/血管透過性亢進因子(VEGF)はこの過程に重要な役割を演じている。様々ながん細胞においてVEGFがNOによって誘導される。本発明のNO産生抑制剤はNO産生を抑制することによってがん細胞のVEGF産生も抑制し、その結果、がん組織周辺での血管新生が阻害される。がん細胞を皮下に移植して固形腫瘍を形成させたマウスに本発明のNO産生抑制剤を投与するとがん組織の周辺の血管の形成が不十分となり、がんは脱落する。
【0074】
ニトロソアミンは2級アミンにニトロソ基が付加した一群の化合物で数百種類が知られており、その多くがDNAに損傷を加えることにより動物に対して発がん性を示す。ニトロソアミンはヒトの発がんにも深く関わっているとされており、通常、胃の中で亜硝酸塩とアミンが反応することによって生成する。NOはpH中性の生理的条件下でもアミンと反応してニトロソアミンを生成する。また、疫学的にがんとの関係が高い肝吸虫感染患者や肝硬変患者においてNO産生は亢進している。したがって、本発明のNO産生抑制剤を投与してNO産生の亢進を防ぐことによって特にハイリスクグループの発がんを予防することができる。以上のように、本発明のNO産生抑制剤は発がんの抑制とがん組織における血管新生阻害という2段階で制がん作用を示す。
【0075】
さらに、本発明において使用する化合物は、アポトーシスを誘導し、がん細胞を死滅させる直接効果と、がん細胞が出しているNOを抑制することにより、NOにより誘導されるVEGFによる血管新生を阻害することによりがん細胞を死に追いやる間接的効果の2つの作用の相乗効果でも制がん作用を発揮する。
【0076】
NOはまた、炎症性病変に特徴的に認められる浮腫、すなわち血管透過性亢進作用を誘発し[マエダ(Maeda)ら、ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・カンサー・リサーチ(Japanese Journal of Cancer Research)、第85巻、第331〜334頁(1994)]、また、炎症性メディエーターであるプロスタグランジン類の生合成を亢進させる[サルベミニ(Salvemini)ら、プロシーディングズ・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・USA(Proceedings of National Academy of Sciences, USA)、第90巻、第7240〜7244頁(1993)]。一方、NOはスーパーオキシドラジカルと速やかに反応してペルオキシ亜硝酸イオンを生じ、ペルオキシ亜硝酸イオンが炎症性の細胞、組織障害を引き起こすとも考えられている。
【0077】
活性化された免疫細胞が臓器に入り込みサイトカインを放出するとNOの産生が誘導される。インスリン依存型糖尿病は膵島β細胞が特異的に破壊されることによって引き起こされる疾患であり、NOによる破壊であるとされている。また、慢性関節性リウマチ、変形性関節リウマチ、痛風性関節炎、ベーチェット病に伴う関節炎の患者の病変部の関節液には同患者の正常な関節や健常人の関節の関節液に比べて高濃度のNOが含まれている。これらの患者に本発明のNO産生抑制剤を投与すると病変部におけるNO産生を抑制し、症状が改善する。
【0078】
脳虚血中および再潅流後にはNO産生が増大し、それに伴って脳組織が損傷を受ける。脳虚血時に患者に本発明のNO産生抑制剤を投与することにより脳組織の損傷が軽減され、予後が改善される。
【0079】
組織の炎症および疼痛の惹起にはアラキドン酸代謝が大きく関与している。細胞膜リン脂質由来のアラキドン酸は、体内でシクロオキシゲナーゼの作用によりプロスタグランジン、プロスタサイクリン、トロンボキサンチンの三者に代謝される。このうちプロスタグランジンは血管拡張作用とそれに伴う臓器への血流増加作用を有するが、特に炎症部位においてはプロスタグランジンEとIがその血流増加作用により、浮腫と白血球浸潤を増加させる。すなわち、本発明のプロスタグランジンE合成抑制剤を投与することにより、プロスタグランジンの生合成を抑制すると、鎮痛、抗炎症作用を発現させることができる。さらに、炎症部分に浸潤した白血球は活性酸素を生産し、酸化ストレス状態を引き起こすため、プロスタグランジンの生合成を抑制する本発明のプロスタグランジンE合成抑制剤は、酸化ストレスによる先に述べたような様々な疾患、疾病の予防、治療あるいは悪化防止にも有用である。
【0080】
また、上記のように、NOは、炎症性病変に特徴的に認められる浮腫、すなわち、血管透過性亢進作用を誘発し、炎症性メディエーターであるプロスタグランジン類の生合成を亢進させることより、本発明のNO産生抑制効果とプロスタグランジンE合成抑制効果は相乗的に作用し、鎮痛、抗炎症作用と酸化ストレスによる様々な疾患、疾病の予防、治療あるいは悪化防止に相乗効果を発現する。 本発明の免疫調節剤はリンパ球幼若化反応抑制作用、混合リンパ球反応抑制等の免疫調節作用を有し、本発明の免疫調節剤はこれらの免疫系、免疫因子の異常が起因となる疾病の治療剤または予防剤として有用である。
【0081】
なお、リンパ球幼若化反応とは、マイトジェンがリンパ球表面の受容体に結合し、リンパ球を活性化させ、その分裂、増殖を促す反応である。混合リンパ球反応とは、同種異系の動物より得られたリンパ球を混合培養することにより、主要組織適合抗原の不一致によるリンパ球の活性化が誘導され、リンパ球の分裂、増殖が促進される反応である。本発明の免疫調節剤はこれらの反応を抑制し、リンパ球の異常亢進が起因となる自己免疫性疾患、例えば慢性腎炎、慢性大腸炎、I型糖尿病、慢性関節リウマチ等の慢性の疾患の治療または予防に特に有用であり、また移植片拒絶反応の抑制においても有用である。
【0082】
式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩は70kダルトン(HSP70)等の熱ショックタンパク産生誘導活性を有し、肝炎ウイルス、エイズウイルス、インフルエンザウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ヘルペスウイルス等のRNAウイルス、DNAウイルスに対する抗ウイルス作用を有する。また熱ショックタンパクはがん免疫にも関与しており、これらの化合物はがん免疫にも有効である。更に抗炎症等の生体防御作用にも関与している。従って、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩を摂取することによって、インフルエンザウイルスによる風邪疾患等のウイルス性疾患が予防、治療できる。
【0083】
本発明のアポトーシス誘発剤としては、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩から選択される化合物を有効成分とし、これを公知の医薬用担体と組合せ製剤化すればよい。一般的には、当該組成物を薬学的に許容できる液状または固体状の担体と配合し、かつ必要に応じて溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を加えて、錠剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、カプセル剤等の固形剤、通常液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤とすることができる。またこれを使用前に適当な担体の添加によって液状となし得る乾燥品とすることができる。
【0084】
本発明のアポトーシス誘発剤は、経口剤や、注射剤、点滴用剤等の非経口剤のいずれによっても投与することができる。
【0085】
医薬用担体は、上記投与形態および剤型に応じて選択することができ、経口剤の場合は、例えばデンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩等が利用される。また、経口剤の調製に当っては、さらに、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、潤沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料等を配合することもできる。
【0086】
一方、非経口剤の場合は、常法に従い本発明の有効成分である式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩から選択される化合物を希釈剤としての注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、注射用植物油、ゴマ油、落花生油、大豆油、トウモロコシ油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等に溶解ないし懸濁させ、必要に応じ、殺菌剤、安定剤、等張化剤、無痛化剤等を加えることにより調製される。
【0087】
本発明のアポトーシス誘発剤は、製剤形態に応じた適当な投与経路で投与される。投与方法も特に限定はなく、内用、外用および注射によることができる。注射剤は、例えば静脈内、筋肉内、皮下、皮内等に投与することができ、外用剤には座剤等も包含される。
【0088】
本発明のアポトーシス誘発剤の投与量は、その製剤形態、投与方法、使用目的およびこれに適用される患者の年齢、体重、症状によって適宜設定され、一定ではないが一般には製剤中に含有される有効成分の量が成人1日当り10μg〜200mg/kgである。もちろん投与量は、種々の条件によって変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、あるいは範囲を超えて必要な場合もある。本発明の薬剤はそのまま経口投与するほか、任意の飲食品に添加して日常的に摂取させることもできる。
【0089】
本発明の制がん剤としては、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩から選択される化合物を有効成分とし、これを公知の医薬用担体と組合せ製剤化すれば制がん剤を製造することができる。制がん剤の製造は上記アポトーシス誘発剤の製造方法に準じ行うことができる。
【0090】
制がん剤としては、製剤形態に応じた適当な投与経路で投与される。投与方法も特に限定はなく、内用、外用および注射によることができる。注射剤は、例えば静脈内、筋肉内、皮下、皮内等に投与することができ、外用剤には座剤等も包含される。
【0091】
