説明

治療薬

式(I)の化合物;このような化合物を製造する方法;肥満症、精神障害、認知障害、記憶障害、統合失調症、癲癇および関連状態、および痴呆、多発性硬化症、パーキンソン病、ハンティングトン舞踏病およびアルツハイマー病などの神経障害、および疼痛関連障害の処置におけるそれらの使用;およびそれらを含有する医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式Iを有するある種の化合物、このような化合物を製造する方法、肥満症、精神障害および神経障害の処置におけるそれらの使用、およびそれらを含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
メラニン凝集ホルモン(MCH)は、15年以上前に初めて魚類から単離された環状ペプチドである。哺乳動物の場合、MCH遺伝子発現は、不確帯(zona inserta)の腹側および外側視床下部域に局在している(Breton et al., Molecular and Cellular Neurosciences, vol. 4, 271-284 (1993))。脳の後者領域は、飲食などの行動の制御、覚醒および運動活性に関連している(Baker, B., Trends Endocrinol. Metab. 5: 120-126(1994), vol. 5, No. 3, 120-126 (1994))。哺乳動物の生物学的活性は、十分に定義されていないが、最近の研究は、MCHが、摂食および体重増加を促進するということを示した(US5,849,708号)。したがって、MCHおよびそのアゴニストは、AIDS、腎臓病または化学療法による体重減少および神経性食欲不振のための処置として考えられた。同様に、MCHのアンタゴニストは、肥満症と、強迫摂食および過剰体重を特徴とする他の障害のための処置として用いることができる。MCH投射は、侵害受容を処理する場合に重要な部位である脊髄を含めた脳中のいたるところで見出され、式Iの化合物のような、MCHr1を介して作用する物質は、疼痛を処置する場合に有用であろうということを示している。
【0003】
MCHの二つの受容体(MCH受容体1(MCHr1)(Shimomura et al. Biochem Biophys Res Commun 1999 Aug 11;261(3):622-6)およびMCH受容体2(MCH2r)(Hilol et al. J Biol Chem. 2001 Jun 8;276(23):20125-9))は、ヒトにおいて識別されたが、齧歯類種には、一つ(MCHr1)しか存在しない(Tan et al. Genomics 2002 Jun;79(6):785-92)。MCHr1欠損マウスの場合、MCHへの増加した摂食応答がなく、痩身表現型が認められるので、この受容体は、MCHの摂食作用を媒介することに関与しているということが示唆される(Marsh et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2002 Mar 5;99(5):3240-5)。更に、MCHr1アンタゴニストは、MCHの摂食作用をブロックすること(Takekawa et al. Eur. J. Pharmacol. 2002 Mar 8;438(3):129-35)、および食事性肥満ラットの体重および脂肪過多を減少させること(Borowsky et al. Nature Med. 2002 Aug;8(8):825-30)を示した。MCHr1の分布および配列の保存は、ヒトおよび齧歯類種におけるこの受容体について類似した役割を示唆している。したがって、MCH受容体アンタゴニストは、肥満症と、過度の摂食および体重を特徴とする他の障害のための処置として考えられた。
【0004】
WO2005/042541号は、3−(4−アミノフェニル)チエノピリミド−4−オン誘導体を、肥満症、糖尿病、抑うつ症および不安の処置のためのMCHr1アンタゴニストとして開示している。
【0005】
WO2005/047293号は、3−(ピロリジン−3−イル)チエノピリミド−4−オン誘導体を、肥満症、糖尿病、抑うつ症および不安の処置のためのMCHr1アンタゴニストとして開示している。
【0006】
WO2005/103039号は、3−アミノ−ピロリジニルで置換された3−(ピリジン−3−イル)−チエノピリミド−4−オンおよび6−(ピリド−3−イル)−チエノピリダジン−7−オン誘導体を、肥満症、不安、抑うつ症および他の疾患の処置のためのMCHr1アンタゴニストとして開示している。
【0007】
この分野において、既知の化合物よりも強力で、選択的で、バイオアベイラビリティーがあり、副作用を生じることが少ないMCH受容体アンタゴニストへの要求は、未だ満たされていない。
【発明の開示】
【0008】
本発明の目的は、肥満症および関連障害、精神障害、神経障害および疼痛を処置する場合に有用である化合物を提供することである。この目的は、式Iの化合物が、MCH受容体アンタゴニストとして用いるために提供されたことで達せられた。
【0009】
本発明の別の側面により、医薬製剤であって、式Iの化合物および薬学的に許容しうるアジュバント、希釈剤または担体を含む医薬製剤を提供する。
本発明のもう一つの側面により、肥満症に関連した状態の処置または予防のための薬剤の製造における、式Iの化合物の使用を提供する。
【0010】
本発明の更に別の側面により、肥満症、精神障害、不安、不安・抑うつ性障害、抑うつ症、双極性障害、ADHD、認知障害、記憶障害、統合失調症、癲癇および関連状態、および神経障害および疼痛関連障害を処置する方法であって、それを必要としている患者に、薬理学的有効量の式Iの化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0011】
本発明の別の側面により、式Iの化合物の製造方法を提供する。
本発明のもう一つの側面により、肥満症、II型糖尿病、代謝症候群を処置する方法、およびII型糖尿病の予防の方法であって、それを必要としている患者に、薬理学的有効量の式Iの化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0012】
発明の説明
本発明は、一般式(I)
【0013】
【化1】

【0014】
[式中、AおよびBは、独立して、CまたはNであり、
DおよびEは、独立して、CまたはNであり、
X−Yは、N=Cであり(但し、A、B、DまたはEの少なくとも一つは、Nであるという条件付きである)、または
X−Yは、C=Nであり、または
X−Yは、N=Nであり、
およびRは、独立して、H、C1−3アルキル(1個またはそれを超えるFで置換されていてよい)、C1−3アルコキシ(1個またはそれを超えるFで置換されていてよい)、ClまたはFであり、
は、H、F、Cl、シアノ、ヒドロキシ、C1−3アルコキシ(ヒドロキシ、メトキシ、または1個またはそれを超えるFで置換されていてよい)またはC1−3アルキル(ヒドロキシ、メトキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、または1個またはそれを超えるFで置換されていてよい)であり、
およびRは、独立して、H、オキソ、ヒドロキシ、C1−3アルコキシ(ヒドロキシ、メトキシ、または1個またはそれを超えるFで置換されていてよい)、C1−3アルキル(ヒドロキシ、メトキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、または1個またはそれを超えるFで置換されていてよい)またはC1−3アシルオキシであり、このアルキル部分は、1個またはそれを超えるメチル、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノまたはカルボキシで置換されていてもよく、
mは、0または1である]
を有する化合物、およびそれらの互変異性体、光学異性体およびラセミ体、更には、それらの薬学的に許容しうる塩に関する。
【0015】
本発明は、更に、一般式(Ia)
【0016】
【化2】

【0017】
[式中、AおよびBは、独立して、CまたはNであり、
DおよびEは、独立して、CまたはNであり、
X−Yは、N=Cであり(但し、A、B、DまたはEの少なくとも一つは、Nであるという条件付きである)、または
X−Yは、C=Nであり、または
XはNHであり且つYはC=Oであり、または
X−Yは、N=Nであり、
およびRは、独立して、H、C1−3アルキル(1個またはそれを超えるFで置換されていてよい)、C1−3アルコキシ(1個またはそれを超えるFで置換されていてよい)、ClまたはFであり、
は、H、F、Cl、ヒドロキシ、C1−3アルコキシ(ヒドロキシ、メトキシ、または1個またはそれを超えるFで置換されていてよい)またはC1−3アルキル(ヒドロキシ、メトキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、または1個またはそれを超えるFで置換されていてよい)であり、
およびRは、独立して、H、オキソ、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、C1−3アルコキシ(1個またはそれを超えるFで置換されていてよい)またはC1−3アシルオキシであり、
mは、0または1である]
を有する化合物、およびそれらの互変異性体、光学異性体およびラセミ体、更には、それらの薬学的に許容しうる塩に関する。
【0018】
次に、式I〜Iaの化合物中の若干のA、B、D、E、X、Y、m、R、R、R、RおよびRを更に定義する具体的な基を挙げる。このような基の定義を、本明細書中の前にまたは以下に定義のいずれかの他の基の定義、請求の範囲または態様について適所で用いることができるということは理解されるであろう。
【0019】
式I〜Iaの化合物の一つの具体的な基において、
X−Yは、C=Nである、または
X−Yは、N=Nである。
【0020】
式I〜Iaの化合物の別の具体的な基において、
A、BおよびEは、全てCであり、そしてDは、Nである。
式I〜Iaの化合物の別の具体的な基において、
X−Yは、N=Cである(但し、A、B、DまたはEの少なくとも一つは、Nであるという条件付きである)。
【0021】
式I〜Iaの化合物の別の具体的な基において、
AおよびBは、双方ともCであり、
DおよびEは、双方ともCであり、
X−Yは、C=Nである、または
X−Yは、N=Nである。
【0022】
式I〜Iaの化合物の更に別の基において、
A、B、DおよびEは、全てCであり、
X−Yは、N=Nであり、
は、Cl、F、CF、CHF、CHF、メチル、OCFまたはOCHFであり、
は、H、Cl、FまたはCHであり、
は、H、F、Cl、ヒドロキシ、メトキシまたはヒドロキシメチルであり、ここにおいて、置換基Rは、縮合複素環式環系に相対してメタ位に置かれていて、
は、オキソ、ヒドロキシ、メトキシまたはヒドロキシメチルであり、
mは、0であり、そしてここにおいて、置換基Rは、ピロリジン環の3位に置かれていて、そして
は、Hである。
【0023】
