説明

泡沫芳香剤用エアゾール組成物及び該組成物を充填してなるエアゾール

【課題】長期間保管後も噴射された泡沫の形態を維持する時間が長く、低温条件下でも液相部が噴射に十分な流動性を有する、泡沫芳香剤用のエアゾール組成物及び該組成物を充填したエアゾールの提供。
【解決手段】泡沫芳香剤用のエアゾール組成物であって、脂肪酸塩、香料、初期泡保持性を有する第一の高分子(ゼラチン、寒天、アルギン酸Na、キサンタンガムなど)及び長期泡保持性を有する第二の高分子(CMC、カラギーナン、ローカストビーンガム、ヒドロキシエチルセルロースなど)を含有し、該組成物自身の初期泡保持時間が10分以上であることを特徴とするエアゾール組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡沫芳香剤、殊に浴室内で使用される泡沫芳香剤用のエアゾール組成物及び該組成物を充填してなるエアゾールに関する。
【背景技術】
【0002】
現代人のストレスの増加に伴い、様々なストレス解消法が提案されている。最近では、このようなストレス解消法の一つとしてアロマテラピーが注目されている。また、入浴もストレス解消法の一つである。そして、最近では入浴時に浴室内に芳香を放ち、入浴とアロマテラピーを同時に楽しむことも行われている。このような芳香を放つ芳香剤としては、入浴剤、エッセンシャルオイルなどが代表的であるが、最近になって、芳香を放つ泡沫を浴湯に浮かべるタイプの芳香剤が登場している。この芳香剤はエアゾール式であり、エアゾールから噴射された泡沫を湯に浮かべ、泡沫から発散される芳香と湯に漂う泡沫を眺めたり、時には泡沫を掌にのせてさわったりすることで使用者にリラックス効果を与えるものである。このため、この泡沫芳香剤の泡沫には湯と接触してもすぐには崩れず5分程度は形を維持することが求められる。そのため、泡沫芳香剤の泡沫としては、従来の整髪料やシェービングフォームに使用される泡沫よりも比較的堅い泡沫が使用されていた。しかしながら、この泡沫芳香剤を充填したエアゾールを長期間保管し、その後使用すると、泡沫の形態を維持する時間が短くなり、その結果、視覚及び触覚によるリラックス効果が減少することがあった。また、泡沫芳香剤を充填したエアゾールを低温で保管すると、エアゾール内の液相の流動性が低下し、泡沫を噴射し難くなることがあった(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−73228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、エアゾール製品として長期間保管後も噴射された泡沫の形態を維持する時間が長く、低温条件下でも噴射に十分な流動性を有する、泡沫芳香剤用のエアゾール組成物及び該組成物を充填したエアゾールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記従来技術の問題点に鑑み鋭意検討を重ねた結果、脂肪酸塩及び香料を含有するエアゾール組成物に初期泡保持性を有する第一の高分子及び長期泡保持性を有する第二の高分子を配合することによって、初期泡保持性に優れたエアゾール組成物が得られることを見出し、さらに、両高分子の配合量を適切な範囲から選択することによって、エアゾール製品として長期間保管後も噴射された泡沫の形態を維持する時間が長く、及び/又は低温条件下でも噴射に十分な流動性を有するエアゾール組成物が得られることを見出し、本発明のエアゾール組成物及びエアゾールを完成させた。
【0005】
すなわち、本発明は、次に掲げるエアゾール組成物及びエアゾールを提供するものである。
項1.泡沫芳香剤用のエアゾール組成物であって、脂肪酸塩、香料、初期泡保持性を有する第一の高分子及び長期泡保持性を有する第二の高分子を含有し、該組成物自体の初期泡保持時間が10分以上であることを特徴とするエアゾール組成物。
項2.第一の高分子の初期泡保持性は初期泡保持時間が10分以上かつ長期泡保持時間が初期泡保持時間の60%未満であり、第二の高分子の長期泡保持性は初期泡保持時間が5分以上10分未満の初期泡保持時間かつ長期泡保持時間が初期泡保持時間の60%以上であることを特徴とする項1に記載のエアゾール組成物。