制がん剤としての投与量は、その製剤形態、投与方法、使用目的およびこれに適用される患者の年齢、体重、症状によって適宜設定され、一定ではないが一般には製剤中に含有される有効成分の量が成人1日当り10μg〜200mg/kgである。もちろん投与量は、種々の条件によって変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、あるいは範囲を超えて必要な場合もある。本発明の薬剤はそのまま経口投与するほか、任意の飲食品に添加して日常的に摂取させることもできる。
【0092】
リウマチは骨膜細胞や軟骨細胞に障害が起こる自己免疫疾患である。式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩は滑膜細胞へのアポトーシス誘発作用を有する。したがって、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩から選択される化合物を有効成分として抗リウマチ剤を製造することができる。すなわち、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩から選択される化合物を有効成分とし、これを公知の医薬用担体と組合せ製剤化すれば抗リウマチ剤を製造することができる。抗リウマチ剤の製造は上記方法に準じ行うことができる。
【0093】
抗リウマチ剤としては、経口剤や、注射剤、点滴用剤等の非経口剤のいずれによっても投与することができる。
【0094】
医薬用担体は、上記投与形態および剤型に応じて選択することができ、上記アポトーシス誘発剤に準じ使用すれば良い。
【0095】
抗リウマチ剤としては、製剤形態に応じた適当な投与経路で投与される。投与方法も特に限定はなく、内用、外用および注射によることができる。注射剤は、例えば静脈内、筋肉内、皮下、皮内等に投与し得、外用剤には座剤等も包含される。
【0096】
式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩から選択される化合物を有効成分として含有する抗リウマチ剤の投与量は、その製剤形態、投与方法、使用目的およびこれに適用される患者の年齢、体重、症状によって適宜設定され、一定ではないが一般には製剤中に含有される有効成分の量が成人1日当り0.01〜50mg、好ましくは0.1〜10mgである。もちろん投与量は種々の条件によって変動するので上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、あるいは範囲を超えて必要な場合もある。本発明の薬剤はそのまま経口投与するほか、任意の飲食品に添加して日常的に摂取させることもできる。
【0097】
また、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩から選択される化合物を有効成分とする抗酸化剤、活性酸素産生抑制剤、過酸化脂質ラジカル産生抑制剤、NO産生抑制剤、抗病原微生物剤、抗変異原剤、プロスタグランジン合成抑制剤、滑膜細胞増殖抑制剤、熱ショックタンパク産生誘導剤、抗ウイルス剤は上記アポトーシス誘発剤に準じ製造することができ、用量、用法はその症状に応じ、上記アポトーシス誘発剤に準じて、使用すればよい。
【0098】
さらに式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩は種々のα−グリコシダーゼ、例えば、シュークラーゼ、マルターゼ等に阻害活性を示し、式(I)で表される化合物を有効成分とする血糖上昇抑制剤、抗高脂血症剤、抗肥満剤、抗糖尿病剤等を製造することができる。これらの医薬は上記アポトーシス誘発剤に準じ製造することができ、用量、用法はその症状に応じ、上記アポトーシス誘発剤に準じて、使用すれば良い。また式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩から選択される化合物を有効成分としてα−グリコシダーゼ阻害剤を常法に従い製造することができる。該α−グリコシダーゼ阻害剤を使用し、α−グリコシダーゼの阻害方法を行うことができる。
【0099】
本発明により、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩から選択される化合物を含有、希釈および/または添加してなる食品および飲料が提供される。本発明の食品および飲料は、そのアポトーシス誘発作用、制がん作用、抗酸化作用、抗病原微生物活性、抗変異原活性、プロスタグランジン合成抑制活性、熱ショックタンパク産生誘導作用、抗ウイルス作用、α−グリコシダーゼ阻害活性等により、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩から選択される化合物に感受性を示す疾患、例えば、アポトーシス誘発を要する疾患、がん性疾患、活性酸素産生抑制を要する疾患、NO産生抑制を要する疾患、病原微生物による疾患、変異原、プロスタグランジン合成等により惹起される疾患、熱ショックタンパク産生誘導を要する疾患、ウイルス性疾患、α−グリコシダーゼの調節を必要とする疾患等の症状改善、予防に極めて有用である。
【0100】
本発明の食品または飲料の製造法は、特に限定はないが、調理、加工および一般に用いられている食品または飲料の製造法による製造を挙げることができ、製造された食品または飲料に式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩から選択される化合物が有効成分として含有、添加および/または希釈されていればよい。
【0101】
例えば、式(I)で表される化合物は、食品または飲料の製造工程において、3,6−アンヒドロガラクトースおよび/または還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを有する化合物を、中性からアルカリの条件下で処理することにより得られる。また、3,6−アンヒドロガラクトースおよび/または還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを有する化合物は、3,6−アンヒドロガラクトース含有物の酸性下での加水分解または酵素分解により得られる。
【0102】
3,6−アンヒドロガラクトース含有物としては、例えば、寒天、アガロースおよび/またはカラゲナンを使用することができる。還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを有する化合物としては、アガロビオース、κ−カラビオースならびに還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを有する、アガロビオースおよびκ−カラビオース以外の化合物から選択される少なくとも1以上の化合物を使用することができる。
【0103】
また式(I)で表される化合物が食品又は飲料の製造工程中に、SH基含有化合物と反応して生成する式(II)で表される化合物を含有、希釈及び/又は添加してなる食品又は飲料も本発明の食品又は飲料に包含される。
【0104】
本発明の食品または飲料とは、特に限定はないが、例えば、穀物加工品(小麦粉加工品、デンプン類加工品、プレミックス加工品、麺類、マカロニ類、パン類、あん類、そば類、麩、ビーフン、はるさめ、包装餅等)、油脂加工品(可塑性油脂、てんぷら油、サラダ油、マヨネーズ類、ドレッシング等)、大豆加工品(豆腐類、味噌、納豆等)、食肉加工品(ハム、ベーコン、プレスハム、ソーセージ等)、水産製品(冷凍すりみ、かまぼこ、ちくわ、はんぺん、さつま揚げ、つみれ、すじ、魚肉ハム、ソーセージ、かつお節、魚卵加工品、水産缶詰、つくだ煮等)、乳製品(原料乳、クリーム、ヨーグルト、バター、チーズ、練乳、粉乳、アイスクリーム等)、野菜・果実加工品(ペースト類、ジャム類、漬け物類、果実飲料、野菜飲料、ミックス飲料等)、菓子類(チョコレート、ビスケット類、菓子パン類、ケーキ、餅菓子、米菓類等)、アルコール飲料(日本酒、中国酒、ワイン、ウイスキー、焼酎、ウオッカ、ブランデー、ジン、ラム酒、ビール、清涼アルコール飲料、果実酒、リキュール等)、嗜好飲料(緑茶、紅茶、ウーロン茶、コーヒー、清涼飲料、乳酸飲料等)、調味料(しょうゆ、ソース、酢、みりん等)、缶詰・瓶詰め・袋詰め食品(牛飯、釜飯、赤飯、カレー、その他の各種調理済み食品)、半乾燥または濃縮食品(レバーペースト、その他のスプレッド、そば・うどんの汁、濃縮スープ類)、乾燥食品(即席麺類、即席カレー、インスタントコーヒー、粉末ジュース、粉末スープ、即席味噌汁、調理済み食品、調理済み飲料、調理済みスープ等)、冷凍食品(すき焼き、茶碗蒸し、うなぎかば焼き、ハンバーグステーキ、シュウマイ、餃子、各種スティック、フルーツカクテル等)、固形食品、液体食品(スープ等)、香辛料類等の農産・林産加工品、畜産加工品、水産加工品等が挙げられる。
【0105】
本発明の食品または飲料としては、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩から選択される化合物が含有、希釈および/または添加されており、その生理機能を発現するための必要量が含有されていれば特にその形状に限定は無く、タブレット状、顆粒状、カプセル状等の形状の経口的に摂取可能な形状物も包含する。
【0106】
本発明の食品または飲料は生理活性を有する式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩から選択される化合物を含有し、これらのアポトーシス誘発作用、制がん作用等の生理機能によって、これらを摂取することにより発がん予防、がん抑制効果等の式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩に感受性を示す疾患の症状改善作用または予防作用を示す健康食品または飲料であり、特に胃腸健康保持に有用な食品または飲料である。
【0107】
また、そのα−グリコシダーゼ阻害活性により、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩から選択される化合物を含有、希釈および/または添加してなる食品は血糖上昇抑制作用を示す食品または飲料として、抗糖尿病用食品または抗糖尿病用飲料、抗肥満用食品または抗肥満用飲料、抗高脂血症用食品または抗高脂血症用飲料等として有用である。
【0108】
また、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩は、活性酸素産生抑制作用、過酸化脂質ラジカル産生抑制作用等の抗酸化活性を有し、抗酸化用食品用の抗酸化剤または抗酸化用飲料用の抗酸化剤、例えば活性酸素産生抑制剤、過酸化脂質ラジカル産生抑制剤、NO産生抑制剤等として抗酸化用食品または抗酸化用飲料の製造に使用することができる。
【0109】