式I〜Iaの化合物のもう一つの基において、
A、BおよびEは、Cであり、そしてDは、Nであり、
X−Yは、N=CまたはC=Nであり、
は、Cl、F、CF、CHF、CHF、メチル、OCFまたはOCHFであり、
は、Hであり、
は、Hであり、
は、ヒドロキシまたはヒドロキシメチルであり、
mは、0であり、そしてここにおいて、置換基Rは、ピロリジン環の3位に置かれていて、そして
は、H、またはRと同じ位置に置かれたメチルである。
【0024】
「薬学的に許容しうる塩」という用語は、薬学的に許容しうる酸付加塩を意味する。式I〜Iaの化合物の適する薬学的に許容しうる塩は、例えば、十分に塩基性である式I〜Iaの化合物の酸付加塩、例えば、次のような無機酸または有機酸との酸付加塩である。
【0025】
(1S)−(+)−10−カンフルスルホン酸;シクロヘキシルスルファミン酸;リン酸;ジメチルリン酸;p−トルエンスルホン酸;L−リシン;L−リシン塩酸塩;サッカリン酸;メタンスルホン酸;臭化水素酸;塩酸;硫酸;1,2−エタンジスルホン酸;(+/−)−カンフルスルホン酸;エタンスルホン酸;硝酸;p−キシレンスルホン酸;2−メシチレンスルホン酸;1,5−ナフタレンジスルホン酸;1−ナフタレンスルホン酸;2−ナフタレンスルホン酸;ベンゼンスルホン酸;マレイン酸;D−グルタミン酸;L−グルタミン酸;D,L−グルタミン酸;L−アルギニン;グリシン;サリチル酸;酒石酸;フマル酸;クエン酸;L−(−)−リンゴ酸;D,L−リンゴ酸およびD−グルコン酸。
【0026】
本明細書および請求の範囲を通して、与えられた化学式または名称は、その全ての互変異性体、全ての立体および光学異性体およびラセミ体、更には、このような異性体および鏡像異性体が存在する場合、個々の鏡像異性体の異なった比率での混合物、更には、それらの薬学的に許容しうる塩を包含するものである。異性体は、慣用的な技法、例えば、クロマトグラフィーまたは分別結晶を用いて分離することができる。鏡像異性体は、ラセミ体の分離によって、例えば、分別結晶、分割またはHPLCによって単離することができる。ジアステレオマーは、異性体混合物の分離によって、例えば、分別結晶、HPLCまたはフラッシュクロマトグラフィーによって単離することができる。或いは、立体異性体は、ラセミ化またはエピマー化を引き起こさない条件下におけるキラル出発物質からのキラル合成によって、またはキラル試薬での誘導体化によって製造することができる。立体異性体は全て、発明の範囲内に包含される。
【0027】
本発明の化合物は、化学的に安定性であるものであるが、式I〜Ia中の上に定義の基のどの組合せが、化学的に不安定な式I〜Iaの化合物を生じることがありうるかを識別することは、当業者の知識の範囲内であると考えられる。
【0028】
しかしながら、式I〜Iaの若干の化合物は、in vivo で代謝されて、活性種を形成するものである。このような化合物(プロドラッグ)は、血漿および/または肝酵素の作用によってアルコール(活性種)へと加水分解されうる官能基(例えば、エステル)を含有する。
【0029】
次の定義は、本明細書および請求の範囲を通して当てはまるものである。
それ以外に述べられていないまたは示されていない限り、「アルキル」という用語は、直鎖かまたは分岐状のアルキル基を意味する。このアルキルの例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルおよびt−ブチルが含まれる。好ましいアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルおよび第三級ブチルである。
【0030】
それ以外に述べられていないまたは示されていない限り、「アルコキシ」という用語は、O−アルキル基を意味し、ここにおいて、アルキルは、上に定義の通りである。
それ以外に述べられていないまたは示されていない限り、「アシルオキシ」という用語は、O−アシル基を意味し、ここにおいて、「アシル」という用語は、アルキルC(O)基を意味する。
【0031】
本発明の具体的な化合物には、
6−(4−クロロフェニル)−3−{4−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]−3−メトキシフェニル}チエノ[3,2−d][1,2,3]トリアジン−4(3H)−オン;
6−(4−クロロフェニル)−3−{3−(ヒドロキシメチル)−4−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]フェニル}チエノ[3,2−d][1,2,3]トリアジン−4(3H)−オン;
6−(4−クロロフェニル)−3−{6−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]ピリジン−3−イル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン;
6−(4−クロロフェニル)−3−{5−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]ピリジン−2−イル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン;および
6−(4−クロロフェニル)−3−{5−[3−ヒドロキシ−3−メチルピロリジン−1−イル]ピリジン−2−イル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン;
2−(4−クロロフェニル)−6−{5−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]ピリジン−2−イル}チエノ[2,3−d]ピリダジン−7(6H)−オン、およびそれらの互変異性体、光学異性体およびラセミ体、更には、それらの薬学的に許容しうる塩が含まれる。
【0032】
製造方法
本発明の化合物は、下に概説されるように、次のいずれかの方法にしたがって製造することができる。しかしながら、本発明は、これら方法に制限されることはなく、それら化合物は、構造的に関連した化合物について先行技術に記載のように製造することもできる。
【0033】
X−YがN=Nである式I〜Iaの化合物は、式II
【0034】
【化3】

【0035】
(式中、R、R、R、R、R、A、B、D、Eおよびmは、前に定義の通りである)
を有する化合物と、亜硝酸ナトリウムまたは亜硝酸カリウムまたは亜硝酸t−ブチルなどのジアゾ化剤とを、酢酸(75〜100%)および水(0〜25%)を含有する溶媒または溶媒混合物中において室温で反応させた後、例えば、Daidone, G. et al. Heterocycles 43(11), 2385-96 (1996) に記載の方法である水性アルカリ性処理を行うことによって製造することができる。
【0036】
XがNHであり且つYがC(O)である式Iaの化合物は、例えば、式IIIの化合物と、イソシアン酸アリールIVとを、Graveleau, N. et al. Synthesis no 11, 1739-43 (2003) に記載の方法から類推して反応させることによって製造することができる。
【0037】
【化4】

【0038】
X−YがC=Nである式I〜Iaの化合物は、例えば、式Vの化合物とアリールヒドラジンVIとを、Baraldi, P.G. et al. Nucleosides & Nucleotides 17(12), 2165-73 (1998) および Marquet, J-P. et al. Tetrahedron 29, 435-39 (1973) に記載の方法から類推して、還流EtOH中で凝縮後、HOAc中で(中間体ヒドラゾンを)加熱することによって製造することができる。
【0039】
【化5】

【0040】
或いは、X−YがC=Nである式I〜Iaの化合物は、式VIIの化合物の、式VIII(式中、Halは、Cl、BrまたはIである)を有するハロアリール化合物でのN−アリール化により、不活性溶媒、例えば、トルエンまたはジオキサン中、触媒クロスカップリング系、例えば、CuOまたはCuIおよび trans−1,2−ビス(メチルアミノ)シクロヘキサンの存在下、場合により、KPOまたはCsCOなどの塩基の存在下において、0℃〜250℃の範囲内、好ましくは、50℃〜160℃の範囲内の温度で製造することができる。
【0041】
【化6】

【0042】
X−YがN=Cである(そしてここにおいて、A、B、DまたはEの少なくとも一つは、Nである)式I〜Iaの化合物は、例えば、式IXの化合物と、式Xの化合物とを、WO2003/033476号に記載の方法から類推して反応させることによって製造することができる。好ましくは、この反応は、EtOH、MeOHまたはフェノールを溶媒として用いて、マイクロ波反応器中において80〜150℃で行われる。
【0043】
【化7】

【0044】
或いは、式I〜Iaの化合物は、式XIの化合物と、式XIIの化合物との、Suzuki または Stille のカップリング反応によって製造することができる。
【0045】
【化8】

【0046】
式中、Tは、B(OH)またはSn(アルキル)であり、Zは、I、Brまたはトリフラートなどの適する脱離基である。
式IIの化合物は、式XIIIの化合物と、式XIVの化合物とを、溶媒、例えば、THF、DCM、NMP、DCM/水(すなわち、二相系)またはDMFの存在下、場合により、適する無機塩基または有機塩基、例えば、DIPEAまたはTEA、および標準的なアミドカップリング試薬、例えば、HATU、TBTU、TFFH、PyBroP、EDCまたはDCC(この最後の二つは、ポリマーに保持されていてよい)の存在下において、0℃〜150℃の範囲内、好ましくは、20℃〜80℃の範囲内の温度でカップリングさせることによって製造することができる。HOBtおよびHOAtなどの適する添加剤を利用してもよい。
【0047】
【化9】

【0048】
当業者は、若干の場合、本発明の化合物を得るために、化合物II〜XIV中の官能基(例えば、R、RまたはR中のヒドロキシ基またはアミノ基、またはカルボン酸基)が、上記の反応の前に保護を必要とすることがありうるということを理解するであろう。アミン保護基は、例えば、ベンジル基、t−Boc基またはCbz基が当業者に知られている。芳香族アミノ基は、反応配列中にニトロ基として隠すこともできる。ヒドロキシ保護基は、例えば、t−ブチルエーテル、TBDMSエーテルまたはTHP、MEMまたは類似のアセタール型保護基が、当業者に知られている。カルボン酸保護基は、例えば、ベンジルエステル、t−ブチルエステル、エチルエステルまたはメチルエステルである。
【0049】
式II〜XIVの化合物は、商業的に入手可能であるか、参考文献で知られているかまたは、当業者に知られている方法によって容易に製造することができる。