項3.第一の高分子が、ゼラチン、寒天、アルギン酸ナトリウム及びキサンタンガムからなる群から選択される少なくとも1種の高分子であり、第二の高分子が、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、ローカストビーンガム及びヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択される少なくとも1種の高分子であることを特徴とする項1又は2に記載のエアゾール組成物。
項4.脂肪酸塩を0.8〜10重量%含有する項1〜3のいずれかに記載のエアゾール組成物。
項5.第一の高分子を0.05〜12重量%含有する項1〜4のいずれかに記載のエアゾール組成物。
項6.第二の高分子を0.05〜4.5重量%含有する項1〜5のいずれかに記載のエアゾール組成物。
項7.第一の高分子を0.05〜10重量%含有し、第二の高分子を0.05〜3.5重量%含有し、低温流動性を有する項1〜6のいずれかに記載のエアゾール組成物。
項8.第一の高分子を0.05〜12重量%含有し、第二の高分子を0.1〜4.5重量%含有し、長期泡保持時間が5分以上である項1〜7のいずれかに記載のエアゾール組成物。
項9.第一の高分子を0.05〜10重量%含有し、第二の高分子を0.1〜3.5重量%含有し、低温流動性を有し、かつ長期泡保持時間が5分以上である項1〜8のいずれかに記載のエアゾール組成物。
項10.脂肪酸塩を3〜6重量%含有する項1〜3のいずれかに記載のエアゾール組成物。
項11.第一の高分子を0.1〜1.1重量%含有し、第二の高分子を0.1〜1.1重量%含有する項10に記載のエアゾール組成物。
項12.第一の高分子を0.3〜0.9重量%含有し、第二の高分子を0.1〜0.8重量%含有し、低温流動性を有する項10又は11に記載のエアゾール組成物。
項13.第一の高分子を0.1〜1.1重量%含有し、第二の高分子を0.2〜1.1重量%含有し、長期泡保持時間が5分以上である項10〜12のいずれかに記載のエアゾール組成物。
項14.第一の高分子を0.3〜0.8重量%含有し、第二の高分子を0.2〜0.8重量%含有し、低温流動性を有し、かつ長期泡保持時間が5分以上である項10〜13のいずれかに記載のエアゾール組成物。
項15.項1〜14に記載のエアゾール組成物を充填してなる泡沫芳香剤用エアゾール。
【0006】
本発明のエアゾール組成物はエアゾールから噴射されて泡沫芳香剤となる。本発明における泡沫とは泡の集合体をいう。なお、以下の記載において泡沫を単に泡と表現することがある。泡沫芳香剤は、泡沫が芳香を放ち主として湯又は水に浮かべて使用され、泡沫の発散する芳香や湯に漂う泡沫の様子を眺めたり、時には掌で泡沫をすくって触れることなどで使用者にリラックス効果を与えることができる。従って、本発明のエアゾール組成物は、特に浴室内で使用される泡沫芳香剤の用途に適している。
【0007】
本発明において初期泡保持時間は初期泡保持特性試験によって計測される時間である。初期泡保持性試験は次のとおりである。エアゾール組成物及び液化石油ガスをエアゾール缶に充填した後、室温で24時間保管する。45℃の湯を1L入れた直径20cmのガラス製ビーカーを振盪器上におき、処方のエアゾール組成物を充填したエアゾール缶から1gの泡(略球状で直径5〜6cm程度の泡沫芳香剤)を噴出し、これを湯に浮かべ、60rpmで水平方向に回転振盪する。泡の状態を目視し、泡の高さが水面とほぼ同じ高さとなり、かつ、直径が3cmになるまでの時間をストップウオッチで計測し、初期泡保持時間とする。
【0008】
また、本発明において長期泡保持時間は長期泡保持特性試験によって計測される時間である。長期泡保持特性試験は次のとおりである。エアゾール組成物を充填したエアゾール缶を40℃で6ヶ月間保管する。保管後のエアゾール缶から泡を噴出し、あとは初期泡保持特性試験と同様にして泡保持時間を計測し、長期泡保持時間とする。
【0009】
泡沫芳香剤の泡保持時間が長いと使用者が泡を視覚的に楽しめるため、泡保持時間は長い方が良く、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上である。
【0010】