上記化合物から選択される少なくとも一つの化合物を有効成分とする本発明の抗酸化剤の剤型は特に限定されるものではなく、添加対象となる食品または飲料の種類によって常法に従って、粉末状、ペースト状、乳化物等の適宜な剤型にすることができ、本発明に使用する化合物を有効成分として含有する食品または飲料は本発明の抗酸化剤を使用することにより簡便に製造することができる。
【0110】
また、本発明において式(I)又は式(II)で表される抗酸化用化合物が提供される。
【0111】
式(I)で表される抗酸化用化合物は、例えば、3,6−アンヒドロガラクトース含有物のpH7未満の酸性下での酸分解物および/または酵素分解物を中性からアルカリの条件下で処理を行うことにより得ることができる。またその精製物、部分精製物等を使用することができる。
【0112】
またその3,6−アンヒドロガラクトース含有物としては、例えば、紅藻類由来の3,6−アンヒドロガラクトース含有物、例えば、寒天、アガロースおよび/またはカラゲナンが使用できる。
【0113】
式(II)で表される抗酸化用化合物は、式(I)で表される化合物とSH基含有化合物を反応させることにより得ることができ、精製物、部分精製物等を使用することができる。
【0114】
本発明の抗酸化用化合物は生体内の酸化物質、例えば活性酸素の除去や産生抑制に有用であり、該抗酸化糖化合物は活性酸素の産生および/または過剰が起因となる疾病の症状改善または予防に有用である。
【0115】
上記のように、生体内において活性酸素生成系が消去系に対して優位に立った場合、生体は酸化的障害を受けることにより生じる酸化ストレスは様々な疾患と関わり、生体は、常に酸化ストレスによる疾患、あるいは、疾病の悪化につながる状況にさらされている。したがって、このような酸化ストレスが引き起こす疾病の予防、治療あるいは悪化防止には、毎日、適度の抗酸化物質を摂取することが望ましい。毎日適度の量を摂取するには、食品および/または飲料から摂取するのが望ましく、本発明の抗酸化用化合物を含有、希釈および/または添加してなる食品または飲料は抗酸化用食品または抗酸化用飲料として、また抗酸化ストレス食品または抗酸化ストレス飲料として極めて有用である。
【0116】
本発明に使用する化合物は保水性も合せ有し、本発明に使用する化合物を有効成分とし抗便秘剤を製造することができる。抗便秘用食品、抗便秘用飲料を製造することができる。
【0117】
本発明によれば、さらに、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩から選択される化合物を有効成分とする化粧料が提供される。
【0118】
化粧料としては、上記糖化合物を有効成分とし、クリーム、乳液、ローション、洗顔料、パック等の基礎化粧料、口紅、ファンデーション等のメイクアップ化粧料、ボディソープ、石鹸等の形態に調製することができる。また、頭髪に対しても有効であり、ヘアートニック、ヘアーリキッド、ヘアーセットローション、ヘアーブロー剤、ヘアークリーム、ヘアーコート等のヘアー製品やシャンプー、リンス、ヘアートリートメント等の頭髪用トイレタリー等のヘアーケアー製品の形態にすることができる。化粧料への配合量はその美白作用、保湿作用、抗酸化作用等により、適宜決定すればよい。化粧料の他の成分は通常化粧料に配合されるものが使用できる。なお美白作用、保湿作用は常法にて測定すればよく、例えば特開平8−310937号公報記載の方法で測定することができる。
【0119】
本発明の化粧料は皮膚への美白作用、保湿作用、抗酸化作用、活性酸素産生抑制作用、抗酸化ストレス作用、毛髪への保湿作用、抗酸化作用、活性酸素産生抑制作用、抗酸化ストレス作用等により優れた性質を示す。
【0120】
本発明において式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩から選択される化合物を有効成分とする鮮度保持剤が提供される。 式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩は抗酸化作用、鮮度保持作用、チロシナーゼ活性阻害作用、抗病原微生物活性、抗変異原活性を有し、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩から選択される化合物を有効成分として、公知の製剤化方法により、食品の変色、腐敗、酸化等を効果的に防止する食品の鮮度保持剤を製造することができる。本発明の鮮度保持剤は種々の食品、生鮮食品、加工食品等の味や鮮度の保持に極めて有用である。
【0121】
本発明によれば、3,6−アンヒドロガラクトースおよび/または還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを有する化合物を、中性からアルカリの条件下で処理することにより生成するアポトーシス誘発性物質(以下、単に本発明のアポトーシス誘発性物質と称する)を有効成分とし、アポトーシス誘発剤を製造することができる。アポトーシス誘発剤としては、上記のアポトーシス誘発剤に準じ製造すればよい。
【0122】
本発明のアポトーシス誘発性物質を有効成分とするアポトーシス誘発剤の投与量は、その製剤形態、投与方法、使用目的およびこれに適用される患者の年齢、体重、症状によって適宜設定され、一定ではないが一般には製剤中に含有される有効成分の量が成人1日当り10μg〜200mg/kgである。もちろん投与量は、種々の条件によって変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、あるいは範囲を超えて必要な場合もある。本発明の薬剤はそのまま経口投与するほか、任意の飲食品に添加して日常的に摂取させることもできる。
【0123】
本発明のアポトーシス誘発性物質を有効成分とするアポトーシス誘発性物質はがん細胞の増殖抑制活性を有し、本発明のアポトーシス誘発性物質を有効成分として制がん剤を製造することができる。
【0124】
本発明のアポトーシス誘発性物質を有効成分とする制がん剤の製造方法、用量、用法は上記アポトーシス誘発剤に準じて、製造、使用すればよい。
【0125】
本発明のアポトーシス誘発性物質はがん疾患等の治療薬として用いることができる。また、本発明のアポトーシス誘発性物質で表される化合物を有効成分として使用するアポトーシス誘発方法は生体防御機構、がん疾患等の研究、アポトーシス誘発阻害剤の開発等に有用である。
【0126】
本発明のアポトーシス誘発性物質を含有、希釈および/または添加してなる食品または飲料中には、本発明のアポトーシス誘発性物質の生理作用を発現するための有効量が含有されておればよい。本発明の食品または飲料、例えば、アポトーシス誘発用食品またはアポトーシス誘発用飲料、制がん用食品または制がん用飲料のそれぞれの製造方法には特に限定はないが、調理、加工および一般に用いられている食品または飲料の製造方法を挙げることができ、製造された食品または飲料にアポトーシス誘発作用または制がん作用を示す本発明のアポトーシス誘発性物質の有効量が含有されておればよい。3,6−アンヒドロガラクトースおよび/または還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを含有する原料を、食品または飲料の製造過程において、pH7超のアルカリで処理することにより、生成する本発明のアポトーシス誘発性物質を含有、希釈および/または添加してなる食品または飲料も本発明の食品または飲料に包含される。
【0127】
本発明の食品または飲料としては、本発明のアポトーシス誘発性物質が含有、添加および/または希釈されていれば特にその形状に限定は無く、タブレット状、顆粒状、カプセル状等の形状の経口的に摂取可能な形状物も包含する。
【0128】
本発明の食品または飲料は、そのアポトーシス誘発作用、制がん作用により、消化器系がん等の症状改善、予防に極めて有用である。
【0129】
式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、それらの塩、本発明のアポトーシス誘発性物質のいずれかを100mg/kgでマウスに単回経口投与しても死亡例は認められない。
【0130】
以上記載したように、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、それらの塩、及び本発明のアポトーシス誘発性物質はその種々の生理的機能によって、医薬、食品、飲料等の広い分野において極めて有用な化合物である。
【0131】
また3,6−アンヒドロガラクトースおよび/または還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを含有する原料を、食品または飲料の製造過程において、pH7超のアルカリで処理することにより生成し、人為的に生成された式(I)で表される化合物及び/又は本発明のアポトーシス誘発物質の使用も本発明に包含されるものである。
【0132】
また式(I)で表される化合物とSH基含有化合物、例えばSH基含有アミノ酸、又はその誘導体、例えばシステイン、システイン含有アミノ酸誘導体、例えばグルタチオンとの反応物として、食品、飲料中でも生成し、人為的に生成された式(II)で表される化合物の使用も本発明に包含されるものである。
【0133】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0134】
実施例1 L−グリセロ−1,5−エポキシ−1αβ,6−ジヒドロキシ−シス−ヘキサ−3−エン−2−オン(DGE)およびD−グリセロ−1,5−エポキシ−1αβ,6−ジヒドロキシ−シス−ヘキサ−3−エン−2−オン(κ−DGE)の調製
(1)市販の寒天(Agar Noble、DIFCO社製)2.5gを50mlの0.1N HClに懸濁し、100℃で13分間加熱して溶解した。室温まで冷却してNaOHでpH中性付近に調整した後、コスモナイスフィルターでろ過し、以下の順相HPLCで分離した。
【0135】
カラム:TSKgel Amide−80(21.5mm×300mm、東ソー社製)
溶媒A:90%アセトニトリル水溶液
溶媒B:50%アセトニトリル水溶液
流速:5ml/分
溶出:溶媒Aから溶媒Bへの直線濃度勾配(80分間)→溶媒B(20分間)
検出:195nmにおける吸光度
試料アプライ量:2ml
【0136】
保持時間66.7分、78.5分および85.5分のピークを分取して質量分析を行ったところ、これらの物質は各々アガロビオース、アガロテトラオースおよびアガロヘキサオースであった。上記のHPLCによる分離を8回繰り返して減圧下乾固し、122mgのアガロビオース、111mgのアガロテトラオースおよび55mgのアガロヘキサオースを得た。
【0137】