本発明の化合物は、それら反応混合物から、慣用的な技法を用いて単離することができる。立体異性体は、慣用的な技法、例えば、クロマトグラフィーまたは分別結晶を用いて分離することができる。鏡像異性体は、ラセミ体の分離によって、例えば、分別結晶、分割またはHPLCによって単離することができる。ジアステレオマーは、異性体混合物の分離によって、例えば、分別結晶、HPLCまたはフラッシュクロマトグラフィーによって単離することができる。或いは、立体異性体は、ラセミ化またはエピマー化を引き起こさない条件下におけるキラル出発物質からのキラル合成によって、またはキラル試薬での誘導体化によって製造することができる。
【0050】
当業者は、本発明の化合物を代替法で、若干の場合、より好都合な方法で得るために、本明細書中の前に述べられた個々の方法工程を、異なった順序で行うことができる、および/または個々の反応を、全経路中の異なった段階で行うことができる(すなわち、化学変換は、本明細書中の前の具体的な反応に関連したものへの異なった中間体で行うことができる)ということを理解するであろう。
【0051】
医薬製剤
本発明の化合物は、通常は、経口、非経口、静脈内、筋肉内、皮下によって、または他の注射可能な方法で、口腔内、直腸内、膣内、経皮および/または鼻腔経路および/または吸入によって、活性成分を遊離塩基としてかまたは薬学的に許容しうる無機または有機付加塩として薬学的に許容しうる剤形中に含む医薬製剤の形で投与されるであろう。処置される障害および患者、および投与経路に依存して、それら組成物は、いろいろな用量で投与することができる。
【0052】
ヒトの治療的処置における本発明の化合物の適する1日用量は、約0.001〜10mg/kg体重、好ましくは、0.01〜3mg/kg体重である。
経口製剤は、具体的には、当業者に知られている方法によって製剤化されて、0.5mg〜500mgの範囲内、例えば、1mg、3mg、5mg、10mg、25mg、50mg、100mgおよび250mgの用量の活性化合物を与えることができる錠剤またはカプセル剤が好適である。
【0053】
本発明のもう一つの側面により、更に、医薬製剤であって、いずれかの本発明の化合物またはそれらの薬学的に許容しうる塩を、薬学的に許容しうるアジュバント、希釈剤および/または担体との混合物で包含する医薬製剤を提供する。
【0054】
本発明の化合物は、肥満症に関連した障害、精神障害、神経障害および疼痛の処置に有用である他の治療薬と組み合わせることもできる。
薬理学的性質
式I〜Iaの化合物は、肥満症;精神病性障害、不安、不安・抑うつ性障害、抑うつ症、認知障害、記憶障害、統合失調症、癲癇および関連状態などの精神障害;および痴呆、多発性硬化症、レイノー症候群、パーキンソン病、ハンティングトン舞踏病およびアルツハイマー病などの神経障害の処置に有用である。それら化合物は、更に、免疫、心臓血管、生殖および内分泌の障害、および呼吸器系および胃腸管系に関係した疾患の処置に、潜在的に有用である。それら化合物は、更に、喫煙を中止する、ニコチン依存症を処置するおよび/またはニコチン離脱症状を処置する、ニコチンへの渇望を減少させる物質として、および抗喫煙薬として、潜在的に有用である。それら化合物は、更に、喫煙中止に通常伴う体重の増加をなくすことができる。それら化合物は、更に、下痢を処置するまたは予防する物質として、潜在的に有用である。
【0055】
それら化合物は、更に、ニコチン、アルコール、コカイン、アンフェタミン、アヘン剤、ベンゾジアゼピンおよびバルビツレートなどの精神運動活性剤が含まれるがこれに制限されるわけではない嗜癖物質への渇望/回帰を減少させる物質として、潜在的に有用である。それら化合物は、更に、薬物嗜癖および/または薬物乱用を処置する物質として、潜在的に有用である。
【0056】
したがって、被乱用物質への渇望を減少させる場合に活性であろうし、被乱用物質によって引き起こされる交感神経応答速度を悪化させないし、そして好都合な薬力学的作用を有する化合物および処置方法を提供することが望まれる。
【0057】
それら化合物は、更に、急性および慢性の侵害受容性、炎症性およびニューロパシー性の疼痛および片頭痛が含まれるがこれに制限されるわけではない疼痛障害を処置する物質として、潜在的に有用である。
【0058】
別の側面において、本発明は、薬剤として用いるための、請求の範囲のいずれかに記載の式I〜Iaの化合物を提供する。
もう一つの側面において、本発明は、肥満症;精神病性障害、不安、不安・抑うつ性障害、抑うつ症、双極性障害、ADHD、認知障害、記憶障害、統合失調症、癲癇および関連状態などの精神障害;痴呆、多発性硬化症、パーキンソン病、ハンティングトン舞踏病およびアルツハイマー病などの神経障害;および急性および慢性の侵害受容性、炎症性およびニューロパシー性の疼痛および片頭痛が含まれるがこれに制限されるわけではない疼痛関連障害の処置または予防のための薬剤の製造における、式I〜Iaの化合物の使用であって、それを必要としている患者に、薬理学的有効量の式I〜Iaの化合物を投与することを含む使用を提供する。
【0059】
更にもう一つの側面において、本発明は、肥満症;精神病性障害、不安、不安・抑うつ性障害、抑うつ症、双極性障害、ADHD、認知障害、記憶障害、統合失調症、癲癇および関連状態などの精神障害;および痴呆、多発性硬化症、パーキンソン病、ハンティングトン舞踏病およびアルツハイマー病などの神経障害;および急性および慢性の侵害受容性、炎症性およびニューロパシー性の疼痛および片頭痛が含まれるがこれに制限されるわけではない疼痛関連障害を処置する方法であって、それを必要としている患者に、薬理学的有効量の式I〜Iaの化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0060】
本発明の化合物は、肥満症の処置に特に適している。
別の側面において、本発明は、肥満症、II型糖尿病、代謝症候群を処置する方法、およびII型糖尿病を予防する方法であって、それを必要としている患者に、薬理学的有効量の式I〜Iaの化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0061】
組合せ療法
本発明の化合物は、高血圧症、高脂血症、異常脂血症、糖尿病および肥満症のような、アテローム性動脈硬化症の発症および進行に関連した障害の処置に有用である別の治療薬と組み合わせることができる。例えば、本発明の化合物は、熱産生、脂肪分解、脂肪吸収、満腹または消化管運動性に影響を与える化合物と組み合わせて用いることができる。本発明の化合物は、LDL:HDLの比率を減少させる別の治療薬、またはLDLコレステロールの循環レベルの減少を引き起こす物質と組み合わせることができる。真性糖尿病の患者の場合、本発明の化合物は、微小血管症に関連した合併症を処置するのに用いられる治療薬と組み合わせることもできる。
【0062】
本発明の化合物は、代謝症候群または2型糖尿病およびその関連合併症の処置用の他の療法と一緒に用いることができるが、これらには、ビグアニド薬、インスリン(合成インスリン類似体)、経口抗高血糖症薬(これらは、食事性グルコース調節薬およびα−グルコシダーゼ阻害剤に分けられる)およびPPARモジュレーション薬(PPAR modulating agent)が含まれる。
【0063】
本発明の別の側面において、式I〜Iaの化合物、またはその薬学的に許容しうる塩、溶媒和化合物、このような塩の溶媒和化合物またはプロドラッグは、PPARモジュレーション薬と一緒に投与することができる。PPARモジュレーション薬には、PPARαおよび/またはγアゴニスト、またはその薬学的に許容しうる塩、溶媒和化合物、このような塩の溶媒和化合物またはプロドラッグが含まれるが、これに制限されるわけではない。適するPPARαおよび/またはγアゴニスト、その薬学的に許容しうる塩、溶媒和化合物、このような塩の溶媒和化合物またはプロドラッグは、当該技術分野において周知である。
【0064】
更に、本発明の組合せは、スルホニル尿素と一緒にして用いることができる。本発明は、更に、コレステロール低下薬との組合せでの本発明の化合物を包含する。本出願で論じられるコレステロール低下薬には、HMG−CoAレダクターゼ(3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル補酵素Aレダクターゼ)の阻害剤が含まれるが、これに制限されるわけではない。好適には、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤は、スタチンである。
【0065】
本出願において、「コレステロール低下薬」という用語は、活性であれ不活性であれ、エステル、プロドラッグおよび代謝産物のような、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤の化学修飾も包含する。
【0066】
本発明は、更に、回腸胆汁酸輸送系の阻害剤(IBAT阻害剤)との組合せでの本発明の化合物を包含する。本発明は、更に、胆汁酸結合性樹脂との組合せでの本発明の化合物を包含する。
【0067】
本発明の更にもう一つの側面により、組合せ処置であって、このような治療的処置を必要としているヒトなどの温血動物への、薬学的に許容しうる希釈剤または担体と一緒であってよい、有効量の式I〜Iaの化合物、またはその薬学的に許容しうる塩、溶媒和化合物、このような塩の溶媒和化合物またはプロドラッグの投与を、薬学的に許容しうる希釈剤または担体と一緒であってよい、次の、
CETP(コレステロールエステル輸送タンパク質)阻害剤;
コレステロール吸収アンタゴニスト;
MTP(ミクロソーム輸送タンパク質)阻害剤;
ニコチン酸誘導体であって、徐放性製品および組み合わせ製品を含めたもの;
フィトステロール化合物;
プロブコール;
抗肥満化合物、例えば、オルリスタト(orlistat)(EP129748号)およびシブトラミン(sibutramine)(GB2,184,122号およびUS4,929,629号);
抗高血圧化合物、例えば、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、アドレナリン作動性(andrenergic)遮断薬、αアドレナリン作動性遮断薬、βアドレナリン作動性遮断薬、混合α/βアドレナリン作動性遮断薬、アドレナリン作動性刺激薬、カルシウムチャンネル遮断薬、AT−1受容体遮断薬、塩排泄薬、利尿薬または血管拡張薬;
CB1アンタゴニストまたはインバースアゴニスト、例えば、リモナバント(rimonabant);
別のメラニン凝集ホルモン受容体I(MCHr1)アンタゴニスト;
PDK阻害剤;または
核内受容体のモジュレーター、例えば、LXR、FXR、RXRおよびRORα;
SSRI;
セロトニンアンタゴニスト
より選択される一つまたはそれを超える薬剤;
またはその薬学的に許容しうる塩、溶媒和化合物、このような塩の溶媒和化合物またはプロドラッグの同時の、逐次的なまたは別々の投与と一緒に含む組合せ処置を提供する。
【0068】
したがって、本発明のもう一つの特徴において、2型糖尿病およびその関連合併症の処置を必要としているヒトなどの温血動物の2型糖尿病およびその関連合併症の処置方法であって、この動物に、有効量の式I〜Iaの化合物、またはその薬学的に許容しうる塩、溶媒和化合物、このような塩の溶媒和化合物またはプロドラッグを、この組合せの項に記載の他のクラスの化合物の内の一つによる有効量の化合物、またはその薬学的に許容しうる塩、溶媒和化合物、このような塩の溶媒和化合物またはプロドラッグと同時の、逐次的なまたは別々の投与で投与することを含む方法を提供する。