さらにまた、本発明において低温流動性は低温流動性試験によって確認される。低温流動性試験は次のとおりである。エアゾール組成物を充填したエアゾール缶を10℃で24時間静置した後、手で缶を上下に5往復振って缶中のエアゾール組成物が動くか否かを確認した後、エアゾール缶の噴出ノズルを押して泡が噴出可能か否かを確認した。ノズルを一度押して泡の形で泡沫芳香剤が噴出されるものは低温流動性が非常に良好であり、ノズルを押す回数が2〜5回の間に泡の形で泡沫芳香剤が噴出されるものは低温流動性が良好であり、ノズルを6回以上押しても泡沫芳香剤が噴出されないものは低温流動性が良くない。本発明において、低温流動性を有するものとは、低温流動性が良好であるものと非常に良好であるものを意味する。
【0011】
なお、これらの試験は第一の高分子及び第二の高分子を配合したエアゾール組成物だけでなく、高分子が第一高分子又は第二高分子に属するか否かを判定するために使用される1種類の高分子を配合したエアゾール組成物にも適用される。ある高分子が第一又は第二の高分子に該当するか否かを判定する際、表1に示した試験用エアゾール組成物にて泡保持性試験を行う。なお、表1の試験用組成物において初期設定されているポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドなどはここでいう判定対象の高分子に含まれない。
【0012】
上記の試験において使用されるエアゾール組成物の組成及びエアゾール缶の詳細は以下のとおりである。
試験用エアゾール缶:
円柱形(直径35mm、高さ120mm)のアルミニウム製エアゾール缶の液相部にエアゾール組成物を充填し、気相部に液化石油ガスを充填した。充填物の量は、エアゾール組成物と液化石油ガスの合計に対し、エアゾール組成物が80重量%、液化石油ガスが20重量%であった。なお、エアゾール缶は、バルブとして倒立用アルミステムψ0.41バルブ(日本プリシジョンバルブ株式会社製)を備え、スパウトとして4つ割バルカンスパウト(日本プリシジョンバルブ株式会社製)を備える。
試験用エアゾール組成物:
【0013】
【表1】

本発明のエアゾール組成物は、エアゾール容器に液相として充填されて噴射剤とともに噴射され、湯上に浮かぶ泡沫芳香剤となる。ここで湯は入浴に適した温度であることが好ましい。このようなエアゾール組成物は、脂肪酸塩及び香料を含有し、初期泡保持能を有する第一の高分子及び長期泡保持能を有する第二の高分子を含有し、該組成物自体の初期泡保持時間が10分以上であることを特徴とする。
【0014】
脂肪酸塩としては、例えば、炭素数12〜22の脂肪酸塩の1種又は2種以上を使用できる。また、エアゾール組成物を構成する他の成分に脂肪酸塩を加えてエアゾール組成物を調製してもよいが、他の成分に脂肪酸と該脂肪酸の中和剤を加えることによって脂肪酸と中和剤によって脂肪酸塩が形成され、その結果としてエアゾール組成物に脂肪酸塩が配合されるように調製しても良い。脂肪酸の例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、ヘプタデカン酸、イコサン酸などが挙げられ、好ましくはステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸であり、より好ましくはステアリン酸とミリスチン酸を重量比で3:1の割合で含む。脂肪酸塩としては、これら脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩などが挙げられる。好ましい脂肪酸は、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩であり、より好ましい脂肪酸塩はこれらのトリエタノールアミン塩である。エアゾール組成物における脂肪酸塩の配合量は、通常0.8〜10重量%、好ましくは1.0〜10重量%、より好ましくは3.0〜6.0重量%である。脂肪酸塩の配合量が3.0〜6.0重量%の範囲にあると、肌理が細かく、かつ、ふんわりとした風合い良い泡沫が得られる。
【0015】
なお、脂肪酸とその中和剤を配合する場合、配合する脂肪酸の80%以上が中和されて脂肪酸塩を形成していることが好ましく、脂肪酸の100%が中和されて脂肪酸塩を形成していることがより好ましい。中和剤としては、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、トリエタノールアミンが例示され、好ましくはトリエタノールアミンである。中和剤の配合量は、通常脂肪酸の80%以上が中和される量であるが、脂肪酸が完全に脂肪酸塩になるようにするため中和に必要な理論量より多く配合することが好ましい。
【0016】