(2)実施例1−(1)で得たアガロビオースの100mM水溶液(試料1)600μlに1N NaOH 12μlを加えてpH11.5に調整し、37℃で5分間保温した。次に1N HCl 12μlを加えてpH5付近に調整し(試料2)、その内50μlには1N HCl 1μlをさらに加えてpH2付近に調整した(試料3)。
【0138】
試料1〜3のアポトーシス誘発活性として、以下の方法でそのがん細胞増殖抑制活性を測定した。その結果、各試料はほぼ同等のがん細胞増殖抑制活性を有していた。
【0139】
試料1〜3をそれぞれろ過滅菌して滅菌水で適宜希釈し、その10μlずつを96ウェルマイクロタイタープレートに入れた。そこに5000個のHL−60細胞(ATCC CCL−240)を含む56℃、30分間処理した10%ウシ胎児血清(ギブコ社製)含有RPMI1640培地(ニッスイ社製)90μlを加え、5%炭酸ガス存在下、37℃で48時間培養した。光学顕微鏡で細胞の形態を観察した後、5mg/mlの3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(シグマ社製)リン酸緩衝食塩水溶液10μlを加えてさらに4時間培養を続け、0.04N HCl含有2−プロパノール100μlを加えてよく撹拌し、590nmにおける吸光度を測定してこれを細胞増殖度とした。
【0140】
(3)実施例1−(2)記載の試料1〜3をシリカゲルシート60F254(メルク社製)にスポットし、エタノール:1−ブタノール:水=5:5:1を展開溶媒に用いて展開した後、オルシノール−硫酸試薬を噴霧して検出した。その結果、試料2および試料3にはアガロビオースのスポットは観察されず、数個の新たなスポットが観察された。
【0141】
試料1および2、各々10μlを以下の順相HPLCで分離した。
【0142】
カラム:PALPAK TypeS(4.6×250mm、宝酒造社製)
移動相A:90%アセトニトリル水溶液
B:50%アセトニトリル水溶液
流速:1ml/分
溶出:移動相A(10分間)→移動相Aから移動相Bへの直線濃度勾配
(40分間)→移動相B(10分間)
検出:195nmにおける吸光度
カラム温度:40℃
【0143】
この結果、試料1に見られるアガロビオースのピークは試料2には見られず、新たに複数のピークが見られた。試料2の各ピークを分取し、減圧下乾固して水に溶解し、上記方法で各画分のがん細胞増殖抑制活性を測定した。その結果、活性は保持時間4.05分〜4.16分の画分に存在した。
【0144】
以上の結果を図1に示す。すなわち図1は試料2の順相HPLCのクロマトグラムを示す図であり、図1において横軸は保持時間(分)、縦軸は吸光度を示す。
【0145】
(4)実施例1−(1)で調製したアガロテトラオース、アガロヘキサオースおよびκ−カラゲナンの0.1N塩酸分解物より調製したκ−カラビオースを実施例1−(2)記載の方法に準じ、アルカリ処理物を調製し、実施例1−(2)記載の方法に準じそのがん細胞増殖抑制活性を測定した。その結果、各アルカリ処理物にがん細胞増殖抑制活性が認められた。
【0146】
なお、κ−カラビオースは下記のように調製した。
【0147】
κ−カラゲナン(シグマ社製、C−1263)2.5gを50mlの0.1N HClに懸濁し、100℃で16分間加熱して溶解した。室温まで冷却してNaOHでpH中性付近まで中和した後、コスモナイスフィルターでろ過し、実施例1−(3)記載の順相HPLCで分離し、溶出時間27.8分のκ−カラビオースを集めて減圧下乾固し、κ−カラビオースを調製した。
【0148】
(5)市販の寒天(Agar Noble)2.5gを50mlの0.1N HClに懸濁し、100℃で13分間加熱して溶解した。室温まで冷却してNaOHでpH12に調整し、次いで中和処理を行った。
【0149】
中和処理物を実施例1−(3)記載の順相HPLCを行い、各ピークを分取し、減圧下乾固して水に溶解し、上記方法で各画分のがん細胞増殖抑制活性を測定し、保持時間4.05分〜4.16分の画分の細胞増殖抑制活性を確認した。またアポトーシス小体の形成を確認した。
【0150】
次に、この保持時間4.05分〜4.16分の画分を大量に分取し、構造解析用試料を作製した。
【0151】
次に、高速原子衝撃質量分析(FAB−MS)を、DX302質量分析計(日本電子社製)を用いて行った。また、試料を重ジメチルスルホキシドに溶解し、核磁気共鳴法(NMR)によってその構造を解析した。その結果を以下に示す。
【0152】
また、保持時間4.05分〜4.16分の画分のマススペクトルを表す図を図2に、保持時間4.05分〜4.16分の画分のH−NMRスペクトルを表す図を図3に示す。図2において横軸はm/z、縦軸は相対強度(%)を示す。また図3において横軸は化学シフト値(ppm)、縦軸はシグナルの強度を示す。
【0153】
FAB−MS: m/z 145[M+H]+
【0154】
試料をジメチルスルホキシドに溶解し、マトリックスとしてグリセロールを用いて測定した。
【0155】
1H−NMR:
δ3.50(1H,m,6−H),3.59(1H,m,6−H),4.52(1H,m,5−H),4.95(1H,d,J=5.0Hz,1−H),5.02(1H,t,J=6.0Hz,6−OHのH),6.05(1H,dd,J=2.5,10.5Hz,3−H),7.20(1H,dd,J=1.5,10.5Hz,4−H),7.35(1H,d,J=5.0Hz,1−OHのH)
【0156】
ただし、重ジメチルスルホキシドの残留プロトンの化学シフト値を2.49ppmとして表した。
【0157】
なお、1H−NMRにおけるシグナルの帰属の番号は下記式のとおりである。
【化6】

【0158】
以上より、保持時間4.05分〜4.16分の画分はL−グリセロ−1,5−エポキシ−1αβ,6−ジヒドロキシ−シス−ヘキサ−3−エン−2−オン(L−glycero-1,5-epoxy-1αβ,6-dihydroxy-cis-hex-3-en-2-one)(以下、単にDGEと称す)であることが明らかになった。
【0159】
同様にしてκ−カラビオースのアルカリ処理を上記実施例に準じ行い、そのアルカリ処理から上記実施例に準じ、アポトーシス誘発活性物質であるD−グリセロ−1,5−エポキシ−1αβ,6−ジヒドロキシ−シス−ヘキサ−3−エン−2−オン(以下、κ−DGEと称す)を精製した。
【0160】
(6)寒天粉末(ナカライ社製)45gを蒸留水400mlに懸濁し、さらに、11N HCl4.1mlを加え、450mlに蒸留水でフィルアップした。この酸性懸濁液を90℃で35分加熱した。その後、酸性加熱物を10N NaOHで中和し、さらに、1N NaOHを2.7ml添加して、アルカリ性で37℃で15分間加熱した。このアルカリ加熱物を1N HClで中和後、エバポレーターで150mlまで濃縮した。この濃縮液を等量の酢酸エチルで抽出を10回行い、10回分の酢酸エチル層を集め、エバポレーターで2mlまで濃縮した後、20mlのクロロホルム:メタノール=9:1溶液に溶解した。この溶液をカラム容量:250ml、流圧:0.2Kgf/cm、移動相溶媒:クロロホルム:メタノール=9:1、画分容量:8mlの条件のシリカカラムクロマトグラフィーで分離した。その後、各画分の一部を薄層クロマトグラフィー(展開溶媒、クロロホルム:メタノール=9:1)で分析し、Rf値が0.25付近のスポットだけを含む画分52〜78をDGE画分として集め、エバポレーターで2mlまで濃縮した。この濃縮液を再度、上記方法と同様の方法でシリカカラムクロマトグラフィーを行い、画分64〜96をDGE画分として集め、エバポレーターで濃縮した後、8mlの蒸留水に溶解した。このDGE水溶液を凍結乾燥し、DGE標品113mgを得た。
【0161】
実施例2 アポトーシス誘発試験
(1)56℃、30分間処理したウシ胎児血清(JRH社製)を10%含むRPMI1640培地(BIO WHITTAKER社製)にて37℃で培養したHL−60細胞をRPMI1640培地にて2.5×10細胞/4.5mlとなるように懸濁した。
【0162】
この懸濁液4.5mlに対し、125μM、250μM、500μM、1mM、2mM、4mMのDGE水溶液を500μl添加し、37℃、5%炭酸ガス存在下で、24時間培養した。
【0163】
培養細胞を光学顕微鏡下で観察し、最終濃度50μM以上のDGE添加培養細胞に核の凝縮、細胞の縮小、アポトーシス小体の形成をそれぞれ確認した。なお、対照の生理食塩水500μl添加培養細胞においてはこれらの現象は認められなかった。
【0164】
次いで、上記と同様の方法で24時間と48時間培養した細胞を用い、細胞工学別冊実験プロトコールシリーズアポトーシス実験プロトコール(秀潤社)第129〜130頁記載の方法でFACScanを用いたアポトーシス細胞の測定、イオマニュアルUPシリーズ 最新アポトーシス実験法(羊土社)第61〜63頁記載の方法でDNAの断片化の解析を行った。その結果、最終濃度50μM以上のDGE添加培養細胞にアポトーシス細胞を、50、100μMのDGE添加培養細胞にDNAの断片化を確認した。なお、対照の生理食塩水500μl添加培養細胞においてはこれらの現象は認められなかった。
【0165】
(2)実施例2−(1)と同様の方法で24時間培養した細胞を一部サンプリングし、0.4%トリパンブルーで染色後、光学顕微鏡で観察し、染色されていない生細胞と青く染色された死細胞の細胞数の測定を行い、生残率が50%になるDGEの濃度[生残率50(μM)]をもとめた。その結果、81.7μMであった。以上のとおり、DGEはアポトーシス誘発作用によるがん細胞増殖抑制活性を示した。また、κ−DGEも同様の活性を示した。
【0166】
実施例3 過酸化脂質ラジカル産生抑制試験
スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)3A(ナショナル・コレクション・オブ・タイプ・カルチャー、NCTC 8319)を5mlのブレインハートインフュージョン培地(ディフコ社製、0037−17−8)に接種し、37℃で1晩培養した。遠心によって菌体を集め、リン酸緩衝食塩水で3回洗浄した後、1×10コロニー形成単位/mlになるようにリン酸緩衝食塩水に懸濁した。100μlの上記菌懸濁液、100μlの10、100mMのDGE水溶液、100μlの1mg/mlメトヘモグロビン(シグマ社製、M9250)水溶液および600μlのリン酸緩衝食塩水および100μlの50mM tert−ブチルヒドロペルオキシド(片山化学社製、03−4 990)水溶液を混合して37℃で30分間反応させた。1mlの2×NMP培地[8gのニュートリエントブロス(ディフコ社製、0003−01−6)、5gのトリプトン(ディフコ社製、0123−17−3)、5gのNaCl、10gのマンニトール(ナカライテスク社製、213−03)、0.035gのフェノールレッド(ナカライテスク社製、268−07)を蒸留水に溶解して500mlとし、NaOHでpH7.4に調整後、ろ過滅菌したもの]を加えて反応を停止し、NMP培地(2×NMP培地を滅菌水で2倍希釈したもの)で3倍ずつ12段階希釈したもの各160μlを96ウェルマイクロタイタープレートのウェルに入れ、37℃で1晩培養した。培地の色を肉眼で観察し、菌が生育して培地が赤色から黄色に変化したウェルが見られた試料を過酸化脂質ラジカル産生抑制活性を持つものとした。