【0069】
したがって、本発明のもう一つの特徴において、高脂血症状態の処置を必要としているヒトなどの温血動物の高脂血症状態を処置する方法であって、この動物に、有効量の式I〜Iaの化合物、またはその薬学的に許容しうる塩、溶媒和化合物、このような塩の溶媒和化合物またはプロドラッグを、この組合せの項に記載の他のクラスの化合物の内の一つによる有効量の化合物、またはその薬学的に許容しうる塩、溶媒和化合物、このような塩の溶媒和化合物またはプロドラッグと同時の、逐次的なまたは別々の投与で投与することを含む方法を提供する。
【0070】
本発明のもう一つの側面により、医薬組成物であって、式I〜Iaの化合物、またはその薬学的に許容しうる塩、溶媒和化合物、このような塩の溶媒和化合物またはプロドラッグと、この組合せの項に記載の他のクラスの化合物の内の一つによる化合物、またはその薬学的に許容しうる塩、溶媒和化合物、このような塩の溶媒和化合物またはプロドラッグとを、薬学的に許容しうる希釈剤または担体と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0071】
本発明のもう一つの側面により、キットであって、式I〜Iaの化合物、またはその薬学的に許容しうる塩、溶媒和化合物、このような塩の溶媒和化合物またはプロドラッグと、この組合せの項に記載の他のクラスの化合物の内の一つによる化合物、またはその薬学的に許容しうる塩、溶媒和化合物、このような塩の溶媒和化合物またはプロドラッグとを含むキットを提供する。
【0072】
本発明のもう一つの側面により、キットであって、
(a)第一単位剤形の式I〜Iaの化合物、またはその薬学的に許容しうる塩、溶媒和化合物、このような塩の溶媒和化合物またはプロドラッグ;
(b)第二単位剤形の、この組合せの項に記載の他のクラスの化合物の内の一つによる化合物、またはその薬学的に許容しうる塩、溶媒和化合物、このような塩の溶媒和化合物またはプロドラッグ;および
(c)これら第一および第二剤形を含有するための容器手段
を含むキットを提供する。
【0073】
本発明のもう一つの側面により、キットであって、
(a)第一単位剤形の、薬学的に許容しうる希釈剤または担体と一緒の式I〜Iaの化合物、またはその薬学的に許容しうる塩、溶媒和化合物、このような塩の溶媒和化合物またはプロドラッグ;
(b)第二単位剤形の、この組合せの項に記載の他のクラスの化合物の内の一つによる化合物、またはその薬学的に許容しうる塩、溶媒和化合物、このような塩の溶媒和化合物またはプロドラッグ;および
(c)これら第一および第二剤形を含有するための容器手段
を含むキットを提供する。
【0074】
本発明の別の特徴により、ヒトなどの温血動物の代謝症候群または2型糖尿病およびその関連合併症の処置に用いるための薬剤の製造における、式I〜Iaの化合物、またはその薬学的に許容しうる塩、溶媒和化合物、このような塩の溶媒和化合物またはプロドラッグと、この組合せの項に記載の他の化合物の内の一つ、またはその薬学的に許容しうる塩、溶媒和化合物、このような塩の溶媒和化合物またはプロドラッグの使用を提供する。
【0075】
本発明の別の特徴により、ヒトなどの温血動物の高脂血症状態の処置に用いるための薬剤の製造における、式I〜Iaの化合物、またはその薬学的に許容しうる塩、溶媒和化合物、このような塩の溶媒和化合物またはプロドラッグと、この組合せの項に記載の他の化合物の内の一つ、またはその薬学的に許容しうる塩、溶媒和化合物、このような塩の溶媒和化合物またはプロドラッグの使用を提供する。
【0076】
本発明のもう一つの側面により、組合せ処置であって、このような治療的処置を必要としているヒトなどの温血動物への、薬学的に許容しうる希釈剤または担体と一緒であってよい、有効量の式I〜Iaの化合物、またはその薬学的に許容しうる塩、溶媒和化合物、このような塩の溶媒和化合物またはプロドラッグの投与を、薬学的に許容しうる希釈剤または担体と一緒であってよい、この組合せの項に記載の他の化合物の内の一つ、またはその薬学的に許容しうる塩、溶媒和化合物、このような塩の溶媒和化合物またはプロドラッグの有効量の同時の、逐次的なまたは別々の投与と一緒に含む組合せ処置を提供する。
【実施例】
【0077】
実験の部
本発明を、ここで、発明を制限すると解釈されるべきではない次の実施例で更に詳細に記載する。
【0078】
略語:
Ac アセチル
BSA ウシ血清アルブミン
Bu ブチル
t−Boc tert−ブチルオキシカルボニル
CHO チャイニーズハムスター卵巣(細胞)
DCM 塩化メチレン、CHCl
DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
DTT ジチオトレイトール
EDC 1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩
EDTA エチレンジアミン四酢酸
ELS 蒸発光散乱
ESI エレクロトスプレーイオン化
Et エチル
GDP グアノシン5’−二リン酸
GPCR Gタンパク質共役受容体
GTP グアノシン三リン酸
HATU O−(アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
hERG ヒトether−a−go−go関連遺伝子(カリウムイオンチャンネル)
HEPES N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
HOAt 1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール
LC 液体クロマトグラフィー
MS 質量分光法
NMP N−メチルピロリジノン
PyBroP ブロモトリスピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
TBTU N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)ウロニウムテトラフルオロボレート
TEA トリエチルアミン
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
Tris トリスヒドロキシメチルアミノメタン
t tert
rt 室温
sat. 飽和
br 幅広
bs 幅広一重線
d 二重線
dd 二重の二重線
dt 二重の三重線
m 多重線
q 四重線
s 一重線
t 三重線
一般的な実験手順
フラッシュカラムクロマトグラフィーは、MERCK順相シリカゲル60Å(40〜63μm)、またはFLASH12+MまたはFLASH25+Mまたは40+Mシリカカートリッジを装備した Biotage Horizon Pioneer(登録商標)HPFCシステムを用いた。質量スペクトルは、空気圧で補助されたエレクトロスプレー界面を装備した Waters Micromass ZQ単一四重極で記録した(LC−MS)。
【0079】
HPLC分析は、Gynkotek UVD170S UV−Vis検出器を含む勾配ポンプ、Gynkotek P580HPGで行った。カラム:Chromolith Performance RP−18e;4.6x100mm;移動相A:アセトニトリル;移動相B:0.1%TFA(水性);流量:3mL/分;注入容量:20μl;検出:254nmおよび275nm。
【0080】
精製は、Waters X−terra(登録商標)Prep MS C18カラム、250mmx50mm(10μm)を装備した半分取HPLC、Shimadzu LC−8A、Shimadzu SPD−10A UV−vis検出器で;または Kromasil 10μm C8 250mmx20mmカラムを装備した、UV−検出を含む Waters Prep LC2000で;またはWaters Symmetry(登録商標)100mmx19mm C18 5μmカラムを装備した半分取HPLC、Shimadzu LC−8A、Shimadzu SPD−10A UV−vis検出器で行った。
【0081】
H NMRおよび13C NMRのスペクトルは、Varian Unity Plus 400mHz;または Varian Inova 500MHz;または Varian Unity Plus 600MHz;または Bruker Avance 300MHz;または Varian Gemini 2000 300MHzにおいて298Kで得た。化学シフトは、内部標準を、CDCl δ7.26,δ77.2;MeOH−d δ3.31,δ 49.0;DMSO−d δ2.50;δ39.5ppmとして、溶媒残留ピークについてppmで与えられている。
【0082】
マイクロ波加熱は、Personal Chemistry(Uppsala, Sweden)製の Smith Creator 中で単一ノード加熱を用いて行った。
化学名(IUPAC)は、ソフトウェアACD/Name バージョン8.05を用いて得た。出発物質の名称/参照番号(CAS番号)は、商業的に入手可能かまたは、参考文献手順にしたがって製造される。
【0083】
(3R)−1−(4−ニトロ−2−メトキシフェニル)ピロリジン−3−オール、851690−75−0;3−アミノ−5−(4−クロロフェニル)チオフェン−2−カルボン酸メチル、91076−93−6;5−(4−クロロフェニル)−3−{[(1E)−(ジメチルアミノ)メチレン]アミノ}チオフェン−2−カルボン酸メチル、515141−52−3;(R)−(+)−3−ピロリジノール、2799−21−5;5−ブロモ−2−ニトロピリジン、39856−50−3;(S)−(−)−3−ピロリジノール、100243−39−8;3−ブロモピリジン、626−55−1;5−(4−クロロフェニル)チオフェン−2−カルボン酸、40133−14−0。
実施例
実施例1
6−(4−クロロフェニル)−3−{4−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]−3−メトキシフェニル}チエノ[3,2−d][1,2,3]トリアジン−4(3H)−オン
(a)3−アミノ−5−(4−クロロフェニル)チオフェン−2−カルボン酸
3−アミノ−5−(4−クロロフェニル)チオフェン−2−カルボン酸メチル(2.00g,7.47mmol)を、50mLの水および50mLのMeOH中のKOH(2.0g,36mmol)の溶液中で2時間還流させた。MeOHを蒸発させ、残留物を水で希釈して二倍容量にし、酢酸エチルで洗浄した。水性層を、NaHSO(水性)で酸性にし、沈殿を濾過し、水で洗浄し、乾燥させて、1.85g(98%)の所望の化合物を生じた。
【0084】
1H NMR (DMSO-d6) δ 7.62 (m, 2H), 7.48 (m, 2H), 6.96 (s, 1H)。
(b)(3R)−1−(4−アミノ−2−メトキシフェニル)ピロリジン−3−オール
