説明

治療用処置システムおよび治療用処置具

生体組織にエネルギを作用させて処置を行う治療用処置システム(10)は、エネルギを供給するエネルギ源(14); 生体組織を狭持する1対の狭持部材(26); 前記エネルギ源に接続された出力部材(56, 58); and 前記出力部材から離れる方向への熱の広がりを抑制する冷却部(98);を備えている。前記狭持部材は少なくとも一方が他方に対して相対的に移動する。前記出力部材は、前記狭持部材の少なくとも一方に設けられ、前記エネルギ源から供給されるエネルギによって前記生体組織を熱により変性させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生体組織を狭持した状態で生体組織にエネルギを作用させる治療用処置システムおよび治療用処置具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば体外に組織等を取り出して体外で処置を行うオープンタイプ、例えば腹壁を通して腹腔内(体内)に挿入して処置を行うラパロタイプなど、使用方法に合わせて種々の治療処置装置が知られている。
例えば、EP1 372 505 B1には、サーマルスプレッドを減少させるエレクトロサージカル器具(Electrosurgical instrument reducing thermal spread)が開示されている。このエレクトロサージカル器具のエンドエフェクタの電極の周囲には、従順材料からなる機械的障壁が配設されている。この障壁は、電極の表面からの放熱や蒸気の拡散を制限する。このため、このエレクトロサージカル器具は、処置対象の生体組織の周辺の生体組織へのサーマルスプレッドを減少させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】EP1 372 505 B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようにしてサーマルスプレッドを減少させることができるが、サーマルスプレッドは、機械的障壁を超えてエンドエフェクタの外側の生体組織に広がることがある。このため、エンドエフェクタの外側の生体組織等、他の周辺組織にサーマルスプレッドの影響を及ぼすことがより確実に防止されることが望まれている。
【0005】
この発明は、生体組織の処置の際に、例えば高周波通電等のようなエネルギを受けることにより処置される処置対象の生体組織から生じるサーマルスプレッドの影響を他の周辺組織に及ぼすことをより確実に防止することができる治療用処置システムおよび治療用処置具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る第1の態様では、生体組織にエネルギを作用させて処置を行う治療用処置システムは、エネルギを供給するエネルギ源と、前記生体組織を狭持するように少なくとも一方が他方に対して相対的に移動する1対の狭持部材と、前記狭持部材の少なくとも一方に設けられているとともに、前記エネルギ源に接続され、前記エネルギ源から供給されるエネルギによって前記生体組織を熱により変性させる出力部材と、前記出力部材から離れる方向への熱の広がりを抑制する冷却部とを備えている。
【0007】
この発明に係る第2の態様では、生体組織にエネルギを作用させる治療用処置具は、前記生体組織を狭持するための狭持部材を備え、前記狭持部材は、互いに対して相対的に移動可能な第1および第2の狭持体と、前記第1および第2の狭持体の少なくとも一方に設けられ、エネルギ源に接続され、前記第1および第2の狭持体で生体組織を狭持したときに、前記エネルギ源から供給されたエネルギによって前記生体組織を熱により変性させる出力部材と、前記変性された生体組織から周囲への熱の広がりを抑制する冷却部とを備えている。
【0008】
発明の更なる目的および効果は明細書中に付随して説明され、明細書から明らかとなり、又は、発明の実行によって認識され得る。発明の目的および効果は、特に以下に指摘される手段および組み合わせによって認識され、達成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係る治療用処置システムを示す概略図である。
【図2】図2(A)は、第1の実施の形態に係る高周波処置具のシャフトおよび狭持部の第1の狭持体および第2の狭持体が閉じた状態を示す概略的な縦断面図であり、図2(B)は、第1の実施の形態に係る高周波処置具のシャフトおよび狭持部の第2の狭持体が第1の狭持体に対して開いた状態を示す概略的な縦断面図である。
【図3】図3(A)は、第1の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、第2の狭持体に近接する側の第1の狭持体を示す概略的な平面図であり、図3(B)は、第1の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、図3(A)に示す3B−3B線に沿う、第1の狭持体を示す概略的な縦断面図であり、図3(C)は、第1の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、図3(A)に示す3C−3C線に沿う、第1の狭持体および第2の狭持体を示す概略的な横断面図である。
【図4】図4は、本発明の第1の実施の形態に係る治療処置装置の変形例を示す概略図である。
【図5】図5(A)は、第1の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、図3(A)に示す3C−3C線に沿う、第1の狭持体の変形例を示す概略的な横断面図であり、図5(B)は、第1の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、図3(A)に示す3C−3C線に沿う、第1の狭持体の変形例を示す概略的な横断面図であり、図5(C)は、第1の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、図3(A)に示す3C−3C線に沿う、第1の狭持体の変形例を示す概略的な横断面図であり、図5(D)は、第1の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、図3(A)に示す3C−3C線に沿う、第1の狭持体の変形例を示す概略的な横断面図である。
【図6】図6(A)は、第2の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、第2の狭持体に近接する側の第1の狭持体を示す概略的な平面図であり、図6(B)は、第2の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、図6(A)に示す6B−6B線に沿う、第1の狭持体を示す概略的な縦断面図であり、図6(C)は、第2の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、図6(A)に示す6C−6C線に沿う、第1の狭持体を示す概略的な横断面図である。
【図7】図7(A)は、第3の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、第2の狭持体に近接する側の第1の狭持体を示す概略的な平面図であり、図7(B)は、第3の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、図7(A)に示す7B−7B線に沿う、第1の狭持体を示す概略的な縦断面図であり、図7(C)は、第3の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、図7(A)に示す7C−7C線に沿う、第1の狭持体を示す概略的な横断面図であり、図7(D)は、第3の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、第1の狭持体の電極配設部に配設される障壁部および高周波電極を示す概略的な斜視図である。
【図8】図8(A)は、第4の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、第2の狭持体に近接する側の第1の狭持体を示す概略的な平面図であり、図8(B)は、第3の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、図8(A)に示す8B−8B線に沿う、第1の狭持体を示す概略的な縦断面図であり、図8(C)は、第4の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、図8(A)に示す8C−8C線に沿う、第1の狭持体を示す概略的な横断面図であり、図8(D)は、第4の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、第1の狭持体の電極配設部に配設される障壁部および高周波電極を示す概略的な斜視図である。
【図9】図9(A)は、第5の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、第2の狭持体に近接する側の第1の狭持体を示す概略的な平面図であり、図9(B)は、第5の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、図9(A)に示す9B−9B線に沿う、第1の狭持体を示す概略的な縦断面図であり、図9(C)は、第5の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、図9(A)に示す9B−9B線に沿う、第1の狭持体の変形例を示す概略的な横断面図である。
【図10】図10(A)は、第6の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、第2の狭持体に近接する側の第1の狭持体を示す概略的な平面図であり、図10(B)は、第6の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、図10(A)に示す10B−10B線に沿う、第1の狭持体を示す概略的な縦断面図である。
【図11】図11(A)は、第7の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、第2の狭持体に近接する側の第1の狭持体を示す概略的な平面図であり、図11(B)は、第7の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、図11(A)に示す11B−11B線に沿う、第1および第2の狭持体を示す概略的な縦断面図であり、図11(C)は、第7の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、図11(A)に示す11B−11B線に沿う、第1および第2の狭持体の本体の先端部側を示す概略的な縦断面図である。
【図12】図12は、本発明の第8の実施の形態に係る治療用処置システムを示す概略図である。
【図13】図13(A)は、第8の実施の形態に係る高周波処置具のシャフトおよび狭持部の第1の狭持体および第2の狭持体が閉じた状態を示す概略的な縦断面図であり、図13(B)は、第8の実施の形態に係る高周波処置具のシャフトおよび狭持部の第2の狭持体が第1の狭持体に対して開いた状態を示す概略的な縦断面図である。
【図14】図14(A)は、第8の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、第2の狭持体に近接する側の第1の狭持体を示す概略的な平面図であり、図14(B)は、第8の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、図14(A)に示す14B−14B線に沿う、第1の狭持体を示す概略的な縦断面図であり、図14(C)は、第8の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、図14(A)に示す14C−14C線に沿う、第1の狭持体を示す概略的な横断面図である。
【図15】図15(A)は、第8の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、図14(A)に示す14C−14C線に沿う、第1の狭持体の変形例を示す概略的な横断面図であり、図15(B)は、第8の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、図14(A)に示す14C−14C線に沿う、第1の狭持体の変形例を示す概略的な横断面図であり、図15(C)は、第8の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、図14(A)に示す14C−14C線に沿う、第1の狭持体の変形例を示す概略的な横断面図であり、図15(D)は、第8の実施の形態に係る高周波処置具の狭持部のうち、図14(A)に示す14C−14C線に沿う、第1の狭持体の変形例を示す概略的な横断面図である。
【図16】図16(A)は、第9の実施の形態に係るレーザ処置具の狭持部のうち、第2の狭持体に近接する側の第1の狭持体を示す概略的な平面図であり、図16(B)は、第9の実施の形態に係るレーザ処置具の狭持部のうち、図16(A)に示す16B−16B線に沿う、第1の狭持体を示す概略的な縦断面図であり、図16(C)は、第9の実施の形態に係るレーザ処置具の狭持部のうち、図16(A)に示す16C−16C線に沿う、第1の狭持体を示す概略的な横断面図である。
【図17】図17は、本発明の第10の実施の形態に係る治療用処置システムを示す概略図である。
【図18】図18(A)は、第10の実施の形態に係る高周波処置具の本体側狭持部と離脱側狭持部とを係合し、本体側狭持部に対して離脱側狭持部を離隔させた状態を示す概略的な縦断面図であり、図18(B)は、第10の実施の形態に係る高周波処置具の本体側狭持部と離脱側狭持部とを係合し、本体側狭持部に対して離脱側狭持部を近接させた状態を示す概略的な縦断面図である。
【図19】図19(A)は、第10の実施の形態に係る高周波処置具の本体側狭持部と離脱側狭持部とを分離した状態を示す概略図であり、図19(B)は、第10の実施の形態に係る高周波処置具の本体側狭持部と離脱側狭持部とを分離した状態を示す概略的な縦断面図である。
【図20】図20は、第10の実施の形態に係る高周波処置具の本体側狭持部を示す概略的な平面図である;
【図21】図21は、第11の実施の形態に係る高周波処置具の本体側狭持部を示す概略的な平面図である;
【図22】図22(A)は、第12の実施の形態に係る高周波処置具の本体側狭持部と離脱側狭持部とを分離した状態を示す概略図であり、図22(B)は、第12の実施の形態に係る高周波処置具の本体側狭持部と離脱側狭持部とを分離した状態を示す概略的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながらこの発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0011】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態について図1ないし図5(D)を用いて説明する。
ここでは、エネルギ処置具として、例えば腹壁を通して処置を行うための、リニアタイプのバイポーラ型高周波処置具12を例にして説明する。
【0012】
図1に示すように、治療用処置システム10は、高周波処置具(治療用処置具)12と、エネルギ源14とを備えている。
高周波処置具12は、ハンドル22と、シャフト24と、開閉可能な狭持部26とを備えている。ハンドル22には、ケーブル28を介してエネルギ源14が接続されている。エネルギ源14には、図示しないが、フットスイッチやハンドスイッチが接続されている。このため、これらフットスイッチやハンドスイッチを術者が操作することにより、エネルギ源14から高周波処置具12へのエネルギの供給のON/OFFが切り換えられる。
【0013】
ハンドル22は、略L字状に形成されている。ハンドル22の一端には、シャフト24が配設されている。このシャフト24と同軸上のハンドル22の基端からは、上述したケーブル28が延出されている。
【0014】
一方、ハンドル22の他端側は、術者に把持される把持部である。ハンドル22は、その他端側に並設されるように、狭持部開閉ノブ32を備えている。この狭持部開閉ノブ32は、ハンドル22の略中央の部分でシャフト24の後述するシース44の基端に連結されている。この狭持部開閉ノブ32をハンドル22の他端に対して近接および離隔させると、シース44がその軸方向に沿って移動する。