本発明において第一の高分子は初期泡保持性を有するものであり、上記の泡保持性試験にて測定される長期泡保持時間が初期泡保持時間の60%未満である高分子である。好ましい第一の高分子は、初期泡保持時間が10分以上かつ長期泡保持時間が初期泡保持時間の60%未満の高分子である。ここで、「長期泡保持時間が初期泡保持時間の60%未満である」とは、例えば初期泡保持時間が10分であれば長期泡保持時間がその10分の60%未満、即ち6分未満であることをいう。第一の高分子をエアゾール組成物に配合すると、エアゾール製品製造当初において噴射される泡沫芳香剤の水上における形保持性が良好となり、また、10℃以下の低温条件下においてもエアゾール組成物の流動性の低下が少なく、噴射に必要な流動性を確保できる。第一の高分子としては、ゼラチン、寒天、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガムなどが例示され、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。好ましい第一の高分子は、ゼラチン、寒天、キサンタンガムであり、より好ましい第一の高分子はゼラチンである。第一の高分子の配合量は、通常0.05〜12重量%である。
【0017】
本発明において第二の高分子は長期泡保持性を有するものであり、上記の泡保持性試験にて測定される長期泡保持時間が初期泡保持時間の60%以上である高分子である。好ましい第二の高分子は、初期泡保持時間が5分以上10分未満かつ長期泡保持時間が初期泡保持時間の60%以上となる高分子である。ここで、「長期泡保持時間が初期泡保持時間の60%以上である」とは、例えば初期泡保持時間が10分であれば長期泡保持時間がその10分の60%以上、即ち6分以上であることをいう。
【0018】
第二の高分子を配合すると、エアゾール組成物をエアゾール容器に充填して40℃の環境下に6ヶ月の長期間保管した後の泡の水上における形保持性が良好となる。第二の高分子としては、イオタカラギーナン、ラムダカラギーナン、カッパカラギーナン、ローカストビーンガム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが例示され、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。好ましい第二の高分子は、カルボキシメチルセルロース、イオタカラギーナン、ラムダカラギーナンであり、より好ましい第二の高分子はカルボキシメチルセルロースである。第二の高分子の配合量は、通常0.05〜4.5重量%である。
【0019】
脂肪酸塩を1〜10重量%含有するエアゾール組成物は、第一の高分子及び第二の高分子の配合量に応じて、次のような特性を有する。第一の高分子を0.05〜12重量%含有し、第二の高分子を0.05〜4.5重量%含有し、初期泡保持時間が10分以上であるエアゾール組成物は、初期泡保持性が非常に良好である。
【0020】
また、第一の高分子を0.05〜10重量%含有し、第二の高分子を0.05〜3.5重量%含有し、初期泡保持時間が10分以上であり、かつ低温流動性を有するエアゾール組成物は、初期泡保持性が非常に良好であり、低温流動性が良好又は非常に良好である。
【0021】
また、第一の高分子を0.05〜12重量%含有し、第二の高分子を0.1〜4.5重量%含有し、初期泡保持時間が10分以上であり、かつ長期泡保持時間が5分以上であるエアゾール組成物は、初期泡保持性が非常に良好であり、長期泡保持性が良好である。
【0022】
また、第一の高分子を0.05〜10重量%含有し、第二の高分子を0.1〜3.5重量%含有し、初期泡保持時間が10分以上であり、かつ低温流動性を有し、かつ長期泡保持時間が5分以上であるエアゾール組成物は、初期泡保持性が非常に良好であり、長期泡保持性が良好であり、低温流動性が良好又は非常に良好であり、特に優れたエアゾール組成物である。
【0023】
脂肪酸塩の含有量が3〜6重量%含有するエアゾール組成物はさらに好ましく、第一の高分子及び第二の高分子の配合量に応じて、次のような特性を有する。第一の高分子を0.1〜1.1重量%含有し、第二の高分子を0.1〜1.1重量%含有し、初期泡保持時間が10分以上であるエアゾール組成物は、初期泡保持性が非常に良好である。
【0024】