(3R)−1−(4−ニトロ−2−メトキシフェニル)ピロリジン−3−オール(0.281g,1.18mmol)を、20mLのジオキサン中に溶解させ、50mgのPd(OH)/Cを加えた。そのニトロ化合物を、3気圧で4時間水素化した。混合物を濾過し、触媒をジオキサンで洗浄した。合わせた濾液を蒸発させ、そして生成物を、更に精製することなく、工程(c)に用いた。
【0085】
MS(ESI) 209(M+1H)。
(c)3−アミノ−5−(4−クロロフェニル)−N−{4−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]−3−メトキシフェニル}チオフェン−2−カルボキサミド
3−アミノ−5−(4−クロロフェニル)チオフェン−2−カルボン酸(0.300g,1.18mmol)を、10mLのNMP中に溶解させた。HATU(0.562g,1.48mmol)およびDIPEA(0.62mL,3.5mmol)を加えた。その反応を4時間撹拌し、そして(3R)−1−(4−アミノ−2−メトキシフェニル)ピロリジン−3−オール(0.246g,1.18mmol)を加えた。反応混合物を80℃に4時間加熱後、100mLの水中に注ぎ、NaHCO(水性)でアルカリ性にした。その混合物をEtOAcで3回抽出し、合わせた有機層を水で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、蒸発させた。残留物を、シリカゲル上において95/5のDCM/MeOHでフラッシュクロマトグラフィー分離した。その物質を、MeOHから再結晶させて(部分溶解させて)、純粋にした。収率:0.300g(57%)。
【0086】
1H NMR (DMSO-d6) δ 9.07 (s, 1H), 7.61 (d, 2H), 7.49 (d, 2H), 7.25 (m, 1H), 7.12 (m, 1H), 6.98 (s, 1H), 6.60-6.50 (m, 3H), 4.76 (bd, 1H), 4.26 (m, 1H), 3.69 (s, 3H), 3.45 (m, 1H), 3.10 (m, 1H), 2.95 (m, 1H), 1.93 (m, 1H), 1.71 (m, 1H)。
【0087】
(d)6−(4−クロロフェニル)−3−{4−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]−3−メトキシフェニル}チエノ[3,2−d][1,2,3]トリアジン−4(3H)−オン
3−アミノ−5−(4−クロロフェニル)−N−{4−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]−3−メトキシフェニル}チオフェン−2−カルボキサミド(0.150g,0.338mmol)を、5mLの酢酸および1mLの水中に溶解させた。亜硝酸ナトリウム(26mg,0.38mmol)を加え、反応を45分間撹拌した。反応混合物を50mLの水中に注ぎ、1M NaOHでアルカリ性にした後、それを、DCMで3回抽出した。合わせた有機層を、水で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、蒸発させた。残留物を、DMSO/MeOHから再結晶させた。その生成物を、分取HPLC(Chromasil C8 50x300mm)により、30/70〜>100/0のCHCN/0.1M NHOAcを用いて更に精製した。適当な画分を蒸発させ、DMSOから凍結乾燥させて、9.5mg(6.2%)の標題化合物を生じた。
【0088】
1H NMR (DMSO-d6) δ 8.34 (s, 1H), 7.95 (d, 2H), 7.57 (d, 2H), 7.12 (bs, 1H), 7.03 (m, 1H), 6.69 (d, 1H), 4.85 (幅広, 1H), 4.30 (幅広, 1H), 3.72 (s, 3H), 3.60 (m, 1H), 3.45 (m, 1H), 3.15 (m, 1H), 1.94 (m, 1H), 1.79 (m, 1H)。
【0089】
MS(ESI) 455/457(M+1H)。
実施例2
6−(4−クロロフェニル)−3−{3−(ヒドロキシメチル)−4−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]フェニル}チエノ[3,2−d][1,2,3]トリアジン−4(3H)−オン
(a)(3R)−1−[2−(ヒドロキシメチル)−4−ニトロフェニル]ピロリジン−3−オール
2−クロロ−5−ニトロベンジルアルコール(4.0g,21mmol)を、(R)−3−ピロリジノールに加え、そのままの混合物を100℃で20時間撹拌した。その冷混合物に、TEA(2.9mL,21mmol)を加え、そして混合物を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより、DCM/MeOH(10/2)で溶離して精製した。残留物を、ジエチルエーテルおよび水で洗浄し、固体を濾去して、4.4g(87%)の所望の生成物を生じた。
【0090】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 8.1 (d, 1H), 7.9 (dd, 1H), 6.63 (d, 1H), 5.35 (t, 1H), 5.0 (d, 1H), 4.6-4.5 (m, 2H), 4.32 (bs, 1H), 3.35-3.8 (m, 4H), 2.0-1.8 (m, 2H)。
【0091】
(b)(3R)−1−[4−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)フェニル]ピロリジン−3−オール
(3R)−1−[2−(ヒドロキシメチル)−4−ニトロフェニル]ピロリジン−3−オール(1.15g,4.82mmol)を、40mLのジオキサン中に溶解させ、130mgのPd(OH)/Cを加えた。そのニトロ化合物を、3気圧で4時間水素化した。混合物を濾過し、触媒をジオキサンで洗浄した。合わせた濾液を蒸発させ、そして生成物を、更に精製することなく、工程cに用いた。
【0092】
MS(ESI) 209(M+1H)。
(c)3−アミノ−5−(4−クロロフェニル)−N−{3−(ヒドロキシメチル)−4−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]フェニル}チオフェン−2−カルボキサミド
3−アミノ−5−(4−クロロフェニル)チオフェン−2−カルボン酸(1.2g,4.8mmol)、HATU(2.28g,6.0mmol)およびDIPEA(1.86g,14.4mmol)を、400mLのNMPに加えた。その反応を50分間撹拌し、そして(3R)−1−[4−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)フェニル]ピロリジン−3−オール(1.0g,4.8mmol)を加えた。反応混合物を80℃に3時間加熱後、100mLの水中に注いだ。固体を濾去し、その収量をアセトニトリル中で30分間還流させ、そして生成物を濾過によって単離して、0.75g(35%)の標題化合物を生じた。
【0093】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 9.l5 (s, 1H), 7.7-7.6 (m, 3H), 7.38 (d, 2H), 7.35 (d, 1H), 6.98 (s, 1H), 6.75 (d, 1H), 6.57 (s, 2H), 5.0 (bs, 1H), 4.8 (d, 1H), 4.44 (bs, 2H), 4.27 (bs, 1H), 3.3-3.15 (m, 1H), 3.1-2.85 (m, 2H), 2.1-1.7 (m, 2H)。
【0094】
(d)6−(4−クロロフェニル)−3−{3−(ヒドロキシメチル)−4−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]フェニル}チエノ[3,2−d][1,2,3]トリアジン−4(3H)−オン
3−アミノ−5−(4−クロロフェニル)−N−{3−(ヒドロキシメチル)−4−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]フェニル}チオフェン−2−カルボキサミド(0.6g,1.35mmol)を、12mLの酢酸および2.4mLの水中に溶解させ、混合物を氷浴上で冷却した。水(1mL)中に溶解した亜硝酸ナトリウム(100mg,1.44mmol)を加え、その反応を0℃で15分間撹拌した。反応混合物を100mLの氷水中に注ぎ、固体を濾去した。粗生成物を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより、DCM/アセトン(10/3〜10/8の勾配)で溶離して精製した。生成物をMeOHで処理し、固体を濾去して、0.3g(49%)の標題化合物を生じた。
【0095】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 8.47 (s, 1H), 8.06 (d, 2H), 7.69 (d, 2H), 7.63 (d, 1H), 7.42 (dd, 1H), 6.95 (d, 1H), 5.29 (t, 1H), 5.0 (d, 1H), 4.7-4.6 (m, 2H), 4.42 (bs, 1H), 3.65-3.5 (m, 2H), 3.3-3.15 (m, 2H), 2.15-1.85 (m, 2H)
実施例3
6−(4−クロロフェニル)−3−{6−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]ピリジン−3−イル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン
(a)(3R)−1−(5−ニトロピリジン−2−イル)ピロリジン−3−オール
2−クロロ−5−ニトロピリジン(2g,0.013mol)および(R)−(+)−3−ピロリジノール(2.2g,0.025mol)の混合物を、100℃に12時間加温した。反応終了後、それをrtに冷却させた。その反応を、DCM(50mL)および1N水性NaOH(50mL)で希釈した。水性層をDCM(2x50mL)で抽出した。合わせた有機相を、ブラインで洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、濃縮して、標題化合物を2.5g(95%)の黄色固体として得た。
【0096】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 9.09 (d, 1H), 8.23 (dd, 1H), 6.37 (d,1H), 4.71 (s, 1H), 3.75 (bs, 5H), 2.18 (bs, 2H)。
(b)(3R)−1−(5−アミノピリジン−2−イル)ピロリジン−3−オール
(3R)−1−(5−ニトロピリジン−2−イル)ピロリジン−3−オール(0.3g,1.43mmol)を、10mLのジオキサン中に溶解させ、30mgのPd(OH)/Cを加えた。そのニトロ化合物を、3気圧で3時間水素化した。混合物を濾過し、触媒をジオキサンで洗浄した。合わせた濾液を蒸発させ、そして生成物を、更に精製することなく、工程に用いた。