【0015】
図2(A)および図2(B)に示すように、シャフト24は、筒体42と、この筒体42の外側に摺動可能に配設されたシース44とを備えている。筒体42は、その基端部でハンドル22に固定されている。シース44は、筒体42の軸方向に沿ってスライド可能である。
【0016】
筒体42の外側には、その軸方向に沿って凹部46が形成されている。この凹部46には、後述する第1の高周波電極56に接続される第1の通電ライン92aが配設されている。筒体42の内部には、後述する第2の高周波電極58に接続される第2の通電ライン92bが挿通されている。
【0017】
さらに、シャフト24の筒体42およびシース44には、それぞれ後述する蒸気(気体)や液体(組織液)などの流体が放出される流体放出口48a,48bが形成されている。これら流体放出口48a,48bは、シャフト24の基端側に形成されている。
【0018】
ここでは図示しないが、シース44の流体放出口48bの外周面には、接続口金を設けても良い。このとき、後述する流体は、第1の流体放出溝84a、第2の流体放出溝84b、接続口金を通して排出される。この場合、接続口金内を吸引することによって蒸気や液体などの流体を流体放出口48a,48bから容易に排出することができる。
【0019】
なお、流体放出口48a,48bはシャフト24に設けられていることが好適であるが、シャフト24ではなく、ハンドル22に設けられていることも好適である。
【0020】
図1ないし図2(B)に示すように、狭持部26は、シャフト24の先端に配設されている。図2(A)および図2(B)に示すように、この狭持部26は、第1の狭持体52と、第2の狭持体54と、出力部材やエネルギ放出部としての第1の高周波電極56と、出力部材やエネルギ放出部としての第2の高周波電極58とを備えている。
【0021】
第1の狭持体52および第2の狭持体54は、それぞれ全体的に絶縁性を有することが好適であり、特に、後述する電極配設部86の周囲は絶縁性を有する状態に形成されている。
【0022】
第1の狭持体52は、第1の高周波電極56が配設される第1の狭持体本体(以下、主に本体という)62と、この本体62の基端部に設けられた基部64とを一体的に備えている。第2の狭持体54は、第2の高周波電極58が配設される第2の狭持体本体66と、この本体66の基端部に設けられた基部68とを一体的に備えている。
【0023】
第1の狭持体52は、その基部64が、シャフト24の筒体42の先端部に固定されている。一方、第2の狭持体54は、その基部68が、シャフト24の軸方向に対して直交する方向に配設された支持ピン72によってシャフト24の筒体42の先端部に回動可能に支持されている。第2の狭持体54は、支持ピン72の軸回りに回動することにより第1の狭持体52に対して開閉可能である。そして、この第2の狭持体54は、第1の狭持体52に対して開くように、例えば板バネなどの弾性部材74により付勢されている。
【0024】
図3(B)および図3(C)に示すように、これら第1の狭持体52および第2の狭持体54の本体62,66の外表面は、滑らかな曲面状に形成されている。同様に、これら第1の狭持体52および第2の狭持体54の基部64,68の外表面も、滑らかな曲面状に形成されている。第1の狭持体52に対して第2の狭持体54が閉じた状態では、それぞれの狭持体52,54の本体62,66の断面は図3(C)に示すように、略円形または略楕円状に形成されている。第1の狭持体52に対して第2の狭持体54が閉じた状態では、基部64,68は、円筒状に形成されている。この状態では、第1の狭持体52および第2の狭持体54の本体62,66の基端部の径の方が、基部64,68の径よりも大きく形成されている。そして、本体62,66と基部64,68との間には、それぞれ段差76a,76bが形成されている。
【0025】
ここで、第1の狭持体52および第2の狭持体54は、第2の狭持体54が第1の狭持体52に対して閉じた状態で、その基部64,68を合わせた略円形または略楕円状の外周面が、筒体42の先端部の外周面に対して略面一または僅かに大径に形成されている。このため、シース44を筒体42に対してスライドさせて、シース44の先端で第1の狭持体52および第2の狭持体54の基部64,68を覆うことが可能である。この状態では、図2(A)に示すように、弾性部材74の付勢力に抗して第1の狭持体52および第2の狭持体54が閉じる。一方、シース44の先端で第1の狭持体52および第2の狭持体54の基部64,68を覆った状態からシース44を筒体42の基端側にスライドさせると、図2(B)に示すように、弾性部材74の付勢力によって第1の狭持体52に対して第2の狭持体54が開く。
【0026】
図3(B)および図3(C)に示すように、第1の狭持体52の本体62のうち、第2の狭持体54の本体66に近接する側の縁部(障壁部)82aのうち、生体組織に対して接触する面(以下、接触面という)は、例えば平坦に形成されている。図3(A)ないし図3(C)に示すように、第1の狭持体52の縁部82aの内側には、蒸気や高温の液体などの流体の流路として開口された第1の流体放出溝(第1の流路)84aが形成されている。この第1の流体放出溝84aは、断面が凹状に、環状に形成されている。そして、第1の狭持体52の基部64には、蒸気や液体などの流体の流路として開口された第2の流体放出溝(第1の流路)84bが、断面が凹状に形成されている。この第2の流体放出溝84bは、シャフト24の軸方向に沿って第1の流体放出溝84aに連続して形成されている。
【0027】
本体62に形成された第1の流体放出溝84aの内側には、第1の高周波電極56が配設される台座としての電極配設部86が形成されている。この電極配設部86は、本体62の縁部82aの接触面に対して低い位置にある。すなわち、電極配設部86は、本体62の縁部82aに対して凹まされた状態に形成されている。
【0028】
第1の高周波電極56は、板状で、第2の狭持体54に対向する、生体組織との接触面が平面に形成され、電極配設部86に固定されている。この第1の高周波電極56は、例えば第2の狭持体54に対向する側に対して反対側の基端部で第1の電極コネクタ88aに電気的に接続されている。この第1の電極コネクタ88aは、第1の通電ライン92aを介してハンドル22から延出されたケーブル28に接続されている。
【0029】
そして、第1の高周波電極56が第1の狭持体52の本体62の電極配設部86に配設された状態で、図3(B)および図3(C)に示すように、第1の狭持体52の縁部82aの接触面は、第1の高周波電極56の表面に対して突出した状態にある。すなわち、第1の狭持体52の縁部82a接触面の方が、第1の高周波電極56の表面に対して高い位置にある。これらの間の高さの差は、例えば0.5mm程度など、適宜に設定されている。
【0030】
なお、図示しないが、第2の狭持体54の本体66や第2の高周波電極58も第1の狭持体52の本体62や第1の高周波電極56と対称的に形成されている。このため、第1の狭持体52に対して第2の狭持体54を閉じたときには、図2(A)に示すように、第1の狭持体52の本体62の縁部82aおよび第2の狭持体54の本体66の縁部82b(図3(C)参照)は互いに当接されるが、第1の高周波電極56と第2の高周波電極58との間には、空間Sが形成されている。
【0031】
図3(A)および図3(C)に示すように、第1の狭持体52の縁部(障壁部)82aのさらに外側には、気体や液体(冷却水)などの冷却用の流体を通す管路(第2の流路)98が配設される管路配設部96が形成されている。この管路配設部96に配設された管路98は、例えば円筒状に形成されている。この管路98の外周面は、縁部82aの接触面から仮想的に延出された面に接するように、配設されている。すなわち、管路98の軸方向に沿った外周面の一部は、縁部82aの接触面と略面一である。
【0032】
また、管路98は、例えばシャフト24の筒体42の内部に挿通されたり、筒体42の外周面に凹部を形成するなどして、例えばハンドル22まで延出されている。管路98は、ハンドル22からケーブル28と並設された状態に延出され、図示しないポンプなどに接続されている。このため、管路98内に冷却水などの流体を循環させることができる。
【0033】
なお、管路98は熱伝導率が高い、例えば金属材などにより形成されている。このため、管路98内に流体を流すと、管路98の外周面にその流体の温度が伝達される。すなわち、管路98の外周面が冷却される。
【0034】
次に、この実施の形態に係る治療用処置システム10の作用について説明する。
図2(A)に示すように、第1の狭持体52に対して第2の狭持体54を閉じた状態で、例えば、腹壁を通して腹腔内に高周波処置具12の狭持部26およびシャフト24を挿入する。高周波処置具12の狭持部26を処置対象の生体組織に対して対峙させる。
【0035】
第1の狭持体52および第2の狭持体54で処置対象の生体組織を狭持するため、ハンドル22の狭持部開閉ノブ32を操作する。このとき、筒体42に対してシース44をシャフト24の基端部側に移動させる。弾性部材74の付勢力によって、基部64,68間を筒状に維持することができなくなり、第1の狭持体52に対して第2の狭持体54が開く。
【0036】
そして、処置対象の生体組織を第1の狭持体52の第1の高周波電極56と第2の狭持体54の第2の高周波電極58との間に配置する。この状態で、ハンドル22の狭持部開閉ノブ32を操作する。このとき、筒体42に対してシース44をシャフト24の先端部側に移動させる。弾性部材74の付勢力に抗してシース44によって、基部64,68間を閉じて筒状にする。このため、基部64に一体的に形成された第1の狭持体本体62と、基部68に一体的に形成された第2の狭持体本体66とが閉じる。すなわち、第1の狭持体52に対して第2の狭持体54が閉じる。このようにして、処置対象の生体組織を第1の狭持体52と第2の狭持体54との間で狭持する。
【0037】
このとき、第1の狭持体52に設けられた第1の高周波電極56と第2の狭持体54に設けられた第2の高周波電極58との両方に、処置対象の生体組織が接触している。第1の狭持体52の縁部82aの接触面と第2の狭持体54の縁部82bの接触面との両方に、処置対象の生体組織の周辺組織が密着している。さらに、第1の狭持体52および第2の狭持体54の縁部82a,82bの外側に設けられた管路98に生体組織が密着する。
【0038】
この状態で、フットスイッチやハンドスイッチを操作する。エネルギ源14からケーブル28、第1および第2の通電ライン92a,92b、第1および第2の通電コネクタ88a,88bを介して第1の高周波電極56および第2の高周波電極58にそれぞれエネルギが供給される。一方、管路98には冷却水が供給される。
【0039】
第1の高周波電極56は処置対象の生体組織を介して第2の高周波電極58との間に高周波電流を通電する。このため、第1の高周波電極56と第2の高周波電極58との間の生体組織が加熱される。
このように、処置対象の生体組織が加熱されたときには、処置対象の生体組織から周辺の生体組織に向かってサーマルスプレッドが生じる。すなわち、生体組織内の熱が生体組織の内部を通して伝達される。このため、第1および第2の狭持体52,54の縁部82a,82bに生体組織が密着されていても、縁部82a,82bを超えて第1および第2の狭持体52,54の外側の生体組織に広がることがある。
【0040】
ここで、縁部82a,82bの外側の管路98にはそれぞれ冷却水が供給されている。このため、熱伝導率が高い管路98の外周面に密着した生体組織は冷却されている。したがって、第1の高周波電極56と第2の高周波電極58との間の処置対象の生体組織から周囲の生体組織に広がる熱の影響が、管路98に密着した部分で抑制される。すなわち、処置対象の生体組織から周囲の組織に向かう熱の広がりが、処置対象の生体組織の周囲の生体組織を冷却することによって抑えられる。
【0041】
また、処置対象の生体組織が加熱されたとき、その生体組織は液体成分(水分)を含んでいるので、高温の蒸気や、常温から高温までの体液(組織液)等の液体など、流体が発生することがある。
【0042】
ここで、第1の高周波電極56が第1の狭持体52の本体62の電極配設部86に固定された状態で、第2の狭持体54側に露出する第1の高周波電極56の表面は、第1の狭持体52の縁部82aの接触面に対して少し低い位置にある。同様に、第2の高周波電極58が第2の狭持体54の本体66の電極配設部86に固定された状態で、第1の狭持体52側に露出する第2の高周波電極58の表面は、第2の狭持体54の縁部82bの接触面に対して少し低い位置にある。このため、生体組織から生じた蒸気や液体などの流体は、これら第1の狭持体52の縁部82aおよび第2の狭持体54の縁部82bの内側の面に当たる。このとき、縁部82a,82bの接触面は、処置対象の生体組織の周辺組織に密着しているので、縁部82a,82bの内側の面は、蒸気や液体などの流体が外部に漏れ出すことを防止する障壁部(ダム)の役割をそれぞれ果たす。
【0043】
そうすると、生体組織から発生した蒸気や液体などの流体は第1の狭持体52および第2の狭持体54の本体62,66のそれぞれの縁部82a,82bの内側の面に当たって、第1の流体放出溝84aに流れ込む。そして、この流体は、第1の流体放出溝84aに連通した、第1の狭持体52および第2の狭持体54の基部64,68の第2の流体放出溝84bに向かって流れる。
【0044】
流体は第1の狭持体52および第2の狭持体54の基部64,68の第2の流体放出溝84bからさらに筒体42の内部に流れ込む。そして、この流体は、筒体42の流体放出口48aおよびシース44の流体放出口48bを通してシャフト24の外側に導出される。
【0045】
また、仮に、生体組織と縁部82a,82bの接触面との間に隙間があった場合、流体は生体組織と縁部82a,82bとの間を通して外部に抜ける。この場合、管路98に流体が触れる。このため、流体は冷却される。このように、例えば高温の流体が狭持部26の外側に抜けたとしても、管路98に流体が触れるので、流体が冷却されて、狭持部26で狭持した生体組織の周辺の生体組織に影響を与えることが防止される。
【0046】
処置を終了する際には、フットスイッチやハンドスイッチの操作を止める。すると、エネルギ源14から第1の高周波電極56および第2の高周波電極58へのエネルギの供給が停止する。管路98への冷却水の供給も停止する。
【0047】
以上説明したように、この実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
高周波処置具12により、狭持部26で狭持した処置対象の生体組織に高周波電流を与えるときに、それぞれ冷却用の流体が流されている第1の狭持体52の管路98と第2の狭持体54の管路98とを処置対象の生体組織の周辺組織に密着させることができる。このため、管路98に密着した生体組織を冷却することができる。したがって、処置対象の生体組織から周辺の生体組織に向かってサーマルスプレッドが生じたときの影響を、管路98に接触した部分で抑制することができる。そうすると、生体組織の処置の際に高周波通電された処置対象の生体組織から広がる熱の影響を他の周辺組織に及ぼすことをより確実に防止することができる。
【0048】
このように、冷却用の流体を流すことが可能な管路98を狭持部26の外側に設けることによって、サーマルスプレッドが生じる範囲を第1および第2の狭持体52,54の縁部82a,82bの内側の範囲に確実に収めることができる。
【0049】
したがって、この実施の形態によれば、上述したEP1 372 505 B1とは異なり、生体組織を直接冷却することによってサーマルスプレッドをより確実に抑止することができる。
【0050】
さらに、本実施の形態のように、蒸気や液体などの流体を組織と接触しない位置まで導く流路を設けることは生体組織への熱影響を抑止する上で有用である。例えば、狭持部26の周囲を覆うような狭持部26よりも大きい組織に処置を行う場合には流体放出による熱影響を狭持部26の外側に及ぼすことを防止することができる、といった、特に大きな効果を得ることができる。狭持部26に小さいながらも蒸気や液体などの流体が漏れ出す開放部(空間)が形成されてしまった場合はその部位より流体が放出され、狭持部26の周囲の生体組織に熱影響をもたらすためである。
【0051】