また、第一の高分子を0.3〜0.9重量%含有し、第二の高分子を0.1〜0.8重量%含有し、初期泡保持時間が10分以上であり、かつ低温流動性を有するエアゾール組成物は、初期泡保持性が非常に良好であり、低温流動性が良好又は非常に良好である。
【0025】
また、第一の高分子を0.1〜1.1重量%含有し、第二の高分子を0.2〜1.1重量%含有し、初期泡保持時間が10分以上であり、かつ長期泡保持時間が5分以上であるエアゾール組成物は、初期泡保持性が非常に良好であり、長期泡保持性が良好である。
【0026】
また、第一の高分子を0.3〜0.8重量%含有し、第二の高分子を0.2〜0.8重量%含有し、初期泡保持時間が10分以上であり、かつ低温流動性を有し、かつ長期泡保持時間が5分以上であるエアゾール組成物は、初期泡保持性が非常に良好であり、長期泡保持性が良好であり、低温流動性が良好又は非常に良好であり、最も優れたエアゾール組成物である。
【0027】
本発明のエアゾール組成物は、上記の脂肪酸塩、第一の高分子及び第二の高分子に加え、水、香料が必須である。エアゾール組成物における水の配合量は通常20〜90重量%、好ましくは45〜85重量%である。
【0028】
香料は天然香料、合成香料いずれも使用でき、両者を組み合わせて使用することもできる。香料の例としては、天然の動物性香料としてはムスク、アンバーグリス、シベット、天然の植物性香料としてはベルガモット、ラベンダー、ローズ、カモミールなどの植物から抽出されたエッセンシャルオイルなど、合成香料としては、森林、ハーブなどのグリーン系、ローズ、ヒヤシンスなどのフローラル系、ピーチ、グリーンアップル、ストロベリー、メロンなどのフルーツ系の他、マリン系、シトラス系などリラックスやリフレッシュに適した香料を挙げることができる。好ましい香料は、天然香料としては植物から抽出されたエッセンシャルオイル、合成香料としてはグリーン系、フローラル系、マリン系の香料である。エアゾール組成物における香料の配合量は通常0.1〜5.0重量%、好ましくは0.5〜3.0重量%である。
【0029】
本発明のエアゾール組成物には、上記の脂肪酸塩、第一の高分子、第二の高分子、水及び香料に加え、任意に、ノニオン系界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、シリコン型界面活性剤、増粘剤、防腐剤、保湿剤、乳化安定剤、中和剤、顔料、色素、pH調整剤などを配合することができる。
【0030】
ノニオン性界面活性剤としては、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、アルキレンアルカノールアミド、アニオン界面活性剤としては、N-アシルアミノ酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホン酸塩、カチオン界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、両性界面活性剤としては、アルキルベタイン、イミダゾリニウムベタイン、アミンオキサイドなどを挙げることができる。
【0031】
本発明のエアゾール組成物のpHは、通常7.5〜9.0であり、好ましくは7.5〜8.5である。7.5〜8.5の範囲のpHの方がアルカリ性が弱いため、肌への刺激性が弱く好ましい。
【0032】
本発明のエアゾール組成物を製造する場合、先ず、脂肪酸、界面活性剤、保湿剤、乳化安定剤、防腐剤、水などを混合し、70℃〜80℃に温めながら、ゆっくりと撹拌し、均一な溶液とする。その後、中和剤を加えて脂肪酸をけん化し、石鹸溶液とする。次に、増粘剤、高分子、pH調整剤などを加えて粘度とpHを調整する。最後に、色素、香料などを加えてエアゾール組成物を製造する。
【0033】
本発明のエアゾールは、例えば、エアゾール組成物をエアゾール缶に充填し、バルブを閉める。液化石油ガス等の噴出ガスを加圧充填し、スパウトを取り付けることで製造できる。
【0034】
本発明のエアゾール組成物は、エアゾール容器の液相部に充填されて本発明のエアゾールを構成し、エアゾール容器の気相部に充填された噴射剤と共にエアゾールのノズルから噴射されて芳香性の泡を形成する。噴射剤としては、液化ガス、圧縮ガスなどが使用できる。液化ガスの例としては、プロパン、ブタン等の液化石油ガス、ジメチルエーテル等のエーテル系噴射剤、3−クロロ−1−フルオロメタン、2−クロロ−2−フルオロメタン、2−クロロ−4−フルオロエタン等のクロロフロロカーボン系噴射剤などを挙げることができ、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。好ましくは液化石油ガスである。圧縮ガスの例としては、炭酸ガス、窒素ガス、亜酸化窒素ガスなどを挙げることができ、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。好ましくは炭酸ガス、窒素ガスである。