【0167】
その結果を表1に示す。表1において、+は菌の生育したウェルが見られた試料を、−は菌の生育したウェルが見られなかった試料を示す。また、表の最上列に示した濃度はtert−ブチルヒドロペルオキシドおよび菌体と37℃で30分間反応させた反応液中のDGEの濃度である。
【0168】
【表1】

【0169】
以上の結果、DGEには過酸化脂質ラジカル産生抑制活性が見られた。また、κ−DGE、後出のDGE−GSHも同様の活性を示した。
【0170】
実施例4 NO産生抑制試験
(1)10%ウシ胎児血清(ギブコ社製)含有、フェノールレッド不含、2mM L−グルタミン(ライフテックオリエンタル社製、25030−149)含有ダルベッコ改良イーグル培地(バイオウィタカー社製、12−917F)にRAW264.7細胞(ATCC TIB 71)を3×10細胞/mlになるように懸濁し、48ウェルマイクロタイタープレートのウェルに500μlずつ加えて5%炭酸ガス存在下、37℃で12時間培養した。各ウェルに10μlの25μg/mlリポポリサッカライド(LPS、シグマ社製、L−2012)、500U/mlインターフェロンγ(INF−γ、コスモバイオ社販売 GZM−MG−IFN)水溶液と10μlの250、500μM DGE水溶液を添加してさらに12時間培養した後、NOが培地中で酸化されることによって生ずるNO濃度の測定を行った。なお、対照としてLPSとINF−γを加えない区分およびDGEを加えない区分を設定した。
【0171】
上記培養後、100μlの培地に100μlの4%グリース試薬(シグマ社製、G4410)を加え、室温で15分間放置した後、490nmにおける吸光度を測定した。上記培地に溶解した既知の濃度のNaNOで作製した検量線から培地中のNO濃度を計算した。測定はすべて3連で行った。
【0172】
この結果、DGEは濃度依存的にLPSとINF−γによるNO産生誘導を抑制した。その結果を図4に示す。すなわち、図4はDGEを添加して各培養条件で培養した時の培地中のNO濃度を示す図である。図4において横軸は培養条件を、縦軸はNO濃度(μM)を示す。
【0173】
また、上記と同様の培養条件で、4、6、8時間培養したRAW264.7細胞よりRNAを調製し、該RNA中に含有されるiNOS[inducible NO synthase、バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーション(Biochem. Biophys. Res. Commun.) 第215巻、第148-153頁(1995)]をコードするmRNA量をRT−PCR法により調べた。その結果、DGE水溶液を加えない対照ではiNOS mRNA由来のDNA断片の増幅が認められたが、DGE水溶液を添加したものではこの断片の増幅が見られなかった。このことより、DGEによるNO産生抑制はiNOSの転写抑制を介して起こっていることが示唆された。
【0174】
(2)10%ウシ胎児血清含有、フェノールレッド不含、2mM L−グルタミン含有ダルベッコ改良イーグル培地にRAW264.7細胞を3×10細胞/mlになるように懸濁し、48ウェルマイクロタイタープレートのウェルに500μlずつ加えて5%炭酸ガス存在下、37℃で6時間培養した。DGEを0.5mMとなるように水に溶解し、ろ過滅菌した水溶液を、各ウェルに10μlずつそれぞれ添加し、さらに、0.5時間あるいは5時間培養した。その後、各ウェルに10μlの5μg/ml LPS、2000U/ml INF−γ水溶液を添加して、12時間培養した後、NOが培地中で酸化されることによって生ずるNO濃度の測定を行った。なお、対照としてLPS、IFN−γを加えない区分およびDGEを加えない区分を設定した。
【0175】
上記培養後、100μlの培養上清に100μlの4%グリース試薬を加え、室温で15分間放置した後、490nmにおける吸光度を測定した。上記培地に溶解した既知の濃度のNaNOで作製した検量線から培地中のNO濃度を計算した。
【0176】
測定は全て3連で行った。
【0177】
この結果、LPS、IFNγ添加前、DGE存在下0.5時間培養した区分より、5時間培養した区分で、より強いNO産生抑制が認められた。
【0178】
その結果を、図5に示す。すなわち、図5は前培養においてDGEを添加した場合の、各培養条件下で培養した時の培地中のNO濃度を示す図である。図5において横軸は培養条件を、縦軸はNO濃度(μM)を示す。
【0179】
以上、DGEはNO産生抑制作用を示した。また、κ−DGEも同様の活性を示した。
【0180】
実施例5 抗菌試験
DGEのエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)W3110(菌1)、サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)LT2(菌2)、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)IFO3021(菌3)、シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)IFO3080(菌4)およびストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)GS5(菌5)に対する抗菌作用を以下の方法で検討した。
【0181】
菌1から4はL−ブロスで一晩種培養し、その培養液の濁度を測定して菌数が約2×10細胞/180μlとなるように感受性ブイヨン培地(ニッスイ社製)に希釈した。一方、菌5は、ブレインハートインフュージョン培地で一晩種培養し、その培養液の濁度を測定して菌数が約2×10細胞/180μlとなるようにブレインハートインフュージョン培地に希釈した。これらの菌希釈液を96ウェルのマイクロタイタープレートの各ウェルに180μlずつ入れた。一方で、菌希釈液をさらに希釈してからL−ブロスあるいはブレインハートインフュージョン培地のプレートに塗布し、37℃で一晩培養し、コロニー数を計測して、初発の生菌数を測定した。
【0182】
14.4mg/mlのDGEを2倍ずつ希釈した一連の希釈液を作製し、菌希釈液を入れた各ウェルに20μlずつ入れ、24時間37℃で静置培養した。培養後、それぞれの培養液の濁度を測定し、生理食塩水を添加したコントロールより濁度が低いウェルの試料濃度を最小増殖阻害濃度とした。
【0183】
さらに、菌の生育が見られなかったウェルの培養液をプレートに塗布し、37℃で一晩培養した後、コロニー数を計測して、生菌数を測定した。試料を添加してから24時間静置培養した培養液の生菌数が、あらかじめ測定しておいた初発の生菌数より低い培養液の試料濃度を最小殺菌濃度とした。その結果、菌1から菌5に対するDGEの最小増殖阻害濃度と最小殺菌濃度は、表2に示すようになった。
【0184】
【表2】

【0185】
以上、DGEは抗菌作用を示した。また、κ−DGE、後出のDGE−GSHも同様の活性を示した。
【0186】
実施例6 抗変異原性試験
抗変異原性試験を、変異の強さをβ−ガラクトシダーゼの活性で判定できるumuテストによる環境変異原の検出法[ミューテーション・リサーチ(Mutation reseach)、第147巻、第219頁(1985)]に準じた方法で行った。すなわち、50μlの各濃度(1.0、5.0、10、15mM)に調製したDGEに25μlの変異原物質[マイトマイシンC(DNA架橋剤)10μg/ml、4−ニトロキノリン−1−オキシド(NQO、DNAメチル化剤)7μg/ml]を添加した。この混合液にあらかじめTGA培地中でOD600で0.12まで培養しておいたSalmonella typhimulium TA1535/pSK1002を最終容量1.5mlになるように加えて、37℃で2時間振とう培養を行った。この培養液200μlを使用してミラー(Miller)の方法〔エクスペリメンツ・イン・モレキュラー・ジェネティクス(Experiments in molecular genetics)、第352頁(1972)]に従ってβ−ガラクトシダーゼ活性を測定した。その結果を表3に示す。
【0187】
【表3】

【0188】
この表から明らかな様に、DGEはDNA架橋剤であるマイトマイシンCに対して最終濃度0.5mMで37%、メチル化剤であるNQOについては36%の抗変異原活性を表した。また、κ−DGE、後出のDGE−GSHも同様の活性を示した。
【0189】
実施例7 制がん活性試験
(1)寒天粉末(和光純薬社製)を終濃度3%となるように50mMクエン酸溶液に入れ、95℃、160分の加熱処理を行い、用時pH12のアルカリ処理を行い、中和後、制がん試験用の被検液とした。
【0190】
日本チャールスリバー社より4週令、雄性のヌードマウス(SPF/VAFBalb/cAnNCrj−nu)を購入し、1週間予備飼育した。このマウスにヒト大腸がん細胞株HCT116(ATCC CCL−247)を1.5× 10細胞/マウスとなるように皮下移植した。
【0191】
大腸がん細胞株移植2週間目から、上記制がん試験用被検液を使用直前にpH6.5に調整したものを週に5日、飲料水として自由に摂取させた。マウス1匹当り1日平均3.5ml摂取していた。また飼育用餌としてオリエンタル酵母社製のMFを自由に摂取させた。
【0192】
被検液投与開始後4週間目に被検液投与群の各マウスの固形がんを摘出し、その重量を、通常の飲料水を摂取させた対照群の固形がん重量と比較した。なお、本試験は各群10匹で行った。
【0193】
その結果、制がん試験用被検液の経口投与群において有意のがん増殖抑制が認められた。
【0194】
(2)5週齢の雌性ddY系マウス(体重約25g)18匹を用い、エーリッヒ癌を腹腔内投与(1.2×10細胞/マウス)し、30日間観察し、平均生存日数、延命率および30日間生存数を算定した。1群6匹でコントロール群、DGE2mg/kg投与群およびDGE20mg/kg投与群の3群を設定した。DGEは、癌投与の翌日より4日間腹腔内投与した。
【0195】