また、そのような開放部をなくすために高周波電極(エネルギ放出部)56,58の周囲を障壁部82a,82bで覆うことを行なっても、発生する蒸気圧力等の流体圧力により開放部が形成され、流体が放出される可能性がある。そのため、流体圧力の上昇による不要な流体の放出を抑えるとともに、流体を所定方向に導き、放出する流路(第1の流体放出溝84a)を設けることは有用な手段である。
【0052】
すなわち、処置対象の生体組織の周囲の、変性を望まない生体組織への熱損傷を防止するように処置対象の生体組織の周囲の生体組織自体を直接的に冷却し、さらに、生体組織から発生した蒸気等の流体を第1の流体放出溝84aに放出することができる。このように、生体組織を直接的に冷却することと、熱を加えることによって生体組織から発生した流体を放出すること、といった2つの作用の相乗効果により、処置対象の周囲の組織への熱損傷をより確実に防止することができる、といった、従来の技術にはない、優れた作用効果を奏する高周波処置具12を提供することができる。
【0053】
ところで、高周波処置具12により、狭持部26で狭持した処置対象の生体組織に高周波電流を与えるときに、第1の狭持体52の縁部82aの接触面と第2の狭持体54の縁部82bの接触面とをそれぞれ生体組織に密着させることができる。このため、処置対象の生体組織から発生する蒸気や液体などの流体が、第1の狭持体52の縁部82aおよび第2の狭持体54の縁部82bに向かって流れても、その流体をこれら縁部82a,82bの内側の第1の流体放出溝84a内に導入することができる。
【0054】
すなわち、第1の高周波電極56と第2の高周波電極58とが互いに接触せず、第1の狭持体52と第2の狭持体54との間で生体組織を狭持したときに、縁部82a,82bと生体組織とが密着するのであれば、障壁部としての縁部82a,82bは設けられていなくても良い。この場合であっても、流体を第1の流体放出溝84a内に導入することができる。
【0055】
そうすると、処置対象の生体組織から発生した流体を、第1の高周波電極56と第1の狭持体52の縁部82aとの間、および、第2の高周波電極58と第2の狭持体54の縁部82bとの間に形成された第1の流体放出溝84aから、狭持部26の基部64,68の第2の流体放出溝84b、シャフト24の筒体42の流体放出口48aを通してシース44の流体放出口48bから高周波処置具12の外部に排出することができる。したがって、狭持部26で狭持した生体組織の周囲に蒸気や液体などの流体が漏れ出すことを防止することができる。このため、生体組織の処置の際に高周波通電された部位から生じる蒸気による影響を他の周辺組織に及ぼすことを防止することができる。すなわち、生体組織の処置の際に影響を及ぼす位置を、第1の高周波電極56および第2の高周波電極58間に高周波電流を通電した生体組織に限定することができる。
【0056】
また、上述したように、第1および第2の高周波電極56,58の表面に対して高い位置にあるように、障壁部として縁部82a,82bの接触面が設けられていることによって、生体組織と縁部82a,82bとの間の密着性を向上させることができる。このため、第1の流体放出溝84a内に、蒸気や液体などの流体をより確実に導入することができる。
【0057】
さらに、仮に、生体組織と縁部82a,82bとの隙間を通して、高温の流体が第1および第2の狭持体52,54の外部に抜けようとしても、管路98にその流体が触れることによって、その流体を冷却することができる。このため、狭持部26で狭持した生体組織の周辺の生体組織に影響を与えることを防止することができる。
【0058】
なお、この実施の形態では、生体組織と密着する高周波電極56,58の表面や縁部82a,82bの接触面が平坦であることとして説明したが、例えば波型や曲面形状など、処置対象の生体組織の形状などに合わせて種々に変更可能である。
【0059】
この実施の形態では、第1の狭持体52に第1の高周波電極56が配設され、第2の狭持体54に第2の高周波電極58が配設されたバイポーラ型の高周波処置具12について説明した。その他、高周波電極が、例えば第1の狭持体52だけ、または、第2の狭持体54だけに配設されていたり、あるいは狭持体52,54にそれぞれ同極の電極が配設されているモノポーラ型の高周波処置具(図示せず)についても同様に適用することが好適である。すなわち、狭持面としての電極と狭持体52,54の縁部82a,82bとの間に第1の流体放出溝84aが同様に形成されていることが好適である。
【0060】
この実施の形態では、第1の狭持体52の本体62と基部64との間に段差76aを有し、第2の狭持体54の本体66と基部68との間に段差76bを有するものとして説明した。その他、これら段差76a,76bの代わりに、本体62,66および基部64,68が例えばテーパ状に形成されていることも好適である。この場合、もちろん、シース44の基端側が基部64,68に対して大径に形成されている。このとき、シース44が筒体42の先端側に移動してテーパの部分に係止された状態では、狭持部26は閉じ、シース44が筒体42の基端側に移動してテーパの部分から離れた状態では、狭持部26は開く。
【0061】
この実施の形態では、腹壁を通して腹腔内(体内)の生体組織を処置するための、リニアタイプの高周波処置具12を例にして説明したが、例えば図4に示すように、腹壁を通して体外に処置対象組織を取り出して処置を行うオープン用のリニアタイプの高周波処置具(治療用処置具)12aを用いることもできる。
【0062】
この高周波処置具12aは、ハンドル22と、狭持部26とを備えている。すなわち、腹壁を通して処置するための高周波処置具12とは異なり、シャフト24(図1参照)が除去されている。一方、シャフト24と同様の作用を有する部材がハンドル22内に配設されている。このため、上述した図1に示す高周波処置具12と同様に使用することができる。
【0063】
このように、例えばオープン用のリニアタイプの高周波処置具12aを使用する場合、蒸気等の流体を、第1の流体放出溝84aを通して、第1および第2の狭持体52,54の本体62,66から直接、生体組織に対して離れる側に排出するようにしても良い。すなわち、第1の流体放出溝84aと連通した蒸気放出用の開口部を第1および第2の狭持体52,54の本体62,66に設けることも好適である。また、仮に、生体組織が蒸気等の流体から熱の影響を受けるとしても、実質的に生体組織に対して影響がないように選択して配置した流体放出用開口部(図示せず)を有する高周波処置具12aを用いて流体を狭持部26の外部に放出することが許容され得る。このことは、図1に示す上述した高周波処置具12を用いて体腔内を処置する場合であっても、狭持部26と生体組織との位置関係によっては許容され得る。これは、後述する第10の実施の形態におけるサーキュラタイプの高周波処置具12c(図17参照)でも同様である。
【0064】
なお、図5(A)ないし図5(D)に示すように、第1および第2の狭持体52,54の構造は、種々の変形例が許容される。
図5(A)に示す状態は、管路配設部96に配設される管路98の横断面が略矩形状に形成された状態を示す。そして、管路98の側面が第1の狭持体52の縁部82aの接触面と略面一に配設されている。このため、生体組織と管路98との接触面積をより広くすることができる。
【0065】
図5(B)に示す状態は、円筒状の管路98が縁部82aの接触面の高さよりも低く形成された状態を示す。
図5(C)に示す状態は、第1の高周波電極56と管路98とが接触するので円筒状の管路98が絶縁性を有し、かつ、この管路98が障壁部として作用する状態を示す。このため、縁部82a,82bのスペースを設ける必要がないので、第1の狭持体52や第2の狭持体54の幅を小さくすることができる。または、第1および第2の高周波電極56,58の幅を大きくすることができる。
【0066】
図5(D)に示す状態は、第1の狭持体52の本体のうち、第2の狭持体54に離隔する側がヒートシンク(放熱用部材)108に覆われた状態を示す。このヒートシンク108は、高熱伝導率の例えば金属材で形成されている。このヒートシンク108の外周面には、外気等との接触面積を増やすため、符号108aで示す、複数の突起やフィンが形成されている。なお、縁部82a,82bや管路98は第1の狭持体52の第1の流体放出溝84aの外側から除去されている。また、このヒートシンク108の端部は、障壁部(縁部の接触面)としての役割も果たす。
【0067】
したがって、サーマルスプレッドにより周囲の生体組織に熱が伝達される際、生体組織がヒートシンク108に触れていると、生体組織を伝達する熱がヒートシンク108に伝熱される。このヒートシンク108は、外部との接触面積が大きくなるように形成されているので、外部と熱交換して生体組織から効率的に熱を放熱することができる。
なお、ヒートシンク108を金属材料で形成する場合は絶縁コーティング処理することが望ましい。
【0068】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について図6(A)ないし図6(C)を用いて説明する。この実施の形態は第1の実施の形態の変形例であって、第1の実施の形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
図6(C)に示すように、第1の狭持体52の本体62の縁部82aの内側からは、第1の流体放出溝84a(図3(A)ないし図3(C)参照)が除去されている。そして、第1の狭持体52の本体62の縁部82aの内側には、第1の高周波電極56が配設される台座としての電極配設部86が縁部82aに隣接した状態に形成されている。この電極配設部86には、本体62の軸方向に沿って第1の流体放出溝112aが形成されている。図6(B)および図6(C)に示すように、この第1の流体放出溝112aは、第1の狭持体52の基部64の第2の流体放出溝112bに連続して形成されている。
【0069】
図6(B)および図6(C)に示すように、第1の高周波電極56の表面と縁部82aの接触面との間には、段差が形成されている。縁部82aの接触面は第1の高周波電極56の表面に対して高い位置にある。この段差は、例えば0.5mm程度である。
【0070】
第1の高周波電極56には、本体62の軸方向に沿って、所定の間隔をおいて、第1の高周波電極56を貫通した円形孔114が形成されている。これら円形孔114は、電極配設部86の第1の流体放出溝112aに連通されている。なお、ここでは円形孔114として説明するが、楕円孔や多角形孔など、種々の形状が許容される。
【0071】
次に、この実施の形態に係る治療用処置システム10の作用について説明する。
第1の実施の形態で説明したように、処置対象の生体組織を第1の狭持体52と第2の狭持体54との間で狭持する。このとき、縁部(障壁部)82aの接触面が生体組織に密着するとともに、生体組織が第1の高周波電極56および第2の高周波電極58に接触する。さらに、第1の狭持体52および第2の狭持体54の外側に設けられた管路98に生体組織が密着する。
【0072】
この状態で、フットスイッチやハンドスイッチを操作する。エネルギ源14から第1の高周波電極56および第2の高周波電極58にそれぞれエネルギが供給される。一方、管路98には冷却水が供給される。そして、第1の高周波電極56と第2の高周波電極58との間の生体組織が加熱される。
このように、処置対象の生体組織が加熱されたときには、処置対象の生体組織から周辺の生体組織に向かってサーマルスプレッドが生じる。
【0073】
ここで、縁部82a,82bの外側の管路98にはそれぞれ冷却水が供給されている。このため、熱伝導率が高い管路98の外周面に密着した生体組織は冷却されている。したがって、第1の高周波電極56と第2の高周波電極58との間の処置対象の生体組織から広がる熱の影響が、管路98に密着した部分で抑制される。すなわち、処置対象の生体組織から周囲の組織に向かう熱の広がりが、処置対象の生体組織の周囲の生体組織を冷却することによって抑えられる。
【0074】
また、処置対象の生体組織が加熱されたとき、その生体組織の加熱された部分から高温の蒸気や液体などの流体が発生する。
【0075】
ここで、第1の高周波電極56が第1の狭持体52の本体62の電極配設部86に固定された状態で、第2の狭持体54側に露出する第1の高周波電極56の表面は、第1の狭持体52の縁部82aの接触面に対して少し低い位置にある。同様に、第2の高周波電極58が第2の狭持体54の本体66の電極配設部86に固定された状態で、第1の狭持体52側に露出する第2の高周波電極58の表面は、第2の狭持体54の縁部82bの接触面に対して少し低い位置にある。このため、これら第1の狭持体52の縁部82aおよび第2の狭持体54の縁部82bは、生体組織から生じた流体が外部に漏れ出すことを防止する障壁部(ダム)の役割をそれぞれ果たす。
【0076】
そうすると、生体組織から発生した流体は第1の狭持体52の本体62の第1の高周波電極56の円形孔114、および、第2の狭持体54の本体66の第2の高周波電極58の円形孔114を通して第1の流体放出溝112aに流れ込む。そして、この流体は、第1の狭持体52および第2の狭持体54の基部64,68の第2の流体放出溝112bに向かって流れる。
【0077】
また、仮に、生体組織と縁部82a,82bとの間に隙間があった場合、蒸気や液体などの流体は生体組織と縁部82a,82bとの間を通して外部に抜ける。この場合、管路98に流体が触れる。このため、流体が冷却される。
【0078】
以上説明したように、この実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
高周波処置具12により、狭持部26で狭持した処置対象の生体組織に高周波電流を与えるときに、それぞれ冷却用の流体が流されている第1の狭持体52の管路98と第2の狭持体54の管路98とを処置対象の生体組織の周辺組織に密着させることができる。このため、管路98に密着した生体組織を冷却することができる。したがって、処置対象の生体組織から周辺の生体組織に向かってサーマルスプレッドが生じたときの影響を、管路98に接触した部分で抑制することができる。そうすると、生体組織の処置の際に高周波通電された処置対象の生体組織から広がる熱の影響を他の周辺組織に及ぼすことを確実に防止することができる。
【0079】
したがって、第1の実施の形態で説明したように、冷却用の流体を流すことが可能な管路98を狭持部26の外側に設けることによって、サーマルスプレッドが生じる範囲を第1および第2の狭持体52,54の縁部82a,82bの内側の範囲に確実に収めることができる。
【0080】
また、高周波処置具12により、狭持部26で狭持した処置対象の生体組織に高周波電流を与えるときに、第1の狭持体52の縁部82aの接触面と第2の狭持体54の縁部82bの接触面とをそれぞれ生体組織に密着させることができる。このため、処置対象の生体組織から発生する流体が、第1の狭持体52の縁部82aおよび第2の狭持体54の縁部82bに向かって流れても、その流体を第1および第2の高周波電極56,58の円形孔114の内側の第1の流体放出溝112a内に導入することができる。
【0081】
このため、生体組織の処置の際に高周波通電された部位から生じる流体による影響を他の周辺組織に及ぼすことを防止することができる。すなわち、生体組織の処置の際に影響を及ぼす位置を、第1の高周波電極56および第2の高周波電極58間に高周波電流を通電した生体組織に限定することができる。
【0082】
また、第1の実施の形態と同様に、高温の流体が第1および第2の狭持体52,54の外部に抜けようとしても、管路98にその流体が触れることによって、その流体を冷却することができる。このため、狭持部26で狭持した生体組織の周辺の生体組織に影響を与えることを防止することができる。
【0083】
なお、この実施の形態では、流体が円形孔114を通して第1の流体放出溝112aに流れ込むことについて説明したが、第1の実施の形態で説明したように、第1の流体放出溝84a(図3(A)参照)が、電極配設部86および第1の高周波電極56と、縁部82a,82bとの間にさらに設けられていることも好適である。すなわち、第1の狭持体52の本体62には、2つの流体放出溝84a,112aが設けられていることも好適である。この場合、流体放出溝84aは、電極配設部86で他の流体放出溝112aに連通されている。
【0084】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態について図7(A)ないし図7(D)を用いて説明する。この実施の形態は第2の実施の形態の変形例であって、第2の実施の形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