【0035】
本発明のエアゾール組成物及び噴射剤を収容するエアゾール容器としては、通常、ブリキ、アルミニウムなどの金属製容器、ガラス容器、メラミン、ナイロン、ポリカーボネート、ジュラゴンなどの樹脂製容器などが使用される。好ましくは金属製容器である。
【0036】
エアゾール容器にはバルブが備え付けられる。バルブとしては、通常、バルブに取り付けたアクチュエーターを押し下げることで弁を開け内容物を放出するプッシュダウン式バルブ、アクチュエーターを傾けることで弁を開け内容物を放出するチルト式バルブ、ねじにより弁を開け内容物を放出するねじ式バルブなどが使用される。好ましくはプッシュダウン式バルブである。また、バルブの材質は特に限定されず、通常、樹脂製、金属製であり、好ましくは樹脂製である。また、バルブは、ボタンを押す時間で噴射量がコントロールされる形式であっても、一度ボタンを押すと一定量を噴射する形式であっても使用することができる。
【0037】
本発明のエアゾール組成物をエアゾール容器に充填する方法は、通常、加圧充填法、冷却充填法などであり、好ましくは加圧充填法である。加圧充填法には、容器内にエアゾール組成物を入れバルブを取り付けた後、バルブの間からエアー抜きし、噴射剤を充填しバルブを閉めるアンダーキャップ方式と、容器内にエアゾール組成物を入れエアー抜きしバルブを閉めた後、噴射剤を加圧充填するスルーザステム方式などがある。
【発明の効果】
【0038】
本発明のエアゾール組成物は、エアゾール製品製造当初において噴射される泡の湯上における形保持性が非常に良好である。また、本発明のエアゾール組成物をエアゾール容器に充填して長期間保管した後の泡の湯上における形保持性が良好である。また、本発明のエアゾール組成物を充填したエアゾールを低温条件下において保存してもエアゾール組成物の流動性が良好又は非常に良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、実施例及び比較例をあげて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0040】
本実施例において、初期泡保持性試験、長期泡保持性試験、低温流動性試験は下記のとおりである。
【0041】
初期泡保持性試験
45℃の湯を1L入れた直径20cmのガラス製ビーカーを振盪器上におき、エアゾール缶から1gの泡(略球状で直径5〜6cm程度の泡沫芳香剤)を噴出し、これを湯に浮かべ、60rpmで水平方向に回転振盪する。泡の状態を目視し、泡の高さが水面とほぼ同じ高さとなり、かつ直径が3cmになるまでの時間をストップウオッチで計測し、初期泡保持時間とする。
泡保持時間が10分以上であると使用者が泡を視覚的に十分楽しめるため、非常に良好な泡保持性(◎)と評価した。泡保持時間が5分以上10分未満であると使用者が泡を視覚的に楽しめるため、良好な泡保持性(○)と評価した。泡保持時間が5分未満であると使用者が泡を視覚的に楽しむ時間がほとんどなく悪い泡保持性(×)と評価した。
【0042】
長期泡保持性試験
エアゾール組成物を充填したエアゾール缶を40℃で6ヶ月間保管する。保管後のエアゾール缶から泡を噴出し、あとは初期泡保持特性試験と同様にして計測し、長期泡保持時間とする。泡保持時間が5分以上10分未満であると使用者が泡を視覚的に楽しめるため、良好な泡保持性(○)と評価した。泡保持時間が5分未満であると使用者が泡を視覚的に楽しむ時間がほとんどないが、長期保存しなければ使用できるため泡保持性(△)と評価した。
【0043】
低温流動性試験