結果を表4に示す。すなわち、コントロール群では平均生存日数が14.3日であったのに対し、DGE2mg/kgおよび20mg/kg投与群では30日間生存例をそれぞれ1および3例出現させ、平均生存日数23.7日および28.0日で延命率はそれぞれ141%以上および195%以上と、顕著な延命効果が認められた。
【0196】
【表4】

【0197】
以上、DGEは制がん活性を示した。またκ−DGE、後出のDGE−GSHも同様の活性を示した。
【0198】
実施例8 メラニン産生抑制試験
6ウェルプレートに5×10細胞/ウェル/2ml培地となるように10%牛胎児血清含有RPMI1640培地に懸濁したマウスメラノーマ細胞B16BL6を分注し、37℃でインキュベートした。2日目に、100μlのDGE溶液(2mg/ml〜0.2mg/ml)を添加し、7日目に培地を交換し、同時に100μlのDGE溶液(2mg/ml〜0.2mg/ml)を添加した。8日目に細胞を回収し、DNA、RNA、タンパク質を分解処理した後、400nmの吸光度を測定し、メラニン産生抑制作用を検定した。
【0199】
すなわち、培地を吸引除去した後、20mM EDTA溶液に溶解した0.25%トリプシンを1ウェル当り0.3ml添加し、37℃で10分インキュベートした。つぎに、2mlの新しい培地を添加し、細胞を懸濁して試験管に回収した。ついで、培地を遠心除去した後、2mlのPBSで細胞を懸濁し、再度遠心分離した。上清を除去した後、細胞に30μlの5mM塩化マンガンを含む50mM酢酸ナトリウムバッファー(pH5.0)と1μlの70000U/mlのDNaseI(宝酒造社製)を加えて良く混合した後、37℃で2時間インキュベートして、DNAを分解した。そして10mg/mlのリボヌクレアーゼA(シグマ社製)を1μl加え、50℃で1時間インキュベートしてRNAを分解した。最後に100μg/mlのプロテイネースK(シグマ社製)、0.1%トリトンXおよび10mM EDTAを含む100mMトリス−塩酸バッファー(pH7.8)を細胞数2×10に対して液の総量が200μlとなるように加え、37℃で16時間インキュベートした後、400nmの吸光度を測定した。
【0200】
その結果、DGEにメラニン産生阻害活性が認められ、その美白効果が確認された。また、κ−DGE、後出のDGE−GSHも同様の活性を示した。
【0201】
実施例9 α−グルコシダーゼ阻害試験
(1)α-グルコシダーゼ発色基質であるp−ニトロフェニル−α−D−グルコピラノシドに酵母由来α−グルコシダーゼを作用させ、加水分解して遊離する4−ニトロフェノールを比色法で定量することにより、DGEのα-グルコシダーゼ阻害活性を測定した。すなわち、10μlのα−グルコシダーゼ溶液[40mU/ml、S. cerevisiae由来、シグマ社製、10mMリン酸緩衝液、pH7.2(37℃)に溶解]に10μlの検体を含む溶液[10mMリン酸緩衝液、pH7.2(37℃)に溶解]を混合した後、1.5mg/mlの基質溶液[シグマ社製、10mMリン酸緩衝液、pH7.2(37℃)に溶解]を80μl添加して反応を開始した。37℃で40分間反応後、410nm(島津uv2200)における吸光度を測定した。その結果を表5に示す。なお、この場合の残存活性は検体を添加していないものを100%として算出した。
【0202】
【表5】

【0203】
上記の結果より、DGEはα−グルコシダーゼ阻害活性を示し、DGEがα−グルコシダーゼ活性を50%阻害する濃度(IC50)は500μMであった。
【0204】
(2)ラット小腸粘膜より得たα-グルコシダーゼ粗酵素標品[Arne Dahlqvist, Anal. Biochem,7,18−25(1964)の方法により調製]を用いたDGEのα-グルコシダーゼ阻害活性測定は以下の方法で行なった。
【0205】
酵素反応は10mMリン酸緩衝液pH7.0で適宜希釈した被験物質溶液10μlに、80μlの基質としてのシュークロース、マルトース、トレハロースおよび可溶性デンプンの同緩衝液溶液を最終濃度100mM(可溶性デンプンについては0.5%)になるように加え、10μlのラット小腸より調製した粗酵素液を添加し、37℃で20分間反応させた。
【0206】
酵素反応量は上記反応液に含まれるグルコース量として、グルコース測定用試薬(和光純薬社製)を3ml加え、37℃で5分間反応させた後505nmの吸光度を測定することにより求めた。
【0207】
α−グリコシダーゼによる各基質の分解に対するDGEの阻害活性を、4種の異なったDGE濃度について上記方法により測定した。α−グリコシダーゼ阻害活性は、DGE無添加の対照を100%とした相対活性(%)として表した。
【0208】
結果を表6に示す。
【0209】
【表6】

【0210】
DGEのシュークロースに対する阻害物質定数(Ki)をDixon plotより求めたところ、6.0mMであった。
【0211】
さらに、DGEはシュークロースを基質とした際に、マルトース等を基質とした時より強いα−グリコシダーゼ阻害作用を示した。また、κ−DGE、後出のDGE−GSHも同様のα−グリコシダーゼ阻害活性を示した。
【0212】
実施例10 抗リウマチ試験
ヒト慢性リウマチ患者の滑膜から樹立された繊維芽細胞株であるDSEK細胞(in vitroでのリウマチモデルとして、埼玉医科大学総合医療センター第二内科保有)を10%FBS(バイオウイタッカー社製)を含むIscov−MEM培地(IMDM:ギブコBRL社製)にて、5%CO存在下、37℃で細胞が培養器に飽和になるまで培養し、トリプシン−EDTA溶液(バイオウイタッカー社製)で細胞を3×10細胞/mlとなるように上記培地に懸濁し、96ウェルマイクロタイタ−プレ−ト(FALCON社製)の各ウエルに200μlずつ分注した。培養5〜7日後、ほぼ細胞が80%飽和になった時で培地を交換し、25、50、75、100、200、もしくは400μMのDGEを含有する200μlの上記培地を加えた。
【0213】
24時間、72時間経過時に10μlのプレミックスWST−1(宝酒造社製、MK400)を加えて37℃で3.5時間反応させ、450nmにおける吸光度(A450)から650nmにおける吸光度(A650)を差し引いた値を細胞増殖度とした。
【0214】
その結果を表7に示す。
【0215】
【表7】

【0216】
またA450−650のデータによって求められた半数細胞増殖抑制濃度(IC50)は24時間で207μM、72時間で112μMであった。
以上、イン ビトロ(in vitro)でのリウマチモデル−DSEK細胞において、DGEを添加した場合、PBS添加の対照区と比べて各化合物添加区はリウマチ細胞の増殖が強く抑制された。また、経時的な観察において、これらの化合物は増殖抑制活性を継続するのみならず、経時的に活性を増強する傾向が認められた。
【0217】
以上の結果によって、DGEは強い抗リウマチ活性があり、慢性リウマチに対する有用な治療薬と健康食品として開発されることが期待される。また、κ−DGE、後出のDGE−GSHも同様の活性を示した。
【0218】
また、DSEK細胞培養において、24時間、72時間経過時に150μl/ウエルの培養上清を回収し、この細胞由来のサイトカン(ヒトTGF−β、ヒトFGF−β、ヒトIL−1αおよびヒトIL−10)産生(発現の影響)に対する、DGEの影響を、それぞれのサイトカインに特異的なELISA−Kit(ヒトFGF−βとヒトIL−10、INTERGEN社製;ヒトIL−1αとヒトTGF−β、Promega社製)を用いて測定した。
【0219】
その結果、DGEはヒトIL−1αの産生抑制作用、ヒトIL−10の産生増強作用、ヒトFGF−βの産生抑制作用、およびヒトTGF−βの産生増強作用を示した。
【0220】
実施例11 プロスタグランジンE産生抑制試験
10%ウシ胎児血清含有ダルベッコ改良イーグル培地にRAW264.7細胞を3×10細胞/mlになるように懸濁し、48ウェルマイクロタイタープレートのウェルに500μlずつ加えて5%炭酸ガス存在下、37℃で6時間培養した。DGEを0.5mMとなるように水に溶解し、ろ過滅菌した水溶液を、各ウェルに10μlずつ添加し、さらに、0.5時間あるいは5時間培養した。その後、各ウェルに50μg/ml LPS水溶液10μlを添加して、12時間培養した後、プロスタグランジンEの量を測定した。なお、対照としてLPSを加えない区分およびDGEを加えない区分を設定した。
【0221】
上記培養後、培養上清中のプロスタグランジンE量をプロスタグランジン E ELISA KIT(ネオジェン社製、Code.404110)を用い測定した。測定は全て3連で行った。
【0222】
その結果を、図6に示す。すなわち、図6は前培養においてDGEを添加した場合の、各培養条件下で培養した時の培地中のプロスタグランジンE濃度を示す図である。図6において横軸は培養条件を、縦軸はプロスタグランジンE濃度(ng/ml)を示す。
【0223】
この結果、DGEはLPSによるプロスタグランジンE産生誘導を抑制した。また、LPS添加前、DGE存在下0.5時間培養した区分より、5時間培養した区分で、より強いプロスタグランジンE産生抑制が認められた。
【0224】
実施例12 熱ショックタンパク質の誘導試験
2×10細胞/mlのHL−60細胞を含む10%牛胎児血清含有RPMI1640培地5mlを6ウェルプレートの各ウエルに入れ、37℃ 5%CO存在下で24時間培養した後、最終濃度が、0、6.25、12.5、25、50、100μMになるようにDGEを添加し、更に6時間培養を続けた。
【0225】
培養終了後、細胞数を計測した後、細胞を遠心分離で回収し、PBSで洗浄して、DGE処理細胞を調製した。また、45℃10分間熱処理を行った後、同様に培養した細胞も調製した。
【0226】
これらの処理細胞を用い、モレキュラー クローニング(Molecular Cloning)〔コールド スプリング ハーバー ラボラトリー プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)( 1989 )〕記載の方法に従ってSDS-PAGEを行った。処理細胞を、2.5×10細胞/mlになるようにSDS-PAGE Sample bufferに懸濁し、この細胞懸濁液を100℃で10分間処理した後、5μlずつを2枚のSDS−PAGEゲル(5%スタッキングゲル、10%セパレーションゲル)にアプライし、電気泳動を行った。一方のゲルは、クマシー染色し、他方のゲルは、ポリビニリデンジフルオライドトランスファー膜(Polyvinylidene difluoride transfer membrane)〔ImmobilonTM :ミリポア(MILLIPORE)社製 Cat.# IPVH000-10 〕にブロッティングした。この膜をBlock Ace (大日本製薬株式会社 Cat.# UK-B25 )で4℃にて一晩ブロッキングした。