図7(A)ないし図7(C)に示すように、第1の狭持体52の本体62には、熱伝導率が高い管路98が配設された管路配設部96が形成されている。この管路98上には、冷却板146が配設されている。すなわち、第1の狭持体52の本体62には、管路98を覆うように冷却板146が配設されている。この冷却板146には、所定の間隔をおいて、2列に円形状の電極配設部122が形成されている。これら電極配設部122には、障壁部124が配設されている。各障壁部124の内側には、中心に貫通孔126aを有する、出力部材やエネルギ放出部としての第1の高周波電極126が配設されている。
【0085】
各第1の高周波電極126のうち、第2の狭持体54に近接する側の表面は、障壁部124に対して低い位置にある。すなわち、障壁部124と第1の高周波電極126との間には、第1の高周波電極126の表面に対して障壁部124が高い、段差がある。
【0086】
図7(B)および図7(C)に示すように、この本体62には、本体62の軸方向に沿って第1の流体放出溝128aが形成されている。この第1の流体放出溝128aには、第1の高周波電極126の貫通孔126aがそれぞれ連通されている。この第1の流体放出溝128aは、第1の狭持体52の基部64の第2の流体放出溝128bに連続して形成されている。
なお、第2の狭持体54については第1の狭持体52と同様の構造を有するので障壁部や高周波電極について第1の狭持体52で用いた符号を用いて説明を省略する。
【0087】
次に、この実施の形態に係る治療用処置システム10の作用について説明する。
第1の実施の形態で説明したように、処置対象の生体組織を第1の狭持体52と第2の狭持体54との間で狭持する。このとき、障壁部124が生体組織に密着するとともに、生体組織が第1の高周波電極126および第2の高周波電極126に接触する。さらに、第1の狭持体52および第2の狭持体54の外側に設けられた冷却板146に生体組織が密着する。
【0088】
この状態で、フットスイッチやハンドスイッチを操作する。エネルギ源14から第1の高周波電極126および第2の高周波電極126にそれぞれエネルギが供給される。一方、管路98には冷却水が供給される。そして、第1の高周波電極126と第2の高周波電極126との間の生体組織が加熱される。
このように、処置対象の生体組織が加熱されたときには、処置対象の生体組織から周辺の生体組織に向かってサーマルスプレッドが生じる。
【0089】
このとき、第2の実施の形態で説明した作用と同様の作用により、処置対象の生体組織から周囲の組織に向かう熱の広がりが、処置対象の生体組織の周囲の生体組織を冷却することによって抑えられる。
【0090】
ここで、第1および第2の狭持体52,54の外側の管路98にはそれぞれ冷却水が供給されている。このため、熱伝導率が高い管路98の外周面に密着した冷却板146を介して生体組織は冷却されている。したがって、第1の高周波電極126と第2の高周波電極126との間の処置対象の生体組織から広がる熱の影響が、冷却板146に密着した部分で抑制される。すなわち、処置対象の生体組織からの熱の広がりが、処置対象の生体組織の周囲の生体組織を冷却することによって抑えられる。
【0091】
また、処置対象の生体組織が加熱されたとき、第1の高周波電極126と第2の高周波電極126との間の生体組織が加熱され、その生体組織の加熱された部分から蒸気や液体などの流体が発生する。
【0092】
ここで、第1の高周波電極126が第1の狭持体52の本体62の障壁部124の内側に固定された状態で、第2の狭持体54側に露出する第1の高周波電極126の表面は、障壁部124に対して少し低い位置にある。第2の高周波電極126も同様である。そして、流体は障壁部124と生体組織とが密着されていることから、外部に漏れ出すことが防止されている。そうすると、生体組織から発生した流体は第1の高周波電極126の貫通孔126aおよび第2の高周波電極126の貫通孔126aを通して第1の流体放出溝128aに流れ込む。そして、この流体は、第1の狭持体52および第2の狭持体54の基部64,68の第2の流体放出溝128bに向かって流れる。また、仮に、生体組織と障壁部124との間に隙間があった場合、蒸気や液体などの流体は生体組織と障壁部124との間を通して外部に抜ける。この場合、冷却板146に流体が触れる。このため、その流体が冷却される。
【0093】
以上説明したように、この実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
高周波処置具12により、狭持部26で狭持した処置対象の生体組織に高周波電流を与えるときに、それぞれ冷却されている第1の狭持体52の冷却板146と第2の狭持体54の冷却板146とを生体組織に密着させることができる。このため、冷却板146に密着した生体組織を冷却することができる。したがって、処置対象の生体組織から周辺の生体組織に向かってサーマルスプレッドが生じたときの影響を、冷却板146に接触した部分で抑制することができる。そうすると、生体組織の処置の際に高周波通電された処置対象の生体組織から広がる熱の影響を他の周辺組織に及ぼすことを防止することができる。
【0094】
したがって、表面を冷却することが可能な冷却板146を狭持部26に設けることによって、サーマルスプレッドが生じる範囲を第1および第2の狭持体52,54の内部に確実に収めることができる。
【0095】
高周波処置具12により、狭持部26で狭持した処置対象の生体組織に高周波電流を与えるときに、第1の狭持体52の障壁部124と第2の狭持体54の障壁部124とをそれぞれ生体組織に密着させることができる。このため、処置対象の生体組織から発生する流体が、第1の狭持体52の障壁部124および第2の狭持体54の障壁部124に向かって流れても、その流体を第1の高周波電極126の貫通孔126aの内側の第1の流体放出溝128a内に導入することができる。
【0096】
このため、生体組織の処置の際に高周波通電された部位から生じる流体による影響を他の周辺組織に及ぼすことを防止することができる。すなわち、生体組織の処置の際に影響を及ぼす位置を、第1の高周波電極126および第2の高周波電極126間に高周波電流を通電した生体組織に限定することができる。
【0097】
また、第2の実施の形態で説明した管路98と同様に、高温の流体が第1および第2の狭持体52,54の外部に抜けようとしても、冷却板146にその流体が触れることによって、その流体を冷却することができる。このため、狭持部26で狭持した生体組織の周辺の生体組織に影響を与えることを防止することができる。
【0098】
また、この実施の形態に係る高周波処置具12では、第1の狭持体52および第2の狭持体54に、複数の高周波電極126が離散的に配設されているので、処置対象を小さく限定することができる。すなわち、処置対象範囲を各障壁部124内に限定することができ、障壁部124の周囲の部分の生体組織は正常な状態を保つので、処置した生体組織をより早く治癒させることができる。
【0099】
なお、この実施の形態では、障壁部124および第1の高周波電極126を2列に並べた状態の場合について説明したが、これら障壁部124および第1の高周波電極126は、ランダムに並べられていることも好適である。
【0100】
[第4の実施の形態]
次に、第4の実施の形態について図8(A)ないし図8(D)を用いて説明する。この実施の形態は第3の実施の形態の変形例であって、第3の実施の形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
図8(B)および図8(C)に示すように、第1の狭持体52の本体62のうち、第2の狭持体54に近接する側は、平坦に形成されている。図8(A)および図8(C)に示すように、第1の狭持体52の本体62には、離散的に複数の電極配設部(凹部)132が形成されている。電極配設部132は、矩形状に形成されている。ここでは、図8(A)に示すように、第1の狭持体52の本体62には、所定の間隔をおいて、2列に矩形状の電極配設部132が形成されている。
【0101】
図8(A)ないし図8(D)に示すように、これら電極配設部132の内側には、矩形状の障壁部134が配設されている。各障壁部134の内側には、貫通孔136aを有する、出力部材やエネルギ放出部としての第1の高周波電極136が配設されている。貫通孔136aは、例えば障壁部134に隣接する位置に形成されている。この場合、貫通孔136aは、第1の高周波電極136の端部に形成されている。各第1の高周波電極136のうち、第2の狭持体54に近接する側の表面は、障壁部134に対して低い位置にある。すなわち、障壁部134と第1の高周波電極136との間には、第1の高周波電極136の表面に対して障壁部134が高い、段差がある。
【0102】
図8(B)および図8(C)に示すように、各貫通孔136aは、本体62の内部に形成された第1の流体放出溝128aに連通されている。この第1の流体放出溝128aには、第1の高周波電極136の貫通孔136aがそれぞれ連通されている。この第1の流体放出溝128aは、第1の狭持体52の基部64の第2の流体放出溝128bに連続して形成されている。
【0103】
すなわち、この実施の形態は、第3の実施の形態で説明した円形状の電極配設部122を矩形状の電極配設部132にしたものであり、円形状の障壁部124を矩形状の障壁部134にしたものであり、円形状の第1の高周波電極126を矩形状の第1の高周波電極136にしたものであり、他の構造は同じである。このため、この実施の形態については、作用および効果についての説明を省略する。
【0104】
[第5の実施の形態]
次に、第5の実施の形態について図9(A)ないし図9(C)を用いて説明する。この実施の形態は第1ないし第4の実施の形態の変形例であって、第1ないし第4の実施の形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
図9(A)および図9(B)に示すように、第1の狭持体52の本体62には、第2の狭持体54に対して離隔した側に蓋部142が配設されている。この蓋部142には、出力部材やエネルギ放出部として、ピン形状の複数の第1の高周波電極144が固定されている。本体62には、第2の狭持体54に対して近接した側に平坦な冷却板(放熱用部材)146が配設されている。この冷却板146には、複数の円形孔146aがジグザグ状の頂点の位置に形成されている。各円形孔146aには、本体62に一体的に設けられた障壁部148が突出されている。各障壁部148は、中空の円筒状に形成されている。すなわち、各障壁部148は、その中心軸上に貫通孔148aが形成されている。
【0105】
図9(B)に示すように、本体62に蓋部142を配設したとき、ピン形状の第1の高周波電極144は障壁部148の貫通孔148aに配設されている。ここで、第1の高周波電極144のうち、第2の狭持体54に近接する端部は、障壁部148のうちの第2の狭持体54に近接する位置に対して低い位置にある。
【0106】
障壁部148と第1の高周波電極144との間の空間は、流体放出溝(流体通路)152である。この流体放出溝152は、第2の狭持体54に近接する側から、第2の狭持体54に離隔する側まで連通し、第2の狭持体54に離隔する側で開口されている。
【0107】
さらに、冷却板146の裏面側であって、本体62の側面には、管路配設部154が形成されている。この管路配設部154には、冷却用の気体や液体などの流体を流す管路156が配設されている。
なお、第2の狭持体54については第1の狭持体52と同様の構造を有するので障壁部や高周波電極について第1の狭持体52で用いた符号を用いて説明を省略する。
【0108】
次に、この実施の形態に係る治療用処置システム10の作用について説明する。
第1の実施の形態で説明したように、処置対象の生体組織を第1の狭持体52と第2の狭持体54との間で狭持する。このとき、障壁部148が生体組織に密着するとともに、生体組織が第1の高周波電極144および第2の高周波電極144に接触する。さらに、第1の狭持体52および第2の狭持体54の本体62,66に設けられた冷却板146に生体組織が密着する。
【0109】
この状態で、フットスイッチやハンドスイッチを操作する。エネルギ源14から第1の高周波電極144および第2の高周波電極144にそれぞれエネルギが供給される。一方、管路156には冷却水が供給される。
【0110】
第1の高周波電極144は生体組織を介して第2の高周波電極144との間に高周波電流を通電する。このため、第1の高周波電極144と第2の高周波電極144との間の生体組織が加熱される。
このように、処置対象の生体組織が加熱されたときには、処置対象の生体組織から周辺の生体組織に向かってサーマルスプレッドが生じる。
【0111】
ここで、第1および第2の狭持体52,54の外側の管路156にはそれぞれ冷却水が供給されている。このため、熱伝導率が高い管路156の外周面に密着した冷却板146を介して生体組織は冷却されている。したがって、第1の高周波電極144と第2の高周波電極144との間の処置対象の生体組織から広がる熱の影響が、冷却板146に密着した部分で抑制される。すなわち、処置対象の生体組織からの熱の広がりが、処置対象の生体組織の周囲の生体組織を冷却することによって抑えられる。
【0112】
また、処置対象の生体組織が加熱されたとき、その生体組織の加熱された部分から蒸気や液体などの流体が発生する。
ここで、第1の高周波電極144が第1の狭持体52の本体62の障壁部148の内側に配設された状態で、第2の狭持体54側に露出する第1の高周波電極144の第2の狭持体54に近接する端部は、障壁部148に対して少し低い位置にある。第2の高周波電極144も障壁部148に対して同様である。このため、これら第1の狭持体52の障壁部148および第2の狭持体54の障壁部148は、生体組織から生じた流体を貫通孔148aを通して流体放出溝152に入れる。そうすると、生体組織から発生した流体は第1の狭持体52および第2の狭持体54の本体62,66に設けられた蓋部142のそれぞれの流体放出溝152から外部に流れる。
【0113】
また、仮に、生体組織と障壁部148との間に隙間があった場合、流体は生体組織と障壁部148との間を通して外部に抜ける。この場合、冷却板146に流体が触れる。このため、流体が冷却される。
【0114】
以上説明したように、この実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
高周波処置具12により、狭持部26で狭持した処置対象の生体組織に高周波電流を与えるときに、それぞれ冷却されている第1の狭持体52の冷却板146と第2の狭持体54の冷却板146とを生体組織に密着させることができる。このため、冷却板146に密着した生体組織を冷却することができる。したがって、処置対象の生体組織から周辺の生体組織に向かってサーマルスプレッドが生じたときの影響を、冷却板146に接触した部分で抑制することができる。そうすると、生体組織の処置の際に高周波通電された処置対象の生体組織から広がる熱の影響を他の周辺組織に及ぼすことを防止することができる。
【0115】
したがって、表面を冷却することが可能な冷却板146を狭持部26に設けることによって、サーマルスプレッドが生じる範囲を第1および第2の狭持体52,54の内部に確実に収めることができる。
【0116】
また、高周波処置具12により、狭持部26で狭持した処置対象の生体組織に高周波電流を与えるときに、第1の狭持体52の障壁部148と第2の狭持体54の障壁部148とをそれぞれ生体組織に密着させることができる。このため、処置対象の生体組織から発生する流体が、第1の狭持体52の障壁部148および第2の狭持体54の障壁部148に向かって流れても、その流体を第1の高周波電極144と障壁部148との間の貫通孔148aを通して第1の流体放出溝152内に導入することができる。
【0117】
このため、生体組織の処置の際に高周波通電された部位から生じる流体による影響を他の周辺組織に及ぼすことを防止することができる。すなわち、生体組織の処置の際に影響を及ぼす位置を、第1の高周波電極144および第2の高周波電極144間に高周波電流を通電した生体組織に限定することができる。
【0118】
また、第1の実施の形態と同様に、高温の流体が第1および第2の狭持体52,54の外部に抜けようとしても、冷却板146にその流体が触れることによって、その流体を冷却することができる。このため、狭持部26で狭持した生体組織の周辺の生体組織に影響を与えることを防止することができる。