【0097】
MS(ESI) 180(M+1H)。
(c)6−(4−クロロフェニル)−3−{6−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]ピリジン−3−イル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン
(3R)−1−(5−アミノピリジン−2−イル)ピロリジン−3−オール(1.43mmol)および5−(4−クロロフェニル)−3−{[(1E)−(ジメチルアミノ)メチレン]アミノ}チオフェン−2−カルボン酸メチル(0.46g,1.43mmol)を、フェノール(1g)に加え、反応混合物を120℃で1時間撹拌した。その冷混合物に、ジエチルエーテル(10mL)を加えた。沈殿を濾去し、ジエチルエーテルおよびアセトンで洗浄し、乾燥させて、103mg(17%)の標題化合物を生じた。
【0098】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 8.35 (s, 1H), 8.12 (d, 1H), 7.94 (s, 1H), 7.88 (d, 2H), 7.61 (dd, 1H), 7.54 (d, 2H), 6.52 (d, 1H), 4.95 (d, 1H), 4.38 (bs, 1H), 3.55-3.3 (m, 4H), 2.1-1.85 (m, 2H)。
【0099】
実施例4
6−(4−クロロフェニル)−3−{5−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]ピリジン−2−イル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン
(a)(3R)−1−(6−ニトロピリジン−3−イル)ピロリジン−3−オール
5−ブロモ−2−ニトロピリジン(2g,0.0098mol)および(R)−(+)−3−ピロリジノール(1.7g,0.0197mol)の混合物を、不活性雰囲気下において100℃に12時間加温した。反応終了後、それを、rtにさせ、DCM(50mL)および1N NaOH(50mL)で希釈した。二層を分離した。有機層をブラインで洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、濃縮した。粗生成物を、カラムクロマトグラフィーにより、石油エーテル中の70%EtOAcを溶離剤として用いて精製した。純粋な画分を濃縮後に得られた生成物を、ヘキサンで更に洗浄して、標題化合物を1.4g(68%)の褐色固体として得た。
【0100】
1H-NMR (400 MHz, MeOD): δ 8.25 (d, 1H), 7.86 (d, 1H), 7.15 (dd, 1H), 4.64 (bs, 1H), 3.75-3.5 (m, 4H), 2.3-2.1 (m,2H)。
(b)(3R)−1−(6−アミノピリジン−3−イル)ピロリジン−3−オール
(3R)−1−(6−ニトロピリジン−3−イル)ピロリジン−3−オール(0.4g,1.91mmol)を、10mLのジオキサン中に溶解させ、180mgのPd(OH)/Cを加えた。そのニトロ化合物を、3気圧で4時間水素化した。混合物を濾過し、触媒をジオキサンで洗浄した。合わせた濾液を蒸発させ、そして生成物を、更に精製することなく、工程に用いた。
【0101】
MS(ESI) 180(M+1H)。
(c)6−(4−クロロフェニル)−3−{5−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]ピリジン−2−イル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン
(3R)−1−(6−アミノピリジン−3−イル)ピロリジン−3−オール(1.91mmol)および5−(4−クロロフェニル)−3−{[(1E)−(ジメチルアミノ)メチレン]アミノ}チオフェン−2−カルボン酸メチル(0.62g,1.91mmol)を、フェノール(1.2g)に加え、反応混合物を120℃で1時間45分間撹拌した。その冷混合物に、ジエチルエーテル(15mL)を加えた。沈殿を濾去し、そしてその収量を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより、DCM/MeOH(10/1)で溶離して精製した。生成物をアセトン中で還流させ、固体を濾去して、85mg(10%)の標題化合物を生じた。
【0102】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 8.46 (s, 1H), 7.93 (s, 1H), 7.89 (d, 1H), 7.84 (d, 1H), 7.55 (d, 2H), 7.48 (d, 1H), 7.07 (dd, 1H), 5.0 (d, 1H), 4.41 (bs, 1H), 3.5-3.35 (m, 3H), 3.2-3.1 (m, 1H), 2.15-1.85 (m, 2H)。
【0103】
実施例5
6−(4−クロロフェニル)−3−{5−[(3R)−3−ヒドロキシ−3−メチルピロリジン−1−イル]ピリジン−2−イル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン
(a)(3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸 tert−ブチル
NaOH溶液(200mL,20%)中の(S)−3−ピロリジノール(6g,0.068mol)の0℃溶液に、無水Boc(15g,0.068mol)を30分間にわたって滴加し、0℃で2.5時間撹拌した。次に、反応混合物を徐々に加温した。反応混合物を酢酸エチル(3x100mL)で抽出し、ブラインで洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濃縮した。粗生成物を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより、石油エーテル中の50%EtOAcを用いて精製した。収率:11.2g(87%)。その生成物を、工程(b)に直接用いた。
【0104】
(b)3−オキソピロリジン−1−カルボン酸 tert−ブチル
乾燥CHCl(200mL)中の工程(a)による生成物(10g,0.053mol)の溶液に、デスマーチンペルイオディナン(Dess-Martin periodinane)(45.3g,0.106mol)を窒素雰囲気下において0℃で加え、RTで2日間撹拌した。その反応混合物に、チオ硫酸ナトリウム溶液を加え、濾過した。二層を分離し、水性層をCHCl(2x100mL)で抽出した。合わせた有機層を、10%NaHCO溶液およびブラインで洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濃縮した。粗生成物を、カラムクロマトグラフィーにより、石油エーテル中の30%EtOAcを用いて精製した。収率=8.0g(81%)。その生成物を、工程(c)に直接用いた。
【0105】
(c)3−ヒドロキシ−3−メチルピロリジン−1−カルボン酸 tert−ブチル
メチルマグネシウムアイオダイド[乾燥エーテル(50mL)中の金属マグネシウム(1.73g,0.071mol)およびヨウ化メチル(4.7mL,0.074mol)より製造される]を、乾燥エーテル(150mL)中の工程(b)による生成物(6.6g,0.036mol)の溶液に、窒素雰囲気下において0℃で徐々に加えた。反応混合物をRTに徐々に加温し、1.5時間撹拌し、0℃に冷却後、それを飽和NHCl溶液で急冷した。二層を分離し、水性層を酢酸エチル(3x100mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濃縮した。粗生成物を、カラムクロマトグラフィーにより、石油エーテル中の40%EtOAcを用いて精製した。収率=3.4g(48%)。その生成物を、工程(d)に直接用いた。
【0106】
(d)3−メチルピロリジン−3−オール塩酸塩
工程(c)による生成物(2.4g,0.0119mol)を、HClで飽和したジエチルエーテル(50mL)中に入れ、RTで5時間撹拌した。反応混合物を濃縮した。このHCl塩(1.6g)を、工程(e)で精製することなく、そのままで次の工程に用いた。
【0107】
(e)3−メチル−1−(6−ニトロピリジン−3−イル)ピロリジン−3−オール
乾燥DMF(25mL)中の5−ブロモ−2−ニトロピリジン(2g,0.010mol)、ピロリジノール誘導体のHCl塩(1.62g,0.012mol)および乾燥KCO(4g,0.030mol)の混合物を、窒素雰囲気下において120℃で12時間加熱した。反応混合物をRTにし、濾過した。濾液を濃縮し、酢酸エチルを加え、水(3x100mL)およびブラインで洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濃縮した。粗生成物を、カラムクロマトグラフィーにより、石油エーテル中の50%EtOAcを用いて精製した。収率=1.1g(50%)。
【0108】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.16 (d, 1H), 7.79 (m, 1H), 6.83 (m, 1H), 3.70 (m, 1H), 3.57 (m, 1H), 3.46 (d, 1H), 3.42 (d, 1H), 2.05-2.20 (m, 2H), 1.57 (s, 3H)。
【0109】
(f)3−メチル−1−(6−アミノピリジン−3−イル)ピロリジン−3−オール
1−(6−ニトロピリジン−3−イル)−3−メチルピロリジン−3−オール(0.200g,0.896mmol)を、10mLのエタノール中に溶解させ、40mgの10%Pd/Cを加えた。そのニトロ化合物を、大気圧において3.5時間水素化した。その混合物を濾過し、触媒をエタノールで洗浄した。合わせた濾液を蒸発させ、そして生成物を、更に精製することなく、工程に用いた。
【0110】
MS(ESI) 194(M+1H)。
(g)6−(4−クロロフェニル)−3−[5−(3−ヒドロキシ−3−メチルピロリジン−1−イル)ピリジン−2−イル]チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン
1−(6−アミノピリジン−3−イル)−3−メチルピロリジン−3−オール(0.160g,0.828mmol)および5−(4−クロロフェニル)−3−{[(1E)−(ジメチルアミノ)メチレン]アミノ}チオフェン−2−カルボン酸メチル(0.267g,0.828mmol)を、3mLのメタノール中に溶解させ、そして反応混合物を、マイクロ波反応器中において140℃で10分間加熱した。溶媒を蒸発させ、そして粗生成物を、分取HPLC(Chromasil C8 50x300mm)により、5/95〜>50/50のCHCN/0.2%HOAcを用いて精製した。凍結乾燥後、23mg(6%)の標題化合物をその遊離塩基として得た。