【0227】
このブロッキングしたメンブレンに熱誘導される70kDaの熱ショックタンパクと特異的に反応するモノクローナル抗体HSP72/73(Ab−1)(オンコジーン リサーチ プロダクツ(Oncogene Research Products)社製 Cat.# HSP01)を反応させた後、0.05%Tween20を含むTBSで洗浄し、更に、TBSで洗浄した。次いで、ペルオキシダーゼ複合二次抗体HRT−ウサギ抗マウスIgG (H+L)(ZYMED ラボラトリース社(ZYMED Laboratolies, Inc.)製 Cat.# 61-6520)を反応させ、先の操作と同様に洗浄した。このように一次抗体、二次抗体と反応させたメンブレンに、ケミルミノール試薬 ルネッサンスTM (デュポン NEN (Dupont NEN )社製 Cat.# NEL-100)を反応させた後、X−線フィルムを感光して70kDaの熱ショックタンパクの誘導を確認した。
【0228】
その結果、DGEの70kDaの熱ショックタンパクの誘導が確認された。その誘導の強弱を表8に示す。なお表1中、+は誘導の強さを表し、+が多いほど誘導が強いことを意味する。また−は誘導が認められなかったことを意味する。
【0229】
また、κ−DGE、後出のDGE−GSHも同様の熱ショックタンパク誘導活性を示した。
【0230】
【表8】

【0231】
実施例13 5−L−グルタチオン−S−イル−2−ヒドロキシ−3,7−ジオキサビシクロ[2.2.2]オクタン−1−オール(DGE−GSH)の調製
(1)DGEと還元型グルタチオン(GSH:ナカライテスク社製)をそれぞれ20mMになるようにPBSに溶解し、37℃で一晩反応させた。この反応液100μlを順相カラムPAL-PAK TypeSにて分画した。流速1ml/分、0〜10分間は0.1%TFA含有90%アセトニトリル水溶液、10〜50分間は0.1%TFA含有90%アセトニトリル水溶液から0.1%TFA含有50%アセトニトリル水溶液への直線勾配、検出195nmの条件でクロマトグラフィーを行い、1.5分ごとに画分を集めた。各画分を濃縮乾固し、50μlの蒸留水に再溶解し、HL−60細胞を用いて実施例1−(2)と同様の方法でがん細胞増殖抑制活性を測定した。その結果、30〜40付近の画分を添加した区分において、アポトーシス小体が観察され、対照の水添加区分に比べて590nmにおける吸光度が低く、細胞増殖が阻害されていた。そこで、上記方法と同様の方法で調製した活性画分50μlを逆相クロマトグラフィー(TSKgel ODS-80Ts(5μm)、東ソー社製、4.6×250mm)で分画した。流速1ml/分、0〜15分間は0.1%TFA含有蒸留水、15〜30分間は0.1%TFA含有蒸留水から0.1%TFA含有50%アセトニトリル水溶液への直線勾配、30〜45分間は0.1%TFA含有50%アセトニトリル水溶液、検出215nmの条件でクロマトグラフィーを行い、1.5分ごとに画分を集めた。各画分を濃縮乾固し、50μlの蒸留水に再溶解し、HL−60細胞を用いて実施例1−(2)と同様の方法でがん細胞増殖抑制活性を測定した。その結果、4〜9分付近の画分を添加した区分において、アポトーシス小体が観察され、対照の水添加区分に比べて590nmにおける吸光度が低く、細胞増殖が阻害され、アポトーシス誘発活性が示された。
【0232】
そこで前出の順相クロマトグラフィーを10回繰り返し、当該アポトーシス誘発活性画分を分取し、濃縮乾固後、1mlの蒸留水に再溶解し順相クロマトグラフィーによる精製画分を調製した。次にこの順相クロマトグラフィーによる精製画分を前出の逆相クロマトグラフィーにかけ、アポトーシス誘発活性画分を分取し、濃縮乾固した。その結果、20mMDGEと20mMグルタチオンの反応液1mlから5mgのアポトーシス誘発活性化合物が得られた。この化合物を用い構造決定を行った。
【0233】
(2)実施例13−(1)で得られたアポトーシス誘発性物質、すなわちDGEとグルタチオンの反応物の質量分析をDX302質量分析計を用いて行った。また、試料を重水に溶解し、核磁気共鳴法(NMR)によってその構造を解析した。その結果を以下に示す。
【0234】
また、実施例13−(1)で得られたアポトーシス誘発性物質のマススペクトルを表す図を図7に、H−NMRスペクトルを表す図を図8に、13C−NMRスペクトルを表す図を図9示す。図7において横軸はm/z、縦軸は相対強度(%)を示す。また、図8、9において横軸は化学シフト値(ppm)、縦軸はシグナルの強度を示す。
【0235】
FAB−MS:m/z 452[M+H]
474[M+Na]
544[M+グリセロール+H]
566[M+グリセロール+Na]
マトリックスとしてグリセロールを用いた。
【0236】
H−NMR:
δ1.62(1H,t,J=13.5Hz,6−H)、1.96(1H,dd,J=4.0,13.5Hz,6−H)、2.07(2H,m,5'−H)、2.42(2H,m,4'−H)、2.85(1H,dd,J=8.5,13.5Hz,1'−H)、2.90(1H,ddd,J=4.0,10.5,13.5Hz,5−H)、3.06(1H,dd,J=5.0,13.5Hz,1'−H)、3.44(1H,dt,J=5.0,10.5Hz,4−H)、3.52(1H,t,J=10.5Hz,H−8)、3.66(1H,dd,J=5.0,10.5Hz,H−8)、3.82(1H,t,J=6.5Hz,6'−H)、3.88(2H,S,9'−H)、4.47(1H,dd,J=5.0,8.5Hz,2'−H)、4.65(1H,S,2−H)
但し、H−NMRの化学シフト値はHODの化学シフト値を4.65ppmとして表した。
【0237】
13C−NMR:
δ26.6(5'−C)、31.9(4'−C)、32.7(1'−C)、35.6(6−C)、42.0(9'−C)、45.2(5−C)、53.9(6'−C)、54.4(2'−C)、64.7(8−C)、70.4(4−C)、92.1(2−C)、97.2(1−C)、173.4(7'−C)、173.5(8'−C)、173.8(10'−C)、175.4(3'−C)
但し、13C−NMRの化学シフト値はジオキサンの化学シフト値を67.4ppmとして表した。
【0238】
なお、H−NMR、13C−NMRのピークの帰属の番号は下記式のとおりである。
【化7】

【0239】
以上より、実施例13−(1)で得られたアポトーシス誘発性物質は、5−L−グルタチオン−S−イル−2−ヒドロキシ−3,7−ジオキサビシクロ[2.2.2]オクタン−1−オール(5-L-glutathion-S-yl-2-hydroxy-3,7-dioxabicyclo[2.2.2]octane-1-ol(以下、単にDGE−GSHと称す)であることが明らかになった。
【0240】
実施例14 アポトーシス誘発試験
実施例13−(1)で得たDGE−GSHの10mg/ml水溶液をろ過滅菌し、滅菌水で2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、128倍、256倍及び512倍希釈した。実施例1−(2)記載の方法でこれらの希釈液のHL−60細胞に対する増殖抑制活性を測定した。その結果、DGE−GSHを添加した区分において、アポトーシス小体が観察され、対照の水添加区分に比べて590nmにおける吸光度が低く、細胞増殖が阻害されていた。この結果をもとに590nmにおける吸光度が水添加の対照に比べて2分の1となる50%増殖阻害濃度を算出しGI50として表すと、GI50は約48.7μg/mlとなった。
【0241】
実施例15 NO産生抑制試験
10%ウシ胎児血清含有、フェノールレッド不含、2mM L−グルタミン含有ダルベッコ改良イーグル培地にRAW264.7細胞を3×10細胞/mlになるように懸濁し、48ウェルマイクロタイタープレートのウェルに500μlずつ加えて5%炭酸ガス存在下、37℃で12時間培養した。各ウェルに10μlの50μg/mlリポポリサッカライド、5000U/mlインターフェロンγ水溶液と実施例13−(1)で調製したDGE−GSHを1mMとなるように水に溶解しろ過滅菌した水溶液10μlを添加して更に16時間培養した後、NOが培地中で酸化されることによって生ずるNO濃度の測定を行った。なお、対照としてLPSとIFNγを加えない区分及びDGE−GSHを加えない区分を設定した。
【0242】
上記培養後、100μlの培地に100μlの4%グリース試薬(シグマ社製、G4410)を加え、室温で15分間放置した後、490nmにおける吸光度を測定した。上記培地に溶解した既知の濃度のNaNOで作製した検量線から培地中のNO濃度を計算した。
【0243】
その結果、全く何も添加しなかった培地中のNO濃度が4.6μMであり、LPSとIFNγを添加し、DGE−GSHを添加しなかったコントロールの培養液中のNO濃度が12.1μMであったのに対し、DGE−GSHを添加した培養液中のNO濃度は、9.4μMと低く、DGE−GSHは、LPSとIFNγによるNO産生誘導を抑制した。
【0244】
実施例16 プロスタグランジンE産生抑制試験
10%ウシ胎児血清含有、フェノールレッド不含、2mM L−グルタミン含有ダルベッコ改良イーグル培地にRAW264.7細胞を3×10細胞/mlになるように懸濁し、48ウェルマイクロタイタープレートのウェルに500μlずつ加えて5%炭酸ガス存在下、37℃で12時間培養した。各ウェルに10μlの50μg/mlリポポリサッカライド水溶液と実施例13−(1)で調製したDGE−GSHを1mMとなるように水に溶解し、ろ過滅菌した水溶液10μlを添加して更に16時間培養した後、プロスタグランジンEの量を測定した。なお、対照としてLPSを加えない区分及びDGE−GSHを加えない区分を設定した。
【0245】
上記培養後、培養上清中のプロスタグランジンE量をプロスタグランジン E ELISA KIT(ネオジェン社製、Code.404110)を用い測定した。
【0246】
その結果、全く何も添加しなかった培地中のプロスタグランジンE濃度が50.3ng/mlであり、LPSを添加し、DGE−GSHを添加しなかったコントロールの培養液中のプロスタグランジンE濃度が63.4ng/mlであったのに対し、DGE−GSHを添加した培養液中のプロスタグランジンE濃度は、50.7ng/mlと低く、DGE−GSHは、LPSによるプロスタグランジンE産生誘導を抑制した。
【0247】
実施例17 リンパ球活性化阻害試験