【0119】
また、この実施の形態に係る高周波処置具12では、第1の狭持体52および第2の狭持体54に、複数の高周波電極144が離散的に配設されているので、処置対象を限定することができる。
【0120】
したがって、生体組織の処置の際に高周波通電された部位から生じる流体による影響を他の周辺組織に及ぼすことを防止することができる。すなわち、処置範囲を各障壁部148内に限定することができ、障壁部148の周囲の部分の生体組織は正常な状態を保つので、より早い治癒に貢献させることができる。
【0121】
なお、図9(C)に示すように、障壁部148は、本体62の一部ではなく、冷却板146の一部として形成されていることも好適である。
【0122】
[第6の実施の形態]
次に、第6の実施の形態について図10(A)および図10(B)を用いて説明する。この実施の形態は第1ないし第5の実施の形態の変形例であって、第1ないし第5の実施の形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
図10(A)に示すように、第1の狭持体52の本体62には、気体や液体などの流体を流入させる流入用管路162aの一端が固定されている。第1の狭持体52の本体62には、気体や液体などの流体を流出させる流出用管路162bの一端が固定されている。本体62には、第2の狭持体54に対して近接した側に柔軟なシート状部材(放熱用部材)164が配設されている。このシート状部材164は、例えばシリコーン材などにより形成されている。このシート状部材164の内側と本体62との間の空間には、冷却用の流体(例えば冷却水)が充満されるので、これらの間は水密に配設されている。
【0123】
第1の高周波電極144は、本体62の長手方向に沿って、所定間隔ごとに配設されている。この第1の高周波電極144のうち、第2の狭持体54に近接する端部は、障壁部148のうちの第2の狭持体54に近接する位置に対して低い位置にある。
【0124】
なお、第2の狭持体54については第1の狭持体52と同様の構造を有するので障壁部や高周波電極について第1の狭持体52で用いた符号を用いて説明を省略する。
【0125】
次に、この実施の形態に係る治療用処置システム10の作用について説明する。
第1の実施の形態で説明したように、処置対象の生体組織を第1の狭持体52と第2の狭持体54との間で狭持する。このとき、障壁部148が生体組織に密着するとともに、生体組織が第1の高周波電極144および第2の高周波電極144に接触する。さらに、第1の狭持体52および第2の狭持体54の本体62,66に設けられたシート状部材164に生体組織が密着する。シート状部材164は柔軟な材料で形成されているので、生体組織の形状に合わせて変形した状態で生体組織に密着する。
【0126】
この状態で、フットスイッチやハンドスイッチを操作する。エネルギ源14から第1の高周波電極144および第2の高周波電極144にそれぞれエネルギが供給される。一方、管路162aを通して冷却水が供給される。このため、本体62とシート状部材164との間には冷却水が充満する。
【0127】
第1の高周波電極144は生体組織を介して第2の高周波電極144との間に高周波電流を通電する。このため、第1の高周波電極144と第2の高周波電極144との間の生体組織が加熱される。
このように、処置対象の生体組織が加熱されたときには、処置対象の生体組織から周辺の生体組織に向かってサーマルスプレッドが生じる。
【0128】
ここで、第1および第2の狭持体52,54の外側の管路162aからはそれぞれ冷却水が供給され、管路162bから回収されている。このため、管路162aから本体62とシート状部材164との間に冷却水が充満している。したがって、シート状部材164の外周面に密着した生体組織は冷却されている。そうすると、第1の高周波電極144と第2の高周波電極144との間の処置対象の生体組織から広がる熱の影響が、シート状部材164に密着した部分で抑制される。すなわち、処置対象の生体組織からの熱の広がりが、処置対象の生体組織の周囲の生体組織を冷却することによって抑えられる。
【0129】
また、処置対象の生体組織が加熱されたとき、その生体組織の加熱された部分から蒸気や液体などの流体が発生する。
【0130】
ここで、第1の高周波電極144が第1の狭持体52の本体62の障壁部148の内側に配設された状態で、第2の狭持体54側に露出する第1の高周波電極144の第2の狭持体54に近接する端部は、障壁部148に対して少し低い位置にある。第2の高周波電極144も障壁部148に対して同様である。このため、流体は貫通孔148aを通して流体放出溝152から外部に流れる。
【0131】
また、仮に、生体組織と障壁部148との間に隙間があった場合、流体は生体組織と障壁部148との間を通して外部に抜ける。この場合、シート状部材164に流体が触れる。このため、流体が冷却される。
【0132】
以上説明したように、この実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
高周波処置具12により、狭持部26で狭持した処置対象の生体組織に高周波電流を与えるときに、それぞれ冷却されている第1の狭持体52のシート状部材164と第2の狭持体54のシート状部材164とを生体組織に密着させることができる。このため、シート状部材164に密着した生体組織を冷却することができる。したがって、処置対象の生体組織から周辺の生体組織に向かってサーマルスプレッドが生じたときの影響を、シート状部材164に接触した部分で抑制することができる。そうすると、生体組織の処置の際に高周波通電された処置対象の生体組織から広がる熱の影響を他の周辺組織に及ぼすことを防止することができる。
【0133】
したがって、表面を冷却することが可能なシート状部材164を狭持部26に設けることによって、サーマルスプレッドが生じる範囲を第1および第2の狭持体52,54の内部に確実に収めることができる。さらに、シート状部材164は柔軟な材料で形成されているので、生体組織に対する密着性状を向上させることができる。このため、生体組織をより効率的に冷却することができる。
【0134】
また、高周波処置具12により、狭持部26で狭持した処置対象の生体組織に高周波電流を与えるときに、第1の狭持体52の障壁部148と第2の狭持体54の障壁部148とをそれぞれ生体組織に密着させることができる。このため、処置対象の生体組織から発生する流体を第1の高周波電極144と障壁部148との間の貫通孔148aを通して第1の流体放出溝152内に導入することができる。
【0135】
このため、生体組織の処置の際に高周波通電された部位から生じる流体による影響を他の周辺組織に及ぼすことを防止することができる。すなわち、生体組織の処置の際に影響を及ぼす位置を、第1の高周波電極144および第2の高周波電極144間に高周波電流を通電した生体組織に限定することができる。
【0136】
また、第1の実施の形態と同様に、高温の流体が第1および第2の狭持体52,54の外部に抜けようとしても、シート状部材164にその流体が触れることによって、その流体を冷却することができる。このため、狭持部26で狭持した生体組織の周辺の生体組織に影響を与えることを防止することができる。
【0137】
[第7の実施の形態]
次に、第7の実施の形態について図11(A)ないし図11(C)を用いて説明する。この実施の形態は第1の実施の形態の変形例であって、第1の実施の形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
図11(A)ないし図11(C)に示すように、第1の狭持体52の本体62には、凸部166aを有する第1の高周波電極166が配設されている。図11(B)および図11(C)に示すように、第2の狭持体54の本体66には、凹部168aを有する第2の高周波電極168が配設されている。
【0138】
第1の高周波電極166の凸部166aおよび第2の高周波電極168の凹部168aには、それぞれ流体通孔(流体通路)166b,168bが形成されている。これら流体通孔166b,168bは、第1の流体放出溝128aに連通されている。
【0139】
図11(C)に示すように、第1の狭持体52と第2の狭持体54とを閉じた状態で、第1の高周波電極166の平面の部分と、絶縁性の弾性部材170との間には、隙間Sが形成されている。また、第1の高周波電極166の凸部166aと第2の高周波電極168の凹部168aとの間には、隙間Sが形成されている。
【0140】
第1の狭持体52の本体62および基部64には、管路配設部96が形成されている。この管路配設部96には、熱伝導性が高い管路98が配設されている。この管路98には、冷却板146が接触した状態に配設されている。この冷却板146は、第1の狭持体52の本体62および基部64の、第2の狭持体54に近接する側の表面に配設されている。さらに、冷却板146には、第1の高周波電極166の凸部166aが配設される円形孔166cが形成されている。
【0141】
第2の狭持体54の本体66および基部68にも、管路配設部96が形成されている。この管路配設部96には、管路98が配設されている。この管路98には、冷却板146が接触した状態に配設されている。この冷却板は、第2の狭持体54の本体66および基部68の、第1の狭持体52に近接する側の表面に配設されている。さらに、冷却板146には、第2の高周波電極168の凹部168aの底部の電極を露出させる円形孔168cが形成されている。なお、冷却板146は、第2の高周波電極168の表面だけでなく、凹部168aの内周面にも配設されている。
【0142】
次に、この実施の形態に係る治療用処置システム10の作用について説明する。
第1の実施の形態で説明したように、処置対象の生体組織を第1の狭持体52と第2の狭持体54との間で狭持する。このとき、第1の狭持体52の本体62に配設された第1の高周波電極166の凸部166aが生体組織に密着するとともに、第2の狭持体54の本体66に配設された第2の高周波電極168の凹部168aの底部に接触する。すなわち、第1の高周波電極166の凸部166aと第2の高周波電極168の凹部168aとの間の隙間Sに生体組織が配設される。ここで、第1および第2の高周波電極166,168の表面に配設された冷却板146によって、第1の狭持体52と第2の狭持体54との間の生体組織は、それぞれに対して密着する。
【0143】
この状態で、フットスイッチやハンドスイッチを操作する。エネルギ源14から第1の高周波電極166および第2の高周波電極168にそれぞれエネルギが供給される。
【0144】
第1の高周波電極166は生体組織を介して第2の高周波電極168との間に高周波電流を通電する。このため、第1の高周波電極166と第2の高周波電極168との間の生体組織が加熱される。
このように、処置対象の生体組織が加熱されたときには、処置対象の生体組織から周辺の生体組織に向かってサーマルスプレッドが生じる。
【0145】
ここで、第1および第2の狭持体52,54の外側の管路98にはそれぞれ冷却水が供給されている。このため、熱伝導率が高い管路98の外周面に密着した冷却板146を介して生体組織は冷却されている。したがって、第1の高周波電極166と第2の高周波電極168との間の処置対象の生体組織から広がる熱の影響が、冷却板146に密着した部分で抑制される。すなわち、処置対象の生体組織からの熱の広がりが、処置対象の生体組織の周囲の生体組織を冷却することによって抑えられる。
【0146】
また、処置対象の生体組織が加熱されたとき、その生体組織の加熱された部分から蒸気や液体などの流体が発生する。ここで、第1の高周波電極166と第2の高周波電極168との間に配設された生体組織はそれぞれの冷却板146に密着している。このため、第1の狭持体52および第2の狭持体54の冷却板146は、生体組織から生じた流体が外部に漏れ出すことを防止する障壁部(ダム)の役割を果たす。
【0147】
そうすると、生体組織から発生した流体は第1の狭持体52の第1の高周波電極166の凸部166aの流体通孔166bに流れ込み、第2の狭持体54の第2の高周波電極168の凹部168aの流体通孔168bに流れ込む。そして、これら流体は、第1の流体放出溝128aを介して第1の狭持体52の基部64、および、第2の狭持体54の基部68の、第2の流体放出溝128bに向かってそれぞれ流れる。
【0148】
また、仮に、生体組織と冷却板146との間に隙間があった場合、蒸気や液体などの流体は生体組織と冷却板146との間を通して外部に抜ける。この場合、冷却板146に流体が触れる。このため、その流体が冷却される。
【0149】
以上説明したように、この実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
高周波処置具12により、狭持部26で狭持した処置対象の生体組織に高周波電流を与えるときに、それぞれ冷却されている第1の狭持体52の冷却板146と第2の狭持体54の冷却板146とを生体組織に密着させることができる。このため、冷却板146に密着した生体組織を冷却することができる。したがって、処置対象の生体組織から周辺の生体組織に向かってサーマルスプレッドが生じたときの影響を、冷却板146に接触した部分で抑制することができる。そうすると、生体組織の処置の際に高周波通電された処置対象の生体組織から広がる熱の影響を他の周辺組織に及ぼすことを防止することができる。
【0150】
したがって、表面を冷却することが可能な冷却板146を狭持部26に設けることによって、サーマルスプレッドが生じる範囲を第1および第2の狭持体52,54の内部に確実に収めることができる。
【0151】
また、高周波処置具12により、狭持部26で狭持した処置対象の生体組織に高周波電流を与えるときに、第1の狭持体52の冷却板146と第2の狭持体54の冷却板146とをそれぞれ生体組織に密着させることができる。このため、処置対象の生体組織から発生する流体が、第1の狭持体52および第2の狭持体54の冷却板146に向かって流れても、第2の狭持体54の本体66の凹部166bに配設された冷却板146が障壁部として作用することによって、流体を第1の高周波電極166の貫通孔166aを通して第1の流体放出溝128a内に、および/もしくは、第2の高周波電極168の貫通孔168aを通して第1の流体放出溝128a内に導入することができる。
【0152】
このため、生体組織の処置の際に高周波通電された部位から生じる流体による影響を他の周辺組織に及ぼすことを防止することができる。すなわち、生体組織の処置の際に影響を及ぼす位置を、第1の高周波電極166および第2の高周波電極168間に高周波電流を通電した生体組織に限定することができる。
【0153】
また、高温の流体が第1および第2の狭持体52,54の外部に抜けようとしても、冷却板146にその流体が触れることによって、その流体を冷却することができる。このため、狭持部26で狭持した生体組織の周辺の生体組織に影響を与えることを防止することができる。
【0154】
[第8の実施の形態]
次に、第8の実施の形態について図12ないし図15(D)を用いて説明する。この実施の形態は第1ないし第7の実施の形態の変形例であって、第1ないし第7の実施の形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
図12に示すように、この実施の形態に係る高周波処置具(治療用処置具)12bのハンドル22には、狭持部開閉ノブ32に並設された状態でさらにカッタ駆動ノブ34が配設されている。
【0155】
図13(A)および図13(B)に示すように、シャフト24の筒体42の内部には、駆動ロッド172がその軸方向に沿って移動可能に配設されている。この駆動ロッド172の先端には、薄板状のカッタ174が配設されている。このため、カッタ駆動ノブ34を操作すると、駆動ロッド172を介してカッタ(治療補助具)174が移動する。
【0156】
図13(A)および図13(B)に示すように、カッタ174は、先端に刃174aが形成され、基端に駆動ロッド172の先端が固定されている。このカッタ174の先端と基端との間には、長溝174bが形成されている。この長溝174bの一端、他端および一端と他端の間には、移動規制ピン176を係止する係止部174cが形成されている。この長溝174bには、シャフト24の軸方向に対して直交する方向に延びた移動規制ピン176がシャフト24の筒体42に固定されている。このため、カッタ174の長溝174bが移動規制ピン176に沿って移動する。そうすると、カッタ174は真っ直ぐに移動する。このとき、カッタ174は、第1の狭持体52および第2の狭持体54のカッタ案内溝(流体放出溝)182a,182b,184a,184bに配設される。