エアゾール缶を10℃で24時間静置した後、手で缶を上下に5往復振って缶中のエアゾール組成物が動くか否かを確認した後、エアゾール缶の噴出ノズルを押して泡が噴出可能か否かを確認した。ノズルを一度押して泡の形で泡沫芳香剤が噴出されるものを非常に良好な低温流動性(◎)と評価した。ノズルを押す回数が2〜5回の間に泡の形で泡沫芳香剤が噴出されるものを良好な低温流動性(○)と評価した。ノズルを6回以上回押しても泡沫芳香剤が噴出されないものは低温流動性(△)と評価した。なお、低温流動性は△であっても常温での噴出には問題がない。また、本発明において、低温流動性を有するものとは、低温流動性が良好であるもの(○)と非常に良好であるもの(◎)を意味する。
【0044】
実験例1:第一の高分子と第二の高分子の選定
様々な高分子を用い上記表1に示した成分で試験用エアゾール組成物を調製した。すなわち、所定量のステアリン酸、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、シリコン系界面活性剤(ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体)、ポリオキシエチレン(60)硬化ひまし油、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、水を混合し、70〜80℃に温めながらゆっくりと撹拌し均質な溶液とした。次に、トリエタノールアミンを加えてステアリン酸をケン化し、石鹸溶液とした。次いで、高分子(ゼラチン、寒天、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、イオタカラギーナン、ラムダカラギーナン、ローカストビーンガム又はヒドロキシエチルセルロース)を加え、最後に色素及び森林香料を加えて撹拌し、試験用エアゾール組成物を調製し、これらを処方1〜9とした。
【0045】
得られたエアゾール組成物を上記の試験用エアゾール缶に充填してバルブを閉め、液化石油ガスを加圧充填し、スパウトをエアゾール缶に取り付けてエアゾール製品とし、初期泡保持性試験及び長期泡保持性試験を行った。結果を表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
実施例1:高分子の濃度を様々に変更したエアゾール組成物及びエアゾールの調製
脂肪酸(ステアリン酸:ミリスチン酸=3:1(重量比))の濃度を1重量%、4重量%及び10重量%とし、中和剤であるトリエタノールアミンを脂肪酸を中和するための理論量の1.2倍量使用し、各々の場合について、第一の高分子としてのゼラチン及び第二の高分子としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)を表3〜5に示した配合量とした以外は、実験例1の処方と同様にしてエアゾール組成物を調製し、初期泡保持性試験、長期泡保持性試験及び低温流動性試験を評価した。ただし、初期泡保持性試験で「×」評価のものは製品として利用価値がないため他の試験を行っていない。なお、表中の各欄の評価は左から初期泡保持性評価、長期泡保持性評価、低温流動性評価である。ただし、欄中「×」が一つのものは初期泡保持性評価を示す。
【0048】
【表3】

【0049】
【表4】

【0050】
【表5】

初期泡保持性試験において◎と評価された組成物は初期泡保持時間が長く初期泡保持性が非常に良好であり、○と評価された組成物は初期泡保持時間が5分以上10分未満であり初期泡保持性が良好であった。評価が「◎△○」及び「◎△◎」の組成物は、初期泡保持性が非常に良好であり、低温流動性が良好又は非常に良好であった。評価が「◎○△」の組成物は、初期泡保持性が非常に良好であり、長期泡保持性が良好であった。評価が「◎○○」及び「◎○◎」の組成物は、初期泡保持性が非常に良好であり、長期泡保持性が良好であり、低温流動性が良好又は非常に良好であり、総合的には、試験された組成物の中で最もバランスの良い性能を備えた組成物であった。
【0051】
脂肪酸塩の含有量が3〜6重量%含有するエアゾール組成物はさらに好ましく、第一の高分子及び第二の高分子の配合量に応じて、次のような特性を有する。第一の高分子を0.1〜1.1重量%含有し、第二の高分子を0.1〜1.1重量%含有し、初期泡保持時間が10分以上であるエアゾール組成物は、初期泡保持性が非常に良好である。
【0052】
また、第一の高分子を0.3〜0.9重量%含有し、第二の高分子を0.1〜0.8重量%含有し、初期泡保持時間が10分以上であり、かつ低温流動性を有するエアゾール組成物は、初期泡保持性が非常に良好であり、低温流動性が良好又は非常に良好である。
【0053】