【0111】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 8.45 (s, 1H), 7.75-8.00 (m, 4H), 7.40-7.60 (m, 3H), 7.02 (m, 1H), 4.83 (s, 1H), 3.20-3.50 (m, 4H DMSO中の水で一部不明瞭), 1.80-2.00 (m, 2H), 1.33 (s, 3H)。
【0112】
13C-NMR (100 MHz, DMSO-d6): δ 158.0, 156.6, 150.7, 149.3, 144.5, 137.6, 135.0, 132.2, 132.0, 130.0, 128.6, 122.8, 122.7, 122.5, 119.7, 76.1, 61.1, 47.2, 41.1, 26.4。
【0113】
MS(ESI) 439/441(M+1H)。
実施例6
2−(4−クロロフェニル)−6−{5−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]ピリジン−2−イル}チエノ[2,3−d]ピリダジン−7(6H)−オン
(a)(3R)−1−ピリジン−3−イルピロリジン−3−オール
(R)−3−ピロリジノール(0.560g,6.43mmol)および3−ブロモピリジン(4.16g,26.3mmol)の混合物に、マイクロ波加熱を220℃で5時間施した。1M NaOHを加え、その混合物をDCMおよびEtOAcで抽出した。合わせた有機層を、MgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残留物をトルエン中に溶解させ、数回濃縮して、過剰の3−ブロモピリジンを除去した。残留物にヘプタンを加え、そして混合物を加熱し、rtに冷却し、傾瀉して、0.36g(34%)の標題化合物を生じた。
【0114】
1H NMR (MeOH-d4) δ 7.79 (d, 1H, J=2.6 Hz), 7.74 (d, 1H, J=4.2 Hz), 7.15 (dd, 1H, J=8.4, 4.7 Hz), 6.90 (bd, 1H, J=8.4 Hz), 4.95 (bs, 1H), 3.46-3.35 (m, 2H), 3.28 (ddd, 1H, J=8.7, 8.7, 3.2 Hz), 3.17 (d, 1H, J=8.5 Hz), 2.15-1.96 (m, 2H)。
【0115】
13C NMR (MeOH-d4) δ 145.6, 136.7, 133.8, 125.3, 119.8, 71.5, 56.5, 46.3, 34.7。
(b)(3R)−1−(6−ブロモピリジン−3−イル)ピロリジン−3−オール
DCM(50mL)中の(3R)−1−ピリジン−3−イルピロリジン−3−オール(0.62g,3.78mmol)の0℃撹拌溶液に、DCM(5mL)中に溶解した2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサ−2,5−ジエン−1−オン(1.58g,3.85mmol)を加えた。その混合物をrtで一晩撹拌した。追加部分の2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサ−2,5−ジエン−1−オン(0.40g,0.98mmol)を加え、得られた混合物を更に30分間撹拌した。1M NaOHを加え、相を分離した。有機層を濃縮し、そして残留物を、C8−HPLC(0.1M NHOAc、5→100%CHCNの勾配)で精製して、0.316g(34%)の標題化合物を生じた。
【0116】
1H NMR (CDCl3) δ 7.42 (d, 1H, J=3.0 Hz), 7.08 (d, 1H, J=8.7 Hz), 6.55 (dd, 1H, J=8.7, 3.0 Hz), 4.54 (bs, 1H), 4.33 (b, 1H), 3.37-3.28 (m, 2H), 3.19-3.10 (m, 2H), 2.07-1.99 (m, 2H)。
【0117】
13C NMR (CDCl3) δ 143.1, 133.1, 127.6, 125.8, 121.3, 70.5, 55.9, 45.5, 34.0。
(c)5−(4−クロロフェニル)−3−ホルミルチオフェン−2−カルボン酸
乾燥THF(150mL)中の5−(4−クロロフェニル)チオフェン−2−カルボン酸(11g,0.046mol)の撹拌溶液に、n−BuLi(63mL,0.102mol,ヘキサン中の1.6M溶液)を、不活性雰囲気下において−78℃で滴加した。その温度を、0℃へと4時間にわたって徐々に上昇させた。反応混合物を−70℃に再冷却し、そして乾燥DMF(34mL,0.43mol)を徐々に加えた。DMFの添加終了後、温度を−10℃に上昇させ、2時間撹拌した。反応混合物を−30℃に再冷却し、1.5N HCl(50mL)を徐々に加え、反応をRTにさせた。反応混合物をEtOAc(4x200mL)で抽出した。合わせた有機層を、水(2x150mL)、ブライン(2x150mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濃縮した。粗生成物を、p−エーテル(100mL)で洗浄して、8gの標題化合物(65%)を与えた。これは、更に用いるのに十分に純粋であることが判明した(TLC、R=0.2(CHCl:MeOH,8:2))。この中間体は不安定であるので、それは、直ちに工程(d)で用いるべきである。
【0118】
(d)2−(4−クロロフェニル)チエノ[2,3−d]ピリダジン−7(6H)−オン
エタノール(30mL)中の5−(4−クロロフェニル)−3−ホルミルチオフェン−2−カルボン酸(3g,0.011mol)の撹拌溶液に、ヒドラジン水和物(0.65mL,0.013mol)を滴加した。これに、濃HCl(1.8mL,0.058mol)を滴加し、82℃に2日間加熱した。反応混合物を冷却させ、そして10%NaHCO(5mL)を、pH=8まで徐々に加えた。固体を濾過し、水(200mL)で洗浄し、乾燥させて、2.1gの標題化合物(71%)を与えた。
【0119】
1H NMR (DMSO-d6) δ 12.98 (bs, 1H), 8.39 (s, 1H), 7.98 (s, 1H), 7.88 (d, 2H, J=8.6 Hz), 7.59 (d, 2H, J=8.6 Hz)。
(e)2−(4−クロロフェニル)−6−{5−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]ピリジン−2−イル}チエノ[2,3−d]ピリダジン−7(6H)−オン
トルエン(1mL)中の2−(4−クロロフェニル)チエノ[2,3−d]ピリダジン−7(6H)−オン(0.192g,0.73mmol)、(3R)−1−(6−ブロモピリジン−3−イル)ピロリジン−3−オール(0.192g,0.73mmol,工程bによる)、CuO、trans−1,2−ビス(メチルアミノ)シクロヘキサンおよびKPOのN雰囲気下混合物を、110℃で一晩撹拌後、マイクロ波加熱を150℃で更に12時間行った。その混合物を、5:1のDCM/MeOHで希釈し、Celite を介して濾過し、濃縮した。C8−HPLC(0.1%HOAc、30→100%CHCNの勾配)での精製は、0.021g(33%)の標題化合物を生じた。
【0120】
1H NMR (DMSO-d6) δ 8.51 (s, 1H), 8.03 (s, 1H), 7.91 (d, 2H, J=8.7 Hz), 7.84 (d, 1H, J=2.6 Hz), 7.60 (d, 2H, J=8.7 Hz), 7.36 (d, 1H, J=8.7 Hz), 7.05 (dd, 1H, J=8.7, 2.8 Hz), 5.04 (br, 1H), 4.45 (bs, 1H), 3.49 (dd, 1H, J=10.4, 4.7 Hz), 3.46-3.30 (m, 2H, H2Oシグナルで不明瞭), 3.18 (bd, 1H, J=10.1 Hz), 2.13-1.90 (m, 2H)。
【0121】
13C NMR (DMSO-d6) δ 156.0, 150.8, 143.6, 141.4, 140.2, 135.5, 134.5, 133.3, 131.6, 130.9, 129.5, 128.3, 121.7, 120.8, 119.1, 69.2, 55.8, 45.4, 33.7。
MS(ESI+) 424.9(M+1H)。
【0122】
薬理学的性質
MCHr1受容体放射性リガンド結合。
検定は、ヒトメラニン凝集ホルモン受容体1(hMCHr1,5.45pmol/mgタンパク質;Euroscreen)を発現するCHO−K1細胞から調製された膜で行った。検定は、96ウェルプレートフォーマットにおいて、200μl/ウェルの最終反応容量で行った。各々のウェルに、結合用緩衝液(50mM Tris、3mM MgCl、0.05%ウシ血清アルブミン中で希釈された6μgの膜タンパク質を入れ、放射性リガンド125I−MCH(IM344 Amersham)を加えて、10000cpm(計数/分)/ウェルを生じた。各々のウェルに、DMSO中でまたはHOAc中で調製された適当な濃度の競合的アンタゴニストを2μl入れ、30℃で60分間放置した。非特異的結合は、1μM MCH(メラニン凝集ホルモン,H−1482 Bachem)とのインキュベーション後に残留しているものとして決定した。反応は、Micro 96 Harvester(Skatron Instruments, Norway)を用いたGF/Aフィルターへの反応の移行によって停止した。フィルターを検定緩衝液で洗浄した。フィルター上に保持された放射性リガンドを、1450 Microbeta TRILUX(Wallac, Finland)を用いて定量した。非特異的結合を、決定された全ての値から差し引いた。最大結合は、非特異的結合について決定された値の差し引き後に、全くの競合物質不存在下で決定されたものであった。いろいろな濃度での化合物の結合を、等式
y=A+((B−A)/1+((C/x)D)))
にしたがってプロットし、そしてIC50を算出したが、ここにおいて、
Aは、曲線の下部平坦域、すなわち、最終最小値yであり、
Bは、曲線の平坦域の上部、すなわち、最終最大値yであり、
Cは、曲線の中央値xである。これは、A+B=100の場合の対数EC50値である。
【0123】
Dは、勾配因子である。xは、既知の原x値である。yは、既知の原y値である。本明細書中に示される化合物は、上述のヒトMCHr結合検定において100nM未満のIC50を有した。好ましい化合物は、20nM未満の活性を有した。例えば、実施例1の化合物については、11nMのIC50値が得られた。
【0124】
MCH1機能検定