【0157】
図14(A)ないし図14(C)に示すように、第1の狭持体52の本体62の縁部82aの内側には、第1の実施の形態で説明した第1の流体放出溝84a(図3(A)ないし図3(C)参照)が除去され、第1の高周波電極56が配設される台座としての電極配設部86が隣接した状態に形成されている。
【0158】
第1の狭持体52の本体62の第1の高周波電極56および電極配設部86には、カッタ174を通す第1のカッタ案内溝182aが形成されている。第1の狭持体52の基部64には、第1のカッタ案内溝182aに連続して形成された第2のカッタ案内溝182bが形成されている。この第2のカッタ案内溝182bは、シャフト24の軸方向に沿って形成されている。
【0159】
このため、カッタ174は、カッタ案内溝182a,182bに沿って第1の狭持体52の内部を移動可能である。同様に、カッタ174は、カッタ案内溝184a,184bに沿って第2の狭持体54の内部を移動可能である。
他の構造は第1の実施の形態で説明した第1の狭持体52と同様であるので、説明を省略する。
【0160】
次に、この実施の形態に係る治療用処置システム10の作用について説明する。
第1の実施の形態で説明したように、処置対象の生体組織を第1の狭持体52と第2の狭持体54との間で狭持する。このとき、縁部82aの接触面が生体組織に密着するとともに、生体組織が第1の高周波電極56および第2の高周波電極58に接触する。さらに、第1の狭持体52および第2の狭持体54の外側に設けられた管路98に生体組織が密着する。
【0161】
この状態で、フットスイッチやハンドスイッチを操作する。エネルギ源14から第1の高周波電極56および第2の高周波電極58にそれぞれエネルギが供給される。一方、管路98には冷却水が供給される。
【0162】
サーマルスプレッドを抑止するための作用は第1の実施の形態で説明した作用と同様である。そこで、ここでは、蒸気や液体などの流体が発生するときの作用について説明する。
このように、処置対象の生体組織が加熱されたときには、その生体組織の加熱された部分から蒸気や液体などの流体が発生する。
【0163】
ここで、第1の実施の形態で説明した第1の流体放出溝84aの代わりに、処置対象の生体組織から発生した流体は第1の狭持体52および第2の狭持体54の本体62,66のそれぞれの第1のカッタ案内溝182a,184aである流体放出溝に流れ込む。そして、この流体は、第1の狭持体52および第2の狭持体54の基部64,68の第2のカッタ案内溝182b,184bに向かって流れる。
【0164】
流体は第1の狭持体52および第2の狭持体54の基部64,68の第2のカッタ案内溝182b,184bからさらに筒体42の内部に流れ込む。そして、筒体42の流体放出口48aおよびシース44の流体放出口48bを通してシャフト24の外側に流体を導出する。
【0165】
そして、ハンドル22のカッタ駆動ノブ34を操作すると、カッタ174が第1の狭持体52および第2の狭持体54の先端部に向かって移動する。カッタ174の先端に刃174aがあるので、処置された生体組織を切断する。
【0166】
以上説明したように、この実施の形態によれば、第1の実施の形態で説明した効果に加えて、以下の効果が得られる。
高周波処置具12により、狭持部26で狭持した生体組織に高周波電流を与えたときに発生する流体を第1のカッタ案内溝(流体通路)182a,184a内に導入することができる。すなわち、カッタ案内溝182a,182b,184a,184bを流体放出溝として用いることができる。
【0167】
なお、図15(A)ないし図15(D)に示すように第1および第2の狭持体52,54の構造は、種々の変形例が許容される。これらは、第1の流体放出溝84aを除去し、カッタ案内溝182aを設けたこと以外、第1の実施の形態の図5(A)ないし図5(D)に対応するものである。
図15(A)に示す状態は、管路配設部96に配設される管路98の横断面が略矩形状に形成された状態を示す。そして、管路98の側面が第1の狭持体52の縁部82aの接触面と略面一に配設されている。このため、生体組織と管路98との接触面積をより広くすることができる。
【0168】
図15(B)に示す状態は、円筒状の管路98が縁部82aの接触面の高さよりも低く形成された状態を示す。
図15(C)に示す状態は、第1の高周波電極56と管路98とが接触するので円筒状の管路98が絶縁性を有し、かつ、この管路98が障壁部として作用する状態を示す。このため、縁部82a,82bのスペースを設ける必要がないので、第1の狭持体52や第2の狭持体54の幅を小さくすることができる。または、第1および第2の高周波電極56,58の幅を大きくすることができる。
【0169】
図15(D)に示す状態は、第1の狭持体52の本体のうち、第2の狭持体54に離隔する側がヒートシンク108に覆われた状態を示す。このヒートシンク108は、高熱伝導率の例えば金属材で形成されている。このヒートシンク108の外周面には、外気等との接触面積を増やすため、符号108aで示す、複数の突起やフィンが形成されている。なお、縁部82a,82bや管路98は第1の狭持体52の第1の流体放出溝84aの外側から除去されている。また、このヒートシンク108の端部は、障壁部(縁部の接触面)としての役割も果たす。
【0170】
また、カッタ174およびカッタ案内溝182aは、上述した第2ないし第6の実施の形態で説明した第1の狭持体52および第2の狭持体54にも適宜に用いることができる。
【0171】
[第9の実施の形態]
次に、第9の実施の形態について図16(A)ないし図16(C)を用いて説明する。この実施の形態は、第1の実施の形態の変形例であるが、ここでは、高周波エネルギではなく、レーザエネルギを用いて生体組織を処置する場合について説明する。このため、図示しないが、エネルギ源14(図1参照)からは、エネルギ処置具(レーザ処置具)12の後述するファイバ198にレーザ光を入射する。
図16(A)ないし図16(C)に示すように、第1の狭持体52の本体62からは電極配設部86が除去されているとともに、第1の高周波電極56も除去されている。電極配設部86の代わりには、伝熱板配設部192が配設されている。この伝熱板配設部192は、出力部材やエネルギ放出部としての伝熱板194が配設される台座として形成されている。伝熱板配設部192は、本体62の縁部82aに対して凹まされた状態に形成されている。
【0172】
伝熱板194は、第2の狭持体54に対向する側が平面に形成された略板状に形成され、伝熱板配設部192に固定されている。
この伝熱板194には、凹溝194aが形成されている。この伝熱板194の凹溝194aには、出力部材やエネルギ放出部としてのディヒューザ(diffuser)196が配設されている。このディヒューザ196の内部には、ファイバ198が挿通されている。このため、ファイバ198にレーザ光を入射すると、ディヒューザ196から外側にレーザ光が拡散する。このレーザ光によるエネルギは、伝熱板に照射されることにより熱エネルギに変換されて伝熱される。
【0173】
さらに、第1および第2の狭持体52,54には、管路98が配設される管路配設部96が形成されている。そして、この管路配設部96には、管路98が配設されている。この管路98は、障壁部としても用いられる。
【0174】
次に、この実施の形態に係る治療用処置システム10の作用について説明する。
第1の実施の形態で説明したように、処置対象の生体組織を第1の狭持体52と第2の狭持体54との間で狭持する。このとき、処置対象の生体組織は伝熱板194およびディヒューザ196に接触する。さらに、第1の狭持体52および第2の狭持体54の外側に設けられた管路98に生体組織が密着する。
【0175】
この状態で、フットスイッチやハンドスイッチを操作する。この状態で、フットスイッチやハンドスイッチを操作する。エネルギ源14からファイバ198にそれぞれレーザ光が入射される。一方、管路98には冷却水が供給される。
【0176】
このため、ディヒューザ196からレーザ光が拡散され、レーザ光によるエネルギが熱エネルギに変換されて伝熱板194に熱が伝熱される。そして、第1の狭持体52および第2の狭持体54の伝熱板194間の生体組織が加熱される。
このように、処置対象の生体組織が加熱されたときには、処置対象の生体組織から周辺の生体組織に向かってサーマルスプレッドが生じる。
【0177】
ここで、第1および第2の狭持体52,54の外側の管路98にはそれぞれ冷却水が供給されている。このため、熱伝導率が高い管路98の外周面に密着した生体組織は冷却されている。したがって、第1の狭持体52の伝熱板194と第2の狭持体54の伝熱板194との間の処置対象の生体組織から広がる熱の影響が、管路98に密着した部分で抑制される。すなわち、処置対象の生体組織から周囲の組織に向かう熱の広がりが、処置対象の生体組織の周囲の生体組織を冷却することによって抑えられる。
【0178】
また、処置対象の生体組織が加熱されたとき、その生体組織の加熱された部分から蒸気や液体などの流体が発生する。
【0179】
そうすると、生体組織から発生した流体は第1の狭持体52および第2の狭持体54の本体62,66のそれぞれの第1の流体放出溝84aに流れ込む。そして、この流体は、第1の狭持体52および第2の狭持体54の基部64,68の第2の流体放出溝84bに向かって流れる。
【0180】
また、仮に、生体組織と管路(障壁部)98との間に隙間があった場合、流体は生体組織と管路98との間を通して外部に抜ける。この場合、管路98に流体が触れる。このため、流体が冷却される。
【0181】
以上説明したように、この実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
レーザ光を用いたエネルギ処置具(レーザ処置具)12により、狭持部26で狭持した処置対象の生体組織に熱を与えるときに、それぞれ冷却用の流体が流されている第1の狭持体52の管路98と第2の狭持体54の管路98とを生体組織に密着させることができる。このため、処置対象の生体組織から周辺の組織にサーマルスプレッドが生じるときに、管路98に密着した生体組織を冷却することができる。したがって、処置対象の生体組織から周辺の生体組織に向かって広がる熱の影響を、管路98に接触した部分で抑制することができる。そうすると、生体組織の処置の際に熱が加えられた処置対象の生体組織から広がる熱の影響を他の周辺組織に及ぼすことを防止することができる。
【0182】
したがって、冷却用の流体を流すことが可能な管路98を狭持部26の外側に設けることによって、サーマルスプレッドが生じる範囲を管路98の内側の第1および第2の狭持体52,54の内部に確実に収めることができる。
【0183】
また、レーザ光を用いたエネルギ処置具(レーザ処置具)12により、狭持部26で狭持した処置対象の生体組織に熱を与えるときに、第1の狭持体52の管路98と第2の狭持体54の管路98とをそれぞれ生体組織に密着させることができる。このため、処置対象の生体組織から発生する流体が、第1の狭持体52の管路98および第2の狭持体54の管路98に向かって流れても、管路98と生体組織との間は密着されているので、その流体を第1の流体放出溝84a内に導入することができる。すなわち、伝熱板194を発熱させるエネルギ処置具により、狭持部26で狭持した生体組織に熱エネルギを与えたときに発生する流体を第1の狭持体52および第2の狭持体54の管路98同士の内側の側面に当てて第1の流体放出溝84a内に導入することができる。
【0184】
このため、生体組織の処置の際に熱が加えられた部位から生じる流体による影響を他の周辺組織に及ぼすことを防止することができる。すなわち、生体組織の処置の際に影響を及ぼす位置を、第1および第2の狭持体52,54間に狭持された生体組織に限定することができる。
【0185】
また、第1の実施の形態と同様に、高温の流体が第1および第2の狭持体52,54の外部に抜けようとしても、管路98にその流体が触れることによって、その流体を冷却することができる。このため、狭持部26で狭持した生体組織の周辺の生体組織に影響を与えることを防止することができる。
【0186】
なお、この実施の形態では、レーザ光エネルギを用いて生体組織を処置することについて説明したが、超音波エネルギを用いて処置を行うことも可能である。この場合、図16(A)ないし図16(C)に示すファイバ198の代わりに超音波プローブ(図示せず)を用い、伝熱板194の代わりに振動板(図示せず)を用いることによって、超音波処置を同様に行うことができる。さらに、この超音波プローブには、高周波電流を入力することも可能である。このため、この場合、超音波処置と高周波処置とを切換可能である。
【0187】
ところで、第1ないし第9の実施の形態では、第1の狭持体52と第2の狭持体54とが同一のものを用いるとして説明したが、異なっていることも好適である。例えば、他の実施の形態で説明した構造を適宜に組み合わせることも好適である。
また、処置具の形状、狭持部の形状、高周波電極、発熱素子、ディヒューザ等の形状や配置は、これら実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0188】
[第10の実施の形態]
次に、第10の実施の形態について図17ないし図20を用いて説明する。ここでは、エネルギ処置具として、例えば腹壁を通して、もしくは腹壁外で処置を行うための、サーキュラタイプのバイポーラ型高周波処置具(治療用処置具)12cを例にして説明する。
図17に示すように、高周波処置具12cは、ハンドル202と、シャフト204と、開閉可能な狭持部206とを備えている。ハンドル202には、ケーブル28を介してエネルギ源14が接続されている。
【0189】
ハンドル202には、狭持部開閉ノブ212と、カッタ駆動レバー214が配設されている。狭持部開閉ノブ212は、ハンドル202に対して回転可能である。この狭持部開閉ノブ212をハンドル202に対して例えば右回りに回転させると、狭持部206の後述する離脱側狭持部224が本体側狭持部222に対して離隔(図18(A)参照)し、左回りに回転させると、離脱側狭持部224が本体側狭持部222に対して近接する(図18(B)参照)。
【0190】
シャフト204は、円筒状に形成されている。このシャフト204は、生体組織への挿入性を考慮して、適度に湾曲されている。もちろん、シャフト204が真っ直ぐに形成されていることも好適である。
【0191】
シャフト204の先端には、狭持部206が配設されている。図18(A)ないし図19(B)に示すように、狭持部206は、シャフト204の先端に形成された本体側狭持部(第1の狭持体)222と、この本体側狭持部222に着脱可能な離脱側狭持部(第2の狭持体)224とを備えている。
【0192】
本体側狭持部222は、円筒体232と、フレーム234と、通電用パイプ236とを備えている。これら円筒体232およびフレーム234は、絶縁性を有する。円筒体232は、シャフト204の先端に連結されている。フレーム234は、円筒体232に対して固定された状態で配設されている。
【0193】
フレーム234は、その中心軸が開口されている。このフレーム234の開口された中心軸には、通電用パイプ236がフレーム234の中心軸に沿って所定の範囲内で移動可能に配設されている。この通電用パイプ236は、狭持部開閉ノブ212を回転させると、図18(A)および図18(B)に示すように、例えばボールネジ(図示せず)の作用により所定の範囲内を移動可能である。この通電用パイプ236には、後述する通電用シャフト262のコネクト部262aが係脱可能なように、径方向内方に突出する突起236aが形成されている。
【0194】
図18(A)および図18(B)に示すように、円筒体232とフレーム234との間には、空間が形成されている。円筒体232とフレーム234との間の空間には、円筒状のカッタ242が配設されている。このカッタ242の基端部は、シャフト204の内側に配設されたカッタ用プッシャ244の先端部に接続されている。カッタ242は、カッタ用プッシャ244の外周面に固定されている。図示しないが、このカッタ用プッシャ244の基端部はハンドル202のカッタ駆動レバー214に接続されている。このため、ハンドル202のカッタ駆動レバー214を操作すると、カッタ用プッシャ244を介してカッタ242が移動する。
【0195】