ddYマウス(雌、7週齢、体重約25g)は日本SLCより購入し、1週間の予備飼育の後、実験に用いた。マウスより脾臓を摘出し、細かく粉砕して10%牛胎児血清(ハイクローン社製)を含んだRPMI1640培地に懸濁して単細胞液を得た。接着性細胞をプラスチックシャーレに接着させて除き、非接着性細胞を脾臓リンパ球として用いた。脾臓リンパ球は10%牛胎児血清を含んだRPMI1640培地に懸濁して2×10細胞/mlに調整し、200μl/ウェルで96ウェルマイクロタイタープレートに播種し、対照群以外の各ウェルに各濃度のDGEを添加し、さらにすべてのウェルに5μgのConA(ナカライテスク社製)を添加し37℃、5%炭酸ガス培養器で2日間培養した。培養終了1日前に37kBqのH−チミジン(第一化学薬品製)を各ウェルに加えてパルスラベルを行い、培養後、細胞をガラスフィルターに回収して放射活性を測定した。
【0248】
結果を図10に示す。マイトジェン刺激により活性化されたリンパ球の増殖に対しDGEは用量依存的な抑制を示し、0.3μg/mlの濃度でほぼ完全に抑え、リンパ球の活性化に対する抑制作用が示された。
【産業上の利用可能性】
【0249】
以上記載したごとく、本発明によれば、アポトーシス誘発剤、制がん剤、活性酸素産生抑制剤、過酸化脂質ラジカル産生抑制剤、NO産生抑制剤等の抗酸化剤、プロスタグランジン合成抑制剤、抗病原微生物剤、鮮度保持剤、抗変異原剤、血糖上昇抑制剤、抗高脂血症剤、熱ショックタンパク産生誘導剤、抗ウイルス剤、α−グリコシダーゼ阻害剤の有効成分として有用な、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、それらの塩、および本発明のアポトーシス誘発性物質が提供される。
【0250】
これらの物質を含有、希釈および/または添加してなる食品または飲料はアポトーシス誘発作用、制がん作用、活性酸素産生抑制作用、NO産生抑制作用等の抗酸化作用、プロスタグランジン合成抑制作用、抗病原微物抑制作用、抗変異原作用、血糖上昇抑制作用、抗肥満作用等、熱ショックタンパク産生誘導作用、抗ウイルス作用を有する機能性食品または飲料として有用であり、がん患者やウイルス性疾患患者の病変細胞にアポトーシスを誘発し、これらの疾患の予防、症状改善に有効な食品または飲料が提供される。とりわけ大腸がん、胃がん等消化器系のがんの場合、本発明の上記化合物を食品、飲料として経口的に摂取することによりがん細胞にアポトーシスを起こすことができるため、本発明の食品または飲料は消化器系がんの予防、症状改善に優れた効果を有している。さらに、その活性酸素産生抑制作用等の抗酸化作用により上記の食品または飲料は抗酸化ストレス用食品または飲料としても優れている。
【0251】
また、式(I)又は式(II)で表される化合物は、活性酸素産生抑制用の抗酸化用化合物として有用であり、本発明の抗酸化用化合物を含有、希釈および/または添加してなる食品または飲料は、活性酸素等の生体内酸化物質が起因となる疾病の症状改善用食品または飲料として有用である。さらに、本発明の食品または飲料は便秘改善または予防に効果を有する。
【0252】
本発明により提供される式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及びそれらの塩は食品または飲料に活性酸素産生抑制作用等の抗酸化性を付与する新機能性化合物として有用である。
【0253】
また、当該化合物は鮮度保持効果を有し、食品、生鮮物の味や鮮度の保持に極めて有用である。
【0254】
さらに、当該化合物を含有する化粧料は美白用、保湿用化粧料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0255】
【図1】試料2の順相HPLCのクロマトグラムを示す図である。
【図2】保持時間4.05分〜4.16分の画分のマススペクトルを表す図である。
【図3】保持時間4.05分〜4.16分の画分のH−NMRスペクトルを表す図である。
【図4】DGEを添加して各培養条件で培養した時の培地中のNO濃度を示す図である。
【図5】前培養においてDGEを添加した場合の、各培養条件下で培養した時の培地中のNO濃度を示す図である。
【図6】前培養においてDGEを添加した場合の、各培養条件下で培養した時の培地中のプロスタグランジンE濃度を示す図である。
【図7】DGEとGSHとの反応物のマススペクトルを表す図である。
【図8】DGEとGSHとの反応物のH−NMRスペクトルを表す図である。
【図9】DGEとGSHとの反応物の13C−NMRスペクトルを表す図である。
【図10】DGEを添加して培養した場合のH−チミジン取り込み量を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】


(I)
(式中、XおよびYは、HまたはCHOH、ただし、XがCHOHのとき、YはH、XがHのとき、YはCHOHである)
で表される化合物、及びその塩から選択される化合物を有効成分として含有するアポトーシス誘発を要する疾患、がん性疾患、活性酸素産生抑制を要する疾患、一酸化窒素産生抑制を要する疾患、プロスタグランジン合成抑制を要する疾患、滑膜細胞増殖抑制を要する疾患、熱ショックタンパク産生誘導を要する疾患、またはα−グリコシダーゼ阻害を要する疾患の治療剤または予防剤。
【請求項2】
3,6−アンヒドロガラクトースおよび/または還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを有する化合物を中性からアルカリの条件下で処理することを特徴とする請求項1記載の式(I)で表される化合物の製造方法。
【請求項3】
3,6−アンヒドロガラクトースおよび/または還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを有する化合物が、3,6−アンヒドロガラクトース含有物の酸性下での加水分解または酵素分解により得られるものである請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを有する化合物が、アガロビオース、κ−カラビオースならびに還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを有する、アガロビオースおよびκ−カラビオース以外の化合物から選択される少なくとも1つ以上の化合物である請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
3,6−アンヒドロガラクトース含有物が、寒天、アガロースおよび/またはカラゲナンである請求項3記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1記載の式(I)で表される化合物及びその塩から選択される化合物を含有、希釈および/または添加してなる食品または飲料。
【請求項7】
3,6−アンヒドロガラクトースおよび/または還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを有する化合物を、中性からアルカリの条件下で処理することにより得られる請求項1記載の式(I)で表される化合物を含有、希釈および/または添加してなる食品または飲料。
【請求項8】
3,6−アンヒドロガラクトースおよび/または還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを有する化合物が、3,6−アンヒドロガラクトース含有物の酸性下での加水分解または酵素分解により得られるものである請求項7記載の食品または飲料。
【請求項9】
還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを有する化合物が、アガロビオース、κ−カラビオースならびに還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを有する、アガロビオースおよびκ−カラビオース以外の化合物から選択される少なくとも1つ以上の化合物である請求項8記載の食品または飲料。
【請求項10】
3,6−アンヒドロガラクトース含有物が、寒天、アガロースおよび/またはカラゲナンである請求項8記載の食品または飲料。
【請求項11】
請求項1記載の式(I)で表される化合物及びその塩から選択される化合物を有効成分として含有することを特徴とする抗酸化剤。
【請求項12】
抗酸化剤が、活性酸素産生抑制剤である請求項11に記載の抗酸化剤。
【請求項13】
請求項11または12記載の抗酸化剤を含有することを特徴とする食品または飲料。
【請求項14】
請求項1記載の式(I)で表される化合物及びその塩から選択される化合物を有効成分として含有する鮮度保持剤。
【請求項15】
請求項1記載の式(I)で表される化合物及びその塩から選択される化合物を有効成分として含有する化粧料。
【請求項16】
請求項1記載の式(I)で表される化合物及びその塩から選択される化合物を有効成分として含有するα−グリコシダーゼ阻害剤。
【請求項17】
3,6−アンヒドロガラクトースおよび/または還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを有する化合物を、中性からアルカリの条件下で処理することにより生成するアポトーシス誘発性物質。
【請求項18】
還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを有する化合物が、アガロビオース、κ−カラビオースならびに還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを有する、アガロビオースおよびκ−カラビオース以外の化合物から選択される少なくとも1つ以上の化合物である請求項17記載のアポトーシス誘発性物質。
【請求項19】
3,6−アンヒドロガラクトースおよび/または還元末端に3,6−アンヒドロガラクトースを有する化合物を、中性からアルカリの条件下で処理することにより生成するアポトーシス誘発性物質を含有、希釈および/または添加してなる食品または飲料。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−117662(P2006−117662A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−295271(P2005−295271)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【分割の表示】特願2000−553433(P2000−553433)の分割
【原出願日】平成11年6月8日(1999.6.8)
【出願人】(302019245)タカラバイオ株式会社 (115)
【Fターム(参考)】