リコンビナントhMCHr(5.45pmol/mgタンパク質;Euroscreen)を発現する膜を、検定前に、検定緩衝液(50mM HEPES、100mM NaCl、5mM MgCl、1mM EDTA、200μM DTT、0.1μg/mLのBSAを含有する20μM GDP(Sigma)、pH7.4)中で調製した。それら検定は、200μLの検定容量中に6μg/ウェルの膜、およびDMSOまたはHOAc中で調製された適当な濃度の化合物を用いて行った。反応は、0.056nM[35S]GTPγS(比活性>1000Ci/mmol;Amersham)およびED80濃度のMCH(各々の膜および各々のMCHバッチについて決定される)の添加によって開始した。非特異的結合は、20μMの非放射性標識GTPγSを用いて決定した。プレートを30℃で45分間インキュベートした。フリーのおよび結合したGTPγSを、Micro 96細胞採取器(Skatron Instruments)を用い、洗浄緩衝液(50mM Tris、5mM MgCl、50mM NaCl、pH7.4)中に予め浸漬したGF/Bフィルターマットを用いた濾過結合によって分離した後、それらフィルターを50℃で乾燥後、1450 Microbeta TRILUX(Wallac)を用いて計数した。データは、三重反復で行われた実験の平均±SDである。アンタゴニストのIC50値は、Activity Base を用いた濃度反応曲線の非線形回帰分析を用いて決定した。
【0125】
hERG活性
hERG試験は、Kiss L, Bennett PB, Uebele VN, Koblan KS, Kane SA, Neagle B, Schroeder K. “High throughput ion-channel pharmacology: planar-array-based voltage clamp.” Assay Drug Dev Technol. 1, 127-35. (2003) に記載の方法の変法を用いて行った。実施例1の化合物は、上述の検定において、5μMを超えるIC50を有した。
【0126】
マウスの食事性肥満症モデル
肥満症および関連状態の処置における本発明の化合物の有用性は、カフェテリア食で誘発された肥満マウスにおける体重の減少によって示される。雌C57Bl/6Jマウスに、高カロリー「カフェテリア」食(ソフトチョコレート/ココアタイプペストリー、チョコレート、脂肪質チーズおよびヌガー)および標準的な実験動物用飼料を、45〜50グラムの体重に達するまで8〜10週間自由摂取させた。次に、試験される化合物を、1日1回最低5日間全身投与し(iv、ip、scまたはpo)、そしてそれらマウスの体重を毎日基準で監視した。この期間中、高カロリー「カフェテリア」食および標準的な実験動物用飼料の自由摂取を維持した。脂肪過多についての同時評価は、ベースラインおよび研究終了時のDEXA画像によって行った。血液試料採取も行って、肥満症関連血漿マーカーの変化を検定した。本発明の化合物は、脂肪質量の減少による主な作用で、有意の体重減少を誘発する。
【0127】
本発明の化合物は、先行技術で知られている化合物よりも効力があり、選択的であり(例えば、hERGなどのイオンチャンネルに対しておよび/またはMCHr1に関係したGPCRに対して)、in vivo で有効であり、毒性が少ない、副作用を生じることが少ない、容易に吸収される、代謝されることが少ない、および/またはより良い薬物動態学的プロフィールを有する、または先行技術で知られている化合物にまさる他の有用な薬理学的または物理化学的性質(例えば、溶解性)を有することがありうるという利点を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

[式中、AおよびBは、独立して、CまたはNであり、
DおよびEは、独立して、CまたはNであり、
X−Yは、N=Cであり(但し、A、B、DまたはEの少なくとも一つは、Nであるという条件付きである)、または
X−Yは、C=Nであり、または
XはNHであり且つYはC=Oであり、または
X−Yは、N=Nであり、
およびRは、独立して、H、C1−3アルキル(1個またはそれを超えるFで置換されていてよい)、C1−3アルコキシ(1個またはそれを超えるFで置換されていてよい)、ClまたはFであり、
は、H、F、Cl、シアノ、ヒドロキシ、C1−3アルコキシ(ヒドロキシ、メトキシ、または1個またはそれを超えるFで置換されていてよい)またはC1−3アルキル(ヒドロキシ、メトキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、または1個またはそれを超えるFで置換されていてよい)であり、
およびRは、独立して、H、オキソ、ヒドロキシ、C1−3アルコキシ(ヒドロキシ、メトキシ、または1個またはそれを超えるFで置換されていてよい)、C1−3アルキル(ヒドロキシ、メトキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、または1個またはそれを超えるFで置換されていてよい)またはC1−3アシルオキシであり、ここにおいて、アルキル部分は、1個またはそれを超えるメチル、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノまたはカルボキシで置換されていてもよく、
mは、0または1である]
を有する化合物、およびその互変異性体、光学異性体およびラセミ体、更には、それらの薬学的に許容しうる塩。
【請求項2】
A、BおよびEが、全てCであり、そしてDが、Nである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
X−Yが、C=Nである、または
X−Yが、N=Nである、請求項1〜2のいずれかに記載の化合物。
【請求項4】
AおよびBが、双方ともCであり、
DおよびEが、双方ともCであり、
X−Yが、C=Nである、または
X−Yが、N=Nである、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
X−Yが、N=Cである(但し、A、B、DまたはEの少なくとも一つは、Nであるという条件付きである)、請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
A、B、DおよびEが、全てCであり、
X−Yが、N=Nであり、
が、Cl、F、CF、CHF、CHF、メチル、OCFまたはOCHFであり、
が、H、Cl、FまたはCHであり、
が、H、F、Cl、ヒドロキシ、メトキシまたはヒドロキシメチルであり、ここにおいて、置換基Rは、縮合複素環式環系に相対してメタ位に置かれていて、
が、オキソ、ヒドロキシ、メトキシまたはヒドロキシメチルであり、
mが、0であり、そしてここにおいて、置換基Rは、ピロリジン環の3位に置かれていて、そして
が、Hである、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
A、BおよびEが、Cであり、そしてDが、Nであり、
X−Yが、N=CまたはC=Nであり、
が、Cl、F、CF、CHF、CHF、メチル、OCFまたはOCHFであり、
が、Hであり、
が、Hであり、
が、ヒドロキシまたはヒドロキシメチルであり、
mが、0であり、そしてここにおいて、置換基Rは、ピロリジン環の3位に置かれていて、そして
が、H、またはRと同じ位置に置かれたメチルである、請求項1〜6のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
次の、
6−(4−クロロフェニル)−3−{4−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]−3−メトキシフェニル}チエノ[3,2−d][1,2,3]トリアジン−4(3H)−オン、
6−(4−クロロフェニル)−3−{3−(ヒドロキシメチル)−4−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]フェニル}チエノ[3,2−d][1,2,3]トリアジン−4(3H)−オン;
6−(4−クロロフェニル)−3−{6−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]ピリジン−3−イル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン;
6−(4−クロロフェニル)−3−{5−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]ピリジン−2−イル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン;
6−(4−クロロフェニル)−3−{5−[3−ヒドロキシ−3−メチルピロリジン−1−イル]ピリジン−2−イル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン;
2−(4−クロロフェニル)−6−{5−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]ピリジン−2−イル}チエノ[2,3−d]ピリダジン−7(6H)−オン
の内の一つまたはそれを超える化合物、更には、それらの互変異性体、光学異性体およびラセミ体、更には、それらの薬学的に許容しうる塩。
【請求項9】
薬剤として用いるための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の式Iの化合物。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の式Iの化合物および薬学的に許容しうるアジュバント、希釈剤または担体を含む医薬製剤。
【請求項11】
肥満症に関連した状態の処置または予防のための薬剤の製造における、請求項1〜8のいずれか1項に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項12】
肥満症の処置に用いるための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
肥満症、精神障害、不安、不安・抑うつ性障害、抑うつ症、双極性障害、ADHD、認知障害、記憶障害、統合失調症、癲癇および関連状態、および神経障害および疼痛関連障害を処置する方法であって、それを必要としている患者に、薬理学的有効量の請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項14】
肥満症、II型糖尿病、代謝症候群を処置する方法、およびII型糖尿病の予防の方法であって、それを必要としている患者に、薬理学的有効量の請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む方法。

【公表番号】特表2009−501217(P2009−501217A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521360(P2008−521360)
【出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際出願番号】PCT/SE2006/000878
【国際公開番号】WO2007/011284
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【Fターム(参考)】