このカッタ用プッシャ244とフレーム234との間には、第1の流体通気路(流体通路)246aが形成されている。そして、シャフト204またはハンドル202には、第1の流体通気路246aを通した流体を外部に排出する流体放出口(図示せず)が形成されている。
【0196】
図18(A),図18(B),図19(B)および図20に示すように、円筒体232の先端には、円環状の電極配設部252が形成されている。この電極配設部252には、出力部材やエネルギ放出部としての第1の高周波電極254が配設されている。この第1の高周波電極254には、第1の通電ライン254aの先端が固定されている。第1の通電ライン254aは、本体側狭持部222、シャフト204、ハンドル202を介してケーブル28に接続されている。
【0197】
この第1の高周波電極254の外側には、円環状に蒸気放出溝256が形成されている。この流体放出溝256は、第1の流体通気路246aに連通されている。この流体放出溝256の外側には、第1の高周波電極254の表面よりも高い位置に縁部258の接触面が形成されている。すなわち、本体側狭持部222の縁部258の接触面は、第1の高周波電極254の表面よりも離脱側狭持部224の後述するヘッド部264に近接されている。
【0198】
一方、離脱側狭持部224は、コネクト部262aを有する通電用シャフト262と、ヘッド部264とを備えている。通電用シャフト262は、断面が円形状で、一端が先細に形成され、他端はヘッド部264に固定されている。コネクト部262aは、通電用パイプ236の突起236aに係合可能な凹溝状に形成されている。通電用シャフト262のコネクト部262a以外の部分の外表面は、コーティング等により絶縁されている。
【0199】
ヘッド部264には、円環状にカッタ受部270が配設されている。このカッタ受部270の外側には、円環状の電極配設部272が形成されている。この電極配設部272には、出力部材やエネルギ放出部としての第2の高周波電極274が配設されている。この第2の高周波電極274には、第2の通電ライン274aの一端が固定されている。第2の通電ライン274aの他端は通電用シャフト262に電気的に接続されている。この第2の高周波電極274の外側には、円環状に流体放出溝276が形成されている。この流体放出溝276の外側には、第2の高周波電極274よりも高い位置に縁部278の接触面が形成されている。すなわち、離脱側狭持部224の縁部278の接触面は、第2の高周波電極274の表面よりも本体側狭持部222に近接されている。
【0200】
さらに、流体放出溝276は、ヘッド部264および通電用シャフト262の流体放出路280に連通されている。この流体放出路280は、通電用パイプ236の第2の流体通気路(流体通路)246bに連通している。シャフト204またはハンドル202には、第2の流体通気路246bを通した流体を外部に排出する流体放出口(図示せず)が形成されている。
【0201】
なお、通電用パイプ236は、シャフト204およびハンドル202を介してケーブル28に接続されている。このため、通電用パイプ236の突起236aに離脱側狭持部224の通電用シャフト262のコネクト部262aが係合されると、第2の高周波電極274と通電用パイプ236とが電気的に接続される。
【0202】
図19(A)に示すように、シャフト204および狭持部206の外側には、第1の管路292が形成されている。この第1の管路292は、本体側狭持部222の先端縁部の外周面を1周した状態で、本体側狭持部222からシャフト204の基端側に延出されている。なお、第1の管路292のうち、符号292aで示す側が流体供給用であり、符号292bで示す側が流体回収用である。このため、この第1の管路292には、気体や冷却水などの流体を供給し、回収することができる。すなわち、第1の管路292に冷却水などの流体を循環させることができる。
【0203】
図18(A),図18(B)および図19(B)に示すように、通電用パイプ236の内側には、冷却水などの流体を供給する流体供給用パイプ294aが配設されている。流体供給用パイプ294aに隣接して、流体回収用パイプ294bが並設されている。
【0204】
通電用シャフト262には、流体供給用パイプ294aおよび流体回収用パイプ294bに接続される第2の管路296が形成されている。第2の管路296の2つの端部は、通電用シャフト262の下端から突出されている。なお、第2の管路296のうち、符号296aで示す側が流体供給用であり、符号296bで示す側が流体回収用である。第2の管路296は、通電用シャフト262の下端からヘッド部264の頂点まで達し、その頂点からヘッド部264の外縁部を1周した状態で再び通電用シャフト262の内部を通して通電用シャフト262の下端に挿通されている。
【0205】
そして、第2の管路296の流体供給用の端部が流体供給用パイプ294aに接続され、第2の管路296の流体回収用の端部が流体回収用パイプに接続されている。このため、流体供給用パイプ294aおよび流体回収用パイプ294bに第2の管路296が接続された状態で、冷却水などを流体供給用パイプ294aに流すと、第2の管路296を通して流体回収用パイプ294bから回収される。すなわち、第2の管路296に冷却水などの流体を循環させることができる。
【0206】
次に、この実施の形態に係る治療用処置システム10の作用について説明する。
図18(B)に示すように、本体側狭持部222を離脱側狭持部224に対して閉じた状態で例えば腹壁を通して腹腔内に高周波処置具12cの狭持部206およびシャフト204を挿入する。高周波処置具12cの本体側狭持部222および離脱側狭持部224間を処置したい生体組織に対して対峙させる。
【0207】
本体側狭持部222および離脱側狭持部224で処置したい生体組織を狭持するため、ハンドル202の狭持部開閉ノブ212を操作する。このとき、ハンドル202に対して例えば右回りに回動させる。すると、図18(A)に示すように、通電用パイプ236をシャフト204のフレーム234に対して先端部側に移動させる。このため、本体側狭持部222と離脱側狭持部224との間が開き、離脱側狭持部224を本体側狭持部222から離脱させることができる。
【0208】
そして、処置したい生体組織を本体側狭持部222の第1の高周波電極254と離脱側狭持部224の第2の高周波電極274との間に配置する。離脱側狭持部224の通電用シャフト262を本体側狭持部222の通電用パイプ236に挿入する。この状態で、ハンドル202の狭持部開閉ノブ212を例えば左回りに回動させる。このため、離脱側狭持部224が本体側狭持部222に対して閉じる。このようにして、処置対象の生体組織を本体側狭持部222と離脱側狭持部224との間で狭持する。
【0209】
このとき、処置対象の生体組織は第1の高周波電極254と第2の高周波電極274とに接触する。処置対象の生体組織の周辺組織は、本体側狭持部222および離脱側狭持部224の縁部258,278、第1および第2の管路292,296に密着する。
【0210】
この状態で、フットスイッチやハンドスイッチを操作する。エネルギ源14からケーブル28を介して第1の高周波電極254および第2の高周波電極274にそれぞれエネルギが供給される。第1および第2の管路292,296に冷却水が供給される。
【0211】
第1の高周波電極254は生体組織を介して第2の高周波電極274との間に高周波電流を通電する。このため、第1の高周波電極254と第2の高周波電極274との間の生体組織が加熱される。
第1の高周波電極254および第2の高周波電極274間の通電により処置対象の生体組織が加熱されたときには、処置対象の生体組織から周辺の生体組織にサーマルスプレッドが生じる。
【0212】
このため、熱が縁部258,278を超えて外側に広がる。このとき、縁部258,278の外側の第1および第2の管路292,296にはそれぞれ冷却水が供給されている。このため、熱伝導率が高い第1および第2の管路292,296に密着した生体組織の部分は冷却されている。したがって、第1の高周波電極254と第2の高周波電極274との間から広がる熱の影響が、第1および第2の管路292,296に密着した部分で抑制される。
【0213】
一方、その生体組織の加熱された部分からは高温の蒸気や液体などの流体が発生する。ここで、第1の高周波電極254が本体側狭持部222に固定された状態で、離脱側狭持部224側に露出する第1の高周波電極254の表面は、本体側狭持部222の縁部258の接触面に対して少し低い位置にある。同様に、第2の高周波電極274が離脱側狭持部224に固定された状態で、本体側狭持部222側に露出する第2の高周波電極274の表面は、第2の狭持体54の縁部278の接触面に対して少し低い位置にある。このため、これら本体側狭持部222の縁部82aおよび離脱側狭持部224は、第1の高周波電極254および第2の高周波電極274間の通電により、生体組織から生じた流体を流体放出溝256,276に入れ、外部に漏れ出すことを防止する障壁部(ダム)の役割をそれぞれ果たす。
【0214】
そうすると、本体側狭持部222と離脱側狭持部224とが閉じられた状態で、本体側狭持部222の縁部258と離脱側狭持部224の縁部278とが当接されていることにより、生体組織から発生した流体は流体放出溝256,276にそれぞれ流れ込む。
【0215】
そして、流体放出溝256に流れ込んだ流体は、カッタ174が配設された第1の流体通気路246aを通してカッタ用プッシャ244の内側を通してハンドル202側に流して高周波処置具12cの外部に排出する。
【0216】
一方、流体放出溝276に流れ込んだ流体は、流体放出路280および第2の流体通気路246bを通してハンドル202側に流して高周波処置具12cの外部に排出する。
【0217】
以上説明したように、この実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
処置の最中に、縁部258,278の外側の第1および第2の管路292,296にはそれぞれ冷却用の流体が流されているので、第1および第2の管路292,296に密着した生体組織を冷却することができる。このため、処置対象の生体組織から周辺の生体組織に向かって広がる熱の影響を、第1および第2の管路292,296に接触した部分で抑制することができる。このため、生体組織の処置の際に高周波通電された部位から広がる熱の影響を他の周辺組織に及ぼすことを防止することができる。
【0218】
したがって、流体が狭持部206の外側に漏れ出すことを防止するとともにサーマルスプレッドを防止して、処置対象の周辺組織に処置の影響を及ぼすことを防止することができる。すなわち、生体組織の処置の際に影響を及ぼす位置を、縁部258,278の内側の生体組織に限定することができる。
【0219】
高周波処置具12cにより、狭持部206で狭持した処置対象の生体組織に高周波電流を与えるときに、本体側狭持部222の縁部258と離脱側狭持部224の縁部278とをそれぞれ生体組織に密着させることができる。このため、処置対象の生体組織から発生する流体が、本体側狭持部222の縁部258および離脱側狭持部224の縁部278に向かって流れても、縁部258,278と生体組織との間は密着されているので、その流体をこれら縁部258,278の内側の側面に当ててそれぞれの流体放出溝256,276内に導入することができる。
【0220】
そうすると、処置対象の生体組織から発生した流体を、第1の高周波電極254と本体側狭持部222の縁部258との間、および、フレーム234とカッタ用プッシャ244との間に形成された第1の流体通気路246aから、シャフト204、ハンドル202を介して流体放出口から高周波処置具12cの外部に逃がすことができる。
【0221】
さらに、処置対象の生体組織から発生した流体を、第2の高周波電極274と離脱側狭持部224の縁部278との間に形成された流体放出溝276から、流体放出路280を通して第2の流体通気路246bから、シャフト204、ハンドル202を介して流体放出口から高周波処置具12cの外部に逃がすことができる。
【0222】
したがって、狭持部206で狭持した生体組織の周囲に流体が漏れ出すことを防止することができる。
【0223】
このため、生体組織の処置の際に高周波通電された部位から生じる流体による影響を他の周辺組織に及ぼすことを防止することができる。すなわち、生体組織の処置の際に影響を及ぼす位置を、第1の高周波電極254および第2の高周波電極274間に高周波電流を通電した生体組織に限定することができる。
【0224】
[第11の実施の形態]
次に、第11の実施の形態について、図21を用いて説明する。この実施の形態は第10の実施の形態の変形例であって、第10の実施の形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
図21に示す高周波処置具12cの本体側狭持部222には、所定の間隔をおいて、円周上に電極配設部(凹部)282が形成されている。これら電極配設部282の内側には、障壁部284が配設されている。各障壁部284は、本体側狭持部222に対して少しだけ離脱側狭持部224側に突出した状態にある。各障壁部284の内側には、中心に貫通孔286aを有する第1の高周波電極286が配設されている。各第1の高周波電極286のうち、離脱側狭持部224に近接する側は、障壁部284に対して低い位置にある。すなわち、障壁部284と第1の高周波電極286との間には段差がある。
【0225】
さらに、図示しないが、これら貫通孔286aは、第1の蒸気通気路246aに連通されている。このため、蒸気は貫通孔286aから第1の蒸気通気路246aを通して高周波処置具12cの外部に排出される。
【0226】
一方、離脱側狭持部224の電極配設部、障壁部、貫通孔を有する第2の高周波電極も図示しないが、同様に形成されている。そして、第2の高周波電極の各貫通孔は、通電用シャフト262の流体放出路280、通電用パイプ236の第2の流体通気路246bに連通されている。このため、離脱側狭持部224側の流体は第2の高周波電極の貫通孔から流体放出路280、第2の流体通気路246bを通して高周波処置具12cの外部に排出される。
【0227】
以上説明したように、この実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
処置対象の生体組織から発生した流体を、第1の高周波電極286の貫通孔286aからフレーム234とカッタ用プッシャ244との間に形成された第1の流体通気路246a、シャフト204、ハンドル202を通して流体放出口から高周波処置具12cの外部に逃がすことができる。
【0228】
さらに、処置対象の生体組織から発生した流体を、第2の高周波電極の貫通孔から流体放出路280を通して第2の蒸気通気路246bから、シャフト204、ハンドル202を通して流体放出口から高周波処置具12cの外部に逃がすことができる。
したがって、狭持部206で狭持した生体組織の周囲に流体が漏れ出すことを防止することができる。
【0229】
このため、生体組織の処置の際に高周波通電された部位から生じる流体による影響を他の周辺組織に及ぼすことを防止することができる。すなわち、生体組織の処置の際に影響を及ぼす位置を、第1の高周波電極254および第2の高周波電極274間に高周波電流を通電した生体組織に限定することができる。
【0230】
なお、第10および第11の実施の形態では、図20および図21に示すような高周波電極を用いることについて説明したが、電極の形状や配置は、種々に変更可能である。
【0231】
[第12の実施の形態]
次に、第12の実施の形態について、図22(A)および図22(B)を用いて説明する。この実施の形態は第3、第10および第11の実施の形態の変形例であって、これらの実施の形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
図22(A)および図22(B)に示すように、本体側狭持部222の円筒体232の先端には、第1の冷却板298aが配設されている。この冷却板298aは、第1の管路292に接触した状態に配設されている。また、離脱側狭持部224のヘッド部264には、第2の冷却板298bが配設されている。この冷却板298bは、第2の管路296に接触した状態に配設されている。
他の構造は図19(A)および図19(B)に示す第10の実施の形態と同様である。
【0232】
次に、この実施の形態に係る治療用処置システム10の作用について説明する。