また、第一の高分子を0.1〜1.1重量%含有し、第二の高分子を0.2〜1.1重量%含有し、初期泡保持時間が10分以上であり、かつ長期泡保持時間が5分以上であるエアゾール組成物は、初期泡保持性が非常に良好であり、長期泡保持性が良好である。
【0054】
また、第一の高分子を0.3〜0.8重量%含有し、第二の高分子を0.2〜0.8重量%含有し、初期泡保持時間が10分以上であり、かつ低温流動性を有し、かつ長期泡保持時間が5分以上であるエアゾール組成物は、初期泡保持性が非常に良好であり、長期泡保持性が良好であり、低温流動性が良好又は非常に良好であり、最も優れたエアゾール組成物である。
【0055】
処方例
下記表6に示す成分を使用し、実施例1と同様にしてエアゾールを製造した。
【0056】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
泡沫芳香剤用のエアゾール組成物であって、脂肪酸塩、香料、初期泡保持性を有する第一の高分子及び長期泡保持性を有する第二の高分子を含有し、該組成物自体の初期泡保持時間が10分以上であることを特徴とするエアゾール組成物。
【請求項2】
第一の高分子の初期泡保持性は初期泡保持時間が10分以上かつ長期泡保持時間が初期泡保持時間の60%未満であり、第二の高分子の長期泡保持性は初期泡保持時間が5分以上10分未満の初期泡保持時間かつ長期泡保持時間が初期泡保持時間の60%以上であることを特徴とする請求項1に記載のエアゾール組成物。
【請求項3】
第一の高分子が、ゼラチン、寒天、アルギン酸ナトリウム及びキサンタンガムからなる群から選択される少なくとも1種の高分子であり、第二の高分子が、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、ローカストビーンガム及びヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択される少なくとも1種の高分子であることを特徴とする請求項1又は2に記載のエアゾール組成物。
【請求項4】
脂肪酸塩を0.8〜10重量%含有する請求項1〜3のいずれかに記載のエアゾール組成物。
【請求項5】
第一の高分子を0.05〜12重量%含有する請求項1〜4のいずれかに記載のエアゾール組成物。
【請求項6】
第二の高分子を0.05〜4.5重量%含有する請求項1〜5のいずれかに記載のエアゾール組成物。
【請求項7】
第一の高分子を0.05〜10重量%含有し、第二の高分子を0.05〜3.5重量%含有し、低温流動性を有する請求項1〜6のいずれかに記載のエアゾール組成物。
【請求項8】
第一の高分子を0.05〜12重量%含有し、第二の高分子を0.1〜4.5重量%含有し、長期泡保持時間が5分以上である請求項1〜7のいずれかに記載のエアゾール組成物。
【請求項9】
第一の高分子を0.05〜10重量%含有し、第二の高分子を0.1〜3.5重量%含有し、低温流動性を有し、かつ長期泡保持時間が5分以上である請求項1〜8のいずれかに記載のエアゾール組成物。
【請求項10】
脂肪酸塩を3〜6重量%含有する請求項1〜3のいずれかに記載のエアゾール組成物。
【請求項11】
第一の高分子を0.1〜1.1重量%含有し、第二の高分子を0.1〜1.1重量%含有する請求項10に記載のエアゾール組成物。
【請求項12】
第一の高分子を0.3〜0.9重量%含有し、第二の高分子を0.1〜0.8重量%含有し、低温流動性を有する請求項10又は11に記載のエアゾール組成物。
【請求項13】
第一の高分子を0.1〜1.1重量%含有し、第二の高分子を0.2〜1.1重量%含有し、長期泡保持時間が5分以上である請求項10〜12のいずれかに記載のエアゾール組成物。
【請求項14】
第一の高分子を0.3〜0.8重量%含有し、第二の高分子を0.2〜0.8重量%含有し、低温流動性を有し、かつ長期泡保持時間が5分以上である請求項10〜13のいずれかに記載のエアゾール組成物。
【請求項15】
請求項1〜14に記載のエアゾール組成物を充填してなる泡沫芳香剤用エアゾール。

【公開番号】特開2006−16501(P2006−16501A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−196051(P2004−196051)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】