処置対象の生体組織を本体側狭持部222と離脱側狭持部224との間で狭持する。このとき、処置対象の生体組織は第1の高周波電極254と第2の高周波電極274とに接触する。処置対象の生体組織の周辺組織は、本体側狭持部222および離脱側狭持部224の冷却板298a,298bに密着する。
【0233】
この状態で、フットスイッチやハンドスイッチを操作する。エネルギ源14からケーブル28を介して第1の高周波電極254および第2の高周波電極274にそれぞれエネルギが供給される。第1および第2の管路292,296に冷却水が供給される。
【0234】
第1の高周波電極254は生体組織を介して第2の高周波電極274との間に高周波電流を通電する。このため、第1の高周波電極254と第2の高周波電極274との間の生体組織が加熱される。
第1の高周波電極254および第2の高周波電極274間の通電により処置対象の生体組織が加熱されたときには、処置対象の生体組織から周辺の生体組織にサーマルスプレッドが生じる。
【0235】
このとき、本体側狭持部222および離脱側狭持部224の冷却板298a,298bは第1および第2の管路292,296に冷却水が供給されていることにより冷却されている。このため、冷却板298a,298bに密着した生体組織は冷却されている。したがって、第1の高周波電極254と第2の高周波電極274との間から広がる熱の影響が、冷却板298a,298bに密着した部分で抑制される。
【0236】
一方、その生体組織の加熱された部分からは高温の蒸気や液体などの流体が発生する。ここで、第1の高周波電極254が本体側狭持部222に固定された状態で、離脱側狭持部224側に露出する第1の高周波電極254の表面は、本体側狭持部222の冷却板298aの接触面に対して少し低い位置にある。同様に、第2の高周波電極274が離脱側狭持部224に固定された状態で、本体側狭持部222側に露出する第2の高周波電極274の表面は、第2の狭持体54の冷却板198bの接触面に対して少し低い位置にある。このため、これら本体側狭持部222および離脱側狭持部224の冷却板298a,298bは、第1の高周波電極254および第2の高周波電極274間の通電により、生体組織から生じた流体を流体放出溝256,276に入れ、外部に漏れ出すことを防止する障壁部(ダム)の役割をそれぞれ果たす。
【0237】
そうすると、本体側狭持部222に対して離脱側狭持部224が閉じられた状態で、本体側狭持部222の冷却板298aと離脱側狭持部224の冷却板298bとが生体組織に当接されていることにより、生体組織から発生した流体は流体放出溝256,276にそれぞれ流れ込む。
【0238】
そして、流体放出溝256に流れ込んだ流体は、カッタ174が配設された第1の流体通気路246aを通してカッタ用プッシャ244の内側を通してハンドル202側に流して高周波処置具12cの外部に排出する。
【0239】
一方、流体放出溝276に流れ込んだ流体は、流体放出路280および第2の流体通気路246bを通してハンドル202側に流して高周波処置具12cの外部に排出する。
【0240】
以上説明したように、この実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
高周波処置具12cにより、狭持部206で狭持した処置対象の生体組織に高周波電流を与えるときに、それぞれ冷却されている本体側狭持部222の冷却板298aと離脱側狭持部224の冷却板298bとを生体組織に密着させることができる。このため、冷却板298a,298bに密着した生体組織を冷却することができる。したがって、処置対象の生体組織から周辺の生体組織に向かってサーマルスプレッドが生じたときの影響を、冷却板298a,298bに接触した部分で抑制することができる。そうすると、生体組織の処置の際に高周波通電された処置対象の生体組織から広がる熱の影響を他の周辺組織に及ぼすことを防止することができる。
【0241】
したがって、表面を冷却することが可能な冷却板298a,298bを本体側狭持部222および離脱側狭持部224に設けることによって、サーマルスプレッドが生じる範囲を本体側狭持部222および離脱側狭持部224の内部に確実に収めることができる。
【0242】
また、高周波処置具12cにより、狭持部206で狭持した処置対象の生体組織に高周波電流を与えるときに、本体側狭持部222の冷却板298aと離脱側狭持部224の冷却板298bとをそれぞれ生体組織に密着させることができる。このため、処置対象の生体組織から発生する流体が、本体側狭持部222の冷却板298aおよび離脱側狭持部224の冷却板298bに向かって流れても、その流体を第1の高周波電極254と冷却板298aとの間の第1の蒸気放出溝256を通して第1の流体通気路246a内に導入することができるとともに、第2の高周波電極274と冷却板298bとの第2の蒸気放出溝276を通して第2の蒸気通気路246b内に導入することができる。
【0243】
このため、生体組織の処置の際に高周波通電された部位から生じる流体による影響を他の周辺組織に及ぼすことを防止することができる。すなわち、生体組織の処置の際に影響を及ぼす位置を、第1の高周波電極254および第2の高周波電極274間に高周波電流を通電した生体組織に限定することができる。
【0244】
また、高温の流体が本体側狭持部222と離脱側狭持部224との外部に抜けようとしても、冷却板298a,298bにその流体が触れることによって、その流体を冷却することができる。このため、狭持部206で狭持した生体組織の周辺の生体組織に影響を与えることを防止することができる。
なお、この実施の形態で説明した冷却板298a,298bは、図20や図21に示す実施の形態に同様に適用することができる。
【0245】
ところで、上述した第1ないし第12の実施の形態では、主に、高周波電極を用いる場合について説明したが、高周波電極を用いる代わりに、超音波振動子を用いることもできる。この場合、例えば平板状や円環状やスポット状の超音波振動子を超音波振動させることによって、超音波振動子の表面に接触する生体組織に対して超音波処置を行うことができる。
【0246】
また、第1の狭持体52の本体62のうち、第2の狭持体54に近接する側の表面に発熱素子(図示せず)を配設して同様に処置を行うことも好適である。
【0247】
付随的な効果および改良はこれら技術を有する者に容易になされるものである。このため、発明の広義の見地は明細書に代表される実施の形態に限定されるものではない。したがって、種々の改良が、添付された特許請求の範囲およびその均等の範囲によって規定される一般的発明概念の発明の精神又は範囲から逸脱することなくなされ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織にエネルギを作用させて処置を行う治療用処置システム(10)であって、
エネルギを供給するエネルギ源(14)と、
前記生体組織を狭持するように少なくとも一方が他方に対して相対的に移動する1対の狭持部材(26; 206)と、
前記狭持部材の少なくとも一方に設けられているとともに、前記エネルギ源に接続され前記エネルギ源から供給されるエネルギによって前記生体組織を熱により変性させる出力部材(56, 58; 126; 136; 144; 166, 168; 194, 196; 254, 274; 286)と、
前記出力部材から離れる方向への熱の広がりを抑制する冷却部(98; 108; 146, 156; 162a, 162b, 164; 292, 296; 298a, 298b)と
を具備することを特徴とする治療用処置システム(10)。
【請求項2】
前記冷却部は、前記出力部材に隣接した位置に設けられ、前記熱により変性させた生体組織から周囲への熱の広がりを抑制する放熱用部材(108; 146; 164; 298a, 298b)を備えていることを特徴とする請求項1に記載の治療用処置システム(10)。
【請求項3】
前記冷却部は、冷却用媒体を供給するための管路(98; 156; 162a, 162b; 292, 296)を備えていることを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載の治療用処置システム(10)。
【請求項4】
前記冷却部は、前記狭持部材に冷却用媒体を循環させるように、前記狭持部材の内部に管路(156; 162a, 162b)を備えていることを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載の治療用処置システム(10)。
【請求項5】
前記出力部材に近接した位置に設けられ、熱により生体組織を変性させるときに前記生体組織から発生する気体および/もしくは液体を含む流体を通過させることが可能な少なくとも1つの流体通路(84a, 84b; 112a, 112b, 114; 126a; 128a; 128b; 136a; 148a, 152; 166b, 168b; 182a, 182b; 184a, 184b; 246a, 256; 246b, 276, 280; 286a)を
さらに具備することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1に記載の治療用処置システム(10)。
【請求項6】
前記出力部材に隣接した位置に設けられた少なくとも1つの障壁部(82a, 82b; 124; 134; 146, 148; 258; 278; 284; 298a, 298b)をさらに具備し、
前記障壁部は、前記出力部材と前記冷却部との間に設けられ、前記出力部材に対して同一高さ又は高い位置に配置される
ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1に記載の治療用処置システム(10)。
【請求項7】
前記冷却部は、前記障壁部に対して同一高さ又は低い位置に配置されることを特徴とする請求項6に記載の治療用処置システム(10)。
【請求項8】
前記出力部材(126; 136; 144; 166, 168; 286)は、前記狭持部材の少なくとも一方に複数設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1に記載の治療用処置システム(10)。
【請求項9】
生体組織にエネルギを作用させる治療用処置具(12; 12a; 12b; 12c)であって、
前記生体組織を狭持するための狭持部材(26; 206)を具備し、
前記狭持部材は、
互いに対して相対的に移動可能な第1および第2の狭持体(52, 54; 222, 224)と、
前記第1および第2の狭持体の少なくとも一方に設けられ、エネルギ源に接続され、前記第1および第2の狭持体で生体組織を狭持したときに、前記エネルギ源から供給されたエネルギによって前記生体組織を熱により変性させる出力部材(56, 58; 126; 136; 144; 166, 168; 194, 196; 254, 274; 286)と、
前記変性された生体組織から周囲への熱の広がりを抑制する冷却部(98; 108; 146, 156; 162a, 162b, 164; 292, 296; 298a, 298b)と
を備えていることを特徴とする治療用処置具(12; 12a; 12b; 12c)。
【請求項10】
前記冷却部は、前記第1および第2の狭持体のうち、少なくとも前記出力部材が設けられた狭持体に設けられていることを特徴とする請求項9に記載の治療用処置具(12; 12a; 12b; 12c)。
【請求項11】
前記冷却部(98; 108; 146, 156; 162a, 162b, 164; 292, 296)は、前記出力部材の外側に設けられていることを特徴とする請求項10に記載の治療用処置具(12; 12a; 12b; 12c)。
【請求項12】
前記冷却部は、その内側に冷却用の流体を流したときに、その流体の熱がその外側に伝達される、熱伝導性を有する管路(98; 156; 162a, 162b; 292, 296)を備えていることを特徴とする請求項9もしくは請求項10に記載の治療用処置具(12; 12a; 12b; 12c)。
【請求項13】
前記冷却部は、前記管路に接触するとともに生体組織に接触する冷却板(146; 164; 298a, 298b)をさらに備えていることを特徴とする請求項12に記載の治療用処置具(12; 12a; 12b; 12c)。
【請求項14】
前記冷却板(146; 164; 298a, 298b)は、前記出力部材との間に、前記生体組織から発生させた気体および/もしくは液体を含む流体を前記狭持部から排出するための、流体を通す流体通路(148a, 152; 256, 276)を備えていることを特徴とする請求項13に記載の治療用処置具(12; 12a; 12b; 12c)。
【請求項15】
前記冷却板は、前記出力部材により前記生体組織から発生させた流体が前記冷却板と生体組織との間を通して前記狭持部の外側に漏れることを防止するように、前記生体組織に密着される障壁部(148)を備えていることを特徴とする請求項13もしくは請求項14に記載の治療用処置具(12; 12a; 12b; 12c)。
【請求項16】
前記冷却部は、前記変性させた生体組織から広がる熱を放熱する放熱用部材(108; 146; 164; 298a, 298b)を備えていることを特徴とする請求項9に記載の治療用処置具(12; 12a; 12b; 12c)。
【請求項17】
前記冷却部は、前記第1および第2の狭持体のうち、少なくとも前記出力部材が設けられた狭持体に設けられた冷却板(146; 164; 298a, 298b)と、前記冷却板を冷却する冷却手段(156; 162a, 162b; 292, 296)とを備えていることを特徴とする請求項9に記載の治療用処置具(12; 12a; 12b)。
【請求項18】
前記冷却手段(162a, 162b)は、前記冷却板(164)と、前記第1および第2の狭持体のうち、前記出力部材が設けられた狭持体との間に、前記冷却板を冷却するための流体を入れる空間を備えていることを特徴とする請求項17に記載の治療用処置具(12; 12a; 12b; 12c)。
【請求項19】
前記冷却部は、前記出力部材の外側に設けられた伝熱部材(146; 164; 298a, 298b)と、この伝熱部材を冷却する冷却手段(156; 162a, 162b; 292, 296)とを前記狭持部材に備えていることを特徴とする請求項9に記載の治療用処置具(12; 12a; 12b; 12c)。
【請求項20】
前記冷却手段は、前記伝熱部材を冷却する流体であることを特徴とする請求項19に記載の治療用処置具(12; 12a; 12b; 12c)。
【請求項21】
前記冷却手段(156; 292, 296)は、前記伝熱部材(146; 298a, 298b)に接触し、内部に流体を流す管路であることを特徴とする請求項19に記載の治療用処置具(12; 12a; 12b; 12c)。
【請求項22】
前記狭持部材は、前記第1のおよび第2の狭持体の間に狭持された生体組織を補助的に処置するための治療補助具(174; 242)を備えていることを特徴とする請求項9ないし請求項21のいずれか1に記載の治療用処置具(12; 12a; 12b; 12c)。
【請求項23】
前記第1および第2の狭持部は、前記治療補助具を案内するとともに、前記変性された生体組織から発生する流体を排出するための案内溝を備えていることを特徴とする請求項22に記載の治療用処置具(12; 12a; 12b; 12c)。
【請求項24】
前記出力部材は、高周波電極(56, 58; 126; 136; 144; 166, 168; 254; 274; 286)であることを特徴とする請求項9ないし請求項23のいずれか1に記載の治療用処置具(12; 12a; 12b; 12c)。
【請求項25】
前記出力部材(194)は、それ自体が熱を持つことを特徴とする請求項9ないし請求項23のいずれか1に記載の治療用処置具(12; 12a; 12b; 12c)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2010−517597(P2010−517597A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532635(P2009−532635)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【国際出願番号】PCT/JP2007/069527
【国際公開番号】WO2008/099530
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】